(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】逐次比較AD変換器
(51)【国際特許分類】
H03M 1/38 20060101AFI20241219BHJP
H03M 1/46 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
H03M1/38
H03M1/46
(21)【出願番号】P 2020049692
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】筏 礼二郎
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0253354(US,A1)
【文献】再公表特許第2018/047457(JP,A1)
【文献】特開2011-120011(JP,A)
【文献】特開2014-161005(JP,A)
【文献】特開2015-115883(JP,A)
【文献】米国特許第06970126(US,B1)
【文献】米国特許第10291251(US,B1)
【文献】特表2010-517327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00-1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アナログ入力信号が入力される第1入力端子と、
第2アナログ入力信号が入力される第2入力端子と、
比較器と、
前記比較器の判定結果に基づいてデジタル出力信号を出力する逐次比較制御回路と、
前記比較器の
反転入力端子に
一端が接続され
る第1容量と、
前記比較器の非反転入力端子に一端が接続される第2容量と、を有する第1の容量と、
前記第1容量の他端を前記第1入力端子に接続するか接地端子に接続するかを切り替え、前記第2容量の他端を前記第2入力端子に接続するか前記接地端子に接続するかを切り替える切替え回路と、
重みづけされた複数の容量素子を有し、容量値が同一である第2の容量群および第3の容量群と、
を備え、
前記逐次比較制御回路は、
逐次比較ステップ毎に前記比較器の判定出力結果に基づいて、前記第2の容量群
の一端および前記第3の容量群
の一端のうちの一方を前記比較器の
前記非反転入力端子に接続し、他方を前記比較器の
前記反転入力端子に接続するように順次に逐次比較制御を行い、
サンプリングフェーズの際に、
前記第1容量の他端を前記第1入力端子に接続し、前記第2容量の他端を前記第2入力端子に接続するように前記切替え回路を制御するとともに、
前記比較器の入力端子に接続される側の前記第2の容量群の容量端子と、前記第3の容量群の容量端子の両側とが、同電位となり、且つ前記第2の容量群には基準電圧を電荷蓄積し、前記第3の容量群には電荷蓄積しないように
制御し、
逐次比較動作の際に、前記第1容量の他端と前記第2容量の他端を前記接地端子に接続するように前記切替え回路を制御するとともに、
前記比較器の入力端子に接続されない側の前記第2の容量群の容量端子と前記第3の容量群の容量端子のそれぞれが前記接地端子に接続されるように制御する、逐次比較AD変換器。
【請求項2】
アナログ入力信号が入力される第1入力端子と、
基準電圧が入力される第2入力端子と、
比較器と、
前記比較器の判定結果に基づいてデジタル出力信号を出力する逐次比較制御回路と、
前記比較器の反転入力端子に一端が接続される第1容量と、前記比較器の非反転入力端子に一端が接続され容量値が前記第1容量の半分である第3容量、及び前記非反転入力端子に一端が接続され他端が接地端子に接続され容量値が前記第3容量と同じである第4容量を有する第2容量と、を有する第1の容量と、
前記第1容量の他端を前記第1入力端子に接続するか前記接地端子に接続するかを切り替え、前記第3容量の他端を前記第2入力端子に接続するか前記接地端子に接続するかを切り替える切替え回路と、
重みづけされた複数の容量素子を有し、容量値が同一である第2の容量群および第3の容量群と、
を備え、
前記逐次比較制御回路は、
逐次比較ステップ毎に前記比較器の判定出力結果に基づいて、前記第2の容量群の一端および前記第3の容量群の一端のうちの一方を前記比較器の前記非反転入力端子に接続し、他方を前記比較器の前記反転入力端子に接続するように順次に逐次比較制御を行い、
サンプリングフェーズの際に、前記第1容量の他端を前記第1入力端子に接続し、前記第3容量の他端を前記第2入力端子に接続するように前記切替え回路を制御するとともに、
前記比較器の入力端子に接続される側の前記第2の容量群の容量端子と、前記第3の容量群の容量端子の両側とが、同電位となり、且つ前記第2の容量群には前記基準電圧を電荷蓄積し、前記第3の容量群には電荷蓄積しないように制御し、
逐次比較動作の際に、前記第1容量の他端と前記第3容量の他端を前記接地端子に接続するように前記切替え回路を制御するとともに、
前記比較器の入力端子に接続されない側の前記第2の容量群の容量端子と前記第3の容量群の容量端子のそれぞれが前記接地端子に接続されるように制御する、逐次比較AD変換器。
【請求項3】
前記サンプリングフェーズの際に、前記比較器の入力端子に接続される側の前記第2の容量群の容量端子と前記第3の容量群の容量端子とが、前記基準電圧となっていることを特徴とする、
