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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】横軸ポンプ、ポンプ機場
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/14 20060101AFI20241220BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F04D29/14
F04D13/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021088117
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181265
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】大箭 直輝
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-108169(JP,A)
【文献】特開昭59-108898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/14
F04D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
前記羽根車が収容されたポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングの下流側に接続され、吐出口が吐出水槽に没している吐出管と、
前記ポンプケーシングを満水させる満水系統と、
前記ポンプケーシングを貫通し、前記羽根車を水平支持するポンプ軸と、
前記ポンプ軸が前記ポンプケーシングを貫通する部分を軸封する軸封部と、
前記軸封部の外側に、前記ポンプ軸を囲うように配置された止水ゴムと、
前記止水ゴムの内圧を測定する圧力計と、
少なくとも前記ポンプケーシングを満水させるとき、前記止水ゴムに圧縮空気を供給して前記止水ゴムを膨らませ、前記ポンプ軸と前記軸封部との間の隙間をシールさせる圧縮空気供給機構と、を備え
前記圧縮空気供給機構は、
前記吐出水槽の水位未満の高さに設けられた補助タンクと、
前記補助タンクと前記吐出水槽との水頭差で、前記吐出水槽側から前記補助タンク側に液体を流入させる流入管と、
前記流入管からの液体の流入によって前記補助タンクの内部で圧縮された圧縮空気を、前記止水ゴムに供給する通気管と、を有し、
前記圧力計の計測結果が目標圧力以上になった場合、前記圧縮空気の供給を停止し、前記圧力計の計測結果が目標圧力未満に下がった場合は、前記圧縮空気の供給を再開する、ことを特徴とする横軸ポンプ。
【請求項2】
前記軸封部の外側で前記ポンプ軸を囲う筒部を備え、
前記止水ゴムは、前記ポンプ軸と前記筒部との空間を埋めるように膨らむ、ことを特徴とする請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項3】
前記圧縮空気供給機構は、少なくとも前記ポンプ軸を回転させるとき、前記止水ゴムに対する圧縮空気の供給を停止して前記止水ゴムを萎ませる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の横軸ポンプ。
【請求項4】
前記圧縮空気供給機構は、
前記流入管に設けられた流入弁と、
前記通気管に設けられた通気弁と、
前記補助タンクの内部を大気開放する大気開放弁と、
前記補助タンクの内部に流入した液体を排水する排水弁と、を有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の横軸ポンプ。
【請求項5】
前記圧縮空気供給機構は、前記大気開放弁及び前記排水弁を開き、前記補助タンクの内部を大気開放及び排水した後、前記大気開放弁及び前記排水弁を閉じ、その後、前記流入弁を開き、前記補助タンクの内部の空気を圧縮した後、前記流入弁を閉じ、その後、前記通気弁を開き、前記補助タンクの内部の圧縮空気を前記止水ゴムに供給する圧縮空気供給プロセスを実行する、ことを特徴とする請求項4に記載の横軸ポンプ。
【請求項6】
