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特許7606642混合銀粉及び混合銀粉の製造方法、並びに導電性ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】混合銀粉及び混合銀粉の製造方法、並びに導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20241218BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20241218BHJP
   B22F 1/06 20220101ALI20241218BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20241218BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20241218BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20241218BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20241218BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20241218BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B22F1/00 K
B22F1/052
B22F1/06
B22F1/102
B22F1/14 500
H01B1/00 E
H01B1/00 H
H01B1/00 K
H01B1/22 A
H01B5/00 E
H01B5/00 K
H01B13/00 501Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024084323
(22)【出願日】2024-05-23
(65)【公開番号】P2024173749
(43)【公開日】2024-12-12
【審査請求日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2023090258
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】中山 征司
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055883(JP,A)
【文献】特開2019-087396(JP,A)
【文献】特開2022-186757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00,1/052,1/06,1/102,1/14,
9/00
H01B 1/00,1/22,5/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一銀粒子と、第二銀粒子と、第三銀粒子とからなる混合銀粉であって、
前記混合銀粉を樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面における100個以上の銀粒子を観察して、
前記銀粒子の周囲長と、
前記銀粒子の外形に外接し、且つ、面積が最小となる長方形の長辺長さ及び短辺長さとを測定したときの、
前記長辺長さが3μm以上の銀粒子を前記第一銀粒子、
前記長辺長さが0.5μm以上3μm未満の銀粒子を前記第二銀粒子、
前記長辺長さが0.5μm未満の銀粒子を前記第三銀粒子
とした場合において、
前記第一銀粒子のアスペクト比の平均値が2以上であり、
前記第二銀粒子のアスペクト比の平均値が1.5以上2未満であり、
前記第三銀粒子のアスペクト比の平均値が1.5未満であり、
前記混合銀粉中に占める、前記第一銀粒子の個数割合が1.5%以上5%以下であり、前記第二銀粒子の個数割合が10%以上であり、前記第三銀粒子の個数割合が15%以上であり、
以下の式(1):
比α=第二銀粒子の周囲長/(第二銀粒子の長辺長さ×2+第二銀粒子の短辺長さ×2)・・・(1)
で算出される比αの平均値が0.84以上であり、
前記第一銀粒子、前記第二銀粒子、及び前記第三銀粒子からなる群から選択される少なくとも1種の銀粒子の表面に多価カルボン酸が付着している、混合銀粉。
【請求項2】
前記第一銀粒子及び前記第二銀粒子の表面に多価カルボン酸が付着している、請求項1に記載の混合銀粉。
【請求項3】
前記第一銀粒子、前記第二銀粒子、及び前記第三銀粒子の合計に対する前記多価カルボン酸の含有割合が、0.01質量%以上0.15質量%以下である、請求項1又は2に記載の混合銀粉。
【請求項4】
前記多価カルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、リンゴ酸、ジエチルグルタル酸、3-メチルアジピン酸、ブチルマロン酸、マレイン酸、ジグリコール酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸である、請求項1又は2に記載の混合銀粉。
【請求項5】
銀粒子A1及び銀粒子A2を含有する銀粉Aと、銀粒子Bからなる銀粉Bとを混合して混合物を得る、混合工程と、
前記混合工程の前に、前記銀粉A及び前記銀粉Bの少なくとも一方の銀粉を多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する、前処理工程か、又は、前記混合工程で得られた前記混合物を多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する、後処理工程と、
を含み、
前記銀粉Aを樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面における100個以上の銀粒子と、前記銀粉Bを樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面における100個以上の銀粒子と、をそれぞれ観察して、
前記銀粒子の周囲長と、
前記銀粒子の外形に外接し、且つ、面積が最小となる長方形の長辺長さ及び短辺長さと、
を測定した場合において、
前記銀粒子A1は、アスペクト比の平均値が2以上であり、
前記銀粒子A2は、アスペクト比の平均値が2未満であり、かつ、
以下の式(2):
比β=銀粒子A2の周囲長/(銀粒子A2の長辺長さ×2+銀粒子A2の短辺長さ×2)・・・(2)
で算出される比βの平均値が0.84以上であり、
前記銀粒子Bは、アスペクト比の平均値が1.5未満である、請求項1に記載の混合銀粉の製造方法。
【請求項6】
前記前処理工程を含み、
前記前処理工程では、前記銀粉Aを前記多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する、請求項5に記載の混合銀粉の製造方法。
【請求項7】
前記銀粉A及び前記銀粉Bの合計に対する前記多価カルボン酸の使用率が、0.01質量%以上0.15質量%以下である、請求項5又は6に記載の混合銀粉の製造方法。
【請求項8】
前記表面処理剤付着処理で使用する前記多価カルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、リンゴ酸、ジエチルグルタル酸、3-メチルアジピン酸、ブチルマロン酸、マレイン酸、ジグリコール酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸である、請求項5又は6に記載の混合銀粉の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の混合銀粉と、バインダーと、溶剤とを含む、導電性ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合銀粉及び混合銀粉の製造方法、並びに導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性金属粉末を含む導電性ペーストを、フィルム、基板、電子部品等の基材に塗布又は印刷し、加熱して乾燥硬化させることにより、電極や電気配線等を形成するという方法は、従来から広く用いられている。しかしながら、近年の電子機器の高性能化に伴い、導電性ペーストを用いて形成される電極や電気配線等には、より低抵抗であることが要求され、その要求は年々厳しくなっている。
【0003】
上記要求に対して、例えば、特許文献1では、高い導電性(低抵抗)を有する導電性ペースト組成物を得ることを目的として、フレーク状銀粉末及び球状銀粉末からなり、フレーク状銀粉末及び球状銀粉末の少なくともいずれか一方の銀粉末の表面に多価カルボン酸が付着している銀粉末を導電性金属粉末として用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-100573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来の導電性ペーストに用いられ得る銀粉末(銀粉)については、導電性ペーストを用いて形成された導電膜の比抵抗を低減するという点において更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、導電膜の比抵抗を低減可能な混合銀粉を提供することを目的とする。
また、本発明は、導電膜の比抵抗を低減可能な混合銀粉の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、導電膜の比抵抗を低減可能な導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、以下に述べる本発明を完成させた。
【0008】
即ち、上述の課題を解決するための本発明の要旨構成は以下の通りである。
【0009】
[1]第一銀粒子と、第二銀粒子と、第三銀粒子とからなる混合銀粉であって、
前記混合銀粉を樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面における100個以上の銀粒子を観察して、
前記銀粒子の周囲長と、
前記銀粒子の外形に外接し、且つ、面積が最小となる長方形の長辺長さ及び短辺長さとを測定したときの、
前記長辺長さが3μm以上の銀粒子を前記第一銀粒子、
前記長辺長さが0.5μm以上3μm未満の銀粒子を前記第二銀粒子、
前記長辺長さが0.5μm未満の銀粒子を前記第三銀粒子
とした場合において、
前記第一銀粒子のアスペクト比の平均値が2以上であり、
前記第二銀粒子のアスペクト比の平均値が1.5以上2未満であり、
