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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】異方性希土類焼結磁石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/055 20060101AFI20241220BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241220BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20241220BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20241220BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20241220BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20241220BHJP
   H01F 1/059 20060101ALI20241220BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H01F1/055 170
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F3/02 R
B22F3/24 B
B22F3/24 K
C22C38/00 303D
H01F1/059 130
H01F41/02 G ZNM
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022510029
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011008
(87)【国際公開番号】W WO2021193334
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2020055766
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】野村 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】大塚 一輝
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 真之
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】須原 宏光
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-231920(JP,A)
【文献】特開平4-322406(JP,A)
【文献】特開2019-54217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成が式(R1-aZr(Fe1-bCo100-x-y(M 1-c (RはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuより選ばれる1種以上の元素とSmとを組み合わせたものであり、MはV、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Al、Siからなる群より選ばれる1種以上の元素、MはTi、Nb、Mo、Hf、Ta、Wからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、x、y、a、b、cは各々、7≦x≦15原子%、4≦y≦20原子%、0≦a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.9)で表される異方性希土類焼結磁石であって、ThMn12型結晶の化合物からなる主相を80体積%以上含み、Rリッチ相及びR(Fe,Co)相を粒界部に含み、前記主相の平均結晶粒径が1μm以上であり、隣接する主相粒の間に二粒子間粒界相が形成されており、前記主相粒の内部におけるSm/R比が、前記Rリッチ相及び前記R(Fe,Co)相のSm/R比より低いことを特徴とする異方性希土類焼結磁石。
【請求項2】
前記二粒子間粒界相が、Rを20原子%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の異方性希土類焼結磁石。
【請求項3】
前記二粒子間粒界相が、厚み0.5nm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の異方性希土類焼結磁石。
【請求項4】
前記Rリッチ相及び前記R(Fe,Co)相を、合計で1体積%以上含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の異方性希土類焼結磁石。
【請求項5】
前記主相粒の内部におけるSm/R比が、主相粒の外殻部におけるSm/R比より低いことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の異方性希土類焼結磁石。
【請求項6】
前記主相粒の内部にSmを含まないことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の異方性希土類焼結磁石。
【請求項7】
室温で5kOe以上の保磁力を示し、保磁力の温度係数βが-0.5%/K以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の異方性希土類焼結磁石。
【請求項8】
ThMn12型結晶の化合物相を含む合金を粉砕し、磁場印加中で圧粉成形して成形体とした後、800℃以上1400℃以下の温度で焼結することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項9】
ThMn12型結晶の化合物相を含む合金と、それよりR組成比及びSm/R比が高い合金を粉砕、混合し、磁場印加中で圧粉成形して成形体とすることを特徴とする請求項8に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項10】
ThMn12型結晶の化合物相を主相とする焼結体にSmを含む材料を接触させて、600℃以上焼結温度以下の温度で熱処理を施してSmを焼結体内部に拡散させることを特徴とする請求項8又は9に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項11】
焼結体に接触させるSmを含む材料が、Sm金属、Sm含有合金、Smを含む化合物、及びSmを含む蒸気から選ばれる1種以上であり、またその形態が、粉末、薄膜、薄帯、箔、及び気体から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項12】
