(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241218BHJP
G07B 15/06 20110101ALI20241218BHJP
【FI】
G08G1/09 Q
G08G1/09 E
G07B15/06
(21)【出願番号】P 2023549282
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035282
(87)【国際公開番号】W WO2023047563
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】横畑 夕貴
(72)【発明者】
【氏名】森 皓平
(72)【発明者】
【氏名】秦 崇洋
(72)【発明者】
【氏名】尾花 和昭
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111127679(CN,A)
【文献】国際公開第2013/018656(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0258936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 15/06
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両による特定の道路の走行許可を要求する走行要求情報を取得する走行要求取得部と、
前記特定の道路を走行する複数の第2の車両の台数を示す走行車両数を取得する車両数取得部と、
前記走行車両数と、前記特定の道路を走行する適正な車両の台数を示す適正車両数と、に基づいて、
前記特定の道路の区間ごとに走行可否を判定する判定部と、
前記走行可否の判定結果を示す情報を前記第1の車両へ送信する送信部と、
を備え
、
前記区間は、過去の渋滞情報に基づいて分類された渋滞の生じ易さのレベルが切り替わる地点で区切られた区間である
情報処理装置。
【請求項2】
前記走行要求情報は、前記特定の道路における前記第1の車両の走行区間及び走行予定時間帯を示す情報を含み、
前記車両数取得部は、前記走行区間及び前記走行予定時間帯に走行を予定する前記第2の車両の台数を示す走行予定車両数を取得し、
前記判定部は、前記走行予定車両数と、前記適正車両数と、に基づいて、前記走行可否を判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記走行車両数が前記適正車両数以上である場合に、車両ごとに設定された優先度に基づいて、前記特定の道路の走行を終了させる前記第2の車両を特定するか、又は、前記第1の車両を走行不可と判定し、
前記送信部は、前記特定の道路の走行を終了を指示する指示情報を前記判定部によって特定された前記第2の車両へ送信するか、又は、前記走行不可であることを示す前記判定結果を示す情報を前記第1の車両へ送信する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記優先度は、前記特定の道路の走行に対する支払い額に応じて設定される
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
第1の車両による特定の道路の走行許可を要求する走行要求情報を取得する走行要求取得部と、
前記特定の道路を走行する複数の第2の車両の台数を示す走行車両数を取得する車両数取得部と、
前記走行車両数と、前記特定の道路を走行する適正な車両の台数を示す適正車両数と、に基づいて走行可否を判定し、前記走行車両数が前記適正車両数以上である場合には、車両ごとに設定された優先度であって前記特定の道路の走行に対する支払い額に応じて設定される前記優先度に基づいて、前記特定の道路の走行を終了させる前記第2の車両を特定するか、又は、前記第1の車両を走行不可と判定する判定部と、
前記走行可否の判定結果を示す情報を前記第1の車両へ送信し、前記走行車両数が前記適正車両数以上である場合には、前記特定の道路の走行の終了を指示する指示情報を前記判定部によって特定された前記第2の車両へ送信するか、又は、前記走行不可であることを示す前記判定結果を示す情報を前記第1の車両へ送信する送信部と、
を備え、
前記送信部
は、前記指示情報を前記第2の車両へ送信する前に、又は、前記走行不可であることを示す前記判定結果を示す情報を前記第1の車両へ送信する前に、前記支払い額を増額するか否かを問い合わせる情報を、前記第2の車両又は前記第1の車両へ送信す
る
情報処理装置。
【請求項6】
前記送信部は、前記特定の道路の走行を終了する場合に得られる報奨額を示す情報を前記第2の車両へ送信する
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、第1の車両による特定の道路の走行許可を要求する走行要求情報を取得する走行要求取得ステップと、
コンピュータが、前記特定の道路を走行する複数の第2の車両の台数を示す走行車両数を取得する車両数取得ステップと、
コンピュータが、前記走行車両数と、前記特定の道路を走行する適正な車両の台数を示す適正車両数と、に基づいて、
前記特定の道路の区間ごとに走行可否を判定する判定ステップと、
コンピュータが、前記走行可否の判定結果を示す情報を前記第1の車両へ送信する送信ステップと、
を有
し、
前記区間は、過去の渋滞情報に基づいて分類された渋滞の生じ易さのレベルが切り替わる地点で区切られた区間である
情報処理方法。
【請求項8】
請求項1から6のうちいずれか一項の情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を始めとする多様なモビリティは、技術の進化とともに、人々の暮らしに豊かさをもたらしてきた。その一方で、少子高齢化・都市部人口集中等の社会構造の変化を背景に、道路交通をめぐる様々な社会的課題の深刻化も懸念されている。道路交通をめぐる社会的課題とは、例えば、高齢者が関わる交通事故の増加、地方過疎化による公共交通の減便及び廃止、高齢者免許返納等による移動弱者の増加、都市部の渋滞及び混雑に伴う経済損失及び環境問題、及びeコマース拡大に伴う物流需要の増大による物流業の担い手不足等である。
【0003】
このような社会的課題を背景に、自動車メーカーを中心としたコネクティッドカーサービスの高度化、及びマルチモーダルMaaS(Mobility as a Service)の実現等に向けた研究開発ならびに実証実験が進んでいる。とくに日本では、例えば産学官共同で取り組むべき共通分野(協調領域)等における研究開発が推進されている。コネクティッドカー及び自動運転機能の高度化に伴って、これらの技術を支える通信ネットワークも重要不可欠なインフラとなりつつある。
【0004】
