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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】波長変換部材の製造方法と波長変換部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20241218BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20241218BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L33/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021008171
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022017160
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020120026
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【弁理士】
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】山下 利章
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-157637(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021027(WO,A1)
【文献】特開2017-149929(JP,A)
【文献】特開2011-014587(JP,A)
【文献】特開2017-120753(JP,A)
【文献】特開2019-009406(JP,A)
【文献】特開2018-128596(JP,A)
【文献】特開2011-091401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0235127(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109870873(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20 - 5/28
H01L 33/50 -33/64
G03B 21/00 -33/16
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射面と、光出射面と、前記光入射面及び光出射面とは異なる面である光反射面とを備える焼結体を含む波長変換部材の製造方法であって、
無機物粒子と蛍光体粒子とを含む焼結体を準備する焼結体準備工程と、
前記焼結体を酸処理し、前記焼結体の光反射面に複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記焼結体の外周側面が前記光反射面であって、該外周側面に接しかつ前記光入射面及び光出射面を露出させるように反射部材を設ける反射部材配置工程と、を含み、
前記反射部材配置工程は、
反射部材用粉体を、前記複数の凹部を形成した焼結体を取り囲むように一体的に成形することと、
前記反射部材用粉体及び複数の凹部を形成した焼結体を一体的に焼結することと、
を含むことを特徴とする波長変換部材の製造方法。
【請求項2】
前記凹部形成工程において、前記焼結体の光入射面及び/又は光出射面に複数の凹部を形成し、
前記凹部形成工程後に、
前記光入射面及び/又は光出射面の凹部を除去する凹部除去工程を含む請求項1に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項3】
前記焼結体は柱形状である
請求項1または2に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項4】
前記焼結体準備工程において、前記焼結体を2以上準備し、
前記反射部材配置工程は、
前記反射部材用粉体を、前記複数の凹部を形成した焼結体をそれぞれ取り囲むように一体的に成形することと、
前記反射部材用粉体及び複数の凹部を形成した焼結体を一体的に焼結することで波長変換部材集合体を作製すること
を含み、
前記波長変換部材集合体を、それぞれの前記波長変換部材が前記1又は2以上の焼結体を含むように複数に分割する個片化工程を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項5】
前記凹部形成工程において、前記焼結体の光入射面及び/又は光出射面にマスクを形成し、該マスクから露出された表面に複数の凹部を形成する請求項1に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項6】
前記光入射面及び光出射面は同一の表面からなる請求項1~のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項7】
光入射面と、光出射面と、前記光入射面及び光出射面とは異なる面である光反射面とを有し、蛍光体粒子を含む焼結体と、前記焼結体の外周側面が前記光反射面であって、該外周側面に接しかつ前記光入射面及び光出射面を露出させるように設けられた反射部材と、を備え、前記焼結体と前記反射部材とが一体的に焼結されている波長変換部材であって、
前記焼結体の光反射面は、複数の凹部を有し、
前記光反射面における蛍光体粒子の分布は、前記焼結体の内部における蛍光体粒子の分布より少ないことを特徴とする波長変換部材。
【請求項8】
前記焼結体の周縁領域において、前記焼結体に囲まれた空隙を有することを特徴とする請求項に記載の波長変換部材。
【請求項9】
記反射部材の内周側面の一部が該外周側面に接している請求項7または8に記載の波長変換部材。
【請求項10】
2以上の前記焼結体の光入射面及び/又は光出射面が略同一面上に位置するように一体で形成されたことを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換部材の製造方法と波長変換部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオードやレーザダイオード等の光源を用いた白色照明が用いられるようになってきている。この白色照明の白色光は、例えば、発光ダイオードが発光する青色の光を波長変換部材により波長変換することにより得られる。特許文献1には、波長変換部材として、アルミナのセラミックマトリクスにYAG蛍光体粒子を分散させた焼結体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-204563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、蛍光体粒子を含む焼結体は、例えば、光入射面から入射した光を入射光とは波長の異なる光に波長変換して光出射面から出射する光学部品に使用されるが、その際、光入射面及び光出射面以外の表面を反射部材によって覆うことにより光を効率良く波長変換できるよう構成される。なお、本明細書において、波長変換部材とは焼結体を含む部材を意味し、焼結体単体の場合もあれば、焼結体と反射部材等の他の部材を含む場合もある。
