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特許7606163防眩層付基材及び画像表示装置並びに防眩層付基材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】防眩層付基材及び画像表示装置並びに防眩層付基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20241218BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241218BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20241218BHJP
【FI】
G02B5/02 C
B32B27/00 101
G02B1/111
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021556125
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2020042081
(87)【国際公開番号】W WO2021095770
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2019207410
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】江口 和輝
(72)【発明者】
【氏名】保坂 和義
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/025289(WO,A1)
【文献】特開2005-162795(JP,A)
【文献】特開2008-020864(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070426(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/075201(WO,A1)
【文献】特開2002-131507(JP,A)
【文献】特開2001-343505(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に直接又は他の層を介して形成され、表面に凹凸構造を有する防眩層とを有し、前記防眩層は、含フッ素有機基を有するポリシロキサンを含有する防眩性被膜形成用組成物の硬化物から形成され、
前記ポリシロキサンが、下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を含有するアルコキシシラン成分を重縮合して得られ、
前記防眩層の平坦な被膜の上に凸部が間欠的に形成されている表面の凹凸構造において、前記凸部の占有割合である凸部表面被覆率が5%~70%であることを特徴とする、防眩層付基材。
11 Si(OR 12 (1)
(R 11 は、フッ素原子で置換された有機基を表し、R 12 は炭素数1~5の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記ポリシロキサンが、更に下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物及び下記式(3)で表されるアルコキシシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するアルコキシシラン成分を重縮合して得られる、請求項に記載の防眩層付基材。
Si(OR (2)
31 Si(OR324-n (3)
(式中、Rは炭化水素基を表す。R31はフッ素原子で置換されていない有機基又は水素原子を表し、R32は炭素数1~5の炭化水素基を表し、nは1~3の整数である。)
【請求項3】
前記フッ素原子で置換されてない有機基が、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、シクロアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルキル基、ヒドロキシ基含有アルキル基、ウレイド基含有アルキル基、アミノ基含有アルキル基、エポキシ基含有アルキル基、メルカプト基含有アルキル基、イソシアネート基含有アルキル基又はアリール基から選ばれる、請求項1又は2に記載の防眩層付基材。
【請求項4】
前記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、又はテトラブトキシシランである、請求項2又は3に記載の防眩層付基材。
【請求項5】
前記式(3)で表されるアルコキシシラン化合物が、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランγ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン又はγ-ウレイドプロピルトリエトキシシランである、請求項2~4のいずれか一項に記載の防眩層付基材。
【請求項6】
前記含フッ素有機基を有するポリシロキサンが、下記式(F)で表される有機基を含有するポリシロキサンをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の防眩層付基材。
CF(CFCHCH-* (F)
(式中、kは0~12の整数である。*は結合位置を表す。)
【請求項7】
前記防眩性被膜形成用組成物が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びメチルイソブチルケトンから選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の防眩層付基材。
【請求項8】
前記防眩性被膜形成用組成物が、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2-ブタノール及び2-メチル-1-プロパノールから選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の防眩層付基材。
【請求項9】
前記凹凸構造の前記凸部の高さが50nm~2,000nmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の防眩層付基材。
【請求項10】
前記防眩層のHAZEが0.3%~40%である、請求項1~のいずれか一項に記載の防眩層付基材。
【請求項11】
前記防眩層の屈折率が1.3~1.49の範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載の防眩層付基材。
【請求項12】
前記防眩層が、高屈折率層上に形成されたものであり、該高屈折率層の屈折率は前記防眩層の屈折率よりも高いものであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の防眩層付基材。
【請求項13】
前記高屈折率層の屈折率が、1.5~2.1の範囲である、請求項12に記載の防眩層付基材。
【請求項14】