請求項1
又は2に記載の逐次比較AD変換器。
【請求項4】
前記第2の容量群および前記第3の容量群は、それぞれ同じ容量値をもった複数の容量素子で構成される、
請求項1
から3のいずれか一項に記載の逐次比較AD変換器。
【請求項5】
前記第2の容量群および前記第3の容量群は、同一であることを特徴とする、
請求項
4に記載の逐次比較AD変換器。
【請求項6】
前記第2の容量群および前記第3の容量群は、2のべき乗で重みづけされた複数の容量素子で構成される、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の逐次比較AD変換器。
【請求項7】
前記逐次比較制御回路は、外部から入力されるクロック信号に同期して、前記逐次比較制御を行うことを特徴とする、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の逐次比較AD変換器。
【請求項8】
前記切替え回路は、
前記
サンプリングフェーズの際に、前記第2の容量群の一端と前記第3の容量群の一端とを
前記基準電圧に接続する、
請求項
1から7のいずれか一項に記載の逐次比較AD変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逐次比較AD変換器(アナログ-デジタル変換器)に関する。
【背景技術】
【0002】
IoT技術の高まりとともに、センサとのIF部に使われるアナログフロントエンドのAD変換器の低消費電力化がますます重要になってきている。高速動作および低消費電力を実現できる逐次比較AD変換器として、電荷共有型の逐次比較AD変換器が知られている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。それに対し、従来からのものは電荷再配分型の逐次比較AD変換器と呼ばれている。
【0003】
図1に示すように、電荷再配分型の逐次比較AD変換器300は、入力電圧をサンプリングする容量33と、比較器と、逐次比較制御回路とで構成され、逐次比較ステップ毎に容量33の接続先を基準電圧かグランドかを選択している。
【0004】
一方、
図2で示すように、電荷共有型の逐次比較AD変換器200は、入力電圧をあらかじめサンプリングする容量31と、基準電圧をサンプリングする容量91とが、別々の容量で構成されているという特徴がある。例えば、特許文献1においては、第1図のC3が入力電圧をあらかじめサンプリングする容量であり、C1およびC2が基準電圧をサンプリングする容量である。また、非特許文献1においては、
図13.5.1のCspおよびCsnが入力電圧をあらかじめサンプリングする容量であり、Cuが基準電圧をサンプリングする容量である。また基準電圧は、入力電圧のサンプリングと同時に、あらかじめ一回のみ電荷を容量91に蓄積する動作を行う。
【0005】
このような構成・動作とすることで、電荷共有型の逐次比較AD変換器は、比較タイミングN回(NビットのAD変換器の場合)毎に基準電圧のセトリングを容量に対してしなくてもよいため、基準電圧を駆動するオペアンプの負担を少なくすることができる。したがって、電荷再配分型の逐次比較AD変換器に比べて、高速動作・低消費電力化が可能であることが知られている。
【0006】
ここで、
図3を用いて従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器の説明を行う。
図3は、従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器の構成例を示す図である。従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器200は、逐次比較制御回路11と、比較器21と、アナログ入力信号に接続可能な第1の容量31と、基準電圧にあらかじめ接続可能な第2の容量群91とを備える。第2の容量群91は、重みづけされた複数の容量素子で構成される。第1の容量31は、比較器21の入力に接続される。逐次比較制御回路11は、逐次比較ステップ毎に比較器21の判定出力結果に基づいて、重みづけされた第2の容量群91を、所定の極性または該極性と反対の極性で、比較器21の入力に接続させる。なお、
図3は、アナログ入力信号は、差動入力信号として実施した例を図示しているが、例えば、特許文献2の
図3に示すようなシングルエンド信号に対しても、同様の構成例となる。
【0007】
次に、
図4~
図7を用いて電荷共有型の逐次比較AD変換器200の回路動作を逐次比較ステップ毎に順次説明する。簡単のために、3bitの電荷共有型の逐次比較AD変換器200の動作例を示す。
【0008】
図4は、逐次比較動作前のサンプリングフェーズの状態を示す図である。
図4に示すように、サンプリングフェーズ時には、第1の容量31にスイッチ61を介してアナログ入力が接続され、アナログ入力電圧に対応した電荷が、容量31に蓄積される。一方、第2の容量群91にはスイッチ71を介して基準電圧が接続され、基準電圧に対応した電荷が第2の容量群91にあらかじめ蓄積される。
【0009】
より具体的には、アナログ入力電圧を
Vinp-Vinn
で表される差動の入力とすると、比較器21の入力のP側とN側とにそれぞれ接続された容量31にはそれぞれ、
Qp=-8CVinn
