(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ダイボンディング装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2021010711
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 明
(72)【発明者】
【氏名】名久井 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】佐々 匠
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029650(JP,A)
【文献】特開2020-072125(JP,A)
【文献】特開2005-117019(JP,A)
【文献】特開2017-224640(JP,A)
【文献】特開2013-065628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングテープと接触する複数のブロックと、前記複数のブロックの外側に設けられ、前記ダイシングテープが吸着可能なドームプレートと、を有し、前記複数のブロックによりダイを前記ダイシングテープの下から突き上げる突上げユニットと、
前記ダイを吸着するコレットを有し、上下動が可能なヘッドと、
前記突上げユニットおよび前記ヘッドの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ドームプレートにより前記ダイシングテープを吸着し、
前記ヘッドにより前記コレットを前記ダイに着地し、
前記コレットにより前記ダイを吸着し、
前記ドームプレートから前記複数のブロックを上昇させ、
前記複数のブロックにおいて最も外側に配置される最外周のブロックは前記ダイが前記ダイシングテープから剥離する高さにおいて上昇を停止させ、
前記複数のブロックにおける前記最外周のブロック以外の内側のブロックを
前記剥離する高さからさらに所定の高さまで上昇させ
、
前記最外周のブロックを前記所定の高さとは異なる前記剥離する高さから下降させ、
前記最外周のブロックの内側に隣接する隣接ブロックを前記所定の高さから下降させ、
前記複数のブロックにおいて最も内側に配置される最内ブロックの外側に隣接するブロックを前記所定の高さから下降させるよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項2】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記制御部は、
さらに、前記ヘッドにより前記コレットを上昇させるよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項3】
請求項2のダイボンディング装置において、さらに、
前記複数のブロックのそれぞれに連結される複数の駆動軸と、
前記複数の駆動軸を駆動する駆動部と、
を備え、
前記制御部は前記駆動部により前記複数の駆動軸を独立に上下動させるよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項4】
請求項2のダイボンディング装置において、さらに、
前記最外周のブロック以外のブロックのそれぞれに連結される複数の駆動軸と、
前記複数の駆動軸を駆動する駆動部と、
前記最外周のブロックと前記隣接ブロックとの間に設けられる圧縮コイルばねと、
を備え、
前記制御部は前記駆動部により前記複数の駆動軸を独立に上下動させるよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項5】
請求項2のダイボンディング装置において、
前記最外周のブロックが前記ダイシングテープに接触する部分の幅は、前記複数のブロックの内最も狭く、または、前記隣接ブロックと同じであり、
前記最内ブロックが前記ダイシングテープに接触する部分の幅は、前記複数のブロックの内最も広く、前記最内ブロックが前記ダイシングテープに接触する部分の面積は、前記ダイの面積の30%よりも小さいダイボンディング装置。
【請求項6】
請求項2のダイボンディング装置において、
前記最外周のブロックの外周側端部と前記ダイの外周側端部との距離であるオーバハング量は前記最外周のブロックが前記ダイシングテープに接触する部分の幅以下であって、前記ダイシングテープの厚さ以上であるダイボンディング装置。
【請求項7】
請求項6のダイボンディング装置において、
前記オーバハング量は0.15mm以上であって0.45mm以下であるダイボンディング装置。
【請求項8】
請求項2のダイボンディング装置において、
前記最外周のブロックが停止する高さは0.075mm以上であって0.12mm以下であり、
前記所定の高さは0.15m以上であって0.2mm以下であるダイボンディング装置。
【請求項9】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記ヘッドはピックアップヘッドであり、
さらに、
前記ピックアップヘッドでピックアップされるダイを載置する中間ステージと、
前記中間ステージに載置されるダイを基板または既にボンディングされているダイの上にボンディングするボンディングヘッドと、
を備えるダイボンディング装置。
【請求項10】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記最外周のブロックは複数に分割され、径方向の位置の調整が可能に構成されているダイボンディング装置。
【請求項11】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記最外周のブロックは、前記ダイシングテープに接触する部分は交換可能に構成されているダイボンディング装置。
【請求項12】
ダイシングテープと接触する複数のブロックと、前記複数のブロックの外側に設けられ、前記ダイシングテープが吸着可能なドームプレートと、を有し、前記複数のブロックによりダイを前記ダイシングテープの下から突き上げる突上げユニットと、前記ダイを吸着するコレットを有し、上下動が可能なヘッドと、を備えるダイボンディング装置に、前記ダイシングテープを保持するウェハリングを搬入する搬入工程と、
前記突上げユニットで前記ダイを突き上げて前記コレットで前記ダイをピックアップするピックアップ工程と、
を備え、
前記ピックアップ工程は、
前記ドームプレートにより前記ダイシングテープを吸着し、
前記ヘッドにより前記コレットを前記ダイに着地し、
前記コレットにより前記ダイを吸着し、
前記ドームプレートから前記複数のブロックを上昇させ、