前記第三銀粒子のアスペクト比の平均値が1.5未満であり、
前記混合銀粉中に占める、前記第一銀粒子の個数割合が0.5%以上5%以下であり、前記第二銀粒子の個数割合が10%以上であり、前記第三銀粒子の個数割合が15%以上であり、
以下の式(1):
比α=第二銀粒子の周囲長/(第二銀粒子の長辺長さ×2+第二銀粒子の短辺長さ×2)・・・(1)
で算出される比αの平均値が0.84以上であり、
前記第一銀粒子、前記第二銀粒子、及び前記第三銀粒子からなる群から選択される少なくとも1種の銀粒子の表面に多価カルボン酸が付着している、混合銀粉。
【0010】
[2]前記第一銀粒子及び前記第二銀粒子の表面に多価カルボン酸が付着している、[1]に記載の混合銀粉。
【0011】
[3]前記第一銀粒子、前記第二銀粒子、及び前記第三銀粒子の合計に対する前記多価カルボン酸の含有割合が、0.01質量%以上0.15質量%以下である、[1]又は[2]に記載の混合銀粉。
【0012】
[4]前記多価カルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、リンゴ酸、ジエチルグルタル酸、3-メチルアジピン酸、ブチルマロン酸、マレイン酸、ジグリコール酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸である、[1]~[3]の何れかに記載の混合銀粉。
【0013】
[5]銀粒子A1及び銀粒子A2を含有する銀粉Aと、銀粒子Bからなる銀粉Bとを混合して混合物を得る、混合工程と、
前記混合工程の前に、前記銀粉A及び前記銀粉Bの少なくとも一方の銀粉を多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する、前処理工程か、又は、前記混合工程で得られた前記混合物を多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する、後処理工程と、
を含み、
前記銀粉Aを樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面における100個以上の銀粒子と、前記銀粉Bを樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面における100個以上の銀粒子をそれぞれ観察して、
前記銀粒子の周囲長と、
前記銀粒子の外形に外接し、且つ、面積が最小となる長方形の長辺長さ及び短辺長さと、
を測定した場合において、
前記銀粒子A1は、アスペクト比の平均値が2以上であり、
前記銀粒子A2は、アスペクト比の平均値が2未満であり、かつ、
以下の式(2):
比β=銀粒子A2の周囲長/(銀粒子A2の長辺長さ×2+銀粒子A2の短辺長さ×2)・・・(2)
で算出される比βの平均値が0.84以上であり、
前記銀粒子Bは、アスペクト比の平均値が1.5未満である、[1]~[4]の何れかに記載の混合銀粉の製造方法。
【0014】
[6]前記前処理工程を含み、
前記前処理工程では、前記銀粉Aを前記多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する、[5]に記載の混合銀粉の製造方法。
【0015】
[7]前記銀粉A及び前記銀粉Bの合計に対する前記多価カルボン酸の使用率が、0.01質量%以上0.15質量%以下である、[5]又は[6]に記載の混合銀粉の製造方法。
【0016】
[8]前記表面処理剤付着処理で使用する前記多価カルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、リンゴ酸、ジエチルグルタル酸、3-メチルアジピン酸、ブチルマロン酸、マレイン酸、ジグリコール酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸である、[5]~[7]の何れかに記載の混合銀粉の製造方法。
【0017】
[9][1]~[4]の何れかに記載の混合銀粉と、バインダーと、溶剤とを含む、導電性ペースト。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、導電膜の比抵抗を低減可能な混合銀粉を提供できる。
また、本発明によれば、導電膜の比抵抗を低減可能な混合銀粉の製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、導電膜の比抵抗を低減可能な導電性ペーストを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】銀粒子断面の外形に外接し、且つ、面積が最小になる長方形の長辺長さ及び短辺長さの特定方法を説明するための概略図である。
図2】実施例1に係る混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
図3】実施例2に係る混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
図4】実施例3に係る混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
図5】比較例1に係る混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
図6】比較例2に係る混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
図7】比較例3に係る混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
図8】実施例4に係る混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
図9】比較例4に係る混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
図10】比較例5に係る混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の混合銀粉は、導電性ペースト用の導電性フィラーとしての用途に適したものである。本発明の混合銀粉を用いた導電性ペーストは、基板上への導電パターンの形成や、電極の形成に用いることができる。本発明の混合銀粉を用いた導電性ペーストは、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フォトリソグラフィ法等により基板上に印刷することで、導電パターンや電極等の導電膜(以下、単に「導電膜」と称する場合がある。)を形成できるものである。
なお、本発明の混合銀粉は、例えば、本発明の混合銀粉の製造方法により得ることができる。
【0021】
(用語及び測定方法)
まず、実施形態の説明に先立ち、本明細書における用語及び測定方法等を説明する。
【0022】
<銀粒子の観察>
本明細書において、銀粒子の観察は、まず、混合銀粉又は銀粉を樹脂及び硬化剤中に入れて固化し、クロスセクションポリッシャーにより研磨することにより銀粒子の断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(SEM)により各銀粒子を、所定の倍率(例えば、5,000倍や3,000倍)で観察することにより行うことができる。ここで、絶縁性の樹脂と導電性の銀粒子とのコントラストから、銀粒子の輪郭が鮮明であって、銀粒子の外周を明確に視認できる銀粒子は断面が露出しているものとする。そして、混合銀粉又は銀粉を樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面において、外周を明確に視認できる銀粒子の中から任意に選択した100個以上の銀粒子について、画像解析ソフトを用いて銀粒子外周をなぞることで、各銀粒子の、長方形の長辺長さ(以下、単に「長辺長さ」と称する場合がある。)、長方形の短辺長さ(以下、単に「短辺長さ」と称する場合がある。)、周囲長、銀粒子の面積、銀粒子の最大長を測定できる。
なお、上記樹脂及び硬化剤としては、例えば、ストルアス社製の「エポフィックス樹脂」及び「エポフィックス硬化剤」を用いることができる。
また、上記クロスセクションポリッシャーとしては、例えば、日本ハイテクノロジーズ社製の「ArBlade5000」を用いることができる。
また、上記走査型電子顕微鏡としては、例えば、日本電子株式会社製の「JEOL JSM-IT300LV」を用いることができる。
また、上記画像解析ソフトとしては、例えば、株式会社マウンテック製の「画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-View」を用いることができる。
【0023】
ここで、図1を参照して、銀粒子断面の外形に外接し、且つ、面積が最小になる長方形の長辺長さ及び短辺長さの特定方法を説明する。
図1に示すように、まず、測定対象となる銀粒子を選択(100個以上)する。次いで、選択した銀粒子を360度回転させながら、銀粒子の外形に外接するあらゆる長方形を作成する。そして、これらの長方形の中から、面積が最小となる長方形を取り出し、この長方形の長辺長さ及び短辺長さを特定する。
【0024】
<アスペクト比の平均値>
本明細書において、「アスペクト比」とは、短辺長さに対する長辺長さの比(長辺長さ/短辺長さ)であり、「アスペクト比の平均値」とは、長辺長さの値で区切られた範囲内の銀粒子における個々のアスペクト比の平均値を意味する。
【0025】
<短辺長さの平均値>
本明細書において、「短辺長さの平均値」とは、長辺長さの値で区切られた範囲内の銀粒子における個々の短辺長さの平均値を意味する。
【0026】
<形状係数の平均値>
本明細書において、「形状係数」とは、「π×(銀粒子の最大長/2)/銀粒子の面積」で算出される形状係数であり、「形状係数の平均値」とは、長辺長さの値で区切られた範囲内の銀粒子における個々の形状係数の平均値である。なお、銀粒子の最大長の単位は「μm」であり、銀粒子の面積の単位は「μm」である。
【0027】
<粒度分布の測定>
本明細書において、混合銀粉の体積基準の累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)、及び累積95%粒子径(D95)、並びに、累積100%(即ち、最大粒子)の粒子径(DMAX)は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクトロラックMT-3300 EXII)により測定した。
【0028】
<多価カルボン酸の含有割合の測定方法>
