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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】塗布装置、及び、画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20241218BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20241218BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241218BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B05C11/00
B05C11/10
B41J2/01 305
B41J2/01 123
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020057288
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2020175381
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019076840
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】阿地 恵太
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105130(JP,A)
【文献】特開2012-196955(JP,A)
【文献】特開2007-102213(JP,A)
【文献】特開平09-073255(JP,A)
【文献】特開平05-032356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00- 3/20,
7/00-21/00
B41J 2/01
B65H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液をシートに塗布する塗布回転体と、
前記塗布回転体との間にニップを形成する加圧回転体と、
前記加圧回転体を前記塗布回転体に向けて付勢する加圧アームと、
前記ニップにシートが進入したときに前記加圧回転体に前記加圧アームを介して間接的に当接して、前記塗布回転体に対する前記加圧回転体の離間方向の移動を制限する制限部材と、
を備え、
前記制限部材は、前記ニップにシートが進入しない状態で、前記加圧回転体に前記加圧アームを介して間接的に当接しないことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
塗布液をシートに塗布する塗布回転体と、
前記塗布回転体との間にニップを形成する加圧回転体と、
前記ニップにシートが進入したときに前記加圧回転体に直接的又は間接的に当接して、前記塗布回転体に対する前記加圧回転体の離間方向の移動を制限する制限部材と、
前記加圧回転体を前記塗布回転体に向けて付勢する加圧アームと、
を備え、
前記制限部材は、前記ニップにシートが進入したときに前記加圧アームに当接して前記加圧回転体の前記離間方向の移動を制限し、
前記ニップにシートが進入しない状態で、前記制限部材と前記加圧アームとの間に所定の隙間を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
前記所定の隙間を調整可能なギャップ調整機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
塗布液をシートに塗布する塗布回転体と、
前記塗布回転体との間にニップを形成する加圧回転体と、
前記加圧回転体を前記塗布回転体に向けて付勢する加圧アームと、
前記ニップにシートが進入したときに前記加圧回転体に前記加圧アームを介して間接的に当接して、前記塗布回転体に対する前記加圧回転体の離間方向の移動を制限する制限部材と、
を備え、
前記制限部材は、弾性材料で形成されたことを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
前記弾性材料は、ショアA硬度が30~70の範囲内となるゴム材料であることを特徴とする請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
塗布液をシートに塗布する塗布回転体と、
前記塗布回転体との間にニップを形成する加圧回転体と、
前記加圧回転体を前記塗布回転体に向けて付勢する加圧アームと、
前記ニップにシートが進入したときに前記加圧回転体に前記加圧アームを介して間接的に当接して、前記塗布回転体に対する前記加圧回転体の離間方向の移動を制限する制限部材と、
を備え、
前記制限部材は、前記ニップに進入するシートの厚みに応じて前記加圧回転体の前記離間方向の移動可能な距離を調整可能な調整機構であることを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
前記ニップに進入するシートの厚さを直接的又は間接的に検知する検知手段を備え、
前記調整機構は、前記検知手段によって検知されたシートの厚みが厚い場合には、シートの厚みが薄い場合に比べて、前記加圧回転体の前記離間方向の移動可能な距離を大きくすることを特徴とする請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記加圧アームに保持されて、前記加圧回転体に当接する押え部材を備え、
前記加圧アームは、前記押え部材を介して前記加圧回転体を前記塗布回転体に付勢することを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項9】