前記焼結体に300~900℃の温度で熱処理を施すことを特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ThMn12型結晶の化合物を主相とする異方性希土類焼結磁石及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類磁石、特にNd-Fe-B焼結磁石は、自動車の電動化や 産業用モータの高性能化・省電力化などを背景に、今後ますます需要が高まり生産量がさらに増加すると予想されている。一方で、将来的に希土類原料の需給バランスが崩れるリスクが懸念されるため、近年、希土類磁石における省レアアース化の研究が注目されるようになってきた。中でもThMn12型結晶構造の化合物は、RFe14B化合物よりレアアース含有率が少なく、磁気特性も良好であることから、次世代の磁石材料として盛んに研究が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1ではThMn12型正方晶構造を有する硬磁性相と非磁性相とを含む合金からなる永久磁石が報告されている。ここでは、主に希土類元素-Feからなる金属間化合物にCu、Si、Mg、Sn、Pb及びInから選ばれる少なくとも1種の元素を添加することで、主相に比べて融点が低くかつ非磁性である相を析出させることが示されている。
【0004】
また、特許文献2では、主相及び粒界相を有し、主相がThMn12型結晶構造を有するR-T化合物(RはLaを必須とする1種以上の希土類元素、TはFe、又はFe及びCo、又はその一部をM(Ti、V、Cr、Mo、W、Zr、Hf、Nb、Ta、Al、Si、Cu、Zn、Ga及びGeから選択される1種以上)で置換した元素)であり、粒界相は立方晶系の結晶構造で、La組成比が20at%以上のLaリッチ相σを断面積比で20%以上有する希土類永久磁石が報告されている。粒界部に非磁性の立方晶系Laリッチ相を含むことで、主相間の磁気的な分離効果と、粒界相と主相との界面歪み低減効果が得られるとされている。
【0005】
特許文献3では、ThMn12型の結晶構造を有する主相と、SmFe17系相、SmCo系相、Sm系相、及びSmCu系相のいずれかを含む副相を有し、副相の体積分率が2.3~9.5%である希土類磁石について報告されている。これら副相のうち、SmFe17系相及びSmCo系相は、主相よりも高い磁気異方性を示す磁性相であり、主相の結晶粒それぞれを隔離するとともに、主相内の磁壁の移動を防止することで、磁石の磁化及び保磁力が向上している。一方、Sm系相及びSmCu系相は非磁性相であり、主相の結晶粒それぞれを隔離することによって、主相の磁化反転が周囲に伝搬するのを防止して、磁石の磁化及び保磁力が向上しているとされている。また、SmCu系相は非平衡相であることが記載されている。
【0006】
特許文献4では、主相及び1種以上の副相を有し、合金全体の組成がR(Fe,Co)w-zTiCuα(Rは希土類元素の少なくとも1種、8≦w≦13、0.42≦z<0.70、0.40≦α≦0.70)を満足する希土類磁石用合金が報告されている。また、副相は主に副相全体の50mol% 以上がCu組成の結晶相であること、副相の結晶構造はKHg型であることも記載されている。
【0007】
特許文献5では、RFe100-x-y(V1-aSi(RはYを含む希土類元素の1種または2種以上、x=5.5~18原子%、y=8~20原子%、a=0.05~0.7)で、主相がThMn12型体心正方晶構造を有する希土類永久磁石について報告されている。この組成合金は主相と希土類リッチ相からなり、RFe相を含まないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-189206号公報
【文献】国際公開第2017/164312号
【文献】特開2017-112300号公報
【文献】特開2019-044259号公報
【文献】特開平06-231920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、ThMn12型化合物を主相とする磁石において良好な磁気特性を得るためには、Nd-Fe-B系磁石と同じように主相と粒界相からなる組織とすることが提示されており、粒界相としてLa-rich相(特許文献2)やR-Cu相(特許文献1、4)などの非磁性相が検討されている。しかし実際には、これらの相は粒界三重点などに偏析して二粒子間粒界相を形成し難く、主相粒表面が粒界相によって被覆された組織とするのが難しい問題があった。
【0010】
また、特許文献3では、高い磁気異方性を示す磁性相であるSmFe17系相やSmCo系相によって主相粒の表面を包囲して、この相で磁壁をピニングすることで保磁力を向上させている。しかし、ThMn12型化合物の結晶粒表面がSmFe17系相やSmCo系相で包囲された組織形態を実現するのは難しい。
【0011】
一方、特許文献5では、ThMn12主相とRリッチ相からなる合金が提示されている。しかし実際にはR-Fe-V-Si四元系で2相のみが形成される組成範囲は極めて限定されるため、この組織を再現性良く作製するのは難しい。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、良好な磁気特性を有するThMn12型結晶の化合物を主相とする異方性希土類焼結磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ThMn12型結晶の化合物を主相とする異方性希土類焼結磁石において、隣接する主相粒の間に二粒子間粒界相が形成されたときに高い保磁力を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0014】
従って、本発明は、下記の異方性希土類焼結磁石及びその製造方法を提供する。
(1)組成が式(R1-aZr(Fe1-bCo100-x-y(M 1-c (Rは希土類元素から選ばれる1種以上でSmを必須とし、MはV、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Al、Siからなる群より選ばれる1種以上の元素、MはTi、Nb、Mo、Hf、Ta、Wからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、x、y、a、b、cは各々、7≦x≦15原子%、4≦y≦20原子%、0≦a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.9)で表される異方性希土類焼結磁石であって、ThMn12型結晶の化合物からなる主相を80体積%以上含み、前記主相の平均結晶粒径が1μm以上であり、隣接する主相粒の間に二粒子間粒界相が形成されていることを特徴とする異方性希土類焼結磁石。
(2)前記二粒子間粒界相が、Rを20原子%以上含有することを特徴とする(1)に記載の異方性希土類焼結磁石。
(3)前記二粒子間粒界相が、厚み0.5nm以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の異方性希土類焼結磁石。
(4)Rリッチ相を粒界部に含むことを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(5)R(Fe,Co)相を粒界部に含むことを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(6)前記Rリッチ相及び前記R(Fe,Co)相を、合計で1体積%以上含むことを特徴とする(4)又は(5)に記載の異方性希土類焼結磁石。