本明細書において、「多価カルボン酸の含有割合」は、まず、多価カルボン酸が付着している混合銀粉から多価カルボン酸を塩酸に溶出させ、次いで、多価カルボン酸が溶出された塩酸溶出液において多価カルボン酸をエステル化し、次いで、エステル化された多価カルボン酸を有機溶媒に抽出し、次いで、多価カルボン酸エステルの検量線から、抽出されたアジピン酸エステル量を求め、換算計算によって多価カルボン酸量を算出することにより測定できる。例えば、多価カルボン酸がアジピン酸の場合、アジピン酸の含有割合は、特開2012-122880号公報に記載のアジピン酸の定量方法に従って測定できる。なお、多価カルボン酸がアジピン酸の場合、アジピン酸の含有割合は、塩化水素―メタノール試薬を用いて試料銀粉表面のアジピン酸をメチル化し、生成したアジピン酸ジメチルを有機溶媒に抽出してGC-MSにより測定する方法でもよい。
【0029】
<BET比表面積>
本明細書において、「BET比表面積」は、Macsorb HM-model 1210(MOUNTECH社製)を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定することができる。なお、BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃、10分間である。
【0030】
<混合銀粉の強熱減量(Ig-Loss)値>
本明細書において、「混合銀粉の強熱減量(Ig-Loss)値」とは、室温から800℃まで加熱したときの質量の変化量を示し、具体的には、混合銀粉が有している銀以外の組成物の量を表し、混合銀粉に残存する成分、例えば、混合銀粉の製造過程で使用する処理剤や添加剤等の残存成分の量の多さを示す指標となる。そして、本明細書において、「混合銀粉の強熱減量(Ig-Loss)値」は、混合銀粉試料を精密に秤量(秤量値:w1)して磁性るつぼに入れ、800℃まで加熱し、そして恒量に至るのに十分な時間として800℃で30分間保持し、その後、冷却して再度秤量(秤量値:w2)し、「強熱減量(Ig-Loss)値(質量%)=(w1-w2)/w1×100」から算出できる。
【0031】
<混合銀粉のタップ密度>
本明細書において、「混合銀粉のタップ密度」は、例えば、タップ密度測定装置(柴山科学社製、カサ比重測定装置SS-DA-2)を使用し、銀粉試料30gを計量して20mLの試験管に入れ、落差20mmで1,000回タッピングし、「タップ密度=試料質量(g)/タッピング後の試料体積(mL)」から算出できる。
【0032】
<円相当径(Heywood径)>
本明細書において、「円相当径(Heywood径)」は、銀粒子の断面の観察で測定した銀粒子の面積を用いて算出できる。具体的には、この銀粒子の面積と同じ面積を有する円を作成して円相当径(Heywood径)を求めることができる。
【0033】
<導電性ペーストの粘度>
本明細書において、「導電性ペーストの粘度」は、例えば、回転式の粘度計としてブルックフィールド社製5XHBDV-IIIUCを用い、コーンスピンドルにはCPE-52を用い、測定温度は25℃とし、コーンスピンドルの回転数は1rpmとし、コーンスピンドルを5分間回転させた時点の値とすることができる。
【0034】
(混合銀粉)
本発明の混合銀粉は、第一銀粒子と、第二銀粒子と、第三銀粒子とからなる混合銀粉であり、混合銀粉を樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面における100個以上の銀粒子を観察して、銀粒子の周囲長と、銀粒子の外形に外接し、且つ、面積が最小となる長方形の長辺長さ及び短辺長さとを測定したときの、長辺長さが3μm以上の銀粒子を第一銀粒子、長辺長さが0.5μm以上3μm未満の銀粒子を第二銀粒子、長辺長さが0.5μm未満の銀粒子を第三銀粒子とした場合において、第一銀粒子のアスペクト比の平均値が2以上であり、第二銀粒子のアスペクト比の平均値が1.5以上2未満であり、第三銀粒子のアスペクト比の平均値が1.5未満であり、混合銀粉中に占める、第一銀粒子の個数割合が0.5%以上5%以下であり、第二銀粒子の個数割合が10%以上であり、第三銀粒子の個数割合が15%以上であり、以下の式(1):
比α=第二銀粒子の周囲長/(第二銀粒子の長辺長さ×2+第二銀粒子の短辺長さ×2)・・・(1)
で算出される比α(矩形度ともいう)の平均値が0.84以上であり、第一銀粒子、第二銀粒子、及び第三銀粒子からなる群から選択される少なくとも1種の銀粒子の表面に多価カルボン酸が付着している。
上記のような混合銀粉であれば、導電膜の比抵抗を低減可能である。この理由は、導電膜中において、比較的大きく比抵抗を低減させるのに有利な第一銀粒子の隙間に、比較的小さな第三銀粒子が入り込むことで導電膜の空間率が減少して銀粉が密の状態になり、その結果、導電膜中の銀粒子が無い空間、即ち、高抵抗となる部分が減少し、比抵抗が低減したためであると推察される。また、導電膜中に、第一銀粒子と第三銀粒子との間の長辺長さを有する第二銀粒子が存在するとともに、第二銀粒子の形状が矩形に近いために第一銀粒子と第二銀粒子の間や第二銀粒子同士において面や線で接する可能性が生じることで、導電膜の空間率が更に減少して、高抵抗となる部分が更に減少し、比抵抗が低減したためであると推察される。そして、長径が大きいほどアスペクト比が大きい傾向をもつことにより、銀粒子の充填性および焼結性のしやすさの点で優れ、結果として得られる導電膜の導電性が向上していると推定される。
なお、各銀粒子の、周囲長、長方形の長辺長さ及び短辺長さ、アスペクト比の平均値、個数割合、並びに比αは、原料として用いられ得る銀粉の特性、後述する表面処理剤付着処理のタイミング、並びに、表面処理剤付着処理に用いられ得る多価カルボン酸の種類及び使用率により調整できる。
【0035】
<第一銀粒子>
本発明の混合銀粉において、第一銀粒子は、長辺長さが3μm以上の銀粒子である。
【0036】
本発明の混合銀粉において、第一銀粒子のアスペクト比の平均値は、2以上であることが必要であり、2.3以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3以上であることが更に好ましい。
第一銀粒子のアスペクト比の平均値が2以上であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
一方、第一銀粒子のアスペクト比の平均値は、例えば5以下であり、4以下でもよく、3.5以下でもよい。
【0037】
第一銀粒子の短辺長さの平均値は、例えば0.6μm以上であり、1.0μm以上でもよく、1.3μm以上でもよい。例えば2.5μm以下であり、2.0μm以下でもよく、1.9μm以下でもよい。
【0038】
第一銀粒子の形状係数の平均値は、例えば2以上であり、2.5以上でもよく、3以上でもよく、例えば6以下であり、5以下でもよく、4以下でもよい。
【0039】
本発明の混合銀粉において、混合銀粉中に占める第一銀粒子の個数割合は、0.5%以上であることが必要であり、1%以上であることが好ましく、1.5%以上であることがより好ましく、5%以下であることが必要であり、4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
混合銀粉中に占める第一銀粒子の個数割合が上記範囲内であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
【0040】
<第二銀粒子>
本発明の混合銀粉において、第二銀粒子は、長辺長さが0.5μm以上3μm未満の銀粒子である。
【0041】
本発明の混合銀粉において、第二銀粒子のアスペクト比の平均値は、1.5以上であることが必要であり、1.6以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましく、2未満であることが必要であり、1.95以下であることが好ましく、1.92以下であることがより好ましい。
第二銀粒子のアスペクト比の平均値が上記範囲内であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
【0042】
本発明の混合銀粉において、以下の式(1):
比α=第二銀粒子の周囲長/(第二銀粒子の長辺長さ×2+第二銀粒子の短辺長さ×2)・・・(1)
で算出される比αの平均値は、0.84以上である必要があり、0.85以上であることが好ましい。比αは粒子断面の矩形度を表し、比αの値が1に近いほど粒子形状が矩形に近い形状であることになる。
比αの平均値が0.84以上であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
一方、比αの平均値は1以下であり、例えば0.95以下でもよい。
【0043】
第二銀粒子の短辺長さの平均値は、例えば0.3μm以上であり、0.4μm以上でもよく、0.5μm以上でもよく、例えば1μm以下であり、0.8μm以下でもよく、0.7μm以下でもよい。
【0044】
第二銀粒子の形状係数の平均値は、例えば1.5以上であり、1.7以上でもよく、2以上でもよく、例えば3以下であり、2.5以下でもよく、2.3以下でもよい。
【0045】
本発明の混合銀粉において、混合銀粉中に占める第二銀粒子の個数割合は、10%以上であることが必要であり、30%以上であることが好ましい。
混合銀粉中に占める第二銀粒子の個数割合が10%以上であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
【0046】
<第三銀粒子>
本発明の混合銀粉において、第三銀粒子は、長辺長さが0.5μm未満の銀粒子である。
【0047】
本発明の混合銀粉において、第三銀粒子のアスペクト比の平均値は、1.5未満であることが必要であり、1.4以下であることが好ましく、1.35以下であることが更に好ましい。
第三銀粒子のアスペクト比の平均値が1.5未満であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
一方、第三銀粒子のアスペクト比の平均値は、例えば1.1以上であり、1.2以上でもよく、1.25以上でもよい。
【0048】
第三銀粒子の短辺長さの平均値は、例えば0.1μm以上であり、0.2μm以上でもよく、0.25μm以上でもよい。例えば0.5μm以下であり、0.4μm以下でもよい。
【0049】
第三銀粒子の形状係数の平均値は、例えば1.2以上であり、1.4以上でもよく、1.6以上でもよく、例えば2.5以下であり、2以下でもよく、1.75以下でもよい。
【0050】
本発明の混合銀粉において、混合銀粉中に占める第三銀粒子の個数割合は、10%以上であることが必要であり、13%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。
