(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】レジストパターンメタル化プロセス用組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20241218BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G03F7/40 502
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2021512051
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014232
(87)【国際公開番号】W WO2020203852
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019068030
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 亘
(72)【発明者】
【氏名】武田 諭
(72)【発明者】
【氏名】志垣 修平
(72)【発明者】
【氏名】石橋 謙
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏大
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/053194(WO,A1)
【文献】特開2013-040993(JP,A)
【文献】国際公開第2009/104552(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021256(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:金属酸化物(a1)、加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)、及び、上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)からなる群から選ばれる少なくとも1種、
(B)成分:カルボン酸基(-COOH)を含有しない酸化合物、並びに
(C)成分:
溶媒
を含む組成物であって、
前記組成物の全質量に対して、固形分の濃度は0.01乃至10.0質量%であり、
前記(C)成分が水
のみである、
レジストパターンメタル化プロセス用組成物。
【請求項2】
上記(B)成分が、スルホン酸基(-SO
3H)含有酸化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記加水分解性シラン化合物(a2)が、アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シラン(i)及びイオン性官能基を有する有機基を含む加水分解性シラン(ii)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
上記加水分解性シラン化合物(a2)が、下記式(1)で表される加水分解性シラン及び式(1-1)で表される加水分解性シランからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
〔R
1
a0Si(R
2)
3-a0〕
b0R
3
c0 式(1)
[〔Si(R
10)
2O〕
n0Si(R
20)
2]R
30
2 式(1-1)
( 式(1)中、
R
3は、アミノ基を含有する有機基、又は、イオン性官能基を有する有機基であって、且つSi-C結合又はSi-N結合によりケイ素原子と結合しているものを表し、そして該R
3が複数存在する場合、該R
3は環を形成してSi原子に結合していてもよい基を表し、
R
1は、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基であり、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合している基を表し、
R
2は、アルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表し、
a0は、0又は1の整数を示し、
b0は、1乃至3の整数を示し、
c0は、1又は2の整数を示す。
式(1-1)中、
R
10及びR
20は、それぞれヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表し、
R
30は、アミノ基を含有する有機基、又は、イオン性官能基を有する有機基であって、且つSi-C結合又はSi-N結合によりケイ素原子と結合しているものを表し、そして該R
30が複数存在する場合、該R
30は環を形成してSi原子に結合していてもよい基を表し、
n0は、1乃至10の整数を表す。)
【請求項5】
上記金属酸化物(a1)が、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、アルミニウム、インジウム、スズ、タングステン及びバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物である、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
上記(B)成分が、上記(A)成分の100質量部に対して、0.5乃至15質量部の割合で含まれる、請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
硬化触媒を更に含む、請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤を更に含む、請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
光酸発生剤を更に含む、請求項1乃至請求項8のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
基板上にレジスト溶液を塗布する工程、
レジスト膜を露光し現像する工程、
該現像中又は該現像後のレジストパターンに請求項1乃至請求項9のうちいずれか一項に記載の組成物を塗布し、レジストパターン上に塗膜を形成する工程、及び
該塗膜を加熱して加熱後塗膜を形成する工程を含み、
レジスト中に上記組成物成分が浸透されたレジストパターンを提供する、レジストパターンメタル化方法。
【請求項11】
基板上にレジスト溶液を塗布する工程、
レジスト膜を露光し現像する工程、
該現像中又は該現像後のレジストパターンに請求項1乃至請求項9のうちいずれか一項に記載の組成物を塗布し、該レジストパターンが埋没する塗膜を形成する工程、
該塗膜を加熱して加熱後塗膜を形成する工程、及び
上記加熱後塗膜を水又は現像液により除去する工程を含み、
レジスト中に上記組成物成分が浸透されたレジストパターンを提供する、レジストパターンメタル化方法。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の方法により得られたメタル化されたレジストパターンにより基板を加工する工程を含む、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィープロセスによって現像過程のレジストパターン上に、又は現像後のレジストパターン上に塗布するための組成物に関し、詳細には、レジスト中に組成物を浸透させ、該組成物成分が浸透されたレジストパターンを得るメタル化プロセスに用いる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野では、基板上に微細なパターンを形成し、このパターンに従ってエッチングを行い、基板を加工する技術が広く用いられている。
リソグラフィー技術の進展に伴い微細パターン化が進み、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーが用いられ、更に電子線(EB)やEUV(Extreme Ultra violet:極端紫外線)を用いた露光技術が検討され、自己組織化リソグラフィ(DSA:Directed Self-Assembly)などの技術も検討されている。
近年、パターンの微細化によりリソグラフィー工程でレジストの露光後に行われる現像と現像液のリンス工程でパターン倒れる生じる現象が問題になっている。
こうしたパターン倒れを抑制する一手段として、レジストの薄膜化が進んでいるものの、一方で、レジスト自体のエッチングの耐性向上は薄膜化に対応して十分に追いついているとは言えず、ハードマスクや半導体基板のエッチングの難易度が上昇している。
【0003】
こうした中、露光後のレジスト表面を現像液で現像後、リンス液で洗浄し、ポリマー成分を含有した塗布液でリンス液を置き換え、レジストパターンをポリマー成分で被覆し、その後にドライエッチングでレジストを除去して置き換えられたポリマー成分でリバースパターンを形成する方法が提案されている。例えば、基板上にレジスト膜を形成する工程と、上記レジスト膜に潜像を形成するために、上記レジスト膜にエネルギー線を選択照射する工程と、上記潜像が形成された上記レジスト膜からレジストパターンを形成するために、上記レジスト膜上に現像液(アルカリ現像液)を供給する工程と、上記基板上の現像液をリンス液に置換するために、上記基板上に上記リンス液を供給する工程と、上記基板上のリンス液の少なくとも一部の溶剤と上記レジスト膜と異なる溶質とを含む塗布膜用材料に置換するために、上記基板上に上記塗布膜用材料を供給する工程と、上記基板上にレジスト膜を覆う塗布膜を形成するために、上記塗布膜用材料中の溶剤を揮発させる工程と、上記レジストパターン上面の少なくとも一部分を露出させる及び上記塗布膜で構成されたマスクパターンを形成するために、上記塗布膜の表面の少なくとも一部分を後退させる工程と、上記マスクパターンを用いて上記基板を加工する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法が開示されている(特許文献1)。
また、フォトレジストパターン上にコーティングするための水性組成物として、アミノ基を含む水溶性化合物と、カルボン酸基とを含有する化合物を含む組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-277052号公報
【文献】特表2013-536463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された従来技術は、現像液やリンス液でレジストを除去しレジストパターンを形成する際に、パターン倒れを生じる可能性があった。
また特許文献2に開示された組成物は、レジストパターン上に塗布する際、均一なコーティングが得られない場合が生じていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、レジストパターンにおいてレジストのメタル化を行うことにより、レジストパターンの倒壊やラフネスを改善し、またエッチング耐性の向上が実現できる組成物、及び該組成物を用いるレジストパターンのメタル化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、金属酸化物や、加水分解性シラン化合物及びその加水分解物・加水分解縮合物と、カルボン酸基を含有しない酸化合物とを組み合わせた組成物が、これを現像中又は現像後のレジストパターンに適用して加熱することにより、レジスト中に上記組成物成分が浸透されたレジストパターンが得られること、及び該組成物成分が浸透されたレジストパターンが、パターン倒壊を抑制でき、エッチング耐性が向上されたものであることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、第1観点として、
(A)成分:金属酸化物(a1)、加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)、及び、上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)からなる群から選ばれる少なくとも1種、
(B)成分:カルボン酸基(-COOH)を含有しない酸化合物、並びに
(C)成分:水性溶媒
を含む、レジストパターンメタル化プロセス用組成物に関する。
第2観点として、上記(B)成分が、スルホン酸基(-SO3H)含有酸化合物である、第1観点に記載の組成物に関する。
第3観点として、上記加水分解性シラン化合物(a2)が、アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シラン(i)及びイオン性官能基を有する有機基を含む加水分解性シラン(ii)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、第1観点又は第2観点に記載の組成物に関する。
