(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】構造体の製造方法、及び、構造体
(51)【国際特許分類】
H05K 3/18 20060101AFI20241220BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241220BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241220BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H05K3/18 D
G03F7/027 515
G03F7/004 512
G06F3/041 660
(21)【出願番号】P 2022518063
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016684
(87)【国際公開番号】W WO2021221025
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2020080716
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】漢那 慎一
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-501656(JP,A)
【文献】特公平07-031399(JP,B2)
【文献】特開平05-183259(JP,A)
【文献】特開2000-186217(JP,A)
【文献】特開2010-267652(JP,A)
【文献】特開2000-265087(JP,A)
【文献】国際公開第2012/060411(WO,A1)
【文献】特開2014-193961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/18
G03F 7/027
G03F 7/004
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、前記透明基材の上に配置された遮光性パターン1と、前記透明基材及び前記遮光性パターン1の上に配置され、かつ、前記透明基材に接するネガ型感光性樹脂層Nと、を有する積層体を準備する工程、
前記透明基材の前記遮光性パターン1が設けられている面とは反対側の面から前記ネガ型感光性樹脂層Nの一部に光を照射する工程、
光を照射された前記ネガ型感光性樹脂層Nを現像することで、前記透明基材上に樹脂パターン2を形成する工程、並びに、
前記遮光性パターン1と前記樹脂パターン2とによって画定される領域にパターン3を形成する工程を含み、
得られる構造体が、前記樹脂パターン2を永久膜として有し、
前記ネガ型感光性樹脂層Nは、重合性化合物として、脂肪族環式骨格
であるジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物
、アルカリ可溶性高分子、及び、光重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物からなる、
構造体の製造方法。
【請求項2】
透明基材と、前記透明基材の上に配置された遮光性パターン1と、前記透明基材及び前記遮光性パターン1の上に配置され、かつ、前記透明基材に接するネガ型感光性樹脂層Nと、を有する積層体を準備する工程、
前記透明基材の前記遮光性パターン1が設けられている面とは反対側の面から前記ネガ型感光性樹脂層Nの一部に光を照射する工程、
光を照射された前記ネガ型感光性樹脂層Nを現像することで、前記透明基材上に樹脂パターン2を形成する工程、並びに、
前記遮光性パターン1と前記樹脂パターン2とによって画定される領域にパターン3を形成する工程を含み、
得られる構造体が、前記樹脂パターン2を永久膜として有し、
前記ネガ型感光性樹脂層Nは、多官能エポキシ樹脂
、ヒドロキシ基含有化合物、及び、光カチオン重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物からなる、
構造体の製造方法。
【請求項3】
前記遮光性パターン1が、金属を含む請求項1又は請求項2に記載の構造体の製造方法。
【請求項4】
前記パターン3が、導電性を有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項5】
前記パターン3が、めっき法によって形成されてなるパターンである請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項6】
前記遮光性パターン1及び前記パターン3が、同種の材料を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項7】
前記ネガ型感光性樹脂層Nが、金属酸化抑制剤を含む請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項8】
透明基材の一方の面に遮光性層を形成する工程、
遮光性層上にフォトレジスト層を形成する工程、
前記フォトレジスト層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程、並びに、
前記遮光性層をエッチングし前記遮光性パターン1を形成する工程を更に含む請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項9】
前記遮光性パターン1の平均厚さよりも前記パターン3の平均厚さのほうが厚い請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項10】
前記透明基材が、透明フィルム基材である請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂パターン2に対し後露光及び後加熱の少なくともいずれかを行う工程を更に含む請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項12】
前記ネガ型感光性樹脂層Nが、感光性転写材料により形成されてなる層である請求項1~請求項
11のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項13】
得られる構造体が、タッチセンサー、電磁波シールド、アンテナ、配線基板、導電性加熱素子、及び、視野角制御フィルムよりなる群から選ばれる1種の構造体である請求項1~請求項
12のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造体の製造方法、及び、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属細線のような導電性パターンは、種々の用途に使用されている。導電性パターンの用途としては、例えば、タッチパネルのタッチセンサー、アンテナ、指紋認証部、フォルダブルデバイス、及び透明FPC(Flexible Printed Circuits)が挙げられる。例えば、半導体パッケージ、プリント配線基板、及びインターポーザーの再配線層の製造においては、基材上に微細な導電性パターンが形成されている。基材として、例えば、フィルム、シート、金属基板、セラミック基板、又はガラスが用いられている。
【0003】
一般的な導電性パターンの形成方法として、例えば、サブトラクティブ法、及びセミアディティブ法が知られている(例えば、特許文献1、及び特許文献2)。サブトラクティブ法では、例えば、基材上の導電性層をレジストパターンで保護した後、レジストパターンで保護されていない導電性層をエッチングにより除去することで、導電性パターンを形成することができる。一方、セミアディティブ法では、例えば、基材上にシード層といわれる無電解銅めっき層を設けた後、無電解銅めっき層上にレジストパターンを更に設ける。次に、レジストパターンが設けられていない無電解銅めっき層上に、めっきによって導電性パターンを形成した後、不要なレジストパターン、及び無電解銅めっき層(シード層)を除去する。
【0004】
特許文献1:特開2015-225650号公報
特許文献2:特開2015-065376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば導電性パターンの電気抵抗を小さくするために、厚みのある導電性パターンを形成することがある。しかしながら、サブトラクティブ法では、導電性層が配置された基材の面内方向にも等方的にエッチングが進行する現象(例えば、「サイドエッチング」と称される。)によってレジストパターンで保護された導電性層も薬液に浸食されることがある。サイドエッチングの発生は、エッチングを経て形成される導電性パターンの形態(例えば、形状、及び寸法)に影響を及ぼすため、例えば、矩形状の導電性パターンを形成することは困難になる場合がある。セミアディティブ法では、シード層とレジストパターンとの密着性に起因して導電性パターンの形成が不安定化することが課題となる。また、不要なシード層を除去する際に導電性パターンの一部が除去されることがあるため、セミアディティブ法においてもサブトラクティブ法と同様の課題がある。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、形態異常の発生(割れ、剥がれ、欠け若しくはサイドエッチングに起因したテーパー形状の発生、又は、エッチングのバラツキに起因した寸法の変動。以下同じ。)が低減されたパターンを有する構造体の製造方法を提供することである。
また、本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、形態異常の発生が低減されたパターンを有する構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 透明基材と、上記透明基材の上に配置された遮光性パターン1と、上記透明基材及び上記遮光性パターン1の上に配置され、かつ、上記透明基材に接するネガ型感光性樹脂層Nと、を有する積層体を準備する工程、上記透明基材の上記遮光性パターン1が設けられている面とは反対側の面から上記ネガ型感光性樹脂層Nの一部に光を照射する工程、光を照射された上記ネガ型感光性樹脂層Nを現像することで、上記透明基材上に樹脂パターン2を形成する工程、並びに、上記遮光性パターン1と上記樹脂パターン2とによって画定される領域にパターン3を形成する工程を含み、得られる構造体が、上記樹脂パターン2を永久膜として有する構造体の製造方法。
<2> 上記遮光性パターン1が、金属を含む<1>に記載の構造体の製造方法。
<3> 上記パターン3が、導電性を有する<1>又は<2>に記載の構造体の製造方法。
<4> 上記パターン3が、めっき法によって形成されてなるパターンである<1>~<3>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<5> 上記遮光性パターン1及び上記パターン3が、同種の材料を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<6> 上記ネガ型感光性樹脂層Nが、アルカリ可溶性高分子、エチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<7> 上記エチレン性不飽和化合物が、3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含む<6>に記載の構造体の製造方法。
<8> 上記エチレン性不飽和化合物が、ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物を含む<6>又は<7>に記載の構造体の製造方法。
<9> 上記ネガ型感光性樹脂層Nが、多官能エポキシ樹脂、ヒドロキシ基含有化合物、及び、光カチオン重合開始剤を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<10> 上記ネガ型感光性樹脂層Nが、金属酸化抑制剤を含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<11> 透明基材の一方の面に遮光性層を形成する工程、遮光性層上にフォトレジスト層を形成する工程、上記フォトレジスト層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程、並びに、上記遮光性層をエッチングし上記遮光性パターン1を形成する工程を更に含む<1>~<10>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<12> 上記遮光性パターン1の平均厚さよりも上記パターン3の平均厚さのほうが厚い<1>~<11>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<13> 上記透明基材が、透明フィルム基材である<1>~<12>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<14> 上記樹脂パターン2に対し後露光及び後加熱の少なくともいずれかを行う工程を更に含む<1>~<13>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<15> 上記ネガ型感光性樹脂層Nが、感光性転写材料により形成されてなる層である<1>~<14>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<16> 得られる構造体が、タッチセンサー、電磁波シールド、アンテナ、配線基板、導電性加熱素子、及び、視野角制御フィルムよりなる群から選ばれる1種の構造体である<1>~<15>のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
<17> 透明基材と、上記透明基材の上に配置された遮光性パターン1と、上記透明基材の上で上記遮光性パターン1に隣接して配置され、かつ、上記透明基材に接する樹脂パターン2と、上記遮光性パターン1と上記樹脂パターン2とによって画定される領域にパターン3とを有し、上記遮光性パターン1の平均厚さが、2μm以下であり、上記樹脂パターン2の平均厚さが、2μmを超え、上記遮光性パターン1の平均厚さよりも上記パターン3の平均厚さのほうが厚く、上記樹脂パターン2を永久膜として有する構造体。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、形態異常の発生が低減されたパターンを有する構造体の製造方法を提供することができる。
また、本開示の他の実施形態によれば、形態異常の発生が低減されたパターンを有する構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る構造体の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示に係る構造体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の内容について説明する。なお、添付の図面を参照しながら説明するが、符号は省略する場合がある。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表す。
更に、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線(活性エネルギー線)が挙げられる。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、「アルカリ可溶性」とは、22℃の液温において、炭酸ナトリウムの水溶液(100g、炭酸ナトリウムの濃度:1質量%)への溶解度が0.1g以上である性質を意味する。
本開示において、「導電性」とは、電流が流れやすい性質を意味する。要求される電流の流れやすさは、制限されず、目的、及び用途において必要な程度であればよい。導電性を体積抵抗率で表す場合、体積抵抗率は、1×106Ωcm未満であることが好ましく、1×104Ωcm未満であることがより好ましい。
本開示において、「光」とは、紫外線、可視光線、及び赤外線を含む電磁波を意味する。光は、波長200nm~1,500nmの範囲内の光であることが好ましく、波長250nm~450nmの範囲内の光であることがより好ましく、波長300nm~410nmの範囲内の光であることが特に好ましい。
本開示において、「固形分」とは、対象物の全成分から溶剤を除いた成分を意味する。
