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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】繊維強化複合材製フレーム
(51)【国際特許分類】
   B62D 29/04 20060101AFI20241219BHJP
   B60R 19/03 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B62D29/04 A
B60R19/03 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021045404
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144408
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】河村 力
(72)【発明者】
【氏名】児玉 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】西田 健二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】服部 公一
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-200702(JP,A)
【文献】特開2018-001890(JP,A)
【文献】特開平06-305377(JP,A)
【文献】特開2017-061170(JP,A)
【文献】特開2010-248330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0039574(US,A1)
【文献】特開2018-095006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
B60R 19/03
B32B 1/00-43/00
B29C 39/00-39/24,39/38-39/44,
43/00-43/34,43/44-43/48,
43/52-43/58
B29C 41/00-41/36,41/46-41/52,
70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角部を有する閉断面を構成するように所定方向に延設され、繊維強化複合材によって製造された繊維強化複合材製フレームにおいて、
前記フレームは、
前記フレームの長手方向に直交する短手方向に向けて前記フレームを曲げる曲げ荷重が当該フレームに入力されたときに前記長手方向に沿って圧縮応力が生じる圧縮面部と、
前記圧縮面部に隣接する前記角部から前記短手方向に延びる側面部と、
前記圧縮面部から離間した位置で前記長手方向に延び、前記曲げ荷重が前記フレームに入力されたときに前記長手方向に沿って引張応力が生じる引張面部と、
を備え、
前記圧縮面部は、第1繊維強化複合材を含み、前記引張面部は、前記第1繊維強化複合材よりも振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材を含み、
前記引張面部における振動の減衰の度合いを示す損失係数は、前記圧縮面部の損失係数に比べて0.005以上大きくなるように設定されている、
ことを特徴とする繊維強化複合材製フレーム。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維強化複合材製フレームにおいて、
前記圧縮面部は、前記第1繊維強化複合材で形成され、
前記引張面部は、前記第2繊維強化複合材で形成されている、
ことを特徴とする繊維強化複合材製フレーム。
【請求項3】
請求項1に記載の繊維強化複合材製フレームにおいて、
前記引張面部は、前記第1繊維強化複合材と前記第2繊維強化複合材とを重ね合わせることにより形成されている、
ことを特徴とする繊維強化複合材製フレーム。
【請求項4】
請求項3に記載の繊維強化複合材製フレームにおいて、
前記第2繊維強化複合材は、強化繊維に樹脂が含侵されたシート状のプリプレグで構成され、前記第1繊維強化複合材の表面に配置されている、
ことを特徴とする繊維強化複合材製フレーム。
【請求項5】
請求項1に記載の繊維強化複合材製フレームにおいて、
前記フレームは、
前記第1繊維強化複合材で構成された第1部材と、
前記第2繊維強化複合材で構成された第2部材とで構成され、
前記閉断面は、前記第1部材および前記第2部材によって形成され、
前記第1部材は、前記圧縮面部を含み、
前記第2部材は、前記引張面部を含む、
ことを特徴とする繊維強化複合材製フレーム。
【請求項6】
請求項5に記載の繊維強化複合材製フレームにおいて、
前記第1部材は、一対のつば部を備え、ハット形状の断面形状を有するハット材であり、
前記第2部材は、前記一対のつば部に接合されることにより前記閉断面を構成する板材である、
ことを特徴とする繊維強化複合材製フレーム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維強化複合材製フレームにおいて、
前記フレームが車両の車体を構成するセンターピラー、バンパービーム、サイドシル、ヒンジピラー、フロントピラー、およびクロスメンバからなる群から選択された少なくとも1つに適用される、