第4観点として、上記加水分解性シラン化合物(a2)が、下記式(1)で表される加水分解性シラン及び式(1-1)で表される加水分解性シランからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、第1観点又は第2観点に記載の組成物に関する。
〔R1
a0Si(R2)3-a0〕b0R3
c0 式(1)
[〔Si(R10)2O〕n0Si(R20)2]R30
2 式(1-1)
( 式(1)中、
R3は、アミノ基を含有する有機基、又は、イオン性官能基を有する有機基であって、且つSi-C結合又はSi-N結合によりケイ素原子と結合しているものを表し、そして該R3が複数存在する場合、該R3は環を形成してSi原子に結合していてもよい基を表し、
R1は、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基であり、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合している基を表し、
R2は、アルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表し、
a0は、0又は1の整数を示し、
b0は、1乃至3の整数を示し、
c0は、1又は2の整数を示す。
式(1-1)中、
R10及びR20は、それぞれヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表し、
R30は、アミノ基を含有する有機基、又は、イオン性官能基を有する有機基であって、且つSi-C結合又はSi-N結合によりケイ素原子と結合しているものを表し、そして該R30が複数存在する場合、該R30は環を形成してSi原子に結合していてもよい基を表し、
n0は、1乃至10の整数を表す。)
第5観点として、上記金属酸化物(a1)が、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、アルミニウム、インジウム、スズ、タングステン及びバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物である、第1観点又は第1観点に記載の組成物に関する。
第6観点として、上記(B)成分が、上記(A)成分の100質量部に対して、0.5乃至15質量部の割合で含まれる、第1観点乃至第5観点のうちいずれか一項に記載の組成物。
第7観点として、硬化触媒を更に含む、第1観点乃至第6観点のうちいずれか一項に記載の組成物に関する。
第8観点として、界面活性剤を更に含む、第1観点乃至第7観点のうちいずれか一項に記載の組成物に関する。
第9観点として、光酸発生剤を更に含む、第1観点乃至第8観点のうちいずれか一項に記載の組成物に関する。
第10観点として、基板上にレジスト溶液を塗布する工程、
レジスト膜を露光し現像する工程、
該現像中又は該現像後のレジストパターンに第1観点乃至第9観点のうちいずれか一項に記載の組成物を塗布し、レジストパターン上に塗膜を形成する工程、及び
該塗膜を加熱して加熱後塗膜を形成する工程を含み、
レジスト中に上記組成物成分が浸透されたレジストパターンを提供する、レジストパターンメタル化方法に関する。
第11観点として、基板上にレジスト溶液を塗布する工程、
レジスト膜を露光し現像する工程、
該現像中又は該現像後のレジストパターンに第1観点乃至第9観点のうちいずれか一項に記載の組成物を塗布し、該レジストパターンが埋没する塗膜を形成する工程、
該塗膜を加熱して加熱後塗膜を形成する工程、及び
上記加熱後塗膜を水又は現像液により除去する工程を含み、
レジスト中に上記組成物成分が浸透されたレジストパターンを提供する、レジストパターンメタル化方法に関する。
第12観点として、第10観点又は第11観点に記載の方法により得られたメタル化されたレジストパターンにより基板を加工する工程を含む、
半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレジストパターンメタル化プロセス用組成物は、レジストパターンに適用することにより、該組成物成分が浸透されたレジストパターンを形成できる。そしてそれにより、レジストパターンの剥がれや倒壊といった形状劣化を抑制でき、ライン幅のラフネスを改善し、さらには、エッチング耐性が向上されたレジストパターンを提供することができる。
また本発明のレジストパターンメタル化方法によれば、マスク露光後、レジストの現像中または現像後にレジスト表面に該組成物を接触させ熱処理することによってレジストパターンが被覆され、またレジストパターン間が充填され、レジストパターンの倒壊が防止される。ついで該塗膜を加熱することで、レジスト中に該組成物成分が浸透されたレジストパターンを得ることができ、その結果、該レジストパターンの倒壊が抑制され、エッチング耐性を向上できる。
そして該組成物成分が浸透されたレジストパターンをエッチングマスクとして用いることにより、該レジストパターンの下層に対してパターンをエッチング転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、[4]塗布性評価において、Si含有膜の光学顕微鏡写真(倍率:50K)を示す図であり、
図1(a)は実施例4-2の組成物を用いて得られたSi含有膜、
図1(b)は比較例2の組成物を用いて得られたSi含有膜の光学顕微鏡写真をそれぞれ示す。
【
図2】
図2は、[5]Si成分のレジストへの浸透確認試験において、実施例4-2の組成物を適用したEUVレジスト膜のTOF-SIMSデータを示す図である。
【
図3】
図3は、[6]ArF露光によるレジストパターン作製及びレジストパターンのメタル化(1)において、実施例4-1の組成物を適用したレジストパターンの走査型顕微鏡写真(倍率:100K、パターン上部、パターン断面)を示す図である。
【
図4】
図4は、[6]ArF露光によるレジストパターン作製及びレジストパターンのメタル化(1)において、比較例のレジストパターンの走査型顕微鏡写真(倍率:100K、パターン上部、パターン断面)を示す図である。
【
図5】
図5は、[6]ArF露光によるレジストパターン作製及びレジストパターンのメタル化(1)において、ドライエッチング後の、実施例4-1の組成物を適用したレジストパターン及び転写パターンの走査型顕微鏡写真(倍率:100K、パターン上部、パターン断面)を示す図である。
【
図6】
図6は、[6]ArF露光によるレジストパターン作製及びレジストパターンのメタル化(1)において、ドライエッチング後の、比較例のレジストパターン及び転写パターンの走査型顕微鏡写真(倍率:100K、パターン上部、パターン断面)を示す図である。
【
図7】
図7は、[8]EUV露光によるレジストパターン作製及びレジストパターンのメタル化において、実施例4-1の組成物を適用したレジストパターンの走査型顕微鏡写真(倍率:200K、パターン上部)を示す図である。
【
図8】
図8は、[8]EUV露光によるレジストパターン作製及びレジストパターンのメタル化において、比較例のレジストパターンの走査型顕微鏡写真(倍率:200K、パターン上部)を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明のレジストパターンメタル化方法の一態様を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明のレジストパターンメタル化方法の別の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[レジストパターンメタル化プロセス用組成物]
本発明は下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含むレジストパターンメタル化プロセス用組成物であり、すなわち、(A)成分:金属酸化物(a1)、加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)、及び、上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)(ポリシロキサンともいう)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、(B)成分:カルボン酸基(-COOH)を含有しない酸化合物と、(C)成分:水性溶媒を含む組成物である。
本発明のレジストパターンメタル化プロセス用組成物は、後述するように、レジストパターンに適用することにより、レジスト中に上記組成物成分が浸透されたレジストパターンを得ることができるものである。本発明において、「メタル化」とは、レジストパターンに該組成物中の成分、特に該組成物中のシラン成分又は金属成分(すなわち、該組成物に含まれる(A)成分:金属酸化物(a1)、加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4))が浸透するプロセスをいう。
【0012】
該組成物における固形分の濃度は、当該組成物の全質量に対して、例えば0.01乃至50質量%、0.01乃至20.0質量%、又は0.01乃至10.0質量%とすることができる。固形分とは、当該組成物に含まれる溶媒以外の成分を意味する。
上記固形分中に占める上記(A)成分:金属酸化物(a1)、加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)、及び、上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の割合は、50乃至99.9質量%、又は80乃至99.9質量%とすることができる。
また固形分中における(B)成分:カルボン酸基(-COOH)を含有しない酸化合物の濃度は、0.1質量%乃至50質量%、又は0.1質量%乃至20質量%とすることができる。
【0013】
また、上記(A)成分(金属酸化物(a1)、加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)、及び、上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)からなる群から選ばれる少なくとも1種)は、本発明の組成物100質量部に対して0.001乃至50.0質量部の割合にて含むことができる。すなわち、当該組成物中の上記(A)成分の濃度は、通常0.001乃至50.0質量%、好ましくは0.001乃至20.0質量%とすることができる。
また該組成物中の上記(B)成分(カルボン酸基(-COOH)を含有しない酸化合物)の濃度は、0.0001乃至2.0質量%とすることができる。
【0014】
〔(A)成分〕
(A)成分は、金属酸化物(a1)、加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)、及び、上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)(ポリシロキサンともいう)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
なお(A)成分において、(A1)成分:金属酸化物(a1)と、(A2)成分:加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)、及び、上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)に分類した場合、(A1)成分を単独で用いる場合と、(A2)成分を単独で用いる場合と、(A1)成分と(A2)成分を併用する場合がある。(A1)成分と(A2)成分とを併用する場合には、その割合は、通常、質量比で(A1):(A2)=50:1乃至0.05:1である。
【0015】
〔金属酸化物(a1)〕
金属酸化物(a1)は、例えば、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、アルミニウム、インジウム、スズ、タングステン及びバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物を選択することができる。
【0016】
