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  • 特許-水蒸気吸着材、除湿剤、及び結露防止剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】水蒸気吸着材、除湿剤、及び結露防止剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/16 20060101AFI20241219BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B01J20/16
B01D53/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022211946
(22)【出願日】2022-12-28
(65)【公開番号】P2024094988
(43)【公開日】2024-07-10
【審査請求日】2024-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】519342965
【氏名又は名称】株式会社ホリケン
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正哉
(72)【発明者】
【氏名】森本 和也
(72)【発明者】
【氏名】万福 和子
(72)【発明者】
【氏名】堀 峰也
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 卓正
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 雄貴
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-072686(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111021061(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109537279(CN,A)
【文献】特開2010-240554(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112940148(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムケイ酸塩と、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体と、を含む、自律的調湿材料
【請求項2】
前記アルミニウムケイ酸塩は、チューブ状アルミニウムケイ酸塩、非晶質アルミニウムケイ酸塩、及び低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩とからなるアルミニウムケイ酸塩複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の自律的調湿材料
【請求項3】
更に、水溶性バインダー樹脂を含む、請求項1に記載の自律的調湿材料
【請求項4】
前記水溶性バインダー樹脂は、ポリビニルアルコールである、請求項3に記載の自律的調湿材料
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の自律的調湿材料を主成分とする除湿剤。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の自律的調湿材料を主成分とする結露防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気吸着材、除湿剤、及び結露防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズの細孔を有する多孔質無機材料は、その特異な微細構造に基づいて、各種物質を吸着することができる。多孔質無機材料は、中でも、水蒸気吸着性能を有することから、除湿剤、結露防止剤、自律的調湿材料などの応用が期待されている。
【0003】
ここで、結露防止においては、冷温部周辺において結露が発生することから、冷温部周辺空気の露点温度が、冷温部温度よりも低くなるようにする。このため、結露防止のために用いられる吸着材としては、中湿度~高湿度という湿度が高い状態で十分な水蒸気吸着性能を発揮できる物質が求められていた。
【0004】
上記背景の中、本発明の発明者(本発明者)は、除湿剤としての性能向上のため、幅広い湿度帯にて吸放湿が可能な高性能水蒸気吸着材の開発を進め、例えば、非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性層状粘土との複合体からなる物質(特許文献1参照)、あるいは非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる物質(特許文献2参照)を見出した。
【0005】
具体的には、特許文献1及び2に記載された非晶質アルミニウムケイ酸塩を含む物質は、相対湿度10-60%における吸放湿量が30wt%程度であり、かつ水蒸気吸着等温線において、相対湿度と水蒸気吸着量とが直線的な関係を示す無機材料である。
【0006】
ところで、水蒸気吸着量の向上を目的とするその他の方法として、シリカゲル、メソポーラスシリカ、ゼオライト等の多孔質水蒸気吸着材に、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の吸湿性塩を担持させる技術が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
非晶質アルミニウムケイ酸塩に、吸湿性の塩を担持させる技術も提案されている。非晶質アルミニウムケイ酸塩は、吸湿性塩を担持させても性能劣化を生じないことから、不燃性のシートにこれらを担持させてハニカム状にした吸放湿性構造体が提案さている(特許文献4参照)。また、非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性層状粘土鉱物との複合体についても、該複合体に吸湿性の塩を担持させて、吸着性能を向上させた粉体が提案されている(特許文献5参照)。