前記複数のブロックにおいて最も外側に配置される最外周のブロックは前記ダイが前記ダイシングテープから剥離する高さにおいて上昇を停止させ、
前記複数のブロックにおける前記最外周のブロック以外のブロックを
前記剥離する高さからさらに所定の高さまで上昇させ、
前記最外周のブロックを前記所定の高さとは異なる前記剥離する高さから下降させ、
前記最外周のブロックの内側に隣接する隣接ブロックを
前記所定の高さから下降させ、
前記複数のブロックにおいて最も内側に配置される最内ブロックの外側に隣接するブロックを
前記所定の高さから下降させ、
前記ヘッドにより前記コレットを上昇させる半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12の半導体装置の製造方法において、
さらに、前記ダイを基板または既にボンディングされているダイの上にボンディングするボンディング工程を備える半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13の半導体装置の製造方法において、
前記ピックアップ工程はさらに前記ピックアップしたダイを中間ステージに載置する工程を有し、
前記ボンディング工程はさらに前記中間ステージから前記ダイをピックアップする工程を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はダイボンディング装置に関し、例えば突上げユニットを備えるダイボンダに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ダイと呼ばれる半導体チップを、例えば、配線基板やリードフレームなど(以下、総称して基板という。)の表面に搭載するダイボンダにおいては、一般的に、コレット等の吸着ノズルを用いてダイを基板上に搬送し、押付力を付与すると共に、接合材を加熱することによりボンディングを行うという動作(作業)が繰り返して行われる。
【0003】
ダイボンダ等のダイボンディング装置によるダイボンディング工程の中には、半導体ウェハ(以下、ウェハという。)から分割されたダイを剥離する剥離工程がある。剥離工程では、ダイシングテープ裏面から突上げユニットによってダイを突き上げて、ダイ供給部に保持されたダイシングテープから、1個ずつ剥離し、コレット等の吸着ノズルを使って基板上に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ダイ積層パッケージや3D-NAND(3次元NANDフラッシュ)の出現によって、ウェハ(ダイ)はより薄くなってきている。ダイが薄くなると、ダイシングテープの粘着力に比べてダイの剛性が極めて低くなる。そのため、例えば、数十μm以下の薄ダイをピックアップするにはダイに掛かるストレスをより軽減させること(低ストレス化)が必要である。
【0006】
本開示の課題はダイに掛かるストレスをより軽減する技術を提供することにある。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、ダイボンディング装置は、突上げユニットと、前記ダイを吸着するコレットを有するヘッドと、制御部と、を備える。前記制御部は、ドームプレートによりダイシングテープを吸着し、前記ヘッドにより前記コレットを前記ダイに着地し、前記コレットにより前記ダイを吸着し、前記ドームプレートから複数のブロックを上昇させ、前記複数のブロックにおいて最も外側に配置される最外周のブロックは前記ダイが前記ダイシングテープから剥離する高さにおいて上昇を停止させ、前記複数のブロックにおける前記最外周のブロック以外のブロックをさらに所定の高さまで上昇させるよう構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ダイに掛かるストレスをより軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態におけるダイボンディング装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す突上げユニットの要部断面図である。
【
図4】ブロック突上げ時の問題点を説明する図である。
【
図5】実施形態におけるブロック突上げを説明する図である。
【
図6】実施形態におけるRMSの突上げシーケンスを説明する図である。
【
図7】ブロック突上げ時の問題点を説明する図である。
【
図8】第一変形例における突上げユニットの要部断面図である。
【
図10】第一変形例におけるブロック突上げを説明する図である。
【
図11】第二変形例における突上げユニットの構成および動作を説明する図である。
【
図12】第二変形例における突上げユニットの構成および動作を説明する図である。
【
図13】第二変形例における突上げユニットの構成および動作を説明する図である。
【
図14】第三変形例における突上げユニットの要部上面図である。
【
図15】第四変形例における突上げユニットの要部上面図である。
【
図16】実施例におけるダイボンダを上から見た概念図である。
【
図17】
図16において矢印A方向から見たときにピックアップヘッドおよびボンディングヘッドの動作を説明する図である。
【
図18】
図16に示すダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
【
図19】
図16に示すダイボンダを用いる半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態、変形例および実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【0011】
<実施形態>
まず、実施形態におけるダイボンディング装置について
図1を用いて説明する。
図1は実施形態におけるダイボンディング装置の構成を示す概略図である。
【0012】
実施形態におけるダイボンディング装置100は、メインコントローラ81aと、作動コントローラ81bと、モニタ83aとタッチパネル83bと、ブザー83gと、を有する制御部CNTを備える。ダイボンディング装置100は、さらに、作動コントローラ81bに制御されるXYテーブル86aと、Z駆動部86bと、突上げユニットTUと、を備える。ダイボンディング装置100は、さらに、Z駆動部86bにより上下動するヘッド(ボンディングヘッドまたはピックアップヘッド)BHと、ヘッドBHの先端に設けられるコレットCLTと、を備える。ダイボンディング装置100は、さらに、突上げユニットTUの位置を検出するセンサ87aと圧力および流量を検出するセンサ87bとコレットCLTのガス流量を検知するセンサ87cを備える。突上げユニットTUはダイシングテープを真空吸着する機能と、ダイシングテープにエアーを吹き上げる機能と、を備える。