ことを特徴とする繊維強化複合材製フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材製フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の車体などを構成するフレームやフレーム補強用の部材などでは、軽量かつ高剛性の繊維強化複合材で製造されたフレームが用いられているが、近年では繊維強化複合材製フレームにおいても、振動減衰性能が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、繊維強化樹脂で構成された板材により軽量化と振動減衰を両立した車体補強構造が開示されている。この車体補強構造は、複数の繊維が組み込まれた繊維強化樹脂製の帯板材を介して補強された車体補強構造において、繊維強化樹脂内で複数の繊維が帯板材の長さ方向に延びるように配列され、帯板材の両端部が車体の車幅方向に離隔した1対の連結部に連結され、車体変形時、帯板材に捩りモーメントが作用するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-61170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1では、繊維強化樹脂製の帯板材の配置により軽量化と振動減衰の両立を図る構造は開示されているが、フレーム自体の曲げ強度と減衰性能とを両立させる構造については開示されていない。
【0006】
ここで、振動減衰性能を向上するためにフレーム全体を減衰性能が高い繊維強化複合材(いわゆる高減衰材料)で製造することが考えられる。しかし、高減衰材料は、減衰性能が要求されていない通常の繊維強化複合材と比較して柔らかい素材(低剛性の素材)であり、曲げ強度の向上が難しい。このように曲げ強度および振動減衰性能はトレードオフの関係にあるため、高減衰材料を曲げ強度と振動減衰性能の両方の向上が求められる部位に採用できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、曲げ強度および振動減衰性能の両立が可能な繊維強化複合材製フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の繊維強化複合材製フレームは、複数の角部を有する閉断面を構成するように所定方向に延設され、繊維強化複合材によって製造された繊維強化複合材製フレームにおいて、前記フレームは、前記フレームの長手方向に直交する短手方向に向けて前記フレームを曲げる曲げ荷重が当該フレームに入力されたときに前記長手方向に沿って圧縮応力が生じる圧縮面部と、前記圧縮面部に隣接する前記角部から前記短手方向に延びる側面部と、前記圧縮面部から離間した位置で前記長手方向に延び、前記曲げ荷重が前記フレームに入力されたときに前記長手方向に沿って引張応力が生じる引張面部と、を備え、前記圧縮面部は、第1繊維強化複合材を含み、前記引張面部は、前記第1繊維強化複合材よりも振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材を含み、前記引張面部における振動の減衰の度合いを示す損失係数は、前記圧縮面部の損失係数に比べて0.005以上大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成では、金属部材を用いて製造された従来の閉断面のフレームのように金属部材同士の損失係数の差が0.005未満である構造と比較して、金属部材同士では得られない高い振動減衰効果が得ることが可能である。また、フレームの曲げ荷重入力時に引張応力が生じる引張面部は圧縮面部や側面部と比較して相対的にフレームの曲げ強度への寄与度が低いので、引張面部の損失係数を上げて曲げ強度よりも振動減衰性能を向上させることを優先しても、フレーム全体の曲げ強度を確保することが可能である。その結果、フレームの曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0010】
上記の繊維強化複合材製フレームにおいて、前記圧縮面部は、前記第1繊維強化複合材で形成され、前記引張面部は、前記第2繊維強化複合材で形成されているのが好ましい。
【0011】
かかる構成では、フレームの曲げ強度への寄与度が高い圧縮面部が第1繊維強化複合材で形成されることにより曲げ強度を確保し、その一方で、フレームの曲げ強度への寄与度が低い引張面部が振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材で形成されることにより、振動減衰性能を向上する。これにより、フレームの曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。また、第1繊維強化複合材および第2繊維強化複合材の組成や厚さなどを適宜選択することにより、要求されるフレームの曲げ強度と振動減衰性能により近づけることが可能であり、フレームの設計面および製造面において有利である。
【0012】
上記の繊維強化複合材製フレームにおいて、前記引張面部は、前記第1繊維強化複合材と前記第2繊維強化複合材とを重ね合わせることにより形成されているのが好ましい。
【0013】
かかる構成では、引張面部が第1繊維強化複合材とそれよりも高い振動減衰性能を有する第2繊維強化複合材とを重ね合わせることにより形成されているので、簡単な構造でフレームの曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0014】
上記の繊維強化複合材製フレームにおいて、前記第2繊維強化複合材は、強化繊維に樹脂が含侵されたシート状のプリプレグで構成され、前記第1繊維強化複合材の表面に配置されているのが好ましい。
【0015】
