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特許7607485画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理方法、及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理方法、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20241220BHJP
   A61B 6/02 20060101ALI20241220BHJP
   A61B 6/04 20060101ALI20241220BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20241220BHJP
【FI】
A61B6/00 530Z
A61B6/00 590C
A61B6/02 501H
A61B6/04 509B
A61B6/50 500E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021050392
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148639
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 航
【審査官】清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-020023(JP,A)
【文献】特開2015-188604(JP,A)
【文献】特開2003-024321(JP,A)
【文献】特開2008-110098(JP,A)
【文献】特開2015-177884(JP,A)
【文献】特開2019-047837(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059306(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/194844(WO,A1)
【文献】特開2010-183965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源により被写体に向けて放射線をそれぞれ照射して得られた複数の投影画像を処理する画像処理装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記複数の照射位置と投影面との間にマーカが配置された状態で、前記照射位置毎に撮影された複数の投影画像と、前記複数の投影画像のそれぞれの前記照射位置として設定された複数の設定上の照射位置とを取得し、
前記複数の設定上の照射位置を用いて前記複数の投影画像から第1の断層画像を生成し、
前記第1の断層画像から前記マーカが配置された第1の3次元位置を導出し、
前記複数の設定上の照射位置と前記マーカの前記第1の3次元位置とから、前記投影面に投影される前記マーカの第1の投影面位置を導出し、
前記第1の投影面位置と、前記複数の投影画像の各々に含まれる前記マーカを表すマーカ画像から特定される前記投影面における前記マーカの第2の投影面位置とに基づいて、前記複数の照射位置を推定し、
前記被写体は、圧迫部材により圧迫状態とされた乳房であり、前記マーカは、前記圧迫部材に設けられている
画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
複数の前記第1の投影面位置と、前記第2の投影面位置とが一致する前記複数の照射位置を推定する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
複数の前記第1の投影面位置と、複数の前記第2の投影面位置とに基づいて前記マーカの第2の3次元位置をさらに推定する
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
推定された前記複数の照射位置を用いて前記複数の投影画像から第2の断層画像を生成する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
推定された前記複数の照射位置を用いて前記複数の投影画像から第2の断層画像を、 前記第2の3次元位置における高さ方向の位置に応じた高さまで生成する
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
記第2の3次元位置に基づいて、前記圧迫状態とされた前記乳房の厚みを推定する
請求項3または請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記厚みに基づいて、前記乳房の乳腺量に関する情報を導出する
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記厚みに基づいて、前記放射線の散乱線量を推定する
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記マーカが、前記複数の照射位置と前記投影面との間に複数配置された状態である
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記複数の設定上の照射位置、及び前記第1の3次元位置の更新を繰り返して前記第1の投影面位置を繰り返し導出することで、複数の前記第1の投影面位置と、前記第2の投影面位置とが一致する前記複数の照射位置を推定する
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記マーカは、予め定められた配置条件に応じて複数配置されており、
前記プロセッサは、前記配置条件の範囲内で、前記第1の3次元位置を更新する
請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
放射線を発生する放射線源と、
照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源により被写体に向けて放射線を照射して前記照射位置毎に前記被写体の投影画像を撮影するトモシンセシス撮影を行う放射線画像撮影装置と、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項13】
照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源により被写体に向けて放射線をそれぞれ照射して得られた複数の投影画像を処理する画像処理方法であって、
前記複数の照射位置と投影面との間にマーカが配置された状態で、前記照射位置毎に撮影された複数の投影画像と、前記複数の投影画像のそれぞれの前記照射位置として設定された複数の設定上の照射位置とを取得し、
前記複数の設定上の照射位置を用いて前記複数の投影画像から第1の断層画像を生成し、
前記第1の断層画像から前記マーカが配置された第1の3次元位置を導出し、
前記複数の設定上の照射位置と前記マーカの前記第1の3次元位置とから、前記投影面に投影される前記マーカの第1の投影面位置を導出し、
前記第1の投影面位置と、前記複数の投影画像の各々に含まれる前記マーカを表すマーカ画像から特定される前記投影面における前記マーカの第2の投影面位置とに基づいて、前記複数の照射位置を推定し、
前記被写体は、圧迫部材により圧迫状態とされた乳房であり、前記マーカは、前記圧迫部材に設けられている
処理をコンピュータが実行する画像処理方法。
【請求項14】
照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源により被写体に向けて放射線をそれぞれ照射して得られた複数の投影画像を処理する画像処理プログラムであって、
前記複数の照射位置と投影面との間にマーカが配置された状態で、前記照射位置毎に撮影された複数の投影画像と、前記複数の投影画像のそれぞれの前記照射位置として設定された複数の設定上の照射位置とを取得し、
前記複数の設定上の照射位置を用いて前記複数の投影画像から第1の断層画像を生成し、
前記第1の断層画像から前記マーカが配置された第1の3次元位置を導出し、
前記複数の設定上の照射位置と前記マーカの前記第1の3次元位置とから、前記投影面に投影される前記マーカの第1の投影面位置を導出し、
前記第1の投影面位置と、前記複数の投影画像の各々に含まれる前記マーカを表すマーカ画像から特定される前記投影面における前記マーカの第2の投影面位置とに基づいて、前記複数の照射位置を推定し、
前記被写体は、圧迫部材により圧迫状態とされた乳房であり、前記マーカは、前記圧迫部材に設けられている
処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源により被写体に向けて放射線を照射して照射位置が異なる複数枚の被写体の投影画像を撮影する、いわゆるトモシンセシス撮影が知られている。
【0003】
