(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】配糖体化合物、アミダイト化合物、およびこれら化合物を用いたポリヌクレオチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07H 19/10 20060101AFI20241219BHJP
C07H 23/00 20060101ALI20241219BHJP
C07C 317/22 20060101ALI20241219BHJP
C07C 315/04 20060101ALI20241219BHJP
C07H 19/067 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241219BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20241219BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C07H19/10 CSP
C07H23/00
C07C317/22
C07C315/04
C07H19/067
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
A61K48/00
(21)【出願番号】P 2021554118
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032593
(87)【国際公開番号】W WO2021079617
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019192899
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大城 郁也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 竜也
(72)【発明者】
【氏名】井原 秀樹
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/159374(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/027843(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/064291(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
C07C
A61K
C12N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるアミダイト化合物。
【化1】
(式中、Rは、式:
【化2】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bは同時に水素原子を表すことはない。
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基又はベンジル基を表す。)で示される基を表し、
B
aは、
式:
【化3】
(式中、
R
4
は水素原子、メチル基、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はベンゾイル基を表し、
R
5
は水素原子、アセチル基、イソブチリル基又はベンゾイル基を表し、
R
6
は水素原子、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はイソブチリル基を表し、
R
7
は2-シアノエチル基を表し、
R
8
は水素原子、メチル基、ベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基又は4-メチルベンゾイル基を表し、
R
9
はジメチルアミノメチレン基を表す。)
のいずれかで示される基を表し、
G
1
は以下の基であり、
【化4】
(式中、R
1
、R
2
及びR
3
は同一又は相異なって、水素又はアルコキシ基を表す。)
G
2は
以下の基であり、
【化5】
そして、
G
3は同一又は相異なって、アルキル基を表す。)
【請求項2】
R
aがメチル基であり、そして、R
bが水素原子である、請求項1に記載のアミダイト化合物。
【請求項3】
R
a、R
bがともにメチル基である、請求項1に記載のアミダイト化合物。
【請求項4】
G
3がイソプロピル基である、請求項1~
3のいずれか一つに記載のアミダイト化合物。
【請求項5】
R
cがフェニル基又はトリル基である、請求項1~
4のいずれか一つに記載のアミダイト化合物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一つに記載のアミダイト化合物を固相合成反応に供する工程を含む、式(2):
【化6】
(式中、B
aは
、式:
【化7】
(式中、
R
4
は水素原子、メチル基、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はベンゾイル基を表し、
R
5
は水素原子、アセチル基、イソブチリル基又はベンゾイル基を表し、
R
6
は水素原子、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はイソブチリル基を表し、
R
7
は2-シアノエチル基を表し、
R
8
は水素原子、メチル基、ベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基又は4-メチルベンゾイル基を表し、
R
9
はジメチルアミノメチレン基を表す。)
のいずれかで示される基を表し、
Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、そして、
mは、正の整数を表す。)で示されるポリヌクレオチド骨格を含有する化合物の製造方法。
【請求項7】
式(3):
【化8】
(式中、B
a
、Xおよびmは請求項6に定義の通りであり、そして、
Rは同一又は相異なって、式:
【化9】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bが同時に水素原子を表すことはない。
R
cは、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基又はベンジル基を表す。)
で示される基を表す)
で示されるオリゴヌクレオチド骨格を有する化合物
を、テトラアルキルアンモニウムフルオライド
により処理して、式(2)で示されるポリヌクレオチド骨格を含有する化合物を得る工程を含む、請求項
6に記載の製造方法。
【請求項8】
R
aがメチル基であり、そしてR
bが水素原子である、請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
式(4)で示されるエーテル化合物。
