(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20241219BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241219BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 310
G03G15/01 114
(21)【出願番号】P 2021081285
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直洋
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206373(JP,A)
【文献】特開2005-250455(JP,A)
【文献】特開2014-202860(JP,A)
【文献】特開2020-144225(JP,A)
【文献】特開2007-086524(JP,A)
【文献】特開2018-049088(JP,A)
【文献】特開2018-112682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上の前記トナー像が転写される転写体と、
前記転写体上の残留物を除去する転写用クリーニングブレードと、を備えた画像形成装置において、
前記転写用クリーニングブレードの前記転写体に当接する先端稜線部の弾性仕事率が、前記転写体の表面の弾性仕事率よりも高く
、
前記転写用クリーニングブレードの前記先端稜線部の弾性仕事率と前記転写体の表面の弾性仕事率との差分値と、前記転写体の表面の弾性仕事率と前記像担持体の表面の弾性仕事率との差分値との合計値が、10.1%以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上の前記トナー像が転写される転写体と、
前記転写体上の残留物を除去する転写用クリーニングブレードと、を備えた画像形成装置において、
前記転写用クリーニングブレードの前記転写体に当接する先端稜線部の弾性仕事率が、前記転写体の表面の弾性仕事率よりも高く、
前記転写用クリーニングブレードの前記先端稜線部の弾性仕事率が、前記転写体の幅方向で異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の画像形成装置において、
前記先端稜線部の幅方向両端部の弾性仕事率が、前記先端稜線部の他の箇所の弾性仕事率と異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の画像形成装置において、
前記先端稜線部の幅方向両端部の弾性仕事率が、前記先端稜線部の他の箇所の弾性仕事率よりも低いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項
3または4に記載の画像形成装置において、
前記先端稜線部の幅方向両端部は、前記幅方向において、前記転写体の前記像担持体のトナー像が転写される転写領域よりも外側領域に当接していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上の前記トナー像が転写される転写体と、
前記転写体上の残留物を除去する転写用クリーニングブレードと、を備えた画像形成装置において、
イエロー色のトナー像を担持する像担持体と、マゼンタ色のトナー像を担持する像担持体と、シアン色のトナー像を担持する像担持体と、黒色のトナー像を担持する像担持体とを備え、
前記転写用クリーニングブレードの前記転写体に当接する先端稜線部の弾性仕事率が、前記転写体の表面の弾性仕事率よりも高く、
前記転写体と黒色のトナー像を担持する像担持体の表面の弾性仕事率と差分値が、前記転写体と他の像担持体の表面の弾性仕事率と差分値よりも高いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の画像形成装置において、
黒色のトナー像を担持する像担持体の表面の弾性仕事率を、他の像担持体の表面の弾性仕事率よりも低くしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1
乃至7いずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記像担持体の表面の弾性仕事率が、前記転写体の表面の弾性仕事率よりも低いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の画像形成装置において、
複数の前記像担持体が、前記転写体の表面移動方向に並べて配置されており、
複数の像担持体のうち、少なくとも、前記転写体の表面移動方向最下流に配置された像担持体の表面の弾性仕事率が、前記転写体の表面移動方向最上流に配置された像担持体の表面の弾性仕事率よりも低いことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トナー像を担持する像担持体と、像担持体上のトナー像が転写される転写体と、転写体上の残留物を除去する転写用クリーニングブレードと、を備えた画像形成装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記画像形成装置として、転写体たる中間転写ベルトのマルテンス硬度を200[N/mm2]以下とし、転写用クリーニングブレードの中間転写ベルトに当接する先端稜線部の弾性仕事率を70%以上、かつ、先端稜線部のマルテンス硬度を2[N/mm2]以上、10[N/mm2]以下にしたものが記載されている。上記構成とすることで、中間転写ベルトの紙紛フィルミングを良好に除去できると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、転写体のフィルミングの抑制に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上の前記トナー像が転写される転写体と、前記転写体上の残留物を除去する転写用クリーニングブレードと、を備えた画像形成装置において、前記転写用クリーニングブレードの前記転写体に当接する先端稜線部の弾性仕事率が、前記転写体の表面の弾性仕事率よりも高く、前記転写用クリーニングブレードの前記先端稜線部の弾性仕事率と前記転写体の表面の弾性仕事率との差分値と、前記転写体の表面の弾性仕事率と前記像担持体の表面の弾性仕事率との差分値との合計値が、10.1%以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、良好に転写体のフィルミングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【
図2】プロセスユニットの他の例を示す概略構成図。
【
図3】各プロセスユニットの上方に中間転写ベルトを設けた例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置であるカラーレーザープリンタ(以下、単にプリンタという)の概略構成図である。
【0009】
図1に示すプリンタは、プリンタ本体100の中央に、プリンタ本体100に対して着脱自在に装着された4つのプロセスユニット10Bk,10Y,10M,10Cが設けられている。各プロセスユニット10Bk,10Y,10M,10Cは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。そのため、特に色を区別しない場合には、各部材の符号の後に、Bk、Y、M、Cなどの記載は省略する。
【0010】
各プロセスユニット10は、像担持体である感光体1、感光体表面を帯電させる帯電ローラ2、現像装置4、感光体表面をクリーニングするクリーニング装置7などを備える。感光体1は、円筒形のドラムである。
【0011】
クリーニング装置7は、感光体1に対してカウンター当接するクリーニングブレード6を有する。クリーニングブレード6により感光体1上の転写残トナーを掻き取ることでクリーニングをおこなう。なお、ブレードクリーニング方式ではなく、静電ブラシ方式・静電ローラ方式等の静電方式も搭載可能である。
【0012】
各プロセスユニット10の上方には、各感光体1の表面を露光する潜像形成手段たる露光装置3が設けられている。露光装置3は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体1の表面へレーザー光Lを照射するようになっている。