【0013】
次に、突上げユニットTUについて
図2および
図3を用いて説明する。
図2は
図1に示す突上げユニットの要部断面図であり、ダイシングテープに接している状態を示している。
図3は
図2に示す突上げユニットの上面図である。
【0014】
突上げユニットTUの上面の周辺部に位置するドームプレートDPには、複数の吸引口DPaと、複数の吸引口DPaを連結する複数の溝DPbと、が設けられている。吸引口DPaの内部は、突上げユニットTUを上昇させてその上面をダイシングテープDTの裏面に接触させる際、図示しない吸引機構によって減圧される。このとき、ダイシングテープDTの裏面が下方に吸引され、ドームプレートDPの上面と密着する。
【0015】
突上げユニットTUの中心部には、ダイシングテープDTを上方に突き上げる四個のブロックBL1~BL4が組み込まれている。外側の三個のブロックBL1~BL3は四角筒状であり、最内側のブロックBL4は四角柱状である。四個のブロックBL1~BL4は、径が最も大きい第一のブロックBL1の内側に、それよりも径の小さい第二のブロックBL2が配置され、それよりも径の小さい第三のブロックBL3が配置され、さらにその内側に最も径の小さい第四のブロックBL4が配置されている。
【0016】
四個のブロックBL1~BL4のうち、最も径の大きい最外周のブロックBL1は、剥離の対象となるダイDよりも一回り径が小さい。これにより、ブロックBL1の上面の外周となる角部がダイDの外縁よりもわずかに内側に位置するようになるので、ダイDとダイシングテープDTが剥離する際の起点となる箇所(ダイDの最外周部)に両者を剥離させる力を集中させることができる。ここで、
図2における破線円A内に示すように、最外周のブロックBL1の端部よりダイDの外周が外側に突き出ていることをオーバハング(OH)という。オーバハングの長さはダイシングテープDTの厚さと同程度またはそれよりも大きいのが好ましい。
【0017】
ダイシングテープDTの厚さは、例えば、0.1mm程度である。オーバハングの長さは、例えば、0.1~0.5mm程度であり、0.15~0.45mmであるのがより好ましい。ブロックBL1がダイシングテープDTと接触する箇所であるブロック幅は、例えば、0.3~0.6mm程度であり、ブロックBL2のブロック幅は、例えば、0.6~1.2mm程度であり、ブロックBL3のブロック幅は、例えば、0.8~1.2mm程度である。
【0018】
四個のブロックBL1~BL4のそれぞれの上面の高さは、初期状態(ブロックBL1~BL4の非動作時)においては互いに等しく、また、ドームプレートDPの上面の高さと等しい、若しくは、低くなっている。
【0019】
図1に示すように、四個のブロックBL1~BL4は駆動部86cの四つの駆動軸であるニードルNDL4~NDL1により独立に上下運動が可能である。駆動部86cは、図示しないモータとモータの回転をカムまたはリンクによって上下動に変換するプランジャ機構とを備え、ニードルNDL4~NDL1に上下動を与える。
【0020】
例えば、突上げユニットTUは、四個のブロックBL1~BL4を同時に突上げ、その後さらに、内側のブロックBL2~BL4を同時に突上げ、その後さらに、ブロックBL3,BL4を同時に突上げ、その後さらに、ブロックBL4を突上げてピラミッド状にする動作を行うことができる。また、例えば、突上げユニットTUは、四個のブロックBL1~BL4を同時に突上げてからブロックBL1、ブロックBL2、ブロックBL3の順に下げる動作を行うことができる。後者の動作を本開示ではRMS(Reverse Multi Step)という。
【0021】
ここで、本実施形態をより明確にするため、ダイがダイシングテープから剥離するときの問題点についてRMSを例に
図4を用いて説明する。
図4はブロック突上げ時の問題点を説明する図であり、
図4(a)はオーバハングが短い場合の全ブロックを同時に最高地点まで突上げた状態を示す断面図であり、
図4(b)はオーバハングが長い場合の全ブロックを同時に最高地点まで突上げた状態を示す断面図である。
【0022】
図4(a)に示すように、オーバハングの長さ(LO1)を短くすることで最外周のブロックBL1の突上げ高さ(H)が低い高さでもピックアップするダイ(剥離対象ダイ)Dの変形が少なくダイDの外周が剥離する。これにより、ダイDへのストレスが小さくなる。しかし、剥離対象ダイDに隣接する周辺のダイ(周辺ダイ)Dpが変形しやすい。
【0023】
ブロックBL1の突上げ高さ(H)を
図4(a)示す高さ(H)と同じである場合、
図4(b)に示すように、オーバハングの長さ(LO2)を
図4(a)に示すオーバハングの幅(LO1)よりも長くすることにより周辺ダイDpの変形が少なくなる。しかし、
図4(b)に示すように、剥離対象ダイDの外周が剥離時の変形が大きくなる。これにより、ダイDへのストレスが大きくなる。なお、ダイDのサイズが同じである場合、
図4(b)に示すブロックのサイズ(WB2)は
図4(a)に示すブロックのサイズ(WB1)よりも小さくなる。
【0024】
最外周のブロックBL1により剥離対象ダイDの剥離起点を作ろうとするときに、上記相反する問題がある。そのため、剥離対象ダイDのみならず、周辺ダイDpの変形を低減する必要が有る。
【0025】
上記問題点を解決する本実施形態の概要について
図5を用いて説明する。
図5は実施形態におけるブロック突上げを説明する図であり、
図5(a)はブロック突上げの途中の状態を示す断面図であり、
図5(b)はブロック突上げの最終状態を示す断面図である。
【0026】
図5(a)に示すように、ブロックのサイズを大きくしてオーバハングを短くする。そして、四個のブロックBL1~BL4を突き上げる際、ダイDの外周が剥離した時点で最外周のブロックBL1の突上げを停止し、
図5(b)に示すように、内側のブロックBL2~BL4をさらに突上げることにより周辺ダイDpの変形を防止する。オーバハングの長さ(LO)は、上述したように、例えば、0.1~0.5mmである。また、最外周のブロックBL1を停止させる高さ(H1)は、例えば、0.075~0.12mmである。内側のブロックBL2~BL4を突上げる高さ(H2)は、例えば、0.15~0.2mmである。
【0027】
次に、突上げユニットTUの動作の設定方法および制御について
図1を用いて説明する。
【0028】