【0011】
(構造体の製造方法)
本開示に係る構造体の製造方法は、透明基材と、上記透明基材の上に配置された遮光性パターン1と、上記透明基材及び上記遮光性パターン1の上に配置され、かつ、上記透明基材に接するネガ型感光性樹脂層Nと、を有する積層体を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう。)、上記透明基材の上記遮光性パターン1が設けられている面とは反対側の面から上記ネガ型感光性樹脂層Nの一部に光を照射する工程(以下、「露光工程」ともいう。)、光を照射された上記ネガ型感光性樹脂層Nを現像することで、上記透明基材上に樹脂パターン2を形成する工程(以下、「現像工程」ともいう。)、並びに、上記遮光性パターン1と上記樹脂パターン2とによって画定される領域にパターン3を形成する工程(以下、「パターン3形成工程」ともいう。)を含み、得られる構造体が、上記樹脂パターン2を永久膜として有する。
【0012】
本開示に係る構造体の製造方法が上記効果を奏する理由は、以下のように推察される。
上記したように従来の構造体の製造方法(例えば、サブトラクティブ法、及びセミアディティブ法)では、パターンの形状、及び寸法の制御性が十分でない場合があることを本発明者は見出した。
一方、本開示に係る構造体の製造方法では、上記の各工程を含むことで、例えば、サイドエッチング又はシード層の除去に伴うパターンの形態異常の発生を低減することができる。
ここで、本開示に係る構造体の製造方法について
図1を参照して説明する。
図1は、本開示に係る構造体の製造方法の一例を示す概略断面図である。
図1(a)は、準備工程の一例を示す。
図1(b)は、露光工程の一例を示す。
図1(c)は、現像工程の一例を示す。
図1(d)は、パターン3形成工程の一例を示す。
図1(a)に示される積層体100は、透明基材10と、遮光性パターン20(遮光性パターン1)と、ネガ型感光性樹脂層30(ネガ型感光性樹脂層N)と、を有する。
図1(b)に示されるように、透明基材10の遮光性パターン20に対向する面とは反対側の面(すなわち、被露光面10a)に対して光を照射する。遮光性パターン20を通過する光の割合が小さいため、透明基材10の被露光面10aに入射した光は、透明基材10を経てネガ型感光性樹脂層30の露光部30aを通過する。この結果、ネガ型感光性樹脂層30の露光部30aが選択的に露光する。
図1(c)に示されるように、ネガ型感光性樹脂層30を現像することでネガ型感光性樹脂層30の露光部30a以外の部分を除去し、透明基材10と遮光性パターン20とによって画定される領域(すなわち、溝)に樹脂パターン40(樹脂パターン2)を形成する。
図1(d)に示されるように、遮光性パターン20の上にパターン50(パターン3)を形成する。
図1(d)において、パターン50は、鋳型のように機能する遮光性パターン20と樹脂パターン40とによって画定される領域(すなわち、溝)に形成される。上記のような工程を経ることで、パターン50を容易に形成することができる。
よって、本開示に係る構造体の製造方法によれば、形態異常の発生が低減されたパターン(好ましくは、導電性パターン)が形成される。
【0013】
本開示に係る構造体の製造方法においては、得られる構造体が、上記樹脂パターン2を永久膜として有する。
本開示において「永久膜」とは、上記構造体を有する物品(製品、また、上記構造体自体が物品である場合も含む。)の完成後にも残存している膜(層)である。永久膜として具体的には、例えば、絶縁膜、保護膜、スペーサー等が挙げられる。
本開示に係る構造体の製造方法により得られる構造体は、例えば、タッチセンサー、電磁波シールド、アンテナ、配線基板、導電性加熱素子、及び、視野角制御フィルムよりなる群から選ばれる1種の構造体であることが好ましい。
【0014】
<準備工程>
本開示に係る積層体の製造方法は、透明基材と、上記透明基材の上に配置された遮光性パターン1と、上記透明基材及び上記遮光性パターン1の上に配置され、かつ、上記透明基材に接するネガ型感光性樹脂層Nと、を有する積層体を準備する工程(準備工程)を含む。
本開示において、「準備」とは、対象物を使用可能な状態にすることを意味する。積層体は、事前に製造された積層体であってもよい。積層体は、準備工程において製造された積層体であってもよい。すなわち、準備工程は、積層体を製造する工程を含んでもよい。
【0015】
[透明基材]
積層体は、透明基材を有する。本開示において、「透明」とは、上記露光工程における露光波長の透過率が50%以上であることを意味する。「透明」との用語において規定される露光波長の透過率は、80%以上であることが好ましく、90%であることがより好ましく、95%であることが特に好ましい。本開示において、「露光波長の透過率」とは、露光工程において対象物(例えば、透明基材)に到達する光に含まれる波長の透過率を意味する。例えば、露光工程において波長365nmを含む光源を用いる場合、「露光波長の透過率」とは、波長365nmの透過率をいう。本開示において、「透過率」とは、測定対象物の主面に垂直な方向(すなわち、厚さ方向)に光を入射させたときの入射光の強度に対する、測定対象物を通過して出射した出射光の強度の比率である。透過率は、大塚電子(株)製のMCPD Seriesを用いて測定する。
また、透明基材は、波長400nm~700nmの光の透過率が80%以上であることが好ましい。
【0016】
透明基材の形状は、制限されない。透明基材として、例えば、フィルム状、又は板状の透明基材が好ましく使用される。中でも、透明基材は、透明フィルム基材であることが好ましい。
【0017】
透明基材としては、例えば、樹脂基板(例えば、樹脂フィルム)、及びガラス基板が挙げられる。樹脂基板は、可視光を透過する樹脂基板であることが好ましい。可視光を透過する樹脂基板の好ましい成分としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂が挙げられる。可視光を透過する樹脂基板のより好ましい成分としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、及びポリカーボネートが挙げられる。透明基材は、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、又はポリカーボネートフィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0018】
透明基材としては、例えば、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ポリテトラフルオロエチレン、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材も挙げられる。透明基材は、多孔質の透明基材であってもよい。透明基材は、充填材、及び添加剤を含んでもよい。
【0019】
透明基材の表面は、例えば、アルカリ処理、又はエネルギー線照射によって改質されてもよい。
【0020】
透明基材の構造は、単層構造、又は多層構造であってもよい。透明基材は、例えば、機能層を含んでもよい。機能層としては、例えば、接着層、ハードコート層、及び屈折率調整層が挙げられる。
【0021】
透明基材の厚さは、制限されない。透明基材の厚さは、10μm~200μmの範囲であることが好ましく、20μm~120μmの範囲であることがより好ましく、20μm~100μmであることが特に好ましい。透明基材の厚さは、以下の方法によって測定する。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、透明基材の主面に対して垂直な方向(すなわち、厚さ方向)の断面を観察する。得られた観察画像に基づいて、透明基材の厚さを10点測定する。測定値を算術平均することで、透明基材の平均厚さを求める。
【0022】
透明基材の全光線透過率は、高いことが好ましい。透明基材の全光線透過率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましい。透明基材の全光線透過率の上限は、制限されない。透明基材の全光線透過率は、100%以下の範囲で決定すればよい。全光線透過率は、JIS K 7361-1(1997)に規定される方法により測定する。
【0023】
[遮光性パターン]
積層体は、透明基材の上に遮光性パターン1を有する。例えば、
図1(b)に示されるように、積層体が遮光性パターン1を有することで、露光工程においてネガ型感光性樹脂層の一部を選択的に露光することができる。本開示において、「遮光」とは、露光波長の透過率が、50%未満であることを意味する。「遮光」との用語において規定される露光波長の透過率は、30%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましく、1%未満であることが特に好ましい。
また、遮光性パターン1は、波長400nm~700nmの光の透過率が30%未満であることが好ましい。
【0024】
遮光性パターン1は、導電性を有することが好ましい。導電性を有する遮光性パターン1は、例えば、後述するパターン3形成工程においてめっきを行う際に電気伝導体(例えば、シード層)として機能することができる。シード層は、例えば、電気めっきにおいてカソードとして機能することができる。
中でも、遮光性パターン1は、金属を含むことが好ましい。
【0025】
遮光性パターン1の成分としては、例えば、金属が挙げられる。金属としては、例えば、Nb(ニオブ)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、W(タングステン)、Cu(銅)、Sn(スズ)、及びMn(マンガン)が挙げられる。遮光性パターン1は、導電性の観点から、金属を含むことが好ましく、Nb、Al、Ni、Zn、Mo、Ta、Ti、V、Cr、Fe、Co、W、Cu、Sn及びMnよりなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことがより好ましく、Cuを含むことが特に好ましい。Cuは、電気抵抗が小さく、安価であるという観点から好ましい。遮光性パターン1は、1種単独、又は2種以上の金属を含んでもよい。遮光性パターン1に含まれる金属は、単体の金属、又は合金であってもよい。遮光性パターン1は、Cu、又はCuの合金を含むことが好ましい。遮光性パターン1が金属を含む場合、遮光性パターンに含まれる金属元素は、後述する導電性パターンに含まれる金属元素と同一であっても異なってもよい。遮光性パターン1は、導電性パターンに含まれる金属元素と同一の金属元素を含むことが好ましい。
【0026】
遮光性パターン1は、金属元素以外の元素を含んでもよい。金属元素以外の元素としては、例えば、C(炭素)、P(リン)、及びB(ホウ素)が挙げられる。金属元素以外の元素は、金属元素と合金を形成してもよい。
【0027】
遮光性パターン1の形状は、制限されない。遮光性パターン1の形状は、例えば、目的とする導電性パターンの形状に応じて決定すればよい。
【0028】
遮光性パターン1の構造は、単層構造、又は多層構造であってもよい。多層構造を有する遮光性パターン1の各層の成分は、同一であっても異なってもよい。
【0029】
遮光性パターン1の厚さは、制限されない。遮光性パターン1の平均厚さは、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。遮光性パターン1の平均厚さが3μm以下であることで、遮光性パターンの成形性を向上させることができる。この結果、導電性パターンの形態異常の発生を更に低減することができる。遮光性パターン1の平均厚さは、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることが特に好ましい。遮光性パターン1の平均厚さが0.05μm以上であることで、露光波長の透過率を下げることができる。また、遮光性パターン1をシード層として使用する場合、導電性パターンの生産性を向上させることができる。遮光性パターン1の平均厚さは、上記透明基材の平均厚さの測定方法に準ずる方法によって測定する。
【0030】
遮光性パターン1の幅は、制限されない。なお、遮光性パターン1の幅とは、透明基材の面方向において、遮光性パターン1の長手方向に対し垂直な方向における遮光性パターン1の長さである。例えば、遮光性パターン1がラインアンドスペースパターンであれば、遮光性パターン1の幅は、ラインパターンの短手方向の長さである。また、例えば、遮光性パターン1が、透明基材の面方向の断面形状が円形又は楕円形状であれば、遮光性パターン1の幅は、上記円形又は楕円形状における最小径である。
遮光性パターン1の幅は、例えば、パターン3形成工程において形成する導電性パターンの幅に応じて決定すればよい。遮光性パターン1の平均幅は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが更に好ましく、2μm以下であることが特に好ましい。遮光性パターン1の平均幅は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。遮光性パターン1の平均幅は、5箇所で測定した遮光性パターンの幅の算術平均である。
【0031】
遮光性パターン1は、透明基材に直接又は他の層を介して接してもよい。他の層としては、例えば、密着層が挙げられる。例えば、積層体は、透明基材と遮光性パターン1との間に密着層を有してもよい。密着層の成分は、制限されない。密着層の成分は、例えば、透明基材と遮光性パターン1との密着力、及び本開示に係る構造体の製造方法によって得られる導電性パターンの使用環境(例えば、湿度、及び温度)における安定性に応じて決定すればよい。密着層は、Ni、Zn、Mo、Ta、Ti、V、Cr、Fe、Co、W、Cu、Sn、及びMnから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。密着層は、C(炭素原子)、O(酸素原子)、H(水素原子)、及びN(窒素原子)よりなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。密着層は、黒化層であってもよい。黒化層は、露光工程において遮光性パターンによる光の反射を抑制することができる。密着層を黒化層として機能させる場合、密着層は、例えば、Ni-Cu合金を含むことが好ましい。黒化層として機能する密着層は、C、O、H、及びNよりなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。密着層の厚さは、制限されない。密着層の平均厚さは、3nm~50nmであることが好ましく、3nm~35nmであることがより好ましく、3nm~33nmであることが特に好ましい。
【0032】
[ネガ型感光性樹脂層N]
積層体は、透明基材及び遮光性パターン1の上に配置され、かつ、上記透明基材に接するネガ型感光性樹脂層Nを有する。ネガ型感光性樹脂層Nは、遮光性パターン1に直接又は他の層を介して接してもよい。ネガ型感光性樹脂層Nは、遮光性パターン1に接していることが好ましい。ネガ型感光性樹脂層Nとしては、公知のネガ型感光性樹脂層を利用することができる。
【0033】
ある実施形態において、ネガ型感光性樹脂層Nは、後述する重合体Aと、後述する重合性化合物Bと、光重合開始剤と、を含むことが好ましい。ネガ型感光性樹脂層Nは、上記ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、10質量%~90質量%の重合体A、5質量%~70質量%の重合性化合物B、及び0.01質量%~20質量%の光重合開始剤を含むことが好ましい。ある実施形態において、ネガ型感光性樹脂層Nは、アルカリ可溶性高分子と、エチレン性不飽和化合物と、光重合開始剤と、を含むことが好ましい。
【0034】
また、ネガ型感光性樹脂層Nは、硬化性及び現像性の観点から、アルカリ可溶性高分子、エチレン性不飽和化合物、及び、光酸発生剤を含むことが好ましい。
更に、ネガ型感光性樹脂層Nは、得られる樹脂パターン2の永久膜としての強度及び耐久性の観点から、多官能エポキシ樹脂、ヒドロキシ基含有化合物、及び、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
以下、ネガ型感光性樹脂層Nについて具体的に説明する。
【0035】
-アルカリ可溶性高分子-
ネガ型感光性樹脂層Nは、アルカリ可溶性高分子を含むことが好ましい。