前記塗布回転体と前記加圧回転体との当接圧を減ずるとともに、前記加圧回転体と前記押え部材との当接圧を減ずる減圧機構を備えたことを特徴とする請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記ニップの圧力を調整可能なニップ圧調整機構が、長手方向の離れた位置に複数設けられたことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれかに記載の塗布装置と、画像形成装置と、を備えたことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用紙などのシートに塗布液を塗布する塗布装置と、それを備えた画像形成システムと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタなどの画像形成装置が設置された画像形成システムにおいて、用紙などのシートに塗布液を塗布する塗布装置が設置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1において、塗布装置は、画像形成装置(インクジェットプリンタ)の上流側に設置されていて、インクジェットプリンタに搬送されるシート(被記録媒体)の表面に、滲み抑制剤などの塗布液(処理剤液)を塗布する。これにより、画像形成装置においてシート上に形成される画像に、滲みなどの画像不良が生じにくくなる。
特許文献1において、塗布装置には、塗布液(処理剤液)が貯留された貯留部(供給パン)や、貯留部に貯留された塗布液を汲み上げる汲み上げローラ(スクイーズローラ)や、汲み上げローラによって汲み上げた塗布液をシートに塗布する塗布ローラや、塗布ローラとの間にシート(被記録媒体)が搬送されるニップを形成する加圧ローラや、加圧ローラを回転可能に保持して加圧ローラを塗布ローラに向けて付勢するアーム、などが設置されている。そして、塗布ローラと加圧ローラとのニップに搬送されるシートに対して、塗布ローラによって塗布液が塗布されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の塗布装置は、塗布ローラと加圧ローラとのニップにシートが進入した瞬間に、加圧ローラがシートの厚み以上に跳ね上がってしまう現象が生じてしまっていた。そして、そのような現象が生じてしまうと、加圧ローラによる塗布ローラへの加圧が弱められてしまい、ニップの位置で塗布ローラによってシートに塗布される塗布液の量にバラツキ(塗布ムラ)が生じてしまうことになる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、シートに塗布される塗布液の量にバラツキが生じにくい、塗布装置、及び、画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における塗布装置は、塗布液をシートに塗布する塗布回転体と、前記塗布回転体との間にニップを形成する加圧回転体と、前記加圧回転体を前記塗布回転体に向けて付勢する加圧アームと、前記ニップにシートが進入したときに前記加圧回転体に前記加圧アームを介して間接的に当接して、前記塗布回転体に対する前記加圧回転体の離間方向の移動を制限する制限部材と、を備え、前記制限部材は、前記ニップにシートが進入しない状態で、前記加圧回転体に前記加圧アームを介して間接的に当接しないものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートに塗布される塗布液の量にバラツキが生じにくい、塗布装置、及び、画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態における画像形成システムを示す全体図である。
図2】画像形成装置の要部を示す構成図である。
図3】塗布装置の要部の動作を示す図である。
図4】比較例としての、塗布装置の要部の動作を示す図である。
図5】変形例1としての、塗布装置の要部を示す図である。
図6】変形例2としての、塗布装置の要部の動作を示す図である。
図7】変形例3としての、塗布装置の要部を示す図である。
図8】変形例4としての、塗布装置の要部を示す図である。
図9図8の塗布装置の要部を示す拡大図である。
図10図8の塗布装置の要部を長手方向に示す図である。
図11図8の塗布装置の要部の動作を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、図1にて、画像形成システム100の全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのインクジェットプリンタ、50は画像形成装置1に搬送されるシートPに対して前処理として塗布液を塗布する塗布装置、80は用紙などのシートPを給送する給紙装置、85は画像形成後のシートP上のインクを乾燥させる乾燥装置、90は乾燥装置85から排出されたシートPがスタックされる排紙装置、を示す。
図1に示すように、本実施の形態における画像形成システム100は、上流側から、給紙装置80、塗布装置50、画像形成装置1、乾燥装置85、排紙装置90、が接続されたものである。
【0011】
図1を参照して、画像形成システム100の動作について簡単に説明する。
まず、パソコンなどから画像形成システム100の制御部に画像情報とともにプリント指令が入力されると、給紙ローラ82によって給紙カセット81からシートPが給送される。給紙カセット81から給送されたシートPは、搬送ローラによって、第1搬送経路K1を経由して塗布装置50に向けて搬送される。
なお、本実施の形態では、給紙カセット81に収納されたカット紙が給送されるように給紙装置80を構成したが、ロール紙が給送されるように給紙装置80を構成することもできる。
【0012】
その後、塗布装置50に搬送されたシートPは、第2搬送経路K2を経由して塗布装置主部51に搬送される。そして、塗布装置主部51にて、シートPの下面(画像形成時にオモテ面となるシート面である。)に、滲みや裏写り等を抑えるための塗布液(前処理液)が塗布される。その後、塗布液が塗布されたシートPは、反転経路K4(第4搬送経路)に搬送されて、搬送方向が逆転されて反転された状態(塗布液が塗布されたシート面がオモテ面(上面)になった状態である。)で、第3搬送経路を経由して、画像形成装置1に搬送される。
