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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】処理方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20241220BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241220BHJP
   C23C 14/00 20060101ALI20241220BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/68 R
C23C14/00 B
C23C14/54 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021067478
(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公開番号】P2022162596
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海▲瀬▼ 拓也
(72)【発明者】
【氏名】品田 正人
(72)【発明者】
【氏名】宮下 哲也
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-109975(JP,A)
【文献】特開2001-335927(JP,A)
【文献】特開2017-228579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/683
C23C 14/00
C23C 14/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理を行う処理装置内で行われる処理方法において、
処理容器内に設けられ基板が載せられるステージであって、上面のエッジ部に凸部が形成されたステージ上の場所とは異なる前記処理容器内の場所に予め準備された、前記基板よりも厚い板状の保護部材であって、前記基板が載せられるステージの上面を保護する保護部材を、前記ステージ上に載せる第1の配置工程と、
前記ステージと、前記ステージのエッジ部の上方に設けられた環状のカバー部材であって、前記ステージのエッジ部に対向する下面に凹部が形成されたカバー部材との間の距離を、前記基板の処理が行われる際の前記ステージと前記カバー部材との間の第1の距離とは異なる第2の距離に調整する調整工程と、
前記処理容器内の状態を予め定められた状態にするために、前記処理容器内で前処理を行う前処理工程と
前記ステージ上に前記基板を載せる第2の配置工程と、
前記カバー部材から前記ステージへ向かう方向から見た場合に、前記ステージの凸部が前記カバー部材の凹部と重なる位置となるように前記ステージを回転させる第1の回転工程と、
前記ステージを前記カバー部材に近付け、前記ステージの凸部と前記カバー部材の凹部とを嵌合させることにより、前記ステージと前記カバー部材との間の距離を第1の距離に設定する第1の設定工程と、
前記基板の処理を実行する処理工程と
を含み、
前記調整工程は、
前記カバー部材から前記ステージへ向かう方向から見た場合に、前記ステージの凸部の位置が、凹部が設けられた前記カバー部材の位置とは異なる位置に配置されるように前記ステージを回転させる第2の回転工程と、
前記ステージを前記カバー部材に近付け、前記ステージの凸部を、凹部が設けられた位置とは異なる前記カバー部材の位置に当接させることにより、前記ステージと前記カバー部材との間の距離を第1の距離よりも長い第2の距離に設定する第2の設定工程と
を含む処理方法。
【請求項2】
前記処理容器内には、ターゲットが露出しており、
前記前処理工程では、前記ターゲットのプリスパッタリングが行われる請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記前処理工程では、前記保護部材の温度が予め定められた温度に調整された後に、前記ターゲットのプリスパッタリングが行われる請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記凹部には、前記凹部の底部から開口部へ向かう方向に延在する第1の側壁部と、前記第1の側壁部から前記凹部の開口部へ進むに従って前記凹部の幅が広がる第1の傾斜部とが設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記凸部には、前記凸部の根元から前記凸部の先端へ向かう方向に延在する第2の側壁部と、前記第2の側壁部から前記凸部の先端へ進むに従って前記凸部の幅が狭くなる第2の傾斜部とが設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記第1の距離と前記第2の距離の差は、前記基板の厚さと前記保護部材の厚さとの差に等しい請求項1からのいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記ステージに接する前記保護部材の面は、前記ステージの上面よりも粗い請求項1からのいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項8】
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、基板が載せられるステージであって、上面のエッジ部に凸部が形成されたステージと、
前記ステージのエッジ部の上方に設けられた環状のカバー部材であって、前記ステージのエッジ部に対向する下面に凹部が形成されたカバー部材と、
前記ステージ上の場所とは異なる前記処理容器内の場所に予め準備された、前記基板よりも厚い板状の保護部材であって、前記基板が載せられるステージの上面を保護する保護部材を搬送する搬送部と、
記ステージと前記カバー部材との間の距離を調整する調整部と
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記保護部材を前記ステージ上に載せるように前記搬送部を制御する第1の配置工程と、
前記ステージと、前記カバー部材との間の距離を、前記基板の処理が行われる際の前記ステージと前記カバー部材との間の第1の距離とは異なる第2の距離に調整するように前記調整部を制御する調整工程と、
前記処理容器内の状態を予め定められた状態にするために、前記処理容器内で前処理を行う前処理工程と、
前記ステージ上に前記基板を載せるように前記搬送部を制御する第2の配置工程と、
前記カバー部材から前記ステージへ向かう方向から見た場合に、前記ステージの凸部が前記カバー部材の凹部と重なる位置となるように前記ステージを回転させる第1の回転工程と、
前記ステージを前記カバー部材に近付け、前記ステージの凸部と前記カバー部材の凹部とを嵌合させることにより、前記ステージと前記カバー部材との間の距離を第1の距離に設定する第1の設定工程と、
前記基板の処理を実行する処理工程と
を実行し、
前記調整工程は、