かかる構成では、引張面部が第1繊維強化複合材の表面にシート状のプリプレグで構成された第2繊維強化複合材が配置されることにより構成されているので、より簡単な構造でフレームの曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0016】
上記の繊維強化複合材製フレームにおいて、前記フレームは、前記第1繊維強化複合材で構成された第1部材と、前記第2繊維強化複合材で構成された第2部材とで構成され、前記閉断面は、前記第1部材および前記第2部材によって形成され、前記第1部材は、前記圧縮面部を含み、前記第2部材は、前記引張面部を含むのが好ましい。
【0017】
かかる構成では、フレームは、第1繊維強化複合材で構成された第1部材と振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材で構成された第2部材とを組み合わせた簡単な構造である。しかも、第1部材が圧縮面部を含み、第2部材が引張面部を含むので、圧縮面部がフレームの曲げ強度へ寄与する一方で、引張面部が振動減衰性能を発揮することが可能である。これにより、簡単な構造でフレームの曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。また、第1部材および第2部材の形状、構造、組成を適宜選択することにより、要求されるフレームの曲げ強度と振動減衰性能により近づけることが可能であり、フレームの設計面および製造面において有利である。
【0018】
上記の繊維強化複合材製フレームにおいて、前記第1部材は、一対のつば部を備え、ハット形状の断面形状を有するハット材であり、前記第2部材は、前記一対のつば部に接合されることにより前記閉断面を構成する板材であるのが好ましい。
【0019】
かかる構成では、第2部材は、板材であり、ハット材や角形パイプなどのように稜線(断面における角部)が無いため、振動しやすい。したがって、第2部材に含まれる引張面部の振動をより促進させてフレームの振動減衰性能が向上することが可能である。
【0020】
上記の繊維強化複合材製フレームにおいて、前記フレームが車両の車体を構成するセンターピラー、バンパービーム、サイドシル、ヒンジピラー、フロントピラー、およびクロスメンバからなる群から選択された少なくとも1つに適用されるのが好ましい。
【0021】
上記のように、フレームが車両の車体を構成するセンターピラー、バンパービーム、サイドシル、ヒンジピラー、フロントピラー、およびクロスメンバのうちの少なくとも1つに適用されることにより、各メンバの曲げ強度および振動減衰性能の両立が可能である。したがって、車両走行時には各メンバによって振動を減衰し、車両衝突時においては曲げ荷重が入力されたときには曲げ荷重に耐えることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の繊維強化複合材製フレームによれば、曲げ強度および振動減衰性能の両立を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る繊維強化複合材製フレームの基本構造である角形パイプ状のフレームの全体構成を示す概略斜視図である。
図2図1の繊維強化複合材製フレームの断面図である。
図3図2の繊維強化複合材製フレームの積層構造を部分的に示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る繊維強化複合材製フレームとしてハット材と板材とを組み合わせたフレームの断面図である。
図5】本発明の実施例および比較例1~4のそれぞれのフレームの断面構造を概略的に示した説明図である。
図6】I:本実施例のフレーム、II:比較例1のフレーム、III:比較例2のフレームにおける曲げ荷重入力時の変位に対する曲げ荷重の変化を示すグラフである。
図7】IV:比較例3のフレーム、V:比較例4のフレームにおける曲げ荷重入力時の変位に対する曲げ荷重の変化を示すグラフである。
図8】I:本実施例のフレーム、II:比較例1のフレーム、III:比較例2のフレームにおける周波数とイナータンス(加速度/力)との関係を示すグラフである。
図9図8のグラフの一部拡大図である。
図10】IV:比較例3のフレーム、V:比較例4のフレームにおける周波数とイナータンスとの関係を示すグラフである。
図11】本発明の実施形態に係る繊維強化複合材製フレームが車両における車体各部の構成部材に適用された例を示す斜視説明図である。
図12】(a)、(b)は本発明の変形例の繊維強化複合材製フレームとして、第1繊維強化複合材で構成された第1アーチ部材と、振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材で構成された第2アーチ部材とを組み合わせたフレームの断面構造を示す断面説明図である。
図13】本発明の他の変形例として、引張面部が第1繊維強化複合材と第2繊維強化複合材とが積層されたフレームの断面構造を示す断面説明図である。
図14】本発明のさらに他の変形例として、第1繊維強化複合材で構成された角形パイプにおける引張面部に対応する部位の表面にシート状のプリプレグで構成された第2繊維強化複合材が配置されたフレームの断面構造を示す断面説明図である。
図15】本発明のさらに他の変形例として、第1繊維強化複合材で構成された圧縮面部を含む板材と、第1繊維強化複合材で構成された側面部および第2繊維強化複合材で構成された引張面部を含むハット材とを組み合わせたフレームの断面構造を示す断面説明図である。
図16】本発明のさらに他の変形例として、第1繊維強化複合材で構成された圧縮面部および側面部の一部を含む第1ハット材と、第1繊維強化複合材で構成された側面部の一部および第2繊維強化複合材で構成された引張面部を含む第2ハット材とを組み合わせたフレームの断面構造を示す断面説明図である。
