(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20241220BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A61F13/511 200
A61F13/15 144
(21)【出願番号】P 2020015518
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2021-08-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100201112
【氏名又は名称】上野 美紀
(72)【発明者】
【氏名】中下 将志
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】長谷川 一郎
【審判官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-42520(JP,A)
【文献】特開2016-13154(JP,A)
【文献】特開2019-18038(JP,A)
【文献】特開2019-84141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/511
A61F13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性層と、液不透過性層と、これら両層の間に位置する吸収層とを備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、着用者の肌と接する領域の少なくとも一部にゲルローションを有しており、
前記ゲルローションが、スチレン系エラストマーと、炭化水素油と、温感剤及び/又は冷感剤を含む親油性の機能剤と、を
含み、
前記ゲルローションが前記液透過性層の非肌対向面側の表面に配置されているとともに、当該液透過性層の非肌対向面側の表面に配置されたゲルローションの一部が前記液透過性層を厚さ方向に浸透しながら前記液透過性層の肌対向面側の表面に到達していることを特徴とする、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記ゲルローションが、前記機能剤を5質量%~50質量%の含有比率で含むことを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ゲルローションが、前記スチレン系エラストマーを2質量%~30質量%の含有比率で含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記機能剤の35℃における粘度が、前記炭化水素油の35℃における粘度よりも大きいことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ゲルローションが、20g/m
2~1000g/m
2の坪量で前記吸収性物品に配置されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ゲルローションが、1kPa~100kPaの50%ひずみ時圧縮応力を有していることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティーライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生理用ナプキン、パンティーライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品においては、着用者の肌にスキンケア効果などをもたらすために、着用者の肌と接する領域にローション組成物を配置した吸収性物品が知られている。
【0003】
さらに、このようなローション組成物を含む吸収性物品においては、上記のスキンケア効果に加えて、着用者の皮膚に温感や清涼感などの感覚効果をもたらす吸収性物品が種々検討されている。例えば特許文献1には、トップシートと、バックシートと、これらの間に配置される吸収性コアとを含む吸収性物品であって、前記吸収性物品の1つ以上の層の上に配置されるローション組成物を含み、前記ローション組成物が、担体と、特定のN-置換p-メンタンカルボキサミド物質を含む冷却剤とを含む、吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1の吸収性物品は、ローション組成物が室温で固体であり、少なくとも32℃の融点を有するように固化剤を含有するものであるため、着用者が吸収性物品の個包装体を開封して吸収性物品を着用した直後においては、冷却剤による清涼感(すなわち、冷感効果)が得られにくいという問題があった。さらに、吸収性物品の着用中にローション組成物が着用者の体温によって溶融した後においては、ローション組成物に含まれる冷却剤が一気に放出されてしまうため、冷却剤による冷感効果が長時間にわたって持続的に得られにくいという問題があった。
なお、このような問題は、冷却剤に限らず、温感効果をもたらす温感剤においても同様に生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、着用直後から温感効果及び/又は冷感効果を得ることができ、着用中においても、長時間にわたって持続的にこれらの効果を得ることができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様(態様1)は、液透過性層と、液不透過性層と、これら両層の間に位置する吸収層とを備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、着用者の肌と接する領域の少なくとも一部にゲルローションを有しており、
前記ゲルローションが、スチレン系エラストマーと、炭化水素油と、温感剤及び/又は冷感剤を含む親油性の機能剤と、を含むことを特徴とする、前記吸収性物品である。
なお、本明細書において、温感剤及び/又は冷感剤を含む親油性の機能剤とは、親油性の機能剤が、温感剤及び冷感剤のいずれか一方のみを含む態様と、温感剤及び冷感剤の両方を含む態様と、を含むことを意味する。
【0008】