【化10】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bが同時に水素原子を表すことはない。
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基もしくはベンジル基を表し、R
dはC1~C10アルキル又はフェニル基を表す。)
【請求項10】
R
aがメチル基であり、R
bが水素原子であり、そしてR
cがフェニル基又はトリル基である、請求項
9に記載のエーテル化合物。
【請求項11】
工程a:ハロゲン化剤及び酸存在下、溶媒中で、式(5):
【化11】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bが同時に水素原子を表すことはない。
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基又はベンジル基を表す。)
で示される2-ヒドロキシアルキルスルホンと、式(12):
【化12】
(式中、R
dは、
C1~C10アルキル又はフェニル基を表す。)
で示されるビスチオエーテル化合物とを反応させる工程、
を含む、式(4)
【化13】
(式中、R
a、R
b、R
cおよびR
dは前記定義のとおりである。)
で示されるエーテル化合物の製造方法。
【請求項12】
R
aがメチル基またはエチル基であり、R
bが水素原子であり、そしてR
cがフェニル基又はトリル基である、請求項1
1に記載の製造方法。
【請求項13】
R
aがメチル基であり、R
bが水素原子であり、そしてR
cがフェニル基又はトリル基である、請求項1
1に記載の製造方法。
【請求項14】
式(7):
【化14】
(式中、B
aは、
式:
【化15】
(式中、
R
4
は水素原子、メチル基、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はベンゾイル基を表し、
R
5
は水素原子、アセチル基、イソブチリル基又はベンゾイル基を表し、
R
6
は水素原子、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はイソブチリル基を表し、
R
7
は2-シアノエチル基を表し、
R
8
は水素原子、メチル基、ベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基又は4-メチルベンゾイル基を表し、
R
9
はジメチルアミノメチレン基を表す。)
のいずれかで示される基を表し、そして、
G
4は、
以下のG
4
-1またはG
4
-2:
【化16】
で示される基を表す)
で示される化合物を、ハロゲン化剤の存在下、式(4):
【化17】
(式中、R
a
およびR
b
は同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
a
およびR
b
が同時に水素原子を表すことはない。R
c
は、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基もしくはベンジル基を表し、R
dは、
C1~C10アルキル又はフェニル基を表す。)
で示される化合物と、反応させることを特徴とする、式(8):
【化18】
(式中、B
a、R
a、R
b、
R
c
およびG
4
は、前記定義の通りであ
る。)
で示される化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法で得た式(8)の化合物をさらに脱保護して、式(9):
【化19】
(式中、B
a、R
a、R
bおよびR
cは
、請求項1
4に定義の通りである。)
で示される化合物を得る工程、
式(9)の化合物の5’の水酸基を選択的に保護して、式(10):
【化20】
(式中、B
a、R
a、R
bおよびR
cは、前記定義の通りであり、そしてG
1は
以下の基である。
【化21】
(式中、R
1
、R
2
及びR
3
は同一又は相異なって、水素又はアルコキシ基を表す。))
で示される化合物を得る工程、
式(10)の化合物を、式(11):
【化22】
(式中、G
2は
以下の基であり、
【化23】
G
3は同一又は相異なってアルキル基を表す。)
で表されるホスホロジアミダイトと反応させる工程
を含む、請求項1に記載の式(1)の化合物の製造方法。
【請求項16】
式(8):
【化24】
(式中、B
a、R
a、R
b、R
c、G
4は
、請求項1
4に定義の通りである)
で示される化合物。
【請求項17】
式(9):
【化25】
(式中、B
a、R
a、R
bおよびR
cは、請求項1
4に定義の通りである。)
で示される化合物。
【請求項18】
式(10):
【化26】
(式中、B
a、R
a、R
b、R
cおよびG
1は、請求項1
5に定義の通りである。)
で示される化合物。
【請求項19】
請求項1に記載の式(1)のアミダイト化合物のRNAの製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、日本国特許出願2019-192899号(2019年10月23日出願)に基づくパリ条約上の優先権および利益を主張するものであり、ここに引用することによって、上記出願に記載された内容の全体が本明細書中に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、配糖体化合物、そのアミダイト化合物、およびこれら化合物を用いたポリヌクレオチドの製造方法に関する。更に、本発明は、上記配糖体化合物の中間体化合物および該中間体化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
RNAは、RNAプローブ、アンチセンスRNA、リボザイム、siRNA、アプタマーなどとして利用可能であり、有用な素材である。
【0004】
RNAは固相合成法などにより合成可能であり、固相合成法ではヌクレオシドのホスホロアミダイト(以下、「アミダイト」と称する)が原料として用いられる。このようなアミダイトの2’位の水酸基の保護基としては、例えば、TBDMS(t-ブチルジメチルシリル)、TOM(トリイソプロピルシリルオキシメチル)、ACE(ビス(2-アセトキシエトキシ)メチル)等が知られている。さらにアミダイトの2’位の水酸基の保護基として、特許文献1~4が開示する保護基が報告されているが、これらの保護基を有するアミダイトを使用するRNAの合成方法は、得られるRNAの収率や純度の点で必ずしも満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5157168号公報
【文献】特許第5554881号公報
【文献】国際公開第2007-064291号公報
