(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20241219BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20241219BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/20 510
G03G15/00 551
(21)【出願番号】P 2021079496
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】岡本 倫哉
(72)【発明者】
【氏名】市橋 治
(72)【発明者】
【氏名】松浦 大樹
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116247(JP,A)
【文献】特開2003-122133(JP,A)
【文献】特開2017-049375(JP,A)
【文献】特開2017-049384(JP,A)
【文献】特開2005-344750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト装置を備えた画像形成装置において、
前記ベルト装置は、
複数の画像形成部が対向するベルト装置であり、
無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を張架支持する複数の支持回転体とを備
え、
少なくとも一つの支持回転体はクラウン形状であり、少なくとも一つの支持回転体はベルトに対し幅方向の両外側へ拡げる力を付与する
ものであり、
前記クラウン形状の支持回転体は、前記複数の画像形成部のうち、ベルト移動方向で最上流の画像形成部に対向する直前のベルト箇所を支持する支持回転体であり、
前記直前のベルト箇所を支持する支持回転体に係るテンションが互いに異なる複数のベルト軌道設定を備え、前記ベルト軌道設定の変更動作中にベルトを駆動させることを特徴とする
画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の
画像形成装置において、
前記拡げる力を付与する支持ローラは、前記クラウン形状の支持回転体に対しベルト移動方向の下流側または上流側から隣接する支持回転体であることを特徴とする
画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の
画像形成装置において、
前記クラウン形状の支持回転体が、ベルトに対し幅方向の両外側へ拡げる力を付与することを特徴とする
画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一に記載の
画像形成装置において、
ローラ表面部に形成した溝で前記拡げる力を付与することを特徴とする
画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一に記載の
画像形成装置において、
ローラ表面部に形成した摩擦係数が異なる部分で前記拡げる力を付与することを特徴とする
画像形成装置。
【請求項6】
ベルト装置を備えた画像形成装置において、
前記ベルト装置は、
複数の画像形成部が対向するベルト装置であり、
無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を張架支持する複数の支持回転体とを備え
、
少なくとも一つの支持回転体はクラウン形状であり、かつ、幅方向の中央部または両端部が幅方向の他の箇所よりもベルト裏面との摩擦係数が大きい
ものであり、
前記クラウン形状の支持回転体は、前記複数の画像形成部のうち、ベルト移動方向で最上流の画像形成部に対向する直前のベルト箇所を支持する支持回転体であり、
前記直前のベルト箇所を支持する支持回転体に係るテンションが互いに異なる複数のベルト軌道設定を備え、前記ベルト軌道設定の変更動作中にベルトを駆動させることを特徴とする
画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の
画像形成装置において、
前記中央部または両端部に比較的摩擦係数が大きい材料を配置するか、または、前記他の箇所に比較的摩擦係数が小さい材料を配置することを特徴とする
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無端状のベルト部材と、ベルト部材を張架支持する複数の支持回転体とを備えたベルト装置が知られている。