しかしながら、近年、波長変換部材が種々の用途に幅広く使用されるようになるに伴い、その光入射面及び光出射面以外の表面の光の閉じ込めの向上が求められるようになってきている。
そこで、本開示は光入射面及び光出射面以外の表面の光の閉じ込めが向上した焼結体を作製できる波長変換部材の製造方法と波長変換部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示に係る波長変換部材の製造方法は、
光入射面と、光出射面と、前記光入射面及び光出射面とは異なる面である光反射面とを備える焼結体を含む波長変換部材の製造方法であって、
無機物粒子と蛍光体粒子とを含む焼結体を準備する焼結体準備工程と、
前記焼結体を酸処理し、前記焼結体の光反射面に複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成された本開示に係る波長変換部材の製造方法は、無機物粒子と蛍光体粒子とを含む焼結体を準備して、該焼結体を酸処理して焼結体の光反射面に複数の凹部を形成する工程を含むので、光入射面及び光出射面以外の表面の光の閉じ込めが向上した焼結体を作製でき、当該焼結体を含む波長変換部材を作製することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る実施形態1の製造方法のフローである。
図2】実施形態1の製造方法における焼結体準備工程のフローである。
図3A】実施形態1の製造方法において、準備した焼結体の断面図である。
図3B】実施形態1の製造方法において、凹部を形成した焼結体の断面図である。
図3C】実施形態1の製造方法において、凹部を形成した焼結体を反射部材で取り囲んだときの断面図である。
図3D】実施形態1の製造方法において、凹部を形成した焼結体を含む反射部材を加工した波長変換部材集合体の断面図である。
図3E図3Dの波長変換部材集合体の平面図である。
図3F】実施形態1の製造方法において、波長変換部材集合体を個片化した後の波長変換部材の平面図である。
図3G】実施形態1の製造方法により作製された波長変換部材の応用例の模式図である。
図3H】焼結体中の蛍光体粒子の分布を評価する方法を説明するための簡略化した模式的な断面図である。
図4A】実施形態2の製造方法において、準備した焼結体の断面図である。
図4B】実施形態2の製造方法において、凹部を形成した焼結体の断面図である。
図4C】実施形態2の製造方法において、形成した凹部の一部を除去した後の焼結体の断面図である。
図4D】実施形態2の製造方法において、焼結体の凸部を個片化した後の焼結体の断面図である。
図4E】実施形態2の製造方法において、準備した反射部材の断面図である。
図4F】実施形態2の製造方法において、準備した反射部材の貫通孔に個片化した後の焼結体を挿入した後の断面図である。
図4G】実施形態2の製造方法において、貫通孔に挿入した焼結体の上にガラスを設けた後の断面図である。
図4H】実施形態2の製造方法において、ガラスの表面を研磨した後の断面図である。
図4I】実施形態2の製造方法により作製された波長変換部材の応用例の模式図である。
図5】本発明に係る実施形態3の製造方法のフローである。
図6A】実施形態3の製造方法において、上面にマスクが形成され、下面に保護膜が形成された蛍光体セラミック板の断面図である。
図6B図6Aの蛍光体セラミック板の平面図である。
図6C】実施形態3の製造方法において、凹部を形成した蛍光体セラミック板の断面図である。
図6D】実施形態3の製造方法において、蛍光体セラミック板の下面全体に反射膜を形成したときの断面図である。
図6E】実施形態3の製造方法において、蛍光体セラミック板を下面側から支持する支持体を設けたときの断面図である。
図6F】実施形態3の製造方法により作製された波長変換部材の応用例の模式図である。
図7A】実験例と同様にして作製した焼結体の光反射面に反射部材を形成したときの断面写真である。
図7B図7Aから反射部材を除いた焼結体の断面写真である。
図7C】比較例と同様にして作製した焼結体の光反射面に反射部材を形成したときの断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示に係る波長変換部材の製造方法は、無機物粒子と蛍光体粒子とを含む焼結体を酸処理することによりその酸処理された表面の光の閉じ込めが向上することを見いだし完成させたものであり、少なくとも無機物粒子と蛍光体粒子とを含む焼結体を準備する焼結体準備工程と凹部形成工程とを含む。
ここで、凹部形成工程は、準備した焼結体の表面を酸処理して、焼結体の光反射面に複数の凹部を形成する工程である。より具体的には、焼結体の表面を酸処理することにより、焼結体の光反射面に露出した蛍光体粒子を離脱させ、残った無機物粒子により形成された焼結体の光反射面に、複数の凹部を形成するものである。以上のように焼結体の光反射面に複数の凹部を形成することにより、光反射面における光の閉じ込めを向上させることができる。これは、光反射面における無機物粒子と凹部の空隙との間の屈折率差によるものと考えられる。また、光反射面に露出する蛍光体粒子が減少することによるものとも考えられる。
【0009】
また、本開示に係る波長変換部材の製造方法は、焼結体において、光入射面及び光出射面として利用する面の光の閉じ込めを抑えるために、必要に応じて、以下の工程のいずれかを含んでいてもよい。
(a)凹部形成工程後に、酸処理により凹部が形成された表面のうち、光入射面及び光出射面として利用する面における凹部を除去する凹部除去工程。
(b)光入射面及び光出射面として利用する面が酸処理にさらされないように、凹部形成工程の前に、光入射面及び光出射面として利用する面にマスクを形成する工程。
【0010】
本開示に係る波長変換部材の製造方法によれば、焼結体の表面のうち光入射面と光出射面とを除く表面を光の閉じ込めが向上した光反射面とすることが可能になる。以上のように作製された焼結体は、光入射面と光出射面とを除く表面が光の閉じ込めが向上した光反射面となっていることから、光入射面と光出射面とを除いた表面から漏れる光を少なくでき、光入射面から入射した光を効率良く波長変換して光出射面から出射させることができる。
なお、作製する焼結体の光入射面と光出射面とは異なる面であってもよいし、同一の面であってもよい。
【0011】
また、実施形態の波長変換部材の製造方法において、焼結体の光入射面と光出射面とを露出させ、かつ複数の凹部が形成された光反射面を接して覆う反射部材を設ける反射部材配置工程をさらに含むことにより、焼結体と反射部材とを含む波長変換部材を製造することができる。この焼結体と反射部材とを含む波長変換部材は、焼結体の光反射面における光の閉じ込めだけでなく、焼結体と反射部材との界面における光反射率を高くできることから、焼結体の光出射面の周りの光の滲みを抑制できる。これにより、焼結体の光出射面と、光出射面の外側とで輝度差を大きくでき、言い換えれば、焼結体の光出射面と該光出射面を取り囲む反射部材との境界を明瞭にでき、見切りに優れた波長変換部材を作製することができる。
【0012】
以下、実施形態の波長変換部材の製造方法について、図面を参照しながらより具体的な例を用いて詳細に説明する。