Qn=-8CVinp
の電荷が蓄積される。一方、第2の容量群91のうち重みづけが1番重い容量素子は
Qref92=2CVref
の電荷が蓄積され、第2の容量群91のうち重みづけが2番目に重い容量素子は、
Qref91=CVref
の電荷が蓄積される。
【0010】
図5は、最上位ビット決定時の状態を示す図である。
図5に示すように、第1の容量31の比較器21と接続していない方の端子は、比較器21のコモン電圧となるべき電圧に接続される。
図5では一例としてグランドに接続している。このとき、比較器21の入力端子をそれぞれV
p,V
nとすると、比較器21の差動入力電圧は
V
p-V
n=V
inp-V
inn
となる。仮に、
V
inp-V
inn=0.3V
ref
と仮定すると、比較器21の入力電圧は、
V
p-V
n=V
inp-V
inn=0.3V
ref>0
となり、比較器21は“1”を出力し、最上位ビットは“1”と判定される。
【0011】
図6は、上位第2ビット目決定時の状態を示す図である。
図6に示すように、第2の容量群91のうち重みづけが1番重い容量素子は、最上位ビットが1なので所定の極性で比較器21の入力にスイッチ81を介して接続される。より具体的には、比較器21の非反転入力端子(以下、入力P側という。)には、-2CV
refの電荷が、比較器21の反転入力端子(以下、入力N側という。)には、+2CV
refの電荷が、それぞれ付加される。
【0012】
したがって、比較器21の入力P側の電荷Qpの総和、および比較器21の入力N側の電荷Qnの総和は、
Qp=-8CVinn-2CVref
Qn=-8CVinp+2CVref
となる。比較器21の入力電圧は、
Vp-Vn={8C(Vinp-Vinn)-4CVref}/12C
=2/3・{(Vinp-Vinn)-0.5Vref}
となる。ここで、
Vinp-Vinn=0.3Vref
と仮定しているので、
Vp-Vn=2/3・{0.3Vref-0.5Vref}<0
となり、比較器21は“0”を出力し、上位2ビット目は“0”と判定される。
【0013】
図7は、上位3ビット目決定時の状態を示す図である。
図7に示すように、第2の容量群91のうち重みづけが2番目に重い容量素子は、上位2ビット目が“0”なので所定の極性とは反対の極性で比較器21の入力にスイッチ81を介して接続される。より具体的には、比較器21の入力P側には、+CV
refの電荷が、比較器21の入力N側には、-CV
refの電荷が、それぞれ付加される。このとき、上位第2ビット目決定の際に接続した、第2の容量群91のうち重みづけが1番重い容量素子は、比較器21の入力に接続したままとしている。
【0014】
したがって、比較器21の入力P側の電荷Qpの総和、および比較器21の入力N側の電荷Qnの総和は、
Qp=-8CVinn-2CVref+CVref=-8CVinn-CVref
Qn=-8CVinp+2CVref-CVref=-8CVinp+CVref
となる。比較器21の入力電圧は、
Vp-Vn={8C(Vinp-Vinn)-2CVref}/14C
=4/7・{(Vinp-Vinn)-0.25Vref}
となる。ここで、
Vinp-Vinn=0.3Vref
と仮定しているので、
Vp-Vn=4/7・{0.3Vref-0.25Vref}>0
となり、比較器21は“1”を出力し、上位3ビット目は“1”と判定される。
【0015】
以上述べたような、
図4~
図7に係るこれら一連の逐次比較ステップにより、アナログ入力信号V
inp-V
inn=0.3V
refは、デジタル出力“101”に、アナログ-デジタル変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開昭54-144858号公報
【文献】特開2011-120011号公報
【0017】
【文献】J.Craninckx, Geert Van der Plas, “A 65fJ/Conversion-Step 0-to-50MS/s 0-to-0.7mW 9b Charge-Sharing SAR ADC in 90nm Digital CMOS”, ISSCC Dig.Tech.Papers, pp.246-247, Feb 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器の場合、基準電圧をあらかじめ蓄積する容量群(第2の容量群)において、その両端に寄生容量が存在した場合、その寄生容量に電荷が蓄積されてしまう。電荷共有型の逐次比較AD変換器は低消費電力化が可能という一方で、これが原因でAD変換器のリニアリティが劣化してしまい、高精度なAD変換器を実現できないという課題があった。
【0019】
ここで、
図8を用いて従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器の課題を説明する。
図8に示すように、第2の容量群91を構成する容量素子の両端には、スイッチに起因する寄生容量の他、容量素子の構造に起因する寄生容量が通常存在する。また、LSIなど集積回路の中に形成される薄膜を積層していく態様の容量素子の場合、その上部と下部に寄生する寄生容量はそれぞれ異なる値となる。
図8に示すように、第2の容量群91を構成する容量素子の両端にC
p1、C