本態様の吸収性物品は、着用者の肌と接する領域の少なくとも一部に、スチレン系エラストマーと、炭化水素油と、温感剤及び/又は冷感剤を含む親油性の機能剤と、を含むゲルローションを有していて、当該ゲルローションが炭化水素油と共に親油性の機能剤を徐放し得るものであるため、吸収性物品の使用前の保管段階(例えば、個包装状態の段階)から機能剤が徐々に放出されることで、着用者が吸収性物品の個包装体を開封して着用した直後から機能剤による温感及び/又は冷感を感じることができ、さらに、吸収性物品の着用中においても機能剤が徐々に放出されることで、着用者が長時間にわたって持続的に温感及び/又は冷感を感じることができる。
したがって、本態様の吸収性物品は、着用直後から機能剤による温感効果及び/又は冷感効果を得ることができ、着用中においても、長時間にわたって持続的にこれらの効果を得ることができる。
【0009】
また、本発明の別の態様(態様2)では、上記態様1の吸収性物品において、前記ゲルローションが、前記機能剤を5質量%~50質量%の含有比率で含むことを特徴とする。
【0010】
本態様の吸収性物品は、ゲルローションが機能剤を5質量%以上の含有比率で含むことで、機能剤による温感効果及び/又は冷感効果をより着実に得ることができる。また、ゲルローションが機能剤を50質量%以下の含有比率で含むことで、スチレン系エラストマーがより確実にゲルを形成しやすくなる。
これにより本態様の吸収性物品は、上述の機能剤による温感効果及び/又は冷感効果をより確実に得ることができる。
【0011】
本発明の更に別の態様(態様3)では、上記態様1又は2の吸収性物品において、前記ゲルローションが、前記スチレン系エラストマーを2質量%~30質量%の含有比率で含むことを特徴とする。
【0012】
本態様の吸収性物品は、ゲルローションがスチレン系エラストマーを2質量%以上の含有比率で含むことで、炭化水素油及び機能剤の保持力の高いゲルを形成しやすく、炭化水素油及び機能剤をより安定して持続的に徐放することができる。また、ゲルローションがスチレン系エラストマーを30質量%以下の含有比率で含むことで、ゲルローションを溶融して塗工等により吸収性物品又はその構成部材(例えば、液透過性層等)に配置する際に、温度条件(例えば、塗工温度等)を低く抑えることができ、機能剤を放出しにくくすることができる。
これにより本態様の吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより安定して持続的に得ることができる。
【0013】
本発明の更に別の態様(態様4)では、上記態様1~3のいずれかの吸収性物品において、前記機能剤の35℃における粘度が、前記炭化水素油の35℃における粘度よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
本態様の吸収性物品は、機能剤の35℃における粘度が、炭化水素油の35℃における粘度よりも大きい、すなわち、着用者の体温付近の35℃において機能剤が炭化水素油よりも広がりにくくなっているので、吸収性物品の着用中に、ゲルから放出された機能剤は、その場に留まりやすい一方、機能剤と共にゲルから放出された炭化水素油は、機能剤の周囲を取り囲むように広がりやすくなっている。
このようなゲルから放出された機能剤と炭化水素油が着用者の肌に接すると、機能剤が局所的に存在することで、着用者が温感及び/又は冷感をより感じやすく、また、炭化水素油が機能剤を取り囲むようにして着用者の肌に付着することで、機能剤を着用者の肌に留めやすくすることができる。
これにより本態様の吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより効果的かつ的確に得ることができる。
【0015】
本発明の更に別の態様(態様5)では、上記態様1~4のいずれかの吸収性物品において、前記ゲルローションが、20g/m2~1000g/m2の坪量で前記吸収性物品に配置されていることを特徴とする。
【0016】
本態様の吸収性物品は、ゲルローションが20g/m2以上の坪量で吸収性物品に配置されていることで、所定のゲル厚みを確保することができ、当該ゲルによる温感効果及び/又は冷感効果をより確実に得ることができる。また、ゲルローションが1000g/m2以下の坪量で吸収性物品に配置されていることで、ゲルローションを塗工等により配置する際に、安定して配置することができ、ゲル厚みが大きいことによる異物感や違和感を着用者に生じにくくすることができる。
これにより本態様の吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより確実に得ることができる上、より優れた着用感を提供することができる。
【0017】
本発明の更に別の態様(態様6)では、上記態様1~5のいずれかの吸収性物品において、前記ゲルローションが前記液透過性層の非肌対向面側の表面に配置されているとともに、当該液透過性層の非肌対向面側の表面に配置されたゲルローションの一部が前記液透過性層を厚さ方向に浸透しながら前記液透過性層の肌対向面側の表面に到達していることを特徴とする。
【0018】
本態様の吸収性物品は、ゲルローションが液透過性層の非肌対向面側の表面に配置されていることで、着用者の肌と擦れても脱落しにくく、着実にその効果を得ることができる。また、液透過性層の非肌対向面側の表面に配置されたゲルローションの一部が液透過性層を厚さ方向に浸透しながら液透過性層の肌対向面側の表面に到達していることで、ゲルローションに含まれる機能剤を、炭化水素油と共に着用者の肌に接しやすくすることができる。
これにより本態様の吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより安定的かつ着実に得ることができる。
【0019】
本発明の更に別の態様(態様7)では、上記態様1~6のいずれかの吸収性物品において、前記ゲルローションが、1kPa~100kPaの50%ひずみ時圧縮応力を有していることを特徴とする。
【0020】
本態様の吸収性物品は、ゲルローションが1kPa以上の50%ひずみ時圧縮応力を有していることで、吸収性物品の着用中に着用者の体圧が加わっても、ゲルがその体圧に対して十分に弾性変形することができる、すなわち、ゲルが弾性限界を超えて変形し、破壊してしまうようなことを生じにくくすることができる。また、ゲルローションが100kPa以下の50%ひずみ時圧縮応力を有していることで、ゲルが適度な柔軟性を有し、着用者に異物感や違和感を生じさせにくくすることができる。