(7)前記主相粒の内部におけるSm/R比が、前記Rリッチ相及び前記R(Fe,Co)相のSm/R比より低いことを特徴とする(4)~(6)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(8)前記主相粒の内部におけるSm/R比が、主相粒の外殻部におけるSm/R比より低いことを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(9)前記主相粒の内部にSmを含まないことを特徴とする(7)又は(8)に記載の異方性希土類焼結磁石。
(10)室温で5kOe以上の保磁力を示し、保磁力の温度係数βが-0.5%/K以上であることを特徴とする(1)~(9)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(11)ThMn12型結晶の化合物相を含む合金を粉砕し、磁場印加中で圧粉成形して成形体とした後、800℃以上1400℃以下の温度で焼結することを特徴とする(1)~(10)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
(12)ThMn12型結晶の化合物相を含む合金と、それよりR組成比及びSm/R比が高い合金を粉砕、混合し、磁場印加中で圧粉成形して成形体とすることを特徴とする(11)に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
(13)ThMn12型結晶の化合物相を主相とする焼結体にSmを含む材料を接触させて、600℃以上焼結温度以下の温度で熱処理を施してSmを焼結体内部に拡散させることを特徴とする(11)又は(12)に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
(14)焼結体に接触させるSmを含む材料が、Sm金属、Sm含有合金、Smを含む化合物、及びSmを含む蒸気から選ばれる1種以上であり、またその形態が、粉末、薄膜、薄帯、箔、及び気体から選ばれる1種以上であることを特徴とする(13)に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
(15)前記焼結体に300~900℃の温度で熱処理を施すことを特徴とする(11)~(14)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ThMn12型結晶の化合物を主相とする異方性希土類焼結磁石において、良好な磁気特性を示す異方性希土類焼結磁石を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の焼結磁石をSTEMで観察した組織のHAADF画像である。
図2】実施例1の焼結磁石をSTEMで観察した組織の別箇所におけるHAADF画像である。
図3】比較例1の焼結磁石をSTEMで観察した組織のHAADF画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の異方性希土類焼結磁石は、組成が下式
(R1-aZr(Fe1-bCo100-x-y(M 1-c
で表され、ThMn12型結晶の化合物が主相であり、ThMn12型結晶の化合物からなる主相を80体積%以上含み、主相の平均結晶粒径が1μm以上であり、隣接する主相粒の間に二粒子間粒界相が形成されている異方性焼結磁石である。なお、x、y、a、b、cは各々、7≦x≦15原子%、4≦y≦20原子%、0≦a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.9である。このように、組成範囲が広いため、本発明の異方性希土類焼結磁石を再現性良く作製することが容易である。
まず各成分について以下に説明する。
【0018】
Rは希土類元素から選ばれる1種以上の元素であり、Smを必須とする。具体的には、RはSmを必須とし、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuより選ばれる1種以上の元素とSmとを組み合わせたものであってもよい。Rは主相であるThMn12型結晶構造の化合物を形成するのに必要な元素である。Rの含有量は7原子%以上15原子%以下とする。8原子%以上12原子%以下であれば、より好ましい。7原子%未満ではα-Fe相が析出して焼結し難しく、一方、15原子%を超えるとThMn12型化合物相の体積比が低下して良好な磁気特性が得られない。ThMn12型化合物はRがSmのとき特に高い異方性磁界Hを示すので、本発明の異方性希土類焼結磁石はSmを必須とする。主相粒の内部と外殻部においてSm濃度に差がない場合、Rに含まれるSmは原子比でRの5%以上であることが好ましく、10%以上であればさらに好ましく、20%以上が特に好ましい。Sm比がこのような範囲であることで、Hの増大効果が十分となり高い保磁力が得られる。
【0019】
一方、SmはY、La、Ce、Pr、Ndなどと比べて産出量が少なく資源的な制約があるので、できるだけSmを有効に利用することが好ましい。そのため主相粒の外殻部にSmが濃化した組織形態として、より少ないSm含有量で高い保磁力を得てもよい。このように主相粒の内部と外殻部でSm濃度が異なる組織を有する場合は、Rに含まれるSmが原子比でRの0.1原子%以上50原子%以下であることが好ましい。0.2原子%以上40原子%以下であればさらに好ましく、0.5原子%以上30原子%以下が特に好ましい。Rが、Y、La、Ce、Pr、Ndより選ばれる1種以上の元素とSmの組み合わせであれば、より好ましい。
【0020】
Zrは、ThMn12型化合物のRを置換して相安定性を高める効果をもたらす。Rを置換するZrは、原子比でRの20%以下とする。20%を超えるとThMn12型化合物のHが低下して高い保磁力が得られにくい。
【0021】
ThMn12型結晶構造が安定して存在するためには、構成元素としてR、Feとともに第3元素Mが必要であることが知られている。本発明の異方性希土類焼結磁石において、MはV、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Al及びSiからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、この第3元素としての役割を担っている。Mは、同じく第3元素として作用する後述するMに比べて、FeよりもRと化合物を形成しやすいか、またはFe、Rどちらとも結合しにくい傾向を示す元素である。本発明の異方性希土類焼結磁石における特徴の一つは、磁石組織中において、主相であるThMn12型化合物とともに、粒界部にRリッチ相及びR(Fe,Co)相が存在する点にあるが、第3元素としてM元素を選択することで、これら3つの相が安定して共存する組織が得られやすくなる。MとMを合わせてMと表記すると、Mは原子比でMの少なくとも10%以上を占めるものとする。30%以上であればより好ましく、50%以上であればさらに好ましい。Mが10%未満では、上記3相のうちRリッチ相が安定して形成されない。また、MとMの合計であるMは、4原子%以上20原子%以下とする。Mが4原子%未満ではThMn12型化合物の主相が十分に形成されず、20原子%を超えると異相の形成量が増大して良好な磁石特性を示さない。