前記防眩層上に形成された機能性層とをさらに具備することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の防眩層付基材。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の防眩層付基材を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の防眩性被膜形成用組成物を防眩性被膜形成用塗布液とし、前記防眩性被膜形成用塗布液を基材上に塗布して防眩層を形成して、防眩層付基板を得る工程を含む、防眩層付基材の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性(アンチグレア機能)に優れるとともに、ギラツキ(スパークリング)が発生せずに、良好な視認性を与える防眩層付基材及びこれを具備する画像表示装置並びに防眩層付基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の各種デバイスが具備する画像表示装置(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等)は、室内照明(蛍光灯等)、太陽光等の外光が表示面に映り込むと、反射像によって画像の視認性が低下することがある。
【0003】
外光の映り込みを抑制する方法として、画像表示装置の表示面に防眩処理(アンチグレア処理)を施す方法がある。防眩処理の方法としては、ガラス等の透明基材の表面をフッ酸等の薬剤によりエッチングする処理(特許文献1参照)、表面に凹凸のある有機系の防眩層を形成する処理(特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5839134号公報
【文献】国際公開2018/070426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ガラス基板表面を薬剤でエッチングする処理においては、薬剤の危険性が問題となり、表面に有機系の防眩層を形成する処理においては、ガラス基板への塗布性や、膜上に更なる機能性層を形成させる際の塗布性、密着性に問題が生じる。
【0006】
また、最近の画像表示装置の高精細化に伴って、防眩層を表示面側に配置すると、表面にランダムな光の強弱が現れるギラツキ現象が発生しやすいという問題もあった。
【0007】
以上の点から、本発明は、防眩性(アンチグレア機能)に優れるとともに、ギラツキが発生せずに、良好な視認性を与える防眩層付基材及びこれを具備する画像表示装置の提供を目的とする。更には、機能性層を形成する際の塗布性と密着性に優れた防眩層付基材及びこれを具備する画像表示装置並びに防眩層付基材の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、下記構成により上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
かかる本発明は、
1.基材と、前記基材上に直接又は他の層を介して形成され、表面に凹凸構造を有する防眩層とを有し、前記防眩層は、含フッ素有機基を有するポリシロキサンを含有する防眩性被膜形成用組成物の硬化物から形成され、凸部表面被覆率が5%~70%であることを特徴とする、防眩層付基材、
2.前記凹凸構造の凸部の高さが50nm~2,000nmである、1に記載の防眩層付基材、
3.前記防眩層のHAZEが0.3%~40%である、1又は2に記載の防眩層付基材、
4.前記防眩層の屈折率が1.3~1.49の範囲である、1~3のいずれかに記載の防眩層付基材、
5.前記防眩層が、高屈折率層上に形成されたものであり、該高屈折率層の屈折率は前記防眩層の屈折率よりも高いものであることを特徴とする、1~4のいずれかに記載の防眩層付基材、
6.前記高屈折率層の屈折率が、1.5~2.1の範囲である、5に記載の防眩層付基材、
7.前記防眩層上に形成された機能性層とをさらに具備することを特徴とする、1~6のいずれかに記載の防眩層付基材、
8.1~7のいずれかに記載の防眩層付基材を備えることを特徴とする画像表示装置、
9.含フッ素有機基を有するポリシロキサンを含有する防眩性被膜形成用塗布液を、基材上に塗布して防眩層を形成する工程を含む、防眩層付基材の製造方法、
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防眩性(アンチグレア機能)に優れるとともに、ギラツキ(スパークリング)が発生せずに、良好な視認性を与える防眩層付基材及びこれを具備する画像表示装置を提供することができる。また、機能性層を形成する際の塗布性と密着性に優れた防眩層付基材及びこれを具備する画像表示装置並びに防眩層付基材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
<防眩性被膜層形成用組成物>
本発明に用いる防眩性形成用組成物は、含フッ素有機基を有するポリシロキサン(以下、成分(A)ともいう)を少なくとも具備し、さらにこれを溶解する溶媒を具備する。
【0012】
<成分(A)>
成分(A)は、フッ素原子で置換された有機基を側鎖に持つポリシロキサンである。このようなフッ素原子で置換された有機基は、脂肪族基や芳香族基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換した有機基である。上記フッ素原子で置換された有機基は、中でも、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されたアルキル基や水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されたエーテル結合を含むアルキル基、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されたフェニル基を含む有機基などが好ましい。上記フッ素原子で置換された有機基が有するフッ素原子の数も特に限定されない。上記フッ素原子で置換された有機基の好ましい炭素数は、1~20、より好ましくは3~15、特に好ましくは3~8である。これらの具体例を挙げると、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘプタデカフルオロデシル基、ペンタフルオロフェニルプロピル基が挙げられる。
【0013】
これらの中でも、透明性の高い被膜を得易い観点で、パーフルオロアルキル基を有する有機基が好ましく、更に好ましくは、下記式(F)で表される有機基である。
CF(CFCHCH-* (F)
(式中、kは0~12の整数である。*は結合位置を表す。)
上記式(F)で表される有機基の具体例として、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘプタデカフルオロデシル基が挙げられる。
【0014】
本発明においては、上記の如き側鎖を有するポリシロキサンを複数種併用してもよい。
【0015】
上述したフッ素原子で置換された有機基を側鎖に持つポリシロキサンを得る方法は特に限定されない。一般的には、上記した有機基を側鎖に持つアルコキシシラン化合物を重縮合して得られる。
【0016】
中でも、式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を含有するアルコキシシラン成分を重縮合して得られるポリシロキサンが好ましい。