前記カバー部材から前記ステージへ向かう方向から見た場合に、前記ステージの凸部の位置が、凹部が設けられた前記カバー部材の位置とは異なる位置に配置されるように前記ステージを回転させる第2の回転工程と、
前記ステージを前記カバー部材に近付け、前記ステージの凸部を、凹部が設けられた位置とは異なる前記カバー部材の位置に当接させることにより、前記ステージと前記カバー部材との間の距離を第1の距離よりも長い第2の距離に設定する第2の設定工程と
を含む処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程では、基板に成膜やエッチング等の処理が施される。例えば下記の特許文献1には、スパッタリングにより基板に成膜を行う成膜システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-228579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の処理のスループットを向上させることができる処理方法および処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、基板の処理を行う処理装置内で行われる処理方法であって、第1の配置工程と、調整工程と、前処理工程とを含む。第1の配置工程では、基板が載せられるステージの上面を保護する保護部材がステージ上に載せられる。保護部材は、処理容器内に設けられ基板が載せられるステージ上の場所とは異なる処理容器内の場所に予め準備されている。調整工程では、ステージと、ステージのエッジ部の上方に設けられた環状のカバー部材との間の距離が、基板の処理が行われる際のステージとカバー部材との間の第1の距離とは異なる第2の距離に調整される。前処理工程では、処理容器内の状態を予め定められた状態にするために、処理容器内で前処理が行われる。また、保護部材は、基板とは異なる厚さである。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、基板の処理のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態における成膜システムの一例を示すシステム構成図である。
図2図2は、プロセスモジュールの一例を示す概略断面図である。
図3図3は、ステージのエッジ部の詳細な構造の一例を示す拡大断面図である。
図4図4は、マスクの下面の構造の一例を示す底面図である。
図5図5は、ステージの上面の構造の一例を示す平面図である。
図6図6は、本開示の一実施形態における処理方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、ディスクシャッタをステージに載せる際のプロセスモジュールの一例を示す概略断面図である。
図8図8は、マスクの凹部とステージの凸部との位置関係の一例を示す図である。
図9図9は、ステージのエッジ部の詳細な構造の一例を示す拡大断面図である。
図10図10は、ディスクシャッタを退避させる際のプロセスモジュールの一例を示す概略断面図である。
図11図11は、マスクの凹部の形状の他の例を示す拡大断面図である。
図12図12は、ステージの凸部の形状の他の例を示す拡大断面図である。
図13図13は、マスクの凹部およびステージの凸部の形状の他の例を示す拡大断面図である。
図14図14は、マスクの凹部およびステージの凸部の他の例を示す拡大断面図である。
図15図15は、マスクに凸部が設けられた場合のマスクおよびステージの一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、処理方法および処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される処理方法および処理装置が限定されるものではない。
【0009】
ところで、基板を処理する処理装置では、基板の処理を開始する前に、処理容器内の状態を予め定められた状態にするために、処理容器内で前処理が行われる場合がある。例えば、スパッタリングにより基板に成膜を行う処理装置では、ターゲットの表面に付着した不純物等を除去するために、処理容器内に基板が搬入される前に、ターゲットの表面をプラズマを用いて削り取るプリスパッタリングが行われる場合がある。このようなプリスパッタリングでは、ターゲットの表面から削り取られた不純物等が、基板が載せられるステージの表面に付着したり、プラズマによってステージの表面にダメージが加えられることがある。そのため、プリスパッタリングでは、ステージを保護するために、ステージの上面が保護される。
【0010】
このようなステージの保護を基板を用いて行う場合、基板を処理装置内のステージまで搬送する搬送系が稼働するまで、プリスパッタリングが開始できない。そのため、基板の処理の開始が遅れ、基板の処理のスループットの向上が難しい。そこで、処理装置の内部にステージを保護する保護部材を予め準備しておき、基板を搬送する搬送系の稼働が開始する前に、処理装置内の前処理を実行することが考えられる。
【0011】
ここで、処理装置の内部に予め準備しておく保護部材として、処理装置で処理される基板と同じものを用いることが考えられる。しかし、そのような基板は、プラズマに何度も晒されると、変形してしまう場合があり、頻繁に交換される必要がある。保護部材の交換が頻繁に行われると、保護部材の搬送のために処理対象の基板の搬送が待機される場合があり、基板の処理のスループットの向上が難しい。
【0012】
そこで、処理対象の基板よりも厚い保護部材を用いることが考えられる。しかし、保護部材の厚さが、処理対象の基板の厚さと異なると、保護部材がステージに載せられた状態で、ステージがプリスパッタリングが行われる位置に配置された場合、保護部材とステージを保護するマスクとが干渉する場合がある。保護部材とマスクとが干渉すると、マスクが変形または損傷したり、保護部材とマスクとが擦れることでパーティクルが発生する場合がある。そのため、保護部材とマスクとが干渉しないようにしながら、基板の処理のスループットを向上することができる技術が求められている。
【0013】
[成膜システム1の構成]
図1は、本開示の一実施形態における成膜システム1の構成の一例を示すシステム構成図である。成膜システム1は、例えば図1に示されるように、ローダモジュール11、アライナ12、複数のロードロックモジュールLL1~LL2、複数の真空搬送モジュールTM1~TM4、および複数のプロセスモジュールPM1~PM8を備える。以下では、複数のロードロックモジュールLL1~LL2を区別することなく総称する場合にロードロックモジュールLLと記載し、複数の真空搬送モジュールTM1~TM4を区別することなく総称する場合に真空搬送モジュールTMと記載する。また、以下では、複数のプロセスモジュールPM1~PM8を区別することなく総称する場合にプロセスモジュールPMと記載する。なお、図1の例では、成膜システム1にロードロックモジュールLLが2個設けられているが、成膜システム1に設けられるロードロックモジュールLLの個数は、2個より少なくてもよく、2個より多くてもよい。また、図1の例では、成膜システム1に真空搬送モジュールTMが4個設けられているが、成膜システム1に設けられる真空搬送モジュールTMの個数は、4個より少なくてもよく、4個より多くてもよい。また、図1の例では、成膜システム1にプロセスモジュールPMが8個設けられているが、成膜システム1に設けられるプロセスモジュールPMの個数は、8個より少なくてもよく、8個より多くてもよい。
