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特許7607101オレフィンブロック共重合体ベースのホットメルト接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】オレフィンブロック共重合体ベースのホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/00 20060101AFI20241219BHJP
   C09J 191/06 20060101ALI20241219BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20241219BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09J153/00
C09J191/06
C09J11/08
C09J11/06
B32B7/12
B32B27/00 D
A61F13/539
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023179308
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2021569022の分割
【原出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2024012334
(43)【公開日】2024-01-30
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ミンルイ
(72)【発明者】
【氏名】リィ,ウェイイー
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-537477(JP,A)
【文献】特表2017-508022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0165455(US,A1)
【文献】特表2013-501099(JP,A)
【文献】特開2013-64055(JP,A)
【文献】特開2019-11422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 7/12,27/00
A61F 13/539
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤組成物の総重量に基づいて、
(A)メルトインデックスが10~35g/10分@190℃、2.16kgである、エチレンとオクテンのオレフィンブロック共重合体、12~30重量%;
(B)カルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性されたワックス、0.1~10重量%;
(C)粘着付与剤、50~70重量%;および
(D)油、10~35重量%;
を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
エチレンとオクテンのオレフィンブロック共重合体(A)は、10~30g/10分@190℃、2.16kgのメルトインデックスを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エチレンとオクテンのオレフィンブロック共重合体(A)は、15~30g/10分@190℃、2.16kgのメルトインデックスを有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ワックス(B)は、マレイン酸および/またはマレイン酸無水物で変性されたポリオレフィンワックスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ワックス(B)は、マレイン酸および/またはマレイン酸無水物で変性されたポリプロピレンワックス、またはマレイン酸および/またはマレイン酸無水物で変性されたポリエチレンワックスである、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ワックス(B)は、10mgKOH/g以上の酸価を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
(C)天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、水添テルペンのコポリマーの水添誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水添誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂の水添誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水添誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、および環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水添誘導体からなる群から選択される粘着付与剤をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
(D)パラフィン油、ナフテン油および芳香族油からなる群から選択される油をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
(E)酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選択される安定剤をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
フィラー、顔料、染料、およびレオロジー調整剤から選択される1つ以上の成分をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