【文献】国際公開第2013-027843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリヌクレオチドの収率および純度の向上が可能となるアミダイト化合物、及び該アミダイト化合物を用いたポリヌクレオチドの製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記アミダイト化合物の中間体となる配糖体化合物、及び上記配糖体化合物の中間体エーテル化合物の製造方法をも提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アミダイトの2’位の水酸基の保護基として、以下の基を使用することで高純度でのRNAの合成が可能となるという知見を得た。
【化1】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bは同時に水素原子を表すことはない。そして、
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基又はベンジル基を表す。)
【0008】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、以下の配糖体化合物、そのアミダイト化合物、および該アミダイト化合物を用いたポリヌクレオチドの製造方法、並びに該配糖体化合物の中間体としてのエーテル化合物、および該エーテル化合物の製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明は以下の項に記載する実施態様を含むが、これらに限定されるものではない。
項1. 式(1)で示されるアミダイト化合物(以下、「本発明のアミダイト化合物」と呼称する)。
【化2】
(式中、Rは、式:
【化3】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bは同時に水素原子を表すことはない。
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基又はベンジル基を表す。)で示される基を表し、
B
aは、保護されていてもよい核酸塩基骨格を有する基を表し、
G
1及びG
2は同一又は相異なって、水酸基の保護基を表し、そして、
G
3は同一又は相異なって、アルキル基を表す。)
項2. R
aがメチル基であり、そして、R
bが水素原子である、項1に記載のアミダイト化合物。
項3. R
a、R
bがともにメチル基である、項1に記載のアミダイト化合物。
項4. G
1が以下の基である、項1~3のいずれか一つに記載のアミダイト化合物。
【化4】
(式中、R
1、R
2及びR
3は同一又は相異なって、水素又はアルコキシ基を表す。)
項5. G
2が以下の基である、項1~4のいずれか一つに記載のアミダイト化合物。
【化5】
項6. G
3がイソプロピル基である、項1~5のいずれか一つに記載のアミダイト化合物。
項7. R
cがフェニル基又はトリル基である、項1~6のいずれか一つに記載のアミダイト化合物。
項8. 項1~7のいずれか一つに記載のアミダイト化合物を固相合成反応に供する工程を含む、式(2):
【化6】
(式中、B
aは同一又は相異なって、保護されていてもよい核酸塩基骨格を有する基を表し、
Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、そして、
mは、正の整数を表す。)で示されるポリヌクレオチド骨格を含有する化合物の製造方法。
項9. 式(2)のポリヌクレオチド骨格を含有する化合物が、前記アミダイト化合物を用いる固相合成反応で生成する、式(3):
【化7】
(式中、B
aは同一又は相異なって、保護されていてもよい核酸塩基骨格を有する基を表し、
Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、そして、
Rは同一又は相異なって、式:
【化8】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bが同時に水素原子を表すことはない。そして、
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基又はベンジル基を表す。)
で示される基を表す)
で示されるオリゴヌクレオチド骨格を有する化合物に、テトラアルキルアンモニウムフルオライドを反応させる工程で生成した化合物である、項8に記載の製造方法。
項10. R
aがメチル基であり、そしてR
bが水素原子である、項9に記載の製造方法。
項11. 式(4)で示されるエーテル化合物。
【化9】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bが同時に水素原子を表すことはない。
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基もしくはベンジル基を表し、R
dはC1~C10アルキル又はフェニル基を表す。)
項12. R
aがメチル基であり、R
bが水素原子であり、そしてR
cがフェニル基又はトリル基である、項11に記載のエーテル化合物。
項13. 工程a:ハロゲン化剤及び酸存在下、溶媒中で、式:
【化10】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bが同時に水素原子を表すことはない。そして、
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基又はベンジル基を表す。)
で示される2-ヒドロキシアルキルスルホンと、式(12):
【化11】
(式中、R
dは、前記項11に定義の通りである。)
で示されるビスチオエーテル化合物とを反応させる工程、
を含む、式(4)
【化12】
(式中、R
a、R
b、R
cおよびR
dは前記定義のとおりである。)
で示されるエーテル化合物の製造方法。
項14. R
aがメチル基またはエチル基であり、R
bが水素原子であり、そしてR
cがフェニル基又はトリル基である、項13に記載の製造方法。
項15. R
aがメチル基であり、R
bが水素原子であり、そしてR
cがフェニル基又はトリル基である、項13に記載の製造方法。
項16. 式(7):
【化13】
(式中、B
aは、保護されていてもよい核酸塩基骨格を有する化合物を表し、そして、G
4は、水酸基の保護基を表す。)
で示される化合物を、ハロゲン化剤の存在下、式(4):
【化14】
(式中、R
a、R
b、R
cおよびR
dは、前記請求項11に定義の通りである。)
で示される化合物と、反応させることを特徴とする、式(8):
【化15】
(式中、B
a、R
a、R
b、およびR
cは、前記定義の通りであり、そして、G
4は、水酸基の保護基を表す。)
で示される化合物の製造方法。
項17. 式(8)の化合物をさらに脱保護して、式(9):
【化16】
(式中、B
a、R
a、R
bおよびR
cは、前記項16に定義の通りである。)
で示される化合物を得る工程、
式(9)の化合物の5’の水酸基を選択的に保護して、式(10):
【化17】
(式中、B
a、R
a、R
b、R
cおよびG
1は、前記項17に定義の通りである。)