なお、本開示において、「アルカリ可溶性」とは、22℃において炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
アルカリ可溶性高分子は、例えば、現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上であることが好ましい。
また、アルカリ可溶性高分子は、例えば、加熱により架橋成分と熱架橋し、強固な膜を形成しやすいという観点から、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有樹脂)であることが更に好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有するアクリル樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有アクリル樹脂)であることが特に好ましい。
なお、本開示において、アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル化合物由来の構成単位を有する樹脂を指し、上記構成単位の含有量が、樹脂の全質量に対し、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
アルカリ可溶性高分子がカルボキシ基を有する樹脂であると、例えば、ブロックイソシアネート化合物等の熱架橋性化合物を添加して熱架橋することで、3次元架橋密度を高めることができる。また、カルボキシ基を有する樹脂のカルボキシ基が無水化され、疎水化すると、湿熱耐性が改善し得る。
【0036】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて、特に制限はなく、公知のアクリル樹脂から適宜選択して用いることができる。
例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂等を好ましく用いることができる。
【0037】
アルカリ可溶性高分子は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の透湿度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アクリル樹脂、又は、スチレン-アクリル共重合体であることが好ましく、スチレン-アクリル共重合体であることがより好ましい。
なお、本開示において、スチレン-アクリル共重合体とは、スチレン化合物由来の構成単位と、(メタ)アクリル化合物由来の構成単位とを有する樹脂を指し、上記スチレン化合物由来の構成単位、上記(メタ)アクリル化合物由来の構成単位の合計含有量が、上記共重合体の全質量に対し、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
また、スチレン化合物由来の構成単位の含有量は、上記共重合体の全質量に対し、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
また、上記(メタ)アクリル化合物由来の構成単位の含有量は、上記共重合体の全質量に対し、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。
更に、上記(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリレート化合物、及び、(メタ)アクリル酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0038】
<<重合体A>>
ネガ型感光性樹脂層Nは、重合体Aを含むことが好ましい。重合体Aは、アルカリ可溶性高分子であることが好ましい。アルカリ可溶性高分子は、アルカリ物質に溶け易い高分子を包含する。なお、本開示において、「アルカリ可溶性」とは、22℃において炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0039】
重合体Aの酸価は、現像液によるネガ型感光性樹脂層Nの膨潤を抑制することで解像性がより優れる観点から、220mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g未満であることがより好ましく、190mgKOH/g未満であることが特に好ましい。酸価の下限は、制限されない。重合体Aの酸価は、現像性がより優れる観点から、60mgKOH/g以上であることが好ましく、120mgKOH/g以上であることがより好ましく、150mgKOH/g以上であることが更に好ましく、170mgKOH/g以上であることが特に好ましい。重合体Aの酸価は、例えば、重合体Aを構成する構成単位の種類、及び酸基を含有する構成単位の含有量によって調整することができる。
【0040】
本開示において、酸価は、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)である。本開示においては、酸価の単位をmgKOH/gと記載する。酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。
【0041】
重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、5,000~500,000であることが好ましい。重量平均分子量を500,000以下にすることは、解像性、及び現像性を向上させる観点から好ましい。重合体Aの重量平均分子量は、100,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることが更に好ましく、50,000以下であることが特に好ましい。一方、重量平均分子量を5,000以上にすることは、現像凝集物の性状を制御する観点から好ましい。重合体Aの重量平均分子量は、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることが更に好ましく、30,000以上であることが特に好ましい。
【0042】
重合体Aの分散度は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~4.0であることが更に好ましく、1.0~3.0であることが特に好ましい。本開示において、分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)である。
【0043】
重合体Aは、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び解像度の悪化を抑制する観点から、芳香族炭化水素基を有する構成単位を有することが好ましく、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有することがより好ましい。
【0044】
芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基、及び置換又は非置換のアラルキル基が挙げられる。
【0045】
重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、45質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有割合の上限は、制限されない。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。なお、ネガ型感光性樹脂層が複数種の重合体Aを含む場合、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有割合は、重量平均値として求める。
【0046】
芳香族炭化水素基を有する単量体としては、例えば、アラルキル基を有する単量体、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、及びスチレントリマー)が挙げられる。芳香族炭化水素基を有する単量体は、アラルキル基を有する単量体、又はスチレンであることが好ましい。
【0047】
アラルキル基としては、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ベンジル基を除く)、及び置換又は非置換のベンジル基が挙げられ、置換又は非置換のベンジル基が好ましい。
【0048】
フェニルアルキル基を有する単量体としては、例えば、フェニルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
ベンジル基を有する単量体としては、ベンジル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、及びクロロベンジル(メタ)アクリレート)、ベンジル基を有するビニルモノマー(例えば、ビニルベンジルクロライド、及びビニルベンジルアルコール)が挙げられる。ベンジル基を有する単量体は、ベンジル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0050】
ある実施形態において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位がベンジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位である場合、重合体Aにおけるベンジル(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、50質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることが更に好ましく、75質量%~90質量%であることが特に好ましい。
【0051】
ある実施形態において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位がスチレンに由来する構成単位である場合、重合体Aにおけるスチレンに由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、20質量%~55質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましく、30質量%~40質量%であることが更に好ましく、30質量%~35質量%であることが特に好ましい。
【0052】
ある実施形態において、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有する重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体と、後述する第一の単量体、及び後述する第二の単量体よりなる群から選択される少なくとも1種と、を重合することで得られる共重合体であることが好ましい。上記共重合体は、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位と、第一の単量体に由来する構成単位、及び第二の単量体に由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種と、を有する。
【0053】
重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有しない重合体であってもよい。芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有しない重合体Aは、後述する第一の単量体(芳香族炭化水素基を有する単量体を除く。)の少なくとも1種を重合することで得られる重合体であることが好ましく、後述する第一の単量体(芳香族炭化水素基を有する単量体を除く。)の少なくとも1種と、後述する第二の単量体(芳香族炭化水素基を有する単量体を除く。)の少なくとも1種と、を重合することにより得られる共重合体であることがより好ましい。
【0054】
ある実施形態において、重合体Aは、後述する第一の単量体の少なくとも1種を重合することで得られる重合体であることが好ましく、後述する第一の単量体の少なくとも1種と、後述する第二の単量体の少なくとも1種と、を重合することにより得られる共重合体であることがより好ましい。上記共重合体は、第一の単量体に由来する構成単位と、第二の単量体に由来する構成単位と、を有する。
【0055】
第一の単量体は、分子中にカルボキシ基と重合性不飽和基とを有する単量体である。第一の単量体は、分子中に芳香族炭化水素基を有しない単量体であってもよい。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステルが挙げられる。第一の単量体は、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
【0056】
重合体Aにおける第一の単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、15質量%~30質量%であることが特に好ましい。
【0057】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ、分子中に少なくとも1つの重合性不飽和基を有する単量体である。第二の単量体は、分子中に芳香族炭化水素基を有しない単量体であってもよい。第二の単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物、ビニルアルコールのエステル化合物、及び(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。本開示において、「(メタ)アクリロニトリル」は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又はアクリロニトリル及びメタクリロニトリルの両方を包含する。
【0058】
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物としては、脂環式アルキル基、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基を有するものが挙げられる。
【0059】
ビニルアルコールのエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。
【0060】
第二の単量体は、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びn-ブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0061】
重合体Aにおける第二の単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~60質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~45質量%であることが特に好ましい。
【0062】
重合体Aは、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び解像度の悪化を抑制する観点から、アラルキル基を有する単量体に由来する構成単位、及びスチレンに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。例えば、重合体Aは、メタクリル酸に由来する構成単位と、ベンジルメタクリレートに由来する構成単位と、スチレンに由来する構成単位と、を含む共重合体、及びメタクリル酸に由来する構成単位と、メチルメタクリレートに由来する構成単位と、ベンジルメタクリレートに由来する構成単位と、スチレンに由来する構成単位と、を含む共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0063】
ある実施形態において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を25質量%~60質量%、第一の単量体に由来する構成単位を20質量%~55質量%、及び第二の単量体に由来する構成単位を20質量%~55質量%含む重合体であることが好ましい。重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を25質量%~40質量%、第一の単量体に由来する構成単位を20質量%~35質量%、及び第二の単量体に由来する構成単位を30質量%~45質量%含む重合体であることがより好ましい。
【0064】