11Si(OR12 (1)
【0017】
ここで、式(1)のR11は、上記したフッ素原子で置換された有機基を表すが、この有機基が有するフッ素原子の数は特に限定されない。
【0018】
また、式(1)のR12は炭素数1~5の炭化水素基を表し、好ましくは、炭素数1~5の飽和炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基である。
【0019】
このような式(1)で表されるアルコキシシランの中でも、R11がパーフルオロアルキル基であるアルコキシシランが好ましく、R11が上記式(F)で表される有機基であるアルコシシランがより好ましい。
【0020】
式(F)で表される有機基を有するアルコキシシランの具体例として、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
特に、透明性の高い被膜を得易い観点で、kが2~12の整数の場合が好ましい。
【0022】
本発明においては、式(1)で表されるアルコキシシランのうちの少なくとも1種を用いればよいが、必要に応じて複数種を用いてもよい。
【0023】
また、上記フッ素原子で置換された有機基を側鎖に持つポリシロキサンは、上記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物以外のアルコキシシラン化合物(以下、その他のアルコキシシラン化合物ともいう。)を含むアルコキシシラン成分を重縮合して得られるポリシロキサンであってもよい。その他のアルコキシシラン化合物の具体例としては、下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物及び下記式(3)で表されるアルコキシシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されない。
Si(OR(2)
31 Si(OR324-n (3)
(式中、R31はフッ素原子で置換されていない有機基又は水素原子を表し、R32は炭素数1~5の炭化水素基を表し、nは1~3の整数である。)
【0024】
式(2)のRは、炭化水素基を表すが、炭素数が少ない方が反応性は高いので、炭素数1~5の飽和炭化水素基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基である。
【0025】
このようなテトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられ、市販品として容易に入手可能である。
【0026】
式(3)のR32は、それぞれ独立して、炭素数1~5の炭化水素基を表す。R32は同一でも、それぞれ異なっていてもよい。
【0027】
式(3)中のR31は、炭素数1~20の有機基が好ましく、より好ましくは炭素数1~15の有機基である。R31は同一でも、それぞれ異なっていてもよい。上記フッ素原子で置換されていない有機基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基(オクタデシル基)等の炭素数1~18のアルキル基;ビニル基等の2~18のアルケニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;3-(メタ)アクリルオキシプロピル基(γ-(メタ)アクリロキシプロピル基)等の(メタ)アクリルオキシ基含有アルキル基;3-ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシル基含有アルキル基;γ-ウレイド(3-ウレイド)プロピル基のウレイド基含有アルキル基;γ-アミノ(3-アミノ)プロピル基、2-アミノエチルアミノメチル基、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピル基等のアミノ基含有アルキル基;γ-グリシドキシ(3-グリシジルオキシ)プロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基含有アルキル基;γ-メルカプト(3-メルカプト)プロピル基等のメルカプト基含有アルキル基;3-イソシアネートプロピル基等のイソシアネート基含有アルキル基;フェニル基等のアリール基などが挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、フェニル基、ビニル基、γ-アミノプロピル基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-メタクリロキシプロピル基がより好ましい。
【0028】
このような、式(3)で表されるアルコキシシランの具体例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン及びジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシランが挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
式(1)で表されるアルコキシシラン化合物の合計使用量は、被膜が得られやすい観点から、成分(A)を得るために用いるアルコキシシラン化合物の合計100モル%に対して、3モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましい。また、ゲルや異物の生成を抑制する観点から、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。
【0030】
その他のアルコキシシラン化合物の使用量は、成分(A)を得るために用いる全アルコキシシラン化合物の合計100モル%に対して、上限は97モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましい。下限は60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。
【0031】
(ポリシロキサンの合成)
本発明に用いるポリシロキサンを縮合する方法は特に限定されないが、例えば、アルコキシシランをアルコールやグリコールなどの溶媒中で加水分解・縮合する方法が挙げられる。その際、加水分解・縮合反応は、部分加水分解及び完全加水分解のいずれであってもよい。完全加水分解の場合は、理論上、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5倍モルの水を加えればよいが、通常は0.5倍モルより過剰量の水を加える。
【0032】
本発明においては、上記反応に用いる水の量は、所望により適宜選択することができるが、通常、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.1~7倍モル、好ましくは0.1~5倍モルである。
【0033】