投影画像を撮影した際の放射線源の線源位置を用いて、投影画像から断層画像を生成する技術が知られている。例えば、断層画像の生成方法として知られているFBP(Filter Back Projection)法や逐次近似再構成法等の再構成処理方法では、3次元空間における放射線源の線源位置と、投影画像の各画素の2次元位置とに基づいて、断層画像を生成する。そのため、放射線源の線源位置が不正確な場合、不正確な線源位置を用いて生成された断層画像の精度が低下する場合があった。
【0004】
そこで、放射線源の正確な線源位置を取得する技術が知られている。例えば、特許文献1には、マーカを撮影して得られた複数の投影画像に含まれるマーカ像の位置の相対関係に基づいて放射線源の位置をキャリブレーションする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-13651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、マーカを撮影した投影画像を用いて放射線源が位置する照射位置を導出する場合に照射位置の導出精度が低下することがあった。
【0007】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、放射線の照射位置を精度良く導出することができる画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本開示の第1の態様の画像処理装置は、照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源により被写体に向けて放射線をそれぞれ照射して得られた複数の投影画像を処理する画像処理装置であって、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、複数の照射位置と投影面との間にマーカが配置された状態で、照射位置毎に撮影された複数の投影画像と、複数の投影画像のそれぞれの照射位置として設定された複数の設定上の照射位置とを取得し、複数の設定上の照射位置を用いて複数の投影画像から第1の断層画像を生成し、第1の断層画像からマーカが配置された第1の3次元位置を導出し、複数の設定上の照射位置とマーカの第1の3次元位置とから、投影面に投影されるマーカの第1の投影面位置を導出し、複数の投影画像の各々に含まれるマーカを表すマーカ画像から導出される投影面におけるマーカの第2の投影面位置と、第1の投影面位置とに基づいて、複数の照射位置を推定し 被写体は、圧迫部材により圧迫状態とされた乳房であり、マーカは、圧迫部材に設けられている
【0009】
本開示の第2の態様の画像処理装置は、第1の態様の画像処理装置において、プロセッサは、複数の第1の投影面位置と、第2の投影面位置とが一致する複数の照射位置を推定する。
【0010】
本開示の第3の態様の画像処理装置は、第1の態様または第2の態様の画像処理装置において、プロセッサは、複数の第1の投影面位置と、複数の第2の投影面位置とに基づいてマーカの第2の3次元位置をさらに推定する。
【0011】
本開示の第4の態様の画像処理装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか1態様の画像処理装置において、プロセッサは、推定された複数の照射位置を用いて複数の投影画像から第2の断層画像を生成する。
【0012】
本開示の第5の態様の画像処理装置は、第3の態様の画像処理装置において、プロセッサは、推定された複数の照射位置を用いて複数の投影画像から第2の断層画像を、第2の3次元位置における高さ方向の位置に応じた高さまで生成する。
【0013】
本開示の第6の態様の画像処理装置は、第3の態様または第5の態様の画像処理装置において、プロセッサは、第2の3次元位置に基づいて、圧迫状態とされた乳房の厚みを推定してもよい。
【0014】
本開示の第7の態様の画像処理装置は、第6の態様の画像処理装置において、プロセッサは、厚みに基づいて、乳房の乳腺量に関する情報を導出する。
【0015】
本開示の第8の態様の画像処理装置は、第6の態様の画像処理装置において、プロセッサは、厚みに基づいて、放射線の散乱線量を推定する。
【0016】
本開示の第9の態様の画像処理装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか1態様の画像処理装置において、マーカが、複数の照射位置と投影面との間に複数配置された状態である。
【0017】
本開示の第10の態様の画像処理装置は、第1の態様から第9の態様のいずれか1態様の画像処理装置において、プロセッサは、複数の設定上の照射位置、及び第1の3次元位置の更新を繰り返して第1の投影面位置を繰り返し導出することで、複数の第1の投影面位置と、第2の投影面位置とが一致する複数の照射位置を推定する。
【0018】
本開示の第11の態様の画像処理装置は、第10の態様の画像処理装置において、マーカは、予め定められた配置条件に応じて複数配置されており、プロセッサは、配置条件の範囲内で、第1の3次元位置を更新する。
【0019】
また、上記目的を達成するために本開示の第12の態様の放射線画像撮影システムは、放射線を発生する放射線源と、照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源により被写体に向けて放射線を照射して照射位置毎に被写体の投影画像を撮影するトモシンセシス撮影を行う放射線画像撮影装置と、本開示の画像処理装置と、を備える。
【0020】
また、上記目的を達成するために本開示の第13の態様の画像処理方法は、照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源により被写体に向けて放射線をそれぞれ照射して得られた複数の投影画像を処理する画像処理方法であって、複数の照射位置と投影面との間にマーカが配置された状態で、照射位置毎に撮影された複数の投影画像と、複数の投影画像のそれぞれの照射位置として設定された複数の設定上の照射位置とを取得し、複数の設定上の照射位置を用いて複数の投影画像から第1の断層画像を生成し、第1の断層画像からマーカが配置された第1の3次元位置を導出し、複数の設定上の照射位置とマーカの第1の3次元位置とから、投影面に投影されるマーカの第1の投影面位置を導出し、複数の投影画像の各々に含まれるマーカを表すマーカ画像から導出される投影面におけるマーカの第2の投影面位置と、第1の投影面位置とに基づいて、複数の照射位置を推定し、被写体は、圧迫部材により圧迫状態とされた乳房であり、マーカは、圧迫部材に設けられている処理をコンピュータが実行する画像処理方法である。
【0021】
また、上記目的を達成するために本開示の第14の態様の画像処理プログラムは、照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源により被写体に向けて放射線をそれぞれ照射して得られた複数の投影画像を処理する画像処理プログラムであって、複数の照射位置と投影面との間にマーカが配置された状態で、照射位置毎に撮影された複数の投影画像と、複数の投影画像のそれぞれの照射位置として設定された複数の設定上の照射位置とを取得し、複数の設定上の照射位置を用いて複数の投影画像から第1の断層画像を生成し、第1の断層画像からマーカが配置された第1の3次元位置を導出し、複数の設定上の照射位置とマーカの第1の3次元位置とから、投影面に投影されるマーカの第1の投影面位置を導出し、複数の投影画像の各々に含まれるマーカを表すマーカ画像から導出される投影面におけるマーカの第2の投影面位置と、第1の投影面位置とに基づいて、複数の照射位置を推定し、被写体は、圧迫部材により圧迫状態とされた乳房であり、マーカは、圧迫部材に設けられている処理をコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、放射線の照射位置を精度良く導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の放射線画像撮影システムにおける全体の構成の一例を概略的に表した構成図である。
図2】圧迫板に設けられた複数のマーカを説明するための図である。
図3】トモシンセシス撮影の一例を説明するための図である。
図4】実施形態のマンモグラフィ装置及びコンソールの構成の一例を表したブロック図である。
図5】実施形態のコンソールの機能の一例を表す機能ブロック図である。
図6】コンソールの機能を説明するための図である。
図7】マーカの投影面における投影面位置の導出について説明するための図である。
図8】実施形態のコンソールによる画像処理の流れの一例を表したフローチャートである。
図9】画像処理における推定処理の流れの一例を表したフローチャートである。
図10】画像処理における断層画像生成処理の流れの一例を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明を限定するものではない。
【0025】
まず、本実施形態の放射線画像撮影システムにおける、全体の構成の一例について説明する。図1には、本実施形態の放射線画像撮影システム1における、全体の構成の一例を表す構成図が示されている。図1に示すように、本実施形態の放射線画像撮影システム1は、マンモグラフィ装置10及びコンソール12を備える。
