(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241219BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2021009566
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】山下 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一平
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191154(JP,A)
【文献】特開2015-148702(JP,A)
【文献】特開2017-090621(JP,A)
【文献】特開2018-045022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の回転体と、
前記回転体に接触してニップ部を形成する接触部材と、
前記回転体を加熱する熱源と、
前記回転体の軸方向の熱移動を補助する熱移動補助部材とを備え、
前記ニップ部に記録媒体を通過させて前記記録媒体に画像を定着する定着装置において、
前記記録媒体の軸方向端部の端部領域の印字率に基づいて、単位時間当たりの処理枚数を設定する処理枚数設定手段を備
え、
前記処理枚数設定手段は、前記端部領域の印字率が0%のとき、前記処理枚数を前記印字率が0%以外のときの前記処理枚数よりも多くすることを特徴とする定着装置
。
【請求項2】
請求項
1に記載の定着装置において、
前記処理枚数設定手段は、前記端部領域の印字率が0%以外のとき、前記回転体の前記記録媒体の軸方向中央に対応する箇所の温度と前記回転体の前記記録媒体の軸方向端部に対応する箇所の温度との温度差が、規定温度差以下となる処理枚数に設定することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の定着装置において、
前記温度差は、前記回転体の前記記録媒体の軸方向端部に対応する箇所の温度が、前記記録媒体の軸方向中央に対応する箇所の温度よりも高いときの温度差であることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3いずれか一項に記載の定着装置において、
前記処理枚数設定手段が設定した処理枚数に基づいて、前記ニップ部を通過する前記記録媒体の間隔を制御する搬送間隔制御手段を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4いずれか一項に記載の定着装置において、
前記処理枚数設定手段が設定した処理枚数に基づいて、前記ニップ部を通過する前記記録媒体の搬送速度を制御する搬送速度制御手段を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5いずれか一項に記載の定着装置において、
前記印字率は、画像形成装置が画像を形成するときの画像データに基づいて算出することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6いずれか一項に記載の定着装置において、
前記熱移動補助部材を、前記回転体に接触するように配置したことを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1乃至
6いずれか一項に記載の定着装置において、
前記熱移動補助部材は、前記回転体に設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項1乃至
6いずれか一項に記載の定着装置において、
前記熱移動補助部材は、前記接触部材に接触するように配置したことを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項1乃至
9いずれか一項に記載の定着装置において、
前記処理枚数設定手段は、連続で定着処理する記録媒体の枚数が、規定枚数を越えるときに前記記録媒体の前記軸方向端部の端部領域の印字率に基づいて、前記処理枚数を設定することを特徴とする定着装置。
【請求項11】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体に形成された画像を前記記録媒体に定着させる定着装置とを備えた画像形成装置において、
前記定着装置として、請求項1乃至
10いずれか一項に記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無端状の回転体と、回転体の外周面に接触してニップ部を形成する接触部材と、回転体を加熱する熱源と、回転体の回転軸方向の熱移動を補助する熱移動補助部材とを備え、ニップ部に記録媒体を通過させて記録媒体に画像を定着する定着装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記定着装置として、回転体たる定着ベルトを介して接触部材たる加圧ローラに接触するニップ形成部材と定着ベルトとの間に熱移動補助部材を設けたものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録媒体の軸方向端部の端部領域に形成された画像にホットオフセットが発生し、生産性を十分に高めることができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、無端状の回転体と、前記回転体に接触してニップ部を形成する接触部材と、前記回転体を加熱する熱源と、前記回転体の回転軸方向の熱移動を補助する熱移動補助部材とを備え、前記ニップ部に記録媒体を通過させて前記記録媒体に画像を定着する定着装置において、前記記録媒体の前記軸方向端部の端部領域の印字率に基づいて、単位時間当たりの処理枚数を設定する処理枚数設定手段を備え、前記処理枚数設定手段は、前記端部領域の印字率が0%のとき、前記処理枚数を前記印字率が0%以外のときの前記処理枚数よりも多くすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、記録媒体の軸方向両端の端部領域の画像のホットオフセットを抑え、かつ、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図。
【
図3】各ハロゲンヒータの構成について説明する図。
【
図4】A6サイズ用紙を150枚連続印刷したときの定着ベルトの温度分布を示すグラフ。
【
図5】(a)は、定着ベルトの通紙領域の最大温度差とスループット(CPM)との関係を示すグラフであり、(b)は、定着ベルト21の非通紙領域の最大温度と、スループット(CPM)との関係を示すグラフ。
【
図6】実験例1~3のX=40[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(40)と、X=50[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(50)と、非通紙領域の最大温度とをプロットしたグラフ。
【
図7】本実施形態の定着装置を制御する制御系の要部の一例を示すブロック図。
【
図8】連続印刷時におけるスループット(CPM)設定フロー図。
【
図10】変形例1におけるA6サイズ用紙を150枚連続印刷したときの定着ベルトの温度分布を示すグラフ。
【
図11】(a)は、変形例1における定着ベルトの通紙領域の最大温度差とスループット(CPM)との関係を示すグラフであり、(b)は、変形例1における定着ベルト21の非通紙領域の最大温度と、スループット(CPM)との関係を示すグラフ。
【
図12】実験例4~6のX=40[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(40)と、X=50[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(50)と、非通紙領域の最大温度(X=80[mm]の位置における温度)とをプロットしたグラフ。
【
図13】熱移動補助層を設けた定着ベルトの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した定着装置及び画像形成装置の一実施形態について説明する。まず、実施形態に係る定着装置や画像形成装置の基本的な構成について説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る画像形成装置100を示す概略構成図である。同図において、画像形成装置100は、タンデム方式のカラーレーザープリンタである。その装置本体の中央部には、イエロー(Y),シアン(C),マゼンタ(M),ブラック(Bk)のトナー像を作像する四つの作像部1Y,1M,1C,1Bkからなる画像ステーションが設けられている。
【0010】
四つの作像部1Y,1M,1C,1Bkは、無端状の中間転写ベルト11の展張方向に沿って並置されており、互いに異なる色のトナーによって静電潜像を現像してトナー像を得る点の他は、互いに同様の構成となっている。
【0011】
Y,M,C,Bk用の作像部は、Y,M,C,Bk用の静電潜像を担持するドラム状の感光体120Y,120C,120M,120Bkを有している。それら四つの作像部の下方には、Y,C,M,Bk用の感光体120Y,120C,120M,120Bkに対して光走査を行う光書込装置6が配設されている。