第1の基材、第2の基材、およびそれらの間に挟まれた接着剤層を含む積層体であって、第1および第2の基材は、互いに独立して、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙、およびポリオレフィンから選択され、接着剤層は、請求項1~10のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤組成物によって形成されている、積層体。
【請求項12】
請求項11に記載の積層体を含む、または請求項1~10のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤組成物を用いて製造された、使い捨て物品。
【請求項13】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、ベッドパッド、包帯、手術用ドレープ、ペットシート、病院用ガウン、および手術用白衣からなる群から選択される、請求項12に記載の使い捨て物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ホットメルト接着剤組成物に関し、特に、使い捨て物品に使用されるオレフィンブロック共重合体ベースのホットメルト接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ホットメルト接着剤は、PEフィルム、疎水性不織布層、親水性不織布層、伸縮性のあるTPUフィルム、ティッシュ、綿などの複数の層で構成される、ベビー用紙おむつや女性用ナプキンなどの使い捨て用品に広く使用されている。この層はホットメルト接着剤で接着される。使い捨て物品は、通常、体液を吸収するためのコア部分を含んで構成され、コア部分は、親水性の基材を包材とし、その内側にフラフや高吸水性ポリマー(SAP)を配置していることが多い。コア部分は通常、体液に浸されているため、コア部分に使用される接着剤には、乾いた状態と濡れた状態の両方で高い接着力が求められる。また、層の剥離により体液が漏れてしまい、製品の品質に問題が生じることもある。そのため、今回使用するホットメルト接着剤は、高いウェットピール強度が非常に重要である。
【0003】
一般的に、ホットメルト接着剤は、官能化されたまたは非官能化されたポリオレフィン、またはスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)やスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)などのスチレン系ブロック共重合体などのポリマーをベースにしている。
【0004】
これまで使い捨て製品のホットメルト接着剤には、さまざまなオレフィン系ポリマーが使用されてきた。オレフィン系ポリマーの重要な一種に非晶質ポリオレフィン(APO)、例えば非晶質ポリプロピレン(APP)がある。その後、非晶質ポリαオレフィン(APAO)のように、当初のAPOポリマーよりもはるかに優れた特性を持つポリマーが入手可能となった。
【0005】
従来のAPOは、エチレン、プロペン、ブテン、より長い脂肪族鎖を持つモノエンのホモポリマーまたはコポリマーである。この場合、APOの分子構造は非常にランダムであるため、APOのグリーン強度、弾性、耐高温性などの物理的性能はあまり良くない。
【0006】
使い捨て製品に使用されるホットメルト接着剤では、スプレーの均一性も問題となる。接着剤をまず加熱して液状にした後、スプレーコートやスロットコートで基材に塗布する。スプレーノズルは、サミット、シグネチャー、スパイラル、カーテン、オメガなどの異なるスプレーパターンを作成するために特定の形状に設計できる。このスプレー工程では、ホットメルト接着剤が優れたスプレー均一性を持っていることが要求される。従来のポリオレフィンはスプレー均一性が低く、すなわち、スプレーパターンが本来あるべき均一性ないし規則性ではない。均一なスプレーパターンは、適切な接着効果を生み出すために非常に重要であり、時には悪いスプレーパターンが接着の失敗につながり、深刻な問題を引き起こすこともある。
【0007】
使い捨て製品に使用されるホットメルト接着剤は、適用範囲が広いことが望まれる。「適用範囲(アプリケーションウィンドウ)」は、ホットメルト接着剤が製造ラインでよく使われる様々な使用条件を意味する。使い捨て製品の場合、アプリケーションウィンドウとは、スプレー温度、空気圧、スプレーパターン、オープンタイム、セットタイム、グリーン強度などの条件を指す。ホットメルト接着剤は、機械のダウンタイムやスクラップを減らし、様々な作業条件に適した接着剤を作るために、上記の要件をすべて満たす幅広いアプリケーションウィンドウを持つことが非常に重要である。例えば、ベビー用紙おむつの製造ラインでは、ホットメルト接着剤をノズルから1枚目の基材にスプレー塗布した後、基材がコンベア上を10メートル前進するため、この位置の接着のためのオープンタイムとして2秒が必要となる。ホットメルト接着剤は、オープンタイム内に粘着性を維持する必要があるため、2秒後には第2の基材に接着できる。一方、ホットメルト接着剤は、作業位置によっては、ラミネート後に接着剤が瞬時に接着効果を発揮でき、位置ずれが起こらないように、グリーン強度に優れていることが望ましい。現代の使い捨て製品の高速製造ラインでは、毎分400~500メートルの速度で走行するため、一度ホットメルト接着剤がアプリケーションウィンドウに入らないと、ホットメルト接着剤の接着性能が連続生産の要件を満たせない可能性が非常に高い。使い捨ての衛生的なアプリケーションでは、従来のAPOベースのホットメルト接着剤では、これらの要件の1つ以上を満たすことができない。
【0008】
そのため、使い捨て製品に使用されるホットメルト接着剤の塗布性能を向上させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