で示される化合物を得る工程、
式(10)の化合物を、式(11):
【化18】
(式中、G
2は水酸基の保護基を表し、G
3は同一又は相異なってアルキル基を表す。)
で表されるホスホロジアミダイトと反応させる工程、
を含む、項1に記載の式(1)の化合物の製造方法。
項18. G
4は、G4-1またはG4-2構造を有する、項17に記載の製造方法。
【化19】
項19. 式(8):
【化20】
(式中、B
a、R
a、R
b、R
c、G
4は、前記項16に定義の通りである)
で示される化合物。
項20. 式(9):
【化21】
(式中、B
a、R
a、R
bおよびR
cは、前記項16に定義の通りである。)
で示される化合物。
項21. 式(10):
【化22】
(式中、B
a、R
a、R
b、R
cおよびG
1は、前記項17に定義の通りである。)
で示される化合物(以下、「本発明の配糖体化合物」と呼称する)。
項22. 前記式(1)のアミダイト化合物のRNAの製造における使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配糖体化合物を使用することにより、アミダイト化合物を得ることができ、結果的に、固相合成法においてRNAの収率および純度の向上が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0013】
本発明のアミダイト化合物は、式(1)で表されることを特徴とする。
【化23】
(式中、Rは、
【化24】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bは同時に水素原子を表すことはない。
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基又はベンジル基を表す。)を表し、
B
aは、保護されていてもよい核酸塩基骨格を有する基を表し、
G
1及びG
2は同一又は相異なって、水酸基の保護基を表し、そして、
G
3は同一又は相異なって、アルキル基を表す。)
【0014】
Baにおける核酸塩基は、特に限定されない。当該核酸塩基としては、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミン、5-メチルシトシン、シュードウラシル、1-メチルシュードウラシルなどが挙げられる。また、核酸塩基は、置換基により置換されていてもよい。そのような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、シアノアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、アシルオキシメチル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシ基、シアノ基、およびニトロ基など、並びにそれらの2種類以上の置換基の組み合わせが挙げられる。
【0015】
核酸塩基が環外にアミノ基を有する場合、当該アミノ基の保護基としては、特に限定されず、公知の核酸化学で用いられる保護基を使用することができ、そのような保護基としては、例えば、メチル基、ベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、フェニルアセチル基、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、および(ジメチルアミノ)メチレン基など、並びにそれらの2種類以上の保護基の組み合わせが挙げられる。
【0016】
B
aは、より具体的には下記式
【化25】
(式中、
R
4は水素原子、メチル基、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はベンゾイル基を表し、
R
5は水素原子、アセチル基、イソブチリル基又はベンゾイル基を表し、
R
6は水素原子、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はイソブチリル基を表し、
R
7は2-シアノエチル基を表し、
R
8は水素原子、メチル基、ベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基又は4-メチルベンゾイル基を表し、
R
9はジメチルアミノメチレン基を表す。)
のいずれかで表される基を表す。
【0017】
G1としては、保護基として機能し得るものであれば特に制限なく使用することができ、アミダイト化合物で使用される公知の保護基を広く使用することができる。
【0018】
G
1としては、好ましくは、以下の基である。
【化26】
(式中、R
1、R
2及びR
3は同一又は相異なって水素又はアルコキシ基を表す。)
【0019】
R1、R2及びR3は、1つが水素であり、残りの2つがアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基が特に好ましい。
【0020】
G2としては、保護基として機能し得るものであれば特に制限なく使用することができ、アミダイト化合物で使用される公知の保護基を広く使用することができる。G2としては、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクリルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリルアルケニル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、シリル基、シリルオキシアルキル基、モノ、ジ又はトリアルキルシリル基、モノ、ジ又はトリアルキルシリルオキシアルキル基などが挙げられ、これらは1つ以上の電子求引基で置換されていてもよい。
【0021】
G2としては、好ましくは、電子求引基で置換されたアルキル基である。当該電子求引基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン、アリールスルホニル基、トリハロメチル基、トリアルキルアミノ基などが挙げられ、好ましくはシアノ基である。
【0022】
G
2としては、特に好ましくは、以下の基である。
【化27】
【0023】
G3は、2つのG3が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。G3としては、両方がイソプロピル基であることが好ましい。
【0024】
アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1~12のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロビル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、及びヘキシルが挙げられる。ここでのアルキル基には、アルコキシ基などのアルキル部分も含まれる。
【0025】