【0012】
Y,M,C,Bk用の作像部において作像動作が開始されると、Y,C,M,Bk用の感光体120Y,120C,120M,120Bkが、駆動装置によって図中時計回り方向に回転駆動される。そして、感光体120Y,120C,120M,120Bkの表面が、帯電装置30Y,30C,30M,30Bkによって所定の極性に一様に帯電される。
【0013】
光書込装置6は、光源としての半導体レーザー、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラー、光偏向手段としての回転多面鏡(ポリゴンミラー)などを有している。そして、帯電後の感光体120Y,120C,120M,120Bkの表面に、画像情報に基づいて生成した書き込み光(レーザー光)Lbが照射される。光書込装置に6は、フルカラー画像の画像情報をY,C,M,Bkの色情報に色分解したY,C,M,Bk用の画像情報が提供される。書き込み光Lbの照射により、感光体120Y,120C,120M,120Bkの表面には静電潜像が形成される。
【0014】
感光体120Y,120C,120M,120Bk上に形成された静電潜像は、Y,C,M,Bkのトナーを用いる現像装置40Y,40C,40M,40Bkによって現像される。この現像により、感光体120Y,120C,120M,120Bkの表面には、Y,C,M,Bkトナー像が作像される。
【0015】
四つの作像部1Y,1M,1C,1Bkの上方には、無端状の中間転写ベルト11を有する転写ユニット10が設けられている。転写ユニット10において、中間転写ベルト11のループ内側に配設されたY,C,M,Bk用の一次転写ローラ112Y,112C,112M,112Bkは、感光体120Y,120C,120M,120Bkとの間に中間転写ベルトを挟み込んでいる。これにより、感光体120Y,120C,120M,120Bkと、中間転写ベルト11との当接によるY,C,M,Bk用の一次転写ニップが形成されている。
【0016】
作像動作が開始されると、転写ユニット10の駆動ローラ72が図中反時計回り方向に回転駆動して、中間転写ベルト11を図中矢印A1方向に無端移動させる。また、一次転写ローラ112Y,112C,112M,112Bkに、トナーの帯電極性とは逆極性の定電圧または定電流制御された電圧が印加される。これにより、Y,C,M,Bk用の一次転写ニップに一次転写電界が形成される。
【0017】
感光体120Y,120C,120M,120Bk上に作像されたY,C,M,Bkトナー像は、Y,C,M,Bk用の一次転写ニップ内で、ニップ圧や一次転写電界の作用によって中間転写ベルト11上に順次重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト11の表面に四色のトナー像が担持される。
【0018】
転写ユニット10において、駆動ローラ72は、中間転写ベルト11を介して二次転写ローラ5に対向する二次転写対向ローラとしても機能する。また、従動ローラ73は、中間転写ベルト11を介して転写ベルトクリーニング装置113に対向するクリーニングバックアップローラとしても機能する。更に、従動ローラ73は、中間転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えているため、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。
【0019】
Y,C,M,Bk用の一次転写ニップを通過した後の感光体120Y,120C,120M,120Bkには、中間転写ベルト11に一次転写されなかった転写残トナーが付着している。その転写残トナーは、Y,C,M,Bk用のクリーニング装置50Y,50C,50M,50Bkによって感光体120Y,120C,120M,120Bkから除去される。その後、感光体120Y,120C,120M,120Bkの表面は、除電装置によって除電されて表面電位が初期化される。
【0020】
中間転写ベルト11の図中右側に配設された二次転写ローラ5は、中間転写ベルト11のおもて面に当接して二次転写ニップを形成しながら、中間転写ベルト11に従動して連れ回りする。この二次転写ローラ5には、電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)と交流電圧(AC)との少なくとも一方からなる二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写ニップには二次転写電界が形成される。
【0021】
画像形成装置100の筐体内における最下部の領域には、用紙Sを積載収容する用紙給送装置61が配設されている。この用紙給送装置61は、最上位の用紙Sの上面に当接させている給送ローラ3を図中反時計回り方向に回転駆動することで、最上位の用紙Sを用紙搬送路に送り込む。
【0022】
用紙搬送路は、用紙Sを用紙給送装置61から二次転写ニップを経由して装置外まで排出するための搬送路である。この用紙搬送路の二次転写ローラ5の位置よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Sを繰り出すように搬送するレジストローラ対4が配設されている。
【0023】
用紙給送装置から用紙搬送路に送り込まれた用紙Sは、レジストローラ対4のレジストニップに突き当たって一時停止される。レジストローラ対4は、レジストニップに突き当たった用紙Sを、中間転写ベルト11上の四色のトナー像に同期させるタイミングで回転駆動して二次転写ニップに向けて送り出す。
【0024】
二次転写ニップ内では、ニップ圧や二次転写電界の作用により、中間転写ベルト11上の四色のトナー像が用紙Sの表面に一括二次転写される。二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト11には、用紙Sに二次転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、転写ベルトクリーニング装置113によって除去され、除去されたトナーは廃トナー収容器へと搬送され回収される。
【0025】
中間転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有する転写ベルトクリーニング装置113は、中間転写ベルト11を介して従動ローラ73に対向するように配設されている。そして、クリーニングブラシとクリーニングブレードとにより、中間転写ベルト11上の転写残トナーが掻き取り除去される。転写ベルトクリーニング装置113から伸びた廃トナー移送ホースは、廃トナー収容器の入口部に接続されている。
【0026】
用紙Sとしては、普通紙の他に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、用紙等が挙げられる。用紙給送装置61の他に、手差しで用紙Sを供給できるように手差し給紙機構を設けてもよい。
【0027】
二次転写ニップを通過した用紙Sは、定着装置20へと搬送され、定着装置20によって表面にトナー像が定着せしめられる。その後、定着装置20を通過した用紙Sは、排紙ローラ対7によって装置外へ排出され、排紙トレイ17上にストックされる。
【0028】
なお、以上の説明は、用紙S上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部のいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つまたは3つの作像部を使用して、2色または3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0029】
また、画像形成装置100の筐体の上部領域には、Y,C,M,Bkトナーを収容するトナーボトル9Y,9C,9M,9Bkが配設されている。これらのトナーボトル9Y,9C,9M,9Bkは、排紙トレイ17の下側に設けられた複数のボトル収容部それぞれに着脱可能に装着されている。
【0030】
また、トナーボトル9Y,9C,9M,9Bkと、Y,C,M,Bk用の作像部の現像装置40Y,40C,40M,40Bkは、補給路によって接続されている。そして、現像装置40Y,40C,40M,40Bkには、その補給路を介してトナーボトル9Y,9C,9M,9Bk内のトナーが補給される。
【0031】
定着装置20は、定着ベルト21を、輻射によって加熱する方式を採用することで、金属熱伝導体を介して間接的に加熱する方式に比べて、加熱待機時からのファーストプリントタイムを短縮できるようになっている。
【0032】
図2は、実施形態に係る定着装置20を示す概略構成図である。定着装置20は、回転体たる無端状の定着ベルト21、これのループ外側で定着ベルト21に当接してニップ部たる定着ニップを形成する接触部材たる加圧ローラ23を有している。また、定着装置20は、ループ内側で定着ベルト21における定着ニップの裏側領域に摺擦する熱移動補助部材24を有している。また、定着ベルト21のループ内に配設されたニップ形成部材25、ハロゲンヒータ22A、22B、反射部材26、ステー部材27などもしている。また、定着装置20は、定着ベルト21の端部の温度を検知する端部温度検知センサ28Bと、定着ベルト21の中央部の温度を検知する中央部温度検知センサ28Aとを備えている。