また、通常、加水分解・縮合反応を促進する目的で、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、蟻酸、蓚酸、マレイン酸などの酸; アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、トリエチルアミンなどのアルカリ;塩酸、硫酸、又は硝酸などの金属塩を触媒として用いてもよい。この場合、反応に用いる触媒の量は、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.001~0.1倍モル程度が好ましく、0.01~0.06倍モルがより好ましい。さらに、アルコキシシランが溶解した溶液を加熱することで、加水分解・縮合反応を促進させることも一般的である。その際、加熱温度及び加熱時間は所望により適宜選択でき、好ましくは反応系を50℃~180℃にして液の蒸発、揮散等が起こらないように、密閉容器中又は還流下で数十分から数十時間行われる。例えば、50℃で24時間加熱・撹拌したり、還流下で2~10時間加熱・撹拌するなどの方法が挙げられる。
【0034】
また、別法として、例えば、アルコキシシラン、溶媒及び蓚酸の混合物を加熱する方法が挙げられる。具体的には、あらかじめアルコールに蓚酸を加えて蓚酸のアルコール溶液とした後、当該溶液とアルコキシシランを混合し、加熱する方法である。その際、蓚酸の量は、アルコキシシランが有する全アルコキシ基の1モルに対して0.2~2モルとすることが一般的であり、好ましくは0.5~2モルである。この方法における加熱は、液温50℃~180℃で行うことができ、好ましくは、液の蒸発、揮散等が起こらないように、例えば、密閉容器中又は還流下で数十分~数十時間行われる。
【0035】
上記のそれぞれの方法において、複数のアルコキシシランを用いる場合は、複数のアルコキシシランをあらかじめ混合して用いてもよいし、複数のアルコキシシランを順次加えてもよい。
【0036】
上記の方法でアルコキシシランを重縮合する際には、仕込んだアルコキシシランの珪素原子の合計量をSiOに換算した濃度(以下、SiO換算濃度と称す。)が、20質量%以下とされることが一般的であり、15質量%以下が好ましい。このような濃度範囲で任意の濃度を選択することにより、ゲルの生成を抑え、均質なポリシロキサンの溶液を得ることができる。
【0037】
アルコキシシランを重縮合する際に用いられる溶媒は、前記したアルコキシシラン化合物を溶解するものであれば特に限定されない。一般的には、アルコキシシランの重縮合反応によりアルコールが生成するため、アルコール類やアルコール類と相溶性の良好な有機溶媒が用いられる。
【0038】
上記の重縮合する際に用いられる溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノールなどのアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテルなどが挙げられる。本発明においては、上記の有機溶媒を複数種混合して用いてもよい。
【0039】
<防眩性被膜形成用組成物>
本発明の防眩性被膜形成用組成物である塗布液(以下、単に塗布液又は防眩性被膜形成用塗布液ともいう)を調製する方法は特に限定されない。一例として、上記で得られたポリシロキサン溶液に下記の溶媒群(A)、溶媒群(B)及び必要に応じてその他の溶媒群を添加してもよい。また、必要に応じて、上記ポリシロキサン溶液を、濃縮する又は他の溶媒に置換してから調製する方法を用いてもよい。
【0040】
<溶媒群(A)>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液が含有する溶媒群(A)は、沸点160℃未満のグリコールエーテルおよびその誘導体、もしくはケトン類から選ばれる少なくとも1種である。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類及びその誘導体、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類が挙げられるが、その中でも、塗布安定性の観点から、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトンが好ましい。
【0041】
溶媒群(A)の防眩性被膜形成用塗布液中の含有量は、成分(A)が有する珪素原子の合計量をSiO換算した質量の1質量部に対して、0.1~300質量部であり、好ましくは0.3~100質量部であり、特に好ましくは0.8~50質量部である。
【0042】
<溶媒群(B)>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液が含有する溶媒群(B)は、沸点120℃以下のアルコール類から選ばれる少なくとも1種である。具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノールが挙げられるが、その中でも、組成物の貯蔵安定性の観点から、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノールが好ましい。
【0043】
溶媒群(B)の防眩性被膜形成用塗布液中の含有量は、成分(A)が有する珪素原子の合計量をSiO2換算した質量の1質量部に対して、0.5~500質量部であり、好ましくは1~200質量部であり、特に好ましくは2~150質量部である。
【0044】
<その他の溶媒>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液には、塗布液の安定性等の観点から、溶媒群(A)及び(B)以外の溶媒(以下、その他の溶媒とも称する)が必要に応じ含まれても良い。
【0045】
その他の溶媒の例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオールなどのグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホトリアミド、m-クレゾール、テトラヒドロフランなどが挙げられる。その中でも、入手性および組成物の貯蔵安定性の観点から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランは好ましく用いられる。
【0046】
防眩性被膜形成用塗布液中の成分(A)が有する珪素原子の合計量をSiOに換算した濃度(SiO換算濃度)は、0.2~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましい。
【0047】
<その他の成分>
本発明においては、成分(A)、溶媒群(A)および(B)以外のその他の成分、例えば、無機微粒子、メタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマー、レベリング剤、界面活性剤等の成分が含まれていてもよい。
【0048】
無機微粒子としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、フッ化マグネシウム微粒子等の微粒子が好ましく、これらの無機微粒子のコロイド溶液が特に好ましい。このコロイド溶液は、無機微粒子粉を分散媒に分散したものでもよいし、市販品のコロイド溶液であってもよい。
【0049】
本発明においては、無機微粒子を含有させることにより、形成される硬化被膜の表面形状やその他の機能を付与することが可能となる。無機微粒子としては、その平均粒子径が0.001~0.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.001~0.1μmである。無機微粒子の平均粒子径が0.2μmを超える場合には、調製される塗布液を用いて形成される硬化被膜の透明性が低下する場合がある。
