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特許7607180金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/48 20060101AFI20241219BHJP
   C01B 17/64 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C25D3/48
C01B17/64 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2024542423
(86)(22)【出願日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2024025607
【審査請求日】2024-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】有本 佐
(72)【発明者】
【氏名】今井 順一
(72)【発明者】
【氏名】山田 登士
(72)【発明者】
【氏名】岩野 卓司
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/098789(WO,A1)
【文献】特表2017-527700(JP,A)
【文献】特開2013-224496(JP,A)
【文献】特開2016-117946(JP,A)
【文献】特表2020-521060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00 - 3/66
C01B 15/00 - 23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硫酸金ナトリウムと、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンと、を含むめっき液を用いて金めっきを行うめっき工程を含み、
前記めっき液は、
金を0.50g/L以上20.0g/L以下含み、
チオ硫酸イオンを0.03mg/L以上3.55mg/L以下含み、
三チオン酸イオンを0.13mg/L以上2.19mg/L以下含み、
チオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとを、合計量で0.20mg/L以上3.68mg/L以下含む金めっき方法。
【請求項2】
前記めっき液は、タリウムイオンを更に含む請求項1に記載の金めっき方法。
【請求項3】
前記めっき液のpHは7.0以上9.0以下である請求項1又は2に記載の金めっき方法。
【請求項4】
金水酸化物を亜硫酸化して前記めっき液を調製する亜硫酸化工程を更に含む、請求項1に記載の金めっき方法。
【請求項5】
亜硫酸塩を加温処理して亜硫酸塩とチオ硫酸塩及び三チオン酸塩のうちの少なくとも一つとを含む第一組成物を得る第一加温処理工程を更に含み、
前記亜硫酸化工程では、前記第一組成物を用いて前記金水酸化物を亜硫酸化する請求項4に記載の金めっき方法。
【請求項6】
前記第一組成物は、チオ硫酸塩及び三チオン酸塩を含む請求項5に記載の金めっき方法。
【請求項7】
重亜硫酸塩を加温処理して重亜硫酸塩とチオ硫酸塩及び三チオン酸塩のうちの少なくとも一つとを含む第二組成物を得る第二加温処理工程を更に含み、
前記亜硫酸化工程では、前記第二組成物を用いて前記金水酸化物を亜硫酸化する請求項4に記載の金めっき方法。
【請求項8】
前記第二組成物は、チオ硫酸塩及び三チオン酸塩を含む請求項7に記載の金めっき方法。
【請求項9】
前記めっき液は、金を9g/L以上11g/L以下含む請求項1又は2に記載の金めっき方法。
【請求項10】
前記めっき液の比重は、0.2Bh以上33.3Bh以下である請求項1又は2に記載の金めっき方法。
【請求項11】
金として0.50g/L以上20.0g/L以下の亜硫酸金ナトリウムと、
0.03mg/L以上3.55mg/L以下のチオ硫酸イオンと、
0.13mg/L以上2.19mg/L以下の三チオン酸イオンと、を含み、
チオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとの合計量は、0.20mg/L以上3.68mg/L以下である金めっき用組成物。
【請求項12】
タリウムイオンを更に含む請求項11に記載の金めっき用組成物。
【請求項13】
pHが7.0以上9.0以下である請求項11又は12に記載の金めっき用組成物。
【請求項14】
金として9g/L以上11g/L以下の亜硫酸金ナトリウムを含む請求項11又は12に記載の金めっき用組成物。
【請求項15】