Raは、好ましくはメチルである。nは、好ましくは1~4の整数、より好ましくは1~3の整数、更に好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。
【0026】
また、本発明のアミダイト化合物は、フリーの状態又は塩の状態で使用することができる。本発明のアミダイト化合物の塩としては、特に制限されず、例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩;リジン、オルニチン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩及びアンモニウム塩が挙げられる。当該塩は、酸付加塩であってもよく、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;および、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。本発明のアミダイト化合物には、塩、水和物、溶媒和物、結晶多形なども含まれる。
【0027】
本発明のアミダイト化合物は、特許第5157168号公報、特許第5554881号公報などに記載された公知の方法や、後述する実施例に記載の方法に則して又は必要によりこれらの方法に適宜変更を加えた方法により製造することができる。
【0028】
また、本発明のアミダイト化合物の具体例としては、実施例に記載の下記に示す化合物が挙げられる。
【化28】
【0029】
本発明は、下記式(10)で示される配糖体化合物を包含する。
【化29】
(式中、各基の定義は、前記の通りである。)
【0030】
また、本発明の配糖体化合物の具体例としては、実施例に記載の下記に示す化合物が挙げられる。
【化30】
【0031】
本発明には、式(10)で示される配糖体化合物の製造中間体化合物も包含される。そのような中間体化合物としては、式(4)で示されるエーテル化合物が挙げられる。
【化31】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bが同時に水素原子を表すことはない。
R
cは、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基もしくはベンジル基を表し、R
dはC1~C10アルキル又はフェニル基を表す。)
【0032】
式(4)で示されるエーテル化合物は、下記反応式に示されるように、式(12)で示されるビスチオエーテル化合物(例えばビス(アルキルチオメチル)エーテルまたはビス(フェニルチオメチル)エーテル)と、3-ヒドロキシ-3-アルキルプロパンスルホンとを、ハロゲン化剤及び酸存在下、溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【化32】
式(12)のビスチオエーテル化合物は、例えば下式に示す通り、ビスクロロメチルエーテルまたはビス(アリールオキシメチル)エーテルと対応するアルキルメルカプタンまたはフェニルメルカプタンとを反応させることによって得ることができる。ビス(アリールオキシメチル)エーテルとしては例えば、ビス(2,4,6-トリクロロフェニルオキシメチル)エーテルが挙げられる。
【化33】
また、式(12)のビスチオエーテル化合物は、公知の製造方法(例えば、特許6459852号公報に記載の方法)に従って製造することもできる。
【0033】
式(4)のエーテル化合物の一例である式(6)の化合物を製造する工程aについて、説明する。
【0034】
工程aについて、以下説明する。
ハロゲン化剤としては、例えば、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド等のN-ハロゲン化スクシンイミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン等のN-ハロゲン化ヒダントイン、および塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン等、並びにこれらの2種類以上の組み合わせが挙げられる。本発明においては、N-ハロゲン化スクシンイミドが好ましく用いられ、N-ヨードスクシンイミドが更に好ましく用いられる。
【0035】
酸は、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにアルキルスルホン酸及びその塩、並びにこれらの2種類以上の組み合わせが挙げられる。塩としては、例えば、銅塩及び銀塩が挙げられる。酸としては、具体的には、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、およびトリフルオロメタンスルホン酸銀など、並びにこれらの2種類以上の組み合わせが挙げられる。本発明においては、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましく用いられる。
【0036】
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、ジクロロメタン、およびトルエンなど、並びにこれらの2種類以上の組み合わせが挙げられる。本発明においては、テトラヒドロフランが好ましく用いられる。
【0037】
式(5)の2-ヒドロキシアルキルスルホンの量は、式(12)のビスチオエーテル化合物に対して、通常0.5~2.0当量であり、好ましくは0.8~1.5当量である。ハロゲン化剤の量は、式(12)の化合物に対して、通常0.5~2当量であり、好ましくは0.7~1.2当量である。酸の量は、式(12)の化合物に対して、通常0.001~2.0当量であり、好ましくは0.01~0.1当量である。
【0038】
本反応の反応温度は、通常-80℃~0℃であり、好ましくは-50℃~-30℃である。本反応の反応時間は、通常1~24時間であり、好ましくは2~6時間である。
【0039】
反応の終了は例えば、反応マスの一部をサンプリングし、GC、TLC、LC等の分析法により確認することができる。反応終了後は、反応マスにトリエチルアミン等の塩基を加えて反応を停止させてもよい。反応マスを水に注加し、有機溶媒抽出、洗浄、濃縮等の通常の後処理操作に付すことにより、式(4)で示されるエーテル化合物を含む残渣を得ることができる。当該残渣を、蒸留やカラムクロマトグラフィー等の精製操作に付すことにより、高純度の式(4)で示されるエーテル化合物を得ることができる。
【0040】
前記態様において、好ましい化合物として、式(6):
【化34】
(式中、R
aは、メチル基またはエチル基であり、R
bは、水素原子であり、R
cはフェニル基又はトリル基である。より好ましくは、R
aは、メチル基であり、R
bは、水素原子であり、R
cはトリル基である。)
【0041】
本発明のアミダイト化合物は、固相合成法においてRNAを製造するための材料として使用することができる。本発明のアミダイト化合物を固相合成法において使用することで、高い純度でRNAを製造することが可能となる。