突上げユニットTUの四個のブロックBL1~BL4の動作を、ブロック毎およびステップ毎にステップの時間、ブロックの上昇または下降の速度、ブロックの高さ(位置)が設定されるタイムチャートレシピに基づいてメインコントローラ81aおよび作動コントローラ81bは四個のブロックBL1~BL4をそれぞれ駆動するニードルNDL4~NDL1を制御するよう構成される。
【0029】
設定項目の異なる複数のタイムチャートレシピを用意しておき、ユーザは、GUI(Graphical User Interface)によって複数のタイムチャートレシピから一つのタイムチャートレシピを選択し、選択したタイムチャートレシピの項目に設定値を入力する。または、ユーザは、予め設定値が入力されたタイムチャートレシピを外部機器からダイボンダ等の半導体製造装置にデータ通信するか、または、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)から半導体製造装置にインストールする。また、メインコントローラ81aはセンサ87a,87b,87c等により検知した状態に基づいてリアルタイムにタイムチャートレシピを書換えて作動コントローラ81bに指示して突上げ動作の変更が可能である。
【0030】
上述したように、タイムチャートレシピの設定により、突上げユニットTUの各ブロックBL1~BL4の動作を突上げ動作ステップの中で自由に設定することが可能であり、突上げユニットTUは種々の動作が可能である。その動作例を以下に説明する。
【0031】
RMSの動作について
図6を用いて説明する。
図6は実施形態におけるRMSの突上げシーケンスを説明する図である。
【0032】
(第零ステップ:STEP0)
ピックアップ動作はダイシングテープDT上の目的とするダイDが突上げユニットTUとコレットCLTに位置決めされるところから開始する。制御部CNTは、位置決めが完了すると突上げユニットTUの吸引口DPaおよびブロックBL1~BL4の間隙を介して真空引きすることによって、ダイシングテープDTを突上げユニットTUの上面に吸着する。このとき、四個のブロックBL1~BL4の上面はドームプレートDPの上面と同一の高さ(初期位置)にある。制御部CNTは、その状態で図示しない真空供給源から真空を供給し、コレットCLTをダイDのデバイス面に向けて真空引きしながら降下させ、着地させる。
【0033】
(第一ステップ:STEP1)
その後、制御部CNTは、四個のブロックBL1~BL4を同時に所定の速度(s1)で上昇させる。ここで、ダイDはコレットCLTと四個のブロックBL1~BL4に挟まれたまま上昇するが、ダイシングテープDTの周辺部は突上げユニットTUの周辺であるドームプレートDPに真空吸着されたままなので、ダイDの周辺で張力が生じ、その結果、ダイD周辺でダイシングテープDTの剥離が開始されることになる。制御部CNTは、所定の高さとしての剥離が開始する高さ(H1)において最外周のブロックBL1を停止させ、内側のブロックBL2~BL4を引き続き所定の速度(s1)で所定の高さ(H2)まで上昇させる。最外周のブロックBL1が停止することにより、ダイシングテープDTの支えがなくなり、ダイシングテープDTの張力によりダイシングテープDTの剥離が進行する。ここで、s1は、例えば、5mm/secである。
【0034】
(第二ステップ:STEP2)
続いて、制御部CNTは、最外周のブロックBL1をドームプレートDPの上面と同じ高さまで一定の速度(s2)で下降させる。ここで、s2は、例えば、5mm/secである。なお、最外周のブロックBL1の下降と並行して、第二のブロックBL2を所定の高さ(H1)まで下降させてもよい。
【0035】
(第三ステップ:STEP3)
続いて、制御部CNTは、第二のブロックBL2がドームプレートDPの上面と同じ高さまで一定の速度(s2)で下降させる。ここで、第二のブロックBL2がドームプレートDPの上面の高さまで下がることにより、ダイシングテープDTの支えがなくなり、ダイシングテープDTの張力によりダイシングテープDTの剥離がさらに進行する。
【0036】
(第四ステップ:STEP4)
続いて、制御部CNTは、第三のブロックBL3がドームプレートDPの上面と同じ高さまで一定の速度(s2)で下降させる。ここで、第三のブロックBL3がドームプレートDPの上面の高さまで下がることにより、ダイシングテープDTの支えがなくなり、ダイシングテープDTの張力によりダイシングテープDTの剥離がさらに進行する。
【0037】
その後、制御部CNTはコレットCLTを上方に引き上げると共に、第四のブロックBL3を一定の速度(s3)で下降させ初期位置に戻す。ここで、s3は、例えば、5mm/secである。これにより、ダイDをダイシングテープDTから剥がす作業が完了する。
【0038】
オーバハングの長さ(LO)を小さくし、最外周のブロックBL1を所定の高さ(H1)で停止させ、内側のブロックBL2~BL4を所定の高さ(H2)までさらに上昇させる。これにより、最外周のブロックBL1を剥離起点として機能させる時、そのあとの内側のブロックBL2~BL4を上昇時に段差が大きくならず、周辺ダイDpの変形と剥離対象ダイDの変形を低減できる。これにより、剥離対象ダイDおよび周辺ダイDpのストレスを小さくし、割れ欠けを防止できる。
【0039】
また、オーバハングの長さ(LO)を小さくすることにより低い突上げ高さにおいて剥離対象ダイDの外周をダイシングテープDTから剥離することができる。また、最外周のブロックBL1を総突上げ高さより低くすることにより周辺ダイDpの変形を低減することができる。また、オーバハングの幅(LO)を小さくすることで最外周のブロックBL1の端面から剥離対象ダイD端面までの距離が短くなり剥離対象ダイDが変形しにくくなる。また、ブロックBL2~BL4の総突上げ高さ(H2)を低くすることにより、動作時間が短くなり生産性が向上する。
【0040】
<変形例>
以下、実施形態の代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施形態の一部、および、複数の変形例の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0041】
(第一変形例)
まず、本変形例をより明確にするため、ダイがダイシングテープから剥離するときの問題点についてRMSを例に
図7を用いて説明する。
図7はブロック突上げ時の問題点を説明する図であり、
図7(a)はブロックサイズを変更せずダイサイズが大きくなった場合の最内側のブロック以外のブロックを下げた状態を示す断面図であり、
図7(b)はブロックサイズを大きくした場合の最内側のブロック以外のブロックを下げた状態を示す断面図である。
【0042】