【0026】
まず、本実施形態のマンモグラフィ装置10について説明する。図1には、本実施形態のマンモグラフィ装置10の外観の一例を表す側面図が示されている。なお、図1は、被検者の左側からマンモグラフィ装置10を見た場合の外観の一例を示している。
【0027】
本実施形態のマンモグラフィ装置10は、コンソール12の制御に応じて動作し、被検者の乳房を被写体として、乳房に放射線R(例えば、X線)を照射して乳房の放射線画像を撮影する装置である。なお、マンモグラフィ装置10は、被検者が起立している状態(立位状態)のみならず、被検者が椅子(車椅子を含む)等に座った状態(座位状態)において、被検者の乳房を撮影する装置であってもよい。
【0028】
また、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、放射線源29を放射線検出器20の検出面20Aの法線方向に沿った照射位置として撮影を行う通常撮影と、放射線源29を複数の照射位置の各々に移動させて撮影を行う、いわゆるトモシンセシス撮影とを行う機能を有している。
【0029】
放射線検出器20は、被写体である乳房を通過した放射線Rを検出する。詳細には、放射線検出器20は、被検者の乳房及び撮影台24内に進入して放射線検出器20の検出面20Aに到達した放射線Rを検出し、検出した放射線Rに基づいて放射線画像を生成し、生成した放射線画像を表す画像データを出力する。以下では、放射線源29から放射線Rを照射して、放射線検出器20により放射線画像を生成する一連の動作を「撮影」という場合がある。本実施形態の放射線検出器20の検出面20Aには、放射線検出器20により生成される放射線画像に対応する複数の画素がマトリクス状に配置されている。本実施形態の放射線検出器20の種類は、特に限定されず、例えば、放射線Rを光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器であってもよいし、放射線Rを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。
【0030】
図1に示すように、放射線検出器20は、撮影台24の内部に配置されている。本実施形態のマンモグラフィ装置10では、撮影を行う場合、撮影台24の撮影面24A上には、被検者の乳房がユーザによってポジショニングされる。
【0031】
撮影を行う際に乳房を圧迫するために用いられる圧迫板38は、撮影台24に設けられた圧迫ユニット36に取り付けられる。詳細には、圧迫ユニット36には、圧迫板38を撮影台24に近づく方向または離れる方向(以下、「上下方向」という)に移動する圧迫板駆動部(図示省略)が設けられている。圧迫板38の支持部39は、圧迫板駆動部に着脱可能に取り付けられ、圧迫板駆動部により上下方向に移動し、撮影台24との間で被検者の乳房を圧迫する。本実施形態の圧迫板38が、本開示の圧迫部材の一例である。
【0032】
図1及び図2に示すように、本実施形態の圧迫板38は、乳房に接して圧迫する圧迫部38Aを含む。圧迫部38Aにおける乳房に接する圧迫面と反対側の上面38AAには、複数のマーカ90(i=1、2、・・・、図3では最大値は12)が、X方向の間隔をL1、及びY方向の間隔をL2として設けられている。マーカ90は、トモシンセシス撮影における照射位置19の推定に用いられる。マーカ90を用いた照射位置19の推定については詳細を後述する。マーカ90は、放射線画像に写る材料により形成される。そのため、マーカ90の材料としては、放射線Rを吸収する材料が好ましい。放射線Rを吸収する材料としては、例えば、鉛等の金属、及びUV(UltraViolet)吸収材料によるUVカットガラス等が挙げられる。なお、圧迫板38により乳房を圧迫してポジショニングする場合にユーザが圧迫状態の乳房の形状や位置等の確認を行い易くするために、圧迫板38の圧迫部38Aが透明であることが好ましい。そのため、マーカ90も透明であることが好ましく、例えばUVカットガラス等の透明な材料を用いたものが好ましい。
【0033】
なお、マーカ90を設ける位置、及び設ける数は本実施形態に限定されない。マーカ90を設ける位置は、投影画像を撮影する際に、照射位置19と投影画像の投影面80Aとなる放射線検出器20の検出面20Aとの間に配置された状態となる位置であればよい。また、マーカ90を設ける数は、例えば、照射位置19の推定精度や、マーカ90を設ける領域の大きさ(図2では、上面38AAの大きさ)等に応じた数としてもよい。以下では、各マーカ90と対応する位置の座標等については、各画像を表す符号に、マーカ90を表す符号「i」を付与して記載する。
【0034】
図1に示すように本実施形態のマンモグラフィ装置10は、撮影台24と、アーム部33と、基台34と、軸部35と、を備えている。アーム部33は、基台34によって、上下方向(Z軸方向)に移動可能に保持される。また、軸部35によりアーム部33が基台34に対して回転をすることが可能である。軸部35は、基台34に対して固定されており、軸部35とアーム部33とが一体となって回転する。
【0035】
軸部35及び撮影台24の圧迫ユニット36にそれぞれギアが設けられ、このギア同士の噛合状態と非噛合状態とを切替えることにより、撮影台24の圧迫ユニット36と軸部35とが連結されて一体に回転する状態と、軸部35が撮影台24と分離されて空転する状態とに切り替えることができる。なお、軸部35の動力の伝達・非伝達の切り替えは、上記ギアに限らず、種々の機械要素を用いることができる。
【0036】
アーム部33と撮影台24は、軸部35を回転軸として、別々に、基台34に対して相対的に回転可能となっている。本実施形態では、基台34、アーム部33、及び撮影台24の圧迫ユニット36にそれぞれ係合部(図示省略)が設けられ、この係合部の状態を切替えることにより、アーム部33、及び撮影台24の圧迫ユニット36の各々が基台34に連結される。軸部35に連結されたアーム部33、及び撮影台24の一方または両方が、軸部35を中心に一体に回転する。
【0037】
マンモグラフィ装置10においてトモシンセシス撮影を行う場合、放射線照射部28の放射線源29は、アーム部33の回転により順次、照射角度が異なる複数の照射位置の各々に移動される。放射線源29は、放射線Rを発生する放射線管(図示省略)を有しており、放射線源29の移動に応じて、放射線管が複数の照射位置の各々に移動される。図3には、トモシンセシス撮影の一例を説明するための図を示す。なお、図3では、圧迫板38の図示を省略している。本実施形態では、図3に示すように放射線源29は、予め定められた角度βずつ照射角度が異なる照射位置19(t=1、2、・・・、図3では最大値は7)、換言すると放射線検出器20の検出面20Aに対する放射線Rの照射角度が異なる位置に移動される。各照射位置19において、コンソール12の指示により放射線源29から放射線Rが被写体Uに向けて照射され、放射線検出器20により放射線画像が撮影される。放射線画像撮影システム1では、放射線源29を照射位置19の各々に移動させて、各照射位置19で放射線画像の撮影を行うトモシンセシス撮影を行った場合、図3の例では7枚の放射線画像が得られる。本実施形態では、一例として図3に示したように、トモシンセシス撮影において照射位置19~19により7枚の投影画像が得られた場合について説明する。なお、本実施形態では、トモシンセシス撮影において、各照射位置19において撮影された放射線画像を他の放射線画像と区別して述べる場合は「投影画像」という。また、投影画像及び後述する断層画像等の種類によらず放射線画像について総称する場合、単に「放射線画像」という。また、以下では各照射位置19を総称する場合、各照射位置を区別するための符号tを省略して「照射位置19」という。また、以下では、各照射位置19で撮影された投影画像等、照射位置19と対応する画像等については、各画像を表す符号に、照射位置19を表す符号「t」を付与して記載する。
【0038】
なお、本実施形態では、設定上の照射位置19Vが、詳細を後述する第2の断層画像生成部が断層画像80(図8参照)を生成する際に用いるトモシンセシス撮影における各照射位置として予め設定されている。設定上の照射位置19Vとは、例えば、設計上の照射位置が挙げられる。しかしながら、トモシンセシス撮影において投影画像80を撮影した際の放射線源29の実際の位置である照射位置19は、経時変化等に応じて設定上の照射位置19Vからずれている場合がある。そこで、本実施形態のコンソール12は、設定上の照射位置19Vを実際の照射位置である照射位置19に更新することで、実際の照射位置19の推定を行う。この点についての詳細は後述する。
【0039】
なお、トモシンセシス撮影において投影画像80を撮影した際の放射線源29の実際の位置である照射位置19は、経時変化等に応じて設定上の照射位置19Vからずれている場合がある。設定上の照射位置19Vとは、詳細を後述する第2の断層画像生成部が断層画像80(図8参照)を生成する際に用いる照射位置として設定されている照射位置である。設定上の照射位置19Vとは、例えば、設計上の照射位置が挙げられる。このように、トモシンセシス撮影における実際の照射位置19と、設定上の照射位置19Vとが異なる場合があるため、本実施形態のコンソール12は、実際の照射位置19の推定を行う。この点についての詳細は後述する。
