(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20241218BHJP
C10M 137/04 20060101ALI20241218BHJP
C10M 137/02 20060101ALI20241218BHJP
C10M 107/34 20060101ALN20241218BHJP
C10M 107/24 20060101ALN20241218BHJP
C09K 5/04 20060101ALN20241218BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20241218BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M137/04
C10M137/02
C10M107/34
C10M107/24
C09K5/04 F
C10N30:06
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2021575702
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2021001835
(87)【国際公開番号】W WO2021157357
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2020017120
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-316479(JP,A)
【文献】特開平05-070789(JP,A)
【文献】特開2009-263666(JP,A)
【文献】特開平09-227887(JP,A)
【文献】特開平05-086391(JP,A)
【文献】特開昭56-070082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C09K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)と、第一リン系化合物(B)と、を含有し、
前記基油(A)は、ポリビニルエーテル類及びポリアルキレングリコール類からなる群から選択される1種以上の基油(A2)を含み、
前記基油(A)中における前記基油(A2)の含有量は、前記基油(A)の全量基準で、50~100質量%であり、
前記第一リン系化合物(B)は、下記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び下記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)からなる群から選択される1種以上であ
り、
さらに、第二リン系化合物(C)を含有し、
前記第二リン系化合物(C)は、リン酸化合物(C1)及び有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)からなる群から選択される1種以上である冷凍機油組成物。
【化1】
[上記一般式(1)中、R
11は下記一般式(1a)で表される芳香族基である。R
12は炭素数6~20の脂肪族炭化水素基である。nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR
11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R
12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【化2】
[上記一般式(1a)中、R
13は炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR
13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、波線は、R
11-O-中の酸素原子との結合位置を示す。]
【化3】
[上記一般式(2)中、R
21及びR
22は各々独立して、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基である。]
【請求項2】
前記一般式(1a)中のmが1~5の整数である、請求項1に記載の冷凍機油組成物。
【請求項3】
リン原子含有量が、前記冷凍機油組成物の全量基準で、200質量ppm~1,500質量ppmである、請求項1
又は2に記載の冷凍機油組成物。
【請求項4】
基油(A)と、第一リン系化合物(B)と、
第二リン系化合物(C)と、を混合する工程を含み、
前記基油(A)は、ポリビニルエーテル類及びポリアルキレングリコール類からなる群から選択される1種以上の基油(A2)を含み、
前記基油(A)中における前記基油(A2)の含有量は、前記基油(A)の全量基準で、50~100質量%であり、
前記第一リン系化合物(B)は、下記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び下記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)からなる群から選択される1種以上であ
り、
前記第二リン系化合物(C)は、リン酸化合物(C1)及び有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)からなる群から選択される1種以上である冷凍機油組成物の製造方法。
【化4】
[上記一般式(1)中、R
11は下記一般式(1a)で表される芳香族基である。R
12は炭素数6~20の脂肪族炭化水素基である。nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR
11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R
12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【化5】
[上記一般式(1a)中、R
13は炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR
13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、波線は、R
11-O-中の酸素原子との結合位置を示す。]
【化6】
[上記一般式(2)中、R
21及びR
22は各々独立して、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基である。]
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の冷凍機油組成物と、冷媒と、を含有する、冷凍機用混合組成物。
【請求項6】
前記冷媒が、不飽和フッ化炭化水素化合物、飽和フッ化炭化水素化合物、ハイドロカーボン、二酸化炭素、及びアンモニアからなる群から選択される1種以上を含む、請求項
5に記載の冷凍機用混合組成物。
【請求項7】
前記冷媒が、不飽和フッ化炭化水素化合物を含む請求項5に記載の冷凍機用混合組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物に関する。
なお、本明細書において、「冷凍機用混合組成物」とは、「冷凍機油組成物」に「冷媒」を混合した組成物を指す。
【背景技術】
【0002】
近年の産業機械の高速化、高圧化、及び小型化に伴い、圧縮機械、油圧機械、タービン、歯車要素、及び軸受等の機械要素がより過酷な条件下で運転されるようになっている。これらの機械に使用する潤滑油組成物には、過酷な条件下であっても長期間にわたって機械寿命を十分に保証できる潤滑性能が求められている。
【0003】
ところで、潤滑油組成物には、潤滑性能の向上を目的として、種々の添加剤が配合される。その中でも、トリクレジルホスフェート(以下、「TCP」ともいう)は、耐摩耗性を向上させるための添加剤として、従来から使用されている。
例えば、特許文献1には、鉱油又は合成油もしくはこれらの混合油からなる基油に、リン系極圧剤としてTCPを所定量配合した潤滑油の補強剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、冷凍機油組成物についても、従来よりも過酷な条件下で長期間にわたって機械寿命を十分に保証できる潤滑性能が要求されている。そのため、従来よりも耐摩耗性に優れる冷凍機油組成物が要求されている。
しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、TCP等のリン酸エステルを配合した冷凍機油組成物では、上記要求に応えられないことがわかった。
【0006】
本発明は、上記要求に鑑みてなされたものであって、耐摩耗性により優れる冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、基油と特定の亜リン酸エステルとを含有する冷凍機油組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[3]に関する。
[1] 基油(A)と、第一リン系化合物(B)と、を含有し、
前記第一リン系化合物(B)は、下記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び下記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)からなる群から選択される1種以上である、冷凍機油組成物。
【化1】
[上記一般式(1)中、R
11は下記一般式(1a)で表される芳香族基である。R
12は炭素数6~20の脂肪族炭化水素基である。nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR
11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R
12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【化2】
[上記一般式(1a)中、R
13は炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR
13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、波線は、R
11-O-中の酸素原子との結合位置を示す。]
【化3】
[上記一般式(2)中、R
21及びR
22は各々独立して、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基である。]
[2] 基油(A)と、第一リン系化合物(B)と、を混合する工程を含み、
前記第一リン系化合物(B)は、下記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び下記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)からなる群から選択される1種以上である、冷凍機油組成物の製造方法。
【化4】
[上記一般式(1)中、R
11は下記一般式(1a)で表される芳香族基である。R
12は炭素数6~20の脂肪族炭化水素基である。nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR
11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R
12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【化5】
[上記一般式(1a)中、R
13は炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR
13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、波線は、R
11-O-中の酸素原子との結合位置を示す。]
【化6】
[上記一般式(2)中、R
21及びR
22は各々独立して、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基である。]
[3] [1]に記載の冷凍機油組成物と、冷媒と、を含有する、冷凍機用混合組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐摩耗性により優れる冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることができる。
また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特にことわりのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
【0011】
本明細書において、「炭化水素基」とは、特にことわりのない限り、炭素原子及び水素原子のみから構成されている基を意味する。「炭化水素基」には、飽和もしくは不飽和の直鎖又は飽和もしくは不飽和の分岐鎖から構成される「脂肪族基」、芳香性を有しない飽和又は不飽和の炭素環を1以上有する「脂環式基」、ベンゼン環等の芳香性を示す芳香環を1以上有する「芳香族基」も含まれる。
また、本明細書において、「環形成炭素数」とは、原子が環状に結合した構造の化合物の該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。
また、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造の化合物の、該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)、及び環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。
なお、本明細書において、「置換又は無置換の炭素数a~bのX基」という表現における「炭素数a~b」は、X基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、X基が置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。
【0012】
本明細書において、「40℃における動粘度」のことを、「40℃動粘度」ともいう。
【0013】
[本発明の冷凍機油組成物の態様]
本発明の冷凍機油組成物は、基油(A)と、第一リン系化合物(B)とを含有する。
第一リン系化合物(B)は、下記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び下記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)からなる群から選択される1種以上である。
【0014】
【化7】
[上記一般式(1)中、R
11は下記一般式(1a)で表される芳香族基である。R