なお、以下に示す実施形態1~3の波長変換部材の製造方法は、反射部材配置工程を含むものであるが、反射部材配置工程は、必要に応じて設けられる工程であって任意である。すなわち、上述したように、実施形態の波長変換部材の製造方法により作製された、光反射面に複数の凹部が形成された焼結体は、光反射面での光の閉じ込めを向上できることから、光反射面を接して覆う反射部材を含むことなく光の閉じ込めを向上させることが可能であり、光反射面を覆う反射部材を含むことなく、波長変換部材として使用することができる。
また、以下の実施形態1~3は、上述した実施形態の技術思想を具体化したものであるが、本発明を限定するものではない。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、重複した説明は適宜省略することがある。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0013】
実施形態1
実施形態1の波長変換部材1の製造方法は、図1に示すように、焼結体準備工程S1と、凹部形成工程S2と、反射部材配置工程S3とを含む。
【0014】
1.焼結体準備工程S1
焼結体準備工程S1は、図2に示すように、秤量工程S11と、混合工程S12と、成形工程S13と、焼結工程S14と、加工工程S15と、を含む。
以下、各工程について具体的に説明する。
【0015】
(1-1)秤量工程S11
ここでは、無機物粒子と蛍光体粒子とをそれぞれ準備し、準備した無機物粒子と蛍光体粒子とをそれぞれ所定量秤量する。なお、蛍光体粒子の準備には、蛍光体粒子そのものを準備することのほか、蛍光体粒子の原料となる材料を準備することも含む。例えば、YAG蛍光体粒子を準備する場合、酸化アルミニウム、酸化イットリウム及び酸化セリウムの粒子をそれぞれ準備してもよい。
【0016】
蛍光体粒子は、入射光により励起されて入射光より波長の長い光を発光するものであり、無機物粒子は焼結後に蛍光体粒子を支持するものである。
【0017】
蛍光体粒子としては、例えば、セリウムで賦活されたYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系蛍光体、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO-Al-SiO)蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)SiO)蛍光体、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体等から選択された1又は2種以上からなる蛍光体粒子を準備する。蛍光体粒子としては、比較的耐熱性が高く、励起光による劣化の少ない材料を用いることが好ましく、好適な材料として、例えば、YAG系蛍光体が挙げられる。ここで、YAG系蛍光体には、例えばYの少なくとも一部をTbに置換したものや、Yの少なくとも一部をLuに置換したものも含まれる。また、YAG系蛍光体は、組成中にGdやGa等が含まれるものであってもよい。
【0018】
準備する蛍光体粒子の粒径は、例えば、0.1μm以上、30μm以下の範囲内であることが好ましく、1μm以上、5μm以下の範囲内とすることがさらに好ましい。この範囲とすることにより焼結体11の酸処理後の表面の光の閉じ込めをより向上させることができる。このとき、無機物粒子として、蛍光体粒子の焼結温度よりも低い焼結温度の無機物粒子を用いる。これにより、蛍光体粒子の熱による劣化を低減しながら無機物粒子を焼結することができる。
【0019】
また、無機物粒子として、例えば、酸化アルミニウムもしくは酸化イットリウム等の酸化物または窒化物等から選択された1又は2種以上からなる無機物粒子を準備する。無機物粒子として、蛍光体粒子の熱膨張係数に近い熱膨張係数の材料や、光吸収の少ない材料を用いることが好ましく、好適な材料として、例えば、酸化アルミニウムが挙げられる。
準備する無機物粒子の粒径は、蛍光体粒子の粒径より小さいことが好ましく、例えば、0.01μm以上、1μm以下の範囲内、より好ましくは、0.3μm以上、0.6μm以下の範囲内のものを用いる。無機物粒子の材料の選択に加え、蛍光体粒子の粒径より小さい粒子を選択することにより、無機物粒子の焼結温度を蛍光体粒子よりも低い焼結温度とすることができる。これにより、蛍光体粒子の熱による劣化及び異常な粒成長を抑制しながら無機物粒子を焼結させることができる。また、無機物粒子の粒径が小さすぎる場合、無機物粒子の凝集により、取り扱いが難しくなることや、混合ムラによる焼結ムラが起きることがあるので、この観点からは、粒径が0.1μm以上あることが好ましい。
なお、ここでいう粒径とは、平均粒径をいい、レーザ回折法により測定された粒径をいう。
【0020】
次に、準備した無機物粒子及び蛍光体粒子を秤量する。
無機物粒子及び蛍光体粒子の合計重量に対して、無機物粒子及び蛍光体粒子がそれぞれ所定の重量比になるように秤量する。ここで、無機物粒子及び蛍光体粒子の合計重量に対する無機物粒子の重量比は、例えば、20%以上、95%以下の範囲、好ましくは60%以上、90%以下の範囲、より好ましくは70%以上、80%以下の範囲内で所望の波長変換特性が得られるように適宜設定される。
また、蛍光体粒子の粒径及び無機物粒子の粒径を上記範囲において適宜選択し、蛍光体粒子の量及び無機物粒子の量を上記範囲において適宜選択することにより、比較的粒径の小さい無機物粒子の中に蛍光体粒子を点在させることができ、後述の工程により無機物粒子が焼結してなる無機物マトリクスにより蛍光体粒子が支持された焼結体11を作製することができる。
【0021】
(1-2)混合工程S12
次に、秤量した無機物粒子及び蛍光体粒子を、例えば、アルミナボールとともに混合容器に入れて回転させることにより混合する(ボールミル混合)。ボールミル混合はエタノール等の溶剤を含む湿式混合を用いてもよいし、溶剤を含まない乾式混合を用いてもよい。
【0022】
(1-3)成形工程S13
ここでは、無機物粒子と蛍光体粒子とが混合された混合粉体を所定の形状に成形する。
成形工程S13は、例えば、一次成形工程S131と二次成形工程S132とを含む。
一次成形工程S131では、プレス成型等により上下から加圧して一次成形する。二次成形工程S132では、一次成形品をCIP(冷間静水圧加圧)成形等により等方的に加圧することにより加圧成形後の密度が均一になるように所定の形状に成形する。
【0023】
(1-4)焼結工程S14
焼結工程では、例えば、無機物粒子が酸化アルミニウムであれば、1300℃以上、1600℃以下程度の所定の焼結温度で一定時間保持することにより、無機物粒子を焼結させて蛍光体粒子を支持するマトリクス状の支持部を形成する。焼結工程S14は、例えば、所定の温度で大気圧中で焼結させる一次焼結工程S141と、一次焼結工程S141より高密度に焼結させることができる二次焼結工程S142とを含む。一次焼結工程S141では、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sinterning、SPS)法を用いることができる。二次焼結工程S142では、ホットプレス(HP)法、熱間静水圧加圧(HIP)法を用いることができる。焼結温度及び時間は、蛍光体粒子の熱による劣化及び異常な粒成長を抑制しつつ無機物粒子を焼結させるよう適宜設定する。
【0024】