例えば特許文献1には、係るベルト装置を中間転写ベルト装置に用いた画像形成装置が記載されている。この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置であり、紙搬送のための静電搬送ベルト装置の少なくとも一つの従動ローラがクラウン形状(幅方向中央の外径が両端の外径よりも大きい形状)である。クラウン形状のローラがベルトのテンションで撓んだ状態でベルト巻き付き部がストレート形状をなし、スラスト方向一定のテンションを得ることができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、ベルトにしわが生じる虞が残っていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、ベルト装置を備えた画像形成装置において、
前記ベルト装置は、複数の画像形成部が対向するベルト装置であり、無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を張架支持する複数の支持回転体とを備え、少なくとも一つの支持回転体はクラウン形状であり、少なくとも一つの支持回転体はベルトに対し幅方向の両外側へ拡げる力を付与するものであり、前記クラウン形状の支持回転体は、前記複数の画像形成部のうち、ベルト移動方向で最上流の画像形成部に対向する直前のベルト箇所を支持する支持回転体であり、前記直前のベルト箇所を支持する支持回転体に係るテンションが互いに異なる複数のベルト軌道設定を備え、前記ベルト軌道設定の変更動作中にベルトを駆動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ベルトのしわ発生を従来に比して抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係るカラープリンタの概略構成図。
【
図2】同カラープリンタの中間転写ユニットの説明図。
【
図5】ストレート形状のローラに溝を設け例の説明図。
【
図6】他の実施形態に係るクラウンを付与したローラの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[実施形態1]
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて順次説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態として例示するカラープリンタ1の概略構成図である。このカラープリンタ1は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーからカラー画像を形成する4連タンデム型中間転写方式である。図中Y、M、C、Kは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色に関連する構成部材に付与する添え字である。
【0008】
カラープリンタ1は、筐体である画像形成装置本体(以下「装置本体」と記す)2の正面2A側の上部に、4色のニュートナーを個別に収容するニュートナー収容部19が設けられている。装置本体2の略中央には、4色のトナーからそれぞれの単色トナー像を形成する複数の画像形成部となる4つの作像ユニット(作像ユニット)3Y、3M、3C、3Kと、ベルト無ユニットであり転写装置でもある中間転写ユニット4が配置されている。作像ユニット3Y、3M、3C、3Kは、中間転写ユニット4よりも下方に配置されている。作像ユニット3Y、3M、3C、3Kの下方には、露光手段としての光学ユニット5が配置されている。
【0009】
作像ユニット3Y、3M、3C、3Kは、光学ユニット5からそれぞれ照射される露光光によって静電潜像が形成される像担持体としてのドラム状の感光体30Y、30M、30C、30Kを備えている。作像ユニット3Y、3M、3C、3Kは、感光体30Y、30M、30C、30Kの周囲に、帯電手段31Y、31M、31C、31K、現像手段32Y、32M、32C、32K、クリーニング部33Y、33M、33C、33Kと除電部を備えている。作像ユニット3Y、3M、3C、3Kは、これら手段を使って電子写真プロセスを実行することで、感光体30Y、30M、30C、30K上にそれぞれ単色のトナー像を形成する。
【0010】