比重が0.2Bh以上33.3Bh以下である請求項11又は12に記載の金めっき用組成物。
【請求項16】
金として0.50g/L以上20.0g/L以下の亜硫酸金ナトリウムと、
0.03mg/L以上3.55mg/L以下のチオ硫酸イオンと、
0.13mg/L以上2.19mg/L以下の三チオン酸イオンと、を含み、
チオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとの合計量は、0.20mg/L以上3.68mg/L以下である金めっき用めっき液。
【請求項17】
タリウムイオンを更に含む請求項16に記載の金めっき用めっき液。
【請求項18】
pHが7.0以上9.0以下である請求項16又は17に記載の金めっき用めっき液。
【請求項19】
金として9g/L以上11g/L以下の亜硫酸金ナトリウムを含む請求項16又は17に記載の金めっき用めっき液。
【請求項20】
比重が0.2Bh以上33.3Bh以下である請求項16又は17に記載の金めっき用めっき液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006-322037号公報(特許文献1)には、金めっき液が開示されている。この金めっき液は、金濃度5~20g/Lの亜硫酸金ナトリウム又はそのエチレンジアミン錯体と、10~100g/Lの亜硫酸ナトリウムと、タリウム濃度1~50ppmのタリウム化合物とを含有する金めっき液において、亜硫酸カリウムを0.1~50g/L含有する。このめっき液では、バンプ形成に好適な金めっき処理が行えるとされている。特許文献1には、半導体の電気素子等におけるバンプの形成においては電気的な接合を確保すべく金めっき処理が多く利用されており、良好な接合特性を実現するためには熱処理後の硬度があまり高くない金めっきであることが要求されることが開示されている。
【0003】
特開2000-319016号公報(特許文献2)には、亜硫酸金ナトリウム溶液の製造方法が開示されている。この製造方法は、(a)Na(AuCl)を水酸化ナトリウムおよび水酸化バリウムと反応させ、金酸バリウムと付加的な副生物を生成するステップと、(b)金酸バリウムの水溶液と亜硫酸ナトリウムを反応させ、亜硫酸金ナトリウムと付加的な副生物を生成するステップと、(c)亜硫酸金ナトリウム溶液を回収するステップとからなる方法により溶液状の亜硫酸金ナトリウム生成することができる。特許文献2には、この亜硫酸金ナトリウム溶液は金電気メッキ浴で使用するのに有用であり、純粋で軟質な金メッキ膜を必要とする用途で使用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-322037号公報
【文献】特開2000-319016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示されるように、電気素子のような用途の金めっきとして、硬度が高くないもの、すなわち、軟質なものが望まれる場合がある。
【0006】
本開示は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、軟質な金めっきを実現する金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本開示に係る金めっき方法は、
亜硫酸金塩と、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンのうちの少なくとも一つと、を含むめっき液を用いて金めっきを行う。
【0008】
上記目的を達成するための本開示に係る金めっき用組成物は、
亜硫酸金塩と、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンのうちの少なくとも一つと、を含む。
【0009】
上記目的を達成するための本開示に係る金めっき用組成物は、
亜硫酸塩とチオ硫酸塩及び三チオン酸塩のうちの少なくとも一つとを含む。
【0010】
上記目的を達成するための本開示に係る金めっき用組成物は、
重亜硫酸塩とチオ硫酸塩及び三チオン酸塩のうちの少なくとも一つとを含む。
【0011】
上記目的を達成するための本開示に係る金めっき用めっき液は、
亜硫酸金塩と、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンのうちの少なくとも一つと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、軟質な金めっきを実現する金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態に係る金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液について説明する。
