(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】分析装置、分析方法及び分析プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241220BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2021130055
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2024-02-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 送付日 令和3年5月11日 一般社団法人 電気学会
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 歩惟
(72)【発明者】
【氏名】比護 貴之
【審査官】三吉 翔子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224268(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176063(WO,A1)
【文献】特開2011-095946(JP,A)
【文献】特開2014-117003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の複数の日毎のエネルギー生成装置からの第1出力量についての実測値と予測値との時系列の第1誤差をそれぞれ算出し、算出した前記第1誤差から誤差の代表的な時間変化パターンを表す誤差パターンを複数抽出するパターン抽出部と、
分析対象期間の各日の前記エネルギー生成装置からの第2出力量についての実測値と予測値との時系列の第2誤差を求め、各日の前記第2誤差の時間変化に対応する前記誤差パターンを特定して、特定した前記誤差パターンを前記分析対象期間の各日に割り当てるラベル管理部と、
前記ラベル管理部により前記分析対象期間の各日に割り当てられた前記誤差パターンを用いて前記分析対象期間における前記第2出力量についての実測値と予測値の誤差の分析を行う分析部と
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記パターン抽出部は、前記過去の複数の日毎の時系列で表される前記第1誤差にクラスタリング手法を適用することで各クラスタとして現れる前記誤差パターンを取得することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記パターン抽出部は、指定された数のクラスタに前記第1誤差を分類することを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記パターン抽出部は、前記分類をcos類似度に基づく計量を距離計量として用いたk-meansクラスタリングで行うことを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記分析部は、前記分析対象期間に含まれる所定期間毎における各日に割り当てられた前記誤差パターンの割合を算出することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項6】
前記分析部は、前記分析対象期間において所定の気象要素の値が所定範囲内となる各日に割り当てられた前記誤差パターンの割合を算出することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項7】
前記分析部は、前記誤差パターンと気象要素との関係を分析することを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項8】
前記分析対象期間に含まれる所定期間毎における各日に割り当てられた前記誤差パターンの割合を表すグラフを通知する通知部をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の分析装置。
【請求項9】
前記エネルギー生成装置は、太陽光発電装置であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項10】
過去の複数の日毎のエネルギー生成装置からの第1出力量についての実測値と予測値との時系列の第1誤差をそれぞれ算出し、算出した前記第1誤差から誤差の代表的な時間変化パターンを表す誤差パターンを複数抽出し、