これにより本態様の吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより安定して得ることができる上、より優れた着用感を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の吸収性物品は、着用直後から温感効果及び/又は冷感効果を得ることができ、着用中においても、長時間にわたって持続的にこれらの効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1の平面図である。
【
図2】
図2は、ゲルローション5が配置された液透過性層2の要部を拡大した、幅方向Wに沿う断面図である。
【
図3】
図3は、ゲルローション5に含まれる機能剤の35℃における粘度が、炭化水素油の35℃における粘度よりも大きい場合の液透過性層2の要部を拡大した、幅方向Wに沿う断面図であり、(a)が生理用ナプキン1の使用前(着用前)の状態を示し、(b)が生理用ナプキン1の着用中の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(各種定義)
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例えば、吸収性物品、液透過性層等)を、垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」という。
【0024】
本明細書において用いられる各種方向等については、特に断りのない限り、以下のとおりである。
本明細書において、「長手方向」は、「平面視における縦長の対象物(例えば、吸収性物品等)の長さの長い方向」を指し、「幅方向」は、「平面視における縦長の対象物の長さの短い方向」を指し、「厚さ方向」は、「展開した状態で水平面上に置いた対象物に対して垂直方向」を指し、これらの長手方向、幅方向及び厚さ方向は、それぞれ互いに直交する関係にある。
さらに、本明細書では、「縦長の対象物の長手方向において、該対象物の長手方向の中央に位置し且つ幅方向に延びる中央軸線に対して相対的に近位側」を「長手方向の内方側」といい、「前記縦長の対象物の長手方向において、前記中央軸線に対して相対的に遠位側」を「長手方向の外方側」という。同様に、「縦長の対象物の幅方向において、該幅方向の中央に位置し且つ長手方向に延びる中央軸線CLに対して相対的に近位側」を「幅方向の内方側」といい、「前記縦長の対象物の幅方向において、前記中央軸線CLに対して相対的に遠位側」を「幅方向の外方側」という。
また、本明細書では、吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌に対して相対的に近位側」を「肌対向面側」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌に対して相対的に遠位側」を「非肌対向面側」という。
【0025】
[吸収性物品]
本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1は、
図1に示すように、平面視にて、長手方向L及び幅方向Wを有し、長手方向Lの両端部が長手方向Lの外方側に向かって円弧を描くように突出する縦長の外形形状を有している。
なお、本発明において、吸収性物品の外形形状はこのような態様のものに限定されず、各種用途や使用態様等に応じた任意の形状(例えば、楕円形、砂時計形、瓢箪形など)を採用することができる。
【0026】
また、上述の生理用ナプキン1は、厚さ方向Tにおいて、相対的に肌対向面側T1に位置する不織布等の液透過性シートからなる液透過性層2と;相対的に非肌対向面側T2に位置する疎水性不織布や樹脂フィルム等の液透過性シートからなる液不透過性層3と;これら両シートの間に位置する吸液性及び液保持性を有する吸収層4と;を主な構成部材として備えている。
【0027】
なお、生理用ナプキン1は、液透過性層2の肌対向面側T1において幅方向Wの両端部に位置する一対のサイドシート(不図示)と;液不透過性層3の非肌対向面側T2の表面に配置された着衣固定用の粘着部(不図示)と;を構成部材として更に備えている。
【0028】
そして、本実施形態の生理用ナプキン1は、
図1及び
図2に示すように、液透過性層2の非肌対向面側T
2の表面の一部に、スチレン系エラストマーと、炭化水素油と、温感剤及び/又は冷感剤を含む親油性の機能剤と、を含むゲルローション5が配置されており、さらに、そのゲルローション5は、長手方向Lに直線状に延び且つ幅方向Wに所定の間隔をあけて並ぶ、6本のストライプ状の形態で配置されている。
【0029】
ここで、液透過性層2の非肌対向面側T
2の表面に配置されたゲルローション5は、
図2に示すように、その一部が液透過性層2を厚さ方向Tに浸透しながら当該液透過性層2の肌対向面側T
1の表面(すなわち、着用者の肌と接する領域の一部)に到達するように存在している。すなわち、生理用ナプキン1は、着用者の肌と接する領域である液透過性層2の肌対向面側T
1の表面の一部にゲルローション5を有している。
【0030】
このように生理用ナプキン1は、着用者の肌と接する領域である液透過性層2の肌対向面側T1の表面の一部に、スチレン系エラストマーと、炭化水素油と、温感剤及び/又は冷感剤を含む親油性の機能剤と、を含むゲルローション5を有していて、当該ゲルローション5が炭化水素油と共に親油性の機能剤を徐放し得るものであるため、生理用ナプキン1の使用前の保管段階(例えば、個包装状態の段階)から機能剤が徐々に放出されることで、着用者が生理用ナプキン1の個包装体を開封して着用した直後から機能剤による温感又は冷感を感じることができ、さらに、生理用ナプキン1の着用中においても機能剤が徐々に放出されることで、着用者が長時間にわたって持続的に温感及び/又は冷感を感じることができる。
したがって、生理用ナプキン1は、着用直後から機能剤による温感効果及び/又は冷感効果を得ることができ、着用中においても、長時間にわたって持続的にこれらの効果を得ることができる。
【0031】
以下、本発明の吸収性物品に用い得る各種構成部材について、上述の生理用ナプキン1を用いて更に詳細に説明する。
【0032】
[液透過性層]
上述の生理用ナプキン1において液透過性層2は、
図1に示すように、平面視にて生理用ナプキン1の長手方向Lの一方側端縁から他方側端縁にわたって延在し、且つ、生理用ナプキン1の幅方向Wの一方側端縁近傍から他方側端縁近傍にわたって延在する(すなわち、当該液透過性層2の非肌対向面側T
2に配置される吸収層4よりも長手方向L及び幅方向Wに大きいサイズを有する)、縦長の外形形状を有している。