【0013】
各プロセスユニット10の下方には、転写体たる中間転写ベルト15が設けられている。中間転写ベルト15は、無端状のベルトであり、二次転写対向ローラ21、クリーニングバックアップローラ16及びテンションローラ20によって張架されている。
【0014】
中間転写ベルト15に用いる材質としては、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、TPE(熱可塑性エラストマー)等を挙げることができる。これら材質にカーボンブラック等の導電性材料を分散させ樹脂フィルム状のエンドレスベルトとしたものが中間転写ベルトとして用いることができる。
【0015】
本実施形態では、ベルト駆動モータによって二次転写対向ローラ21を回転駆動することで、中間転写ベルト15は図の矢印で示す方向に回転するようになっている。また、テンションローラ20の軸方向両端部をばねによって加圧して、テンションローラ20は、中間転写ベルト15に張力を付与している。なお、感光体1などを駆動するプロセスユニットの駆動源と二次転写対向ローラ21を回転駆動する駆動源は、独立・共通どちらでも可能である。しかしながら、少なくともブラック用のプロセスユニットと二次転写対向ローラ21の駆動は、同時にON/OFFさせることが一般的である。従って、本体小型化・低コスト化のためにブラック用のプロセスユニットを、二次転写対向ローラ21の駆動源を共通化することが望ましい。
【0016】
4つの一次転写ローラ5は、導電性スポンジローラもしくは金属ローラ(アルミ、SUS)であり、それぞれ、各感光体1との間で中間転写ベルト15を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ5には、一次転写高圧電源が接続されており、この高圧電源から一次転写バイアスが印加させることで、転写電界を形成する。一次転写ローラ5に導電性スポンジローラが採用される場合には、イオン導電性ローラ(ウレタン+カーボン分散、NBR、ヒドリンゴム)や電子導電タイプのローラ(EPDM)等が用いられる。
【0017】
二次転写ローラ25は、二次転写対向ローラ21との間で中間転写ベルト15を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、一次転写ローラ5と同様に、二次転写ローラ25には、二次転写高圧電源が接続されており、この高圧電源から所定の二次転写バイアスが印加されることで、転写電界を形成する。
【0018】
二次転写バイアスとしては、引力転写方式と斥力転写方式の2方式がある。引力転写方式は、二次転写ローラ25にプラスのバイアスを印加し、二次転写対向ローラ21を接地することで二次転写電界を形成する。斥力転写方式は、二次転写対向ローラ21にマイナスのバイアスを印加し、二次転写ローラ25を接地することで二次転写電界を形成する。
【0019】
二次転写ローラ25はスポンジローラであり、イオン導電性ローラ(ウレタン+カーボン分散、NBR、ヒドリンゴム)や電子導電タイプのローラ(EPDM)等が用いられる。また、二次転写ローラ25の表面に付着したトナーなどの付着物を除去する二次転写クリーニングユニットを設けてもよい。
【0020】
また、中間転写ベルトのトナー像を記録媒体としての転写紙Pに二次転写する二次転写ユニットとしては、二次転写ベルトを用いたベルト方式でもよい。二次転写ベルトは、二次転写ベルトを挟んで中間転写ベルトと対向する駆動ローラとテンションローラとに張架される。駆動ローラは、二次転写バイアスが印加される。
【0021】
ベルトクリーニング装置32は、中間転写ベルト15に対してカウンター当接する転写用クリーニングブレード31を有する。転写用クリーニングブレード31により中間転写ベルト15上の転写残トナーを掻き取ることでクリーニングをおこなう。なお、ブレードクリーニング方式ではなく、静電ブラシ方式・静電ローラ方式等の静電方式も搭載可能である。しかし、静電方式の場合、転写用クリーニングブレード31の替わりにバイアス印加されるクリーニングブラシ/ローラが配置されることになる。その結果、画像形成装置の使用状況に応じて転写残トナーの予備荷電が必要になる場合があり、クリーニングユニット自体が大型化する、高圧電源が1~2系統追加になる、バイアスクリーニングのための余分な動作が必要になる、等の欠点がある。従って、本体小型化・低コスト化、清掃性の観点からは、ブレードクリーニング方式が好ましい。
【0022】
一方、プリンタ本体100の下部には、記録媒体としての転写紙Pを収容した給紙トレイ22や、給紙トレイ22から転写紙Pを搬出する給紙ローラ23等が設けられている。ここで、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、手差しトレイにセットされた転写紙が搬送される手差し口42を有している。
【0023】
プリンタ本体100内には、転写紙Pを給紙トレイ22や手差しトレイから二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路が配設されている。本構成において、給紙は縦型パスをとっている。搬送路において、二次転写ローラ25の位置よりも転写紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ転写紙Pを搬送する搬送手段としてのレジストローラ対24が配設されている。
【0024】
また、二次転写ローラ25の位置よりも転写紙搬送方向下流側には、転写紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置40が配設されている。
【0025】
以上の構成を備えた画像形成装置の基本動作は次の通りである。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット10における各感光体1が駆動装置によって図中時計回り方向に回転駆動される。各感光体1の表面にはローラ形状の帯電ローラ2が圧接されており、感光体1の回転に従動して帯電ローラ2が回転する。そして、高圧電源によりDC電圧またはDC電圧にAC電圧が重畳されたバイアスを帯電ローラ2に印加することで、感光体1の表面が帯電ローラ2によって所定の極性に一様帯電される。
【0026】
帯電された各感光体1の表面には、露光装置3から書込光がそれぞれ照射され、各感光体1の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体1に露光する画像情報は、所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。なお、この露光工程は、レーザーダイオードを用いたレーザービームスキャナやLEDなどで行われる。
【0027】
このように各感光体1上に形成された静電潜像に、各現像装置4によって現像ローラ上に担持されたトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。なお、この現像工程では、高圧電源から現像装置4の現像ローラに所定の現像バイアスが印加される。
【0028】
また、作像動作が開始されると、二次転写対向ローラ21が図中反時計回り方向に回転駆動し、中間転写ベルト15を図中矢印で示す方向に周回走行させる。そして、各一次転写ローラ5に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧または定電流制御された所定の転写バイアスが印加される。これにより、各一次転写ローラ5と各感光体1との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
【0029】
その後、各感光体1の回転に伴い、感光体1上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、当該一次転写ニップにおいて形成された転写電界により、各感光体1上のトナー画像が中間転写ベルト15上に順次重ね合わせて転写される。このようにして、中間転写ベルト15の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。
【0030】
また、中間転写ベルト15に転写しきれなかった各感光体1上のトナーは、クリーニング装置7によって除去される。その後、除電装置によって各感光体1の表面が除電され、表面電位が初期化される。
