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  • 特許-電極の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241219BHJP
【FI】
H01M4/139
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023193432
(22)【出願日】2023-11-14
【審査請求日】2024-08-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512284033
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 祥司
(72)【発明者】
【氏名】小泉 一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 正敏
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 博
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝志
(72)【発明者】
【氏名】坂本 太地
(72)【発明者】
【氏名】池内 勇太
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-257653(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130654(WO,A1)
【文献】中国実用新案第213528411(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第109841792(CN,A)
【文献】特開2013-82908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系電解質二次電池に用いられる電極を構成する、活物質、導電材、及び、増粘剤を含む材料を乾粉で混合する混合工程と、
前記混合工程で混合された混合物に、液剤を加えてスラリーを製造する希釈工程と、
前記希釈工程で製造された前記スラリーを前記電極に形成する形成工程と、を備える、電極の製造方法であって、
前記混合工程において、前記材料を全体的に混合する第一の羽根と、前記材料に対してせん断力を加える第二の羽根と、を有する高速せん断衝撃式混合機を用いて、前記材料を混合する、電極の製造方法。
【請求項2】
前記希釈工程において、前記混合物にバインダーを加える、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において、前記第二の羽根の羽根先端部の速度が毎秒5m以上毎秒40m以下に設定される、請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記混合工程の後、且つ、前記希釈工程の前に、前記混合工程で混合された混合物に溶媒を加えて混練する固練り工程を備え、
前記希釈工程において、前記固練り工程で混練された混練物に、前記液剤を加えて前記スラリーを製造する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記固練り工程、及び、前記希釈工程において、二軸遊星撹拌式混合機を用いる、請求項4に記載の電極の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解質二次電池に用いられる電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水系電解質二次電池に用いる電極を製造するために、活物質、導電材等を含む材料に液剤を加えてスラリーを製造する技術が採用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-103391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のスラリーを製造する際に、二軸遊星撹拌式混合機を用いる場合がある。材料に液剤を加えて二軸遊星撹拌式混合機でスラリーを製造する際は長い時間処理する必要があるため、生産性の向上が求められていた。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、従来と比較して電池性能を下げることなくスラリーの製造時間を短縮することができる、電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
本発明に係る電極の製造方法は、非水系電解質二次電池に用いられる電極を構成する、活物質、導電材、及び、増粘剤を含む材料を乾粉で混合する混合工程と、前記混合工程で混合された混合物に、液剤を加えてスラリーを製造する希釈工程と、前記希釈工程で製造された前記スラリーを前記電極に形成する形成工程と、を備える、電極の製造方法であって、前記混合工程において、前記材料を全体的に混合する第一の羽根と、前記材料に対してせん断力を加える第二の羽根と、を有する高速せん断衝撃式混合機を用いて、前記材料を混合する。
【0008】
また、前記希釈工程において、前記混合物にバインダーを加えることが好ましい。
【0009】
また、電極の製造方法において、前記混合工程において、前記第二の羽根の羽根先端部の速度が毎秒5m以上毎秒40m以下に設定されることが好ましい。
【0010】
