(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ペリクル膜
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20241218BHJP
G03F 7/20 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
G03F1/62
G03F7/20 503
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2022503895
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2020070973
(87)【国際公開番号】W WO2021018777
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-18
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】バイロン,マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ドンメズ ノヤン,インシ
(72)【発明者】
【氏名】フェレ リン,ルルド
(72)【発明者】
【氏名】ギースバーズ,アドリアヌス,ヨハネス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】クルートウィック,ヨハン,ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】キュンツェル,ジャン,ヘンドリク,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ノッテンブーム,アーノウド,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ローリエ,アン-ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ワード,ティース,ウーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ツヴォル,ピーター-ジャン
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-091001(JP,A)
【文献】国際公開第2019/086643(WO,A1)
【文献】特表2014-519046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/62
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクル膜を製造する方法であって、平面基板の上にアモルファスカーボンを備える第1の犠牲層を提供してスタックを形成することと、前記スタックの少なくとも一部に、前記ペリクル膜の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクルコア層を提供することと、を備える、方法。
【請求項2】
前記金属はモリブデンを備える、請求項1の方法。
【請求項3】
ドーパントは窒素、ホウ素、及び/又は炭素を備える、請求項1から2のいずれかの方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのペリクルコア層を提供する前に、前記第1の犠牲層の上に少なくとも1つの追加的な犠牲層を提供することを更に備える、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの追加的な犠牲層は酸化物又はシリコンを備える、請求項4の方法。
【請求項6】
前記スタック上に3つのペリクルコア層が提供される、請求項1から5のいずれかの方法。
【請求項7】
基板と、第1の犠牲層と、ペリクルコアの少なくとも一部を形成する少なくとも1つの金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクル層と、を備え、
前記第1の犠牲層はアモルファスカーボンを備える、
ペリクル膜アセンブリ。
【請求項8】
前記第1の犠牲層と前記少なくとも1つのペリクルコアとの間に配設された少なくとも1つの追加的な犠牲層を更に備える、請求項7のアセンブリ。
【請求項9】
前記アセンブリは少なくとも3つの犠牲層を備え、前記第1及び第3の犠牲層は同じ材料を備える、請求項8のアセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのペリクルコア層は、第1のペリクル層、第2のペリクル層、及び第3のペリクル層を備える、請求項7,8,又は9のアセンブリ。
【請求項11】
前記第1及び第3のペリクル層は金属シリサイドを備え、前記第2のペリクル層はドープされた金属シリサイドを備える、請求項10のアセンブリ。
【請求項12】
前記ペリクル層に隣接する前記犠牲層は、酸化物を備えると共に、前記ペリクル層よりも実質的に薄い、請求項
8又は9のペリクルアセンブリ。
【請求項13】
前記少なくとも追加的な犠牲層はアモルファスカーボンを備える、請求項8のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2019年7月30日に出願された欧州出願第19188979.9号及び2019年8月30日に出願された欧州出願第19194571.6号の優先権を主張するものであり、同出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002] 本発明はペリクル膜を製造する方法に関する。本発明は、特にEUVリソグラフィ装置及びEUVリソグラフィツールに関連して用いられるが、これに限られない。本発明は、ペリクル膜アセンブリ及びそのようなアセンブリを備えるリソグラフィ装置にも関する。
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用することができる。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えばマスク)のパターンを、基板上に提供された放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、その基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成するのに使用することができる。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置においては、パターニングデバイス(例えばマスク又はレチクル)を用いて放射ビームにパターンが付与され得る。放射は、パターニングデバイスを通って提供され又はパターニングデバイスから反射されて、基板上に画像を形成する。パターニングデバイスの表面上の汚染は、基板に製造不良を引き起こすおそれがある。パターニングデバイスを浮遊粒子及び他の形態の汚染から保護するために、ペリクルとも称される膜アセンブリが提供され得る。
【0006】
[0006] ペリクルは、パターニングデバイス以外の光学コンポーネントを保護するためにも提供され得る。ペリクルは、リソグラフィ装置の互いに対して密封された領域の間にリソグラフィ放射用の通路を提供するためにも用いられ得る。ペリクルは、スペクトル純度フィルタのようなフィルタとして、又はリソグラフィ装置の動的ガスロックの一部としても用いられ得る。
【0007】
[0007] リソグラフィにおけるペリクルの使用は、周知であると共に確立されたものである。リソグラフィ装置におけるペリクルは、パターニングデバイスから離れて位置し、使用時のリソグラフィ装置の焦点面から外れた、膜(ペリクル膜とも称される)である。ペリクルがリソグラフィ装置の焦点面から外れているので、ペリクルに付着する汚染粒子はリソグラフィ装置の焦点から外れている。その結果、汚染粒子の画像は基板上に投影されない。ペリクルが存在しなければ、パターニングデバイスに付着した汚染粒子が、基板上に投影されて、投影パターンに欠陥を導入するであろう。
【0008】
[0008] マスクアセンブリは、パターニングデバイス(例えばマスク)を粒子汚染から保護するペリクルを含み得る。ペリクルは、ペリクルフレームによって支持されて、ペリクルアセンブリ又は膜アセンブリを形成し得る。ペリクルは、例えばペリクルの縁領域をフレームに接着すること又は別の手法で取り付けることによって、フレームに取り付けられてもよい。フレームは、永久的に又は剥離可能に、パターニングデバイスに取り付けられ得る。フレームは縁取りとしても知られ得る。
【0009】
[0009] 大量製造技術でペリクルを製造することは、例えばペリクルは汚染時又は損傷時に頻繁に洗浄又は交換されなければならないため、有益である。
【0010】
[00010] EUV放射ビームの光路内にペリクルが存在することによって、ペリクルは高いEUV透過率を有する必要がある。高いEUV透過率は入射放射の大部分がペリクルを通過することを可能にする。透過率は少なくとも部分的にはペリクルの厚さに依存するので、リソグラフィ装置内の時に過酷な環境に耐えるのに十分な強度を確実に保持しつつ可能な限り薄いペリクルを提供するのが望ましい。
【0011】
[00011] ペリクルは、EUV放射ビームの光路内に存在することによって、加熱し得る。高温はペリクルを損傷又は破断させ得る。ペリクルの動作温度を低下させること、又はより高い温度に耐えることのできるペリクルを提供することが望ましい。
【0012】
[00012] 膜アセンブリがプロセスにおいて変形又は損傷することなしにペリクルアセンブリを製造することは、例えば膜の薄さにより、困難である。膜アセンブリへの損傷又は膜アセンブリの欠陥は、性能の低下、寿命の短縮、又は破壊にさえ繋がり得るもので、望ましくない。
【0013】
[00013] エッチングは、材料の一部を除去するために用いられる一般的な製造プロセスである。多層材料においては、下にある層が露出されるように、選択エッチングが層の一部を除去することができる。所望よりも多くの材料が除去されるときにはオーバーエッチングが発生し得る。ペリクル製造におけるオーバーエッチングは、ペリクル膜への損傷を引き起こし得る。オーバーエッチングは、ペリクル膜に強度損失を引き起こし得る。これは、ペリクル膜を、製作、輸送、又はその後の使用の際に破断させるかもしれない。したがって、オーバーエッチングの可能性は低減させるのが望ましい。信頼性が高く且つ均一な特性を有するペリクルアセンブリを実現するために、制御された手法で層の堆積を援助する及び/又は材料の一部を除去する製造プロセスを開発するのも望ましい。
【0014】
[00014] 均一な物理的性質を有するペリクルを提供し、ペリクルへの損傷又はペリクルの欠陥を最小化し、ペリクルの大量製造を可能にする、ペリクルの製造方法を提供するのが望ましい。本発明は、上記で確認された課題のうち少なくともいくつかに対処しようとして考案されたものである。
【発明の概要】
【0015】
[00015] 第1の態様によれば、ペリクル膜を製造する方法が提供され、その方法は、平面基板の上に第1の犠牲層を提供してスタックを形成することと、スタックの少なくとも一部に、ペリクル膜の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクルコア層を提供することと、を備える。
【0016】
[00016] 金属シリサイド及びドープされた金属シリサイドは、それらの高いEUV透過率により、ペリクル膜における使用に有益であり得る。また、それらの高い放射率は、ペリクル膜の動作温度を有益に低下させることができ、それによって使用時のペリクル膜への損傷のおそれを低減させる。さらに、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドをペリクルコア層として使用すると、それらの放射率により、ペリクル膜の前面及び/又は裏面上の追加的な放射キャッピング層の必要が緩和され又はなくなり得る。有利なことには、放射キャッピング層の要件を除去すると、製造時間が低減され及び/又は製造の際にペリクル膜に与えられる損傷が低減され得る。
【0017】
[00017] 例えばシリコンコアによって、他のタイプのペリクル膜を製造する方法は、少なくとも1つの金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクルコア層を有するペリクル膜の製造には次善的であろう。本発明のこの態様及び関係する実施形態による方法は、少なくとも1つの金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクルコア層を備えるペリクル膜をより高品質及び/又はより高い歩留まりで製造する方法を有益に提供し得る。特に、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクルコア層を堆積させる前に第1の犠牲層を提供すると、ペリクルコア層を受ける表面の性質、例えば表面トポロジーが有益に制御され得る。有益なことには、その層は、少数のピンホール、低ラフネス、少数の汚染物質粒子、均一な層厚、及び/又は表面とペリクルコア層との間の微量の空気/真空のうち、少なくとも1つを有し得る。
【0018】
[00018] 金属シリサイド及びドープされた金属シリサイドにおける金属と、シリコンと、任意選択的なドーパントとの比率は、必要に応じて調整され得る。平面基板は単に基板と称されてもよい。
【0019】
[00019] ペリクルコア層は物理蒸着(PVD)を用いて堆積され得る。有益なことには、PVDは、堆積に必要とされる原料の量を低減させ得る。有益なことには、PVDは、堆積に関連する特性、例えばペリクルコア層の厚さ、ペリクルコア層の均一性、ペリクルコア層における金属とシリコンと(任意選択的には)ドーパントとの比率、及び/又は複数の膜を処理するときのこれらの特性の反復性に対して、より優れた制御を提供し得る。
【0020】
