(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】基板の受け渡し方法及び基板受け渡し装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2020213320
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】新藤 健弘
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-199735(JP,A)
【文献】特開2018-133513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0260589(US,A1)
【文献】特開2010-205885(JP,A)
【文献】特開2010-056223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板搬送装置の基板を保持する保持部が先端に設けられた搬送アームを伸ばして、昇降自在に構成された昇降部材が配設された領域の上方に
前記保持部を
水平に移動させる工程と、
伸ばされた搬送アームの下降による基板を保持した前記保持部の下降と前記昇降部材の上昇とを同時に行い、前記保持部から前記昇降部材に基板を受け渡し、または、基板を支持した前記昇降部材の下降と
伸ばされた搬送アームの上昇による前記保持部の上昇とを同時に行い、前記昇降部材から前記保持部に基板を受け渡す工程とを、含む、基板の受け渡し方法。
【請求項2】
前記保持部は、複数枚の基板を保持可能に構成され、
前記受け渡す工程は、前記保持部から前記昇降部材に、または、前記昇降部材から前記保持部に、複数枚の基板を同時に受け渡す、請求項1に記載の基板の受け渡し方法。
【請求項3】
昇降自在に構成された昇降部材と、
前記昇降部材の昇降を駆動する駆動部と、
昇降自在且つ
伸縮により前記昇降部材に対して進退自在に構成された
搬送アームを有し、
前記搬送アームの先端に基板を保持する保持部
が設けられた基板搬送装置と、
前記
搬送アームの昇降及び
伸縮による前記昇降部材に対する進退を駆動する他の駆動部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記搬送アームを伸ばして、前記昇降部材が配設された領域の上方に前記保持部を
水平に移動させる工程と、
伸ばされた搬送アームの下降による基板を保持した前記保持部の下降と前記昇降部材の上昇とを同時に行い、前記保持部から前記昇降部材に基板を受け渡し、または、
伸ばされた搬送アームの上昇による基板を支持した前記昇降部材の下降と前記保持部の上昇とを同時に行い、前記昇降部材から前記保持部に基板を受け渡す工程とが、実行されるように、前記駆動部及び前記他の駆動部を制御する、基板受け渡しシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板の受け渡し方法及び基板受け渡し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェハを載置台上に載せて処理するにあたり、ウェハの搬送機構であるピンセットと載置台との間でウェハを受け渡す方法が開示されている。この方法では、3本の昇降ピンが載置台の上面から突出し、また、ピンセットが載置台の真上に達し、ウェハを受け渡す態勢に入る。次いでピンセットが下降して、ウェハを昇降ピン上に乗せた後、ピンセットが載置台から後退する。引き続いて、昇降ピンが載置台内へ退没し、載置台上にウェハを載置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板搬送装置の基板を保持する保持部と昇降自在に構成された昇降部材との間での基板の受け渡しに要する時間を短縮する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板の受け渡し方法であって、基板搬送装置の基板を保持する保持部が先端に設けられた搬送アームを伸ばして、昇降自在に構成された昇降部材が配設された領域の上方に前記保持部を水平に移動させる工程と、伸ばされた搬送アームの下降による基板を保持した前記保持部の下降と前記昇降部材の上昇とを同時に行い、前記保持部から前記昇降部材に基板を受け渡し、または、基板を支持した前記昇降部材の下降と伸ばされた搬送アームの上昇による前記保持部の上昇とを同時に行い、前記昇降部材から前記保持部に基板を受け渡す工程とを、含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板搬送装置の基板を保持する保持部と昇降自在に構成された昇降部材との間での基板の受け渡しに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかる基板受け渡しシステムとしてのウェハ処理システムの構成の概略を示す平面図である。