混合銀粉中に占める第三銀粒子の個数割合が上記範囲内であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
【0051】
<多価カルボン酸>
本発明の混合銀粉は、第一銀粒子、第二銀粒子、及び第三銀粒子からなる群から選択される少なくとも1種の銀粒子の表面に多価カルボン酸が付着している。そして、導電膜の比抵抗を効果的に低減できることから、混合銀粉は、第一銀粒子及び第二銀粒子の表面に多価カルボン酸が付着していることが好ましい。
【0052】
ここで、多価カルボン酸としては、特に限定されず、従来公知のものが挙げられるが、導電膜の比抵抗を効果的に低減できることから、多価カルボン酸は、脂肪族多価カルボン酸であることが好ましく、飽和型脂肪族多価カルボン酸であることがより好ましい。
より具体的に、多価カルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、リンゴ酸、ジエチルグルタル酸、3-メチルアジピン酸、ブチルマロン酸、マレイン酸、ジグリコール酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸であることが好ましく、アジピン酸であることが特に好ましい。
【0053】
第一銀粒子、第二銀粒子、及び第三銀粒子の合計に対する多価カルボン酸の含有割合は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.15質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましい。
上記多価カルボン酸の含有割合が、上記範囲内であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
【0054】
<混合銀粉の特性>
混合銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)は、例えば1μm以上であり、例えば3μm以下である。
【0055】
混合銀粉のBET比表面積は、例えば0.2m/g以上であり、0.4m/g以上でもよく、0.5m/g以上でもよく、例えば1m/g以下であり、0.8m/g以下でもよく、0.7m/g以下でもよい。
【0056】
混合銀粉の強熱減量(Ig-Loss)値は、例えば0.05質量%以上であり、0.1質量%以上でもよく、0.3質量%以上でもよく、例えば3質量%以下であり、1質量%以下でもよく、0.5質量%以下でもよい。
【0057】
混合銀粉のタップ密度、例えば3g/mL以上であり、4g/mL以上でもよく、5g/mL以上でもよく、例えば7g/mL以下であり、6g/mL以下でもよい。
【0058】
(混合銀粉の製造方法)
本発明の混合銀粉の製造方法は、銀粒子A1及び銀粒子A2を含有する銀粉Aと、銀粒子Bからなる銀粉Bとを混合して混合物を得る、混合工程と、混合工程の前に、銀粉A及び銀粉Bの少なくとも一方の銀粉を多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する、前処理工程か、又は、混合工程で得られた混合物を多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する、後処理工程と、を含み、銀粉Aを樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面における100個以上の銀粒子と、銀粉Bを樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面における100個以上の銀粒子と、をそれぞれ観察して、銀粒子の周囲長と、銀粒子の外形に外接し、且つ、面積が最小となる長方形の長辺長さ及び短辺長さと、を測定した場合において、銀粒子A1は、アスペクト比の平均値が2以上であり、銀粒子A2は、アスペクト比の平均値が2未満であり、かつ、以下の式(2):
比β=銀粒子A2の周囲長/(銀粒子A2の長辺長さ×2+銀粒子A2の短辺長さ×2)・・・(2)
で算出される比β(矩形度ともいう)の平均値が0.84以上であり、銀粒子Bは、アスペクト比の平均値が1.5未満である。
上記のような混合銀粉の製造方法であれば、導電膜の比抵抗を低減可能な混合銀粉を得ることができる。また、本発明の混合銀粉の製造方法によれば、上述した本発明の混合銀粉を得ることができる。
なお、本発明の混合銀粉の製造方法における銀粒子の断面の観察は、上述した本発明の混合銀粉の銀粒子の断面の観察と同様の方法で行うことができる。
【0059】
本発明の混合銀粉の製造方法は、上記した、前処理工程、混合工程、及び後処理工程以外に、任意に、前処理工程又は混合工程の前に銀粒子A及び/又は銀粒子Bを解砕する解砕工程等のその他の工程を更に含んでいてもよい。
【0060】
<銀粉A>
銀粉Aは、アスペクト比の大きな銀粒子A1と、アスペクト比が銀粒子A1より小さくて粒子形状の矩形度が大きい銀粒子A2を含有するものである。
【0061】
〔銀粒子A1〕
銀粒子A1は、アスペクト比が2以上の銀粒子である。銀粉A中の銀粒子A1の個数割合は、例えば5%以上50%以下である。
【0062】
銀粒子A1のアスペクト比の平均値は、2以上であり、2.3以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3以上であることが更に好ましい。
銀粒子A1のアスペクト比の平均値が2以上であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減可能な混合銀粉を得ることができる。
一方、銀粒子A1のアスペクト比の平均値は、例えば5以下であり、4以下でもよく、3.5以下でもよい。
【0063】
〔銀粒子A2〕
銀粒子A2は、アスペクト比が銀粒子A1より小さく粒子形状の矩形度(後述の比β)が0.84以上の銀粒子である。銀粒子A2は、アスペクト比が2未満の銀粒子である。そして、アスペクト比が2未満の銀粒子について矩形度を測定してそれらの平均値が0.84以上である。銀粉A中の銀粒子A2の個数割合は、例えば50%~95%であることが好ましい。
【0064】
銀粒子A2のアスペクト比の平均値は、1.4以上であることが好ましく、2未満である。
銀粒子A2のアスペクト比の平均値が上記範囲内であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減可能な混合銀粉を得ることができる。
【0065】
銀粉Aにおいて、以下の式(2):
比β=銀粒子A2の周囲長/(銀粒子A2の長辺長さ×2+銀粒子A2の短辺長さ×2)・・・(2)
で算出される比βの平均値は、0.84以上である必要があり、0.85以上であることが好ましい。比βは粒子断面の矩形度を表し、比βの値が1に近いほど粒子形状が矩形に近い形状であることになる。
比βの平均値が0.84以上であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
一方、比βの平均値は1以下であり、例えば0.95以下でもよい。
【0066】
〔銀粉Aの調製方法〕
銀粉Aの調製方法は、銀粉Aに含まれる銀粒子A及び銀粒子Bが所定の要件を満たすものであれば特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
以下では、銀粉Aの調製方法の一例を説明するが、本発明の混合銀粉の製造方法で用いられる銀粉Aは、これに限定されるものではない。
【0067】
銀粉Aは、銀アンミン錯体水溶液に還元剤を添加して第一液を得る還元工程と、第一液に表面処理剤を添加して第二液を得る表面処理剤添加工程と、第二液から分離し乾燥してアスペクト比が1.5未満の球状銀粉を得る分離工程と、球状銀粉と滑剤とメディアとを容器内で撹拌して、アスペクト比が大きい銀粒子A1と、アスペクト比が銀粒子A1より小さく矩形度が大きい銀粒子A2ができる程度に、部分的に扁平化する工程と、を含む方法により調製できる。
【0068】
-還元工程-
還元工程では、銀アンミン錯体水溶液に還元剤を添加して第一液を得る。ここで、還元工程では、還元剤の添加により銀イオンが還元されて、銀の粒子(以下、コア粒子と称する)が析出し得る。
【0069】
還元剤としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン化合物及びホルマリン等が挙げられる。
【0070】
銀アンミン錯体水溶液は、硝酸銀水溶液又は酸化銀懸濁液等の原料液にアンモニア水又はアンモニウム塩を添加して生成したものを用いてよい。原料液又は銀アンミン錯体水溶液にはpH調整剤を添加してもよい。pH調整剤としては、一般的な酸や塩基を用いてよく、例えば、硝酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0071】
-表面処理剤添加工程-
表面処理剤添加工程では、還元工程で得られた第一液に表面処理剤を添加して第二液を得る。ここで、表面処理剤添加工程では、コア粒子の表面に、表面処理剤が吸着等により被覆され得る。
なお、以下では、表面処理剤で被覆されたコア粒子を、被覆粒子と称する。第二液は、被覆粒子が分散された懸濁液(所謂、スラリー)又は分散液である。
【0072】
表面処理剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等の脂肪酸が挙げられる。これらの中でも、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸が好ましい。
【0073】
表面処理剤添加工程における表面処理剤の添加量は、銀アンミン錯体水溶液に含まれる銀の質量に対して、通常、0.05質量%以上0.15質量%以下である。
【0074】
表面処理剤添加工程によってコア粒子に付着して乾燥工程後まで残った表面処理剤の付着量は、後述の乾燥工程後の球状銀粉に対し、表面処理剤の種類を特定した状態で測定した値を用いる。
なお、表面処理剤の種類は、球状銀粉を加熱し揮発した表面処理剤のガスクロマトグラフィーによる定性分析により特定できる。
【0075】
球状銀粉の表面処理剤の付着量は、特許第5622543号公報に記載された脂肪酸の定量分析方法に従って行うことができる。
具体的には、まず、銀粉を酸で溶解させた後、有機溶媒を混合し、その有機溶媒相に表面処理剤を全量抽出させた後、有機溶媒相を所定量分取し、蒸発乾燥させて残留した固形物を、炭素硫黄分析装置により炭素量を測定することで計算により求めることができる。
【0076】
例えば、表面処理剤がステアリン酸であると特定されており、ステアリン酸以外の炭素源が球状銀粉に含まれない場合、ステアリン酸の測定方法は以下となる。