【0031】
プリンタ本体100の下部では、給紙ローラ23が回転駆動を開始し、給紙トレイ22から転写紙Pが搬送路に送り出される。搬送路に送り出された転写紙Pは、中間転写ベルト15表面のトナー画像先端部が二次転写ローラ25と二次転写対向ローラ21との間の二次転写ニップに到達するタイミングに合うようにレジストローラ対24によって二次転写ニップに送られる。このとき、二次転写ローラ25には、中間転写ベルト15上のトナー画像のトナー帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。
【0032】
その後、中間転写ベルト15の回転に伴って、中間転写ベルト15上のトナー画像が二次転写ニップに達したときに、当該二次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト15上のトナー画像が転写紙P上に一括して転写される。
【0033】
また、このとき転写紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト15上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置32によって除去される。除去されたトナーはトナー搬送経路を通り、中間転写ベルト15と給紙トレイ22との間に配設された廃トナー収容器33へ搬送され回収される。
【0034】
転写紙Pは二次転写対向ローラ21の曲率によって中間転写ベルト15から分離され、定着装置40へと搬送され、定着装置40によって熱と圧力により転写紙P上のトナー画像が転写紙Pに定着される。そして、転写紙Pは、排出口41から装置外へ排出される。
このようにして、本実施形態に係るプリンタにおける一連の画像形成プロセスが完了する。
【0035】
また、本実施形態のプリンタは、中間転写ベルト15を、Bk色のプロセスユニット以外のプロセスユニットの感光体1に対して接離するベルト接離機構を有している。フルカラー画像形成時は、中間転写ベルト15を各感光体1に当接するようにベルト接離機構を制御する。モノクロ画像形成時は、Bk色のプロセスユニット以外のプロセスユニットの感光体1から中間転写ベルト15が離間するようにベルト接離機構を制御する。
【0036】
図2は、プロセスユニット10の他の例を示す概略構成図である。
図2に示すプロセスユニット10は、潤滑剤供給部8を有している潤滑剤供給部8は、ブレード状部材8c、固形潤滑剤8b、感光体1と固形潤滑剤8bとに摺接する潤滑剤供給ローラ8aから主に構成されている。固形潤滑剤8bは、ステアリン酸亜鉛、チッ化ホウ素(BN)、アルミナ、等を主成分として混合されている。
また、
図2に示すプロセスユニットは、帯電ローラ2に当接して回転する帯電ローラクリーナ2aを有している。
【0037】
また、プロセスユニット10と中間転写ベルトとの配置関係は、
図1に示す配置関係に限らず、
図3に示すように、各プロセスユニット10の上方に、転写体たる中間転写ベルト15を設けてもよい。
【0038】
ここで、感光体1の一例について説明する。
図4は、感光体1の一例を説明するための概略断面図である。
図4(a)は、導電性支持体91上に表面近傍に無機微粒子を含有した感光層92を設けた一例である。
図4(b)は、導電性支持体91上に感光層92及び無機微粒子を含有した表面層93を設けた一例である。
図4(c)は、導電性支持体91上に電荷発生層921、電荷輸送層922を積層した感光層92及び無機微粒子を含有した表面層93を設けた一例である。
図4(d)は、導電性支持体91上に下引き層94を設け、その上に電荷発生層921と電荷輸送層922とを積層した感光層92及び無機微粒子を含有した表面層93を設けた一例である。
【0039】
導電性支持体91としては、金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチックまたは紙に被覆したもの等を使用することができる。金属酸化物としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を挙げることができる。
【0040】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、導電性支持体91として用いることができる。さらに、適当な円筒基体上に熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、導電性支持体91として良好に用いることができる。熱収縮チューブは、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に導電性粉体を含有させたものである。
【0041】
感光層92は
図4(a)や
図4(b)に示すように、単層でもよいが、
図4(c)や
図4(d)に示すように、電荷発生層921と電荷輸送層922とで構成されていてもよい。
電荷発生層921は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層921には、公知の電荷発生物質を用いることが可能である。電荷発生物質の代表としては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合してもかまわない。
【0042】
電荷発生層921は、必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体91上に塗布し、乾燥することにより形成される。
電荷発生層921に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0043】
電荷輸送層922は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層921上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。電荷輸送物質には、電子輸送物質と正孔輸送物質とがある。電子輸送物質及び正孔輸送物質としては、公知の材料を用いることができる。
【0044】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ-N-ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0045】
電荷輸送層922中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用できる。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用される。
【0046】
電荷輸送層922が最表層となる場合は、電荷輸送層922に無機微粒子が含有されている。無機微粒子としては、無機材料が挙げられる。無機材料は、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物が挙げられる。また、チタン酸カリウムなども挙げられる。特に金属酸化物が良好であり、さらには、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等が有効に使用できる。
【0047】
無機微粒子の平均一次粒径は、0.01~0.5[μm]であることが表面層93の光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。無機微粒子の平均一次粒径が0.01[μm]以下の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こすおそれがある。0.5[μm]以上の場合には、分散液中において無機微粒子の沈降性が促進されたり、トナーの感光体表面へのフィルミングが発生したりするおそれがある。
【0048】
無機微粒子の添加量は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、保護層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下である。その下限値は、3重量%が好ましい。
【0049】
また、これらの無機微粒子は少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることが無機微粒子の分散性の面から好ましい。