【0033】
かかる液透過性層2は、生理用ナプキン1の厚さ方向Tにおいて相対的に肌対向面側T1の位置(より具体的には、吸収層4の肌対向面側T1の位置)に配置されて、着用者の肌に接する当接面、すなわち生理用ナプキン1の肌対向面側T1の表面を形成するものであり、着用者から排出された経血等の排泄液が透過し得る所定の液透過性を有するシート状部材(液透過性シート)によって構成されている。
【0034】
本発明において、液透過性層として用い得るシート状部材は、吸収性物品の液透過性層として用い得る諸特性(例えば、液透過性や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布等の不織布や多孔の樹脂フィルムなどの公知の液透過性のシート状部材を採用することができる。
【0035】
なお、液透過性層として不織布を用いる場合、当該不織布は、単層構造を有していても、2層以上の多層構造を有していてもよい。かかる不織布の構成繊維の種類も特に制限されず、例えばセルロース系繊維や親水化処理を施した熱可塑性樹脂繊維などの親水性繊維が挙げられる。これらの繊維は単独で用いても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
【0036】
さらに、不織布の構成繊維に用い得るセルロース系繊維としては、例えば、天然セルロース繊維(例えば、コットン等の植物繊維など)や再生セルロース繊維、精製セルロース繊維、半合成セルロース繊維などが挙げられる。
また、不織布の構成繊維に用い得る熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、6-ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の熱可塑性樹脂からなる繊維が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。
【0037】
本発明において、液透過性層の外形形状や各種寸法、坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の液透過性や肌触り、柔軟性、強度等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。例えば、液透過性層の坪量としては25g/m2~50g/m2の坪量が挙げられ、厚みとしては0.5mm~3.0mmの厚みが挙げられる。
なお、液透過性層の坪量は、JIS L 1906の5.2に従って測定することができ、また、液透過性層の厚みは、レーザー変位計(例えば、キーエンス株式会社製 高精度2次元レーザー変位計LJ-Gシリーズ(型式:LJ-G030))を使用して、非接触方式で測定することができる。なお、液透過性層の厚みの測定は、異なる5箇所の測定対象部分について測定し、その平均値を採用する。
【0038】
また、液透過性層の肌対向面側の表面には、ゲルローション以外の任意の薬剤(例えば、植物由来エキス等)が塗布されていてもよく、また、液透過性層の非肌対向面側には、所定の液拡散性及び液透過性を有する中間層が配置されていてもよい。
【0039】
なお、液透過性層は、一対のサイドシートの非肌対向面側の表面と接合されていても、吸収層の肌対向面側面又は非肌対向面側面と接合されていても、液不透過性層の肌対向面側面と接合されていても、或いは、そのいずれとも接合されていてもよい。さらに、接合方法も、特に制限されず、ホットメルト型接着剤や熱融着等の任意の接合手段を採用することができる。
【0040】
[ゲルローション]
上述の生理用ナプキン1においてゲルローション5は、
図1及び
図2に示すように、液透過性層2の非肌対向面側T
2の表面において、長手方向Lに直線状に延び且つ幅方向Wに所定の間隔をあけて並ぶ、6本のストライプ状の形態で配置されている。
【0041】
ゲルローション5は、ゲル化剤成分としてのスチレン系エラストマーと、ローション成分としての炭化水素油と、温感成分及び/又は冷感成分としての温感剤及び/又は冷感剤を含む親油性の機能剤と、を含むものであり、後述するスチレン系エラストマーによって形成される網目状のネットワーク構造が炭化水素油及び親油性の機能剤を徐々に放出(徐放)し得るように保持することで、長時間にわたって持続的に、着用者の肌に対して炭化水素油によるローション効果(すなわち、スキンケア効果)と、機能剤による(より具体的には、機能剤に含まれる温感剤及び/又は冷感剤による)温感効果及び/又は冷感効果と、をもたらすことができる。
【0042】
以下、本発明に用い得るゲルローションの各種構成成分について詳細に説明する。
【0043】
(スチレン系エラストマー)
ゲルローションに用いられるスチレン系エラストマーとしては、本発明の効果を奏し得るものであれば特に限定されないが、例えば、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するものが挙げられる。上記ハードセグメントとしては、例えばスチレン系のハードセグメントが挙げられ、上記ソフトセグメントとしては、例えばオレフィン系のソフトセグメントが挙げられる。
【0044】
さらに、上記スチレン系のハードセグメントとしては、例えば、ポリスチレンやポリα-メチルスチレン、スチレンとα-メチルスチレンとのコポリマーなどが挙げられ、上記オレフィン系のソフトセグメントとしては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブタジエン等)のホモポリマーやポリオレフィンのコポリマー、これらの水素付加物などが挙げられる。
【0045】
なお、スチレン系エラストマーにおける上記ハードセグメントとソフトセグメントの配置形態は特に限定されないが、1種類又は複数種類のソフトセグメントからなる分子鎖の両末端に、それぞれ上記のハードセグメントが配置されていることが好ましい。
【0046】
このようなスチレン系エラストマーは、ハードセグメントの相互作用により形成される複数の凝集ドメインと、該複数の凝集ドメインを連結するソフトセグメントとによって網目状のネットワーク構造が形成されるため、弾性体としての機能を発現するとともに、体温付近(約35℃~約40℃)の温度条件下においてもゲル状態を維持することができる。また、このようなスチレン系エラストマーによって形成される網目状のネットワーク構造は、炭化水素油及び親油性の機能剤を徐々に放出(徐放)し得るように保持する機能を併せ持っている。