ここで、画像形成装置1でシートPの両面にそれぞれ画像形成するモード(両面プリントモード)が選択されている場合には、シートPの両面に塗布液を塗布する必要があるため、片面に塗布液が塗布された後のシートPは、反転経路K4に搬送されて、搬送方向が逆転されて反転された後に、両面経路K5(第5搬送経路)に搬送されて、再び塗布装置主部51に搬送されることになる。そして、塗布装置主部51で、もう一方の面にも塗布液が塗布されたシートPは、そのまま第3搬送経路K3を経由して画像形成装置1に搬送されることになる。
なお、塗布装置50における塗布装置主部51の構成・動作については、後で図3を用いて詳述する。
【0013】
その後、画像形成装置1に搬送されたシートPは、第6搬送経路K6を経由した後に、搬送ドラム2に搬送されながら、そのオモテ面(上面)に所望の画像が形成されることになる。このとき、シートPのオモテ面には、前処理として塗布液が塗布されているため、画像の滲みや裏写り等が抑えられることになる。
そして、画像が形成されたシートPは、第7搬送経路K7を経由して、乾燥装置85に搬送される。
なお、画像形成装置1の構成・動作については、後で図2を用いて詳述する。
【0014】
その後、乾燥装置85に搬送されたシートPは、第8搬送経路K8を経由した後に、ドライヤ部86に搬送されて、シートP上の画像が乾燥される。そして、画像が乾燥されたシートPは、第9搬送経路K9を経由して、排紙装置90に搬送される。
ここで、上述した両面プリントモードが選択されている場合には、シートPの両面に画像を形成する必要があるため、片面の画像が乾燥された後のシートPは、反転経路K10(第10搬送経路)に搬送されて、搬送方向が逆転されて反転された後に、両面経路K11、K12(第11、第12搬送経路)に搬送されて、再び画像形成装置1の搬送ドラム2に搬送されることになる。そして、搬送ドラム2上で、もう一方の面にも所望の画像が形成されたシートPは、第7搬送経路K7を経由して再び乾燥装置85に搬送されることになる。そして、ドライヤ部86で、もう一方の面の画像が乾燥されたシートPは、そのまま第9搬送経路K9を経由して排紙装置90に搬送されることになる。
【0015】
その後、排紙装置90に搬送されたシートPは、第13搬送経路K13を経由した後に、排紙トレイ91上にスタックされることになる。
こうして、画像形成システム100における一連の動作が完了することになる。
【0016】
以下、図2を用いて、画像形成装置1(インクジェットプリンタ)について、詳述する。
図2において、2はシートPを搬送する搬送ドラム、5は搬送ドラム2上でシートPを把持するクリッパ、6は搬送ドラム2からシートPを分離する分離部材、7は搬送ドラム2から分離されたシートPを搬送する搬送ベルト、を示す。
10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2はインクジェット方式により印字・印画するための画像形成部がユニット化されたヘッド(印字モジュール)、30は梁部材35などを保持するためのベースフレーム、を示す。
【0017】
ここで、本実施の形態における画像形成装置1は、カラー画像を形成するためのものであって、図2に示すように、黒色用のヘッド10Kと、カラー用の3色(イエロー、マゼンタ、シアン)のヘッド10Y、10M、10Cと、コーティング用(特殊色用)の2色のヘッド10S1、10S2と、が設置されている。これらの6つのヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、搬送ドラム2に微小な隙間をあけて対向して、搬送ドラム2の回転方向に沿うように放射状に並設されている。
なお、6つのヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、プリントに用いられるインクの色(種類)が異なる以外はほぼ同一構造である。ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、略長方体状のユニットであって、その主部が圧電アクチュエータで構成されていて、液体(液滴)としてのインクを吐出するノズルや、インクが充填されたインクタンクや、制御基板(制御部)などが設けられている。
【0018】
図2を参照して、画像形成装置1の動作について簡単に説明する。
まず、画像形成装置1にシートPが搬入されると、そのシートPは、搬送ローラ4によって、搬送ドラム2に向けて搬送される。他方、各色のヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2では、入力された画像情報に基づいて各色の書込み情報に変換される。
そして、搬送ドラム2に搬送されたシートPは、クリッパ5に把持された状態で搬送ドラム2上に位置決めされて、搬送ドラム2の反時計方向に回転に沿うように搬送される。
そして、搬送ドラム2の回転によって図2の矢印方向に搬送されるシートP上に、各色のヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2から書込み情報に基づいて液体としてのインクが順次吹き付けられて、シートP上に所望の画像が形成される。
その後、所望の画像が形成されたシートPは、分離部材6によって搬送ドラム2から分離される。そして、搬送ドラム2から分離されたシートPは、搬送ベルト7によって搬送されて、さらに搬送ローラによって乾燥装置85に向けて搬送されることになる。
【0019】
以下、図3を用いて、本実施の形態における画像形成システム100において、特徴的な塗布装置50について詳しく説明する。
塗布装置50は、用紙などのシートPに塗布液Gを塗布する装置である。図3に示すように、本実施の形態における塗布装置50(塗布装置主部51)は、塗布回転体としての塗布ローラ52、中間ローラ53、汲み上げローラ54、加圧回転体としての加圧ローラ57、貯留部55、加圧機構58~60、制限部材としてのストッパ66、などで構成されている。