なお、Rリッチ相は主相よりも希土類元素の濃度が高い相である。また、R(Fe,Co)相はMgCu構造を有し、ラーベス(Laves)相と呼ばれる化合物相である。
【0022】
はTi、Nb、Mo、Hf、Ta及びWより選ばれる1種以上の元素である。MもThMn12型結晶構造を安定化させる効果を有するが、過剰に含まれると、MC相などのカーバイドや MgZn型化合物である(Fe,Co)相が主相内や粒界部に析出する。特に(Fe,Co)相は、例えばFeTi相のように、化学量論組成よりFeリッチな組成となってフェロ磁性を示す場合があり、焼結磁石の磁気特性に悪影響を与える。また第3元素としてMを含まずMのみ選択した場合は、Rリッチ相が安定して形成されにくい。そのためMを含む組成の場合、その含有量は原子比で少なくともMの90%以下とする。
【0023】
本発明の異方性希土類焼結磁石は、Sm、MとともにFeを必須の構成元素とする。さらにCoでFeの一部を置換しても良い。Coによる置換は、主相であるThMn12型化合物のキュリー温度Tを高め、飽和磁化Mを増大させる効果がある。Coの置換率は原子比で50%以下とする。置換率が50%を超えるとMは逆に低下する。Fe及びCoの割合は、R、Zr、M及びMの残部とする。ただしこの他に、原材料から取り込まれたり、製造工程で混入したりする不可避不純物、具体的にはH、B、C、N、O、F、P、S、Mg、Cl、Caなどを合計で3重量%まで含有してもよい。
【0024】
次に、本発明の異方性希土類焼結磁石を構成する相について説明する。
本発明の異方性希土類焼結磁石における主相は、ThMn12型結晶構造のR(Fe,Co,M)12化合物からなる。焼結磁石を作製する工程で不可避的に混入するC、N、Oなどの元素は、主相に含まれないことが好ましい。ただし、EPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いた組成分析で、測定ばらつき、観察試料の調整方法や他元素の検出信号の影響などによりC、N、O元素が検出される場合、主相のHを良好に得る観点から、その上限は各々1原子%までが好ましい。主相の平均結晶粒径は1μm以上であり、1μm以上30μm以下が好ましい。1.5μm以上20μm以下の範囲であればさらに好ましく、2μm以上10μm以下が特に好ましい。平均結晶粒径をこのような範囲とすることで、結晶粒の配向度の低下による残留磁束密度Bの減少や、保磁力HcJの低下を抑制できる。主相の体積率は、良好なBやHcJを得る観点から、磁石全体に対して80体積%以上であり、80体積%以上99体積%未満が好ましく、90体積%以上95体積%以下であればさらに好ましい。
なお、主相の平均結晶粒径は以下のようにして測定した値である。
焼結磁石の断面を鏡面になるまで研磨した後、エッチング液(硝酸+塩酸+グリセリンの混合液など)に浸漬して粒界相を選択的に除去し、この断面の任意の10箇所以上についてレーザー顕微鏡で観察を行った。得られた観察像から画像解析により各粒子の断面積を算出し、これらを円とみなした時の平均直径を平均結晶粒径とした。
また、主相の体積率は以下のようにして測定した値である。
EPMAを用いて異方性希土類焼結磁石の組織観察と各相の組成分析を行い、主相、Rリッチ相及びR(Fe,Co)相を確認した。そして、各相の体積率は、反射電子像の画像における面積比に等しいものとして算出した。
【0025】
Smを有効に利用するために、主相粒の外殻部にSmが濃化し、主相粒内部のSm濃度はそれより低い粒が存在する組織としてもよい。その場合、高Sm外殻部の厚みは特に限定されないものの、主相粒外殻部で逆磁区の核生成を抑制する効果を十分に得る観点、焼結体全体のSm含有量が多くなることでSmの削減効果が十分に得られなくなることを抑制する観点から、1nm~2μmが好ましく、2nm~1μmであれば特に好ましい。このような形態は、Rリッチ相やR(Fe,Co)相におけるSm/R比(Rに対するSmの原子比率)を主相粒内部のSm/R比より高めることで生じる。主相粒の内部にSmを含まない組織であれば、より好ましい。またSm濃度分布が均一である主相粒が一部含まれても良い。
【0026】
Rリッチ相及びR(Fe,Co)相は、磁石組織の粒界部に形成される。粒界部には二粒子間粒界相に加えて粒界三重点なども含まれる。ここで、Rリッチ相はRを40原子%以上含有する相とする。本発明者らは、M元素を含んだ上記の組成としたときに、主相、R(Fe,Co)相、及びRリッチ相の3つの相を含む磁石が得られやすいことを見出した。たとえばM元素を含まないSm-Fe-Ti三元系の焼結磁石では、Sm(Fe,Ti)12主相とSmFe、FeTiの3相(ただし酸化物などを除く)が平衡する組成領域が存在するが、Sm(Fe,Ti)12主相とSmリッチ相は400℃以下の低温で平衡し難いため、Smリッチ相が安定相として形成されない。これに対し、M元素の1つであるVを用いたSm-Fe-V三元系の場合、Fe-V二元系化合物は形成されず、代わりに高Sm濃度のSmリッチ相が形成されて、Sm(Fe,V)12、SmFeとSmリッチ相の3つの相が存在する磁石を得ることができる。また、M、Mの両方が含まれるSm-Fe-V-Ti四元系では、Sm(Fe,V,Ti)12、Fe(V,Ti)、SmFeとSmリッチ相の4相が安定に存在し得る。本発明の異方性希土類焼結磁石では、こうした知見に基づき、粒界部にRリッチ相及びR(Fe,Co)相を形成するために、所定量のM元素を含む組成が選択される。
【0027】
Rリッチ相とR(Fe,Co)相は、主として4つの効果をもたらす。第1の効果は、焼結を促進させる作用である。焼結温度ではRリッチ相もR(Fe,Co)相も溶融して液相となるため、液相焼結が進行し、これらの相を含まない場合の固相焼結に比べて速やかに焼結が完了する。またRリッチ相とR(Fe,Co)相が共存することで、液相生成温度はどちらか一方の相のみの場合より降下する傾向を示し、液相焼結がより速やかに進行する。
【0028】
第2の効果は、主相粒表面のクリーニングである。本発明の異方性希土類焼結磁石は核発生型の保磁力機構を有するため、逆磁区の核生成が生じにくくなるように、主相粒表面が平滑であることが望ましい。Rリッチ相とR(Fe,Co)相は、焼結工程、もしくはその後の時効工程において、ThMn12型化合物結晶粒の表面を平滑化する役割を果たしており、このクリーニング効果によって保磁力低減の要因となる逆磁区の核生成が抑制される。特にR(Fe,Co)相は、Rが40原子%未満の他相、例えば、RM、RM、R(Fe,Co)MやR(Fe,Co)などの化合物相と比べてThMn12相に対する濡れ性が比較的高く、主相粒の表面を被覆しやすいためクリーニング効果が大きい。
【0029】