[00020] 金属はモリブデンを備え得る。金属Mは、様々な金属のうちの1つであり得る。例えば、金属は、Ce,Pr,Sc,Eu,Nd,Ti,Cr,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,La,Y,及びBeを備えるグループから選択され得る。このグループのうち、好適な金属は、ジルコニウム、モリブデン、及びベリリウムである。モリブデンが最も好適である。
【0021】
[00021] ドーパントは窒素を備え得る。ドーパントは任意の適当なドーパントであり得る。例えば、ドーパントは、酸素、炭素、ホウ素、又は窒素であり得る。これらのうち、好適なドーパントは窒素である。
【0022】
[00022] 第1の犠牲層は酸化物を備え得る。酸化物は熱酸化物を備え得る。酸化物は任意の適当な技術によって提供され得る。酸化物層を提供するために、平面基板のアニールが用いられてもよい。第1の犠牲層は、少なくとも1つのペリクルコア層を受ける第1の犠牲層の表面が高い平滑性及び/又は高い清浄性を有するように配置され得る。つまり、第1の犠牲層は、均一な厚さ及び/又は低ラフネス及び/又は低い汚染物質粒子密度を有し得る。平滑性の高い表面を提供することによって、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクルコア層が、高品質で堆積され得る。高品質とは、例えば、少数のピンホール、均一な層厚、及び/又は表面とペリクルコア層との間の微量の空気/真空を意味し得る。
【0023】
[00023] 方法は更に、少なくとも1つのペリクルコア層を提供する前に、第1の犠牲層の上に少なくとも1つの追加的な犠牲層を提供することを備え得る。任意の数、例えば1つ又は4つの追加的な犠牲層があってもよい。追加的な犠牲層を提供すると、少なくとも1つのペリクルコア層を受ける表面の表面トポロジーが有益に制御され得る。有益なことには、層は高品質、例えば、少数のピンホール、均一な層厚、及び/又は表面とペリクルコア層との間の微量の空気/真空を有し得る。追加的な犠牲層は、犠牲層と称されてもよい。つまり、「犠牲層」は、第1の犠牲層と、任意選択的には1つ以上の追加的な犠牲層とを備え得る。犠牲層が異なる材料を備える場合には、各材料が、あるエッチング液において、各材料が別の材料と比較して異なるエッチング速度を有し得る。よって、これは、スタックの高度に制御されたエッチングを可能にし得る。なぜなら、特定の犠牲層がエッチング液に対して耐性を有し得るのでオーバーエッチングが回避され得るからである。
【0024】
[00024] 少なくとも1つの追加的な犠牲層は酸化物又はシリコンを備え得る。好適には、隣接する犠牲層の組成は、酸化物とシリコンとが交互であってもよい。酸化物は酸化シリコンであってもよい。
【0025】
[00025] 言及したように、酸化物とシリコンとは異なるエッチング速度を有し得る。酸化物又はシリコンを備える異なる犠牲層を有することは、異なるエッチング速度の異なる犠牲層を有益に提供し得る。異なるエッチング速度の隣接する層を有することで、ある層が隣の層のエッチング止めとして作用することが有益に可能になる。
【0026】
[00026] シリコンは、シリコンであっても又はポリシリコンであってもよく、ドープであっても又は非ドープであってもよく、例えばシリコンはインシチュ(in-situ)ドープポリシリコンであってもよい。ドーパントは、リンであってもよく、又は別のドーパントであってもよい。酸化物は、二酸化シリコンであってもよく、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、熱酸化物、又は二酸化シリコンに類似の挙動及び/又は化学的/物理的性質を有する任意の材料から形成されていてもよい。
【0027】
[00027] 少なくとも1つの追加的な犠牲層は、層内に制御された応力を有するように配置され得る。例えば、少なくとも1つの追加的な犠牲層は、引張応力を有し得る。犠牲層における応力の提供は、少なくとも1つのペリクルコア層に有益に予応力を与え得る。ペリクルコア層に予応力を与えると、ペリクル膜が基板から除去されて自立しているとき及び使用中であるときのペリクル膜のたるみが有益に低減され得る。
【0028】
[00028] 第1の犠牲層はアモルファスカーボンを備え得る。少なくとも1つの追加的な犠牲層はアモルファスカーボンを備え得る。アモルファスカーボンは、有益なことには、ペリクル製造の際のオーバーエッチングを低減させ、及び/又はペリクル膜アセンブリの層間に拡散バリアを提供し、及び/又はペリクル膜に予応力を与え得る。
【0029】
[00029] 方法は、スタック上に3つのペリクルコア層を提供することを備え得る。好適には、ペリクルコア層は、次の順序:第1の金属シリサイド層、ドープされた金属シリサイド層、そして第2の金属シリサイド層、で堆積され得る。3つのコア層を有するペリクル膜は、高い放射率及び/又は高いEUV透過率を有益に有し得る。3つのコア層を有するペリクル膜は、低欠陥性をもって製造され得る。第1の金属シリサイド層、ドープされた金属シリサイド層、及び第2の金属シリサイド層の順のスタックを備えるペリクル膜は、有益なことには、PVDを用いて比較的容易に及び/又は相対的な速さをもって製造され得る。
【0030】
[00030] 方法は更に、基板及び1つ以上の犠牲層の少なくとも一部を除去するための1つ以上のエッチングステップを備え得る。基板及び1つ以上の犠牲層の少なくとも一部を除去すると、例えばペリクル膜の周縁周りに、縁取り又はフレームが定義され得る。基板及び1つ以上の犠牲層の少なくとも一部を除去すると、ペリクル膜が基板及び1つ以上の犠牲層から実質的に剥離され得る。剥離されたペリクル膜はペリクルアセンブリの一部を形成してもよく、そのペリクルアセンブリはペリクル膜とペリクル膜を支持する縁取りとを備える。エッチングされる特定の材料に応じて適切なエッチング液が選択可能である。
【0031】
[00031] 方法は、犠牲層の堆積の後且つペリクルコア層の堆積の前に、少なくとも1つのエッチングステップを実施することを備え得る。このエッチングステップは、後続のエッチングステップにおいてエッチングされるべき区域を定義し得る。定義された区域は、完成したペリクルアセンブリの全体形状を定義し得る。定義された区域は、例えばペリクル膜の周縁周りに、縁取り又はフレームを定義し得る。エッチングステップは、1つ以上の犠牲層のうち少なくとも1つの少なくとも一部を除去し得る。エッチングステップは、任意選択的には、基板の少なくとも一部を除去し得る。有益なことには、このエッチングステップを実施して、ペリクルコア層を堆積させる前に後続のエッチングステップにおいてエッチングされるべき区域を定義することによって、ペリクルコア層への損傷が回避され得る。
【0032】
[00032] 平面基板はSOI(シリコンオンインシュレータ)ウェーハであってもよい。平面基板はシリコンウェーハであってもよい。これらのタイプの基板は、十分に特徴が明らかであると共に容易に入手可能である。
【0033】
[00033] 平面基板は、オルトケイ酸テトラエチル層の提供の前に熱酸化物層を提供するために、アニールされ得る。
【0034】
[00034] 最終的なエッチングステップはウェットエッチングであり得る。好適には、HFウェットエッチングがオルトケイ酸テトラエチル層をエッチングする。
【0035】
[00035] 方法は更に、最終的なエッチングステップに続くプラズマ処理ステップを備え得る。プラズマ処理ステップは、アモルファスカーボンの第1の犠牲層又は追加的な犠牲層の少なくとも一部を除去し得る。プラズマ処理は、ラジカル、例えば水素ラジカルでの処理を備え得る。有益なことには、プラズマ処理は、犠牲層のいくつかの部分(例えば、アモルファスカーボンなど、エッチング耐性であるがプラズマ感応性の材料から作製された犠牲層の部分)を、ペリクル膜を損傷させる又は除去することなしに除去し得る。
【0036】
[00036] 本発明の一実施形態によれば、方法は、平面基板上の第1及び第2の犠牲層の提供に続き、スタックの裏側をパターニングすることを含む。裏側とは、スタックの、ペリクルコア層が提供されるスタックの側又は面とは反対の側又は面である。よって、スタックの裏側は、第3の犠牲層の提供の前にパターニングされる。以下でより詳細に説明されるように、これは、ペリクルコア層に直接隣接する犠牲層が異なる段階において除去されることを可能にする製造手順を規定する。これは手順の終わりにおけるウェットHFエッチングの必要を除去する。そして、ウェットHFウェッチングはペリクルコア層に損傷をもたらすおそれがあるので、これは有利である。
【0037】
[00037] 方法は、i)第3の犠牲層を酸化物の形で提供して底部酸化物を形成するステップと、ii)スタックの面上にペリクルコア層を堆積させるステップと、iii)任意選択的にキャッピング層を更なる酸化物層の形でペリクルコア層の上面上に堆積させてトップ酸化物層を形成するステップと、iv)スタックをアニールするステップと、v)任意選択的にトップ酸化物層(存在する場合)及び/又は自然酸化物層を除去するステップと、vi)スタックの前側をパターニングするステップと、vii)スタックの前側を保護するための保護層を提供するステップと、viii)スタックの裏側からキャビティエッチングを行い、平面基板、第1の犠牲層、第2の犠牲層の一部と、任意選択的には第3の犠牲層の一部とを除去して、ペリクルアセンブリを定義するステップと、を順に含み得る。
【0038】
[00038] ペリクル膜アセンブリの製造のための既存の手順においては、最終の自立膜が支持ウェーハから分離される段階で、ペリクルコア層の直上及び直下に酸化シリコン層が提供される。これらの犠牲保護層をエッチング除去するために、最終的なウェットHFエッチング段階が必要とされる。これは、非常に薄い、約140nmの膜の、高反応性エッチング液槽内への挿入を必要とする。このステップは、機械的歩留まりの損失をもたらすことが多い。また、ペリクル膜のコア材料が、本発明の実施形態において用いられるようにMoSiNなどのHFによってエッチングされる場合には、HFエッチングに起因して厚さの局所的な差が生じるおそれがあり、これはEUV透過率の不均一性をもたらす。さらに、酸化シリコンの圧縮性は、HFエッチングの直前に、ペリクルスタックに皺が寄ったり、ペリクルスタックが音などの自然振動によって引き起こされる振動に曝されたりする事態をもたらす。この皺が寄った状態は、ペリクルを非常に壊れやすくすると共に、取り扱いにくく又は処理しにくくする。本発明の一実施形態による流れ図は、これらの困難に対処し又はこれらの困難を克服する。
【0039】
[00039] 第3の犠牲層は、酸化物の形で提供されて底部酸化物を形成し得る。「底部酸化物」という用語は、プロセスの後の段階におけるペリクルコア層に対するそのような酸化物の相対位置を指して用いられる。これはその酸化物をトップ酸化物と区別する。この犠牲層は、本技術分野において既知のように、化学的又は熱的など、任意の適当な手段によって提供され得る。第3の犠牲層は、例えばDIO3、DIO3+SC1+SC2、又はDIO3+SC1など本技術分野において既知の化学的手段を用いて形成されるとき、厚さが約0.5nmから約3nmであってもよい。この層は、シリコン(ISDP)エッチングに対するエッチングバリアとして機能する。以前は、底部酸化物層は、EUV透過率を増加させるために除去される必要があった。しかしながら、化学的酸化物の極めて薄い性質によって、EUV透過率に対する底部酸化物層の影響は限定されるので、底部酸化物をエッチング除去することはもはや不要であることがわかっている。これは、HFエッチング段階のないプロセス流れ図を可能にする。代替的には、熱酸化物層が提供されてもよい。これは乾式酸化物とも称され得る。このタイプの酸化物は、酸素リッチな環境において高い温度、例えば900℃を超える温度で熱的に成長され得る。この熱酸化物層の厚さは約5nmから15nmであり得、典型的には約10nmであり得る。本発明の流れ図においては、もはやトップ犠牲層が存在しないので、底部酸化物は、自立膜がキャビティエッチングの一部としてウェーハから分離される前に除去されてもよい。キャビティエッチングの際には、膜は、保護層、例えば厚さが数ミクロンであり得るペリレンなどのポリマによって覆われているので、まだ自立していない。熱酸化物はHF浴又はBOE浴によって除去されてもよい。乾式酸化物を用いることの利点は、下にある犠牲ISDP層が、ペリクルコア層が上に堆積される前に高温プロセスに曝されるということである。この高温はISDP層を安定化させるのに役立ち、それによって、上にペリクルコア層が堆積される基板を安定化させる。トップ酸化物が提供されない実施形態においては、これは、ペリクルがプロセス流れ図全体にわたって平坦なままであることを可能にし、それによって、より安全な取り扱いを可能にする。
【0040】
[00040] 本発明の実施形態において、ステップiii)は任意選択的なものである。ペリクル膜は、最終的な性能に影響を与えることなしに後続のプロセスステップを取り扱うのに十分なほど堅牢であることがわかっている。よって、トップ酸化物は厳密には必要ではなく、この層を排除することによって、HFエッチングを含まないプロセス流れ図を提供することが可能である。その結果、ステップv)も任意選択的なものとなる。
【0041】
[00041] ステップiii)のキャッピング層は、TEOSから形成されてもよいが、本技術分野において既知の任意の他の適当なプロセスが用いられてもよい。
【0042】
[00042] 保護層は、ペリレンなどの高分子材料から形成されてもよい。やはり、エッチングプロセスの際に材料の保護に用いられるものとして知られている任意の適当な保護材料が用いられてもよい。
【0043】
[00043] 保護層は、ペリクル膜アセンブリを剥離させるために除去され得る。保護層は酸素プラズマによって除去されてもよい。よって、最終的なHFエッチングが実施されなければ、厚さが約1から2nmの薄い二酸化シリコン層がペリクルコア膜の上に残るであろう。
【0044】
[00044] 上記したように、第3の犠牲層は化学的酸化物又は熱酸化物であり得る。
【0045】
[00045] 方法は、ウェットHFエッチングステップを含まなくてもよい。流れ図の設計によって、プロセスの際の危険なHFエッチングの必要を回避することが可能である。