【0050】
無機微粒子の分散媒としては、水及び有機溶剤を挙げることができる。コロイド溶液としては、被膜形成用塗布液の安定性の観点から、pH又はpKaが1~10に調整されていることが好ましい。より好ましくは2~7である。
【0051】
コロイド溶液の分散媒に用いる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエ-テル類を挙げることができる。これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して分散媒として使用することができる。
【0052】
メタロキサンオリゴマー、あるいはメタロキサンポリマーとしては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、タンタル、アンチモン、ビスマス、錫、インジウム、亜鉛等の単独又は複合酸化物前駆体が用いられる。メタロキサンオリゴマー、あるいはメタロキサンポリマーとしては、市販品であっても、金属アルコキシド、硝酸塩、塩酸塩、カルボン酸塩等のモノマーから、加水分解等の常法により得られたものであってもよい。
【0053】
<防眩層及び防眩層の形成>
本発明の防眩層は、上述した防眩性被膜形成用塗布液を基材に塗布し、熱硬化することで得ることができる。すなわち、防眩層は、防眩性被膜形成用塗布液に含有される含フッ素有機基を有するポリシロキサンの硬化物からなる。
【0054】
ここで、防眩層は、表面に凹凸構造を有する。凹凸構造は、凸部の高さが50nm~2,000nmの微細凹凸構造である。防眩層全体の厚さは50nm~3,000nmであり、この防眩層の表面側が微細凹凸構造となっている。すなわち、均一で平坦な被膜の上に微細凹凸構造が形成されていることになるので、平坦な被膜の上に凸部が間欠的に形成されていると表現することもできる。なお、この場合、凸部が形成されていない部分が凹部となる。微細凹凸構造の凸部の占有割合である凸部表面被覆率は、5%~70%、好ましくは、10%~60%である。
【0055】
上記凸部表面被覆率は、具体的には、以下の方法により測定することができる。即ち、白色光干渉型光学顕微鏡(ContourGT、BRUKER社製)を用いて、表面形状を測定し、更に形状解析することにより行う。表面形状測定は、VSI測定方式で高密度CCDカメラを使用し、ズームレンズ倍率が0.55倍、対物レンズ倍率が50倍、測定領域が230μm×170μm、光源が白色光源、光量及びThreshholdは、ノイズが測定に極力入らない、適切な条件で行う。更に、形状解析として、TermsRemoval(CylinderandTilt)にて、フィルタ処理を行った後、画像を256階調のグレースケールに処理する。上記凸部表面被覆率の測定は、膜面の任意の箇所で行い、前記処理画像を1900分割し、そのエリアの明度を求め、明度が高い領域を凸部、明度が低く、かつ均一化した領域を平坦部とし、凸部/平坦部×100と計算した値をその膜表面の凸部表面被覆率とする。測定時の環境は23℃及び30RH%下である。
【0056】
上記防眩層は、ギラツキを抑制しつつ、視認性の高い画像表示装置が得られる観点から、HAZEとして、0.3%~40%が好ましく、より好ましくは0.5%~30%となる。なお、本明細書および特許請求の範囲において、HAZEは、JIS K7163に準拠して、ヘイズメーター(スガ試験機(株)社製、ヘイズメーターHZ-V3)を用いて測定できる。
【0057】
平坦被膜部と、微細凹凸構造とは、一回の塗布で形成することもできるが、平坦被覆部を形成した後、微細凹凸構造を形成することもできる。また、平坦被覆部を形成する防眩性被膜形成用塗布液と微細凹凸構造を形成する防眩性被膜形成用塗布液を同じ塗布液としてもよいが、両者の塗布液を異なるものとしてもよい。例えば、両者の固形分の組成は同一であるが、微細凹凸構造を形成する塗布液の固形分濃度を平坦被覆部より高いものとしてもよいし、両者の固形分の組成を異なるものとしてもよい。更には、両者の固形分の組成は同一であるが、両者の溶媒組成を異なるものとしてもよいが、これらに限定されない。
【0058】
微細凹凸構造は、例えば、防眩性被膜形成用塗布液を塗布した後、硬化する前に表面に風を当てることにより、表面に微細凹凸が形成するようにしてもよいし、平坦被膜部を形成した後、少し濃度が高い塗布液をスプレー塗布して部分的に凸部が形成されるようにしてもよく、スプレー塗布時に防眩性被膜形成用塗布液の流量と後述するガス流量とを調整することで、微細凸凹を形成してもよいが、これらに限定されない。
【0059】
防眩層の屈折率は、反射光を抑制する観点から、例えば、1.3~1.49の範囲から選択される。
【0060】
防眩層を形成するための防眩性被膜形成用塗布液の塗布は、例えば、ディップコート法、フローコート法、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェットコート法、バーコート法、グラビアロールコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアドクターコート法、エアーナイフコート法、ワイヤードクターコート法、リバースコート法、トランスファーロールコート法、マイクログラビアコート法、キスコート法、キャストコート法、スロットオリフィスコート法、カレンダーコート法、ダイコート法等の公知又は周知の方法にも適用することができるが、本発明の防眩性被膜形成用塗布液は、スプレー塗布法に対して特に適している点が特徴である。
【0061】
基材としては、プラスチック、ガラス、セラミックス等の公知又は周知の基材を挙げることができる。プラスチックとしては、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、トリメチルペンテン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、(メタ)アクリロニトリル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等の板及びフィルム等が挙げられる。
【0062】
スプレー塗布法により得られる、上記したような均一な膜厚は、薬液量、ノズル/ステージ距離(ノズルとステージとの距離)、塗布速度、ガス流量もしくはガス圧力等により調整することができる。
【0063】
薬液量は膜厚を決めるパラメータであり、薬液量を増やすことで膜厚は厚くなり、減らすことで膜厚は薄くなる。スプレー塗布において、薬液量は、例えば0.5~20mL(ミリリットル)/minであり、好ましくは0.8~12mL/minである。
【0064】
ガス流量は微細な液滴を形成するパラメータであり、使用されるガスの例としては、Nやドライエアーが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。スプレー塗布において、ガス流量は、例えば3~70L(リットル)/minであり、好ましくは6~60L/minである。ガス圧力の場合は、30~700kPaであり、好ましくは50~650kPaである。
