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特許7606183微生物の核酸検出方法、試薬組成物、試薬キット、測定システム、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】微生物の核酸検出方法、試薬組成物、試薬キット、測定システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6816 20180101AFI20241218BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241218BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20241218BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z
C12M1/34 B
C12Q1/6888 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024546038
(86)(22)【出願日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2024015385
【審査請求日】2024-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2023068156
(32)【優先日】2023-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】516079785
【氏名又は名称】セルスペクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【弁理士】
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久
(72)【発明者】
【氏名】中屋 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】中島 芽梨
(72)【発明者】
【氏名】半田 久純
(72)【発明者】
【氏名】佐成 航太
(72)【発明者】
【氏名】平野 麗子
(72)【発明者】
【氏名】土井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】北條 渉
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 拓也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博則
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0132693(US,A1)
【文献】特開2007-071667(JP,A)
【文献】Chemosphere,2021年,vol.263,article no.128331
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱するサンプル混合液の調製工程と、
前記プローブ溶液の吸光スペクトルを取得する工程と、
前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱した、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液の吸光スペクトルを取得する工程と、
前記サンプル混合液の吸光スペクトルを取得する工程と、
前記プローブ溶液、前記ブランク溶液、及び、前記サンプル混合液の吸光スペクトルに基づいて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定する演算工程と、
を含む微生物の核酸検出方法。
【請求項2】
前記演算工程は、前記プローブ溶液、前記ブランク溶液、及び、前記サンプル混合液の吸光スペクトルに基づくカーブフィッティングを実行することにより、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定する、請求項1に記載の微生物の核酸検出方法。
【請求項3】
前記演算工程は、前記プローブ溶液の吸光スペクトルを表す第1の項と、前記ブランク溶液の吸光スペクトルを表す第2の項と、前記サンプル混合液の吸光スペクトルを表す第3の項との線形結合が、前記サンプル混合液の吸光スペクトルを表す第3の項に最も近くなるように最小二乗法を実行し、それによって算出された前記第3の項の係数に基づいて、前記ターゲット核酸の濃度を推定する、請求項2に記載の微生物の核酸検出方法。
【請求項4】
前記調製工程は、さらにウシ血清アルブミンを添加することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の微生物の核酸検出方法。
【請求項5】
前記ウシ血清アルブミンの濃度は、前記サンプル混合液において、0.01mg/L超、1mg/L未満である、請求項4に記載の微生物の核酸検出方法。
【請求項6】
サンプルに含まれる微生物を検出するために使用される試薬組成物であって、
ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液と、
塩化ナトリウム溶液と、
を含み、
サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に前記プローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られるサンプル混合液と、前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られる、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液と、を調製するために使用され、
前記サンプル混合液、前記ブランク溶液、及び前記プローブ溶液の吸光スペクトルに基づく演算により前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定するための試薬組成物。
【請求項7】
ウシ血清アルブミンをさらに含む、請求項6に記載の試薬組成物。
【請求項8】
サンプルに含まれる微生物を検出するために使用される試薬キットであって、
ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液と、
塩化ナトリウム溶液と、
を含み、
前記プローブ溶液及び前記ナトリウム溶液は、所定量ずつ封入され、
サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に前記プローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られるサンプル混合液と、前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られる、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液と、を調製するために使用され、
前記サンプル混合液、前記ブランク溶液、及び前記プローブ溶液の吸光スペクトルに基づく演算により前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定するための試薬キット。
【請求項9】
所定量封入されたウシ血清アルブミンをさらに含む、請求項8に記載の試薬キット。
【請求項10】
サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られたサンプル混合液の吸光スペクトルを取得する測定部と、