【0020】
塗布回転体としての塗布ローラ52は、塗布液Gをシートに塗布するローラ部材であって、長手方向(図3の紙面垂直方向であって、回転軸方向である。)に延びるように配置されている。
加圧回転体としての加圧ローラ57は、塗布ローラ52との間に長手方向にわたってニップを形成するローラ部材であって、上下動可能に本体筐体に保持されている。
中間ローラ53は、塗布ローラ52と汲み上げローラ54とにそれぞれ当接するローラ部材である。
貯留部55には、一定量の塗布液Gが貯留されている。貯留部55は、図3の紙面垂直方向を長手方向とする略長方体状の箱状部材である。
汲み上げローラ54は、貯留部55に貯留された塗布液Gを汲み上げる汲み上げ部材として機能するものである。
【0021】
汲み上げローラ54は、図3の時計方向に回転しながら、貯留部55内の塗布液Gを担持する。汲み上げローラ54に担持された塗布液Gは、図3の反時計方向に回転する中間ローラ53(計量ローラ)に移行して担持される。そして、中間ローラ53に担持された塗布液Gは、図3の時計方向に回転する塗布ローラ52との当接位置で適量化(計量化)されて、適量化された塗布液Gが塗布ローラ52に担持される。
そして、塗布ローラ52に担持された塗布液Gが、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップに搬送されるシートPのシート面(下面)に塗布される(塗布工程である)。このとき、加圧ローラ57は、加圧機構58~60の加圧アーム58に押圧されながら、図3の反時計方向に回転している。
【0022】
なお、汲み上げローラ54は、駆動モータ72に連結されていて、制御部に制御される駆動モータ72によって所定方向に回転駆動される。中間ローラ53と塗布ローラ52とは、駆動モータ72からギア列を介して駆動が伝達されて、それぞれ所定方向に回転することになる。また、加圧ローラ57は、その軸端部に上述したギア列に接離可能なギアが設置されていて、駆動モータ72の駆動が伝達されて回転可能に構成されている。
【0023】
また、加圧ローラ57は、加圧機構58~60によって、塗布ローラ52に対して接離方向(上下方向)に移動可能に構成されている。
加圧機構は、加圧アーム58、加圧カム59、引張スプリング60などで構成されている。加圧アーム58は、支軸58aを中心に回転可能に本体筐体に保持されていて、加圧ローラ57を塗布ローラ52に向けて付勢する。引張スプリング60は、その一端側が加圧アーム58に接続され、その他端側が可動板69に接続されている。可動板69は、カムモータ71によって回転駆動される加圧カム59によって上下動する。
そして、塗布工程がおこなわれるときには、加圧機構58~60によって、加圧ローラ57は図3(A)に示す当接位置(塗布ローラ52に当接する位置である。)に移動する。これに対して、塗布工程がおこなわれないときには、加圧機構58~60によって、加圧ローラ57は離間位置(塗布ローラ52から離れる位置である。)に移動する。
【0024】
ここで、本実施の形態における塗布装置50には、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入したときに加圧ローラ57に間接的に当接して、塗布ローラ52に対する加圧ローラ57の離間方向の移動を制限する制限部材としてのストッパ66が設けられている。
詳しくは、ストッパ66(制限部材)は、ニップにシートPが進入したときに図3(B)に示すように加圧アーム58に当接して加圧ローラ57の離間方向(上方向である。)の移動を制限する。すなわち、加圧ローラ57の離間方向(上方向)の移動量の上限が、ストッパ66が加圧アーム58に当接する位置で定められている。
【0025】
具体的に、図3(A)に示すように、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入する直前まで、加圧ローラ57は塗布ローラ52に当接した状態である。このとき、ストッパ66は、加圧アーム58に接しておらず、双方の部材58、66の間には隙間Hが形成されている。
そして、図3(B)に示すように、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPの先端が進入した瞬間に、そのシート厚(シートPの厚み)の分だけ加圧ローラ57が勢いよく押し上げられることになるが、加圧アーム58がストッパ66に接することで、その押し上げは必要最小限のものとなる。
【0026】
このようにストッパ66(制限部材)を設けることで、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入した瞬間に、加圧ローラ57がシートPの厚み以上に跳ね上がってしまう現象を軽減することができる。したがって、塗布ローラ52によってシートPに塗布される塗布液の量にバラツキ(塗布ムラ)が生じる不具合が軽減されることになる。
【0027】
上述したように、シートPがニップに進入しない状態では、ストッパ66と加圧アーム58との間には所定の隙間Hを有する。すなわち、シートPがニップに進入しない状態では、ストッパ66は、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入しない状態では、加圧ローラ57に直接的又は間接的に当接しない。本実施の形態において、所定の隙間Hの大きさは、シートPの厚さが所定の厚み未満の場合にはシートPがニップ内を通過する際にストッパ66と加圧アーム58とが当接せず、シートPの厚さが所定の厚み以上の場合にはシートPがニップ内を通過する際にストッパ66と加圧アーム58とが当接するように、設定されている。
これにより、薄紙等の厚さが所定の厚み未満のシートPがニップ内を通過する際に、ローラ対52、57を駆動するモータの負荷が上昇することを防ぎ、また、ストッパ66の負荷によってコシの弱いシートP(薄紙)の搬送が妨げられてシートPにシワ等が発生する不具合を抑制できる。一方で、厚紙等の厚さが所定の厚み以上のシートPがニップ内を通過する際は、加圧ローラ57がシートPの厚み以上に跳ね上がってしまう現象を軽減することができる。