12は炭素数6~20の脂肪族炭化水素基である。nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR
11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R
12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【0015】
【化8】
[上記一般式(1a)中、R
13は炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR
13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、波線は、R
11-O-中の酸素原子との結合位置を示す。]
【0016】
【化9】
[上記一般式(2)中、R
21及びR
22は各々独立して、炭素数10~30の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。]
【0017】
本発明者は、冷凍機油組成物に対する近年の要求に応えるべく、従来よりも過酷な条件下においても、冷凍機油組成物の耐摩耗性を向上し得る添加剤について鋭意検討を行った。
まず、耐摩耗性を向上させるための添加剤として従来から使用されてきたTCPについて検討した結果、十分な耐摩耗性向上効果が得られないことが確認された。次に、トリフェニルホスフィンオキサイド(以下、「TPPO」ともいう)について検討した結果、TCPと同様、十分な耐摩耗性向上効果が得られないことがわかった。これらの結果から、TCP等のリン酸エステルやTPPO等の有機ホスフィンオキサイド化合物を用いた場合、十分な耐摩耗性向上効果が得られないと考えた。
そこで、本発明者は、さらに鋭意検討を行ったところ、上記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び上記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)が、顕著な耐摩耗性向上効果を発揮することを見出し、さらに種々検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0018】
なお、以降の説明では、「基油(A)」及び「第一リン系化合物(B)」を、それぞれ「成分(A)」及び「成分(B)」ともいう。
また、上記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び上記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)を、それぞれ「成分(B1)」及び「成分(B2)」ともいう。
【0019】
本発明の一態様の冷凍機油組成物は、成分(A)及び成分(B)のみから構成されていてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)及び成分(B)以外の他の成分を含有していてもよい。
本発明の一態様の冷凍機油組成物において、成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは80質量%~100質量%、より好ましくは85質量%~100質量%、更に好ましくは90質量%~100質量%である。
【0020】
以下、本発明の冷凍機油組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0021】
<基油(A)>
本発明の冷凍機油組成物は、基油(A)を含有する。
本発明の一態様の冷凍機油組成物において、基油(A)の含有量は、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは85.0質量%以上、より好ましくは90.0質量%以上、更に好ましくは95.0質量%以上である。また、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99.3質量%以下、更に好ましくは99.2質量%、より更に好ましくは99.1質量%以下、更になお好ましくは99.0質量%以下である。
【0022】
基油(A)としては、冷凍機油組成物において通常用いられる基油を、特に制限なく用いることができる。例えば、基油(A)として、合成油及び鉱油からなる群から選択される1種以上を用いることができる。
ここで、本発明の一態様の冷凍機油組成物において、冷凍機油組成物の熱安定性向上の観点から、基油(A)は、ポリアルキレングリコール類(以下、「PAG」ともいう)、ポリビニルエーテル類(以下、「PVE」ともいう)、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体(以下、「ECP」ともいう)、ポリオールエステル類(以下、「POE」ともいう)、及び鉱油からなる群から選択される1種以上の基油(以下、「基油(A1)」ともいう)を含むことが好ましく、冷媒との相溶性向上の観点、耐加水分解性向上の観点、及び冷凍機油組成物の熱安定性向上の観点から、PVE及びPAGからなる群から選択される1種以上の基油(以下、「基油(A2)」ともいう)を含むことがより好ましい。更に好ましい態様としては、基油(A)が、PVE(以下、「基油(A3)」ともいう)を含むこと又はPAG(以下、「基油(A4)」ともいう)を含むことであり、耐摩耗性向上効果をより発揮させやすくする観点からは、PAG(以下、「基油(A4)」ともいう)を含むことがより更に好ましい。
以下、PVE、PAG、ECP、POE、及び鉱油について、詳細に説明する。
【0023】
(ポリビニルエーテル類(PVE))
PVEは、ビニルエーテル由来の構成単位を1種以上有する重合体であればよい。
なお、基油(A)中にPVEが含まれる場合、PVEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
PVEは、冷媒との相溶性の観点から、ビニルエーテル由来の構成単位を1種以上有し、側鎖に炭素数1~4のアルキル基を有する重合体が好ましい。該アルキル基としては、冷媒との相溶性をより向上させる観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0024】
PVEは、下記一般式(A-1)で表される構成単位を1種以上有する重合体(A-1)であることが好ましい。
【0025】
【0026】
式(A-1)中、R1a、R2a、及びR3aは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示す。R4aは、炭素数2~10の2価の炭化水素基を示す。R5aは、炭素数1~10の炭化水素基を示す。rは、OR4aの繰り返し単位の数であって、通常0~10であるが、好ましくは0~5、より好ましくは0~3、更に好ましくは0である。なお、上記一般式(A-1)で表される構成単位中にOR4aが複数存在する場合、複数のOR4aは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0027】
R1a、R2a及びR3aで表される炭素数1~8の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。
ここで、「各種」とは「直鎖状、分岐鎖状、又は環状」の炭化水素基であることを表し、例えば、「各種ブチル基」とは、「n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基」等の各種ブチル基を表す。また、環状構造を有する基については、オルト体、メタ体、パラ体等の位置異性体を含むことを示し、以下、同様である。
【0028】
R1a、R2a、及びR3aで表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3である。
R1a、R2a、及びR3aは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
【0029】
R4aで表される炭素数2~10の2価の炭化水素基としては、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基等の2価の脂肪族基;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン等の二価の脂環式基;各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレン等の2価の芳香族基;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分とにそれぞれ一価の結合部位を有する2価のアルキル芳香族基;キシレン、ジエチルベンゼン等のポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有する2価のアルキル芳香族基;等が挙げられる。
R4aで表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは2~6、より好ましくは2~4である。
R4aは、炭素数2~10の2価の脂肪族基が好ましく、炭素数2~4の2価の脂肪族基がより好ましい。
【0030】
R5aで表される炭素数1~10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。
R5aで表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。
R5aは、冷媒との相溶性をより向上させる観点から、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基がより更に好ましい。
【0031】
上記一般式(A-1)で表される構成単位の単位数(重合度数)は、基油(A)に要求される動粘度に応じて適宜選択される。
また、上記一般式(A-1)で表される構成単位を有する重合体は、該構成単位を1種のみ有する単独重合体であってもよく、該構成単位を2種以上有する共重合体であってもよい。なお、重合体が共重合体である場合、共重合の形態としては、特に制限はなく、ブロック共重合体、ランダム共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0032】
重合体(A-1)の末端部分には、飽和の炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、アミド、ニトリル等に由来する一価の基を導入してもよい。これらの中でも、重合体(A-1)は、一方の末端部分が下記一般式(A-1-i)で表される基であることが好ましい。
【0033】
【0034】
式(A-1-i)中、*は上記一般式(A-1)で表される構成単位中の炭素原子との結合位置を示す。
式(A-1-i)中、R6a、R7a、及びR8aは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
R6a、R7a、及びR8aで表される炭素数1~8の炭化水素基としては、上記一般式(A-1)中のR1a、R2a、及びR3aで表される炭素数1~8の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0035】
上記式(A-1-i)中、R9aは、炭素数2~10の2価の炭化水素基を示し、炭素数2~6の2価の炭化水素基が好ましく、炭素数2~4の2価の脂肪族基がより好ましい。
上記式(A-1-i)中、r1は、OR9aの繰り返し単位の数であって、通常0~10であるが、好ましくは0~5、より好ましくは0~3、更に好ましくは0である。なお、上記一般式(A-1-i)で表される構成単位中にOR9aが複数存在する場合、複数のOR9aは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
R9aで表される炭素数2~10の2価の炭化水素基としては、上記一般式(A-1)中のR4aで表される炭素数2~10の2価の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0036】
式(A-1-i)中、R10aは、炭素数1~10の炭化水素基を示し、炭素数1~8の炭化水素基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。
なお、R10aとしては、上記一般式(A-1-i)中のr1が0である場合には、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、r1が1以上である場合には、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
R10aで表される炭素数1~10の炭化水素基としては、上記一般式(A-1)中のR5aで表される炭素数1~10の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0037】
また、重合体(A-1)について、一方の末端部分が上記一般式(A-1-i)で表される基であるとき、他方の末端部分としては、上記一般式(A-1-i)で表される基、下記一般式(A-1-ii)で表される基、下記一般式(A-1-iii)で表される基、及びオレフィン性不飽和結合を有する基のいずれかであることが好ましい。
【0038】
【0039】
式(A-1-ii)及び(A-1-iii)中、R6a、R7a、R8a、R9a、R10a、及びr1は、上記一般式(A-1-i)中の規定と同じである。また、式(A-1-ii)中、R11a、R12a、及びr2は、それぞれ上記一般式(A-1-i)中のR9a、R10a及びr1の規定と同じである。
【0040】
本発明の一態様において、一般式(A-1)で表される構成単位を有するポリビニル系化合物は、R1a、R2a、及びR3aがいずれも水素原子であり、rが0であり、R5aがエチル基である、ポリエチルビニルエーテルが、冷媒に対する溶解性及び熱安定性の向上の観点から好ましい。
また、同様の観点から、一般式(A-1)で表される構成単位を有するポリビニル系化合物は、R1a、R2a、及びR3aがいずれも水素原子であり、rが0であり、R5aがエチル基である、ポリエチルビニルエーテルと、R1a、R2a、及びR3aがいずれも水素原子であり、rが0であり、R5aがイソブチル基である、ポリイソブチルビニルエーテルとの共重合体であることが好ましい。この場合、エチルビニルエーテルの構成単位とイソブチルビニルエーテルの構成単位との含有比率[(エチルビニルエーテルの構成単位)/(イソブチルビニルエーテルの構成単位)]は、モル比で、好ましくは50/50~99/1、より好ましくは70/30~99/1、更に好ましくは80/20~95/5であり、より更に好ましくは85/15~95/5である。
【0041】
本発明において、上記のポリビニルエーテル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(ポリアルキレングリコール類(PAG))