【0047】
かかるスチレン系エラストマーの具体例としては、例えば、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などのスチレン系ブロック共重合体が挙げられる。
【0048】
また、スチレン系エラストマーの重量平均分子量(MW)は特に限定されないが、好ましくは5,000以上500,000以下、より好ましくは10,000以上400,000以下、更に好ましくは50,000以上300,000以下である。重量平均分子量が5,000以上であると、スチレン系エラストマーがゲル構造を保持しやすくなり、重量平均分子量が500,000以下であると、ゲルローションが硬くなりすぎず、吸収性物品の着用中に、着用者に異物感や違和感などを生じにくくすることができる。
【0049】
なお、スチレン系エラストマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を移動相として、以下の条件でゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算により求めることができる。
<GPC測定条件>
機種:(株)日立ハイテクノロジーズ製 高速液体クロマトグラム Lachrom Elite
カラム:昭和電工(株)製 SHODEX KF-804
溶媒:THF
流量:1.0mL/分
打込み量:100μL
検出:RI(示差屈折計)
【0050】
また、スチレン系エラストマーは、10質量%以上50質量%以下のスチレン系ブロック成分と、50質量%以上90質量%以下のオレフィン系ブロック成分とを含むものが好ましく、さらに、15質量%以上40質量%以下のスチレン系ブロック成分と、60質量%以上85質量%以下のオレフィン系ブロック成分とを含むものがより好ましく、18質量%以上35質量%以下のスチレン系ブロック成分と、65質量%以上82質量%以下のオレフィン系ブロック成分とを含むものが特に好ましい。
【0051】
スチレン系ブロック成分の量が10質量%以上であると、上述の凝集ドメインを形成するハードセグメント(すなわち、スチレン系ブロック成分)の量を一定以上確保することができるので、スチレン系エラストマーが網目状のネットワーク構造を形成しやすくなる。一方、スチレン系ブロック成分の量が50質量%以下であると、炭化水素油や機能剤を保持するオレフィン系ブロック成分の量を一定以上確保することができるので、保持できる炭化水素油や機能剤の量を多くすることができ、また、ハードセグメント(スチレン系ブロック成分)により形成される凝集ドメインの量を一定以下に制限できるので、液透過性層に適用した後のゲルが硬くなりすぎず、吸収性物品の着用中に、着用者に異物感や違和感などを生じにくくすることができる。
【0052】
また、ゲルローションに含まれるスチレン系エラストマーの含有量は特に限定されないが、スチレン系エラストマーは、ゲルローション全体の質量に対して2質量%~30質量%の含有比率で含まれていることが好ましく、より好ましくは3質量%~20質量%の含有比率であり、更に好ましくは5質量%~20質量%の含有比率である。
ゲルローションがスチレン系エラストマーを2質量%以上の含有比率で含んでいると、炭化水素油及び機能剤の保持力の高いゲルを形成しやすく、炭化水素油及び機能剤をより安定して持続的に徐放することができる。また、ゲルローションがスチレン系エラストマーを30質量%以下の含有比率で含んでいると、ゲルローションを溶融して塗工等により吸収性物品又はその構成部材(例えば、液透過性層等)に配置する際に、温度条件(例えば、塗工温度等)を低く抑えることができ、機能剤を放出しにくくすることができる。これにより、このようなゲルローションを含む吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより安定して持続的に発揮することができる。
【0053】
(炭化水素油)
ゲルローションに用いられる炭化水素油は、常温において一定の流動性を有するものであり、吸収性物品の着用者の肌に接することで、着用者の肌にローション効果(すなわち、スキンケア効果)をもたらすものである。
【0054】
かかる炭化水素油は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、直鎖、分岐又は環状の構造を有していても、飽和又は不飽和結合を有していてもよい。そのような炭化水素油としては、例えば、オレフィン系炭化水素(二重結合を1つ含むアルケン)、パラフィン系炭化水素(二重結合も三重結合も含まないアルカン)、アセチレン系炭化水素(三重結合を1つ含むアルキン)、二重結合及び/又は三重結合を2つ以上含む炭化水素等の鎖状炭化水素;芳香族炭化水素、脂環式炭化水素等の環状炭化水素などが挙げられる。
【0055】
このような炭化水素の中でも、鎖状炭化水素や脂環式炭化水素を用いることが好ましく、より好ましくは鎖状炭化水素であり、更に好ましくはパラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素又は二重結合を2つ以上含む炭化水素(但し、三重結合を含まない)であり、特に好ましくはパラフィン系炭化水素である。なお、上記鎖状炭化水素には、直鎖状炭化水素及び分岐鎖状炭化水素が含まれる。
【0056】
なお、上述の炭化水素油は、40℃における動粘度が、0.01mm2/s以上80mm2/s以下であることが好ましく、重量平均分子量が1,000未満であることが好ましい。かかる動粘度は、JIS K 2283:2000の「5.動粘度試験方法」に従って、キャノンフェンスケ逆流形粘度計を用いて、40℃の試験温度で測定することができる。
【0057】
ゲルローションに含まれる炭化水素油は、親油性の機能剤と共に、一定量、ゲルローションの表面にブリードアウトし、さらに、このブリードアウトした炭化水素油が着用者の肌に移行すると、ゲルローションの表面には新たな一定量の炭化水素油がブリードアウトする。このようにして、ゲルローションは、一定量の炭化水素油を継続的に放出することができる。
【0058】
また、ゲルローションに含まれる炭化水素油の含有量は特に限定されないが、炭化水素油は、ゲルローション全体の質量に対して20質量%~93質量%の含有比率で含まれていることが好ましく、より好ましくは40質量%~92質量%の含有比率であり、更に好ましくは50質量%~85質量%の含有比率である。
【0059】
(機能剤)