【0028】
詳しくは、図4に示す塗布装置151のように、ストッパ66(制限部材)を設置しない場合には、図4(A)から図4(B)に示すように、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入した瞬間に、加圧ローラ57がシートPの厚み以上に跳ね上がってしまう。そして、加圧ローラ57が跳ね上がった瞬間に、塗布ローラ52に対する加圧が弱められて、塗布ローラ52(又は、中間ローラ53)が上方に変位し、塗布ローラ52と中間ローラ53とのニップ(又は、中間ローラ53と汲み上げローラ54とのニップ)で塗布液Gが大量に通過してしまい(塗布液Gの受け渡しが不足してしまい)、ニップの位置で塗布ローラ52によってシートPに塗布される塗布液Gの量にバラツキ(塗布ムラ)が生じてしまう。特に、シートPの搬送速度が速い場合や、シートPの厚みが厚い場合などには、そのような不具合が顕著になる。
このような不具合を解決するために、引張スプリング60のばね定数を上げて加圧ローラ57の加圧力を上げる方策や、加圧ローラ57を上下動しないように固定する方策も考えられるが、前者はニップにおけるシートPの進入遅れ(搬送タイミング遅れ)による搬送不良が生じやすく、後者はニップをシートPが通過しない搬送不良が生じやすくなってしまう。
【0029】
これに対して、本実施の形態では、加圧ローラ57の離間方向の移動をある程度許容した上に、その移動量を制限しているため、上述したような種々の不具合の発生を軽減することができる。すなわち、シートPの搬送不良を生じさせることなく、シートPに塗布される塗布液Gの塗布ムラ(バラツキ)を軽減することができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入したときに加圧アーム58を介して加圧ローラ57に間接的に当接可能なストッパ66(制限部材)を設けた。すなわち、ストッパ66は、加圧ローラ57と連動する部材としての加圧アーム58に当接することで、加圧ローラ57に間接的に当接する構成としている。
これに対して、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入したときに加圧ローラ57に直接的に当接可能なストッパ66(制限部材)を設けることもできる。すなわち、加圧ローラ57の表面であってシートPが通過する領域の外側の部分に当接可能なストッパ66を設けたり、あるいは、加圧ローラ57の回転軸に当接可能なストッパ66を設けたりすることもできる。
【0031】
また、本実施の形態では、塗布ローラ52が上下に変位可能な構成としているが、塗布ローラ52が上下に変位しないように固定されていてもよい。この場合も、加圧ローラ57がシートPの厚み以上に跳ね上がってしまうことを防止できる。これにより、シートPが突入した瞬間に加圧ローラ57と塗布ローラ52とによるニップ幅が変動することを抑制して、塗布液の塗布量がシートPの先端部とそれ以外とで変動することを抑制できる。
【0032】
ここで、本実施の形態において、制限部材としてのストッパ66は、弾性材料としてのゴム材料で形成されている。
ストッパ66は、使用頻度が高いシートP(例えば、普通紙である。)の厚みに合わせて、その位置(加圧アーム58との隙間H)が設定されている。すなわち、シートPがニップに搬送されていないときには、図3(A)に示すように、ストッパ66と加圧アーム58とには隙間Hがある。そして、使用頻度の高いシートPがニップに進入して、その厚みの分だけ、引張スプリング60の付勢に抗するように加圧ローラ57(加圧アーム58)が持ち上がった状態で、ストッパ66が丁度に加圧アーム58に当接するように設定されている。しかし、その場合、そのように使用頻度が高いシートPの厚みよりも厚いシートPが搬送されてしまうと、そのシートPがニップを通過しにくくなってしまう。そのため、本実施の形態では、ストッパ66をゴム材料で形成して、厚いシートPがニップに進入したときに、ストッパ66が応答性よく弾性変形した状態で加圧アーム58に当接するようにして、シートPの搬送不良を防止している。
特に、本実施の形態において、ストッパ66(制限部材)のゴム材料として、ショアA硬度が30~70の範囲内となるウレタンゴムを用いている。本願発明者は、研究を重ねた結果、そのような材料でストッパ66を形成することで、上述した効果が発揮されやすくなることを知得した。
なお、本実施の形態において、弾性材料として、ゴム材料に替えて、板バネなどの部材を用いても良い。
【0033】
<変形例1>
図5は、変形例1としての塗布装置50の要部(塗布装置主部51)を示す図であって、本実施の形態における図3(B)に対応する図である。
図5に示すように、変形例1では、制限部材として、本実施の形態におけるストッパ66の代わりに、調整機構としてのカム67を用いている。
制限部材としてのカム67は、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップに進入するシートPの厚み(シート厚)に応じて加圧ローラ57の離間方向(上方向)の移動可能な距離を調整可能なカムである。
具体的に、調整機構としてのカム67(制限部材)は、そのカム面が加圧アーム58の上部に当接可能に設置されていて、加圧アーム58の離間方向(上方向)の移動を制限するものである。また、カム67(制限部材)は、その回転軸が第2カムモータ73に接続されていて、制御部70による第2カムモータ73の制御によってカム角度(回転方向の姿勢)を可変できるように構成されている。
そして、シートPがニップに搬送されていないときには、カム67と加圧アーム58(破線で示す回動位置に位置している。)とには隙間がある。そして、シートPがニップに進入して、その厚みの分だけ、引張スプリング60の付勢に抗するように加圧ローラ57(加圧アーム58)が持ち上がった状態で、カム67が丁度に加圧アーム58に当接する(図5の状態である。)。