p2のそれぞれが寄生容量として付加された場合を考えると、サンプリングフェーズには、第2の容量群91のうち重みづけが1番重い容量素子は
Q
ref92=2CV
ref
が蓄積され、C
p1,C
p2には、
ΔQ
1=C
p1・V
ref
ΔQ
2=C
p2・0=0
が蓄積される。
【0020】
この後、最上位ビット決定時には、上記寄生容量の影響はない。一方で上位第2ビット目決定時には影響を与える。
【0021】
図9を用いてより具体的に説明すると、上位第2ビット目決定時の比較器21の入力P側の電荷Q
p、および比較器21の入力N側の電荷Q
nは、
Q
p=-8CV
inn-2CV
ref
Q
n=-8CV
inp+2CV
ref+C
p1V
ref
となる。比較器21の入力電圧は、以下では簡単のため、C
p1=C
p2=Cpとすると、
V
p-V
n
={8C(V
inp-V
inn)-4CV
ref+Cp(V
inp-V
inn)-(3Cp/2)V
ref-(0.125Cp
2/C)V
ref}/(12C+2.5Cp+0.125(Cp
2/C))
となる。
【0022】
元の式と比較してもわかる通り、第2の容量群に寄生する容量を加味したときに追加される項が、比較器21の出力を決定する上でゲインエラーおよびオフセットエラーとなる成分であり、これらが各ビット決定毎に変動することで、でAD変換器のリニアリティを劣化させてしまい、精度が低下してしまう。
【0023】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、第2の容量群に寄生容量が存在していたとしても、高精度なAD変換を行うことが可能な逐次比較AD変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の逐次比較AD変換器は、アナログ入力信号が入力される第1入力端子と、第2アナログ入力信号が入力される第2入力端子と、比較器と、前記比較器の判定結果に基づいてデジタル出力信号を出力する逐次比較制御回路と、前記比較器の反転入力端子に一端が接続される第1容量と、前記比較器の非反転入力端子に一端が接続される第2容量と、を有する第1の容量と、前記第1容量の他端を前記第1入力端子に接続するか接地端子に接続するかを切り替え、前記第2容量の他端を前記第2入力端子に接続するか前記接地端子に接続するかを切り替える切替え回路と、重みづけされた複数の容量素子を有し、容量値が同一である第2の容量群および第3の容量群と、を備え、前記逐次比較制御回路は、逐次比較ステップ毎に前記比較器の判定出力結果に基づいて、前記第2の容量群の一端および前記第3の容量群の一端のうちの一方を前記比較器の前記非反転入力端子に接続し、他方を前記比較器の前記反転入力端子に接続するように順次に逐次比較制御を行い、サンプリングフェーズの際に、前記第1容量の他端を前記第1入力端子に接続し、前記第2容量の他端を前記第2入力端子に接続するように前記切替え回路を制御するとともに、前記比較器の入力端子に接続される側の前記第2の容量群の容量端子と、前記第3の容量群の容量端子の両側とが、同電位となり、且つ前記第2の容量群には基準電圧を電荷蓄積し、前記第3の容量群には電荷蓄積しないように制御し、逐次比較動作の際に、前記第1容量の他端と前記第2容量の他端を前記接地端子に接続するように前記切替え回路を制御するとともに、前記比較器の入力端子に接続されない側の前記第2の容量群の容量端子と前記第3の容量群の容量端子のそれぞれが前記接地端子に接続されるように制御することを特徴とする。
また、本発明の逐次比較AD変換器は、アナログ入力信号が入力される第1入力端子と、基準電圧が入力される第2入力端子と、比較器と、前記比較器の判定結果に基づいてデジタル出力信号を出力する逐次比較制御回路と、前記比較器の反転入力端子に一端が接続される第1容量と、前記比較器の非反転入力端子に一端が接続され容量値が前記第1容量の半分である第3容量、及び前記非反転入力端子に一端が接続され他端が接地端子に接続され容量値が前記第3容量と同じである第4容量を有する第2容量と、を有する第1の容量と、前記第1容量の他端を前記第1入力端子に接続するか前記接地端子に接続するかを切り替え、前記第3容量の他端を前記第2入力端子に接続するか前記接地端子に接続するかを切り替える切替え回路と、重みづけされた複数の容量素子を有し、容量値が同一である第2の容量群および第3の容量群と、を備え、前記逐次比較制御回路は、逐次比較ステップ毎に前記比較器の判定出力結果に基づいて、前記第2の容量群の一端および前記第3の容量群の一端のうちの一方を前記比較器の前記非反転入力端子に接続し、他方を前記比較器の前記反転入力端子に接続するように順次に逐次比較制御を行い、サンプリングフェーズの際に、前記第1容量の他端を前記第1入力端子に接続し、前記第3容量の他端を前記第2入力端子に接続するように前記切替え回路を制御するとともに、前記比較器の入力端子に接続される側の前記第2の容量群の容量端子と、前記第3の容量群の容量端子の両側とが、同電位となり、且つ前記第2の容量群には前記基準電圧を電荷蓄積し、前記第3の容量群には電荷蓄積しないように制御し、逐次比較動作の際に、前記第1容量の他端と前記第3容量の他端を前記接地端子に接続するように前記切替え回路を制御するとともに、前記比較器の入力端子に接続されない側の前記第2の容量群の容量端子と前記第3の容量群の容量端子のそれぞれが前記接地端子に接続されるように制御することを特徴とする。