前記圧縮空気供給機構は、前記圧力計の測定結果が目標圧力以上になるまで、前記圧縮空気供給プロセスを繰り返す、ことを特徴とする請求項5に記載の横軸ポンプ。
【請求項7】
前記圧縮空気供給機構は、
前記補助タンクの内部の圧力を計測する第2の圧力計を有し、
前記圧縮空気供給プロセスにおいて前記圧力計と前記第2の圧力計との計測結果の差圧が所定値以下になったら、前記通気弁が開いている状態でさらに前記流入弁を開き、前記補助タンクの内部の空気を前記止水ゴムの内部に押し込む、ことを特徴とする請求項5または6に記載の横軸ポンプ。
【請求項8】
前記圧縮空気供給機構は、
前記補助タンクの内部の水位を計測する水位計を有し、
前記水位計の計測結果に基づいて、前記圧縮空気供給プロセスにおける前記流入弁を閉じるタイミングを調整する、ことを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の横軸ポンプ。
【請求項9】
前記軸封部は、フローティングシールを備える、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の横軸ポンプ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の横軸ポンプを備える、ことを特徴とするポンプ機場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横軸ポンプ、ポンプ機場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横軸ポンプは、例えば、大雨時等に湛水防除の目的で稼働するポンプ機場に設置されている。横軸ポンプは、羽根車が吸込水位よりも上方に位置するため、始動時にポンプケーシングの内部を満水させる必要がある。このため、横軸ポンプのポンプケーシングの上部には、ポンプケーシングの内部を吸気して満水させる真空ポンプが接続され、また、ポンプケーシングの満水を検知する満水検知器が設けられている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-19734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、横軸ポンプには、ポンプ軸がポンプケーシングを貫通している軸封部があり、この軸封部から空気が混入すると、ポンプケーシングの内部を満たしている液体が落水してしまう虞がある。このため、ポンプケーシングの上部に満水タンクを設置し、真空ポンプによってポンプケーシングから満水タンクまで液体を吸い上げて、軸封部にかかる水頭圧を高め、当該軸封部からの空気の混入を抑制している。なお、満水タンクまで液体を吸い上げるには、通常、約5~10分程の時間を要する。
【0005】
満水タンクは、その機能上、ポンプケーシングの上部に設置する必要があるが、大型であるため、ポンプ機場のメンテナンス上好ましくない。また、ポンプケーシングの満水状態を維持するためには、満水タンクの水位が低下するたびに、真空ポンプの起動および停止が必要で、真空ポンプの発停頻度が増えるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、満水タンクの設置が不要で、ポンプケーシングの内部の落水を抑制できる横軸ポンプ、ポンプ機場の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る横軸ポンプは、羽根車と、前記羽根車が収容されたポンプケーシングと、前記ポンプケーシングを満水させる満水系統と、前記ポンプケーシングを貫通し、前記羽根車を水平支持するポンプ軸と、前記ポンプ軸が前記ポンプケーシングを貫通する部分を軸封する軸封部と、前記軸封部の外側に、前記ポンプ軸を囲うように配置された止水ゴムと、少なくとも前記ポンプケーシングを満水させるとき、前記止水ゴムに圧縮空気を供給して前記止水ゴムを膨らませ、前記ポンプ軸と前記軸封部との間の隙間をシールさせる圧縮空気供給機構と、を備える。
【0008】
上記横軸ポンプにおいては、前記軸封部の外側で前記ポンプ軸を囲う筒部を備え、前記止水ゴムは、前記ポンプ軸と前記筒部との空間を埋めるように膨らんでもよい。
【0009】