【0077】
ステアリン酸の含有量(mg)が異なる標準液において、各々の炭素量(強度)を炭素硫黄分析装置により測定することで検量線を求めたとき、その傾きをA(強度/mg)とする。そして、銀粉中のステアリン酸質量X(mg)、濃度Y(%)は、上記銀粉の処理により、処理剤を全有機溶媒量a(mL)に抽出したものから、所定量b(mL)分取し、その残存固形物の測定により求めた炭素量をC(強度)、酸に溶解した銀粉の量をM(g)とした場合、ステアリン酸質量X及び濃度Yは、それぞれ、下記式(A)及び式(B)で計算できる。
X(mg)=(C/A×a/b)・・・(A)
Y(%)=X/(M×1000)×100・・・(B)
【0078】
オレイン酸が処理剤の場合でも上記同様に炭素量を測定して求める。オレイン酸についてもステアリン酸の検量線を用いて計算する。ステアリン酸の分子量が284.48で、その内の炭素量が216.19、オレイン酸の分子量が282.46、その内の炭素量が216.19となるので、オレイン酸濃度Y’は、下記式(C)により算出できる。
オレイン酸濃度Y’(%)=Y×(216.19/284.48)×(282.46/216.19)・・・(C)
【0079】
表面処理剤の付着量は、球状銀粉の質量に対して、0.01質量%以上0.11質量%以下であることが好ましい。
【0080】
-分離工程-
分離工程では、第二液から被覆粒子を分離する。分離工程において分離及び乾燥された被覆粒子の集合体を、球状銀粉と称する。
なお、分離工程では、任意に、第二液から被覆粒子を回収して洗浄する洗浄回収工程、被覆粒子を乾燥させる乾燥工程が行われてもよい。
【0081】
洗浄回収工程では、例えば、第二液を脱水して被覆粒子の集合体をケーキ状とし、また、被覆粒子の集合体のケーキが洗浄される。洗浄回収工程における洗浄は、例えば純水を用いて行ってよい。洗浄回収工程における脱水は、例えばデカンテーションやフィルタープレスにより行うことができる。洗浄の終点は洗浄水の電気伝導度を用いて判定してよい。具体的には、洗浄水の電気伝導度が所定の値以下となった場合に洗浄終了を判定してよい。洗浄後の被覆粒子は、ケーキ状などの凝集状態で乾燥工程に供してよい。
【0082】
乾燥工程では、水分を含み、凝集状態の被覆粒子の集合体が乾燥される。乾燥工程は、真空乾燥や、気流式の乾燥機を用いてよい。乾燥工程においては、被覆粒子の集合体に高圧空気流を吹き付けたり、ケーキや乾燥過程の銀粉を、撹拌ロータを有する撹拌機に投入して撹拌したりすることによって、ケーキや乾燥過程の銀粉に分散力を与えて、分散や乾燥を促す操作が行われてもよい。
【0083】
乾燥工程においては、銀粉の温度は、通常100℃以下である。銀粉の温度が100℃以下であれば、銀粉中の銀粒子同士が焼結することを効果的に抑制できる。
【0084】
乾燥後の球状銀粉は塊状になっている場合があるため、乾燥工程と同時に、又は、乾燥工程後には、球状銀粉のハンドリング性を向上する等を目的として解砕又は分級操作が行われてもよい。ここで、球状銀粉のハンドリング性の向上とは、例えば、後述する工程(部分的に扁平化する工程)において、後述する滑剤の添加や、装置内への供給操作に支障が出ない程度の流動性を確保したり、装置での処理が効率よく進行するように、適度に球状銀粉をほぐすことをいう。
【0085】
分離工程で得られた球状銀粉は、後述する滑剤と混合後にBET法で求めた比表面積(BET比表面積)から計算される比表面積径が、1.3μm以上2.0μm以下である。
ここで、比表面積径は、球状銀粉を滑剤と混合後にBET法で求めた比表面積A(m/g)と銀の密度ρとに基づいて下記式(D)を用いて算出できる。
比表面積径(μm)=6/(A×ρ)・・・(D)
【0086】
-部分的に扁平化する工程-
この工程では、球状銀粉と滑剤とメディアとを容器内で撹拌して球状銀粉を、アスペクト比が大きい銀粒子A1と、アスペクト比が小さく矩形度が大きい銀粒子A2ができる程度に、部分的に扁平化した銀粉Aを得る。
【0087】
ここで、部分的に扁平化する工程は、球状銀粉の表面に滑剤を均一に分散させる目的で、球状銀粉と滑剤とを混合する滑剤混合工程を含む。滑剤混合工程では、解砕によって適度にほぐれた状態の球状銀粉に、滑剤を添加し、解砕機を用いて撹拌し混合してもよく、例えば、銀粉をヘンシェル型ミキサー(三井鉱山(株)製、FMミキサ、型式FM75型、SO型撹拌羽根使用)やジェットミル型ミキサーに投入し、滑剤を添加して、撹拌して球状銀粉と滑剤とを混合できる。滑剤混合工程後も適度に凝集状態であってよい。本工程では、滑剤と混合後の球状銀粉中の被覆粒子が、容器内でメディアと少ない衝突回数で衝突することで部分的に扁平化され、且つ、滑剤で被覆された銀粒子の集合体である銀粉Aが得られる。銀粉中の被覆粒子の中で衝突回数が比較的多かった粒子はアスペクト比が大きい銀粒子A1となり、衝突回数が比較的少なかった粒子はアスペクト比が小さく矩形度が大きい銀粒子A2となる。銀粒子A1と銀粒子A2が共存するように(銀粒子A1のみとならないように)、メディアとの衝突回数を、攪拌容器内へのメディアと銀粉の充填率、および、攪拌容器の回転速度と時間によって積算されるエネルギー量の調整によって制御する。
【0088】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等の脂肪酸が挙げられる。これらの中でも、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸が好ましい。滑剤の添加量は、球状銀粉の質量に対して、例えば、0.05質量%以上0.3質量%以下である。
【0089】
部分的に扁平化する工程は、一例として、ボールミルやビーズミル等の、所謂、媒体ミルを転用して用いてよい。メディアにはSUSやジルコニアなどの公知の材料を用いることができる。媒体ミル中での撹拌は、容器又は撹拌パドルの回転により行ってもよいし、容器を振動させることにより行ってもよい。
【0090】
また、部分的に扁平化する工程は、メディアとの衝突を行った後に、さらにヘンシェル型ミキサーやジェットミル型ミキサー等を用いて解砕処理を行う工程を含むことも好ましい。この解砕処理によって、メディアとの衝突で大きくなりすぎた銀粒子を解砕し、累積90%粒子径(D90)、累積95%粒子径(D95)、並びに、累積100%(即ち、最大粒子)の粒子径(DMAX)の値を低下させることも好ましい。なお、解砕処理を行う工程では、各種粒子径を効果的に小さくすることが可能であることから、ジェットミル型ミキサーを用いることが好ましい。
【0091】
ここで、上記した解砕処理を行う工程においてジェットミル型ミキサーを用いる場合、部分的に扁平化する工程において、解砕した銀粉をサイクロン等にて処理し、小さい微粒子(削りカス等、例えば粒径0.1μm未満)を除去してもよい。なお、サイクロンには、追加気流を加え、補集効率を上げた装置を使用してもよい。
【0092】
<銀粉B>
銀粉Bは、銀粒子Bからなるものである。
【0093】
銀粒子Bのアスペクト比の平均値は、1.5未満であることが必要であり、1.4以下であることが好ましく、1.35以下であることが更に好ましい。
銀粒子Bのアスペクト比の平均値が1.5未満であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減可能な混合銀粉を得ることができる。
一方、粒子Bのアスペクト比の平均値は、例えば1.1以上であり、1.2以上でもよく、1.25以上でもよい。
【0094】
銀粒子Bの形状係数の平均値は、例えば1以上であり、1.3以上でもよく、1.5以上でもよく、例えば1.7以下であり、1.6以下でもよい。
【0095】
銀粒子Bの円相当径(Heywood径)の平均値は、例えば0.1μm以上であり、0.3μm以上でもよく、例えば1μm以下であり、0.5μm以下でもよい。
【0096】
銀粉Bのレーザー回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)は、例えば0.3μm以上であり、0.5μm以上でもよく、例えば1.3μm以下であり、1μm以下でもよい。
【0097】
以下、本発明の混合銀粉の製造方法における、前処理工程、混合工程、及び後処理工程について説明する。
【0098】
<前処理工程>
前処理工程では、混合工程の前に、銀粉A及び銀粉Bの少なくとも一方の銀粉を多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する。
ここで、前処理工程では、導電膜の比抵抗を効果的に低減可能な混合銀粉を得ることができることから、銀粉Aを多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理することが好ましい。
【0099】
前処理工程において、多価カルボン酸による銀粉の表面処理剤付着処理は、特に限定されないが、例えば、サンプルミル、ヘンシェル型ミキサー等の解砕機を用いて行うことができる。
なお、多価カルボン酸による銀粉の表面処理剤付着処理の時間は、通常、1分以上30分以下である。
【0100】
前処理工程の表面処理剤付着処理で使用する多価カルボン酸としては、特に限定されず、従来公知のものが挙げられるが、導電膜の比抵抗を効果的に低減可能な混合銀粉を得ることができることから、多価カルボン酸は、脂肪族多価カルボン酸であることが好ましく、飽和型脂肪族多価カルボン酸であることがより好ましい。
より具体的に、多価カルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、リンゴ酸、ジエチルグルタル酸、3-メチルアジピン酸、ブチルマロン酸、マレイン酸、ジグリコール酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸であることが好ましく、アジピン酸であることが特に好ましい。
【0101】
ここで、多価カルボン酸は、溶媒に溶解した溶液として使用してもよい。多価カルボン酸を溶解するために用いられ得る溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール等が挙げられる。これらの中でも、エタノールが好ましい。
【0102】
前処理工程において、銀粉A及び銀粉Bの合計に対する多価カルボン酸の使用率は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.15質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましい。