前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱した、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液の吸光スペクトルと、前記サンプル混合液の吸光スペクトルと、に基づいて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定する演算部と、
を備える測定システム。
【請求項11】
前記測定部はさらに、前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記ブランク溶液の吸光スペクトルと、を測定し、
前記演算部は、前記測定部により測定された前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記ブランク溶液の吸光スペクトルと、前記サンプル混合液の吸光スペクトルと、に基づいて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定する、
、請求項10に記載の測定システム。
【請求項12】
前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記ブランク溶液の吸光スペクトルと、の少なくともいずれかを記憶する記憶部をさらに備え、
前記演算部は、前記記憶部から前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記ブランク溶液の吸光スペクトルと、の少なくともいずれかを読み出し、該読み出された吸光スペクトルを用いて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定する、
請求項10に記載の測定システム。
【請求項13】
前記演算部は、前記プローブ溶液、前記ブランク溶液、及び前記サンプル混合液の吸光スペクトルに基づくカーブフィッティングを実行することにより、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定する、請求項10~12のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項14】
サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られたサンプル混合液の吸光スペクトルを取得するステップと、
前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱した、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液の吸光スペクトルと、前記サンプル混合液の吸光ステップと、に基づいて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定するステップと、をコンピュータに実行させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の核酸検出方法、試薬組成物、試薬キット、測定システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(World Health Organization:WHO)の報告によれば、2020年において、世界138カ国の人々の約4分の1、即ち、約20億人が、安全に管理された飲料水供給施設を利用できていない(参考:“Our lifetime opportunity to enable water, sanitation and hygiene for all”, Joint WHO/UNICEF statement,<https://www.who.int/news/item/22-03-2023-our-lifetime-opportunity-to-enable-water-sanitation-and-hygiene-for-all>)。このうち約12億人は、安全ではない基本的な水供給施設のみを利用し、約2億8,200万人は限定的な供給を受け、約3億6,700万人は未改良の水源を利用し、約1億2,200万人は地表水を利用している。
【0003】
トイレなどの衛生設備に関しては、安全に管理された設備(排泄物を施設内または外で安全に管理できる設備)を利用できるのは世界人口の54%にすぎず、36億人が不十分な設備を利用している。これらの人々が2030年までに安全に管理された水供給施設や基本的衛生施設を利用できるようになるためには、これら施設の普及の進捗率を現在の4倍にする必要があると推定されている。後発開発途上国や脆弱な状況に置かれている地域においては、状況はさらに厳しく、現在の進捗率をそれぞれ10倍及び23倍まで高める必要があるといわれている。2020年において家庭からの排水の約44%が安全に処理されないまま環境中に排出されており、不十分な衛生設備や排水処理は病原体の環境中への排出源となっている。
【0004】
WHOは、2016年に安全でない飲料水供給施設や衛生設備の不足が原因で、世界で87万人の関連死が発生したと推定している。アフリカ地域での関連死は、人口10万人あたり45.9人であり、この値は世界平均(10万人あたり11.7人)の4倍に相当する。この関連死の影響が最も少ないのは欧州地域であり(10万人あたり0.3人)、アフリカ地域の死亡率はこれの約150倍にも上り、地域間の不均衡が著しい。
【0005】
一般に、飲料水の最大の微生物学的リスクは、ヒトまたは(鳥を含む)動物の糞便によって汚染された水の摂取に関係している。糞便は、病原性を有する細菌、ウイルス、原虫および蠕虫を含む可能性が高い。水系感染症の主な症状は腹痛、下痢、嘔吐、発熱、頭痛である。下痢は脱水症状を引き起こすので栄養状態が悪い途上国では死に至る場合もある。WHOは飲料水水質ガイドラインを策定し、その中で、表1に示す微生物を病原微生物と定めている(参考:「WHO飲料水水質ガイドライン第4版(日本語版)、国立保健医療科学院、<https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000195447.pdf>)。
【0006】
【表1】
【0007】
浄水システムを全般的に小型化・低コスト化し、水資源を効率的に利用することで、特に開発途上国や局地において、より多くの人々が安全な水にアクセスできるようになることが期待される。そのためには、様々な地域や環境下であっても、その場(オンサイト)で迅速に水質をモニタリングできるシステムが望まれる。それにより、浄水プロセスを効率化することができ、簡便な膜ろ過システムや逆浸透膜ろ過システム等においても水の再利用が可能となり、水資源の持続可能な利用を促進できるからである。
【0008】
環境水に対する微生物のモニタリング手法としては、培養法、PCR法、ラテックス凝集法、イムノアッセイ法、PCR法が知られている。また、例えば、特許文献1には、組織片に含まれる病原体の核酸分離工程とPCR緩衝液の調製工程を同時に行うPCR法による分析方法が開示されている。また、特許文献2には、クラミジア属菌を区別して検出するための核酸プライマーセットと、該プライマーセットを用いたクラミジア属菌の検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2021-122186号公報
【文献】特開2021-158989号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】中島芽梨ほか、「下水中の細菌の16S rRNA検出用ペーパー分析チップの開発」,分析化学,Vol. 69, No. 12, pp. 715-722 (2020)