また、近年、ICT(Information and Communication Technology)の目覚ましい発展によって、膨大なIoT(Internet of Things)データの収集及び分析が可能になりつつある。これに伴い、政府及び様々な企業が、例えばSociety 5.0等で提唱されているような、サイバー空間とフィジカル空間とが高度に融合された情報システムの実用化を目指して研究開発に取り組んでいる。しかしながら、サイバー空間とフィジカル空間との融合において、すでに統計化されているデータ、あるいは、位置又は時刻の情報に互いにズレがあるデータどうしを掛け合わせても、実世界における現象の把握及び未来予測の精度が必ずしも高まらないことがある。
【0005】
このような課題の解決に向けて、ヒト・モノ・コトに関する様々なセンシングデータをリアルタイムに収集し、「緯度、経度、高度、及び時刻」からなる4次元の情報を高い精度で一致させ、統合されたセンシングデータと多様な産業基盤とのデータ融合、及び未来予測に資するデータの提供を可能にするシステム基盤の構築が進められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“高速道路機構海外調査シリーズ連続講座 「欧米のロードプライシング」”, [online], 高速道路機構海外調査シリーズ No.9, 独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構, pp.21-25, 2010年1月, [令和3年7月30日検索], インターネット<URL:https://www.jehdra.go.jp/pdf/research/r079.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、前述の都市部の渋滞及び混雑という社会的課題に対し、通常の走行車線(以下、「一般車線」という。」)とは別に、所定の利用料金を支払った者だけが優先的に利用できる走行車線(以下、「優先車線」という。)を設け、優先車線の利用料金を一般車線の利用料金より高額に設定することで、少なくとも優先車線における渋滞及び混雑を緩和させることを目的とした有料道路制度が実現されている(非特許文献1参照)。これにより、目的地へより早く到着したい利用者は、優先車線を利用することによって渋滞及び混雑を回避することができる場合がある。
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載の有料道路制度では、所定の利用料金を支払えば誰もが優先車線を利用することできる。そのため、もし優先車線を走行する車両が適正な台数の上限を超過している場合には、結局は渋滞及び混雑が緩和されない。これにより、利用者は、優先車線を利用しても渋滞及び混雑を回避することができないことがあるという課題があった。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、利用者に渋滞又は混雑を回避させることができる情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、第1の車両による特定の道路の走行許可を要求する走行要求情報を取得する走行要求取得部と、前記特定の道路を走行する複数の第2の車両の台数を示す走行車両数を取得する車両数取得部と、前記走行車両数と、前記特定の道路を走行する適正な車両の台数を示す適正車両数と、に基づいて、走行可否を判定する判定部と、前記走行可否の判定結果を示す情報を前記第1の車両へ送信する送信部と、を備える情報処理装置である。
【0011】
また、本発明の一態様は、第1の車両による特定の道路の走行許可を要求する走行要求情報を取得する走行要求取得ステップと、前記特定の道路を走行する複数の第2の車両の台数を示す走行車両数を取得する車両数取得ステップと、前記走行車両数と、前記特定の道路を走行する適正な車両の台数を示す適正車両数と、に基づいて、走行可否を判定する判定ステップと、前記走行可否の判定結果を示す情報を前記第1の車両へ送信する送信ステップと、を有する情報処理方法である。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記の情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、利用者に渋滞又は混雑を回避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態における走行車線調整システム1の全体構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態における走行車線調整装置10の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における車両管理テーブルT1の構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態における車両20の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態における走行車線調整装置10の動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施形態における走行車線調整装置10の動作を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第3の実施形態における走行車線調整装置10の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態における走行車線調整システムについて説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における走行車線調整システム1の全体構成図である。
【0017】
走行車線調整システム1は、一般車線と優先車線とを有する道路を走行する車両を利用する複数の利用者からの要求に応じて、優先車線の利用を許可する車両を調整するための情報システムである。ここでいう利用者とは、例えば車両の搭乗者である。
図1に示されるように、走行車線調整システム1は、走行車線調整装置10と、複数の車両20と、通信ネットワーク30と、を含んで構成される。
【0018】
走行車線調整装置10は、例えば汎用コンピュータ等の情報処理装置を含んで構成される。走行車線調整装置10は、例えば、走行車線調整システム1による走行車線調整サービスを提供する事業者によって管理される情報処理装置である。走行車線調整装置10は、通信ネットワーク30を介して車両20と互いに情報の送受信を行うことができる。
【0019】
走行車線調整装置10は、一般車線GLと優先車線PLとを有する道路を走行する車両20の位置を示す位置情報を、各車両20からそれぞれ取得する。走行車線調整装置10は、取得された位置情報に基づいて、道路の区間ごと及び走行車線の種類ごと(すなわち、一般車線GL及び優先車線PLごと)に、実際に走行中の車両の台数(以下、「実走行車両数」という。)を集計する。