【0042】
本発明の下記式(2)で示されるポリヌクレオチド骨格を含有する化合物の製造方法は、上記のアミダイト化合物を用いて固相合成反応を行う工程を含むことを特徴とする。
【化35】
(式中、B
aは同一又は相異なって保護されていてもよい核酸塩基骨格を有する基を表し、
Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、そして、
mは正の整数を表す。)
【0043】
また、本発明の製造方法は、式(3)で示されるオリゴヌクレオチド骨格を有する化合物をテトラアルキルアンモニウムフルオライドにより処理して式(2)で示されるオリゴヌクレオチド骨格を有する化合物を得る工程を含むこともできる。
【化36】
(式中、B
aは同一又は相異なって保護されていてもよい核酸塩基骨格を有する基を表し、
Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、そして、
Rは同一又は相異なって、式:
【化37】
(式中、
R
aおよびR
bは同一又は相異なって、メチル基、エチル基又は水素原子を表す。ただしR
aおよびR
bは同時に水素原子を表すことはない。
R
cは、ハロゲン原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチル基で置換されてもよいフェニル基、C1~C10アルキル基又はベンジル基を表す。)
【0044】
式(2)及び(3)のBa及びmは、式(1)のものと同様である。
【0045】
mは、特に制限されず、好ましくは2~300の整数である。
【0046】
本発明において「ポリヌクレオチド骨格を含有する化合物」とは、少なくとも1つのRNAを含む化合物であって、好ましくはRNAのみからなる化合物を意味する。
【0047】
固相合成反応は、ホスホロアミダイト法などの公知の方法(例えば、特許第5157168号公報及び特許第5554881号公報に記載された方法)に従い実施することができる。また、市販されている核酸の自動合成装置等を用いて実施することができる。
【0048】
式(2)で示されるポリヌクレオチド骨格を含有する化合物の製造方法は、具体的には、(A)固相担体に担持した第1のアミダイト化合物の5’位の水酸基(例えば、式(1)のG1)を脱保護する工程、(B)工程(A)で生成した脱保護したアミダイト化合物を第2のアミダイト化合物と縮合させる工程、(C)工程(B)における未反応の化合物の5’位の水酸基をキャッピングする任意の工程、(D)(B)あるいは(C)で生成した縮合物の亜リン酸基をリン酸基又はチオリン酸基に変換する工程、(E)工程(D)で得られた化合物を固相担体から切り出し、2’位及び核酸塩基の水酸基を脱保護する工程、(F)5’位の水酸基を脱保護する工程などの工程を含む。(A)~(D)の工程を繰り返すことにより、所望の鎖長のポリヌクレオチド骨格を含有する化合物(例えば、式(3)の化合物)を製造することができる。
【0049】
式(3)で示されるオリゴヌクレオチド骨格を有する化合物を、好ましくはテトラアルキルアンモニウムフルオライドにより処理することにより、2’位の保護基が脱離され、式(2)で示されるオリゴヌクレオチド骨格を有する化合物を製造することができる。当該反応の反応条件(反応温度、反応時間、試薬の量など)は公知の方法に従った条件を採用することができる。
【0050】
本発明の製造方法で得られた式(2)で示されるオリゴヌクレオチド骨格を有する化合物は、必要により単離及び精製を行い得る。通常、RNAを沈殿、抽出及び精製する方法を用いることで、単離することができる。具体的には、反応後の溶液にエタノール、イソプロピルアルコールなどのRNAに対して溶解性の低い溶媒を加えることでRNAを沈殿させる方法や、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(例えば、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール=25/24/1)の溶液を反応溶液に加え、RNAを水層に抽出させる方法が採用される。その後、逆相カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティカラムクロマトグラフィー等の公知の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の手法などにより単離、精製することができる。
【0051】
本発明の製造方法により、従来より高純度でRNAを製造することが可能となる。
式(1)で示される本発明のアミダイト化合物、式(10)の本発明の配糖体化合物、および式(4)で表される本発明の中間体エーテル化合物の製造における反応条件は特に限定されない。式(4)で表される中間体エーテル化合物はフローリアクターを用いて合成することもできる。
本発明アミダイト化合物に含まれる不純物を削減する目的で、パラジウムなどの遷移金属触媒存在下、水素による還元工程あるいはマグネシウム等による還元工程を追加することもできる。
【0052】
式(5)で示される2-ヒドロキシアルキルスルホンは、下記の文献1~文献6を参考に、下記の製造ルートによっても合成することができる。
文献1 CHINESE JOURNAL OF CHEMISTRY 2003, 21, 917
文献2 SYNTHESIS 2012, 44, 3623
文献3 Chem. Commun., 2005, 5904
文献4 New J. Chem., 2009, 33, 972(パン酵母)
文献4 Adv. Synth. Catal. 2013, 355, 2860(NaBH
4還元)
文献4 WO 2017/223414 Al(接触水素添加)
文献5 Tetrahedron Asymmetry 2005, 16, 2157
文献6 特許6448867号公報(mCPBA)
文献6 Tetrahedron 2001, 57, 2469(過酸化水素、タングステン)
【化38】
【0053】
式(1)の化合物は、下記スキーム1の工程1、2、3および4により、式(7)の化合物から製造することができる。
式(7)の化合物において、B
aは、前記と同じ意味を表し、G
4は、典型的には、下記のG
4-1またはG
4-2構造を有する。
【化39】
これらの化合物は、市販品を購入することもできるし、例えば、Tetrahedron Letters, 2005, 46, 2961に記載の方法により製造することもできる。
【0054】
工程1(エーテル化工程)
エーテル化工程は、式(7)の化合物を式(4)の化合物と反応させて実施される。この反応は、通常、ハロゲン化剤を添加して実施される。この工程において用いるハロゲン化剤は、特に限定されないが、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド、ヨウ素、1,3-ジヨード-5、5‘-ジメチルヒダントイン、臭素および塩素からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0055】