【0033】
加圧ローラ23は、ベルトループ内のニップ形成部材25に向けて付勢されながら、定着ベルト21のおもて面に当接して定着ニップを形成する。
【0034】
定着ベルト21のループ内に配設された熱源たる第一ハロゲンヒータ22Aと、第二ハロゲンヒータ22Bは、輻射によって定着ベルト21を内側から直接加熱する。ステー部材27に固定された反射部材26は、各ハロゲンヒータ22A、22Bから発せられる輻射熱を定着ベルト21の内周面に向けて反射させる。これにより、各ハロゲンヒータ22A、22Bの輻射熱がステー部材27に当たらないようにできる。その結果、ステー部材27を輻射で加熱してしまうことによる無駄なエネルギー消費が回避できる。反射部材26を設ける代わりに、ステー部材27の表面に鏡面処理を施してもよい。
【0035】
定着ベルト21の周方向における全域のうち、各ハロゲンヒータ22A、22Bからの輻射熱によって加熱された領域は、定着ベルト21の無端移動に伴って定着ニップに進入する。この定着ニップの裏側では、薄厚の熱移動補助部材24が定着ベルト21の内周面とニップ形成部材25との間に介在している。熱移動補助部材24は、定着ベルト21の内周面における全域のうち、定着ニップの裏側領域に摺擦しながら、定着ベルト21の熱のベルト表面方向における均一化を助長する。これにより、定着ベルト21の幅方向における全域のうち、加圧ローラ23に当接しない両端部の温度上昇が抑えられる。
【0036】
熱移動補助部材24は、銅やアルミニウムなど熱伝導率が極めて高い材料からなる。定着ベルト21との摺動性を向上させるために、熱移動補助部材24の表面を、PTFEやPFAなどの摩擦抵抗の小さな樹脂でコーティングするのが好ましい。但し、良好な熱伝導性を発揮させるために、コーティング層については、10~50[μm]程度の厚みにすることが望ましい。
【0037】
熱移動補助部材24の形状は平坦状であるが、凹形状やその他の形状を採用してもよい。凹形状にした場合には、定着ニップ出口における用紙S先端部の反り方向を加圧ローラ23寄りにするので、次のことが可能になる。即ち、定着ベルト21のおもて面からの用紙Sの分離性を向上させて、ジャムの発生を抑えることができる。
【0038】
定着ベルト21のベルト基体は、ニッケルやステンレスなどの金属、あるいはポリイミドなどの耐熱性樹脂からなる無端ベルトまたは無端フィルムからなる。このベルト基体のおもて面に、PFAやPTFEなどの樹脂からなる離型促進層を被覆し、定着ベルト21のおもて面へのトナーの固着を抑制している。ベルト基体と離型促進層との間に、シリコーンゴムなどの弾性材料からなる弾性層を設けてもよい。
【0039】
定着ベルト21に弾性層を設けない場合には、その分だけベルト全体の熱容量を低減して用紙Sへのトナー定着性を向上させることができる。但し、定着ベルト21のおもて面の微小な凹凸形状をトナー像に転写して画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が発生しやすくなる。これに対し、弾性層を設けた場合には、その分だけベルト全体の熱容量を増加させてしまうが、前述の光沢ムラの発生を抑えることができる。弾性層の厚みについては、100[μm]以上にすることが望ましい。
【0040】
ステー部材27のベルト幅方向の両端部は、フランジに固定されている。このフランジは、定着ベルト21における定着ニップ以外の領域を保持してその形状を所定の形状に維持する役割も担っている。
【0041】
加圧ローラ23は、芯金23aと、これの表面に被覆された弾性ゴム層23bと、これの表面に被覆されたPFA又はPTFEからなる離型促進層とを有している。そして、加圧ローラ23は、加圧ローラ駆動モータ29(
図7参照)によって図中時計回り方向に回転駆動する。この加圧ローラ23に当接する定着ベルト21は、加圧ローラ23との連れ回りによって図中反時計回り方向に無端移動する。
【0042】
また、加圧ローラ23は、スプリングなどの付勢手段によって定着ベルト21に向けて付勢されてニップ形成部材25との間に定着ベルト21を挟み込みながら、弾性ゴム層23bを弾性変形させる。この弾性変形により、ローラ周方向の定着ニップの長さが大きくなる。
【0043】
芯金23aは、中空構造のものでもよいし、中空のないものでもよい。中空構造のものを採用した場合は、中空内にハロゲンヒータなどの熱源を設けてもよい。
【0044】
弾性ゴム層23bの材料としては、ソリッドゴムを例示することができる。また、芯金23a内に熱源を設けていない場合は、弾性ゴム層23bの材料としてスポンジゴムを用いても良い。スポンジゴムを用いる方が、ソリッドゴムを用いる場合に比べて加圧ローラ23の断熱性を高めて定着ベルト21の熱を奪い難くすることができる。
【0045】
図3は、各ハロゲンヒータ22A,22Bの構成について説明する図である。
図3に示すように、第一ハロゲンヒータ22Aは、幅方向中央部にのみ発熱領域を有する配熱特性を有しており、第二ハロゲンヒータ22Bは、幅方向両端にのみ発熱領域を有する配熱特性を有している。
【0046】
第一ハロゲンヒータ22Aの発熱領域は、220mmあり、レターサイズ以下の小サイズ用紙に対応した熱源となっている。第一ハロゲンヒータ22Aと第二ハロゲンヒータ22Bの両方を点灯させたときの発熱領域は、330mmであり、本画像形成装置が通紙可能な最大サイズ幅(A3縦ノビサイズ)にまで対応する発熱領域となる。
【0047】
サイズ幅が、レターサイズ以上の大サイズ紙を通紙する場合は、端部温度検知センサ28Bの検知結果に基づいて第二ハロゲンヒータ22Bを点灯制御し、定着ベルト21の端部領域を定着温度に維持する。また、中央部温度検知センサ28Aの検知結果に基づいて第一ハロゲンヒータ22Aが点灯制御され、定着ベルト21の中央領域が定着温度に維持される。中央部温度検知センサ28Aおよび端部温度検知センサ28Bは、サーモパイル、サーミスタなどの公知の温度検知センサを用いることができる。
【0048】
上述した配熱特性の第一ハロゲンヒータ22Aと第二ハロゲンヒータ22Bとを備えることで、小サイズ用紙のときは、第二ハロゲンヒータ22BをOFFにし、定着ベルト21の端部を加熱することなく、定着を行うことができる。これにより、短い紙間で小サイズ用紙を大量に連続印刷する場合に、定着ベルト21の端部が異常高温となるのを抑制することができる。
【0049】
図4は、冷間状態から線速250[mm/s]、定着温度146[℃]、A6サイズ紙(RICOH Mypaper)を150枚連続通紙した時の枚数に対応した定着ベルトの温度分布を示すグラフである。また、熱移動補助部材24は、厚み0.6[mm]のアルミ板を用い、単位時間当たりの印刷(処理)枚数:CPM(Copy Per Minutes)(以下、スループットという)、が37CPMとなるように紙間を設定して行った。また、定着ベルト21の幅方向中央部に配置した中央部温度検知センサ28A(サーモパイル)の温度検知結果に基づいて、定着温度が146[℃]となるように第一ハロゲンヒータ22Aのみを点灯制御した。定着ベルト21の温度は定着ニップ上流側に熱電対を10[mm]間隔で配置し計測を行った。なお、測定は、定着ベルト21の幅方向片側のみ行い、
図4のグラフでは、(定着ベルトの幅方向中央を原点X=0[mm])としている。
【0050】
第一ハロゲンヒータ22Aの発熱領域は、X=110[mm]まである。一方、A6サイズ紙の幅方向端部は、X=52.5[mm]である。そのため、X=52.5~110[mm]までの定着ベルト21の非通紙領域は、第一ハロゲンヒータ22Aにより加熱される。このように、非通紙領域の一部が第一ハロゲンヒータ22Aにより加熱されるため、
図4に示すように、定着ベルト21の非通紙部の最大温度は通紙枚数毎に上昇する。そして、非通紙領域における第一ハロゲンヒータ22Aにより加熱される加熱領域(X=52.5~110[mm])のほぼ中央のX=80[mm]位置が最も高温となっている。このように、非通紙領域の温度が高温となると、定着ベルト21の熱による劣化が早まってしまう。
【0051】
また、定着装置は、厚み0.6[mm]のアルミ板からなる熱移動補助部材24を有しているため、定着ベルトの非通紙部の熱は、この熱移動補助部材24により幅方向に移動する。その結果、定着ベルト21は、
図4に示すようにX=80[mm]位置から、両側へ緩やかに下降するような温度分布となる。そして、定着ベルト21の通紙領域の温度が通紙領域の端部(用紙の端部が接触する箇所:X=52.5[mm])にいくに従って高くなり、通紙領域の中央部と端部との温度差が大きくなった。
この
図4では、用紙端部から2.5[mm]内側のX=50[mm]の位置に配置された熱電対により測定された温度は、15枚目と150枚目でほぼ同じ温度であった。
【0052】
このように、第一ハロゲンヒータ22Aの発熱領域よりに対して所定長さ以上短い用紙サイズを通紙する場合、非通紙領域の温度が高温化し、それに伴い定着ベルトの通紙領域の端部領域の温度が定着ベルトの中央部(定着温度)よりも高くなることがわかった。このように、定着ベルトの通紙領域の端部領域の温度が定着温度に対して高くなることで、用紙の端部領域にホットオフセットが発生するおそれがある。
【0053】