【0020】
また、走行車線調整装置10は、利用者からの優先車線PLの利用希望を示す情報(以下、「優先車線走行要求」という。)を、車両20から取得する。走行車線調整装置10は、予め定められた、優先車線PLの適正な走行車両の台数の上限(以下、「適正最大走行車両数」という。)と、上記の実走行車両数とに基づいて、車両20からの優先車線走行要求に対し、優先車線PLの走行を許可するか又は許可しないかの判定を行う。なお、ここでいう適正な走行車両の台数とは、例えば優先車線PLに渋滞又は混雑が発生しない範囲となる台数である。
【0021】
走行車線調整装置10は、優先車線走行要求を送信した車両20に対して、優先車線PLの走行を許可することを示す情報(以下、「優先車線走行許可」という。)、又は、優先車線PLの走行を許可しないことを示す情報(以下、「優先車線走行不許可」という。)を送信する。
【0022】
なお、走行車線調整装置10は、その他の情報を車両20へ送信することもある。例えば、走行車線調整装置10は、優先車線PLを走行中の車両20に対して、一般車線GLへ車線変更させて優先車線PLの利用を他の車両20へ強制的に譲渡させるための指示を示す情報(以下、「優先車線譲渡指示」という。)を送信することがある。また、例えば、走行車線調整装置10は、優先車線PLを走行中の車両20に対して、一般車線GLへ車線変更して優先車線PLの利用を他の車両20へ譲渡するか否かを問い合わせるための情報(以下、「優先車線譲渡問合せ」という。)を送信することがある。また、例えば、走行車線調整装置10は、車両20に対して、優先車線PLを利用するためにより多くの利用料金を支払うか否かを問い合わせるための情報(以下、「支払額増額問合せ」という。)を送信することがある。
【0023】
車両20は、一般車線と優先車線とを有する道路を走行する車両である。車両20は、例えば、乗用車、商用車(例えば、トラック及びダンプカー等)、及び乗合自動車(例えば、バス及びタクシー等)である。
【0024】
車両20には、各種の情報処理装置(不図示)が備えられている。車両20は、当該情報処理装置及び通信ネットワーク30を介して、走行車線調整装置10と互いに情報の送受信を行うことができる。車両20は、自己位置を示す情報を走行車線調整装置10へ送信する。また、車両20は、上記の優先車線走行要求を走行車線調整装置10へ送信する。また、車両20は、上記の、優先車線走行許可、優先車線走行不許可、優先車線譲渡指示、優先車線譲渡問合せ、及び支払額増額問合せ等を、走行車線調整装置10から受信することがある。
【0025】
通信ネットワーク30は、無線及び有線の通信路によって構成される。例えば、通信ネットワーク30は、走行車線調整装置10側は有線の通信路であり、車両20側は無線の通信路である。通信ネットワーク30は、例えばインターネットを含んで構成される。
【0026】
[走行車線調整装置の構成]
以下、走行車線調整装置10の構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態における走行車線調整装置10の機能構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、走行車線調整装置10は、受信部110と、適正車両数管理部120と、地図情報記憶部121と、適正車両数記憶部122と、車両情報管理部130と、車両情報記憶部131と、判定部140と、送信部150と、を含んで構成される。
【0027】
受信部110は、車両20から送信される各種の情報を通信ネットワーク30を介して受信する通信インターフェースを含んで構成される。例えば、受信部110は、車両20の位置情報、及び優先車線走行要求等を受信し、適正車両数管理部120又は車両情報管理部130に振り分ける。
【0028】
適正車両数管理部120は、予め定められた、道路の特定区間ごとの優先車線PLの適正最大走行車両数を適正車両数記憶部122から取得する。なお、適正車両数管理部120は、地図情報記憶部121から地図情報を取得し、取得された地図情報に基づいて道路を複数の特定区間に区分けし、区分けされた特定区間ごとの優先車線PLの適正最大走行車両数を、所定の算出条件に基づいて自ら算出するようにしてもよい。
【0029】
なお、区間は、例えば一定距離ごとに道路が区分けされることによって設定される。または、区間は、例えば過去の渋滞情報に基づいて、道路の場所ごとに渋滞の生じ易さをレベル分けし(例えば、5段階のいずれかのレベルに振り分け)、レベルが切り替わる地点を区間が変わる地点とするように設定されてもよい。この場合、例えば過去の渋滞情報は、内部又は外部の図示しないデータベースに記憶されている。このように、過去の渋滞情報に基づいて道路が区分けされる場合、とくに渋滞が生じ易い区間において本発明を集中して適用することによって、効率的にユーザの利便性を叶えることができる。
【0030】
地図情報記憶部121は、地図情報を予め記憶する。地図情報には、優先車線PLを含む道路の地図が含まれる。地図情報記憶部121は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory;読み書き可能なメモリ)、ROM(Read Only Memory;読み出し専用メモリ)等の記憶媒体、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0031】
適正車両数記憶部122は、道路の特定区間ごとの優先車線PLの適正最大走行車両数を示す情報を予め記憶する。適正車両数記憶部122は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、RAM、ROM等の記憶媒体、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0032】
車両情報管理部130は、受信部110によって受信された、車両20ごとの位置情報及び車両20に関する情報を取得する。車両20に関する情報には、車両20を識別する車両ID(Identifier)及び通行条件を示す情報が含まれる。車両情報管理部130は、車両20ごとの位置情報及び車両20に関する情報に基づいて車両情報を生成し、生成された車両情報を車両情報記憶部131に記憶された車両管理テーブルT1に記録する。
【0033】
以下、車両情報記憶部131に記憶された車両管理テーブルT1の一例について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態における車両管理テーブルT1の構成の一例を示す図である。
図3に示される車両管理テーブルT1は、ある特定区間における車両情報のリストを表している。