ここで、カム67は、ニップに進入するシートPの厚みの大きさに応じて、そのカム角度が調整される。すなわち、シートPがニップに搬送されていないときの、カム67と加圧アーム58との隙間が調整される。具体的に、シートPの厚みが厚いときには、シートPの厚みが薄いときに比べて、上述した隙間が大きくなるように、第2カムモータ73が制御される。
これにより、シートPの厚みに関わりなく、シートPの搬送不良を生じさせずに、シートPに塗布される塗布液Gの塗布ムラ(バラツキ)を軽減することができる。
【0034】
特に、変形例1では、図5に示すように、ニップに進入するシートPの厚さを直接的に検知する検知手段としてのシート厚検知センサ75が、ニップの上流側のシート搬送経路に設置されている。このようなシート厚検知センサ75としては、例えば、測距センサなどを用いることができる。
そして、シート厚検知センサ75(検知手段)によって検知されたシートPの厚みが厚い場合には、シートPの厚みが薄い場合に比べて、加圧ローラ57の離間方向の移動可能な距離が大きくなるように(非搬送時におけるカム67と加圧アーム58との隙間が大きくなるように)、カム67のカム角度を調整している。
なお、検知手段として、ニップに進入するシートPの厚さを間接的に検知するものを用いることもできる。このような検知手段としては、例えば、画像形成システム100の外装部に設置された操作表示パネル40(図1参照)を用いることができる。具体的に、ユーザーによって操作表示パネル40から入力されたシートPに関する情報から、ニップに進入するシートPの厚さを間接的に検知することができる。
また、調整機構として、カム67に替えて、加圧アーム58に当接可能な当接部材と、加圧アーム58と当接部材との隙間を変更するように当接部材を移動するソレノイド等の部材と、を設けてもよい。
【0035】
<変形例2>
図6は、変形例2としての塗布装置50の要部(塗布装置主部51)を示す図であって、本実施の形態における図3(A)、(B)に対応する図である。
変形例2における塗布装置50は、加圧ローラ57を塗布ローラ52に加圧する加圧機構61~64の構成が、本実施の形態のものと異なる。
図6に示すように、変形例2における加圧機構は、第1加圧アーム61、第2加圧アーム62、加圧カム63、圧縮スプリング64、などで構成されている。第1加圧アーム61は、支軸61aを中心に回転可能に本体筐体に保持されていて、加圧ローラ57を回転可能に保持している。第2加圧アーム62は、第1加圧アーム61の支軸61aを中心に、第1加圧アーム61との回転とは独立して回転可能に本体筐体に保持されている。第2加圧アーム62には、第1加圧アーム61を加圧ローラ57とともに塗布ローラ52に向けて付勢する圧縮スプリング64(一端側が第1加圧アーム61に接続され、その他端側が第2加圧アーム62に接続されている。)が設置されている。加圧カム63は、そのカム面が第2加圧アーム62の上部に当接していて、カムモータ71によって回転駆動されてカム角度が変化することで、第1、第2加圧アーム61、62とともに加圧ローラ57を上下動させる。
そして、塗布工程がおこなわれるときには、加圧機構61~63によって、加圧ローラ57は図6(A)に示す当接位置(塗布ローラ52に当接する位置である。)に移動する。これに対して、塗布工程がおこなわれないときには、加圧機構61~63によって、加圧ローラ57は離間位置(塗布ローラ52から離れる位置である。)に移動する。
ここで、変形例2における塗布装置50にも、本実施の形態のものと同様に、制限部材としてのストッパ66が設けられている。詳しくは、変形例2では、図6に示すように、第1加圧アーム61の対向面(第2加圧アーム62に対向する対向面である。)に設置されている。そして、ストッパ66は、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入したときに図6(B)に示すように加圧ローラ57に間接的に当接して(第2加圧アーム62に当接して)、塗布ローラ52に対する加圧ローラ57の離間方向の移動を制限する制限部材として機能することになる。
これにより、シートPの搬送不良を生じさせずに、シートPに塗布される塗布液Gの塗布ムラ(バラツキ)を軽減することができる。
【0036】
<変形例3>
図7は、変形例3としての塗布装置50の要部(塗布装置主部51)を示す図であって、本実施の形態における図3(B)に対応する図である。
図7に示すように、変形例3における加圧機構も、変形例2における加圧機構と同様に、第1加圧アーム61、第2加圧アーム62、加圧カム63、圧縮スプリング64、などで構成されている。そして、変形例3では、制限部材として、変形例2におけるストッパ66の代わりに、カム67を用いている。
制限部材としてのカム67は、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップに進入するシートPの厚みに応じて加圧ローラ57の離間方向(上方向)の移動可能な距離を調整可能なカムである。
具体的に、カム67(制限部材)は、そのカム面が第1加圧アーム61の上部に当接可能に設置されていて、第1加圧アーム61の離間方向(上方向)の移動を制限するものである。また、カム67(制限部材)は、その回転軸が第2カムモータ73に接続されていて、制御部70による第2カムモータ73の制御によってカム角度(回転方向の姿勢)を可変できるように構成されている。
そして、シートPがニップに搬送されていないときには、カム67と第1加圧アーム61(破線で示す回動位置に位置している。)とには隙間がある。そして、シートPがニップに進入して、その厚みの分だけ、圧縮スプリング64の付勢に抗するように加圧ローラ57(第1加圧アーム61)が持ち上がった状態で、カム67が丁度に第1加圧アーム61に当接する(図7の状態である。)。