分析対象期間の各日の前記エネルギー生成装置からの第2出力量についての実測値と予測値との時系列の第2誤差を求め、各日の前記第2誤差の時間変化に対応する前記誤差パターンを特定して、特定した前記誤差パターンを前記分析対象期間の各日に割り当て、
前記分析対象期間の各日に割り当てた前記誤差パターンを用いて前記分析対象期間における前記第2出力量についての実測値と予測値の誤差の分析を行う
ことを特徴とする分析方法。
【請求項11】
過去の複数の日毎のエネルギー生成装置からの第1出力量についての実測値と予測値との時系列の第1誤差をそれぞれ算出し、算出した前記第1誤差から誤差の代表的な時間変化パターンを表す誤差パターンを複数抽出し、
分析対象期間の各日の前記エネルギー生成装置からの第2出力量についての実測値と予測値との時系列の第2誤差を求め、各日の前記第2誤差の時間変化に対応する前記誤差パターンを特定して、特定した前記誤差パターンを前記分析対象期間の各日に割り当て、
前前記分析対象期間の各日に割り当てた前記誤差パターンを用いて前記分析対象期間における前記第2出力量についての実測値と予測値の誤差の分析を行う
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、分析方法及び分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への意識が世界的に強まる中、太陽光発電(PV:Photovoltaic)などの自然エネルギー由来の発電方式の導入量は近年急激に増加しており、今後も拡大が続く見通しである。一方で、PV出力は季節や天候の影響を大きく受けるため、事前にPV出力を高精度に予測し、調整用予備力を確保してPV出力の変動や予測誤差に備えて、需給バランスを維持することが重要である。これまでにもPV出力予測に関する研究は世界的に進められている。
【0003】
従来のPV出力予測では、1時間単位での予測が主流である。また、主な予測方法としては、気象現況値から日射量を含む気象現象を予測する数値気象予報やその予報結果を基に機械学習を行って、日射量やPV出力を予測することが行われている。
【0004】
しかし、従来行われてきた配電系統における電力の需要予測などと比較し、PV出力予測の誤差は大きい。これは、PV出力を決める主要因である日射量の予測が、気温などの他の気象要素に比べて難しいためである。したがって、適正な予備力確保には予測精度の向上だけでなく、PV出力予測誤差を分析してPV出力予測誤差の特徴を把握することも重要である。
【0005】
PV出力予測誤差に関する研究には、気象庁の数値気象予報モデルによる日射量予報を対象とした技術や、複数の広域エリアの予測誤差を空間的に分析した技術が挙げられる。前者は日単位で誤差傾向を評価し、例えば全球モデルでは通年で過大予測傾向にあることが指摘されている。このことから、平均的な誤差よりも多めに予備力を確保することの重要性などが示唆される。後者は5つのエリアで過大/過小予測の季節傾向の比較が行われており、例えば夏は過小予測傾向が強まる一方、一部地域のみ7月の過小予測傾向がそれほど強くないことなど、空間軸方向での誤差分析結果が示されている。
【0006】
また、日射強度の予測技術として、以下のような技術が提案されている。例えば、機械学習を用いて多数地点の日射強度を二次元平面に写像し、時系列データが入力される各ノードに対応する二次元平面上のノードを特定して、特定したノード間の類似度に基づいて予測対象地点の日射強度を予測する技術が存在する。また、同様に多数地点の日射強度を写像した二次元平面上のノードから時系列データが入力される各ノードに対応するノードを特定して、特定したノード間の類似度を基に変化パターンをグループに分類し各グループの代表を抽出する技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-146126号公報
【文献】特開2017-146674号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】大竹秀明、下瀬健一、Joao Gari da Silva Fonseca Junior、高島工、大関崇、山田芳則,“気象庁週間予報モデルの日射量予測の誤差評価”,電学論B,2014,Vol.134,No.6,pp.501-509,