上記金属酸化物は部分金属酸化物として用いることも可能である。例えば、TiOx(酸化チタン、x=1乃至2)を含む加水分解縮合物、HfOx(酸化ハフニウム、x=1乃至2)を含む加水分解縮合物、ZrOx(酸化ジルコニウム、x=1乃至2)を含む加水分解縮合物、GeOx(酸化ゲルマニウム、x=1乃至2)を含む加水分解縮合物、AlOx(酸化アルミニウム、x=1乃至1.5)を含む加水分解縮合物、InOx(酸化インジウム、x=1乃至1.5)を含む加水分解縮合物、SnOx(酸化スズ、x=1乃至3)を含む加水分解縮合物、WOx(酸化タングステン、x=1乃至3)を含む加水分解縮合物、VOx(酸化バナジウム、x=1乃至2.5)を含む加水分解縮合物等が挙げられる。金属酸化物又は部分金属酸化物は金属アルコキシドの加水分解縮合物として得ることが可能であり、部分金属酸化物はアルコキシド基を含んでいても良い。
【0017】
[加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)、及び、上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)]
(A)成分として、加水分解性シラン化合物(a2)、上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)及び上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができ、これらは混合物として用いることもできる。
また後述するように、加水分解性シラン化合物(a2)を加水分解し、得られた加水分解物(a3)を縮合した加水分解縮合物(a4)として用いることができる。加水分解縮合物(a4)を得る際に、加水分解が完全に完了しない部分加水分解物や、未反応のシラン化合物が加水分解縮合物に混合されている場合、その混合物の形態にて用いることもできる。この加水分解縮合物(a4)は、加水分解及び縮合が完全に完了しているポリシロキサン構造を有するポリマーだけでなく、シラン化合物の加水分解及び縮合によって得られたポリシロキサン構造を有するポリマーであるが、部分的に縮合が完了しておらず、Si-OH基が残存しているものも含む概念である。
【0018】
上記加水分解性シラン化合物(a2)は、上記式(1)及び上記式(1-1)で表される加水分解性シランからなる群から選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。
上記加水分解性シラン化合物の加水分解物(a3)は、加水分解性シラン化合物(a2)の加水分解物に相当するものである。
また、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(a4)は、加水分解性シラン化合物(a2)の加水分解物(a3)の縮合物である。なお(a4)はポリシロキサンとも称する。
【0019】
式(1)中、R3は、アミノ基を含有する有機基、又は、イオン性官能基を有する有機基であって、且つSi-C結合又はSi-N結合によりケイ素原子と結合しているものを表し、そして該R3が複数存在する場合、該R3は環を形成しSi原子に結合していてもよい基を表す。
R1はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基であり、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合している基を表す。
R2はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表す。
a0は0又は1の整数を示し、b0は1乃至3の整数を示し、c0は1又は2の整数を示す。
【0020】
式(1-1)中、R10及びR20は、それぞれヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表す。
R30は、アミノ基を含有する有機基、又は、イオン性官能基を有する有機基であって、且つSi-C結合又はSi-N結合によりケイ素原子と結合しているものを表し、そして該R30が複数存在する場合、該R30は環を形成しSi原子に結合していてもよい基を表す。
n0は、1乃至10の整数を表し、例えば1乃至5の整数、又は1の整数を挙げることができる。
【0021】
式(1)中のR3又は式(1-1)中のR30として、アミノ基を含有する有機基を挙げることができる。
アミノ基としては1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基を用いることが可能であり、分子中にアミノ基を1個有する場合や、複数個(2個、3個)有することもできる。それらは脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基等を用いることができる。
【0022】
また、式(1)中のR3又は式(1-1)中のR30として、イオン性官能基を有する有機基を挙げることができる。イオン性官能基としてはアンモニウムカチオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、硝酸アニオン、リン酸アニオン、スルホニウムアニオン、アルコラートアニオン等が挙げられる。アンモニウムカチオンは第1級アンモニウム、第2級アンモニウム、第3級アンモニウム、第4級アンモニウムが挙げられる。
イオン性官能基の対イオンはアニオンとしてクロライドアニオン、フルオライドアニオン、ブロマイドアニオン、ヨーダイドアニオン、硝酸アニオン、硫酸アニオン、リン酸アニオン、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、マレイン酸アニオン、シュウ酸アニオン、マロン酸アニオン、メチルマロン酸アニオン、コハク酸アニオン、リンゴ酸アニオン、酒石酸アニオン、フタル酸アニオン、クエン酸アニオン、グルタル酸アニオン、クエン酸アニオン、乳酸アニオン、サリチル酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、オクタン酸アニオン、デカン酸アニオン、オクタンスルホン酸アニオン、デカンスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン、フェノールスルホン酸アニオン、スルホサリチル酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、クメンスルホン酸アニオン、p-オクチルベンゼンスルホン酸アニオン、p-デシルベンゼンスルホン酸アニオン、4-オクチル2-フェノキシベンゼンスルホン酸アニオン、4-カルボキシベンゼンスルホン酸アニオン等を示すことができる。また、アニオン性官能基を有するシラン、又はアニオン性官能基を有するポリシロキサン、又は分子内塩を形成するためのアニオン性官能基を有するポリシロキサンの単位構造で合っても良い。
そして、イオン性官能基の対イオンはカチオンとして、水素カチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、オキソニウムカチオン等が挙げられる。
【0023】
上述したアルキル基としては、直鎖又は分枝を有する炭素原子数1乃至10のアルキル基を挙げることができ、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0024】
また環状アルキル基を用いることもでき、例えば炭素原子数3乃至10の環状アルキル基が挙げられ、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0025】
上述したアリ-ル基としては、例えば炭素原子数6乃至20のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-メルカプトフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-アミノフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基が挙げられる。
【0026】
また上述したハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アリール基としては、上述したアルキル基及びアリール基の1以上の水素原子が、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等のハロゲン原子により置換した基が挙げられる。
【0027】
上述したアルケニル基としては、例えば炭素原子数2乃至10のアルケニル基が挙げられる。具体的にはエテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
なお上記アルケニル基は、1以上の水素原子がフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等のハロゲン原子により置換(ハロゲン化アルケニル基)していてもよい。
【0028】
上述したエポキシ基を有する有機基としては、グリシドキシメチル、グリシドキシエチル、グリシドキシプロピル、グリシドキシブチル、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
上述したアクリロイル基を有する有機基としては、アクリロイルメチル、アクリロイルエチル、アクリロイルプロピル基等が挙げられる。
上述したメタクリロイル基を有する有機基としては、メタクリロイルメチル、メタクリロイルエチル、メタクリロイルプロピル基等が挙げられる。
上述したメルカプト基を有する有機基としては、エチルメルカプト、ブチルメルカプト、ヘキシルメルカプト、オクチルメルカプト基等が挙げられる。
上述したシアノ基を有する有機基としては、シアノエチル、シアノプロピル基等が挙げられる。
【0029】
上述した式(1)中のR2並びに式(1-1)中のR10及びR20におけるアルコキシ基としては、例えば炭素原子数1乃至20の直鎖、分岐、環状のアルキル部分を有するアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基、1-メチル-n-ペンチロキシ基、2-メチル-n-ペンチロキシ基、3-メチル-n-ペンチロキシ基、4-メチル-n-ペンチロキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基及び1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基等が、また環状のアルコキシ基としてはシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、1-メチル-シクロプロポキシ基、2-メチル-シクロプロポキシ基、シクロペンチロキシ基、1-メチル-シクロブトキシ基、2-メチル-シクロブトキシ基、3-メチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロプロポキシ基、2,3-ジメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-シクロプロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、1-メチル-シクロペンチロキシ基、2-メチル-シクロペンチロキシ基、3-メチル-シクロペンチロキシ基、1-エチル-シクロブトキシ基、2-エチル-シクロブトキシ基、3-エチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロブトキシ基、1,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,2-ジメチル-シクロブトキシ基、2,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,4-ジメチル-シクロブトキシ基、3,3-ジメチル-シクロブトキシ基、1-n-プロピル-シクロプロポキシ基、2-n-プロピル-シクロプロポキシ基、1-i-プロピル-シクロプロポキシ基、2-i-プロピル-シクロプロポキシ基、1,2,2-トリメチル-シクロプロポキシ基、1,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、2,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-1-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロポキシ基等が挙げられる。
【0030】
上述した式(1)中のR2並びに式(1-1)中のR10及びR20におけるアシルオキシ基は、例えば炭素原子数1乃至20のアシルオキシ基が挙げられる。具体的には、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-2-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、及びトシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0031】