中間転写ユニット4は、複数の支持回転体としてのローラ41,42,43,44に、無端状のベルト部材であり転写体となる転写ベルト45を巻き掛けたものである。矢印Wで示す中間転写ユニット4の長手方向であり幅方向の一方側(図中左方)に位置するローラ41,42と、他方側(図中右方)に位置するローラ43は、従動ローラであって、ローラ43の上方に配置されたローラ44は、駆動ローラである。中間転写ユニット4は、ローラ44を回転駆動することで、転写ベルト45が図中反時計回り方向に回転搬送するように構成されている。
【0011】
転写ベルト45の内側ループ内には、感光体30Y、30M、30C、30Kと対向する位置に1次転写部材としての1次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kが配置されている。1次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kは、感光体30Y、30M、30C、30Kに向かって転写ベルト45を加圧していて、感光体30Y、30M、30C、30Kと転写ベルト45の間に、各感光体上のトナー像を転写ベルト45に転写するための1次転写部7Y、7M、7C、7Kが形成されている。1次転写部7Y、7M、7C、7Kには、1次転写用の転写バイアスが供給される。
【0012】
1次転写部7Y、7M、7C、7Kよりもベルト搬送方向下流側には、2次転写部8が形成されている。2次転写部8は、ローラ44と対向配置されて転写ベルト45に接触する2次転写部材としての2次転写ローラ9と転写ベルト45の間に形成されている。2次転写部8には、2次転写用の転写バイアスが供給される。
【0013】
光学ユニット5の下方には、記録材Pが収納された複数のトレイ10が設けられている。トレイ10に収納された記録材Pは、送り出しと分離を行うローラ群11によってトレイ10から1枚に分離されて2次転写部8に向けて搬送される。2次転写部8では、1次転写部7Y、7M、7C、7Kで転写ベルト45に転写されたトナー像が、記録材P上に転写される。トナー像が転写された記録材Pは、2次転写部8よりも記録材搬送方向下流側に配置された定着装置12へと搬送される。
【0014】
定着装置12では熱と圧力を記録材Pに対して与えてトナー像を記録材P上に定着して、排出口13に向かって搬送する。排出口13に搬送された記録材Pは、装置本体2の上部に形成された排出トレイ14にローラ対15によって排出されてスタックされる。 トナー像の転写を終えた転写ベルト45は、ベルトクリーニング手段16によって、転写残トナーや紙粉等が取り除かれる。
【0015】
図2は中間転写ユニット4の転写ベルト45の支持構造の説明図である。
図2(a)は各色全てついて1次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kを1次転写部形成位置に位置させるフルカラーモードの状態を示す。
図2(b)はブラックの1次転写ローラ6Kのみ1次転写部形成位置に位置させ、他の色の1次転写ローラ6Y、6M、6Cは感光体30Y、30M、30Cから離間した位置を取らせるモノカラーモードの状態を示す。破線はフルカラーモードの状態とは異なる位置を取るローラやベルト部分である。両端矢印の線分は、モード間で異なる位置を取るローラの変位を示す。
図2(c)はモノカラーモードにおけるローラ42のベルトの自然な位置に対する押し出し量S2の説明図である。
【0016】
図2に図示の例では、1次転写ローラ6Y、6М、6Cと、ローラ42とがモード間で異なる位置をとる(互いに異なるベルトの軌道経路を設定する)ように、モータで駆動制御されるカムなどで駆動させる接離機構に保持されている。また、ローラ41は、付勢手段としての圧縮コイルバネ48によって転写ベルト45に内側から外側へ向かって張力を与える(転写ベルト45を張架する)張力付与部材でありテンションローラとして機能すべく、スライド自在に側板に支持されている。ローラ42はバックアップローラとして機能し、ローラ43は2次転写部8に対する入口ローラを構成している。
【0017】
転写ベルト45上のトナー像を検知するトナー像検知手段50と、トナー像検知手段50と対向するベルトの表面位置を安定させるために転写ベルト45の内側ループ内に配置されたセンサ対向部材46とを備える。転写ベルト45の外側で、トナー像検知手段50に近接配置されていて、転写ベルト45の表面に対して進退する方向に移動可能な押付部材としての押付ローラ47も備えている。