また、電極の製造方法において、前記混合工程の後、且つ、前記希釈工程の前に、前記混合工程で混合された混合物に溶媒を加えて混練する固練り工程を備え、前記希釈工程において、前記固練り工程で混練された混練物に、前記液剤を加えて前記スラリーを製造することが好ましい。
【0011】
また、電極の製造方法において、前記固練り工程、及び、前記希釈工程において、二軸遊星撹拌式混合機を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電極の製造方法によれば、従来と比較して電池性能を下げることなくスラリーの製造時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電極の製造方法を示すフロー図。
図2】(a)及び(b)は高速せん断衝撃式混合機を示す概略断面図。
図3】二軸遊星撹拌式混合機を示す概略断面図。
図4】電極の評価試験結果を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[電極の製造方法]
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る電極の製造方法について説明する。本実施形態に係る電極の製造方法は、非水系電解質二次電池用の電極を構成する際に用いられるものである。図1に示す如く、電極の製造方法は、混合工程(S01)、固練り工程(S02)、希釈工程(S03)、及び、形成工程(S04)を備える。以下、各工程について順に説明する。
【0015】
本実施形態において、混合工程(S01)は、活物質、導電材、及び、増粘剤を含む材料を乾粉で混合する工程である。本工程においては図2(a)及び(b)に示す如く、高速せん断衝撃式混合機10が用いられる。高速せん断衝撃式混合機10は、材料を全体的に混合する第一の羽根11であるミキシングアームと、材料に対してせん断力を加える第二の羽根12であるチョッパー羽根と、を有する。
【0016】
図2(a)及び(b)に示す如く、本実施形態における高速せん断衝撃式混合機10は、上部に材料の投入口10bが形成された混合容器10aの内部で、三枚の第一の羽根11と六枚の第二の羽根12とが回転するように構成されている。図2(a)に示す如く、第一の羽根11は図示しないモータの駆動力が第一軸11aを介して伝えられることにより混合容器10aの内部で回転する。同様に、第二の羽根12は図示しないモータの駆動力が第二軸12aを介して伝えられることにより混合容器10aの内部で回転する。
【0017】
本実施形態における高速せん断衝撃式混合機10においては図2(b)中の矢印R1に示す如く、第一の羽根11は第一の回転方向に回転するように構成される。一方、図2(b)中の矢印R2に示す如く、第二の羽根12は第一の回転方向と反対の方向に回転するように構成される。このように構成された高速せん断衝撃式混合機10において、第一の羽根11により材料が全体的に混合されるとともに、第二の羽根12により材料にせん断力が加えられる。
【0018】
上記の如く構成された高速せん断衝撃式混合機10は、第二の羽根12により材料にせん断力を加えながら、第一の羽根11により材料を全体的に混合する。高速せん断衝撃式混合機10において、第二の羽根12の羽根先端部の速度は毎秒5m以上毎秒40m以下に設定されている。
【0019】
次に、固練り工程(S02)では、混合工程(S01)で混合された混合物に溶媒を加えて混練する。その後、希釈工程(S03)では、固練り工程(S02)で混練された混練物に、液剤を加えてスラリーを製造する。次に、形成工程(S04)では、希釈工程(S03)で製造されたスラリーを電極に形成する。
【0020】
上記の固練り工程(S02)、及び、希釈工程(S03)においては図3に示す如く、二軸遊星撹拌式混合機20が用いられる。なお、これらの工程において他の混合機を用いる構成とすることも可能である。
【0021】
図3に示す如く、本実施形態における二軸遊星撹拌式混合機20は、混合容器20aの内部で、屈曲された棒体である第一撹拌部23aと第二撹拌部23bとが回転するように構成されている。図3に示す如く、第一撹拌部23aと第二撹拌部23bとは遊星歯車機構22を介して回転軸21に接続されている。図示しないモータからの駆動力が回転軸21に伝達されることにより、第一撹拌部23aと第二撹拌部23bとはそれぞれ自転しながら公転するように構成される。
【0022】
上記の如く、本実施形態に係る電極の製造方法によれば、混合工程(S01)において、強いせん断力を与えることができる第二の羽根12を有した高速せん断衝撃式混合機10を用いて乾粉混合を行う構成としている、これにより、数μm~数十μmと細かい粒子径である複数の粉体からなる材料を分散させることができる。このように、複数の粉体を分散させることにより、材料が分散した後で再度凝集した場合でも、電池の性能に与える影響を抑制することができる。
【0023】
上記の如く、本実施形態に係る電極の製造方法においては、高速せん断衝撃式混合機10において第二の羽根12を用いて複数の粉体からなる材料を分散させることができるため、凝集した粉体を分散する必要がなく、溶媒と粉体をなじませることで凝集の少ないスラリーが短時間で製造できる。このため、本実施形態によれば、固練り工程(S02)を省略し、混合工程(S01)の後に希釈工程(S03)を行う構成とすることも可能である。ただし、固練り工程を行っても分散性に影響は出ないため、溶媒に馴染みにくい粉体を使用する場合は、溶媒と粉体とを馴染みやすくするために固練り工程を行うことが好ましい。
【0024】