【0014】
本実施形態に係るめっき方法は、亜硫酸金塩と、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンのうちの少なくとも一つと、を含むめっき液を用いて金めっきを行う。
【0015】
本実施形態に係る金めっき用組成物は、亜硫酸金塩と、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンのうちの少なくとも一つと、を含む。
【0016】
本実施形態に係る金めっき用組成物は、亜硫酸塩とチオ硫酸塩及び三チオン酸塩のうちの少なくとも一つとを含む。
【0017】
本実施形態に係る金めっき用組成物は、重亜硫酸塩とチオ硫酸塩及び三チオン酸塩のうちの少なくとも一つとを含む。
【0018】
本実施形態に係る金めっき用めっき液(以下、単にめっき液と称する場合がある)は、亜硫酸塩と、チオ硫酸塩及び三チオン酸塩のうちの少なくとも一つと、を含む。
【0019】
本実施形態に係るめっき方法によれば、軟質な金めっきを実現することができる。本実施形態に係る金めっき用組成物及び本実施形態に係るめっき液によれば、本実施形態に係るめっき方法を実現することができ、その結果、軟質な金めっきを実現することができる。なお、本実施形態において、金めっきとは、金を含むめっきのことであり、金のみである場合に限られない。本実施形態において金めっきとは金を含むめっきであればよく、金と、金以外の金属元素とを含むめっきを行う場合を含む。
【0020】
以下、本実施形態に係る金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液について詳述する。
【0021】
本実施形態に係るめっき方法では、亜硫酸金ナトリウムのような亜硫酸金塩と、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンのうちの少なくとも一つと、を含む、金めっき用組成物を用いてよい。金めっき用組成物(めっき液組成物)の一例は、金めっき用めっき液である。
【0022】
この金めっき用めっき液の一例は、亜硫酸金塩と、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンのうちの少なくとも一つと、を含むめっき液である。めっき液は、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンを含んでよい。めっき液は、さらに、後述する、別の金めっき用組成物(金めっき用添加物)を含んでよい。なお、本実施形態において、めっき液との用語の概念には、使用中のめっき液に継ぎ足して用いるためのめっき用の補充液を含む。めっき液は、例えば水溶液などの溶液であってよい。本実施形態に係るめっき方法は、このめっき液を調製し、このめっき液を用いて金めっきを行うものである。本実施形態に係るめっき方法はこのめっき液を調製する調製工程とこのめっき液を用いて金めっきを行うめっき工程とを含んでよい。
【0023】
金めっき用組成物(金めっき用添加物)は、亜硫酸塩と、チオ硫酸イオンを生成するチオ硫酸塩及び三チオン酸イオンを生成する三チオン酸塩のうちの少なくとも一つとを含む第一組成物であってよい。例えば、第一組成物は、亜硫酸塩と、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンとを含んでよい。第一組成物の詳細は後述する。
【0024】
また、金めっき用組成物(金めっき用添加物)は、重亜硫酸塩とチオ硫酸塩及び三チオン酸塩のうちの少なくとも一つとを含む第二組成物であってよい。例えば、第二組成物は、重亜硫酸塩と、チオ硫酸塩及び三チオン酸塩とを含んでよい。第二組成物の詳細は後述する。
【0025】
すなわち、めっき液は、亜硫酸金ナトリウムのような亜硫酸金塩と、チオ硫酸イオンと、三チオン酸イオンと、に加えて、更に、亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸金塩とは別の亜硫酸塩や、重亜硫酸ナトリウムのような重亜硫酸塩を含み得る。
【0026】