上記の問題を解決するために、本発明の目的は、良好なグリーン強度、良好な臭気、良好なウェット接着力、および良好なスプレー均一性の1つ以上の特性を有し、好ましくは上記の特性をすべて有するホットメルト接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の成分:(A)メルトインデックスが10~35g/10分@190℃、2.16kg、好ましくは15~30g/10分@190℃、2.16kgであるエチレンとオクテンのオレフィンブロック共重合体、および(B)カルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性されたワックスを含有するホットメルト接着剤組成物により、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
本発明では、ワックス(B)は、マレイン酸および/またはマレイン酸無水物で変性されたポリオレフィンワックスであることが好ましい。
【0012】
本発明において、ワックス(B)は、好ましくは、マレイン酸および/または無水マレイン酸で変性されたポリプロピレンワックス、またはマレイン酸および/または無水マレイン酸で変性されたポリエチレンワックスである。
【0013】
本発明において、ワックス(B)は、好ましくは、酸価が10mgKOH/g以上、好ましくは15mgKOH/g以上である。
【0014】
本発明のホットメルト接着剤組成物の利点としては:
-乾いた状態でも湿った状態でも優れた接着力を発揮し、湿った状態でも漏れや剥がれがない。
-SBS/SIS/EVAベースのホットメルト接着剤と比較して、ここに記載されている成分を選択することで、低臭気であることが特徴である。
-使い捨ての衛生用品に使用されるホットメルト接着剤にとって非常に重要な、良好な弾力性、長いオープンタイム、優れたグリーン強度など、幅広い応用範囲を備えている。
-噴霧の均一性も良好である。
-従来のSIS/SBSベースのホットメルト接着剤と比較して、本発明の接着剤の接着強度はさらに高いため、ホットメルト接着剤の消費量を減らすためにコーティング重量を低くできる可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、例示的な実施形態の説明に過ぎず、本発明の広範な側面を限定するものではないことは、当業者であれば理解できるはずである。このように説明された各側面は、明確に反対の指示がない限り、他の側面や複数の側面と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の特徴または特徴と組み合わせることができる。
【0016】
特に指定のない限り、本発明の文脈では、使用されている用語は以下の定義に従って解釈される。
【0017】
特に指定のない限り、本明細書に記載されている全ての重量%値は、シアノアクリレート接着剤組成物の総重量を基準とした重量パーセントである。
【0018】
別段の定めがない限り、本明細書では、「a」、「an」および「the」という用語は、単数および複数の参照語を含む。
【0019】
本明細書で使用されている「comprising」および「comprises」という用語は、「including」、「include」または「containing」、「contains」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の非記載のメンバー、要素、またはプロセスステップを除外するものではない。
【0020】
特に明記しない限り、数値的な終点の記載には、記載された終点だけでなく、それぞれの範囲に含まれるすべての数字と分数が含まれる。
【0021】
本明細書中で引用されているすべての文献は、その全体が参照により組み込まれている。
【0022】
特に定義されていない限り、技術的および科学的な用語を含め、本発明で使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を持つ。
【0023】
本発明によれば、ホットメルト接着剤組成物は以下を含む:(A)エチレンとオクテンのオレフィンブロック共重合体であって、メルトインデックスが10~35g/10分@190℃、2.16kg、好ましくは15~30g/10分@190℃、2.16kgのもの、および、(B)カルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性されたワックス。
【0024】
(A)エチレンとオクテンのオレフィンブロック共重合体
本発明によるホットメルト接着剤の処方に使用される重要な成分は、オレフィンブロック共重合体(OBC)である。
【0025】
OBCは比較的新しいものであるが、当技術分野では知られている。OBCは、ジーグラー・ナッタや従来のメタロセン技術で製造されるランダムポリマーではなく、モノマーの直線的なブロック構造を生成するチェーン・シャトリング触媒技術を用いて製造される新しいクラスのポリオレフィンポリマーに属する。現在、主にDow Chemical社がInfuse(登録商標)という商品名で製造している。OBCは、コモノマー含有量が非常に少なく、融点が高い結晶化可能なエチレン・オクテンブロック(ハード)と、コモノマー含有量が多く、ガラス転移温度が低い非晶質のエチレン・オクテンブロック(ソフト)が交互に並んでいる。これにより、同密度の一般的なメタロセン・ランダムポリマーと比較して、はるかに優れた高温耐性と弾性が得られる。これらのポリマーとその合成および物理的特性の詳細は、例えば、WO2006/101966、WO2006/102016、WO2006/102150、WO2009/029476および米国特許第7,524,911号に記載されており、これらの開示内容は参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0026】