ある実施形態において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を70質量%~90質量%、及び第一の単量体に由来する構成単位を10質量%~25質量%含む重合体であることが好ましい。
【0065】
重合体Aのガラス転移温度(Tg)は、30℃~135℃であることが好ましい。ネガ型感光性樹脂層において、重合体AのTgが135℃以下であることで、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び解像度の悪化を抑制することができる。上記の観点から、重合体AのTgは、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが更に好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。また、重合体AのTgが30℃以上であることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。上記の観点から、重合体AのTgは、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、60℃以上であることが特に好ましく、70℃以上であることが最も好ましい。
【0066】
重合体Aは、市販品、又は合成品であってもよい。重合体Aの合成は、例えば、上記した少なくとも1種の単量体を溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はイソプロパノール)で希釈した溶液に、ラジカル重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、又はアゾイソブチロニトリル)を適量添加し、次いで、加熱撹拌することによって行われることが好ましい。また、混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、更に溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0067】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は2種以上のアルカリ可溶性高分子を含んでもよい。
【0068】
アルカリ可溶性高分子の含有割合は、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましく、40質量%~60質量%であることが特に好ましい。ネガ型感光性樹脂層Nに対するアルカリ可溶性高分子の含有割合を90質量%以下にすることは、現像時間を制御する観点から好ましい。一方で、ネガ型感光性樹脂層Nに対するアルカリ可溶性高分子の含有割合を10質量%以上にすることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。
【0069】
ネガ型感光性樹脂層Nが2種以上のアルカリ可溶性高分子を含む場合、ネガ型感光性樹脂層Nは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有する2種以上のアルカリ可溶性高分子を含むこと、又は芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有するアルカリ可溶性高分子と、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有しないアルカリ可溶性高分子と、を含むことが好ましい。後者の場合、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有するアルカリ可溶性高分子の含有割合は、アルカリ可溶性高分子の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0070】
-重合性化合物-
ネガ型感光性樹脂層Nは、重合性化合物を含むことが好ましい。
本開示において、「重合性化合物」とは、重合反応に関与する結合、又は重合性基を有し、後述する重合開始剤の作用を受けて重合する化合物を意味する。
また、本開示における重合性化合物は、上記アルカリ可溶性高分子とは異なる化合物であり、分子量5,000未満であることが好ましい。
重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物が好ましい。
上記エチレン性不飽和化合物として、得られる硬化膜の強度、基板密着性、現像残渣抑制性、及び、防錆性の観点から、酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むことが好ましく、後述する式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むことがより好ましい。
【0071】
上記エチレン性不飽和化合物は、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、下記式(M)で表される化合物(単に、「化合物M」ともいう。)を含むことが好ましい。
Q2-R1-Q1 式(M)
式(M)中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、R1は鎖状構造を有する二価の連結基を表す。
【0072】
式(M)におけるQ1及びQ2は、合成容易性の観点から、Q1及びQ2は同じ基であることが好ましい。
また、式(M)におけるQ1及びQ2は、反応性の観点から、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
式(M)におけるR1は、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、アルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基(-L1-O-L1-)、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基(-(L1-O)p-L1-)であることが好ましく、炭素数2~20の炭化水素基、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~20のアルキレン基であることが更に好ましく、炭素数6~18の直鎖アルキレン基であることが特に好ましい。上記炭化水素基は、少なくとも一部に鎖状構造を有していればよく、上記鎖状構造以外の部分としては、特に制限はなく、例えば、分岐鎖状、環状又は炭素数1~5の直鎖状アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、及び、それらの組み合わせのいずれであってもよく、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、アルキレン基、又は、2以上のアルキレン基と1以上のアリーレン基とを組み合わせた基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましく、直鎖アルキレン基であることが特に好ましい。
なお、上記L1はそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、エチレン基、プロピレン基、又は、ブチレン基であることが好ましく、エチレン基、又は、1,2-プロピレン基であることがより好ましい。pは2以上の整数を表し、2~10の整数であることが好ましい。
【0073】
また、化合物MにおけるQ1とQ2との間を連結する最短の連結鎖の原子数は、得られる硬化膜の透湿度及び曲げ耐性の観点から、3個~50個であることが好ましく、4個~40個であることがより好ましく、6個~20個であることが更に好ましく、8個~12個であることが特に好ましい。
本開示において、「Q1とQ2の間を連結する最短の連結鎖の原子数」とは、Q1に連結するR1における原子からQ2に連結するR1における原子までを連結する最短の原子数である。
【0074】
化合物Mの具体例としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。上記エステルモノマーは混合物としても使用できる。
上記化合物の中でも、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが特に好ましい。
【0075】
化合物Mは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
化合物Mの含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び曲げ耐性の観点から、ネガ型感光性樹脂層Nのエチレン性不飽和化合物の全質量に対し、10質量%~90質量%であることが好ましく、15質量%~70質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが更に好ましく、25質量%~35質量%であることが特に好ましい。
なお、本開示におけるエチレン性不飽和化合物とは、(重量平均)分子量が10,000以下の、エチレン性不飽和基を有する化合物をいう。
また、化合物Mの含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び曲げ耐性の観点から、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対し、1質量%~30質量%であることが好ましく、3質量%~25質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることが更に好ましく、6質量%~14.5質量%であることが特に好ましい。
【0076】
また、エチレン性不飽和化合物としては、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
本開示において、「2官能以上のエチレン性不飽和化合物」とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0077】
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、硬化後における硬化膜の強度の観点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含むことが特に好ましい。
【0078】
<<重合性化合物B>>
ネガ型感光性樹脂層Nは、重合性化合物Bを含むことが好ましい。なお、重合性化合物Bは、上記重合体Aとは異なる化合物である。
重合性化合物Bにおける重合反応に関与する結合としては、例えば、エチレン性不飽和結合が好ましく挙げられる。
【0079】
重合性化合物Bにおける重合性基は、重合反応に関与する基であれば制限されない。重合性化合物Bにおける重合性基としては、例えば、エチレン性不飽和結合を含む基(例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、及びマレイミド基)、及びカチオン性重合性基(例えば、エポキシ基、及びオキセタン基)が挙げられる。重合性基は、エチレン性不飽和結合を含む基(以下、「エチレン性不飽和基」という場合がある。)であることが好ましく、アクリロイル基、又はメタアクリロイル基であることがより好ましい。
【0080】
重合性化合物Bは、ネガ型感光性樹脂層Nの感光性がより優れる点で、エチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましく、一分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、エチレン性不飽和化合物)であることがより好ましく、一分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、多官能エチレン性不飽和化合物)であることが特に好ましい。また、解像性、及び剥離性により優れる点で、一分子のエチレン性不飽和化合物に含まれるエチレン性不飽和基の数は、6つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましく、2つ以下であることが特に好ましい。
また、重合性化合物Bは、硬化性、並びに、得られる樹脂パターン2の永久膜としての強度及び耐久性の観点から、3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、5官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。
【0081】
エチレン性不飽和化合物は、一分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0082】
重合性化合物Bは、ネガ型感光性樹脂層Nにおける感光性、解像性、及び剥離性のバランスがより優れる観点から、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、2官能エチレン性不飽和化合物)、及び一分子中に3つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、3官能エチレン性不飽和化合物)よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含むことがより好ましい。
【0083】
また、重合性化合物Bは、硬化後の強度及び寸法安定性の観点から、脂肪族環式骨格を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、脂肪族環式骨格を有するジ(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましく、ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
更に、重合性化合物Bは、硬化後の強度及び寸法安定性の観点から、ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
【0084】
ネガ型感光性樹脂層Nにおいて、重合性化合物Bの含有量に対する2官能エチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、ネガ型感光性樹脂層Nの剥離性が優れる観点から、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%超であることが特に好ましい。重合性化合物Bの含有量に対する2官能エチレン性不飽和化合物の含有割合の上限は、制限されず、100質量%であってもよい。すなわち、ネガ型感光性樹脂層Nに含まれる重合性化合物Bが全て2官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
【0085】
-重合性化合物B1-
本開示に係るネガ型感光性樹脂層Nは、一分子中に、1つ以上の芳香環、及び2つのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物B1を含むことが好ましい。重合性化合物B1は、上記した重合性化合物Bのうち、一分子中に1つ以上の芳香環を有する2官能エチレン性不飽和化合物である。
【0086】
ネガ型感光性樹脂層において、重合性化合物Bの含有量に対する重合性化合物B1の含有量の割合は、解像性がより優れる観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。重合性化合物Bの含有量に対する重合性化合物B1の含有量の割合の上限は、制限されない。重合性化合物Bの含有量に対する重合性化合物B1の含有量の割合は、剥離性の点から、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、85質量%以下であることが特に好ましい。
【0087】
重合性化合物B1における芳香環としては、例えば、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、及びアントラセン環)、芳香族複素環(例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、及びピリジン環)、及びこれらの縮合環が挙げられる。芳香環は、芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。なお、芳香環は、置換基を有してもよい。
【0088】