上記横軸ポンプにおいては、前記圧縮空気供給機構は、少なくとも前記ポンプ軸を回転させるとき、前記止水ゴムに対する圧縮空気の供給を停止して前記止水ゴムを萎ませてもよい。
【0010】
上記横軸ポンプにおいては、前記止水ゴムの内圧を測定する圧力計を有し、前記圧縮空気供給機構は、前記圧力計の計測結果が目標圧力以上になった場合、前記圧縮空気の供給を停止し、前記圧力計の計測結果が目標圧力未満に下がった場合は、前記圧縮空気の供給を再開してもよい。
【0011】
上記横軸ポンプにおいては、前記ポンプケーシングの下流側に接続され、吐出口が吐出水槽に没している吐出管を備えており、前記圧縮空気供給機構は、前記吐出水槽の水位未満の高さに設けられた補助タンクと、前記補助タンクと前記吐出水槽との水頭差で、前記吐出水槽側から前記補助タンク側に液体を流入させる流入管と、前記流入管からの液体の流入によって前記補助タンクの内部で圧縮された圧縮空気を、前記止水ゴムに供給する通気管と、を有してもよい。
【0012】
上記横軸ポンプにおいては、前記圧縮空気供給機構は、前記流入管に設けられた流入弁と、前記通気管に設けられた通気弁と、前記補助タンクの内部を大気開放する大気開放弁と、前記補助タンクの内部に流入した液体を排水する排水弁と、を有してもよい。
【0013】
上記横軸ポンプにおいては、前記圧縮空気供給機構は、前記大気開放弁及び前記排水弁を開き、前記補助タンクの内部を大気開放及び排水した後、前記大気開放弁及び前記排水弁を閉じ、その後、前記流入弁を開き、前記補助タンクの内部の空気を圧縮した後、前記流入弁を閉じ、その後、前記通気弁を開き、前記補助タンクの内部の圧縮空気を前記止水ゴムに供給する圧縮空気供給プロセスを実行してもよい。
【0014】
上記横軸ポンプにおいては、前記圧縮空気供給機構は、前記圧力計の測定結果が目標圧力以上になるまで、前記圧縮空気供給プロセスを繰り返してもよい。
【0015】
上記横軸ポンプにおいては、前記圧縮空気供給機構は、前記補助タンクの内部の圧力を計測する第2の圧力計を有し、前記圧縮空気供給プロセスにおいて前記圧力計と前記第2の圧力計との計測結果の差圧が所定値以下になったら、前記通気弁が開いている状態でさらに前記流入弁を開き、前記補助タンクの内部の空気を前記止水ゴムの内部に押し込んでもよい。
【0016】
上記横軸ポンプにおいては、前記圧縮空気供給機構は、前記補助タンクの内部の水位を計測する水位計を有し、前記水位計の計測結果に基づいて、前記圧縮空気供給プロセスにおける前記流入弁を閉じるタイミングを調整してもよい。
【0017】
上記横軸ポンプにおいては、前記軸封部は、フローティングシールを備えてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様に係るポンプ機場は、先に記載の横軸ポンプを備える。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明の一態様によれば、満水タンクの設置が不要で、ポンプケーシングの内部の落水を抑制できる横軸ポンプ、ポンプ機場を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係るポンプ機場の全体構成図である。
図2】一実施形態に係る止水ゴムの断面構成図である。
図3図2に示す止水ゴムに圧縮空気を供給する配管系をポンプ軸の軸方向から視た図である。
図4】一実施形態に係る圧縮空気供給プロセスにおける弁動作を説明するフローである。
図5】一実施形態の変形例に係る止水ゴムの断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係るポンプ機場1の全体構成図である。
図1に示すポンプ機場1は、吸込水槽2と、吐出水槽3と、吸込水槽2の液体を吐出水槽3に揚水(排水)する横軸ポンプ4と、横軸ポンプ4を駆動させる駆動装置5と、を備えている。横軸ポンプ4は、ポンプ機場1に1台または不図示であるが複数台設置されている。
【0023】
吸込水槽2は、横軸ポンプ4よりも低い位置に配置されている。また、吐出水槽3は、吸込水槽2よりも高い位置に配置されている。駆動装置5は、例えば、ディーゼルエンジンや減速機などを備えている。駆動装置5から延びる回転軸5aは、横軸ポンプ4のポンプ軸30に接続されている。
【0024】