【0008】
また空気調和機の分野では、室内に供給する空気に快適感を向上させる物質の添加が検討されており、添加する物質として、樹木におけるフィトンチッド成分や、ビタミンCやビタミンE、ヒアルロン酸が挙げられている(特許文献6参照)。特許文献6に記載された空気調和機においては、ヒアルロン酸等を含む活性成分を室内へ吹き出すことにより、ヒアルロン酸の保湿効果や美容効果によって、室内に快適感を付与する。
【0009】
更に、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子と、親水性高分子とが、相互浸入高分子網目構造又はセミ相互浸入高分子網目構造を形成する吸湿剤が提案されており、親水性高分子として、アルギン酸、ヒアルロン酸、キトサンなどが挙げられている(特許文献7参照)。特許文献7に記載の吸湿剤は、刺激応答性高分子と親水性高分子との網目構造を形成するものであり、その構造が複雑なものとなっている。
【0010】
また、保形性を向上させることを目的として、無機繊維製品や造粒体の分野においては、有機バインダーが用いられている。無機繊維製品の分野では、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが用いられており(特許文献8参照)、造粒体の分野では、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが用いられている(特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-026487号公報
【文献】特開2017-128499号公報
【文献】特開2003-201113号公報
【文献】特開2010-240554号公報
【文献】特開2011-255331号公報
【文献】特開2004-239594号公報
【文献】国際公開第2016/068129号
【文献】特開2021-161596号公報
【文献】特開2017-002358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1及び特許文献2に記載されたアルミニウムケイ酸塩は、上記の通り、幅広い湿度帯にて吸放湿が可能な吸湿剤を提供することができる。また、特許文献4及び特許文献5には、吸湿性の塩(吸湿塩)を担持させることで、アルミニウムケイ酸塩の吸着性能を向上できることが開示されている。
【0013】
このような状況の中、アルミニウムケイ酸塩には、その吸着性能をますます向上させることが望まれていた。
【0014】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、アルミニウムケイ酸塩を用いて、幅広い湿度帯にて吸放湿が可能であり、特に、中~高湿度領域において高性能な吸着性能を有する水蒸気吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、アルミニウムケイ酸塩に、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体を添加することにより、幅広い湿度帯にて吸放湿が可能であり、特に、中~高湿度領域における吸着性能が向上した水蒸気吸着材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]
アルミニウムケイ酸塩と、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体と、を含む水蒸気吸着材。
[2]
前記アルミニウムケイ酸塩は、チューブ状アルミニウムケイ酸塩、非晶質アルミニウムケイ酸塩、及び低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩とからなるアルミニウムケイ酸塩複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、態様[1]に記載の水蒸気吸着材。
[3]
更に、水溶性バインダー樹脂を含む、態様[1]又は[2]に記載の水蒸気吸着材。
[4]
前記水溶性バインダー樹脂は、ポリビニルアルコールである、態様[3]に記載の水蒸気吸着材。
[5]
[1]から[4]のいずれか一態様に記載の水蒸気吸着材を主成分とする除湿剤。
[6]
[1]から[4]のいずれか一態様に記載の水蒸気吸着材を主成分とする結露防止剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、幅広い湿度帯にて吸放湿が可能であり、特に、中~高湿度領域において高性能な吸着性能を有する水蒸気吸着材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例4~6及び比較例2で得られた水蒸気吸着材の水蒸気吸着等温線の測定結果である。
図2】実施例4で得られた水蒸気吸着材を、板に塗布した際の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0020】
≪水蒸気吸着材≫
本発明の水蒸気吸着材は、アルミニウムケイ酸塩と、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体と、を含むものである。
【0021】
<アルミニウムケイ酸塩>
本発明の水蒸気吸着材に用いられるアルミニウムケイ酸は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)及び水素(H)を構成元素とし、多数のSi-O-Al結合で組み立てられた水和ケイ酸アルミニウムである。
【0022】