ここでの焼結温度及び時間は、無機物粒子の焼結後の結晶粒径及び蛍光体粒子の焼結後の粒径が所望の寸法になるように焼結前の無機物粒子の粒径及び焼結前の蛍光体粒子の粒径を考慮して適宜設定する。蛍光体粒子としてYAG系蛍光体、無機物粒子として酸化アルミニウムを選択して、ホットプレス(HP)法を用いる場合は、例えば、1350℃以上、1600℃以下の範囲内の温度で、その温度での保持時間は30分以上、600分以下の範囲内の時間行う。
なお、焼結体11の蛍光体粒子の結晶粒径の測定方法は、例えば、焼結体11の一断面において、蛍光体粒子が10個写るスケールのSEM画像で、円形に近い形状の蛍光体粒子のうち、最短の幅をもつものと最長の幅をもつものの平均を求めることにより測定することができる。以下の説明及び参照する図において、焼結体11中の蛍光体粒子には、17の符号を付して示す。
【0025】
(1-5)加工工程S15
得られた焼結体11を必要に応じて所定の形状に加工する。ここでは、例えば図3Aに示すように所定の寸法の四角柱形状に加工する。なお、加工後の焼結体11の表面は、図3Aに示すように実質的に平坦である。ここで、本明細書において実質的に平坦とは、焼結後の特に研削または研磨されていない通常の焼結体の表面状態のことをいう。
【0026】
2.凹部形成工程S2
凹部形成工程S2では、焼結体準備工程S1で準備した焼結体11を酸処理し、図3Bに示すように、焼結体11の表面に複数の凹部7を形成する。
ここでは、蛍光体粒子17または無機物粒子の少なくとも一方を溶解する溶液を用いる。好ましくは、無機物粒子の溶解率よりも、蛍光体粒子17の溶解率のほうが大きい溶液を用いる。このような溶液として、例えば、燐酸、硫酸、フッ酸、硝酸が挙げられる。
酸処理は、例えば、燐酸と硫酸の混合液を加熱して、その液中で所定の時間行い、その後水洗する。燐酸と硫酸の割合は、例えば、1:1~1:5、混合液の加熱温度は、例えば、100℃以上、320℃以下、処理時間は、例えば、1分以上、60分以下の範囲で、目標とする凹部7の形状および大きさ等を考慮して適宜設定される。以上の酸処理により、焼結体11の表面の無機物粒子と蛍光体粒子17の粒子間が優先的に溶解されて、再び粒状化される。換言すると、無機物粒子と蛍光体粒子17の粒子間が優先的に溶解されて、粒子の状態に戻る。そして、蛍光体粒子17が離脱して焼結体11の表面に凹部7が形成される。
例えば、YAGからなる蛍光体粒子17と酸化アルミニウムからなる無機物粒子とを含む焼結体11を、燐酸と硫酸が36:74で混合された混合液により酸処理する場合には、YAGは200℃の温度で溶解され、一方酸化アルミニウムは約260℃から溶解が始まるので、例えば、混合液の温度を280℃以上、305℃以下の範囲に設定する。このようにすると、酸化アルミニウムよりYAGの溶解率が大きいので、無機物粒子と蛍光体粒子17の粒子間において蛍光体粒子17の表面が優先的に溶解されて無機物粒子と蛍光体粒子17の間が分離されて蛍光体粒子17が離脱し、焼結体11の表面に凹部7が形成される。
【0027】
このようにして、焼結体11の光反射面4には、複数の凹部7が形成される。そして、上記の酸処理をされた焼結体11では、光反射面4における蛍光体粒子17の分布は、焼結体11の内部における蛍光体粒子17の分布より少なくなる。
焼結体11単体の場合には、光反射面4における蛍光体粒子17の分布は、光反射面4を観察したSEM画像を画像解析することにより、光反射面4の面積に対する蛍光体粒子17の面積の比率として求めることができる。そして、焼結体11の内部における蛍光体粒子17の分布は、焼結体11の中心軸を含む焼結体11の断面のSEM画像を画像解析することにより、焼結体11の断面の面積に対する蛍光体粒子17の面積の比率として求めることができる。
一方で、焼結体11と反射部材21とを含む波長変換部材1の場合など、光反射面4を直接SEM画像で観察することが困難な場合には、以下の方法で求めることができる。光反射面4における蛍光体粒子17の分布は、例えば、図3Hに模式的に示す光反射面4を横断する焼結体11の断面のSEM画像を画像解析することにより、光反射面4をなぞる線L4の長さに対する、当該光反射面4の線L4において蛍光体粒子17が重なる部分の長さとの比率として求めることができる。そして、焼結体11の内部における蛍光体粒子17の分布は、焼結体11の中心軸を含む焼結体11の断面のSEM画像において、光反射面4をなぞる線L4に対応する仮想線L40を引いたものを画像解析することにより、仮想線L40の長さに対する、当該仮想線L40において蛍光体粒子17が重なる部分の長さとの比率として求めることができる。ここで、図3Hは画像解析する範囲の一部を拡大して示すものであり、実際に分布を求める際のSEM画像において画像解析する範囲は、解析位置により分布が異なることがないよう一定以上の範囲、例えば、蛍光体粒子17が100個映るスケールに設定することは言うまでもない。光反射面4における蛍光体粒子17の分布は、例えば、焼結体11の内部における蛍光体粒子17の分布の0.3倍以下、好ましくは0.1倍以下、さらに好ましくは、ほぼ0である。このような蛍光体粒子分布とすることにより、焼結体11の光反射面4には無機物粒子がより多く分布するため、焼結体11の光反射面4における光の閉じ込めを向上させることができる。これは、無機物粒子と凹部7の空隙9との間の屈折率差によるものと考えられる。また、焼結体11の光反射面4に露出する蛍光体粒子17が減少することによるものとも考えられる。なお、図3Hは、蛍光体粒子17の分布を評価する方法を説明するための簡略化した模式図であり、断面図であるが線L4及び仮想線L40を把握しやすいようにハッチングは省略している。また、図3Hにおいて、蛍光体粒子17を同一の直径の円形に描いているが、実際は個々の蛍光体粒子17の粒径及び形状は異なっている。
【0028】
言い換えれば、焼結体11において、光反射面4を含む周縁領域111における蛍光体粒子17の分布が、当該周縁領域111より内側の内部領域112における蛍光体粒子17の分布よりも小さくなる。ここで、焼結体11の光反射面4を含む周縁領域111とは、焼結体11の光反射面4から内側に一定の距離の領域を指す。一定の距離とは、酸処理の温度や時間等の条件にもよるが、例えば、5μm以上、20μm以下をいう。焼結体11の光反射面4を含む周縁領域111における蛍光体粒子17の密度は、内部領域112における蛍光体粒子17の密度の、例えば、0.3倍以下、好ましくは0.1倍以下、さらに好ましくは、密度がほぼ0である。このような蛍光体粒子分布とすることにより、焼結体11の光反射面4を含む周縁領域111には無機物粒子がより多く分布するため、焼結体11の光反射面4における光の閉じ込めを向上させることができる。これは、無機物粒子と凹部7の空隙9との間の屈折率差によるものと考えられる。また、焼結体11の光反射面4に露出する蛍光体粒子17が減少することによるものとも考えられる。また、これにより、焼結体11に光を照射したときの、焼結体11の周縁領域111と内部領域112における色ムラを低減することができる。
【0029】
また、上記酸処理によって、焼結体11から蛍光体粒子17が離脱することにより、焼結体11の光反射面4を含む周縁領域111において、焼結体11に囲まれた空隙9を形成することができる。これにより、焼結体11の光反射面4での光の閉じ込めをさらに高くすることができる。ここで、焼結体11に囲まれるとは、焼結体11の一断面において、空隙9の外周の40%以上、80%以下に焼結体11があることをいう。