上記多価カルボン酸の含有割合が、上記範囲内であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減可能な混合銀粉を得ることができる。
【0103】
<混合工程>
混合工程では、銀粒子A1及び銀粒子A2を含有する銀粉Aと、銀粒子Bからなる銀粉Bとを混合して混合物を得る。なお、混合工程の前に前処理工程を行った場合には、混合工程で得られた混合物は、目的物の混合銀粉に相当し得る。
【0104】
銀粉Aに対する銀粉Bの混合割合(銀粉B/銀粉A)は、質量基準で、例えば10/90以上であり、20/80以上でもよく、30/70以上でもよく、例えば90/10以下でもあり、60/40以下でもよく、40/60以下でもよい。
銀粉Aに対する銀粉Bの混合割合が上記範囲内であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減可能な混合銀粉を得ることができる。
【0105】
<後処理工程>
後処理工程では、混合工程で得られた混合物を多価カルボン酸によって表面処理剤付着処理する。なお、後処理工程で表面処理剤付着処理された混合物は、目的物の混合銀粉に相当し得る。
【0106】
後処理工程において、多価カルボン酸による混合物の表面処理剤付着処理は、特に限定されないが、例えば、サンプルミル、ヘンシェル型ミキサー等の解砕機を用いて行うことができる。
なお、多価カルボン酸による混合物の表面処理剤付着処理の時間は、通常、1分以上30分以下である。
【0107】
後処理工程の表面処理剤付着処理で使用する多価カルボン酸としては、特に限定されず、従来公知のものが挙げられるが、導電膜の比抵抗を効果的に低減可能な混合銀粉を得ることができることから、多価カルボン酸は、脂肪族多価カルボン酸であることが好ましく、飽和型脂肪族多価カルボン酸であることがより好ましい。
より具体的に、多価カルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、リンゴ酸、ジエチルグルタル酸、3-メチルアジピン酸、ブチルマロン酸、マレイン酸、ジグリコール酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸であることが好ましく、アジピン酸であることが特に好ましい。
【0108】
ここで、多価カルボン酸は、溶媒に溶解した溶液として使用してもよい。多価カルボン酸を溶解するために用いられ得る溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0109】
後処理工程において、銀粉A及び銀粉Bの合計に対する多価カルボン酸の使用率は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.15質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましい。
上記多価カルボン酸の含有割合が、上記範囲内であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減可能な混合銀粉を得ることができる。
【0110】
(導電性ペースト)
本発明の導電性ペーストは、上述した本発明の混合銀粉と、バインダーと、溶剤とを含み、任意に、混合銀粉、バインダー、及び溶剤以外の成分(以下、「その他の成分」と称する場合がある。)を含み得る。本発明の導電性ペーストは、本発明の混合銀粉を含むため、導電膜の比抵抗を低減できる。
【0111】
導電性ペースト中における混合銀粉の含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
導電性ペースト中における混合銀粉の含有割合が上記範囲内であれば、導電膜の比抵抗を効果的に低減できる。
【0112】
導電性ペーストのバインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、エチルセルロース等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
導電性ペーストの溶剤(即ち、分散媒)としては、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
導電性ペーストが含み得るその他の成分としては、例えば、ガラスフリット、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0115】
導電性ペーストの製造、即ち、分散や混錬には、超音波分散、ディスパー、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、二軸ニーダー、自公転式撹拌機等を用いてよい。
【0116】
導電性ペーストの粘度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ペースト温度25℃、回転数1rpmの条件で、150Pa・s以上であることが好ましく、200Pa・s以上であることがより好ましく、800Pa・s以下であることが好ましく、750Pa・s以下であることがより好ましい。
導電性ペーストの粘度が150Pa・s以上であれば、印刷時の「にじみ」の発生を効果的に抑制できる。
一方、導電性ペーストの粘度が800Pa・s以下であれば、印刷むらの発生を効果的に抑制できる。
【0117】
本発明の導電性ペーストは、導電膜の形成、即ち、基板上への導電パターンの形成や、電極の形成に適している。例えば、太陽電池用のシリコンウエハ、タッチパネル用フィルム、EL素子用ガラス等の各種基体上に直接、或いは、必要に応じて基体上に更に透明導電膜を設けたその膜上に、塗布又は印刷して導電膜の形成に好適に用いることができる。本発明の導電性ペーストを用いて得られた導電膜は、例えば、太陽電池セルの集電電極、チップ型電子部品の外部電極、RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、エレクトロルミネセンス等の電極又は電気配線用途等に好適に用いられる。
【0118】
導電性ペーストは、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フォトリソグラフィ法等により基板上に印刷することで、所望の形状の導電膜を形成できる。
【実施例
【0119】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0120】
(実施例1)
<銀粉Aの調製>
〔還元工程〕
まず、銀イオン水溶液として銀を68.8kg含む硝酸銀水溶液2922kgに、26質量%のアンモニア水溶液167.1kgを加えて、銀アンミン錯体水溶液を生成した。更に、この銀アンミン錯体水溶液に対して還元剤として6質量%ヒドラジン水溶液266kgを加えて第一液を得た。還元剤の添加速度は、80L/minとした。
【0121】
〔表面処理剤添加工程〕
還元剤添加終了時から5分経過後に、表面処理剤としてオレイン酸を68.8g(銀アンミン錯体水溶液に含まれる銀の質量に対して0.1質量%(オレイン酸68.8g/銀68800g×100で計算))を加えた。表面処理剤の添加後、5分間撹拌し、第二液を得た。第二液は、被覆粒子を含むスラリー状であった。
【0122】
〔分離工程〕
第二液をろ過、水洗した後、乾燥させて、球状銀粉を得た。
【0123】
〔滑剤混合工程〕
上記球状銀粉16.25kgをヘンシェル型ミキサー(三井鉱山(株)製、FMミキサ、型式FM75型、SO型撹拌羽根使用)に投入し、900rpmで1分間攪拌したのち、滑剤としてオレイン酸を37.4g(球状銀粉の質量に対して0.23質量%(オレイン酸37.4g/球状銀粉16250g×100で計算))を投入して、撹拌羽の回転数2200rpmで20分間混合撹拌した。本工程を複数バッチ行って、銀粒子表面に滑剤を分散させた滑剤混合銀粉を得た。
【0124】
〔部分的に扁平化する工程〕
上記滑剤混合銀粉を32kgとSUSボール(直径1.6mm)256kgとを、振動ミル(中央化工機株式会社製、FVR-20型)に投入し、振動数780vpmにて135分間処理し、滑剤混合銀粉を部分的に扁平化した。
【0125】
部分的に扁平化した銀粉(以下、第二銀粉ともいう)はSUSボールと分離した後、上記のヘンシェル型ミキサーにて、2600rpmで25分間撹拌し、解砕した。更に、解砕後の第二銀粉から粗粒を除去するため、乾式篩装置(フロイント・ターボ株式会社製、TS125×200型/目開き27μmスクリーン)でふるい分け、銀粉Aを得た。
【0126】
〔銀粉Aの断面観察〕
銀粉Aにおける銀粒子を観察し、以下の方法により、銀粒子A1に関してアスペクト比の平均値、銀粒子A2に関して、アスペクト比の平均値及び以下の式(2):
比β=銀粒子A2の周囲長/(銀粒子A2の長辺長さ×2+銀粒子A2の短辺長さ×2)・・・(2)
で算出される比βの平均値を算出した。
具体的には、まず、銀粉Aを樹脂(ストルアス社製、エポフィックス樹脂)及び硬化剤(ストルアス社製、エポフィックス硬化剤)中に入れて固化し、クロスセクションポリッシャー(日本ハイテクノロジーズ社製、ArBlade5000)により研磨することにより銀粒子の断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEOL JSM-IT300LV)により各銀粒子を5,000倍で観察した。ここで、絶縁性の樹脂と導電性の銀粒子とのコントラストから、銀粒子の輪郭が鮮明であって、銀粒子の外周を明確に視認できる銀粒子は断面が露出しているものとする。そして、銀粉Aを樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面において、外周を明確に視認できる銀粒子の中から任意に選択した100個以上の銀粒子について、画像解析ソフト(株式会社マウンテック製、画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-View)を用いて銀粒子外周をなぞることで、各銀粒子の長辺長さ、短辺長さ、周囲長を測定した。なお、長辺長さ及び短辺長さは、各銀粒子の外形に外接する長方形の面積が最小になるときの値を自動算出した。
次いで、アスペクト比が2以上の銀粒子を銀粒子A1、アスペクト比が2未満の銀粒子を銀粒子A2とし、銀粒子A1に関してアスペクト比の平均値、銀粒子A2に関してアスペクト比の平均値及び比βの平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0127】
<銀粉Bの準備>
