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特許7606797液状コンプレッションモールド材、電子部品、半導体装置および電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】液状コンプレッションモールド材、電子部品、半導体装置および電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20241219BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20241219BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241219BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241219BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08L63/00 C
C08K3/013
C08G59/18
C08G59/40
C08G59/68
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024545957
(86)(22)【出願日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2024027325
【審査請求日】2024-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2024049914
(32)【優先日】2024-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋介
(72)【発明者】
【氏名】青山 恭大
(72)【発明者】
【氏名】武淵 匡道
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真
(72)【発明者】
【氏名】上村 剛
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-113053(JP,A)
【文献】特開2022-095479(JP,A)
【文献】国際公開第2021/261064(WO,A1)
【文献】特開2021-123647(JP,A)
【文献】特開2020-138994(JP,A)
【文献】特表2015-526559(JP,A)
【文献】特表2015-522686(JP,A)
【文献】特開2015-071670(JP,A)
【文献】特開2011-116843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00-63/10
C08K 3/013
C08G 59/00-59/72
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)無機フィラーと、
(D)硬化触媒として2,4-ジアミノ-6-[2‘-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物と、を含み、
25℃における初期粘度が10Pa・s~460Pa・sであり、
基板と、前記基板上に配置された素子とを備えた電子部品において、前記素子と前記基板との間の間隙の封止に少なくとも用いられ、
前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対する2,4-ジアミノ-6-[2‘-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物の配合量が2.0質量部~3.8質量部である
液状コンプレッションモールド材。
【請求項2】
前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対する2,4-ジアミノ-6-[2‘-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物の配合量が2.0質量部~3.4質量部である、請求項に記載の液状コンプレッションモールド材。
【請求項3】
前記(B)硬化剤が、酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種類を含む、請求項1または2に記載の液状コンプレッションモールド材。
【請求項4】
前記(B)硬化剤が、酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤を含む、請求項1または2に記載の液状コンプレッションモールド材。
【請求項5】
液状コンプレッションモールド材を構成する全成分に占める前記(C)無機フィラーの配合割合が60質量%以上80質量%未満である、請求項1または2に記載の液状コンプレッションモールド材。
【請求項6】
液状コンプレッションモールド材を構成する全成分に占める前記(C)無機フィラーの配合割合が60質量%~78.5質量%である、請求項1または2に記載の液状コンプレッションモールド材。
【請求項7】
25℃における初期粘度が10Pa・s~250Pa・sである、請求項1または2に記載の液状コンプレッションモールド材。
【請求項8】
前記(C)無機フィラーの平均粒径が、0.03μm~3μmである、請求項1または2に記載の液状コンプレッションモールド材。
【請求項9】
請求項1または2に記載の液状コンプレッションモールド材の硬化物からなる封止材を備える電子部品。
【請求項10】
基板と、
前記基板上に配置された半導体素子と、
前記半導体素子と前記基板との間の間隙を封止している請求項1または2に記載の液状コンプレッションモールド材の硬化物と、を備える半導体装置。
【請求項11】
前記硬化物に凝集物が含まれ、かつ、その最大円相当直径が4μm以下である、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
請求項1または2に記載の液状コンプレッションモールド材を用いて圧縮成形する工程を少なくとも経て、基板と、前記基板上に配置された素子と、前記素子および前記基板の間の間隙を封止している前記液状コンプレッションモールド材の硬化物からなる封止材とを備えた電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記硬化物に凝集物が含まれ、かつ、その最大円相当直径が4μm以下である、請求項12に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状コンプレッションモールド材、電子部品、半導体装置および電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を構成する集積回路等の半導体素子の多くは、封止材で封止されている。このような封止材用途で利用される樹脂組成物としては様々なものが提案されている(たとえば、特許文献1、2等参照)。また、半導体素子の封止を行うための成形方法は複数存在するが、近年、相対的に大型の成形品の製造により適している圧縮成形が、半導体素子の封止に採用される機会が増加している。これは、ウエハーレベルチップサイズパッケージ技術(回路形成完了後のチップに切り分けられていないウエハーを、そのまま封止する技術)の普及が進んでいることなどに起因する。また、圧縮成形を用いた各種デバイスの製造に際しては、基板としてシリコンウエハーなどの無機基板以外にも有機基板が用いられる場合もある。
【0003】