具体的には、本発明で用いられるアルミニウムケイ酸塩は、チューブ状アルミニウムケイ酸塩、非晶質アルミニウムケイ酸塩、及び低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩とからなるアルミニウムケイ酸塩複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0023】
(アルミニウムケイ酸塩の製造方法)
本発明の水蒸気吸着材に用いられるアルミニウムケイ酸塩は、通常、ケイ素源となる原料として無機ケイ素化合物を用い、アルミニウム源となる原料として無機アルミニウム化合物を用い、これらの水溶液又は水分散液を混合攪拌して得られた前駆体を、脱塩処理(洗浄)及び加熱処理することにより人工的に得ることが可能である。
【0024】
ケイ素源として使用される無機ケイ素化合物は、水溶性又は水分散性であればよく、例えば、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムといった水溶性ケイ酸塩に加え、無定形コロイド状二酸化ケイ素(エアロジル等)等のコロイダルシリカが好適なものとして挙げられる。コロイダルシリカは、水に分散させて分散体としてケイ素源として使用できる。また、ケイ酸ナトリウムの濃厚水溶液である「水ガラス」と呼ばれるケイ酸ナトリウム水溶液も、ケイ素源として使用できる。この水ガラスは例えば、市場から容易に入手できる。以下では、ケイ素源として使用可能な水溶液又は水分散液を総じて、「水溶液」又は「溶液」ということがある。なお、ケイ素源は、上記の化合物に限定されるものではなく、それらと同程度の効果を有するものであれば同様に使用することができる。
【0025】
また、アルミニウム源として用いられる無機アルミニウム化合物は、アルミニウムイオンを生成するものであればよく、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、及びアルミン酸ナトリウム等のアルミニウム化合物が挙げられる。なお、アルミニウム源は、上記の化合物に限定されるものではなく、それらと同程度の効果を有するものであれば同様に使用することができる。
【0026】
ケイ素源となる無機ケイ素化合物と、アルミニウム源となる無機アルミニウム化合物とを、適切な水溶液として、所定の濃度の溶液を調製する。優れた吸着挙動を示すアルミニウムケイ酸塩を合成するためには、ケイ素/アルミニウムモル比(Si/Alモル比)を0.8~1.2の範囲として混合することが必要である。
【0027】
溶液中の無機ケイ素化合物の濃度は、Si換算で1~2000mmol/Lであり、無機アルミニウム化合物の溶液の濃度は、Al換算で1~2000mmol/Lであることが好ましいが、更に好適な濃度としては、Si換算で1~700mmol/Lの無機ケイ素化合物溶液と、Al換算で1~1000mmol/Lのアルミニウム化合物溶液とを混合することが好ましい。
【0028】
ケイ素/アルミニウムモル比(Si/Alモル比)及びそれぞれの濃度が上記の範囲となるよう、ケイ素化合物溶液とアルミニウム化合物溶液とを混合し、酸又はアルカリを添加してpHを5~9に調整して前駆体を形成した後、得られた前駆体物質を含む懸濁液を95℃程度で所定時間加熱し、その後、洗浄及び乾燥を行うことによって、アルミニウムケイ酸塩の粉体を得ることができる。得られた粉体の粒径は、0.1~100μm、好ましくは1~10μmである。得られた粉体の粒径を調節するために、必要に応じて、粉砕や分級を行ってもよい。
【0029】
<ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体>
本発明の水蒸気吸着材は、必須の成分として、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体を含む。
【0030】
本発明の水蒸気吸着材は、アルミニウムケイ酸塩とともにヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体を含むことによって、アルミニウムケイ酸塩が備える性能を著しく向上させるものであり、具体的には、幅広い湿度帯における吸放湿性能が一層高いものとなり、特に、中~高湿度領域において高性能な吸着性能を発揮する水蒸気吸着材となる。
【0031】
本発明の水蒸気吸着材に用いられるヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体は、吸湿性を有する親水性高分子である。ヒアルロン酸誘導体としては、ヒアルロン酸に例えば、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等の親水性基を側鎖又は主鎖に有するものや、ヒアルロン酸に更に水酸基やカルボキシル基を増やしたもの、あるいは、ヒアルロン酸に含まれるカルボキシル基をナトリウムイオンやカリウムイオン等でヒアルロン酸塩としたものを挙げることができる。中でも、本発明の水蒸気吸着材に用いられるヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体としては、ヒアルロン酸塩が好ましく、かかるヒアルロン酸塩は市場から容易に入手できる。
【0032】
本発明の水蒸気吸着材に用いられるヒアルロン酸は、特に限定されるものではないが、例えば、平均分子量5万~1000万ダルトンである、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンとから成る二糖の重合体であってよい。ヒアルロン酸は公知の手法により製造することもできるし、ヒアルロン酸自体を市場から入手することもできる。
【0033】
本発明においては、遊離のヒアルロン酸を用いても、その塩を用いてもよい。本発明に用いられるヒアルロン酸の塩は、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などが挙げられる。このようなヒアルロン酸塩は、上記の通り、市場から容易に入手することができる。また、市場から入手したヒアルロン酸を、周知の方法で塩とすることで、ヒアルロン酸塩を調製することもできる。