横軸ポンプ4は、羽根車10と、ポンプケーシング20と、ポンプ軸30と、軸封部40と、満水系統50と、止水ゴム60と、圧縮空気供給機構70と、制御装置80と、を備えている。羽根車10は、複数のブレード11と、複数のブレード11が接続されたハブ12と、を備えている。ハブ12は、ポンプ軸30に嵌合している。
【0025】
ポンプケーシング20は、吐出し側ケーシング21と、吐出し側ケーシング21に接続された吸込み側ケーシング22と、を備えている。吐出し側ケーシング21は、水平方向に延び、羽根車10を取り囲むボウル状に形成されている。吐出し側ケーシング21内の羽根車10よりも下流側には、羽根車10から吐出された液体の流れを整流する複数の案内羽根13が設けられている。
【0026】
吸込み側ケーシング22は、エルボ状に形成され、吐出し側ケーシング21の上流側において水平方向に接続されている。吸込み側ケーシング22は、水平方向に延びる水平部分と、鉛直方向に延びる鉛直部分と、を備えている。吸込み側ケーシング22の鉛直部分には、吸込管24が鉛直方向に接続されている。吸込管24の下端の図示しない吸込口は、吸込水槽2内に水没している。
【0027】
また、吐出し側ケーシング21の下流側には、吐出管23が水平方向に接続されている。吐出管23には、吐出弁23Aが設けられている。また、吐出管23の吐出口は、吐出水槽3内に水没している。吐出水槽3には、水位を計測する水位計3aが設けられている。
【0028】
ポンプ軸30は、ポンプケーシング20の内部において、案内羽根13の半径方向内側に配置された軸受14に軸支されている。ポンプ軸30は、吐出し側ケーシング21に沿って水平方向に延び、吸込み側ケーシング22を貫通している。吸込み側ケーシング22のポンプ軸30が貫通する部分には、軸封部40が設けられている。
【0029】
軸封部40は、ポンプ軸30とポンプケーシング20(吸込み側ケーシング22)との隙間をシールするフローティングシール41を備えている。フローティングシール41は、ポンプ軸30側に固定された図示しない合金製の回転リングと、ポンプケーシング20側に固定された図示しないセラミックス製のフローティングリングと、を備えている。
【0030】
フローティングシール41は、回転リングとフローティングリングとの隙間から、ポンプケーシング20の内部の液体を微小に漏出させながら、ポンプ軸30を回転可能に軸封している。なお、軸封部40は、フローティングシール41に代えて、注水が必要な従来のグランドパッキンを備えていても構わない。
【0031】
満水系統50は、横軸ポンプ4の起動時にポンプケーシング20内の空気を吸引し、ポンプケーシング20内を液体で満たす真空ポンプ54を備えている。真空ポンプ54は、ポンプケーシング20の上部に吸気管51を介して接続されている。吸気管51には、ポンプケーシング20内の満水を検知するための満水検知器52と、吸気管51を開閉するための吸気弁53(電動弁又は電磁弁)と、が設けられている。
【0032】
図2は、一実施形態に係る止水ゴム60の断面構成図である。図3は、図2に示す止水ゴム60に圧縮空気を供給する配管系をポンプ軸30の軸方向から視た図である。
図2に示すように、止水ゴム60は、軸封部40の外側に、ポンプ軸30を囲うように配置されている。止水ゴム60は、圧縮空気供給機構70の通気管73から圧縮空気が供給されることで膨らみ、外部の空気が軸封部40からポンプケーシング20内に混入することを抑制する。
【0033】
図2に示す止水ゴム60は、環状(浮き輪状)に形成され、ポンプ軸30と筒部61との隙間に配置されている。筒部61は、軸封部40から外側に向かって水平方向に延び、ポンプ軸30を囲っている。通気管73は、筒部61を貫通し、筒部61の内側で止水ゴム60と接続されている。なお、通気管73には、止水ゴム60の内圧を測定する圧力計73b(図1参照)が設けられている。
【0034】
通気管73は、図3に示すように、筒部61の内側でポンプ軸30を周回するリング管76と接続されている。リング管76には、周方向に間隔をあけて複数の水平管77が接続されている。そして、水平管77に止水ゴム60が支持及び接続されている。なお、水平管77は、1本であっても止水ゴム60に圧縮空気を供給することは可能であるため、他は単なる支持柱であっても構わない。
【0035】