この工程においては、酸を添加することも可能であり、用いる酸は特に限定されないが、ペルフルオロアルキルカルボン酸、ペルフルオロアルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0056】
この工程において用いる反応溶媒は、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジメトキシエタン、ジグリム、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、またはアセ卜ニトリル等のニトリル、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン等、並びにこれら溶媒の2種類以上の組み合わせが挙げられる。好ましい溶媒としては、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジメトキシエタン、ジグリム、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン等のエーテルが挙げられる。
【0057】
この工程において反応時聞は、特に限定されないが、例えば、10分~12時間、好ましくは10分~6時間である。
【0058】
この工程において反応温度は、特に限定されないが、例えば-80~30℃、好ましくは、-60~10℃である。
【0059】
この工程において前記式(4)で表されるエーテル化合物の濃度も、特に限定されず、適宜設定可能である。
【0060】
この工程において前記式(4)で表されるエーテル化合物のモル数は、式(7)で表される化合物のモル数に対し、例えば0.5~2倍、好ましくは0.8~1.5倍である。
【0061】
この工程において前記ハロゲン化剤のモル数は、式(7)で表される化合物のモル数に対し、例えば0.5~10倍、好ましくは0.8~6倍である。
【0062】
工程2(脱保護工程)
前記工程1で得られた式(8)の化合物は、脱保護反応に供して式(9)の化合物に変換される。脱保護工程は、公知の方法で実施できるが、典型的には、溶媒中、フッ化水素/トリエチルアミン、フッ化水素/ピリジン、またはトリエチルアミン三フッ化水素酸塩を作用させ、脱保護することができる。
【0063】
工程3(5’水酸基の保護工程)
前記工程で得られた式(9)の化合物は、保護工程に供され、保護基の導入は、公知の方法で実施できるが、典型的には、ピリジン中、化合物(9)に4,4’-ジメトキシトリチルクロリドを反応させて保護基が導入され、化合物(10)が製造される。
【0064】
工程4(アミダイト化工程)
この工程は前記工程で得られた式(10)の配糖体化合物に、式(11)の化合物を反応させることによって実施される。典型的には、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリドの存在下、式(11)の化合物として2-シアノエチル-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイトを反応させて行われる。アミダイト化は、特許第5554881号公報の実施例2~5に記載された方法に準じて行うことができる。
【化40】
以上説明のとおり、式(7)、(8)、(9)および(10)の化合物は、式(1)のアミダイト化合物の製造に使用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
本明細書中、以下の略号を使用する。
TPM=(1-(4-メチルベンゼンスルホニル)プロパン-2-イル)オキシ)メトキシ)メチル基、;A=アデニン、G=グアニン、C=シトシン、U=ウラシル。
【0066】
TPMアミダイトUの製造
製造例1
1)TPM化剤(TPMR)の製造
【化41】
ビス(メチルチオメチル)エーテル(5.9g、0.043mol)を無水テトラヒドロフラン(THF)(60mL)に溶解し、モレキュラーシーブス4A(5.9g)を加えて、混合物を10分間攪拌した。混合物を-50℃まで冷却後、N-ヨードスクシンイミド(NIS)(11.5g、1.19eq.)、次いでトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)(0.11mL、0.030eq.)を添加した。該混合物に1-(4-メチルベンゼンスルホニル)プロパン-2-オール (10g、1.09eq.) (ENAMINE Ltd.社製)のアセトニトリル(20mL)溶液を滴下し、混合物を-50~-45℃で4時間攪拌した。反応液にトリエチルアミン(4.0mL)を滴下後、-30~-20℃まで昇温し、次いであらかじめ氷浴で5~10℃に冷却したチオ硫酸ナトリウム5水和物(17.1g)、炭酸水素ナトリウム(6.0g)、および水(130mL)からなる溶液に、上記反応液を加えた。混合物に酢酸エチル(42mL)を加え、10~15℃で30分間攪拌後、混合液をセライト(5.9g)でろ過した。ろ液を分液後、有機層を20%食塩水(24mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム(3g)を用いて乾燥後、減圧下で溶媒を留去した(バス温度40℃)。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し(ヘキサン/酢酸エチル=3/1、シリカゲル207mL)、黄色油状物を3.1g得た。
GC/FIDにて純度分析を行った結果、純度は91%であった。
再度シリカゲルクロマトグラフィーによる精製を行い(ヘキサン/酢酸エチル=8/1、シリカゲル150mL)、純度98.2%のTPMR3.1gおよび純度97.8%のTPMR1.5gを得た。以降の反応には両者を混合して用いた。
1H-NMR (CDCl
3): δ7.79(d,2H)7.36(d,2H)4.76(s,2H)4.63(d,2H)4.27(m,1H)3.44(dd,1H)3.14(dd,1H)2.45(s,3H)2.13(s,3H)1.32(d,3H)
【0067】
製造例2
2)TPM-U-2の製造
【化42】