具体的には、本発明で有用なOBCは、エチレンとオクテンの重合単位を含んでなり、OBCは、ゼロより大きく約1.0までの平均ブロックインデックスと、約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn)を特徴とする。好ましくは、本発明で有用なOBCは、エチレンとオクテンの重合単位を含んでなり、平均ブロックインデックスが0を超えて約0.4未満であり、分子量分布Mw/Mnが約1.3を超えるものである。より好ましくは、本発明で有用なOBCは、少なくとも3つのブロックを有する直鎖状のマルチブロック共重合体である。より好ましくは、本発明で有用なOBCにおけるエチレン含有量は、少なくとも50モル%である。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明で有用なOBCの平均ブロックインデックスは、約0.1から約0.3、約0.4から約1.0、約0.3から約0.7、約0.6から約0.9、または約0.5から約0.7の範囲にある。他の実施形態では、OBCは約0.91g/cc未満、例えば約0.86g/ccから約0.91g/ccの密度を有している。他の実施形態では、分子量分布(Mw/Mn)は、約1.5超または約2.0超である。また、約2.0~約8、または約1.7~約3.5の範囲であってよい。
【0028】
好ましくは、本発明で有用なOBCは、昇温溶出分画(「TREF」)によって得られた少なくとも1つの画分を含み、この画分は、約0.3を超え、約1.0までのブロックインデックスを有し、本発明で有用なOBCは、約1.3を超える分子量分布、Mw/Mnを有する。好ましくは、本発明で有用なOBCは、エチレンおよびオクテンの重合単位を含んでなり、OBCは、TREFによって得られた少なくとも1つの画分を有することを特徴とし、この画分は、約0より大きく約0.4までのブロックインデックスを有し、OBCは、約1.3より大きい分子量分布、Mw/Mnを有する。いくつかの実施形態では、画分のブロックインデックスは、約0.4超、約0.5超、約0.6超、約0.7超、約0.8超、または約0.9超である。
【0029】
ここで使われている「ブロックインデックス」という用語は、WO2006/101966で定義されているのと同じ意味を持っている。
【0030】
好ましくは、本発明で有用なOBCは、1つまたは複数のハードセグメントと1つまたは複数のソフトセグメントを含んでなる。好ましくは、ハードセグメントは98重量%以上のエチレンを含み、ソフトセグメントは95重量%未満、好ましくは50重量%未満のエチレンを含む。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、OBCの重量に対して約5%から約85%の量で存在する。他の実施形態では、OBCは、直線的に接続された少なくとも5個または少なくとも10個のハードセグメントとソフトセグメントを含み、直鎖を形成している。好ましくは、ハードセグメントとソフトセグメントは、鎖に沿ってランダムに分布している。いくつかの実施形態では、ソフトセグメントとハードセグメントのいずれも、(残りのセグメントとは化学組成が異なる)チップセグメントを含まない。
【0031】
オレフィンブロック共重合体は、ポリマーの構造が完全に異なり(すなわち、ブロックとランダム)、結晶領域を持つように特別に製造されているため、非晶質のポリ-α-オレフィンと考えるべきではない。さらに、OBCは従来使用されてきたAPAOなどのオレフィンに比べて多分散性が著しく低いため、DSC(示差走査熱量計)で測定されるメルトプロファイルに影響を与える。
【0032】
オレフィンブロック共重合体(OBC)は、ハード(高剛性)とソフト(高弾性)のセグメントの交互ブロックを持つポリオレフィンである。OBCのブロック構造は、ランダムなポリオレフィン共重合体と比較して、柔軟性とスプレー性の性能バランスが優れている。本発明で有用なOBCは、Dow Chemical CompanyからInfuse(登録商標)9807、Infuse(登録商標)9817、Infuse(登録商標)9900という商標名で市販されている。
【0033】
本発明のホットメルト接着剤組成物において有用なエチレンとオクテンのオレフィンブロック共重合体は、好ましくはエチレンと1-オクテンのオレフィンブロック共重合体であり、より好ましくは、ASTM D1238に従って測定される10~35g/10分@190℃、2.16kgの範囲、例えば、ASTM D1238に従って測定される12、14、16、18、20、22、24、26、28、32、34g/10分@190℃、2.16kgのメルトインデックスを有している。メルトインデックスが上記の範囲外の場合、満足のいく効果が得られないことがある。
【0034】
好ましくは、本発明のホットメルト接着剤組成物に有用なエチレンとオクテンのオレフィンブロック共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される110℃~130℃、好ましくは、115℃~125℃の範囲、例えば118℃、120℃および122℃の融点を有する。
【0035】
接着剤組成物には、エチレンとオクテンの1種以上のオレフィンブロック共重合体が、それぞれ接着剤組成物の総重量を基準として、約5重量%~約30重量%、好ましくは約10%~約25%の量、例えば7%、9%、12%、15%、18%、20%、22%、27%、29%、32%、34%(重量)の量で配合されていてよい。
【0036】
(B)カルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性されたワックス
本発明に用いられるワックス(B)は、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性され、本発明の目的とするホットメルト接着剤が得られるものであれば、特に限定されない。
【0037】
ワックス(B)の例としては以下が挙げられる:
-ベースワックスにカルボン酸および/またはカルボン酸無水物をグラフト重合して得られるワックス、および
-重合によりワックスを合成する場合は、カルボン酸およびカルボン酸無水物を共重合して得られるワックス。
【0038】
カルボン酸および/またはカルボン酸無水物の官能基は、様々な反応を介してワックス(B)に導入できる。
【0039】
本発明に有用な「ベースワックス」は、ホットメルト接着剤に一般的に使用されるワックスであり、本発明の目的とするホットメルト接着剤が得られるものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)などの合成ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス、ヒマシワックスなどの天然ワックスなどが挙げられる。
【0040】
ベースワックスの改質に用いるカルボン酸および/またはカルボン酸無水物は、本発明の目的とするホットメルト接着剤が得られる限り、特に限定されない。その具体例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、無水コハク酸、フタル酸、無水フタル酸、グルタル酸、無水グルタル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。これらのカルボン酸および/またはカルボン酸無水物は、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。本発明では、マレイン酸および/またはマレイン酸無水物が特に好ましい。
【0041】
ベースワックスを改質するために、極性基(例えば、カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基)を導入できる様々なカルボン酸誘導体を使用することが可能である。ここで、「カルボン酸誘導体」には、以下のものが含まれる:
-酢酸エチル、酢酸ビニルなどのカルボン酸エステル類;
-臭化ベンゾイルなどの酸ハライド;
-ベンズアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類;
-サクシンイミドなどのイミド類;
-アセチルアジドのようなアシルアジド;
-プロパノイルヒドラジドなどのヒドラジド類;
-クロロアセチルヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸類;γ-ブチロラクトンなどのラクトン類;および
-δ-カプロラクタムなどのラクタム類。
【0042】
本発明のカルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性されたワックスは、好ましくはマレイン酸および/またはマレイン酸無水物で変性されたポリオレフィンワックスであり、特に好ましくはマレイン酸無水物で変性されたポリプロピレンワックスまたはマレイン酸無水物で変性されたポリエチレンワックスである。
【0043】
(B)カルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性されたワックスとしては、本発明において市販製品を使用することが可能である。その例としては、Clariant社のLicocene(登録商標)PPMA 6252およびPPMA 1332、Honeywell社のA-C 575PおよびA-C 597Pなどが挙げられる。
【0044】
好ましくは、本発明で有用な本発明のカルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性されたワックス(B)は、DIN EN ISO 2114に従って決定された、10mgKOH/g以上、好ましくは15mgKOH/g以上、例えば15、18、20、30、50、60、70、85、88、100mgKOH/gの酸価を有する。
【0045】
好ましくは、本発明で有用な本発明のカルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性されたワックス(B)は、ASTM D 3954に従って決定される、70℃~150℃の範囲、好ましくは80℃~140℃の範囲、例えば90℃、100℃、105℃、110℃、120℃、130℃の軟化点を有する。
【0046】
本発明のホットメルト接着剤は、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物で変性された1種または2種以上のワックスを含んでいてもよい。
【0047】
本発明において、ワックス(B)の配合量は、それぞれ接着剤の総重量を基準として、0.1~10重量%、好ましくは0.2~8重量%、例えば0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5重量%であることが好ましい。ワックス(B)を上記の量で配合することにより、得られたホットメルト接着剤は、湿潤接着性を発揮しながらも臭気が少ない。
【0048】
その他の成分
本発明の接着剤組成物は、上記成分(A)および成分(B)に加えて、(C)タッキファイヤー(粘着付与樹脂ともいう)をさらに含んでいてもよい。
【0049】
タッキファイヤー(C)は、接着剤組成物の総重量を基準として、30~80重量%、より好ましくは40~70重量%の範囲内、例えば50重量%、60重量%、65重量%の量で配合されることが好ましい。
【0050】