図3に示されるように、車両管理テーブルT1は、「車両ID」の項目の値と、「車線」の項目の値と、「通行条件」の項目の値とが互いに対応付けられた表形式のデータである。
【0034】
車両管理テーブルT1において、「車両ID」の項目には、ある特定区間を走行中の車両20を示す車両IDが格納されている。また、「車線」の項目には、ある特定区間において車両20が走行している車線の種類を示す情報が格納されている。また、「通行条件」の項目には、各車両20間で優劣(すなわち、優先車線PLを走行するための優先度)を比較可能な情報が格納されている。
【0035】
第1の実施形態では、通行条件は、各利用者がそれぞれ提示する、優先車線PLの利用料金の希望支払い額である。但し、通行条件は、金額に限られるものではない。例えば、通行条件は、例えばAランク、Bランク、Cランク等の、所定の段階に分けられたランク情報でもよい。この場合、例えばランク情報は、優先車線PLの利用料金の希望支払い額に基づいてランク分けされた情報であってもよい。また、例えばランク情報は、障害者であるか否か、又は車両20の乗車人数等の搭乗者に関する情報に基づいてランク分けされた情報であってもよい。また、例えばランク情報は、乗用車、商用車、乗合自動車(バス及びタクシー等)、緊急車両(消防車及び救急車等)といった車両の種別に基づいてランク分けされた情報であってもよい。なお、ランク情報は、上記の情報が組み合わされた情報であってもよい。
【0036】
なお、通行条件は、例えば利用者が任意に提示可能な上記の希望支払い額のように、利用者が任意に設定可能な条件であるほど、より柔軟かつ利用者のニーズにあった走行車線の調整が可能になる。
【0037】
車両情報管理部130は、車両20の位置情報を車線単位で把握し、道路の区間ごと及び走行車線ごとに、実際に走行中の車両の台数である実走行車両数を管理する。
【0038】
車両情報記憶部131は、車両管理テーブルT1を記憶する。車両情報記憶部131は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、RAM、ROM等の記憶媒体、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0039】
判定部140は、適正車両数管理部120から、ある区間の適正最大走行車両数を示す情報を取得する。また、判定部140は、車両情報管理部130から、当該区間の実走行車両数を取得する。判定部140は、取得された適正最大走行車両数と実走行車両数とに基づいて、優先車線走行要求を送信した車両20に対して優先車線PLの走行を許可するか否かを判定する。
【0040】
例えば、判定部140、適正車両数管理部120、及び車両情報管理部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを用いて構成される。
【0041】
送信部150は、各種の情報を通信ネットワーク30を介して車両20へ送信する通信インターフェースを含んで構成される。なお、送信部150と受信部110とは、送受信部として1つのハードウェアによって構成される機能部であってもよい。
【0042】
送信部150は、判定部140によって優先車線PLの走行を許可すると判定された車両20に対して優先車線走行許可を送信する。また、送信部150は、判定部140によって優先車線PLの走行を許可しないと判定された車両20に対して優先車線走行不許可を送信する。なお、優先車両走行許可ないし優先車両走行不許可の通知を受信した車両20が自動走行車両の場合には、車両20は、優先車線PLへの進路変更を行う。車両20が自動走行車両でない場合には、車両20は、情報制御部230を通じて運転者に通知内容を通知する。
【0043】
また、送信部150は、判定部140による判定の結果に基づいて、上記の、優先車線譲渡指示、優先車線譲渡問合せ、及び支払額増額問合せを車両20へ送信することもある。
【0044】
[車両の構成]
以下、車両20の構成について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態における車両20の機能構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、車両20は、通信部210と、自己位置取得部220と、情報制御部230と、車両制御部240と、を含んで構成される。
【0045】
通信部210は、各種の情報を通信ネットワーク30を介して走行車線調整装置10へ送信し、走行車線調整装置10から送信された各種の情報を通信ネットワーク30を介して受信する通信インターフェースを含んで構成される。
【0046】
自己位置取得部220は、車両20の自己位置を示す情報を取得する。自己位置取得部220は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機等の、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を含んで構成される。なお、自己位置取得部220は、GNSS以外の測位システムによって測位された自己位置を示す情報を取得してもよい。例えば、自己位置取得部220は、LiDAR(Light Detection and Ranging, Laser Imaging Detection and Ranging)、又は、他の車両20との位置関係に基づく測位手法等によって測位された自己位置を示す情報を取得してもよい。
【0047】
自己位置取得部220は、自己位置を示す情報を通信部210を介して走行車線調整装置10へ送信する。なお、自己位置を示す情報は、車両20に備えられたカーナビゲーションシステム(不図示)等から通信部210を介して自動的に走行車線調整装置10へ送信されるような構成であってもよい。
【0048】
情報制御部230は、主に、車両20の搭乗者とのコミュニケーションを制御する機能を有する。情報制御部230は、UI(User Interface)によって搭乗者による操作入力を受け付け、車両20の各種の制御を行う。また、情報制御部230は、各種の情報を通信部210を介して走行車線調整装置10へ送信する。また、情報制御部230は、走行車線調整装置10に送信から送信された各種の情報を通信部210を介して取得し、取得された情報に応じて各種の処理を行う。
【0049】
車両制御部240は、車両20の走行を制御する機能を有する。なお、車両制御部240は、搭乗者による操作入力に基づく指示、又は、自動運転の場合には、自動運転制御システム(不図示)から入力される自動運転制御命令等に従って、車両20の走行を制御する。
【0050】
なお、
図4は、車両20に備えられた情報処理装置の機能部の一部が図示されたものであり、例えばエンジン及びトランスミッション等の車両20の走行そのものに関する構成等については、記載を省略している。
【0051】
[走行車線調整装置の動作]