【0046】
[00046] 本方法は、最終的なHFエッチングステップの排除によって、EUV透過率の不均一性を約3倍低減させることがわかっている。EUV透過率の不均一性は最小化するのが望ましいので、本方法は、他の流れ図を用いることによっては可能でないであろう改良された最小的なペリクル製品を提供する。よって、最終製品は、0.15%未満のEUV透過率の不均一性を有することによって、一見類似するペリクルアセンブリとは区別される。
【0047】
[00047] 本発明の第2の態様によれば、基板と、第1の犠牲層と、ペリクルコアの少なくとも一部を形成する少なくとも1つの金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクル層と、を備えるペリクル膜アセンブリが提供される。
【0048】
[00048] 金属シリサイド及びドープされた金属シリサイドは、それらの高いEUV透過率により、ペリクル膜における使用に有益であり得る。また、それらの高い放射率は、ペリクル膜の動作温度を有益に低下させることができ、それによって使用時のペリクル膜への損傷のおそれを低減させる。さらに、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドをペリクルコア層として使用すると、それらの放射率により、ペリクル膜の前面及び/又は裏面上の追加的な放射キャッピング層の必要が緩和され又はなくなり得る。有利なことには、放射キャッピング層の要件を除去すると、製造時間が低減され及び/又は製造の際にペリクル膜に与えられる損傷が低減され得る。したがって、本発明によるアセンブリは、改良されたペリクル膜を支持し得る。例えば、そのペリクル膜は、他のペリクル膜と比較して、より高品質であり得、及び/又はより高い歩留まりで生産されることができ得る。そのペリクル膜は、他のペリクル膜よりも高い透過率及び高い放射率を有し得る。
【0049】
[00049] アセンブリは更に、第1の犠牲層と少なくとも1つのペリクルコア層との間に配設された少なくとも1つの追加的な犠牲層を備え得る。任意の数、例えば1つ又は4つの追加的な犠牲層があってもよい。追加的な犠牲層の提供は、少なくとも1つのペリクルコア層を受ける表面の表面トポロジーを、例えば平滑性を増加させるように、有益に制御し得る。追加的な犠牲層は、犠牲層と称されてもよい。つまり、「犠牲層」は、第1の犠牲層と、任意選択的には1つ以上の追加的な犠牲層とを備え得る。また、改良された層間接着特性を有する様々な犠牲層が選択され得る。例えば、緩和された層間の格子不整合が存在してもよく、これはデラミネーションの可能性を低減させる。
【0050】
[00050] アセンブリは少なくとも3つの犠牲層を備え得る。第1及び第2の犠牲層は同じ材料を備えていてもよく、好適にはその材料は熱酸化物、好適には酸化シリコンである。
【0051】
[00051] 少なくとも1つのペリクルコア層は、第1のペリクルコア層、第2のペリクルコア層、及び第3のペリクルコア層を備え得る。好適には、第1及び第3のペリクルコア層は金属シリサイドを備え得ると共に第2のペリクルコア層はドープされた金属シリサイドを備え得る。金属はモリブデンであり得る。3つのコア層を有するペリクル膜は、高い放射率及び/又は高いEUV透過率を有益に有し得る。3つのコア層を有するペリクル膜は、低欠陥性をもって製造され得る。第1の金属シリサイド層、ドープされた金属シリサイド層、及び第2の金属シリサイド層の順のスタックを備えるペリクル膜は、有益なことには、PVDを用いて比較的容易に及び/又は相対的な速さをもって製造され得る。
【0052】
[00052] 基板は、ペリクル膜を保持又は支持する縁取りの少なくとも一部を形成し得る。
【0053】
[00053] 縁取りは、平面基板の一部及び少なくとも1つの犠牲層の順の配列(ordered sequence)を備えていてもよく、少なくとも1つの犠牲層はペリクル膜/コアに隣接している。ペリクルアセンブリは、ペリクル膜の一部を形成する少なくとも1つの金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクルコア層の堆積と、アセンブリが基板と1つ以上の犠牲層とを備えるところ、基板の1つ以上の部分を選択的にエッチングして縁取りを定義することと、によって製造され得る。したがって、縁取りは、スタックが基板及び1つ以上の犠牲層の順の配列であれば、それに対応する基板及び1つ以上の犠牲層の順の配列の部分を備えるであろうという点で、組成がアセンブリと類似し得る。
【0054】
[00054] 少なくとも1つの犠牲層は酸化物又はシリコンを備え得る。好適には、隣接する犠牲層の組成は、酸化物とシリコンとが交互であってもよい。
【0055】
[00055] 酸化物とシリコンとは異なるエッチング速度を有し得る。酸化物又はシリコンを備える異なる犠牲層を有することは、異なるエッチング速度の異なる犠牲層を有益に提供し得る。異なるエッチング速度の隣接する層を有することによって、ある層が隣の層のエッチング止めとして作用することが有益に可能になる。
【0056】
[00056] シリコンは、シリコンであっても又はポリシリコンであってもよく、ドープであっても又は非ドープであってもよく、例えばシリコンはインシチュドープポリシリコンであってもよい。ドーパントは、リンであってもよく、又は別のドーパントであってもよい。酸化物は、二酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、熱酸化物、又は二酸化シリコンに類似の挙動を有する任意の材料であってもよい。
【0057】
[00057] 少なくとも1つの追加的な犠牲層は、層内に制御された応力を有するように配置され得る。例えば、少なくとも1つの追加的な犠牲層は、引張応力を有し得る。犠牲層における応力の提供は、少なくとも1つのペリクルコア層に有益に予応力を与え得る。ペリクルコア層に予応力を与えると、ペリクル膜が基板から除去されて自立しているとき及び使用中であるときのペリクル膜のたるみが有益に低減され得る。
【0058】
[00058] ペリクル膜に隣接する犠牲層は、酸化物を備え得ると共に、ペリクル膜よりも実質的に薄くてもよい。
【0059】
[00059] 薄いとは、ペリクル膜に隣接する犠牲層の厚さがペリクル膜の厚さよりも実質的に小さいという意味である。ペリクル膜に隣接する犠牲層は、薄い酸化物層として知られ得る。酸化物の薄い層は、周知の層厚で容易に成長される。ペリクル膜に隣接する薄い酸化物層はペリクル膜の平滑な表面を提供し得る。ペリクル膜に隣接する薄い酸化物層は低欠陥性のペリクル膜を可能にし得る。
【0060】
[00060] 第1の犠牲層又は少なくとも追加的な犠牲層上の少なくとも1つは、アモルファスカーボンを備え得る。アモルファスカーボンは、有益なことには、ペリクル製造の際のオーバーエッチングを低減させ、及び/又はペリクル膜アセンブリの層間に拡散バリアを提供し、及び/又はペリクル膜に予応力を与え得る。
【0061】
[00061] ペリクル膜に隣接する犠牲層は、アモルファスカーボンを備え得る。ペリクル膜に隣接する犠牲層は、ペリクル膜よりも実質的に薄くてもよい。有益なことには、薄いアモルファスカーボンの犠牲層は、有利な量のオーバーエッチングの低減及び/又は拡散の低減及び/又は予応力の付与を提供し得る。
【0062】
[00062] 第1及び第3のペリクル層は金属シリサイドを備え得る。第2のペリクルコア層はアモルファスカーボンを備え得る。有益なことには、アモルファスカーボンのペリクルコア層は、ペリクル膜における張力を提供し得る。有益なことには、アモルファスカーボンのペリクルコア層は、ペリクル膜におけるたるみを低減させ得る。
【0063】
[00063] 本発明の第3の態様によれば、ペリクル膜を製造する方法が提供され、その方法は、ペリクル膜の少なくとも一部を形成するペリクル層に隣接する少なくとも1つのアモルファスカーボン層を提供することを備える。
【0064】
[00064] アモルファスカーボンは、有益なことには、ペリクル製造の際のオーバーエッチングを低減させ、及び/又はペリクル膜アセンブリの層間に拡散バリアを提供し、及び/又はペリクル膜に予応力を与え得る。
【0065】
[00065] ペリクルコア層は金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドを備え得る。金属シリサイド及びドープされた金属シリサイドは、それらの高いEUV透過率により、ペリクル膜における使用に有益であり得る。また、それらの高い放射率は、ペリクル膜の動作温度を有益に低下させることができ、それによって使用時のペリクル膜への損傷のおそれを低減させる。さらに、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドをペリクルコア層として使用すると、それらの放射率により、ペリクル膜の前面及び/又は裏面上の追加的な放射キャッピング層の必要が緩和され又はなくなり得る。有利なことには、放射キャッピング層の要件を除去すると、製造時間が低減され及び/又は製造の際にペリクル膜に与えられる損傷が低減され得る。
【0066】
[00066] 発明の第4の態様によれば、基板と、少なくとも1つのアモルファスカーボン層と、ペリクル膜とを備えるペリクル膜アセンブリが提供される。
【0067】
[00067] アモルファスカーボンは、有益なことには、ペリクル製造の際のオーバーエッチングを低減させ、及び/又はペリクル膜アセンブリの層間に拡散バリアを提供し、及び/又はペリクル膜に予応力を与え得る。
【0068】
[00068] ペリクルコア層は金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドを備え得る。金属シリサイド及びドープされた金属シリサイドは、それらの高いEUV透過率により、ペリクル膜における使用に有益であり得る。また、それらの高い放射率は、ペリクル膜の動作温度を有益に低下させることができ、それによって使用時のペリクル膜への損傷のおそれを低減させる。さらに、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドをペリクルコア層として使用すると、それらの放射率により、ペリクル膜の前面及び/又は裏面上の追加的な放射キャッピング層の必要が緩和され又はなくなり得る。有利なことには、放射キャッピング層の要件を除去すると、製造時間が低減され及び/又は製造の際にペリクル膜に与えられる損傷が低減され得る。
【0069】
[00069] アモルファスカーボン層の厚さは、ペリクル膜よりも実質的に薄くてもよい。有益なことには、薄いアモルファスカーボンの犠牲層は、有利な量のオーバーエッチングの低減及び/又は拡散の低減及び/又は予応力の付与を提供し得る。
【0070】
[00070] 基板は、ペリクル膜を保持する縁取りの少なくとも一部を形成し得る。
【0071】
[00071] 縁取りは、基板の少なくとも一部と、存在すれば任意選択的に1つ以上の犠牲層と、を除去するための1つ以上のエッチングステップを用いて定義され得る。エッチングされる特定の材料に応じて適切なエッチング液が選択可能である。最終的なエッチングステップはウェットエッチングであり得る。好適には、HFウェットエッチングがオルトケイ酸テトラエチル層をエッチングする。
【0072】
[00072] 縁取りはフレームとも称され得る。縁取りは、例えばペリクル膜の周縁周りに延伸し得る。基板及び1つ以上の犠牲層の少なくとも一部を除去すると、ペリクル膜が基板及び1つ以上の犠牲層から実質的に剥離され得る。
【0073】
[00073] 剥離されたペリクル膜はペリクルアセンブリの一部を形成してもよく、そのペリクルアセンブリはペリクル膜とペリクル膜を支持する縁取りとを備える。
【0074】
[00074] 平面基板はSOI(シリコンオンインシュレータ)ウェーハであってもよい。平面基板はシリコンウェーハであってもよい。これらのタイプの基板は、十分に特徴が明らかであると共に容易に入手可能である。
【0075】
[00075] 平面基板は、オルトケイ酸テトラエチル層の提供の前に熱酸化物層を提供するために、アニールされ得る。
【0076】
[00076] 縁取りは、平面基板の一部及びアモルファスカーボン層の一部の順のスタックを備えていてもよく、少なくとも1つのアモルファスカーボン層はペリクル膜に隣接している。
【0077】
[00077] 発明の第5の態様によれば、上記したペリクルアセンブリ又は先行するいずれかの請求項に従って製造されたペリクル膜もしくはペリクルアセンブリのうちいずれかを備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0078】
[00078] 態様のうちいずれかに関して記載される特徴は、本発明の他の態様のうちいずれかに関して記載される特徴と組み合わせられてもよい。
【0079】
[00079] 次に、EUVリソグラフィ装置を参照して本発明を説明する。もっとも、本発明はEUVリソグラフィに限定されるものではなく、他のタイプのリソグラフィにも適当であり得ることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0080】
[00080] 次に、本発明の実施形態を添付の概略図を参照して例としてのみ説明する。
【0081】
【
図1】リソグラフィ装置と放射源とを備えたリソグラフィシステムを示す。
【
図3】本発明の一実施形態によるペリクル膜及びペリクルアセンブリの製造の段階を図示する。
【
図4】本発明の別の一実施形態によるペリクル膜及びペリクルアセンブリの製造の段階を図示する。
【
図5】本発明の別の一実施形態によるペリクル膜及びペリクルアセンブリの製造の段階を図示する。
【
図6】本発明の別の一実施形態によるペリクル膜及びペリクルアセンブリの製造の段階を図示する。
【
図7】本発明の別の一実施形態によるペリクル膜及びペリクルアセンブリの製造の段階を図示する。
【
図8】ペリクルアセンブリの製造の流れ図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0082】