タッキファイヤーは、調製物に適合するものであれば、どのようなものでも配合してよい。タッキファイヤー(C)の例としては、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセリンエステル、変性ロジンのグリセリンエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンのターポリマー、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンの共重合体、天然テルペンのターポリマー、水添テルペンの共重合体の水添誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族系石油炭化水素樹脂、脂肪族系石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族系石油炭化水素樹脂、芳香族系石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族系石油炭化水素樹脂、環状脂肪族系石油炭化水素樹脂の水素化誘導体などが挙げられる。合成脂肪族タッキファイヤーがより好ましい。特に、完全に水素化された脂肪族タッキファイヤーがさらに好ましい。水添脂肪族C5やジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂は、SEBSやポリオレフィンと完全に適合性がある。これらのタッキファイヤーは、単独でも、組み合わせても使用できる。また、無色~淡黄色の色調で実質的に無臭であり、熱安定性も満足できるものであれば、液体タイプのタッキファイヤーを使用することも可能である。これらの特性を総合的に考慮すると、タッキファイヤーは樹脂の水素化誘導体であることが好ましく、特にジシクロペンタジエン系樹脂の水素化誘導体であることが好ましい。好ましくは、タッキファイヤーは、70℃から150℃のリングアンドボール(環球式)軟化点を有する。
【0051】
タッキファイヤー(C)として市販品を使用することも可能である。このような市販品の例としては、Eastman社のC100R/C100W/H130R/H130W、Henghe China社のH5-1000/1001、Kolon社のSU90/100/120/130、Arakawa社のI-Marv P90/P100/P120、Eastman社のRegalite R1100/R1120/S1100、Exxon社のEscorez 5300/5400、Tonen社のHA103、Luhua社のHD1100/1120、Ruisen社のPRS-5100/5120、Jin-hai社のJH-6100/6125などが挙げられる。これらの市販されているタッキファイヤー樹脂は、単独でも、組み合わせても使用できる。
【0052】
本発明のホットメルト接着剤は、さらに油(D)を含むことができる。油分(D)は、ホットメルト接着剤の溶融粘度やTgの低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ性向上を目的とした可塑剤として配合される。油(D)の例としては、パラフィン油、ナフテン油、芳香族油などの鉱物油が挙げられ、特にナフテン油、パラフィン油などの無色・無臭の油分が好ましい。
【0053】
油(D)として市販品を使用することも可能である。その例としては、中国石油天然ガス会社のLubricant CompanyのKN4006、KN4008、KN4010、韓国Kukdong社の白色鉱物油LP150、LP350、Nynas社のNyflex 222B、中国石油天然ガス会社のPS白色鉱物油などが挙げられる。これらの油(D)は、単独でも、組み合わせても使用できる。
【0054】
存在する場合、油(D)は、それぞれ接着剤組成物の総重量を基準にして、5~35重量%、より好ましくは8~30重量%の範囲内、例えば10重量%、15重量%、20重量%、25重量%の量で配合されることが好ましい。
【0055】
本発明のホットメルト接着剤は、さらに安定剤(E)を含むことができる。「安定剤」は、熱によるホットメルト接着剤の分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生を防止してホットメルト接着剤の安定性を向上させるように配合されるもので、本発明の目的とするホットメルト接着剤が得られる限り、安定剤には特に制限はない。本発明では、「安定剤」という用語は、酸化防止剤と紫外線吸収剤をカバーする。「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を向上させるために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防ぐために使用される。酸化防止剤および紫外線吸収剤は、使い捨て製品用のホットメルト接着剤に一般的に使用されているものであり、目的の使い捨て製品が得られる限り、特に制限なく使用できる。
【0056】
酸化防止剤の例としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などがある。また、ラクトン系の安定剤を添加することも可能である。これらの安定剤は、単独で使用することも、組み合わせて使用することもできる。
【0057】
安定剤は市販のものを使用することも可能である。その例としては、Everspring社のEvernox 10GF/1726、BASF社のIrganox 1010/1726、Rianlon社のThanox 1010G/1726が挙げられ;亜リン酸塩の市販グレードとしては、Everspring社のEverfos 168、BASF社のIrgafos 168、Rianlon社のThanox 168などが挙げられ;チオジプロピオン酸塩の市販グレードとしては、Rianlon社のThanox 412S/DSTP、Adeka社のADK AO 412S、Sumimoto社のSumilizer TP-Dなどが挙げられる。これらの安定剤は、単独で使用することも、組み合わせて使用することもできる。
【0058】
安定剤(E)は、本発明の接着剤組成物中に、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、例えば1重量%程度の量で含有できる。