【文献】下瀬健一、大竹秀明、Joao Gari da Silva Fonseca Junior、高島工、大関崇、山田芳則,“気象庁メソモデルの日射量予測誤差要因の解析”,電学論B,2014,Vol.134,No.6,pp.518-526
【文献】J.G.S. Fonseca, Jr.、T. Oozeki、H. Ohtake、K. Shimose、T. Takashima、K. Ogimoto,“Characterizing the Regional Photovoltaic Power Forecast Error in Japan:a Study of 5 Regions”,IEEJ Trans. PE,2014,Vol.134,No.6,pp.537-544
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のPV出力予測誤差に関する研究は、PV出力予測誤差に関する俯瞰的な分析に留まっているといえる。例えば過大予測傾向の日の中には、1日中やや過大予測という日もあれば、午後の数時間だけ過大評価方向に大幅な予測外しをする日もある。この両日では、1日全体の誤差合計は同程度であっても、誤差に対する適正な備え方は異なる可能性がある。このように、予備力確保の適正化のためには、1日の中の具体的な予測誤差の時間変化パターン、すなわち「誤差パターン」まで考慮した詳細な誤差分析が必要である。しかし、従来の分析では日単位や月単位で誤差を評価するに留まっているため、誤差パターンの分析までは実施されておらず、また従来手法で誤差パターン分析を効率的に行うことも難しい。
【0010】
また、日射強度を二次元平面に写像して生成されるノードのうち時系列データが入力される各ノードに対応するノードの類似度に基づいて日射強度を予測する技術は、予測の高精度化のための技術である。また、同様の方法で算出した類似度を用いて日射強度の変化パターンの分類を行う技術は、予測結果を利用するシミュレーションの計算効率向上を目的とした情報集約技術である。したがって、いずれもパターンに着目した技術ではあるものの、予測誤差を詳細に分析してその特徴を明らかにするという目的では利用できない。
【0011】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、出力予測に関する誤差パターン分析を効率的に行う分析装置、分析方法及び分析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の開示する分析装置、分析方法及び分析プログラムの一つの態様において、パターン抽出部は、過去の複数の日毎のエネルギー生成装置からの第1出力量についての実測値と予測値との時系列の第1誤差をそれぞれ算出し、算出した前記第1誤差から誤差の代表的な時間変化パターンを表す誤差パターンを複数抽出する。ラベル管理部は、分析対象期間の各日の前記エネルギー生成装置からの第2出力量についての実測値と予測値との時系列の第2誤差を求め、各日の前記第2誤差の時間変化に対応する前記誤差パターンを特定して、特定した前記誤差パターンを前記分析対象期間の各日に割り当てる。分析部は、前記ラベル管理部により前記分析対象期間の各日に割り当てられた前記誤差パターンを用いて前記分析対象期間における前記第2出力量についての実測値と予測値の誤差の分析を行う。
【発明の効果】
【0013】
1つの側面では、本発明は、出力量予測に関する誤差分析を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例に係る予測誤差分析装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、予測誤差分析の概要を示す図である。
【
図3】
図3は、2つのクラスタへのクラスタリング結果の一例を表す図である。
【
図4】
図4は、2つのクラスタに分類した場合のそれぞれのPV出力の実測値と予測値との関係を表す図である。
【
図5】
図5は、2つのクラスタに分類した場合の各月のクラスタの割合を表す図である。
【
図6】
図6は、5個のクラスタへのクラスタリング結果の一例を表す図である。
【
図7】
図7は、5個のクラスタに分類した場合のそれぞれのPV出力の実測値と予測値との関係を表す図である。
【
図8】
図8は、5個のクラスタに分類した場合の各月のクラスタの割合を表す図である。
【
図9】