【文献】Meri Nakajima et al., “Simple Assay for Colorimetric Quantification of Unamplified Bacterial 16S rRNA in Activated Sludge using Gold Nanoprobes”, Chemosphere, Vol. 263, January 2021, 128331
【文献】Hisashi Satoh et al., “Highly sensitive and homogeneous detection of unamplified RNA based on the light scattering properties of gold nanoparticle probes”, Biosensors and Bioelectronics: X, Vol. 12, December 2022, 100249
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
培養法は代表的な測定法であるが、結果を得るまでに長時間(例えば24時間)を要する。また、難培養性微生物や、生きているが培養できない微生物(VBNC菌:viable but non-culturable)を検出することができないという問題がある。また、上述したように、水系感染症を引き起こす病原微生物は多岐にわたるため、病原微生物ごとに選択性培地が必要となり現実的ではない。
【0012】
培養法を代替する検査手法としては、PCR法または定量(リアルタイム)PCR法が挙げられる。PCR法は、酵素(DNAポリメラーゼ)を利用したポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction:PCR)により、核酸を増幅することで検出・定量を行う手法であり、高い感度と特異性を有する。しかしながら、PCR法においては、工程が煩雑であり高度な運用能力を要する、分析時間が長い(例えば3時間)、酵素などの高価な消耗品や高額な分析機器が必要といった問題がある。上述した特許文献1、2においても、PCR法を用いているため、同様の問題を抱えている。
【0013】
また、抗体を用いたイムノアッセイ法やラテックス凝集法は、簡便であるが感度の点で劣るという問題がある。
【0014】
そのため、これらの従来の手法では、飲料水が有する生物学的リスクを頻繁に解析することは極めて難しく、特に、開発途上国や災害地域では困難である。このような事情から、より簡便でありながらPCR法と同等の検出能力を持つシステムが嘱望されている。
【0015】
本願発明者らは、金ナノ粒子に着目し、細菌の16S rRNA遺伝子に特異的に結合するDNAを設計し、これに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブを作製し、このプローブを用いて、簡便且つ迅速で高精度な核酸分析方法及び試薬組成物の開発を進めてきた(非特許文献1~3参照)。
【0016】
しかしながら、本願発明者らによる手法においては、検出対象である核酸(ターゲット核酸)の濃度を簡便且つ迅速に、しかも高精度に測定できるものの、濃度の測定レンジ(ダイナミックレンジ)が十分でないという問題があった。
【0017】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、ターゲット核酸の濃度を簡便且つ迅速、高精度に測定することができると共に、十分な測定レンジ(ダイナミックレンジ)を確保できる微生物の核酸検出方法、試薬組成物、試薬キット、測定システム、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である微生物の核酸検出方法は、サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱するサンプル混合液の調製工程と、前記プローブ溶液の吸光スペクトルを取得する工程と、前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱した、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液の吸光スペクトルを取得する工程と、前記サンプル混合液の吸光スペクトルを取得する工程と、前記プローブ溶液、前記ブランク溶液、及び、前記サンプル混合液の吸光スペクトルに基づいて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定する演算工程と、を含む。
【0019】
上記微生物の核酸検出方法において、前記演算工程は、前記プローブ溶液、前記ブランク溶液、及び、前記サンプル混合液の吸光スペクトルに基づくカーブフィッティングを実行することにより、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定しても良い。
【0020】
上記微生物の核酸検出方法において、前記演算工程は、前記プローブ溶液の吸光スペクトルを表す第1の項と、前記ブランク溶液の吸光スペクトルを表す第2の項と、前記サンプル混合液の吸光スペクトルを表す第3の項との線形結合が、前記サンプル混合液の吸光スペクトルを表す第3の項に最も近くなるように最小二乗法を実行し、それによって算出された前記第3の項の係数に基づいて、前記ターゲット核酸の濃度を推定しても良い。
【0021】
上記微生物の核酸検出方法において、前記調製工程は、さらにウシ血清アルブミンを添加することを含んでも良い。
【0022】
上記微生物の核酸検出方法において、前記ウシ血清アルブミンの濃度は、前記サンプル混合液において、0.01mg/L超、1mg/L未満であっても良い。
【0023】
本発明の別の態様である試薬組成物は、サンプルに含まれる微生物を検出するために使用される試薬組成物であって、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液と、塩化ナトリウム溶液と、を含み、サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に前記プローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られるサンプル混合液と、前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られる、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液と、を調製するために使用され、前記サンプル混合液、前記ブランク溶液、及び前記プローブ溶液の吸光スペクトルに基づく演算により前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定するためのものである。
上記試薬組成物は、ウシ血清アルブミンをさらに含んでも良い。
【0024】
本発明の別の態様である試薬キットは、サンプルに含まれる微生物を検出するために使用される試薬キットであって、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液と、塩化ナトリウム溶液と、を含み、前記プローブ溶液及び前記ナトリウム溶液は、所定量ずつ封入され、サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に前記プローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られるサンプル混合液と、前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られる、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液と、を調製するために使用され、前記サンプル混合液、前記ブランク溶液、及び前記プローブ溶液の吸光スペクトルに基づく演算により前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定するためのものである。