【0018】
本実施形態のカラープリンタ1では、無端状のベルト部材としての転写ベルト45と、転写ベルト45を張架支持する複数のローラ41,42,43,44とを備えたベルト装置として中間転写ユニットにおいて、支持回転体としてのローラ42をクラウン形状とした。
図3はローラ42の説明図である。
図3(a)は斜視図、
図3(b)は底面図、
図3(c)~(e)は転写ベルト45のテンションで撓んだ状態の説明図である。
【0019】
ローラ42をクラウン形状とする背景は次のとおりである。中間転写ユニット4では、各1次転写部よりも上流のローラの撓みにより色ずれが発生する。カラープリンタ1では、作像ユニット最上流より上流のローラ(図示の例ではローラ42)がベルトテンションによってたわみ、たわみに沿ってベルトが移動するため、ベルトがたわんだ形状で作像ユニットからトナー像が転写される。そのベルトたわみ量が各色により異なるために、色ずれが生じる。
【0020】
この色ずれ防止のため、ベルト移動方向で最上流の1次転写部の直前のベルト箇所を支持するローラであるローラ42をクラウン形状とした。ローラ42はベルトを内側から支持するバックアップローラであり、最上流の作像ユニットに進入するベルトの位置を決めるベルト位置調整ローラでもある。フルカラーモードとモノカラーモードとでそれぞれ適切なベルト位置を決めるという意味でもベルト調整ローラといえる。このローラ42にローラ42のたわみ量分をキャンセルする形状をあらかじめ付与(クラウン追加)することにより、作像ユニットでの、ベルトたわみをキャンセルさせ、色ずれを防ぐ。
【0021】
図3(c)はローラ42への転写ベルト45の巻き付き領域70と、巻き付き領域の中央及びローラ42の中心を通るベルトテンションTとを示す。このテンションによりローラの軸方向中央部(以下、中央部という。)が軸方向両端(以下、両端部という。)よりもベルト内側に位置するように撓む。
図3(b)に撓みの無いときの外径小径の両端部42aと外径大径の中央部42bとで中心が一致する状態を示す。ベルトテンションでローラ42が撓むと、
図3(c)に示すように中央部42bがベルト内側に位置するがクラウン量の設定により、ベルト巻き付きの中心ではローラ42の表面をストレートにできる。
【0022】
このクラウン形状により、撓みによる色ずれをキャンセルして色合わせを向上できた。ところが、クラウン形状のローラにより、ベルトの中央と端部の速度差が生まれる。具体的には、回転中心からベルト接触部までの距離は、中央は大きい、端部は中央より小さいため、中央は早い、両端部は中央より遅いというようにベルトの長手方向の線速差が生じる。この速度差で、ベルト端部がそれぞれ中央に寄ろうし、ベルトにしわや画像ひずみが発生してしまう問題があった。
図3(b)の破線の矢印F1がベルトに対し中央に寄るように働く力を示す。ベルトが中央へ向かう力が加わるのである。矢印Aはローラの表面の回転の方向及び向きを示す。
【0023】
ベルトにしわが生じると、しわによりトナー像が載っている場所と載っていない場所とが生じて異常画像が発生する。この異常画像はベルトのしわが折れてしまうと顕著に現れる。
【0024】
クラウンを付与したローラ42へ、ベルトテンションにより、クラウンをキャンセル力を加えられている場合には、ベルト巻き付け部中心において回転中心からベルト接触部の距離の長手偏差はない。しかし、ベルト巻き付け中心からずれた、ベルト巻き付け領域全体においては、回転中心からベルト接触部の距離の偏差をなくすことは、できない。
【0025】
また、テンションが狙いの値になっていない場合には、ベルト中央部と端部とで速度差が生まれ、しわや画像ひずみが発生する(テンションが狙いの荷重であれば、バックアップローラのベルト巻き付き部のクラウン形状はキャンセルされるため、速度差は発生しない)。
【0026】
更に、カラープリンタ1では、ローラ42はフルカラーモードによる印刷時とモノクロモードによる印刷時で、ローラ42の位置を切り替えていることらも、次のようにベルトのしわや画像ひずみが生じる。
【0027】
すなわち、モノクロモードとフルカラーモードでは、バックアップローラによるベルトの押し出し量(たわませ量)が異なる。たとえば、
図2(a)のベルトの押し出し量S1と