第3の効果は、二粒子間粒界相の形成である。組織中にRリッチ相を含有する磁石では、最適な焼結処理、もしくは時効処理を行うことで、隣接するThMn12型化合物主相粒の間に、主相よりRを多く含有する二粒子間粒界相が形成される。これにより主相粒間の磁気的相互作用が弱まり、焼結磁石は高い保磁力を示すようになる。しかし、ThMn12型化合物主相とRリッチ相の2相のみ平衡する組成領域は極めて限定的であるため、組成ばらつきを考慮すると、このような磁石を安定して製造することは難しい。ThMn12型化合物主相、Rリッチ相とR(Fe,Co)相の3相を含む磁石とすることで、主相粒表面が二粒子間粒界相によって被覆された組織を安定的に形成することができる。またRリッチ相が存在しない磁石では、二粒子間粒界相が形成されにくい、もしくは二粒子間粒界相が主相粒の表面を被覆することが難しいため、十分な保磁力を示す磁石が得られにくい。
【0030】
第4の効果は、粒界部のSm濃度を高めることである。主相粒の内部と外殻部でSm濃度が異なる組織とするために、製造方法として粒界拡散法を適用する場合、粒界部に存在するRリッチ相とR(Fe,Co)相は拡散処理時に液相となり、焼結体上に設置されたSmを内部へ拡散浸透させる役割を担う。そのため、Rリッチ相またはR(Fe,Co)相のうち少なくともどちらかにおけるSm/R比は、主相粒内部のSm/R比より高くなる。また製造方法として二合金法を適用した場合、ThMn12型化合物相を主体とする合金と、それよりR組成比及びSm/R比が高い合金を用いることで、焼結体のRリッチ相またはR(Fe,Co)相のうち少なくともどちらかにおけるSm/R比は、主相粒内部のSm/R比より高くなる。Rリッチ相やR(Fe,Co)相にSmが濃化することで、これらの粒界相と接する主相粒外殻部のSm濃度も増加し、Hが向上して焼結磁石の保磁力が増大する。
【0031】
Rリッチ相は、上記の通り、Rを少なくとも40原子%以上含有するものとする。Rが40原子%未満では、主相との濡れ性が十分でないため上述の効果が得られにくい。Rを50原子以上含有するとさらに好ましく、60原子以上含有すれば特に好ましい。Rリッチ相は上述のSm相のようなRメタル相でも良いし、アモルファス相やR(Fe,Co,M)、R(Fe,Co,M)、R(Fe,Co,M)、R(Fe,Co,M)のように高R組成で低融点の金属間化合物であっても良い。またFe、Co、M元素や、H、B、C、N、O、F、P、S、Mg、Cl、Caなどの不純物元素を、合計で60原子%まで含んで良い。
【0032】
一方、R(Fe,Co)相はMgCu型結晶のラーベス(Laves)化合物であるが、EPMAなどを用いて組成分析した場合、測定ばらつきなどを考慮して、Rを20原子%以上40原子%未満含有するものとする。また、M元素によりFe、Coの一部が置換されても良い。ただし、Mの置換量はMgCu型結晶構造が保持される範囲内とする。
【0033】
本発明の異方性希土類焼結磁石におけるR(Fe,Co)相は磁性相である。ここでいう磁性相とは、フェロ磁性もしくはフェリ磁性を示し、キュリー温度Tが室温(23℃)以上である相とする。RFeはCeFeを除いてTが室温以上であり、CeFeもRの10%以上が他の元素で置換されればTは室温以上になる。一方、RCoはGdCoを除いてTが室温以下、もしくは常磁性相だが、本発明の異方性希土類焼結磁石ではCoによるFeの置換原子比率が0.5以下なので、ほとんどの場合R(Fe,Co)相は磁性相となる。一般に、組織中に含まれる軟磁性相は磁気特性に悪影響を及ぼすことが多いが、本発明の異方性希土類焼結磁石ではR(Fe,Co)相による主相粒表面のクリーニング効果や二粒子間粒界相を形成する効果の方が大きく、磁性相であっても保磁力増大に寄与すると考えられる。
【0034】
Rリッチ相とR(Fe,Co)相の形成量は、合わせて1体積%以上であることが好ましく、1体積%以上20体積%未満とすることがより好ましい。また、1.5体積%以上15体積%未満がさらに好ましく、2体積%以上10体積%未満の範囲がよりさらに好ましい。このような範囲とすることで、主相粒と接する面積が確保され、HcJ増大の効果が得られやすい。また、Bの低下も抑えられ、所望の磁気特性が得られやすい。
【0035】
本発明の異方性希土類焼結磁石では、上述の通り、粒界部にRリッチ相とR(Fe,Co)相が存在するとともに、ThMn12型化合物からなる主相粒が隣接する粒子間に二粒子間粒界相が形成される。主相粒の表面が二粒子間粒界相によって被覆されることで、主相粒間の磁気的相互作用が弱まり、高い保磁力を示すようになる。
【0036】
上記二粒子間粒界相は、原子配列の乱れたアモルファス状であっても良いし、原子配列に規則性を有していても良い。また、粒界三重点に存在するRリッチ相やR(Fe,Co)相と同じ相でも良い。STEM(走査透過電子顕微鏡)などの装置を用いて二粒子間粒界相を観察した場合、その組成はRを20原子%以上含むことが好ましい。このような範囲とすることで、主相粒間の磁気的結合を十分に低減でき、高い保磁力が得られやすい。また、二粒子間粒界相の厚さは0.5nm以上とすることが好ましい。これにより、主相粒間の磁気分断効果を確保しやすく、十分な保磁力向上効果が得られる。さらに、その厚さは1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。このような範囲であれば、主相粒の体積比率減少に伴う磁気特性低下の影響が保磁力増大の効果よりも大きくなることを抑制しやすくなる。
なお、STEMの画像から、以下のようにして二粒子間粒界相の厚さを測定した。
STEM装置(日本電子株式会社製JEM-ARM200F)を用いて、1つの試料の少なくとも3箇所以上について、隣接する主相粒同士が接している箇所の観察を行った。観察により得られたHAADF(High-Angle Annular Dark Field)像から二粒子間粒界相の厚さを測定し、これらの厚さの平均値を二粒子間粒界相の厚さとした。
【0037】
この他、本発明の異方性希土類焼結磁石には、不可避的に混入したC、N、Oによって形成されるR酸化物、R炭化物、R窒化物、M炭化物などが含まれても良い。磁気特性の劣化を抑制する観点から、これらの体積比は10体積%以下が好ましく、5体積%以下がさらに好ましく、3体積%以下が特に好ましい。
【0038】
上記以外の相はできるだけ少ない方が好ましく、例えば、R(Fe,Co,M)17相、R(Fe,Co,M)29相が磁石組織中に存在する場合は、磁気特性への影響とそれによる保磁力の低下を抑制する観点から、その形成量は各々1体積%未満が良い。また、十分な主相の割合を確保する観点から、(Fe,Co)M相やRが40原子%未満であるRM、RM、R(Fe,Co)M、R(Fe,Co)なども、各々1体積%未満であることが好ましい。これらの相は合計で3体積%以下が好ましい。さらに、著しい磁気特性の低下を防ぐ観点から、α-(Fe,Co)相は、本発明の異方性希土類焼結磁石には含まれないことが好ましい。
【0039】
次に、製造方法について説明する。本発明の異方性希土類焼結磁石は粉末冶金法によって製造される。まず原料合金を作製するために、R、Fe、Co、Mのメタル原料、合金、フェロ合金などを用い、製造工程中の原料ロス等を考慮した上で、最終的に得られる焼結体が所定の組成になるよう調整する。これらの原料を、高周波炉、あるいはアーク炉などで溶解して合金を作製する。溶湯からの冷却は鋳造法でもよいし、ストリップキャスト法で薄片としてもよい。ストリップキャスト法の場合は、冷却速度を調整して主相の平均結晶粒径、もしくは平均の粒界相間隔が1μm以上となるように合金を作製するのが好ましい。1μm未満では、微粉砕後の粉末が多結晶となり、磁場中成形の工程において主相結晶粒が十分に配向せずBの低下を招く。合金中にα-Feが析出する場合は、α-Feを除去してThMn12型化合物相の形成量が増えるように、合金に熱処理を施しても良い。また合金は単一組成の合金を用いても良いし、組成の異なる複数の合金を準備して後工程でその粉末を混合する方法で調整しても良い。