下記表1は、スループット(単位時間当たりの印刷枚数)を互いに異ならせて、A6サイズ用紙を150枚連続通紙後の定着ベルトの通紙領域における最大温度差と、非通紙領域の最大温度とを測定したした結果を示すものである。定着ベルト21の通紙領域における最大温度差として、X=50[mm]の位置における定着ベルト21の温度と中央部の定着ベルト21の温度(定着温度)との温度差Δ(50)を測定した。非通紙領域の最大温度として、X=80[mm]の位置における定着ベルト21の温度を測定した。なお、線速、温度制御、紙種条件は、
図4での測定条件と同条件とした。また、用紙上には、用紙幅方向一端から内側の2.5mmの位置から用紙幅方向他端から内側の2.5[mm]までの幅方向全域にパターンを印字し、ホットオフセットの有無を確認した。なお、用紙の中央から40[mm]の位置から50[mm]の位置までの後述する用紙端部領域における印字率が20%となるように、用紙に形成するパターンの数、パターンの搬送方向長さを調整した。ホットオフセットが確認されたときは、「×」判定、ホットオフセットが確認できないときは、「〇」判定とした。また、非通紙領域の最大温度としてのX=80mmの位置における定着ベルトの温度は、230℃以下を「〇」判定、230℃を越える場合は、「×」判定とした。
【0054】
【0055】
上記表1の従来例1、2は、熱移動補助部材24を設けていない例であり、実験例1~3は、
図3と同様、厚み0.6[mm]のアルミ板からなる熱移動補助部材24を設けた例である。
【0056】
また、
図5(a)は、定着ベルト21の通紙領域の最大温度差(X=50[mm]に位置における中央部との温度差Δ(50))とスループット(CPM)との関係を示すグラフである。
図5(b)は、定着ベルト21の非通紙領域の最大温度(X=80[mm]の位置における温度)と、スループット(CPM)との関係を示すグラフである。
【0057】
スループット37CPMで連続印刷した熱移動補助部材24を有していない従来例1は、ホットオフセット評価、非通紙領域の耐熱温度評価ともに「〇」であった。しかし、40CPMで連続印刷した熱移動補助部材24を有していない従来例2は、非通紙領域の最高温度が230℃を越えてしまい、「×」判定となった。
【0058】
熱移動補助部材24を有していない従来例では、非通紙領域の熱が、幅方向へ移動し難いため、非通紙領域の最高温度が上がりやすく、40CPMで耐熱温度が230[℃]を越えてしまう。よって、熱移動補助部材24を有していない従来例では、最大CPMは、非通紙領域の最大温度により決まり、A6サイズ用紙の連続印刷時における最大CPMは、37CPMとなる。
【0059】
一方、熱移動補助部材24を有する実験例1~3では、スループット45.5CPMの実験例3でも、非通紙領域の最大温度を230℃以下に抑えることができた。これは、実験例1~3は、熱移動補助部材24を有しており、非通紙領域の熱が積極的に幅方向へ移動し、非通紙領域の最大温度が抑えらる。その結果、スループット45.5CPMと高い生産性で印刷しても、非通紙領域の最大温度を230℃以下に抑えることができたと考えられる。
【0060】
しかしながら、実験例2、実験例3では、パターンの幅方向両端部にホットオフセットが確認された。表1、
図5(a)に示すように、通紙領域の最大温度差Δ(50)(X=50mm位置の温度と中央部との温度差)は、スループット(CPM)が多くなるほど高くなっている。そして、実験例2、実験例3では、最大温度差Δ(50)が、31℃を越えていた。このことから、最大温度差Δ(50)(定着温度に対する温度差)が、31℃を越えると、ホットオフセットが発生するおそれがあることがわかった。
【0061】
実験例2、3でホットオフセットが発生した理由は、実験例1~3では、熱移動補助部材24を設けているため、高温の非通紙領域の熱が通紙領域へ移動し、通紙領域の端部の温度を上昇させてしまうためと考えられる。
【0062】
実験例1~3から、熱移動補助部材24を設けた場合は、最大スループット(CPM)は、通紙領域の温度差により決まる。具体的には、
図5(a)の図中点線で示すホットオフセットが〇となる境界の温度差Δm(約31℃)と、上述の実験例1、2,3のプロットを近似した実線との交点から求めることができる。
図5(a)の例では、A6サイズ用紙の連続印刷時における最大スループットは、40CPMとなる。
【0063】
図6は、実験例1~3のX=40[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(40)と、X=50[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(50)と、非通紙領域の最大温度(X=80[mm]の位置における温度)とをプロットしたグラフである。
【0064】
図6から、スループットが51CPMを越えると、定着ベルト21の非通紙領域の最大温度が耐熱温度(230℃)を越えることがわかる。一方、X=40[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(40)は、51CPMでも、ホットオフセットが発生する温度差Δm(約31℃)になることはない。従って、X=40[mm]の位置よりも幅方向内側においては、非通紙領域の最大温度が耐熱温度(230℃)を越えないスループット(CPM)であれば、ホットオフセットは発生することがない。
【0065】
このことから、用紙のX=40[mm]の位置から幅方向端部までの用紙端部領域に画像がなければ、スループット51CPMでもホットオフセットが発生せず、良好な画像を得ることができる。よって、用紙端部領域に画像がないときは、スループットを51CPMで印刷を行うことができる。
【0066】
一方、この用紙端部領域に画像があるときは、スループットが51CPMであると、X=50[mm]の位置の温度差Δ(50)が、ホットオフセットが〇となる境界の温度差Δm(約31℃)を越えてしまう。その結果、用紙端部領域の画像にホットオフセットが発生するおそれがある。よって、X=50[mm]の位置の温度差Δ(50)が、ホットオフセット境界温度差Δm(約31℃)以下となるスループット(40CPM)にする。これにより、端部領域の画像のホットオフセットの発生が防止される。
【0067】
このような知見に基づき、本実施形態は、用紙の端部領域に画像があるか否かで、スループットを変更するようにした。以下、本実施形態の特徴部について、図面を用いて具体的に説明する。
【0068】
図7は、本実施形態の定着装置を制御する制御系の要部の一例を示すブロック図である。
コントローラ200は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリなどで構成されている。コントローラ200は、光書込装置6、作像部1Y,1C,1M,1Bk、中間転写ベルト11の回転駆動部などを含む転写ユニット10に接続されている。また、コントローラ200は、用紙搬送部201、外部通信インターフェース202、操作表示部203などにも接続されている。用紙搬送部201は、給送ローラ3やレジストローラ対4等の用紙を搬送する搬送ローラ対を駆動するものである。外部通信インターフェース202は、外部のプリンタドライバーがインストールされたパーソナルコンピュータなどと通信するものである。操作表示部203は、キーパッドなどのユーザーが操作する操作部と、液晶パネルなどの表示部とを有するものである。
【0069】
コントローラ200は、定着装置20の第一ハロゲンヒータ22A、第二ハロゲンヒータ22B、中央部温度検知センサ28A、端部温度検知センサ28Bに接続されている。また、コントローラ200は、定着装置20の加圧ローラ23を回転駆動する加圧ローラ駆動モータ29に接続されている。
【0070】
コントローラ200は、外部通信インターフェース202を介して外部のプリンタドライバーがインストールされたパーソナルコンピュータなどから印刷ジョブ(画像形成ジョブ)の指令や画像データを受信する。そして、コントローラ200は、予め組み込まれている制御プログラムを実行することにより、用紙にカラー画像を形成して出力する画像形成動作を制御する。
【0071】
コントローラ200の不揮発性メモリには、用紙給送装置61にセットされた用紙Sのサイズ情報などが記憶されている。ユーザーの操作表示部203の操作により用紙給送装置61にセットされた用紙Sのサイズ情報が入力され、この入力された用紙のサイズ情報が不揮発性メモリに記憶される。また、外部のプリンタドライバーがインストールされたパーソナルコンピュータから用紙給送装置61にセットされた用紙Sのサイズ情報を受信し用紙のサイズ情報が不揮発性メモリに記憶される。また、用紙給送装置61にセットされた用紙のサイズを検知する用紙サイズ検知手段を設け、この用紙サイズ検知手段が検知した結果を不揮発性メモリに記憶するようにしてもよい。
【0072】
コントローラ200は、予め組み込まれている制御プログラムを実行することにより、不揮発性メモリに記憶されている用紙サイズ情報と、画像データとに基づいて、スループット(CPM)を設定する処理枚数設定手段としての機能を有している。具体的には、コントローラは、画像データに基づいて、用紙端部領域の印字率を求め、用紙端部領域の印字率に基づいて、スループット(CPM)を設定する。
【0073】
図8は、連続印刷時におけるスループット(CPM)設定フロー図である。