上記試薬キットは、所定量封入されたウシ血清アルブミンをさらに含んでも良い。
【0025】
本発明の別の態様である測定システムは、サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られたサンプル混合液の吸光スペクトルを取得する測定部と、前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱した、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液の吸光スペクトルと、前記サンプル混合液の吸光スペクトルと、に基づいて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定する演算部と、を備える。
【0026】
上記測定システムにおいて、前記測定部はさらに、前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記ブランク溶液の吸光スペクトルと、を測定し、前記演算部は、前記測定部により測定された前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記ブランク溶液の吸光スペクトルと、前記サンプル混合液の吸光スペクトルと、に基づいて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定しても良い。
【0027】
上記測定システムは、前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記ブランク溶液の吸光スペクトルと、の少なくともいずれかを記憶する記憶部をさらに備え、前記演算部は、前記記憶部から前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記ブランク溶液の吸光スペクトルと、の少なくともいずれかを読み出し、該読み出された吸光スペクトルを用いて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定しても良い。
【0028】
上記測定システムにおいて、前記演算部は、前記プローブ溶液、前記ブランク溶液、及び前記サンプル混合液の吸光スペクトルに基づくカーブフィッティングを実行することにより、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定しても良い。
【0029】
本発明の別の態様であるプログラムは、サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られたサンプル混合液の吸光スペクトルを取得するステップと、前記プローブ溶液の吸光スペクトルと、前記プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱した、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液の吸光スペクトルと、前記サンプル混合液の吸光ステップと、に基づいて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、検出対象であるターゲット核酸の濃度を簡便且つ迅速、高精度に測定することができると共に、十分な測定レンジ(ダイナミックレンジ)を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態における基本的な核酸検出方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態における核酸検出の原理を説明するための模式図である。
図3】本発明の実施形態における核酸検出の原理を説明するための模式図である。
図4】本発明の第1の実施形態における核酸検出方法を説明するための模式図である。
図5】実施例1の結果を示すグラフである。
図6】本発明の第2実施形態における核酸検出方法を説明するための模式図である。
図7】実施例2の比較例を示すグラフである。
図8】実施例2の実験結果を示すグラフである。
図9】本発明の第3の実施形態に係る測定システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態に係る微生物の核酸検出方法、試薬組成物、試薬キット、測定システム、及びプログラムについて、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0033】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0034】
以下に説明する実施形態に係る微生物の核酸検出方法は、環境水や汚泥等のサンプルから核酸を抽出して金ナノ粒子プローブ溶液と混合し、この溶液の吸光度を測定することで、サンプルに含まれる微生物を定量する方法である。以下に説明する実施形態によれば、抽出された核酸を増幅する必要なく、簡便且つ迅速に、高精度に核酸を定量することができる。
【0035】
本出願においては、微生物とは、細菌及び古細菌を含む原核生物、原生生物、藻類、及び真菌を含む真核生物、並びに、ウイルスを含むものとする。
【0036】
(核酸検出の原理)
図1は、本発明の各実施形態における基本的な核酸検出方法を示すフローチャートである。図2及び図3は、本発明の各実施形態における核酸検出の原理を説明するための模式図である。以下の実施形態においては、検出対象であるターゲット核酸の塩基配列と相補鎖的なDNAに金ナノ粒子(AuNP)を修飾した金ナノ粒子プローブ(以下、単に「プローブ」とも記す)を作製し、この金ナノ粒子プローブを含む溶液を試薬組成物とする。図2に示すプローブ(1)は、ターゲット核酸に特異的に結合する相補鎖的なDNA(3)に金ナノ粒子(2)を修飾したものである。ターゲット核酸(ターゲット遺伝子)は特に限定されず、例えば、細菌の16S rRNA遺伝子、ノロウイルスのGI型又はGII型RNA遺伝子など、種々の細菌やウイルスのRNA遺伝子をターゲットとして、以下に説明する核酸検出の原理を適用することができる。
【0037】
まず、サンプルから核酸を抽出する処理を行う(前処理工程S10)。なお、核酸の抽出方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0038】
次に、サンプルからの核酸抽出液(以下、単に「抽出液」とも記す)に金ナノ粒子プローブ溶液(以下、単に「プローブ溶液」とも記す)を添加し、さらに塩化ナトリウム(NaCl)を添加して加熱する(調製工程S20)。加熱条件としては、例えば、95℃で30秒間とすることができる。これにより、抽出液中にターゲット核酸が含まれていれば、これらの混合液においてプローブがターゲット核酸とハイブリダイズされる。
【0039】
次に、混合液の吸光スペクトルを取得し(測定工程S30)、この吸光スペクトルに基づいて核酸濃度を推定する(演算工程S40)。
【0040】
ここで、図3に示すように、プローブがハイブリダイズされると、ターゲット核酸がプローブの金ナノ粒子を覆うことにより、ナトリウム(Na)イオンによる金ナノ粒子の凝集が阻害される。そのため、抽出液中のターゲット核酸の濃度が高い場合(即ち、サンプル中にターゲット(微生物)が高濃度で存在する場合)、混合液においては金ナノ粒子本来の赤色が維持される。一方、抽出液中のターゲット核酸の濃度が低い場合、金ナノ粒子はNaイオンにより凝集し易くなり、凝集する。そのため、金ナノ粒子本来の色は観察されなくなる。従って、混合液における分光スペクトルを分析することにより、金ナノ粒子の状態、言い換えると、プローブに対するターゲット核酸のハイブリダイゼーションの程度を推定することができる。