焼結体11の光反射面4を含む周縁領域111における空隙率は、5%以上、30%以下とすることが好ましい。これにより、焼結体11の強度を保ちつつ、光反射面4における光の閉じ込めを向上させることができる。
【0030】
3.反射部材配置工程S3
ここでは、表面に凹部7が形成された柱形状の焼結体11の外周側面に接して外周側面を取り囲む反射部材21を配置する。ここで、焼結体11の外周側面は光反射面4である。
例えば、反射部材21を形成する反射部材用粉体を、所定の位置に配置した柱形状の焼結体11を取り囲むように一体的に成形して焼結させる。反射部材21を形成する反射部材用粉体の成形は、例えば、スリップキャスト法、ドクターブレード法等により、所定の位置に配置した焼結体11を取り囲むように成形する。この成形の際、または成形後に圧力をかけてより緻密に充填するようにしてもよい。これにより、柱形状の焼結体11と反射部材21とが一体化された波長変換部材1が作製される。なお、反射部材21を形成する反射部材用粉体を焼結させる際、焼結体11はあらかじめ焼結させているので、反射部材21と一体化された後においても表面に形成された凹部7を含め柱形状の焼結体11の形状は実質的に変形することなく維持される。反射部材21を配置した後、反射部材21で覆われた焼結体11の光反射面4以外の表面、言い換えると、反射部材から露出される表面の一部または全部を必要に応じて研削または研磨することにより該表面に形成された凹部7を除去することができる。
【0031】
反射部材21は、焼結体11の無機物粒子と同じ材料を含んで構成することが好ましく、例えば、酸化アルミニウムを主原料として含み、酸化アルミニウムとは異なる屈折率の材料も含むものを用いることができる。
ここで、例えば、スリップキャスト法、ドクターブレード法等により反射部材用粉体を成形する場合、焼結体11の凹部7の一部または全部に反射部材用粉体が侵入することがある。この場合、焼結体11の光反射面4と反射部材21aの境界では、焼結体11の凹部7と、凹部7内に延在する反射部材21aの凸部8の少なくとも一部と、凹部7と凸部8との間に形成される空隙9と、を含む中間領域が形成される。ここで、中間領域とは、酸処理の温度や時間等の条件にもよるが、例えば、焼結体11の光反射面4と、反射部材21aの境界から、焼結体11側及び反射部材21a側それぞれに一定の距離の領域を指す。一定の距離とは、酸処理の温度や時間等の条件にもよるが、例えば、3μm以上、10μm以下の領域をいう。
なお、焼結体11の凹部7と、反射部材21aの凸部8と、凹部7と凸部8との間に形成される空隙9については模式的に示した図には図示していないが、図7A及び図7Bに示す。
【0032】
ここで、反射部材配置工程S3では、図3Cから図3Fに示すように、複数の波長変換部材1が一括して作製された波長変換部材集合体を作製してもよい。その後、該波長変換部材集合体を分割して複数の波長変換部材1を作製する個片化工程を含んでいてもよい。分割後の波長変換部材1はそれぞれ、1又は2以上の焼結体11aを含んでいる。具体的には、図3Cに示す波長変換部材集合体を所定の厚さに加工することで、図3D及び図3Eに示す、複数の波長変換部材1を含む波長変換部材集合体を複数形成し、さらにその波長変換部材集合体を個々の波長変換部材1に分割するようにして、図3Fに示す波長変換部材1を得てもよい。このように波長変換部材集合体を所定の厚さに加工して、さらに個片化するようにすると、波長変換部材1の加工面に露出した焼結体11aの表面は凹部7が除去されて光の閉じ込めが抑えられることになり、別途凹部7を除去する工程を経ることなく、例えば、光入射面5または光出射面6として利用できる。また、波長変換部材集合体が所定の厚さに加工されているため、波長変換部材1が2以上の焼結体11aを含む場合、2以上の焼結体11aの光入射面及び/又は光出射面は略同一面上に位置する。
【0033】
以上のようにして作製された波長変換部材1は、焼結体11aと反射部材21aを含み、焼結体11aの側面が反射部材21aによって覆われ、焼結体11aの上面及び下面が反射部材21aから露出されている。換言すると、反射部材21aの内周側面の一部が焼結体11aの外周側面に接し、焼結体11aの光入射面及び光出射面が反射部材21aから露出している。これにより、例えば、図3Gに示すように、焼結体11aの下面を光入射面5として例えばレーザダイオード等の発光素子80の光を入射させ、上面を光出射面6として波長変換後の光を出射させることができる。このように焼結体11aの下面を光入射面5とし、上面を光出射面6とする場合、上記光入射面5及び光出射面6における光の閉じ込めを抑えるために、凹部形成工程S2後に、光入射面5及び/又は光出射面6の凹部7を除去する凹部除去工程を含むことが好ましい。実施形態1では、上述の加工により波長変換部材1を形成する工程が凹部除去工程を兼ねている。
【0034】
また、以上のように構成された波長変換部材1において、焼結体11aの光反射面4は複数の凹部7を有し、焼結体11aの光反射面4に対向する反射部材21aの面は、複数の凸部8を有している。そして、焼結体11aの光反射面4に形成された凹部7内に反射部材21aの凸部8の少なくとも一部が入り込み、さらに、少なくとも一部の凹部7内には空隙9も存在する。すなわち、焼結体11aの光反射面4とそれに対向する反射部材21aの面の境界には、複数の凹部7、複数の凸部8及び空隙9が存在する中間領域が形成される。この中間領域が形成されることにより、焼結体11aの凹部7を形成する無機物粒子または空隙9と、反射部材21aの凸部8との界面により、焼結体11aからの光の伝搬を抑制することで、焼結体11aの光出射面6と、光出射面6の外側とで、上面から観察した際の輝度差を大きくすることができる。また、焼結体11aの下面を光入射面5とし、上面を光出射面6とする場合、焼結体11aの光入射面5にDBR(Distributed Bragg Reflector)膜等の光学薄膜を形成するようにしてもよい。
【0035】
上記工程を経て作製された波長変換部材1では、反射部材21aによって覆われた焼結体11aの光反射面4は、酸処理により複数の凹部7が形成されているため光の閉じ込めが向上している。これにより、反射部材21aによって回りが囲まれた焼結体11aの上面を光出射面6としたときに、該光出射面6と該光出射面6の近傍の反射部材21aとの間の輝度差を大きく、言い換えれば、波長変換部材1の上面(焼結体11aの光出射面6を含む面)において、光出射面6からの離間距離に対する輝度の減少率を急峻にでき見切りを良好にできる。
【0036】
以上のようにして作製された波長変換部材1は、例えば、発光ダイオードまたは半導体レーザ素子を収納するパッケージの蓋体または蓋体の一部として使用され、パッケージ内に収納された発光ダイオードまたは半導体レーザ素子からの光を波長変換して出射させることができる。
【0037】
実施形態2.
実施形態2の波長変換部材2の製造方法は、実施形態1の波長変換部材1の製造方法と同様、焼結体準備工程S1と、凹部形成工程S2と、反射部材配置工程S3とを含むものであるが、各工程の具体的内容は実施形態1とは一部異なっている。
以下、実施形態2の波長変換部材2の製造方法について詳細に説明する。
【0038】
1.焼結体準備工程S1
焼結体準備工程S1は、実施形態1と同様、図2に示す、(1-1)秤量工程S11と、(1-2)混合工程S12と、(1-3)成形工程S13と、(1-4)焼結工程S14と、(1-5)加工工程S15と、を含む。