【0040】
なお、図3に示すように、放射線Rの照射角度とは、放射線検出器20の検出面20Aの法線CLと、放射線軸RCとがなす角度αのことをいう。放射線軸RCは、各照射位置19における放射線源29の焦点と検出面20Aの中心等予め設定された位置とを結ぶ軸をいう。また、ここでは、放射線検出器20の検出面20Aは、撮影面24Aに略平行な面とする。
【0041】
一方、マンモグラフィ装置10において、通常撮影を行う場合、放射線照射部28の放射線源29は、照射角度αが0度である照射位置19(法線方向に沿った照射位置19図3では照射位置19)のままとされる。コンソール12の指示により放射線源29から放射線Rが照射され、放射線検出器20により放射線画像が撮影される。
【0042】
また、図4には、実施形態のマンモグラフィ装置及びコンソールの構成の一例を表したブロック図が示されている。図4に示すように本実施形態のマンモグラフィ装置10は、制御部40、記憶部42、I/F(Interface)部44、操作部46、及び線源移動部47をさらに備えている。制御部40、記憶部42、I/F部44、操作部46、及び線源移動部47はシステムバスやコントロールバス等のバス49を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0043】
制御部40は、コンソール12の制御に応じて、マンモグラフィ装置10の全体の動作を制御する。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)40A、ROM(Read Only Memory)40B、及びRAM(Random Access Memory)40Cを備える。ROM40Bには、CPU40Aで実行される、放射線画像の撮影に関する制御を行うための撮影プログラム41等を含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM40Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0044】
記憶部42には、放射線検出器20により撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。記憶部42の具体例としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等が挙げられる。I/F部44は、無線通信または有線通信により、コンソール12との間で各種情報の通信を行う。マンモグラフィ装置10で放射線検出器20により撮影された放射線画像の画像データは、I/F部44を介してコンソール12に無線通信または有線通信によって送信される。
【0045】
本実施形態の制御部40、記憶部42、及びI/F部44の各々は撮影台24内部に設けられている。
【0046】
また、操作部46は、例えば、マンモグラフィ装置10の撮影台24等に複数のスイッチとして設けられている。なお、操作部46は、タッチパネル式のスイッチとして設けられていてもよいし、医師及び技師等のユーザが足で操作するフットスイッチとして設けられていてもよい。
【0047】
線源移動部47は、上述したようにトモシンセシス撮影を行う場合に、制御部40の制御に応じて放射線源29を複数の照射位置19の各々に移動させる機能を有する。具体的には、線源移動部47は、撮影台24に対してアーム部33を回転させることにより複数の照射位置19の各々に放射線源29を移動させる。本実施形態の線源移動部47は、アーム部33内部に設けられている。
【0048】
一方、本実施形態のコンソール12は、無線通信LAN(Local Area Network)等を介してRIS(Radiology Information System)等から取得した撮影オーダ及び各種情報と、操作部56等によりユーザにより行われた指示等とを用いて、マンモグラフィ装置10の制御を行う機能を有している。
【0049】
本実施形態のコンソール12は、一例として、サーバーコンピュータである。図4に示すように、コンソール12は、制御部50、記憶部52、I/F部54、操作部56、及び表示部58を備えている。制御部50、記憶部52、I/F部54、操作部56、及び表示部58はシステムバスやコントロールバス等のバス59を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0050】
本実施形態の制御部50は、コンソール12の全体の動作を制御する。制御部50は、CPU50A、ROM50B、及びRAM50Cを備える。ROM50Bには、CPU50Aで実行される画像生成プログラム51を含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM50Cは、各種データを一時的に記憶する。本実施形態ではCPU50Aが、本開示のプロセッサの一例であり、コンソール12が、本開示の画像処理装置の一例である。また、本実施形態の画像生成プログラム51が、本開示の画像処理プログラムの一例である。
【0051】
記憶部52には、マンモグラフィ装置10で撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。記憶部52の具体例としては、HDDやSSD等が挙げられる。
【0052】
操作部56は、放射線Rの照射指示を含む放射線画像の撮影等に関する指示や各種情報等をユーザが入力するために用いられる。操作部56は特に限定されるものではなく、例えば、各種スイッチ、タッチパネル、タッチペン、及びマウス等が挙げられる。表示部58は、各種情報を表示する。なお、操作部56と表示部58とを一体化してタッチパネルディスプレイとしてもよい。
【0053】
I/F部54は、無線通信または有線通信により、マンモグラフィ装置10、RIS、及びPACS(Picture Archiving and Communication Systems)との間で各種情報の通信を行う。本実施形態の放射線画像撮影システム1では、マンモグラフィ装置10で撮影された放射線画像の画像データは、コンソール12が、I/F部54を介して無線通信または有線通信によりマンモグラフィ装置10から受信する。
【0054】
本実施形態のコンソール12は、トモシンセシス撮影において複数の投影画像を投影した際の実際の照射位置19を推定する機能を有する。図5には、本実施形態のコンソール12における、トモシンセシス撮影において複数の投影画像を投影した際の実際の照射位置19を推定する機能に係る構成の一例の機能ブロック図が示されている。図5に示すようにコンソール12は、取得部60、第1の断層画像生成部62、第1の3次元位置導出部64、第1の投影面位置導出部66、第2の投影面位置導出部68、推定部70、第2の断層画像生成部74、及び表示制御部76を備える。一例として本実施形態のコンソール12は、制御部50のCPU50AがROM50Bに記憶されている画像生成プログラム51を実行することにより、CPU50Aが取得部60、第1の断層画像生成部62、第1の3次元位置導出部64、第1の投影面位置導出部66、第2の投影面位置導出部68、推定部70、第2の断層画像生成部74、及び表示制御部76として機能する。各部の機能について、図6及び図7を参照して説明する。
【0055】
取得部60は、第1取得部60A及び第2取得部60Bを含む。第1取得部60Aは、マーカ90が写り込んだ複数の投影画像80を取得する機能を有する。本実施形態の第1取得部60Aは、マンモグラフィ装置10におけるトモシンセシス撮影により得られた投影画像80~80図6参照)を表す画像データを取得する。第1取得部60Aが取得する投影画像80の各々には、マーカ90を表すマーカ画像92tiが含まれる。本実施形態では、図6に示すように、投影画像80には、マーカ画像921iが含まれ、投影画像80には、マーカ画像922iが含まれ、投影画像80には、マーカ画像923iが含まれる。また、投影画像80には、マーカ画像927iが含まれる。第1取得部60Aは、取得した投影画像80~80を表す画像データを第1の断層画像生成部62、第1の投影面位置導出部66、及び第2の投影面位置導出部68に出力する。
【0056】
第2取得部60Bは、第1取得部60Aが取得した複数の投影画像80のそれぞれの照射位置として設定された複数の設定上の照射位置19Vを取得する機能を有する。本実施形態の第2取得部60Bは、設定上の照射位置19Vとして、3次元空間における設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)を取得する。第2取得部60Bが設定上の照射位置19Vを取得する方法は特に限定されない。例えば、第2取得部60Bが、マンモグラフィ装置10から設定上の照射位置19Vを表す情報を取得する形態としてもよい。また例えば、投影画像に撮影情報として設定上の照射位置19Vを表す情報が付与されている場合、取得した投影画像に付与されている撮影情報から設定上の照射位置19Vを表す情報を取得する形態としてもよい。第2取得部60Bは、取得した複数の設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)、第1の断層画像生成部62及び第1の投影面位置導出部66に出力する。