上記構成によれば、通気管73から、筒部61の内側のリング管76、水平管77を介して、止水ゴム60に圧縮空気を供給することができる。止水ゴム60に圧縮空気を供給することで、止水ゴム60が膨らみ、止水ゴム60の内径側がポンプ軸30に接触し、また、止水ゴム60の外径側が筒部61に接触する。これにより、軸封部40の外側を閉塞することができ、軸封部40からの外部の空気の混入を抑制することができる。
【0036】
図1に戻り、圧縮空気供給機構70は、吐出水槽3の水位未満の高さに設けられた補助タンク71と、補助タンク71と吐出水槽3との水頭差で、吐出水槽3側から補助タンク71側に液体を流入させる流入管72と、流入管72からの液体の流入によって補助タンク71の内部で圧縮された圧縮空気を、ポンプケーシング20の内部に供給する通気管73と、を有している。
【0037】
補助タンク71は、ポンプケーシング20や駆動装置5と同じ建屋内のフロアに設置してもよい。なお、補助タンク71は、ポンプ機場1の建屋外に設置しても構わない。また、補助タンク71の容積は、止水ゴム60の最大容積よりも小さくても構わない。この補助タンク71には、内部の圧力を計測する圧力計71a(第2の圧力計)と、内部の液体の水位を計測する水位計71bと、が設置されている。
【0038】
補助タンク71の上部には、大気開放管74が接続されている。大気開放管74には、補助タンク71の内部を大気開放する大気開放弁74aが設けられている。また、補助タンク71の下部には、排水管75が接続されている。排水管75には、補助タンク71の内部に流入した液体を吸込水槽2に排水する排水弁75aが設けられている。
【0039】
流入管72は、吐出管23の吐出弁23Aよりも下流側の底部と、補助タンク71の下部とを接続している。なお、流入管72は、吐出弁23Aより下流側であれば、吐出弁23Aではなく、吐出水槽3の下部などに接続されていても構わない。また、流入管72は、補助タンク71における接続口を水封できるように、排水管75よりも下方で補助タンク71と接続されているとよい。この流入管72には、流入弁72aが設けられている。
【0040】
通気管73は、補助タンク71の上部と、止水ゴム60とを接続している。通気管73は、補助タンク71の内部からの液体の流出を考慮し、補助タンク71の天壁に接続されている。この通気管73には、通気弁73aが設けられている。なお、大気開放管74も補助タンク71の天壁に接続しても構わない。
【0041】
上述した圧縮空気供給機構70の動作は、制御装置80によって制御されている。この制御装置80は、例えば、CPU等の演算部、RAM,ROM,ハードディスクドライブ(HDD),ソリッドステートドライブ(SSD)等の記憶部、各構成機器とデータのやり取りする出入力インターフェース等が、図示しないバスで接続されたものである。出入力インターフェースには、上述した各構成機器以外にも、図示しないディスプレイ等の表示装置、マウス、キーボード等の入力装置が接続されている。
【0042】
記憶部には、演算部が読み出して実行するためのプログラムが格納されており、制御装置80はそのプログラムに従って、以下説明する圧縮空気供給プロセスを実行させる。圧縮空気供給機構70は、少なくともポンプケーシング20を満水させるとき、この圧縮空気供給プロセスを実行し、止水ゴム60に圧縮空気を供給して止水ゴム60を膨らませ、ポンプ軸30と軸封部40との間の隙間を気密にシールさせる。
【0043】
図4は、一実施形態に係る圧縮空気供給プロセスにおける弁動作を説明するフローである。
図4に示すように、平常時では、流入弁72a、通気弁73a、大気開放弁74a、排水弁75aは閉じられている。
【0044】
圧縮空気供給機構70は、横軸ポンプ4が運転を停止しているとき(ポンプ軸30が回転しておらず、吐出弁23Aが閉じているとき)、止水ゴム60の内部の圧力が目標圧力未満であることを条件に、圧縮空気の供給を開始する。なお、「目標圧力」とは、止水ゴム60が膨んで軸封部40の外側を閉塞できる状態になる止水ゴム60の内圧を言う。
【0045】
先ず、ステップ1では、大気開放弁74a及び排水弁75aを開き、補助タンク71の内部を大気開放及び排水する。