図17】本発明のさらに他の変形例として、第2繊維強化複合材で構成された角形パイプにおける圧縮面部および側面部の一部に対応する部位の表面にシート状のプリプレグで構成された第1繊維強化複合材が配置されたフレームの断面構造を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0025】
図1~2には、本発明の実施形態に係る繊維強化複合材製フレームの基本構造である角形パイプ状の繊維強化複合材製フレーム1(以下、フレーム1と呼ぶ)が示されている。フレーム1は、複数の角部5を有する閉断面1bを構成するように所定方向(図1の長手方向D)に延設され、複数の繊維配向層(樹脂層)11~14(図3参照)が積層された繊維強化複合材で製造された高強度の部材である。フレーム1は、後述の車両の車体121(図11参照)などの各部を構成する部材などに用いられる。
【0026】
具体的には、フレーム1は、基本的な構成として、フレーム1の長手方向Dに延びる4つの面を構成する部分、すなわち、圧縮面部2と、圧縮面部2の幅方向両側に互いに離間する一対の側面部3と、圧縮面部2から対向した状態で離間する引張面部4とを備えている。
【0027】
これら圧縮面部2、一対の側面部3、および引張面部4によって、4つの角部5を有する矩形の閉断面1bが形成されている。角部5は、図2に示されるように直線状に面取りしてもよいし、または、円弧状に面取りしてもよい。
【0028】
圧縮面部2は、フレーム1の長手方向Dに直交する(すなわち、長手方向Dに90度傾斜した)短手方向Dに向けてフレーム1を曲げる曲げ荷重Fが当該フレーム1に入力されたときに長手方向Dに沿って圧縮応力σ1が生じる面を構成する部分である。すなわち、圧縮面部2は、曲げられたフレーム1における内側の湾曲面になる。
【0029】
ここで、曲げ荷重Fは、フレーム1の長手方向Dに直交する短手方向Dに向けてフレーム1を曲げる荷重であればよく、例えば、車両の車体121(図11参照)が外部の障害物(自動車や路上設置物等)に衝突したときに、図1に示されるように、フレーム1が両端支持された状態(例えば、図1の簡略化されたモデルではフレーム1が一対の支点Sで両端支持された状態)で圧縮面部2が圧縮荷重(衝突荷重)Fを短手方向D(すなわち、図1の圧縮面部2の法線方向)に向けて受けたときに生じる曲げ荷重が想定される。この場合、圧縮荷重Fは、フレーム1の圧縮面部2で受ける。
【0030】
または、曲げ荷重Fは、フレーム1の長手方向Dの端部1aから長手方向Dに向けて圧縮荷重(衝突荷重)を受けたときに生じる曲げ荷重なども想定される(例えば、図11の車体121の側部から障害物が衝突したときに受けるクロスメンバ126の曲げ荷重など)。この場合には、圧縮荷重は、フレーム1の端部1aで受ける。
【0031】
一対の側面部3のそれぞれは、圧縮面部2に隣接する一対の角部5から短手方向Dに延びる面(具体的には、曲げ荷重Fまたは圧縮荷重Fと平行な方向に延びる面)を構成する部分である。側面部3は、フレーム1が曲げ荷重Fを受けたときには、図1の中立軸Nよりも圧縮面部2に近い範囲では圧縮応力が生じ、中立軸Nよりも引張面部4に近い範囲では引張応力が生じる。一対の側面部3のそれぞれと圧縮面部2とによって角部5が形成される。
【0032】
引張面部4は、圧縮面部2から離間した位置で長手方向Dに延び、曲げ荷重Fがフレーム1に入力されたときに長手方向Dに沿って引張応力σ2が生じる面の部分である。すなわち、引張面部4は、曲げられたフレーム1における外側の湾曲面になる。引張面部4と一対の側面部3のそれぞれとによって角部5が形成される。
【0033】
これら圧縮面部2、一対の側面部3、および引張面部4は、それぞれ複数の繊維配向層、例えば、図3に示される長手方向配向層11、短手方向配向層12、+45度配向層13、および-45度配向層14が積層して成形された積層体によって形成される。
【0034】
具体的には、圧縮面部2、一対の側面部3、および引張面部4は、それぞれ、例えば、図3に示されるように、疑似等方性を有するように、同一の積層構成を有している。すなわち、各面部2~4は、疑似等方性を有するように、複数の繊維配向層(樹脂層)として、長手方向配向層11、短手方向配向層12、+45度配向層13、および-45度配向層14がほぼ均等の割合になるように積層されて成形された積層体によって構成されている。
【0035】
長手方向配向層11は、具体的には、図3に示されるように、基材11bと、フレーム1の長手方向Dと同一の方向D(すなわち、長手方向Dに対する傾斜角度が0度)に配向された強化繊維11aとによって構成されている。
【0036】
基材11b(12b、13b、14b)とは、オートクレーブ成形やプレス成型で用いられる、強化繊維11a(12a、13a、14a)と樹脂からなるシート状の基材や、RTM成形などで使われる強化繊維11aを仮止めした基材を指す。基材11bは、例えば、耐熱性、強度および加工性にすぐれた樹脂製材料などからなり、例えばエポキシ樹脂などの樹脂によって構成されている。強化繊維11aは、軽量かつ高強度の繊維材料によって構成され、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、スチール繊維などの繊維によって構成されている。とくに、炭素繊維は、軽量かつ高強度のいずれの点においてもすぐれているので好ましい。
【0037】