【0057】
第1の断層画像生成部62は、複数の設定上の照射位置19Vを用いて複数の投影画像80から断層画像82を生成する機能を有する。図6に示すように、本実施形態の第1の断層画像生成部62は、設定上の照射位置19Vを用いて投影画像80~80から、k枚の断層画像82~82を生成する。以下では、断層画像82~82を総称する場合、個々を区別せずに総称する場合「断層画像82」という。本実施形態の断層画像82が、本開示の第1の断層画像の一例である。第1の断層画像生成部62が断層画像82を生成する方法は特に限定されず、公知の手法を用いることができる。例えば、FBP(Filter Back Projection)法や逐次近似再構成法等の逆投影法により再構成を行ってもよく、公知の技術を適用することができる。なお、第1の断層画像生成部62が生成する断層画像82の断層面は、放射線検出器20の検出面20Aと略平行な面であり、本実施形態では、撮影台24の撮影面24Aと略平行な面である。第1の断層画像生成部62が生成する断層画像82の断層面の位置、換言すると撮影台24の撮影面24Aからの断層面の高さは特に限定されない。断層面の高さは、例えば、関心物の大きさ、放射線画像の画質、断層画像の生成における演算処理の処理負荷、及びユーザからの指示等に応じて定めることができる。
【0058】
断層画像82~82のうち、マーカ90を表すマーカ画像94は、マーカ90が存在する高さ、すなわちZ軸方向の位置に応じた、断層画像82に含まれる。図2に示したようにマーカ90は、圧迫板38の圧迫部38Aの上面38AAに設けられている。そのため、マーカ画像94は、上面38AAの高さに応じた断層画像82に含まれる。図6に示した例では、最も高い位置、換言すると放射線源29に近い位置の断層画像82に、マーカ画像94が含まれている。なお、断層画像82には、被写体Uである乳房を表す画像は含まれていない。一方、断層画像82~82は、圧迫板38より下の部分に対応しているため、マーカ画像94が含まれておらず、被写体Uである乳房を表す画像が含まれている。
【0059】
第1の断層画像生成部62は、生成したk枚の断層画像82を表す画像データを第1の3次元位置導出部64へ出力する。
【0060】
第1の3次元位置導出部64は、断層画像82からマーカ90が配置された3次元位置を導出する。本実施形態の第1の3次元位置導出部64は、マーカ90の位置として、マーカ90が存在する3次元空間における座標(mx,my,mz)を導出する。第1の3次元位置導出部64が、断層画像82からマーカ90iが存在する座標(mx,my,mz)を導出する方法は特に限定されない。一例として本実施形態では、断層画像82の各画素について、XY座標の値が予め定めらており、断層画像82の高さに応じてZ座標の値が予め定められている。第1の3次元位置導出部64は、断層画像82~82のうち、マーカ画像94が含まれる断層画像82を抽出し、断層画像82に含まれる各マーカ画像94の位置として、各マーカ画像94の重心を特定する。第1の3次元位置導出部64は、各マーカ画像94の重心に対応する画素のXY座標の値と、断層画像82に対応付けられているZ座標の値とから、各マーカ90の位置として座標(mx,my,mz)を導出する。
【0061】
第1の3次元位置導出部64が、断層画像82に含まれる各マーカ画像94の位置を検出する方法は特に限定されない。例えば、テンプレートマッチングによりマーカ画像94を検出する手法を適用してもよい。また例えば、既知のマーカ画像94を教師データとしてマーカ画像94を検出できるようにディープラーニング(深層学習)がなされたニューラルネットワークからなる学習済みモデルを用いた手法を適用してもよい。なお、学習済みモデルは、ディープラーニングがなされたニューラルネットワークの他、例えばサポートベクタマシン(SVM(Support Vector Machine))、畳み込みニューラルネットワーク(CNN(Convolutional Neural Network))、およびリカレントニューラルネットワーク(RNN(Recurrent Neural Network))等からなるものであってもよい。
【0062】
また、断層画像82において各マーカ90に対応するマーカ画像94が含まれる領域は予め定められている。そのため、第1の3次元位置導出部64は、マーカ画像94iが含まれているとして予め定められた領域において、断層画像82に含まれる各マーカ画像94の位置を検出する形態としてもよい。この場合、マーカ画像94の検出にかかる処理負荷を軽減することができ、また処理時間を短くすることができる。
【0063】
なお、断層画像82の生成に用いた設定上の照射位置19Vは、上述したようにトモシンセシス撮影における実際の照射位置19と異なる場合がある。このように設定上の照射位置19Vと、照射位置19が異なる場合、第1の3次元位置導出部64が導出するマーカ90の位置である座標(mx,my,mz)も、マーカ90が実際に存在している位置と異なる。
【0064】
第1の3次元位置導出部64は、導出した各マーカ90の位置の座標(mx,my,mz)を第1の投影面位置導出部66へ出力する。
【0065】
第1の投影面位置導出部66は、設定上の照射位置19Vとマーカ90の位置とから、投影面80Aに投影されるマーカ90の投影面位置を導出する機能を有する。第1の投影面位置導出部66が導出するマーカ90の投影面位置は、設定上の照射位置19Vから放射線源29により放射線Rを照射して投影画像80を撮影した場合に、撮影された投影画像80に含まれるマーカ90を表すマーカ画像92tiの位置に相当する。第1の投影面位置導出部66は、この場合のマーカ画像92tiの位置を投影面位置として導出する。
【0066】
図7を参照して、本実施形態の第1の投影面位置導出部66によるマーカ90の投影面位置の導出方法について説明する。なお、図7では、各照射位置19に対応する投影画像80に対応する投影面80Aの領域を投影面80Aと表し、投影面80Aにおけるマーカ90の位置をマーカ像91tiとして示している。
【0067】
図7に示すように、各設定上の照射位置19Vの位置の座標を(sx,sy,sz)とし、投影面80Aにおけるマーカ90の位置を表すマーカ像91tiの座標を(px’ti,py’ti)とする。座標px’ti,の値は、下記(1)式により表される。また、座標py’tiの値は、下記(2)式により表される。
【0068】
【数1】
【0069】
第1の投影面位置導出部66は、設定上の照射位置19Vの座標(sx,sy,sz)と、マーカ90の座標(mx,my,mz)とから、上記(1)式及び(2)式により、マーカ像91tiの座標(px’ti,py’ti)をマーカ90の投影面80Aにおける投影面位置として導出する。照射位置19毎に、マーカ像91tiの座標(px’ti,py’ti)が導出される。例えば、図6に示したように、第1の投影面位置導出部66は、照射位置19に対応する投影面80Aにおけるマーカ像911iの座標(px’1i,py’1i)、照射位置19に対応する投影面80Aにおけるマーカ像912iの座標(px’2i,py’2i)、及び照射位置19に対応する投影面80Aにおけるマーカ像913iの座標(px’3i,py’3i)を導出する。また、第1の投影面位置導出部66は、照射位置19に対応する投影面80Aにおけるマーカ像917iの座標(px’7i,py’7i)を導出する。以下、座標(px’ti,py’ti)を、「マーカ90の第1の2次元座標」という。本実施形態の第1の投影面位置導出部66が導出するマーカ90の第1の2次元座標(px’ti,py’ti)が、本開示の第1の投影面位置の一例である。
【0070】
第1の投影面位置導出部66は、導出したマーカ90の第1の2次元座標(px’ti,py’ti)を推定部70へ出力する。
【0071】
第2の投影面位置導出部68は、投影画像80の各々に含まれるマーカ90を表すマーカ画像92tiから投影面80Aにおけるマーカ90の位置を導出する機能を有する。本実施形態の第2の投影面位置導出部68は、投影面80Aにおけるマーカ90の位置として、投影画像80に含まれるマーカ画像92tiの位置の座標(pxti,pyti)を導出する。以下、座標(pxti,pyti)を、「マーカ90の第2の2次元座標」という。本実施形態の第2の投影面位置導出部68が導出するマーカ90の第2の2次元座標(pxti,pyti)が、本開示の第2の投影面位置の一例である。
【0072】