めっき液は、その他の添加剤として、錯化剤、緩衝剤、結晶調整剤、光沢剤、合金金属塩、還元剤、界面活性剤を含み得る。錯化剤としては、亜硫酸塩、EDTA、NTA、アミン化合物等が挙げられる。緩衝剤としては各種無機酸塩、各種有機酸塩等が挙げられる。結晶調整剤としてはタリウム、鉛、ビスマス、アンチモン、ヒ素などの塩が挙げられる。光沢剤としてはアミン化合物や芳香族化合物が挙げられる。合金金属塩としてはコバルト、ニッケル、鉄、銀などの塩が挙げられる。還元剤としてはSBH、DMABヒドラジン、ヒドロキノン、チオ尿素、アルコルビン酸塩等が挙げられる。界面活性剤は陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両親媒性界面活性剤、などが挙げられる。
【0027】
めっき液のpHは、6.0以上10.0以下、好ましくは7.0以上9.0以下である。めっき液のpHは、水酸化ナトリウム又は重亜硫酸ナトリウムの添加によって調整することができる。
【0028】
めっき液の比重は、ボーメ度(重ボーメ度)で評価した場合、0.2Bh以上33.3Bh以下である。
【0029】
めっき液が電界めっき用であり、特に建浴液である場合、その比重は、2.0Bh以上22.0Bh以下、好ましくは3.3Bh以上19.9Bh以下、更に好ましくは4.1Bh以上17.8Bh以下である。
【0030】
めっき液が電界めっき用であり、特に補充液である場合、その比重は、12.0Bh以上33.3Bh以下である。
【0031】
めっき液が無電界めっき用であり、特に建浴液である場合、その比重は、0.2Bh以上14.3Bh以下、好ましくは0.4Bh以上13.0Bh以下、更に好ましくは0.6Bh以上11.8Bh以下である。
【0032】
めっき液が無電界めっき用であり、特に補充液である場合、その比重は、12.0Bh以上33.3Bh以下である。
【0033】
亜硫酸金塩は、上述の亜硫酸金ナトリウムのような亜硫酸金アルカリ塩や亜硫酸金アンモニウムを用いてよい。亜硫酸金塩が亜硫酸金アルカリ塩である場合、特に、亜硫酸金ナトリウムや亜硫酸金カリウムが好適である。
【0034】
チオ硫酸イオンは、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸カルシウムのようなチオ硫酸塩に起因するものであってよい。
【0035】
三チオン酸イオンは、三チオン酸ナトリウム、三チオン酸アンモニウム、三チオン酸カリウム、三チオン酸カルシウムのような三チオン酸塩に起因するものであってよい。
【0036】
めっき液は、金濃度で0.50g/L以上20.0g/L以下としてよい。めっき液を電界めっき用とする場合、めっき液の金濃度は、好ましくは5.0g/L以上20.0g/L以下、さらに好ましくは10.0g/L以上16.0g/Lである。
【0037】
めっき液は、チオ硫酸イオンを、0.02mg/L以上4.00mg/L以下、好ましくは0.03mg/L以上3.55mg/L以下含んでよい。これにより、めっきが軟質のものとなりやすくなる。なお、本実施形態において、単に「ppm」と記載した場合は、「質量ppm」のことである。
【0038】
めっき液は、三チオン酸イオンを、0.10mg/L以上2.50mg/L以下、好ましくは0.13mg/L以上2.19mg/L以下含んでよい。これにより、めっきが軟質のものとなりやすくなる。
【0039】
めっき液は、チオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとを含むことが好ましい。めっき液は、チオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとを、合計量で0.20mg/L以上4.00mg/L以下、好ましくは0.20mg/L以上3.68mg/L以下含んでよい。これにより、めっきが軟質のものとなりやすくなる。
【0040】
上記のようにめっきが軟質なものとなることで、めっきの表面が平滑になる。換言すると、めっきの表面の表面粗さが小さくなる。この場合、目視観察では、例えば、めっきの表面に光沢がでる。
【0041】
めっき工程は、一例として電解金めっき処理であってよい。この場合におけるめっき条件は、電流密度0.1A/dm以上2.0A/dm以下、液温40℃以上80℃以下とすることが好ましい。電流密度は、更に好ましくは0.2A/dm以上1.0A/dm以下である。液温は、更に好ましくは50℃以上70℃以下である。
【0042】
調製工程は、めっき液を調製する仮定で金水酸化物を亜硫酸化する亜硫酸化工程を含んでよい。金水酸化物の一例は、バリウムと金との水酸化物であるBa[Au(OH)(テトラヒドロキシド金(III)酸バリウム、以下、金バリウム水酸化物と称する場合がある)である。
【0043】
亜硫酸化工程では、亜硫酸塩を含む第一組成物を用いて金水酸化物を亜硫酸化してよい。また、亜硫酸化工程では、重亜硫酸塩を含む第二組成物を用いて金水酸化物を亜硫酸化してよい。亜硫酸化工程は、第一組成物と第二組成物とを用いて金水酸化物を亜硫酸化してもよい。