図7(a)に示すように、ダイDのサイズが大きくなったとき、ブロックBLKのサイズ(WB1)を変更しない場合、オーバハングの幅が大きくなってしまう。オーバハングの幅を小さく維持するためには、
図7(b)に示すように、ブロックBLKのサイズ(WB2)をダイDのサイズに合わせて大きくする必要がある。
【0043】
よって、突上げユニットTUのブロックの数が一定である場合、剥離対象ダイDが大型化するとき、四個のブロックBL1~BL4の各ブロック幅、すなわち、剥離面積が増加する。しかし、コレットCLTがダイDを安定して保持するためには、コレットCLTの真空吸着孔まで剥離を進行させることが必要であり、また、剥離工程の初期段階において剥離対象ダイDを変形させないためには、剥離面積を可能な限り小さくすることが必要である。
図7(b)に示すように、ブロックの突上げ動作中のダイへのストレス削減の観点から、オーバハングの長さおよび引き下げを行うブロックBL1~BL3のブロック幅を小さく保った場合、最内側のブロックBL4のブロック幅(WBL2)は、
図7(a)に示すブロックBL4のブロック幅(WBL1)よりも増加する、すなわち、剥離面積が増加する。剥離面積が増加することにより、引き剥がし中にダイDに加わるダイシングテープDTの粘着力が増大するので、剥離対象ダイDのストレスが増加し、ピックアップミスまたは最悪ダイの破損に繋がる恐れがある。
【0044】
そこで、第一変形例では、突上げユニットTUのブロックの数を実施形態よりも増加する。第一変形例における突上げユニットについて
図8および
図9を用いて説明する。
図8は第一変形例における突上げユニットの要部断面図であり、ダイシングテープに接している状態を示している。
図9は
図8に示す突上げユニットの上面図である。
【0045】
突上げユニットTUの中心部には、ダイシングテープDTを上方に突き上げる五個のブロックBL0~BL4が組み込まれている。実施形態の第一のブロックBL1の外側に、それよりも径の大きい第零のブロックBL0が配置されている。第零のブロックBL0は四角筒状である。
【0046】
五個のブロックBL0~BL4のうち、最も径の大きい最外周のブロックBL0は、剥離の対象となるダイDよりも一回り径が小さい。
【0047】
オーバハングの長さ(LO)は、実施形態と同様であり、最外周のブロックBL0がダイシングテープDTと接触する箇所であるブロック幅は、例えば、0.3~0.6mm程度である。内側のブロックBL1~BL4のブロック幅は実施形態と同様である。ここで、最内側のブロックBL4のダイシングテープDTと接触する面の面積(剥離面積)は、ダイDの面積の30%程度以下になることが好ましい。
【0048】
五個のブロックBL0~BL4のそれぞれの上面の高さは、初期状態(五個のブロックBL0~BL4の非動作時)においては互いに等しく、また、ドームプレートDPの上面の高さと等しいか、若しくは低くなっている。
【0049】
五個のブロックBL0~BL4は駆動部86cの五つの駆動軸であるニードルNDL5~NDL1により独立に上下運動が可能である。駆動部86cはモータとモータの回転をカムまたはリンクによって上下動に変換するプランジャ機構とを備え、ニードルNDL5~NDL1に上下動を与える。
【0050】
第一変形例におけるブロック突上げについて
図10を用いて説明する。
図10は第一変形例におけるブロック突上げを説明する図であり、
図10(a)はブロック突上げの途中の状態を示す断面図であり、
図10(b)はブロック突上げの最終状態を示す断面図である。
【0051】
図10(a)に示すように、ブロックのサイズを大きくしてオーバハングを短くする。そして、五個のブロックBL0~BL4を突き上げる際、ダイDの外周が剥離した時点で最外周のブロックBL0の突上げを停止し、
図10(b)に示すように、内側のブロックBL1~BL4をさらに突上げることにより周辺ダイDpの変形を防止する。オーバハングの幅(WO)は、例えば、0.15~0.45mmである。また、最外周のブロックBL0を停止させる高さ(H1)は、実施形態と同様例えば、0.075~0.12mmである。内側のブロックBL1~BL4を突上げる高さ(H2)は、実施形態と同様例えば、0.15~0.2mmである。
【0052】
第一変形例におけるRMSの動作は実施形態と同様である。第一変形例における最外周のブロックである第零のブロックBL0は実施形態における最外周のブロックである第一のブロックBL1と同様の動作を行う。第一変形例における内側のブロックであるブロックBL1~BL4は実施形態における内側のブロックであるブロックBL2~BL4と同様の動作を行う。
【0053】
(第二変形例)
第一変形例では、突上げユニットTUの五個のブロックBL0~BL4は駆動軸である五つのニードルNDL5~NDL1により突上げ動作が行われている。これに対して、第二変形例では、突上げユニットTU自体の駆動軸(ニードル)を増設することなく、実施形態の四段突上げ機構を用い突上げブロックを増やしている。第二変形例における突上げユニットの構成および動作を
図11から
図13を用いて説明する。
図11(a)は第二変形例における突上げユニットの初期状態を示す断面図である。
図11(b)は第二変形例における突上げユニットの第一状態を示す断面図である。
図12(a)は第二変形例における突上げユニットの第二状態を示す断面図である。
図12(b)は第二変形例における突上げユニットの第三状態を示す断面図である。
図13(a)は第二変形例における突上げユニットの第四状態を示す断面図である。
図13(b)は第二変形例における突上げユニットの第五状態を示す断面図である。
【0054】
突上げユニットTUの中心部には、ダイシングテープDTを上方に突き上げる五個のブロックBL0~BL4が組み込まれている。五個のブロックBL0~BL4は、径が最も大きい第零のブロックBL0の内側に、それよりも径の小さい第一のブロックBL1が配置され、それよりも径の小さい第二のブロックBL2が配置され、それよりも径の小さい第三のブロックBL3が配置され、さらにその内側に最も径の小さい第四のブロックBL4が配置されている。外側の第零のブロックBL0と第一のブロックBL1との間に圧縮コイルばねCSおよび第一のブロックBL1に接続されたばね押さえピンSPが介在する。内側のブロックBL1~BL4のそれぞれは、図示しない駆動機構によって上下動するニードルピンNDL4~NDL1と連動して上下動するようになっている。
【0055】
第二変形例における五個のブロックBL0~BL4の径および幅、並びにオーバハングの幅は第一変形例と同様である。五個のブロックBL0~BL4のそれぞれの上面の高さは、初期状態(五個のブロックBL0~BL4の非動作時)においては互いに等しく、またドームプレートDPの上面の高さとも等しくなっている。圧縮コイルばねCSおよびばね押さえピンSPにより外側の第零のブロックBL0と第一のブロックBL1の距離が保たれている。