図9は、実施例に係る予測誤差分析装置による予測誤差分析処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、予測誤差分析装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願の開示する分析装置、分析方法及び分析プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する分析装置、分析方法及び分析プログラムが限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
図1は、実施例に係る予測誤差分析装置のブロック図である。本実施例に係る予測誤差分析装置1は、出力量データベース2、予測値データベース3及び管理端末装置4に接続される。
【0017】
出力量データベース2は、予測対象のエネルギー生成装置であるPVから出力されたPV出力の実測値の過去の情報を保持する。PV出力の実測値は、時系列データである。すなわち、PV出力の実測値は、1日における時刻毎のPV出力の実測値である。
【0018】
予測値データベース3は、予測対象のPVの出力量のPV出力予測装置(不図示)による予測結果を保持する。予測結果は、出力量データベース2に格納された各PV出力に対応する時系列データである。
【0019】
管理端末装置4は、予測誤差分析装置1の管理者が利用する端末である。管理者は、予測誤差の分析を行う技士であってもよい。
【0020】
次に、予測誤差分析装置1の詳細について説明する。
図1に示すように、予測誤差分析装置1は、情報取得部11、ベクトル化部12、パターン抽出部13、ラベル管理部14、データ格納部15及び分析部16を有する。
【0021】
情報取得部11は、過去のPV出力の実測値を出力量データベース2から取得する。情報取得部11が取得する過去のPV出力の実測値には、対応する予測値との誤差である予測誤差として1年間を通して発生するPV出力の予測誤差の全てのパターンが含まれることが好ましい。例えば、情報取得部11は、過去1年間の各日のPV出力の実測値を取得してもよいし、複数年の各日のPV出力の実測値を取得してもよい。また、各日におけるパターンがある程度推定可能であれば、情報取得部11は、1年間のうちの異なるパターンを含むと推定される日を幾日か抽出して、抽出した各日のPV出力の実測値を取得してもよい。
【0022】
また、情報取得部11は、取得したPV出力の実測値のそれぞれに対応する予測結果であるPV出力の予測値を予測値データベース3から取得する。次に、情報取得部11は、各PV出力の実測値と各PV出力の予測値とを対応付ける。そして、情報取得部11は、各日の対応付けたPV出力の実測値と予測値とを含む情報をベクトル化部12へ出力する。この情報取得部11が取得するPV出力の実測値及び予測値が「第1出力量についての実測値と予測値と」の一例にあたる。
【0023】
ベクトル化部12は、各日の対応付けたPV出力の実測値とPV出力の予測値とを含む情報の入力を情報取得部11から受ける。そして、ベクトル化部12は、各日のPV出力の実測値とPV出力の予測値との誤差を算出する。ここで、ベクトル化部12は、各日の誤差として、次の数式(1)を用いて、各日の時刻毎の誤差を表す時系列データを算出する。
【0024】
【0025】
ここで、数式(1)の左辺のerrh
dは、正規化された各日の各時刻の誤差の値を表す。また、数式(1)における右辺の分子の第1項は、各日を日にち順に並べた場合のd日目の時刻hにおけるPV出力の予測結果を表す。また、第2項は、同じd日目の時刻hにおける実際のPV出力である。また、右辺の分母のYd
h,maxは、d日目の前後1週間の時刻hにおけるPV出力の実測値の最大値であり、次の数式(2)で表される。
【0026】
【0027】
すなわち、本実施例に係るベクトル化部12は、実測値と予測値との実際の誤差を前後1週間のPV出力の実測値の最大値により正規化した値を、実測値と予測値との誤差とする。この時系列の誤差が「第1誤差」の一例にあたる。
【0028】
図2は、予測誤差分析の概要を示す図である。ベクトル化部12は、数式(1)を用いて、例えば
図2におけるDay#1~Day#3を含む各日の予測誤差101を算出する。
図2では、各日でPV出力の測定が5時~19時の間で行われた場合を例に示した。
【0029】
次に、ベクトル化部12は、時系列データである各日の誤差を時刻毎に並べてベクトル化して、各日の時刻毎の予測誤差を表すベクトルを生成する。以下では、時刻毎の予測誤差を表すベクトルを、「誤差のベクトル」と呼ぶ。例えば、ベクトル化部12は、