【0025】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、第2の容量群に寄生容量が存在していたとしても、高精度なAD変換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来の電荷再配分型の逐次比較AD変換器における構成の概要を示す図である。
【
図2】従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器における構成の概要を示す図である。
【
図3】従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器における構成例を示す図である。
【
図4】従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器におけるサンプリングフェーズの動作例を示す図である。
【
図5】従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器における最上位ビット決定時の動作例を示す図である。
【
図6】従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器における上位第2ビット目決定時の動作例を示す図である。
【
図7】従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器における上位第3ビット目決定時の動作例を示す図である。
【
図8】従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器におけるサンプリングフェーズの課題を説明する図である。
【
図9】従来の電荷共有型の逐次比較AD変換器における上位第2ビット目決定時の課題を説明する図である。
【
図10】第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器における構成の概要を示す図である。
【
図11】第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器における構成例を示す図である。
【
図12】第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器における別の構成例を示す図である。
【
図13】第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器におけるサンプリングフェーズの動作例を示す図である。
【
図14】第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器における最上位ビット決定時の動作例を示す図である。
【
図15】第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器における上位第2ビット目決定時の動作例を示す図である。
【
図16】第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器における上位第3ビット目決定時の動作例を示す図である。
【
図17】第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器におけるサンプリングフェーズの動作例(寄生容量あり)を示す図である。
【
図18】第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器における上位第2ビット目決定時の動作例を示す図である。
【
図19】本発明と従来技術との違いを説明する図である。
【
図20】第2の実施形態に係る逐次比較AD変換器におけるサンプリングフェーズの動作例を示す図である。
【
図21】第2の実施形態に係る逐次比較AD変換器における最上位ビット決定時の動作例を示す図である。
【
図22】第2の実施形態に係る逐次比較AD変換器における上位第2ビット目決定時の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0029】
[第1の実施形態]
ここで、図を用いて本発明の実施形態の説明を行う。
図10は、第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器の構成の概要を示す図である。逐次比較AD変換器100は、電荷共有型の逐次比較AD変換器であり、逐次比較制御回路10と、比較器20と、アナログ入力信号にあらかじめ接続可能な第1の容量30と、基準電圧にあらかじめ接続可能な第2の容量群40および第3の容量群50と、を備える。第2の容量群40および第3の容量群50は、重みづけ(例えば、2のべき乗で重みづけ)された複数の容量素子で構成される。第1の容量30は比較器20の入力に接続される。
【0030】
逐次比較制御回路10は、逐次比較ステップ毎に比較器20の判定出力結果に基づいて、重みづけされた第2の容量群40および第3の容量群50のうちの一方を比較器20の入力P側に接続し、他方を比較器20の入力N側に接続するように順次逐次比較制御を行い、順次判定される比較器20の判定出力結果をデジタル出力信号とする。