ここで、変形例3におけるカム67も、変形例1のものと同様に、ニップに進入するシートPの厚みの大きさ(検知手段としてのシート厚検知センサ75の検知結果)に応じて、そのカム角度が調整される。
これにより、シートPの厚みに関わりなく、シートPの搬送不良を生じさせずに、シートPに塗布される塗布液Gの塗布ムラ(バラツキ)を軽減することができる。
【0037】
<変形例4>
図8は、変形例4としての塗布装置50の要部(塗布装置主部51)を示す図であって、変形例2における図6(A)に対応する図である。
図8図10を参照して、変形例4における塗布装置50は、主として、押え部材としての押えローラ68や、ギャップ調整機構としての第1調整ボルト76や、ニップ圧調整機構としての第2調整ボルト77や、減圧機構としてのアーム部材74及び引張スプリング79、が設置されている点が、図6に示す変形例2のものと相違する。
図8図11に示すように、押えローラ68は、第1加圧アーム61(加圧アーム)に保持されていて、加圧ローラ57(加圧回転体)に当接する押え部材として機能している。そして、第1加圧アーム61(加圧機構61~64)は、押えローラ68(押え部材)を介して加圧ローラ57を塗布ローラ52(塗布回転体)に付勢するように構成されている。
詳しくは、押えローラ68は、第1加圧アーム61に回転可能に保持されていて、第1加圧アーム61の移動に追従するように構成されている。また、押えローラ68は、そのローラ径が加圧ローラ57のローラ径に比べて充分に大きく、その剛性が加圧ローラ57の剛性に比べて充分に高くなるように形成されている。また、加圧機構61~64は、加圧ローラ57の替りに押えローラ68を保持している点を除き、変形例2にて説明した図6のものと同様に構成されている。
ここで、加圧機構61~64は、図10に示すように、長手方向両端部(回転軸方向両端部)にそれぞれ設置されていて、押えローラ68の長手方向中央部が撓みやすい構成になっているが、押えローラ68を大径化するとともに、その剛性を高めているため、そのような撓みが生じにくくなる。したがって、押えローラ68が加圧ローラ57に長手方向にわたって均一に圧接して、加圧ローラ57と塗布ローラ52とのニップ圧の不均一による塗布ムラを軽減することができるとともに、シートPのスキューなどの搬送不良を軽減することができる。
【0038】
また、図9に示すように、変形例4における塗布装置50には、ギャップ調整機構としての第1調整ボルト76が設置されている。
この第1調整ボルト76は、加圧ローラ57と塗布ローラ52とのニップにシートPが進入しない状態でストッパ66(制限部材)と第2加圧アーム62(加圧アーム)との間に形成される所定の隙間を調整可能なギャップ調整機構として機能するものである。
詳しくは、図9に示すように、第2加圧アーム62にはストッパ66に対向する位置に雌ネジ部が形成されていて、その雌ネジ部に第1調整ボルト76が螺合している。このような構成により、図9(A)、(B)に示すように、第1調整ボルト76の締め込み量を可変することで、第1調整ボルト76のネジ先端部とストッパ66との隙間(第2加圧アーム62とストッパ66との隙間である。)の間隔を調整することができる。
ストッパ66は、ニップにシートPが進入したときに第2加圧アーム62に当接することで、加圧ローラ57の離間方向の移動を制限することになる。しかし、ストッパ66と第2加圧アーム62との隙間は、多数の部品が関係して形成されるものであるため、それらの部品精度のバラツキが積み上がることで、ストッパ66と第2加圧アーム62との隙間を狙いの値に設定できずに、ストッパ66が制限部材として機能しなくなってしまう可能性がある。
これに対して、変形例4では、ギャップ調整機構としての第1調整ボルト76を設置して、ストッパ66と第2加圧アーム62との隙間を狙いの値に調整可能に構成しているため、そのような不具合の発生を防止することができる。
【0039】
また、図9図10に示すように、変形例4における塗布装置50には、ニップ調整機構としての第2調整ボルト77が設置されている。
この第2調整ボルト77は、加圧ローラ57と塗布ローラ52とのニップの圧力(ニップ圧)を調整可能なニップ圧調整機構として機能するものであって、長手方向(図9の紙面垂直方向であって、図10の左右方向である。)の離れた位置に複数設けられている。本実施の形態では、図10に示すように、長手方向両端部にそれぞれ第2調整ボルト77(ニップ圧調整機構)が設置されている。
詳しくは、図9図10に示すように、第1加圧アーム61には圧縮スプリング64に対向する位置に雌ネジ部が形成されていて、その雌ネジ部に第2調整ボルト77が螺合している。また、第2調整ボルト77のネジ先端部には受板78が設置されていて、この受板78に圧縮スプリング64の一端側が接続されている。このような構成により、図9(A)、(B)に示すように、第2調整ボルト77の締め込み量を可変することで、圧縮スプリング64の使用長が変化して、加圧ローラ57と塗布ローラ52とのニップ圧を調整することができる。
加圧ローラ57と塗布ローラ52とのニップ圧は、関連する部品の部品精度のバラツキによって、長手方向に偏差(圧力差)が生じてしまうことがある。そして、そのようにニップ圧の偏差が生じてしまうと、長手方向の塗布ムラや、シートPのスキューなどの搬送不良が発生してしまう。
これに対して、変形例4では、ニップ圧調整機構としての第2調整ボルト77を長手方向両端部にそれぞれ設置して、加圧ローラ57と塗布ローラ52との長手方向のニップ圧のバランスを調整可能に構成しているため、そのような不具合の発生を防止することができる。また、ニップ圧調整機構としての第2調整ボルト77によって、ニップ圧の長手方向のバランスに限らず、全体的なニップ圧(総圧)を増減することも可能であるため、全体的な塗布液Gの塗布量を調整することもできる。
【0040】
また、図9図11に示すように、変形例4における塗布装置50には、減圧機構としてのアーム部材74及び引張スプリング79が設置されている。