図2における各日の予測誤差101をベクトル化して、各日の誤差のベクトル102を生成する。そして、ベクトル化部12は、生成した各日の誤差のベクトルをパターン抽出部13へ出力する。
【0030】
パターン抽出部13は、各日の誤差のベクトルの入力をベクトル化部12から受ける。次に、パターン抽出部13は、取得した各ベクトルのデータのうち、数式(1)の誤差が年間平均で安定した値をとる7時~16時の中で、さらに前後に1時間余裕を持たせた8時~15時の間のデータを抽出する。
【0031】
また、パターン抽出部13は、クラスタリングを行う場合にいくつのクラスタを生成するかを指定する情報の入力を管理端末装置4から受ける。ここで、生成するクラスタの数は、2以上の数であればどの様な数でも指定可能である。パターン抽出部13は、各日の8時~15時の間の時刻毎の予測誤差を表すベクトルの全てを用いて、指定された数のクラスタに分類するクラスタリングを実施する。パターン抽出部13は、例えば、k-meansクラスタリングをクラスタリング手法として用いる。さらに、k-meansクラスタリングにおいて、パターン抽出部13は、より変動傾向を重視できるcos類似度に基づく計量を距離計量として用いる。その後、パターン抽出部13は、生成した各クラスタの情報を誤差パターンの情報としてラベル管理部14及びデータ格納部15へ出力する。誤差パターンの情報としては、例えば、クラスタに属する誤差のベクトルの平均ベクトルを用いることができる。
【0032】
例えば、
図2は、2種類のクラスタに分類する場合を表す。パターン抽出部13は、
図2におけるベクトル102をクラスタリングすることで、各日の誤差のベクトルをクラスタC1及びC2に分類することができる。この場合、クラスタC1は、1日を通じて予測結果が実際のPV出力に比べて過大である通日過大のパターンである。また、クラスタC2は、午前中はPV出力の予測値がPV出力の実測値に比べて過小であり、午後はPV出力の予測値がPV出力の実測値に比べて過大である午前過小午後過大のパターンである。
【0033】
ラベル管理部14は、生成された各クラスタの情報の入力をパターン抽出部13から受ける。次に、ラベル管理部14は、分析対象期間である1年間の各日のPV出力の実測値を出力量データベース2から取得する。また、ラベル管理部14は、分析対象期間である1年間の各日のPV出力の予測値を予測値データベース3から取得する。このラベル管理部14が取得した1年間の各日のPV出力の実測値及び予測値が、「第2出力量についての実測値と予測値と」の一例にあたる。ここで、本実施例では、ラベル管理部14は、出力量データベース2及び予測値データベース3から情報を所得したが、例えば情報取得部11が分析対象期間のPV出力の実測値及び予測値を取得している場合には、その情報を取得してもよい。
【0034】
次に、ラベル管理部14は、分析対象期間である1年間の各日の時刻毎のPV出力の実測値とPV出力の予測値との時系列の誤差を求める。この誤差が、「第2誤差」の一例にあたる。第2誤差は、第1誤差と同様の手順で算出する事が好ましい。そして、ラベル管理部14は、各日の時刻毎のPV出力の実測値とPV出力の予測値との誤差の時間変化のパターンに対して、パターン抽出部13により抽出された複数の誤差パターンのうち最も近い誤差パターンを特定する。そして、ラベル管理部14は、分析対象期間の1年間の各日に、特定した誤差パターンに対応するクラスタを表すラベルを割り当てる。その後、ラベル管理部14は、1年間の各日にラベルを割り当てた情報をデータ格納部15に格納する。ここで、本実施例では、ラベル管理部14は、分析対象期間として1年間の情報を用いたが、これに限らず複数年の情報を用いてもよい。
【0035】
例えば、
図2のように2つのクラスタに分類された場合、ラベル管理部14は、テーブル103に示すように、Day#1及び#3にはクラスタC1のラベルを割り当て、Day#2にはクラスタC2のラベルを割り当てる。ラベル管理部14は、他の日にもクラスタC1又はC2のいずれかのラベルを割り当てる。そして、ラベル管理部14は、データ格納部15に生成したテーブル103を格納する。さらに、ラベル管理部14は、誤差パターンなどの各クラスタの情報をデータ格納部15に格納する。
【0036】