【0044】
第一組成物は、亜硫酸塩とチオ硫酸塩と三チオン酸塩とを含むものであることが好ましい。これにより、めっきが軟質のものとなりやすくなる。第一組成物は、一例として、亜硫酸塩を加温処理する第一加温処理工程により得てよい。第一加温処理工程については後述する。
【0045】
第一組成物は、亜硫酸塩を95.0質量%以上含み、残部が、チオ硫酸塩、三チオン酸塩及び不純物であってよい。
【0046】
第一組成物は、チオ硫酸塩を、チオ硫酸イオンでみて、好ましくは1ppm以上3000ppm以下、さらに好ましくは10ppm以上1500ppm以下含んでよい。
【0047】
第一組成物は、三チオン酸塩を、三チオン酸イオンでみて、好ましくは1ppm以上3000ppm以下、さらに好ましくは10ppm以上1500ppm以下含んでよい。
【0048】
第一加温処理工程では、亜硫酸塩を28℃以上60℃以下、好ましくは40℃以上60℃以下に加温する加温処理を行ってよい。第一加温処理工程では、加温処理によって、亜硫酸塩から、チオ硫酸イオンを生成しうる塩(チオ硫酸塩)や、三チオン酸イオンを生成しうる塩(三チオン酸塩)が生ずる。第一加温処理工程の加温処理を40℃以上60℃以下で行う場合、この加温時間は、100時間以上200時間以下で足りる。第一加温処理工程の加温処理の温度が40℃未満の場合、加温時間は10日以上とするとよい。
【0049】
第二組成物は、重亜硫酸塩とチオ硫酸塩と三チオン酸塩とを含むものであることが好ましい。第二組成物は、一例として、重亜硫酸塩を加温処理する第二加温処理工程により得てよい。
【0050】
第二組成物は、重亜硫酸塩を95.0質量%以上含み、残部が、チオ硫酸イオン、三チオン酸イオン及び不純物であってよい。
【0051】
第二組成物は、チオ硫酸塩を、チオ硫酸イオンでみて、好ましくは1ppm以上300ppm以下、さらに好ましくは10ppm以上1500ppm以下含んでよい。
【0052】
第二組成物は、三チオン酸塩を、三チオン酸イオンでみて、好ましくは1ppm以上3000ppm以下、さらに好ましくは10ppm以上1500ppm以下含んでよい。
【0053】
第二加温処理工程では、重亜硫酸塩を28℃以上60℃以下、好ましくは40℃以上60℃以下に加温する加温処理を行ってよい。第二加温処理工程では、加温処理によって、重亜硫酸塩が分解してチオ硫酸イオンを生成しうる塩(チオ硫酸塩)や、三チオン酸イオンを生成しうる塩(三チオン酸塩)が生ずる。第二加温処理工程の加温処理を40℃以上60℃以下で行う場合、この加温時間は、100時間以上200時間以下で足りる。第二加温処理工程の加温処理の温度が40℃未満の場合、加温時間は10日以上とするとよい。
【0054】
亜硫酸塩の一例は、亜硫酸ナトリウムである。亜硫酸塩は、その他、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸水素カルシウムであってもよい。
【0055】
亜硫酸塩の一例は、重亜硫酸ナトリウムである。重亜硫酸塩は、その他、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸マグネシウム、重亜硫酸水素カルシウムであってもよい。なお、本実施形態において、重亜硫酸ナトリウムとの概念には、二亜硫酸ナトリウム(Na)と、二亜硫酸ナトリウムが加水分解した亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)と、を含み、単に重亜硫酸ナトリウム又は重亜硫酸ナトリウム(Na)などと記載した場合には、二亜硫酸ナトリウムである場合、亜硫酸水素ナトリウムである場合及び二亜硫酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムとの混合物である場合を含む。
【0056】
チオ硫酸塩は、一例として、チオ硫酸イオンを生成することができるチオ硫酸ナトリウムであってよい。チオ硫酸塩は、その他、チオ硫酸、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸マグネシウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸イオンを生成するものあってもよい。
【0057】
三チオン酸塩は、一例として、三チオン酸イオンを生成することができる三チオン酸ナトリウムであってよい。三チオン酸イオンは、その他、三チオン酸カリウム、三チオン酸アンモニウム、三チオン酸マグネシウム、三チオン酸カルシウムなどの、三チオン酸イオンを生成するものであってもよい。