【0056】
五個のブロックBL0~BL4を同時に上方に突き上げるには、図示しないニードルNDL4~NDL1を上方に押し上げることによって、ニードルNDL4~NDL1にそれぞれ連結された内側のブロックBL1~BL4を押し上げる。これにより、
図11(b)に示すように、最外周のブロックBL0と第一のブロックBL1との間に介在する圧縮コイルばねCSのばね力によって最外周のブロックBL0が押し上げられるので、五個のブロックBL0~BL4が同時に押し上げられる。そして、最外周のブロックBL0の一部がドームプレートDPと接触することによって、最外周のブロックBL0の上昇が所定の高さ(H1)において停止する(第一状態)。このとき、剥離対象ダイDの大部分の領域は、五個のブロックBL0~BL4の上面によって支えられており、最外周のブロックBL0の上面の外周(角部)よりも外側の領域において、ダイDとダイシングテープDTとの界面での剥離が効率的に進行する。
【0057】
また、圧縮コイルばねCSは、少なくともダイシングテープDTの張力に抗して最外周のブロックBL0を持ち上げることができる程度のばね力を備えている必要がある。圧縮コイルばねCSのばね力がダイシングテープDTの張力よりも小さい場合は、ニードルNDL4を押し上げても最外周のブロックBL0が持ち上がらないので、最外周のブロックBL0の上面によってダイDを支えることができなくなる。この場合は、ダイDとダイシングテープDTとの剥離起点に十分な応力を集中させることができないので、剥離速度の低下を招いたり、ダイDに過大な曲げ応力が加わってダイDが割れてしまったりするといった問題を引き起こす可能性がある。
【0058】
次に、
図12(a)に示すように、内側のブロックBL1~BL4を同時に上方に所定の高さ(H2)まで突き上げてダイシングテープDTを押し上げる(第二状態)。これにより、ダイDを支える第一のブロックBL1の上面の外周(角部)の位置が、最外周のブロックBL0によって支えられていた状態に比較して、より内側に移るため、ダイDとダイシングテープDTとの剥離が第一のブロックBL1の上面の外周より外側の領域からダイDの中心方向へと進行する。
【0059】
四個のブロックBL1~BL4を同時に上方に突き上げるには、図示しない四個のニードルNDL4~NDL1を押し上げることによって、四個のニードルNDL4~NDL1にそれぞれ連結された四個のブロックBL1~BL4をさらに押し上げる。
【0060】
四個のブロックBL1~BL4を上方に突き上げる際には、ダイDとダイシングテープDTとの剥離を促進させるために、五個のブロックBL0~BL4の隙間の内部を減圧することによって、ダイDと接触しているダイシングテープDTを下方に吸引する。また、溝DPbの内部を減圧し、ドームプレートDPの上面に接するダイシングテープDTをドームプレートDPの上面に密着させる。
【0061】
次に、12(b)に示すように、第一のブロックBL1を最外周のブロックBL0の上昇高さ(H0)まで下方に引き下げ、内側のブロックBL2~BL4の上面でダイDの裏面を支える(第三状態)。第一のブロックBL1を下方に引き下げるには、ニードルND4を引き下げることによってニードルNDL4に連結された第一のブロックBL1を引き下げる。これにより、ダイDを支える第二のブロックBL2の上面の外周(角部)の位置が、第一のブロックBL1によって支えられていた状態に比較して、より内側に移るため、ダイDとダイシングテープDTとの剥離が第二のブロックBL2の上面の外周より外側の領域からダイDの中心方向へと進行する。
【0062】
次に、
図13(a)に示すように、第一のブロックBL1を初期状態の高さ(ドームプレートDPの上面)まで下方に引き下げることにより、最外周のブロックBL0も初期状態の高さまで下降する(第四状態)。
【0063】
次に、13(b)に示すように、第二のブロックBL2を初期状態の高さ(ドームプレートDP)まで下方に引き下げ、内側のブロックBL3,BL4の上面でダイDの裏面を支える(第五状態)。第二のブロックBL2を下方に引き下げるには、ニードルND3を引き下げることによってニードルNDL3に連結された第二のブロックBL2を引き下げる。これにより、ダイDを支えるブロックBL3の上面の外周(角部)の位置が、第二のブロックBL2によって支えられていた状態に比較して、より内側に移るため、ダイDとダイシングテープDTとの剥離が第三のブロックBL3の上面の外周より外側の領域からダイDの中心方向へと進行する。
【0064】
第三のブロックBL3は第二のブロックBL2と同様に初期状態の高さ(ドームプレートDP)まで下方に引き下げられる。
【0065】
続いて、最内側のブロックBL4を下方に引き下げると共に、コレットCLTを上方に引き上げることにより、ダイDをダイシングテープDTから剥がす作業が完了する。
【0066】
最内側のブロックBL4の上面は、コレットCLTの吸引力だけでダイDがダイシングテープDTから剥がれる程度に面積を小さくしておく必要がある。最内側のブロックBL4の上面の面積が大きいと、ダイDとダイシングテープDTとの接触面積が大きくなり、両者の粘着力も大きくなるので、コレットCLTがダイDを吸引する力だけではダイDをダイシングテープDTから剥がせない。
【0067】
第二変形例では、実施形態の多軸突上げユニットの最外周のブロックである第一のブロックBL1に圧縮コイルばねにより駆動する第零のブロックBL0を追加する。第二変形における最外周のブロックである第零のブロックBL0とその内側の第一のブロックBL1をハード的に連動動作させることにより、第零のブロックBL0と第一のブロックBL1とを段差を与えて突き上げることができる。これにより、駆動軸を追加することなく構成することができる。また、オーバハングの設定及び条件出しが容易となる。
【0068】
(第三変形例)
第一変形例では、最外周にブロックBL0の位置は固定されている。これに対して、第三変形例では、最外周のブロックを複数分割して位置調整可能な構造とする。第三変形例における突上げユニットについて
図14を用いて説明する。
図14は第三変形例における突上げユニットの要部上面であり、
図14(a)は最外周のブロックが最も内側に配置された状態を示す図であり、
図14(b)は最外周のブロックが最も外側に配置された状態を示す図である。
【0069】