【0014】
ローダモジュール11は、大気圧雰囲気の筐体内に搬送装置111を有する。搬送装置111は、多関節のロボットアームと、ロボットアームの先端に取り付けられ基板Wの搬送を実行するエンドエフェクタと、ロボットアームを駆動する駆動装置とを備える。
【0015】
ローダモジュール11を構成する筐体の側壁には、複数(例えば25枚)の基板Wを収容可能なFOUP(Front Open Unified Pod)110がセットされる複数のポート112が、側壁に沿って配置されている。ポート112にセットされたFOUP110には、成膜処理前または成膜処理後の基板Wが収容される。ローダモジュール11内の搬送装置111は、ポート112にセットされた各FOUP110と、アライナ12と、ロードロックモジュールLLとの間で基板Wを搬送する。
【0016】
アライナ12は、FOUP110から取り出され、ロードロックモジュールLLに搬入される前の基板Wの向きを揃えるプリアライメントを実行する。
【0017】
それぞれのロードロックモジュールLLは、減圧可能なチャンバを有する。ロードロックモジュールLL1はゲートバルブGVL1を介してローダモジュール11に接続されており、ロードロックモジュールLL2はゲートバルブGVL2を介してローダモジュール11に接続されている。ロードロックモジュールLLのチャンバには、その内部を大気圧雰囲気と真空圧雰囲気とに切り替えるための図示しない真空ポンプやリーク弁が接続されている。また、ロードロックモジュールLL1はゲートバルブGV11を介して真空搬送モジュールTM1に接続されており、ロードロックモジュールLL2はゲートバルブGV12を介して真空搬送モジュールTM1に接続されている。
【0018】
それぞれのTMは、互いにほぼ共通の構成を備えるので、以下では、真空搬送モジュールTM1に着目して説明する。真空搬送モジュールTM1は、例えば平面形状が六角形のチャンバを有する。真空搬送モジュールTM1のチャンバ内には、搬送装置TR1が設けられている。真空搬送モジュールTM1のチャンバ内は、真空排気され、チャンバ内に搬入された基板Wは、真空圧雰囲気下で搬送装置TR1によって搬送される。
【0019】
搬送装置TR1は、多関節のロボットアームと、ロボットアームの先端に取り付けられ基板Wの搬送を実行するエンドエフェクタと、ロボットアームを駆動する駆動装置とを備える。多関節のロボットアームは、鉛直軸周りに回転することが可能であり、この鉛直軸から水平方向に離れた延伸位置と、当該鉛直軸に近い縮退位置との間で伸縮することができる。
【0020】
本実施形態において、複数の真空搬送モジュールTMは、それぞれの六角形のチャンバの一面をローダモジュール11側へ向け、ローダモジュール11から一列に配置されている。最もローダモジュール11に近い真空搬送モジュールTM1は、ゲートバルブGV11を介してロードロックモジュールLL1に接続されており、ゲートバルブGV12を介してロードロックモジュールLL2に接続されている。また、真空搬送モジュールTM1は、ゲートバルブGV13を介してプロセスモジュールPM1に接続されており、ゲートバルブGV14を介してプロセスモジュールPM2に接続されている。
【0021】
プロセスモジュールPM1は、ゲートバルブGV21を介して真空搬送モジュールTM2に接続されており、プロセスモジュールPM2は、ゲートバルブGV22を介して真空搬送モジュールTM2に接続されている。真空搬送モジュールTM2のチャンバ内には、搬送装置TR2が設けられている。真空搬送モジュールTM2は、ゲートバルブGV23を介してプロセスモジュールPM3に接続されており、ゲートバルブGV24を介してプロセスモジュールPM4に接続されている。PM3は、ゲートバルブGV31を介して真空搬送モジュールTM3に接続されており、プロセスモジュールPM4は、ゲートバルブGV32を介して真空搬送モジュールTM3に接続されている。真空搬送モジュールTM3のチャンバ内には、搬送装置TR3が設けられている。真空搬送モジュールTM3は、ゲートバルブGV33を介してプロセスモジュールPM5に接続されており、ゲートバルブGV34を介してプロセスモジュールPM6に接続されている。プロセスモジュールPM5は、ゲートバルブGV41を介して真空搬送モジュールTM4に接続されており、プロセスモジュールPM6は、ゲートバルブGV42を介して真空搬送モジュールTM4に接続されている。真空搬送モジュールTM4のチャンバ内には、搬送装置TR4が設けられている。真空搬送モジュールTM4は、ゲートバルブGV43を介してプロセスモジュールPM7に接続されており、ゲートバルブGV44を介してプロセスモジュールPM8に接続されている。
【0022】
それぞれのプロセスモジュールPMは、基板Wを処理する。本実施形態において、プロセスモジュールPM1~PM5およびPM7~PM8は、基板Wの表面に金属膜を形成する成膜装置として構成され、プロセスモジュールPM6は、金属膜が形成された基板Wに対する熱処理を行う熱処理装置として構成される。なお、プロセスモジュールPM1~PM8のうちいずれを成膜装置とし、いずれを成膜装置とは異なる装置(例えば熱処理装置や、金属膜を酸化する酸化装置)とするかについては、基板Wに対して実施する処理の内容から決定され、特段の限定はない。また、全てのプロセスモジュールPM1~PM8を成膜装置としてもよいことは勿論である。
【0023】
制御部7は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリ内には、レシピ等のデータやプログラム等が格納される。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはSSD(Solid State Drive)等である。プロセッサは、メモリから読み出されたプログラムを実行することにより、メモリ内に格納されたレシピ等のデータに基づいて、入出力インターフェイスを介して成膜システム1の各部を制御する。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)等である。
【0024】
次に、図2を参照しながら、成膜装置として構成されるプロセスモジュールPMについて説明する。図2は、プロセスモジュールPMの一例を示す概略断面図である。図2に例示されたプロセスモジュールPMは、スパッタリングにより基板Wの表面に金属膜を形成するスパッタリング装置として構成されている。プロセスモジュールPMは、処理装置の一例である。
【0025】