【実施例
【0058】
以下、実施例に基づいて本実施形態に係る金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液について説明する。
【0059】
以下のようにして、表1に示す実験例1-14の金めっき処理を行い、金めっきのバンプを形成し、これを評価した。
【0060】
【表1】
【0061】
(実験例1-12)
実験例1-12は、以下のようにして試験用基板上に金めっき処理を行った。
【0062】
まず、塩化金酸(HAuCl)と水酸化バリウム(Ba(OH))と、水酸化ナトリウムとを用いて金バリウム水酸化物(Ba[Au(OH))を製造した。
【0063】
第一組成物は、以下のように製造した。亜硫酸ナトリウム(NaSO、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製、規格:工業用、純度97%以上)を、50℃の雰囲気中で168時間保持し(第一加熱処理)、これを第一組成物とした。
【0064】
亜硫酸ナトリウム及び第一組成物を液体クロマトグラフ法(LC-TOFMS)で測定(分析)したところ、第一組成物中に、チオ硫酸イオンと、三チオン酸イオンとが検出された。
【0065】
ここで、亜硫酸ナトリウム及び第一組成物のLC-TOFMSによる測定は、以下のようにして行った。
【0066】
LCによる測定には、測定装置として、島津製作所社製 Prominence UFLCを用いた。この測定時のカラムには、Intrade Organic Acid(2.0mm×150mm、3.0μm)を用いた。この測定時のカラム温度は40℃とした。移動相Aとして、アセトニトリル/水/ギ酸=10/90/0.1を用いた。移動相Bとしてアセトニトリル/100mM ギ酸アンモニウム=10/90を用いた。測定のプロファイルは、A:B=100:0(0min)、A:B=100:0(1min)、A:B=0:100(7min)、A:B=0:100(10min)の順に変化させて行った。移動相の流速は0.2mL/minとした。測定対象の試料(測定対象物)は超純水に10mg/mLになるように溶解させて、測定用試料とした。測定用試料のLCへの注入量は5μLとした。
【0067】
MSによる測定には測定装置として、AB SCIEX社製 Triple TOF 5600+を用いた。イオン化法はESIとし、IonSpray Voltage Floatingは4.5kV(Negativeモード)、5.5kV(Positiveモード)を用いた。質量範囲は、m/z 50-1500とした。
【0068】
この測定では、測定対象物(亜硫酸ナトリウム又は第一組成物)の測定前に、まず、基準物質としてチオ硫酸ナトリウム(10mg/mL、測定用試料としての濃度)の測定を行い、チオ硫酸イオンのピーク(約7.5分のピーク)の面積(S1)を求めた。
【0069】
次に、測定対象物の測定を行い、チオ硫酸イオンのピーク(約7.5分のピーク)の面積(S21)と、三チオン酸イオンのピーク(約8.5分のピーク)の面積(S22)とを求めた。そして、基準物質の濃度、面積S1、測定対象物の濃度及び面積S21に基づいて、測定対象物(亜硫酸ナトリウム及び第一組成物のそれぞれ)中のチオ硫酸イオンの質量を求めた。同様に、基準物質の濃度、面積S1、測定対象物の濃度及び面積S21に基づいて、測定対象物中の三チオン酸イオンの質量を求めた。これらの結果より求めた亜硫酸ナトリウム中のチオ硫酸イオンは、3ppmで、三チオン酸イオンは1ppmであった。また、第一組成物中のチオ硫酸イオンは、54ppmで、三チオン酸イオンは460ppmであった。
【0070】
第二組成物は、以下のように製造した。無水重亜硫酸ナトリウム(Na、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製、規格:工業用、純度97%以上)を、50℃の雰囲気中で168時間保持し(第二加熱処理)、これを第二組成物とした。
【0071】
重亜硫酸ナトリウム及び第二組成物を、亜硫酸ナトリウム及び第一組成物の場合と同様に液体クロマトグラフ法(LC-TOFMS)で測定(分析)したところ、第二組成物中に、チオ硫酸イオンと、三チオン酸イオンとが検出された。
【0072】
この測定では、測定対象物(無水重亜硫酸ナトリウム又は第二組成物)の測定前に、まず、基準物質としてチオ硫酸ナトリウムの測定を行い、この測定結果に基づいて、それぞれの測定対象物中のチオ硫酸イオンの質量と、三チオン酸イオンの質量とを求めた。これらの結果より求めた無水重亜硫酸ナトリウム中のチオ硫酸イオンは、5ppmで、三チオン酸イオンは230ppmであった。また、第二組成物中のチオ硫酸イオンは、650ppmで、三チオン酸イオンは2190ppmであった。