【0034】
本発明に用いることができるヒアルロン酸誘導体としては上記の通り、分子内に親水性基を導入したものに加え、ヒアルロン酸から誘導されるヒアルロン酸骨格を有する物質であってもよい。このようなヒアルロン酸誘導体としては、特に限定はされるものではないが、例えば、ヒアルロン酸中の一つ以上のカルボキシル基がエステル化されている物質、ヒアルロン酸をホルムアルデヒドで部分的に架橋し更に高分子化した物質、ヒアルロン酸中の一つ以上のヒドロキシ基がアセチル化されているアセチル化ヒアルロン酸等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、ヒアルロン酸の少なくとも1種のみ、又はヒアルロン酸誘導体の少なくとも1種のみが用いられても、ヒアルロン酸の少なくとも1種とヒアルロン酸誘導体の少なくとも1種とが組み合わされて使用されていてもよい。
【0036】
<アルミニウムケイ酸塩とヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体の含有量>
本発明の水蒸気吸着材が、アルミニウムケイ酸塩とヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体とで構成されている場合には、水蒸気吸着材全体におけるアルミニウムケイ酸塩の含有量は、は90~99.99重量パーセントであり、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体の含有量は、0.01~10重量パーセントである。より好ましくは、アルミニウムケイ酸塩の含有量は、99.9~99.99重量パーセントであり、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体の含有量は、0.01~0.1重量パーセントである。
【0037】
本発明の水蒸気吸着材は、アルミニウムケイ酸塩とヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体とを併用することによって、アルミニウムケイ酸塩が備える性能を著しく向上させるものであるが、上記の通り、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体の配合量は、アルミニウムケイ酸塩の配合量に対して少量でよい。本発明においては、驚くべきことに、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体の配合量が極少量であっても、十分な効果を発現し、アルミニウムケイ酸塩が備える性能を飛躍的に向上させることができる。
【0038】
<水溶性バインダー樹脂>
本発明の水蒸気吸着材は、任意の成分として、水溶性バインダー樹脂を更に含んでいてもよい。
【0039】
本発明の水蒸気吸着材は、アルミニウムケイ酸塩、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体とともに、水溶性バインダー樹脂を含むことによって、上記の吸放湿性能に影響を与えることなく、保形性を有する水蒸気吸着材とすることができる。したがって、水溶性バインダー樹脂を含む場合には、壁面などに塗布された水蒸気吸着材を作製することが可能となる。
【0040】
本発明の水蒸気吸着材に用いられる水溶性バインダー樹脂は、水溶性であり、アルミニウムケイ酸塩とヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体を含む溶液を壁などに塗布した際に、液だれ等を生じさせないものであればよい。
【0041】
水溶性バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、糖質、フェノール樹脂、ポリカルボン酸樹脂等が挙げられる。これらの中では、安価であり、安全性が高く、入手が容易であることから、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は、ビニルアルコール単位以外に酢酸ビニル単位を有していてもよい。
【0042】
(水溶性バインダー樹脂の含有量)
本発明の水蒸気吸着材が、アルミニウムケイ酸塩とヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体に加えて、水溶性バインダー樹脂を含む場合には、乾燥時の重量パーセントで、アルミニウムケイ酸塩は80~94.9重量パーセント、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体は0.01~10重量パーセント、水溶性バインダー樹脂は5~30重量パーセントである。より好ましくは、アルミニウムケイ酸塩は89.9~94.99重量パーセント、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体は0.01~0.1重量パーセント、水溶性バインダー樹脂は5~10重量パーセントである。
【0043】
<その他の成分>
本発明の水蒸気吸着材は、上記した必須成分、及び任意成分である水溶性バインダー樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の別の成分を含んでいてもよい。
【0044】
<水蒸気吸着材の製造方法>
本発明の水蒸気吸着材は、アルミニウムケイ酸塩にヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体を混合し、水を添加して混合した後、乾燥することによって得ることができる。任意成分である水溶性バインダー樹脂を含む場合には、アルミニウムケイ酸塩にヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体を混合し、ポリビニルアルコール水溶液と水を添加して混合した後、乾燥することによって得ることができる。