[00081]
図1は、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備えるリソグラフィシステムを示す。放射源SOは、EUV放射ビームBを生成し、EUV放射ビームBをリソグラフィ装置LAに供給するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムIL、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MT、投影システムPS、及び基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTを備える。
【0083】
[00082] 照明システムILは、EUV放射ビームBがパターニングデバイスMAに入射する前にEUV放射ビームBを調節するように構成される。そのため、照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を含んでよい。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、EUV放射ビームBに所望の断面形状及び所望の強度分布を与える。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含んでもよい。
【0084】
[00083] このように調節された後、EUV放射ビームBはパターニングデバイスMAと相互作用する。この相互作用の結果、パターン付きEUV放射ビームB’が生成される。
【0085】
[00084] 放射の経路内には、パターニングデバイスMAを保護するためのペリクルアセンブリ15が示されている。ペリクルアセンブリ15は、ペリクル膜19と、ペリクル膜19を支持するフレーム17とを備える。フレーム17は縁取りとも称され得る。ペリクル膜19は、EUV放射に対して実質的に透明な(しかし少量のEUV放射を吸収するであろう)薄膜を備える。ペリクル膜19は、パターニングデバイスMAを粒子汚染から保護するように作用する。ペリクル膜19は単にペリクルと称されてもよい。ペリクルアセンブリ15が、任意の所要の位置にあってもよいこと、及びリソグラフィ装置の任意の要素、例えばリソグラフィ装置内のミラーのうち1つ以上を保護するために用いられてもよいことは、理解されるであろう。
【0086】
[00085] リソグラフィ装置LAの内部の清浄な環境の維持が図られるであろう一方で、リソグラフィ装置LAの内部には依然として粒子が存在し得る。ペリクル19が存在しなければ、粒子はパターニングデバイスMA上に堆積するかもしれない。パターニングデバイスMA上の粒子は、放射ビームBに付与されるパターン及びひいては基板Wに転写されるパターンに悪影響を及ぼし得る。粒子がパターニングデバイスMA上に堆積するのを防止するために、ペリクル19は、パターニングデバイスMAとリソグラフィ装置LA内の環境との間にバリアを提供する。
【0087】
[00086] 使用時には、ペリクル19は、ペリクル19の表面に入射する粒子が放射ビームBの焦点面内に存在しないようにパターニングデバイスMAから十分な距離をとって位置決めされる。ペリクル19とパターニングデバイスMAとの間のこの間隔は、ペリクル19の表面上の粒子が放射ビームBにパターンを付与する程度を低減させるように作用する。粒子が放射ビームB内であるが放射ビームBの焦点面内ではない(すなわち、パターニングデバイスMAの表面ではない)位置に存在している場合には、粒子の画像は基板Wの表面では合焦状態にはならないことが理解されるであろう。いくつかの実施形態においては、ペリクル19とパターニングデバイスMAとの間の間隔は、例えば、2mmと3mmとの間(例えば約2.5mm)であり得る。いくつかの実施形態においては、ペリクル19とパターニングデバイスとの間の間隔は調整可能であってもよい。
【0088】
[00087] パターン付きEUV放射ビームB’が生成された後、投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’を基板Wに投影するように構成される。この目的のため、投影システムPSは、基板テーブルWTにより保持された基板Wにパターン付きEUV放射ビームB’を投影するように構成された複数のミラー13、14を備えてよい。投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’に縮小係数を適用し、これによって、パターニングデバイスMAにおける対応するフィーチャよりも小さいフィーチャの像を形成することができる。例えば、4又は8の縮小係数を適用することができる。投影システムPSは、
図1では2つのミラー13、14のみを有するように示されているが、投影システムPSは異なる数のミラー(例えば6個又は8個のミラー)を備えてよい。
【0089】
[00088] 基板Wは、前もって形成されたパターンを含んでよい。この場合、リソグラフィ装置LAは、パターン付きEUV放射ビームB’により形成された像を、基板W上に前もって形成されたパターンと位置合わせする。
【0090】
[00089] 相対真空、すなわち大気圧を大きく下回る圧力の少量のガス(例えば水素)を、放射源SO、照明システムIL、及び/又は投影システムPS内に提供することができる。
【0091】
[00090]
図1に示される放射源SOは、例えば、レーザ生成プラズマ(LPP)源と称され得るタイプのものである。例えばCO
2レーザを含み得るレーザシステム1は、レーザビーム2を介して、エネルギを、例えば燃料放出器3から提供されるスズ(Sn)などの燃料に付与するように配置される。以下の説明においてはスズを参照するが、任意の適当な燃料が使用されてもよい。燃料は、例えば液体の形態であってもよく、例えば金属又は合金であってもよい。燃料放出器3は、例えば液滴の形態のスズを、プラズマ形成領域4に向かう軌道に沿って導くように構成されたノズルを備えていてもよい。レーザビーム2は、プラズマ形成領域4においてスズに入射する。スズへのレーザエネルギの付与は、プラズマ形成領域4においてスズプラズマ7を発生させる。プラズマ7からは、脱励起及び電子とプラズマのイオンとの再結合の際に、EUV放射を含む放射が放出される。
【0092】
[00091] プラズマからのEUV放射は、収集され、コレクタ5によって集束される。コレクタ5は、例えば、近垂直入射放射コレクタ5(より一般的に垂直入射放射コレクタと称されることもある)を備える。コレクタ5は、EUV放射(例えば13.5nmなど所望の波長を有するEUV放射)を反射するように配置された多層ミラー構造を有し得る。コレクタ5は、楕円形状を有していてもよく、2つの焦点を有する。焦点のうち第1の焦点はプラズマ形成領域4にあってもよく、焦点のうち第2の焦点は、後述するように、中間焦点6にあってもよい。
【0093】
[00092] レーザシステム1は放射源SOから空間的に分離していてもよい。その場合、レーザビーム2は、例えば適当な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダを備えたビーム送出システム(図示しない)及び/又は他の光学部品の助けを借りて、レーザシステム1から放射源SOへと渡され得る。レーザシステム1、放射源SO、及びビーム送出システムは、併せて放射システムと見なされ得る。
【0094】
[00093] コレクタ5によって反射された放射はEUV放射ビームBを形成する。EUV放射ビームBは、中間焦点6で集束され、中間焦点6においてプラズマ形成領域4にあるプラズマの画像を形成する。中間焦点6における画像は、照明システムILのための仮想放射源として作用する。放射源SOは、中間焦点6が放射源SOの内包構造体9の開口8又はその付近に位置するように配置される。
【0095】
[00094]
図1は放射源SOをレーザ生成プラズマ(LPP)源として示しているが、EUV放射を生成するためには、放電生成プラズマ(DPP)源又は自由電子レーザ(FEL)など、任意の適当な放射源が使用され得る。
【0096】
[00095]
図2は、ペリクルアセンブリ15及びパターニングデバイスMAの断面のより詳細な概略図である。パターニングデバイスMAはパターン表面24を有する。ペリクルフレーム17(又は「縁取り」)は、ペリクル19の周縁部周りでペリクル19を支持する。ペリクルフレーム17は、ペリクルフレーム17がパターニングデバイスMAに取り外し自在に取り付け可能になるように(すなわち、ペリクルフレーム17がパターニングデバイスMAに取り付け自在且つ取り外し自在になることを可能にするように)構成された取付機構22を含んでいてもよい。取付機構22は、パターニングデバイスMAに提供された取付フィーチャ(図示しない)と係合するように構成されている。取付フィーチャは、例えば、パターニングデバイスMAから延びる突起であってもよい。取付機構22は、例えば、その突起と係合してペリクルフレーム17をパターニングデバイスMAに固定する係止部材を備えていてもよい。ペリクルフレーム17は、更なるペリクルフレームを介してマスクに取り付けられてもよい。複数の取付機構及び関連する取付フィーチャが提供されてもよい。取付機構は、ペリクルフレーム17の周りに分配されてもよい(例えばフレームの片側に2つ及びフレームの反対側に2つ)。関連する取付フィーチャがパターニングデバイスMAの周縁周りに分配されてもよい。ペリクル膜19を所望の位置に位置決めするためには、任意の他の取付機構又は位置決め方法が用いられ得ることが理解されるべきである。
【0097】
[00096]
図2には汚染粒子26が概略的に示されている。汚染粒子26はペリクル19に入射したもので、ペリクル19によって保持されている。ペリクル19は汚染粒子をマスクMAのパターン表面24から十分に遠くに保持するので、汚染粒子はリソグラフィ装置LAによって基板上に描像されない。本発明の一実施形態によるペリクルアセンブリは、使用時に実質的に無欠陥のままである(パターニングデバイス上の)マスクパターンが提供されることを可能にし得る(マスクパターンはペリクルによって汚染から保護される)。
【0098】
[00097] ペリクルアセンブリ15は、ペリクル19を、フレーム17を提供する基板の上に直接堆積させることによって構築され得る。基板は、例えば、シリコンウェーハ又はSOIウェーハであってもよい。ペリクル19を定義する膜の堆積後、基板は、ペリクル19を支持するためのフレーム17を形成するべく基板の中央部を除去して外周部のみを残すように、選択的にバックエッチングされ得る。製作プロセスについては更に以下で述べる。
【0099】
[00098] ペリクルは本技術分野において既知であり、典型的には、シリコン、例えばポリシリコンで作製されたコア層を有する。出願人は、種々の他の材料が有益であろうことを認識している。特に、出願人は、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドが有益であろうことを見出している。
【0100】
[00099] ドープされた金属シリサイドは、式Mx(Si)yDzによって記述され得る。ただし、Mは金属を表し、Siはシリコンを表し、Dはドーパントを表す。下付き文字のx,y,及びzは、M,Si,及びDの相対比率をそれぞれ表す。
【0101】
[000100] 金属Mは、様々な金属のうちの1つであり得る。例えば、金属は、Ce,Pr,Sc,Eu,Nd,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,La,Y,及びBeを備えるグループから選択され得る。このグループのうち、好適な金属は、ジルコニウム、モリブデン、又はベリリウムである。モリブデンが最も好適である。
【0102】
[000101] ドーパントDは、様々なドーパントのうちの1つであり得る。例えば、ドーパントは、酸素、炭素、ホウ素、又は窒素であり得る。これらのうち、好適なドーパントは窒素である。
【0103】
[000102] 特に興味深いのは、窒化モリブデンシリサイド(MoSiN)及びモリブデンシリサイド(MoSi)である。モリブデンと、シリコンと、任意選択的には窒素との相対比率は、変更され得る。
【0104】
[000103] 下記では金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドの堆積を折々にMoSiN及びMoSiを参照して説明するが、以下のプロセスは任意の金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドに適用可能であることが理解されるべきである。
【0105】
[000104] 金属シリサイドは放射性材料である。放射性材料は、概して、リソグラフィ装置(又は膜が放射ビーム内にある任意のシステム)内の膜にとって望ましい。放射性材料は、赤外放射を放出し、したがって、放射を吸収することによって得た熱を喪失し得る。上述したように、ペリクルの加熱は問題であり、ペリクルの損傷及び/又は破断に繋がり得る。放射性材料はペリクルの動作温度を有益に低下させることができ、これはひいてはペリクルの寿命を増加させ及び/又はペリクルの損傷を低減させ得る。
【0106】
[000105] 典型的には、ペリクルは高度に放射性ではないが、ルテニウム及び/又はモリブデン及び/又はジルコニウムなどの放射性材料で処理される。例えば、シリコンコア層を有するペリクルは、放射性を高めるように処理されなければならない。これは、ペリクル膜の前面及び/又は裏面に放射性キャッピング層を提供することによって行われてきた。このキャッピング層は概して自立ペリクル上に提供され、例えば、放射性材料がフレーム内に自由に懸垂されたペリクル膜上に堆積される。このプロセスは自立ペリクル上への堆積とも称され得る。このプロセスは、生産ラインの最終的な又は最終に近いプロセスステップとしての時間的な位置により、バックエンドオブライン処理とも称され得る。バックエンドオブライン処理からは有意な製造上の困難が生じる。特に、この時点におけるペリクル膜の自立する性質に起因して、膜は容易に損傷する。また、生産ラインのこの段階で何らかの損傷が発生すれば、プロセス全体が繰り返されなければならず、長い遅延時間に繋がる。よって、バックエンドオブライン処理を削減するか又はなくすのが有益である。