プロセスモジュールPMは、処理容器21と、ステージ23と、ターゲット34とを備える。ステージ23は、処理容器21内に設けられており、成膜対象の基板Wが載せられる。ターゲット34は、表面が処理容器21の内部に露出しており、ステージ23上に載せられた基板Wへ向けて金属を放出する。処理容器21は、上部が開口した略円筒形状の容器である本体部211と、本体部211の開口を塞ぐ蓋体部212とを備える。本体部211の側壁には、開口が形成されており、当該開口は、ゲートバルブGVによって開閉される。
【0026】
ステージ23は、基材231と、ステージ23に対して基板Wを固定するための静電チャック232とを備える。基材231は、基板Wより大きな直径を有する略円板形状の部材により構成されている。基材231は、静電チャック232、および基板Wのうち少なくとも1つを予め定められた温度に調節するように構成される図示しない温調モジュールを含む。静電チャック232は、基材231の上面に配置されている。静電チャック232は、基板Wより小径の略円盤形状のセラミクス層内に図示しない電極が配置された構成となっている。静電チャック232内の電極に対し、図示しない直流電源から電圧を印加することにより、静電チャック232の上面に基板Wを吸着保持することができる。基材231および静電チャック232には、後述するリフトピン250を通過させるための貫通孔235が形成されている。
【0027】
ステージ23の上面には、ターゲット34から放出された金属が基材231の表面に付着することを防止するための環状のシールドリング234が配置されている。シールドリング234は、後述のマスク26の開口部262に向けて基材231が露出することを防止するため、静電チャック232の周囲を囲むように基材231上に配置されている。
【0028】
ステージ23の基材231の下面側の中央部には、ステージ23の中心軸周りに、ステージ23を回転させるための回転軸22が接続されている。回転軸22は、基材231との接続部から、鉛直下方側へ向けて延在するように設けられている。回転軸22は、処理容器21の本体部211の底壁を貫通して駆動部24に接続されている。回転軸22が本体部211を貫通する位置には、処理容器21の内部空間を気密に保持するためのシール部材が設けられている。
【0029】
駆動部24は、回転軸22をステージ23の中心軸周りに回転させることにより、ステージ23の静電チャック232上に吸着保持さられた基板Wを回転させることができる。また、駆動部24は、搬送装置TRのエンドエフェクタとステージ23との間で基板Wの受け渡しが行われる受け渡し位置と、基板Wに対する成膜処理が行われる成膜位置との間でステージ23を移動させるため、回転軸22を昇降移動させることができる。駆動部24は、調整部の一例である。
【0030】
また、処理容器21内には、基板Wのエッジ部に非成膜領域(金属膜が形成されない領域)を形成するためのマスク26が配置されている。マスク26は、カバー部材の一例である。マスク26は、金属膜が形成される領域に対応し、基板Wの直径よりも直径の小さな略円形の開口部262を有する略円環形状の部材により構成されている。マスク26は、ステージ23のエッジ部の上方に設けられている。マスク26の下面には、例えば図3に示されるように、静電チャック232、シールドリング234、および静電チャック232上の基板Wのエッジ部を収容可能な凹部263が形成されている。マスク26の外縁部261は、下方に向けて突出している。基板Wの成膜処理が行われる場合における静電チャック232とマスク26の開口部262の縁との間の上下方向における距離をΔL1と定義する。ΔL1は、第1の距離の一例である。
【0031】
凹部263の周囲には、例えば図4に示されるように、環状の突条部264が形成されている。図4は、マスク26の下面の構造の一例を示す底面図である。突条部264の下面であって、ステージ23のエッジ部に対向する面には、周方向に沿って複数(図4の例では3個)の凹部265が形成されている。なお、突条部264の下面に形成されている凹部265の数は、3個より少なくてもよく、3個より多くてもよい。一方、ステージ23の上面には、例えば図5に示されるように、複数の凹部265に対応する位置に複数(図5の例では3個)の凸部233が設けられている。図5は、ステージ23の上面の構造の一例を示す平面図である。なお、ステージ23の上面に形成されている凸部233の数は、3個より少なくてもよく、3個より多くてもよい。凸部233がマスク26の凹部265に嵌合することにより、マスク26に対するステージ23の位置が規制される。なお、凸部233と凹部265の位置関係を反転させ、マスク26側に複数の凸部233が設けられ、ステージ23側に凸部233がはめ込まれる凹部265が形成されていてもよい。
【0032】
図2に戻って説明を続ける。処理容器21内には、ステージ23が受け渡し位置まで降下する際に、ステージ23からマスク26を取り外すと共に、取り外されたマスク26を支持するマスク支持体28が設けられている。マスク支持体28は、マスク26の外周面を囲むように配置された略円筒状の部材により構成されている。マスク支持体28の上部には外周方向へ向けて広がるフランジ282が設けられている。フランジ282は、本体部211の内壁に固定されている。
【0033】
マスク支持体28は、ステージ23の昇降移動に伴うマスク26の移動経路と干渉しないように、上下に延在する略円筒の内部空間を有する。また、マスク支持体28の下端部には、略円筒の内側へ向けて突出し、縦断面が鉤状に形成された支持部281が、マスク支持体28の周方向に沿って形成されている。支持部281は、受け渡し位置の上方に設けられているので、ステージ23が受け渡し位置まで降下したとき、マスク26の外縁部261が、マスク支持体28の支持部281に係止されることによって、マスク26がステージ23から取り外される。
【0034】
ステージ23の下方には、複数(例えば3本)のリフトピン250を支持する支持部251が設けられている。駆動部252は、支持部251を昇降させる。
【0035】
また、マスク支持体28の下方には、静電チャック232を保護するディスクシャッタ27を搬送する搬送部270が設けられている。ディスクシャッタ27は、処理対象の基板Wとは異なる厚さである。本実施形態において、ディスクシャッタ27は基板Wよりも厚い。また、ステージ23に接するディスクシャッタ27の面は、ステージ23の上面(即ち静電チャック232の上面)よりも粗い。これにより、ディスクシャッタ27が搬送部270やステージ23上で滑り、搬送部270やステージ23に対して予め定められた位置からディスクシャッタ27がずれることを防止することができる。ディスクシャッタ27は、保護部材の一例である。搬送部270は、駆動部271によって駆動される。ディスクシャッタ27は、基板Wに対する処理が開始される前に予め搬送部270上に準備されている。そのため、ローダモジュール11、ロードロックモジュールLL、および真空搬送モジュールTMの稼働が開始する前であっても、ディスクシャッタ27を用いた処理を開始することができる。また、搬送部270は、マスク支持体28の下方に配置されており、基板Wに対する処理が行われている間は、マスク支持体28の開口部にマスク26およびステージ23が配置されている。そのため、スパッタリングによってターゲット34から放出された金属粒子がディスクシャッタ27に付着すること、および、ディスクシャッタ27に付着しているパーティクルが基板Wに付着することが防止される。