上述した式(1)中のR2、式(1-1)中のR10及びR20並びに式(3)中のR7におけるハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0032】
式(1)で表される加水分解性シランにおいて、R3がアミノ基を含有する有機基であるシランの例を以下に示すが、これらに限定されない。
なお、下記例示化合物の中で、Tは加水分解性基を表し、例えばアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表すものであり、これらの基の具体的例としては上述の例を挙げることができる。Tは、特にメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が好ましい。
【0033】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【0034】
式(1)で表される加水分解性シランにおいて、R3がイオン性官能基を有する有機基であるシランの例、並びに、式(1-1)で表される加水分解性シランにおいて、R30がイオン性官能基を有する有機基であるシランの例を以下に示すが、これらに限定されない。
なお、下記例示化合物の中で、Tは加水分解性基を表し、例えばアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表すものであり、これらの基の具体例としては上述の例を挙げることができる。Tは、特にメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が好ましい。
下記式中のX、Yはイオン性官能基の対イオンを意味し、具体例として上述したイオン性官能基の対イオンとしてのアニオン、カチオンが挙げられる。なお、式中ではX-、Y+はそれぞれ1価の陰イオン、1価の陽イオンとして示されているが、X-、Y+が上述のイオンの例示の中で2価イオンを示す場合はイオン表示の前にある係数は1/2倍した数値となり、同様に3価イオンを示す場合はイオン表示の係数は1/3倍した数値となる。
【0035】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
【化76】
【化77】
【化78】
【0036】
本発明の組成物における加水分解性シラン化合物(a2)は、式(1)で表される加水分解性シラン及び式(1-1)で表される加水分解性シランからなる群から選ばれる少なくとも1種とともに、他の加水分解性シラン化合物(b)を組み合わせて用いることができる。
本発明に用いられる加水分解性シラン化合物(b)の好ましい具体例としては、下記式(2)で表される加水分解性シラン及び下記式(3)で表される加水分解性シランからなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0037】
R4
aSi(R5)4-a 式(2)
式(2)中、R4は、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基であり、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合している基を表す。
R5は、アルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表す。
aは、0乃至3の整数を表す。
【0038】
〔R6
cSi(R7)3-c〕2Zb 式(3)
式(3)中、R6は、アルキル基を表す。
R7は、アルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表す。
Zは、アルキレン基又はアリーレン基を表す。
bは、0又は1の整数を表し、cは、0又は1の整数を表す。
【0039】
式(2)中のR4におけるアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、又はシアノ基を有する有機基並びにR6におけるアルキル基の具体例等は、R1について上述したものと同じものが挙げられる。
式(2)中のR5及び式(3)中のR7におけるアルコキシ基、アシルオキシ基及びハロゲン基の具体例等は、R2について上述したものと同じものが挙げられる。
またZにおけるアルキレン基又はアリーレン基としては、上述したアルキル基又はアリール基由来の2価の有機基が挙げられる。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリエチレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。
アリーレン基の具体例としては、パラフェニレン基、メタフェニルレン基、オルトフェニレン基、ビフェニル-4,4’-ジイル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
加水分解性シラン化合物(b)としては、式(2)で表される加水分解性シランを使用することが好ましい。
【0041】
加水分解性シラン化合物(a2)として、式(1)及び式(1-1)で表される加水分解性シランと、加水分解性シラン(b)(式(2)及び式(3)で表される加水分解性シランからなる群から選ばれる少なくとも1種)を、モル比で、式(1)及び式(1-1)で表される加水分解性シラン:加水分解性シラン(b)=3:97乃至100乃至0、又は30:70乃至100:0、又は50:50乃至100:0、又は70:30乃至100:0、又は97:3乃至100:0の割合で含む加水分解性シランを使用することができる。
【0042】
式(2)で表される加水分解性シランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラクロルシラン、テトラアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアセチキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアミロキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリベンジルオキシシラン、メチルトリフェネチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β-シアノエチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
式(3)で表される加水分解性シランの具体例としては、例えば、メチレンビストリメトキシシラン、メチレンビストリクロロシラン、メチレンビストリアセトキシシラン、エチレンビストリエトキシシラン、エチレンビストリクロロシラン、エチレンビストリアセトキシシラン、プロピレンビストリエトキシシラン、ブチレンビストリメトキシシラン、フェニレンビストリメトキシシラン、フェニレンビストリエトキシシラン、フェニレンビスメチルジエトキシシラン、フェニレンビスメチルジメトキシシラン、ナフチレンビストリメトキシシラン、ビストリメトキシジシラン、ビストリエトキシジシラン、ビスエチルジエトキシジシラン、ビスメチルジメトキシジシラン等が挙げられる。
【0044】
また上記の例示以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、上記加水分解性シラン化合物(a2)は、上記の例示以外のその他の加水分解性シランを含んでいてよい。
【0045】
本発明の好ましい一態様においては、上記組成物は、少なくとも上記加水分解性シラン化合物(a2)の加水分解縮合物(a4)を含む。この場合において、該組成物は、上述のポリシロキサンである加水分解縮合物(a4)とともに、縮合がされていない(部分)加水分解物や、未反応のシラン化合物を含んでいてもよい。
本発明の好ましい一態様において、上記加水分解縮合物(a4)は、式(1)で表される加水分解性シラン及び式(1-1)で表される加水分解性シランからなる群から選ばれる少なくとも1種と、式(2)で表される加水分解性シラン及び式(3)で表される加水分解性シランからなる群から選ばれる少なくとも1種と、所望によりその他加水分解シランとを少なくとも用いて得られる加水分解縮合物を含む。
【0046】
上記の加水分解性シラン化合物(a2)の加水分解縮合物(ポリシロキサンともいう)(a4)は、その重量平均分子量を例えば500~1,000,000とすることができる。組成物中での加水分解縮合物の析出等を抑制する観点等から、重量平均分子量を好ましくは500,000以下、より好ましくは250,000以下、より一層好ましくは100,000以下とすることができ、保存安定性と塗布性の両立の観点等から、重量平均分子量を好ましくは700以上、より好ましくは1,000以上とすることができる。
なお、これらの重量平均分子量は、GPC分析によるポリスチレン換算で得られる分子量、及びGFC(水系GPC)分析によるPEG/PEO換算で得られる分子量である。
GPC分析は、例えばGPC装置(商品名HLC-8220GPC、東ソー(株)製)、GPCカラム(商品名ShodexKF803L、KF802、KF801、昭和電工(株)製)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を1.0ml/分とし、標準試料としてポリスチレン(昭和電工(株)製)を用いて行うことができる。
またGFC分析は、例えばGFC装置(商品名RID-10A)、(株)島津製作所製)、GFCカラム(商品名Shodex SB-803HQ、昭和電工製)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)として水及び0.5M酢酸・0.5M硝酸ナトリウム水溶液を用い、流量(流速)を1.0ml/分とし、標準試料としてプルラン及びPEG/PEO(昭和電工株式会社製)を用いて行うことができる。
【0047】
本発明で好適に用いられる加水分解縮合物は以下に例示されるが、これらに限定されない。
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【0048】
シルセスキオキサン(ポリシルセスキオキサンとも呼ぶ)型のポリシロキサンとして式(2-1-4)、式(2-2-4)、式(2-3-4)が例示される。
式(2-1-4)はラダー型シルセスキオキサンを示しnは1乃至1000、又は1乃至200を示す。式(2-2-4)はカゴ型シルセスキオキサンを示す。式(2-3-4)はランダム型シルセスキオキサンを示す。式(2-1-4)、式(2-2-4)、式(2-3-4)において、Rはアミノ基を含有する有機基、又は、イオン性官能基を有する有機基であり、且つSi-C結合又はSi-N結合によりケイ素原子と結合している基であり、これらの基の例として、上述の例示を示すことができる。
【0049】
上記の加水分解シラン化合物(a2)の加水分解物(a3)や加水分解縮合物(a4)は、上述の加水分解性シラン化合物(a2)を加水分解及び縮合することで得られる。
本発明で用いる加水分解性シラン化合物(a2)は、ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基を有し、すなわち加水分解性基であるアルコキシシリル基、アシロキシシリル基、ハロゲン化シリル基を含む。
これら加水分解性基の加水分解及び縮合には、加水分解性基の1モル当たり、通常0.5~100モル、好ましくは1~10モルの水を用いる。
また加水分解及び縮合の際、加水分解及び縮合を促進する目的等で加水分解触媒を用いてもよいし、用いずに加水分解を行ってもよい。加水分解触媒を用いる場合は、加水分解性基の1モル当たり、通常0.0001~10モル、好ましくは0.001~1モルの加水分解触媒を用いることができる。
加水分解と縮合を行う際の反応温度は、通常、室温以上、加水分解に用いられ得る有機溶媒の常圧での還流温度以下の範囲であり、例えば20乃至110℃、また例えば20乃至80℃とすることができる
加水分解は完全に加水分解を行う、すなわち、全ての加水分解性基をシラノール基に変えてもよいし、部分加水分解する、即ち未反応の加水分解性基を残してもよい。即ち、加水分解及び縮合反応後に、加水分解縮合物中に未縮合の加水分解物(完全加水分解物、部分加水分解物)や、またモノマー(加水分解性シラン化合物)が残存していてもよい。なお、本発明においては、上述の通り、加水分解縮合物とは、シラン化合物の加水分解及び縮合によって得られたポリマーであるが、部分的に縮合しておらず、Si-OH基が残存しているものも含む概念である。
加水分解し縮合させる際に使用可能な加水分解触媒としては、金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができる。下記に例示を挙げるが、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