以下、走行車線調整装置10の動作の一例について説明する。第1の実施形態における走行車線調整装置10は、一般車線GLを走行中の車両20から送信された優先車線走行要求を受信し、即時、当該車両20による優先車線PLの走行を許可するか否かを判定する。
【0052】
なお、ここでは、走行車線調整装置10が、利用者の希望支払い金額に基づいて車両20による優先車線PLの走行を許可するか否かを判定構成であるが、これに限られるものではない。走行車線調整装置10は、各車両20間で優劣を比較可能な情報であるならば、希望支払い金額以外の情報に基づいて判定を行うようにしてもよい。
【0053】
図5は、本発明の第1の実施形態における走行車線調整装置10の動作を示すフローチャートである。
【0054】
走行車線調整装置10の受信部110は、車両20から送信される優先車線走行要求の受信を待ち受ける(ステップS101)。第1の実施形態では、優先車線走行要求には、少なくとも、優先車線走行要求を送信した車両20の車両IDと、優先車線PLの利用料金の希望支払い額を示す情報とが含まれる。
【0055】
受信部110が優先車線走行要求を受信した場合(ステップS101・YES)、判定部140は、上記優先車線走行要求のあった区間に該当する適正最大走行車両数を適正車両数管理部120から、及び、上記優先車線走行要求のあった区間に該当する実走行車両数を車両情報管理部130からそれぞれ取得し、両者の値を比較する(ステップS102)。なお、ここでは、優先車線走行要求を送信した車両20を「車両A」という。
【0056】
上記比較の結果、適正最大走行車両数が実走行車両数より多い場合(ステップS102・YES)、送信部150は、優先車線走行許可を車両Aへ送信する(ステップS111)。この場合、
図5のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0057】
一方、上記比較の結果、実走行車両数が適正最大走行車両数以上である場合(ステップS102・NO)、判定部140は、車両Aの利用者の希望支払い額(すなわち、優先車線走行要求に含まれる希望支払い額)が、優先車線走行要求のあった区間を走行中のいずれの車両20の利用者の希望支払い額よりも低いか否かを判定する(ステップS103)。
【0058】
なお、希望支払い額は、道路の区間ごとに標準額が固定で定められていてもよいし、時間又は曜日等によってする金額であってもよい。また、利用者が、希望支払い額を入力するようにしてもよい。
【0059】
車両Aの利用者の希望支払い額が、優先車線走行要求のあった区間を走行中のいずれの車両20の利用者の希望支払い額よりも低い場合(ステップS103・YES)、送信部150は、優先車線PLを利用するためにより多くの希望支払い額を提示するか否かを問い合わせる支払額増額問合せを、車両Aへ送信する(ステップS104)。ここで、より多くの希望支払い額とは、優先車線走行要求のあった区間を走行中の車両20の中で最も低い希望支払い額より多い金額である。
【0060】
車両Aから希望支払い額を増額しないことを示す応答があった場合、又は、車両Aから支払額増額問合せに対する応答が無い場合(例えば、所定の時間が経過しても応答が無かった場合)(ステップS105・NO)、送信部150は、優先車線走行不許可を車両Aへ送信する(ステップS106)。この場合、
図5のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0061】
一方、車両Aから希望支払い額を増額することを示す応答があった場合、判定部140は、優先車線走行要求のあった区間を走行中の車両20の中で最も低い希望支払い額を提示している車両20(以下、「車両B」という。)を特定する(ステップS107)。
【0062】
送信部150は、優先車線PLを利用するためにより多くの希望支払い額を提示するか否かを問い合わせるを支払額増額問合せを、車両Bへ送信する(ステップS108)。ここで、より多くの希望支払い額とは、車両A及び優先車線走行要求のあった区間を走行中の他の車両20の中で最も低い希望支払い額より多い金額である。
【0063】
車両Bから希望支払い額を増額しないことを示す応答があった場合、又は、車両Bから支払額増額問合せに対する応答が無い場合(例えば、所定の時間が経過しても応答が無かった場合)(ステップS109・NO)、送信部150は、車両Bを一般車線GLへ車線変更させて優先車線PLの利用を車両Aへ譲渡させるための指示を示す優先車線譲渡指示を、車両Bへ送信する(ステップS110)。また、送信部150は、優先車線走行許可を車両Aへ送信する(ステップS111)。この場合、
図5のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0064】
一方、車両Bから希望支払い額を増額することを示す応答があった場合(ステップS109・YES)、送信部150は、優先車線走行不許可を車両Aへ送信する(ステップS106)。なお、この場合、送信部150は、さらに支払額増額問合せを車両Aへ送信して車両Aの利用者に希望支払い額の増額を打診し、車両Aの利用者と車両Bの利用者との間でオークション形式による優先車線の利用調整を行うようにしてもよい。なお、オークション形式の場合、走行車線調整装置10は、例えば、所定の時間が経過した時点で、又は、所定の希望支払い額の上限に達した時点で、優先車線の利用調整を終了するようにしてもよい。以上で、
図5のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0065】
なお、第1の実施形態では、走行車線調整装置10は、一般車線GL及び優先車線PLの2種類の走行車線に対して調整を行うものとしたが、優先度が段階的に異なる3種類以上の走行車線に対して調整を行うようにしてもよい。この場合、例えば、走行車線の料金を段階的に異なるように設定し、より優先度の高い車線ほど利用料金をより高額にするように設定してもよい。このようにすることで、各車線における渋滞及び混雑度合に変化を持たせることができ、柔軟な道路運営が可能になる。
【0066】
なお、優先車線PLの利用を開始後、すぐに優先車線譲渡指示を受けた車両20に対しては、例えば、支払い額の一部が返金されるようにしてもよい。
【0067】
なお、渋滞又は混雑の発生時にのみ優先車線PLが設けられるようにし、渋滞又は混雑の発生していない時には全ての走行車線が一般車線GLであるようにしてもよい。
【0068】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態における走行車線調整装置10は、優先車線PLにおいて実際に走行中の車両20の台数が、優先車線PLにおける適正な車両20の台数の上限以上である状態であるときに、希望支払い額に応じて、優先車線走行要求を却下、又は、優先車線PLにおいて実際に走行中の車両20のいずれかと優先車線走行要求を送信した車両20との入れ替えを行う。このような構成を備えることで、本発明の第1の実施形態における走行車線調整装置10は、優先車線PLを走行する車両20の台数を常に適性な台数の範囲内に納めることができるため、優先車線PLを利用する利用者に渋滞及び混雑を回避させることができる。