重合性化合物B1は、現像液によるネガ型感光性樹脂層Nの膨潤を抑制することにより、解像性が向上する点から、ビスフェノール構造を有することが好ましい。ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA(すなわち、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA構造、ビスフェノールF(すなわち、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF構造、及びビスフェノールB(すなわち、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB構造が挙げられる。ビスフェノール構造は、ビスフェノールA構造であることが好ましい。
【0089】
ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1としては、例えば、ビスフェノール構造と、上記ビスフェノール構造の両端に結合した2つの重合性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)と、を有する化合物が挙げられる。各重合性基は、ビスフェノール構造に直接結合してもよい。各重合性基は、1つ以上のアルキレンオキシ基を介してビスフェノール構造に結合してもよい。ビスフェノール構造の両端に付加するアルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基、又はプロピレンオキシ基であることが好ましく、エチレンオキシ基であることがより好ましい。ビスフェノール構造に付加するアルキレンオキシ基の付加数は、制限されないが、一分子あたり4個~16個であることが好ましく、6個~14個であることがより好ましい。
【0090】
ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1については、特開2016-224162号公報の段落0072~段落0080に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
重合性化合物B1は、ビスフェノールA構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物であることが好ましく、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンであることがより好ましい。
【0092】
2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(FA-324M、日立化成(株))、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-500、新中村化学工業(株))、2,2-ビス(4-(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(FA-3200MY、日立化成(株))、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-1300、新中村化学工業(株))、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業(株))、及びエトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-10、新中村化学工業(株))が挙げられる。
【0093】
重合性化合物B1としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物も挙げられる。
【0094】
【0095】
一般式(I)中、R1、及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を表し、Aは、C2H4を表し、Bは、C3H6を表し、n1、及びn3は、それぞれ独立して、1~39の整数であり、n1+n3は、2~40の整数であり、n2、及びn4は、それぞれ独立して、0~29の整数であり、n2+n4は、0~30の整数であり、-(A-O)-、及び-(B-O)-の繰り返し単位の配列は、ランダム、又はブロックであってもよい。ブロックの場合、-(A-O)-、及び-(B-O)-のいずれかがビスフェニル基側でもよい。n2+n4は、0~10の整数であることが好ましく、0~4の整数であることがより好ましく、0~2の整数であることが更に好ましく、0であることが特に好ましい。n1+n2+n3+n4は、2~20の整数であることが好ましく、2~16の整数であることがより好ましく、4~12の整数であることが特に好ましい。
【0096】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は2種以上の重合性化合物B1を含んでもよい。
【0097】
ネガ型感光性樹脂層Nにおける重合性化合物B1の含有割合は、解像性がより優れる観点から、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。重合性化合物B1の含有割合の上限は、制限されない。ネガ型感光性樹脂層Nにおける重合性化合物B1の含有割合は、転写性、及び耐エッジフューズ性の観点から、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0098】
ネガ型感光性樹脂層Nは、重合性化合物B1、及び重合性化合物B1以外の重合性化合物Bを含んでもよい。重合性化合物B1以外の重合性化合物Bとしては、例えば、単官能エチレン性不飽和化合物(すなわち、一分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する化合物)、芳香環を有しない2官能エチレン性不飽和化合物(すなわち、一分子中に芳香環を有しておらず、かつ、2つのエチレン性不飽和基を有する化合物)、及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物(すなわち、一分子中に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物)が挙げられる。
【0099】
単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0100】
芳香環を有しない2官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。
【0101】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業(株))、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業(株))、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業(株))、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業(株))、エチレングリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0102】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0103】
ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。市販品としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株))、UA-32P(新中村化学工業(株))、及びUA-1100H(新中村化学工業(株))が挙げられる。
【0104】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びこれらのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。本開示において、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念である。本開示において、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0105】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(例えば、日本化薬(株)製のKAYARAD(登録商標)DPCA-20、及び新中村化学工業(株)製のA-9300-1CL)、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(例えば、日本化薬(株)製のKAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製のATM-35E、新中村化学工業(株)製のA-9300、及びダイセル・オルネクス社製のEBECRYL(登録商標) 135)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(例えば、新中村化学工業(株)製のA-GLY-9E)、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株))、アロニックスM-520(東亞合成(株))、及びアロニックスM-510(東亞合成(株))が挙げられる。
【0106】
重合性化合物B1以外の重合性化合物Bとしては、特開2004-239942号公報の段落0025~段落0030に記載の酸基を有する重合性化合物も挙げられる。
【0107】
ある実施形態において、ネガ型感光性樹脂層Nは、重合性化合物B1、及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、重合性化合物B1、及び2種以上の3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。上記実施形態において、重合性化合物B1と3官能以上のエチレン性不飽和化合物との質量比([重合性化合物B1の合計質量]:[3官能以上のエチレン性不飽和化合物の合計質量]は、1:1~5:1であることが好ましく、1.2:1~4:1であることがより好ましく、1.5:1~3:1であることが特に好ましい。
【0108】
重合性化合物Bの重量平均分子量(Mw)は、200~3,000であることが好ましく、280~2,200であることがより好ましく、300~2,200であることが特に好ましい。
【0109】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は2種以上の重合性化合物Bを含んでもよい。
【0110】
ネガ型感光性樹脂層Nにおける重合性化合物Bの含有割合は、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、10質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが特に好ましい。
【0111】
-多官能エポキシ樹脂-
ネガ型感光性樹脂層Nは、得られるパターン2の永久膜としての強度及び耐久性の観点から、多官能エポキシ樹脂を含むことが好ましく、多官能エポキシ樹脂、ヒドロキシ基含有化合物、及び、光カチオン重合開始剤を含むことがより好ましい。
多官能エポキシ樹脂としては、例えば、1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物、β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも1分子中に2つ含むエポキシ化合物などが挙げられる。
【0112】
上記1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポトートYDF-170、東都化成(株)製)、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂(「YX4000、ジャパンエポキシレジン社製」等)又はこれらの混合物、イソシアヌレート骨格等を有する複素環式エポキシ樹脂(「TEPIC、日産化学工業(株)製」、「アラルダイトPT810、ハンツマンアドバンストマテリアルズ社製」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾ-ルノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂(例えば低臭素化エポキシ樹脂、高ハロゲン化エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂など)、アリル基含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジフェニルジメタノール型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(「HP-7200、HP-7200H;DIC(株)製」等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノール等)、グリジジルエステル型エポキシ樹脂(フタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等)ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジエポキシド、「GT-300、GT-400、ZEHPE3150;(株)ダイセル製」等、)、イミド型脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、グリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂(ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、市販品としては「ESN-190,ESN-360;新日鉄化学(株)製」、「HP-4032,EXA-4750,EXA-4700;DIC(株)製」等)、フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応によって得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物、4-ビニルシクロヘキセン-1-オキサイドの開環重合物を過酢酸等でエポキシ化したもの、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、8官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(例、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製 EPON SU-8)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアルコール性ヒドロキシ基とエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂(例、日本化薬(株)製 NER-7604)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアルコール性ヒドロキシ基とエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂(例、日本化薬(株)製 NER-1302)、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例、日本化薬(株)製 EOCN4400)、ジ(メトキシメチルフェニル)とフェノールとを反応させて得られる樹脂のフェノール性ヒドロキシ基とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるビフェニルフェノールノボラック型エポキシ樹脂(例、日本化薬(株)製 NC-3000H)、環状含リン構造を有するエポキシ樹脂、α-メチルスチルベン型液晶エポキシ樹脂、ジベンゾイルオキシベンゼン型液晶エポキシ樹脂、アゾフェニル型液晶エポキシ樹脂、アゾメチンフェニル型液晶エポキシ樹脂、ビナフチル型液晶エポキシ樹脂、アジン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂(「CP-50S,CP-50M;日本油脂(株)製」等)、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン型エポキシ樹脂、ビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