また、本実施形態に係る電極の製造方法においては、乾粉混合時に増粘剤も一緒に混合し、ダマを作りやすい増粘剤を溶媒と馴染みやすい粉体とに分散している。これにより、増粘剤の凝集がなくなり、増粘剤と溶媒との接触面積が増えるため、増粘剤の溶解が早くなる。その結果、電池性能に影響を与えずに希釈工程の時間を短縮することができる。
【0025】
なお、従来のように凝集したままの粒子を二軸遊星撹拌式混合機20で溶媒と合わせて混練を行う場合は、粉と少量の溶媒を入れて固練り工程を行うことで、原料にシェア(圧縮、せん断、引き延ばしなどの混練作用における混練力)を掛けることで凝集を解砕して分散を行う必要がある。この場合、混練におけるシェアは羽根と容器が近づく一部でしか作用しないため、長い時間処理する必要がある。
【0026】
また、処理する装置が大型化すると容器内に投入された粉体の量に対し羽根と容器が近づきシェアを掛けられる比率が下がる(粉体量は容器径の3乗で増加するのに対し、羽根の長さは容器径倍にしかならないため、シェアを掛けられる比率が下がる)。さらに、容器が大きくなると羽根と容器が接触しないように羽根と容器の隙間を広げる必要があるため、掛けられるシェアが下がる。そのため、装置が大型化するとスラリー製造時間がさらに長くなり、生産性が低下する。
【0027】
また、増粘剤は、液剤と触れた部分から溶解が始まるため、増粘剤が凝集していると液剤が触れた部分で粘度の高い膜ができ内部に液が浸透しないいわゆる「ダマ」と言われる状態になり溶解が進みにくくなる。ダマ表面の粘度の高い膜が徐々に薄まることにより溶解していくため、増粘剤全体が溶解するために多くの時間がかかる。
【0028】
[電極およびスラリーの構成材料]
本実施形態に係る電極は、少なくとも、活物質、導電材、増粘剤、バインダー、集電体から構成される。
【0029】
活物質は、非水電解質二次電池に用いられる材料であれば特に限定されない。すなわち、充放電することにより、酸化還元が起こりうる無機材料であればよい。例えば、正極ではれば、LiCoO、LiNiO、Li(Ni-Co-Mn)O、LiMn、LiFePO、LiMnPO、硫黄変性体などが挙げられる。負極であれば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、LiTi12、Sn、SnO、SnS、Ge、Si、SiOなどが挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
活物質の形状は、球状、粒状、楕円状、繊維状、板状であってもよいが、スラリーを保管した際の粘度変化が小さく、塗布後の合材層をプレスで緻密化しやすいという理由から、球状であることが好ましい。活物質の粒子径としては、0.01μm以上100μm以下の粉末であることが好ましい。
【0030】
導電材は、非水電解質二次電池に用いられる材料であれば特に限定されない。すなわち、電子伝導性を有するカーボン粉末であればよい。例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、中空カーボン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。
【0031】
増粘剤は、非水電解質二次電池に用いられる材料であれば特に限定されない。すなわち、スラリーの粘度を上昇させることができる樹脂であればよい。例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キタンサンガムが挙げられる。
【0032】
バインダーは、非水電解質二次電池に用いられる材料であれば特に限定されない。すなわち、活物質、導電材、集電体のそれぞれを結着することができる樹脂であればよい。例えば、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。
本開示において、上記のバインダーは、粉末などの固形物としても使用できるが、スラリーの均質性に優れるという理由から、溶液または乳化物の状態で使用することが好ましい。
【0033】
集電体は、非水電解質二次電池に用いられる材料であれば特に限定されない。すなわち、電子伝導性を有し、充放電で反応しない金属であればよい。例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、カーボンなどが挙げられる。集電体の形状に特に制約はないが、例えば、箔状、板状、繊維状、メッシュ、多孔体を用いることができる。
【0034】
本実施形態に係る電極は、スラリーに含まれる液剤を気化除去することで製造される。例えば、活物質、導電材、増粘剤、バインダー、および液剤から構成されるスラリーを集電体上に塗布し、50℃以上で加熱することでスラリー中の液剤が気化除去することができる。これにより、集電体上に活物質、導電材、増粘剤、バインダーからなる合材が設けられた構造の電極を得ることができる。
【0035】
ここで、スラリーとは、活物質、導電材、増粘剤、バインダーが、液体中に分散または溶解した流動体を意味する。すなわち、液剤とは、活物質、導電材、増粘剤、バインダーなどの固形物を分散または溶解する性質を持ち、且つ加熱によって気化除去できる流動体を指す。
【0036】
希釈工程で用いられる液剤、及び、固練り工程で用いられる溶媒としては、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン、アルコール類、ケトン類などが挙げられる。希釈工程における液剤と、固練り工程における溶媒とは、同じ液体又は異なる液体のどちらを用いても良い。
【0037】
[非水電解質二次電池]