最外周のブロックBL0を平面視においてL字状の四個のブロックBL0a~BL0bで構成する、第一のブロックBL1とドームプレートDPの開口の端部DPcとの距離を最外周のブロックBL0の幅とブロック間の間隙を加えたものよりも大きく構成し、四個のブロックBL0a~BL0bはそれぞれ位置調整可能としている。これにより、同一ハードでオーバハング量を最適量に設定可能とすることができる。
【0070】
なお、
図14(a)では、最外周のブロックBL0a~BL0bの外周とダイプレートDPの開口の端部DPcとの距離は通常の間隙よりも大きく最大である。最外周のブロックBL0a~BL0bの内周と第一のブロックBL1の外周との距離は通常の間隙である。
図14(b)では、最外周のブロックBL0a~BL0bの外周とダイプレートDPの開口の端部DPcとの距離は通常の間隙である。最外周のブロックBL0a~BL0bの内周と第一のブロックBL1の外周との距離は通常の間隙よりも大きく最大である。
【0071】
(第四変形例)
第四変形例では。最外周ブロックのダイシングテープDTとの接触部を交換可能とする。第四変形例における突上げユニットについて
図15を用いて説明する。
図15は第四変形例における突上げユニットの要部上面であり、
図15(a)は最外周のブロックが最も内側に配置された状態を示す図であり、
図15(b)は最外周のブロックが最も外側に配置された状態を示す図である。
【0072】
最外周のブロックBL0として複数の大きさ(径)の異なるものを準備しておき、第一のブロックBL1とダイプレートDPの開口の端部DPcとの間に、取り付ける最終ブロックBL0に対応する取り付け部を設けて交換可能としている。これにより、ブロックBLKの一部分の交換のみで、安価でオーバハング量を最適量に設定可能とすることができる。
【0073】
なお、
図15(a)では、最外周のブロックBL0の外周とダイプレートDPの開口の端部DPcとの距離は通常の間隙よりも大きく最大である。最外周のブロックBL0の内周と第一のブロックBL1の外周との距離は通常の間隙である。
図15(b)では、最外周のブロックBLの外周とダイプレートDPの開口の端部DPcとの距離は通常の間隙である。最外周のブロックBL0の内周と第一のブロックBL1の外周との距離は通常の間隙よりも大きく最大である。
【実施例】
【0074】
図16は実施例におけるダイボンダを上から見た概念図である。
図17は
図16において矢印A方向から見たときに、ピックアップヘッド及びボンディングヘッドの動作を説明する図である。
【0075】
ダイボンディング装置の一例であるダイボンダ10は、大別して、基板Sに実装するダイDを供給するダイ供給部1と、ピックアップ部2、中間ステージ部3と、ボンディング部4と、搬送部5、基板供給部6と、基板搬出部7と、各部の動作を監視し制御する制御部8と、を有する。Y軸方向がダイボンダ10の前後方向であり、X軸方向が左右方向である。ダイ供給部1がダイボンダ10の手前側に配置され、ボンディング部4が奥側に配置される。ここで、基板Sは、一つ又は複数の、最終1パッケージとなる製品エリア(以下、パッケージエリアPという。)がプリントされている。
【0076】
まず、ダイ供給部1は基板SのパッケージエリアPに実装するダイDを供給する。ダイ供給部1は、ウェハ11を保持するウェハ保持台12と、ウェハ11からダイDを突き上げる点線で示す突上げユニット13と、を有する。ダイ供給部1は図示しない駆動手段によってXY軸方向に移動し、ピックアップするダイDを突上げユニット13の位置に移動させる。
【0077】
ピックアップ部2は、ダイDをピックアップするピックアップヘッド21と、ピックアップヘッド21をY軸方向に移動させるピックアップヘッドのY駆動部23と、コレット22を昇降、回転及びX軸方向移動させる図示しない各駆動部と、を有する。ピックアップヘッド21は、突き上げられたダイDを先端に吸着保持するコレット22(
図17も参照)を有し、ダイ供給部1からダイDをピックアップし、中間ステージ31に載置する。ピックアップヘッド21は、コレット22を昇降、回転及びX軸方向移動させる図示しない各駆動部を有する。
【0078】
中間ステージ部3は、ダイDを一時的に載置する中間ステージ31と、中間ステージ31上のダイDを認識する為のステージ認識カメラ32を有する。
【0079】
ボンディング部4は、中間ステージ31からダイDをピックアップし、搬送されてくる基板SのパッケージエリアP上にボンディングし、又は既に基板SのパッケージエリアPの上にボンディングされたダイの上に積層する形でボンディングする。ボンディング部4は、ピックアップヘッド21と同様にダイDを先端に吸着保持するコレット42(
図17も参照)を備えるボンディングヘッド41と、ボンディングヘッド41をY軸方向に移動させるY駆動部43と、基板SのパッケージエリアPの位置認識マーク(図示せず)を撮像し、ボンディング位置を認識する基板認識カメラ44と、を有する。
【0080】
このような構成によって、ボンディングヘッド41は、ステージ認識カメラ32の撮像データに基づいてピックアップ位置・姿勢を補正し、中間ステージ31からダイDをピックアップし、基板認識カメラ44の撮像データに基づいて基板にダイDをボンディングする。
【0081】
搬送部5は、基板Sを掴み搬送する基板搬送爪51と、基板Sが移動する搬送レーン52と、を有する。基板Sは、搬送レーン52に設けられた基板搬送爪51の図示しないナットを搬送レーン52に沿って設けられた図示しないボールネジで駆動することによって移動する。
【0082】
このような構成によって、基板Sは、基板供給部6から搬送レーン52に沿ってボンディング位置まで移動し、ボンディング後、基板搬出部7まで移動して、基板搬出部7に基板Sを渡す。
【0083】
制御部8は、ダイボンダ10の各部の動作を監視し制御するプログラム(ソフトウェア)を格納するメモリと、メモリに格納されたプログラムを実行する中央処理装置(CPU)と、を備える。
【0084】
次に、ダイ供給部1の構成について
図18を用いて説明する。
図18は
図16のダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
【0085】
ダイ供給部1は、水平方向(XY軸方向)に移動するウェハ保持台12と、上下方向に移動する突上げユニット13と、を備える。ウェハ保持台12は、ウェハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウェハリング14に保持され複数のダイDが接着されたダイシングテープ16を水平に位置決めする支持リング17と、を有する。突上げユニット13は支持リング17の内側に配置される。
【0086】