図2(c)に示すベルトの押し出し量S2とが異なる。このため、ベルトからローラ42にかかる荷重も異なり、モノクロモードとフルカラーモードとで、ローラ42のたわみ量が異なる。フルカラーモードのときの荷重に合わせたクラウン量にした場合、モノクロモードでは、クラウンが残ったままになり、しわになるのである。
【0028】
モード間でローラ42の位置が異なることに起因するしわを回避すべく、モノクロモードにおいては、バックアップローラをベルトから離す構成も考えられるが、移動距離を確保しなくてはならないため、装置が大きくなる。
【0029】
また、このようにモノクロモードでローラ42を離す構成においては、モノクロモードからフルカラーモードへの切り替えは、プリントタイム低減や、プリント後のお待ち時間低減のため、中間転写ベルトが回転している間に、切り替え動作を行う。切り替え動作中(ベルト軌道設定の変更動作中)は、ベルトテンションが狙いの荷重にはなっておらず、ローラ42のクラウン形状のキャンセル量が適切な量とは異なることになる。この結果、ベルトの中央部と端部で速度差が生まれるため、ベルトがひずみ、モノクロモードから切り替え後のフルカラーモードでの印刷時にベルトのしわや画像ひずみが生じてしまう。
【0030】
材料の省資源化、軽量化により、ローラの小径化、中空パイプ状のローラの薄肉化により、ローラへの荷重が想定と異なる場合のたわみ量が想定からずれ量も大きくなる。
【0031】
本実施形態では、クラウン形状のローラのベルトの中央と端部の速度差による不具合を防止するため、少なくとも一つのベルトの支持回転体はベルトに対し幅方向の両外側へ拡げる力を付与する。つまり、ベルトに対し幅方向の外側に向かう力を加える。拡げる力を付与する支持ローラは、ベルトにより駆動されるローラでもよいし、ベルトを駆動しているローラでもよい。クラウン形状の支持回転体に対しベルト移動方向の下流側または上流側から隣接する支持回転体であることが好ましい。クラウン形状の支持回転体そのものが、ベルトに対し幅方向の両外側へ拡げる力を付与するものであることが最も好ましい。
【0032】
拡げる力を付与する方法としては次の方法が挙げられる。ローラ表面部に形成した溝で拡げる力を付与する方法である。中央から外側に向け、ローラ軸方向に傾斜を設けた溝を設ける。溝は、ベルトにより駆動させるローラと、ベルトを駆動するローラでは、逆方向の溝である。溝部の傾斜により、傾斜に応じたベルトのローラ軸方向への力が加わる。この力でベルトをローラ軸方向の外側へ向けることで、中央部のベルトを引っ張る状態になるため、しわを抑制できる。
【0033】
図4はクラウン形状のローラ42に中央から外側に向け、ローラ軸方向に傾斜した溝42cを設け例の説明図である。
図4(a)がローラ42の斜視図、
図4(b)が底面図である。
図4(b)に示すようにクラウン形状のローラのベルトの中央と端部の速度差によるベルトを撓ませる力F1とは逆向きに拡げる力F2をベルトに付与することができる。
【0034】
図5はストレート形状のベルトつれ回りローラに、中央から外側に向けてローラ軸方向に傾斜した溝を設け例の説明図である。
図5(a)がローラの斜視図、
図5(b)が底面図である。
図5(b)に示すようにローラの溝により拡げる力F2をベルトに付与することができる。
【0035】
ベルトに外側への力を加える方法は、溝のほかに、ローラ表面部に形成した摩擦係数が異なる部分で拡げる力を付与する方法もある。具体的には、たとえば、ローラの表面より摩擦係数の高い材料(例えばゴム)で傾斜形状を設ける。この形状のローラも、中央が端部より外径が大きいローラそのものにも適用でき、また、そのほかのベルトに接触しているローラにも適用できる。単品のローラに限らず複数のローラに適用してもよい。好ましくは、ベルトのテンションがより強く印可されているローラの方が効果は発揮できる。
【0036】
外側に拡げる力をベルトに付与する形状をローラ自身に持たせることで、ベルトの中央と端部との速度差を与えないローラ(例えばストレート形状のローラ)によりベルト端部へ向かう力のみ与えることができる。よって、速度差によりベルトが中央部に寄ってしまうことによるしわ、画像ひずみを抑制できる。
【0037】
また、ローラ42に近い位置で、ベルト両端に力を加える構成を採用すれば、画像ひずみを有効に抑制できる。好ましくは、バックアップローラ自身で、速度差をキャンセルする構成が良い。また、バックアップローラに近い位置とは、下流においては、次のローラ等、できるだけ近い部分が良い。上流に配置する構成においても、あらかじめベルトに外側へ向かう力により、ベルトを伸ばす方向に力を付与しておくことで、速度差によるしわ、画像ひずみをキャンセルできる。