短手方向配向層12は、具体的には、図3に示されるように、基材12bと、フレーム1の短手方向D、すなわち、長手方向Dと直交する方向D(傾斜角度が90度)に配向された強化繊維12aとによって構成されている。短手方向配向層12の基材12bおよび強化繊維12aについても、上記の長手方向配向層11の基材11bおよび強化繊維11aと同様の材料が用いられるが、他の材料が用いられてもよい。
【0038】
+45度配向層13は、強化繊維13aが長手方向Dを基準として当該配向層13の面内方向で反時計方向に45度旋回した方向に配向された層である。同様に、-45度配向層14は、強化繊維14aが長手方向Dを基準として当該配向層14の面内方向で時計方向に45度(反時計方向を正方向とすれば-45度)旋回した方向に配向された層である。
【0039】
+45度配向層13は、具体的には、図3に示されるように、基材13bと、長手方向Dに対して+45度傾斜した方向Dに配向された強化繊維13aとによって構成されている。同様に、-45度配向層14は、具体的には、図3に示されるように、基材14bと、長手方向Dに対して-45度傾斜した方向Dに配向された強化繊維14aとによって構成されている。これらの基材13b、14bおよび強化繊維13a、14aについても、上記の長手方向配向層11の基材11bおよび強化繊維11aと同様の材料が用いられるが、他の材料が用いられてもよい。
【0040】
上記のように、本実施形態のフレーム1を構成する圧縮面部2、側面部3、および引張面部4のそれぞれは、繊維配向層(樹脂層)11~14を積層して成形された繊維強化複合材によって構成されている。
【0041】
本発明者らは、フレーム1を構成する4面のうち、圧縮面部2は、フレーム1の曲げ強度への寄与度が高く、引張面部4は、寄与度が低いことを実験により見出し、かかる知見に基づき、引張面部4について曲げ強度に優先して振動減衰性能を高めることによって、曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能なフレーム1を創作するに至った。
【0042】
すなわち、図2に示される本実施形態のフレーム1の基本構造は、上記のように、圧縮面部2、一対の側面部3、および引張面部4を備えた閉断面構造において、引張面部4の損失係数が圧縮面部2の損失係数に比べて0.005以上大きくなるように設定された構造を有する。
【0043】
具体的には、圧縮面部2は、第1繊維強化複合材6で形成されるとともに、引張面部4は、第1繊維強化複合材6よりも振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材7で形成されている。なお、図2のフレーム1は、圧縮面部2に次いでフレーム1の曲げ強度への寄与度が高い一対の側面部3も第1繊維強化複合材6で形成されている。
【0044】
例えば、圧縮面部2および側面部3を構成する第1繊維強化複合材6は、汎用CFRP(汎用炭素繊維強化樹脂)からなる。汎用CFRPの損失係数は0.013程度である。一方、引張面部4を構成する第2繊維強化複合材7は、高減衰CFRPからなる。高減衰CFRPの損失係数は0.021程度であり、スチールの損失係数(0.001程度)と比較して非常に高い。したがって、この場合、高減衰CFRP製の引張面部4の損失係数(0.021程度)は、汎用CFRP製の圧縮面部2の損失係数(0.013程度)に比べて0.005以上の値(0.008大きい値)である。なお、本明細書でいう損失係数は、材料固有の振動の内部減衰の度合いを示す指標を示す。
【0045】
このように、引張面部4の損失係数が圧縮面部2の損失係数に比べて0.005以上大きくなるように設定されているフレーム1の構成では、金属部材(例えば、損失係数0.001程度のスチール)を用いて製造された従来の閉断面1bのフレーム1のように金属部材同士の損失係数の差が0.005未満である構造と比較して、金属部材同士では得られない高い振動減衰効果が得ることが可能である。また、フレーム1の曲げ荷重F入力時に引張応力が生じる引張面部4は圧縮面部2や側面部3と比較して相対的にフレーム1の曲げ強度への寄与度が低いので、引張面部4の損失係数を上げて曲げ強度よりも振動減衰性能を向上させることを優先しても、フレーム1全体の曲げ強度を確保することが可能である。その結果、フレーム1の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0046】
また、上記の構成では、フレーム1の曲げ強度への寄与度が高い圧縮面部2が第1繊維強化複合材6で形成されることにより曲げ強度を確保し、その一方で、フレーム1の曲げ強度への寄与度が低い引張面部が振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材7で形成されることにより、振動減衰性能を向上する。これにより、フレーム1の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。また、第1繊維強化複合材6および第2繊維強化複合材7の組成や厚さなどを適宜選択することにより、要求されるフレーム1の曲げ強度と振動減衰性能により近づけることが可能であり、フレーム1の設計面および製造面において有利である。
【0047】
(実施例)
つぎに、図4に示される本実施形態のフレーム1の曲げ強度および振動減衰性能について比較例と対比しながら説明する。
【0048】
図4に示される本実施形態のフレーム1は、2つの部材、すなわち、ハット材8(第1部材)と板材9(第2部材)とで構成されている。フレーム1の閉断面1bは、ハット材8および板材9を組み合わせることによって形成されている。
【0049】