次のステップ2では、大気開放弁74a及び排水弁75aを閉じ、補助タンク71の内部に溜まった空気(大気開放で取り込んだ外気)が、補助タンク71の外部に漏れないようにする。
【0046】
大気開放弁74a及び排水弁75aは、補助タンク71の内圧が大気圧と等しくなったときに閉じる。また、大気開放弁74a及び排水弁75aを閉じるタイミングは、補助タンク71の圧力計71aが大気圧と同じ値を計測したとき又は、補助タンク71の内部が大気圧になる時間を予めタイマー設定しておき、その時間が経過したときであってもよい。
【0047】
ステップ3では、流入弁72aを開き、補助タンク71の内部に吐出水槽3の液体を流入させる。補助タンク71は、吐出水槽3の水位未満の高さに設けられているため、補助タンク71と吐出水槽3との水頭差で、吐出水槽3側から補助タンク71側に液体が流入する。吐出水槽3の液体が、補助タンク71の内部に溜まっていくと、補助タンク71の内部の空気が圧縮されていく。
【0048】
ステップ4では、流入弁72aを閉じ、吐出水槽3から補助タンク71への液体の流入を止める。流入弁72aを閉じるタイミングは、補助タンク71の圧力計71aが所定圧力以上を計測したタイミング、または、補助タンク71の水位計71bが所定の水位以上を計測したタイミングであってもよい。なお、「所定圧力」とは、大気圧以上で設定できる設定値であって、上述した目標圧力以上であることが好ましい。なお、「所定水位」とは、補助タンク71の内部を上述した「所定圧力」以上にできる水位を言う。
【0049】
ステップ5では、通気弁73aを開き、流入管72からの液体の流入によって補助タンク71の内部で圧縮された圧縮空気を、止水ゴム60の内部に供給する。これにより、止水ゴム60を膨らませることができる。
以上が、圧縮空気供給プロセスの基本的な流れである。
【0050】
ステップ6では、上述した圧縮空気供給プロセスの結果、止水ゴム60の内圧を測定する圧力計73bと補助タンク71の圧力計71aとの計測結果の差圧が所定値以下であった場合、通気弁73aが開いている状態で、さらに流入弁72aを開き、補助タンク71の内部の空気を止水ゴム60の内部に押し込む。つまり、圧縮空気供給機構70は、止水ゴム60の圧力と補助タンク71の圧力を比較し、止水ゴム60が上述した目標圧力以上になる前に、止水ゴム60と補助タンク71の差圧が所定値以下となったら(差圧が殆どなくなったら)、吐出水槽3から補助タンク71に液体を追加し、補助タンク71の内部の空気を止水ゴム60に押し込む。
【0051】
ステップ7では、流入弁72a及び通気弁73aを閉じ、吐出水槽3から補助タンク71への液体の流入を止めると共に、補助タンク71から止水ゴム60への圧縮空気の供給も止める。なお、流入弁72aを閉じるタイミングは、補助タンク71の水位計71bが、上述したステップ4での「所定水位」より高い第2の所定水位以上を計測したタイミングであってもよい。なお、「第2の所定水位」とは、補助タンク71から通気管73に液体が入り込まないようにするための水位で、補助タンク71の上部の天壁付近に設定しておくとよい。
【0052】
ステップ8では、止水ゴム60の内圧が目標圧力以上に達するまで、上述したステップ1~7を繰り返す。つまり、圧縮空気供給機構70は、止水ゴム60の内圧を測定する圧力計73bの計測結果が目標圧力以上になるまで、ステップ1~5の基本的な圧縮空気供給プロセス及びステップ6~7の圧縮空気の追加の押し込みプロセスを繰り返す。
【0053】
ステップ1~7の繰り返しによって、止水ゴム60の圧力計73bの計測結果が目標圧力以上になったら、ステップ9として、通気弁73aを閉じ、補助タンク71から止水ゴム60の内部への圧縮空気の供給を止める。以上により、止水ゴム60を膨らませた状態を維持し、外部の空気が軸封部40からポンプケーシング20内に混入することを抑制することができる。
なお、その後、微小隙間からの空気漏れ等により、圧力計73bの計測結果が目標圧力未満に下がった場合は、圧縮空気の供給(ステップ1~9)を再開する。これにより、止水ゴム60を膨らませた状態を保持できる。
【0054】