【0036】
本体部211の底壁には、排気口255が形成されている。排気口255には、排気管256を介して排気装置257が接続されている。排気装置257は、圧力調整弁および真空ポンプを含む。圧力調整弁によって、処理容器21内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプまたはこれらの組み合わせを含む。
【0037】
蓋体部212の略中央部には、スパッタリングに用いられるイオンの原料となるガス(例えばアルゴンガス)を処理容器21の内部空間に供給するためのガス供給管29が設けられている。
【0038】
蓋体部212には、ターゲット34を保持するホルダ30と、ホルダ30を蓋体部212に固定するためのホルダ支持部32とが設けられている。ホルダ支持部32は絶縁体により構成され、例えば金属製の蓋体部212から、金属製のホルダ30を電気的に絶縁しつつ、蓋体部212に対してホルダ30を固定する。
【0039】
ホルダ30は、電源36に接続されている。電源36は、ホルダ30に直流または交流の電力を供給することにより、ホルダ30に保持されたターゲット34の近傍に電界を発生させる。ターゲット34の近傍に発生した電界により、ガス供給管29から供給されたガスが解離してイオンが生成され、生成されたイオンがターゲット34に衝突することにより、ターゲット34から金属膜の原料となる金属粒子が放出される。ターゲット34から放出された金属粒子が、マスク26の開口部262を介して基板W上に堆積することにより、基板Wの表面に金属膜が形成される。
【0040】
[処理方法]
図6は、本開示の一実施形態における処理方法の一例を示すフローチャートである。図6では、主にプロセスモジュールPMの処理が例示されている。また、図6に例示された各ステップは、制御部7が成膜システム1の各部を制御することにより実現される。
【0041】
まず、ディスクシャッタ27がステージ23上に載せられる(S100)。ステップS100は、第1の配置工程の一例である。ステップS100では、ステージ23が受け渡し位置まで下降し、駆動部252により支持部251が上昇する。これにより、複数のリフトピン250が基材231および静電チャック232を通過し、複数のリフトピン250の先端が静電チャック232の上面よりも上方に突出する。そして、ディスクシャッタ27は、例えば図7に示されるように、搬送部270により複数のリフトピン250に渡される。図7は、ディスクシャッタ27をステージ23に載せる際のプロセスモジュールの一例を示す概略断面図である。そして、駆動部252により支持部251が下降し、ディスクシャッタ27がステージ23上に載せられる。
【0042】
次に、ディスクシャッタ27の温度および処理容器21内の圧力の調整が開始される(S101)。ステップS101では、基材231内の図示しない温度調整モジュールによりディスクシャッタ27の温度が予め定められた範囲内の温度に調整される。ステップS101における予め定められた範囲内の温度とは、例えばディスクシャッタ27にパーティクルが付着しやすい温度である。ディスクシャッタ27にパーティクルが付着しやすい温度は、ディスクシャッタ27やパーティクルの材質によって定められる。また、ステップS101では、排気装置257内の真空ポンプによって処理容器21内のガスが排気され、排気装置257内の圧力調整弁によって、処理容器21内の圧力が予め定められた範囲内の圧力に調整される。ステップS101における予め定められた範囲内の圧力とは、例えばターゲット34の付着物を除去するのに適した圧力である。
【0043】
次に、駆動部24は、マスク26からステージ23へ向かう方向から見た場合に、ステージ23の凸部233がマスク26の凹部265と重ならない位置となるように、ステージ23を回転させる(S102)。ステップS102は、第2の回転工程の一例である。これにより、マスク26からステージ23へ向かう方向から見た場合に、ステージ23の凸部233とマスク26の凹部265との位置関係は、例えば図8に示されるようになる。図8は、マスク26の凹部265とステージ23の凸部233との位置関係の一例を示す図である。
【0044】
次に、駆動部24は、ステージ23を成膜位置まで上昇させる(S103)。ステージ23が上昇することにより、ステージ23がマスク26に接触する。そして、ステージ23がさらに上昇することにより、マスク支持体28の支持部281に係止されていたマスク26が支持部281から離れ、ステージ23と共に上昇する。この際、ステージ23の凸部233がマスク26の凹部265と重ならない位置となるように、ステージ23が回転させられているため、ステージ23の凸部233は、例えば図9に示されるように、マスク26の突条部264の下面に当接している。これにより、マスク26とステージ23との間には、凸部233の高さ分の間隙ΔLが形成される。これにより、静電チャック232とマスク26の開口部262の縁との間の上下方向における距離ΔL2は、ステージ23の凸部233とマスク26の凹部265とが嵌合した場合の上下方向における距離ΔL1よりもΔL分長くなる。本実施形態において、間隙ΔLの長さは、基板Wとディスクシャッタ27の厚さの差に等しい。ΔL2は、第2の距離の一例である。また、ステップS103は、第2の設定工程の一例である。また、ステップS102およびS103は、調整工程の一例である。
【0045】
ここで、ディスクシャッタ27として、成膜対象の基板Wと同一の基板Wを用いる場合、基板Wがプラズマに何度も晒されると、基板Wが変形してしまう場合があり、基板Wを頻繁に交換する必要がある。ディスクシャッタ27の交換が頻繁に行われると、ディスクシャッタ27の搬送のために処理対象の基板Wの搬送が待機される場合があり、基板Wの処理のスループットの向上が難しい。そこで、処理対象の基板Wよりも厚いディスクシャッタ27を用いることが考えられる。しかし、ディスクシャッタ27の厚さが、処理対象の基板Wの厚さと異なると、ディスクシャッタ27がステージ23に載せられた状態で、ステージ23が成膜位置に配置された場合、ディスクシャッタ27とマスク26とが干渉する場合がある。ディスクシャッタ27とマスク26とが干渉すると、マスク26が変形または損傷したり、ディスクシャッタ27とマスク26とが擦れることでパーティクルが発生する場合がある。
【0046】