【0107】
[000106] 出願人は、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドなどの放射性材料をペリクルのコア層として使用することによって、放射性を高めるための追加的な処理(及びひいてはバックエンドオブライン処理)が全て削減又は回避され得ることを認識している。
【0108】
[000107] しかしながら、典型的な生産ライン及び典型的なペリクルを製造するための技術は、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドをコア層として有するペリクルを、特にペリクルに必要とされる大量製造能力で、製造するのに適していない。よって、出願人は、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドをコア層として有するペリクルの製造を可能にする製造技術を開発してきた。
【0109】
[000108] 典型的には、ペリクルコア層、例えばシリコンは、化学蒸着(CVD)を用いて堆積される。しかしながら、これはドープされた金属シリサイドの堆積に最適なプロセスではない。これは、部分的には、CVDが化学量論的プロセスであり、したがって材料内のドーパントの量を制御するのが困難であることによる。
【0110】
[000109] 一方、ドープされた金属シリサイドの堆積は、CVDよりもむしろ物理蒸着(PVD)を用いて優先的に実施される。有益なことには、PVDはより良好なプロセス制御を有し、したがってドーパントの量をより制御された手法で制御することができる。さらに、PVDは、ドープされた金属シリサイド及び金属シリサイドの堆積の厚さ、均一性、及び反復性に関してより良好なプロセス制御を有する。PVDの更なる利点は、その堆積の方向性である。PVDは方向的に堆積するので、材料を不要な区域に堆積し得るCVDよりも、堆積の区域が比較的容易に選択され得る。例えば、材料を基板上に堆積させるとき、PVDを用いると基板の1つの面(又は1つの区域のみ)に材料を堆積させるのは比較的簡単であるが、CVDは基板の全ての面に優先的に材料を堆積させるであろう。1つの面又は1つの区域のみへの堆積は原料の使用の削減を表し、これは例えば費用のため及び環境に関する懸念について有利である。材料の不要な区域は製造プロセスにおいて後で除去され得、これはペリクル膜、処理器材、又はリソグラフィ装置の汚染に繋がるおそれがあるので、原料の使用の削減は汚染の削減のためにも有益である。
【0111】
[000110] PVDを用いることにはいくつかの初期の欠点があり、本発明の実施形態の方法はそれらを克服する。
【0112】
[000111] 金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドを備えるペリクル層を基板上に堆積させることには、層がコンフォーマルでないという欠点がある。例えば、基板が何らかの表面テクスチャを有していれば、ペリクル層は表面フィーチャのすべてを完全には覆わず、欠陥が形成され得る。例えば、層内にピンホール(すなわちギャップ)があるかもしれず、深さがより大きい又は小さい区域があるかもしれず、及び/又は「架橋」フィーチャがあって、それにより層の一部と基板との間に空気が存在するかもしれない。架橋フィーチャは基板の2つの近位表面フィーチャの間で特によくあるもので、それらのフィーチャを覆う層は、フィーチャ間の表面には接触せず、フィーチャ間に懸垂される。全ての欠陥は、結果として得られるペリクルフィルムの品質を低減させ得ると共に、例えば破断に繋がり得る。架橋フィーチャは、これらの懸垂された区域が製造の際又は使用中のいずれかに壊れてペリクル膜又は製造器材もしくはリソグラフィ装置の他の区域を汚染し得るので、特に問題である。
【0113】
[000112] もう1つの欠点は、PVDによると、プロセスの方向性に起因して、一度に1つ(又は少数)のウェーハを処理することが典型的に必要とされるという点である。その結果、製造の速さは、従来の方法に比べて相対的に遅い。金属シリサイド及びドープされた金属シリサイドのペリクルの大量製造を可能にするためには、速さが増大されなければならない。
【0114】
[000113] 出願人は、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクル層を有するペリクルが要求される品質及び歩留まりで製造され得る製造プロセスを開発してきた。製造プロセスは、実施形態として、以下で
図3から
図5及び
図7を参照して説明される。
【0115】
[000114] 図面は例示的なものではなく、よって、縮尺に合わせて描かれてはいないことに留意されたい。これは、例えば平面基板に関して、例えばペリクル層の厚さを検討するときに、特に重要である。これは、製造の段階を検討するときにも特に重要である。製造の鍵となる段階が示されるが、これらは本質的に例示的なものであって、図示されるステップの前、最中、間、及び/又は後に、追加的なステップ及びプロセスが行われ得ることが理解されるべきである。また、いくつかの段階は、単一のステップ(例えばエッチングプロセス)として図示されるかもしれないが、実際にはいくつかの連続した小さなプロセスとして実施され、全体としてその単一のステップによって図示される効果を有していてもよい。
【0116】
[000115] 以下のプロセスはエッチングを参照する。エッチングは、材料の一部を除去するために用いられる一般的な製造プロセスである。多層材料においては、下にある層が露出されるように、選択エッチングが外層の一部を除去することができる。エッチングは、レジスト、例えばフォトレジストを提供すること、及びそのレジストをパターニングすることを備え得る。本発明はレジストの性質によって特に限定されるものではなく、任意の適当なレジストが用いられ得る。レジストは、下にある層をエッチングから保護するのに役立つ。よって、レジストのパターン付与は、スタックのうち後続のエッチングステップによって除去される区域を定義するのに役立つ。エッチング液は、例えばリン酸及び/又はフッ化水素酸などの化学エッチング液であり得る。
【0117】
[000116]
図3は、本発明の一実施形態によるペリクルアセンブリ15の製造の段階を概略的に図示している。ペリクルアセンブリ(及び原版ステージ)が断面で図示されている。
【0118】
[000117] 平面基板30が提供され、これは単に基板30と称され得る。基板30は、例えば、シリコンウェーハであってもよい。基板30は、例えば正方形、円形、又は長方形などの形状を有する。基板30の形状は特に限定されないが、恐らくは円形であろう。なぜなら、これが最も一般的に入手可能な形状であるからである。基板30のサイズは特に限定されない。
【0119】
[000118] 第1の犠牲層31が、例えば基板30上に堆積させることによって、提供される。基板30及び犠牲層31は、併せてスタックと称され得る。第1の犠牲層31は、好適には基板30を実質的に包囲するが、実施形態によっては、基板30を部分的にのみ包囲し得る。第1の犠牲層は酸化物、例えば酸化シリコン又は熱酸化物を備え得る。第1の犠牲層31は、ペリクル層を受ける準備のために実質的に平坦な表面を有益に提供する。追加的又は代替的には、第1の犠牲層31の選択に応じて、ペリクル層を受ける準備のために、実質的に清浄な及び/又はピンホールのない及び/又は均一な表面を有益に提供することができる。つまり、第1の犠牲層は表面トポロジーを制御する。
【0120】
[000119] ペリクル膜19が第1の犠牲層31の面上に提供される。つまり、ペリクル膜19はスタックの面上に提供される。ペリクル膜19は1つ以上のペリクル層を備え得る。多層ペリクル膜のいくつかの例示的な実施形態は更に以下で
図5を参照して説明される。
図3に示されるペリクル膜19は、ドープされた金属シリサイドを備える単一のペリクル層を備えている。ペリクル層は、ペリクル膜19のコア層を形成する。
【0121】
[000120] 先に述べたように、金属シリサイド及びドープされた金属シリサイドは物理蒸着(PVD)によって堆積され得る。この手法による金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドの堆積は非コンフォーマルなコーティングを生じるので、ペリクル膜19の下(つまり、ペリクル層が堆積される表面)には平滑及び/又は清浄な(すなわち汚染物質粒子の数が少ない/密度が低い)表面を提供することが重要である。一方、粗い及び/又は汚染された表面は、上記で述べたように、ペリクル層の穴及び/又は膜及び他の器材の汚染に繋がり得る。
【0122】
[000121] 追加的又は代替的には、ペリクル膜19の下の表面は、表面トポロジーを有益に制御することによって最適化され得る。よって、平滑及び/又は清浄な表面に加えて又は代えて、表面は、有益なことには、少数のピンホール及び/又は均一な層厚を有し得る。
【0123】
[000122] 第1の犠牲層31の提供は、基板30上のコーティングに比べて最適化された表面を有益に提供することができる。第1の犠牲層31はより優れた平滑性を提供するように調整されてもよく、例えば、より厚い第1の犠牲層31がより滑らかな表面を提供し得る。第1の犠牲層31は、比較的汚染物質粒子のない表面及び/又は均一な層厚及び/又は少数のピンホールを提供するように調整されてもよい。代替的(又は追加的)には、第1の犠牲層31とペリクル膜19との間に追加的な犠牲層が追加されてもよい。
【0124】
[000123] ペリクル膜19の堆積後、基板30及び第1の犠牲層31は、ペリクル膜19を支持するためのフレーム17を形成するべく基板及び犠牲層の中央部を除去して外周部のみを残すように、選択的にバックエッチングされ得る。したがって、フレーム17は基板30の一部と第1の犠牲層31の一部とを備え、第1の犠牲層31は基板30とペリクル膜19との間に配設される。
【0125】
[000124] ペリクル層はドープされた金属シリサイドを備えており、その有益性のいくつかは上記で述べられている。特に、ペリクル層は放射性であり、これはバックエンドオブライン処理、つまり、ペリクルアセンブリ15のフレーム17を形成するための基板30及び犠牲層31のバックエッチングに続く追加的なプロセスステップの必要をなくす。このプロセスをなくすことは、ペリクル膜19への損傷のおそれを低減させると共に、単一のペリクルアセンブリ15の製造の速さを増大させる。速さが増大されるのは、部分的には、バックエンドオブライン処理がなくなるからである。速さが増大されるのは、部分的には、(前面及び裏面の両方が覆われなければならない既知のシリコンペリクルにとっては有益な2つの放射性層堆積ステップとは対照的に)1つの放射性層堆積ステップしか必要とされないからでもある。このことは特に重要である。なぜなら、典型的な処理ラインにおいては、放射性層堆積ステップはペリクルアセンブリの処理時間を大きく増大させる「ボトルネック」ツールとなり得るため、放射性層堆積ステップの数を低減させると、ペリクルアセンブリの処理時間を大きく短縮することができるからである。
【0126】
[000125]
図3は1つの犠牲層を有するスタックを示しているが、追加的な犠牲層が提供されてもよい。任意の数、例えば1つ又は4つの追加的な犠牲層が提供され得る。
図4は、2つの追加的な犠牲層が提供される場合の、本発明の一実施形態によるペリクルアセンブリ15の製造の段階を概略的に図示している。つまり、基板30とペリクル膜19との間に3つの犠牲層31a,31b,31cが提供される。
【0127】
[000126] 先の実施形態と同様に、平面基板30が提供され、これは単に基板30と称され得る。基板30は、例えば、シリコンウェーハであってもよい。基板30は、例えば正方形、円形、又は長方形などの形状を有する。基板30の形状は特に限定されないが、恐らくは円形であろう。なぜなら、これが最も一般的に入手可能な形状であるからである。基板30のサイズは特に限定されない。
【0128】
[000127] 第1の犠牲層31aが、例えば基板30上に堆積させることによって、提供される。第1の犠牲層31aは、好適には基板30を実質的に包囲するが、実施形態によっては、基板30を部分的にのみ包囲し得る。第1の犠牲層31aは酸化物、例えば酸化シリコン又は熱酸化物を備える。
【0129】
[000128] 次に第2の犠牲層31bが、例えば第1の犠牲層31a上に堆積させることによって、提供される。第2の犠牲層31bは、好適には第1の犠牲層31aを実質的に包囲するが、実施形態によっては、第1の犠牲層31aを部分的にのみ包囲し得る。第2の犠牲層31bはシリコンの一種、例えばポリシリコン又はドープされたシリコン、好適にはインシチュドープポリシリコン(ISDP)を備える。有利なことには、ISDPを備える第2の犠牲層31bは、比較的低いラフネス及び少ない突出を有して形成され得る。
【0130】
[000129] 異なる材料(この場合、酸化物とシリコン)から形成された隣接する犠牲層(例えば第1及び第2の犠牲層31a,31b)は、所与のエッチング動作に関して異なる速度でエッチングするであろう。つまり、ある特定のエッチング動作に関して、第1の犠牲層31aは素早くエッチングし得る一方で、第2の犠牲層31bは比較的遅くエッチングし得るか、又は全くエッチングしないかもしれない。このようにすれば、異なる材料から形成された隣接する犠牲層は、1つの層に、所与のエッチング動作についてのエッチング止めを有利に形成させることができる。
【0131】
[000130] 第3の犠牲層31cが、例えば第2の犠牲層31b上に堆積させることによって、提供される。第3の犠牲層31cは、好適には第2の犠牲層31bを実質的に包囲するが、実施形態によっては、第2の犠牲層31bを部分的にのみ包囲し得る。第3の犠牲層31cは酸化物、例えば酸化シリコン又は熱酸化物の薄い層を備える。薄いとは、第3の犠牲層31cの厚さがペリクル膜19の厚さよりも実質的に小さいという意味である。第3の犠牲層31cは、薄い酸化物層31cとして知られ得る。酸化物の薄い層は、本技術分野において既知のように、周知の層厚で容易に成長される。よって、薄い酸化物層31cは、低い表面ラフネスを有して形成され得る。したがってこれは、ペリクル膜19を堆積させるための平滑な表面を提供する。