【0038】
[実施形態2]
以上の実施形態は、少なくとも一つの支持回転体はクラウン形状であるとともに、少なくとも一つの支持回転体はベルトに対し幅方向の両外側へ拡げる力を付与するものであった。少なくとも一つの支持回転体がベルトに対し幅方向の両外側へ拡げる力を付与するものであることに代え、少なくとも一つの支持回転体として幅方向の中央部または両端部が幅方向の他の箇所よりもベルト裏面との摩擦係数が大きいものを採用してもよい。すなわち、実施形態2に係るベルト装置は、少なくとも一つの支持回転体はクラウン形状であり、かつ、幅方向の中央部または両端部が幅方向の他の箇所よりもベルト裏面との摩擦係数が大きいものである。
【0039】
図6は、クラウンを付与したローラ42であって、中央部42dと端部のベルトとの摩擦係数に違いを持たせたものを示す。カラープリンタ1のローラ42をこのように構成することにより、ベルトしわを抑制できる。ローラ42の中央部以外の摩擦係数を低くすることで、ローラの中央以外は、ベルトと滑る状態になる。そのため、中央部のみで駆動することにより、ベルトの長手の線速はローラ中央部の径で決まり、ベルトの長手方向の力を受けにくい。この結果、ベルトが長手の中央部へ向かう力をキャンセルできるため長手方向のひずみが起きにくく、ベルトのしわになりにくいのである。
【0040】
中央部42dに、高摩擦部材が配置する、または、コーティングする(中央部のみにゴムを巻く、高摩擦係数部材をコーティングや塗装する)。中央部または両端部に比較的摩擦係数が大きい材料を配置するか、または、他の箇所に比較的摩擦係数が小さい材料を配置するかしてもよい。DLCコーティング等の低摩擦コーティングを用いることができる。
【0041】
ローラ42の具体例として次を挙げることができる。SUM材(硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材)にニッケルメッキ等した金属性のローラに、中央部にゴム等、厚みがあり、用紙との摩擦係数がメッキより高い材料を設ける。フルカラーモードでの印刷時にローラ42がたわむ分のゴム厚みを設けておくことで、ローラ42のたわみによる色ずれを抑制しながら、ベルトしわ、異常画像を抑制することができる。ここで、ローラは、ストレートのローラに、ゴム層によって中央部が大きい形状を付与することで、金属の余計な削りが少なくなり、省資源であるため好ましい。
【0042】
以上、実施形態1は、トナー像を担持する複数の像担持体と、回動可能な中間転写体と、前記複数の像担持体に夫々対向して配置され前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を転写する複数の1次転写ローラと、前記中間転写体上のトナー像を転写材に転写する二次転写ローラと、を有し、前記複数の1次転写ローラによって前記中間転写体上にトナー像を順次重ね合わせた後に前記二次転写ローラによって転写材に前記中間転写体からトナー像が転写され、1次転写ローラの上流にベルト位置調整ローラを有し、ベルト位置調整ローラは、複数ある像担持体作像最上流の上流に配置され、ベルト位置調整ローラの軸方向中央部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きいことを特徴とする画像形成装置において、ベルト位置調整ローラ自身が、ベルトを両端へ引っ張る方向の力が加わる構成であるといえる。
【0043】
また、実施形態2はトナー像を担持する複数の像担持体と、回動可能な中間転写体と、前記複数の像担持体に夫々対向して配置され前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を転写する複数の1次転写ローラと、前記中間転写体上のトナー像を転写材に転写する二次転写ローラと、を有し、前記複数の1次転写ローラによって前記中間転写体上にトナー像を順次重ね合わせた後に前記二次転写ローラによって転写材に前記中間転写体からトナー像が転写され、1次転写ローラの上流にベルト位置調整ローラを有し、ベルト位置調整ローラは、複数ある像担持体作像最上流の上流に配置され、ベルト位置調整ローラの軸方向中央部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きいことを特徴とする画像形成装置において、ベルト位置調整ローラのベルトとの摩擦は、中央部と、中央部以外で異なるものといえる。