【0041】
(試薬組成物)
以下に説明する実施形態において使用される試薬組成物は、サンプルに含まれる微生物を検出するために使用される試薬組成物であって、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液と、塩化ナトリウム溶液と、を含むものである。このような試薬組成物は、サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液にプローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られるサンプル混合液の調整に使用される。また、試薬組成物は、ウシ血清アルブミンをさらに含んでも良い。
【0042】
また、試薬組成物は、プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱することにより得られる、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液を調製するために使用されても良い。この場合、試薬組成物は、上記サンプル混合液、ブランク溶液、及び、プローブ溶液の吸光スペクトルに基づく演算により、サンプルにおけるターゲット核酸の濃度を推定するためのものである。
【0043】
上述したように、ターゲット核酸の種類は特に限定されず、種々の細菌やウイルスのRNA遺伝子をターゲットとして、ターゲット核酸に特異的に結合する相補鎖的なDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブにより、試薬組成物を構成することができる。このような試薬組成物と、汎用の核酸抽出器とを組み合わせることにより、ワンストップ(煩雑な操作を要しない)で簡便な、しかも、PCR法と同等の微生物の核酸検出を実現することが可能となる。
【0044】
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態に係る核酸検出方法について説明する。図4は、本発明の第1実施形態における核酸検出方法を説明するための模式図である。
第1の実施形態においては、サンプルからの抽出液とプローブ溶液との混合液に塩化ナトリウムを添加する際に(工程S20参照)、併せて、ウシ血清アルブミン(BSA)を添加する。この場合においても、加熱条件としては、95℃で30秒間とすることができる。或いは、95℃で30秒間加熱した後、さらに、59℃で1分間加熱しても良い。
【0045】
核酸濃度の推定方法(工程S40)としては、吸光度比を用いることができる。
上述したように、ここで、プローブがハイブリダイズされると、ナトリウム(Na)イオンによる金ナノ粒子の凝集が阻害される。そのため、図4に示すように、抽出液中のターゲット核酸の濃度が高い場合には、サンプル混合液においては金ナノ粒子本来の赤色が維持され、波長550nm付近に吸光度のピークが見られる。
【0046】
一方、抽出液中のターゲット核酸の濃度が低下するにつれて、金ナノ粒子はNaイオンにより凝集し易くなり、凝集するほど、サンプル混合液においては波長650nm付近の吸光度が増大する。
【0047】
これより、サンプル混合液における波長650nmの吸光度A650を波長550nmの吸光度A550で除した吸光度比R650/R550は、金ナノ粒子の凝集度合い、言い換えれば、ターゲット核酸の濃度を表すと言える。即ち、吸光度比が高いほどターゲット核酸濃度が低く、両者の間には負の相関が見られる。
【0048】
そこで、工程S30において取得された分光スペクトルから波長550nm及び650nmにおける吸光度を抽出し、これらの吸光度比R650/R550を算出し、吸光度比を、予め取得された検量線と対比したり、予め取得された推定式に吸光度比を代入したりことで、ターゲット核酸の濃度を推定することができる。なお、第1の実施形態においては、使用される波長が上記2つの波長であるため、工程S30においては、例えばマイクロプレートリーダーを用いるなどして、これらの波長のみを取得することとしても良い。
【0049】
ここで、第1の実施形態においては、サンプル混合液にBSAをさらに添加している。それにより、プローブの周囲にBSA分子がまとわりつき、Naイオンによる金ナノ粒子の凝集が阻害され易くなる。そのため、ターゲット核酸の濃度が低い場合であっても、混合液における波長550nm付近の吸光度のピークが、BSA無添加の場合と比較して高くなる。それにより、ターゲット核酸の濃度が低いサンプルであっても、濃度を測定できるようになる。つまり、測定レンジを低濃度側に拡げることができる。
【0050】
(実施例1)
ターゲット核酸に特異的に結合する金ナノ粒子プローブを作製し、この金ナノ粒子プローブを用いてサンプルに含まれるターゲット核酸を検出する実験を行った。実施例1においては、16S rRNA遺伝子をターゲットとし、16S rRNA遺伝子の塩基配列と相補鎖的なDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブを作製した。
【0051】
1.プローブ溶液の作製
金ナノ粒子プローブは、先行研究(Liu et al., “Preparation of aptamer-linked gold nanoparticle purple aggregates for colorimetric sensing of analytes” Nat. Protoc. 1, 246e252. https://doi.org/10.1038/nprot.2006.38., X. Zhang et al., “Instantaneous and Quantitative Functionalization of Gold Nanoparticles with Thiolated DNA Using a pH-Assisted and Surfactant-Free Route”J. Am. Chem. Soc., 134, 7266 (2012) https://doi.org/10.1021/ja3014055参照)を参考にして作製した。
【0052】
まず、pH5.2の100mM酢酸バッファーを作製した。これは、酢酸0.107mLと酢酸ナトリウム0.677gを混合し、100mLにメスアップすることで作製した。次に10mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine:TCEP)溶液を作製した。これはTCEPを1mgから3mg測りとり、超純水(Milli-Q水)に溶解することで作製した。TCEP溶液は不安定であるためプローブ作製時に毎回調製した。
【0053】
以上の溶液を用いて、100mM酢酸バッファーと10mMのTCEP溶液を9:1の割合で混合し、脱保護バッファーを作製した。脱保護バッファー27μLに10μMのDNA溶液3μLを添加し、十分にボルテックスした(ボルテックスミキサーを用いて攪拌した(以下同じ))。スピンダウンした後、1時間室温で静置し、DNAのチオール基を脱保護した。
【0054】
金ナノ粒子溶液300μLに0.1Mの塩酸(HCl)溶液3μLを添加し、ボルテックスした。脱保護後のプローブDNA溶液20μLを添加し、ボルテックスした。スピンダウンした後、15時間以上室温で静置し、DNAに金ナノ粒子を修飾した。作製後の金ナノ粒子プローブは室温、直射日光の当たらない場所で保管した。続いて遠心分離により固定されなかったDNAを除去した。遠心分離して上澄みをできるだけ取り除いた後、0.1Mのリン酸バッファー(pH7.0)を添加して金ナノ粒子プローブを再懸濁させた。