PAGは、下記一般式(A-2)で表される重合体(A-2)であることが好ましい。
R13a-[(OR14a)p-OR15a]q (A-2)
なお、基油(A)中にPAGが含まれる場合、PAGは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記一般式(A-2)中、R13aは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、炭素数2~10のアシル基、炭素数1~10の2~6価の炭化水素基又は置換若しくは無置換の環形成原子数3~10の複素環基を示し、R14aは、炭素数2~4のアルキレン基を示し、R15aは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、炭素数2~10のアシル基又は置換若しくは無置換の環形成原子数3~10の複素環基を示す。
複素環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1~10(好ましくは1~6、より好ましくは1~3)のアルキル基;環形成炭素数3~10(好ましくは3~8、より好ましくは5又は6)のシクロアルキル基;環形成炭素数6~18(好ましくは6~12)のアリール基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;アミノ基等が挙げられる。
これらの置換基は、更に上述の任意の置換基により置換されていてもよい。
【0044】
qは、1~6の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1である。
なお、qは、上記一般式(A-2)中のR13aの結合部位の数に応じて定められる。例えば、R13aがアルキル基又はアシル基の場合には、nは1となり、R13aが炭化水素基又は複素環基であり、該基の価数が2、3、4、5、又は6価である場合、nはそれぞれ2、3、4、5、又は6となる。
pは、OR14aの繰り返し単位の数であって、通常1以上であり、好ましくはp×qが6~80となる数である。なお、pの値は、基油(A)の40℃動粘度を適切な範囲に調整するために適宜設定される値であり、40℃動粘度が適切な範囲となるように調整されていれば、特に制限されない。
なお、複数のR14aは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、qが2以上の場合、1分子中の複数のR15aは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0045】
R13a及びR15aで表される上記1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。なお、上記アルキル基は直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよい。
R13a及びR15aで表される1価の炭化水素基の炭素数は、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。
【0046】
R13a及びR15aで表される上記炭素数2~10のアシル基が有する炭化水素基部分は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。該アルキル基部分としては、上述のR13a及びR15aで表される炭化水素基のうち炭素数1~9のものが挙げられる。
R13a及びR15aで表されるアシル基の炭素数は、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは2~8、より好ましくは2~6である。
【0047】
R13aで表される上記2~6価の炭化水素基としては、上述のR13aで表される1価の炭化水素基から更に水素原子を1~5個除いた残基、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,3-トリヒドロキシシクロヘキサン、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン等の多価アルコールから水酸基を除いた残基等が挙げられる。
R13aで表される2~6価のアシル基の炭素数は、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。
【0048】
R13a及びR15aで表される上記複素環基としては、酸素原子含有複素環基又は硫黄原子含有複素環基が好ましい。なお、該複素環基は、飽和環であってもよく不飽和環であってもよい。
上記酸素原子含有複素環基としては、エチレンオキシド、1,3-プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ヘキサメチレンオキシド等の酸素原子含有飽和複素環;アセチレンオキシド、フラン、ピラン、オキシシクロヘプタトリエン、イソベンゾフラン、イソクロメン等の酸素原子含有不飽和複素環が有する水素原子を1~6個除いた残基等が挙げられる。
また、上記硫黄原子含有複素環基としては、エチレンスルフィド、トリメチレンスルフィド、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、ヘキサメチレンスルフィド等の硫黄原子含有飽和複素環、アセチレンスルフィド、チオフェン、チアピラン、チオトリピリデン等の硫黄原子含有不飽和複素環等が有する水素原子を1~6個除いた残基が挙げられる。
【0049】
R13a及びR15aで表される上記複素環基は、置換基を有していてもよく、該置換基が上記一般式(A-2)中の酸素原子と結合してもよい。該置換基としては、上述のとおりであるが、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
上記複素環基の環形成原子数は、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは3~10、より好ましくは3~6である。
【0050】
R14aで表される上記アルキレン基としては、ジメチレン基(-CH2CH2-)、エチレン基(-CH(CH3)-)等の炭素数2のアルキレン基;トリメチレン基(-CH2CH2CH2-)、プロピレン基(-CH(CH3)CH2-)、プロピリデン基(-CHCH2CH3-)、イソプロピリデン基(-C(CH3)2-)等の炭素数3のアルキレン基;テトラメチレン基(-CH2CH2CH2CH2-)、1-メチルトリメチレン基(-CH(CH3)CH2CH2-)、2-メチルトリメチレン基(-CH2CH(CH3)CH2-)、ブチレン基(-C(CH3)2CH2-)等の炭素数4のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、R14aとしては、プロピレン基(-CH(CH3)CH2-)が好ましい。
【0051】
なお、上記一般式(A-2)で表される重合体(A-2)において、オキシプロピレン単位(-OCH(CH3)CH2-)の含有量は、重合体(A-2)中のオキシアルキレン(OR14a)の全量(100モル%)基準で、好ましくは50モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。
【0052】
上記一般式(A-2)で表される重合体(A-2)の中でも、下記一般式(A-2-i)で表されるポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル、下記一般式(A-2-ii)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル、下記一般式(A-2-iii)で表されるポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル、下記一般式(A-2-iv)で表されるポリオキシプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びポリオキシプロピレングリコールジアセテートからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0053】
【化13】
(式(A-2-i)中、p1は、1以上の数を示し、好ましくは6~80の数である。)
【0054】
【化14】
(式(A-2-ii)中、p2及びp3は、各々独立に、1以上の数を示し、好ましくはp2+p3の値が6~80となる数である。)
【0055】
【化15】
(式(A-2-iii)中、p4は、1以上の数を示し、好ましくは6~80の数である。)
【0056】
【化16】
(式(A-2-iv)中、p5は、1以上の数を示し、好ましくは6~80の数である。)
【0057】
なお、上記一般式(A-2-i)中のp1、上記一般式(A-2-ii)中のp2及びp3、上記一般式(A-2-iii)中のp4、並びに上記一般式(A-2-iv)中のp5は、基油(A)に要求される動粘度に応じて適宜選択すればよい。
【0058】
(ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体(ECP))
ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体(ECP)としては、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルに由来の構成単位と、ポリビニルエーテルに由来の構成単位とを有する共重合体であればよい。
なお、「ポリ(オキシ)アルキレングリコール」とは、ポリアルキレングリコール及びポリオキシアルキレングリコールの両方を指す。
また、基油(A)中にECPが含まれる場合、ECPは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該ECPの中でも、次の一般式(A-3-i)で表される共重合体(A-3-i)又は一般式(A-3-ii)で表される共重合体(A-3-ii)であることが好ましい。
【0059】
【0060】
一般式(A-3-i)及び(A-3-ii)中、R1c、R2c、及びR3cは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上8以下の炭化水素基を示す。
R4cは、各々独立に、炭素数1~10の炭化水素基を示す。
R5cは、各々独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示す。
R6cは、各々独立に、水素原子、炭素数1~20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3~20の脂環式基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~24の芳香族基、炭素数2~20のアシル基、又は炭素数2~50の酸素含有炭化水素基を示す。
なお、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、及びR6cが複数存在する場合、構成単位ごとにそれぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
XC及びYCは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。
【0061】
一般式(A-3-i)及び(A-3-ii)中のvは、OR5cで表される単位の数の平均値であって、1以上の数を示し、好ましくは1~50の数である。OR5cが複数存在する場合、複数のOR5cは、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。なお、「OR5c」は、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルに由来の構成単位を示すものである。
一般式(A-3-i)中のuは、0以上の数を示し、好ましくは0~50の数であり、wは、1以上の数を示し、好ましくは1~50の数である。
一般式(A-3-ii)中のx及びyは、それぞれ独立に、1以上の数を示し、好ましくは1~50の数である。
なお、上記v、u、w、x、yの値は、基油(A)に要求される水酸基価に応じて調整されていればよく、特に制限はない。
【0062】
なお、共重合体(A-3-i)及び共重合体(A-3-ii)の共重合の形態としては、特に制限はなく、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、又はグラフト共重合体であってもよい。
【0063】
R1c、R2c、及びR3cとして選択し得る炭素数1~8の炭化水素基としては、一般式(A-1)中のR1a、R2a、及びR3aとして選択し得る炭素数1~8下の1価の炭化水素基と同じものが挙げられる。
R1c、R2c、及びR3cとして選択し得る前記炭化水素基の炭素数としては、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。
R1c、R2c、及びR3cとしては、それぞれ独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1~8のアルキル基、より好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、更に好ましくは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
また、R1c、R2c、及びR3cの少なくとも一つが水素原子であることが好ましく、R1c、R2c、及びR3cの全てが水素原子であることがより好ましい。
【0064】
R4cとして選択し得る炭素数1~10の炭化水素基としては、一般式(A-1)中のR5aとして選択し得る炭素数1~10の炭化水素基と同じものが挙げられる。
R4cとして選択し得る前記炭化水素基の炭素数としては、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~4である。
【0065】
R5cとして選択し得る前記アルキレン基としては、一般式(A-2)中のR14aとして選択し得る炭素数2以上4以下のアルキレン基と同じものが挙げられ、好ましくはプロピレン基(-CH(CH3)CH2-)である。
なお、共重合体(A-3-i)又は共重合体(A-3-ii)において、オキシプロピレン単位(-OCH(CH3)CH2-)の含有量は、共重合体(A-3-i)又は共重合体(A-3-ii)中のポリ(オキシ)アルキレングリコール若しくはそのモノエーテルに由来の構成単位であるオキシアルキレン(OR5c)の全量(100モル%)基準で、好ましくは50モル%以上100モル%以下、より好ましくは65モル%以上100モル%以下、更に好ましくは80モル%以上100モル%以下である。
【0066】
R6cとして選択し得る炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等が挙げられる。