また、1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有する上記エポキシ化合物以外に、β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも1分子中に2つ含むエポキシ化合物を用いることができ、β位がアルキル基で置換されたエポキシ基(より具体的には、β-アルキル置換グリシジル基など)を含む化合物が特に好ましい。
上記β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも含むエポキシ化合物は、1分子中に含まれる2個以上のエポキシ基のすべてがβ-アルキル置換グリシジル基であってもよく、少なくとも1個のエポキシ基がβ-アルキル置換グリシジル基であってもよい。
【0114】
上記オキセタン化合物としては、例えば、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物が挙げられる。
具体的には、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート又はこれらのオリゴマーあるいは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタン基を有する化合物と、ノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、シルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂など、とのエーテル化合物が挙げられ、この他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0115】
エポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基が二つ以上あるエポキシ樹脂であれば、いずれのエポキシ樹脂も用いることができるが、エポキシ樹脂のエポキシ当量は十分な硬化速度が得られるように100g/当量~500g/当量であることが好ましく、100g/当量~300g/当量であることがより好ましい。なお、ここで言うエポキシ当量とはJIS K-7236に準拠した方法で測定した値を意味する。
また、エポキシ樹脂の種類としてはグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂環型等を用いることができるが、液保存安定性が良いことからグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型が好ましく、グリシジルエーテル型が最も好ましい。
また、現像性の点から、エポキシ樹脂は、常温(25℃)で液状であることが好ましく、25℃における粘度が5,000mPa・s以下であることがより好ましく、1,000mPa・s以下であることがより好ましい。これらはエポキシ樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
上記のようなエポキシ樹脂の具体例として、グリシジルエーテル型としてのソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられ、また、グリシジルエステル型としてのフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル及びヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルが挙げられる。
【0116】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は、2種以上の多官能エポキシ樹脂を含んでもよい。
ネガ型感光性樹脂層Nにおける多官能エポキシ樹脂の含有割合は、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~70質量%であることがより好ましい。
【0117】
-ヒドロキシ基含有化合物-
ネガ型感光性樹脂層Nは、得られるパターン2の永久膜としての強度及び耐久性の観点から、ヒドロキシ基含有化合物を含むことが好ましい。
ヒドロキシ基含有化合物は、ポリオール化合物やフェノール系化合物を適宜用いることができる。
ポリオール化合物は、酸触媒の影響の下でエポキシ樹脂中のエポキシ基と反応するヒドロキシ基を含み、反応性希釈剤として働く。特にポリカプロラクトンポリオールを含むことが好ましい。ポリカプロラクトンポリオールを含むことにより、樹脂組成物を塗布後、必要により溶剤分を乾燥させて得られる乾燥塗膜が軟化するため、積層体の製造時での応力誘発を回避し、収縮を低減させ、永久膜である樹脂パターン2の亀裂を防止することができる。
【0118】
ポリオール化合物としては、市販のポリエステルポリオールを用いることができる。具体例としては、分子量530でOH価(「水酸基価」ともいう。)が210mgKOH/gである「プラクセル205」、分子量が1,000でOH価が110mgKOH/gである「プラクセル210」、分子量2,000でOH価が56mgKOH/gである「プラクセル220」(いずれも商品名、(株)ダイセル製)や、分子量550でOH価が204mgKOH/gである「Capa2054」、分子量1,000でOH価が112mgKOH/gである「Capa2100」、分子量2,000でOH価が56mgKOH/gである「Capa2200」(いずれも商品名、パーストープ社製)が挙げられる。
また、フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、多官能ビスフェノールAノボラック樹脂、ビフェニルフェノールノボラック樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂、テルペンジフェノール骨格を有するフェノール樹脂、ビスフェノールAやビスフェノールF等の各種フェノールを原料とするフェノール樹脂などが挙げられる。
ヒドロキシ基含有化合物の好ましい水酸基含有化合物の水酸基価は、好ましくは、90mgKOH/g~300mgKOH/gであり、より好ましくは100mgKOH/g~250mgKOH/gである。このヒドロキシ基含有化合物は単独若しくは2種以上を併用しても差し支えない。
【0119】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は、2種以上のヒドロキシ基含有化合物を含んでもよい。
ネガ型感光性樹脂層Nにおけるヒドロキシ基含有化合物の含有割合は、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、1質量%~35質量%であることが好ましく、5質量%~25質%であることがより好ましい。
【0120】
-光重合開始剤-
ネガ型感光性樹脂層Nは、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、活性光線(例えば、紫外線、可視光線、及びX線)を受けて、重合性化合物(例えば、重合性化合物B)の重合を開始する化合物である。
また、
【0121】
光重合開始剤としては、制限されず、公知の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、及び光カチオン重合開始剤が挙げられ、硬化性の観点からは、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
また、ネガ型感光性樹脂層Nは、得られる樹脂パターン2の永久膜としての強度及び耐久性の観点からは、光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
【0122】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤、及びN-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤が挙げられる。
【0123】
ネガ型感光性樹脂層Nは、感光性、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、光ラジカル重合開始剤として、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、及び2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、及びその誘導体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾール構造は、同一であっても異なっていてもよい。
【0124】
2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
【0125】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~段落0042、及び特開2015-14783号公報の段落0064~段落0081に記載された重合開始剤も挙げられる。
【0126】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル(DBE、CAS No.10287-53-3)、ベンゾインメチルエーテル、アニシル(p,p’-ジメトキシベンジル)、及びベンゾフェノンが挙げられる。
【0127】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、TAZ-110(みどり化学(株))、TAZ-111(みどり化学(株))、1-[4-(フェニルチオ)]フェニル-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社)、IRGACURE OXE-03(BASF社)、IRGACURE OXE-04(BASF社)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.社)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.社)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.社)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.社)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.社)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.社)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.社)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.社)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad 819、IGM Resins B.V.社)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株))、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(別称:2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、商品名:B-CIM、Hampford社)、及び2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業(株))が挙げられる。
【0128】
中でも、光ラジカル重合開始剤としては、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、及び2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0129】
光カチオン重合開始剤(すなわち、光酸発生剤)は、紫外線、遠紫外線、KrFやArFなどのエキシマレーザー、X線、電子線などの放射線の照射を受けてカチオンを発生し、そのカチオンが重合開始剤となりうる化合物である。
光カチオン重合開始剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましい。ただし、光カチオン重合開始剤の化学構造は、制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光カチオン重合開始剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
【0130】
光カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム錯塩や芳香族スルホニウム錯塩を挙げることができる。
芳香族ヨードニウム錯塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア社製、商品名 ロードシルPI2074)、ジ(4-ターシャリブチル)ヨードニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド(BASF社製、商品名 CGI BBI-C1)等が挙げられる。又、芳香族スルホニウム錯塩の具体例としては、4-チオフェニルジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ社製、商品名 CPI-101A)、チオフェニルジフェニルスルフォニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、商品名 CPI-210S)、4-{4-(2-クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製、商品名 SP-172)、4-チオフェニルジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートを含有する芳香族スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物(ACETO Corporate USA製、商品名 CPI-6976)及びトリフェニルスルホニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド(BASF社製、商品名 CGI TPS-C1)、トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(BASF社製、商品名 GSID 26-1)、トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレート(BASF社製、商品名 イルガキュアPAG290)等が好適に用いられる。
【0131】
以上の光カチオン重合開始剤のうち、垂直矩形加工性、及び、熱安定性の観点から、芳香族スルホニウム錯塩が好ましく、4-{4-(2-クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-チオフェニルジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートを含有する芳香族スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物、又は、トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
【0132】
また、光カチオン重合開始剤は、pKaが4以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることが好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることがより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることが特に好ましい。pKaの下限は、制限されない。光カチオン重合開始剤から生じる酸のpKaは、例えば、-10.0以上であることが好ましい。
【0133】
光カチオン重合開始剤としては、イオン性光カチオン重合開始剤、及び非イオン性光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0134】