コントローラ200は、印刷される用紙のサイズがA6サイズのとき、
図8に示すスループット設定フローを実行する。
【0074】
コントローラ200は、連続印刷する用紙サイズがA6サイズのときは、用紙に印刷する画像データに基づいて、用紙端部領域の印字率を算出する(S1)。
【0075】
図9は、用紙端部領域について説明する図である。
図9に示す斜線の領域Lおよび領域Rが用紙端部領域である。端部領域は、用紙幅方向端部から2.5[mm]の位置から、用紙幅方向端部から12.5[mm]までの幅10[mm]の領域である。この用紙端部領域に、この用紙に形成される最大画像サイズの幅方向端部が含まれるように、用紙端部領域は設定されている。また、用紙端部領域の用紙Sの搬送方向における両端は、用紙の搬送方向端部から5[mm]の位置に設定している。
【0076】
用紙端部領域の幅方向一端を用紙の幅方向端部から2.5[mm]の位置に設定したのは、以下の理由である。すなわち、本実施形態の画像形成装置においては、用紙の幅方向端部から2.5[mm]の位置までの領域を、マスキング領域に設定しており、このマスキング領域には、画像が形成されることがないからである。
【0077】
また、用紙端部領域の幅を10[mm]としたのは、本実施形態では、連続通紙において、用紙幅方向端部から12.5[mm]程度の領域で主にホットオフセットが発生してためである。なお、この用紙端部領域の幅は、装置構成や、搬送される用紙の厚みなどによって、適宜決めればよい。
【0078】
図6に示すように、用紙幅方向端部から12.5[mm]の位置である中央部から40mm離れた位置におけるスループット50CPMのときの中央部との温度差Δ(40)は、17℃程度である。そのため、用紙幅方向端部から12.5[mm]の位置は、ホットオフセット境界温度差Δm(31℃)に比べて十分に差があり、端部領域よりも内側の領域におけるホットオフセットに対して十分な余裕度を有するように設定している。これとは異なり、例えば、この端部領域における幅方向内側端部の位置を、50CPMのときの中央部との温度差が、ホットオフセット境界温度差Δm(31℃)に対して僅かに低くなる位置に設定するようにしてもよい。このような設定の場合は、端部領域よりも内側の領域におけるホットオフセットの余裕度は低下するが、50CPMに設定できる用紙に形成される画像の幅を広げることができ、より生産性の向上を図ることができる。
【0079】
また、端部領域における幅方向内側端部の位置を、用紙の厚みなどに基づいて、変更するようにしてもよい。厚紙の場合と、薄紙の場合とでは、定着ニップ通紙時に定着ベルト21から奪う熱量が異なるため、定着ベルト21の幅方向の温度分布が互いに異なる。その結果、50CPMのときの中央部との温度差が、ホットオフセット境界温度差Δm(31℃)以下となる位置が互いに異なってくる。よって、端部領域における幅方向内側端部の位置を、用紙の厚みなどに基づいて変更することで、用紙に応じた最適的な端部領域を設定でき、ホットオフセットの発生の抑制と、生産性の向上の両立を良好に図ることができる。
【0080】
また、
図4に示すように、連続印刷枚数が、所定枚数(
図4では、15枚)以上で定着ベルト21の用紙端部領域に対向する温度がほぼ一定となる。所定枚数以下では、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する温度が所定枚数以上のときに比べて低く、ホットオフセット境界温度差Δm(31℃)以上となる領域が狭くなる。従って、連続印刷枚数が所定枚数以下のときは、端部領域の幅を、連続印刷枚数が所定枚数以上のときに比べて狭くするなど、連続印刷枚数に応じて、用紙端部領域の幅を変更してもよい。
【0081】
コントローラ200は、画像データに基づいて、
図9に示した幅方向一端側の用紙端部領域Rの印字率XR%、幅方向他端側の用紙端部領域Lの印字率XL%とを算出する。そして、コントローラ200は、幅方向一端側の用紙端部領域Rの印字率XR%、幅方向他端側の用紙端部領域Lの印字率XL%とを比較し大きい方を用紙端部領域の印字率X%とする(S2)。
【0082】
次に、コントローラ200は、用紙端部領域の印字率X%が0%か否かをチェックする(S3)。用紙端部領域の印字率X%が、0%のときは、(S3のYES)は、用紙端部領域に画像はなく、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所が、ホットオフセットが発生する温度(定着温度+31℃以上)であっても問題がない。よって、コントローラ200は、スループットを50CPMに設定する(S4)。50CPMは、
図6を用いて説明したように、定着ベルト21の非通紙領域が耐熱温度(230℃)を越えないほぼ最大の単位時間当たりの印刷枚数である。
【0083】
一方、用紙端部領域の印字率X%が0%でないときは、(S3のNO)は、用紙端部領域の画像にホットオフセットが発生する可能性がある。従って、コントローラ200は、スループットを40CPMに設定する(S5)。40CPMは、
図6を用いて説明したように、用紙端部領域の画像のホットオフセットを防げる単位時間当たりの印刷枚数である。
【0084】
次に、コントローラ200は、設定したCPMで、画像形成動作を実行する(S6)。本実施形態では、コントローラ200は、設定したCPMとなるように、用紙の搬送間隔を調整している。具体的には、印字率の判定を行った画像データに基づく画像形成のタイミングとなったら、コントローラ200は、光書込装置6の潜像書き込みタイミング、用紙搬送部201を制御して給送ローラ3およびレジストローラ対4の用紙搬送タイミングを調整する。これにより、用紙の搬送間隔が調整され、設定したCPMで印刷が行われる。すなわち、コントローラ200が、搬送間隔制御手段として機能する。
【0085】
なお、本実施形態では、コントローラ200は、設定CPMとなるように、用紙の搬送間隔を調整しているが、設定CPMとなるように、用紙の搬送速度を調整してもよい。設定CPMとなるように用紙の搬送速度を調整する場合は、コントローラ200は、中間転写ベルト11の線速、感光体120の線速、光書込装置6の光走査速度、給送ローラ3やレジストローラ対4などの搬送部材の線速および加圧ローラ23の線速を調整する。このように、コントローラ200は、搬送速度制御手段として機能する。
【0086】
搬送速度を調整するよりか、搬送間隔を調整する方が制御する装置が少なくてすみ、制御が簡素化でき好ましい。具体的には、設定CPMとなるように用紙の搬送速度を調整する場合は、中間転写ベルト11の線速、感光体120の線速、光書込装置6の光走査速度、給送ローラ3やレジストローラ対4などの搬送部材の線速および加圧ローラ23の線速を調整する必要がある。一方、用紙の搬送間隔を調整する場合は、上述したように、光書込装置6の潜像書き込みタイミングと、給送ローラ3およびレジストローラ対4の用紙搬送タイミングの調整で済む。このように、搬送間隔を調整する方が、用紙の搬送速度を調整する場合に比べて、制御する装置が少なくてすみ、制御が簡素化できる。また、調整による画像の影響を抑制することができる。
【0087】
コントローラ200は、後続紙があるとき(S7のYES)は、次の画像データに基づいて、用紙端部領域の印字率を把握する(S1)。
【0088】
例えば、用紙端部領域の印字率が0%の場合は、50CPMで印刷するため、複数枚印字率0%が続いた場合は、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所の温度は、
図5(a)に基づくと、定着温度+37℃付近まで上昇している可能性がある。しかし、本実施形態の定着装置は、定着ベルト21を張架するローラを無くし、熱容量を低くしており、定着ベルト21は熱しやすく冷めやすい構成となっている。用紙端部領域の印字率が0%の印刷を複数枚行った後に、CPMを40CPMに落とすと、用紙端部領域に画像が形成された用紙が定着ニップに到達するまでの時間が長くなる。このように、用紙端部領域に画像が形成された用紙が定着ニップに到達するまでの時間が長くなることで、定着ベルト21の用紙端部領域と対向する箇所の温度をホットオフセットが発生しない温度(定着温度+31℃以下)にまで低下させることができる。よって、一枚毎にCPMを変更するような構成でも、ホットオフセットが発生することがない。
【0089】
もちろん、現在印刷中の画像データに対して数枚先の画像データについて、用紙端部領域に画像が有るか否かを判定し用紙端部領域に画像があると判定したときは、数枚先からスループットを40CPMに落として印刷するようにしてもよい。これにより、より確実に定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所の温度を、ホットオフセットが発生しない温度(定着温度+31℃以下)にすることができ、用紙端部領域のホットオフセットの発生を良好に抑制することができる。
【0090】
下記表2は、スループット(CPM)と、用紙端部領域の印字率とを互いに異ならせて、A6紙30万枚の寿命耐久評価を行った結果を示すものである。
寿命耐久評価は、A6サイズ紙とA4サイズ紙(A4紙種もRICOH Mypaper)について、ホットオフセットの評価を行った。線速、温度制御等の条件は、