無機微粒子の分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる問題に発展する可能性がある。
【0050】
次に、
図4(a),
図4(b)に示す感光層92が単層構成の場合について述べる。
単層の感光層92は、電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。
【0051】
また、
図4(a)に示す単層の感光層92が表面層になる場合も、上記無機微粒子を含有する。さらに、この感光層92には上述した電荷輸送材料を添加した機能分離タイプとしても良く、良好に使用できる。また、必要により、可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層922で挙げた結着樹脂をそのまま用いるほかに、電荷発生層で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。
【0052】
また、
図4(d)に示すように、導電性支持体91と感光層92との間に下引き層94を設けてもよい。下引き層94は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層92を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。
【0053】
このような樹脂としては、水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。アルコール可溶性樹脂としては、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等が挙げられる。三次元網目構造を形成する硬化型樹脂としては、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド-メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0054】
また、下引き層94にはモアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。この下引き層94は前述の感光層92の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。さらに、下引き層94として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他にも、公知のものを用いることができる。
【0055】
図4(b)、
図4(d)に示すように、感光層92の最表面に無機微粒子を含有させた表面層93を設けてもよい。表面層93は、無機微粒子とバインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂などの架橋樹脂が用いられる。
【0056】
微粒子としては、有機系微粒子及び無機微粒子が用いられる。有機系微粒子としては、フッ素含有樹脂微粒子、炭素系微粒子などが上げられる。無機微粒子としては、金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。金属酸化物は、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等が挙げられる。特に金属酸化物が良好であり、さらには、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等が有効に使用できる。
【0057】
無機微粒子の平均一次粒径は、0.01~0.5[μm]であることが表面層93の光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。無機微粒子の平均一次粒径が0.01[μm]以下の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こすおそれがある。0.5[μm]以上の場合には、分散液中において無機微粒子の沈降性が促進されたり、トナーの感光体表面へのフィルミングが発生したりするおそれがある。
【0058】
表面層93中の無機微粒子濃度は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、保護層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、50重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下である。その下限値は、5重量%が好ましい。また、これらの無機微粒子は少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることが無機微粒子の分散性の面から好ましい。無機微粒子の分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こす場合があるため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる場合がある。
【0059】
表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、無機微粒子の絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。表面処理剤は、無機微粒子の分散性及び画像ボケの点から次のものが好ましい。表面処理剤としては、例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等が挙げられる。または、これらとシランカップリング剤との混合処理したものを挙げることができる。さらには、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理したものも挙げることができる。
【0060】
シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。
【0061】
表面処理量については、用いる無機微粒子の平均一次粒径によって異なるが、3~30[wt%]が好ましく、5~20[wt%]がより好ましい。表面処理量がこの範囲であると、無機微粒子の分散効果が得られ、残留電位の著しい上昇を抑制できる。これら無機微粒子の材料は単独もしくは2種類以上混合して用いられる。
【0062】
無機微粒子の材料は、適当な分散機を用いることにより分散できる。また、分散液中での無機微粒子の平均粒径は、1[μm]以下が好ましく、より好ましくは0.5[μm]以下であり、表面層93の透過率の点から好ましい。
【0063】
感光層92上に表面層93を設ける方法としては、浸漬塗工方法、リングコート法、スプレー塗工方法などが用いられる。このうち一般的な表面層93の製膜方法としては、微小開口部を有するノズルより塗料を吐出し、霧化することにより生成した微小液滴を感光層92上に付着させて塗膜を形成するスプレー塗工方法が用いられる。ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
【0064】
表面層93は、残留電位低減、応答性改良のため、電荷輸送物質を含有しても良い。電荷輸送物質は、電荷輸送層の説明のところに記載した材料を用いることができる。電荷輸送物質として、低分子電荷輸送物質を用いる場合には、表面層93中における濃度傾斜を有しても構わない。
【0065】
また、表面層93には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される表面層93は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルの中から選ばれる少なくとも一つの重合体であることが好ましい。特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが好ましい。
【0066】
図5は、転写用クリーニングブレード31の概略構成図である。
転写用クリーニングブレード31は、中間転写ベルト15に当接する先端稜線部31aを有するブレード部材131と、ブレード部材131を保持する金属製のブレードホルダー132とを有している。
ブレード部材131は、
図5(a)に示すように、ポリウレタンゴム、ポリウレタンエラストマーなどの弾性体からなる単層構造でもよいし、
図5(b)~