銀粉Bとして、DOWAハイテック株式会社製の「AG-2-1C」を準備した。なお、当該銀粉Bは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.80μmであり、株式会社マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-Viewを用いて合計100個以上の粒子外形の計測を行った形状係数の平均値が1.53、アスペクト比の平均値が1.3、平均Heywood径が0.34μmであった。
【0128】
<混合銀粉の製造>
〔前処理工程〕
まず、アジピン酸(純正化学株式会社製)0.056gをエタノール溶媒0.504gに溶かした溶液を準備した。次いで、この溶液を、上記で得られた銀粉A120gに添加して、サンプルミル(協立理工(株)製、SK-M10)によって4.5分間混合させ、銀粉A表面をアジピン酸で処理した。銀粉Aでは製造過程で表面処理剤や滑剤としてオレイン酸が使用されているが、この処理により、銀粉A表面にさらなる表面処理剤としてアジピン酸を付着させた。
【0129】
〔混合工程〕
上記前処理工程で得られた表面処理剤付着処理済みの銀粉Aと、銀粉Bとを、質量比で60:40(銀粉B/銀粉A=40/60)となるように混合して混合物(即ち、混合銀粉)を製造した。得られた混合銀粉を用いて、以下に示す各種測定を行った。また、得られた混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0130】
〔BET比表面積の測定〕
上記で得られた混合銀粉のBET比表面積は、BET比表面積測定装置(Macsorb HM-model 1210、MOUNTECH社製)を用いて、窒素吸着によるBET1点法により測定した。なお、BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃、10分間とした。結果を表2に示す。
【0131】
〔粒度分布の測定〕
上記で得られた混合銀粉の体積基準の累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)、及び累積95%粒子径(D95)、並びに、累積100%(即ち、最大粒子)の粒子径(DMAX)を以下の方法により測定した。また、累積50%粒子径(D50)に対する、累積90%粒子径(D90)と累積10%粒子径(D10)との差の比[(D90-D10)/D50]を算出した。結果を表2に示す。
混合銀粉0.1gをイソプロピルアルコール(IPA)40mLに加えて超音波ホモジナイザー(装置名:US-150T、株式会社日本精機製作所製;19.5kHz、チップ先端直径18mm)により2分間分散させた後、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクトロラックMT-3300 EXII)により測定した。
【0132】
〔強熱減量(Ig-Loss)値の測定〕
上記で得られた混合銀粉の強熱減量(Ig-Loss)値は、混合銀粉試料3gを精密に秤量(秤量値:w1)して磁性るつぼに入れ、800℃まで加熱し、そして恒量に至るのに十分な時間として800℃で30分間保持し、その後、冷却して再度秤量(秤量値:w2)し、「強熱減量(Ig-Loss)値(質量%)=(w1-w2)/w1×100」から算出した。結果を表2に示す。
【0133】
〔タップ密度の測定〕
上記で得られた混合銀粉のタップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学社製、カサ比重測定装置SS-DA-2)を使用し、銀粉30gを計量して、20mLの試験管に入れ、落差20mmで1,000回タッピングして、「タップ密度=試料質量(g)/タッピング後の試料体積(mL)」から算出した。結果を表2に示す。
【0134】
〔混合銀粉の断面観察〕
混合銀粉における銀粒子を観察し、以下の方法により、
(A)混合銀粉(銀粒子全体)に関して、形状係数の全体平均、長辺長さの全体平均、短辺長さの全体平均及びアスペクト比の全体平均
(B)第一銀粒子に関して、個数割合、形状係数の平均値、短辺長さの平均値及びアスペクト比の平均値
(C)第二銀粒子に関して、個数割合、形状係数の平均値、短辺長さの平均値及びアスペクト比の平均値、並びに、以下の式(1):
比α=第二銀粒子の周囲長/(第二銀粒子の長辺長さ×2+第二銀粒子の短辺長さ×2)・・・(1)
で算出される比αの平均値
(D)第三銀粒子に関して、個数割合、形状係数の平均値、短辺長さの平均値及びアスペクト比の平均値
を算出した。
具体的には、まず、混合銀粉を樹脂(ストルアス社製、エポフィックス樹脂)及び硬化剤(ストルアス社製、エポフィックス硬化剤)中に入れて固化し、クロスセクションポリッシャー(日本ハイテクノロジーズ社製、ArBlade5000)により研磨することにより銀粒子の断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEOL JSM-IT300LV)により各銀粒子を5,000倍(後述する比較例3の場合には3,000倍)で観察した。ここで、絶縁性の樹脂と導電性の銀粒子とのコントラストから、銀粒子の輪郭が鮮明であって、銀粒子の外周を明確に視認できる銀粒子は断面が露出しているものとする。そして、混合銀粉を樹脂に埋め込んだ樹脂ブロックの研磨断面において、外周を明確に視認できる銀粒子の中から任意に選択した100個以上の銀粒子について、画像解析ソフト(株式会社マウンテック社製、画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-View)を用いて銀粒子外周をなぞることで、各銀粒子の長辺長さ、短辺長さ、周囲長、銀粒子の面積、銀粒子の最大長を測定した。なお、長辺長さ及び短辺長さは、各銀粒子の外形に外接する長方形の面積が最小になるときの値を自動算出した。これらの測定値を用いて、(A)混合銀粉(銀粒子全体)に関して、形状係数の全体平均、長辺長さの全体平均、短辺長さの全体平均、アスペクト比の全体平均を算出した。結果を表2に示す。
次いで、長辺長さが3μm以上の銀粒子を第一銀粒子、長辺長さが0.5μm以上3μm未満の銀粒子を第二銀粒子、長辺長さが0.5μm未満の銀粒子を第三銀粒子とし、
(B)第一銀粒子に関して、個数割合、形状係数の平均値、短辺長さの平均値及びアスペクト比の平均値
(C)第二銀粒子に関して、個数割合、形状係数の平均値、短辺長さの平均値及びアスペクト比の平均値、並びに、比αの平均値
(D)第三銀粒子に関して、個数割合、形状係数の平均値、短辺長さの平均値及びアスペクト比の平均値
を算出した。結果を表2に示す。
【0135】
<導電性ペーストの調製>
導電性ペースト中において、上記で得られた混合銀粉をAg量が91質量%、エポキシ樹脂A(ADEKA製、EP4901E)が3.8質量%、エポキシ樹脂B(三菱ケミカル製、jER1009)が1.0質量%、硬化剤(和光純薬製 三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体)が0.2質量%、溶剤(BCA:ブチルカルビトールアセテート)が4.0質量%となるように、これらをプロペラレス自公転式撹拌脱泡装置(株式会社EME製のVMX-N360)を用いて1200rpmで30秒撹拌し混合し、その後、3本ロール(EXAKT社製の80S)を用いて、ロールギャップを100μm~20μmまで通過させて混錬し、導電性ペーストを得た。
得られた導電性ペーストについて粘度を測定し、BCAを用いて粘度が300Pa・sとなるように調整した。なお、導電性ペーストの粘度は、粘度計(ブルックフィールド社製DV-III、CP-52コーン)を用いて、25℃、1rpmで5分間保持した後に測定した値である。
【0136】
<導電膜の形成>
上記で得られた導電性ペーストについて、スクリーン印刷機(マイクロテック社製MT-320T)を用いて、スキージ圧0.18MPaの条件で、幅500μm、長さ37.5mmのラインパターンを印刷して導電性ペーストの膜を形成した。次いで、得られた膜を、大気循環式乾燥機を用い、200℃で30分間加熱硬化し、導電膜を形成した。
【0137】
〔比抵抗値〕
得られた導電膜について、表面粗さ計(東京精密株式会社製サーフコム480B-12)を用いて、アルミナ基板上で膜を印刷していない部分と導電膜の部分との段差を測定することにより、導電膜の平均厚みを測定した。次いで、デジタルマルチメーター(ADVANTEST社製R6551)を用いて、導電膜の抵抗値を測定した。そして、導電膜のサイズ(平均厚み、幅、長さ)より、導電膜の体積を求め、この体積と測定した抵抗値から比抵抗値を求めた。結果を表2に示す。
【0138】
(実施例2)
混合銀粉の製造を以下の方法により行ったこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表1及び2に示す。また、得られた混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0139】
<混合銀粉の製造>
〔前処理工程〕
銀粉Bとして「AG-2-1C」を準備し、そして、アジピン酸を用いて表面処理剤付着処理を行った。なお、当該銀粉Bは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.80μmであり、株式会社マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-Viewを用いて合計100個以上の粒子外形の計測を行った形状係数の平均値が1.53、アスペクト比の平均値が1.3、平均Heywood径が0.34μmであった。
アジピン酸を用いた表面処理剤付着処理は、まず、アジピン酸(純正化学株式会社製)0.084gをエタノール溶媒0.756gに溶かした溶液を準備した。次いで、この溶液を、「AG-2-1C」120gに添加して、サンプルミル(協立理工(株)製、SK-M10)によって4.5分間混合させ、銀粉B表面をアジピン酸で処理した。
【0140】
〔解砕工程〕
まず、上記実施例1の銀粉Aの調製方法と同様の方法で得られた銀粉A120gをサンプルミル(協立理工(株)製、SK-M10)によって4.5分間解砕した。
【0141】
〔混合工程〕
上記解砕工程で得られた銀粉Aと、表面処理剤付着処理済みの銀粉Bとを、質量比で60:40(銀粉B/銀粉A=40/60)となるように混合して混合物(即ち、混合銀粉)を製造した。
【0142】
(実施例3)
混合銀粉の製造を以下の方法により行ったこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表1及び2に示す。また、得られた混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0143】