実施形態2において、(1-1)秤量工程S11と(1-2)混合工程S12は、実施形態1と同様である。
そして、実施形態2では、秤量混合した無機物粒子及び蛍光体粒子を用いて、(1-3)成形工程S13において所定の厚さの板状成形体を成形する。
実施形態2において、例えば、成形工程S13では、無機物粒子と蛍光体粒子の混合粉体に、例えば、樹脂からなるバインダーと溶剤とを加えて撹拌してスラリーを作製する。そして、そのスラリーを所定の厚さに成膜した後、所定の形状に切断して板状グリーン成形体を作製する。なお、実施形態2の成形工程では、実施形態1と同様にして、プレス成型及び/又はCIP(冷間静水圧加圧)成形等により板状に成形するようにしてもよい。
なお、板状成形体の厚さは、後述の焼結による収縮を考慮して、焼結後の厚さが所望の厚さになるように設定する。
【0039】
次に、(1-4)焼結工程S14において、実施形態1と同様にして、板状成形体を焼結することにより、焼結体である蛍光体セラミック板12を作製する。
【0040】
(1-5)加工工程S15
得られた蛍光体セラミック板12の上面に図4Aに示すように、円錐台形状の複数の凸部12aを形成する。この凸部12aは、例えば、マシニングセンター等により形成することができる。なお、蛍光体セラミック板12において、複数の凸部12aを除いた部分をベース部12bという。
【0041】
2.凹部形成工程S2
実施形態2において、凹部形成工程S2は、
(i)蛍光体セラミック板12全体を酸処理して蛍光体セラミック板12の表面全体に凹部7を形成する酸処理工程と、
(ii)所定の面の凹部7を除去した後、所定の形状の焼結体12aに分離する第2加工工程と、
を含む。
【0042】
(2-1)酸処理工程
実施形態2の凹部形成工程S2において、酸処理工程では、複数の凸部12aが形成された蛍光体セラミック板12全体を酸処理し、図4Bに示すように、複数の凸部12aの表面を含む蛍光体セラミック板12全体の表面に複数の凹部7を形成する。酸処理は、実施形態1と同様に行う。
【0043】
(2-2)第2加工工程
第2加工工程では、まず、円錐台形状の複数の凸部12aの上面をそれぞれ研削して、該上面に形成された凹部7を除去し、図4Cに示すように、上面を平坦にする。
次に、蛍光体セラミック板12の下面からベース部12bを研削することにより、ベース部12bを除去して、図4Dに示すように、円錐台形状の複数の凸部12aを個々に分離する。
以上のようにして、上底面及び下底面がそれぞれ平坦で外周側面に酸処理による凹部7が形成された、円錐台形状の焼結体12aを作製する。
ここで、本明細書において、円錐台形状の上底または上底面とは、上下の位置関係にかかわらず、側面を挟んで対向する円形の面のうちの面積の小さい面をいい、当該対向する円形の面のうちの面積の大きい面を下底または下底面という。
【0044】
3.反射部材配置工程S3
ここでは、表面に凹部7が形成された柱形状の焼結体12aの外周側面に接して外周側面を取り囲む反射部材22を配置する。ここで、焼結体12aの外周側面は光反射面4である。
具体的には、まず、円錐台形状の焼結体12aが内部に挿入される貫通孔が形成された反射部材22を別途作製する。例えば、反射部材22を形成する反射部材用粉体を、成形して貫通孔を含む成形体を作製し、その成形体を焼結することにより反射部材22を作製する。焼結後、貫通孔を研削または研磨加工して所定の寸法精度に仕上げるようにしてもよい。このようにすると貫通孔内に円錐台形状の焼結体12aを高い位置精度で配置することができる。反射部材22の貫通孔は、焼結体12aと同じ円錐台形状であり、上底の開口面が焼結体12aの上底より小さく、下底の開口面が焼結体12aの下底より大きくなるように形成される。実施形態2では、反射部材22としてセラミックを用いているが、例えば、メタルを用いることもできる。
ここで、焼結体12aを反射部材22の貫通孔内に配置する前に、貫通孔の内壁に低融点ガラスを形成することができる。そして、焼結体12aを反射部材22の貫通孔内に低融点ガラスを用いて融着することで、焼結体12aを反射部材22の貫通孔内に固定することができる。これにより、反射部材22の貫通孔の傾斜角と、焼結体12aの側面の傾斜角とを同一にしなくても、焼結体12aからの放熱性や、固定強度を向上させる事ができる。なお、反射部材22の貫通孔の傾斜角と、焼結体12aの側面の傾斜角とを同一にしてもよい。
【0045】
次に、図4Fに示すように、反射部材22の貫通孔に円錐台形状の焼結体12aを挿入する。上述したように、貫通孔は上底の開口面が焼結体12aの上底より小さく、下底の開口面が焼結体12aの下底より大きくなるように形成されているので、図4Fに示すように、焼結体12aは、貫通孔の途中、すなわち、貫通孔において上底側及び下底側の双方に空洞が形成されるように貫通孔内に保持される。
次いで、図4Gに示すように、焼結体12aを挿入した貫通孔の、下底側の空洞を上にして該空洞内にガラス18を塗布して溶融させ、焼結体12aの上にガラス18を配置する。実施形態2では、ガラス18は蛍光体を含んでいるが、蛍光体を含まない構成とすることもできるし、光拡散材等を含んでいてもよい。
その後、貫通孔から突出したガラス18を研削及び/又は研磨して、図4Hに示すように、ガラス18の表面と反射部材22の上面とが同一平面を形成するようにする。
【0046】
以上のようにして作製された実施形態2の波長変換部材2は、焼結体12aと反射部材22を含み、円錐台形状の焼結体12aの側面が反射部材22によって覆われ、焼結体12aの上面及び下面が反射部材22から露出されている。これにより、例えば、図4Iに示すように、焼結体12aの下面を光入射面5として例えばレーザダイオード等の発光素子80の光を入射させ、上面を光出射面6として波長変換後の光を出射させることができる。このように焼結体12aの下面を光入射面5とし、上面を光出射面6とする場合、当該光入射面5及び光出射面6における光の閉じ込めを抑えるために、凹部形成工程S2後に、光入射面5及び/又は光出射面6凹部7を除去する凹部除去工程を含むことが好ましい。実施形態2では、上述の第2加工工程における、凸部12aの上面を研削及び/又は研磨する工程、及びベース部12bを除去して複数の凸部12aを個々に分離する工程が、凹部除去工程を兼ねている。また、焼結体12aの下面を光入射面5とし、上面を光出射面6とする場合、焼結体12aの光入射面5に反射防止膜を形成するようにしてもよい。
【0047】
上記工程を経て作製された波長変換部材2では、反射部材22によって覆われた焼結体12aの光反射面4は、酸処理により複数の凹部7が形成されているため光の閉じ込めが向上している。これにより、反射部材22によって回りが囲まれた焼結体12aの上面を光出射面6としたときに、該光出射面6と該光出射面6の近傍の反射部材22との間の輝度差を大きく、言い換えれば、波長変換部材2の上面(焼結体12aの光出射面6とそれを囲む反射部材22の上面)において、光出射面6からの離間距離に対する輝度の減少率を急峻にでき見切りを良好にできる。
【0048】
以上のようにして作製された波長変換部材2は、例えば、発光ダイオードまたは半導体レーザ素子を収納するパッケージの蓋体または蓋体の一部として使用され、パッケージ内に収納された発光ダイオードまたは半導体レーザ素子からの光を波長変換して出射させることができる。