【
図2】搬送アームの構成の概略を示す斜視図である。
【
図3】真空処理室内の構成の一部のみを概略的に示す図である。
【
図4】ウェハ処理時の真空処理室内の様子を模式的に示す図である。
【
図5】ウェハ処理時の真空処理室内の様子を模式的に示す図である。
【
図6】ウェハ処理時の真空処理室内の様子を模式的に示す図である。
【
図7】ウェハ処理時の真空処理室内の様子を模式的に示す図である。
【
図8】従来のウェハの受け渡し方法を説明するための図である。
【
図9】本実施形態にかかる受け渡し方法が適用されるウェハ処理システムの他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例えば半導体デバイス等の製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板に対して、成膜処理、エッチング処理等の処理が、減圧雰囲気下で行われる。上述の処理は、基板が載置される載置台を有する処理装置で行われる。
【0009】
処理装置への基板の搬入出は、基板を保持する保持部であるピックを備えた基板搬送装置を用いて行われている。また、基板搬送装置のピックから処理装置の載置台への基板の載置は、昇降自在に構成され基板を支持する昇降ピンを介して行われる。従来、この昇降ピンを介した基板の載置は例えば以下のようにして行われる。すなわち、昇降ピンを載置台の上面から突出させた状態で、基板を保持した基板搬送装置のピックを昇降ピンの上方に移動させ、その後、ピックを下降させることで、基板が昇降ピンに受け渡される。そして、ピックを退避させると共に、昇降ピンを下降させることで、載置台に基板が載置される。
【0010】
しかし、上述の方法は、基板の受け渡しに要する時間の点で改善の余地がある。
【0011】
そこで、本開示にかかる技術は、基板搬送装置のピックと昇降部材との間での基板の受け渡しを高速で行う。
【0012】
以下、本実施形態にかかる基板の受け渡し方法及び基板受け渡しシステムを、図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<ウェハ処理システム>
図1は、本実施形態にかかる基板受け渡しシステムとしてのウェハ処理システムの構成の概略を示す平面図である。
図2は、搬送アームの構成の概略を示す斜視図である。
図3は、後述の真空処理室内の構成の一部のみを概略的に示す図である。
【0014】
図1のウェハ処理システム1は、基板としてのウェハWに対して、例えば成膜処理、拡散処理、エッチング処理等の所定の処理を減圧下で行うものである。
このウェハ処理システム1は、複数のウェハを収容可能なキャリアCが搬入出されるキャリアステーション10と、減圧下でウェハWに所定の処理を施す複数の各種処理装置を備えた処理ステーション11とを一体に接続した構成を有している。キャリアステーション10と処理ステーション11は、2つのロードロック装置12、13を介して連結されている。
【0015】
ロードロック装置12、13は、室内を大気圧状態と真空状態とに切り替えられるように構成されたロードロック室12a、13aを有する。ロードロック室12a、13aそれぞれには、ウェハWを支持する支持部材(図示せず)が設けられている。
また、ロードロック装置12、13は、後述する大気圧搬送装置21と真空搬送装置30を連結するように設けられている。
【0016】
キャリアステーション10は、キャリア載置台20と、キャリア載置台20に隣接して設けられた大気圧搬送装置21とを有している。
【0017】
キャリア載置台20には、キャリアCを複数、例えば3つ並べて載置できるように構成されている。
大気圧搬送装置21は、室内が大気圧下とされる大気搬送室22を有する。大気搬送室22は、ロードロック装置12、13のロードロック室12a、13aとゲートバルブG1、G2を介して接続されている。大気搬送室22内にはウェハ搬送機構23が設けられている。ウェハ搬送機構23は、大気圧下において、キャリア載置台20上のキャリアCとロードロック室12a、13aとの間でウェハWを搬送できるように構成されている。
【0018】
キャリアステーション10には、大気圧搬送装置21に隣接して設けられたアライナ24をさらに有する。アライナ24は、ウェハWのノッチ等を認識してウェハWの向きの調整を行う。