加水分解触媒としての金属キレート化合物は、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、等のジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等などを挙げることをできるが、これらに限定されない。
【0051】
加水分解触媒としての有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0052】
加水分解触媒としての無機酸は、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0053】
加水分解触媒としての有機塩基は、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができるが、これらに限定されない。 加水分解触媒としての無機塩基は、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0054】
これらの触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましく、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
一例として、本発明において加水分解性シラン化合物(a2)(式(1)で表される加水分解性シラン及び式(1-1)で表される加水分解性シランからなる群から選択される加水分解性シラン、さらには、式(2)で表される加水分解性シラン及び式(3)で表される加水分解性シランからなる群から選択される加水分解性シラン、さらには所望によりその他加水分解性シラン)の加水分解物(a3)は、上記加水分解性シラン化合物(a2)をアルカリ性物質の存在下、特に有機塩基の存在下で加水分解したものであり、それら加水分解物をさらに縮合して加水分解縮合物(a4)(ポリシロキサン)を形成することが好ましい。
ここでアルカリ性物質は加水分解性シランの加水分解の際に添加されるアルカリ性触媒であるか、又は加水分解性シラン自体の分子内に存在するアミノ基である。
上記アルカリ性物質が、加水分解性シラン分子内に存在するアミノ基である場合には、上述の式(1)又は式(1-1)で表される加水分解性シラン化合物(a4)の上記例示の中で、側鎖にアミノ基を含有するシランが例示される。
また、アルカリ性触媒を添加する場合は、上述の加水分解触媒として説明した無機塩基、有機塩基が挙げられる。特に有機塩基が好ましい。
加水分解性シランの加水分解物はアルカリ性物質の存在下で加水分解したものであることが好ましい。
【0056】
上記組成物は、更に加水分解性シラン、その加水分解性シランをアルカリ性物質存在下で加水分解した加水分解物、又はそれらの混合物を含むことができる。
【0057】
また、本発明では、3個の加水分解性基を有するシランを加水分解したシルセスキオキサンを用いることができる。このシルセスキオキサンは酸性物質の存在下に3個の加水分解性基を有するシランを加水分解し縮合した加水分解縮合物(a4)である。ここで用いる酸性物質は上述の加水分解触媒の中の酸性触媒を用いることができる。
加水分解縮合物(a4)はランダム型、ラダー型、かご型のシルセスキオキサンを用いることができる。
【0058】
また加水分解及び縮合をする際、溶媒として有機溶媒を用いてもよく、その具体例としては、例えばn-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
加水分解反応の終了後、反応溶液をそのまま又は希釈若しくは濃縮し、必要に応じてそれを中和することで、或いはイオン交換樹脂を用いて処理することで、加水分解及び縮合に用いた酸や塩基等の加水分解触媒を取り除くことができる。また、このような処理の前又は後に、減圧蒸留等によって、反応溶液から副生成物のアルコールや水、用いた加水分解触媒等を除去することができる。
なおこのようにして得られた加水分解縮合物(a4)(ポリシロキサン)は、有機溶媒中に溶解しているポリシロキサンワニスの形態として得られ、これをそのまま後述するレジストパターンメタル化プロセス用の組成物として用いることができる。
【0060】
〔(B):カルボン酸基(-COOH)を含有しない酸化合物〕
本発明の組成物は、(B)成分としてカルボン酸基を含有しない酸化合物を含む。
上記酸化合物は、好ましくは、スルホン酸基(-SO3H)を含有する酸化合物である。例えば、メタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホサリチル酸、カンファースルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、p-オクチルベンゼンスルホン酸、p-デシルベンゼンスルホン酸、4-オクチル2-フェノキシベンゼンスルホン酸、4-カルボキシベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
上記(B)成分は、(A)成分の100質量部に対して、0.5乃至15質量部の割合とすることが好ましい。
【0061】
〔(C)成分:水性溶媒〕
本発明の組成物は、(C)成分として水性溶媒を含む。水性溶媒は、好ましくは、水を含み、より好ましくは、水性溶媒は、水が100%、即ち水のみの溶媒からなる。この場合において、水を水溶溶媒として意図して用いた際に不純物として水に微量含有される有機溶媒等の存在は否定されるものではない。
なお本発明の組成物はレジストパターンに塗布するため、レジストパターンを溶解する可能性がある溶媒は使用することができない。しかし、水溶媒に混合可能な水溶性有機溶媒であって、レジストパターンを溶解しない溶媒、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒を、本発明の組成物は含むことができる。
こうしたレジストパターンを溶解しない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類等を挙げることができるが、これらに限定されない。これら水溶性の有機溶媒は1種を単独で、また2種以上を混合して使用してもよい。
また上記水溶性の有機溶媒は水との混合溶媒として使用することもできる。この場合、水と水溶性の有機溶媒との混合比は特に限定されないが、例えば質量比にて、水:水溶性の有機溶媒=0.1:99.9~99.9:0.1である。
また、水溶性の有機溶媒に加えて、本発明の効果を損ねない範囲において、水に難溶性の有機溶媒や疎水性の有機溶媒を併用してもよい。
【0062】
〔組成物の調製〕
本発明のレジストパターンメタル化プロセス用組成物は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む。
上記組成物は、上記(A)乃至(C)成分及び所望によりその他の成分が含まれる場合には当該その他の成分を混合することで製造できる。この際、(A)成分(例えば加水分解縮合物(a4)等)を含む溶液を予め準備し、この溶液を、溶媒やその他の成分と混合してもよい。
混合順序は特に限定されるものではない。例えば、(A)成分(例えば加水分解縮合物(a4)等)を含む溶液に、(B)成分、(C)成分を加えて混合し、その混合物にその他の成分を加えてもよく、(A)成分(例えば加水分解縮合物(a4)等)等を含む溶液と、溶媒と、その他の成分を同時に混合してもよい。
また上記組成物を製造する途中の段階において、又は全ての成分を混合した後に、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0063】
本発明のレジストパターンメタル化プロセス用組成物において、(A)成分として加水分解縮合物(a4)を含む場合、特にそこに含まれる加水分解縮合物の安定化のために、無機酸、有機酸、アルコール、有機アミン、光酸発生剤、金属酸化物、界面活性剤、またはそれらの組み合わせを添加することができる。なお、(A)成分として(a4)以外の成分を含む場合においても本発明の効果を損なわない限りにおいて、下記成分を含んでいてもよい。
【0064】
上記無機酸としては塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。
上記有機酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、フタル酸、クエン酸、グルタル酸、乳酸、サリチル酸等が挙げられる。中でも、シュウ酸、マレイン酸が好ましい。
これら酸を添加する場合、その添加量は、(A)成分100質量部に対して0.5~15質量部とすることができる。
ただし、カルボン酸基(-COOH)を含有する酸の添加は、本発明の組成物の塗布性を悪化させる要因になり得るため、本来、本発明の組成物においては配合されないことが好ましい。
【0065】
また上記アルコールとしては塗布後の加熱により飛散しやすいものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、i-プロパノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールを添加する場合、その添加量は、本発明の組成物100質量部に対して0.001質量部~20質量部とすることができる。
【0066】
上記有機アミンとしては、例えばアミノエタノール、メチルアミノエタノール、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラブチル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソブチル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラブチル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソブチル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラブチル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソブチル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラブチル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソブチル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,4-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,4-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,4-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラブチル-1,4-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソブチル-1,4-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,5-ペンチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,5-ペンチレンジアミン等が挙げられる。加える有機アミンは本発明の組成物100質量部に対して0.001乃至20質量部とすることができる。
【0067】
光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
オニウム塩化合物の具体例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフエート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート及びビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムアダマンタンカルボキシレートトリフルオロエタンスルホン酸塩、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホン酸塩、トリフェニルスルホニウムメタンスルホン酸塩、トリフェニルスルホニウムフェノールスルホン酸塩、トリフェニルスルホニウム硝酸塩、トリフェニルスルホニウムマレイン酸塩、ビス(トリフェニルスルホニウム)マレイン酸塩、トリフェニルスルホニウム塩酸塩、トリフェニルスルホニウム酢酸塩、トリフェニルスルホニウムトリフルオロ酢酸塩、トリフェニルスルホニウムサリチル酸塩、トリフェニルスルホニウム安息香酸塩、トリフェニルスルホニウム水酸化物等のスルホニウム塩化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