図5(e)に示すように、先端稜線部31aを含むエッジ層131aとバックアップ層131bとからなる二層構造でもよい。なお、ブレード部材131の層構造は、3層以上であってもよい。
【0067】
図5(b)~
図5(c)のブレード部材は、互いに異なる材質の弾性体を遠心成型によって各層を順次重ね合わせることで作成することができる。また、
図5(d)に示すブレード部材は、ウレタンゴムなどの弾性ブレードの先端稜線部に紫外線硬化樹脂などを含浸し、含浸させた紫外線硬化樹脂に紫外線を照射してエッジ層131aを形成したものである。
また、
図5(e)に示すように、スプレー塗工、ディップ塗工等によって矩形状の弾性ブレードの先端稜線部を樹脂材等で被膜することでエッジ層131aを形成してもよい。
【0068】
弾性体は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを用いてポリウレタンプレポリマーを調製し、ポリウレタンプレポリマーに硬化剤、及び必要に応じて硬化触媒を加えて、所定の型内にて架橋し、炉内にて後架橋させたものを遠心成型によりシート状に成型後、常温放置、熟成したものを所定の寸法にて、平板状に裁断することにより、製造される。
【0069】
ポリオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、などが挙げられる。
高分子量ポリオールとしては、例えば、アルキレングリコールと脂肪族二塩基酸との縮合体であるポリエステルポリオール;エチレンアジペートエステルポリオール、ブチレンアジペートエステルポリオール、ヘキシレンアジペートエステルポリオール、エチレンプロピレンアジペートエステルポリオール、エチレンブチレンアジペートエステルポリオール、エチレンネオペンチレンアジペートエステルポリオール等のアルキレングリコールとアジピン酸とのポリエステルポリオール等のポリエステル系ポリオール;カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンエステルポリオール等のポリカプロラクトン系ポリオール;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等のポリエーテル系ポリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
低分子量ポリオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノン-ビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフエニルメタン、4,4’-ジアミノジフエニルメタン等の二価アルコール;1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、1,1,1-トリス(ヒドロキシエトキシメチル)プロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の三価又はそれ以上の多価アルコール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
ポリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
硬化触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、などが挙げられる。
【0073】
先端稜線部に含浸させる紫外線硬化樹脂としては、アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂を含有するものが挙げられる。アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂としては、分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0074】
分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリシクロデカン構造を有する(メタ)アクリレート化合物及びアダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。トリシクロデカン構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートなどが挙げられる。アダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、1,3-アダマンタンジメタノールジアクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジメタクリレート、1,3,5-アダマンタントリメタノールトリアクリレート、1,3,5-アダマンタントリメタノールトリメタクリレートなどのアダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0075】
また、分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物以外にも、分子量が100~1,500の(メタ)アクリレート化合物を含有することができる。
分子量が100~1,500の(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクレリート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11-ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,18-オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PEG600ジ(メタ)アクリレート、PEG400ジ(メタ)アクリレート、PEG200ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール・ヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、官能基数が3~6のペンタエリスリトールトリアクリレート構造を有する化合物が好ましい。
官能基数が3~6のペンタエリスリトールトリアクリレート構造を有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、などが挙げられる。
【0076】
また、先端稜線部31aに含浸させるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、重合禁止剤、希釈剤、などが挙げられる。
【0077】
また、先端稜線部31aの幅方向(
図5の紙面と直交する方向)両端の弾性仕事率[%]を先端稜線部31aのその他の弾性仕事率[%]よりも低くするのが好ましい。中間転写ベルト15の両端は、感光体のトナー像形成領域外にあり、中間転写ベルト15の両端には、トナー像が形成されない。なお、感光体のトナー像形成領域は、現像装置の現像ローラの軸方向長さとほぼ同一である。
【0078】
中間転写ベルト15の両端には、トナー像が形成されないため、中間転写ベルト15の端部に当接する先端稜線部31aの幅方向両端には、トナーがほとんど入力されない。そのため、先端稜線部31aの両端と中間転写ベルトとの摩擦力が中央部分よりも大きくなりやすい。その結果、ブレード部材131の幅方向両端が、中央よりも間転写ベルトの表面移動方向へ大きく弾性変形しめくれるおそれがある。このようにめくれが発生すると、先端稜線部以外の箇所が中間転写ベルトと接触して摩耗していき、最終的には先端稜線部が欠落する所謂えぐれ摩耗が発生するおそれがある。
【0079】
先端稜線部31aの幅方向両端の弾性仕事率[%]を先端稜線部31aのその他の弾性仕事率[%]よりも低くすることで、先端稜線部31aの幅方向両端が弾性変形し難くなる。その結果、先端稜線部31aの両端の中間転写ベルト15との摩擦力による中間転写ベルトの表面移動方向への弾性変形を抑制することができる。これにより、先端稜線部の両端のめくれが抑制され、えぐれ摩耗の発生を抑制することができる。
【0080】
例えば、先端稜線部の両端部のみ含浸処理をすることで、両端部の弾性仕事率を、それ以外の箇所の弾性仕事率よりも低くすることができる。
【0081】
弾性仕事率は、荷重を加えて変形させたときの塑性変形の仕事量と弾性変形の仕事量との和に対する弾性変形の仕事量の割合をパーセントで表示したものであり、次の式で表される。