当該アルキル基との炭素数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。
【0067】
R6cとして選択し得る環形成炭素数3~20の脂環式基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。
当該脂環式基の環形成炭素数としては、好ましくは3~10、より好ましくは3~8、更に好ましくは3~6である。
なお、当該脂環式基は、前述の置換基を有していてもよく、当該置換基としては、アルキル基が好ましい。
【0068】
R6cとして選択し得る環形成炭素数6~24の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基等が挙げられる。
当該芳香族基の環形成炭素数としては、好ましくは6~18、より好ましくは6~12である。
なお、当該芳香族基は、前述の置換基を有していてもよく、当該置換基としては、アルキル基が好ましい。
【0069】
R6cとして選択し得る環形成炭素数2~20のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピパロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基等が挙げられる。
当該アシル基の炭素数としては、好ましくは2~10、好ましくは2~8、更に好ましくは2~6である。
【0070】
R6cとして選択し得る炭素数2~50の酸素含有炭化水素基としては、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、1,1-ビスメトキシプロピル基、1,2-ビスメトキシプロピル基、エトキシプロピル基、(2-メトキシエトキシ)プロピル基、(1-メチル-2-メトキシ)プロピル基等が挙げられる。
当該炭素含有炭化水素基の炭素数としては、好ましくは2~20、より好ましくは2~10、更に好ましくは2~6である。
【0071】
XC、YCとして選択し得る炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20(好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3)のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3~20(好ましくは3~10、より好ましくは3~8、更に好ましくは3~6)のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、炭素数7~20(好ましくは7~13)のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0072】
(ポリオールエステル類(POE))
POEとしては、例えば、ジオール又はポリオールと、脂肪酸とのエステルが挙げられる。なお、基油(A)中にPOEが含まれる場合、POEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
POEは、ジオール又は水酸基数が3~20のポリオールと、炭素数3~20の脂肪酸とのエステルが好ましい。
【0073】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0074】
ポリオールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2~20量体)、1,3,5-ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレンジトース等の糖類;並びに、これらの部分エーテル化物、メチルグルコシド(配糖体)等が挙げられる。
これらの中でも、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールが好ましい。なお、ヒンダードアルコールとは、4つの炭素原子に結合する4級炭素原子を有するアルコールを意味する。
【0075】
脂肪酸の炭素数としては、潤滑性能の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは8以上であり、また、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下である。
なお、上記の脂肪酸の炭素数には、該脂肪酸が有するカルボキシ基(-COOH)の炭素原子も含まれる。
また、脂肪酸としては、直鎖状脂肪酸又は分岐鎖状脂肪酸のいずれであってもよいが、潤滑性能の観点から、直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の観点から、分岐鎖状脂肪酸が好ましい。更に、脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。
【0076】
脂肪酸としては、イソ酪酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸等の直鎖又は分岐鎖のもの、あるいはα炭素原子が4級であるいわゆるネオ酸等が挙げられる。
更に具体的には、イソ酪酸、吉草酸(n-ペンタン酸)、カプロン酸(n-ヘキサン酸)、エナント酸(n-ヘプタン酸)、カプリル酸(n-オクタン酸)、ペラルゴン酸(n-ノナン酸)、カプリン酸(n-デカン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3-メチルブタン酸)、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸等が好ましい。
【0077】
POEとしては、ポリオールが有する複数の水酸基の一部がエステル化されずに残った部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよい。また、POEは、部分エステルと完全エステルの混合物であってもよいが、完全エステルであることが好ましい。
【0078】
POEとしては、より加水分解安定性に優れる観点から、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールのエステルが好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトールのエステルがより好ましく、更に冷媒との相溶性及び加水分解安定性が特に優れる観点から、ペンタエリスリトールのエステルが更に好ましい。
【0079】
好ましいPOEの具体例としては、ネオペンチルグリコールと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのジエステル;トリメチロールエタンと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのトリエステル;トリメチロールプロパンと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのトリエステル;トリメチロールブタンと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのトリエステル;ペンタエリスリトールと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのテトラエステル等が挙げられる。
【0080】
なお、2種以上の脂肪酸とのエステルとは、1種の脂肪酸とポリオールのエステルを2種以上混合したものでもよい。POEの中でも、低温特性の向上、及び冷媒との相溶性の観点から、2種以上の混合脂肪酸とポリオールのエステルが好ましい。
【0081】
(鉱油)
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、若しくはナフテン系原油を常圧蒸留するか、又は原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等のうちの1つ以上の処理を行って精製した油、鉱油系ワックスを異性化することによって製造される油等が挙げられる。
なお、基油(A)中に鉱油が含まれる場合、鉱油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
(基油(A)の好ましい態様)
本発明の一態様の冷凍機油組成物において、基油(A)の主成分は、上記基油(A1)が好ましく、上記基油(A2)がより好ましく、上記基油(A3)又は上記基油(A4)が更に好ましい。なお、本明細書における「主成分」とは、最も含有率が多い成分を意味する。
基油(A)中における、基油(A1)、基油(A2)、基油(A3)、又は基油(A4)の含有量は、基油(A)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%、更になお好ましくは90~100質量%である。
【0083】
基油(A)は、本発明の効果を損なわない範囲内で、基油(A1)、基油(A2)、基油(A3)、又は基油(A4)に加えて、更に他の基油を含有してもよい。
他の基油としては、前述のPVE、PAG、ECP、及びPOEには該当しない、ポリエステル類、ポリカーボネート類、α-オレフィンオリゴマーの水素化物、脂環式炭化水素化合物、アルキル化芳香族炭化水素化合物、フィシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガストゥリキッド ワックス)を異性化することによって製造される油等の合成油が挙げられる。
【0084】
(基油(A)の40℃動粘度)
基油(A)の40℃動粘度は、好ましくは5~120mm2/s、より好ましくは10~110mm2/s、更に好ましくは30~100mm2/sである。基油(A)の40℃動粘度が上記範囲内であると、耐摩耗性がより良好となる。
本明細書において、40℃動粘度は、JIS K 2283:2000に準拠して測定した値である。
【0085】
<第一リン系化合物(B)>
本発明の冷凍機油組成物は、第一リン系化合物(B)を含有する。
第一リン系化合物(B)は、第一亜リン酸エステル(B1)及び第二亜リン酸エステル(B2)からなる群から選択される1種以上である。
本発明の冷凍機油組成物は、第一リン系化合物(B)を含有することで、顕著な耐摩耗性向上効果が発揮される。第一リン系化合物(B)を含有しない場合、顕著な耐摩耗性向上効果が発揮されず、過酷な条件下において、冷凍機油組成物の耐摩耗性を向上することができない。
以下、第一リン系化合物(B)として用いられる、第一亜リン酸エステル(B1)及び第二亜リン酸エステル(B2)について、詳細に説明する。
【0086】
(第一亜リン酸エステル(B1))
第一亜リン酸エステル(B1)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化18】
【0087】
上記一般式(1)中、R11は下記一般式(1a)で表される芳香族基である。R12は炭素数6~20の脂肪族炭化水素基である。nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0088】
【化19】
上記一般式(1a)中、R
13は炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR
13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、波線は、R
11-O-中の酸素原子との結合位置を示す。
【0089】
なお、第一亜リン酸エステル(B1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
上記一般式(1)中、R12で表される炭素数6~20の脂肪族炭化水素基としては、耐摩耗性向上効果を発揮させやすくする観点から、炭素数6~20のアルキル基又は炭素数6~20のアルケニル基が好ましく、炭素数6~20のアルキル基がより好ましい。
【0091】
R12で表される炭素数6~20のアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基等が挙げられる。
当該アルキル基は、直鎖状あってもよく、分岐鎖状であってもよい。分岐鎖状のアルキル基が有する分岐構造(分岐数、分岐位置)は特に限定されないが、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点から、分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。
また、同様の観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは6~16、より好ましくは6~12である。
【0092】
R12で表される炭素数6~20のアルケニル基としては、例えば、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、及びイコセニル基等が挙げられる。
当該アルケニル基は、直鎖状あってもよく、分岐鎖状であってもよい。分岐鎖状のアルキル基が有する分岐構造(分岐数、分岐位置)は特に限定されないが、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点から、分岐鎖状のアルケニル基であることが好ましい。なお、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基の不飽和結合の位置及び数は、特に限定されない。
また、同様の観点から、当該アルケニル基の炭素数は、好ましくは6~16、より好ましくは6~12である。
【0093】
ここで、耐摩耗性向上効果をさらに顕著に発揮させやすくする観点から、R12は、炭素数6~16の分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素数6~12の分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましく、2-エチルヘキシル基又はイソデシル基であることが更に好ましい。
【0094】
上記一般式(1a)中、R13で表される炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、耐摩耗性向上効果を発揮させやすくする観点から、炭素数3~20の分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~20の分岐鎖状のアルケニル基が好ましく、炭素数3~20の分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0095】
R13で表される炭素数3~20の分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、分岐鎖状プロピル基、分岐鎖状ブチル基、分岐鎖状ペンチル基、分岐鎖状ヘキシル基、分岐鎖状ヘプチル基、分岐鎖状オクチル基、分岐鎖状ノニル基、分岐鎖状デシル基、分岐鎖状ウンデシル基、分岐鎖状ドデシル基、分岐鎖状トリデシル基、分岐鎖状テトラデシル基、分岐鎖状ペンタデシル基、分岐鎖状ヘキサデシル基、分岐鎖状ヘプタデシル基、分岐鎖状オクタデシル基、分岐鎖状ノナデシル基、及び分岐鎖状イコシル基等が挙げられる。