スルホンイミド化合物の具体例としては、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド及びN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
ジスルホニルジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、及びメチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
上記光酸発生剤は一種のみを使用することができ、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
光酸発生剤が使用される場合、その割合としては、(A)成分100質量部に対して、0.01乃至30質量部、または0.1乃至20質量部、または0.5乃至10質量部である。
【0072】
上記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、UV硬化系界面活性剤が挙げられる。
例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤;商品名エフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)(旧(株)トーケムプロダクツ)製)、商品名メガファックF171、F173、R-08、R-30、R-40、R-40N(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤;及びオルガノシロキサンポリマ-KP341(信越化学工業(株)製、商品名)、BYK302、BYK307、BYK333、BYK341、BYK345、BYK346、BYK347、BYK348(BYK社製、商品名)等のシリコン系界面活性剤を挙げることができる。また、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム等のカチオン系界面活性剤;オクタン酸塩、デカン酸塩、オクタンスルホン酸塩、デカン酸スルホン酸塩、パルミチン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;BYK307、BYK333、BYK381、BYK-UV-3500、BYK-UV-3510、BYK-UV-3530(BYK社製、商品名)等のUV硬化系界面活性剤を挙げることができる。
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また2種以上の組み合わせで使用することもできる。界面活性剤が使用される場合、その割合としては、(A)成分100質量部に対して0.0001乃至5質量部、または0.001乃至5質量部、または0.01乃至5質量部である。
【0073】
[レジストパターンメタル化方法]
本発明のレジストパターンメタル化プロセス用組成物は、マスク露光後のレジストパターン表面に接触させることにより、レジスト中に該組成物成分が浸透されたレジストパターンを形成することができる。このように、該組成物をレジスト中に浸透させ、特に該組成物中の金属成分によってレジストパターンをメタル化させる方法も、本発明の対象である。
【0074】
より詳細には、本発明は、下記[a1]~[d1]工程を含む、レジスト中に上記組成物成分が浸透されたレジストパターンを提供する、レジストパターンメタル化方法を対象とする。
[a1]基板上にレジスト溶液を塗布する工程
[b1]レジスト膜を露光し現像する工程
[c1]現像中又は現像後のレジストパターンに、本発明のレジストパターンメタル化プロセス用組成物を塗布し、レジストパターン上に塗膜を形成する工程
[d1]該塗膜を加熱して加熱後塗膜を形成する工程
【0075】
工程[a1]に用いられる基板としては、半導体装置の製造に使用される基板が挙げられ、例えば、シリコンウエハー基板、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板、ポリイミド基板、及び低誘電率材料(low-k材料)被覆基板等が挙げられる。
【0076】
工程[a1]に用いられるレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。例えば、ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。
商品として入手可能な具体例としては、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられるが、これらに限定されない。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0077】
また、上記フォトレジストに替えて電子線リソグラフィー用レジスト(電子線レジストとも称する)、又はEUVリソグラフィー用レジスト(EUVレジストとも称する)を用いることができる。
上記電子線レジストとしては、ネガ型、ポジ型いずれも使用できる。その具体例としては、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジストなどがある。これらの電子線レジストを用いた場合も照射源を電子線としてフォトレジストを用いた場合と同様にレジストパターンを形成することができる。
また上記EUVレジストとしては、メタクリレート樹脂系レジストを用いることができる。
【0078】
レジスト溶液を、塗布後に、例えば焼成温度70乃至150℃で、焼成時間0.5乃至5分間行うことで、膜厚が例えば10乃至1000nmのレジスト(膜)を得ることができる。
なお、レジスト溶液や現像液や以下に示す塗布材料は、スピンコート、ディップ法、スプレー法等で塗布又は被覆できるが、特にスピンコート法が好ましい。
【0079】
なお、該方法は、上記工程[a1]の前に、基板上にレジスト下層膜を形成する工程[a1-0]を含むことができる。このレジスト下層膜は反射防止機能や有機系のハードマスク機能を有するものである。
具体的には工程[a1]のレジスト溶液の塗布の前に、上記基板上にレジスト下層膜を形成する工程[a1-0]を行い、その上にレジスト溶液を塗布する工程[a1]を行うことができる。また、工程[a1-0]では、半導体基板上にレジスト下層膜(有機下層膜とも称する)を形成してその上にレジストを形成させること、あるいはさらにレジスト下層膜の上にケイ素のハードマスクを形成し、その上にレジストを形成させることができる。
【0080】
上記工程[a1-0]で用いられるレジスト下層膜は上層レジスト膜の露光時の乱反射を防止するもの、また、レジスト膜との密着性を向上する目的で用いるものとすることができ、例えばアクリル系樹脂やノボラック系樹脂を用いることができる。レジスト下層膜は半導体基板上に膜厚1乃至1000nmの被膜として形成することができる。
また上記工程[a1-0]に用いられるレジスト下層膜は有機樹脂を用いたハードマスクとすることができ、この場合、炭素含有量が高く水素含有量が低い材料が用いられる。例えばポリビニルナフタレン系樹脂、カルバゾールノボラック樹脂、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられる。これらは半導体基板上に膜厚5乃至1,000nmの被膜として形成することができる。
【0081】
また上記工程[a1-0]に用いられるケイ素のハードマスクとしては、加水分解性シランを加水分解して得られたポリシロキサンを用いることができる。例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、及びフェニルトリエトキシシランを加水分解し得られるポリシロキサンを例示することができる。これらは上記レジスト下層膜の上に膜厚5乃至200nmの被膜として形成することができる。
【0082】
工程[b1]において、レジスト膜の露光は所定のマスクを通して露光が行なわれる。
露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びEUV光(波長13.5nm)、電子線等を使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃乃至150℃、加熱時間0.3乃至10分間から適宜、選択される。
【0083】
次いで、現像液によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光された部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
この場合、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5乃至50℃、時間10乃至600秒から適宜選択される。
【0084】
また本発明では、現像液として有機溶剤を用いることができる。露光後に現像液(溶剤)によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光されない部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
この場合、現像液(有機溶剤)としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度は5乃至50℃、時間は10乃至600秒から適宜選択される。
【0085】
工程[c1]として、現像中又は現像後のレジストパターンに、好ましくは現像後のレジストパターンに、本発明の組成物を塗布し、レジストパターンの表面上に塗膜を形成する。ここでは、レジストパターンを被覆するように、すなわちレジストパターンの上部、側壁及び底部を覆うように、塗膜を形成する。
この際、塗膜の厚さは、レジストパターンの高さやスペース幅、溶媒の蒸発等による膜厚減少を加味し、目的の加熱後塗膜の厚さを考慮して適宜決定する。
【0086】
そして工程[d1]は、上記塗膜を加熱して加熱後塗膜を形成する工程である。加熱は焼成温度80乃至200℃で、0.5乃至5分間行われることが好ましい。この加熱の際に、本発明の組成物成分がレジストパターン中に浸透する。
以上説明した方法によって、レジスト中に上記組成物成分が浸透されたレジストパターンを得ることができるが、これと同時に、レジストパターン表面には、加熱後塗膜が形成される。レジストパターン表面からの加熱後塗膜の厚さは、レジストパターンの高さやスペース幅により異なるため一概に規定できないが、例えば1nm乃至20nm程度とすることができる。
【0087】
また本発明における方法は、下記[a2]~[e2]工程を含む、レジスト中に上記組成物成分が浸透されたレジストパターンを提供する、レジストパターンメタル化方法を対象とする。
[a2]基板上にレジスト溶液を塗布する工程
[b2]レジスト膜を露光し現像する工程
[c2]現像中又は現像後のレジストパターンに、本発明のレジストパターンメタル化プロセス用組成物を塗布し、レジストパターン上に塗膜を形成する工程
[d2]該塗膜を加熱して加熱後塗膜を形成する工程
[e2]上記加熱後塗膜を水又は現像液により除去する工程
ここで、工程[a2]、[b2]及び[d2]は、それぞれ、上記工程[a1]([a1-0]を含む)、[b1]及び[d1]に記載した手順と同じ手順にて実施できる。
【0088】
工程[c2]は、現像中又は現像後のレジストパターンに、現像後のレジストパターンに、本発明の組成物を塗布し、このとき、レジストパターンが埋没するように塗膜を形成する点において[c1]工程と相違する。すなわち、レジストパターン底部からの塗膜の厚さがパターンの高さの100%超となるように塗膜が形成される。この際、レジストパターン底部からの塗膜の厚さは、工程[e2]の条件(不要な加熱後塗膜の除去に用いる除去液やその他の諸条件)等を考慮して適宜決定される。
【0089】
その後、工程[e2]は、工程[d2]の加熱によって得られた加熱後塗膜を水又は現像液により除去する工程である。上記現像液としては、先の[b2]工程で使用した現像液と同種の現像液を用いることができる。水としては、イオン交換水、超純水等のこの分野で用いられるものを用いることができる。