ハット材8は、一対のつば部10を備え、ハット形状の断面形状を有する部材である。ハット材8は、汎用CFRPからなる第1繊維強化複合材6で構成されている。ハット材8は、圧縮面部2および一対の側面部3を含む。一対のつば部10は、一対の側面部3の端部からハット材8の幅方向外側へ延びる。
【0050】
板材9は、一対のつば部10に接合されることにより閉断面1bを構成する平板状の部材である。板材9は、第1繊維強化複合材6よりも振動減衰性能が高い高減衰CFRPからなる第2繊維強化複合材7で構成されている。板材9は、引張面部4を含む。
【0051】
つぎに図5に示されるように、上記のように構成された図4に示されるフレーム1をI:実施例とした場合における4つの比較例1~4について説明する。
【0052】
図5に示される比較例1~4は、いずれもI:実施例のフレーム1と同様に、ハット材8および板材9を組み合わせた閉断面構造であり、ハット材8が圧縮面部2および一対の側面部3を含み、板材9が引張面部4を含む点で実施例のフレーム1と共通するが、ハット材8および板材9の材料が異なる。
【0053】
すなわち、図5に示されるように、II:比較例1のフレーム31では、ハット材8および板材9の両方が汎用CFRPからなる第1繊維強化複合材6で構成されている。
【0054】
III:比較例2のフレーム41は、ハット材8および板材9の両方が高減衰CFRPからなる第2繊維強化複合材7で構成されている。
【0055】
IV:比較例3のフレーム51では、ハット材8および板材9の両方が金属材料の一例としてスチール16で構成されている。
【0056】
V:比較例4のフレーム61では、ハット材8がスチール16で構成され、板材9が高減衰CFRPからなる第2繊維強化複合材7で構成されている。
【0057】
上記のI:実施例およびII~V:比較例1~4の各フレームについて、曲げ荷重入力時の変位に対する曲げ荷重の変化を調べた。その結果が図6~7のグラフで示されている。
【0058】
図6のグラフに示されるように、I:実施例(すなわち、汎用CFRP(第1繊維強化複合材6)製のハット材8および高減衰CFRP(第2繊維強化複合材7)製の板材9を備えたフレーム1)は、II:比較例1(すべて汎用CFRPで構成されているフレーム31)とほぼ同じ曲げ荷重の変化の様子が見られ、III:比較例2(すべて高減衰CFRPで構成されているフレーム41)よりも高い曲げ荷重に耐えることが可能であることが分かる。
【0059】
また、図7のグラフに示されるように、V:比較例4(スチール16製のハット材8および高減衰CFRP製の板材9を備えたフレーム61)についても、IV:比較例3(すべてスチール16で構成されているフレーム51)とほぼ同じ曲げ荷重の変化の様子が見られる。
【0060】
以上の図6~7のグラフの結果を見れば、圧縮面部2を含むハット材8が高強度の材料(汎用CFRPからなる第1繊維強化複合材6またはスチール16)で構成されていれば、引張面部4を含む板材9が上記の高強度の材料でなくても、フレームの曲げ強度を向上(具体的には、すべて高強度の材料で構成されたフレームと同程度までに向上)することが可能であることが分かる。
【0061】
つぎに、上記のI:実施例およびII~V比較例1~4の各フレームについて、異なる周波数の振動を入力した場合の周波数とイナータンス(加速度/力)との関係を調べた。その結果が図8~10のグラフで示されている。イナータンスは、入力される力に対する加速度の比を示し、振動減衰の程度を示す。
【0062】
図8~9のグラフに示されるように、I:実施例(汎用CFRP製のハット材8および高減衰CFRP製の板材9の構造)は、すべての周波数において、III:比較例2(すべて高減衰CFRPで構成されているフレーム41)とほぼ同じイナータンス(加速度/力)が見られ、II:比較例1(すべて汎用CFRPで構成されているフレーム31)よりも高い振動減衰性能を有することが分かる。
【0063】
また、図10のグラフに示されるように、V:比較例4(スチール16製のハット材8および高減衰CFRP製の板材9を備えたフレーム61)については、IV:比較例3(すべてスチール16で構成されているフレーム51)と比較して、ほとんどの周波数において、イナータンスが低くなっており、振動減衰性能が若干向上していることが分かる。なお、V:比較例の振動減衰効果は、IV:比較例3と比較した場合の質量低減効果および損失係数低減効果の両方から得られたものである。参考のために、IV:比較例3と比較した場合の質量低減効果のみから得られた振動減衰の様子は、曲線VIで示される。曲線VIは、曲線Vと比較して、イナータンスのピークが高くなることが分かる。
【0064】
上記のように構成された本実施例のフレーム1は、図4に示されるように、第1繊維強化複合材6で構成されたハット材8(第1部材)と振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材7で構成された板材9(第2部材)とを組み合わせた簡単な構造である。しかも、ハット材8(第1部材)が圧縮面部2を含み、板材9(第2部材)が引張面部4を含むので、圧縮面部2がフレーム1の曲げ強度へ寄与する一方で、引張面部4が振動減衰性能を発揮することが可能である。これにより、簡単な構造でフレーム1の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。また、第1部材および第2部材の形状、構造、組成を適宜選択することにより、要求されるフレーム1の曲げ強度と振動減衰性能により近づけることが可能であり、フレーム1の設計面および製造面において有利である。
【0065】