【0031】
図11は、第1の実施形態に係る逐次比較AD変換器の構成例を示す図である。
図11に示すように、第1の容量30はスイッチ(切替え回路)60を介してアナログ入力信号に接続される。また、第2の容量群40と第3の容量群50は、スイッチ(切替え回路)70を介して基準電圧に接続される。第2の容量群40と第3の容量群50の容量端子のうち、逐次比較動作時に比較器20の入力に接続される方の容量端子は、スイッチ70を介して同電位となるよう接続される。
図11では一例として電圧Vcを与えているが、
図12に示すように単にショートするだけでもよい。
【0032】
次に、
図13~
図16を用いて、逐次比較AD変換器100の回路動作を逐次比較ステップ毎に順次説明する。簡単のために、3bitの電荷共有型の逐次比較AD変換器100の動作例を示す。
【0033】
図13は、逐次比較動作前のサンプリングフェーズ時の状態を示す図である。
図13に示すように、サンプリングフェーズ時には、第1の容量30にスイッチ60を介してアナログ入力が接続され、アナログ入力電圧に対応した電荷が、第1の容量30に蓄積される。一方、第2の容量群40および第3の容量群50にはスイッチ70を介して基準電圧が接続され、基準電圧に対応した電荷が第2の容量群40および第3の容量群50にあらかじめ蓄積される。ここで本発明においては、基準電圧をあらかじめ電荷蓄積する際に、比較器20の入力に接続される第2の容量群40および第3の容量群50の容量端子が、同電位になっていることを特徴としている。本動作説明では、その電位を基準電圧と同じV
refとおく。
【0034】
より具体的には、アナログ入力電圧を
Vinp-Vinn
で表される差動の入力とすると、比較器20の入力のP側とN側とにそれぞれ接続された容量30にはそれぞれ、
Qp=-8CVinn
Qn=-8CVinp
の電荷が蓄積される。
【0035】
一方、第2の容量群40のうち重みづけが1番重い容量素子は
Qref42=4CVref
が蓄積され、第2の容量群40のうち重みづけが2番目に重い容量素子は、
Qref41=2CVref
が蓄積される。
また、第3の容量群50のうち重みづけが1番重い容量素子は
Qref52=4C(Vref-Vref)=0
が蓄積され、第3の容量群50のうち重みづけが2番目に重い容量素子は、
Qref51=2C(Vref-Vref)=0
が蓄積される。つまり、実質的には本実施形態では容量群50には電荷が蓄積されない。
【0036】
図14は、最上位ビット決定時の状態を示す図である。
図14に示すように、第1の容量30の比較器20と接続していない方の端子は、比較器20のコモン電圧となるべき電圧に接続される。
図14では一例としてグランドに接続している。
【0037】
このとき、比較器20の入力端子をそれぞれVp,Vnとすると、比較器20の差動入力電圧は
Vp-Vn=Vinp-Vinn
となる。仮に、
Vinp-Vinn=0.3Vref
と仮定すると、比較器20の入力電圧は、
Vp-Vn=Vinp-Vinn=0.3Vref>0
となり、比較器20は“1”を出力し、最上位ビットは“1”と判定される。
【0038】
図15は、上位第2ビット目決定時の状態を示す図である。
図15に示すように、第2の容量群40のうち重みづけが1番重い容量素子は、最上位ビットが“1”なので比較器20の入力N側にスイッチ(切替え回路)80を介して接続される。一方で、第3の容量群50のうち重みづけが1番重い容量素子は、最上位ビットが“1”なので比較器20の入力P側にスイッチ80を介して接続される。より具体的には、サンプリングフェーズで蓄積されたQ
ref42=4CV
refの電荷が比較器20の入力N側に、Q
ref52=0の電荷が比較器20の入力P側に、それぞれ付加される。
【0039】
したがって、比較器20の入力P側の電荷Qpの総和、および比較器20の入力N側の電荷Qnの総和は、
Qp=-8CVinn
Qn=-8CVinp+4CVref
となる。比較器20の入力電圧は、
Vp-Vn={8C(Vinp-Vinn)-4CVref}/12C
=2/3・{(Vinp-Vinn)-0.5Vref}
となる。ここで、
Vinp-Vinn=0.3Vref
と仮定しているので、
Vp-Vn=2/3・{0.3Vref-0.5Vref}<0
となり、比較器20は“0”を出力し、上位2ビット目は“0”と判定される。
【0040】
図16は、上位3ビット目決定時の状態を示す図である。
図16に示すように、第2の容量群40のうち重みづけが2番目に重い容量素子は、上位2ビット目が“0”なので比較器20の入力P側にスイッチ80を介して接続される。一方で、第3の容量群50のうち重みづけが2番目に大きい容量素子は、上位2ビット目が“0”なので比較器20の入力N側にスイッチ80を介して接続される。より具体的には、サンプリングフェーズで蓄積されたQ
ref41=2CV
refの電荷が比較器20の入力P側に、Q
ref51=0の電荷が比較器20の入力N側に、それぞれ付加される。このとき、上位第2ビット目決定の際に接続した、第2の容量群40および第3の容量群50のうち重みづけが1番重い容量素子は、比較器20の入力に接続したままとしている。
【0041】
したがって、比較器20の入力P側の電荷Qpの総和、および比較器20の入力N側の電荷Qnの総和は、