【0019】
処理ステーション11は、基板搬送装置としての真空搬送装置30と処理装置40~43を有している。
【0020】
真空搬送装置30は、室内が減圧状態(真空状態)に保たれる真空搬送室31を有する。真空搬送室31は、密閉可能に構成された筐体からなり、例えば平面視において略多角形状(図示の例では六角形状)をなすように形成されている。真空搬送室31は、ロードロック装置12、13のロードロック室12a、13aとゲートバルブG3、G4を介して接続されている。また、真空搬送室31は、後述の真空処理室44~47それぞれとゲートバルブG5~G8を介して接続されている。真空搬送室31内には、処理装置40~43の後述の真空処理室44~47との間でウェハWを搬送する、基板搬送機構としてのウェハ搬送機構32が設けられている。
【0021】
ウェハ搬送機構32は、搬送アーム32aを1つ有している。なお、ウェハ搬送機構32に設けられる搬送アーム32aは、複数であってもよい。搬送アーム32aは例えば多関節アームから構成される。
【0022】
搬送アーム32aは、
図2に示すように、その先端に保持部としてのピック32bが設けられている。ピック32bは昇降自在に構成されており、具体的には、搬送アーム32a全体の昇降に合わせて昇降するようにピック32bは構成されている。また、ピック32bは、処理装置40~43に対して進退自在に構成されており、具体的には、搬送アーム32aが伸縮することにより処理装置40~43それぞれの支持ピン110に対して進退するように構成されている。ピック32bは、ロードロック室12a、13aそれぞれに対しても進退自在に構成されており、具体的には、搬送アーム32aが伸縮することによりロードロック室12a、13aそれぞれの支持部材(図示せず)に対して進退するように構成されている。
そして、ウェハ搬送機構32は、搬送アーム32aのピック32bによってウェハWを保持しながら搬送する構成となっている。
【0023】
また、ウェハ搬送機構32は、基台32cを有している。基台32cは、搬送アーム32aの根元部分を軸支する。基台32cには、処理装置40~43それぞれの支持ピン110に対するピック32bの進退、ロードロック室12a、13aそれぞれの支持部材(図示せず)に対するピック32bの進退を駆動する駆動部32dが設けられている。駆動部32dは、搬送アーム32aの基台32cを中心とした回転も駆動する。また、駆動部32dは、搬送アーム32aの昇降すなわちピック32bの昇降も駆動する。駆動部32dは、上述の進退、回転、昇降のための駆動力を発生するモータ等のアクチュエータ(図示せず)を有する。
【0024】
処理装置40~43は、ウェハWに対して、例えば成膜処理、拡散処理、エッチング処理等の所定の処理を減圧下で行う。また、
図1に示すように、処理装置40~43はそれぞれ、減圧下の室内でウェハWに対して上記所定の処理が行われる真空処理室44~47を有する。
なお、処理装置40~43には、ウェハ処理の目的に応じた処理を行う装置を、任意に選択することができる。
【0025】
処理装置40の真空処理室44内には、
図3に示すように、載置台100が設けられている。
真空処理室44内における載置台100の下方には、昇降部材としての支持ピン110が上下方向に延びるように複数(例えば3本)設けられている。これら支持ピン110は、当該支持ピン110を昇降させる昇降機構120に接続されている。昇降機構120は、例えば、複数の支持ピン110を支持する支持部材121と、支持部材121の昇降すなわち支持ピン110の昇降を駆動する駆動部122とを有する。駆動部122は、上記昇降のための駆動力を発生するモータ等のアクチュエータ(図示せず)を有する。支持ピン110は、昇降することにより、載置台100とピック32bとの間でのウェハWの受け渡し等のために、載置台100を厚み方向すなわち上下方向に貫通する貫通孔100bを介して、当該載置台100の上面(すなわち載置面)100aから突没する。
【0026】
真空処理室45~47内にも、真空処理室44と同様に、載置台100や支持ピン110等が設けられている。
【0027】
さらに、
図1に示すように、ウェハ処理システム1には、制御部50が設けられている。制御部50は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1における各種処理を実現するプログラムが格納されている。例えば、プログラム格納部には、ピック32bに対する駆動部32d、支持ピン110に対する駆動部122を制御し、後述のウェハ処理を実現するプログラムが格納されている。