データ格納部15は、記憶装置である。データ格納部15は、生成された各クラスタの情報の入力をパターン抽出部13から受けて記憶する。また、データ格納部15は、ラベル管理部14により生成された分析対象の1年間の各日にラベルを割り当てた情報を格納する。
【0037】
分析部16は、分析対象期間の1年間の各日にラベルを割り当てた情報をデータ格納部15から取得する。さらに、分析部16は、誤差パターンの情報をデータ格納部15から取得する。そして、分析部16は、分析対象期間の1年間の各日にラベルを割り当てた情報及び各誤差パターンの情報を用いて分析を行う。例えば、分析部16は、各月における誤差パターンの含有率などを求める。そして、分析部16は、各月における誤差パターンの含有率などを用いて、季節毎の誤差パターンの変化や誤差パターンに応じた気象条件等の分析を行う。その後、分析部16は、分析結果を管理端末装置4に送信するなどして、管理者に分析結果を通知する。
【0038】
次に、予測誤差分析装置1による予測誤差分析の具体例について説明する。ここでは、分析期間を1年間とした。また、クラスタリング手法として、cos類似度に基づく距離計量を用いたk-means法を採用した。また、クラスタ数は、2,3,4,5と変更させた。さらに、PV出力予測モデルとして、以下の条件を用いた。予測手法は、サポートベクター回帰(SVR:Support Vector Regression)を用いて、時刻毎に予測モデルを作成した。また、説明変数には、気象庁メソ数値予報モデル(MSM:Meso Scale Model)を用い、初期時刻を6時として、埼玉県熊谷市の単地点における日射量を用いた。予測対象時刻は、翌日の5時~19時とした。また、学習期間は前年度の1年間とした。
【0039】
まず、2つのクラスタに分類する場合を例に説明する。
図3は、2つのクラスタへのクラスタリング結果の一例を表す図である。また、
図4は、2つのクラスタに分類した場合のそれぞれのPV出力の実測値と予測値との関係を表す図である。また、
図5は、2つのクラスタに分類した場合の各月のクラスタの割合を表す図である。
【0040】
パターン抽出部13によるクラスタリングにより、分析対象の1年間の各日の誤差のベクトルは、
図3に示すようにクラスタC1及びC2に分類される。
図3の各グラフは横軸で時間を表し、縦軸で誤差を表す。
【0041】
この2つのクラスタのそれぞれにおいて、PV出力の実測値の平均値と、予測値の平均値とを算出して時間経過に沿ってそれぞれの関係を表すと、
図4の2つのグラフとなる。
図4のグラフは横軸で時間を表し、縦軸でPV出力を表す。また、実線が予測値を表し、破線が実測値を表す。
【0042】
図4のクラスタC1のグラフで示されるように、クラスタC1では、通日に亘って予測値が実測値を上回っている。すなわち、クラスタC1は、通日過大の誤差パターンのグループであるといえる。また、
図4のクラスタC2のグラフで示されるように、クラスタC2では、通日に亘って予測値が実測値を下回っている。すなわち、クラスタC2は、通日過小の誤差パターンのグループであるといえる。すなわちこの場合は、パターン抽出部13は、各日の誤差のベクトルを、通日過大の誤差パターンと、通日過小の誤差パターンとの2つのクラスタに分類した。
【0043】
ラベル管理部14は、分析対象の各日に対してクラスタC1又はクラスタC2のどちらに含まれるかにより、各日にラベル付けを行う。そして、分析部16は、各月に各ラベルの含有率を計算する。この場合の、各月の各ラベルの含有率は
図5に示される。
【0044】
例えば、分析部16は、
図5に基づいて、通年では過小予測が多めであり、雨季及び台風期の6月及び10月に過大予測割合が高い傾向があると分析することができる。このように、既に知られている知見とも矛盾しない分析が可能であることが確認できる。
【0045】
次に、クラスタの数を3~5に順番に変更していった場合について説明する。
図6は、5個のクラスタへのクラスタリング結果の一例を表す図である。また、
図7は、5個のクラスタに分類した場合のそれぞれのPV出力の実測値と予測値との関係を表す図である。また、
図8は、5個のクラスタに分類した場合の各月のクラスタの割合を表す図である。
【0046】
クラスタ数が3の場合、パターン抽出部13によるクラスタリングにより、分析対象期間の1年間の各日の誤差のベクトルは、
図6におけるクラスタC1、C3及びC5に分類される。