これに対し、本実施形態では、ステージ23上にディスクシャッタ27が載せられた場合、ステージ23とマスク26との距離を、ステージ23上に基板Wが載せられた際の距離よりも長くする。これにより、ステージ23がプリスパッタリングが行われる位置に配置された場合、ディスクシャッタ27とマスク26とが干渉することを防止することができる。また、ステージ23上にディスクシャッタ27が載せられた場合、ステージ23とマスク26との距離ΔL2は、ステージ23上に基板Wが載せられた際の距離ΔL1よりも、基板Wとディスクシャッタ27の厚さの差であるΔL分長くされる。これにより、ディスクシャッタ27とマスク26との間の隙間を、基板Wの成膜処理が実行される際の基板Wとマスク26との間の隙間と同程度まで狭くすることができる。これにより、プリスパッタリングにおいてプラズマによる静電チャック232やステージ23へのダメージを低減することができる。
【0047】
図6に戻って説明を続ける。制御部7は、ディスクシャッタ27の温度が予め定められた範囲内の温度となり、かつ、処理容器21内の圧力が予め定められた範囲内の圧力になったか否かを判定する(S104)。ディスクシャッタ27の温度が予め定められた範囲内の温度となっていないか、または、処理容器21内の圧力が予め定められた範囲内の圧力になっていない場合(S104:No)、再びステップS104に示された処理が実行される。
【0048】
一方、ディスクシャッタ27の温度が予め定められた範囲内の温度となり、かつ、処理容器21内の圧力が予め定められた範囲内の圧力になった場合(S104:Yes)、制御部7は、プロセスモジュールPM内でプリスパッタリングを実行する(S105)。プリスパッタリングは、処理容器21内の状態を予め定められた状態にするための前処理の一例である。また、ステップS105は、前処理工程の一例である。ステップS105では、ガス供給管29からアルゴンガス等のガスが処理容器21内に供給され、電源36からホルダ30に直流または交流の電力が供給される。これにより、ターゲット34の近傍に発生した電界により処理容器21内のガスが解離してイオンが生成され、生成されたイオンがターゲット34に衝突することにより、ターゲット34の表面の不純物等が除去される。ターゲット34から除去された不純物は、排気口255を介して排気されるが、その一部は、処理容器21の内壁に付着する。本実施形態では、静電チャック232の上面はディスクシャッタ27により保護されているので、ターゲット34から除去された不純物はディスクシャッタ27に付着するが、静電チャック232への不純物の付着は抑制される。
【0049】
次に、制御部7は、ステージ23上のディスクシャッタ27を退避させる(S106)。ステップS106では、駆動部24によりステージ23が受け渡し位置まで下降し、駆動部252により支持部251が上昇し、複数のリフトピン250が基材231および静電チャック232を通過する。そして、複数のリフトピン250の先端が静電チャック232の上面よりも上方に突出することによりディスクシャッタ27が持ち上げられる。そして、搬送部270は、複数のリフトピン250からディスクシャッタ27を取り出し、例えば図10の矢印に示されるように、ステージ23上とは異なる処理容器21内の位置に退避させる。図10は、ディスクシャッタ27を退避させる際のプロセスモジュールの一例を示す概略断面図である。
【0050】
次に、処理容器21内に処理対象の基板Wが搬入される(S107)。ステップS107は、第2の配置工程の一例である。ステップS107では、駆動部252により支持部251が上昇し、複数のリフトピン250の先端が静電チャック232の上面よりも上方に突出する。そして、ゲートバルブGVが開けられ、搬送装置TRにより基板Wが処理容器21内に搬入される。そして、搬送装置TRにより基板Wが複数のリフトピン250に渡され、搬送装置TRが真空搬送モジュールTMに退避し、ゲートバルブGVが閉じられる。そして、駆動部252により支持部251が下降し、基板Wがステージ23上に載せられる。
【0051】
次に、基板Wの温度および処理容器21内の圧力の調整が開始される(S108)。ステップS108では、基材231内の図示しない温度調整モジュールにより基板Wの温度が予め定められた温度に調整される。また、ステップS108では、排気装置257内の真空ポンプによって処理容器21内のガスが排気され、排気装置257内の圧力調整弁によって、処理容器21内の圧力が予め定められた圧力に調整される。ステップS108における予め定められた範囲内の温度および圧力とは、基板Wの成膜処理に適した範囲内の温度および圧力である。
【0052】
次に、駆動部24は、マスク26からステージ23へ向かう方向から見た場合に、ステージ23の凸部233がマスク26の凹部265と重なる位置となるように、ステージ23を回転させる(S109)。ステップS109は、第1の回転工程の一例である。そして、駆動部24は、ステージ23を成膜位置まで上昇させる(S110)。ステップS110は、第1の設定工程の一例である。ステージ23が上昇することにより、ステージ23の凸部233がマスク26の凹部265に嵌合する。そして、ステージ23がさらに上昇することにより、マスク支持体28の支持部281に係止されていたマスク26が支持部281から離れ、ステージ23と共に上昇する。この際、ステージ23の凸部233とマスク26の凹部265とが嵌合しているため、マスク26の突条部264は、例えば図3に示されたように、基材231の上面に接している。これにより、これにより、静電チャック232とマスク26の開口部262の縁との間の距離ΔL1は、ステージ23の凸部233とマスク26の凹部265とが嵌合ない場合の距離ΔL2よりも間隙ΔL分短くなる。
【0053】
次に、制御部7は、基板Wの温度が予め定められた範囲内の温度となり、かつ、処理容器21内の圧力が予め定められた範囲内の圧力になったか否かを判定する(S111)。基板Wの温度が予め定められた範囲内の温度となっていないか、または、処理容器21内の圧力が予め定められた範囲内の圧力になっていない場合(S111:No)、再びステップS111に示された処理が実行される。
【0054】
一方、基板Wの温度が予め定められた範囲内の温度となり、かつ、処理容器21内の圧力が予め定められた範囲内の圧力になった場合(S111:Yes)、制御部7は、プロセスモジュールPM内で基板Wに対する成膜処理を実行する(S112)。ステップS112は、処理工程の一例である。ステップS112では、ガス供給管29からアルゴンガス等のガスが処理容器21内に供給され、電源36からホルダ30に直流または交流の電力が供給される。これにより、ターゲット34の近傍に電界が発生し、発生した電界により処理容器21内のガスが解離してイオンが生成される。そして、生成されたイオンがターゲット34に衝突することにより、ターゲット34から金属粒子が放出され、放出された金属粒子が基板Wの表面に堆積する。
【0055】
次に、基板Wの表面に予め定められた厚さの金属膜が形成された場合、制御部7は、処理容器21から基板Wを搬出する(S113)。ステップS113では、駆動部24によりステージ23が受け渡し位置まで下降し、駆動部252により支持部251が上昇し、複数のリフトピン250が基材231および静電チャック232を通過する。そして、複数のリフトピン250の先端が静電チャック232の上面よりも上方に突出することにより基板Wが持ち上げられる。そして、ゲートバルブGVが開けられ、搬送装置TRが処理容器21内に挿入され、基板Wが複数のリフトピン250から搬送装置TRに渡され、搬送装置TRが基板Wを処理容器21から搬出する。そして、本フローチャートに示された処理方法が終了する。