【0073】
次に、以下のようにして、亜硫酸金ナトリウム(NaAu(SO)を含むめっき液を調製した。
【0074】
亜硫酸金ナトリウムは、以下のようにして金バリウム水酸化物から製造した。すなわち、亜硫酸金ナトリウムは、亜硫酸ナトリウムと第一組成物との水溶液(以下、第一水溶液と称する)と重亜硫酸ナトリウムと第二組成物との水溶液(以下、第二水溶液と称する)と、錯化剤(EDTA・2Na)とを、金バリウム水酸化物に加えて撹拌し、沈殿物(硫酸バリウム)をろ過して調製した。この亜硫酸金ナトリウムにギ酸タリウムを加え、更にチオ硫酸ナトリウムを加えてpHを調整しめっき液とした。
【0075】
なお、第一水溶液の濃度(亜硫酸ナトリウムと第一組成物との合計の濃度)は、126g/Lとした。第二水溶液の濃度(重亜硫酸ナトリウムと第二組成物との合計の濃度)は、84g/Lとした。
【0076】
第一水溶液中の亜硫酸ナトリウムと第一組成物との比率は、表1に示すように、実験例毎に変更した。同様に、第二水溶液中の重亜硫酸ナトリウムと第二組成物との比率も、表1に示すように、実験例毎に変更した。なお、表1では、第一水溶液中の、亜硫酸ナトリウムと第一組成物との合計量に対する第一組成物の割合(質量%)を、「第一組成物の割合(%)」と記載している。また、第二水溶液中の、重亜硫酸ナトリウムと第二組成物との合計量に対する第二組成物の割合(質量%)を、「第二組成物の割合(%)」と記載している。
【0077】
以上のようにして調製されためっき液は、概ね、タリウムイオン濃度が10mg/Lで、液中に金イオンとして10g/Lを含み、pHは8.0で、比重は4.5Bhであった。表1中、「第一水溶液由来のチオ硫酸イオン(mg/L)」との項目、「第一水溶液由来の三チオン酸イオン(mg/L)」との項目、「第二水溶液由来のチオ硫酸イオン(mg/L)」との項目及び「第二水溶液由来の三チオン酸イオン(mg/L)」との項目は、めっき液中での濃度を示している。なお、めっき液の調製にあたっては、めっき液中のチオ硫酸イオンの濃度が表1に示す濃度(表1中の「追加のチオ硫酸イオン」)だけ増加するように、実験例毎に所定量のチオ硫酸ナトリウムをこのめっき液に添加した。
【0078】
そして、上記めっき液を用いて、試験用基板上に金めっき処理を行った。
【0079】
めっき処理は以下のようにして行った。試験用基板には、表面上にリコンウエハ上に、60μm角のバンプ(厚み14μmから17μm)を形成できるようにパターニングしたレジストが塗布されたものを用いた。そして、電流密度を0.5A/dmとし、また、めっき液の液温を60℃とし、めっき液を撹拌しながらめっき処理を行った。めっき処理の処理時間は48分間とした。
【0080】
(実験例13)
実験例13は、実験例1-12で用いた亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムとはロットが異なる亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムを用い、その他は実験例1と同様にして試験用基板上に金めっき処理を行った。
【0081】
(実験例14)
実験例14は、実験例1-12や実験例13で用いた亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムとはロットが異なる亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムを用い、その他は実験例1と同様にして試験用基板上に金めっき処理を行った。
【0082】
各実験例のめっき処理後、試験用基板からレジストを除去した。その後更に、試験用基板を熱処理した。熱処理は、300℃で、30分間行った。そして、熱処理後の金めっきのめっき表面(バンプ表面)のビッカース硬さの測定と、表面粗さ(Ra)の計測と、光学顕微鏡による外観の観察(ノジュール(団塊)の有無)と、を行った。これらの結果を併せて表1に示す。なお、表1中、「硬度(HV)」は、熱処理後の金めっき表面のビッカース硬さを、「Ra(nm)」は、表面粗さ(Ra)を意味している。
【0083】
本実施例において、ビッカース硬さの測定は、マイクロビッカース硬さ試験機(株式会社ミツトヨ製、型式:HM-200)を用いて計測した。また、本実施例において、ビッカース硬さは、マイクロビッカース硬さ試験機(株式会社ミツトヨ製、型式:HM-200)を用いて、日本工業規格JIS Z 2244:2009に準拠して計測したビッカース硬さであり、試験力は10gf(98.07mN)、保持時間は10秒とした。