第2の投影面位置導出部68が、投影画像80に含まれるマーカ画像92tiからマーカ90の第2の2次元座標(pxti,pyti)を導出する方法は特に限定されない。一例として本実施形態では、投影画像80の各画素について、XY座標の値が予め定められている。第2の投影面位置導出部68は、各投影画像80に含まれる各マーカ画像92tiの位置として、各マーカ画像92tiの重心を特定する。第2の投影面位置導出部68は、各マーカ画像92tiの重心に対応する画素のXY座標の値から、マーカ90の第2の2次元座標(pxti,pyti)を導出する。
【0073】
第2の投影面位置導出部68は、導出したマーカ90の第2の2次元座標(pxti,pyti)を推定部70へ出力する。
【0074】
推定部70は、マーカ90の第1の2次元座標(px’ti,py’ti)と、90の第2の2次元座標(pxti,pyti)とに基づいて、トモシンセシス撮影における実際の照射位置である照射位置19を推定する機能を有する。図5に示すように本実施形態の推定部70は、更新部72を含む。
【0075】
マーカ90の第1の2次元座標(px’ti,py’ti)は、断層画像82から導出されたマーカ90の3次元位置と、設定上の照射位置19Vとから導出された、いわばマーカ90の仮定上の2次元位置である。一方、マーカ90の第2の2次元座標(pxti,pyti)は、各投影画像80から導出された、いわばマーカ90の実際上の2次元位置である。推定部70は、仮定上の2次元位置であるマーカ90の第1の2次元座標(px’ti,py’ti)を、実際上の2次元位置であるマーカ90の第2の2次元座標(pxti,pyti)に近づけることで、トモシンセシス撮影における実際の照射位置である照射位置19を推定する。
【0076】
設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)が、実際の照射位置19に近づくほど、仮定上の2次元位置であるマーカ90の第1の2次元座標(px’ti,py’ti)と実際上の2次元位置であるマーカ90の第2の2次元座標(pxti,pyti)との差(以下、「マーカ90の2次元位置の差」という)が小さくなる。また、マーカ90の位置である座標(mx,my,mz)が、マーカ90が実際に存在している位置に近づくほど、マーカ90の2次元位置の差が小さくなる。
【0077】
一例として本実施形態では、第2の2次元座標(pxti,pyti)と第1の2次元座標(px’ti,py’ti)との二乗誤差を下記(3)式で表されるエネルギ関数Eとして定義する。(3)式に示したエネルギ関数Eは、設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)が、実際の照射位置19に近づくほど小さくなる。また、エネルギ関数Eは、マーカ90の位置である座標(mx,my,mz)が、マーカ90が実際に存在している位置に近づくほど小さくなる。
【数2】
【0078】
本実施形態では、設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)及びマーカ90の座標(mx,my,mz)の各々をパラメータとする。推定部70は、上記(1)式及び(2)式に基づき、上記(3)式のエネルギ関数Eを最小化する設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)及びマーカ90の位置である座標(mx,my,mz)を導出する。第2の2次元座標(pxti,pyti)と第1の2次元座標(px’ti,py’ti)の差が小さいほどエネルギ関数Eは小さくなり、第2の2次元座標(pxti,pyti)と第1の2次元座標(px’ti,py’ti)とが一致する場合、エネルギ関数Eは「0」となる。このエネルギ関数Eを最小化とする設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)は、トモシンセシス撮影における実際の照射位置19に相当し、マーカ90の位置である座標(mx,my,mz)は、マーカ90の実際の3次元位置に相当する。
【0079】
そこで推定部70は、更新部72により、エネルギ関数Eのパラメータである、設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)及びマーカ90の座標(mx,my,mz)の各々を更新し繰り返し上記(3)式によりエネルギ関数Eを導出する。
【0080】
更新部72は、設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)及びマーカ90の座標(mx,my,mz)の各々を更新する機能を有する。一例として本実施形態の更新部72は、マーカ90の配置条件の範囲内でマーカ90の座標(mx,my,mz)を更新する。上述したようにマーカ90は、X方向の間隔L1、及びY方向の間隔L2とした配置条件で圧迫板38の圧迫部38Aの上面38AAに配置されている。すなわち、マーカ90は、隣接するマーカ90同士の間隔について、間隔L1及びL2という配置条件で配置されている。そのため、マーカ90同士の位置は、間隔L1及びL2により制限を受ける。本実施形態では、更新部72が配置条件の範囲内でマーカ90の座標(mx,my,mz)を更新することで、エネルギ関数Eを最小化するための処理量を抑制することができる。なお、マーカ90の配置条件としては、本形態に限定されない。例えば、マーカ90の配置条件としては、圧迫板38の圧迫部38Aの撓み状態、圧迫ユニット36に取り付けられた圧迫板38の傾き状態、及び圧迫ユニット36に取り付けられた圧迫板38の回転状態等に応じた条件が挙げられる。
【0081】
また、一例として本実施形態の更新部72は、設定上の照射位置19Vの配置条件の範囲内で設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)を更新する。本実施形態では、各設定上の照射位置19Vの間隔が配置条件として予め定められている。そのため、設定上の照射位置19V同士の位置は、配置条件により制限を受ける。本実施形態では、更新部72が配置条件の範囲内で設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)を更新することで、エネルギ関数Eを最小化するための処理量を抑制することができる。
【0082】
推定部70は、このようにして上記(3)式のエネルギ関数Eを最小化することで、トモシンセシス撮影における実際の照射位置19の座標及びマーカ90の実際の3次元位置の座標を推定する。推定部70は、推定したトモシンセシス撮影における実際の照射位置19の座標及びマーカ90の実際の3次元位置の座標を第2の断層画像生成部74に出力する。
【0083】
第2の断層画像生成部74は、推定部70により推定された照射位置19の位置を用いて投影画像80から断層画像を生成する機能を有している。本実施形態の第2の断層画像生成部74が生成する断層画像が、本開示の第2の断層画像の一例である。第2の断層画像生成部74が断層画像を生成する方法は特に限定されず、公知の手法を用いることができ、例えば、第1の断層画像生成部62が断層画像82を生成する方法と同様の方法を適用することができる。なお、本実施形態の第2の断層画像生成部74は、推定部70により推定されたマーカ90の実際の3次元位置の高さ方向の位置に応じた高さまで断層画像を生成する。すなわち、第2の断層画像生成部74は、生成する断層画像の断層面の最も高い位置、換言すると、最も放射線源29に近い断層画像の断層面の高さを、マーカ90の配置された高さに応じて高さとする。上述したようにマーカ90は圧迫板38の圧迫部38Aの上面38AAに配置されているため、マーカ90の高さ(Z軸方向の位置)がわかれば、圧迫板38により圧迫されている乳房の厚みがわかる。そこで、第2の断層画像生成部74は、マーカ90の高さに基づき、乳房の厚みを導出し、導出した乳房の厚みに応じた高さまで断層画像を生成する。従って、第2の断層画像生成部74により生成される断層画像には、マーカ90を表す画像が含まれない。これにより、例えば、マーカ90の高さまで断層画像を生成する場合に比べて、第2の断層画像生成部74により生成される断層画像の枚数を抑制することができるため、断層画像の生成にかかる処理量を抑制することができる。また、断層画像にマーカ90を表す画像が含まれないため、生成された複数の断層画像から合成2次元画像を生成する場合に、合成2次元画像にマーカ90を表す画像が含まれることがなくなる。このように第2の断層画像生成部74は生成した断層画像から合成2次元画像をさらに生成してもよい。第2の断層画像生成部74が合成2次元画像を生成する方法は特に限定されず、米国特許第8983156号明細書に記載の手法または特開2014-128716号公報に記載の手法等、公知の手法を用いることができる。
【0084】
ところで、乳房の厚みが厚いほど発生する散乱線が多くなることが知られている。そこで、本実施形態の第2の断層画像生成部74は、上述のようにして導出した乳房の厚みに基づいて散乱線量を推定する。また、第2の断層画像生成部74は、推定した散乱線量に応じた低い周波数成分を除去する定周波除去フィルタを投影画像80に適用し、投影画像80から散乱線成分を除去する。第2の断層画像生成部74は、散乱線が除去された投影画像80から断層画像を生成する。なお、乳房の厚みと散乱線の除去のために適用する低周波成分除去フィルタとの対応関係を得ておくことにより、第2の断層画像生成部74が乳房の厚みに応じた散乱線量を推定せずとも、導出した乳房の厚みから、散乱線の除去のために適用する低周波成分除去フィルタを選択することができる。