弾性仕事率[%]={弾性変形の仕事量/(塑性変形の仕事量+弾性変形の仕事量)}×100
【0082】
トナーの母体成分や、トナーに添加されたシリカや酸化チタン、その他、いわゆるトナーの外添剤が感光体から中間転写ベルトへ転移し、このトナーの外添剤が中間転写ベルトに固着して、中間転写ベルトにフィルミングが発生することがある。また、
図2に示すように、プロセスユニット10が、潤滑剤供給部8を有する場合は、トナーの外添剤に加えて、潤滑剤に含まれる各種成分も感光体から中間転写ベルトへ転移する。そして、トナーの外添剤と潤滑剤とがお互いに相互作用して、中間転写ベルトのフィルミングが悪化する場合がある。さらに、2次転写ニップにおいて、転写紙から紙紛が中間転写ベルトに転移し、中間転写ベルトに固着して紙紛フィルミングが発生することがある。
【0083】
このような中間転写ベルトのフィルミングは、中間転写ベルトへの外部からの圧力(主に感光体との接触圧)によって、シリカなどのトナー外添剤および潤滑剤に含まれる各種成分などのフィルミング物質が固着して発生する。中間転写ベルトにフィルミングが発生すると、全ベタ画像やハーフトーン画像を出力するとフィルミングに対応する部分にトナーが載らず、白く抜ける所謂白抜けなどの異常画像が発生してしまう。
【0084】
そのため、本プリンタは、転写用クリーニングブレード31の先端稜線部31aの弾性仕事率[%]を、中間転写ベルト15の表面の弾性仕事率[%]よりも高くしている。弾性仕事率が高いということは、力を受けて変形しても、元に戻りやすい(塑性変形しにくい)ことを表している。転写用クリーニングブレードの先端稜線部31aの弾性仕事率を中間転写ベルト15の表面の弾性仕事率よりも高くすることで、転写用クリーニングブレード31が中間転写ベルト15の表面に十分に追従する。これにより、中間転写ベルト上の残留物を良好にクリーニングすることができ、中間転写ベルト上の上述したフィルミング物質を転写用クリーニングブレード31で良好に除去することができる。その結果、フィルミング物質が感光体との当接部である一次転写ニップへ進入するのを抑制することができ、中間転写ベルト15のフィルミングを抑制することができる。
【0085】
また、中間転写ベルト15の表面の弾性仕事率を感光体の表面の弾性仕事率以上にするのが好ましい。一次転写ニップにおいて、感光体1と中間転写ベルト15との間に挟まれたトナー外添剤や紙紛などのフィルミング物質は、弾性仕事率が高く元の形状に戻りやすい中間転写ベルト15よりも、弾性仕事率が低く元の形状に戻りにくい感光体1に付着しやすい。これは、一次転写ニップを抜ける際に転写圧が減少したときに、弾性仕事率の高く元の形状に戻りやすい中間転写ベルト15の表面が先に弾性変形してフィルミング物質を感光体1に押し付ける形となる。そのため、フィルミング物質が感光体1に付着しやすいと考えられる。このように、フィルミング物質を感光体1に付着しやすくすることで、感光体上トナー外添剤などのフィルミング物質が中間転写ベルトへ転移するのを抑制できるとともに、中間転写ベルト上のフィルミング物質の感光体への転移を促進できる。これにより、感光体1から中間転写ベルト15へのフィルミング物質の付着が抑制され、中間転写ベルト15のフィルミングをより一層抑制することができる。
【0086】
特に、転写用クリーニングブレード31の先端稜線部の弾性仕事率と中間転写ベルト表面の弾性仕事率との差分と、中間転写ベルト表面の弾性仕事率と感光体表面の弾性仕事率との差分の合計を、10.1[%]以上とするのが好ましい。10.1[%]以上とすることで、中間転写ベルト上のフィルミング物質を転写用クリーニングブレード31で良好に除去することができる。さらに、感光体1から中間転写ベルト15へのフィルミング物質への転移の抑制および中間転写ベルト15から感光体1への転移の促進を図ることができる。その結果、中間転写ベルト15のフィルミングを良好に抑制できる。
【0087】
一次転写ニップにおいて、中間転写ベルト15の表面移動方向下流にいくほど、中間転写ベルト15上の感光体1から転移したトナー外添剤などのフィルミング物質が多くなっていく。そのため、中間転写ベルト15の表面移動方向最下流に配置された感光体(
図1では、C色の感光体)表面の弾性仕事率を、表面移動方向最上流に配置された感光体(
図1では、Bk色の感光体)表面の弾性仕事率よりも低くするのが好ましい。この構成により、上流側に配置された感光体から中間転写ベルト15に転移したフィルミング物質を最下流に配置された感光体(
図1では、C色の感光体)に良好に転移させることができる。これにより、中間転写ベルト15のフィルミングを良好に抑えることができる。
【0088】
特に、最上流以外の感光体(Y,M,Cの感光体)表面の弾性仕事率を、最上流の感光体(Bkの感光体)表面の弾性仕事率よりも低くするのが好ましい。これは、上述したように、中間転写ベルト15のフィルミングは、主に感光体との接触圧によって発生する。そのため、最上流のBk色の感光体から中間転写ベルト15に転移したトナー外添剤などのフィルミング物質は、その隣のY色の感光体との接触圧でフィルミングとなる可能性がある。従って、最上流以外の感光体(Y,M,Cの感光体)の表面の弾性仕事率を、最上流の感光体(Bkの感光体)表面の弾性仕事率を低くすることで、上流側の感光体から中間転写ベルト15に転移したフィルミング物質をその隣の感光体に転移させることができる。これにより、中間転写ベルト15のフィルミングの発生を良好に抑えることができる。
【0089】
また、一般的に使用頻度の高いBk色の感光体表面の弾性仕事率を、Y,M,Cのカラーの感光体表面の弾性仕事率よりも低くするのが好ましい。これにより、使用頻度が高いBk色の感光体表面の弾性仕事率を他の感光体表面の弾性仕事率よりも低くすることで、効果的に中間転写ベルト15のフィルミングを抑制することができ好ましい。そのため、Bk色のプロセスユニット10Bkを中間転写ベルト15の移動方向最下流に配置するのが好ましい。これにより、Bkの感光体よりもベルト移動方向上流側に配置されたその他の感光体から中間転写ベルト15へ転移したフィルミング物質を、Bk感光体に転移させることも可能となり、より効果的に中間転写ベルトのフィルミングを抑制することができる。
【0090】
[評価試験]
次に、本出願人が行った評価試験について説明する。
評価試験は、弾性仕事率が互いに異なる転写用クリーニングブレード、中間転写ベルト、感光体を組み合わせ、中間転写ベルト15のフィルミングについて評価した。なお、感光体としては、Y,M,C,Bk色で同一の感光体を用い、各感光体表面の弾性仕事率は、ほぼ同一である。
【0091】
[感光体表面の弾性仕事率の調整]
感光体表面の弾性仕事率は、感光体の表面層となる層に含有する無機微粒子の添加量や樹脂種により調整した。例えば、ポリカーボネート、ポリアリレートなどの樹脂は、樹脂骨格中に剛直な構造を取り込むことにより、弾性仕事率を高めることができる。
【0092】
[中間転写ベルト表面の弾性仕事率の調整]
中間転写ベルト15の表面の弾性仕事率は、材料の素材固有の特性に加え、カーボンの種類や量などの組成や成形条件の影響を受ける。特に成形時の冷却速度の影響を受け、冷却速度は遅い方が弾性仕事率が高くなりやすい。冷却速度はマンドレルの温度制御、ベルトの引き抜き速度などでコントロールすることができる。また、成形後のアニール処理でも弾性仕事率が高くなる場合もある。
従って、中間転写ベルト表面の弾性仕事率は、例えば用いる材料の種類を適宜選択する他、導電性カーボンの種類や量、成形条件を変更することで調整した。
【0093】
[転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率の調整]
転写クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率は、ブレード部材の材質(
図5(b)~
図5(e)などの層構造であれば、エッジ層131aの材質)の選択や、硬化触媒の選択、硬化触媒の配合量の調整などを適宜行うことで調整した。また、
図5(d)に示すように、エッジ層131aが含浸処理により形成されている場合は、含浸する材料や含浸時間を調整することで、弾性仕事率を調整した。
【0094】
以下に、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率の測定方法、中間転写ベルト表面の弾性仕事率の測定方法、及び感光体表面の弾性仕事率の測定方法を示す。