また、本実施例のフレーム1では、第1部材として、一対のつば部10を備え、ハット形状の断面形状を有するハット材8が用いられ、第2部材として、一対のつば部10に接合されることにより閉断面1bを構成する板材9が用いられる。したがって、第2部材を構成する板材9は、ハット材8や角形パイプなどのように稜線(断面における角部5)が無いため、振動しやすい。したがって、板材9に含まれる引張面部4の振動をより促進させてフレーム1の振動減衰性能が向上することが可能である。一方、第1部材を構成するハット材8は圧縮面部2の両側に角部5があるので、曲げ剛性が向上する。
【0066】
上記のように構成された本実施例のフレーム1は、車両衝突時などにおいて高い曲げ強度が要求される車両の車体121を構成する種々の部材、例えば、図11に示されるように、センターピラー120、バンパービーム122、サイドシル123、ヒンジピラー124、フロントピラー125、およびクロスメンバ126からなる群から選択された少なくとも1つに適用される。
【0067】
これらの群のうち、センターピラー120、バンパービーム122、サイドシル123、ヒンジピラー124、フロントピラー125に上記実施形態のフレームを適用する場合には、車体121の外側を向く面に圧縮面部2(すなわち、衝突荷重が入力される面)が配置されるようにすればよい。この場合、圧縮面部2および側面部3が汎用CFRPなどの第1繊維強化複合材6で形成され、引張面部4が高減衰CFRPなどの振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材7で形成されている。
【0068】
また、クロスメンバ126については、上面および下面のうちの一方に圧縮面部2が配置され、他方に引張面部4が配置されていればよい。
【0069】
ここで、センターピラー120は、車体121の側端のフロントドアとリヤドアとの間において上下方向に延びる部材である。バンパービーム122は、車体121の前端において車体121の幅方向に延び、バンパーを構成する部材である。サイドシル123は、車体121の車体121の側端下部において車体121の前後方向に延びる部材である。ヒンジピラー124は、車体121の側端前側において上下方向に延び、車体121におけるフロントドアがヒンジ結合される部材である。フロントピラー125は、車体121の前側でフロントガラスの両側において上方かつ後方(斜め後方)に向けて略円弧状に延びる部材である。クロスメンバ126は、車体121の床部において車体121の幅方向に延びる部材である。
【0070】
上記のように、フレーム1が車両の車体を構成するセンターピラー120、バンパービーム122、サイドシル123、ヒンジピラー124、フロントピラー125、およびクロスメンバ126のうちの少なくとも1つに適用されることにより、各メンバの曲げ強度および振動減衰性能の両立が可能である。したがって、車両走行時には各メンバによって振動を減衰し、車両衝突時においては曲げ荷重Fが入力されたときには曲げ荷重Fに耐えることが可能になる。
【0071】
(変形例)
本発明のフレーム1は、圧縮面部2、一対の側面部3、および引張面部4を備えた閉断面構造において、引張面部4の損失係数が圧縮面部2の損失係数に比べて0.005以上大きくなるように設定された構造を有していればよい。
【0072】
したがって、上記の構造を有していれば、上記の図1に示される角形パイプ状の基本構造および図4に示されるハット材8と板材9とを組み合わせた構造の他にも、種々の構造のフレームが本発明のフレームに含まれる。以下、図12~17を参照しながらフレームの変形例について説明する。
【0073】
(A)
図12(a)、(b)に示される本発明の変形例にかかるフレーム71は、U字断面形状を有する2つの部材、すなわち、第1アーチ部材72(第1部材)と第2アーチ部材73(第2部材)とが組み合わされた閉断面構造を有する。
【0074】
第1アーチ部材72は、汎用CFRPからなる第1繊維強化複合材6で構成され、圧縮面部2および一対の側面部3を含む。第2アーチ部材73は、高減衰CFRPからなる第2繊維強化複合材7で構成され、引張面部4を含む。
【0075】
第1アーチ部材72および第2アーチ部材73は、それぞれの両端部同士が重なり合って固着した重合部分74を形成することにより、1つの閉断面を形成する。なお、重合部分74は、第1アーチ部材72および第2アーチ部材73のうちいずれか一方が内側、他方が外側に配置していればよい。
【0076】
上記のように構成された図12(a)、(b)に示される変形例のフレーム71は、第1繊維強化複合材6で構成された第1アーチ部材72(第1部材)と振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材7で構成された第2アーチ部材73(第2部材)とを組み合わせた簡単な構造である。しかも、第1アーチ部材72(第1部材)が圧縮面部2を含み、第2アーチ部材73(第2部材)が引張面部4を含むので、圧縮面部2がフレーム1の曲げ強度へ寄与する一方で、引張面部4が振動減衰性能を発揮することが可能である。これにより、簡単な構造でフレーム71の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0077】
(B)
また、本発明の他の変形例として、図1の角形パイプ形状のフレーム1の引張面部4を、図13に示されるように、第1繊維強化複合材6と振動減衰性能が高い第2繊維強化複合材7とが重ね合わされた構造の一例として、当該第1繊維強化複合材6および第2繊維強化複合材7が積層された構造にしてもよい。