本実施形態に係る電極は、非水電解質二次電池の電極として使用することができる。
ここで、非水電解質二次電池とは、水を成分に含まない電解質を用いた充放電可能な電池を指す。例えば、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、カルシウムイオン電池などが該当する。
【0038】
非水電解質二次電池は、少なくとも、正極、負極、電解質の3部材から構成される。なお、電解質が流動性を有する場合には、さらに正極と負極との間にセパレータが必要になる。
【0039】
電解質は、非水電解質二次電池に用いられる材料であれば特に限定されない。すなわち、イオン伝導性を有していればよい。例えば、電解液、ゲル電解液、イオン性液体、固体電解質などが挙げられる。
【0040】
セパレータは、非水電解質二次電池に用いられる材料であれば特に限定されない。すなわち、電子伝導性がない材質で構成され、かつ貫通孔が無数に設けられたフィルムであればよい。
【0041】
本実施形態に係る電極は、正極または/および負極として使用することが可能である。
【0042】
[評価試験]
本願出願人は、本実施形態に係る電極の製造方法で製造した電極(以下、「本願電極」と記載する)と、従来技術に係る電極の製造方法で製造した電極(以下、「比較電極」と記載する)と、を用いて評価試験を行った。以下、評価試験の方法と結果について説明する。
【0043】
本願電極を製造する際には、非水系電解質二次電池の電極を製造するための活物質、導電材、及び、増粘剤を含む材料を高速せん断衝撃式混合機10で混合した(混合工程S01)。本試験においては、活物質には黒鉛を、導電材にはアセチレンブラックを、増粘剤にはカルボキシメチルセルロースを採用した。また、高速せん断衝撃式混合機10では、全体を混合する第一の羽根11であるミキシングアームによる回転数を27rpm、強いせん断力を与える第二の羽根12であるチョッパー羽根による回転数を2200rpmで5分間混合を行った。
【0044】
その後、高速せん断衝撃式混合機10で混合した粉体、及び、バインダーであるスチレンブタジエンゴムを二軸遊星撹拌式混合機20に投入し、液剤である水150gを加えて二軸遊星撹拌式混合機20を100rpmで5分間運転し、スラリーを製造した(希釈工程S03)。さらに、上記の方法で製造したスラリーを用いて負極(本願電極)を形成した(形成工程S04)。上記の如く、本願電極に用いたスラリーの製造にかかった時間は、高速せん断衝撃式混合機10における5分間、及び、二軸遊星撹拌式混合機20における5分間、計10分間であった。
【0045】
比較電極を製造する際には、本願電極と同じように、活物質、導電材、増粘剤、及びバインダーを含む材料を二軸遊星撹拌式混合機20に投入し、液剤である水80gを加えて二軸遊星撹拌式混合機20を100rpmで100分間運転した。その後、二軸遊星撹拌式混合機20に残りの水70gを投入し、二軸遊星撹拌式混合機20を100rpmで30分間運転し、スラリーを製造した。上記の如く、比較電極に用いたスラリーの製造にかかった時間は、二軸遊星撹拌式混合機20における130分間であった。
【0046】
また、本願電極又は比較電極、集電体、対極、セパレータ、電解液を用い、コインセルをそれぞれ製造した。集電体には厚さ10μmの銅箔を、対極には厚さ500μmのリチウム金属を、セパレータには直径16mmのガラスフィルター(GA-100)、PP/PE/PP微多孔膜(厚さ25μm)、電解液には1M LiPF/EC:DEC(=50:50vol.%)、電槽にはR2032型コインセルを採用し、熱処理条件は真空、120度、12時間とした。
【0047】
それぞれの電極を用いて製造した電池について、サイクル試験による評価を行った。サイクル試験において、環境温度は30度、カットオフ電圧は0.001V-1.0V、電流値は0.1C-rateとした。
【0048】
サイクル試験(100サイクル)の結果、本願電極と比較電極とは共に、放電容量は100%と同等の電池性能が得られた(図4を参照)。即ち、製造した両製法の電極を用いて電池の性能評価を行った結果、電池性能に差は見られなかった。このように、本願電極は、一般的に実施されている標準的製法で製造した比較電極と比べて電池性能を劣化させることなく製造時間を大幅に短縮することが確認できた。
【符号の説明】
【0049】
10 高速せん断衝撃式混合機
10a 混合容器 10b 投入口
11 第一の羽根 11a 第一軸
12 第二の羽根 12a 第二軸
20 二軸遊星撹拌式混合機
20a 混合容器 21 回転軸
22 遊星歯車機構 23a 第一撹拌部
23b 第二撹拌部
S01 混合工程 S02 固練り工程
S03 希釈工程 S04 形成工程
R1 第一の回転方向 R2 第二の回転方向


【要約】
【課題】従来と比較して電池性能を下げることなくスラリーの製造時間を短縮することができる、電極の製造方法を提供する。
【解決手段】電極の製造方法は、非水系電解質二次電池に用いられる電極を構成する、活物質、導電材、及び、増粘剤を含む材料を乾粉で混合する混合工程(S01)と、混合工程で混合された混合物に、液剤を加えてスラリーを製造する希釈工程(S03)と、希釈工程で製造されたスラリーを電極に形成する形成工程(S04)と、を備え、混合工程において、材料を全体的に混合する第一の羽根11と、材料に対してせん断力を加える第二の羽根12と、を有する高速せん断衝撃式混合機10を用いて、材料を混合する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4