圧縮成形による半導体素子の封止に用いられる従来の硬化性樹脂組成物は、主に顆粒状等の固形の樹脂組成物であった。しかし最近では、新たな圧縮成形技術の開発に伴い、液状の硬化性樹脂組成物(いわゆる液状コンプレッションモールド材)が用いられることも多くなっている。以下、液状コンプレッションモールド材を「LCM(Liquid Compression molding)材」と略称する場合がある。
【0004】
LCM材には圧縮成形時の注入性に優れることに加えて保存安定性が求められている。保存安定性の実現のために潜在性硬化触媒が用いられている。代表的な潜在性硬化触媒としては、例えばマイクロカプセル型の潜在性硬化触媒が挙げられ、その保存安定性の高さからLCM材をはじめとする多くの樹脂組成物で使用されている。たとえば、特許文献2に記載の電子部品用液状樹脂組成物では、マイクロカプセル型の潜在性硬化触媒として、マイクロカプセル化されたイミダゾール誘導体が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-161206号公報
【文献】特開2007-182562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、LCM材を用いて圧縮成形を実施した場合、LCM材やその硬化物に含まれる異物に起因する圧縮成形時のLCM材の注入性不良や、LCM材および/またはその硬化物の外観不良が発生することがあった。そこで、上述した硬化物中の異物について本発明者らは組成分析を実施した。その結果、当該異物を構成する主成分が樹脂成分であることが判った。この分析結果から、本発明者らは、マイクロカプセル型の潜在性硬化触媒を配合したLCM材およびその硬化物に含まれる異物は、マイクロカプセル型の潜在性硬化触媒の凝集物に由来するものと推定した。
【0007】
この理由は次の通りである。まず、マイクロカプセル型の潜在性硬化触媒は、硬化触媒成分が微小なサイズのカプセルにより覆われている。それゆえ、カプセルを破壊しないようにマイクロカプセル型の潜在性硬化触媒を配合したLCM材を調製するためには、マイクロカプセル化されていない硬化触媒を配合したLCM材と比べて、LCM材の調製に用いる原料溶液に対して相対的により弱い剪断力を加えて分散処理を行う必要がある。この結果、マイクロカプセル型の潜在性硬化触媒を配合したLCM材中では、潜在性硬化触媒同士が凝集した凝集物を形成し易くなる。そして、この状態で、圧縮成形時の熱がLCM材に加えられると、カプセル内の硬化触媒がカプセルから放出されて硬化反応が進行すると同時に、硬化触媒を外部に放出した後の凝集物を構成するカプセル内には無機フィラーが入り込めず、樹脂成分が入りこんで硬化する。その結果、LCM材の硬化物中にも、上述した分析結果で判明したような樹脂成分を主成分とする凝集物が含まれることになる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、第一の本発明では、圧縮成形時の注入性に優れると共に、硬化物中に含まれる凝集物の少ない液状コンプレッションモールド材、当該液状コンプレッションモールド材を用いて製造された電子部品および半導体装置、ならびに、当該液状コンプレッションモールド材を用いた電子部品の製造方法を提供することを課題とする。また、第二の本発明では、圧縮成形時の注入性に優れると共に、硬化物中に含まれる凝集物が少なく、保存安定性および速硬化性にも優れた液状コンプレッションモールド材、当該液状コンプレッションモールド材を用いて製造された電子部品および半導体装置、ならびに、当該液状コンプレッションモールド材を用いた電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
第一の本発明の液状コンプレッションモールド材は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機フィラーと、(D)硬化触媒と、を含み、基板と、前記基板上に配置された素子とを備えた電子部品において、前記素子と前記基板との間の間隙の封止に少なくとも用いられる液状コンプレッションモールド材であって、25℃における初期粘度が10Pa・s~460Pa・sであり、前記液状コンプレッションモールド材を下記(1)に示す条件で硬化させた硬化物が下記(2)に示す条件を満たす;
(1)モールド温度:150℃、モールド時間:700秒、硬化温度:180℃、硬化時間:60分
(2)前記硬化物の断面を走査型電子顕微鏡(倍率:500倍)により、縦横が250μm×180μmの領域を観察した際に、前記領域内に存在する円相当直径1μm以上の凝集物の面積比率が1.0%以下である。
【0010】
第一の本発明の液状コンプレッションモールド材の一実施形態は、前記(D)硬化触媒がマイクロカプセル化されていない硬化触媒である、ことが好ましい。
【0011】
第一の本発明の液状コンプレッションモールド材の他の実施形態は、前記マイクロカプセル化されていない硬化触媒が、イミダゾール化合物および変性脂肪族ポリアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種類を含む、ことが好ましい。
【0012】
第一の本発明の液状コンプレッションモールド材の他の実施形態は、前記マイクロカプセル化されていない硬化触媒が、融点が200℃以上のイミダゾール化合物および融点が130℃以上の変性脂肪族ポリアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種類を含む、ことが好ましい。
【0013】
第二の本発明の液状コンプレッションモールド材は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機フィラーと、(D)硬化触媒として融点が200℃以上のイミダゾール化合物と、を含み、25℃における初期粘度が10Pa・s~460Pa・sであり、
基板と、前記基板上に配置された素子とを備えた電子部品において、前記素子と前記基板との間の間隙の封止に少なくとも用いられる。
【0014】
第一および第二の本発明の液状コンプレッションモールド材の他の実施形態は、前記(B)硬化剤が、酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種類を含む、ことが好ましい。
【0015】
第一および第二の本発明の液状コンプレッションモールド材の他の実施形態は、前記(B)硬化剤が、酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤を含む、ことが好ましい。
【0016】
第一および第二の本発明の液状コンプレッションモールド材の他の実施形態は、液状コンプレッションモールド材を構成する全成分に占める前記(C)無機フィラーの配合割合が60質量%以上80質量%未満質量%である、ことが好ましい。
【0017】
第一および第二の本発明の液状コンプレッションモールド材の他の実施形態は、液状コンプレッションモールド材を構成する全成分に占める前記(C)無機フィラーの配合割合が60質量%~78.5質量%である、ことが好ましい。
【0018】
第一および第二の本発明の液状コンプレッションモールド材の他の実施形態は、25℃における初期粘度が10Pa・s~250Pa・sである、ことが好ましい。
【0019】
第一および第二の本発明の液状コンプレッションモールド材の他の実施形態は、前記(C)無機フィラーの平均粒径が、0.03μm~3μmである、ことが好ましい。
【0020】
本発明の電子部品は、第一または第二の本発明の液状コンプレッションモールド材の硬化物からなる封止材を備える。
【0021】