【0059】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、フィラー、特に微粒子フィラーをさらに含むことができる。微粒子フィラーは、一般的に使用されているものを使用でき、本発明の目的とするホットメルト接着剤が得られる限り、特に制限はない。「微粒子フィラー」の例としては、マイカ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、珪藻土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、デンプンなどが挙げられる。これらの粒子は、好ましくは球形をしており、その大きさ(球形の場合は直径)には特に制限はない。
【0060】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、顔料、染料、レオロジー調整剤など、当技術分野で一般的に使用される他の添加剤をさらに含むことができる。
【0061】
本発明のホットメルト接着剤は、成分(A)、(B)およびその他の任意成分を配合し、140℃を超える高温下で混合物を溶融させた後、混合または均質化して均一な混合物を形成することにより製造できる。均質な接着剤混合物を調製するために、当技術分野で知られている任意の実行可能な混合方法または装置を採用できる。
【0062】
本発明によるホットメルト接着剤は、160℃における溶融粘度が5,000mPa.s以下であることが好ましく、2,000~3,500mPa.sであることが好ましく、2,500~3,200mPa.sであることが特に好ましい。「溶融粘度」とは、ホットメルト接着剤が溶融した状態の粘度で、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)で測定する。
【0063】
以上のように、本発明によるホットメルト接着剤は、濡れた状態での接着性に優れているため、使い捨て製品に採用できる。本発明によるホットメルト接着剤を、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙およびポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも1種類の部材に塗布することにより、使い捨て製品を構成できる。ポリオレフィンフィルムは、耐久性やコストなどの理由から、ポリエチレンフィルムであることが好ましい。
【0064】
使い捨て製品は、いわゆる衛生材料であれば特に制限はない。具体的には、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、ベッドパッド、包帯、手術用ドレープ、ペットシーツ、病院用ガウン、手術用白衣などが挙げられる。
【0065】
使い捨て製品の製造ラインでは、使い捨て製品の様々な部材(例えば、ティッシュ、コットン、不織布、ポリオレフィンフィルムなど)にホットメルト接着剤を塗布することが一般的に行われている。塗布の場合、ホットメルト接着剤は様々な吐出装置(または排出装置)から吐出(または排出)される。
【0066】
ホットメルト接着剤でコーティングする方法は、目的の使い捨て製品が得られるのであれば、特に制限はない。このような塗布方法は、接触塗布法と非接触塗布法に大別される。なお、ホットメルト接着剤を塗布する際に吐出装置を部材やフィルムに接触させる塗布方法を「接触塗布」といい、ホットメルト接着剤を塗布する際に吐出装置を部材やフィルムに接触させない塗布方法を「非接触塗布」という。接触塗布法の例としては、スロットコーター塗布法、ロールコーター塗布法などがあり、非接触塗布法の例としては、スパイラル状に塗布できるスパイラル塗布、波状に塗布できるオメガ塗布法やコントロールシーム塗布法、平面状に塗布できるスロットスプレー塗布やカーテンスプレー塗布法、ドット状に塗布できるドット塗布などがある。
【0067】
本発明の別の態様では、第1の基材、第2の基材、およびそれらの間に挟まれた接着剤層を含む積層体であって、第1および第2の基材が、互いに独立して、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙、およびポリオレフィンフィルムから選択され、接着剤層が、本発明によるホットメルト接着剤組成物によって形成されている積層体が提供される。
【0068】
本発明のさらに別の態様では、本発明の積層体を含む、または本発明のホットメルト接着剤を用いて製造された使い捨て物品が提供される。
【実施例
【0069】
実施例
以下の実施例は、当業者が本発明をよりよく理解し、実践するのに役立つことを意図している。本発明の範囲は、実施例によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義される。すべての部とパーセンテージは、特に明記されていない限り、重量に基づいている。
【0070】
原材料:
A1:インフューズ9807は、融点が118℃でメルトインデックスが15g/10分@190℃、2.16kgのエチレン/オクテンのOBCである。ダウから入手可能である。
A2:インフューズ9817は、融点120℃、メルトインデックス15g/10分@190℃、2.16kgのエチレン/オクテンのOBCである。ダウから入手可能である。
A3:Infuse 9900は、融点122℃、メルトインデックス30g/10分@190℃、2.16kgのエチレン/オクテンのOBCである。ダウから入手可能である。
A4’:Infuse 9507は、融点119℃、メルトインデックス5g/10分@190℃、2.16kgのエチレン/オクテンのOBCである。ダウから入手可能である。
A5’:Affinity 1950は、融点100℃、メルトインデックス500g/10分@190℃、2.16kgのメタロセン系の結晶性エチレン/オクテン共重合体である。ダウから入手可能である。
A6’:Vestoplast 704は、Evonik社から入手可能である融点105℃の非晶質プロピレン/ブテン系ポリオレフィン共重合体である。
A7’:L Modu S400は、軟化点93℃、溶融粘度8000cps@190℃のメタロセンプロピレン系ポリオレフィンである。出光から入手可能である。