【0040】
上記の原料合金を、ブラウンミルなどの機械粉砕や水素化粉砕などの手段により平均粒径0.05~3mmの粉末になるよう粗粉砕する。あるいはNd-Fe-B系磁石の製造方法として用いられるHDDR法(水素不均化脱離再結合法)を適用しても良い。さらに粗粉をボールミルや高圧窒素などを用いたジェットミルなどにより微粉砕し、平均粒径0.5~20μm、より好ましくは1~10μmの粉末とする。なお微粉砕工程の前後に、必要に応じて潤滑剤等を添加してもよい。次に磁場プレス装置を用いて、合金粉末の磁化容易軸を印加磁場中で配向させながら成形し、圧粉成形体とする。成形は、合金粉末の酸化を抑制するために真空、窒素ガス雰囲気、Arなどの不活性ガス雰囲気などで行うのが好ましい。
【0041】
圧粉成形体を焼結する工程は、焼結炉を用いて真空または不活性雰囲気中で、800℃以上1400℃以下の温度で行うものとする。800℃未満では焼結が十分に進行しないため高い焼結密度が得られず、1400℃を超えるとThMn12型化合物の主相が分解してα-Feが析出する。焼結温度は特に900~1300℃の範囲が好ましい。焼結時間は0.5~20時間が好ましく、1~10時間がより好ましい。焼結は、昇温した後、一定温度で保持するパターンでも良いし、結晶粒の微細化を図るために、第1の焼結温度まで昇温後により低い第2の焼結温度で所定時間保持する2段階焼結パターンを用いても良い。また、複数回の焼結を行っても良いし、あるいは放電プラズマ焼結法などを適用しても良い。焼結後の冷却速度は特に制限されないが、少なくとも600℃以下、好ましくは200℃以下まで、好ましくは1℃/分以上100℃/分以下、より好ましくは5℃/分以上50℃/分以下の冷却速度で冷却することができる。保磁力を向上させるため、さらに300~900℃で0.5~50時間の時効熱処理を施しても良い。組成や粉末粒径などに合わせて焼結及び時効の条件を最適化することで、HcJの向上がもたらされる。さらに焼結体を所定の形状に切断・研削し、着磁を施して焼結磁石となる。
【0042】
一方、主相粒内部のSm/R比がRリッチ相及びR(Fe,Co)相のSm/R比より低い主相粒が存在する異方性希土類焼結磁石を製造する手段としては、たとえば二合金法や粒界拡散法などの例を挙げることができる。
【0043】
二合金法を用いる場合は、R、Fe、Co、Mのメタル原料、合金、フェロ合金などを用い、組成の異なる2種の原料合金を作製する。なお、3種類以上の合金を用いてもよい。このとき、ThMn12型化合物相を主体としてSm/R比が相対的に低い合金Aと、それより相対的にR組成比及びSm/R比が高い合金Bを組み合わせて、平均組成が所定の組成となるよう調整するのが好ましい。これらの合金を鋳造法やストリップキャスト法で作製し、粉砕する。各合金粉末を混合する工程は、微粉砕前の粗粉状態で行っても良いし、微粉砕後に行っても良い。さらに成形、焼結を行って焼結体とする。保磁力を向上させるために時効熱処理を施しても良い。
【0044】
二合金法による焼結磁石では、主として合金Aの成分によりThMn12型化合物からなる主相が形成され、主として合金Bの成分によりRリッチ相、R(Fe,Co)相や主相粒の外殻部が形成される。そのため、粒界部に形成されたRリッチ相やR(Fe,Co)相のSm/R原子比は、主相粒内部のSm/R原子比より高くなる。また粒界相のSmの一部は主相粒の表層部でR原子を置換し、粒表層部と内部でSm濃度が異なるコアシェル構造を形成して、保磁力を増大させる。
【0045】
一方、粒界拡散法では、まず単合金法又は二合金法により上述と同様に焼結体を作製する。このとき焼結体組成のRはSmを含んでも良いし、Smを含まなくても良い。
【0046】
次に、得られた焼結体に対してSmの粒界拡散を施す。焼結体を必要に応じて切断、研削した後、その表面上にSmを含む金属、合金、酸化物、フッ化物、酸フッ化物、水素化物、炭化物等の化合物から選ばれる拡散材料を、粉末、薄膜、薄帯、箔などの形態で設置する。例えば、上記材料の粉末を水もしくは有機溶媒などと混合してスラリーとし、それを焼結体上にコーティングした後、乾燥させても良いし、蒸着、スパッタ、CVDなどの手段で上記物質を薄膜として焼結体表面に設置しても良い。設置量としては、10~1000μg/mmであることが好ましく、特に20~500μg/mmが好ましい。このような範囲であれば、HcJの増大が十分に得られ、また、Sm含有量が多くなることによる、製造コストの増大を抑制できる。またSmの蒸気圧が高い性質を利用して、Sm金属やSm合金を同一室内で焼結体とともに熱処理し、Sm蒸気として焼結体に接触させても良い。
【0047】
この焼結体を、表面にSmを設置した状態で真空中又は不活性ガス雰囲気中で熱処理する。熱処理温度は600℃以上焼結温度以下が好ましく、700℃以上1100℃以下が特に好ましい。熱処理時間は0.5~50時間が好ましく、特に1~20時間が好ましい。熱処理後の冷却速度は特に限定されないが、1~20℃/分、特に2~10℃/分が好ましい。保磁力を向上させるため、さらに300~900℃で0.5~50時間の時効熱処理を施しても良い。
【0048】
焼結体上に配置されたSmは、熱処理によりRリッチ相やR(Fe,Co)相のSm濃度を高めながら焼結体内部へと浸透し、これら粒界相のSm/R比が上昇する。粒界相のSm濃度が高くなることで、粒界相と接する主相粒の表層部においてもSmによるR原子の置換が生じ、主相粒表層部のSm/R比が主相粒内部のSm/R比より高くなって、HcJが増大する。
【0049】
このようにして作製された本発明の異方性希土類焼結磁石は、室温で5kG以上の残留磁束密度Bと、少なくとも5kOe以上の保磁力HcJを示す。室温HcJは8kOe以上であればさらに好ましい。また保磁力の温度係数βは-0.5%/K以上の特性を示す。ここでβ=ΔHcJ/ΔT×100/HcJ(20℃)(ΔHcJ=HcJ(20℃)-HcJ(140℃)、ΔT=20-140(℃))とする。本発明の異方性希土類焼結磁石は、Nd-Fe-B焼結磁石に比べて保磁力の温度変化が小さく、高温での使用に適している。
【実施例
【0050】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