このように、上述した本実施形態の横軸ポンプ4は、羽根車10と、羽根車10が収容されたポンプケーシング20と、ポンプケーシング20を満水させる満水系統50と、ポンプケーシング20を貫通し、羽根車10を水平支持するポンプ軸30と、ポンプ軸30がポンプケーシング20を貫通する部分を軸封する軸封部40と、軸封部40の外側に、ポンプ軸30を囲うように配置された止水ゴム60と、少なくともポンプケーシング20を満水させるとき、止水ゴム60に圧縮空気を供給して止水ゴム60を膨らませ、ポンプ軸30と軸封部40との間の隙間を気密にシールさせる圧縮空気供給機構70と、を備える。この構成によれば、止水ゴム60を膨らませて、外部の空気が軸封部40からポンプケーシング20内に混入することを抑制することができるため、ポンプケーシング20の上部に満水タンクを設置しなくても、ポンプケーシング20の内部の落水を抑制することができる。満水タンクがなくなることで、ポンプ機場1のメンテナンス性が向上し、また、真空ポンプ54の発停頻度を減らすことが可能になる。さらに、横軸ポンプ4が常時満水となることで、災害時にも迅速な横軸ポンプ4の起動が可能となる。
【0055】
また、本実施形態においては、図2に示すように、軸封部40の外側でポンプ軸30を囲う筒部61を備え、止水ゴム60は、ポンプ軸30と筒部61との空間を埋めるように膨らむ。この構成によれば、止水ゴム60が膨らむと、止水ゴム60の内径側がポンプ軸30に接触し、また、止水ゴム60の外径側が筒部61に接触するため、軸封部40における気密性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、圧縮空気供給機構70は、少なくともポンプ軸30を回転させるとき、止水ゴム60に対する圧縮空気の供給を停止して止水ゴム60を萎ませる。この構成によれば、横軸ポンプ4の運転時に止水ゴム60がポンプ軸30の回転を妨げないようにすることができる。なお、止水ゴム60を萎ませる場合、通気管73の通気弁73a及び補助タンク71の大気開放弁74aを開くことで、止水ゴム60から補助タンク71を介して圧縮空気を抜くことができる。
【0057】
また、本実施形態においては、図1に示すように、止水ゴム60の内圧を測定する圧力計73bを有し、圧縮空気供給機構70は、圧力計73bの計測結果が目標圧力以上になった場合、圧縮空気の供給を停止し、圧力計73bの計測結果が目標圧力未満に下がった場合は、圧縮空気の供給を再開する。この構成によれば、配管の継手などから微小な空気漏れ等があった場合であっても、止水ゴム60の内圧を保持できる。
【0058】
また、本実施形態においては、ポンプケーシング20の下流側に接続され、吐出口が吐出水槽3に没している吐出管23を備えており、圧縮空気供給機構70は、吐出水槽3の水位未満の高さに設けられた補助タンク71と、補助タンク71と吐出水槽3との水頭差で、吐出水槽3側から補助タンク71側に液体を流入させる流入管72と、流入管72からの液体の流入によって補助タンク71の内部で圧縮された圧縮空気を、止水ゴム60に供給する通気管73と、を有する。この構成によれば、この構成によれば、圧縮空気の供給のために空気圧縮機などを駆動させる必要はないため、長期に亘って低コストで止水ゴム60の内圧を保持できる。
【0059】
また、本実施形態においては、圧縮空気供給機構70は、流入管72に設けられた流入弁72aと、通気管73に設けられた通気弁73aと、補助タンク71の内部を大気開放する大気開放弁74aと、補助タンク71の内部に流入した液体を排水する排水弁75aと、を有する。この構成によれば、補助タンク71の内部を大気開放及び排水できるため、補助タンク71の内部で繰り返し圧縮空気を生成でき、補助タンク71の容量を小さくすることができる。これにより、補助タンク71の設置が容易になる。
【0060】
また、本実施形態においては、圧縮空気供給機構70は、大気開放弁74a及び排水弁75aを開き、補助タンク71の内部を大気開放及び排水した後、大気開放弁74a及び排水弁75aを閉じ、その後、流入弁72aを開き、補助タンク71の内部の空気を圧縮した後、流入弁72aを閉じ、その後、通気弁73aを開き、補助タンク71の内部の圧縮空気を止水ゴム60に供給する圧縮空気供給プロセスを実行する。この構成によれば、補助タンク71の内部で、効率よく圧縮空気を生成できる。
【0061】
また、本実施形態においては、圧縮空気供給機構70は、圧力計73bの測定結果が目標圧力以上になるまで、圧縮空気供給プロセスを繰り返す。この構成によれば、補助タンク71の容量が、小さい場合であっても、止水ゴム60の内圧を目標圧力以上に上昇させることができる。