【0049】
実施の形態3
実施形態3の波長変換部材3の製造方法は、実施形態1及び2の波長変換部材の製造方法と同様、図5に示すように、焼結体準備工程S1と、凹部形成工程S2とを含むものであるが、凹部形成工程S2において、焼結体13の形状加工と表面への凹部7の形成を一括して行っている点が実施形態2とは異なっている。
また、実施形態3の製造方法により作製される波長変換部材3は、上面から入射した光を波長変換した後、上面から出射させるもの、すなわち光入射面5と光出射面6が同一の面からなる。したがって、実施形態3の製造方法は、図5に示すように、実施形態1及び2の反射部材配置工程S3に代えて、焼結体13の下面に反射膜23を形成する反射膜形成工程を含んでいる。
以下、実施形態3の波長変換部材3の製造方法について詳細に説明する。
【0050】
1.焼結体準備工程S1
実施形態3の波長変換部材3の製造方法では、焼結体準備工程S1において実施形態2と同様にして板状成形体を作製し、その板状成形体を焼結することにより、焼結体である蛍光体セラミック板13を作製する。
【0051】
2.凹部形成工程S2
実施形態3の製造方法において、凹部形成工程S2は、蛍光体セラミック板13の上面を形状加工するとともに形状加工された表面に凹部7を形成する工程である。
具体的には、まず、図6Aに示すように、蛍光体セラミック板13の上面に、例えば、SiOからなり、上面視したときの平面形状が矩形のマスク53を所定の間隔で複数形成する。このとき、形状加工を施さない蛍光体セラミック板13の下面には、全面に、例えば、SiO膜からなる保護膜55を形成することができる。または、蛍光体セラミック板13の下面に保護膜55を形成せずにエッチングを行い、後の工程において、凹部7が形成された下面を研削または研磨してもよい。蛍光体セラミック板13の厚みが比較的薄い場合、凹部7が形成された下面を研削または研磨することで蛍光体セラミック板13が割れることがあるので、そのような場合には、保護膜55を形成することが好ましい。ここで、蛍光体セラミック板13の上面に形成するマスク53及び下面に形成する保護膜55は、SiOに限定されるものではなく、例えば、SiON、SiN、Al、AlON、AlN、ZrOを用いることができるが、後述の酸処理によりエッチングされないものであればよい。
【0052】
次に、上面にマスク53が形成され、下面に保護膜55が形成された蛍光体セラミック板13全体を酸処理する。酸処理は、実施形態1と同様、例えば、燐酸と硫酸の混合液を加熱して、その液中で所定の時間行い、その後水洗する。実施形態1で説明したように、この酸処理により、焼結体13(蛍光体セラミック板13)の表面近傍の無機物粒子と蛍光体粒子17の粒子間が優先的に溶解されて蛍光体粒子が離脱するが、例えば、酸化アルミニウム等からなる無機物粒子も燐酸と硫酸の混合液によりある温度以上では溶解される。したがって、この酸処理により、上面におけるマスク53間の蛍光体セラミックがエッチングにより除去されて、図6Cに示すように、マスク53の下部にそれぞれ凸部13aが形成され、そのエッチングにより形成された表面には複数の凹部7が形成される。例えば、平面形状が矩形のマスク53を形成して酸処理した場合には、酸処理によるエッチングは等方的であることから、マスク53の下部に形成される凸部13aはそれぞれ略四角錐台形状になるが、その略四角錐台形状の凸部13aの側面にそれぞれ複数の凹部7が形成される。ここで、蛍光体セラミック板13の上面のうち、マスク53が形成されていない領域において、例えば、ダイシングまたはレーザ等でハーフカットを施してからエッチングをすることで、酸をさらに浸透させやすくすることができる。これにより、ハーフカットしない場合と比較して、より深くエッチングをすることができる。この結果、蛍光体セラミック板13内の光の伝搬をより抑制することができるため、見切りを向上させることができる。
なお、略四角錐台形状の凸部13aの上面、すなわちマスク53に接する面、及びマスク53の上面はそれぞれ実質的に平坦であり、蛍光体セラミック板13の光入出射面に好適である。
【0053】
実施形態3の酸処理における、燐酸と硫酸の割合、混合液の加熱温度、処理時間等は、実施形態1等と同様にして所望の凹部7が形成されるように設定されるが、実施形態3の酸処理では、蛍光体セラミック板13の上面の形状加工も兼ねるので、形成すべき凸部13aの形状をさらに考慮して燐酸と硫酸の割合、混合液の加熱温度、処理時間等を調整するようにしてもよい。
【0054】
3.反射膜形成工程
酸処理後、図6Dに示すように、蛍光体セラミック板13の下面全体に反射膜23を形成する。この反射膜23は、蛍光体セラミック板13の下面に直接接して、すなわち、保護膜55を除去して蛍光体セラミック板13の下面に直接形成するようにしてもよいし、例えば、保護膜55がSiO膜のように透光性を有する場合には、蛍光体セラミック板13の下面に保護膜55を介して形成するようにしてもよい。なお、図6Dでは、保護膜55が透光性を有するものとして、反射膜23を蛍光体セラミック板13の下面に保護膜55を介して形成している。反射膜23としては、DBR(Distributed Bragg Reflector)膜等の誘電体多層膜、及び/又は、金属膜を用いることができる。反射膜23を構成する膜のうち最も上の膜がDBR膜の一部を構成する誘電体膜である場合、その最上の誘電体膜の屈折率と蛍光体セラミック板13中の蛍光体粒子17の屈折率との間の屈折率を有する膜を保護膜55として設けることが好ましい。なお、酸処理から蛍光体セラミック板13を保護するための保護膜55がSiO膜等、これらの屈折率の条件を満たさない材料の場合、一度保護膜55を除去した後、これらの条件を満たす保護膜55を形成しなおしてもよい。これにより、蛍光体粒子17が蛍光体セラミック板13の下面の一部を構成している場合に、その蛍光体粒子17からの光を保護膜55と最上の誘電体膜との界面で全反射することができる。これにより、蛍光体粒子17から直接的に入射する比較的高角度の光の量を低減させることができるため、そのような保護膜55を設けない場合と比較してDBR膜の積層数を減らすことができる。保護膜55及びDBR膜の最上の誘電体膜の厚さは、反射したい光の波長よりも大きくすることができ、例えば800nm以上とすることができる。保護膜55の厚さをDBR膜の最上の誘電体膜の厚さよりも大きくしてもよい。DBRを構成する誘電体膜の材料としては、Nb、Ta、ZrO又はSiO等が挙げられる。例えば、DBR膜の最上の誘電体膜がSiO膜であり蛍光体粒子17がYAG蛍光体である場合、それらの屈折率の間の屈折率を有する保護膜55の材料としては、Al、MgO又はGaが挙げられる。これらの保護膜55の材料は上記したDBR膜の材料よりも熱伝導率が高いため、これらのいずれかの材料で保護膜55を形成することにより、放熱性の向上という効果も期待できる。また、保護膜55と最上の誘電体膜との界面で全反射させる場合、保護膜55の厚みは、光学シミュレーションによって算出された最適な厚みよりも厚くしてもよい。これにより、それらの膜の界面で全反射が生じない確率を低減させることができると考えられる。
【0055】
4.支持体接合工程
ここでは、蛍光体セラミック板13を下面側から支持する支持体33を、例えば、反射膜23上に接合する。支持体33は、例えば、窒化アルミニウムまたは銅からなる。この支持体33は蛍光体セラミック板13を支持または保護するものであって必要に応じて接合されるものであり、支持体接合工程は任意である。