図6のグラフは横軸で時間を表し、縦軸で誤差を表す。また、クラスタ数が3の場合、パターン抽出部13によるクラスタリングにより、分析対象の1年間の各日の誤差を表すベクトルは、分類されるクラスタが、クラスタ数が3の場合のクラスタC1、C3及びC5に加えて、クラスタC2が増える。また、クラスタ数が5の場合、パターン抽出部13によるクラスタリングにより、分析対象の1年間の各日の誤差を表すベクトルは、クラスタC1~C5に分類される。
【0047】
この5つのクラスタC1~C5のそれぞれにおいて、PV出力の実測値の平均値と、PV出力の予測値の平均値とを算出して時間経過に沿ってそれぞれの関係を表すと、
図7の5つのグラフとなる。
図7のグラフは横軸で時間を表し、縦軸でPV出力を表す。また、実線が予測値を表し、破線が実測値を表す。
【0048】
クラスタC1及びC5は、2つのクラスタに分類したときのクラスタに対応して、通日過大の誤差パターン及び通日過小の誤差パターンである。さらに、クラスタ数が3の場合に増えたクラスタC3では、午前中に予測値が実測値を下回っている。すなわち、クラスタC3は、午前過小の誤差パターンのグループであるといえる。また、クラスタ数が3の場合に増えたクラスタC2では、午後に予測値が実測値を上回っている。すなわち、クラスタC2は、午後過大の誤差パターンのグループであるといえる。また、クラスタ数が5の場合に増えたクラスタC4では、午後に予測値が実測値を下回っている。すなわち、クラスタC5は、午後過小の誤差パターンのグループであるといえる。すなわちこの場合は、パターン抽出部13は、誤差を表すベクトルを、通日過大の誤差パターンと、午後過大の誤差パターンと、午前過小の誤差パターンと、午後過小の誤差パターンと、通日過小の誤差パターンとの5つのクラスタに分類した。
【0049】
ラベル管理部14は、分析対象期間の各日に対してクラスタC1~C5のいずれに含まれるかにより、各日にラベル付けを行う。そして、分析部16は、各月に各ラベルの含有率を計算する。この場合の、各月の各ラベルの含有率は
図8に示される。
【0050】
例えば、分析部16は、
図8に基づいて、10~1月に午前過小予測及び午後過大予測の誤差パターンが頻出すると分析することができる。他にも、分析部16は、
図8に基づいて、7~9月の気温が高い時期に午後過大の誤差パターンが多くなるといった分析や、10~1月の日照時間が短い期間に午後過小が増えるといった分析ができる。このように、クラスタの数を増やすことで、分類される誤差パターンの種類が増え、実測値と予測値との誤差についての知見が詳細化され、季節性も顕著に現れることが確認できる。
【0051】
ここで、本実施例では、分析部16は、所定期間における各日の誤差パターンの割合を基に分析を行ったが、これに限らず、同様の方法により、天候、気温及び気圧といった気象要素と、実測値と予測値との誤差との関係も効率的に明確化できる。
【0052】
この場合、例えば、分析部16は、
図5や
図8で表される各月の誤差パターンの含有率を示すグラフを分析結果として管理端末装置4に送信して、管理者に通知してもよい。また、分析部16は、
図5や
図8に示されるグラフにさらに分析結果を付加して管理端末装置4に送信してもよい。
【0053】
図9は、実施例に係る予測誤差分析装置による予測誤差分析処理のフローチャートである。次に、
図9を参照して、本実施例に係る予測誤差分析装置1による予測誤差分析処理の流を説明する。
【0054】
情報取得部11は、PV出力の過去の実測値を出力量データベース2から取得する。また、情報取得部11は、取得したPV出力のそれぞれに対応する予測値を予測値データベース3から取得する(ステップS1)。次に、情報取得部11は、各PV出力の実測値と各PV出力の予測値とを対応付ける。そして、情報取得部11は、各日の対応付けたPV出力の実測値及び予測値を含む情報をベクトル化部12へ出力する。
【0055】
ベクトル化部12は、各日の対応付けられたPV出力の実測値及び予測値を含む情報の入力を情報取得部11から受ける。そして、ベクトル化部12は、PV出力の実測値とPV出力の予測値との誤差を算出する。次に、ベクトル化部12は、算出した誤差をベクトル化して各日の誤差のベクトルを生成する(ステップS2)。その後、ベクトル化部12は、生成した各日の誤差のベクトルをパターン抽出部13へ出力する。
【0056】