【0055】
2.サンプル混合液の作製
サンプルに対して核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に、上記のように作成されたプローブ溶液を添加し、さらに、塩化ナトリウム(NaCl)飽和水溶液及びウシ血清アルブミン(BSA)を添加し、95℃で加熱することにより、サンプル混合液を作製した。BSAの濃度は、サンプルからの抽出液、プローブ溶液、塩化ナトリウム飽和水溶液、及びBSAを含む混合液(アッセイ系における試薬組成物)に対し、0mg/L(未添加)、0.01mg/L、0.1mg/L、1mg/Lの4種類とした。なお、サンプルについては、別途、公定法(PCR法)により核酸濃度を測定した。
【0056】
3.吸光度の測定及び評価
加熱されたサンプル混合液の吸光スペクトルを測定し、波長650nmにおける吸光度を波長550nmにおける吸光度で除した吸光度比R650/R550を算出した。
【0057】
BSAを添加しない場合の吸光度比と、同じサンプルについて公定法で測定したターゲット核酸濃度とを対比したところ、両者の間に強い相関が見られた。これより、第1の実施形態に係る検出方法で、サンプル中のターゲット核酸濃度を定量できることが確認された。
【0058】
図5は、実施例1の実験結果を示すグラフである。図5の横軸はサンプルに含まれるターゲット核酸の濃度を示し、縦軸はセンサの出力(吸光度比R650/R550以下、同じ)を示す。図5に示すように、BSAを添加しない場合、ターゲット核酸濃度の測定可能レンジは109~106程度であった。これに対し、BSA濃度を0.1mg/Lとした場合、測定可能なレンジが109~103程度となり、レンジを拡げることができた。
【0059】
一方、BSA濃度を0.01mg/Lとした場合、センサ出力が安定しなかった。また、BSA濃度を1mg/lとした場合、センサ出力が核酸濃度とは逆方向に動いた。
【0060】
以上の結果より、BSAを適量添加することにより、ターゲット核酸濃度の測定可能レンジを拡大できることがわかった。また、サンプル混合液における適切なBSAの添加量(濃度)は、0.01mg/L超、1mg/L未満の範囲であり、好ましくは、0.1mg/L近傍であることがわかった。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る核酸検出方法について説明する。図6は、第2の実施形態における核酸検出方法を説明するための概念図である。
【0062】
第2の実施形態においては、核酸濃度を推定する際に(図1の工程40参照)、カーブフィッティングの手法を用いる。なお、第2の実施形態においては、サンプルからの抽出液とプローブ溶液との混合液に塩化ナトリウムを添加する際(図1の工程S20参照)、第1の実施形態のようにBSAを添加することは必須ではない。
【0063】
ここで、金ナノ粒子プローブは、未凝集、凝集、及び、ハイブリタイゼーションの3つの状態を取り得る。これらの状態において、金ナノ粒子プローブはそれぞれ特有の吸光スペクトルを有する。従って、サンプルにターゲット核酸が存在する場合、サンプルからの抽出液とプローブとの混合液(サンプル混合液、調製工程S20参照)においては、ハイブリダイズによって金ナノ粒子の凝集が阻害され、吸光スペクトルに変化が生じる。そこで、サンプル混合液の吸光スペクトルをカーブフィッティングによりスペクトル分解を行うことで、ハイブリダイズされた金ナノ粒子プローブ特有の吸光スペクトルを算出することができる。
【0064】
詳細には、サンプル混合液の吸光スペクトルは、次式(1)で示すように、未凝集、凝集、及び、ハイブリタイゼーションの3つの状態における吸光スペクトルの線形結合として表すことができる。
X(λ)=x×C(λ)+y×D(λ)+z×E(λ) …(1)
式1において、X(λ)はサンプル混合液の波長λにおける吸光度、D(λ)は未凝集状態のプローブの同吸光度、C(λ)は凝集状態のプローブの同吸光度、E(λ)はハイブリタイズされたプローブの同吸光度を示す。また、x,y,zは係数である。
【0065】
ランベルト・ベールの法則より、上記式(1)において、係数x,y,zはそれぞれ、未凝集、凝集、ハイブリダイゼーションの状態における金ナノ粒子プローブの濃度に比例するものと考えられる。従って、これらの係数x,y,zを特定することで、抽出液中のターゲット核酸の濃度を定量することが可能となる。具体的には、次式(2)で示す線形結合の和が最小となるように、係数x,y,zを決定することになる。
【数1】
【0066】
実際の手法としては、まず、(i)サンプル、NaCl、及びBSAのいずれも含まない、金ナノ粒子プローブの溶液(以下、プローブ溶液)の吸光スペクトル、(ii)サンプルなしのプローブ溶液にNaClを添加して加熱した溶液(以下、ブランク溶液)の吸光スペクトル、(iii)サンプルからの核酸抽出液及びプローブ溶液を混合し、NaClを添加して加熱した溶液(サンプル混合液)の吸光スペクトルを測定する。
【0067】
プローブ溶液の吸光スペクトル(波長λにおける吸光度)を表す項をA(λ)、ブランク溶液の吸光スペクトル(同上)を表す項をB(λ)、サンプル混合液の吸光スペクトル(同上)を表す項をS(λ)とすると、これら3つの吸光スペクトルの線形結合X’(λ)は、次式(2)により表される。
X’(λ)=a×A(λ)+b×B(λ)+h×S(λ) …(2)
この線形結合X’(λ)が、サンプル混合液の吸光スペクトルS(λ)に最も近くなるように、最小二乗法を用いてA(λ)、B(λ)、hを決定する。
【0068】
ここで、上述したように、サンプル混合液の吸光スペクトルは、未凝集、凝集、及び、ハイブリタイゼーションの状態における金ナノ粒子プローブの吸光スペクトルの線形結合であると言える(式(1)参照)。そうすると、上記プローブ溶液、ブランク溶液、及び、サンプル混合液の各吸収スペクトルA(λ)、B(λ)、S(λ)は、係数c,d,eを用いて、次式(3)~(5)のように表すことができる。
【0069】
A(λ)=C(λ) …(3)
B(λ)=c×C(λ)+D(λ) …(4)
S(λ)=d×C(λ)+e×D(λ)+E(λ) …(5)
【0070】
式(3)~(5)より、線形結合X’(λ)は、次式(6)のように表すことができる。
X’(λ)=(x-yc-dz-cez)×A(λ)
+(y-cz)×B(λ)+z×S(λ) …(6)
【0071】
従って、式(2)における係数hは、式(1)における係数zと等しく、係数hを求めることで、サンプル混合液においてハイブリダイズされた金ナノ粒子プローブの濃度、言い換えると、ターゲット核酸の濃度を推定することができる。
【0072】
(実施例2)
金ナノ粒子として、5 nm diameter, OD 1, stabilized in suspension in citrate buffer (Sigma-Aldrich社)を用いた。また、プローブDNAは、ベータプロテオバクテリア属のアンモニア酸化細菌(AOB)の16S rRNA 遺伝子を検出するPCRプライマー(CTO189F A/B/CとRT1R)の塩基配列を参考に、T50スペーサーを含むT50-cCTO189FとT50-RT1Rとした。このプローブDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブを作製した。
【0073】
金ナノ粒子プローブとしてT50-cCTO189Fを10μL、及び、T50-RT1Rを10μLと、サンプルからの核酸抽出液1μLと、NaCl水溶液30μLを混合した計51μLの混合液を、95℃で30秒加熱し、さらに、59℃で1分間加熱した。これをサンプル混合液とし、紫外線可視分光光度計を用いて、サンプル混合液の吸光スペクトルを測定した。なお、サンプルについては、複数のプラントから採水したサンプルについてそれぞれ吸光スペクトルを測定した後、任意の1つのサンプルに関する吸光スペクトルを選択し、以降の演算に用いた。