図4の温度分布を調べたときと同条件である。A4サイズ紙は、開始時の初期としてA6サイズ紙150枚目、以降通紙10万枚ごとにホットオフセットの評価を行った。A4サイズ紙のホットオフセット評価は、定着装置20を十分冷却した後、縦送りで10枚通紙する事により評価した。
【0091】
【0092】
表2に示すように、比較例1では、スループットが50CPMで、用紙端端部領域の印字率が20%である。比較例1では、スループットが50CPMあるため、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所の温度が、ホットオフセットが発生する温度以上となる。その結果、用紙端部領域の画像にホットオフセットが発生し、A6サイズ紙のホットオフセット評価は、「×」判定となった。
【0093】
比較例2は、比較例1に対して、スループットを55CPMに上げたものである。比較例2においても、比較例1と同様に、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所の温度が、ホットオフセットが発生する温度以上となり、用紙端部領域の画像にホットオフセットが発生した。その結果、比較例2についても、A6サイズ紙のホットオフセット評価は、「×」判定となった。よって、初期以降の評価は中止した。
【0094】
比較例3は、スループット55CPMで、用紙端端部領域の印字率が0%である。比較例3においては、用紙端部領域に画像がない。従って、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所の温度が、ホットオフセットが発生する温度以上となっても、ホットオフセットが発生しない。しかし、比較例3では、20万枚目のA4サイズ紙のホットオフセット評価が「×」判定となった。この原因は、A6サイズ連続通紙中に、定着ベルト21の非通紙領域が耐熱温度(230℃)を超える。このように、耐熱温度を越えることで、定着ベルト21の内面コート層の熱移動補助部材24との摺擦による摩耗が促進され、部分的に熱抵抗が小さくなる。その結果、定着ベルト21の熱抵抗が小さくなった部分の温度が、ホットオフセットが発生する温度以上となり、A4サイズ紙でホットオフセットが発生したと考えられる。このように、20万枚目で、定着ベルト21の熱劣化による寿命が確認されたため、それ以降の耐久評価は中止した。
【0095】
実施例1は、
図8に示したスループット設定フローを用いて説明したように用紙端部領域の印字率0%で、スループット50CPMにしたものである。表2からわかるように、実施例1では、用紙端端部領域の印字率が0%であるため、スループットが50CPMであっても、A6サイズ紙にホットオフセットは発生しない。また、A6サイズ紙連続通紙時において、定着ベルト21の非通紙領域の温度を耐熱温度(230℃)以下に抑えることができている。よって、定着ベルト21の内面コート層の摩耗が経時にわたり抑えられ、30万枚通紙後のA4サイズ紙においても、ホットオフセットが発生せず、ホットオフセット評価が「〇」であった。
【0096】
このように、用紙端部領域の印字率が0%のときのスループットを50CPMにすることで、定着ベルト21の熱劣化を抑制できることが確認された。よって、用紙端部領域の印字率が0%のときA6サイズ紙の連続印刷時のスループットを用紙端部領域に画像がある(≠0%)のときのA6サイズ紙の連続印刷時よりもスループットを10CPMに上げて50CPMにできる。このように、スループットを50CPMとすることで、用紙端部領域の印字率が0%のときのスループットを用紙端部領域に画像があるときと同じスループットにした場合に比べて、生産性を高めることができる。
【0097】
また、用紙端部領域に、画像があるとき(印字率≠0%)は、スループットを40CPMにすることで、A6サイズ用紙の連続印刷時におけるホットオフセットの発生を抑制でき、良好な画像を得ることができる。
【0098】
図3を用いて説明したように、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所(X=40[mm]~X=50[mm])は、15枚以上通紙することで飽和する。そのため、9枚連続通紙および5枚連続通紙のときは、15枚以上連続通紙時に比べて低い温度となっている。よって、連続印刷枚数が、所定枚数以下のときは、スループットを40CPM以上としても、定着ベルト21の用紙端部領域と対向する箇所の温度を、ホットオフセットが発生する温度以下に抑えることができる。よって、例えば、A6サイズ紙の連続印刷において、用紙端部領域に画像があるとき(印字率≠0%)は、連続印刷枚数を確認する。そして、連続印刷枚数が規定枚数未満のときは、40CPMよりも高いスループットで印刷するようにしてもよい。
【0099】
また、ホットオフセットは、用紙の搬送方向後端よりも搬送方向先端の方が発生しやすい。よって、上述では用紙端部領域全体の印字率を求めているが、用紙端部領域の先端側の印字率を求めるようにしてもよい。例えば、印字率を求める範囲を、用紙端部領域における先端(用紙先端から5[mm]の位置)から定着ベルト21の周長の長さまでの範囲とするのが好ましい。これは、用紙が定着ニップに進入して定着ベルト21が一周するまでの間は、用紙に熱が奪われていない状態の定着ベルト21が用紙に接触するため、用紙の先端から定着ベルト21の周長までの間でホットオフセットが発生しやすいからである。
【0100】
また、印字率が高い場合は、定着ニップ通紙時に定着ベルト21は多くの熱量を用紙に奪われる。そのため、用紙端部領域の印字率が高いA6サイズ紙を連続印刷したときは、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所の熱が、用紙端部領域に多く奪われるため、その箇所の温度上昇が抑えられる。よって、用紙端部領域の印字率が高いA6サイズ紙を連続印刷するときは、スループットを40CPM以上としても、定着ベルト21の用紙端部領域と対向する箇所の温度を、ホットオフセットが発生する温度以下に抑えることができる。よって、用紙端部領域の印字率が規定値以上のときは、40CPMよりも高いスループットに設定して印刷するようにしてもよい。
【0101】
また、用紙端部領域に対して用紙中央の印字率が低い場合、定着ベルト21の中央は、用紙が定着ニップを通過するときに奪われる熱量が用紙端部領域に対向する箇所に比べて少なくなる。そのため、定着ベルト21の中央の温度低下が、用紙端部領域に対向する箇所に比べて抑えられる。このように、定着ベルト21の中央の温度低下が抑えられることで、中央部温度検知センサ28Aの検知結果に基づいて、点灯制御される第一ハロゲンヒータ22Aの単位時間当たりの点灯量が抑えられる。その結果、非通紙領域の温度上昇が抑えられ、用紙端部領域に対向する箇所の温度上昇が抑えられる。よって、スループットを40CPM以上としても、定着ベルト21の用紙端部領域と対向する箇所の温度を、ホットオフセットが発生する温度以下に抑えることができる。そのため、用紙中央の印字率と用紙端部領域との印字率の差が規定値以上のときは、40CPMよりも高いスループットに設定して印刷するようにしてもよい。
【0102】
次に、本実施形態の変形例について、説明する。
【0103】
[変形例1]
この変形例1は、熱移動補助部材24の厚みを実施形態に比べて、0.2mm厚くして0.8[mm]としたものである。
図10は、変形例1における定着ベルトの温度分布を示すグラフである。
図10に示す温度分布の測定条件は、
図4に示した定着ベルトの温度分布測定条件と同一である。
【0104】
図4示す温度分布と
図10に示す温度分布とを比較すると、熱移動補助部材24の厚みが厚い変形例1の方が、定着ベルト21の非通紙領域の最大温度を抑えることができた。また、X=50[mm]の位置の温度も、若干抑えることができた。
【0105】
下記表3は、変形例1において、スループットを互いに異ならせて、A6サイズ用紙を150枚連続通紙後の定着ベルト21の通紙領域における最大温度差と、非通紙領域の最大温度とを測定したした結果を示すものである。定着ベルト21の通紙領域における最大温度差として、X=50[mm]の位置における定着ベルト21の温度と中央部の定着ベルトの温度(定着温度)との温度差Δ(50)を測定した。非通紙領域の最大温度として、X=80[mm]の位置における定着ベルト21の温度を測定した。なお、線速、温度制御、紙種条件は、
図4での測定条件と同条件とした。
【0106】
また、用紙上には、用紙幅方向一端から内側の2.5[mm]の位置から用紙幅方向他端から内側の2.5[mm]までの幅方向全域にパターンを印字し、ホットオフセットの有無を確認した。ホットオフセットが確認されたときは、「×」判定、ホットオフセットが確認できないときは、「〇」判定とした。また、非通紙領域の最大温度としてのX=80[mm]の位置における定着ベルトの温度は、230℃以下を「〇」判定、230℃を越える場合は、「×」判定とした。
【0107】
【0108】
表3と、表1の実験例1~3とを比べてわかるように熱移動補助部材24の厚みが厚い変形例1の方が、熱移動補助部材24の厚みが0.6[mm]の実施形態に比べて、X=50[mm]位置の中央部との温度差Δ(50)、非通紙領域の最大温度(X=80[mm]位置の温度)ともに低く抑えることができた。そのため、熱移動補助部材24の厚みが0.6[mm]の場合は、スループット42.5CPMでホットオフセットが発生していたが、変形例1では、スループット45.5CPMでもホットオフセットが発生しなかった。