ゲルローションに用いられる親油性の機能剤は、着用者の皮膚の温感知覚受容器及び/又は冷感知覚受容器を刺激することにより、着用者に温感及び/又は冷感を知覚させる温感剤及び/又は冷感剤を含むものであり、着用者の肌に温感効果及び/又は冷感効果をもたらすものである。
【0060】
機能剤に用い得る温感剤としては、本発明の効果を奏し得るものであれば特に限定されないが、例えば、TRPチャネルを活性化する温感剤、すなわちTRPV1レセプターに対するアゴニストやTRPV3レセプターに対するアゴニストなどが挙げられ、中でも、TRPV1に対するアゴニストが好ましい。TRPV1レセプターは、活性化温度閾値が43℃超と高く、着用者に高い温感を付与することができるからである。
【0061】
上記温感剤の具体的な例としては、カプシコシド、カプサイシン、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、N-アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール、ジンゲロンなどが挙げられる。これらの物質は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
なお、温感剤は、当該温感剤を溶解ないし分散させる溶媒成分と共に用いてもよい。そのような溶媒成分としては、特に限定されないが、例えば、親油性溶媒が挙げられ、更に具体的には、トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油などの油脂が挙げられる。
【0063】
また、機能剤に用い得る冷感剤としては、本発明の効果を奏し得るものであれば特に限定されないが、例えば、メントールやその誘導体;サリチル酸メチル;ミントやユーカリ等の植物由来の精油などの公知の冷感剤が挙げられ、更に具体的には、l-メントールやメンチルグリセリルエーテル、メントングリセリンアセタールなどが挙げられる。なお、これらの物質は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
また、冷感剤は、当該冷感剤を溶解ないし分散させる溶媒成分と共に用いてもよい。そのような溶媒成分としては、特に限定されないが、例えば、上述の温感剤と同様の親油性溶媒が挙げられる。
【0065】
以上のような温感剤及び冷感剤は、それぞれが単独で機能剤に含まれていてもよいが、両者が共に機能剤に含まれていてもよい。
このような温感剤及び/又は冷感剤を含む親油性の機能剤は、炭化水素油と混ざり合うものではないが、炭化水素油と同様に一定量ずつブリードアウトして着用者の肌に移行するため、ゲルローションは、一定量の機能剤を継続的に放出することができる。
【0066】
また、ゲルローションに含まれる親油性の機能剤の含有量は特に限定されないが、親油性の機能剤は、ゲルローション全体の質量に対して5質量%~50質量%の含有比率で含まれていることが好ましく、より好ましくは5質量%~40質量%の含有比率であり、更に好ましくは10質量%~30質量%の含有比率である。
ゲルローションが機能剤を5質量%以上の含有比率で含んでいると、機能剤による温感効果及び/又は冷感効果をより着実に得ることができる。また、ゲルローションが機能剤を50質量%以下の含有比率で含んでいると、スチレン系エラストマーがより確実にゲルを形成しやすくなる。これにより、このようなゲルローションを含む吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより確実に発揮することができる。
【0067】
また、本発明においては、ゲルローションに含まれる機能剤の35℃における粘度が、炭化水素油の35℃における粘度よりも大きいことが好ましい。
このように、機能剤の35℃における粘度が炭化水素油の35℃における粘度よりも大きい、すなわち、着用者の体温付近の35℃において機能剤が炭化水素油よりも広がりにくくなっていると、
図3に示すように、着用中にゲル(すなわち、ゲルローション5のゲル骨格部分)から放出された機能剤51がその場に留まりやすくなる一方、機能剤51と共にゲルから放出された炭化水素油52は、機能剤51の周囲を取り囲むように広がりやすくなる(
図3の(b)を参照)。そして、このようなゲルから放出された機能剤51と炭化水素油52が液透過性層2を透過して着用者の肌に接すると、機能剤51が局所的に存在していることで、着用者が温感及び/又は冷感をより感じやすくなり、また、炭化水素油52が機能剤51を取り囲むようにして着用者の肌に付着することで、機能剤51を着用者の肌に留めやすくすることができる。これにより、このようなゲルローションを含む吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより効果的かつ的確に発揮することができる。
【0068】
ここで、機能剤と炭化水素油の35℃における粘度の大小関係の判断手法は、両者の35℃における粘度を比較し得るものであれば特に限定されず、例えば、一般的な回転粘度計(例えば、B型やコーンプレート型粘度計等)を用いて、35℃の共通の測定条件下でそれぞれの粘度を測定することにより、両者の大小関係を判断することができる。なお、機能剤が35℃において固体である場合には、そのような状態を以て、炭化水素油の35℃における粘度よりも大きいと判断する。
【0069】
(その他の成分)
本発明に用いられるゲルローションは、本発明の効果を阻害しない範囲内において、スチレン系エラストマー、炭化水素油及び親油性の機能剤以外の、その他の成分を含んでいてもよい。
【0070】
そのようなその他の成分としては、特に限定されないが、例えば、ビタミン類、各種アミノ酸、ペプチド、コレステロール、ヒアルロン酸、レシチン、セラミド、皮膚収斂剤、抗ニキビ剤、抗シワ剤、抗セルライト剤、美白剤、抗菌剤、抗カビ剤、抗炎症成分、pH調整剤、保湿剤、シリコーンオイル、界面活性剤(例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、酸化防止剤(例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル等)、天然ゼオライト(例えば、方沸石、菱沸石、輝沸石、ナトロライト、束沸石、ソモソナイト等)、合成ゼオライト、安定剤(例えば、光安定剤等)、着色剤、顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等)、香料などの公知の添加成分が挙げられ、これらの成分は、1種類の成分を単独で用いても、2種類以上の成分を併用してもよい。