【0074】
また、プローブ溶液及びブランク溶液についても、同様にして吸光スペクトルを測定した。ブランク溶液については、調製及び測定を3回行い、検出下限を求めた。
【0075】
上述したように、式(2)の線形結合X’(λ)がサンプル混合液の吸光スペクトルS(λ)に最も近くなるように、最小二乗法を用いてA(λ)、B(λ)、hを決定した。このうちの係数hを、ハイブリダイズの指標とし、qPCR法により測定したサンプルのターゲット核酸濃度と比較した。
【0076】
図7は、実施例2の比較例を示すグラフであり、サンプル混合液について測定された吸光スペクトルに基づいて算出された吸光度比と、同じサンプル混合液についてqPCRにより測定されたターゲット核酸濃度との関係を示す。図7において、横軸はターゲット核酸濃度(copies/μL)を示し、縦軸は吸光度比を示す。図8は、実施例2の実験結果を示すグラフであり、上述したカーブフィッティングにより算出した係数と、qPCRにより測定されたターゲット核酸濃度との関係を示す。図8において、横軸はターゲット核酸濃度を示し、縦軸は係数hを示す。
【0077】
図7に示すように、濃度が1×107(copies/μL)を下回ると、吸光度比とターゲット核酸濃度との相関が弱くなった。これより、ターゲット核酸濃度が低い場合、吸光度比に基づく方法では定量が困難であると言える。
【0078】
一方、図8に示すように、係数hを用いた場合、ターゲット核酸濃度が1×107(copies/μL)以下の場合に、係数hとターゲット核酸濃度との間に正の相関が見られた。なお、ターゲット核酸濃度がこれ以上の場合、係数hは0.8から1.0の間を推移した。
【0079】
ターゲット核酸濃度が1×107(copies/μL)以下の範囲において、係数hはターゲット核酸濃度に概ね比例していると見られる。この領域において、実験結果を直線で近似すると、次式(7)で示す関数が得られた。
h=9.85×10-8×(濃度)+0.010 …(7)
なお、σ=0.976831613である。これより、係数hはランベルト・ベールの法則にしたがう数値であると考えられる。
【0080】
ブランク溶液(n=3)について、カーブフィッティングにより係数hを求めたところ、平均が5.9×10-6、標準偏差(σ)が0.086となった。これより検出下限(3σ)は、係数h=0.258、ターゲット濃度で2.9×106であると算出された。これより、ターゲット核酸濃度の定量が可能となるダイナミックレンジは、少なくとも、2.9×106以上10×106以下の範囲であると言える。
【0081】
以上の結果より、従来の吸光度比と比較して、第2の実施形態における吸光スペクトルのカーブフィッティングによる手法の方が、ターゲット核酸濃度をより正確に、且つ、より低濃度の範囲までの定量できることがわかった。
【0082】
なお、実施例2においては、サンプル混合液にBSAを添加しなかったが、サンプル混合液にBSAを添加した上で、カーブフィッティングの手法を用いてターゲット核酸濃度を定量することとしても良い。なお、この場合、ブランク溶液に対しても同様にBSAが添加される。これにより、さらに低濃度側にダイナミックレンジを拡げることができる。
【0083】
(変形例)
上記第1又は第2の実施形態において使用される試薬組成物を、サンプルに含まれる微生物を検出するための試薬キットとしても良い。試薬キットは、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液と、塩化ナトリウム溶液と、を含む。また、試薬キットに、ウシ血清アルブミンをさらに含めても良い。試薬キットは、これらの試薬を所定量ずつ封入したセットとしても良い。このような試薬キットは、サンプル混合液の調整に使用することができる。また、試薬キットをブランク溶液の調整にも使用することができ、キットに含まれるプローブ溶液については、そのまま吸光スペクトルの測定に用いることもできる。それにより、上記サンプル混合液、ブランク溶液、及び、プローブ溶液の吸光スペクトルに基づく演算により、サンプルにおけるターゲット核酸の濃度を推定することが可能となる。
【0084】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る測定システムの概略構成を示すブロック図である。第3の実施形態に係る測定システム10は、サンプルに含まれる微生物の核酸を検出するためのシステムであり、測定部11と、表示部12と、操作入力部13と、情報処理装置14とを備える。
【0085】
測定部11は、例えば吸光光度計であり、サンプルを含む液体の吸光スペクトルを測定する。吸光スペクトルの波長範囲としては、450nm~800nmの範囲であれば良い。もちろん、吸光スペクトルの代わりに散乱光を測定することとしても良い。
【0086】
或いは、測定部11として、マイクロプレートリーダーを用いても良い。この場合、550nm近傍及び650nm近傍の2波長のみを測定することとしても良い。或いは、モノクロリーダーを用いて所望の複数波長を測定しても良い。
【0087】
表示部12は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、測定部11から入力された吸光スペクトルや、吸光スペクトルに基づいて推定されるサンプル中のターゲット核酸の濃度等を表示する。
【0088】
操作入力部13は、例えばキーボード、マウス、表示部12の表面に設けられたタッチパネル等の入力デバイスであり、ユーザによる操作を受け付け、操作に応じた信号を後述するプロセッサ17に入力する。
【0089】
情報処理装置14は、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の汎用の演算処理処置によって構成され、ターゲット核酸の濃度を測定する測定装置として用いることができる。図3に示すように、情報処理装置14は、外部インタフェース15と、記憶部16と、プロセッサ17とを備える。
【0090】
外部インタフェース15は、当該情報処理装置14を外部機器と接続し、情報処理装置14と外部機器との間で信号を送受信するインタフェースである。情報処理装置14に接続される外部機器としては、測定部11、表示部12、操作入力部13等が挙げられる。外部インタフェース11は、例えば、測定部11により測定された吸光スペクトルを表す情報の入力を受け付ける受付部として機能する。
【0091】
記憶部16は、例えばROMやRAMといった半導体メモリやハードディスク等のコンピュータ読取可能な記憶媒体を用いて構成され、オペレーティングシステムプログラム及びドライバプログラムに加えて、各種機能を実行するアプリケーションプログラムや、これらのプログラムの実行中に使用される各種パラメータ等を格納する。例えば、記憶部16は、測定部11から入力される情報により表される吸光スペクトルに基づいてサンプル中のターゲット核酸の濃度を推定するプログラム161や、この推定演算において用いられるパラメータを記憶する。また、記憶部16は、例えば、サンプル、NaCl、及びBSAのいずれも含まない金ナノ粒子プローブの溶液(プローブ溶液)の吸光スペクトルと、プローブ溶液にNaCl(又はNaCl及びBSA)を添加したブランク溶液の吸光スペクトルと、の少なくともいずれかを記憶しても良い。また、プローブ溶液の吸光スペクトルや、ブランク溶液の吸光スペクトルとして、各種のターゲット核酸に関する吸光スペクトルを記憶しておき、検出対象の細菌やウイルスに応じて、使用される吸光スペクトルが読み出されるようにしても良い。
【0092】