U-1(3.3g,6.78mmol)に無水トルエン(16.5mL,5vol/wt)を加え、混合物を3vol/wtまで減圧濃縮後、さらに無水トルエン(6.6mL,2.0vol/wt)を加え、混合物を3vol/wtまで減圧濃縮した。無水テトラヒドロフラン(6.6mL,2.0vol/wt)を加え、混合物を-55℃付近まで冷却後、そこにPMMR(3.09g,10.17mmol,1.5eq.)を滴下し、THF2mLで洗いこんだ。混合物に、NIS(2.06g,9.15mmol,1.35eq.)を添加し、-55~-45℃でTfOH (0.72mL,8.14mmol,1.2eq.)を滴下した。混合物を-55~-45℃で1時間撹拌後、氷浴を用いて冷却したチオ硫酸ナトリウム5水和物(3.3g)、炭酸水素ナトリウム(1.12g)、水(22mL)及びトルエンからなる混合液へ、該反応液を注加した。混合物を氷浴下にて30分間撹拌後、分液を行った。有機層にチオ硫酸ナトリウム5水和物(1.65g)と炭酸水素ナトリウム(0.6g)と水(11mL)からなる溶液を加え、混合物を室温にて15分間撹拌後、分液した。有機層を硫酸ナトリウム(1g)にて乾燥後、減圧下、濃縮乾固した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1、シリカゲル250mL)によって精製し、無色澄明ガラス状固体のTPM-U-2(5.3g)を得た。
【0068】
製造例3
3)TPM-U-3の製造
【化43】
TPM-U-2(5.3g,7.13mmol)をアセトン(10mL)に溶解後、トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(1.3mL,7.84mmol)を添加し、混合物を室温にて2時間撹拌した。反応液にメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)(53mL)を加え、混合物を30分間撹拌後、デカンテーションにてMTBE層を除去した。この操作を3回繰り返した後、残渣を減圧乾固して、白色アモルファス状のTPM-U-3(3.5g)を得た。
【0069】
製造例4
4)TPM-U-4の製造
【化44】
TPM-U-3(3.5g,7.00mmol)にピリジン(10.5mL,3vol/wt)を加え、共沸脱水を2回行った後、ピリジン(7.0mL,2vol/wt)、トルエン(17.5mL,5vol/wt)及びアセトニトリル(7.0mL, 2vol/wt)を加え、混合物を0℃付近まで冷却した。そこに4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(2.85g,8.40mmol,1.2eq.)を添加した。混合物を室温にて6時間撹拌後、メタノール(1.75mL.0.5vol/wt)を添加し、混合物を10分間撹拌した。炭酸水素ナトリウム(0.53g)と水(10.5mL)からなる溶液を加え、混合物を15分撹拌し、分液を行った(本操作をさらに1回繰り返した)。有機層に塩化ナトリウム(1.05g)と水(10.5mL)からなる溶液を加え、混合物を15分撹拌後、分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム(1g)にて乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(ヘキサン/酢酸エチル=1/1~酢酸エチルのみ、シリカゲル280mL)、白色アモルファス状のTPM-U-4を3.8g(収率:67%)得た。
【0070】
製造例5
5)TPM-U-5(TPMアミダイトU)の製造
【化45】
TPM-U-4(4.7g,5.85mmol)を無水アセトニトリル(47mL,10vol/wt)に溶解後、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(1.10g,6.56mmol,1.12eq.)とモレキュラーシーブス4A(0.94g,0.2wt/wt)を加え、混合物を室温にて30分間撹拌した。この溶液に2-シアノエチル-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(Phos reagent) (2.65g,8.78mmol,1.5eq.)を添加し、混合物をバス温45℃にて1.5時間撹拌した。混合物を室温まで放冷後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(ヘキサン/アセトン=2/1+5%ピリジン、シリカゲル380mL)、白色固体のTPMアミダイトUを4.75g得た。
31P-NMR (CDCl
3): δ151.89,151.86,150.87
【0071】
核酸の製造例
上記製造例5で作製したTPMアミダイトUを用いて、下記配列番号1の配列で示されるウリジン50量体を合成した。
5’-UUUUUUUUUU UUUUUUUUUU UUUUUUUUUU UUUUUUUUUU UUUUUUUUUU-3’(配列番号1)
(式中、Uはウリジンモノリン酸ナトリウム塩を意味する)
核酸合成機としてNTS M-4MX-E(日本テクノサービス株式会社製)を用いて3’側から5’側に向かって固相合成した。合成には固相担体として多孔質ガラスを使用し、デブロッキング溶液として高純度トリクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液としてフェノキシ酢酸溶液とN-メチルイミダゾール溶液とを使用して行った。
固相合成後のオリゴヌクレオチド粗生成物の純度の測定は、HPLCにより行った。粗生成物をHPLC(波長260nm、カラムACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18,2.1mm×100mm)によって各成分に分離し、得られたクロマトグラムの総面積値における主生成物の面積値からオリゴヌクレオチドの純度を算出した。
【0072】
(本発明の核酸の製造例)
製造例6
実施例5で調製したTPMアミダイトUを用いてウリジン50量体(分子量15246.53)を合成した結果、0.173μmolあたりのOD260は37.21ODであり、純度は53.5%であった。OD260の値から、1μmolあたりの収量は8603μg/μmolと算出された。
結果を下記表1に示す。
(OD260とは1mL溶液(pH=7.5)における10mm光路長あたりのUV260nmの吸光度である。一般的にRNAでは1OD=40μgであることが知られているから、吸光度よりRNAの生成量が算出できる。)
【0073】
(核酸の比較製造例)
比較例1
特許第5554881号公報の実施例2に記載されているウリジンEMMアミダイトを使用して、製造例6に記載の方法と同様に固相合成を行い、ウリジン50量体を製造した結果、0.228μmolあたりのOD
260は41.41ODであり、純度は44.1%であった。OD
260の値から、1μmolあたりの収量は7264μg/μmolと算出された。
結果を下記表1に示す。
【表1】
以上の表1に示すように、本発明で製造したアミダイトを用いた場合は、ウリジン50量体の純度の良好な結果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、アミダイトの2’位の水酸基の保護基として有用なスルホン基含有エーテル化合物、該スルホン基含有エーテル部を有するアミダイト化合物を提供する。本発明のアミダイト化合物は、高純度のオリゴ核酸の合成に適している。
【配列表フリーテキスト】
【0075】
配列表の配列番号1は、ウリジン50量体の塩基配列を示す。
【配列表】