【0065】
微細凸凹を形成する観点で好ましいガスの流量としては、防眩性被膜形成用塗布液の流量に対しガスを大気雰囲気中で150~140,000倍、好ましくは500~75,000倍の流量で通気して防眩性被膜形成用塗布液の液滴を微細化しながら基材表面に塗布するのが好ましい。
【0066】
ノズル/ステージ距離は膜厚、塗布性、および表面への凸部被覆量に関係するパラメータである。例えば、膜厚は距離が近づくことで厚くなるが、距離を遠ざけることで膜厚は薄くなる。好ましいノズル/ステージ距離は、例えば30~200mmであり、より好ましくは50~150mmである。
【0067】
塗布速度は膜厚、および表面への凸部被覆量に関係するパラメータであり、例えば、膜厚は速度が速くなると膜厚は薄くなり、遅くなると膜厚は厚くなる。スプレー塗布において、塗布速度は、例えば50~2000mm/secであり、好ましくは100~1500mm/secである。
【0068】
基材に形成する被膜の厚さは、塗布時の上記のようなパラメータによって調節することができるが、塗布液のSiO換算濃度によっても容易に調節することができる。
【0069】
基材上に形成された塗膜は、加熱することにより被膜が得られる。基材などの耐熱性を考慮した場合、焼成温度80℃~300℃の範囲が好ましく、100℃~250℃の範囲内とすることがより好ましい。
【0070】
本発明の防眩層の下層に防眩層より高屈折率の高屈折率層を設けてもよい。この場合、防眩層と高屈折率層の屈折率を適宜調整することにより、防眩層表面で反射する反射光と高屈折率層の表面で反射する反射光とが逆位相で干渉させるようにして反射光を低減する効果をさらに付加させることができる。
【0071】
ここで、高屈折率層は、防眩層より高屈折率となる層であれば特に限定されないが、防眩層との密着性を考慮すると、金属アルコキシドとアルコキシシランを含有する塗布液の硬化物とするのが好ましく、例えば、国際公開WO2012-057165号公報に開示された被膜を用いることができる。
【0072】
上記公報に開示された高屈折率層は、例えば、下記式(A)の金属アルコキシド、式(B)のアルコキシシランやこれらの縮合体を1種または2種以上含有する塗布液を塗布して硬化させた膜を挙げることができる。
【0073】
(OR)n (A)
(式中、Mは珪素(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、錫(Sn)および亜鉛(Zn)などの金属を表し、Rは炭素数1から5のアルキル基を表し、nはMの価数を表す。)
(R102Si(OR1034-n (B)
(式中、R102はアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又は前記アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基及びアリール基の炭素-炭素間にヘテロ原子を有する基を含むヘテロ原子含有基を表す。但し、上記アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基及びヘテロ原子含有基が有する一部又は全部の水素原子は置換基で置換してもよく、上記アルキル基、アルケニル基は、その一部にシクロアルキル基やアリール基を有していてもよい。R103は炭素数1~5のアルキル基を表し、nは1又は2の整数を表す。)
【0074】
上記ヘテロ原子を有する基としては、例えば、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基等が挙げられ、-O-、-NR-(Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。)、-CO-、-S-、-CO-及びこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0075】
上記置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、メルカプト基等が挙げられる。
【0076】
式(A)で表される金属アルコキシドの代表的な例としては、Mがチタンの場合、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn-プロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラt-ブトキシチタン、テトラペントキシチタン等のアルコキシチタンが挙げられる。
が珪素の場合、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のアルコキシシランを挙げることができる。
【0077】
式(B)におけるR102の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基等の炭素数1~18のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;3-(メタ)アクリルオキシプロピル基等の(メタ)アクリルオキシ基含有アルキル基;3-クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘプタデカフルオロデシル基等のハロゲン原子含有アルキル基;3-ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシ基含有アルキル基;γ-ウレイド(3-ウレイド)プロピル基のウレイド基含有アルキル基;γ-アミノ(3-アミノ)プロピル基、2-アミノエチルアミノメチル基、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピル基等のアミノ基含有アルキル基;γ-グリシドキシ(3-グリシジルオキシ)プロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基含有アルキル基;γ-メルカプト(3-メルカプト)プロピル基等のメルカプト基含有アルキル基;3-イソシアネートプロピル基等のイソシアネート基含有アルキル基;フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0078】
式(B)の具体的な例として、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン等のアルコキシラン等が挙げられる。
トリアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリエトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、を挙げることができる。
ジアルコキシシランの具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランを挙げることができる。
【0079】