【0078】
この場合も、引張面部4は、第1繊維強化複合材6のみで構成された圧縮面部2よりも損失係数を0.005以上大きく設定することが可能である。例えば、引張面部4を、第1繊維強化複合材6を1層、第2繊維強化複合材7を2層以上積層させて構成することにより、引張面部4の損失係数を要求されるレベルまで調整すればよい。
【0079】
図13に示される変形例のフレーム1の構成では、引張面部4が第1繊維強化複合材6とそれよりも高い振動減衰性能を有する第2繊維強化複合材7とを積層させることにより形成されているので、簡単な構造でフレーム1の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0080】
(C)
また、本発明のさらに他の変形例として、図1の角形パイプ形状のフレーム1の引張面部4を、図14に示されるように、第1繊維強化複合材6で構成された角形パイプにおける引張面部4に対応する部位の表面にシート状のプリプレグで構成された第2繊維強化複合材7が配置された構造であってもよい。このようなシート状のプリプレグは、上記の角形パイプの引張面部4に対応する部位の外面に配置した後、例えば加熱硬化などの方法により、第1繊維強化複合材6の表面に固着すればよい。
【0081】
図14に示される変形例のフレーム1の構成では、引張面部4が第1繊維強化複合材6とそれよりも高い振動減衰性能を有する第2繊維強化複合材7とを重ね合わせることにより形成されているので、簡単な構造でフレーム1の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0082】
とくに、引張面部4が第1繊維強化複合材6の表面にシート状のプリプレグで構成された第2繊維強化複合材7が配置されることにより構成されているので、より簡単な構造でフレーム1の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0083】
(D)
また、本発明のさらに他の変形例として、図15に示されるような逆ハット形状のフレーム81であってもよい。図15に示されるフレーム81は、第1繊維強化複合材6で構成された圧縮面部2を含む板材82(第1部材)と、第1繊維強化複合材6で構成された一対の側面部3および第2繊維強化複合材7で構成された引張面部4を含むハット材83とを備えている。板材82がハット材83の一対のつば部84に接合されることにより、閉断面を構成する。
【0084】
上記の図15に示される逆ハット形状のフレーム81においても、簡単な構造でフレーム81の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0085】
(E)
また、本発明のさらに他の変形例として、図16に示されるフレーム91のように、2つのハット材92、93とを組み合わせた構造であってもよい。具体的には、第1繊維強化複合材6で構成された圧縮面部2および側面部3の一部(上半分)を含む第1ハット材92と、第1繊維強化複合材6で構成された側面部3の一部(下半分)および第2繊維強化複合材7で構成された引張面部4を含む第2ハット材93とを備えている。第1ハット材92のつば部94と第2ハット材93のつば部95が互いに接合されることにより、閉断面を構成する。
【0086】
上記の図16に示される2つのハット材92、93を組み合わせたフレーム91においても、簡単な構造でフレーム91の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0087】
(F)
また、本発明のさらに他の変形例として、図17に示されるフレーム101のように、第2繊維強化複合材7で構成された角形パイプにおける圧縮面部2および側面部3の一部に対応する部位の表面にシート状のプリプレグで構成された第1繊維強化複合材6が配置された構造であってもよい。
【0088】
このようなシート状のプリプレグは、上記の図14のフレーム1の場合と同様に、上記の角形パイプの圧縮面部2および側面部3の一部に対応する部位の外面に配置した後、例えば加熱硬化などの方法により、第2繊維強化複合材7の表面に固着すればよい。
【0089】
図17に示される変形例のフレーム101の構成では、圧縮面部2および側面部3の一部が第1繊維強化複合材6および第2繊維強化複合材7を重ね合わせることにより形成され、圧縮面部2の曲げ強度が向上する。これにより、簡単な構造でフレーム101の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【0090】
とくに、圧縮面部2が第2繊維強化複合材7の表面にシート状のプリプレグで構成された第1繊維強化複合材6が配置されることにより構成されているので、より簡単な構造でフレーム101の曲げ強度と振動減衰性能の両立が可能になる。
【符号の説明】
【0091】
1、71、81、91、101 繊維強化複合材製フレーム
2 圧縮面部
3 側面部
4 引張面部
5 角部
6 第1繊維強化複合材
7 第2繊維強化複合材
8 ハット材(第1部材)
9 板材(第2部材)
10 つば部
11a~14a 強化繊維
72 第1アーチ部材(第1部材)
73 第2アーチ部材(第2部材)
82 板材(第1部材)
83 ハット材(第2部材)
92 第1ハット材(第1部材)
93 第2ハット材(第2部材)
120 センターピラー
121 車体
122 バンパービーム
123 サイドシル
124 ヒンジピラー
125 フロントピラー
126 クロスメンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17