イオン性光カチオン重合開始剤として、例えば、オニウム塩化合物(例えば、ジアリールヨードニウム塩化合物、及びトリアリールスルホニウム塩化合物)、及び第4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
【0135】
イオン性光カチオン重合開始剤としては、特開2014-85643号公報の段落0114~段落0133に記載のイオン性光カチオン重合開始剤も挙げられる。
【0136】
非イオン性光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及びオキシムスルホネート化合物が挙げられる。トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、ジアゾメタン化合物、及びイミドスルホネート化合物としては、例えば、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載の化合物があげられる。また、オキシムスルホネート化合物としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0084~段落0088に記載された化合物が挙げられる。
【0137】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は2種以上の光重合開始剤を含んでもよい。
【0138】
ネガ型感光性樹脂層Nにおける光重合開始剤の含有割合は、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。光重合開始剤の含有割合の上限は、制限されない。光重合開始剤の含有割合は、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0139】
-金属酸化抑制剤-
ネガ型感光性樹脂層Nは、金属酸化抑制剤を含むことが好ましい。
金属酸化抑制剤としては、分子内に窒素原子を含む芳香環を有する化合物であることが好ましい。
また、金属酸化抑制剤としては、上記窒素原子を含む芳香環が、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアジアゾール環、及び、それらと他の芳香環との縮合環よりなる群から選ばれた少なくとも一つの環であることが好ましく、上記窒素原子を含む芳香環が、イミダゾール環、又は、イミダゾール環と他の芳香環との縮合環であることがより好ましい。
上記他の芳香環としては、単素環でも複素環でもよいが、単素環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましく、ベンゼン環であることが更に好ましい。
好ましい金属酸化抑制剤としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、テトラゾール、メルカプトチアジアゾール、及び、ベンゾトリアゾールが好ましく例示され、イミダゾール、ベンズイミダゾール、及び、ベンゾトリアゾールがより好ましい。金属酸化抑制剤としては市販品を用いてもよく、例えば、ベンゾトリアゾールを含む城北化学工業(株)、BT120などを好ましく用いることができる。
【0140】
また、金属酸化抑制剤としては、ベンゾトリアゾール化合物、又は、カルボキシベンゾトリアゾール化合物が好ましく挙げられる。
ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、及び、ビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾールが挙げられる。
カルボキシベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及び、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾールが挙げられる。カルボキシベンゾトリアゾール化合物の市販品としては、例えば、CBT-1(城北化学工業(株))が挙げられる。
【0141】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は2種以上の金属酸化抑制剤を含んでもよい。
また、金属酸化抑制剤の含有量は、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.5質量%~10質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることが更に好ましい。
【0142】
-任意成分-
ネガ型感光性樹脂層Nは、上記した成分以外の成分(以下、「任意成分」という場合がある。)を含んでもよい。任意成分としては、例えば、色素、界面活性剤、及び上記成分以外の添加剤が挙げられる。
【0143】
<<色素>>
ネガ型感光性樹脂層Nは、露光部の視認性、非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(以下、「色素NC」という場合がある。)を含むことが好ましい。詳細なメカニズムは不明であるが、ネガ型感光性樹脂層Nが色素NCを含むことで、ネガ型感光性樹脂層Nに隣接する層との密着性が向上し、解像性により優れる。
【0144】
本開示において、色素に関して使用される用語「酸、塩基、又はラジカルにより極大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が、酸、塩基、又はラジカルにより消色する態様、消色状態にある色素が、酸、塩基又はラジカルにより発色する態様、及び発色状態にある色素が、他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を意味してもよい。
【0145】
具体的に、色素NCは、露光により消色状態から変化して発色する化合物であってもよく、又は露光により発色状態から変化して消色する化合物であってもよい。上記態様において、色素NCは、露光により発生する、酸、塩基、又はラジカルの作用によって、発色、又は消色の状態が変化する色素であってもよい。また、色素NCは、露光により発生する、酸、塩基、又はラジカルによりネガ型感光性樹脂層N内の状態(例えばpH)が変化することで、発色、又は消色の状態が変化する色素であってもよい。一方、色素NCは、露光を介さずに、酸、塩基、又はラジカルを刺激として直接受けて、発色、又は消色の状態が変化する色素であってもよい。
【0146】
色素NCは、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、酸、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
【0147】
ネガ型感光性樹脂層Nは、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、色素NCとして、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素、及び光ラジカル重合開始剤の両方を含むことが好ましい。
【0148】
色素NCは、露光部の視認性、非露光部の視認性の観点から、酸、塩基、又はラジカルにより発色する色素であることが好ましい。
【0149】
色素NCの発色機構の例としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(すなわち、光酸発生剤)、又は光塩基発生剤を含むネガ型感光性樹脂層Nを露光することで、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、又は光塩基発生剤から発生する、ラジカル、酸、又は塩基によって、ラジカル反応性色素、酸反応性色素、又は塩基反応性色素(例えばロイコ色素)が発色する態様が挙げられる。
【0150】
色素NCにおいて、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける極大吸収波長は、露光部の視認性、及び非露光部の視認性の観点から、550nm以上であることが好ましく、550nm~700nmであることがより好ましく、550~650nmであることが特に好ましい。
【0151】
また、色素NCは、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける極大吸収波長を1つ、又は2つ以上有してもよい。色素NCが発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける極大吸収波長を2つ以上有する場合は、2つ以上の極大吸収波長のうち吸光度が最も高い極大吸収波長が450nm以上であればよい。
【0152】
色素NCの極大吸収波長は、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所)を用いて、400nm~780nmの範囲で色素NCを含む溶液(液温25℃)の透過スペクトルを測定し、そして、光の強度が極小となる波長(極大吸収波長)を検出することによって測定する。
【0153】
露光により、発色、又は消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物が挙げられる。露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、及びアントラキノン系色素が挙げられる。色素NCは、露光部の視認性、及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ化合物であることが好ましい。
【0154】
ロイコ化合物としては、例えば、トリアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(トリアリールメタン系色素)、スピロピラン骨格を有するロイコ化合物(スピロピラン系色素)、フルオラン骨格を有するロイコ化合物(フルオラン系色素)、ジアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(ジアリールメタン系色素)、ローダミンラクタム骨格を有するロイコ化合物(ローダミンラクタム系色素)、インドリルフタリド骨格を有するロイコ化合物(インドリルフタリド系色素)、及びロイコオーラミン骨格を有するロイコ化合物(ロイコオーラミン系色素)が挙げられる。ロイコ化合物は、トリアリールメタン系色素、又はフルオラン系色素であることが好ましく、トリフェニルメタン骨格を有するロイコ化合物(トリフェニルメタン系色素)、又はフルオラン系色素であることがより好ましい。
【0155】
ロイコ化合物は、露光部の視認性、及び非露光部の視認性の観点から、ラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を有することが好ましい。ロイコ化合物に含まれるラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を、光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル、又は光カチオン重合開始剤から発生する酸と反応させることで、ロイコ化合物を閉環状態に変化させて消色させること、又はロイコ化合物を開環状態に変化させて発色させることができる。ロイコ化合物は、ラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を有し、かつ、ラジカル、又は酸によりラクトン環、スルチン環、又はスルトン環が開環して発色する化合物であることが好ましく、ラクトン環を有し、かつ、ラジカル、又は酸によりラクトン環が開環して発色する化合物であることがより好ましい。
【0156】
ロイコ化合物の具体例としては、p,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社)、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2-(N-フェニル-N-メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチル)アミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メトキシ-7-アミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-ベンジルアミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7,8-ベンゾフロオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、及び3’,6’-ビス(ジフェニルアミノ)スピロイソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン-3-オンが挙げられる。
【0157】
色素NCとしては、例えば、染料も挙げられる。染料の具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業(株))、オイルブルー#603(オリヱント化学工業(株))、オイルピンク#312(オリヱント化学工業(株))、オイルレッド5B(オリヱント化学工業(株))、オイルスカーレット#308(オリヱント化学工業(株))、オイルレッドOG(オリヱント化学工業(株))、オイルレッドRR(オリヱント化学工業(株))、オイルグリーン#502(オリヱント化学工業(株))、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業(株))、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン、及び1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロンが挙げられる。
【0158】
色素NCは、露光部の視認性、非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより発色する色素であることがより好ましい。
【0159】
色素NCは、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ブリリアントグリーン、又はビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩であることが好ましい。
【0160】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は2種以上の色素を含んでもよい。
【0161】
色素の含有割合は、露光部の視認性、非露光部の視認性、現像後のパターン視認性及び解像性の観点から、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.1質量%~5質量%であることが更に好ましく、0.1質量%~1質量%であることが特に好ましい。
【0162】
色素NCの含有割合は、ネガ型感光性樹脂層Nに含まれる色素NCの全てを発色状態にした場合の色素の含有割合を意味する。以下、ラジカルにより発色する色素を例として、色素NCの含有割合の定量方法を説明する。メチルエチルケトン(100mL)に、色素(0.001g)、及び色素(0.01g)をそれぞれ溶かした2つの溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤としてIRGACURE OXE-01(BASF社)を加えた後、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。次に、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、色素に代えてネガ型感光性樹脂層N(3g)をメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られたネガ型感光性樹脂層Nを含む溶液の吸光度から、検量線に基づいてネガ型感光性樹脂層Nに含まれる色素の含有量を算出する。
【0163】
<<界面活性剤>>
ネガ型感光性樹脂層Nは、厚さの均一性の観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられ、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0164】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル化合物、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル化合物、シリコーン系ノニオン性界面活性剤、及びフッ素系ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0165】