当該アルキル基が有する分岐構造(分岐数、分岐位置)は、特に限定されないが、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点、熱安定性向上の観点から、分岐数は1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。また、同様の観点から、分岐位置は、フェニル基に隣接する炭素(すなわち、α炭素)であることが好ましい。
また、当該アルキル基の炭素数は、同様の観点から、好ましくは3以上である。また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは3~10、より好ましくは3~8、更に好ましくは3~6である。
【0096】
R13で表される炭素数3~20の分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、分岐鎖状プロぺニル基、分岐鎖状ブテニル基、分岐鎖状ペンテニル基、分岐鎖状ヘキセニル基、分岐鎖状ヘプテニル基、分岐鎖状オクテニル基、分岐鎖状ノネニル基、分岐鎖状デセニル基、分岐鎖状ウンデセニル基、分岐鎖状ドデセニル基、分岐鎖状トリデセニル基、分岐鎖状テトラデセニル基、分岐鎖状ペンタデセニル基、分岐鎖状ヘキサデセニル基、分岐鎖状ヘプタデセニル基、分岐鎖状オクタデセニル基、分岐鎖状ノナデセニル基、及び分岐鎖状イコセニル基等が挙げられる。
当該アルケニル基が有する分岐構造(分岐数、分岐位置)は、特に限定されないが、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点、熱安定性向上の観点から、分岐数は1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。また、同様の観点から、分岐位置は、フェニル基に隣接する炭素(すなわち、α炭素)であることが好ましい。なお、当該アルケニル基の不飽和結合の位置及び数は、特に限定されない。
また、当該分岐鎖状のアルケニル基の炭素数は、同様の観点から、好ましくは3以上である。また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは3~10、より好ましくは3~8、更に好ましくは3~6である。
【0097】
ここで、耐摩耗性向上効果をさらに顕著に発揮させやすくする観点、熱安定性向上の観点から、R13は、炭素数3~8の分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~6の分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましく、tert-ペンチル基であることが更に好ましい。
【0098】
上記一般式(1)中、nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
ここで、耐摩耗性向上効果を発揮させやすくする観点、熱安定性向上の観点から、nは2~3の整数であることが好ましく、nは3であることがより好ましい。
【0099】
上記一般式(1a)中、mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
ここで、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点、熱安定性向上の観点から、mは1~5の整数であることが好ましく、mは1~4の整数であることがより好ましく、mは1~3の整数であることが更に好ましく、mは1~2の整数であることがより更に好ましい。
特に、上記一般式(1)中のnが3である場合、mを上記範囲に調整することで、耐摩耗性向上効果をさらに顕著に発揮させやすくすることができる。
なお、R13のフェニル基への結合位置は、特に限定されないが、同様の観点から、m=1である場合、R13はパラ位に結合していることが好ましい。m=2である場合には、一方のR13はパラ位に結合し、他方のR13はオルト位に結合していることが好ましい。m>2である場合には、R13の少なくとも1つはパラ位に結合し、残りのうちの少なくとも1つはオルト位に結合していることが好ましい。
【0100】
(第二亜リン酸エステル(B2))
第二亜リン酸エステル(B2)は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【化20】
【0101】
上記一般式(2)中、R21及びR22は各々独立して、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基である。
【0102】
なお、第二亜リン酸エステル(B2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
上記一般式(1)中、R21及びR22で表される炭素数10~30の脂肪族炭化水素基としては、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点から、炭素数10~30のアルキル基、炭素数10~30のアルケニル基が好ましく、炭素数10~30のアルキル基がより好ましい。
【0104】
R21及びR22で表される炭素数10~30のアルキル基としては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、テトラコシル基、及びトリアコンチル基等が挙げられる。
当該アルキル基は、直鎖状あってもよく、分岐鎖状であってもよい。分岐鎖状のアルキル基が有する分岐構造(分岐数、分岐位置)は特に限定されない。
ここで、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点から、当該アルキル基は、直鎖状であることが好ましい。
また、同様の観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは14~24、より好ましくは16~20である。
【0105】
R21及びR22で表される炭素数10~30のアルケニル基としては、例えば、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、及びイコセニル基、ヘンイコセニル基、テトラコセニル基、及びトリアコンテニル基等が挙げられる。
当該アルケニル基は、直鎖状あってもよく、分岐鎖状であってもよい。分岐鎖状のアルケニル基が有する分岐構造(分岐数、分岐位置)は特に限定されない。また、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基の不飽和結合の位置及び数は、特に限定されない。
ここで、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点から、当該アルケニル基は、直鎖状であることが好ましい。
また、同様の観点から、当該アルケニル基の炭素数は、好ましくは14~24、より好ましくは16~20である。
【0106】
ここで、耐摩耗性向上効果をさらに顕著に発揮させやすくする観点から、R21及びR22は、炭素数14~24の直鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素数16~20の直鎖状のアルキル基であることがより好ましく、n-オクタデシル基であることが更に好ましい。
なお、R21及びR22は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0107】
(第一リン系化合物(B)の好ましい態様及び第一リン系化合物(B)の含有量)
第一リン系化合物(B)は、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点から、第一亜リン酸エステル(B1)であることが好ましい。
【0108】
また、本発明の一態様の冷凍機油組成物において、第一リン系化合物(B)に由来するリン原子含有量(BP)は、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点から、冷凍機油組成物の全量基準で、好ましくは30質量ppm以上、より好ましくは35質量ppm以上、更に好ましくは40質量ppm以上、より更に好ましくは45質量ppm以上である。また、好ましくは1,000質量ppm以下、より好ましくは950質量ppm以下、更に好ましくは900質量ppm以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは30質量ppm~1,000質量ppm、より好ましくは35質量ppm~950質量ppm、更に好ましくは40質量ppm~900質量ppm、より更に好ましくは45質量ppm~900質量ppmである。
【0109】
本発明の一態様の冷凍機油組成物において、第一リン系化合物(B)の含有量は、第一リン系化合物(B)に由来するリン原子含有量(BP)が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、第一リン系化合物(B)の含有量は、冷凍機油組成物の全量基準で、好ましくは0.05質量%~1質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%、更に好ましくは0.1質量%~0.7質量%である。
【0110】
<第二リン系化合物(C)>
本発明の一態様の冷凍機油組成物は、基油(A)及び第一リン系化合物(B)を含有すると共に、さらに第二リン系化合物(C)を含有することが好ましい。
第二リン系化合物(C)は、リン酸化合物(C1)及び有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)からなる群から選択される1種以上である。
本発明の一態様の冷凍機油組成物が、第一リン系化合物(B)と共に第二リン系化合物(C)を含有することで、これらが相乗的に作用し、第一リン系化合物(B)による顕著な耐摩耗性向上効果をさらに向上させることができる。
以下、第二リン系化合物(C)として用いられる、リン酸化合物(C1)及び有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)について、詳細に説明する。
なお、以降の説明では、「第二リン系化合物(C)」を「成分(C)」ともいう。また、「リン酸化合物(C1)」及び「有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)」を、それぞれ「成分(C1)」及び「成分(C2)」ともいう。
【0111】
(リン酸化合物(C1))
リン酸化合物(C1)は、下記一般式(c-1-i)で表されるリン酸エステル、下記一般式(c-1-ii)又は下記一般式(c-1-iii)で表される酸性リン酸エステルからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【化21】
【0112】
上記一般式(c-1-i)~(c-1-iii)において、R31~R33は、炭素数4~30のアルキル基、炭素数4~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアルキルアリール基、及び炭素数7~30のアリールアルキル基である。R31~R33は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0113】
上記一般式(c-1-i)で表されるリン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリオレイルホスフェート等が挙げられる。
上記一般式(c-1-i)で表されるリン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
上記一般式(c-1-ii)又は上記一般式(c-1-iii)で表される酸性リン酸エステルとしては、例えば、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。
上記一般式(c-1-ii)又は上記一般式(c-1-iii)で表される酸性リン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
ここで、第一リン系化合物(B)との組み合わせによる耐摩耗性の相乗的な向上効果をより発揮させやすくする観点から、リン酸化合物(C1)は、上記一般式(c-1-i)で表されるリン酸エステルであることが好ましい。より好ましくは、上記一般式(c-1-i)で表されるリン酸エステルにおいて、R31~R33が、炭素数7~30(好ましくは炭素数7~20、より好ましくは炭素数7~10)のアルキルアリール基であることである。更に好ましくは、上記一般式(c-1-i)で表されるリン酸エステルが、トリクレジルホスフェートであることである。
【0116】
(有機ホスフィンオキサイド化合物(C2))
有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)は、リン原子を1つ有する有機ホスフィンオキサイド化合物であってもよく、リン原子を2つ以上有する有機ホスフィンオキサイド化合物であってもよい。
リン原子を1つ有する有機ホスフィンオキサイド化合物としては、下記一般式(c-2-i)で表される化合物が挙げられ、リン原子を2つ以上有する有機ホスフィンオキサイド化合物としては、下記一般式(c-2-ii)で表される化合物が挙げられる。
【0117】
【0118】
式(c-2-i)中、R41~R43は、各々独立に、置換又は無置換の炭素数1~20の炭化水素基を示す。式(c-2-ii)中、R44~R47は、各々独立に、置換又は無置換の炭素数1~20の炭化水素基を示す。R48は、エーテル結合を含んでいてもよい置換又は無置換の炭素数1~20の2価の炭化水素基を示す。
【0119】
R41~R43で表される置換又は無置換の炭素数1~20の炭化水素基としては、置換又は無置換の炭素数1~20のアルキル基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基等が挙げられ、これらの中でも、置換又は無置換の炭素数1~20のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基が好ましく、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基がより好ましい。
これらの炭化水素基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、アミド基、カルボキシ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基等が挙げられる。