本発明の半導体装置は、基板と、前記基板上に配置された半導体素子と、前記半導体素子と前記基板との間の間隙を封止している第一または第二の本発明の液状コンプレッションモールド材の硬化物と、を備える。
【0022】
本発明の半導体装置の一実施形態は、前記硬化物に凝集物が含まれ、かつ、その最大円相当直径が4μm以下である、ことが好ましい。
【0023】
本発明の電子部品の製造方法は、第一または第二の本発明の液状コンプレッションモールド材を用いて圧縮成形する工程を少なくとも経て、基板と、前記基板上に配置された素子と、前記素子および前記基板の間の間隙を封止している前記液状コンプレッションモールド材の硬化物からなる封止材とを備えた電子部品を製造する。
【0024】
本発明の電子部品の製造方法の一実施形態は、前記硬化物に凝集物が含まれ、かつ、その最大円相当直径が4μm以下である、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
第一の本発明によれば、圧縮成形時の注入性に優れると共に、硬化物中に含まれる凝集物の少ない液状コンプレッションモールド材、当該液状コンプレッションモールド材を用いて製造された電子部品および半導体装置、ならびに、当該液状コンプレッションモールド材を用いた電子部品の製造方法を提供することができる。また、第二の本発明によれば、圧縮成形時の注入性に優れると共に、硬化物中に含まれる凝集物が少なく、保存安定性および速硬化性にも優れた液状コンプレッションモールド材、当該液状コンプレッションモールド材を用いて製造された電子部品および半導体装置、ならびに、当該液状コンプレッションモールド材を用いた電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第一の本実施形態のLCM材は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機フィラーと、(D)硬化触媒と、を含むものである。また、第一の本実施形態のLCM材は、25℃における初期粘度が10Pa・s~460Pa・sであり、さらに、LCM材を下記(1)に示す条件で硬化させた硬化物が下記(2)に示す条件を満たす。
(1)モールド温度:150℃、モールド時間:700秒、硬化温度:180℃、硬化時間:60分
(2)前記硬化物の断面を走査型電子顕微鏡(倍率:500倍)により、縦横が250μm×180μmの領域を観察した際に、前記領域内に存在する円相当直径1μm以上の凝集物の面積比率が1.0%以下である
【0027】
これにより、圧縮成形時の注入性に優れると共に、硬化物中に含まれる凝集物の少ないLCM材を得ることができる。なお、上記面積比率は、0.5%以下が好ましく、0.2%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましく、0%が最も好ましい。
【0028】
なお、硬化物中に含まれる凝集物は、これに対応する凝集物が硬化前のLCM材中に存在すると考えられることから、硬化物中に観察される凝集物の最大径はLCM材中に存在する凝集物の最大径と概ね対応する関係にあると推察される。そして、LCM材中に存在する凝集物の存在の有無やサイズは、圧縮成形時のLCM材の注入性に大なり小なり影響し、特に、凝集物の最大径と比較的近似したサイズの間隙(たとえば、ギャップ長が数μm~数十μm程度など)を介してLCM材を注入する場合により大きく影響すると考えられる。これらの点を踏まえると、特により狭いギャップ長における注入性の改善という観点で、硬化物中に含まれる凝集物の最大径(円相当直径の最大径)は、4μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
また、第一の本実施形態のLCM材および後述する第二の本実施形態のLCM材は、基板と、基板上に配置された素子(半導体素子など)とを備えた電子部品(半導体装置など)において、素子と基板との間の間隙の封止に少なくとも用いられる樹脂組成物である。圧縮成形は、一般的に(i)LCM材を金型内に供給した後、金型内において水平方向に広がったLCM材に対して、基板と素子とを両者の間に間隙を設けて積層した積層体を押し当てた後に型締めし、この状態でLCM材を硬化させるプロセス、あるいは、(ii)基板と素子とを両者の間に間隙を設けて積層した積層体上にLCM材を塗布し、型締めした後、この状態でLCM材を硬化させるプロセス、などにより実施される。これらのプロセスにおいて、LCM材は、基板と素子との間に形成された間隙に注入されると共に素子を覆い、この状態で硬化することにより封止処理が完了する。そして、このようなプロセスを経て、半導体装置等の電子部品が製造される。このため、LCM材の硬化物は、素子を覆うと共に、素子と基板との間に介在する形態で電子部品中に存在することになる。
【0030】
なお、LCM材を用いて製造される半導体装置等の電子部品における間隙の長さは、一般的には、10μm~30μmである。したがって、圧縮成形時に、このような狭小な間隙全体にLCM材を速やかに注入して、注入性不良が生じないようにするためには、LCM材は適度な流動性(低粘性)を有していることが必要である。
【0031】
次に、第一の本実施形態のLCM材に含まれる各成分の詳細について以下に説明する。
【0032】
(A)エポキシ樹脂
第一の本実施形態のLCM材に用いられるエポキシ樹脂としては、一般的に半導体封止用として使用される各種のエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、LCMに要求される粘度や注入性の観点から、液状のエポキシ樹脂を用いることが好適である。また、LCM材に配合されるエポキシ樹脂としては、1種類のエポキシ樹脂のみを用いてもよく、2種以上のエポキシ樹脂を併用してもよい。なお、エポキシ樹脂には、必要に応じてエポキシ基以外の官能基(たとえばアクリル基、メタクリル基など)がさらに含まれていてもよいが、アクリル基、メタクリル基などのその他の官能基は含まれていなくてもよい。
【0033】
エポキシ樹脂の具体例としては、代表的には芳香族エポキシ樹脂および脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。芳香族エポキシ樹脂の例としては、p-グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂;p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,4-フェニルジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシ樹脂;3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンのようなアミノフェノール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;及び植物由来の骨格を有するエポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