プロセッサ17は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)を用いて構成され、記憶部16に記憶された各種プログラムを読み込むことにより、情報処理装置14の各部を統括的に制御すると共に、各種プログラムによるアプリケーションを実行する。詳細には、プロセッサ17の演算部171は、測定部11からサンプルに関する(即ち、サンプル混合液の)吸光スペクトル(又は複数波長の強度)が入力されると、この吸光スペクトル(又は複数波長の強度)に基づいて、サンプルにおけるターゲット核酸の濃度を推定する処理を実行する。
【0093】
1つの演算処理として、演算部171は、サンブル混合液の吸光スペクトル中の550nm及び650nmにおける吸光度の吸光度比に基づいて、ターゲット核酸の濃度を推定することができる。
【0094】
また、別の演算処理として、演算部171は、プローブ溶液の吸光スペクトルと、ブランク溶液の吸光スペクトルと、サンプル混合液の吸光スペクトルとに基づいて、ターゲット核酸の濃度を推定することができる。詳細には、演算部171は、プローブ溶液、ブランク溶液、及び、サンプル混合液の吸光スペクトルに基づくカーブフィッティングを実行することができる。この場合、演算部171は、測定部11により測定されたプローブ溶液、ブランク溶液、及び、サンプル混合液の吸光スペクトルを測定部11から取得し、これらの吸光スペクトルに基づいて演算を行っても良い。或いは、演算部171は、サンプル混合液の吸光スペクトルを測定部11から取得する一方、プローブ溶液及びブランク溶液の吸光スペクトルを記憶部16から読み出し、これらのサンプル混合液、プローブ溶液、及び、ブランク溶液の吸光スペクトルに基づいて演算を行っても良い。もちろん、演算部171は、プローブ溶液及びブランク溶液のいずれか一方の吸光スペクトルを記憶部16から読み出し、他方の吸光スペクトルを測定部11から取得して演算を行っても良い。
【0095】
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、サンプルに含まれる核酸の濃度を定量することができる。サンプルは特に限定されず、下水や廃水、湖、川、海などの環境水、食品、人や動物から採取した検体などを検査することができる。また、微生物の種類は特に限定されず、例えば上記表1に示す各種微生物の核酸を検出することが可能である。
【0096】
また、本発明の各実施形態によれば、金ナノ粒子プローブを用いることにより、迅速且つ簡便に、しかも、PCR法と同等の精度で核酸濃度を推定することができる。特に、本発明の各実施形態においては、サンプルからの核酸抽出液に対して核酸増幅処理を施す必要がないので、検査時間を大幅に短縮することができる。具体的には、核酸抽出液に対する分析反応に要する時間はわずか10分、前処理工程である核酸抽出を含めたトータルの時間でも20分程度に短縮することができる。
【0097】
また、本発明の第1の実施形態によれば、BSAを添加することにより、測定可能な核酸濃度のダイナミックレンジを低濃度側に拡張することができる。
【0098】
また、本発明の第2の実施形態によれば、カーブフィッティングの手法を用いることにより、核酸濃度の推定精度を向上できると共に、測定可能な核酸濃度のダイナミックレンジを低濃度側に拡張することができる。また、BSAを添加すると共に、カーブフィッティングの手法を用いることにより、低濃度側のダイナミックレンジをさらに拡張することができる。
【0099】
これらの第1及び第2の各実施形態によれば、測定可能な核酸濃度のダイナミックレンジを低濃度側に拡張することができ、十分なレンジを確保することができる。そのため、環境水における微生物の有無や濃度を測定し、飲料水や生活水に使用できるか否かの判定にも適用できる可能性がある。従って、例えば開発途上国や災害地等においても安全な水へのアクセスを向上させることが可能となる。
【0100】
また、上記第1~第3の実施形態によれば、金ナノ粒子プローブを用いるため、抗体を使用した検出系と比較して、動物へ免疫する必要がないため製造コストが安価、化学合成可能なため安定な製造が可能である。また、PCRのような高額な酵素や分析機器は不要であるため、環境水の微生物モニタリングのように、定期的或いは頻繁に実施される必要がある場合や、途上国や災害地のように設備が整っていない状況において検査が可能である。
【0101】
上記第1~第3の実施形態によれば、細菌の16S rRNA遺伝子やノロウイルスのGI型又はGII型RNA遺伝子などの他にも、各種の細菌やウイルスの遺伝子をターゲットとして検出することが可能である。要は、ターゲット核酸に特異的に結合する相補鎖的なDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブを作製できれば、本発明の各実施形態を適用することができる。
【0102】
以上説明した本発明は、上記第1~第3実施形態及び変形例に限定されるものではなく、上記第1~第3実施形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、上記第1~第3実施形態及び変形例に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、上記第1~第3実施形態及び変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【0103】
(付記1)
サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液を混合し、さらに、塩化ナトリウム及びウシ血清アルブミンを添加して加熱するサンプル混合液の調製工程と、
前記サンプル混合液の吸光スペクトルを取得する工程と、
前記吸光スペクトルに基づいて、前記サンプルにおける前記ターゲット核酸の濃度を推定する演算工程と、
を含む微生物の核酸検出方法。
【0104】
(付記2)
前記ウシ血清アルブミンの濃度は、前記サンプル混合液において、0.01mg/L超、1mg/L未満である、付記1に記載の微生物の核酸検出方法。
【0105】
(付記3)
前記演算工程は、前記サンプル混合液の550nm及び650nmにおける吸光度を取得し、550nmにおける吸光度に対する650nmにおける吸光度の吸光度比に基づいて前記ターゲット核酸の濃度を推定する、付記1又は2に記載の微生物の核酸検出方法。
【符号の説明】
【0106】
1…金ナノ粒子プローブ(プローブ)、2…金ナノ粒子、3…DNA、10…測定システム、11…測定部、12…表示部、13…操作入力部、14…情報処理装置、15…外部インタフェース、16…記憶部、17…プロセッサ、161…プログラム、171…演算部
【要約】
ターゲット核酸の濃度を簡便且つ迅速、高精度に測定することができると共に、十分な測定レンジ(ダイナミックレンジ)を確保できる微生物の核酸検出方法等を提供する。微生物の核酸検出方法は、サンプルに核酸抽出処理を施すことにより得られた抽出液に、ターゲット核酸に特異的に結合するDNAに金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子プローブの溶液であるプローブ溶液を混合し、さらに、少なくとも塩化ナトリウムを添加して加熱するサンプル混合液の調製工程と、プローブ溶液の吸光スペクトルを取得する工程と、プローブ溶液に塩化ナトリウムを添加して加熱した、サンプルを含まない溶液であるブランク溶液の吸光スペクトルを取得する工程と、サンプル混合液の吸光スペクトルを取得する工程と、プローブ溶液、ブランク溶液、及び、サンプル混合液の吸光スペクトルに基づいて、サンプルにおけるターゲット核酸の濃度を推定する演算工程と、を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9