本工程によって、不要な加熱後塗膜を除去し、本発明の組成物成分が浸透されたレジストパターンを得ることができるが、加熱後塗膜を除去する条件次第で、レジストパターン表面から加熱後塗膜が除去され切る場合と、レジストパターン表面に加熱後塗膜が残る場合があり得る。レジストパターン表面に加熱後塗膜が残る場合のその厚さは、レジストパターンの高さやスペース幅、工程[e2]の条件(不要な加熱後塗膜の除去に用いる除去液やその他の諸条件)により異なるため一概に規定できないが、通常20nm以下である。レジストパターン表面からの加熱後塗膜の厚さの調整は、工程[e2]の条件を変更することで行うことができる。なお、工程[e2]の条件次第で、レジストパターン表面から加熱後塗膜が除去され切り、更にレジストパーン自体が細くなる場合もあり得る。
【0090】
なお、前述の工程[d1]の後、上記工程[d2]と同様に、例えばレジストパターン表面に形成された加熱後塗膜を薄くする等の目的で、加熱工程[d1]を経た塗膜を水又は現像液により除去する工程を含んでいてもよい。ここで用いられる水及び現像液は、先の[b1]工程で使用した水及び現像液と同種の水及び現像液を用いることができる。
【0091】
図9に、工程[a1]~[d1]を含むレジストパターンメタル化方法の一例の模式図、
図10に、工程[a2]~[e2]を含むレジストパターンメタル化方法の一例の模式図をそれぞれ示す(なおこれらの図には、後述する[半導体装置の製造方法]基板を加工する工程(図中、[f1]、[f2])も併記している)。なお本発明はこれら図に示す工程に限定されるものではない。
図中、Subは基板を、UCはレジストの下層膜(炭素含有層(SOC)、有機系反射防止膜(BARC)、無機系反射防止膜(Si-HM)等)、PRはレジスト膜をそれぞれ示す。
【0092】
[半導体装置の製造方法]
本発明は、上述の[レジストパターンメタル化方法]に引き続き、該方法を経て得られたメタル化されたレジストパターンにより基板を加工する工程を含む、半導体装置の製造方法も対象である。
なお、基板とレジストの間にレジスト下層膜(炭素含有層(SOC)、有機系反射防止膜(BARC)、無機系反射防止膜(Si-HM)等)が形成されている場合には、上記メタル化されたレジストパターンを保護膜として、順次その下の層(膜)を加工することができる。以下、レジスト下層膜等が形成されている場合も含め、詳述するが、本発明は、下記に限定されるものではない。
【0093】
レジスト下層膜が形成されている場合、まず、メタル化されたレジストパターン(上層)を保護膜として、レジスト下層膜の除去(パターン化)が行われる(
図9及び
図10における[f1]及び[f2])。
レジスト下層膜の除去はドライエッチングによって行われ、テトラフルオロメタン(CF
4)、パーフルオロシクロブタン(C
4F
8)、パーフルオロプロパン(C
3F
8)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素、三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等のガスを使用することができる。
このとき、樹脂系の下層膜(有機下層膜)の除去は、酸素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。これは、本発明に係るメタル化されたレジストパターンは、酸素系ガスによるドライエッチングでは除去されにくいことによる。なお酸素系ガスに、窒素系ガスを混合してドライエッチングに用いてもよい。
また、ケイ素のハードマスクが設けられている場合、ハロゲン系ガスを使用することが好ましい。例えばフッ素系ガスが用いられ、例えば、テトラフルオロメタン(CF
4)、パーフルオロシクロブタン(C
4F
8)、パーフルオロプロパン(C
3F
8)、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン(CH
2F
2)等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記のドライエッチングにより、パターン化されたレジスト下層膜、パターン化されたケイ素のハードマスクを得ることができる。
【0094】
ついで、メタル化されたレジストパターンを保護膜として、また、レジスト下層膜等が設けられている場合には、メタル化されたレジストパターンとパターン化されたレジスト下層膜等を保護膜として、半導体基板の加工が行なわれる。半導体基板の加工はフッ素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。
フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH2F2)等が挙げられる。
【実施例】
【0095】
以下、合成例及び実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
【0096】
[1]ポリマー(加水分解縮合物)の合成
(合成例1)
水5.89g、テトラヒドロフラン120.54gを500mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、アミノプロピルトリエトキシシラン40.18g(全シラン中で100モル%)を混合溶液に滴下した。
滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液に水120.54gを加え、反応副生物であるエタノール、テトラヒドロフラン、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)水溶液を得た。
さらに水を加え、水100%の溶媒比率(水のみの溶媒)として、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。得られたポリマーは式(2-1-1)に相当した。
【0097】
(合成例2)
水89.99gを500mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン30.00g(全シラン中で100モル%)を混合溶液に滴下した。
滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液に水179.98gを加え、反応副生物であるメタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)水溶液を得た。
さらに水を加え、水100%の溶媒比率(水のみの溶媒)として、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。得られたポリマーは式(2-4-1)に相当した。
【0098】
(合成例3)
水4.69g、アセトン89.99gを500mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン30.00gを混合溶液に滴下した。その後、1M硝酸水溶液を7.23g添加した。
1M硝酸水溶液の添加後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液に水179.98gを加え、反応副生物であるメタノール、アセトン、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)水溶液を得た。
さらに水を加え、水100%の溶媒比率(水のみの溶媒)として、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。得られたポリマーは式(2-9-2)に相当した。
【0099】
(合成例4)
水91.16gを500mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン22.23g、トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物8.16gを混合溶液に滴下した。
滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液に水91.16gを加え、反応副生物であるメタノール、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)水溶液を得た。
さらに水を加え、水100%の溶媒比率(水のみの溶媒)として、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。得られたポリマーは式(2-10-2)に相当した。
【0100】
(合成例5)
0.5M塩酸水溶液93.13gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、アミノプロピルトリエトキシシラン6.87g(全シラン中で100モル%)を混合溶液に滴下した。
滴下後、23℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、5日間反応させた。その後、反応副生物であるエタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)を得た。その後、反応副生物であるエタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)を得た。
さらに水を加え、水100%の溶媒比率(水のみの溶媒)として、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。得られたポリマーはラダー型シルセスキオキサンである式(2-1-4)に相当し、Rは塩化アンモニウムプロピル基であった。(R=C3H6NH3
+Cl-)。
その後、アニオン交換樹脂6.8g添加し、塩素イオンを除去した。得られたポリマーはラダー型シルセスキオキサンである式(2-1-4)に相当し、Rはアミノプロピル基であった。(R=C3H6NH2)
【0101】
(合成例6)
酢酸5.39g、超純水179.58gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン3.72g(全シラン中で30モル%)を混合溶液に滴下した。室温にて5分撹拌後、その水溶液をテトラエトキシシラン8.73g(全シラン中で70モル%)に滴下した。
滴下後、23℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、2時間反応させた。その後、反応副生物であるメタノール、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)を得た。その後、50℃、続いて100℃で反応副生物であるエタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)を得た。
その後、水を加え、水100%の溶媒比率(水のみの溶媒)として、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。得られたポリマーは式(2-5-5)に相当した。
【0102】
[2]組成物の調製
上記合成例で得られたポリシロキサン(ポリマー)、添加剤、溶媒を表1に示す割合で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、ポリマー含有塗布液をそれぞれ調製した。表1中の各添加量は質量部で示した。
なお表1中のポリマー(ポリシロキサン)の添加量は、ポリマー溶液の添加量ではなく、ポリマー自体の添加量を示した。
また表1中、NfAはノナフルオロブタンスルホン酸、DBSAはドデシルベンゼンスルホン酸、Acは酢酸を示している。
【0103】
【0104】
[3]有機レジスト下層膜形成用組成物の調製
窒素下、100mLの四口フラスコにカルバゾール(6.69g、0.040mol、東京化成工業(株)製)、9-フルオレノン(7.28g、0.040mol、東京化成工業(株)製)、パラトルエンスルホン酸一水和物(0.76g、0.0040mol、東京化成工業(株)製)を加え、1,4-ジオキサン(6.69g、関東化学(株)製)を仕込み撹拌し、100℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。24時間後、60℃まで放冷した。
法令した反応混合物に、クロロホルム(34g、関東化学(株)製)を加えて希釈し、希釈した混合物をメタノール(168g、関東化学(株)製)に添加して沈殿させた。
得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で80℃、24時間乾燥し、目的とする式(X)で表されるポリマー(以下PCzFLと略す)9.37gを得た。
なお、PCzFLの
1H-NMRの測定結果は以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ7.03-7.55(br,12H),δ7.61-8.10(br,4H),δ11.18(br,1H)
また、PCzFLの重量平均分子量Mwは、GPCによるポリスチレン換算で重量平均分子量Mwは2,800、多分散度Mw/Mnは1.77であった。