また、脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、アルキルアルコールグリシジルエーテル[ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等]、アルケニルアルコールグリシジルエーテル[ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等]などの分子内にエポキシ基を1つ有する単官能脂肪族エポキシ化合物;アルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルなどのポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、アルケニレングリコールジグリシジルエーテル等の分子内にエポキシ基を2つ有する二官能脂肪族エポキシ化合物;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の三官能以上のアルコールのポリグリシジルエーテル[トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール(トリ又はテトラ)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトール(トリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ)グリシジルエーテル等]などの分子内にエポキシ基を3つ以上有する多官能脂肪族エポキシ化合物などが挙げられる。
【0035】
これらのエポキシ樹脂の中でも液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状ナフタレン型エポキシ樹脂、液状アミノフェノール型エポキシ樹脂が作業性、注入性の観点から好ましい。また、LCM材全量に対するエポキシ樹脂の含有量は、3質量%~40質量%であることが好ましく、4質量%~30質量%であることがより好ましく、5質量%~25質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
(B)硬化剤
第一の本実施形態のLCM材に使用する硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のものであればいずれも用いることができるが、フェノール系硬化剤および/または酸無水物系硬化剤を用いることが好適である。
【0037】
(B1)フェノール系硬化剤
フェノール系硬化剤は、硬化物のガラス転移温度(Tg)を低下させる作用を有する。フェノール系硬化剤としては、フェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマーであればいずれも利用でき、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールノボラック樹脂のアルキル化物、フェノールノボラック樹脂のアリル化物、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(但し、フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を含む樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、イミド変性フェノール樹脂(液状タイプのものを含む)等が挙げられるが、イミド変性フェノール樹脂以外のフェノール系硬化剤を用いることが好適である。また、イミド変性フェノール樹脂を用いる場合、その配合量は硬化剤中に0質量%を超え50質量%未満であることが好ましく、0質量%を超え30質量%以下がより好ましく、0質量%を超え10質量%以下がさらに好ましい。LCMに配合されるフェノール系硬化剤としては、1種類のフェノール系硬化剤のみを用いてもよく、2種以上のフェノール系硬化剤を併用してもよい。また、フェノール系硬化剤としては作業性の観点から、25℃において液状のフェノール系硬化剤を用いることが好ましく、また、硬化物のガラス転移温度Tgを低下させる作用の観点からは、特に立体障害の少ないフェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0038】
(B2)酸無水物系硬化剤
酸無水物系硬化剤は、LCM材の粘度を低下させる作用を有すると共に、硬化物のガラス転移温度Tgを増大させる作用を有する。酸無水物系硬化剤としては、フタル酸無水物(たとえば、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物などのアルキル化ヒドロフタル酸無水物;ヘキサヒドロフタル酸無水物等)、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、メチルナジック酸無水物、グルタル酸無水物等が挙げられる。LCM材に配合される酸無水物系硬化剤としては、1種類の酸無水物系硬化剤のみを用いてもよく、2種以上の酸無水物系硬化剤を併用してもよい。これらの酸無水物系硬化剤の中でも、メチルテトラヒドロフタル酸無水物およびメチルヘキサヒドロフタル酸無水物は電気絶縁性、耐熱安定性に優れており、また、常温(25℃)で液状であることからも好ましい。
【0039】
なお、第一の本実施形態のLCM材では、(B)硬化剤として、(B1)フェノール系硬化剤と(B2)酸無水物系硬化剤とを組合せて用いることが特に好ましい。この場合、(B1)フェノール系硬化剤と(B2)酸無水物系硬化剤との配合比率については特に制限されないが、(B1)フェノール系硬化剤のフェノール当量b1と、(B2)酸無水物系硬化剤の酸無水物当量b2との比、すなわち、当量比b1:b2が10:90~90:10であることが好ましく、15:85~85:15であることがより好ましく、35:65~80:20であることがさらに好ましく、45:55~80:20であることが特に好ましく、45:55~55:45が最も好ましい。なお、フェノール当量b1は(B1)成分の質量/(B1)成分中の水酸基当量、酸無水物当量b2は(B2)成分の質量/(B2)成分中の酸無水物基当量で算出される。
【0040】
当量比b1:b2を10:90~90:10の範囲内とした場合、(i)LCM材の優れた速硬化性を確保することがより容易となる上に、(ii)硬化物のガラス転移温度Tgを50℃~120℃の範囲内に調整し易くなるため、LCM材を用いて作製された半導体装置などの封止物品の反りを抑制することが容易となる。なお、(ii)の効果が得られる理由は以下のとおりである。まず、一般的に、樹脂組成物の硬化物の弾性率は、ガラス転移温度Tgを境界として大きく変化し、硬化物がガラス状態のガラス転移温度Tg以下の温度域では相対的に極めて高い弾性率を有し、硬化物がゴム状態のガラス転移温度Tgを超える温度域では相対的に極めて低い弾性率を有する。一方、LCM材を用いた圧縮成形プロセスにおいては、成形時の加熱温度や、成形後に実施されるポストキュアの加熱温度は、通常130℃前後を超える温度で実施される。このため、硬化物のガラス転移温度Tgを120℃以下に設定すれば、成形時やポストキュア時の加熱温度近傍における硬化物の弾性率を非常に低くすることができるため、加熱後の冷却過程にある封止物品を構成する各部材の収縮度合いの差に起因して発生する内部応力を緩和でき、結果的に封止物品の反りを抑制することができる。なお、ガラス転移温度Tgは後述するDMA(Dynamic Mechanical Analysis、動的粘弾性測定)法により測定することができる。
【0041】
なお、(B1)フェノール系硬化剤と(B2)酸無水物系硬化剤との質量比については、当量比b1:b2を10:90~90:10の範囲内に調整できるのであれば特に制限されないが、質量比は通常、10:90~90:10であることが好ましく、15:85~85:15であることがより好ましく、35:65~80:20であることがさらに好ましい。
【0042】
またLCM材を構成する樹脂組成物全体に占める(B)硬化剤の含有量は、十分な硬化性を確保する観点から2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。一方、含有量の上限値は特に限定されるものでは無いが、樹脂組成物に配合される他の成分との配合バランスの観点から、実用上は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