【0120】
R41~R43で表される置換又は無置換の炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
上記アルキル基の炭素数は、好ましくは2~10、より好ましくは3~8である。
【0121】
R41~R43で表される置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基としては、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。置換又は無置換のフェニル基としては、フェニル基、各種メトキシフェニル基、各種ジメトキシフェニル基、各種トリメトキシフェニル基、各種エトキシフェニル基、2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル基、各種メチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種トリメチルフェニル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基(無置換のフェニル基)が好ましい。
これらのアリール基の炭素数は、好ましくは6~10、より好ましくは6~8である。
【0122】
上記一般式(c-2-i)で表される有機ホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリ-n-オクチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0123】
上記一般式(c-2-i)で表される有機ホスフィンオキサイド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
上記一般式(c-2-ii)中、R44~R47で表される置換又は無置換の炭素数1~20の炭化水素基としては、上記一般式(c-2-i)中のR41~R43で表される置換又は無置換の炭素数1~20の炭化水素基と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0125】
上記一般式(c-2-ii)中、R48で表される、エーテル結合を含んでいてもよい置換又は無置換の炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、エーテル結合を含んでいてもよい置換又は無置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルキニレン基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリーレン基等が挙げられる。これらの炭化水素基の置換基としては、上記R41~R43の置換基として挙げられたものと同じものが挙げられる。
【0126】
上記エーテル結合を含んでいてもよい置換又は無置換の炭素数1~20のアルキレン基としては、エチレン基、フェニルエチレン基、1,2-プロピレン基、2-フェニル-1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基等が挙げられる。
上記エーテル結合を含んでいてもよい置換又は無置換の炭素数6~20のアリーレン基としては、各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレン、ジフェニレンエーテル基、9,9-ジメチルキサンテン由来の2価の基等が挙げられる。
【0127】
上記一般式(c-2-ii)で表される有機ホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、ビス[2-[(オキソ)ジフェニルホスフィノ]フェニル]エーテル等が挙げられる。
【0128】
上記一般式(c-2-ii)で表される有機ホスフィンオキサイド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
ここで、第一リン系化合物(B)との組み合わせによる耐摩耗性の相乗的な向上効果をより発揮させやすくする観点から、有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)は、上記一般式(c-2-i)で表される有機ホスフィンオキサイド化合物が好ましく、トリフェニルホスフィンオキサイドがより好ましい。
【0130】
(第二リン系化合物(C)の好ましい態様及び第二リン系化合物(C)の含有量)
第二リン系化合物(C)は、耐摩耗性向上効果をより顕著に発揮させやすくする観点から、有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)であることが好ましい。
【0131】
本発明の一態様の冷凍機油組成物において、第二リン系化合物(C)に由来するリン原子含有量(CP)は、第一リン系化合物(B)との組み合わせによる耐摩耗性の相乗的な向上効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは200質量ppm以上、より好ましくは300質量ppm以上、更に好ましくは400質量ppm以上である。また、好ましくは1,200質量ppm以下、より好ましくは1,100質量ppm以下、更に好ましくは1,000質量ppmである。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは200質量ppm~1,200質量ppm、より好ましくは300質量ppm~1,100質量ppm、更に好ましくは400質量ppm~1,000質量ppmである。
【0132】
本発明の一態様の冷凍機油組成物において、第二リン系化合物(C)の含有量は、第二リン系化合物(C)に由来するリン原子含有量(CP)が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、第二リン系化合物(C)の含有量は、冷凍機油組成物の全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。また、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.1質量%~1.5質量%、より好ましくは0.2質量%~1.5質量%、更に好ましくは0.3質量%~1.2質量%である。
【0133】
(第一リン系化合物(B)及び第二リン系化合物(C)の合計含有量)
本発明の一態様の冷凍機油組成物において、第一リン系化合物(B)及び第二リン系化合物(C)に由来するリン原子の合計含有量(BP+CP)は、第一リン系化合物(B)との組み合わせによる耐摩耗性の相乗的な向上効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは200質量ppm以上、より好ましくは300質量ppm以上、更に好ましくは400質量ppm以上である。また、好ましくは1,500質量ppm以下、より好ましくは1,400質量ppm以下、更に好ましくは1,300質量ppm以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは200質量ppm~1,500質量ppm、より好ましくは300質量ppm~1,400質量ppm、更に好ましくは400質量ppm~1,300質量ppmである。
【0134】
本発明の一態様の冷凍機油組成物において、第一リン系化合物(B)及び第二リン系化合物(C)の合計含有量は、第一リン系化合物(B)及び第二リン系化合物(C)に由来するリン原子の合計含有量(BP+CP)が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、第一リン系化合物(B)及び第二リン系化合物(C)の合計含有量は、冷凍機油組成物の全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。また、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.1質量%~2.0質量%、より好ましくは0.3質量%~2.0質量%、更に好ましくは0.3質量%~1.5質量%である。
【0135】
(第一リン系化合物(B)と第二リン系化合物(C)との含有比率)
本発明の一態様の冷凍機油組成物において、第一リン系化合物(B)と第二リン系化合物(C)との含有比率[(B)/(C)]は、第一リン系化合物(B)との組み合わせによる耐摩耗性の相乗的な向上効果をより発揮させやすくする観点から、質量比で、好ましくは1/12~2/1、より好ましくは1/10~1.5/1、更に好ましくは1/9~1/1である。
【0136】
<添加剤>
本発明の一態様の冷凍機油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更に添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、冷凍機油組成物の安定性向上の観点から、酸化防止剤、油性向上剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、消泡剤、及び粘度指数向上剤からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましく、少なくとも酸化防止剤を含有することがより好ましい。
また、本発明の一態様の冷凍機油組成物は、成分(B)及び成分(C)には該当しない極圧剤を含んでいてもよい。
これらの添加剤は、各々について、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの添加剤の合計含有量は、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%、更に好ましくは0.1~3質量%である。
【0137】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群から選択される1種以上が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(DBPC)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、フェニル-α-ナフチルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
これらの中でも、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(DBPC)がより好ましい。
酸化防止剤の含有量は、安定性及び酸化防止性能の観点から、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%、更に好ましくは0.1~1質量%である。
【0138】
(油性向上剤)
油性向上剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸;ダイマー酸、水添ダイマー酸等の重合脂肪酸;リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸;ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族飽和又は不飽和モノアルコール;ステアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪族飽和又は不飽和モノアミン;ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸アミド;グリセリン、ソルビトール等の多価アルコールと脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸との部分エステル;等が挙げられる。
【0139】
(酸素捕捉剤)
酸素捕捉剤としては、脂肪族不飽和化合物、二重結合を有するテルペン類等が挙げられる。
上記脂肪族不飽和化合物としては、不飽和炭化水素が好ましく、具体的には、オレフィン;ジエン、トリエン等のポリエン等が挙げられる。オレフィンとしては、酸素との反応性の観点から、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等のα-オレフィンが好ましい。
上記以外の脂肪族不飽和化合物としては、酸素との反応性の観点から、分子式C20H30Oで表されるビタミンA((2E,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセ-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエン-1-オール)等の共役二重結合を有する不飽和脂肪族アルコールが好ましい。
二重結合を有するテルペン類としては、二重結合を有するテルペン系炭化水素が好ましく、酸素との反応性の観点から、α-ファルネセン(C15H24:3,7,11-トリメチルドデカ-1,3,6,10-テトラエン)及びβ-ファルネセン(C15H24:7,11-ジメチル-3-メチリデンドデカ-1,6,10-トリエン)がより好ましい。
【0140】
(銅不活性化剤)
銅不活性化剤としては、N-[N,N’-ジアルキル(炭素数3~12のアルキル基)アミノメチル]トリアゾール等が挙げられる。
【0141】
(防錆剤)
防錆剤としては、金属スルホネート、脂肪族アミン類、有機亜リン酸エステル、有機リン酸エステル、有機スルフォン酸金属塩、有機リン酸金属塩、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0142】
(消泡剤)
消泡剤としては、シリコーン油、フッ素化シリコーン油等のシリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0143】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ジエン水素化共重合体等が挙げられる。
【0144】
(成分(B)及び成分(C)には該当しない極圧剤)
成分(B)及び成分(C)には該当しない極圧剤としては、カルボン酸の金属塩、硫黄系極圧剤等が挙げられる。また、成分(B)及び成分(C)には該当しないリン系極圧剤も挙げられる。
【0145】
カルボン酸の金属塩としては、炭素数3~60(好ましくは3~30)のカルボン酸の金属塩等が挙げられる。これらの中でも、炭素数12~30の脂肪酸及び炭素数3~30のジカルボン酸の金属塩からなる群から選択される1種以上が好ましい。金属塩を構成する金属としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。
【0146】
硫黄系極圧剤としては、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チオカーバメート類、チオテルペン類、ジアルキルチオジプロピオネート類等が挙げられる。
【0147】