Qp=-8CVinn+2CVref
Qn=-8CVinp+4CVref
となる。比較器20の入力電圧は、
Vp-Vn={8C(Vinp-Vinn)-2CVref}/14C
=4/7・{(Vinp-Vinn)-0.25Vref}
となる。ここで、
Vinp-Vinn=0.3Vref
と仮定しているので、
Vp-Vn=4/7・{0.3Vref-0.25Vref}>0
となり、比較器20は“1”を出力し、上位3ビット目は“1”と判定される。
【0042】
以上述べたような、
図13~
図16に係るこれら一連の逐次比較ステップにより、アナログ入力信号V
inp-V
inn=0.3V
refは、デジタル出力“101”に、アナログ-デジタル変換される。なお、この逐次比較ステップは、外部から入力されるクロック信号に同期して実施されることが望ましい。前記電荷移動の完了に費やす時間よりも、クロック信号の1サイクルの周期を長くなるようクロック信号を選択することにより、より精度の高い電圧比較が可能になるからである。
【0043】
ここで、
図17~
図18を用いて第2の容量群40および第3の容量群50に寄生容量が存在していたとしても、本発明によれば、高精度のAD変換器を提供できることを説明する。
【0044】
図17に示すように、第2の容量群40を構成する容量素子の両端にC
p1,C
p2のそれぞれが、また第3の容量群50を構成する容量素子の両端にC
p1,C
p2のそれぞれが寄生容量として付加された場合を考える。第2の容量群40と第3の容量群50は、同じ容量値、同じレイアウト(集積回路上に形成される容量素子の場合)で構成されることが望ましい。こうすることで、第2の容量群40と第3の容量群50との寄生容量を等価にそろえることが可能となるからでる。したがって、第2の容量群40と第3の容量群50は、同一であってもよい。ここで、「同一」とは、第2の容量群40と第3の容量群50の容量値だけでなく、形状(レイアウト)、材質、構成要素等も含めて同一であることを意味する。
【0045】
サンプリングフェーズには、第2の容量群40のうち重みづけが1番重い容量素子は
Qref42=4CVref
が蓄積され、Cp1、Cp2には、
ΔQ1=Cp1・Vref
ΔQ2=Cp2・0=0
が蓄積される。
また、第3の容量群50のうち重みづけが一番重い容量素子は
Qref52=4C(Vref-Vref)=0
が蓄積される。つまり、実質的には、本実施形態では容量群50には電荷蓄積されない。Cp1、Cp2には、
ΔQ1=Cp1・Vref
ΔQ2=Cp2・Vref
が蓄積される。
【0046】
この後、最上位ビット決定時には、従来と同様、上記寄生容量の影響はない。一方で上位第2ビット目決定時の影響を従来と同様に考える。
【0047】
図18を用いてより具体的に説明すると、上位第2ビット目決定時の比較器20の入力P側の電荷Q
p、および比較器20の入力N側の電荷Q
nは、
Q
p=-8CV
inn+C
p1V
ref
Q
n=-8CV
inp+4CV
ref+C
p1V
ref
となる。比較器20の入力電圧は、
V
p-V
n
={8C(V
inp-V
inn)-4CV
ref+C
p1V
ref-C
p1V
ref}
/(12C+C
p1)
=8C/(12C+C
p1)・{(V
inp-V
inn)-0.5V
ref}
となる。
【0048】
このように本発明では、第2の容量群40と第3の容量群50に寄生する容量を加味したときに追加される項がキャンセルアウトされるため、従来技術に比べて、寄生容量によるAD変換器のリニアリティの劣化は生じない。従来技術では、基準電圧をあらかじめ電荷蓄積する容量群がひとつであり、それを逐次比較制御回路からの信号を元に、所定の極性または反対の極性で比較器20の入力端に接続しているのに対し、本発明では、基準電圧をあらかじめ電荷蓄積する容量群をふたつ用意し、それを逐次比較制御回路10からの信号を元に、どちらか一方を比較器20の入力P側、他方を比較器20の入力N側に接続する、という構造上の明確な違いから上記のような優れた効果を生んでいる。
【0049】
より視覚的に違いを、
図19を用いて説明すると、従来技術では容量に蓄えられた基準電圧に対応する電荷を比較器20の入力(入力電圧を蓄えた容量と等価)に接続する際に、
図19上図のように、所定の極性または反対の極性で接続するのに対し、本発明では、容量に蓄えられた基準電圧に対応する電荷は、比較器20入力のどちらか一方にだけ接続している。さらに、寄生容量の影響をキャンセルするために、もう一つの、電荷を蓄積しない容量を用意し、もう一方の比較器20入力に接続している。基準電圧をあらかじめ電荷蓄積する際に、比較器20と接続する容量端子の電圧が同電位になるように制御していることを本発明では特徴としており、この特徴により寄生容量の影響がキャンセルされる。
【0050】
[第2の実施形態]
図20は、第2の実施形態に係る逐次比較AD変換器の構成の概要を示す図である。逐次比較AD変換器101は、電荷共有型の逐次比較AD変換器であり、逐次比較制御回路10と、比較器20と、アナログ入力信号にあらかじめ接続可能な第1の容量30と、基準電圧にあらかじめ接続可能な第2の容量群40および第3の容量群50と、を備える。第2の容量群40および第3の容量群50は、重みづけされた複数の容量素子で構成される。第1の容量30は比較器20の入力に接続される。