【0069】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。前述の第1の実施形態では、走行車線調整装置10は、道路の特定区間を走行中の複数の車両20の間において、優先車線PLの走行を許可する車両20の調整を即時に行う構成であった。
【0070】
一方、以下に説明する第2の実施形態における走行車線調整装置10は、道路の特定区間の走行を予定している複数の車両20の間において、優先車線PLの走行の予約を許可する車両20の調整を行う構成である。
【0071】
なお、第2の実施形態における走行車線調整システム1の全体構成、走行車線調整装置10の構成、及び車両20の構成は、それぞれ
図1~3を参照しながら説明した第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
[走行車線調整装置の動作]
以下、走行車線調整装置10の動作の一例について説明する。なお、ここでは、走行車線調整装置10が、利用者の希望支払い金額に基づいて車両20による優先車線PLの走行を許可するか否かを判定構成であるが、これに限られるものではない。走行車線調整装置10は、各車両20間で優劣を比較可能な情報であるならば、希望支払い金額以外の情報に基づいて判定を行うようにしてもよい。
【0073】
図6は、本発明の第2の実施形態における走行車線調整装置10の動作を示すフローチャートである。
【0074】
走行車線調整装置10の受信部110は、車両20から送信される、利用者からの優先車線PLの利用予約を示す情報(以下、「優先車線走行予約」という。)の受信を待ち受ける(ステップS201)。第2の実施形態では、優先車線走行予約には、少なくとも、優先車線走行要求を送信した車両20の車両IDと、優先車線PLの利用料金の希望支払い額を示す情報と、優先車線PLの走行を希望する区間を示す情報と、優先車線PLの走行を希望する時間帯を示す情報と、が含まれる。
【0075】
なお、優先車線PLの走行を希望する時間帯を示す情報の代わりに、優先車線PLの走行を希望する時刻を示す情報が用いられてもよい。但し、例えば18時から19時までといったような、時間帯を示す情報が用いられたほうが、将来の優先車線PLの利用状況をより精度高くシミュレーションすることが可能になるため、将来の不明確な道路交通事情及び搭乗者の個別事情等に対してより柔軟に対応することができるという効果がある。
【0076】
受信部110が優先車線走行予約を受信した場合(ステップS201・YES)、判定部140は、上記優先車線走行予約のあった区間に該当する適正最大走行車両数を適正車両数管理部120から、及び、上記優先車線走行予約のあった区間に該当する予約走行車両数を車両情報管理部130からそれぞれ取得し、両者の値を比較する(ステップS202)。ここでいう予約走行車両数とは、特定の区間の特定の時間帯における、優先車線PLの走行の予約が受理されている車両20の台数である。なお、ここでは、優先車線走行予約を送信した車両20を「車両C」という。
【0077】
上記比較の結果、適正最大走行車両数が予約走行車両数より多い場合(ステップS202・YES)、送信部150は、優先車線走行予約受理を車両Cへ送信する(ステップS211)。ここでいう優先車線走行予約受理とは、優先車線走行予約を送信した車両20に対して、優先車線PLの走行の予約を受理することを示す情報である。この場合、
図6のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0078】
一方、上記比較の結果、予約走行車両数が適正最大走行車両数以上である場合(ステップS202・NO)、判定部140は、車両Cの利用者の希望支払い額(すなわち、優先車線走行予約に含まれる希望支払い額)が、優先車線走行予約のあった区間を走行中のいずれの車両20の利用者の希望支払い額よりも低いか否かを判定する(ステップS203)。
【0079】
なお、希望支払い額は、道路の区間ごとに標準額が固定で定められていてもよいし、時間又は曜日等によってする金額であってもよい。また、利用者が、希望支払い額を入力するようにしてもよい。
【0080】
車両Cの利用者の希望支払い額が、優先車線走行要求のあった区間を走行中のいずれの車両20の利用者の希望支払い額よりも低い場合(ステップS203・YES)、送信部150は、優先車線PLを利用するためにより多くの希望支払い額を提示するか否かを問い合わせるを支払額増額問合せを、車両Cへ送信する(ステップS204)。ここで、より多くの希望支払い額とは、優先車線走行予約のあった区間を走行中の車両20の中で最も低い希望支払い額より多い金額である。
【0081】
車両Cから希望支払い額を増額しないことを示す応答があった場合、又は、車両Cから支払額増額問合せに対する応答が無い場合(例えば、所定の時間が経過しても応答が無かった場合)(ステップS205・NO)、送信部150は、優先車線走行予約却下を車両Cへ送信する(ステップS206)。ここでいう優先車線走行予約却下とは、優先車線走行予約を送信した車両20に対して、優先車線PLの走行の予約を却下することを示す情報である。この場合、
図6のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0082】
一方、車両Cから希望支払い額を増額することを示す応答があった場合、判定部140は、優先車線走行要求のあった区間を走行中の車両20の中で最も低い希望支払い額を提示している車両20(以下、「車両D」という。)を特定する(ステップS207)。
【0083】
送信部150は、優先車線PLを利用するためにより多くの希望支払い額を提示するか否かを問い合わせる支払額増額問合せを、車両Dへ送信する(ステップS208)。ここで、より多くの希望支払い額とは、車両C及び優先車線走行要求のあった区間を走行中の他の車両20の中で最も低い希望支払い額より多い金額である。
【0084】
車両Dから希望支払い額を増額しないことを示す応答があった場合、又は、車両Bから支払額増額問合せに対する応答が無い場合(例えば、所定の時間が経過しても応答が無かった場合)(ステップS209・NO)、送信部150は、車両Bを一般車線GLの優先車線PLの利用予約を取り消すことを示す優先車線予約取消を、車両Dへ送信する(ステップS210)。また、送信部150は、優先車線走行予約受理を車両Cへ送信する(ステップS211)。この場合、
図6のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0085】