【0062】
また、本実施形態においては、圧縮空気供給機構70は、補助タンク71の内部の圧力を計測する圧力計71aを有し、圧縮空気供給プロセスにおいて圧力計73bと第2の圧力計71aとの計測結果の差圧が所定値以下になったら、通気弁73aが開いている状態でさらに流入弁72aを開き、補助タンク71の内部の空気を止水ゴム60の内部に押し込む。この構成によれば、この構成によれば、圧縮空気供給プロセスの繰り返し頻度(大気開放及び排水の頻度)を低減することができる。
【0063】
また、本実施形態においては、圧縮空気供給機構70は、補助タンク71の内部の水位を計測する水位計71bを有し、水位計71bの計測結果に基づいて、圧縮空気供給プロセスにおける流入弁72aを閉じるタイミングを調整する。この構成によれば、補助タンク71から通気管73に液体が入り込まないようにすることができる。
【0064】
また、本実施形態においては、軸封部40は、フローティングシール41を備える。横軸ポンプ4は、止水ゴム60によって軸封部40からの空気の混入を抑制できるため、漏洩量が比較的大きいフローティングシール41が使用可能になる。フローティングシール41は、無注水での使用が可能で、従来のグランドパッキンのような軸封注水用バルブや配管等が不要となり、ポンプ機場1の簡素化に寄与できる。
【0065】
また、本実施形態に係るポンプ機場1は、先に記載の横軸ポンプ4を備える。この構成によれば、満水タンクの設置が不要で、ポンプケーシング20の内部の落水を抑制できるポンプ機場1を提供できる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0067】
例えば、止水ゴム60は、図5に示すような構成であってもよい。なお、以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0068】
図5は、一実施形態の変形例に係る止水ゴム60の断面構成図である。
図5に示すように、止水ゴム60は、ポンプ軸30を囲う筒部61の内壁面に設けられている。止水ゴム60は、筒部61の内壁面に沿って周方向にシート状に延び、その幅方向の両端が筒部61の内壁面に接着などで固定されている。筒部61における止水ゴム60の固定位置の間には、接続管61aが設けられている。接続管61aには、通気管73が接続されている。
【0069】
上記構成によれば、圧縮空気供給機構70は、筒部61の内側に環状に設けられ、圧縮空気の一部が供給されることで膨らみ、軸封部40をシールする止水ゴム60を有しているので、軸封部40からの空気の混入を抑制することができる。これにより、ポンプケーシング20の上部に満水タンクを設置しなくても、ポンプケーシング20の内部の落水を抑制することができる。
【0070】
また、例えば、上記実施形態においては、圧縮空気供給機構70が、補助タンク71等を備える構成について説明したが、止水ゴム60に圧縮空気を供給する空気圧縮機(コンプレッサー)を備えていてもよい。また、この空気圧縮機は、上述した駆動装置5のディーゼルエンジンに始動用の圧縮空気を供給する空気圧縮機を流用しても構わない。
【符号の説明】
【0071】
1…ポンプ機場、2…吸込水槽、3…吐出水槽、3a…水位計、4…横軸ポンプ、5…駆動装置、5a…回転軸、10…羽根車、11…ブレード、12…ハブ、13…案内羽根、14…軸受、20…ポンプケーシング、21…吐出し側ケーシング、22…吸込み側ケーシング、23…吐出管、23A…吐出弁、24…吸込管、30…ポンプ軸、40…軸封部、41…フローティングシール、50…満水系統、51…吸気管、52…満水検知器、53…吸気弁、54…真空ポンプ、60…止水ゴム、61…筒部、61a…接続管、70…圧縮空気供給機構、71…補助タンク、71a…圧力計(第2の圧力計)、71b…水位計、72…流入管、72a…流入弁、73…通気管、73a…通気弁、73b…圧力計、74…大気開放管、74a…大気開放弁、75…排水管、75a…排水弁、76…リング管、77…水平管、80…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5