【0028】
<ウェハ処理>
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われるウェハ処理の一例について
図4~
図7を用いて説明する。
図4~
図7は、ウェハ処理時の真空処理室44内の様子を模式的に示す図であり、真空処理室44内の構成の一部のみ示している。なお、以下の処理は、制御部50による制御の下、行われる。
【0029】
(S1:真空搬送装置30への搬入)
まず、ウェハWが真空搬送装置30へ搬入される。具体的には、まず、例えば、ウェハ搬送機構23の搬送アーム23aによって、ウェハWが、キャリアCから取り出され、アライナ24に搬入される。続いて、アライナ24においてウェハWの向きの調整が行われる。次いで、ウェハWが、搬送アーム23aによって、アライナ24から取り出されると共に、ゲートバルブG1が開状態とされる。その後、ウェハWが、搬送アーム23aによって、ロードロック装置12のロードロック室12aに搬入され、ロードロック室12a内の支持部材(図示せず)に、受け渡される。
【0030】
続いて、搬送アーム23aがロードロック室12aから抜き出され、また、ゲートバルブG1が閉状態とされてロードロック室12a内が密閉され、減圧される。
【0031】
ロードロック室12a内の圧力が所定の圧力以下となると、ゲートバルブG3が開状態とされ、搬送アーム32aのピック32bによって、ウェハWが、ロードロック室12a内の支持部材(図示せず)から受け取られ、ロードロック室12aから取り出される。その後、ゲートバルブG3が閉状態とされる。
【0032】
(S2:処理装置40への搬入)
次に、ウェハWが例えば処理装置40へ搬入される。
【0033】
(S2-1:ピック32bの移動)
具体的には、まず、処理装置40における、支持ピン110が配設された領域すなわち載置台100の上方に、ウェハWを保持したピック32bが移動される。より具体的には、まず、
図4に示すように、支持ピン110の上端が第1ピン高さH11となるまで支持ピン110が上昇される。第1ピン高さH11は、ピック32bによるウェハWの搬入出時の支持ピン110の高さである。具体的には、第1ピン高さH11は、支持ピン110が載置台100の上面100aから突出する高さであり、且つ、後述の第2ピン高さH12及び第1ピック高さH21より低い。支持ピン110の上端が第1ピン高さH11となった後、ゲートバルブG5が開状態とされ、その後、ウェハWを保持したピック32bが、
図5に示すように、第1ピック高さH21での水平移動により、真空処理室44内に挿入され、支持ピン110の上方の位置まで(具体的には、ピック32bに保持されたウェハWと支持ピン110全てが平面視で重なる位置まで)移動される。第1ピック高さH21は、ピック32bによるウェハWの搬入出時の当該ピック32bの高さである。具体的には、第1ピック高さH21は第1ピン高さH11及び後述の第2ピン高さH12より高い。また、第1ピック高さH21と第1ピン高さH11との間の距離L1は、ウェハWを保持したピック32bが水平移動する際にピック32b及びウェハWと支持ピン110とが接触しないように設定されている。
【0034】
(S2-2:ピック32bから支持ピン110への受け渡し)
ウェハWを保持したピック32bの水平移動後、
図6に示すように、ピック32bの下降と、支持ピン110の上昇とが同時に行われ、
図7に示すように、ピック32bから支持ピン110にウェハWが受け渡される。具体的には、ピック32bの第1ピック高さH21から第2ピック高さH22までの下降と、支持ピン110の上端が第1ピン高さH11から第2ピン高さH12となるような支持ピン110の上昇とが同時に行われる。これにより、ウェハWは、第1ピック高さH21と第2ピック高さH22との間且つ第1ピン高さH11と第2ピン高さ位置H12との間の高さで、ピック32bから支持ピン110に受け渡され、上端が第2ピン高さH12に位置する支持ピン110に支持された状態となる。例えば、第2ピック高さH22は第1ピン高さH11より低く、また、第2ピン高さH12も第1ピック高さH21より低い。
第2ピン高さH12と第2ピック高さH22との間の距離L2及び第2ピック高さH22と載置台100の上面100aとの間の距離L3は、以下のように設定されている。すなわち、上記距離L3は、ピック32bの抜き出しや挿入のために当該ピック32bが第2ピック高さH22で水平移動する際に、支持ピン110に支持されたウェハW及び載置台100の上面100aとピック32bとが接触しないように設定されている。