【0071】
また、本発明に用いられるゲルローションは、1kPa~100kPaの50%ひずみ時圧縮応力を有していることが好ましく、より好ましくは1kPa~80kPaの50%ひずみ時圧縮応力であり、更に好ましくは1.5kPa~60kPaの50%ひずみ時圧縮応力である。
ゲルローションが1kPa以上の50%ひずみ時圧縮応力を有していると、着用中に着用者の体圧が加わっても、ゲルがその体圧に対して十分に弾性変形することができる、すなわち、ゲルが弾性限界を超えて変形し、破壊してしまうようなことを生じにくくすることができる。また、ゲルローションが100kPa以下の50%ひずみ時圧縮応力を有していると、ゲルが適度な柔軟性を有し、着用者に異物感や違和感を生じさせにくくすることができる。これにより、このようなゲルローションを含む吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより安定して発揮することができる上、より優れた着用感を提供することができる。
【0072】
ここで、ゲルローションの50%ひずみ時圧縮応力は、以下のようにして測定することができる。なお、以下に規定されていない事項は、JIS K 7181:2011 「プラスチック-圧縮特性の求め方」の「3.7 x%ひずみ時圧縮応力」に従う。
(1)20℃、65%RHの恒温恒湿室に、圧縮試験機(例えば、小型卓上試験機EzTest(島津製作所製))を用意する。
(2)圧縮試験機に、圧縮用治具(例えば、直径120mmのステンレス製の圧縮用治具)を取り付ける。
(3)圧縮用治具に、所定形状(例えば、直径40mm、高さ8mmの円筒形)のゲルローションをセットする。
(4)5mm/分の圧縮速度で、圧縮量が4mm、すなわち、ひずみが50%になるまで、ゲルローションを圧縮し、圧縮力(N)を読み取る。
(5)読み取った圧縮力(N)を圧縮応力(Pa)に換算する。
なお、圧縮応力の測定は、異なるサンプルで3回実施し、その平均値を採用する。
【0073】
また、本発明においては、ゲルローションが20g/m2~1000g/m2の坪量で吸収性物品に配置されていることが好ましく、より好ましくは30g/m2~600g/m2の坪量であり、更に好ましくは40g/m2~400g/m2の坪量である。
ゲルローションが20g/m2以上の坪量で吸収性物品に配置されていると、所定のゲル厚みを確保することができ、当該ゲルによる温感効果及び/又は冷感効果をより確実に得ることができる。また、ゲルローションが1000g/m2以下の坪量で吸収性物品に配置されていると、ゲルローションを塗工等により配置する際に、安定して配置することができ、ゲル厚みが大きいことによる異物感や違和感を着用者に生じにくくすることができる。これにより、このような坪量でゲルローションが配置された吸収性物品は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより確実に得ることができる上、より優れた着用感を提供することができる。
【0074】
また、上述の実施形態の生理用ナプキン1においては、ゲルローション5は、
図2に示すように、塗工等により液透過性層2の非肌対向面側T
2の表面に配置されていて、さらに、その一部が液透過性層2を厚さ方向Tに浸透しながら液透過性層2の肌対向面側T
1の表面に到達するように存在している。ゲルローション5がこのように液透過性層2の非肌対向面側T
2の表面に配置されていることで、生理用ナプキン1は、着用中に着用者の肌が擦れても、ゲルローション5が脱落しにくく、着実にその効果を発揮することができる。また、液透過性層2の非肌対向面側T
2の表面に配置されたゲルローション5の一部が液透過性層2を厚さ方向Tに浸透しながら液透過性層2の肌対向面側T
1の表面に到達するように存在していることで、ゲルローション5に含まれる機能剤を、炭化水素油と共に着用者の肌に接しやすくすることができる。
これにより、生理用ナプキン1は、上述の温感効果及び/又は冷感効果をより安定的かつ着実に発揮することができる。
【0075】
本発明において、ゲルローションの配置形態はこのような態様のものに限定されず、例えば、ゲルローションは、液透過性層の肌対向面側の表面に配置され且つその一部が液透過性層を厚さ方向に浸透するように配置されていてもよく、また、液透過性層の肌対向面側の表面のみに(すなわち、液透過性層の内部まで浸透しないように)配置されていてもよい。なお、ゲルローションが液透過性層の肌対向面側の表面に配置されている場合であっても、ゲルローションの一部が液透過性層を厚さ方向に浸透するように配置することで、着用中に着用者の肌が擦れてもゲルローションを脱落しにくくすることができる。
【0076】
さらに、
図2に示す上述の生理用ナプキン1ように、液透過性層2の非肌対向面側T
2の表面に存在するゲルローション5の量が、肌対向面側T
1の表面に存在するゲルローション5の量よりも多くなっていると、液透過性層2の肌対向面側T
1の表面に供給された経血等の排泄液が液透過性層2の内部に浸透するのを、ゲルローション5が阻害しにくくなるので、液透過性層2の液透過性を確保しやすくなり、また、液透過性層2の非肌対向面側T
2の表面に存在するゲルローション5が、一度吸収層4に吸収された排泄液の肌対向面側T
1への液戻りを抑制するので、生理用ナプキン1の厚さ方向Tに過度の体圧が加わって吸収層4に吸収された排泄液が肌対向面側T
1に流動(すなわち、液戻り)したとしても、当該排泄液を着用者の肌に接しにくくすることができるという利点もある。
【0077】
また、上述の生理用ナプキン1では、ゲルローション5は、長手方向Lに直線状に延び且つ幅方向Wに所定の間隔をあけて並ぶ、6本のストライプ状の形態で配置されているが、本発明においてゲルローションの配置形態は、このような態様のものに限定されず、例えば、ゲルローションは、長手方向及び/又は幅方向において1本又は所定の間隔をあけて並ぶ2本以上の任意の線状の形態(例えば、直線状、曲線状、ジグザグ線状等)で延びるように配置されていても、規則的又は不規則的に配置された複数のドット状の形態で配置されていてもよい。