【0085】
また、本実施形態の第2の断層画像生成部74は、投影画像80から生成した断層画像に基づいて被写体Uである乳房の乳腺量に関する情報を導出する。一例として、本実施形態の第2の断層画像生成部74は、放射線Rの照射方向である乳房の厚み方向における乳腺の含有率を表す乳腺含有率を乳腺量に関する情報として画素毎に導出する。乳腺がなく脂肪のみからなる場合には、乳腺含有率は「0」になり、乳腺密度値が高くなるほど乳腺含有率は大きくなる。なお、第2の断層画像生成部74が乳腺含有率を導出する方法は特に限定されず、公地の手法を適用することができる。例えば、第2の断層画像生成部74は、各断層画像における被写体が写っていない領域、いわゆる素抜け領域の画素値、脂肪に対応する画素の画素値、乳腺含有率を導出する対象である画素の画素値、及び乳腺と脂肪との平均減弱係数比(乳腺の平均減弱係数/脂肪の平均減弱係数)に基づいて、乳腺含有率を導出することができる。
【0086】
乳房の乳腺が高濃度の場合、いわゆるデンステップブレストの場合、乳腺により腫瘤等の関心物が隠れてしまう懸念があることから、乳房の乳腺量または乳腺密度を導出することが行われており、より高精度に導出することが望まれている。上述したように、乳腺密度の導出には、乳房の厚みが係わる。しかしながら、圧迫板38により乳房を圧迫する場合、圧迫板38が撓んだり傾いたりすることにより、乳房の厚みが一様ではない場合がある。そこで、本実施形態では、複数のマーカ90を圧迫板38の圧迫部38Aの上面38AAに設けておくことにより、第2の断層画像生成部74は、局所的な領域における乳房の厚みを導出することができる。従って、本実施形態の第2の断層画像生成部74によれば、より高精度に乳腺量を導出することができる。
【0087】
断層画像82に含まれる各マーカ画像94の位置断層画像82に含まれる各マーカ画像94の位置なお、第2の断層画像生成部74は、乳腺量に関する情報として、上述したデンスブレスト等の乳腺含有率に応じた乳房のカテゴリを導出してもよい。乳房のカテゴリとしては、例えば、マンモグラフィガイドラインに示される、「脂肪性」、「乳腺散在」、「不均一高濃度」、及び「(極めて)高濃度」との分類が挙げられる。
【0088】
なお、第2の断層画像生成部74は、乳房の厚みから、その他の情報を導出してもよい。例えば、乳房の厚みと、放射線Rの線質硬化には対応関係があり、乳房が厚くなるほど線質が硬化する。そのため、第2の断層画像生成部74は、乳房の厚みから線質硬化の程度を導出してもよい。
【0089】
第2の断層画像生成部74は、生成した断層画像を表す画像データを表示制御部76へ出力する。また、第2の断層画像生成部74は、導出した乳腺量に関する情報を表示制御部76へ出力する。
【0090】
表示制御部76は、第2の断層画像生成部74が生成した断層画像を表示部58に表示させる機能を有する。また、第2の断層画像生成部74は、第2の断層画像生成部74が導出した乳腺量に関する情報を表示部58に表示させる機能を有する。なお、断層画像及び乳腺量に関する情報の表示先は、表示部58に限定されない。例えば、放射線画像撮影システム1の外部の読影装置等が表示先であってもよい。また、断層画像及び乳腺量に関する情報の各々の表示先を異ならせてもよい。
【0091】
次に、トモシンセシス撮影におけるコンソール12の作用について図面を参照して説明する。マンモグラフィ装置10によるトモシンセシス撮影が行われた後、コンソール12は、トモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像を用いて断層画像を生成し、表示部58等に表示させる。
【0092】
一例として本実施形態のマンモグラフィ装置10は、トモシンセシス撮影が終了すると、撮影された複数の投影画像80の画像データをコンソール12に出力する。コンソール12は、マンモグラフィ装置10から入力された複数の投影画像80の画像データを記憶部52に記憶させる。
【0093】
記憶部52に複数の投影画像80の画像データを記憶させた後、コンソール12は、図8に示した画像処理を実行する。図8には、本実施形態のコンソール12による画像処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。本実施形態のコンソール12は、一例として、制御部50のCPU50Aが、ROM50Bに記憶されている画像生成プログラム51を実行することにより、図8に一例を示した画像処理を実行する。
【0094】
図8のステップS100で、取得部60は、複数の投影画像80及び複数の設定上の照射位置19Vを取得する。上述したように本実施形態の取得部60の第1取得部60Aは、記憶部52から複数の投影画像80t画像データを取得する。また、取得部60の第2取得部60Bは、投影画像80に対応付けられている設定上の照射位置19Vを取得する。
【0095】
次のステップS102で第1の断層画像生成部62、第1の3次元位置導出部64、第1の投影面位置導出部66、第2の投影面位置導出部68、及び推定部70は、上述したように、トモシンセシス撮影における実際の照射位置19及びマーカ90の実際の3次元位置を推定するための詳細を後述する推定処理を行う。上述したように推定処理により、トモシンセシス撮影における実際の照射位置19の座標及びマーカ90の実際の3次元位置の座標が第2の断層画像生成部74に出力される。
【0096】
次のステップS104で第2の断層画像生成部74は、上述したように、詳細を後述する断層画像生成処理を実行し、上記ステップS104の推定処理により推定された照射位置19の位置を用いて投影画像80から断層画像を生成する。また、本実施形態では、断層画像生成処理において上述したように乳腺量に関する情報も導出する。
【0097】
次のステップS106で表示制御部76は、上記ステップS104で生成した断層画像及び導出した乳腺量に関する情報を表示部58に表示させる。ステップS106の処理が終了すると、図8に示した画像処理が終了する。なお、表示制御部76が、表示させる画像や情報は本実施形態に限定されない。例えば、表示制御部76は、投影画像80についても、表示させる形態としてもよい。
【0098】
さらに、画像処理のステップS102による推定処理の詳細について説明する。図9には、推定処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
【0099】
図9のステップS130で第1の断層画像生成部62は、画像処理のステップS100で取得した設定上の照射位置19Vを用い、投影画像80tから第1の断層画像として、断層画像82を生成する。上述したように本実施形態の第1の断層画像生成部62は、設定上の照射位置19Vを用いて投影画像80~80から、k枚の断層画像82~82を生成する。
【0100】
次のステップS132で第1の3次元位置導出部64は、上記ステップS132で生成された断層画像82からマーカ90が配置された3次元位置を導出する。上述したように本実施形態の第1の3次元位置導出部64は、各マーカ90の位置として座標(mx,my,mz)を導出する。
【0101】
次のステップS134で第1の投影面位置導出部66は、設定上の照射位置19Vとマーカ90の位置とから、投影面80Aに投影されるマーカ90の投影面位置を導出する。
【0102】
次のステップS136で推定部70は、上記(1)式及び(2)式に基づき、上記(3)式で表されるエネルギ関数Eを導出する。
【0103】
次のステップS138で推定部70は、推定処理を終了するか否かを判定する。一例として本実施形態の推定部70は、予め定められた終了条件を満たす場合、推定処理を終了すると判定する。終了条件としては、上記ステップS136で導出したエネルギ関数Eが、最小値である場合に終了するとした条件等が挙げられる。また、終了条件としては、上記ステップS136で導出したエネルギ関数Eが、予め定められた閾値以下となった場合に終了するとした条件等が挙げられる。
【0104】
上記ステップS136で導出したエネルギ関数Eが最小値ではない場合、または上記ステップS136で導出したエネルギ関数Eが予め定められた閾値を超える場合等であり、終了条件を満たさない場合、ステップS138の判定が否定判定となり、ステップS140へ移行する。ステップS140で推定部70の更新部72は、エネルギ関数Eの導出におけるパラメータである、設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)及びマーカ90の位置である座標(mx,my,mz)を更新する。ステップS140の処理が終了すると、ステップS134に戻り、ステップS134及びステップS136の処理を繰り返す。
【0105】