【0035】
(S2-3:載置台100への載置)
ピック32bから支持ピン110へのウェハWの受け渡し後、支持ピン110により載置台100へウェハWが載置される。具体的には、ピック32bが、第2ピック高さH22での水平移動により、載置台100から退避され、すなわち、支持ピン110から退避され、真空処理室44からも退避される。次いで、支持ピン110が、その上端が載置台100中に没するように、下降される。これにより、ウェハWが支持ピン110から載置台100の上面100aに受け渡され載置される。その後、ゲートバルブG5が閉状態とされ、真空処理室44が密閉される。
【0036】
(S3:処理)
続いて、処理装置40において、ウェハWに対し、エッチング処理等の処理が行われる。
【0037】
(S4:処理装置40からの搬出)
その後、ウェハWが、処理装置40から搬出される。
【0038】
(S4-1:載置台100からの取り除き)
具体的には、まず、処理装置40において、支持ピン110により、載置台100からウェハWが取り除かれる。より具体的には、支持ピン110の上端が第2ピン高さH12となるまで支持ピン110が上昇される。これにより、ウェハWが載置台100の上面100aから取り除かれ支持ピン110に受け渡され、上端が第2ピン高さH12に位置する支持ピン110に支持された状態となる。
【0039】
(S4-2:ピック32bの移動(進入))
支持ピン110の上昇後、支持ピン110が配設された領域すなわち載置台100の上方に、ピック32bが移動され進入する。より具体的には、まず、ゲートバルブG5が開状態とされ、その後、ピック32bが、第2ピック高さH22での水平移動により、真空処理室44内に挿入され、支持ピン110に支持されたウェハWと載置台100の上面100aとの間に進入する。
【0040】
(S4-3:支持ピン110からピック32bへの受け渡し)
ピック32bの水平移動後、ピック32bの上昇と、支持ピン110の下降とが同時に行われ、支持ピン110からピック32bにウェハWが受け渡される。具体的には、ピック32bの第2ピック高さH22から第1ピック高さH21までの上昇と、支持ピン110の上端が第2ピン高さH12から第1ピン高さH11となるような支持ピン110の下降とが同時に行われる。これにより、ウェハWは、支持ピン110からピック32bに受け渡され、第1ピック高さH21に位置するピック32bに保持された状態となる。
【0041】
(S4-4:ピック32bの退避及び支持ピン110の下降)
ウェハWがピック32bに保持された後、ピック32bが真空処理室44から退避されると共に、支持ピン110が下降される。より具体的には、まず、ピック32bが、第1ピック高さH21での水平移動により、載置台100及び支持ピン110の上方から退避され、真空処理室44内からも退避される。次いで、支持ピン110が、その上端が載置台100中に没するように下降される。その後、ゲートバルブG5が閉状態とされる。
【0042】
(S5:ウェハWの真空搬送装置30からの搬出)
次いで、上記工程S1と逆の手順で、ウェハWが、真空搬送装置30から搬出され、キャリアCに戻される。ただし、キャリアCに戻される過程において、アライナ24へのウェハWの搬入出及びアライナ24におけるウェハWの向きの調整は省略される。
これにより一連のウェハ処理が終了する。
【0043】
以上のように、本実施形態にかかるウェハWの受け渡し方法は、支持ピン110が配設された領域の上方に、ピック32bを移動させる工程を含む。また、本受け渡し方法は、ウェハWを保持したピック32bの下降と支持ピン110の上昇とを同時に行い、ピック32bから支持ピン110にウェハWを受け渡す工程と、ウェハWを支持した支持ピン110の下降とピック32bの上昇とを同時に行い、支持ピン110からピック32bにウェハWを受け渡す工程とを含む。つまり、本受け渡し方法は、ピック32bと支持ピン110との間でウェハWを受け渡す際に、ピック32b及び支持ピン110のうちウェハWを保持している方の下降と、保持していない方の上昇とを同時に行う。例えば、ウェハWを保持したピック32bの第1ピック高さH21から第2ピック高さH22までの下降と、支持ピン110の上端が第1ピン高さH11から第2ピン高さH12となるような支持ピン110の上昇とが同時に行われる。また、本受け渡し方法における、第1ピック高さH21と第1ピン高さH11との間の距離L1は、前述のように、ウェハWを保持したピック32bが水平移動する際にピック32b及びウェハWと支持ピン110とが接触しないように設定される。言い換えると、本受け渡し方法では、第1ピック高さH21は、第1ピン高さH11を基準に、ウェハ搬入出時にピック-ピン間で接触が生じない範囲で設定される。