【0056】
なお、本実施形態において、ステップS100は、ローダモジュール11、ロードロックモジュールLL、および真空搬送モジュールTMの稼働が開始する前に開始される。これにより、ローダモジュール11、ロードロックモジュールLL、および真空搬送モジュールTMの稼働が開始するまでの間に、ステップS100~S105までの処理を終了することができる。これにより、ローダモジュール11、ロードロックモジュールLL、および真空搬送モジュールTMの稼働が開始した場合、ステップS106以降の処理を迅速に開始することができる。これにより、基板Wの処理のスループットを向上させることができる。
【0057】
以上、実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における処理方法は、基板Wの処理を行うプロセスモジュールPM内で行われる処理方法であって、第1の配置工程と、調整工程と、前処理工程とを含む。第1の配置工程では、基板Wが載せられるステージ23の上面を保護するディスクシャッタ27がステージ23上に載せられる。ディスクシャッタ27は、処理容器21内に設けられ基板Wが載せられるステージ23上の場所とは異なる処理容器21内の場所に予め準備されている。調整工程では、ステージ23と、ステージ23のエッジ部の上方に設けられた環状のマスク26との間の距離が、基板Wの処理が行われる際のステージ23とマスク26との間の距離ΔL1とは異なる距離ΔL2に調整される。前処理工程では、処理容器21内の状態を予め定められた状態にするために、処理容器21内で前処理が行われる。また、ディスクシャッタ27は、基板Wとは異なる厚さである。これにより、基板Wの処理のスループットを向上させることができる。
【0058】
また、上記した実施形態において、処理容器21には、ターゲット34が露出しており、前処理工程では、ターゲット34のプリスパッタリングが行われる。これにより、基板Wの成膜処理が行われる前にターゲット34の不純物を除去することができる。
【0059】
また、上記した実施形態において、前処理工程では、ディスクシャッタ27の温度が予め定められた温度に調整された後に、ターゲット34のプリスパッタリングが行われる。これにより、プリスパッタリングによりターゲット34から除去されディスクシャッタ27に付着した不純物がディスクシャッタ27から剥がれて処理容器21内に再飛散することを抑制することができる。
【0060】
また、上記した実施形態において、ディスクシャッタ27は、基板Wよりも厚い。また、ステージ23の上面のエッジ部には、凸部233が形成されており、マスク26の下面には、ステージ23のエッジ部に対向する面に凹部265が形成されている。処理方法には、第2の配置工程と、第1の回転工程と、第2の設定工程と、処理工程とを含む。第2の配置工程では、ステージ23上に基板Wが載せられる。第1の回転工程では、マスク26からステージ23へ向かう方向から見た場合に、ステージ23の凸部233がマスク26の凹部265と重なる位置となるようにステージ23を回転させる。第1の設定工程では、ステージ23をマスク26に近付け、ステージ23の凸部233とマスク26の凹部265とを嵌合させることにより、ステージ23とマスク26との間の距離が距離ΔL1に設定される。処理工程では、基板Wの処理が実行される。また、調整工程には、第2の回転工程と、第2の設定工程とが含まれる。第2の回転工程では、マスク26からステージ23へ向かう方向から見た場合に、ステージ23の凸部233の位置が凹部265が設けられたマスク26の位置とは異なる位置に配置されるようにステージ23が回転させられる。第2の設定工程では、ステージ23をマスク26に近付け、ステージ23の凸部233を、凹部265が設けられた位置とは異なるマスク26の位置に当接させることにより、ステージ23とマスク26との間の距離が距離ΔL1よりも長い距離ΔL2に設定される。これにより、ステージ23とマスク26との間の距離を容易に変更することができる。
【0061】
また、上記した実施形態において、距離ΔL1と距離ΔL2との差は、基板Wの厚さとディスクシャッタ27の厚さとの差に等しい。これにより、ディスクシャッタ27とマスク26との間の隙間を、基板Wの成膜処理が実行される際の基板Wとマスク26との間の隙間と同程度まで狭くすることができる。そのため、プリスパッタリングにおいてプラズマによる静電チャック232へのダメージを低減することができる。
【0062】
また、上記した実施形態において、ステージ23に接するディスクシャッタ27の面は、ステージ23の上面よりも粗い。これにより、ディスクシャッタ27がステージ23上で滑り、ステージ23に対して予め定められた位置からディスクシャッタ27がずれることを防止することができる。
【0063】
また、上記した実施形態におけるプロセスモジュールPMは、処理容器21と、ステージ23と、マスク26と、搬送部270と、駆動部24とを備える。ステージ23は、処理容器21内に設けられ、基板Wが載せられる。マスク26は、ステージ23のエッジ部の上方に設けられており、環状に形成されている。搬送部270は、ステージ23上の場所とは異なる処理容器21内の場所に予め準備された板状のディスクシャッタ27であって、基板Wが載せられるステージ23の上面を保護するディスクシャッタ27をステージ23上に載せる。駆動部24は、ステージ23上にディスクシャッタ27が載せられた場合に、ステージ23とマスク26との間の距離を、基板Wの処理が行われる際のステージ23とマスク26との間の距離ΔL1とは異なる距離ΔL2に調整する。また、ディスクシャッタ27は、基板Wとは異なる厚さである。これにより、基板Wの処理のスループットを向上させることができる。
【0064】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0065】
例えば、上記した実施形態において、凹部265の開口部には、例えば図11に示されるように傾斜が設けられてもよい。図11は、マスク26の凹部の形状の他の例を示す拡大断面図である。凹部265には、凹部265の深さ方向に延在する第1の側壁部265aと、第1の側壁部265aから凹部265の開口部へ進むに従って凹部265の幅が広がるように形成された第1の傾斜部265bとが設けられている。これにより、ステージ23が上昇した場合に、ステージ23の凸部233がマスク26の凹部265に容易に挿入され、凸部233と凹部265とを容易に嵌合させることができる。
【0066】