上記縮合体の具体例としては、メチルシリケート51、メチルシリケート53、エチルシリケート40、エチルシリケート48(商品名、コルコート社製)、MKCシリケート(商品名、三菱化学社製)、東レ・ダウコーニング社製のシリコンレジン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のシリコンレジン、信越化学工業社製のシリコンレジン、ダウコーニング・アジア社製のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン、東レ・ダウコーニング社製のシリコンオリゴマー等のシリコンオリゴマー;チタンテトラ-n-ブトキシド,テトラマー(関東化学社製)等のチタンオリゴマー等が挙げられる。
【0080】
高屈折率層の屈折率は、防眩層より高い屈折率であり、防眩層の表面で反射した反射光と防眩層と高屈折率層との界面である高屈折率層の表面で反射した反射光が逆位相となるような屈折率とするのが好ましく、例えば、1.5~2.1の範囲、より好ましくは1.5~1.8の範囲から選択される。
【0081】
上記高屈折率層は、硬化温度を調整することで、屈折率を調整してもよい。この場合、硬化温度を高くするほど、高屈折率層の屈折率を高くする点で好ましい。基材などの耐熱性を考慮する観点から、焼成温度は100℃~300℃の範囲が好ましく、150℃~250℃の範囲内とすることがより好ましい。
【0082】
上記高屈折率層は、硬化後に更に塗膜に紫外線(UV)を照射して、得られる高屈折率層の屈折率を調整してもよい。高屈折率層において、所望の屈折率を得るための紫外線照射は、例えば、高圧水銀ランプを使用して行うことができる。そして、高圧水銀ランプを使用した場合、365nm換算で全光照射1000mJ/cm以上の照射量が好ましく、2000mJ/cm~10000mJ/cmの照射量がより好ましい。また、UV光源としては特に指定はなく、別のUV光源を使用することもできる。別の光源を用いる場合は、上記高圧水銀ランプを使用した場合と同量の積算光量が照射されればよい。
【0083】
次いで、防眩層の表面には、特定のコーティング剤から得られる機能性層を形成してもよい。本発明においては、防眩層が上述した塗布液から形成されるので、防眩層上への機能性層を形成する塗布液の塗布性や機能性層との密着性が良好なものとなる。
【0084】
本発明において、防眩層上に設けられる機能性層は特に限定されない。具体的な例としては、防汚剤、塗料、接着剤、反射防止剤、撥水剤、親水剤、撥油剤、親油剤、ハードコート剤、防滑剤などから得られる機能性層を挙げることができる。
【0085】
防眩層や機能性層の厚さは、いずれも、5~1000nmが好ましく、より好ましくは10~400nmである。
【0086】
本発明の被膜形成用塗布液は、塗布性に優れ、透過率が高い被膜を形成することができる。また、スプレー塗布した場合の着液効率にも優れている。そのため、テレビ、コンピューター、カーナビゲーション、携帯電話等のディスプレイ等の分野に好適に用いることができる。
【実施例
【0087】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
以下で用いる略語は下記の通りである。
【0088】
TEOS:テトラエトキシシラン
F13:トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン
UPS:γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン
TTE:テトラエトキシチタン
AN:硝酸アルミニウム九水和物
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
IPA:イソプロパノール
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
BCS:ブチルセロソルブ
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
PG:プロピレングリコール
HG:2-メチル-2,4-ペンタンジオール
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
【0089】
<合成例1>
還流管を備え付けた200mL四つ口フラスコに、TEOS(31.6g)、F13(6.2g)、及びMeOH(30.3g)を加え、撹拌し、そこにMeOH(15.1g)、水(15.0g)、及び蓚酸(0.8g)を加え、10℃の氷浴中で30分撹拌した。その後、65℃で2時間撹拌し、その後、UPS(0.5g)及びMeOH(0.5g)を加え、さらに65℃で2時間反応させた。その後、室温まで放冷し、溶液K1を得た。
【0090】
<合成例2>
200mL容量のフラスコ中に、AN(2.9g)、水(2.6g)及びEtOH(50.6g)を加えて撹拌し、AN溶液を得た。そのAN溶液に、TEOS(21.2g)を加え、室温で30分撹拌した。その後、TTE(10.0g)及びEtOH(12.7g)を加え、さらに室温で30分撹拌し、溶液K2を得た。
【0091】
<合成例3>
200mL容量のフラスコ中に、AN(2.8g)、水(2.6g)及びEtOH(51.2g)を加えて撹拌し、AN溶液を得た。そのAN溶液に、TEOS(17.7g)を加え、室温で30分撹拌した。その後、TTE(12.9g)及びEtOH(12.8g)を加え、さらに室温で30分撹拌し、溶液K3を得た。
【0092】
<合成例4>
200mL容量のフラスコ中に、AN(2.7g)、水(2.5g)及びEtOH(51.8g)を加えて撹拌し、AN溶液を得た。そのAN溶液に、TEOS(14.3g)を加え、室温で30分撹拌した。その後、TTE(15.7g)及びEtOH(13.0g)を加え、さらに室温で30分撹拌し、溶液K4を得た。
【0093】
<合成例5>
還流管を備え付けた200mL四つ口フラスコに、TEOS(33.0g)及びMeOH(32.5g)を加え、撹拌し、そこにMeOH(13.8g)、水(15.0g)及び蓚酸(0.9g)を加え、10℃の氷浴中で30分撹拌した。その後、60℃で2時間撹拌し、その後、UPS(2.4g)及びMeOH(2.4g)を加え、さらに60℃で30分反応させた。その後、室温まで放冷し、溶液K5を得た。
【0094】
<調製例1>
K1,K5溶液(60g)に、PGME(20g)及びEtOH(20g)を加え、それぞれ溶液KL1-1,KM2-1を得た。
【0095】
<調製例2>
K1溶液(12g)に、PG(5g)、NMP(20g)及びMeOH(63g)を加え、溶液KL1-2を得た。
【0096】
<調製例3>
K2~K4溶液(18g)に、EtOH(2.5g)、IPA(42g)、BCS(9.4g)、PB(9.4g)及びHG(18.7g)を加え、それぞれ溶液KL2~KL4を得た。
【0097】
<調製例4>
K1溶液(40g)に、PGME(20g)及びEtOH(40g)を加え、溶液KM1を得た。
【0098】
<調製例5>
K5溶液(15g)に、MeOH(1.8g)、EtOH(18.5g)、PGME(18.5g)、PB(27.7g)及びHG(18.5g)を加え、溶液KM2-2を得た。
【0099】
[スプレー塗布条件]
スプレー塗布は下記に示す装置、条件で行った。
装置名:(株)アピロス社製スプレーコーターAPI-240-3D
【0100】
<塗布条件I-1>
ノズル型式:LPVN45、ノズル高さ:100mm、Y軸ピッチ:2mm、Air圧力:550kPa、薬液流量1.0mL/min、ノズル速度:900mm/sec