成分(B)及び成分(C)には該当しないリン系極圧剤としては、成分(B)には該当しない亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、成分(C)には該当しないリン酸エステル、成分(C)には該当しない酸性リン酸エステル、成分(C)には該当しない有機ホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0148】
成分(B)には該当しない亜リン酸エステルとしては、例えば、上記一般式(1)において、n=0である化合物が挙げられる。具体的には、例えば、トリオレイルホスファイト等のトリアルキルホスファイトが挙げられる。
また、成分(B)には該当しない他の亜リン酸エステルとしては、上記一般式(1)中のR11を示す上記一般式(1a)において、mが1以上であり、且つR13が直鎖状の脂肪族炭化水素基であるもの等が挙げられる。具体的には、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。
【0149】
酸性亜リン酸エステルとしては、例えば、アリールハイドロジェンホスファイト、アルキルハイドロジェンホスファイトが挙げられる。
具体的には、例えば、モノエチルハイドロジェンホスファイト、モノn-プロピルハイドロジェンホスファイト、モノn-ブチルハイドロジェンホスファイト、モノ2-エチルヘキシルハイドロジェンホスファイト、及びモノフェニルハイドロジェンホスファイト、並びにジヘキシルハイドロジェンホスファイト、ジヘプチルハイドロジェンホスファイト、ジn-オクチルハイドロジェンホスファイト、及びジ2-エチルヘキシルハイドロジェンホスファイト、及びジフェニルハイドロジェンホスファイト等が挙げられる。
【0150】
成分(C)には該当しないリン系極圧剤(リン酸エステル)としては、例えば、テトラフェニル-m-フェニレンビスホスフェートが挙げられる。
【0151】
ここで、本発明の冷凍機油組成物は、成分(B)が極圧剤としての効果を奏する。また、本発明の一態様の冷凍機油組成物は、成分(B)及び(C)が極圧剤としての効果を奏する。したがって、本発明の一態様の冷凍機油組成物は、成分(B)及び(C)には該当しない極圧剤を含有しないものであってもよい。
本発明の冷凍機油組成物が、成分(B)及び(C)には該当しない極圧剤を含む場合、その含有量は、潤滑性及び安定性(熱安定性向上)の観点から、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.01質量以下、最も好ましくは成分(B)及び(C)には該当しない極圧剤を含まないことである。
成分(B)及び(C)には該当しない極圧剤としては、既述の化合物が挙げられ、特に、トリスノニルフェニルホスファイト及びテトラフェニル-m-フェニレンビスホスフェートから選択される1種以上が挙げられる。
[本発明の冷凍機油組成物の製造方法]
本発明の冷凍機油組成物の製造方法は、特に制限されない。
例えば、本発明の一態様の冷凍機油組成物の製造方法は、基油(A)と、第一リン系化合物(B)と、を混合する工程を含み、
前記第一リン系化合物(B)は、下記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び下記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)からなる群から選択される1種以上である、冷凍機油組成物の製造方法である。
【化23】
[上記一般式(1)中、R
11は下記一般式(1a)で表される芳香族基である。R
12は炭素数6~20の脂肪族炭化水素基である。nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR
11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R
12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【化24】
[上記一般式(1a)中、R
13は炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR
13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、波線は、R
11-O-中の酸素原子との結合位置を示す。]
【化25】
[上記一般式(2)中、R
21及びR
22は各々独立して、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基である。]
【0152】
上記各成分を混合する方法としては、特に制限はないが、例えば、基油(A)に、第一リン系化合物(B)を配合する工程を有する方法が挙げられる。第一リン系化合物(B)以外の他の成分は、基油(A)に同時に配合してもよいし、別々に配合してもよい。なお、各成分は、希釈油等を加えて溶液(分散体)の形態とした上で配合してもよい。各成分を配合した後、公知の方法により、撹拌して均一に分散させることが好ましい。
【0153】
[本発明の冷凍機油組成物の物性]
<リン原子含有量>
本発明の一態様の冷凍機油組成物は、リン原子含有量が、冷凍機油組成物の全量基準で、好ましくは200質量ppm以上、より好ましくは300質量ppm以上、更に好ましくは400質量ppm以上である。また、好ましくは1,500質量ppm以下、より好ましくは1,400質量ppm以下、更に好ましくは1,300質量ppm以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは200質量ppm~1,500質量ppm、より好ましくは300質量ppm~1,400質量ppm、更に好ましくは400質量ppm~1,300質量ppmである。
なお、リン原子含有量は、ASTM D4951に準拠して測定することができる。
【0154】
<熱安定性>
本発明の一態様の冷凍機油組成物は、後述する実施例に記載の方法で測定した酸価が、好ましくは0.50mgKOH/g以下、より好ましく0.45mgKOH/g以下、更に好ましくは0.40mgKOH/g以下である。
【0155】
[冷凍機用混合組成物]
本発明の冷凍機油組成物は、冷媒と混合し、冷凍機用混合組成物として使用される。
すなわち、本発明の冷凍機用混合組成物は、本発明の冷凍機油組成物と、冷媒とを含有する。
近年の冷凍機の小型化に伴って機器内の冷凍機油組成物の使用量の減少が進む一方で、運転条件の過酷化による圧縮機の摺動部における摩擦熱等によって、冷凍機には、局所的に高温になる箇所が発生し得る。本発明の冷凍機油組成物と、冷媒とを含有する、本発明の冷凍機用混合組成物は、このような過酷な環境下においても、優れた耐摩耗性を発揮する。
【0156】
<冷媒>
冷媒としては、不飽和フッ化炭化水素化合物、飽和フッ化炭化水素化合物等のフッ化炭化水素冷媒;ハイドロカーボン、二酸化炭素、アンモニア等の自然系冷媒が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、冷媒としては、不飽和フッ化炭化水素化合物、飽和フッ化炭化水素化合物、ハイドロカーボン、二酸化炭素及びアンモニアからなる群から選択される1種以上を含むものが好ましく、不飽和フッ化炭化水素化合物を含むものがより好ましい。
以下、各冷媒について説明する。
【0157】
<不飽和フッ化炭化水素化合物>
不飽和フッ化炭化水素化合物としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2~6の鎖状オレフィンや炭素数4以上6以下の環状オレフィンのフッ素化物等、炭素-炭素二重結合を有するものが挙げられる。
より具体的には、1~3個のフッ素原子が導入されたエチレン、1~5個のフッ素原子が導入されたプロペン、1~7個のフッ素原子が導入されたブテン、1~9個のフッ素原子が導入されたペンテン、1~11個のフッ素原子が導入されたヘキセン、1~5個のフッ素原子が導入されたシクロブテン、1~7個のフッ素原子が導入されたシクロペンテン、1~9個のフッ素原子が導入されたシクロヘキセン等が挙げられる。
これらの不飽和フッ化炭化水素化合物の中では、プロペンのフッ化物が好ましく、3~5個のフッ素原子が導入されたプロペンがより好ましく、4個のフッ素原子が導入されたプロペンが更に好ましい。具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)等が好ましい化合物として挙げられる。
これらの不飽和フッ化炭化水素化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいし、不飽和フッ化炭化水素化合物以外の冷媒と組み合わせて使用してもよい。ここで、不飽和フッ化炭化水素化合物以外の冷媒と組み合わせて用いる場合の例として、飽和フッ化炭化水素化合物と不飽和フッ化炭化水素化合物の混合冷媒が挙げられる。該混合冷媒としては、R32とR1234yfの混合冷媒、R32とR1234zeとR152aの混合冷媒(AC5、混合比は13.23:76.20:9.96)等が挙げられる。
【0158】
<飽和フッ化炭化水素化合物>
飽和フッ化炭化水素化合物としては、好ましくは炭素数1~4のアルカンのフッ化物、より好ましくは炭素数1~3のアルカンのフッ化物、更に好ましくは炭素数1又は2のアルカン(メタン又はエタン)のフッ化物である。該メタン又はエタンのフッ化物としては、トリフルオロメタン(R23)、ジフルオロメタン(R32)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1,2-トリフルオロエタン(R143)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R125)等が挙げられ、これらの中でも、ジフルオロメタン及び1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタンが好ましい。
これらの飽和フッ化炭化水素化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。ここで、2種以上組み合わせて用いる場合の例として、炭素数1以上3以下の飽和フッ化炭化水素化合物を2種以上混合した混合冷媒や、炭素数1以上2以下の飽和フッ化炭化水素化合物を2種以上混合した混合冷媒が挙げられる。
該混合冷媒としては、R32とR125の混合物(R410A)、R125とR143aとR134aの混合物(R404A)、R32とR125とR134aの混合物(R407A、R407C、R407E等)、R125とR143aの混合物(R507A)等が挙げられる。
【0159】
<自然系冷媒>
自然系冷媒としては、ハイドロカーボン(HC)系冷媒、二酸化炭素(CO2)及びアンモニアからなる群から選択される1種以上が挙げられ、好ましくはハイドロカーボン(HC)系冷媒である。これらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいし、自然系冷媒以外の冷媒と組み合わせてもよい。ここで、自然系冷媒以外の冷媒と組み合わせて用いる場合の例としては、飽和フッ化炭化水素化合物及び/又は不飽和フッ化炭化水素化合物との混合冷媒が挙げられる。具体的な混合冷媒としては、二酸化炭素とR1234zeとR134aの混合冷媒(AC6、配合比は5.15:79.02:15.41)等が挙げられる。
【0160】
ハイドロカーボン(HC)系冷媒としては、炭素数1~8の炭化水素が好ましく、炭素数1~5の炭化水素がより好ましく、炭素数3~5の炭化水素が更に好ましい。炭素数が8以下であると、冷媒の沸点が高くなり過ぎず冷媒として好ましい。該ハイドロカーボン系冷媒としては、メタン、エタン、エチレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン(R600a)、2-メチルブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンイソブタン、ノルマルブタン等が挙げられる。
ハイドロカーボン系冷媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ハイドロカーボン系冷媒は、ハイドロカーボン系冷媒単独で使用してもよく、R134a等のフッ化炭化水素冷媒、二酸化炭素等のハイドロカーボン系冷媒以外の冷媒と混合した混合冷媒として用いてもよい。
【0161】
本発明の一態様の冷凍機用混合組成物において、冷媒及び冷凍機油組成物の使用量は、冷凍機油組成物/冷媒の質量比で、好ましくは1/99~90/10、より好ましくは5/95~70/30である。冷凍機油組成物/冷媒の質量比を該範囲内とすると、潤滑性及び冷凍機における好適な冷凍能力を得ることができる。
【0162】
ここで、地球温暖化係数の低い冷媒を用いる観点から、冷媒は、不飽和フッ化炭化水素化合物を含むことが好ましい。
また、冷媒中における不飽和フッ化炭化水素化合物の含有量は、冷媒の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、冷媒は、不飽和フッ化炭化水素化合物のみからなる冷媒であることがより更に好ましい。
【0163】
[本発明の冷凍機用混合組成物の物性]
<耐摩耗性>
本発明の一態様の冷凍機用混合組成物は、後述する実施例に記載の方法で測定した摩耗量が、好ましくは5.0mg以下、より好ましく4.0mg以下、更に好ましくは3.0mg以下、より更に好ましくは2.5mg、更になお好ましくは2.0mg以下である。
【0164】
[本発明の冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物の用途]
本発明の冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物は、例えば、空調機、冷蔵庫、自動販売機、ショーケース、冷凍システム、給湯システム、又は暖房システムに用いることが好ましい。なお、空調機としては、開放型カーエアコン、電動カーエアコン等のカーエアコン;ガスヒートポンプ(GHP)エアコン;等が挙げられる。
【0165】
[提供される本発明の一態様]
本発明の一態様では、下記[1]~[8]が提供される。
[1] 基油(A)と、第一リン系化合物(B)と、を含有し、
前記第一リン系化合物(B)は、下記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び下記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)からなる群から選択される1種以上である、冷凍機油組成物。
【化26】
[上記一般式(1)中、R
11は下記一般式(1a)で表される芳香族基である。R
12は炭素数6~20の脂肪族炭化水素基である。nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR
11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R