【0095】
[転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率の測定]
転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率は、フィッシャー・インストルメンツ社製、HM-2000を用いて測定した。先端稜線部から20[μm]の位置について、ビッカース圧子1.0[mN]の力で、10秒間押し込み、5秒保持し、10秒かけて抜き計測した。
【0096】
[中間転写ベルト表面の弾性仕事率・感光体表面の弾性仕事率の測定]
中間転写ベルト表面および感光体表面の弾性仕事率の測定方法は以下の通りである。
測定機器:Fischer社の微小硬度計H-100
測定条件:最大荷重2[mN]
最大荷重までの到達時間:10秒
クリープ時間:10秒
荷重減少時間:10秒
測定環境:23℃、50%
【0097】
[フィルミング評価方法]
中間転写ベルトのフィルミング評価方法は、以下のようにした。
[評価条件]
評価マシン:リコー製MPC6004機
評価環境:常温常湿環境(23[℃]50[%])
評価画像:白紙画像(トナー像なし)
画像出力モード:4枚/回を繰り返し3000回
画像出力枚数:合計9000枚
【0098】
上記白紙画像は、露光装置3による露光は行わずに各プロセスユニットを動作させた。9000枚画像出力後に所定パターンの画像を転写紙に印刷し、転写紙に印刷した画像に異常があるか否かを目視で確認した。また、9000枚画像出力後に中間転写ベルトの表面の状態を目視で確認した。そして、異常画像の有無、中間転写ベルトの表面状態から中間転写ベルトのフィルミングを評価した。評価判定基準は、下記の通りである。
【0099】
[判定基準]
◎:転写ベルト上に付着物未発生
○:転写ベルト上に軽微な付着物が存在する
△:転写ベルト上に付着物が多く存在するが、異常画像は未発生
×:転写ベルト上に付着物が非常に多く存在し、異常画像が発生する
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
上記表1~表3は、評価試験の結果を示す表である。
表1~表3の(式1)「ΔBL-TB」は、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率と中間転写ベルト表面の弾性仕事率の差分値である。表1~3の(式2)「ΔTB-OPC」は、中間転写ベルト表面の弾性仕事率と感光体表面の弾性仕事率の差分値である。また、表1~3の(式3)「TotalΔ」は、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率と中間転写ベルト表面の弾性仕事率の差分値と、中間転写ベルト表面の弾性仕事率と感光体表面の弾性仕事率の差分値の合計値である。
【0104】
表1~3に示すように、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率が中間転写ベルト表面の弾性仕事率よりも低い(「ΔBL-TB」<0)組み合わせ例(例4、例10、例11、例16)は、フィルミング評価結果が「×」であった。一方、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率が中間転写ベルト表面の弾性仕事率よりも高い(「ΔBL-TB」>0)組み合わせ例では、フィルミング評価結果が「△」以上であった。
【0105】
以上から次の構成とすることで、経時にわたり中間転写ベルトのフィルミングを原因とする白抜けなどの異常画像の発生を抑制できることがわかった。すなわち、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率を中間転写ベルト表面の弾性仕事率よりも高く(「ΔBL-TB」>0)する構成である。
【0106】
本評価試験は、評価画像を白紙画像とし、トナー像を形成しない条件で行っている。この条件は、現像装置内のトナーが消費されず、現像装置内でトナーが攪拌し続けられるため、トナーの外添剤が離脱しやすい。そのため、現像ローラから感光体へ転移するシリカなどのトナー外添剤が多くなり、フィルミング物質が感光体から中間転写ベルトに付着しやすい。また、中間転写ベルト15にトナー像が形成されないため、転写用クリーニングブレード31に転写残トナーが入力されない。転写用クリーニングブレード31にトナーが入力されることで、転写用クリーニングブレード31に堰き止められたトナーが、中間転写ベルト15に固着したフィルミング物質を削り取り、中間転写ベルト15のフィルミング抑制効果がある。しかし、本評価試験では、白紙画像であるため、このようなトナーによるフィルミング抑制効果は期待できない。
【0107】
このように、中間転写ベルト15のフィルミングに対して厳しい条件下でも、以下の構成とすることで、中間転写ベルト15のフィルミングによる異常画像の発生を抑制できることがわかった。すなわち、転写用クリーニングブレード31の先端稜線部31aの弾性仕事率を中間転写ベルト表面の弾性仕事率よりも高くする構成である。
【0108】
また、表1~表3の例2、例3、例8、例9、例14、例15は、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率が、中間転写ベルト表面の弾性仕事率に対して十分に高い(ΔBL-TB≧30.2)例である。これらの例は、感光体表面の弾性仕事率が中間転写ベルト表面の弾性仕事率よりも高く(ΔTB-OPC<0)ても、評価結果を「◎」にできている。このことから、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率が、中間転写ベルト表面の弾性仕事率に対して十分に高くすることで、以下の効果が得られることがわかる。すなわち、感光体から中間転写ベルト15へ多くのトナー外添剤などのフィルミング物質が付着しても、転写用クリーニングブレード31でフィルミング物質を良好に除去できる。従って、経時にわたり中間転写ベルト15のフィルミングを抑制できるという効果である。
【0109】
このように、転写用クリーニングブレード31の先端稜線部31aの弾性仕事率と中間転写ベルト表面の弾性仕事率との差分値(ΔBL-TB)は、転写用クリーニングブレード31のクリーニング性を示す指標値と用いることができる。そして、この差分値が大きいほど、転写用クリーニングブレード31のクリーニング性が高く、良好に中間転写ベルト上の紙紛やシリカなどのトナー外添剤などのフィルミング物質を除去することができる。
【0110】
また、例6と例7、例12と例13との比較から、感光体表面の弾性仕事率を中間転写ベルト表面の弾性仕事率よりも低く(ΔTB-OPC>0)することで、フィルミング評価が一段高い評価になっていることがわかる。これは、感光体から中間転写ベルト15へのフィルミング物質の転移が抑えられたり、中間転写ベルト15から感光体へのフィルミング物質の転移が促進されたりする。その結果、中間転写ベルト15のフィルミングの発生を抑えることができ、フィルミング評価が一段高い評価が得られたと考えられる。
【0111】
また、例17と例18との比較から、感光体表面の弾性仕事率を中間転写ベルト表面の弾性仕事率に対して十分に低くすることで、以下の効果が得られることがわかっった。すなわち、転写用クリーニングブレード31の先端稜線部31aの弾性仕事率と中間転写ベルト表面の弾性仕事率との差が小さくても、フィルミング評価を「◎」にできるという効果である。感光体表面の弾性仕事率を中間転写ベルト表面の弾性仕事率に対して十分に低くすることで、感光体1から中間転写ベルト15へのフィルミング物質の転移を十分に抑えることができる。さらに、中間転写ベルト15から感光体1への転移を促進する。その結果、経時にわたり中間転写ベルト15のフィルミングを抑制できることが例17と例18の比較で確認できた。
【0112】
このように、中間転写ベルト表面の弾性仕事率と感光体表面の弾性仕事率との差分値(ΔTB-OPC)は、シリカなどのトナー外添剤が感光体1からの中間転写ベルト15へ転移する転移量の指標値として用いることができる。そして、この差分値が大きいほど、感光体1からの中間転写ベルト15へ転移が抑えられる。
【0113】