(C)無機フィラー
無機フィラーは、LCM材を硬化させた硬化物の線膨張係数を低下させる効果を有するものであれば特に限定されない。無機フィラーの材質としては、シリカ、アルミナ、アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。無機フィラーとしては、樹脂組成物に対する無機フィラーの配合量(充填量)を高くできる観点から、特にシリカまたはアルミナが好適である。また、無機フィラーは、シランカップリング剤等の表面処理剤によって表面処理されていてもよい。また、樹脂組成物に配合される無機フィラーとしては、1種類の無機フィラーのみを用いてもよく、2種以上の無機フィラーを併用してもよい。
【0044】
無機フィラーの形状は特に限定されず、球状、不定形、りん片状等のいずれの形態であってもよい。一方、圧縮成形時にLCM材が注入される間隙の長さは、上述したように一般的に10~30μmであるが、この間隙長さとの関係で相対的に大きな粒径(5~10μm以上)を有する粒子がLCM材に含まれると圧縮成形時のLCM材の注入性不良などの問題が生じる可能性が高くなる。このような観点から、無機フィラーの平均粒径は、0.001μm~4μmであることが好ましく、0.005μm~4μmであることがより好ましく、0.01μm~3μmであることがさらに好ましく、0.03μm~3μmであることが特に好ましい。無機フィラーの平均粒径が4μmを超えると、本実施形態のLCM材を用いて、半導体素子などの素子と基板との間の間隙を封止することが極めて困難になる。なお、平均粒径は、レーザー回析法粒度分布測定装置を用いて測定した体積平均粒径D50(体積基準の粒度分布の小径側からの累積50%となる粒径)値を意味する。
【0045】
なお、LCM材に配合される無機フィラーの含有量を高く維持した状態でLCM材の粘度をより低減する観点からは、体積平均粒径D50が互いに異なる2種類の無機フィラーを組み合わせて用いることが好ましい。この場合、小径の無機フィラーの体積平均粒径D50(DS)に対する大径の無機フィラーの体積平均粒径D50(DL)の比率(DL/DS)は、4~30が好ましく、8~15がより好ましく、LCM材に配合される小径の無機フィラーの含有量ASに対するLCM材に配合される大径の無機フィラーの含有量ALの比率(AL/AS)は、1~5が好ましく、2~4がより好ましい。
【0046】
LCM材全体に占める無機フィラーの含有量は、LCM材の調製を容易とすると共に圧縮成形に適した粘性を確保する観点から80質量%未満が好ましく、78.5質量%以下がより好ましく、77質量%以下がさらに好ましく、74.5質量%以下が特に好ましい。無機フィラーの含有量が78.5質量%を超え、特に80質量%以上ではLCM材の粘性が高くなり過ぎて、半導体素子等の素子と基板との間の間隙への注入性が著しく劣化するため、LCM材としての利用が困難になる場合がある。また、硬化物の熱膨張率を小さくして反りをより一層抑制する観点から無機フィラーの含有量は60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、67質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。なお、無機フィラーの含有量の上限値と下限値との好適な組合せとしては、上述した複数種の上限値から選択されるいずれかの値と、上述した複数種の下限値から選択されるいずれかの値とを適宜組み合わせることができる。
【0047】
(D)硬化触媒
第一の本実施形態のLCM材に使用する硬化触媒としては、LCM材を、既述した条件(1)で硬化させることで得られた硬化物の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した際に条件(2)を満たすものであれば特に制限は無い。しかしながらこのような硬化触媒としては、マイクロカプセル化されていない硬化触媒を好適に用いることができる。なお、本願明細書において「マイクロカプセル化されていない硬化触媒」とは、コア部と、コア部を覆うシェル部とを有し、コア部に硬化触媒成分が含まれ、シェル部はエポキシ化合物等から構成されることにより、常温や常温以上の比較的低い温度帯において硬化促進機能が抑制されている硬化触媒ではなく、硬化触媒成分がシェル部などの保護材により覆われておらずむき出しの状態の硬化触媒のことを意味する。マイクロカプセル化されていない硬化触媒の好適な具体例としては、マイクロカプセル化されていないイミダゾール化合物やマイクロカプセル化されていない変性脂肪族ポリアミン化合物(以下、各々を単に「イミダゾール化合物」、「変性脂肪族ポリアミン化合物」と称す)が挙げられ、これらをLCM材に配合することでLCM材およびその硬化物中の凝集物の発生を抑制することができる。
【0048】
イミダゾール化合物および変性脂肪族ポリアミン化合物の中でも、優れたポットライフ(保存安定性)を実現できる観点から融点が200℃以上のイミダゾール化合物および/または融点が130℃以上の変性脂肪族ポリアミン化合物をLCM材に配合する硬化触媒として用いることが好ましく、さらに優れた速硬化性も実現できる観点から融点が200℃以上のイミダゾール化合物をLCM材に配合する硬化触媒として用いることがより好ましい。
【0049】
イミダゾール化合物としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-〔2’-メチルイミダゾリン-(1‘)〕-エチル-s-トリアジン等が挙げられ、市販品としては四国化成工業株式会社製の2E4MZ、2P4MHZ、2MA-OK、2MZ-A、2PHZ等がある。これらのうち融点が200℃以上のイミダゾール化合物としては2,4-ジアミノ-6-〔2‘-メチルイミダゾリン-(1’)〕-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-〔2‘-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1‘)〕-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-〔2‘-メチルイミダゾリル-(1‘)〕-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジンが挙げられ、市販品としては四国化成工業株式会社製の2MA-OK、2PHZ、2MZ-A等がある。また、変性脂肪族ポリアミン化合物の市販品としては、ADEKA社製のEH-4357SやT&K TOKA社製のフジキュアーFXR-1020、FXR-1030が挙げられ、これらのうち融点が130℃以上の変性脂肪族ポリアミン化合物の市販品としてはT&K TOKA社製のフジキュアーFXR-1030等が挙げられる。
【0050】
イミダゾール化合物や変性脂肪族ポリアミン化合物を硬化触媒として用いた場合に、LCM材およびその硬化物中の凝集物の発生が抑えられる理由としては、(i)マイクロカプセル型の潜在性硬化触媒を構成するカプセルのような残存物が存在しないこと、および、(ii)イミダゾール化合物や変性脂肪族ポリアミン化合物を配合したLCM材の調製に際しては、原料溶液の分散処理時にカプセルの破壊を考慮する必要が無いため、凝集物の発生を防止するのに必要十分な剪断力を加えることができることが考えられる。
【0051】