ダイ供給部1は、ダイDの突き上げ時に、ウェハリング14を保持しているエキスパンドリング15を下降させる。その結果、ウェハリング14に保持されているダイシングテープ16が引き伸ばされダイDの間隔が広がり、突上げユニット13によりダイD下方よりダイDを突き上げ、ダイDのピックアップ性を向上させている。なお、ダイを基板に接着する接着剤は、液状からフィルム状となり、ウェハ11とダイシングテープ16との間にダイアタッチフィルム(DAF)18と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けている。ダイアタッチフィルム18を有するウェハ11では、ダイシングは、ウェハ11とダイアタッチフィルム18に対して行なわれる。従って、剥離工程では、ウェハ11とダイアタッチフィルム18をダイシングテープ16から剥離する。なお、以降では、ダイアタッチフィルム18を省略して、剥離工程を説明する。
【0087】
次に、実施例に係るダイボンダを用いた半導体装置の製造方法について
図19を用いて説明する。
図19は
図16に示すダイボンダを用いた半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0088】
(ステップS11:ウェハ・基板搬入工程)
ウェハ11から分割されたダイDが貼付されたダイシングテープ16を保持したウェハリング14をウェハカセット(不図示)に格納し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8はウェハリング14が充填されたウェハカセットからウェハリング14をダイ供給部1に供給する。また、基板Sを準備し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8は基板供給部6で基板Sを基板搬送爪51に取り付ける。
【0089】
(ステップS12:ピックアップ工程)
制御部8は上述したようにダイDを剥離し、剥離したダイDをウェハ11からピックアップする。このようにして、ダイアタッチフィルム18と共にダイシングテープ16から剥離されたダイDは、コレット22に吸着、保持されて次工程(ステップS13)に搬送される。そして、ダイDを次工程に搬送したコレット22がダイ供給部1に戻ってくると、上記した手順に従って、次のダイDがダイシングテープ16から剥離され、以後同様の手順に従ってダイシングテープ16から1個ずつダイDが剥離される。
【0090】
(ステップS13:ボンディング工程)
制御部8はピックアップしたダイを基板S上に搭載又は既にボンディングしたダイの上に積層する。制御部8はウェハ11からピックアップしたダイDを中間ステージ31に載置し、ボンディングヘッド41で中間ステージ31から再度ダイDをピックアップし、搬送されてきた基板Sにボンディングする。
【0091】
(ステップS14:基板搬出工程)
制御部8は基板搬出部7で基板搬送爪51からダイDがボンディングされた基板Sを取り出す。ダイボンダ10から基板Sを搬出する。
【0092】
上述したように、ダイDは、ダイアタッチフィルム18を介して基板S上に実装され、ダイボンダから搬出される。その後、ワイヤボンディング工程でAuワイヤを介して基板Sの電極と電気的に接続される。続いて、ダイDが実装された基板Sがダイボンダに搬入されて基板S上に実装されたダイDの上にダイアタッチフィルム18を介して第2のダイDが積層され、ダイボンダから搬出された後、ワイヤボンディング工程でAuワイヤを介して基板Sの電極と電気的に接続される。第2のダイDは、前述した方法でダイシングテープ16から剥離された後、ペレット付け工程に搬送されてダイDの上に積層される。上記工程が所定回数繰り返された後、基板Sをモールド工程に搬送し、複数個のダイDとAuワイヤとをモールド樹脂(図示せず)で封止することによって、積層パッケージが完成する。
【0093】
上述したように、基板上に複数個のダイを三次元的に実装する積層パッケージを組み立てに際しては、パッケージ厚の増加を防ぐために、ダイの厚さを0.02mm以下まで薄くすることが要求される。一方、ダイシングテープの厚さは0.1mm程度であるから、ダイシングテープの厚みは、ダイの厚みの4~5倍にもなっている。
【0094】
このような薄いダイをダイシングテープから剥離させようとすると、ダイシングテープの変形に追従したダイの変形がより顕著に発生しやすくなるが、本実施形態のダイボンダではダイシングテープからダイをピックアップする際のダイの損傷を低減することができる。
【0095】
以上、本開示者によってなされた開示を実施形態、変形例および実施例に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態、変形例および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0096】
例えば、実施形態では、ブロック数は四個、変形例ではブロック数が五個の例を説明したが、ダイサイズに応じてブロック数が六個以上であってもよい。
【0097】
また、突上げユニットの複数のブロックは同心四角状のものについて説明したが、同心円形状や同心楕円形状のものであってもよいし、四角状ブロックを平行に並べて構成してもよい。
【0098】
また、実施例では、ダイアタッチフィルムを用いる例を説明したが、基板に接着剤を塗布するプリフォーム部を設けてダイアタッチフィルムを用いなくてもよい。
【0099】
また、実施例では、ダイ供給部からダイをピックアップヘッドでピックアップして中間ステージに載置し、中間ステージに載置されたダイをボンディングヘッドで基板にボンディングするダイボンダについて説明したが、これに限定されるものではなく、ダイ供給部からダイをピックアップするダイボンディング装置に適用可能である。
【0100】
例えば、中間ステージとピックアップヘッドがなく、ダイ供給部のダイをボンディングヘッドで基板にボンディングするダイボンダにも適用可能である。
【0101】
また、中間ステージがなく、ダイ供給部からダイをピックアップしダイピックアップヘッドを上に回転してダイをボンディングヘッドに受け渡しボンディングヘッドで基板にボンディングするフリップチップボンダに適用可能である。
【符号の説明】
【0102】
100・・・ダイボンディング装置
BH・・・ヘッド
BL1・・・第一のブロック(最外周のブロック)
BL2・・・第二のブロック(内側のブロック)
BL3・・・第三のブロック(内側のブロック)
BL4・・・第四のブロック(内側のブロック)
BLK・・・ブロック
CLT・・・コレット
CNT・・・制御部
D・・・ダイ
DP・・・ドームプレート
DT・・・ダイシングテープ
TU・・・突上げユニット