【0109】
図11(a)は、変形例1における温度差Δ(50)とスループット(CPM)との関係を示すグラフである。
図11(b)は、変形例1における非通紙領域の最大温度(X=80[mm]の位置の温度)と、スループット(CPM)との関係を示すグラフである。
【0110】
図11(a)から、変形例1では、A6サイズ用紙の連続印刷時における用紙端部領域でホットオフセットが発生しない最大CPMは48CPMとなる。
図11(a)の図中点線で示すホットオフセット境界温度差Δm(約31℃)と、上述の実験例4~6のプロットを近似した実線との交点から上記最大CPMは求められる。
図5(a)との比較からわかるように、熱移動補助部材24の厚みを厚くすることで、ホットオフセットに対するスループットの余裕度を高めることができる。
また、
図11(b)と、
図5(b)との比較から、熱移動補助部材24の厚みを厚くすることで、耐熱温度(230℃)に対するスループットの余裕度も高めることができる。
【0111】
図12は、実験例4~6のX=40[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(40)と、X=50[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(50)と、非通紙領域の最大温度(X=80[mm]の位置における温度)とをプロットしたグラフである。
【0112】
図12に示すように、熱移動補助部材24の厚みを0.8[mm]にした変形例1においては、スループットが58CPMを越えると、定着ベルト21の非通紙領域の最大温度が、耐熱温度(230℃)を越える。一方、X=40[mm]の位置における中央部(X=0[mm])との温度差Δ(40)は、58CPMでも、ホットオフセット境界温度差Δm(約31℃)以上になることはない。従って、この変形例1でも、X=40[mm]の位置よりも幅方向内側においては、非通紙領域の最大温度が耐熱温度(230℃)を越えないスループット(CPM)であれば、ホットオフセットは発生することがない。
【0113】
このことから、用紙のX=40[mm]から幅方向端部までの用紙の端部領域に画像がなければ、スループット58CPMでもホットオフセットが発生せず、良好な画像を得ることができる。よって、用紙の端部領域に画像がないときは、スループットを58CPMで印刷を行うことができる。
【0114】
一方、この用紙端部領域に画像があるときは、スループットが58CPMであると、X=50[mm]の位置の温度差Δ(50)が、ホットオフセット境界温度差Δm(約31℃)を越えてしまう。その結果、端部領域の画像にホットオフセットが発生するおそれがある。よって、X=50[mm]の位置の温度差Δ(50)が、ホットオフセット境界温度差Δm(約31℃)以下となるスループット(48CPM)にする。これにより、端部領域の画像にホットオフセットの発生を防止できる。
【0115】
このように、変形例1では、
図8に示したA6サイズ紙連続印刷におけるCPM設定制御において、用紙端部領域に画像がある(印字率≠0%)のときは、スループットを48CPMに設定する。一方、用紙端部領域に画像がない(印字率=0%)のときは、スループットを58CPMに設定する。
【0116】
これにより、変形例1においても用紙端部領域に画像がないときに定着ベルト21の熱劣化を抑制できる最大のCPMで、A6サイズ紙の連続印刷を行うことができ、生産性を高めることができる。一方、用紙端部領域に画像があるときは、スループットを48CPMに設定することで、用紙端部領域の画像のホットオフセットが抑制できる。
【0117】
また、この変形例1では、実施形態に比べて、A6サイズ紙の連続印刷時のスループットを高めることができ、実施形態に比べて生産性を高めることができる。
【0118】
下記表4は、変形例1の構成において、スループット(CPM)と、用紙端部領域の印字率とを互いに異ならせて、A6紙30万枚の寿命耐久評価を行った結果を示すものである。寿命耐久評価は、表2に示した評価と同様である。
【0119】
【0120】
表4に示すように、比較例4では、スループットが58CPMで、用紙端端部領域の印字率が20%である。比較例4では、スループットが58CPMあるため、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所の温度が、ホットオフセットが発生する温度以上となる。その結果、用紙端部領域の画像にホットオフセットが発生し、A6サイズ紙のホットオフセット評価は、「×」判定となった。
【0121】
比較例5は、スループットが63CPMで、用紙端端部領域の印字率が0%である。比較例5においては、用紙端部領域に画像がない。従って、定着ベルト21の用紙端部領域に対向する箇所の温度が、ホットオフセットが発生する温度以上となっても、ホットオフセットが発生しない。しかし、比較例5では、20万枚目のA4サイズ紙のホットオフセット評価が「×」判定となった。これは上述同様、A6サイズ連続通紙中に、定着ベルトの非通紙領域が耐熱温度(230℃)を超えて定着ベルトの内面コート層の摩耗が促進され、部分的に熱抵抗が小さくなったためである。
【0122】
一方、実施例2は、用紙端部領域の印字率0%で、スループット58CPMにしたものである。実施例2は、用紙端端部領域の印字率が0%であるため、スループットが58CPMであっても、A6サイズ紙にホットオフセットは発生しない。また、A6サイズ紙連続通紙時において、定着ベルト21の非通紙領域の温度を耐熱温度(230℃)以下に抑えることができる。よって、定着ベルト21の内面コート層の摩耗が経時にわたり抑えられ、30万枚通紙後のA4サイズ紙においても、ホットオフセットが発生せず、ホットオフセット評価が「〇」にできる。
【0123】
また、上述では、熱移動補助部材24を定着ベルト21とニップ形成部材25との間に設けて定着ベルト21の均熱を図っているが、定着ベルト21に熱移動補助層を設けて、定着ベルト21の均熱を図ってもよい。
【0124】
図13は、熱移動補助層21bを設けた定着ベルト21の概略断面図である。
図13に示す定着ベルト21は、内層から表層に向かって基体21aと、熱移動補助層21bと、中間層21cと、離型層21dとを有している。基体21aは、ニッケルやステンレスなどの金属、あるいはポリイミドなどの耐熱性樹脂からなり、熱移動補助層21bは、銅やアルミニウムなど熱伝導率が極めて高い材料で構成される。中間層21cは、均一定着のための弾性体からなり、離型層21dは、弗素樹脂材料等からなる。熱移動補助層21bは、例えば、基体21aが、厚み30[μm]のニッケルの場合、厚み10~30[μm]程度である。
【0125】
このように、定着ベルト21に熱移動補助層21bを設けた構成でも、定着ベルト21の熱の幅方向の移動が熱移動補助層21bにより促進され、非通紙領域の異常高温を抑制できる。また、熱移動補助部材が不要となり、部品点数の削減を図ることができ、組み付け工数の削減を図ることができる。
【0126】
また、定着ベルト21の外周面に当接して定着ニップを形成する加圧側の構成を、
図14に示すように、加圧ベルト123と、加圧ベルト123のループ内に配設して加圧ベルト123の内周面に当接する加圧側ニップ形成部材124とを設けた構成にしてもよい。加圧側ニップ形成部材124は、弾性体からなる弾性パッド124aと高剛性パッド124bとを有している。加圧側ニップ形成部材124は、付勢バネ125により定着ベルト側に付勢されており、これにより、所定のニップ圧の定着ニップが形成される。用紙搬送方向下流側に設けられた高剛性パッド124bは、定着ニップ下流側のニップ形成部材25に凹部を形成し、用紙の定着ベルト21に対する剥離性を良好にするためのパッドである。加圧ベルト123は、複数の張架ローラにより張架されており、複数の張架ローラのうちの一つが駆動ローラとなっており、この駆動ローラの回転駆動により加圧ベルト123が回転駆動する。
【0127】
そして、この高剛性パッド124bを、銅やアルミニウムなど熱伝導率が極めて高い材料で構成し、定着ベルト21の熱の幅方向の移動を補助する熱移動補助部材として機能させてもよい。
【0128】
なお、上述では、A6サイズ紙について用紙端部領域の印字率に基づいて、スループットを設定する例について説明したが、A6サイズ以外の用紙についても、用紙端部領域の印字率に基づいて、スループットを設定するのが好ましい。用紙サイズ毎に、ホットオフセットが発生しないCPM、定着ベルトの非通紙領域が耐熱温度以下に抑えられるCPMが互いに異なる。従って、A6サイズ以外の用紙サイズについても、実験により、
図6に示したグラフを作成し、定着ベルトの非通紙領域の最大温度が耐熱温度以下となるCPM、用紙の端部領域の画像にホットオフセットが発生しないCPMをそれぞれ求める。そして、用紙の端部領域に画像がある(印字率≠0%)ときは、実験で求めたその用紙サイズに対応するホットオフセットが発生しない最適なCPMに設定し、用紙の端部領域に画像がない(印字率=0)のときは、その用紙サイズに対応する定着ベルトの非通紙領域の最大温度が耐熱温度以下となる最適なCPMに設定するようにするのが好ましい。