マイクロカプセル化されていない硬化触媒は1種類を用いていればよく、2種類以上を併用しても良い。また、融点が200℃以上のイミダゾール化合物及び融点が130℃以上の変性脂肪族ポリアミン化合物のうち少なくとも1種類を用いる場合は、これら以外の硬化触媒を併用しても良い。
【0052】
LCM材およびその硬化物中の凝集物が少なく、保存安定性に優れるとともに、速硬化性にも優れるLCM材を得る観点からは、(D)硬化触媒としては融点が200℃以上のイミダゾール化合物を用いることが好ましく、より優れた効果を得る観点から2,4-ジアミノ-6-[2‘-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物(市販品としては、たとえば2MA-OK)を用いることがより好ましい。
【0053】
凝集物が少ないLCM材およびその硬化物を得る観点から、第一の本実施形態のLCM材に使用する硬化触媒としてはマイクロカプセル型の潜在性硬化触媒を実質的に含まないことが好ましい。第一の本実施形態のLCM材に配合される硬化触媒として、マイクロカプセル型の硬化触媒が主成分として含まれる場合、既述した条件(2)を満たすことができない。この観点からは、第一の本実施形態のLCM材には、マイクロカプセル型の潜在性硬化触媒が全く含まれないことが好ましい。また、LCM材にマイクロカプセル型の潜在性硬化触媒が配合される場合でも、硬化物中における凝集物の発生を抑制する観点から、その含有量はLCM材全体に対して、0質量%を超え5質量%以下が好ましく、0質量%を超え2質量%以下がより好ましく、0質量%を超え1質量%以下がさらに好ましい。
【0054】
LCM材中に配合されるマイクロカプセル化されていない硬化触媒の配合量は、特に制限されるものではないが、通常、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.5質量部~10質量部程度である。なお、マイクロカプセル化されていない硬化触媒が、2,4-ジアミノ-6-[2‘-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物である場合において配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、2.0質量部~3.8質量部であることが好ましく、2.3質量部~3.4質量部であることがより好ましい。これによりダイシング等により個片化される前のLCM材を用いて作製された中間製造物の反りの抑制と、ダイシング時に発生するクラックの抑制とをバランスよく両立させることができる。
【0055】
(E)その他の成分
第一の本実施形態のLCM材には、上記(A)~(D)成分以外のその他の成分を必要に応じてさらに配合してもよい。その他の任意成分としては、エポキシ樹脂以外のその他の樹脂成分、アルコール化合物、カップリング剤、顔料、イオントラップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、難燃剤、着色剤、反応性希釈剤、エラストマーなどを例示することができる。その他の成分の配合量は、その種類に応じて適宜選択することができる。
【0056】
なお、エポキシ樹脂以外のその他の樹脂成分としては、たとえば、アクリル系共重合体などが挙げられるが、その他の樹脂成分は全く用いなくてもよい。また、アクリル系共重合体などのエポキシ樹脂以外のその他の樹脂成分を用いる場合、その配合量は、LCM材全体に対して0質量%を超え50質量%未満が好ましく、0質量%を超え30質量%以下がより好ましく、0質量%を超え10質量%以下がさらに好ましい。
【0057】
また、アルコール化合物としては、テトラメチレングリコール構造をアルキレングリコール構造として有するポリカーボネートジオール化合物、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。このようなアルコール化合物の市販品としては、PEPCD NT2006(テトラメチレングリコール構造をアルキレングリコール構造として有するポリカーボネートジオール化合物、25℃で液状(透明)、数平均分子量2000、ガラス転移温度-84℃、三菱ケミカル株式会社製)、PEPCD NT2002(テトラメチレングリコール構造をアルキレングリコール構造として有するポリカーボネートジオール化合物、25℃で液状(透明)、数平均分子量2000、ガラス転移温度-71℃、三菱ケミカル株式会社製)、PTMG 2000(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量:2000、三菱ケミカル株式会社製)、PTMG 3000(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量:3000、三菱ケミカル株式会社製)などがある。LCM材全体に対してアルコール化合物を0.1質量%~5質量%配合することで、圧縮成形後の反りを低減することができる。
【0058】
第一の本実施形態のLCM材の25℃における初期粘度(LCM材の調製から1時間以内に測定した粘度)が10Pa・s~460Pa・sである。初期粘度を10Pa・s~460Pa・sとすることにより、LCM材の取り扱い性と注入性とを両立させることができる。なお、初期粘度は10Pa・s~350Pa・sであることが好ましく、20Pa・s~300Pa・sであることがより好ましく、30Pa・s~250Pa・sであることがさらに好ましい。また、LCM材の保存安定性の観点からは、24時間後増粘倍率は、5倍以下が好ましく、3倍以下がより好ましく、1倍に近いほどよい。ここで、24時間後増粘倍率とは、25℃における初期粘度に対する25℃における24時間後粘度(LCM材の調製から24時間後に測定した粘度)の倍率を意味する。
【0059】
第一の本実施形態のLCM材は、(A)~(D)成分、さらに必要に応じて配合する(E)その他の成分を混合攪拌し調製される。混合攪拌に際してはロールミルやプラネタリーミキサーなどの公知の混合攪拌手段を適宜利用することができる。(A)エポキシ樹脂が固形の場合には、加熱などにより液状化ないし流動化した後に他の成分と混合することが好ましい。また、各成分を混合する場合は、全ての成分を同時に混合してもよく、あるいは、一部の成分を先に混合して得た混合物に、残りの成分を後から添加して混合するなどしてもよく、混合の手順は特に制限されない。(A)エポキシ樹脂に対し、(C)無機フィラーを均一に分散させることが困難な場合は、(A)エポキシ樹脂と、(C)無機フィラーとを先に混合することで調製した混合物に、残りの成分を後から添加して混合してもよい。
【0060】
次に、第二の本実施形態のLCM材について説明する。第二の本実施形態のLCM材は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機フィラーと、(D)硬化触媒として融点が200℃以上のイミダゾール化合物と、を含み、25℃における初期粘度が10Pa・s~460Pa・sである。第二の本実施形態のLCM材は、第一の本実施形態のLCM材と同様に、圧縮成形時の注入性に優れると共に、硬化物中に含まれる凝集物の少ないLCM材を提供することができる。これに加えて、第二の本実施形態のLCM材は、保存安定性および速硬化性にも優れる。なお、第二の本実施形態のLCM材において、(A)~(C)成分および必要に応じてさらに用いることができる(E)成分は、第一の本実施形態のLCM材と同様のものを用いることができ、(D)成分としては、第一の本実施形態のLCM材において用いられる(マイクロカプセル化されていない硬化触媒である)融点が200℃以上のイミダゾール化合物が用いられる。また、第二の本実施形態のLCM材の初期粘度および24時間後増粘倍率の好適な範囲についても、第一の本実施形態のLCM材と同様とすることが好ましい。