【0101】
<塗布条件I-2>
塗布条件I-1から、Y軸ピッチ:3mmに変更し、その他の条件は同じにした。
【0102】
<塗布条件I-3>
塗布条件I-1から、Y軸ピッチ:5mmに変更し、その他の条件は同じにした。
【0103】
<塗布条件I-4>
塗布条件I-1から、Y軸ピッチ:1.4mmに変更し、その他の条件は同じにした。
【0104】
<塗布条件II-1>
ノズル型式:LPVN12、ノズル高さ:100mm、Y軸ピッチ:7mm、Air圧力:560kPa、薬液流量4.9mL/min、ノズル速度:500mm/sec
【0105】
<塗布条件II-2>
塗布条件II-1から、ノズル速度:550mm/secに変更し、その他の条件は同じにした。
【0106】
<塗布条件III>
ノズル型式:LPVN45、ノズル高さ:100mm、Y軸ピッチ:7mm、Air圧力:470kPa、薬液流量4.9mL/min、ノズル速度:170mm/sec
【0107】
<塗布条件IV>
ノズル型式:LPVN45、ノズル高さ:100mm、Y軸ピッチ:7mm、Air圧力:365kPa、薬液流量4.9mL/min、ノズル速度:500mm/sec
【0108】
<塗布条件V>
ノズル型式:LPVN45、ノズル高さ:50mm、Y軸ピッチ:3mm、Air圧力:550kPa、薬液流量1.0mL/min、ノズル速度:700mm/sec
【0109】
[焼成条件]
<焼成条件A>
ホットプレート上にて温度70℃で5分乾燥し、熱風循環式オーブンにて160℃で30分焼成した。
【0110】
<焼成条件B>
熱風循環式オーブンにて温度130℃で3分乾燥し、UV照射3000mJ/cm(365nm換算、高圧水銀ランプ)、熱風循環式オーブンにて160℃で30分焼成した。
【0111】
<焼成条件C>
ホットプレート上にて温度40℃で5分乾燥し、熱風循環式オーブンにて160℃で30分焼成した。
【0112】
<各種評価条件>
[HAZE]
基板にソーダライムガラスを用い、スプレー塗布で実施例及び比較例と同じ塗布条件で製膜した。得られた被膜付き基板をスガ試験機(株)社製ヘイズメーターHZ-V3にてHAZEを測定した。
【0113】
[表面観察]
基板にソーダライムガラスを用い、作製した被膜付き基板をブルカージャパン(株)社製3次元白色干渉顕微鏡Contour GTにて観察した。
【0114】
[凸部表面被覆率]
表面観察で取得した画像から、任意の測定箇所内での凸部、および平坦部の面積比率を画像解析の明るさ成分から算出し、凸部表面被覆率を算出した。凸部表面被覆率は、上記で説明した凸部表面被覆率の算出方法と同様の方法で算出した。
【0115】
[反射率]
<正反射、反射色>
基板にソーダライムガラスを用い、作製した被膜付き基板を、(株)島津製作所社製紫外可視近赤外分光光度計UV-3600にて、光の入射角5°での波長380nmから800nmの範囲での反射率を測定し、得られた分光反射率曲線から、JIS R 3106に従って、平均視感反射率(正反射)および反射色a、bを求めた。
【0116】
<SCI、SCE>
基板にソーダライムガラスを用い、作製した被膜付き基板を、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM-3700Aにて、光の入射角8°での波長360nmから740nmの範囲での反射率を測定し、JIS Z 8722に従って、SCI、SCEの平均視感反射率を求めた。なお、SCI(Specular Component Include)は正反射光を考慮に入れた測定であり、SCE(Specular Component Exclude)は正反射光を考慮に入れない測定である。
【0117】
[スパークリング]
画素密度350ppiの液晶ディスプレイにて、黄緑色を前面に、かつ輝度を最大にして表示し、その画面上に直接被膜付き基板を置き、スパークリングが発生したものを×、若干確認できるものを△、発生しなかったものを〇として評価した。
【0118】
[屈折率]
基板にシリコン基板(100)を用い、スピンコートにて焼成後の膜厚が100nmとなるように溶液KL2~4を製膜し、上記焼成条件Bにて焼成し、得られた被膜付き基板を用いて、エリプソメーター(溝尻光学工業所社製、DVA-FLVW)で波長633nmにおける屈折率を測定した。
【0119】
<実施例1>
基板にソーダライムガラスを用い、上記調製例2で得られた溶液KL1-2を塗布条件IIIにてスプレー塗布を行った後、焼成条件Aにて焼成を行い、下層を形成した。得られた基板に、上記調製例1で得られた溶液KL1-1を塗布条件I-1にてスプレー塗布を行った後、焼成条件Cにて焼成を行い、被膜付き基板を得た。
得られた被膜付き基板を用いて各種評価を行った。評価結果を表1-2に示す。
【0120】
<実施例2~3、比較例1~4>
使用する溶液及び各条件を下記表1-1に示すように変更した点以外は実施例1と同様に行い、被膜付き基板を得た。尚、比較例2及び比較例4においては、下層の形成をもって被膜付き基板とした。
得られた被膜付き基板を用いて各種評価を行った。評価結果を表1-2に示す。
【0121】
【表1-1】
【0122】
【表1-2】
【0123】
表1-2に示されるように、実施例1~3では、正反射およびSCI値が低く抑えられており、かつスパークリングも発生していない。さらに、比較例2に対して、反射率のうちの光散乱成分であるSCEが生じていることから、防眩機能が発現できており、以上のことから、反射防止機能を付与した防眩性機能膜が構築できていることが示唆される。
【0124】
比較例1では、SCI値が非常に大きく、またスパークリングも発生している。
【0125】
比較例3は、フルオロアルキル成分が無い溶液を用いた場合であり、凸部表面被覆率が低い形状は得られず、SCI値が高くなってしまっている。また、比較例4については、防眩性は無いが、反射色は小さい。しかし、SCI、正反射ともに高くなってしまう。
【0126】
<実施例4~6、比較例5~7>
使用する溶液及び各条件を下記表2-1に示すように変更した点以外は実施例1と同様に行い、被膜付き基板を得た。
得られた被膜付き基板を用いて各種評価を行った。評価結果を表2-2に示す。
【0127】
【表2-1】
【0128】
【表2-2】
【0129】
表2-2に示す通り、実施例4~6では、SCI値を低く抑えることができ、かつスパークリングも発生しなかった。さらに、それぞれ比較例5~7と比較して、反射色の値の絶対値が低減できており、かつSCEが生じていることから、防眩機能が発現できており、以上のことから反射防止機能付き防眩性被膜が形成できていることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の眩性被膜形成用塗布液およびそれを用いた被膜構成物を用いることにより、ガラス基板上に形成可能で、反射防止性、および防眩性(アンチグレア機能)の両方に優れる積層体の提供が可能となる。これにより、テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の各種デバイスが具備する画像表示装置(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等)の表示品位の向上に貢献することが出来る。