Smメタル、電解鉄、フェロバナジウム、Alメタル、Siを用いて組成を調整し、高周波誘導炉によりArガス雰囲気中で溶解して鋳造合金を作製した。初晶α-Feを消失させるため、合金には900℃で50時間の熱処理を施した。レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製、LEXT OLS4000)により得られた合金の組織観察を行い、観察した画像から主相の平均結晶粒径が5μm以上であることを確認した。合金に水素吸蔵処理及び真空中400℃で加熱する脱水素化処理を施して粗粉末とした後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して平均粒径1.8μmの微粉末を作製した。さらに微粉末を不活性ガス雰囲気中で成形装置の金型に充填し、15kOe(=1.19MA/m)の磁界中で配向させながら、磁界に対して垂直方向に0.6Ton/cmの圧力で加圧成形した。この圧粉成形体をArガス雰囲気において1140℃で3時間焼結した後、13℃/分の冷却速度で室温まで冷却して、焼結体を得た。
【0052】
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、SPS3520UV-DD)を使用して高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)により分析した焼結体の組成はSm10.2Febal.14.9Al0.5Si0.2であった。またX線回折よりThMn12型結晶が主相であることを確認した。EPMA装置(日本電子株式会社製、JXA-8500F)を用いて焼結体の組織観察と形成相の組成分析を行い、粒界三重点にRリッチ相とR(Fe,Co)相が形成されていることを確認した。主相、Rリッチ相及びR(Fe,Co)相の体積比率は、反射電子像の画像における面積比に等しいものとして算出した。その結果、焼結体組織の粒界部には、Rリッチ相とR(Fe,Co)相が各々1体積%以上存在していた。また、この焼結体サンプルに、エッチングを行って観察した結果から算出した主相の平均結晶粒径は、9.9μmであった。さらに、B-Hトレーサで測定した室温HcJは8.5kOeであり、HcJの温度係数βは-0.46%/Kであった。
【0053】
この焼結体から、FIB-SEM装置(FEI製Scios Dual Beam)を用いて観察用試料を薄く切り出し、STEM装置(日本電子株式会社製JEM-ARM200F)により観察を行った。得られたHAADF(High-Angle Annular Dark Field)像を図1及び図2に示す。図1より、2つの主相粒11,12に挟まれた粒界部に二粒子間粒界相13が存在していることが確認できる。このときの二粒子間粒界相13の厚さは約0.7nmで、EDX分析(エネルギー分散型蛍光X線分析)で得られた組成はSm61.2Febal.7.1Al1.3Si1.1であった。また同じ焼結体で別の個所を観察した図2では、二粒子間粒界相13は1.4nm程度の厚さであり、組成はSm31.9Febal.9.5Al2.7Si0.6であった。結果を表1~3及び5に示す。
【0054】
[比較例1]
Smメタル、電解鉄、Tiメタルを用いて組成を調整して、実施例1と同様に、高周波誘導炉により鋳造合金を作製し、さらに900℃で50時間の熱処理を施した。レーザー顕微鏡により得られた合金の組織観察を行い、観察した画像から主相の平均結晶粒径が5μm以上であることを確認した。実施例1と同様に粉砕、磁界中成形を行い、Arガス雰囲気で1175℃で3時間焼結した後、13℃/分の冷却速度で室温まで冷却して、比較例1の焼結体を得た。ICP法により分析した焼結体の組成値はSm9.7Febal.Ti8.1であった。またX線回折測定より、比較例1の主相はThMn12型結晶であることを確認した。EPMAで形成相を調べたところ、R(Fe,Co)相は存在したが、Rリッチ相が形成されておらず、微細なTiC相が析出していた。B-Hトレーサで磁気特性を測定したところ、この比較例1は室温で0.1kOeの低い保磁力しか示さなかった。比較例1で得られたHAADF像を図3に示す。2つの主相粒11,12の境界では、実施例1で見られたような二粒子間粒界相が形成されていなかった。結果を表1~3に示す。
【0055】
[実施例2~8]
実施例1と同様に、組成を調整して高周波溶解により鋳造合金を作製した。初晶α-Feを消失させるため、合金には850~1100℃、10~50時間の熱処理を施した。レーザー顕微鏡により得られた合金の組織観察を行い、観察した画像から主相平均結晶粒径はいずれも1μm以上であることを確認した。水素吸蔵処理及び真空中450℃で加熱する脱水素化処理を施して粗粉末とした後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して平均粒径2~4μmの微粉末を作製した。さらに微粉末を不活性ガス雰囲気中で成形装置の金型に充填し、磁界中成形した。この圧粉成形体をArガス雰囲気で焼結した後、室温まで冷却し、更に時効熱処理を行って焼結体サンプルを得た。表1にICP法で分析した各サンプルの組成、X線回折で確認した主相の結晶構造、及び焼結体の主相平均結晶粒径を示す。表2には各実施例の焼結処理条件、焼結後の冷却速度、時効処理条件、室温で測定したB、HcJ、及びHcJの温度係数βを示す。実施例8は、第1焼結温度まで昇温した後すぐに第2焼結温度まで降温して所定時間保持する2段階焼結法を適用した。また表3には、EPMAで分析した各相の組成、及び相比率を示す。実施例2~8のサンプルでは、いずれも組織中にRリッチ相とR(Fe,Co)相が形成されており、室温で5kOe以上の保磁力を示すとともに、-0.5%/K以上の温度係数βを示した。またこれらの焼結体サンプルについて実施例1と同様にSTEM観察を行ったところ、いずれの実施例でも2つの主相粒に挟まれた粒界部に二粒子間粒界相が存在していることを確認した。表5に、測定した二粒子間粒界相の組成と厚みを示す。
【0056】
[比較例2~6]
表1に示した組成に調整した以外は、実施例2と同様の方法で、比較例2~5の焼結体サンプルを作製した。表1,2,4に結果を示す。比較例2はRの合計が7原子%未満であり、十分に焼結することができず、また焼結体中には多量のα-Fe相が形成されていた。比較例3はRの合計が15原子%を超えており、主相の体積比率が80%未満であった。比較例4はM元素の合計が20原子%を超えており、Rリッチ相が観察されず、PbClF型結晶のRFeSi相が形成されていた。比較例5はKHg型結晶のRCu相が粒界三重点に存在したが、M元素が合計20原子%を超えており、Rリッチ相が見当たらなかった。比較例6はMの合計が4原子%未満であり、組織中にThMn12型結晶は観察されず、ThZn17型結晶の主相が形成されていた。
【0057】
[比較例7]
Smメタル、電解鉄、Tiメタル、Vメタルを用いて組成を調整し、原料溶湯を周速度20m/secで回転するCuロール上で冷却して、急冷薄帯の原料合金を作製した。薄帯の厚みは10~50μmであり、レーザー顕微鏡により得られた合金の組織観察を行い、観察した画像から平均結晶粒径は細かすぎて測定し難いものの、少なくとも1μmより小さいことを確認した。この合金薄帯をボールミルで粉砕した後、篩で300μm以下の粉末を選別し、Ar雰囲気中750℃でホットプレスを行った。主相粒の平均結晶粒径は0.2~0.3μm程度と細かく、EPMAでは主相、粒界相の組成を同定できなかった。また主相の磁化容易軸が揃わないため、低いBしか得られなかった。結果を表1,2,4に示す。
【0058】
[実施例9]