【0044】
それに対し、従来のウェハWの受け渡し方法では、ピック32bと支持ピン110との間でウェハWを受け渡す際に、ピック32b及び支持ピン110のうちいずれか一方のみ昇降され、他方は固定される。例えば、従来のウェハWの受け渡し方法では、
図8に示すように、支持ピン110の上端が載置台100の上面100aから突出する受け渡し高さH31で支持ピン110が固定された状態で、ウェハWを保持したピック32bの第1ピック高さH41から第2ピック高さH42までの下降が行われ、これにより、ピック32bからウェハWが受け渡される。また、従来の方法における、第1ピック高さH1と支持ピン110の受け渡し高さH31との間の距離L4は、本受け渡し方法における距離L1と同様、ウェハWを保持したピック32bが水平移動する際にピック32b及びウェハWと支持ピン110とが接触しないように設定される。言い換えると、従来の方法では、第1ピック高さH41は、上記受け渡し高さH31を基準に、ウェハ搬入出時にピック-ピン間で接触が生じない範囲で設定される。
【0045】
ここで、従来の方法における受け渡し高さH31と、本受け渡し方法における第2ピン高さH12との高さが同一である場合を考える。この場合に、本受け渡し方法における、第2ピン高さH12より低い第1ピン高さH11は、従来の方法における上記受け渡し高さH31より低くなる。そして、前述のように、本受け渡し方法では、第1ピック高さH21は第1ピン高さH11を基準に、従来の方法では、第1ピック高さH41は上記受け渡し高さH31を基準に、それぞれウェハ搬入出時にピック-ピン間で接触が生じない範囲で設定される。そのため、本受け渡し方法では、ウェハ搬入出時にピック-ピン間で接触が生じない範囲で(例えば方受け渡し方法における上記距離L1が従来の方法における上記距離L4と等しくなるように)、第1ピック高さH21を、従来の方法における第1ピック高さH41に比べて低くすることができる。
【0046】
また、上述のように、従来の方法における受け渡し高さH31と、本受け渡し方法における第2ピン高さH12との高さが同一である場合に、本受け渡し方法は、第1ピック高さH21を、従来の方法における第1ピック高さH41に比べて低くすることができるため、以下の効果も有する。すなわち、従来の方法における第2ピック高さH42と本受け渡し方法における第2ピック高さH22との高さが同一である場合、本受け渡し方法では、ピック32bと支持ピン110との間でウェハWを受け渡す際に、ピック32bの上下方向の移動距離すなわち昇降距離を従来の方法に比べて短くすることができる。
したがって、本受け渡し方法によれば、ピック32bと支持ピン110との間でのウェハWの受け渡しを短時間すなわち高速で行うことができる。
【0047】
ピック32bと支持ピン110との間でのウェハWの受け渡しに要する時間は、例えはピック32bの昇降すなわち搬送アーム32aの昇降を高速で行うことでも短くすることができる。しかし、搬送アーム32aの昇降を高速で行うと、搬送アーム32aの振動が大きくなり、この振動により、ピック32b上でウェハWがずれたり、ピック32bと支持ピン110との間でウェハを適切に受け渡しができなくなったりする。
それに対し、本受け渡し方法によれば、ピック32bと支持ピン110との間でウェハWを受け渡す際の、ピック32bの昇降距離を短くすることができるため、ピック32bの昇降を高速で行わなくても、ウェハWの受け渡しを短時間で行うことができる。つまり、本受け渡し方法によれば、搬送アーム32aの振動を大きくさせずに、ピック32bと支持ピン110との間でのウェハWの受け渡しを短時間で行うことができる。
【0048】
さらに、本受け渡し方法によれば、上述のようにピック32bの昇降距離を短くすることができるため、ピック32bの昇降時の消費電力を抑えることができ、また、ゲートバルブG5~G8が設けられる処理装置40~43の開口(具体的には開口高さ)を小さくすることができる。上記開口が小さい方が、処理装置40~43において良好な処理結果を得ることができる。さらに、上記開口を小さくすることができるため、ゲートバルブG5~G8も小型化できる。ゲートバルブG5~G8を小型化することにより、ゲートバルブG5~G8の開閉用のエア消費量やゲートバルブG5~G8の開閉時の当該ゲートバルブG5~G8の移動量も削減することができる。また、上述のようにゲートバルブG5~G8の移動量を削減することにより、ゲートバルブG5~G8の開閉まで含めた、ピック32bと支持ピン110との間でのウェハWの受け渡しに要する時間をさらに短縮することができる。