【0132】
[000131] この段階では基板30並びに第1、第2、及び第3の犠牲層31a,31b,31cがスタックと称され得る。
【0133】
[000132] ペリクル膜を堆積させる前に、犠牲層31a,31b,31cは、後で縁取りになる区域を定義するためにパターニングされ、それによって最終的なペリクルアセンブリの形状が定義される。つまり、スタックの面が、最終的なペリクルアセンブリの形状を定義するためにパターニングされる。この面は、スタックの「裏」と称されてもよく、ペリクル膜19を受ける面とは反対の面として定義される。このプロセスはパターニングプロセスとして知られ得る。このパターニングプロセスは、任意の適当なレジストとエッチングプロセスとを用いて実施され得る。このプロセスにあたって、基板は器材によって取り扱われてもよく、例えば定位置にクランプされ及び/又は反転され得る。そのような取り扱いは、基板の1つ以上の表面又は関連する犠牲層を損傷させ又は汚染するおそれがある。ペリクル膜19を堆積させる前にこのパターニングプロセスを実施することによって、ペリクル膜19への損傷のおそれが低減され得る。
図4には特定のパターンが示されているが、ペリクルアセンブリの所望の最終的な形状に応じて、任意の代替的なパターンが生成され得ることは理解されるべきである。
【0134】
[000133] パターニングプロセスに続き、第3の犠牲層31cの面上にペリクル膜19が提供される。ペリクル膜19は1つ以上のペリクル層を備え得る。
図4に示されるペリクル膜19は、単一のペリクル層を備える。ペリクル層はドープされた金属シリサイドを備えており、その有益性のいくつかは上記で述べられている。本実施形態又は他の実施形態のペリクル層は、代替的には金属シリサイドを備え得る。
【0135】
[000134] 1つ以上のキャッピング層がペリクル層を伴っていてもよい。これらのキャッピング層は、将来のエッチングプロセスのためのエッチング止めとして提供され得る。代替的又は追加的には、これらのキャッピング層は、ペリクル層又はペリクル膜にかかる応力の量を制御するように提供され得る。キャッピング層は、例えば、酸化物を備え得る。キャッピング層は、有益なことには、第3の犠牲層31cの応力に匹敵する応力を有して堆積され得る。キャッピング層は、有益なことには、第3の犠牲層31cと同様のエッチング時間を有するように構成され得る。
【0136】
[000135] ペリクル膜19の堆積後、基板30、第1の犠牲層31a、第2の犠牲層31b、及び第3の犠牲層31cの更なる部分が、基板30の一部(及び犠牲層31a,31b,31cの一部)を除去してペリクル膜19を支持するためのフレーム17を形成するべく外周部のみを残すように、選択的にバックエッチングされ得る。したがって、フレーム17は、基板30の一部と、第1の犠牲層31aの一部と、第2の犠牲層31bの一部と、第3の犠牲層31cの一部とを備える。フレーム17は、ペリクル膜19と当接する前に、基板30、第1の犠牲層31a、第2の犠牲層31b、及び第3の犠牲層31cの一部の順のスタックを備えると言うことができる。本実施形態を参照して上記で述べられた材料のうちいくつかを考え合わせた一例においては、フレーム17は、ドープされた金属シリサイドのペリクル膜と当接する前に、シリコン、酸化物、ISDP、及び薄い酸化物の順のスタックを備え得る。代替的には、フレーム17は、ドープされた金属シリサイドのペリクル膜と当接する前に、シリコン、酸化物、シリコン、及び薄い酸化物の順のスタックを備え得る。犠牲層の数及び組成に応じて、フレーム30は、それに対応する順の層のスタックを備え得ることが理解されるべきである。
【0137】
[000136] 犠牲層の組成の選択は、ペリクルアセンブリの処理時間の短縮に追加的に役立ち得る。例えば、いくつかのプロセスは、製造プロセス、例えば窒化シリコン又はISDPの形成において「ボトルネック」を構成する。有益なことには、これらの材料は、本発明のいくつかの実施形態からは省かれてもよく、それによって処理時間が短縮される。
【0138】
[000137] 上記の例においては、単一のドープされた金属シリサイドのペリクル層を備えるペリクル膜の形成のためのプロセスが説明されている。しかしながら、ペリクル膜は、複数のペリクル層を備え得る。
図5はそのようなペリクル膜の例示的な一実施形態を図示するものであって、3つのペリクル層50a,50b,50cを備えるペリクル膜19を有するペリクルアセンブリ15の製造の段階を概略的に図示している。
【0139】
[000138] 先の実施形態と同様に、平面基板30が提供され、これは単に基板30と称され得る。基板30は、例えば、シリコンウェーハであってもよい。基板30は、例えば正方形、円形、又は長方形などの形状を有する。基板30の形状は特に限定されないが、恐らくは円形であろう。なぜなら、これが最も一般的に入手可能な形状であるからである。基板30のサイズは特に限定されない。
【0140】
[000139] 第1の犠牲層31が、例えば基板30上に堆積させることによって、提供される。基板30及び第1の犠牲層31はスタックと称され得る。第1の犠牲層31は、好適には基板30を実質的に包囲するが、実施形態によっては、基板30を部分的にのみ包囲し得る。第1の犠牲層31は酸化物、例えば酸化シリコン又は熱酸化物を備え得る。第1の犠牲層31は、ペリクル層を受ける準備のために実質的に平坦な表面を有益に提供する。図示されてはいないが、ペリクル層を堆積させる前に、追加的な犠牲層も提供され得る。
図4に示される実施形態と同様、犠牲層31は、ペリクル層の堆積の前にパターニングされる。このパターニングプロセスは、後で縁取りになる区域を定義するために実施され、それによって最終的なペリクルアセンブリの形状が定義される。しかしながら、ペリクル層の堆積の前のこのパターニングプロセスは、ペリクル層への損傷を低減させるためには有益であるが、要件ではないことに留意すべきである。
【0141】
[000140] 第1の犠牲層31の上には第1のペリクル層50aが提供される。第1のペリクル層50aは金属シリサイドを備える。第1のペリクル層50aの上には第2のペリクル層50bが提供される。第2のペリクル層50bはドープされた金属シリサイドを備える。第2のペリクル層の上には第3のペリクル層50cが提供される。第3のペリクル層50cは金属シリサイド、例えば第1のペリクル層50aを備えるのと同じ金属シリサイドを備える。第1、第2、及び第3のペリクル層50a,50b,50cはペリクル膜19を形成する。異なる数のペリクル層、例えば2つのペリクル層又は5つのペリクル層が、同様の手法で堆積されて、多層ペリクル膜を形成してもよいことが理解されるべきである。
【0142】
[000141] 第1、第2、及び第3のペリクル層50a,50b,50cの堆積後、基板30及び第1の犠牲層31は、ペリクル膜19を支持するためのフレームを形成するべく基板及び犠牲層の一部を除去して外周部のみを残すように、選択的にバックエッチングされ得る。したがって、フレーム17は基板30の一部と第1の犠牲層31の一部とを備え、第1の犠牲層31は基板30とペリクル膜19との間に配設される。
【0143】
[000142] 上記のプロセスは、ペリクルアセンブリ15の製造を説明しているが、スタック上(例えば1つ以上の犠牲層を有する基板30上)に堆積されるペリクル膜19の製造も説明していることが理解されるべきである。場合によっては、例えばこれらのエッチングステップが後日又は異なる場所で実施されるのであれば、縁取りを定義することなしに、スタック上にペリクル膜のみを製造するのが有益であろう。
【0144】
[000143] ペリクル製造においては、最終的なエッチングステップ、例えばペリクル膜を支持する外周部のみを残すように材料をエッチング除去することが、結果として得られるペリクル膜の品質に関して決定的であり得る。このエッチングステップは、一般的にはウェットエッチングを用いて、例えば緩衝酸化物エッチング(BOE)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、又はフッ化水素酸(HF)などの一般的なエッチング液を用いて実施される。
【0145】
[000144] 上記のプロセスは、ペリクル膜19の下(すなわちペリクル膜19と基板30との間)に1つ以上の犠牲層を提供することを説明している。しかしながら、例えば追加的なプロセスステップの際にペリクル膜19の上面を保護するためには、ペリクル膜19の上に(すなわち、ペリクル膜19の、基板30に対して遠位側の面に)犠牲層を提供するのが有益であろう。
【0146】
[000145] ペリクル膜の上及び下の両方に犠牲層を提供するのが有益であり得る。ペリクル膜の上及び下の両方に犠牲層を提供することによって、並びにペリクル膜の上の犠牲層とペリクル膜の下の犠牲層との厚さを一致させることによって、オーバーエッチングが緩和され得る。例えば、ペリクル膜の上の犠牲層と下の犠牲層とで厚さが一致していれば、上の犠牲層は下の犠牲層と同じ速さでエッチングするであろう。これは、異なる速さでエッチングし、したがって1つの層がエッチング不足又はオーバーエッチングになり得る、不揃いの層とは対照的である。
【0147】
[000146] 「上」及び「下」は、図面に関して提示された配向で用いられる相対的な用語であることが理解されるべきである。ペリクルアセンブリ及び原版ステージはどのようにも配向され得るので、これらの用語は限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0148】
[000147]
図6は、本発明の一実施形態によるペリクルアセンブリ15の製造の段階を概略的に図示している。ペリクルアセンブリ(及び原版ステージ)が断面で図示されている。
【0149】
[000148] 平面基板30が提供され、これは単に基板30と称され得る。基板30は、例えば、シリコンウェーハであってもよい。基板30は、例えば正方形、円形、又は長方形などの形状を有する。基板30の形状は特に限定されないが、恐らくは円形であろう。なぜなら、これが最も一般的に入手可能な形状であるからである。基板30のサイズは特に限定されない。
【0150】
[000149] 第1の犠牲層31が、例えば基板30上に堆積させることによって、提供される。基板30及び第1の犠牲層31はスタックと称され得る。第1の犠牲層31は、好適には基板30を実質的に包囲するが、実施形態によっては、基板30を部分的にのみ包囲し得る。第1の犠牲層31は酸化物、例えば酸化シリコン又は熱酸化物を備え得る。
【0151】
[000150] 第1の犠牲層31に隣接して第2の犠牲層60が提供される。これは更新されたスタックを形成し、そのスタックは、平面基板30と、第1の犠牲層31と、第2の犠牲層60とを備えている。本実施形態において、第2の犠牲層60はアモルファスカーボンを備える。そのようなアモルファスカーボン層60はペリクル膜19を提供する前に提供され得るが、層は異なる配列で提供されてもよいことが理解されるであろう。
【0152】
[000151] アモルファスカーボン層60の面上にペリクル膜19が提供される。ペリクル膜19は1つ以上のペリクル層を備え得る。
図6に示されるペリクル膜19は、ペリクル膜19を形成する単一のペリクル層を備えている。
【0153】
[000152] ペリクル膜19の堆積後、基板30及び第1の犠牲層31は、ペリクル膜19及びアモルファスカーボン層60を支持するためのフレームを形成するべく基板及び犠牲層の中央部を除去して外周部のみを残すように、選択的にバックエッチングされる。ペリクル膜19及びアモルファスカーボン層60を支持するこのフレームは、プリアセンブリ62として知られ得る。
【0154】
[000153] 最後に、ペリクル膜19を支持するためのフレーム17を形成するべく外周部のみを残すように、アモルファスカーボン層60の一部が除去されてもよく、それによってペリクルアセンブリ15が形成される。したがって、フレーム17は、基板30の一部と、第1の犠牲層31の一部と、アモルファスカーボン層60の一部とを備え、アモルファスカーボン層60は第1の犠牲層31とペリクル膜19との間に配設される。アモルファスカーボン層60を除去するためには、いくつかのプロセス、例えばプラズマ処理が、例えば水素ラジカルなどのフリーラジカルを使用して、用いられ得る。実際、アモルファスカーボンを除去するためには任意の適当な方法が用いられてもよく、本発明は用いられる特定の方法によって特に限定されるものではない。
【0155】
[000154] アモルファスカーボンは、例えば緩衝酸化物エッチング(BOE)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、及びフッ化水素酸(HF)であるがこれらに限定されないいくつかの一般的なエッチング液に対して、高度にエッチング耐性である。アモルファスカーボンは、例えばプラズマ処理を用いることによって、ペリクル膜19を損傷させることなく、プリアセンブリ62から除去され得る。プラズマ処理はエッチングに比べて迅速なプロセスであるから、アモルファスカーボン層の使用及びそれに続くプラズマ処理を用いた除去は、有益なことには、ペリクル製造プロセスにおける時間の節約を意味する。
【0156】
[000155] アモルファスカーボン層60の提供はオーバーエッチングの可能性を有意に低減させ、それによって、エッチングステップにおけるペリクル膜19への損傷のおそれが低減される。例えば、基板と犠牲層との中央部を選択的に除去するためのエッチングステップにあたって、アモルファスカーボン層60は、エッチング液がペリクル膜のいずれかの部分を除去する(すなわちオーバーエッチングする)可能性を低減又は緩和することができる。ペリクル膜の損傷又は破断の可能性が低減又は緩和されるので、これは、ペリクル膜製造における歩留まりの増加をもたらす。また、アモルファスカーボン層のエッチングへの耐性によって、ペリクル膜の無傷の状態を危険にさらすことなく、隣接する層を、より積極的及び/又は迅速なエッチングプロセスを用いて除去することができる。したがって、そのようなエッチングプロセスはアモルファスカーボン層なしの場合よりも素早く実施されることができ、有益なことには、ペリクル製造プロセスにおける時間の節約を意味する。