【0056】
以上のようにして作製された実施形態3の波長変換部材3に、透光性を有するマスク53を介して凸部13aの上面からそれぞれ蛍光体粒子17を励起する光を入射すると、入射光の少なくとも一部は、蛍光体を励起して、励起された蛍光体は、入射光とは異なる波長の光を発し、凸部13aの上面及びマスク53を介して外部に出射される。なお、マスク53は、凹部形成工程S2の後に除去されていてもよい。
以上のようにして、実施形態3の波長変換部材3は、マスク53を介して凸部13aの上面からそれぞれ入射した入射光の少なくとも一部を波長変換した後、凸部13aの上面及びマスク53を介して外部に出射させる。このとき、凸部13aの外周側面にはそれぞれ複数の凹部7が形成されているので、凸部13aの側面では光の出射が抑制されて凸部13aの内部に光を閉じ込めることができ、光出射面6とその外側との間の出射光の輝度差を大きくでき、かつ効率よく波長変換させることができる。
なお、実施形態3の波長変換部材3では、入射光の少なくとも一部を波長変換して出射させ、残りの一部を蛍光体セラミック13内で反射及び/又は散乱させて入射時と同じ波長のまま出射させるようにしてもよく、その場合には、入射光と同じ波長の光と波長変換後の入射光とは異なる波長の光との混色光が出射される。
【0057】
以上のようにして作製された実施形態3の波長変換部材3は、例えば、発光ダイオードや半導体レーザ素子等の励起光源と組み合わせることで、プロジェクター、照明、車両用灯具に用いることができる。また、例えば、支持体33に放熱機能を持たせることにより、光量の大きい光源の波長変換部材3として用いることができる。
【0058】
図6Fは、実施形態3の波長変換部材3を含む応用例の発光装置を模式的に示し、該発光装置は、波長変換部材3と波長変換部材3の凸部13aにレーザ光を照射するレーザダイオードである発光素子80とを含む。図6Fに示す発光装置において、発光素子80から出射されたレーザ光は、凸部13aの上面から入射され、入射光の少なくとも一部は蛍光体によって入射光とは異なる波長の光に変換されて凸部13aの上面から出射される。凸部13aの外周側面は、光の閉じ込めが向上した光反射面4となっているので、凸部13aの外周側面から漏れる光を少なくでき、凸部13aの上面から入射されたレーザ光を効率よく波長変換して、凸部13aの上面から出射させることができる。
【0059】
図6Fには、1つの発光素子80から1つの凸部13aにレーザ光を照射するように図示しているが、例えば、複数の発光素子80を備え、各発光素子80からそれぞれ対応する凸部13aに照射するように構成(構成1)してもよいし、1つの発光素子80により複数の凸部に13aに照射するように構成(構成2)してもよい。
【0060】
具体的には、構成1では、用途に応じて、発光素子80の数と凸部13aの数は異なっていてもよく、1つの発光素子80から2以上の凸部13aにレーザ光を照射するようにしてもよいし、2以上の発光素子80から1つの凸部13aにレーザ光を照射するようにしてもよい。
また、構成2では、用途に応じて、1つの発光素子80のレーザ光を、例えば、光学的に広げて一括して複数の凸部13aに照射するようにしてもよいし、例えば、方向制御が可能なミラー等を用いて、レーザ光を走査して時間的にずらして順次異なる凸部13aに照射するようにしてもよい。
【実験例】
【0061】
実験例として、無機物粒子としてAl粒子を含み、蛍光体粒子としてYAG(Yttrium Aluminum Garnet)蛍光体粒子を含む焼結体を作製し、その焼結体の上面を酸処理した。そして、光を焼結体の下面から入射させたときの、焼結体の上面における光透過率を評価した。
【0062】
具体的には、無機物粒子として、平均粒径が0.5μmの酸化アルミニウム粒子と、蛍光体粒子として、平均粒径が5μmのYAG蛍光体粒子を準備し、酸化アルミニウム粒子とYAG蛍光体粒子を8:2の割合で混合した。
混合は、湿式混合で24時間行った。
【0063】
次に、混合粉体を柱形状に成形した。
成形は、ドクターブレード法を用いてグリーンシートを一次成形した後、一次成形品をカッターを用いて柱形状に二次成形した。
【0064】
次に、成形品を焼結した。
焼結は、1400℃の温度で5時間大気中で常圧焼結法により一次焼結させた後、1400℃の温度で10時間不活性ガス雰囲気でアニール(熱処理)した。
【0065】
焼結後、焼結体を酸処理し、焼結体の上面に複数の凹部を形成した。
酸処理は、燐酸と硫酸が1:3の割合で混合された混合液を180℃に加熱して焼結体を入れ、その後、さらに別の同じ混合液の温度を300℃にしたものへ焼結体を入れ、10分間経過した後、180℃の混合液へ焼結体を入れ、徐々に温度を下げて取り出した。
【0066】
酸処理した焼結体を水洗した後、光を焼結体の下面から入射させ、焼結体の上面における光透過率を測定した。
光透過率は、分光光度計により測定した。
【0067】
また、アニールまで実施例と同様にして作製し、酸処理を行っていない比較例の焼結体を実験例と同様にして光透過率を測定した。
【0068】
その結果、実験例の焼結体の上面の光透過率は、540nmで55%であるのに対して、比較例の焼結体の上面の光透過率は、540nmで60%であった。つまり、実験例の焼結体の上面の光透過率が、比較例の実験例の焼結体の上面の光透過率よりも低くなっており、実験例の焼結体の上面において、比較例と比べて光の閉じ込めが向上していることがわかった。
【0069】
また、実験例と同様にして作製した焼結体11aの光反射面4に反射部材21aを形成したときの断面写真を図7Aに示す。図7Aに示すように、光反射面4における蛍光体粒子17の分布が、焼結体11aの内部における蛍光体粒子17の分布より少ないことが確認された。また、焼結体11aの凹部7に反射部材21aが侵入し、反射部材21aの凸部8が形成されることが確認された。また、図7Bには、光反射面4の形状が理解しやすいように、図7Aから反射部材21aを除いた断面写真を示す。図7Bに示すように、焼結体11aの凹部7と反射部材21aの凸部8の間に空隙9が残っていることが確認された。ここで、反射部材21aは、スリップキャスト法を用い、焼結体11a周辺に反射部材21aとなるスラリーを流し込み、乾燥させたのち、大気雰囲気で1400℃、1時間熱処理をして形成した。
【0070】
これに対して、酸処理を行っていない比較例の焼結体の光反射面に反射部材を形成した場合には、図7Cに示すように、光反射面における蛍光体粒子の分布と、焼結体の内部における蛍光体粒子の分布との間に差はみられなかった。また、実験例で確認されたような反射部材が侵入した凹部は確認されなかった。
【符号の説明】
【0071】
1、2、3 波長変換部材
4 光反射面
5 光入射面
6 光出射面
7 凹部
8 凸部
9 空隙
11、11a 焼結体
12 焼結体(蛍光体セラミック板)
12a 焼結体(凸部)
12b ベース部
13 焼結体(蛍光体セラミック板)
13a 凸部
17 蛍光体粒子
18 ガラス
21、21a、22 反射部材
23 反射膜
33 支持体
53 マスク
55 保護膜
80 発光素子
L4 線
L40 仮想線
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C