【0045】
<水蒸気吸着材の用途>
本発明の水蒸気吸着材の用途は、特に限定されるものではなく、水蒸気吸着性能が求められる各種用途に用いることができる。例えば、除湿剤、結露防止剤、自律的調湿材料などが挙げられる。本発明の水蒸気吸着材は、幅広い湿度帯にて吸放湿が可能であり、特に、中~高湿度領域において高性能な吸着性能を有することから、中では、除湿剤又は結露防止剤に好適に用いることができる。
【実施例
【0046】
以下、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0047】
<アルミニウムケイ酸複合体の製造>
実施例及び比較例においては、アルミニウムケイ酸複合体の粉末を用いた。アルミニウムケイ酸塩複合体の粉体は、ケイ素源(Si源)として、Si濃度が495mmol/Lの水ガラス水溶液1000mLを用い、アルミニウム源(Al源)として、Al濃度が450mmol/Lの硫酸アルミニウム水溶液1000mLを用いて製造した。
【0048】
硫酸アルミニウム水溶液に水ガラス水溶液を加え、約15分間攪拌を行った。このときのSi/Alモル比は、1.1とした。攪拌後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を、pHが7程度になるまで添加し、懸濁液を得た。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は12mLであった。得られた懸濁液を1時間攪拌し、前駆体懸濁液を調製した。調製した1000mLの前駆体懸濁液を、遠心分離にて3回洗浄し、再度1000mLの前駆体懸濁液とした。得られた前駆体懸濁液の70mLをテフロン(登録商標)製容器に入れ、200℃で6時間加熱した。続いて、60℃で1日乾燥させた後に粉砕して、粒径1~50μmの粉体を得た。
【0049】
得られた粉体について、粉末X線回折測定を行った。粉末X線回折図形には、2θ=20°、26°、35°、40°付近にブロードなピークが見られ、アルミニウムケイ酸塩複合体が生成していることが確認された。得られたアルミニウムケイ酸塩複合体を、実施例1~6、比較例1~2に用いた。
【0050】
<実施例1>
【0051】
上記で得られたアルミニウムケイ酸塩複合体の粉体10gに、ヒアルロン酸ナトリウムを0.01g、水を20g添加し、よく混合した後に、常温にて乾燥することで、水蒸気吸着材を得た。
【0052】
<実施例2>
上記で得られたアルミニウムケイ酸塩複合体の粉体10gに、ヒアルロン酸ナトリウムを0.03g、水を20g添加し、よく混合した後に、常温にて乾燥することで、水蒸気吸着材を得た。
【0053】
<実施例3>
上記で得られたアルミニウムケイ酸塩複合体の粉体10gに、ヒアルロン酸ナトリウムを0.1g、水を20g添加し、よく混合した後に、常温にて乾燥することで、水蒸気吸着材を得た。
【0054】
<比較例1>
上記で得られたアルミニウムケイ酸塩複合体の粉体そのものを、比較例1として用いた。
【0055】
<水蒸気吸着量評価>
実施例1~3で得られた水蒸気吸着材、及び比較例1のアルミニウムケイ酸塩複合体について、水蒸気吸着量評価を行った。水蒸気吸着量評価結果を表1に示す。
【0056】
(評価方法)
秤量瓶に、水蒸気吸着材又はアルミニウムケイ酸塩複合体をそれぞれ0.3g量り取った。100℃にて24時間乾燥させた後、室温にて冷却後に秤量を行い、秤量瓶の重量を引いた値を、乾燥重量とした。次に25℃相対湿度50%の恒温恒湿槽に入れ、24時間吸着を行ない、秤量瓶の重量を引いた値を、吸着後の重量とした。乾燥重量と吸着後の重量から、以下の式により吸着率を求めた。
吸着率=(吸着後の重量-乾燥重量)÷乾燥重量×100
上記の相対湿度50%と同様にして、温度25℃にて、相対湿度60%、70%、80%、90%の条件にて、水蒸気吸着量評価を実施した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されるように、実施例1~3の水蒸気吸着材の吸着率は、比較例1よりも大きく、またヒアルロン酸の添加量が多いほど、吸着率が多くなることが明らかとなった。
【0059】
<実施例4>
上記で得られたアルミニウムケイ酸塩複合体の粉体60gに、ヒアルロン酸ナトリウムを0.4g、10%ポリビニルアルコール水溶液を50g、水を167.5g添加し、よく混合した後に、常温にて乾燥することで、水蒸気吸着材を得た。
【0060】
<実施例5>
上記で得られたアルミニウムケイ酸塩複合体の粉体60gに、ヒアルロン酸ナトリウムを0.3g、10%ポリビニルアルコール水溶液を50g、水を140.0g添加しよく混合した後に、常温にて乾燥することで、水蒸気吸着材を得た。
【0061】
<実施例6>
上記で得られたアルミニウムケイ酸塩複合体の粉体60gに、ヒアルロン酸ナトリウムを0.04g、10%ポリビニルアルコール水溶液を50g、水を140.0g添加しよく混合した後に、常温にて乾燥することで、水蒸気吸着材を得た。
【0062】
<比較例2>
上記で得られたアルミニウムケイ酸塩複合体の粉体60gに、10%ポリビニルアルコール水溶液を50g、水を140.0g添加しよく混合した後に、常温にて乾燥することで、水蒸気吸着材を得た。
【0063】
<水蒸気吸着等温線を測定>
実施例4~6で得られた水蒸気吸着材、及び比較例2で得られた水蒸気吸着材について、水蒸気吸着等温線を測定した。結果を図1に示す。
【0064】
図1より、実施例4~6の水蒸気吸着材の水蒸気吸着量は、比較例2の水蒸気吸着材の水蒸気吸着量よりも多く、ヒアルロン酸を添加したことにより水蒸気吸着量が増加していることが示された。
【0065】
実施例4で得られた水蒸気吸着材を、板に塗布した際の写真を図2に示す。図2に示されるように、アルミニウムケイ酸塩複合体にヒアルロン酸とともにポリビニルアルコールを添加した水蒸気吸着材は、板などに塗布しても液だれを起こさず、保形性を有していることが示された。
図1
図2