Ndメタル、Yメタル、電解鉄、純Si、Hfメタルを用いて組成を調整し、高周波誘導炉を用いてArガス雰囲気中で溶解後、水冷Cuロール上でストリップキャストすることにより、厚さ0.2~0.4mm程度で組成がNd7.5原子%、Y1.0原子%、Si13.0原子%、Hf1.0原子%、残部Feの急冷薄帯合金を製造した。レーザー顕微鏡で観察した画像から求めた合金の短軸方向の平均結晶粒径は2.5μmであった。この合金に常温で水素吸蔵処理を行った後、真空中400℃で加熱する脱水素化処理を施して粗粉末とした(これを実9A粉末とする)。一方、Smメタルと電解鉄を原料とし、高周波誘導炉を用いて組成がSm40原子%、Ga10原子%、Cu5原子%、残部Coの合金インゴットを製造し、機械粉砕により粗粉末とした(実9B粉末とする)。実9A粉末と実9B粉末を重量比95:5で混合した後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して、平均粒径1.8μmの微粉末を作製した。
【0059】
この混合粉末を用いて、実施例1と同様に磁界中成形を行い、Arガス雰囲気で1200℃、3時間焼結した後、12℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、さらにArガス雰囲気で650℃、1時間の熱処理を施して、実施例9の焼結体を得た。焼結体サンプルの組成値はSm1.8Nd7.21.0Febal.Co1.0Si12.8Ga0.6Cu0.4Hf1.0であった。またX線回折測定より、この焼結体の主相はThMn12型結晶であることを確認した。
EPMAで測定した主相の組成は、粒の中央部がNd6.41.1Febal.Co1.0Si12.7Ga0.5Cu0.1Hf1.1 でSmを含まないが、粒の外殻部ではSm3.5Nd3.01.0Febal.Co1.0Si13.0Ga0.4Cu0.1Hf0.9であり、粒内部のSm/R比が表層部のSm/R比より低いことを確認した。またEPMAにより焼結体の組織観察と各相の組成分析を行い、粒界部にRリッチ相とR(Fe,Co)相が1体積%以上存在することを確認した。またわずかにRCu相が確認された。R(Fe,Co,M)17相、R(Fe,Co,M)29相やα-Fe相は観察されなかった。なお酸化物などの相も存在するため、相比の合計は100%に満たない。
【0060】
Rリッチ相、R(Fe,Co)相及びRCu相の組成分析値は、各々Sm26.8Nd31.70.1Febal.Si36.2Ga5.2、Sm17.2Nd17.40.2Febal.Co0.4Si0.3Hf0.1 、Sm15.9Nd18.6Febal.Cu65.2であった。これより粒の内部におけるSm/R比がRリッチ相及びR(Fe,Co)相のSm/R比より低いことを確認した。主相の平均結晶粒径は、8.6μmであった。この焼結体の保磁力は室温で5.6kOeであり、保磁力の温度係数βは-0.45%/Kであった。R(Fe,Co)相の分析値をもとに作製した同じ組成の合金キュリー温度Tは318℃であった。
実施例9について実施例1と同様にSTEM観察を行い、2つの主相粒に挟まれた粒界部に二粒子間粒界相が存在していることを確認した。測定した二粒子間粒界相の組成は組成がSm21.7Nd24.5Febal.Co0.5Si12.8Ga2.6Cu8.0のであり、厚みは35nmであった。
【0061】
[実施例10]
Ceメタル、Laメタル、電解鉄、Coメタル、純Si及びMoメタルを用いて組成を調整し、高周波誘導炉を用いてArガス雰囲気中で溶解後、水冷Cuロール上でストリップキャストすることにより、厚さ0.2~0.4mm程度の合金薄帯を製造した。この合金の平均の粒界相間隔を算出したところ、4.1μmであった。合金に実施例9と同様の水素吸蔵処理、脱水素処理を行って粗粉末とし、さらに窒素気流中のジェットミルで粉砕して、平均粒径2.9μmの微粉末を作製した。次に、微粉末を磁界中で配向させながら加圧成形し、真空中で950℃1.5時間焼結した後、冷却速度11℃/分で室温まで冷却して取り出し、焼結体を得た。この焼結体をSmメタルとともに真空熱処理炉内に設置して780℃、8時間の熱処理を行い、炉内から一旦取り出してから、さらに520℃、2時間の時効処理を施して実施例10を得た。
【0062】
実施例10の焼結体サンプルをICP分析した結果、組成はSm2.4Ce7.7La1.1Febal.Co0.6Si12.6Mo0.9であった。サンプルの一部を粉砕した粉末のX線回折測定から、主相の結晶構造はThMn12型であることを確認した。またEPMAにより焼結体の組織観察と各相の組成分析を行い、粒界部にRリッチ相とR(Fe,Co)相が1体積%以上存在することを確認した。R(Fe,Co,M)17相、R(Fe,Co,M)29相やα-Fe相は観察されなかった。なお酸化物などの相も存在するため、相比の合計は100%に満たない。
【0063】
主相粒の中央部と外殻部のEPMAによる組成分析値は、各々Ce7.3La0.1Febal.Co0.5Si13.5Mo1.0、Sm3.2Ce4.2La0.3Febal.Co0.5Si13.5Mo1.0であり、粒内部のSm/R比が表層部のSm/R比より低いことを確認した。またRリッチ相とR(Fe,Co)相の組成分析値は、各々Sm31.1Ce19.6La23.2Febal.Co2.7Si0.6Mo0.2、Sm15.0Ce18.9La0.5Febal.Co0.2Si0.7Mo0.2であった。主相粒の内部ではSmが検出されなかったのに対し、粒界部に存在するRリッチ相とR(Fe,Co)相はSmを含んでおり、Sm/R比が高くなっていることを確認した。
R(Fe,Co)相の分析値をもとに同じ組成の合金をアーク溶解で作製し800℃、20hrの均質化処理後、VSMで磁化-温度測定を行ったところ、キュリー温度Tは140℃であった。また、実施例9の焼結体にエッチングを行って観察した結果から算出した主相の平均結晶粒径は、12.3μmであった。さらに、磁気特性をB-Hトレーサで測定したところ、室温保磁力HcJは6.3kOeを示した。またHcJの温度係数βは-0.48%/Kであった。
【0064】
実施例10について実施例1と同様にSTEM観察を行い、2つの主相粒に挟まれた粒界部に二粒子間粒界相が存在していることを確認した。測定した二粒子間粒界相の組成は組成がSm21.2Ce15.5La25.9Febal.Co1.0Si0.6であり、厚みは92nmであった。
【0065】
[比較例8]
Smメタルと同時に熱処理する工程を行わずに、520℃、2時間の時効処理を施した以外は実施例10の焼結体と同様の作製方法で比較例9の焼結体を作製した。
【0066】
比較例8の焼結体組成は、Smを含まないCe8.3La1.3Febal.Co0.6Si13.0Mo0.9であり、主相粒の組成分析値は、Ce7.5La0.3Febal.Co0.6Si13.1Mo0.9であった。粒界部にはR(Fe,Co)相が存在せず、組成がCe33.1La29.6Febal.Si37.3及びCe23.3La54.3Febal.Co0.8Si0.6Mo0.1の2種類のRリッチ相が観察された。比較例8の室温保磁力HcJは0.1kOeであった。結果を表6~9に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【符号の説明】
【0076】
11,12 主相粒
13 二粒子間粒界相

図1
図2
図3