【0157】
[000156] アモルファスカーボン層の使用は、他の犠牲層、例えば組成及び/又は厚さなどといった犠牲層の特性の選択において、より優れた柔軟性も提供する。犠牲層の選択の柔軟性はアモルファスカーボンのエッチング止め能力によって提供され、それによって、オーバーエッチングを低減させるために以前は必要とされていた他の犠牲層に対する技術及び設計の制約が低減される。
【0158】
[000157] アモルファス層における使用は、その高いエッチング耐性によって、ペリクル層の材料の選択においても、より優れた柔軟性を提供する。アモルファスカーボン層などのエッチング停止層の使用は、金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクル層と組み合わせて使用されるとき、特に有益である。金属シリサイド及びドープされた金属シリサイドはオーバーエッチングに特に敏感であるから、例えばアモルファスカーボン層を用いることによって、オーバーエッチングの可能性を低減させることは有益である。また、アモルファスカーボン層などのエッチング停止層は、容易にウェットエッチングされる他の材料、例えばジルコニウムと一緒に使用されると、特に有益である。
【0159】
[000158] アモルファスカーボン層60は、
図6に示されるように、ペリクル膜19の下に提供され得る。ペリクル膜の上にアモルファスカーボン層が提供されてもよく、これはペリクル膜19の最上層をオーバーエッチングから、並びに他のプロセスステップにおける他の潜在的な損傷から保護し得る。アモルファスカーボン層は更に、ペリクル製造プロセスの他の段階において、他の表面を保護するため及び/又は他の表面のオーバーエッチングを低減させるために用いられ得る。
【0160】
[000159] また、アモルファスカーボンは効率的な拡散バリアを提供する。拡散バリアは、隣接する層間での材料拡散のおそれを低減させる。例えば、酸化物を備える第1の犠牲層を用いるときには、酸素がペリクル膜内へと拡散することが可能である。拡散は、プリアセンブリが加熱されるとき、例えばペリクル製造において一般的な酸化物の熱処理の際又はアニールプロセスの際に、増大し得る。
【0161】
[000160] ペリクル層内への拡散は低減させるのが有益であろう。例えば、ペリクル膜のEUV透過率を最適化することは有益であり得るが、拡散された材料はEUV透過率を低下させ得る。具体的な一例において、酸化物を備える犠牲層から金属シリサイドを備えるペリクル層内への酸素の拡散は金属酸化物を形成するかもしれず、これは金属酸化物を有さない金属シリサイドと比べて低減されたEUV透過率を有する。よって、犠牲層とペリクル層との間の拡散バリア、例えばアモルファスカーボン層は、ペリクル膜のEUV透過率を最適化し得る。
【0162】
[000161] 酸化物の犠牲層と金属シリサイドのペリクル層との間にアモルファスカーボンの層を提供することによって、犠牲層とペリクル層との間での元素の拡散が低減される。アモルファスカーボンの拡散バリア層は、層間の拡散を、事実上無視できるレベルまで低減させ得る。つまり、加熱の最中又は後でさえも、拡散バリアを跨いだ拡散は事実上起こらない。また、アモルファスカーボン層からペリクル膜内への炭素の拡散はない。
【0163】
[000162] また、アモルファスカーボン層60は応力制御要素として用いられ得る。ペリクル膜19に隣接する(1つ又は複数の)層の特性を制御することによって、製造の際のペリクル膜19における応力の量は低減され得る。アモルファスカーボン層は、応力低減要素として作用して製造の際にペリクル膜19にかかる応力の量を低減させることができ、又は、例えば予応力付与要素として応力を印加することができる。
【0164】
[000163] アモルファスカーボン層の厚さは、拡散の量を制御するように、並びに応力制御など層の他の物理的な性質を最適化するように、選択され得る。例えば、ペリクル膜よりも実質的に薄い厚さを有するアモルファスカーボン層は、拡散に対する効率的なバリアを有益に提供し得ると共に、エッチング停止層を提供し、且つ有益なことにはペリクル層に予応力を与える。
【0165】
[000164] 別の一実施形態においては、アモルファスカーボン層が、2つのペリクル層の間のペリクルコア層として用いられる。例えば、ペリクル膜は、金属シリサイド層、アモルファスカーボン層、及び第2の金属シリサイド層の順のセットを備え得る。有益なことには、本実施形態のアモルファスカーボン層は、ペリクル膜の張力の量を有益に調整し得る。ペリクル膜の張力を制御すると、ペリクル膜におけるたるみが低減され得る。
【0166】
[000165]
図7aから
図7iは、本発明の一実施形態によるペリクルアセンブリ15の製造の段階を概略的に図示している。ペリクルアセンブリ(及び原版ステージ)が断面で図示されている。全ての中間段階が図示されているわけではないことに留意されたい。
【0167】
[000166] 先の実施形態と同様、
図7aに示されるように、平面基板30が提供され、これは単に基板30と称され得る。基板30は、例えば、シリコンウェーハであってもよい。基板30は、例えば正方形、円形、又は長方形などの形状を有する。基板30の形状は特に限定されないが、恐らくは円形であろう。なぜなら、これが最も一般的に入手可能な形状であるからである。基板30のサイズは特に限定されない。
【0168】
[000167] 第1の犠牲層31aが、例えば基板30上に堆積させることによって、提供される。第1の犠牲層31aは、好適には基板30を実質的に包囲するが、実施形態によっては、基板30を部分的にのみ包囲し得る。第1の犠牲層31aは、好適には酸化物、例えば酸化シリコン又は熱酸化物を備える。第1の犠牲層31aは、二酸化シリコンを備えていてもよく、又は本質的に二酸化シリコンから成っていてもよい。
【0169】
[000168] 次に第2の犠牲層31bが、例えば第1の犠牲層31a上に堆積させることによって、提供される。第2の犠牲層31bは、好適には第1の犠牲層31aを実質的に包囲するが、実施形態によっては、第1の犠牲層31aを部分的にのみ包囲し得る。第2の犠牲層31bはシリコンの一種、例えばポリシリコン又はドープされたシリコン、好適にはインシチュドープポリシリコン(ISDP)を備える。有利なことには、ISDPを備える第2の犠牲層31bは、比較的低いラフネス及び少ない突出を有して形成され得る。
【0170】
[000169] 異なる材料(この場合、酸化物とシリコン)から形成された隣接する犠牲層(例えば第1及び第2の犠牲層31a,31b)は、所与のエッチング動作に関して異なる速度でエッチングするであろう。つまり、ある特定のエッチング動作に関して、第1の犠牲層31aは素早くエッチングし得る一方で、第2の犠牲層31bは比較的遅くエッチングし得るか、又は全くエッチングしないかもしれない。このようにすれば、異なる材料から形成された隣接する犠牲層は、1つの層に、所与のエッチング動作についてのエッチング止めを有利に形成させることができる。
【0171】
[000170] 第1及び第2の犠牲層31a,31bは、後で縁取りになる区域を定義するためにパターニングされ、それによって最終的なペリクルアセンブリの形状が定義される。つまり、スタックの面が、最終的なペリクルアセンブリの形状を定義するためにパターニングされる。この面は、スタックの「裏」と称されてもよく、ペリクル膜19を受ける面とは反対の面として定義される。このプロセスはパターニングプロセスとして知られ得る。このパターニングプロセスは、任意の適当なレジストとエッチングプロセスとを用いて実施され得る。このプロセスにあたって、基板は器材によって取り扱われてもよく、例えば定位置にクランプされ及び/又は反転され得る。そのような取り扱いは、基板の1つ以上の表面又は関連する犠牲層を損傷させ又は汚染するおそれがある。ペリクル膜19を堆積させる前にこのパターニングプロセスを実施することによって、ペリクル膜19への損傷のおそれが低減され得る。
図7には特定のパターンが示されているが、ペリクルアセンブリの所望の最終的な形状に応じて、任意の代替的なパターンが生成され得ることは理解されるべきである。
【0172】
[000171] 第3の犠牲層31cが、例えばパターニングプロセスに続いて第2の犠牲層31b上に堆積させることによって、提供される。第3の犠牲層31cは、好適には第2の犠牲層31bを実質的に包囲するが、実施形態によっては、第2の犠牲層31bを部分的にのみ包囲し得る。第3の犠牲層31cは酸化物、例えば酸化シリコン又は熱酸化物の薄い層を備える。酸化物層は、本技術分野において既知の化学的及び/又は熱的手段によって成長され得る。薄いとは、第3の犠牲層31cの厚さがペリクル膜19の厚さよりも実質的に小さいという意味である。第3の犠牲層31cは、薄い酸化物層31cとして知られ得る。酸化物の薄い層は、本技術分野において既知のように、周知の層厚で容易に成長される。よって、薄い酸化物層31cは、低い表面ラフネスを有して形成され得る。したがってこれは、ペリクル膜19を堆積させるための平滑な表面を提供する。
図7bは、スタックの裏のパターニング及びそれに続く第3の犠牲層31cの提供の後の、本発明に従って作製されたスタックを示す。
【0173】
[000172] この段階では基板30並びに第1、第2、及び第3の犠牲層31a,31b,31cがスタックと称され得る。
【0174】
[000173]
図7cに示されるように、パターニングプロセス及びそれに続く第3の犠牲層31cの提供の後、ペリクル膜19が第3の犠牲層31cの面上に提供される。ペリクル膜19は1つ以上のペリクル層を備え得る。
図7に示されるペリクル膜19は、単一のペリクル層を備える。ペリクル層は、有益性のいくつかが上記で述べられているドープされた金属シリサイド、好適にはMoSiN層を備えている。本実施形態又は他の実施形態のペリクル層は、代替的には金属シリサイドを備え得る。ペリクル膜19は、本技術分野において既知の任意の手段によって提供され得る。
【0175】
[000174] 1つ以上のキャッピング層がペリクル層を伴っていてもよい。これらのキャッピング層は、将来のエッチングプロセスのためのエッチング止めとして提供され得る。代替的又は追加的には、これらのキャッピング層は、ペリクル層又はペリクル膜にかかる応力の量を制御するように提供され得る。キャッピング層は、例えば、酸化物を備え得る。キャッピング層は、有益なことには、第3の犠牲層31cの応力に匹敵する応力を有して堆積され得る。キャッピング層は、有益なことには、第3の犠牲層31cと同様のエッチング時間を有するように構成され得る。
【0176】
[000175] 1つ以上のキャッピング層は、酸化物層として提供されてもよく、これはTEOSに由来し得る。ペリクル膜19の上への1つ以上のキャッピング層の提供は任意である。スタックは、1つ以上のキャッピング層の提供があっても又はなくても、アニールされ得る。スタックのアニールは、スタック内の応力を好適に制御する。スタックは、本技術分野において既知の条件下でアニールされてもよく、本発明は用いられるアニール条件によって特に限定されはしない。
【0177】
[000176] スタックのアニールの後、1つ以上のキャッピング層並びに第3の犠牲層31cの一部は、
図7dに示されるように、エッチングされ得る。1つ以上のキャッピング層が提供されない場合には、エッチング除去されるのは自然酸化物層であろう。
図7dに示されるように、これは、第3の犠牲層31cの上に提供されたペリクル膜19を有するスタックを提供する。よって、ペリクル膜19の表面上又は上にある犠牲又はキャッピング層はこの段階で除去され、ペリクル膜19の下に配設された第3の犠牲層31cは保持される
【0178】
[000177] その後、スタックの前が、最終的なペリクルアセンブリの寸法を定義するようにパターニングされ得る。スタックの前は、本技術分野において既知の任意の適当な手段によってパターニングされてもよく、本発明は用いられるパターニング手段によって特に限定されはしない。
【0179】
[000178] スタックの前がパターニングされると、保護層70が提供され得る。保護層は、本技術分野において既知であるように、ペリレンなどの高分子材料であってもよい。
図7eは、スタックの前がパターニングされて保護層70が提供されたスタックを示す。
【0180】
[000179] 保護層70が提供されると、所謂キャビティエッチングプロセスが行われ得る。キャビティエッチングプロセスは、コア30、第1の犠牲層31a、及び第2の犠牲層31bから材料を除去する。
図7fは、ペリクル膜19の下にある第3の犠牲層31cの材料がキャビティエッチングプロセスの際に除去されない、本発明の一実施形態を示す。代替的に、
図7hは、ペリクル膜19の下にある第3の犠牲層31cの材料がキャビティエッチングプロセスの際に除去される、本発明の一実施形態を示している。
【0181】
[000180] よって、基板30、第1の犠牲層31a、第2の犠牲層31bの一部と、任意選択的には第3の犠牲層31cの一部とが、基板30の一部(及び必要に応じて犠牲層31a,31b,31cの一部)を除去してペリクル膜19を支持するためのフレーム17を形成するべく外周部のみを残すように、選択的にバックエッチングされる。したがって、フレーム17は、基板30の一部と、第1の犠牲層31aの一部と、第2の犠牲層31bの一部と、第3の犠牲層31cの一部とを備える。第3の犠牲層は、キャビティエッチングステップの際に第3の犠牲層31cをエッチングすることが選択されるか否かに応じて、ペリクル膜に広がってもよく又は広がらなくてもよい。フレーム17は、ペリクル膜19と当接する前に、基板30、第1の犠牲層31a、第2の犠牲層31b、及び第3の犠牲層31cの一部の順のスタックを備えると言うことができる。本実施形態を参照して上記で述べられた材料のうちいくつかを考え合わせた一例においては、フレーム17は、ドープされた金属シリサイドのペリクル膜、好適にはMoSiNと当接する前に、シリコン、酸化物、ISDP、及び薄い酸化物の順のスタックを備え得る。代替的には、フレーム17は、ドープされた金属シリサイドのペリクル膜と当接する前に、シリコン、酸化物、シリコン、及び薄い酸化物の順のスタックを備え得る。犠牲層の数及び組成に応じて、フレーム30は、それに対応する順の層のスタックを備え得ることが理解されるべきである。