【0084】
本実施例において、ノジュールとは、めっき表面に形成された凹凸構造の一種であり、めっき表面の正面視においておおよそ円形状をした、めっき表面における突起である。ノジュールは、めっき表面から突出した構造である。めっき表面にノジュールが形成される場合、ノジュールの頂部は丸みを帯びている(球面状)場合が多い。ノジュールの有無は、長辺が3μm以上のノジュールが確認できた場合に、ノジュールが有る(表1中では「有り」)と判断し、そうでない場合にノジュールが無い(表1中では「無し」)と判断した。
【0085】
表1中、「チオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとの合計(mg/L)」との項目は、めっき液1L中における、チオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとの合計量を示している。また、表1中、「チオ硫酸イオンの合計(mg/L)」との項目は、めっき液1L中における、チオ硫酸イオンの合計量を示している。同様に、表1中、「三チオン酸イオンの合計(mg/L)」との項目は、めっき液1L中における、三チオン酸イオンの合計量を示している。
【0086】
表1に示すように、めっき液中のチオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとの合計が0.20mg/L以上4.00mg/L以下(3.68mg/L以下)の実験例(実験例3、4、6-11及び13)では、熱処理後の金めっきのめっき表面のビッカース硬さ(表1中では硬さ)が60Hv以下の、十分に軟質で良好な金めっき膜が実現されていた。チオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとの合計が0.20mg/L未満又は4.00mg/L超の場合は、めっき表面のビッカース硬さが60Hvを超えてしまっていた。なお、実験例14ではめっき表面の凹凸が著しく、硬度を適切に計測できなかった。
【0087】
めっき液中のチオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとの合計が0.20mg/L以上4.00mg/L以下である場合、めっき液は、チオ硫酸イオンを、0.02mg/L以上(0.03mg/L以上)4.00mg/L以下(3.55mg/L以下)、三チオン酸イオンを、0.10mg/L以上(0.13mg/L以上)2.50mg/L以下(2.19mg/L以下)含んでいればよいようである。
【0088】
表1では、上記のビッカース硬さの結果に基づいて、実験例1-14を、実施例1-9及び比較例1-5に分類した。
【0089】
めっき表面のビッカース硬さ以外の評価結果は以下のとおりである。めっき表面の表面粗さ(Ra)は、例えば82nm以上220nmで以下であれば良好である。本実施例では、実験例14以外の実験例においてめっき表面の表面粗さ(Ra)は82nm以上220nm以下の範囲内にあり、良好であった。そして、実験例14以外の実験例にあっては、めっき表面上に著しいノジュール(団塊)の形成は確認できなかった。このように、めっき表面(めっき表面)は必要十分な平滑性を有していた。
【0090】
実験例14では、上記のようにめっき表面の凹凸が著しく、ノジュールが観察された。実験例14では、めっき表面の凹凸が著しいことから、本実施例で採用した表面粗さ(Ra)の測定方法で表面粗さを測定できなかった。
【0091】
上各実験例により示されるように、めっき液に、チオ硫酸イオンと三チオン酸イオンとが所定量含まれていれば、軟質な金めっきを実現することができることがわかった。
【0092】
以上のようにして、軟質な金めっきを実現する金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液を提供することができる。
【0093】
なお、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本開示の実施形態はこれに限定されず、本開示の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示は、金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液に適用できる。
【要約】
軟質な金めっきを実現する金めっき方法、金めっき用組成物及びめっき液を提供する。金めっき方法は、亜硫酸金塩と、チオ硫酸イオン及び三チオン酸イオンのうちの少なくとも一つと、を含むめっき液を用いて行う。