一方、上記ステップS136で導出したエネルギ関数Eが最小値である場合、または上記ステップS136で導出したエネルギ関数Eが予め定められた閾値以下である場合等の終了条件を満たす場合、ステップS138の判定が肯定判定となる。この際の更新結果である設定上の照射位置19Vの座標(sx、sy、sz)及びマーカ90の位置である座標(mx,my,mz)が、本推定処理による推定結果に対応する。ステップS138の判定が肯定判定となると、図9に示した推定処理が終了し、画像処理のステップS104へ移行する。なお、第1の断層画像生成部62において断層画像82の生成に用いる設定上の照射位置19Vを、本推定結果に対応する設定上の照射位置19Vで更新しておくことにより、次回のトモシンセシス撮影において本推定処理を実施する場合、設定上の照射位置19Vと、トモシンセシス撮影における実際の照射位置19との差を小さくすることができるため、本推定処理における処理負荷を軽減することができる。
【0106】
さらに、画像処理のステップS104による断層画像生成処理の詳細について説明する。図10には、断層画像処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
【0107】
図10のステップS150で第2の断層画像生成部74は、画像処理のステップS102において推定されたマーカ90の高さ(Z軸方向の位置)に基づいて、圧迫板38により圧迫されている乳房の厚みを導出する。
【0108】
次のステップS152で第2の断層画像生成部74は、上記ステップS150で導出した乳房の厚みに基づいて、上述したように生成する断層画像の断層面の最も高い位置を決定する。本実施形態の第2の断層画像生成部74は、上述したように、上記ステップS150で導出した乳房の厚みに応じた高さを、生成する断層画像の高さとして決定する。
【0109】
次のステップS154で第2の断層画像生成部74は、散乱線量を推定する。上述したように第2の断層画像生成部74は、上記ステップS150で導出した乳房の厚みに基づいて、各投影画像80に含まれる散乱線量を推定する。
【0110】
次のステップS156で第2の断層画像生成部74は、画像処理のステップS102において推定されたトモシンセシス撮影における実際の照射位置19の座標を用いて、投影画像80から断層画像を生成する。上述したように第2の断層画像生成部74は、上記ステップS154で推定した散乱線量に応じた低周波成分除去フィルタを適用して、投影画像80から断層画像を生成する。
【0111】
次のステップS158で第2の断層画像生成部74は、上記ステップS150で導出した乳房の厚みに基づいて、上述したように被写体Uである乳房の乳腺量に関する情報を導出する。ステップS158の処理が終了すると、図10に示した断層画像生成処理が終了し、画像処理のステップS106へ移行する。
【0112】
以上、説明したように、上記形態のコンソール12は、照射角度αが異なる複数の照射位置19の各々から放射線源29により被写体Uに向けて放射線Rをそれぞれ照射して得られた複数の投影画像を処理する。コンソール12は、CPU50Aを備える。CPU50Aは、複数の照射位置19tと投影面80Aとの間にマーカ90が配置された状態で、照射位置19毎に撮影された複数の断層画像82と、複数の投影画像80のそれぞれの照射位置として設定された複数の設定上の照射位置19Vとを取得し、設定上の照射位置19Vを用いて投影画像80から断層画像82を生成し、断層画像82からマーカ90が配置された3次元位置の座標(mx,my,mz)を導出し、設定上の照射位置19Vとマーカ90の3次元位置の座標(mx,my,mz)とから、投影面80Aに投影されるマーカ90の第1の2次元座標(px’ti,py’ti)を導出し、投影画像80の各々に含まれるマーカ90を表すマーカ画像91tiから導出される投影面80Aにおけるマーカ90の第2の2次元座標(pxti,pyti)と、第1の2次元座標(px’ti,py’ti)とに基づいて、照射位置19を推定する。
【0113】
上記構成により上記形態のコンソール12によれば、放射線Rの照射位置を精度よく導出することができる。また、上記形態のコンソール12によれば、マーカ90の3次元位置も精度よく導出することができる。
【0114】
さらに、マーカ90の3次元位置が不正確である場合、マーカ90の2次元位置等も不正確になり、放射線Rの照射位置の導出精度が低下する場合がある。特に、マーカ30を基準として用いて放射線Rの照射位置を導出する場合、マーカ90の3次元位置が不正確であれば、放射線Rの照射位置の導出精度が低下する。これに対し、上記形態のコンソール12によれば、放射線Rの照射入り及びマーカ90の3次元位置ともに精度よく導出することができる。
【0115】
また、トモシンセシス撮影では、複数枚の投影画像を撮影するため、被写体の体動等の影響により、投影画像80間に位置ずれが生じることがある。位置ずれが生じている投影画像80を用いて断層画像82を生成することにより、断層画像82の画質が低下するため、被写体の体動の補正を行う場合がある。本実施形態のコンソール12により、推定された放射線Rの照射位置19を用いて被写体の体動の補正を行うことにより、体動の補正の精度を向上させることができる。
【0116】
なお、上記形態では、コンソール12が本開示の画像処理装置の一例である形態について説明したが、コンソール12以外の装置が本開示の画像処理装置の機能を備えていてもよい。換言すると、取得部60、第1の断層画像生成部62、第1の3次元位置導出部64、第1の投影面位置導出部66、第2の投影面位置導出部68、推定部70、第2の断層画像生成部74、及び表示制御部76の機能の一部または全部をコンソール12以外の、例えばマンモグラフィ装置10や、外部の装置等が備えていてもよい。また、複数の装置により本開示の画像処理装置を構成してもよい。例えば、画像処理装置の機能の一部をコンソール12以外の装置が備えていてもよい。
【0117】
また、上記形態では、本開示の被写体の一例として乳房を適用し、本開示の放射線画像撮影装置の一例として、マンモグラフィ装置10を適用した形態について説明したが、被写体は乳房に限定されず、また放射線画像撮影装置はマンモグラフィ装置に限定されない。例えば、被写体は胸部や腹部等であってもよいし、放射線画像撮影装置はマンモグラフィ装置以外の放射線画像撮影装置を適用する形態であってもよい。
【0118】
また、上記形態において、例えば、取得部60、第1の断層画像生成部62、第1の3次元位置導出部64、第1の投影面位置導出部66、第2の投影面位置導出部68、推定部70、第2の断層画像生成部74、及び表示制御部76といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0119】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0120】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0121】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0122】
また、上記各形態では、撮影プログラム41がROM40Bに予め記憶(インストール)されており、また画像生成プログラム51がROM50Bに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。撮影プログラム41及び画像生成プログラム51の各々は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、撮影プログラム41及び画像生成プログラム51の各々は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 放射線画像撮影システム
10 マンモグラフィ装置
12 コンソール
19~19、19 照射位置、19V 設定上の照射位置
20 放射線検出器、20A 検出面
24 撮影台、24A 撮影面
28 放射線照射部
29 放射線源
33 アーム部
34 基台
35 軸部
36 圧迫ユニット
38 圧迫板、38A 圧迫部、38AA 上面
39 支持部
40A、50A CPU、40B、50B ROM、40C、50C RAM
41 撮影プログラム
42、52 記憶部
44、54 I/F部
46、56 操作部
47 線源移動部
49、59 バス
51 画像生成プログラム
58 表示部
60 取得部、60A 第1取得部、60B 第2取得部
62 第1の断層画像生成部
64 第1の3次元位置導出部
66 第1の投影面位置導出部
68 第2の投影面位置導出部
70 推定部
72 更新部
74 第2の断層画像生成部
76 表示制御部
80~80 投影画像、80A、80A~80A 投影面
82~82 断層画像
90 マーカ
911i~917i、91ti マーカ像
921i~927i、94 マーカ画像
CL 法線
R 放射線、RC 放射線軸
U 被写体
α、β 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10