図7gは第3の犠牲層31cがペリクル膜19に広がるペリクルアセンブリの一実施形態を示しており、その一方で
図7iは第3の犠牲層31cがペリクル膜19に広がらない一実施形態を示している。
【0182】
[000181] 犠牲層の組成の選択は、ペリクルアセンブリの処理時間の短縮に追加的に役立ち得る。例えば、いくつかのプロセスは、製造プロセス、例えば窒化シリコン又はISDPの形成において「ボトルネック」を構成する。有益なことには、これらの材料は、本発明のいくつかの実施形態からは省かれてもよく、それによって処理時間が短縮される。
【0183】
[000182]
図8は、
図7に示される方法の例示的なフローチャートである。第1の段階100において、第1及び第2の犠牲層がコアに提供される。コアは好適にはc-Siであるが、シリコンの他の同素体及び他の材料も用いられ得る。第1の犠牲層は好適には酸化シリコン、好適には二酸化シリコンである。第2の犠牲層は好適にはシリコン系であり、ISDPであってもよい。コア、第1の犠牲層、及び第2の犠牲層は、スタックと称され得る。段階200において、スタックの裏がパターニングされ得る。これは任意の適当な手段によって行われてもよく、最終的なアセンブリにおいてペリクル膜を支持するフレームの寸法を定義することによって最終的なペリクルアセンブリの形状を定義するのに役立つ。段階300において、第3の犠牲層として知られる更なる酸化物層が、パターニングされたスタック上に提供される。酸化物層は、化学酸化又は熱酸化など、任意の既知の手段によって形成され得る。段階400において、ペリクル膜を形成する材料が、パターニングされたスタックの表面上に堆積され又は他のやり方で提供される。段階500は任意であり、パターニングされたスタック上に更なる犠牲層/キャッピング層を提供することを備える。これはトップ酸化物と称され得る。段階600において、スタックはアニールされる。アニールのステップは、段階500によって提供される特別な保護の必要なしに実施することが可能であることがわかっている。段階700において、トップ酸化物層(存在すれば)及び/又は任意の自然酸化物層が除去され得る。トップ酸化物又は自然酸化物層(存在する場合)の除去に続き、段階800において、スタックの前側が、ペリクル膜の形状及び寸法を定義するようにパターニングされる。段階800におけるパターニングに続き、保護層、好適にはペリレンなどの高分子保護材料が、ペリクル膜層を保護するために提供される。その後、段階900においてキャビティエッチングステップが実施され、裏側からコアをエッチング除去して、ペリクルアセンブリのフレームを形成する。任意選択的には、ペリクル膜の下にある犠牲層は、必要に応じて、段階1000又は段階1100において除去されるか又は定位置に保持される。その後、最終的なペリクルアセンブリが保護層から剥離され得る。それぞれペリクル膜の直上にあるか又は直下にある犠牲層は異なる段階で除去されるので、そのような酸化物層を除去するためのウェットHFエッチングステップの必要を回避することが可能である。
図7及び8において説明されたプロセスは、それによって、ペリクル膜への損傷及び製造の際に起こり得る機械損失又は故障をもたらすおそれのあるウェットHFエッチングステップを回避すると共に、ペリクル膜の一部のオーバーエッチングによって引き起こされる不均一性を低減させる。
【0184】
[000183] 上記の実施形態の特徴は組み合わせられ得ることが理解されるべきである。例えば、異なる実施形態において説明されているが、アモルファスカーボン層の使用は、3つのペリクル層を備えるペリクル膜、3つの犠牲層を備えるペリクルアセンブリ、又は上記で述べた任意の他の特徴との使用に適用可能である。ペリクル膜は、1つ以上の金属シリサイド層及び/又は1つ以上のドープされた金属シリサイド層及び/又は1つ以上のアモルファスカーボン層を備え得る。
【0185】
[000184] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0186】
[000185] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(あるいはその他の基板)もしくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0187】
[000186] 文脈上許される場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読み取られて実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装することも可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)により読み取り可能な形態で情報を記憶又は伝送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、及び他のものを含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書で説明されることがある。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又は他のデバイスから生じ、実行する際、アクチュエータ又は他のデバイスが物質世界と相互作用し得ることを理解すべきである。
【0188】
[000187] 以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明は、説明された以外の方法で実施されてもよいことが理解されよう。上記の説明は、限定ではなく例示を意図したものである。したがって、以下に述べる特許請求の範囲及び条項の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。
[条項1]
ペリクル膜を製造する方法であって、平面基板の上に第1の犠牲層を提供してスタックを形成することと、前記スタックの少なくとも一部に、前記ペリクル膜の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクルコア層を提供することと、を備える、方法。
[条項2]
前記ペリクルコア層は物理蒸着を用いて堆積される、条項1の方法。
[条項3]
前記金属はモリブデンを備える、条項1又は2の方法。
[条項4]
前記ドーパントは窒素、ホウ素、及び/又は炭素を備える、条項1から3のいずれかの方法。
[条項5]
前記第1の犠牲層は酸化物を備える、条項1から4のいずれかの方法。
[条項6]
前記少なくとも1つのペリクルコア層を提供する前に、前記第1の犠牲層の上に少なくとも1つの追加的な犠牲層を提供することを更に備える、条項1から5のいずれかの方法。
[条項7]
前記少なくとも1つの追加的な犠牲層は酸化物又はシリコンを備え、好適には、隣接する犠牲層の前記組成は酸化物とシリコンとが交互である、条項6の方法。
[条項8]
前記第1の犠牲層はアモルファスカーボンを備える、条項1から4のいずれかの方法。
[条項9]
前記少なくとも1つの追加的な犠牲層はアモルファスカーボンを備える、条項6の方法。
[条項10]
前記スタック上に3つのペリクルコア層が提供され、好適には次の順序:第1の金属シリサイド層、ドープされた金属シリサイド層、及び第2の金属シリサイド層、で堆積される、条項1から9のいずれかの方法。
[条項11]
前記基板及び1つ以上の犠牲層の少なくとも一部を除去するための1つ以上のエッチングステップを更に備える、条項1から10のいずれかの方法。
[条項12]
1つ以上の犠牲層の堆積の後且つ前記ペリクルコア層の堆積の前に、少なくとも1つのエッチングステップが実施される、条項11の方法。
[条項13]
1つ以上のエッチングステップは前記ペリクル膜を保持する縁取りを定義する、条項1から12のいずれかの方法。
[条項14]
前記平面基板はSOI(シリコンオンインシュレータ)ウェーハである、条項1から13のいずれかの方法。
[条項15]
前記平面基板は、オルトケイ酸テトラエチル層の前記提供の前に熱酸化物層を提供するために、アニールされる、条項1から14のいずれかの方法。
[条項16]
前記最終的なエッチングステップは、ウェットエッチング、好適にはオルトケイ酸テトラエチル層をエッチングするHFウェットエッチングである、条項1から15のいずれかの方法。
[条項17]
前記最終的なエッチングステップに続くプラズマ処理ステップを更に備え、前記プラズマ処理ステップは、前記アモルファスカーボンの第1の犠牲層又は追加的な犠牲層の少なくとも一部を除去する、条項8又は9に従属するときの条項16の方法。
[条項18]
前記方法は、前記平面基板上の前記第1及び第2の犠牲層の提供に続き、前記スタックの裏側をパターニングすることを備える、条項1から17のいずれかの方法。
[条項19]
i)第3の犠牲層を酸化物の形で提供して底部酸化物を形成するステップと、
ii)前記スタックの面上に前記ペリクルコア層を堆積させるステップと、
iii)任意選択的にキャッピング層を更なる酸化物層の形で前記ペリクルコア層の上面上に堆積させてトップ酸化物層を形成するステップと、
iv)前記スタックをアニールするステップと、
v)任意選択的に前記トップ酸化物層(存在する場合)及び/又は自然酸化物層を除去するステップと、
vi)前記スタックの前側をパターニングするステップと、
vii)前記スタックの前記前側を保護するための保護層を提供するステップと、
viii)前記スタックの前記裏側からキャビティエッチングを行い、前記平面基板、第1の犠牲層、第2の犠牲層の一部と、任意選択的には前記第3の犠牲層の一部とを除去して、ペリクルアセンブリを定義するステップと、
を順に更に備える、条項18の方法。
[条項20]
ステップiii)の前記キャッピング層はTEOSから形成される、条項19の方法。
[条項21]
前記保護層は高分子材料、好適にはペリレンで形成される、条項19又は20の方法。
[条項22]
前記保護層を除去してペリクル膜アセンブリを剥離することを更に備える、条項19から21のいずれかの方法。
[条項23]
前記第3の犠牲層は化学的酸化物又は熱酸化物である、条項19から22のいずれかの方法。
[条項24]
前記方法はウェットHFエッチングステップを含まない、条項19から23のいずれかの方法。
[条項25]
基板と、第1の犠牲層と、ペリクルコアの少なくとも一部を形成する少なくとも1つの金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドのペリクル層と、を備えるペリクル膜アセンブリ。
[条項26]
前記第1の犠牲層と前記少なくとも1つのペリクルコアとの間に配設された少なくとも1つの追加的な犠牲層を更に備える、条項18のアセンブリ。
[条項27]
前記アセンブリは少なくとも3つの犠牲層を備え、前記第1及び第3の犠牲層は同じ材料、好適には熱酸化物を備える、条項26のアセンブリ。
[条項28]
前記少なくとも1つのペリクルコア層は、第1のペリクル層、第2のペリクル層、及び第3のペリクル層を備える、条項25,26,又は27のアセンブリ。
[条項29]
前記第1及び第3のペリクル層は金属シリサイドを備え、前記第2のペリクルコア層はドープされた金属シリサイドを備え、好適には前記金属はモリブデンを備える、条項28のアセンブリ。
[条項30]
前記基板は前記ペリクル膜を保持する縁取りの少なくとも一部を形成する、条項25から29のいずれかのアセンブリ。
[条項31]
前記縁取りは平面基板の一部及び少なくとも1つの犠牲層の順のスタックを備え、前記少なくとも1つの犠牲層は前記ペリクル膜に隣接している、条項30のアセンブリ。
[条項32]
前記少なくとも1つの犠牲層は酸化物又はシリコンを備え、好適には、隣接する犠牲層の前記組成は酸化物とシリコンとが交互である、条項31のペリクルアセンブリ。
[条項33]
前記ペリクル膜に隣接する前記犠牲層は、酸化物を備えると共に、前記ペリクル膜よりも実質的に薄い、条項25から32のいずれかのペリクルアセンブリ。
[条項34]
前記第1の犠牲層又は少なくとも追加的な犠牲層上の少なくとも1つはアモルファスカーボンを備える、条項25又は26のアセンブリ。
[条項35]
前記ペリクル膜に隣接する前記犠牲層は、アモルファスカーボンを備えると共に、前記ペリクル膜よりも実質的に薄い、条項34のアセンブリ。
[条項36]
前記第1及び第3のペリクル層は金属シリサイドを備え、前記第2のペリクルコア層はアモルファスカーボンを備える、条項28のアセンブリ。
[条項37]
ペリクル膜を製造する方法であって、前記ペリクル膜の少なくとも一部を形成するペリクル層に隣接する少なくとも1つのアモルファスカーボン層を提供することを備える、方法。
[条項38]
前記ペリクルコア層は金属シリサイド又はドープされた金属シリサイドを備える、条項31の方法。
[条項39]
基板と、少なくとも1つのアモルファスカーボン層と、ペリクル膜とを備えるペリクル膜アセンブリ。
[条項40]
前記ペリクル膜は、金属シリサイド、ドープされた金属シリサイド、又はジルコニウムを備える、条項39のアセンブリ。
[条項41]
前記アモルファスカーボン層の前記厚さは前記ペリクル膜よりも実質的に薄い、条項39又は40のアセンブリ。
[条項42]
前記基板は前記ペリクル膜を保持する縁取りの少なくとも一部を形成する、条項39から41のいずれかのアセンブリ。
[条項43]
前記縁取りは平面基板の一部及びアモルファスカーボン層の一部の順のスタックを備え、前記少なくとも1つのアモルファスカーボン層は前記ペリクル膜に隣接している、条項42のアセンブリ。
[条項44]
条項25から36もしくは39から43のいずれかのペリクルアセンブリ又は条項1から24、37、もしくは38のいずれかに従って製造されたペリクルアセンブリを備える、リソグラフィ装置。