【0129】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
定着ベルト21などの無端状の回転体と、回転体に接触して定着ニップなどのニップ部を形成する加圧ローラ23などの接触部材と、回転体を加熱するハロゲンヒータ22A,22Bなどの熱源と、回転体の回転軸方向の熱移動を補助する熱移動補助部材24とを備え、ニップ部に用紙Sなどの記録媒体を通過させて記録媒体に画像を定着する定着装置20において、記録媒体の軸方向端部の端部領域の印字率に基づいて、単位時間当たりの処理枚数を設定するコントローラ200などの処理枚数設定手段を備える。
軸方向長さが、熱源の発熱領域に対して所定長さ短い記録媒体を連続してニップ部に通紙すると、回転体の非通紙領域の温度が高くなる。ニップ部に通紙する記録媒体の間隔を狭めたり、ニップ部を通過する記録媒体の搬送速度を高めたりして単位時間当たりの処理枚数を高めて生産性を高めると、単位時間当たりに記録媒体に奪われる熱量が多くなる。そのため、回転体の通紙領域の温度を定着温度に維持するには、熱源の単位時間当たりの発熱量が多くなり、回転体の非通紙領域の温度が異常に高くなってしまう。そのため、回転体の非通紙領域の温度が異常高温とならないように処理枚数が設定され、生産性を十分に向上できなかった。
特許文献1に記載のように熱移動補助部材を設けることで、熱移動補助部材により回転体の非通紙領域の熱の軸方向への移動が促進され、回転体の非通紙領域の異常高温を抑制できる。これにより、処理枚数を高めて熱源の単位時間当たりの発熱量が多少多くなっても、回転体の非通紙領域が異常温度に達することがなく、生産性の向上を見込める。しかし、高温の非通紙領域の熱が、回転体の記録媒体の端部領域に対応する箇所へ熱移動補助部材によって移動することで、回転体の記録媒体の端部領域に対応する箇所が定着温度よりも高くなってしまう。その結果、記録媒体の端部領域に形成された画像の一部が回転体に転移する所謂ホットオフセットが生じてしまうという新たな課題が発生した。
そこで、態様1では、処理枚数設定手段により、記録媒体の軸方向端部の端部領域の印字率に基づいて、単位時間当たりの処理枚数を設定するようにした。これにより、例えば、端部領域の印字率が0%で端部領域に画像がなく、端部領域の画像にホットオフセットが発生するという課題自体が生じない条件のときは、処理枚数を高く設定し、生産性を高めることができる。一方、端部領域に画像があり(印字率≠0%)、端部領域の画像にホットオフセットが発生するおそれがあるときは、印字率が0%のときに比べて処理枚数を少なくする。これにより、非通紙領域の温度上昇が抑えられ、回転体の非通紙領域から記録媒体の端部領域と対向する箇所への熱移動が抑えられる。よって、回転体の記録媒体の端部領域と対向する箇所の温度上昇を抑えることができ、端部領域の画像のオフセットの発生を抑制することができる。
このように、端部領域の印字率に基づいて、単位時間当たりの処理枚数を設定することで、端部領域の画像のホットオフセットを抑制し、かつ、生産性の向上を図ることができる。
【0130】
(態様2)
態様1において、コントローラ200などの処理枚数設定手段は、端部領域の印字率が0%のとき、処理枚数を前記印字率が0%以外のときの処理枚数よりも多くする。
これによれば、実施形態で説明したように、高い生産性で定着処理を行うことができる。
【0131】
(態様3)
態様2において、コントローラ200などの処理枚数設定手段は、端部領域の印字率が0%以外のとき、定着ベルト21などの回転体の用紙などの記録媒体の軸方向中央に対応する箇所の温度と回転体の記録媒体の軸方向端部に対応する箇所の温度との温度差Δmが、規定温度差以下(本実施形態では31℃以下)となる処理枚数に設定する。
これによれば、実施形態で説明したように、用紙などの記録媒体の端部領域に形成された画像にホットオフセットが発生するのを抑制することができる。
【0132】
(態様4)
態様3において、上記温度差は、定着ベルト21などの回転体の用紙などの記録媒体の軸方向端部に対応する箇所の温度が、記録媒体の軸方向中央に対応する箇所の温度よりも高いときの温度差である。
これによれば、実施形態で説明したように、用紙などの記録媒体の端部領域に形成された画像にホットオフセットが発生するのを抑制することができる。
【0133】
(態様5)
態様1乃至4いずれかにおいて、コントローラ200などの処理枚数設定手段が設定した処理枚数に基づいて、定着ニップなどのニップ部を通過する用紙などの記録媒体の間隔を制御するコントローラ200などの搬送間隔制御手段を備える。
これによれば、実施形態で説明したように、定着装置が定着処理する単位時間当たりの処理枚数を、処理枚数設定手段が設定した処理枚数にすることができる。また、搬送速度を制御して処理枚数設定手段が設定した処理枚数にする場合に比べて、画像形成装置の制御の変更を少なくすることができ、制御の簡素化を図ることができる。
【0134】
(態様6)
態様1乃至5いずれかにおいて、コントローラ200などの処理枚数設定手段が設定した処理枚数に基づいて、定着ニップなどのニップ部を通過する用紙などの記録媒体の搬送速度を制御するコントローラ200などの搬送速度制御手段を備える。
これによれば、実施形態で説明したように、定着装置が定着処理する単位時間当たりの処理枚数を、処理枚数設定手段が設定した処理枚数にすることができる。
【0135】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、印字率は、画像形成装置が画像を形成するときの画像データに基づいて算出する。
これによれば、用紙の端部領域の画像の有無を検知することができる。
【0136】
(態様8)
態様1乃至7いずれかにおいて、熱移動補助部材24を、定着ベルト21などの回転体に接触するように配置した。
これによれば、定着ベルト21などの回転体の温度が高い箇所の熱が熱移動補助部材24を介して、回転体の軸方向の温度の低い部分へ移動する。これにより、第一回転体の温度偏差を抑制することができる。
【0137】
(態様9)
態様1乃至7いずれかにおいて、熱移動補助層21bなどの熱移動補助部材は、定着ベルト21などの回転体に設けられている。
これによれば、
図13を用いて説明したように、熱移動補助層21bなどの熱移動補助部材により、定着ベルト21などの回転体の温度が高い箇所の熱が回転体の軸方向の温度の低い部分へ移動し、回転体の温度偏差を抑制することができる。
【0138】
(態様10)
態様1乃至7いずれかにおいて、高剛性パッド124bなどの熱移動補助部材は、加圧ベルト123などの接触部材に接触するように配置した。
これによれば、
図14を用いて説明したように、加圧ベルト123などの接触部材を介して定着ベルト21などの回転体の熱が熱移動補助部材24に移動し、熱移動補助部材24により回転体の軸方向の温度の低い部分へ移動し、接触部材を介して定着ベルト21へ移動する。その結果、回転体の温度偏差を抑制することができる。
【0139】
(態様11)
態様1乃至10いずれかにおいて、コントローラ200などの処理枚数設定手段は、連続で定着処理する記録媒体の枚数が、規定枚数以上のときに記録媒体の軸方向端部の端部領域の印字率に基づいて処理枚数を設定する。
これによれば、実施形態で説明したように、定着ベルト21などの回転体の非通紙領域の温度や、回転体の記録媒体の端部領域と対向する箇所の温度は、定着処理する枚数に応じて徐々に上昇し、規定枚数で飽和する。従って、規定枚数以下であれば、規定サイズの記録媒体であっても、規定サイズ以外の記録媒体のときの処理枚数で定着処理を行ったとしても端部領域の画像にホットオフセットが発生することがない。従って、連続で定着処理する記録媒体の枚数が規定枚数以上ときのみ、端部領域の印字率に基づいて処理枚数を設定することで、オフセットを抑制できる。
【0140】
(態様12)
記録材に画像を形成する画像形成部(本実施形態では、作像部と、光書込装置と、転写ユニットとで構成)と、記録材に形成された画像を記録材に定着させる定着装置20とを備えた画像形成装置において、定着装置として、態様1乃至11いずれかの定着装置20を用いた。
これによれば、良好な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0141】
1 :作像部
3 :給送ローラ
4 :レジストローラ対
6 :光書込装置
10 :転写ユニット
20 :定着装置
21 :定着ベルト
21a :基体
21b :熱移動補助層
21c :中間層
21d :離型層
22A :第一ハロゲンヒータ
22B :第二ハロゲンヒータ
23 :加圧ローラ
23a :芯金
23b :弾性ゴム層
24 :熱移動補助部材
25 :ニップ形成部材
28A :中央部温度検知センサ
28B :端部温度検知センサ
29 :加圧ローラ駆動モータ
61 :用紙給送装置
100 :画像形成装置
123 :加圧ベルト
124 :加圧側ニップ形成部材
124a :弾性パッド
124b :高剛性パッド
125 :付勢バネ
200 :コントローラ
201 :用紙搬送部
202 :外部通信インターフェース
203 :操作表示部
L :用紙端部領域
R :用紙端部領域
S :用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0142】