一方、車両Bから希望支払い額を増額することを示す応答があった場合(ステップS209・YES)、送信部150は、優先車線走行予約却下を車両Cへ送信する(ステップS206)。なお、この場合、送信部150は、さらに支払額増額問合せを車両Cへ送信して車両Cの利用者に希望支払い額の増額を打診し、車両Cの利用者と車両Dの利用者との間でオークション形式による優先車線の利用調整を行うようにしてもよい。以上で、
図6のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0086】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態における走行車線調整装置10は、優先車線PLの走行を予約している車両20の台数が、優先車線PLにおける適正な車両20の台数の上限以上である状態であるときに、希望支払い額に応じて、優先車線走行予約を却下、又は、優先車線PLの走行を予約済みの車両20の予約を取り消し、新たな車両20の優先車線走行予約を受理する。このような構成を備えることで、本発明の第2の実施形態における走行車線調整装置10は、予約された時間帯に優先車線PLを走行する車両20の台数を適性な台数の範囲内に納めるよう制御することができるため、優先車線PLを利用する利用者に渋滞及び混雑を回避させることができる。
【0087】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。前述の第1の実施形態では、走行車線調整装置10は、優先車線PLを走行する車両20の台数が常に適性な台数の範囲内に納まるように制御し、優先車線PLにおける渋滞及び混雑の発生を回避させる構成であった。
【0088】
一方、以下に説明する第3の実施形態における走行車線調整装置10は、例えば優先車線PLが渋滞又は混雑しているような場合でも、優先車線PLを走行中の複数の車両20に対して優先車線PLの利用を譲渡するように促すことで、特定の車両20が優先的に優先車線PLを利用することができるように調整を行う構成である。また、第3の実施形態における走行車線調整装置10は、優先車線PLの利用の譲渡を促進するため、優先車線PLの利用を譲渡する車両20に対して報奨を与える仕組みを有する。
【0089】
なお、第3の実施形態における走行車線調整システム1の全体構成、走行車線調整装置10の構成、及び車両20の構成は、それぞれ
図1~3を参照しながら説明した第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0090】
[走行車線調整装置の動作]
以下、走行車線調整装置10の動作の一例について説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態における走行車線調整装置10の動作を示すフローチャートである。
【0091】
走行車線調整装置10の受信部110は、車両20から送信される優先車線走行要求の受信を待ち受ける(ステップS301)。第3の実施形態では、優先車線走行要求には、少なくとも、優先車線走行要求を送信した車両20の車両IDと、優先車線PLの利用料金の希望支払い額と、優先車線PLの走行を譲渡して欲しい車両20の台数(すなわち、優先車線PLから一般車線GL車線変更して欲しい車両20の台数)と、を示す情報とが含まれる。
【0092】
受信部110が優先車線走行要求を受信した場合(ステップS101・YES)、判定部140は、上記優先車線走行要求のあった区間に該当する適正最大走行車両数を適正車両数管理部120から、及び、上記優先車線走行要求のあった区間に該当する実走行車両数を車両情報管理部130からそれぞれ取得し、両者の値を比較する(ステップS102)。なお、ここでは、優先車線走行要求を送信した車両20を「車両E」という。
【0093】
なお、優先車線走行要求に含まれる、優先車線PLの走行を譲渡して欲しい車両20の台数は、例えば、車両Eの搭乗者によって直接入力される構成であってもよい。または、優先車線PLの走行を譲渡して欲しい車両20の台数は、例えば、緩和したい渋滞の度合い(例えば、強、中、弱)が車両Eの搭乗者によって指定され、走行車線調整装置10の車両情報管理部130が、当該度合いを所定のルールに基づいて、譲渡させる車両20の台数に変換する構成であってもよい。または、優先車線PLの走行を譲渡して欲しい車両20の台数は、例えば、特定の区間を通過するための所望の所要時間(例えば、15分以内に通過等)が車両Eの搭乗者によって指定され、走行車線調整装置10の車両情報管理部130が、当該所要時間を所定のルールに基づいて、譲渡させる車両20の台数に変換する構成であってもよい。
【0094】
上記比較の結果、適正最大走行車両数が実走行車両数より多い場合(ステップS302・YES)、
図7のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0095】
一方、上記比較の結果、実走行車両数が適正最大走行車両数以上である場合(ステップS302・NO)、判定部140は、車両Eの利用者の希望支払い額(すなわち、優先車線走行要求に含まれる希望支払い額)が、優先車線走行要求のあった区間を走行中の車両20のうち、譲渡を促したい車両20の台数分の希望支払い額の合計よりも低いか否かを判定する(ステップS303)。
【0096】
なお、希望支払い額は、道路の区間ごとに標準額が固定で定められていてもよいし、時間又は曜日等によってする金額であってもよい。また、利用者が、希望支払い額を入力するようにしてもよい。
【0097】
車両Eの利用者の希望支払い額が、譲渡を促したい車両20の台数分の希望支払い額の合計よりも低い場合(ステップS303・YES)、送信部150は、優先車線PLを利用するためにより多くの希望支払い額を提示するか否かを問い合わせる支払額増額問合せを、車両Eへ送信する(ステップS304)。ここで、より多くの希望支払い額とは、優先車線走行要求のあった区間を走行中の、譲渡を促したい車両20の台数分の希望支払い額の合計より多い金額である。
【0098】
車両Eから希望支払い額を増額しないことを示す応答があった場合、又は、車両Aから支払額増額問合せに対する応答が無い場合(例えば、所定の時間が経過しても応答が無かった場合)(ステップS305・NO)、
図7のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0099】
一方、車両Eから希望支払い額を増額することを示す応答があった場合、判定部140は、車両Eの利用者の希望支払い額と、譲渡を促したい車両20の台数と、譲渡を促したい車両20の利用者の希望支払い額の合計とから、譲渡を促したい車両20の利用者に分配可能な金額(以下、「分配可能額」という。)を算出する(ステップS306)。
【0100】
送信部150は、分配可能額を示す情報とともに優先車線譲渡問合せを、譲渡を促したい車両20へ送信する(ステップS307)。以上で、