12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【化27】
[上記一般式(1a)中、R
13は炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR
13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、波線は、R
11-O-中の酸素原子との結合位置を示す。]
【化28】
[上記一般式(2)中、R
21及びR
22は各々独立して、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基である。]
[2] 前記一般式(1a)中のmが1~5の整数である、[1]に記載の冷凍機油組成物。
[3] さらに、第二リン系化合物(C)を含有し、
前記第二リン系化合物(C)は、リン酸化合物(C1)及び有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)からなる群から選択される1種以上である、[1]又は[2]に記載の冷凍機油組成物。
[4] リン原子含有量が、前記冷凍機油組成物の全量基準で、200質量ppm~1,500質量ppmである、[1]~[3]のいずれかに記載の冷凍機油組成物。
[5] 基油(A)が、ポリアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、ポリオールエステル類、及び鉱油からなる群から選択される1種以上を含む、[1]~[4]のいずれかに載の冷凍機油組成物。
[6] 基油(A)と、第一リン系化合物(B)と、を混合する工程を含み、
前記第一リン系化合物(B)は、下記一般式(1)で表される第一亜リン酸エステル(B1)及び下記一般式(2)で表される第二亜リン酸エステル(B2)からなる群から選択される1種以上である、冷凍機油組成物の製造方法。
【化29】
[上記一般式(1)中、R
11は下記一般式(1a)で表される芳香族基である。R
12は炭素数6~20の脂肪族炭化水素基である。nは1~3の整数である。n≧2の場合、複数のR
11-O-は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、n=1の場合、複数の-O-R
12は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【化30】
[上記一般式(1a)中、R
13は炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。mは0~5の整数である。m≧2の場合、複数のR
13は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、波線は、R
11-O-中の酸素原子との結合位置を示す。]
【化31】
[上記一般式(2)中、R
21及びR
22は各々独立して、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基である。]
[7] [1]~[5]のいずれかに記載の冷凍機油組成物と、冷媒と、を含有する、冷凍機用混合組成物。
[8] 前記冷媒が、不飽和フッ化炭化水素化合物、飽和フッ化炭化水素化合物、ハイドロカーボン、二酸化炭素、及びアンモニアからなる群から選択される1種以上を含む、[7]に記載の冷凍機用混合組成物。
【実施例】
【0166】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0167】
<基油(A)の性状>
各実施例及び各比較例で用いた基油(A)の40℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定した。
【0168】
<冷凍機油組成物の調製に用いた各成分の詳細>
冷凍機油組成物の調製に用いた各成分の詳細について、以下に示す。
【0169】
1.基油(A)
(1)PAG
ポリオキシプロピレングリコールモノメチルエーテル、40℃動粘度:49mm2/s
(2)PVE
ポリエチルビニルエーテルとポリイソブチルビニルエーテルとの共重合体(エチルビニルエーテルの構成単位:ポリイソブチルビニルエーテルの構成単位=9:1(モル比))、40℃動粘度:67mm2/s
【0170】
2.第一リン系化合物(B)
(1)第一亜リン酸エステル(B1)-1
イソデシルジフェニルホスファイト(城北化学株式会社製、JPM-311、下記式(1-1)で表される化合物、リン原子含有量:8.1質量%)
【化32】
上記式(1-1)で表される化合物は、前記一般式(1)において、n=2であり、2つのR
11-O-が同一であり、R
12がイソデシル基である化合物に該当する。また、前記一般式(1a)において、m=0である。
なお、上記式(1-1)中、「-iC
10H
21」は、イソデシル基を意味する。以降の説明においても同様である。
【0171】
(2)第一亜リン酸エステル(B1)-2
2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト(城北化学株式会社製、JPM-308、下記式(1-2)で表される化合物、リン原子含有量:8.6質量%)
【化33】
上記式(1-2)で表される化合物は、前記一般式(1)において、n=2であり、2つのR
11-O-が同一であり、R
12が2-エチルヘキシル基である化合物に該当する。また、前記一般式(1a)において、m=0である。
【0172】
(3)第一亜リン酸エステル(B1)-3
フェニルジイソデシルホスファイト(堺化学株式会社製、ChelexD、下記式(1-3)で表される化合物、リン原子含有量:7.1質量%)
【化34】
上記式(1-3)で表される化合物は、前記一般式(1)において、n=1であり、2つの-O-R
12が同一であり、R
12がイソデシル基である化合物に該当する。また、前記一般式(1a)において、m=0である。
【0173】
(4)第一亜リン酸エステル(B1)-4
ビス[2,4-ビス(2-メチルブタン-2-イル)フェニル]4-(2-メチルブタン-2-イル)フェニルホスファイトと、2,4-ビス(2-メチルブタン-2-イル)フェニルビス[4-(2-メチルブタン-2-イル)フェニル]ホスファイトと、トリス[4-(2-メチルブタン-2-イル)フェニル]ホスファイトとの反応生成物(Addivant社製、WESTON(登録商標) 705、下記式(1-4)~下記式(1-7)で表される化合物の混合物、リン原子含有量:4.9質量%)
【0174】
【化35】
上記式(1-4)で表される化合物は、前記一般式(1)において、n=3であり、3つのR
11-O-が同一である化合物に該当する。また、前記一般式(1a)において、m=1であり、R
13はtert-ペンチル基(フェニル基への結合位置:パラ位)である。
【0175】
【化36】
上記式(1-5)で表される化合物は、前記一般式(1)において、n=3であり、3つのR
11-O-のうち、2つが同一であり、1つが異なる化合物に該当する。また、前記一般式(1a)で表される、同一である2つのR
11-O-中のR
11は、m=1であり、R
13はtert-ペンチル基(フェニル基への結合位置:パラ位)である。前記一般式(1a)で表される、残りの1つのR
11-O-中のR
11は、m=2であり、R
13はtert-ペンチル基(フェニル基への結合位置:オルト位及びパラ位)である。
【0176】
【化37】
上記式(1-6)で表される化合物は、前記一般式(1)において、n=3であり、3つのR
11-O-のうち、2つが同一であり、1つが異なる化合物に該当する。また、前記一般式(1a)で表される、同一である2つのR
11-O-中のR
11は、m=2であり、R
13はtert-ペンチル基(フェニル基への結合位置:オルト位及びパラ位)である。前記一般式(1a)で表される、残りの1つのR
11-O-中のR
11は、m=1であり、R
13はtert-ペンチル基(フェニル基への結合位置:パラ位)である。
【0177】
【化38】
上記式(1-7)で表される化合物は、前記一般式(1)において、n=3であり、3つのR
11-O-が同一である化合物に該当する。また、前記一般式(1a)において、m=2であり、R
13はtert-ペンチル基(フェニル基への結合位置:オルト位及びパラ位)である。
【0178】
(5)第二亜リン酸エステル(B2)-1
ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(城北化学株式会社製、JPP-2000PT、下記式(2-1)で表される化合物、リン原子含有量:4.2質量%)
【化39】
上記式(2-1)で表される化合物は、前記一般式(2)において、R
21及びR
22がステアリル基(n-オクタデシル基)である化合物に該当する。
【0179】
3.亜リン酸エステル(B’):比較例化合物
(1)亜リン酸エステル(B’)-1
トリオレイルホスファイト(城北化学株式会社製、JP-318-O、下記式(3-1)で表される化合物、リン原子含有量:3.7質量%)
亜リン酸エステル(B’)-1は、前記一般式(1)中、n=0である亜リン酸エステルであり、第一リン系化合物(B)には属しない亜リン酸エステルである。
【化40】
【0180】
(2)亜リン酸エステル(B’)-2
トリスノニルフェニルホスファイト(堺化学株式会社製、TNPP、下記式(3-2)で表される化合物、リン原子含有量:4.1質量%)
亜リン酸エステル(B’)-2は、前記一般式(1a)中、R
13が直鎖状のアルキル基である亜リン酸エステルであり、第一リン系化合物(B)には属しない亜リン酸エステルである。
【化41】
上記式(3-2)中、「-nC
9H
19」は、ノルマルノニル基を意味する。
【0181】
4.第二リン系化合物(C)
(1)リン酸化合物(C1)
トリクレジルホスフェート(リン原子含有量:8.4質量%)
(2)有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)
トリフェニルホスフィンオキサイド(リン原子含有量:10.9質量%)
【0182】
5.第一リン系化合物(B)にも第二リン系化合物(C)にも属さないリン系化合物
テトラフェニル-m-フェニレンビスホスフェート
【0183】
6.酸化防止剤
ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(DBPC)
【0184】
[実施例1~29及び比較例1~12]
表1~表4に示す組成の冷凍機油組成物を調製し、以下に説明するファレックス摩耗試験により耐摩耗性を評価した。評価結果を表1~表4に示す。なお、表1~表4中の配合組成の数値単位は、「質量%」である。また、表1~表4において、第一亜リン酸エステル(B1)-4の化合物名は、「分岐鎖状アルキル基で置換されたフェニル基を3つ有するトリフェニルホスファイト」と表記した。
また、表1~表4に示す第一リン系化合物(B)由来のP原子含有量、亜リン酸エステル(B’)由来のP原子含有量、及び第二リン系化合物(C)由来のP原子含有量は、各原料のP原子含有量から算出した。
【0185】
<ファレックス摩耗試験>
ピン及びブロックとして、以下のものを準備した。
・ピン:SAE-3135
・ブロック:AISI-1137
ファレックス試験機を用い、ASTM D2670に準拠して次の試験を行った。
ファレックス試験機に、ピンとブロックとをセットし、試験容器内に、評価対象である冷凍機油組成物300gを入れると共に、冷媒としてR1234yfを30g充填して、試験容器を密閉した。そして、回転速度0.09m/s、油温60℃、荷重1,779Nに設定して60分間運転し、ピン及びブロックの合計の摩耗量(mg)を測定した。
なお、本ファレックス試験は、通常よりも油温及び荷重が高く、従来よりも過酷な条件下でのファレックス試験である。
評価基準は、以下のとおりとした。なお、摩耗量(mg)が少ない程、耐摩耗性に優れる。
・評価S(合格):2.0mg以下
・評価A(合格):2.0mg超2.5mg以下
・評価B(合格):2.5mg超5.0mg未満
・評価C(不合格):5.0mg以上
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
表1~表4より、以下のことがわかる。
実施例1~29の冷凍機油組成物は、いずれも耐摩耗性に優れることがわかる。
これに対し、比較例1、2、7、及び8のように、第一リン系化合物(B)を配合することなく、第二リン系化合物(C)のうちリン酸化合物(C1)に属するトリクレジルホスフェートを配合した冷凍機油組成物は、耐摩耗性に劣ることがわかる。
また、比較例3、4のように、第一リン系化合物(B)を配合することなく、第二リン系化合物(C)のうち有機ホスフィンオキサイド化合物(C2)に属するトリフェニルホスフィンオキサイドを配合した冷凍機油組成物は、耐摩耗性に劣ることがわかる。
また、比較例5、9のように、第一リン系化合物(B)には属さない亜リン酸エステルであるトリオレイルホスファイトを配合した冷凍機油組成物は、耐摩耗性に劣ることがわかる。
また、比較例6、10のように、第一リン系化合物(B)には属さない亜リン酸エステルであるトリスノニルフェニルホスファイトを配合した冷凍機油組成物は、耐摩耗性に劣ることがわかる。
また、比較例11、12のように、第一リン系化合物(B)も第二リン系化合物(C)も配合することなく、第一リン系化合物(B)にも第二リン系化合物(C)にも属さない化合物であるテトラフェニル-m-フェニレンビスホスフェートを配合した冷凍機油組成物は、耐摩耗性に劣ることがわかる。
【0191】
<オートクレーブ試験>
オートクレーブ容器(容積:200mL)に、触媒としてFe、Cu、及びAlを入れ、更に実施例19及び比較例6,11,12の冷凍機油組成物20gと冷媒(R1234yf)20gとの混合物をそれぞれ充填するとともに、水分2,000質量ppmを充填し、175℃で336時間保持した後、酸価(mgKOH/g)の評価を行った。
酸価は、JIS K2501:2003に準じ、指示薬光度滴定法(左記JIS規格における付属書1参照)により測定した。
評価基準は、以下のとおりとした。なお、酸価の値が小さい程、熱安定性に優れる。
・評価A(合格):0.5mgKOH/g以下
・評価B(不合格):0.5mgKOH/g超1.0mgKOH/g以下
・評価C(不合格):1.0mgKOH/g超
【0192】
オートクレーブ試験の結果を表5に示す。
【0193】
【0194】
表5に示す結果から、以下のことがわかる。
実施例19に示す冷凍機油組成物は、熱安定性に優れることがわかる。
これに対し、比較例6のように第一リン系化合物(B)に該当しない亜リン酸エステルであるトリスノニルフェニルホスファイト、比較例11及び12のように第一リン系化合物(B)にも第二リン系化合物(C)にも該当しない化合物であるテトラフェニル-m-フェニレンビスホスフェートを用いた場合には、熱安定性に劣ることがわかる。