【0061】
第一および第二の本実施形態のLCM材は、LCM材を用いて圧縮成形する工程を少なくとも経て作製される部品や製品であれば、いずれの部品あるいは製品の製造にも利用することができる。このような部品あるいは製品としては、代表的には第一または第二の本実施形態のLCM材の硬化物からなる封止材を備える電子部品が挙げられる。この電子部品としては、基板と、基板上に配置された素子と、素子と基板との間の間隙を封止している第一または第二の本実施形態のLCM材の硬化物と、を備える電子部品が挙げられる。このような構造を有する電子部品の具体例としては、素子として半導体素子を用いた半導体装置が挙げられる。なお、このような間隙が設けられた構造を有する部品や製品においては、特に間隙のギャップ長が小さい程、既述したように硬化物中に含まれる凝集物の最大径(円相当直径の最大径)は4μm以下であることが好ましい。
【実施例
【0062】
以下に本発明の具体例を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に説明する実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、実験例Aは、第一および第二の本発明のLCM材に対応する実施例であり、実験例Bは、第一の本発明のLCM材に対応する実施例、かつ、第二の本発明のLCM材に対応する比較例であり、実験例Cは、第一および第二の本発明のLCM材に対応する比較例である。
【0063】
1.LCM材の調製
各実験例のLCM材は、表1~3に示す配合組成となるように各成分を混合した原料溶液を混合攪拌することにより調製した。この際、(D)硬化触媒としてマイクロカプセル化されていない硬化触媒を用いた実施例のLCM材調製用の原料溶液の混合攪拌は、下記混合攪拌条件1にて実施し、(D)硬化触媒としてマイクロカプセル型潜在性硬化触媒を用いた比較例のLCM材調製用の原料溶液の混合攪拌は、下記混合攪拌条件2にて実施した。また、(B)硬化剤として、フェノール系硬化剤と酸無水物系硬化剤とを組合せて用いた場合、フェノール系硬化剤のフェノール当量b1と、酸無水物系硬化剤の酸無水物当量b2との比は、49:51となるように硬化剤の組成を調製した。
<混合攪拌条件1>
各成分を人力によりへらで混合して得られた原料溶液を3本ロールミルで分散した。
<混合攪拌条件2>
各成分を人力によりへらで混合して得られた原料溶液を邪魔板がついた容器にて20rpmで10分間混合攪拌した。
【0064】
2.LCM材の調製に用いた原料
表1~3に示すLCM材を構成する各成分の詳細は以下の通りである。
【0065】
(A)エポキシ樹脂
・YDF-870GS(ビスフェノールF型エポキシ樹脂:日鉄ケミカル&マテリアル製)
・HP-4032D(ナフタレン型エポキシ樹脂:DIC製)
・jER630LSD(アミノフェノール型エポキシ樹脂:三菱化学製)
【0066】
(B)硬化剤
<フェノール系硬化剤>
・MEH-8005(液状フェノールノボラック樹脂:UBE製、水酸基当量:135g/eg)
・BRM-553(固形フェノールノボラック樹脂:アイカ工業製、水酸基当量:108g/eg)
<酸無水物系硬化剤>
・MH-700(4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物:新日本理化製、酸無水物当量:164g/eq)
・HN-2200(メチルテトラヒドロフタル酸無水物:レゾナック製、酸無水物当量:166g/eq)
【0067】
(C)無機フィラー
・SE2200-SME(メタクリル表面処理シリカフィラー、平均粒径0.5μm、アドマテックス製)
・YA050C-SM1(メタクリル表面処理シリカフィラー、平均粒径0.05μm、アドマテックス製)
・AG2051 SXM(フェニルアミノ表面処理アルミナフィラー、平均粒径:1μm、アドマテックス製)
【0068】
(D)硬化触媒
<マイクロカプセル化されていない硬化触媒>
・2MA-OK(2,4-ジアミノ-6-[2‘-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物:四国化成工業製、融点260℃)
・FXR-1030(アミンアダクト系潜在性硬化剤:T&K TOKA製、融点140℃)
・2PHZ(2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール:四国化成工業製、融点230℃)
・2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール:四国化成工業製、融点40℃)
・2P4MHZ(2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール:四国化成工業製、融点195℃)
・EH-4357S(ポリアミン型潜在性硬化剤:ADEKA製、融点78℃)
・FXR-1020(アミンアダクト系潜在性硬化剤:T&K TOKA製、融点124℃)
<マイクロカプセル型潜在性硬化剤>
・HX-3088FR(マイクロカプセル型潜在性硬化剤:旭化成製)
・HX-3742(マイクロカプセル型潜在性硬化剤:旭化成製)
【0069】
(E)その他の成分
・KBM-403(シランカップリング剤:信越化学工業製)
・Special Black 4(顔料:オリエン エンジニアドカーボンズ製)
【0070】
3.評価・測定方法
各実験例のLCM材及びその硬化物の各種評価・測定方法の詳細は以下のとおりである。
【0071】
3.1 凝集物の面積比率
LCM材を、圧縮成形(モールド温度:150℃、モールド時間:700秒)することで、予備硬化物を得た。続いて、この予備硬化物を加熱処理(硬化温度:180℃、硬化時間:60分)することで、硬化物(面積比率測定用サンプル)を得た。次に硬化物を切断して得られた断面を研磨した。続いて、研磨処理された断面を日立ハイテクノロジー社の走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率500倍にて、縦横が250μm×180μmの領域内を観察した際に、この領域内に存在する円相当直径1μm以上の凝集物の面積比率(100×円相当直径1μm以上の凝集物の総面積(μm)/観察領域の総面積(250μm×180μm)を求めた。
【0072】
ここで、SEMによる観察対象となる硬化物断面の研磨処理は、下記(i)~(vi)に示す研磨条件にて順次研磨を行うことで実施した。
(i)研磨紙(240番)で3分間研磨
(ii)研磨紙(600番)で3分間研磨
(iii)研磨パッド(LAMPLAN社製、ポリシングクロスLAMPLAN410)および研磨液(LAMPLAN社製、ハイプレスダイヤモンドスラリー3μm)を用いて3分間研磨
(iv)研磨パッド(LAMPLAN社製、ポリシングクロスLAMPLAN410)および研磨液(LAMPLAN社製、ハイプレスダイヤモンドスラリー1μm)を用いて3分間研磨
(v)研磨パッド(ビューラー社製、マスターテックス0.05μm)および研磨液(ビューラー社製、マスタープレップ0.05μm)を用いて3分間研磨
(vi)研磨パッド(ビューラー社製、マスターテックス0.05μm)および研磨液の代わりとした水を用いて30秒間研磨
【0073】
面積比率の算出には三谷商事株式会社の画像解析・計測ソフトウェアWinROOF2018を用いた。また、研磨処理された断面のSEM像の画像解析の実施前に、断面に存在する粒状物の組成分析を行い、顔料や無機フィラーに由来する粒状物と、樹脂を主成分とする凝集物に由来する粒状物とを判別し、SEM像上における各々の粒状物質のコントラストの違いを把握した。そして、この情報を利用して、凝集物に相当する粒状物質のみを解析対象として選択して画像解析を実施することで面積比率を算出した。