A8’:Aerafin 17は、軟化点130℃、溶融粘度1700cps@190℃のプロピレン系オレフィンポリマーである。イーストマン社から入手可能である。
A9’:Vector 4113Nは、スチレン含有量15%、デブロック含有量18%の合成SISブロック共重合体である。TSRCから入手可能である。
【0071】
B1:PPMA 1332は、無水マレイン酸でグラフト化された合成ポリプロピレンワックスである。軟化点は80℃、酸価は17mgKOH/gである。Clariant社から入手可能である。
B2:PPMA 6252は、無水マレイン酸をグラフトした合成ポリプロピレンワックスである。軟化点は140℃、酸価は40mgKOH/gである。Clariant社から入手可能である。
B3:A-C575Pは、無水マレイン酸をグラフトした合成ポリエチレンワックスである。軟化点は106℃、酸価は35mgKOH/gである。ハネウェル社から入手可能である。
B4’:サゾールワックスH1は、サゾールワックス社から発売されている融点100℃のフィッシャー・トロプシュ・ワックスである。
【0072】
C1:SU100は、軟化点100℃の水添DCPD脂肪族石油系タッキファイヤーである。Kolon社から入手可能である。
【0073】
D1:LP 350は、韓国Kukdong社から入手可能な無色で粘性の鉱物油である。
【0074】
E1:Evernox 10GFは、Everspring社の酸化防止剤である。
E2:Everfos 168GFは、Everspring社の酸化防止剤である。
【0075】
テスト方法:

軟化点:
ホットメルト接着剤組成物の軟化点をASTM D 3954に基づいて測定した。
【0076】
臭い:
ホットメルト接着剤組成物の臭気スコアは、以下のステップで決定した:
a)ホットメルト接着剤組成物を密閉容器に入れる;
b)容器を160℃で2時間加熱する;
c)容器を25℃まで冷却する;
d)容器を70℃で1時間再加熱する;
e)容器を25℃まで冷却する;
f)容器を開けて、テストパネルのメンバーに、容器の開口部から5cm離れた場所で、容器からの匂いを嗅がせる;
g)テストパネルの各メンバーが、以下のルールに基づいて独立してホットメルト接着剤のスコアを割り当てる:
-臭いのないホットメルト接着剤の評価は1点とした;
-わずかに臭気が感じられるホットメルト接着剤は、2点と評価した;
-臭いはあるが強くはないホットメルト接着剤は、3点と評価した;
-臭いの強いホットメルト接着剤は、4点と評価した;
-刺激臭のあるホットメルト接着剤は、5点と評価した;および
h)テストパネル全員のホットメルト接着剤の平均点をホットメルト接着剤の臭気スコアとして取得する。
【0077】
臭気スコアが2.5を超えると、使用時に許容できないと判断される。
【0078】
グリーン強度:
30ミクロン厚さの接着剤を50ミクロンのPETフィルムにフィルムコーターで塗布した(離型フィルムでラミネート)。それを室温で24時間放置した後、幅1インチ、長さ5インチにカットし、その粘着フィルムを別の50ミクロンのPETフィルムに160℃、圧力0.5MPa、プレス時間5秒でホットプレスした。その後、サンプルを引張試験機に運び、すぐに剥離強度を測定した。ホットプレス後、15秒以内にテストを開始した。引張試験は、環境ボックスを用いて50℃の環境下で行った。
-剥離強度が3N超であれば良好と判断した;
-剥離強度が1.5N~3Nのものを中程度と判断した;
-剥離強度が1.5N未満の場合は不良と判断した。
【0079】
スプレー均一性:
ホットメルト接着剤を160℃で溶融し、基材にサミットスプレーし、そのスプレーパターンを目視で観察し、サミットパターンが均一なものを良好、不均一なものを不良とした。
【0080】
サミットスプレーによる剥離強度:
PEシート(Foshan Landi製の厚さ18gsmの空気透過性キャストフィルム)とティッシュ(Zhongzhi製の厚さ18gsmのセルロースティッシュ)を接着し、サミットノズルヘッドを介してホットメルト接着剤を2枚のシートの間に塗布して積層体サンプルを形成した。インストロン3365引張強度試験機を用いて、PEシートとティッシュを180°の角度で300mm/分の速度で剥離した(ウェットピールの場合は、さらにサンプルを3分間水に浸してから取り出して試験する)。T字剥離試験は、25℃および50%の相対湿度で実施した。ホットメルト接着剤を塗布してから72時間以上経過した積層体サンプルにT字剥離試験を行った。PEシートとティッシュを10cm引き離し、その力をPEとティッシュのホットメルト接着剤のTピール強度として記録した。
【0081】
コットンNWについても、同様の手順でドライピール強度とウェットピール強度を測定した。
【0082】
実施例1~7および比較例1~7
表1に示す量(重量部)の成分を用いて、当技術分野における従来の方法で接着剤を調製し、上記の方法で特性を試験した。その結果を表1に示す。
【0083】
【表1-1】
【0084】
【表1-2】
【0085】
表1からわかるように、本発明の接着剤(実施例1~7)は、良好なグリーン強度、良好な臭い、良好なウェット接着力、良好なスプレー均一性を示した。
【0086】
比較例1~2(CE.1およびCE.2)はMAグラフトワックスを使用せず、比較例3~5および7(CE.3~CE.5およびCE.7)はOBCを使用せず、比較例6(CE.6)はMAグラフトワックスとMIが10~35g/10分@190℃、2.16kgの範囲外のOBCを使用したため、いずれも本発明の接着剤と比較して1つ以上の不満足な特性を示した。
【0087】
いくつかの好ましい実施形態を説明してきたが、上記の教示に照らして、多くの修正や変形を行うことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されている以外の方法で実施できることを理解していただきたい。