アーム部材74と引張スプリング79とは、塗布ローラ52(塗布回転体)と加圧ローラ57(加圧回転体)との当接圧(ニップ圧)を減ずるとともに、加圧ローラ57と押えローラ68(押え部材)との当接圧(ニップ圧)を減ずる減圧機構として機能するものである。
詳しくは、第1加圧アーム61には、L字状のアーム部材74が固定して設置されている。このアーム部材74は、L字に曲がられた部分(曲げ部)が、加圧ローラ57の軸部の下方に位置するように形成されている。
また、第1加圧アーム61には、支軸61aから離れた先端部に、引張スプリング79の一端側が接続されている。引張スプリング79の他端側は、本体筐体に接続されている。
そして、図9に示すように、通常時には、アーム部材74の曲げ部が、加圧ローラ57の軸部に対して離間した位置にある。このとき、塗布ローラ52と加圧ローラ57とが狙いのニップ圧で当接するとともに、加圧ローラ57と押えローラ68とが狙いのニップ圧で当接することになる。
これに対して、ニップ減圧時には、図11に示すように、カムモータ71による駆動によって加圧カム63がカム軸63aを中心に所定角度だけ回転することで、第2加圧アーム62が支軸61aを中心に反時計方向に回転して(持ち上げられて)、それにともない圧縮スプリング64の付勢が解除されて、第1加圧アーム61も支軸61aを中心に反時計方向に回転する(持ち上げられる)。これにより、加圧ローラ57と押えローラ68とのニップ圧が減圧されることになる。さらに、第1加圧アーム61に設置されたアーム部材74の曲げ部が、加圧ローラ57の軸部を上方に押動して、加圧ローラ57が上方に移動することで、塗布ローラ68と加圧ローラ57とのニップ圧が減圧されることになる。このようなニップ圧の減圧は、加圧ローラ57と塗布ローラ52との間(ニップ)でシートPが詰まったとき(ジャムしたとき)に、そのシートPを取り除くためにおこなわれる。また、このようなジャム発生時の減圧機構74、79の動作は、シートPのジャムをシート検知センサが検知したときに、カムモータ71が駆動制御されることによっておこなうことができる。このように減圧機構74、79を設けることで、ユーザーによるジャム処理時の作業が容易になる。
なお、減圧機構74、79によるニップ減圧は、ジャム発生時に限らず、通常の通紙時おいて、塗布ローラ68と加圧ローラ57とのニップにシートPが介在されていないときにもおこなうことができる。すなわち、シートPがニップを通過しているときには図9に示すようにニップ減圧はおこなわずに、シートPがニップを通過していないときには図11に示すようにニップ減圧をおこなう。これにより、加圧ローラ57と塗布ローラ52とが長時間接触してニップに塗布液Gが残留したままになり、その塗布液Gから水分が蒸発して増粘して、増粘した塗布液GによりシートPのジャムや塗布ムラが発生してしまう不具合を軽減することができる。減圧機構74、79によるニップ減圧がおこなわれている間は、ニップに残留した塗布液Gは貯留部55に戻されることになる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態における塗布装置50(画像形成システム100)は、塗布液GをシートPに塗布する塗布ローラ52(塗布回転体)と、塗布ローラ52との間にニップを形成する加圧ローラ57(加圧ローラ)と、が設けられている。さらに、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入したときに加圧ローラ57に直接的又は間接的に当接して、塗布ローラ52に対する加圧ローラ57の離間方向の移動を制限するストッパ66(制限部材)が設けられている。
これにより、シートPに塗布される塗布液Gの量のバラツキを生じにくくすることができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、インクジェットプリンタ1の前処理装置としての塗布装置50に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、シートに塗布液を塗布する塗布装置であれば、すべての塗布装置に対して本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、塗布回転体としての塗布ローラ52を用いて、加圧回転体としての加圧ローラ57を用いた。しかし、塗布回転体や加圧回転体はこれらに限定されることなく、例えば、塗布回転体として複数のローラに支持された塗布ベルト(ベルト部材)を用いることもできるし、加圧回転体として複数のローラに支持された加圧ベルト(ベルト部材)を用いることもできる。
また、本実施の形態において、図1に示す塗布装置50における塗布ローラ52と加圧ローラ57との位置関係を互いに入れ替えて配置することもできる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0044】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、用紙に限定されることなく、シート状の記録媒体のすべて、例えば、コート紙、ラベル紙、OHPシート、金属シート、等も含むものと定義する。
【0045】
1 画像形成装置(インクジェットプリンタ)、
40 操作表示パネル、
50 塗布装置、
51 塗布装置主部、
52 塗布ローラ(塗布回転体)、
53 中間ローラ(計量ローラ)、
54 汲み上げローラ、
55 貯留部(供給パン)、
57 加圧ローラ(加圧回転体)、
58 加圧アーム、
66 ストッパ(制限部材)、
67 カム(調整機構、制限部材)、
75 シート厚検知センサ(検知手段)、
80 給紙装置、
85 乾燥装置、
90 排紙装置、
100 画像形成システム、
G 塗布液(液体)、 P シート(被塗布体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【文献】特開2013-91260号公報
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