パターン抽出部13は、各日の誤差のベクトルの入力をベクトル化部12から受ける。次に、パターン抽出部13は、各日の誤差のベクトルの全てを用いてクラスタリングを行い、指定された数のクラスタに分類する。そして、パターン抽出部13は、各クラスタに属する各日の誤差ベクトルの平均を求めて、誤差パターンの情報を抽出する(ステップS3)。その後、パターン抽出部13は、誤差パターンの情報をラベル管理部14及びデータ格納部15へ出力する。
【0057】
ラベル管理部14は、誤差パターンの情報の入力をパターン抽出部13から受ける。次に、ラベル管理部14は、分析対象の1年間のPV出力の実測地の情報を出力量データベース2から取得する。さらに、パターン抽出部13は、取得したPV出力のそれぞれに対応する予測結果を予測値データベース3から取得する。次に、ラベル管理部14は、分析対象の1年間のPV出力の実測地と予測値との誤差を日毎に算出する。そして、ラベル管理部14は、分析対象の1年間の各日のPV出力の実測地と予測値との誤差の変化にパターンに最も近い誤差パターンを特定して、各日に特定した誤差パターンを表すラベル付けを行う(ステップS4)。その後、ラベル管理部14は、分析対象の1年間の各日にラベルを割り当てた情報をデータ格納部15に格納する。
【0058】
分析部16は、分析対象の1年間の各日にラベルを割り当てた情報をデータ格納部15から取得する。そして、分析部16は、各月における誤差パターンの含有率などを求める。その後、分析部16は、各月における誤差パターンの含有率などを用いて分析を行う(ステップS5)。
【0059】
その後、分析部16は、分析結果を管理端末装置4に送信するなどして、管理者に分析結果を通知する。(ステップS6)。
【0060】
以上に説明したように、本実施例に係る予測誤差分析装置は、時系列データである予測誤差をベクトル化して、クラスタリングを行って誤差パターンを抽出する。その後、予測誤差分析装置は、分析対象の各日の時刻毎の誤差の変化のパターンが抽出した誤差パターンのいずれに対応するかを判定し、その判定結果を用いて予測誤差の分析を行う。
【0061】
分類するクラスタの数を増やすことで、1年間の各日の予測誤差の分類も詳細化することができ、季節による予測誤差の変動などを確認し易くなる。また、分類するクラスタ数を少なくすることで、比較的大きな枠組みで予測誤差の全体像を捉えることが容易となる。これにより、出力予測に関する誤差パターン分析を詳細且つ効率的に行うことが可能となる。
【0062】
また、以上の説明では、エネルギー生成装置として太陽光発電を用いた場合のPV出力の予測誤差を例に説明したが、自然からの影響を受けて出力量の変化が発生するエネルギー生成装置であれば他の装置でもよい。例えば、風力などの他の自然エネルギーの出力量についても同様の構成で予測誤差の分析を行うことが可能である。
【0063】
(ハードウェア構成)
図10は、予測誤差分析装置のハードウェア構成図である。
図10に示すように、予測誤差分析装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)91、メモリ92、ハードディスク93及びネットワークインタフェース94を有する。CPU91は、バスを介してメモリ92、ハードディスク93及びネットワークインタフェース94に接続される。
【0064】
ネットワークインタフェース94は、予測誤差分析装置1と外部装置との間の通信のインタフェースである。例えば、ネットワークインタフェース94は、CPU91と出力量データベース2、予測値データベース3及び管理端末装置4との通信を中継する。
【0065】
ハードディスク93は、補助記憶装置である。ハードディスク93は、
図1に例示したデータ格納部15の機能を実現する。また、ハードディスク93は、
図1に例示した、情報取得部11、ベクトル化部12、パターン抽出部13、ラベル管理部14及び分析部16の機能を実現するプログラムを含む各種プログラムを格納する。
【0066】
メモリ92は、主記憶装置である。メモリ92は、例えば、DRAM(Direct Random Access Memory)などである。
【0067】
CPU91は、ハードディスク93から各種プログラムを読み出してメモリ92に展開して実行する。これにより、CPU91は、
図1に例示した、情報取得部11、ベクトル化部12、パターン抽出部13、ラベル管理部14及び分析部16の機能を実現する。
【符号の説明】
【0068】
1 予測誤差分析装置
2 出力量データベース
3 予測値データベース
4 管理端末装置
11 情報取得部
12 ベクトル化部
13 パターン抽出部
14 ラベル管理部
15 データ格納部
16 分析部