また、傾斜部は、例えば図12に示されるように、凸部233側に形成されていてもよい。図12は、ステージ23の凸部233の形状の他の例を示す拡大断面図である。ステージ23の凸部233には、凸部233の根元から凸部233の突出方向に延在する第2の側壁部233bと、第2の側壁部233bから凸部233の先端へ進むに従って凸部233の幅が狭くなるように形成された第2の傾斜部233aとが設けられている。また、傾斜部は、例えば図13に示されるように、凹部265および凸部233の両方に形成されていてもよい。図13は、マスク26の凹部265およびステージ23の凸部233の形状の他の例を示す拡大断面図である。
【0067】
また、上記した実施形態では、ステージ23のエッジ部に沿って凹部265および凸部233が3組ずつ設けられたが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、例えば図14に示されるように、ステージ23のエッジ部に沿って凹部265および凸部233が複数設けられてもよい。図14は、マスク26の凹部265およびステージ23の凸部233の他の例を示す拡大断面図である。図14では、ステージ23のエッジ部に沿う方向におけるマスク26およびステージ23の一部が拡大して図示されている。図14の例では、ステージ23のエッジ部に沿って、マスク26およびステージ23のそれぞれに凹部および凸部の両方が形成されていると考えることもできる。
【0068】
図14の例において、マスク26に形成された複数の凹部265の間隔と、ステージ23に形成された複数の凸部233の間隔とは同一となるように構成される。そして、複数の凹部265と、複数の凸部233とが噛み合うようにステージ23を回転させることにより、静電チャック232からマスク26の開口部262の縁までの上下方向における距離をΔL1に設定することができる。また、複数の凸部233が、凹部265が形成されていないマスク26の部分に接するようにステージ23を回転させることで、静電チャック232からマスク26の開口部262の縁までの上下方向における距離をΔL1よりも長いΔL2に設定することができる。
【0069】
また、上記した実施形態では、マスク26に凹部265が設けられたが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、マスク26には、例えば図15に示されるように、凸部266が形成されてもよい。図15は、マスク26に凸部266が設けられた場合のマスク26およびステージ23の一例を示す拡大断面図である。図15のような構成でも、凸部266が設けられていないマスク26の面と、凸部233とが接するようにステージ23を回転させることで、静電チャック232とマスク26の開口部262の縁との間の上下方向における距離をΔL1に設定することができる。また、凸部266と凸部233とが接するようにステージ23を回転させることにより、静電チャック232とマスク26の開口部262の縁との間の上下方向における距離をΔL1よりも長いΔL2に設定することができる。
【0070】
また、上記した実施形態では、処理装置としてスパッタリングにより成膜を行うプロセスモジュールPMを例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。即ち、基板Wに対して処理を行う処理装置であれば、エッチング装置や改質装置等の他の処理装置に対しても開示の技術を適用することができる。
【0071】
また、上記した実施形態では、前処理としてプリスパッタリングを例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。例えば、成膜システム1内のクリーニングやシーズニング等の前処理においても、開示の技術を適用することができる。
【0072】
また、上記した実施形態では、マスク26に設けられた凹部265とステージ23に設けられた凸部233とを用いて、マスク26とステージ23との間の距離を変更したが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、マスク26が、成膜処理が実行される際の位置で保持され、駆動部24は、プリスパッタリングが行われる際のステージ23の高さを、成膜処理が実行される際のステージ23の高さよりもΔL低い位置まで上昇させてもよい。このようにしても、プリスパッタリングが行われる際に、ディスクシャッタ27とマスク26とが干渉することを防止することができる。
【0073】
また、上記した実施形態において、ディスクシャッタ27は、基板Wより厚いが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、基板Wよりもプラズマに対する耐久性が高い材料により構成することができれば、基板Wよりも薄くてもよい。ディスクシャッタ27が基板Wより薄い場合、プリスパッタリングにおける静電チャック232とマスク26の開口部262の縁との間の距離ΔL2は、成膜処理における際の静電チャック232とマスク26の開口部262の縁との間の距離ΔL1より短い。例えば、プリスパッタリングが行われる場合、マスク26の凹部265とステージ23の凸部233とを嵌合させることにより、静電チャック232とマスク26の開口部262の縁との間の距離がΔL2に設定される。これにより、ディスクシャッタ27とマスク26との間の隙間を、成膜処理が実行される際の基板Wとマスク26との間の隙間と同程度まで狭くすることができる。これにより、プリスパッタリングにおいてプラズマによる静電チャック232へのダメージを低減することができる。一方、成膜処理が行われる場合、凹部265が設けられていないマスク26の面とステージ23の凸部233とを当接させることにより、静電チャック232とマスク26の開口部262の縁との間の距離がΔL2より長いΔL1に設定される。これにより、成膜処理において、基板Wとマスク26との干渉を防止することができる。
【0074】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
GV ゲートバルブ
LL ロードロックモジュール
PM プロセスモジュール
TR 搬送装置
TM 真空搬送モジュール
W 基板
1 成膜システム
11 ローダモジュール
110 FOUP
111 搬送装置
112 ポート
12 アライナ
21 処理容器
211 本体部
212 蓋体部
22 回転軸
23 ステージ
231 基材
232 静電チャック
233 凸部
233a 第2の傾斜部
233b 第2の側壁部
234 シールドリング
235 貫通孔
24 駆動部
250 リフトピン
251 支持部
252 駆動部
255 排気口
256 排気管
257 排気装置
26 マスク
261 外縁部
262 開口部
263 凹部
264 突条部
265 凹部
265a 第1の側壁部
265b 第1の傾斜部
266 凸部
27 ディスクシャッタ
270 搬送部
271 駆動部
28 マスク支持体
281 支持部
282 フランジ
29 ガス供給管
30 ホルダ
32 ホルダ支持部
34 ターゲット
36 電源
7 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15