<混合銀粉の製造>
〔混合工程〕
まず、上記実施例1の銀粉Aの調製方法と同様の方法で得られた銀粉A72gと、銀粉B48gとを混合して混合物を得た。
【0144】
〔後処理工程〕
アジピン酸(純正化学株式会社製)0.0336gをエタノール溶媒0.3024gに溶かした溶液を準備した。次いで、この溶液を、上記混合工程で得られた混合物120gに添加して、サンプルミル(協立理工(株)製、SK-M10)によって7.5分間混合させ、混合物の表面をアジピン酸で処理し、混合銀粉を製造した。
【0145】
(比較例1)
銀粉Bを混合せず、銀粉Aを120g分取し、アジピン酸(純正化学株式会社製アジピン酸、0.0336g)をエタノール溶媒0.3024gに溶かした溶液を添加して、サンプルミルによって4.5分間混合させて、銀粉表面にさらなる表面処理剤としてアジピン酸を付着させた以外は、実施例1と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表1及び2に示す。また、得られた混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。
【0146】
(比較例2)
混合銀粉の製造を以下の方法により行ったこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表1及び2に示す。また、得られた混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。
【0147】
<混合銀粉の製造>
〔解砕工程〕
まず、上記実施例1の銀粉Aの調製方法と同様の方法で得られた銀粉A120gをサンプルミル(協立理工(株)製、SK-M10)によって4.5分間解砕した。
【0148】
〔混合工程〕
上記解砕工程で得られた銀粉Aと、銀粉Bとを、質量比で60:40(銀粉B/銀粉A=40/60)となるように混合して混合物(即ち、混合銀粉)を製造した。
【0149】
(比較例3)
実施例1における表面処理剤添加工程において表面処理剤を添加せず、第二液をろ過、水洗、乾燥した後、150℃で10時間熱処理して粒子同士の凝集を促進させたこと、滑剤混合工程において添加した滑剤を48.8g(滑剤混合工程に供した銀粉の質量に対して0.30質量%)としたこと、部分的に扁平化する工程を以下の通りに行ったこと、及び、混合銀粉の製造を以下の方法により行ったこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表1及び2に示す。また、得られた混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。なお、比較例3における混合銀粉の断面観察は、走査型電子顕微鏡により各銀粒子を3,000倍で観察した。
【0150】
〔部分的に扁平化する工程〕
滑剤混合銀粉を32kgとSUSボール(直径1.6mm)256kgとを、振動ミル(中央化工機株式会社製、FVR-20型)に投入し、部分的に扁平化する処理として振動数1200vpmにて120分間処理し、滑剤混合銀粉を部分的に扁平化して第二銀粉を得た。実施例1よりも振動数が大きいため、実施例1に比べて扁平化が進み、アスペクト比の大きい銀粒子が増えている。
【0151】
第二銀粉はSUSボールと分離した後、上記のヘンシェル型ミキサーにて、2600rpmで25分間撹拌し、解砕した。更に、解砕後の第二銀粉から粗粒を除去するため、乾式篩装置(フロイント・ターボ株式会社製、TS125×200型/目開き27μmスクリーン)でふるい分け、銀粉Aを得た。
【0152】
<混合銀粉の製造>
〔前処理工程〕
銀粉Bとして「AG-2-1C」を準備し、そして、アジピン酸を用いて表面処理剤付着処理を行った。
アジピン酸を用いた表面処理剤付着処理は、まず、アジピン酸(純正化学株式会社製)0.084gをエタノール溶媒0.756gに溶かした溶液を準備した。次いで、この溶液を、「AG-2-1C」120gに添加して、サンプルミル(協立理工(株)製、SK-M10)によって4.5分間混合させ、銀粉B表面をアジピン酸で処理した。
【0153】
〔混合工程〕
上記で得られた銀粉Aと、表面処理剤付着処理済みの銀粉Bとを、質量比で60:40(銀粉B/銀粉A=40/60)となるように混合して混合物(即ち、混合銀粉)を製造した。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
表2からも明らかなように、実施例1~3の混合銀粉は、比較例1~3の混合銀粉と比較して導電膜の比抵抗を低減可能であることが分かる。
【0157】
また、以下の方法で混合銀粉におけるアジピン酸の含有割合の測定を行った。
0.1g~0.2gの試料銀粉を秤量し、メチル化試薬としてHydrogen Chloride-Methanol Reagent(5-10%)[for Esterification](東京化成工業製)をメスピペットを使用して1mL添加し、超音波を1分照射して、50℃の湯浴にて30分温めた。次いで、超音波を1分照射し、これらにより溶出されたアジピン酸のメチル化処理が行われ、アジピン酸ジメチルが生成される。
次いで、メチル化が完了した試料液に、ヘキサン5mLと蒸留水4mLを添加し、1minの振とう抽出を4回行うことで、アジピン酸ジメチルを有機溶媒(ヘキサン)に抽出させた。
そして、内標準物質としてアラキジン酸メチルを用い、アジピン酸ジメチルが抽出された有機溶媒に対しヘキサンを加えて25mL定容したものを、ガスクロマト定量分析装置であるGC-MS(GC:Agilent Technologies 7980B、MS:Agilent Technologies 5977B)を用いてMSイオン化EI法による測定を行い、求められたアジピン酸ジメチル量から換算計算によってアジピン酸量を算出した。この算出したアジピン酸量と試料銀粉量を比較することで、試料銀粉に含まれるアジピン酸量(質量%)が定量化される。
【0158】
このアジピン酸の含有割合の測定方法によって、混合銀粉に含まれるアジピン酸量を調べたところ、実施例1は0.021質量%、実施例2は0.023質量%、実施例3は0.024質量%、比較例1は0.025質量%、比較例3は0.022質量%であった。アジピン酸を添加していない比較例2は0.001質量%以下であった。
【0159】
(実施例4)
銀粉Aの調製における部分的に扁平化する工程、及び、混合銀粉の製造を以下の方法により行ったこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表3及び4に示す。また、得られた混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図8に示す。
【0160】
<銀粉Aの調製>
〔部分的に扁平化する工程〕
上記滑剤混合銀粉を32kgとSUSボール(直径1.6mm)256kgとを、振動ミル(中央化工機株式会社製、FVR-20型)に投入し、振動数780vpmにて135分間処理し、滑剤混合銀粉を部分的に扁平化した。
【0161】
部分的に扁平化した銀粉はSUSボールと分離した後、ジェットミル型ミキサー(日清エンジニアリング製ジェットミルCJ-25)にて、銀粉1kgあたりに供給される圧縮空気(0.7MPa)の供給量を11.6mとする条件で解砕した。そして、解砕した銀粉を、サイクロンにて、銀粉1kgあたりの空気輸送に使用される空気量を46mの条件で処理し、小さい微粒子(削りカス、例えば粒径0.1μm未満)を、解砕した銀粉から除いた。サイクロンには、追加気流を加え、補集効率を上げた装置を使用してもよい。
【0162】
<混合銀粉の製造>
〔混合工程〕
上記で得られた銀粉A84gと、銀粉B36gとを混合して混合物を得た。
【0163】
〔後処理工程〕
アジピン酸(純正化学株式会社製)0.0336gをエタノール溶媒0.3024gに溶かした溶液を準備した。次いで、この溶液を、上記混合工程で得られた混合物120gに添加して、サンプルミル(協立理工(株)製、SK-M10)によって4.5分間混合させ、混合物の表面をアジピン酸で処理し、混合銀粉を製造した。
【0164】
(比較例4)
銀粉Bを混合せず、銀粉Aを120g分取し、アジピン酸(純正化学株式会社製アジピン酸、0.0336g)をエタノール溶媒0.3024gに溶かした溶液を添加して、サンプルミルによって4.5分間混合させて、銀粉表面にさらなる表面処理剤としてアジピン酸を付着させた以外は、実施例4と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表3及び4に示す。また、得られた混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図9に示す。
【0165】
(比較例5)
混合銀粉の製造を以下の方法により行ったこと以外は、実施例4と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表3及び4に示す。また、得られた混合銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図10に示す。
【0166】
<混合銀粉の製造>
〔解砕工程〕
まず、上記実施例4の銀粉Aの調製方法と同様の方法で得られた銀粉A120gをサンプルミル(協立理工(株)製、SK-M10)によって4.5分間解砕した。
【0167】
〔混合工程〕
上記解砕工程で得られた銀粉Aと、銀粉Bとを、質量比で70:30(銀粉B/銀粉A=30/70)となるように混合して混合物(即ち、混合銀粉)を製造した。
【0168】
【表3】
【0169】
【表4】
【0170】
表4からも明らかなように、実施例4の混合銀粉は、比較例4及び5の混合銀粉と比較して導電膜の比抵抗を低減可能であることが分かる。
【0171】
また、上述のアジピン酸の含有割合の測定方法によって、混合銀粉に含まれるアジピン酸量を調べたところ、実施例4は0.026質量%、比較例4は0.026質量%であった。アジピン酸を添加していない比較例5は0.001質量%以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明によれば、導電膜の比抵抗を低減可能な混合銀粉を提供できる。
また、本発明によれば、導電膜の比抵抗を低減可能な混合銀粉の製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、導電膜の比抵抗を低減可能な導電性ペーストを提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10