【0044】
何れの実施形態も、ベルト位置調整ローラにクラウン形状を採用したが他のベルト支持回転体にクラウン形状を採用してもよい。また、画像形成装置の他の箇所のベルト装置、または、画像形成装置以外の装置に用いられるベルト装置に適用することもできる。
【0045】
なお、少なくとも一つの回転支持体をクラウン形状にすることによる不具合を解決するためには次の他の方式も考えられるが、上記各実施形態はこれらよりも優れている。すなわち、次の[1]~[3]が考えられる。
[1]クラウンが必須のバックアップローラ以外のローラを逆クラウンにすることでキャンセルする。
[2]ベルトに外側に向かう力に加わる形状・構成を付与する。
[3]ローラに外側に向かう力に加わる形状・構成を付与する。
【0046】
[1]においては、常にローラの逆クラウン形状により、速度差が生まれてしまうため、色ずれになってしまう。(逆クラウンによる速度差が必要なのは、モノクロモードでバックアップローラがベルトに触れている構成におけるモノクロ印刷時、フルカラー印刷とモノクロ印刷の変更による、バックアップローラの切り替え時。バックアップローラのクラウン形状が、モードにより異なるため、一概に逆クラウン形状を決定できない。)
【0047】
[2]に関し、特許文献2に、ベルトのより防止のために、駆動ローラにクラウンを付けた際に、クラウンにより中央部のベルト線速が端部より早くなることによりベルトがたわみ、中央部の画像にひずみが発生した問題が記載されている。そして、この問題に対し、ストレート部の駆動ローラにおいても、ベルト寄りが発生しないように、ベルトに進行方向斜めに形状・補強を設け、ベルト両端部に力を与えている構成が記載されている。
【0048】
ベルトに形状・補強部材によりベルト両端部に力を加えることは有効と考えるが、次の問題がある。ベルトへの形状追加や補強によりベルトの電気抵抗ムラによる色むらが発生する。転写電流をベルトに流すにあたり、補強材などで電流が流れやすい箇所とそうでない箇所とが生じると転写され方が異なるためである。また、補強によりベルト厚みが増すため、厚みばらつきが大きくなる(一般的には厚みばらつきは厚みの割合で決まるため厚みが増えれば公差が大きくなる)。この厚みバラツキによる駆動ローラ上での表面線速バラツキにより色ずれが悪化する。
【0049】
[3]に関し、特許文献2に、ストレート上の駆動ローラに、スパイラル状の溝を形成し、ベルト寄りを防止する構成においても、ベルト両端に力を加える構成が記載されている。しかし、駆動ローラにスパイラル状の溝を形成するという点を、実施形態1のローラ42をクラウン形状にしたカラープリンタ1に単に適用すると、次の問題が残る。すなわち、クラウン状にしたローラ42は、作像最上流の感光体とのベルト巻き付け状態を確保の目的で配置されているため、作像ステーション最上流の上流に配置されている。このため、
図1に示すように駆動ローラはローラ42と対抗位置(ベルト経路上で180度反対の位置)にあり、両者の間の距離が大きい。距離があるため、ひずみが生じやすく、ベルトが何周もする間にそのひずみが蓄積し、画像ひずみやしわになりやすい問題である。
【符号の説明】
【0050】
1 :カラープリンタ
2 :装置本体
2A :正面
3 :作像ユニット
4 :中間転写ユニット
5 :光学ユニット
6 :1次転写ローラ
7 :1次転写部
8 :2次転写部
9 :2次転写ローラ
10 :トレイ
11 :ローラ群
12 :定着装置
13 :排出口
14 :排出トレイ
15 :ローラ対
16 :ベルトクリーニング手段
19 :ニュートナー収容部
30 :感光体
31 :帯電手段
32 :現像手段
33 :クリーニング部
41 :ローラ
42 :ローラ
42a :両端部
42b :中央部
42c :溝
43 :ローラ
44 :ローラ
45 :転写ベルト
46 :センサ対向部材
47 :押付ローラ
48 :圧縮コイルバネ
50 :トナー像検知手段
70 :巻き付き領域
A :矢印
F1 :力
F2 :力
P :記録材
S1 :押し出し量
S2 :押し出し量
T :ベルトテンション
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【文献】特開2003-345142号公報
【文献】特開2002-357960号公報