【化87】
【0105】
PCzFL 20gに、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテック・インダストリーズ(株)(旧 三井サイテック(株))製、商品名パウダーリンク1174)3.0gと、触媒としてピリジニウムパラトルエンスルホネート0.30gと、界面活性剤としてメガファックR-30(DIC(株)製、商品名)0.06gとを混合し、混合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート88gに溶解させた。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いる有機レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0106】
[4]塗布性評価試験
実施例1-1~6-1、実施例1-2~6-2、並びに比較例1及び2で得られた組成物を、スピナーを用いてシリコンウエハー上にそれぞれ塗布して塗膜を形成し、ホットプレート上で100℃で1分間加熱し、Si含有膜(膜厚20nm)をそれぞれ形成した。
得られたSi含有膜を、光学顕微鏡を用いて観察した。観察した結果、均一に成膜されているものを「良好」、縞模様があり均一に成膜されていないものを「不良」として評価した。得られた結果を表2に示す。また、実施例4-2及び比較例2より得られたSi含有膜の光学顕微鏡写真(倍率:50K)を
図1((a)実施例4-2、(b)比較例2)に示す。
【0107】
【0108】
[5]Si成分のレジストへの浸透確認試験
EUV用レジスト溶液(メタクリレート樹脂系レジスト)をスピナーによりシリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上で110℃にて1分間加熱し、膜厚30nmのフォトレジスト膜を形成した。
その後、実施例4-2で得られた組成物を、スピナーを用いてフォトレジスト膜上に塗布して塗膜を形成し、ホットプレート上で100℃で1分間加熱することで、Si含有膜(膜厚100nm)を形成しつつ、EUVレジストに上記組成物成分(特にシラン成分)を浸透させた。その後超純水を用いて、レジストに浸透されていない組成物成分を除去し、上記組成物成分が浸透されたEUVレジスト膜を得た。その後、該EUVレジスト膜についてTOF-SIMS評価を行い、膜中にSi成分が確認されるかどうか確認した。
なお比較例として、EUVレジスト膜に対して直接TOF-SIMS評価を行った。
得られた結果を表3に示す。また、実施例4-2の組成物を適用したEUVレジスト膜のTOF-SIMSデータを
図2に示す。
なおTOF-SIMSの測定条件は、以下の通りである。
Primary Ion(一次イオン): Bi
3++
Sputter Ion : Cs
Area(測定エリア) : 50×50μm
2
Sputter Area: 250×250μm
2
Polarity : Nega
【0109】
【0110】
[6]ArF露光によるレジストパターン作製及びレジストパターンのメタル化(1)
(レジストパターニング評価:アルカリ現像を行うPTD(ポジ型アルカリ現像)工程を経由した評価)
上記有機レジスト下層膜形成用組成物を、スピナーを用いてシリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上で240℃で60秒間ベークし、膜厚200nmの有機下層膜(A層)を得た。
A層の上に、市販のArF用レジスト溶液(JSR(株)製、商品名:AR2772JN)をスピナーにより塗布し、ホットプレート上で110℃にて1分間加熱し、膜厚100nmのフォトレジスト膜(B層)を形成した。
(株)ニコン製NSR-S307Eスキャナー(波長193nm、NA、σ:0.85、0.93/0.85)を用い、現像後にフォトレジストのライン幅及びそのライン間の幅が0.062μm、すなわち0.062μmのラインアンドスペース(L/S)=1/1のデンスラインが形成されるように設定されたマスクを通して、フォトレジスト膜の露光を行った。その後、ホットプレート上100℃で60秒間ベークし、冷却後、2.38%アルカリ水溶液を用いて60秒現像し、レジストパターンを形成した。
続いて、このレジストパターンに実施例1-1~実施例6-1の組成物(塗布液)を塗布(膜厚5nm)し、現像に用いた2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液をこれら実施例の組成物に置き換えた。なお比較例として、レジストパターンに対し水を塗布し、現像に用いた2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を水に置き換えた。
その後、上記シリコン基板を1,500rpmで60秒間スピンして組成物中の溶剤を乾燥させた後、100℃で60秒間加熱して加熱後塗膜を形成し、上記レジストパターンの側壁、上部から組成物成分を浸透させた。
このようにして得られたフォトレジストパターンについて、パターン断面の観察並びにパターン上部の観察により、パターン形状並びにライン幅ラフネスを確認し、評価した。
パターン形状の観察において、大きなパターン剥がれやアンダーカット、ライン底部の太り(フッティング)が発生していないものを「良好」、アンダーカットやフッティングが発生したものを「不良(アンダーカット)」「不良(フッティング)」などとして評価した。
また、ライン幅ラフネスについて、ライン幅の3シグマ値が、6.0nm以上のものを「不良」、6.0nm未満のものを「良好」として評価した。
得られた結果を表4に示す。また、実施例4-1の組成物を適用したレジストパターン及び比較例のレジストパターンの走査型顕微鏡写真(倍率:100K、パターン上部、パターン断面)を、
図3(実施例4-1)及び
図4(比較例)に示す。
【0111】
さらにその後、組成物成分を浸透させたレジストパターンをマスクとして、O
2とN
2ガスによるドライエッチングを行い、有機下層膜(A層)にパターンを転写した。
得られたパターンについて、ドライエッチング前後でのライン幅変動値が、10nm以上のものを「不良」、10nm未満のものを「良好」として評価した。
得られた結果をあわせて表4に示す。また、ドライエッチング後の、実施例4-1の組成物を適用したレジストパターン及び転写パターン、及び、ドライエッチング後の、比較例のレジストパターン及び転写パターンの走査型顕微鏡写真(倍率:100K、パターン上部、パターン断面)を、
図5(実施例4-1)及び
図6(比較例)に示す。
【0112】
【0113】
[7]ArF露光によるレジストパターン作製及びレジストパターンのメタル化(2)
(レジストパターニング評価:アルカリ現像を行うPTD工程を経由した評価)
上記有機レジスト下層膜形成用組成物を、スピナーを用いてシリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上で240℃で60秒間ベークし、膜厚200nmの有機下層膜(A層)を得た。
A層の上に、市販のArF用レジスト溶液(JSR(株)製、商品名:AR2772JN)をスピナーにより塗布し、ホットプレート上で110℃にて1分間加熱し、膜厚100nmのフォトレジスト膜(B層)を形成した。
(株)ニコン製NSR-S307Eスキャナー(波長193nm、NA、σ:0.85、0.93/0.85)を用い、現像後にフォトレジストのライン幅及びそのライン間の幅が0.062μm、すなわち0.062μmのラインアンドスペース(L/S)=1/1のデンスラインが形成されるように設定されたマスクを通して、フォトレジスト膜の露光を行った。その後、ホットプレート上100℃で60秒間ベークし、冷却後、2.38%アルカリ水溶液を用いて60秒現像し、レジストパターンを形成した。
続いて、このレジストパターンに実施例1-2~実施例6-2の組成物(塗布液)を塗布(膜厚120nm)し、現像に用いた2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液をこれら実施例の組成物に置き換えた。なお比較例として、レジストパターンに対し水を塗布し、現像に用いた2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を水に置き換えた。
その後、上記シリコン基板を1,500rpmで60秒間スピンして組成物中の溶剤を乾燥させた後、100℃で60秒間加熱して加熱後塗膜を形成し、上記レジストパターンの側壁、上部から組成物成分(特にシラン成分)を浸透させた。
その後、再度、2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を塗布し、レジストパターンに浸透されていない組成物成分を除去した。
このようにして得られたフォトレジストパターンについて、パターン断面の観察並びにパターン上部の観察により、パターン形状並びにライン幅ラフネスを確認し、評価した。
パターン形状の観察において、大きなパターン剥がれやアンダーカット、ライン底部の太り(フッティング)が発生しないものを「良好」、アンダーカットやフッティングが発生したものを「不良(アンダーカット)」「不良(フッティング)」などとして評価した。
また、ライン幅ラフネスについて、ライン幅の3シグマ値が、6.0nm以上のものを「不良」、6.0nm未満のものを「良好」として評価した。
得られた結果を表5に示す。
【0114】
さらにその後、組成物成分を浸透させたレジストパターンをマスクとして、O2とN2ガスによるドライエッチングを行い、有機下層膜(A層)にパターンを転写した。
得られたパターンについて、ドライエッチング前後でのライン幅変動値が、10nm以上のものを「不良」、10nm未満のものを「良好」として評価した。
得られた結果をあわせて表5に示す。
【0115】
【0116】
実施例4-2においては、ドライエッチング前のラインパターンサイズが62nmから72nmと変化していた。これは、レジストラインの両側、上側に組成物成分が5nmの膜厚で覆われていることを意味している。
【0117】
[8]EUV露光によるレジストパターン作製及びレジストパターンのメタル化:ポジ型アルカリ現像
上記有機レジスト下層膜形成用組成物を、スピナーを用いてシリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上で240℃60秒間ベークし、膜厚90nmの有機下層膜(A層)を得た。
その上に、EUV用レジスト溶液(メタクリレート樹脂系レジスト)をスピンコートし130℃で1分間加熱することにより、EUVレジスト層(B)層を形成した。これをEUV露光装置(NXE3300)を用い、NA=0.33、σ=0.90/0.67、Dipole45の条件で露光した(露光量49mJ、パターンのライン&スペース:22mm)。
露光後、露光後加熱(PEB、110℃1分間)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、アルカリ現像液(2.38%TMAH水溶液)を用いて30秒現像した。
続いてこのレジストパターンに、実施例4-1の組成物(塗布液)を塗布(膜厚5nm)し、現像に用いた2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を実施例4-1の組成物に置き換えた。なお比較例として、レジストパターンに対し水を塗布し、現像に用いた2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を水に置き換えた。
その後、上記シリコン基板を1,500rpmで60秒間スピンして組成物中の溶剤を乾燥させた後、100℃で60秒間加熱して加熱後塗膜を形成し、上記レジストパターンの側壁、上部から組成物成分(特にシラン成分)を浸透させた。
その後、再度、2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を塗布し、レジストパターンに浸透されていない組成物成分を除去した。
このようにして得られたフォトレジストパターンについて、パターン断面の観察並びにパターン上部の観察により、パターン形状を確認し、評価した。
パターン形状の観察において、大きなパターン剥がれやアンダーカット、ライン底部の太り(フッティング)が発生しないものを「良好」、レジストパターンが剥がれ倒壊しているという好ましくない状態を「倒れ」と評価した。
得られた結果を表6に示す。また、実施例4-1の組成物を適用したレジストパターン及び比較例のレジストパターンの走査型顕微鏡写真(倍率:200K、パターン上部)を、
図7(実施例4-1)及び
図8(比較例)に示す。
【0118】