また、表1~表3に示すように、「TotalΔ」を10.1[%]以上とすることで、フィルミング評価を「〇」以上にでき、中間転写ベルト15のフィルミングを抑制することができる。なお、「TotalΔ」は、上述したように、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率と中間転写ベルト表面の弾性仕事率との差分値と、中間転写ベルト表面の弾性仕事率と感光体表面の弾性仕事率との差分値の合計値である。さらに、「TotalΔ」を、23.7以上にすることで、フィルミング評価を「◎」以上にでき、より一層、中間転写ベルト15のフィルミングを抑制することができる。
【0114】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
トナー像を担持する感光体1などの像担持体と、像担持体上のトナー像が転写される中間転写ベルト15などの転写体と、転写体上の残留物を除去する転写用クリーニングブレード31とを備えた画像形成装置において、転写用クリーニングブレード31の転写体に当接する先端稜線部31aの弾性仕事率が、転写体の表面の弾性仕事率よりも高い。
特許文献1では、10000枚連続してトナー像を作像し、作像したトナー像を通紙用紙に転写する評価試験を行った結果に基づいて、転写体のマルテンス硬度、転写用クリーニングブレードの先端稜線部の弾性仕事率およびマルテンス硬度を規定している。トナー像を作像することで、転写クリーニングブレードには、転写残トナーが入力され、その転写残トナーにより転写体のフィルミングが除去される。そのため、特許文献1の評価試験は、転写体のフィルミングに関して比較的優しい条件である。
これに対し、態様1では、転写用クリーニングブレードの転写体に当接する先端稜線部の弾性仕事率を転写体の表面の弾性仕事率よりも高くすることで、上述したように、トナー像を形成せずに転写紙を9000枚通紙するという特許文献1に記載の評価試験の条件よりもフィルミングに厳しい条件の評価試験でもフィルミングによる異常画像の発生を防止できた。よって、特許文献1に比べて、転写体のフィルミングをより一層抑制することができる。
【0115】
(態様2)
態様1において、転写用クリーニングブレード31の先端稜線部31aの弾性仕事率と中間転写ベルト15などの転写体の表面の弾性仕事率との差分値(ΔBL-TB)と、転写体の表面の弾性仕事率と感光体1などの像担持体の表面の弾性仕事率との差分値(ΔTB-OPC)との合計値(TotalΔ)が、10.1%以上である。
これによれば、評価試験で説明したように、経時にわたり中間転写ベルト15などの転写体のフィルミングを抑制することができる。
【0116】
(態様3)
態様1または2において、感光体1などの像担持体の表面の弾性仕事率が、中間転写ベルト15などの転写体の表面の弾性仕事率よりも低い。
これによれば、実施形態で説明したように、感光体1などの像担持体から中間転写ベルト15へのトナー外添剤などのフィルミング物質の転移を抑制し、かつ、転写体から像担持体へのフィルミング物質の転移を促進することができる。これにより、転写体へのフィルミング物質の付着を抑制することができ、転写体のフィルミングを抑制することができる。
【0117】
(態様4)
態様3において、複数の感光体1などの像担持体が、中間転写ベルトなどの転写体の表面移動方向に並べて配置されており、複数の像担持体のうち、少なくとも、転写体表面移動方向最下流に配置された像担持体の表面の弾性仕事率が、転写体表面移動方向最上流に配置された像担持体の表面の弾性仕事率よりも低い。
これによれば、実施形態で説明したように、中間転写ベルトなどの転写体に付着しているトナー外添剤などのフィルミング物質の最下流の感光体への転移を良好にできる。これにより、転写体の表面移動方向上流側の像担持体から転写体に転移したフィルミング物質を、最下流の像担持体に良好に転移させることができ、効果的に転写体へのフィルミング物質の付着を抑制することができる。
【0118】
(態様5)
態様1乃至4いずれかにおいて、転写用クリーニングブレード31の先端稜線部31aの弾性仕事率が、中間転写ベルトなどの転写体の幅方向で異なる。
これによれば、実施形態で説明したように中間転写ベルトなどの転写体の幅方向のトナー付着量の違いに対応して、転写用クリーニングブレード31の先端稜線部31aの弾性仕事率を異ならせることができる。これにより、転写用クリーニングブレードの摩耗を均一にすることが可能となる。
【0119】
(態様6)
態様5において、先端稜線部31aの幅方向両端部の弾性仕事率が、先端稜線部31aの他の箇所の弾性仕事率と異なる。
これによれば、実施形態で説明したように、中間転写ベルト15などの転写体の幅方向両端は、像担持体などの感光体1からトナー像が転写させる転写領域外となる。そのため、転写体の幅方向に当接する転写用クリーニングブレード31の先端稜線部31aの両端部に入力されるトナー量が、他の箇所よりも少ない。入力されるトナー量が異なることで、転写体と先端稜線部との摩擦力が異なり、入力されるトナー量が少ない幅方向両端部に摩擦力が他の箇所をよりも高くなる。その結果、幅方向両端部が転写体の表面移動方向に大きく弾性変形してめくれが発生するおそれがある。このようなめくれが発生することで、先端稜線部以外の箇所が転写体と接触して摩耗していき、最終的には先端稜線部が欠落する所謂えぐれ摩耗が発生するおそれがある。
よって、先端稜線部31aの幅方向両端部の弾性仕事率を、先端稜線部31aの他の箇所の弾性仕事率と異ならせることで、先端稜線部31aの幅方向両端部の弾性仕事率を他の箇所よりも低くすることが可能となる。これにより、先端稜線部の両端が弾性変形し難くなり、めくれの発生を抑制でき、えぐれ摩耗の発生を抑制することができる。
【0120】
(態様7)
態様6において、先端稜線部31aの幅方向両端部の弾性仕事率が、先端稜線部の他の箇所の弾性仕事率よりも低い。
これによれば、実施形態で説明したように、先端稜線部31aの幅方向両端部の弾性仕事率を低くすることで、先端稜線部の両端が弾性変形し難くなり、先端稜線部の両端めくれの発生を抑制できる。これにより先端稜線部の両端のえぐれ摩耗の発生を抑制することができる。
【0121】
(態様8)
態様6または7において、先端稜線部の幅方向両端部は、幅方向において、転写体の像担持体のトナー像が転写される転写領域よりも外側領域に当接している。
これによれば、実施形態で説明したように、トナーの入力が少なく、中間転写ベルトなどの転写体との摩擦力が高くやすい箇所の弾性仕事率を他の箇所よりも低くして弾性変形し難くできる。これにより、トナーの入力が少ない転写体の外側領域に当接する箇所のえぐれ摩耗を抑制することができる。
【0122】
(態様9)
態様1乃至8いずれかにおいて、イエロー色のトナー像を担持する像担持体と、マゼンタ色のトナー像を担持する像担持体と、シアン色のトナー像を担持する像担持体と、黒色のトナー像を担持する像担持体とを備え、中間転写ベルト15などの転写体と黒色のトナー像を担持する像担持体の表面の弾性仕事率と差分値が、転写体と他の像担持体の表面の弾性仕事率と差分値よりも高い。
これによれば、実施形態で説明したように、一般的に使用率の最も高い黒色のトナー像を担持する像担持体の表面の弾性仕事率と差分値を、転写体と他の像担持体の表面の弾性仕事率と差分値よりも高くすることで、効果的に、転写体のフィルミングを抑制することができる。
【0123】
(態様10)
態様9において、黒色のトナー像を担持する像担持体の表面の弾性仕事率を、他の像担持体の表面の弾性仕事率よりも低くした。
これによれば、実施形態で説明したように、中間転写ベルト15などの転写体と黒色のトナー像を担持する像担持体の表面の弾性仕事率と差分値を、転写体と他の像担持体の表面の弾性仕事率と差分値よりも高くすることができる。
【符号の説明】
【0124】
1 :感光体
10 :プロセスユニット
15 :中間転写ベルト
16 :クリーニングバックアップローラ
31 :転写用クリーニングブレード
31a :先端稜線部
32 :ベルトクリーニング装置
91 :導電性支持体
92 :感光層
93 :表面層
94 :下引き層
100 :プリンタ本体
131 :ブレード部材
131a :エッジ層
131b :バックアップ層
132 :ブレードホルダー
921 :電荷発生層
922 :電荷輸送層
P :転写紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0125】