さらに、ゲートバルブG5~G8及び当該ゲートバルブG5~G8が設けられる開口を小さくすることができるため、ウェハ処理システム1全体として、小型化することができる。
【0049】
<本受け渡し方法が適用されるウェハ処理システムの他の例>
図9は、本受け渡し方法が適用される他の例のウェハ処理システムを説明するための図であり、上記ウェハ処理システムが有する真空搬送装置に設けられたウェハ搬送機構の構成の概略を示す平面図である。
【0050】
図9のウェハ搬送機構200は、
図3のウェハ搬送機構32と、搬送アームの構成が異なり、具体的には、搬送アームの先端に設けられた、ウェハWを保持する保持部の構成が異なる。
図3のウェハ搬送機構32の搬送アーム32aの保持部すなわちピック32bは、保持可能なウェハWの枚数は1枚であったのに対し、ウェハ搬送機構200の搬送アーム201の保持部202は、複数枚(例えば4枚)のウェハWを一括して保持可能に構成されている。
【0051】
搬送アーム201の保持部202は、具体的には、長板部203を一対有する。以下では、長板部の一方を第1長板部203aと、他方を第2長板部203bとして説明する。
第1長板部203a及び第2長板部203bはそれぞれ、水平方向に延びるように、細長い板状に形成されている。また、第1長板部203a及び第2長板部203bは、互いに平行となるように設けられている。第1長板部203aの長さは、当該第1長板部203aの長手方向に沿って並んだ複数枚(本例では2枚)のウェハWを一括して保持可能な長さである。また、第1長板部203aは、その幅(水平面内における長手方向に垂直方向の長さ)が、例えばウェハWの直径より細く形成されている。第2長板部203bの長さ及び幅は第1長板部203aと同様である。
【0052】
上述のように構成されたウェハ搬送機構200は、複数枚のウェハWを同時に処理装置に搬入する。この処理装置には、
図3の載置台100と同様な載置台が、ウェハ搬送機構200が保持するウェハWの枚数に対応した数、設けられており、また、各載置台に対して、
図3の支持ピン110と同様な支持ピンが設けられている。そして、この処理装置は、複数枚のウェハWに対し、エッチング処理等の処理を同時に行う。
【0053】
上述のような処理装置と、ウェハ搬送機構200が設けられた真空搬送装置とを有するウェハ処理システムでは、ウェハ搬送機構200の保持部202から、処理装置内に設けられた支持ピンに、または、上記支持ピンから保持部202に、複数枚のウェハWが同時に受け渡される。このような複数枚のウェハWの同時の受け渡しにも、本受け渡し方法は適用することができる。
【0054】
また、ウェハ搬送機構200のように、保持部202がウェハWを一括して保持可能に構成されている場合、搬送アーム201が、大型化するため、当該搬送アーム201の剛性(具体的には第1及び第2長板部203a、203bの剛性)が低下すること等から、高速で昇降させたときに振動しやすくなる。このような振動しやすい搬送アーム201を有するウェハ搬送機構200を備えたウェハ処理システムであっても、本受け渡し方法を適用することにより、搬送アーム201の振動を大きくさせずに、保持部202と処理装置内の支持ピンとの間における複数枚のウェハWの同時受け渡しを短時間で行うことができる。
【0055】
<変形例>
なお、以上では、本受け渡し方法について、処理装置内に設けられた昇降自在な支持ピンと搬送アームの保持部との間でウェハを受け渡す例で説明した。ただし、ロードロック室内の支持部材が昇降自在に構成されているときは、本受け渡し方法は、ロードロック室内の支持部材と搬送アームの保持部との間でウェハを受け渡す場合にも適用することができる。
【0056】
以上では、ロードロック室は、上下方向に多段に構成されていなかったが、多段に構成されていてもよい。ロードロック室が多段に構成されている場合、真空搬送装置に設けるウェハ搬送機構に、搬送アームの昇降機構が必須となる。本受け渡し方法によれば、ロードロック室が上下方向に多段に構成された場合において、この場合に必須となる搬送アームの昇降機構を有効活用することができる。
【0057】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 ウェハ処理システム
30 真空搬送装置
32b ピック
32d 駆動部
50 制御部
110 支持ピン
122 駆動部
202 保持部
W ウェハ