【0074】
3.2 初期粘度
調製完了後から1時間以内のLCM材の粘度をBrookfield社のHB型粘度計を用いて、25℃、20回転/分の条件で測定した。
【0075】
3.3 24時間後増粘倍率
調製完了後から24時間後のLCM材の粘度(24時間後粘度)をBrookfield社のHB型粘度計を用いて、25℃、20回転/分の条件で測定した。そして、初期粘度に対する24時間後粘度の比率(24時間後粘度/初期粘度)を24時間後増粘倍率として算出した。
【0076】
3.4 ゲルタイム
松尾産業株式会社製の自動硬化時間測定装置「まどか」を用いてLCM材を回転速度120rpm、試験温度150℃、サンプル量0.3mlの測定条件にてLCM材がゲル化するまでの時間(ゲルタイム)を測定した。ゲルタイムが小さい程、速硬化性に優れることを意味する。但し、ゲルタイムが小さすぎる場合は、基板あるいはリリースフィルム上にLCM材を塗布等により供給開始後、モールド実施前にLCM材が固まってしまう可能性が高くなるため、ゲルタイムの下限値は実際に使用する圧縮成形装置の動作速度にもよるが実用上100秒~120秒前後以上である。
【0077】
3.5 注入性評価
平坦な台上に設置した第1のガラス基板の縦辺方向の両端側に沿って、2本のテープ(厚み:30μm)を配置し、さらにその上に、第1のガラス基板と縦横のサイズが同一の第2のガラス基板を配置した。但し、第2のガラス基板は、第1のガラス基板に対して、縦辺方向に若干ずらして配置した。この状態で、2枚のガラス基板と2本のテープとからなる積層体をクリップで挟んで、ガラス基板同士が水平方向にズレないように固定することで、2枚のガラス基板の間に2本の平行に配置されたテープが配置された試験片を得た。この試験片には、2枚のガラス基板と2本のテープとにより囲まれた間隙が形成されており、2枚のガラス基板の間の距離(試験片の厚み方向の距離)は30μm、2本のテープの間の距離(試験片の横辺方向の距離)は1cmとなっている。
【0078】
次に、試験片を加熱温度を150℃に設定したホットプレート上に設置し、試験片の縦辺方向の一端側に形成された間隙の開口部にLCM材(0.2g)を塗布した。この際、LCM材は、試験片の横辺方向に対して略均等となるように塗布した。塗布後、700秒間放置することで、試験片の縦辺方向の一端側から他端側へと向かうように、開口部から間隙内へとLCM材を浸透させた。そして、700秒経過した時点で、試験片の上方に設置したCCDカメラにより、試験片の縦辺方向において、開口部を0μm(基準位置)として、開口部から間隙内へと浸透したLCM材の最大浸透距離を測定した。なお、評価基準は以下のとおりである。
A:LCM材の最大浸透距離が1500μm以上
B:LCM材の最大浸透距離が1000μm以上1500μm未満
C:LCM材の最大浸透距離が1000μm未満
【0079】
3.6 ガラス転移温度Tg
LCM材のガラス転移温度Tgは、LCM材を150℃、60分間加熱硬化させた硬化物についてSII社(セイコーインスツル株式会社)のDMS6100を用いてDMA(Dynamic Mechanical Analysis、動的粘弾性測定)法により測定した。なお、ガラス転移温度Tgは、上記DMA法により測定された温度に対する損失正接(tanδ)の変化曲線において、tanδが最大値となる温度である。tanδについては、任意の温度での損失弾性率をその温度での貯蔵弾性率で除することで算出される。
【0080】
3.7 反り評価
反りは以下の手順で評価した。まず、圧縮成形装置内の上金型と下金型を150℃まで昇温させた後、上金型へ縦74mm、横240mm、厚み300μmのFR4基板(GN74240、グローバルネット社製)を設置した。次に、リリースフィルム上にLCM材を塗布し、圧縮成形装置内の下金型へLCM材が塗布された面を上にしてリリースフィルムを設置した。その後、下金型を稼働させ、150℃/700秒で圧縮成形を行った。FR4基板上に形成された硬化物のサイズは縦67mm、横233mm、厚み250μmであった。圧縮成形完了後、硬化物が形成されたFR4基板を金型から取り外し、180℃に設定した乾燥機へ1時間投入した。以上によりFR4基板の片面にLCM材の硬化物からなる層が形成された評価サンプルを作製した。次に、この評価サンプルを硬化物層が形成された面が上面となるように水平な台の上に設置した。この状態で、評価サンプルの下面から台までの距離を測定した。なお、距離の測定は、評価サンプルの外周部8箇所(FR4基板の4つの角部および隣り合う角部同士の中間地点(4箇所))について実施し、これらの測定値の平均値を反りの値とした。
【0081】
3.8 ダイシングクラック評価
縦横:40mm×40mm、800μm厚のFR4基板(品名:L6504C1、ニッカン工業株式会社製)上に、縦横:30mm×30mm、300μmでLCM材を印刷した後、180℃の硬化炉で60分硬化させることにより、FR4基板上にLCM材の硬化物層が形成された試験片を作製した。得られた試験片の硬化物層が形成された面にダイシングテープ(YHP-1510M3-30A、デンカ株式会社製)に貼り付けた。ダイシングブレード(マイクロブレード 59D―0.265T―40H、二和ダイヤモンド株式会社)をダイシング装置(DAD3360、株式会社ディスコ製)に取り付け、回転数を35000rpm、ダイシングスピードを350mm/secに設定し、LCM材の硬化層の縦横のサイズが20mm×20mmになるようにダイシングテープに貼り付けられた試験片をダイシングした。得られたダイシング後の試験片は、ダイシングテープから剥がし、LCM材の硬化物層が形成された面を上にし、光学顕微鏡の台座に置き、200倍にてLCM材の硬化物層がダイシングされた4辺を観察し、LCM材の硬化物層のクラック有無を確認した。なお、評価基準は以下のとおりである。
A:クラックは全く観察されなかった。
B:クラックが観察された。
【0082】
4.評価結果
表1~3に各実験例の組成と共に、凝集物の面積比率、初期粘度、24時間後増粘倍率、ゲルタイム、凝集物の最大粒径、Tg、反り評価およびダイシングクラック評価について示す。なお、実験例Aおよび実験例Bについては、いずれの実験例においても凝集物の面積比率を求める際に実施したSEM観察において、縦横250μm×180μmのSEM観察の領域内に最大円相当直径が4μm以上の凝集物は観察されなかった。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【要約】
注入性に優れ、硬化物中に含まれる凝集物の少ない液状コンプレッションモールド材を提供すること。
(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機フィラーと、(D)硬化触媒と、を含み、素子と基板との間の間隙の封止に少なくとも用いられる液状コンプレッションモールド材であって、25℃における初期粘度が10~250Pa・sであり、前記液状コンプレッションモールド材を下記(1)に示す条件で硬化させた硬化物が下記(2)に示す条件を満たす、液状コンプレッションモールド材;
(1)モールド温度:150℃、モールド時間:700秒、硬化温度:180℃、硬化時間:60分
(2)前記硬化物の断面を走査型電子顕微鏡(倍率:500倍)により、縦横が250μm×180μmの領域を観察した際に、前記領域内に存在する円相当直径1μm以上の凝集物の面積比率が1.0%以下である。