【0051】
逐次比較制御回路10は、逐次比較ステップ毎に比較器20の判定出力結果に基づいて、重みづけされた第2の容量群40および第3の容量群50のうちの一方を比較器20の入力P側に接続し、他方を比較器20の入力N側に接続するように順次逐次比較制御を行い、順次判定される比較器20の判定出力結果をデジタル出力信号とする。
【0052】
本実施形態の逐次比較AD変換器101は、第1の実施形態の逐次比較AD変換器100と比較して、アナログ入力信号がシングルエンド信号である点が異なっている。また、AD変換器のフルスケールレンジが、第1の実施形態の場合、-Vref~+Vrefであったのに対して、本実施形態では、0~+Vrefとしている。
【0053】
次に、
図20~
図22を用いて、逐次比較AD変換器101の回路動作を逐次比較ステップ毎に順次説明する。簡単のために、3bitの電荷共有型の逐次比較AD変換器101の動作例を示す。
【0054】
図20は、逐次比較動作前のサンプリングフェーズ時の状態を示す図である。
図20に示すように、本実施形態では、サンプリングフェーズ時には第1の容量30にスイッチ60を介してアナログ入力および基準電圧が接続され、アナログ電圧に対応した電荷と、基準電圧に対応した電荷とが蓄積される。ここで第2の容量群40および第3の容量群50に対する動作は第1の実施形態と同じであるので、説明は省略する。本実施形態では、基準電圧をあらかじめ電荷蓄積する際に、第2の容量群40には基準電圧差を電荷蓄積し、第3の容量群50には電荷蓄積しないことを特徴としている。
【0055】
より具体的には、アナログ入力電圧がVinで表されるシングルエンドの入力とすると、比較器20の入力P側と入力N側にそれぞれ接続された容量30にはそれぞれ、
Qp=-8CVref
Qn=-16CVin
の電荷が蓄積される。
【0056】
一方、第2の容量群40のうち重みづけが1番重い容量素子は、
Qref42=4CVref
が蓄積され、Cp1,Cp2には、
ΔQ1=Cp1・Vref
ΔQ2=Cp2・0=0
が蓄積される。
また、第3の容量群50のうち重みづけが1番重い容量素子は
Qref52=4C(Vref-Vref)=0
が蓄積される。つまり、実質的には本実施形態では容量群50には電荷蓄積されない。
Cp1,Cp2には、
ΔQ1=Cp1・Vref
ΔQ2=Cp2・Vref
が蓄積される。
【0057】
図21は、最上位ビット決定時の状態を示す図である。
図21に示すように、第1の容量30の比較器20と接続していない方の端子は、比較器20のコモン電圧となるべき電圧に接続される。
図21では一例としてグランドに接続している。基準電圧側の容量はアナログ入力電圧側の容量値に比べ、図のように半分の容量で構成している。
【0058】
このとき、比較器20の入力端子をそれぞれ、Vp,Vnとすると比較器20の差動入力電圧は
Vp-Vn=Vin-0.5Vref
となる。仮に、
Vin=0.6Vref
と仮定すると、比較器20の入力電圧は、
Vp-Vn=0.1Vref>0
となり、比較器20は“1”を出力し、最上位ビットは“1”と判定される。
【0059】
図22は、上位第2ビット目決定時の状態を示す図である。
図22に示すように、第2の容量群40のうち重みづけが1番重い容量素子は、最上位ビットが“1”なので比較器20の入力N側にスイッチ80を介して接続される。一方で、第3の容量群50のうち重みづけが1番重い容量素子は、最上位ビットが“1”なので比較器20の入力P側にスイッチ80を介して接続される。より具体的には、サンプリングフェーズで蓄積されたQ
ref42=4CV
refの電荷が比較器20の入力N側に、Q
ref52=0の電荷が比較器20の入力P側に、それぞれ付加される。
【0060】
したがって、比較器20の入力P側の電荷Qpの総和、および比較器20の入力N側の電荷Qnの総和は、
Qp=-8CVref+Cp1Vref
Qn=-16CVin+4CVref+Cp1Vref
となる。比較器20の入力電圧は、
Vp-Vn
=(16CVin-8CVref-4CVref+Cp1Vref-Cp1Vref)
/(20C+Cp1)
=16C/(20C+Cp1)・(Vin-0.75Vref)
となる。ここで、
Vin=0.6Vref
を仮定しているので、
Vp-Vn=16C/(20C+Cp1)・(0.6Vref-0.75Vref)<0
となり、比較器20は“0”を出力し、上位2ビット目は“0”と判定される。
【0061】
このように本実施形態においても、第2の容量群40および第3の容量群50に寄生する容量を加味したときに追加される項がキャンセルアウトされるため、従来技術に比べて、寄生容量によるAD変換器のリニアリティの劣化は生じない。上位3ビット目以降の動作については第1の実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0063】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0064】
10 逐次比較制御回路
20 比較器
30 第1の容量
40 第2の容量群
50 第3の容量群
60,70,80 スイッチ(切替え回路)
100,101 逐次比較AD変換器