さらに、ゲルローションは、着用者の肌と接する領域であれば、上述の一対のサイドシートの肌対向面側の表面又は非肌対向面側の表面などに配置されていてもよい。また、本発明が適用される吸収性物品が、例えば、着用者の腹側まで延出するような特定形状のナプキン、使い捨ておむつ、ショーツなどの場合は、ゲルローションに含まれる機能剤として温感剤を含むものを用いて、かかるゲルローションを、上記特定形状のナプキンの腹側の延出部分、使い捨ておむつやショーツのウェスト部などに配置してもよい。
【0078】
なお、本発明において、ゲルローションの製造方法は特に制限されず、ゲルローションは、上述した各種配合成分を、任意の公知の混合手段を用いて混合することにより製造することができる。例えば、ゲルローションは、上述の各種配合成分を、同時に又は任意の順に混合装置内へ供給し、該混合装置内で溶融混合することにより製造することができる。この溶融混合の手段についても特に制限はなく、任意の公知の手段を採用することができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー、配合釜などの混合装置を用いた手段が挙げられる。
【0079】
[吸収層]
上述の実施形態の生理用ナプキン1において、吸収層4は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の長手方向L及び幅方向Wの中央部を中心にして、長手方向Lの一方側端縁近傍から他方側端縁近傍にわたる長手方向Lの広範囲の領域に延在するとともに、幅方向Wにおいても、当該幅方向Wの一方側端縁近傍から他方側端縁近傍にわたる広範囲の領域に延在しており、さらに、2つの長手方向端縁が長手方向外方側に向かって円弧状に突出してなる、縦長の外形形状を有している。
【0080】
かかる吸収層4は、生理用ナプキン1の厚さ方向Tにおいて、液透過性層2と液不透過性層3の間に配置されて、液透過性層2を厚さ方向Tに透過してきた経血等の排泄液を吸収して保持し得る、所定の吸液性及び液保持性を備えた吸収性部材によって構成されている。
【0081】
本発明において、吸収層として用い得る吸収性部材は、少なくとも排泄液等の液体を吸収して保持し得るものであれば特に制限されず、当分野において公知の任意の吸収性部材を採用することができる。そのような吸収性部材としては、例えば、吸収性材料によって構成される少なくとも一つの吸収コアを、親水性を有するティッシュ等のコアラップシートで覆ったものなどが挙げられる。ここで、吸収コアを構成する吸収性材料としては、例えば、親水性繊維や高吸収性ポリマーなどが挙げられ、更に具体的には、粉砕パルプ、コットン、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維;アクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収性ポリマーからなる粒状物;これらを任意に組み合わせた混合物などが挙げられる。
【0082】
本発明において、吸収層の外形形状や各種寸法、坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の吸収性能や柔軟性、強度等に応じた任意の形状(例えば、長方形、楕円形、砂時計形等)や各種寸法、坪量等を採用することができる。また、吸収層が配置される位置についても、吸収性物品の長手方向中央部を含む位置であれば特に制限されず、吸収層は、例えば吸収性物品における長手方向の一方側寄り(例えば、前方側寄り)の位置に偏って配置されていてもよい。
【0083】
[液不透過性層]
上述の生理用ナプキン1において液不透過性層3は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の長手方向Lの一方側端縁から他方側端縁にわたって延在し、且つ、生理用ナプキン1の幅方向Wの一方側端縁から他方側端縁にわたって延在する、縦長の外形形状を有している。
【0084】
かかる液不透過性層3は、生理用ナプキン1の厚さ方向Tにおいて相対的に非肌対向面側T2の位置(より具体的には、吸収層4の非肌対向面側T2の位置)に配置されて、着用者の下着等の着衣に対向する面、すなわち生理用ナプキン1の非肌対向面側T2の表面を形成するものであり、吸収層4を透過してきた経血等の排泄液が生理用ナプキン1の外部へ漏出するのを防ぐ、所定の液不透過性を有するシート状部材(液不透過性シート)によって構成されている。
【0085】
なお、液不透過性層3の非肌対向面側T2の表面には、生理用ナプキン1を着用者の下着等の着衣の内面に粘着固定するための粘着部(不図示)が配置されている。
【0086】
本発明において、液不透過性層として用い得るシート状部材は、吸収性物品の液不透過性層として用い得る諸特性(例えば、液不透過性、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、任意の疎水性の熱可塑性樹脂繊維(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系繊維、芯鞘型等の各種複合繊維など)によって形成された疎水性不織布;PEやPP等の疎水性の熱可塑性樹脂によって形成された有孔又は無孔の樹脂フィルム;該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体;SMS不織布等の積層不織布などの公知の液不透過性のシート状部材を採用することができる。
【0087】
なお、液不透過性層の肌対向面側には、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルムによって形成された防漏シートが配置されていてもよい。
【0088】
また、液不透過性層は、排泄液等の液体を透過しないものの、所定の通気性を備えていることが好ましい。
【0089】
本発明において、液不透過性層の外形形状や各種寸法、坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の防漏性能や通気性、強度等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0090】
なお、本発明は、上述した実施形態の生理用ナプキンのほかに、パンティーライナーや(軽)失禁パッド、使い捨ておむつ等の様々な吸収性物品に適用することができる。また、本発明の吸収性物品は、上述した実施形態等に限定されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 生理用ナプキン
2 液透過性層
3 液不透過性層
4 吸収層
5 ゲルローション