図7のフローチャートが示す走行車線調整装置10の動作が終了する。
【0101】
以下、簡単な具体例を挙げる。例えば、車両Eの利用者は、3台の車両20の譲渡を促したい場合、全ての車両20の利用者が譲渡に応じるとは限らないことから、10台の車両20の利用者に対して譲渡を促す。また、例えば、車両Eの利用者の希望支払い額を1000円とした場合、走行車線調整システム1の運営者側で分配手数料として固定額、例えば100円が差し引かれ、残りの900円が10台の車両20に対する分配可能額として提示される。この場合、900円が10台に分配されるため、譲渡を促される車両20の利用者1人当たりの報奨金は90円となる。
【0102】
なお、ここでは譲渡を促される全ての車両20の利用者に対して均等に報奨金が分配されるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、譲渡を促されるの車両20の各々が優先車線GLを利用するためのそれぞれ支払い額に比例して、報奨金が分配されるようにしてもよい。また、走行車線調整システム1の運営者側において分配手数料が差し引かれないようにしてもよい。
【0103】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態における走行車線調整装置10は、特定の車両20の利用者が、優先車線PLを走行中である複数の他の車両20に対して一般車線GLへの車線変更を促した上で、優先車線PLを走行することを希望する場合において、特定の車両20の利用者による希望支払い額に基づく金額を優先車線PLを走行中である複数の他の車両20に対して報奨金として分配する。これにより、一般車線GLへの車線変更が促進される。このような構成を備えることで、本発明の第3の実施形態における走行車線調整装置10は、優先車線PLを走行する特定の車両20が渋滞及び混雑を回避し易くするように調整を行うことができる。
【0104】
なお、前述の第1~第3の実施形態における走行車線調整装置10の各構成を互いに組み合わせることも可能である。
【0105】
上述した実施形態によれば、情報処理装置は、走行要求取得部と、車両数取得部と、判定部と、送信部とを備える。例えば、情報処理装置は、実施形態における走行車線調整装置10であり、走行要求取得部は、実施形態における車両情報管理部130であり、車両数取得部は、実施形態における適正車両数管理部120であり、判定部は、実施形態における判定部140であり、送信部は、実施形態における送信部150である。
【0106】
走行要求取得部は、第1の車両による特定の道路の走行許可を要求する走行要求情報を取得する。例えば、第1の車両は、実施形態における優先車線走行要求を送信した車両20であり、特定の道路は、実施形態における優先車線PLであり、第2の車両は、実施形態における優先車線PLを走行中の(又は走行予約している)車両20であり、走行要求情報は、実施形態における優先車線走行要求である。
【0107】
車両数取得部は、特定の道路を走行する複数の第2の車両の台数を示す走行車両数を取得する。例えば、走行車両数は、実施形態における実走行車両数又は予約走行車両数である。判定部は、走行車両数と、特定の道路を走行する適正な車両の台数を示す適正車両数とに基づいて、走行可否を判定する。例えば、適正車両数は、実施形態における適正最大走行車両数である。送信部は、走行可否の判定結果を示す情報を第1の車両へ送信する。例えば、走行可否の判定結果を示す情報は、実施形態における優先車線走行許可又は優先車線走行不許可である。
【0108】
なお、上記の情報処理装置において、走行要求情報は、特定の道路における第1の車両の走行区間及び走行予定時間帯を示す情報を含んでいてもよい。この場合、車両数取得部は、走行区間及び走行予定時間帯に走行を予定する第2の車両の台数を示す走行予定車両数を取得する。例えば、走行予定車両数は、実施形態における予約走行車両数である。また、この場合、判定部は、走行予定車両数と、適正車両数とに基づいて、走行可否を判定する。
【0109】
なお、上記の情報処理装置において、判定部は、走行車両数が適正車両数以上である場合に、車両ごとに設定された優先度に基づいて、特定の道路の走行を終了させる第2の車両を特定するか、又は、第1の車両を走行不可と判定するようにしてもよい。例えば、優先度は、実施形態における各車両20間で優劣(すなわち、優先車線PLを走行するための優先度)を比較可能な情報であり、特定の道路の走行を終了させることとは、実施形態において優先車線PLから一般車線GLへ車線変更をさせることであり、走行不可と判定することとは、実施形態において優先車線PLの走行を許可しないと判定することである。この場合、送信部は、特定の道路の走行を終了を指示する指示情報を判定部によって特定された第2の車両へ送信するか、又は、走行不可であることを示す判定結果を示す情報を第1の車両へ送信する。例えば、特定の道路の走行を終了を指示する指示情報とは、実施形態における優先車線譲渡指示であり、走行不可であることを示す判定結果とは、自氏形態における優先車線走行不許可である。
【0110】
なお、上記の情報処理装置において、優先度は、特定の道路の走行に対する支払い額に応じて設定されるようにしてもよい。例えば、支払い額とは、実施形態における希望支払い額である。
【0111】
なお、上記の情報処理装置において、判定部は、送信部が、上記の指示情報を第2の車両へ送信する前に、又は、走行不可であることを示す判定結果を示す情報を第1の車両へ送信する前に、支払い額を増額するか否かを問い合わせる情報を、第2の車両又は第1の車両へ送信するようにしてもよい。例えば、支払い額を増額するか否かを問い合わせる情報は、実施形態における支払額増額問合せである。
【0112】
なお、上記の情報処理装置において、送信部は、特定の道路の走行を終了する場合に得られる報奨額を示す情報を第2の車両へ送信するようにしてもよい。例えば、特定の道路の走行を終了する場合に得られる報奨額とは、実施形態において優先車線PLの利用を譲渡する車両20の利用者に対して与えられる分配可能額である。
【0113】
上述した各実施形態における走行車線調整装置10の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0114】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1…走行車線調整システム,10…走行車線調整装置,13…車両情報管理部,20…車両,30…通信ネットワーク,110…受信部,120…適正車両数管理部,121…地図情報記憶部,122…適正車両数記憶部,130…車両情報管理部,131…車両情報記憶部,140…判定部,150…送信部,210…通信部,220…自己位置取得部,230…情報制御部,240…車両制御部