ネガ型感光性樹脂層Nは、解像性がより優れる点から、フッ素系ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。ネガ型感光性樹脂層Nがフッ素系ノニオン性界面活性剤を含むことで、エッチング液のネガ型感光性樹脂層Nへの浸透を抑制してサイドエッチングを低減するためと考えられる。フッ素系ノニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(登録商標)F-551、F-552(DIC(株))、及びメガファックF-554(DIC(株))が挙げられる。
【0166】
界面活性剤としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0120~段落0125に記載の界面活性剤、特許第4502784号公報の段落0017に記載の界面活性剤、及び特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤も挙げられる。
【0167】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は2種以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0168】
界面活性剤の含有割合は、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0169】
<<添加剤>>
添加剤としては、例えば、ラジカル重合禁止剤、増感剤、可塑剤、ヘテロ環状化合物、上述した以外の樹脂、及び溶剤が挙げられる。
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は2種以上の添加剤を含んでもよい。
【0170】
ネガ型感光性樹脂層Nは、ラジカル重合禁止剤を含んでもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤が挙げられる。ラジカル重合禁止剤は、フェノチアジン、フェノキサジン、又は4-メトキシフェノールであることが好ましい。上記以外のラジカル重合禁止剤としては、例えば、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミンが挙げられる。ネガ型感光性樹脂層Nの感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩をラジカル重合禁止剤として使用することが好ましい。
【0171】
ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾ-ル化合物、及びカルボキシベンゾトリアゾ-ル化合物の合計含有量の割合は、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。上記した各成分の合計含有量の割合を0.01質量%以上にすることは、ネガ型感光性樹脂層Nに保存安定性を付与する観点から好ましい。一方で、上記した各成分の合計含有量の割合を3質量%以下にすることは、感度を維持し、染料の脱色を抑える観点から好ましい。
【0172】
ネガ型感光性樹脂層Nは、増感剤を含んでもよい。増感剤としては、制限されず、公知の増感剤を用いることができる。また、増感剤として、染料、及び顔料を用いることもできる。増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物(例えば、1,2,4-トリアゾール)、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。
【0173】
ネガ型感光性樹脂層Nは、1種単独、又は2種以上の増感剤を含んでもよい。
【0174】
ネガ型感光性樹脂層Nが増感剤を含む場合、増感剤の含有割合は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、及び重合速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、ネガ型感光性樹脂層Nの全質量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。
【0175】
ネガ型感光性樹脂層Nは、可塑剤、及びヘテロ環状化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。可塑剤、及びヘテロ環状化合物としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0097~段落0103、及び段落0111~段落0118に記載された化合物が挙げられる。
【0176】
ネガ型感光性樹脂層Nは、上述した以外の樹脂を含んでもよい。
上述した以外の樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体(ただし、スチレン含有率が40質量%以下の共重合体に限る。)、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0177】
ネガ型感光性樹脂層Nは、溶剤を含んでもよい。溶剤を含む感光性樹脂組成物によりネガ型感光性樹脂層Nを形成した場合、ネガ型感光性樹脂層Nに溶剤が残留することがある。溶剤については後述する。
【0178】
ネガ型感光性樹脂層Nは、添加剤として、例えば、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、有機沈殿防止剤、及び無機沈殿防止剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。添加剤については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0179】
-不純物等-
ネガ型感光性樹脂層Nは、所定量の不純物を含んでいてもよい。不純物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン、及びこれらのイオンが挙げられる。上記の中でも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが好ましい。
【0180】
ネガ型感光性樹脂層Nにおける不純物の含有量は、質量基準で、80ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、2ppm以下であることが更に好ましい。ネガ型感光性樹脂層Nにおける不純物の含有量は、質量基準で、1ppb以上、又は0.1ppm以上とすることができる。
【0181】
不純物を上記範囲にする方法としては、ネガ型感光性樹脂層Nの原料として不純物の含有量が少ない原料を選択すること、ネガ型感光性樹脂層Nの形成時に不純物の混入を防ぐこと、及び製造設備を洗浄して不純物を除去することが挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
【0182】
不純物は、公知の方法、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、又はイオンクロマトグラフィー法で定量できる。
【0183】
ネガ型感光性樹脂層Nにおける、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサンの含有量は、少ないことが好ましい。上記した化合物のネガ型感光性樹脂層N中における含有量としては、質量基準で、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、4ppm以下が更に好ましい。上記した化合物のネガ型感光性樹脂層N中における含有量は、質量基準で、10ppb以上、又は100ppb以上とすることができる。上記した化合物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制できる。また、公知の測定法により定量できる。
【0184】
ネガ型感光性樹脂層Nにおける水の含有量は、信頼性及びラミネート性を向上させる点から、0.01質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.5質量%であることがより好ましい。
【0185】
-厚さ-
ネガ型感光性樹脂層Nの厚さは、例えば、後述する現像工程において形成する樹脂パターン2の厚さに応じて決定すればよい。ネガ型感光性樹脂層Nの厚さは、例えば、1μm~100μmの範囲で決定すればよい。
【0186】
-透過率-
ネガ型感光性樹脂層Nにおいて、波長365nmの光の透過率は、密着性により優れる点から、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましい。透過率の上限は、制限されない。ネガ型感光性樹脂層Nにおいて、波長365nmの光の透過率は、99.9%以下であることが好ましい。
【0187】
準備工程は、透明基材と、上記透明基材の上に遮光性パターン1と、を有する積層前駆体を準備する工程と、上記透明基材及び上記遮光性パターン1の上に上記ネガ型感光性樹脂層Nを形成する工程と、を含むことが好ましい。上記ネガ型感光性樹脂層Nを形成する工程において、感光性転写材料(「ドライフィルム」ともいう。)を用いて上記ネガ型感光性樹脂層Nを形成することが好ましい。
すなわち、上記ネガ型感光性樹脂層Nは、感光性転写材料により形成されてなる層であることが好ましい。
【0188】
準備工程は、透明基材を準備する工程と、上記透明基材の上に遮光性パターン1を形成する工程と、上記透明基材及び上記遮光性パターン1の上にネガ型感光性樹脂層Nを形成する工程と、を含むことが好ましい。上記遮光性パターン1を形成する工程は、上記透明基材の上に遮光性層を形成する工程と、上記遮光性層の上に感光性樹脂層を形成する工程と、上記感光性樹脂層の露光及び現像によってレジストパターンを形成する工程と、上記レジストパターンによって覆われていない上記遮光性層を除去する工程と、を含むことが好ましい。上記ネガ型感光性樹脂層Nを形成する工程において、感光性転写材料を用いて上記ネガ型感光性樹脂層Nを形成することが好ましい。
【0189】
準備工程は、例えば、透明基材を準備する工程と、上記透明基材の上に遮光性パターン1を形成する工程と、上記透明基材及び上記遮光性パターン1の上にネガ型感光性樹脂層Nを形成する工程と、を含む態様が挙げられる。
【0190】
また、準備工程は、例えば、透明基材と、上記透明基材の上に遮光性層と、を有する積層前駆体を準備する工程と、上記遮光性層から遮光性パターン1を形成する工程と、上記透明基材及び上記遮光性パターン1の上にネガ型感光性樹脂層Nを形成する工程と、を含む態様が挙げられる。遮光性層は、遮光性パターン1の材料となる層である。透明基材と遮光性層とを有する積層前駆体の製造方法としては、例えば、透明基材の上に遮光性層を形成する方法が挙げられる。
【0191】
更に、準備工程は、例えば、透明基材の一方の面に遮光性層を形成する工程、遮光性層上にフォトレジスト層を形成する工程、上記フォトレジスト層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程、並びに、上記遮光性層をエッチングし上記遮光性パターン1を形成する工程を含む態様が挙げられる。フォトレジスト層の形成方法としては、特に制限はなく、公知のフォトレジスト組成物及び感光性転写材料を用いることができる。
【0192】
-遮光性パターン1の形成方法-
以下、遮光性パターン1の形成方法について説明する。
遮光性パターン1の形成方法としては、例えば、透明基材の上に遮光性層を形成し、次いで、上記遮光性層をパターン状に加工する方法が挙げられる。
【0193】
遮光性層を形成する方法としては、例えば、スパッタリング、及びめっきが挙げられる。スパッタリングにおいては、例えば、透明基材の上にCu、Ti、又はNiを含む層(遮光性層)を形成することができる。上記金属の中でも、電気抵抗が小さく、安価なCuが好ましい。スパッタリングによって形成される層(遮光性層)の成分は、Ni、Al、Nb、W、Ni-P、又はNi-Bであってもよい。めっきとしては、例えば、無電解めっきが挙げられる。無電解めっきの方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、無電解銅めっきにおいては、銅イオンと還元剤との反応によって透明基材の上に銅を析出させることができる。無電解めっきにおいて使用される触媒は、パラジウム-スズの混合触媒であることが好ましい。触媒の1次粒子径は、10nm以下であることが好ましい。無電解めっきに使用されるめっき液は、還元剤として次亜リン酸を含むことが好ましい。めっきとしては、例えば、下記「パターン3形成工程」の項で説明するめっきも挙げられる。遮光性層の構造は、単層構造、又は多層構造であってもよい。多層構造を有する遮光性層を形成することで、多層構造を有する導電性パターンを形成することができる。多層構造を有する遮光性層に含まれる各層の形成方法としては、例えば、無電解めっき、スパッタリング、蒸着、及びカップリング剤塗布が挙げられる。
【0194】
遮光性層をパターン状に加工する方法としては、例えば、フォトリソグラフィが挙げられる。フォトリソグラフィとしては、公知のフォトリソグラフィを利用することができる。例えば、遮光性層の上に感光性樹脂層を形成し、次いで、上記感光性樹脂層の露光及び現像によってレジストパターンを形成した後、上記レジストパターンによって覆われていない上記遮光性層を除去することで、遮光性パターンを形成することができる。
【0195】
遮光性層の上に形成される感光性樹脂層の種類は、制限されない。感光性樹脂層は、ポジ型感光性樹脂層、又はネガ型感光性樹脂層であってもよい。ネガ型感光性樹脂層としては、例えば、上記「ネガ型感光性樹脂層N」の項において説明したネガ型感光性樹脂層が挙げられる。感光性樹脂層を形成する方法としては、例えば、感光性樹脂組成物を用いる方法、及び感光性転写材料を用いる方法が挙げられる。感光性樹脂組成物を用いる方法としては、例えば、遮光性層の上に、感光性樹脂組成物を塗布し、次いで、感光性樹脂組成物を乾燥する方法が挙げられる。感光性樹脂組成物は、感光性樹脂層の材料を含む組成物である。感光性転写材料を用いる方法としては、例えば、感光性樹脂層を有する感光性転写材料と遮光性層とを貼り合わせることで、遮光性層の上に感光性樹脂層を配置する方法が挙げられる。ネガ型感光性樹脂層を形成する方法については、下記「ネガ型感光性樹脂層Nの形成方法」の項を参照することができる。
【0196】
感光性樹脂層の露光方法は、感光性樹脂層において露光部及び非露光部を形成可能な方法であれば制限されない。露光方法としては、公知の方法を利用することができる。露光される感光性樹脂層の領域は、目的とする遮光性パターンの形状に応じて決定すればよい。露光条件については、下記「露光工程」の項を参照することができる。
【0197】
感光性樹脂層の現像方法は、感光性樹脂層の露光部又は非露光部を除去することで、感光性樹脂層をパターン状に加工可能な方法であれば制限されない。ネガ型感光性樹脂層の現像においては、ネガ型感光性樹脂層の非露光部が除去される。ポジ型感光性樹脂層の現像においては、ポジ型感光性樹脂層の露光部が除去される。現像方法としては、公知の方法を利用することができる。現像条件については、下記「現像工程」の項を参照することができる。
【0198】
レジストパターンによって覆われていない遮光性層(すなわち、露出した遮光性層)を除去する方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、遮光性層が金属を含む場合、エッチングによって、レジストパターンによって覆われていない遮光性層を除去することができる。エッチングとしては、例えば、ウェットエッチング、及びドライエッチングが挙げられる。エッチングは、ウェットエッチングであることが好ましい。ウェットエッチングは、エッチング液と称される薬品を用いるエッチングである。エッチング液としては、例えば、硫酸-過酸化水素水溶液が挙げられる。硫酸-過酸化水素水溶液の組成は、制限されない。硫酸-過酸化水素水溶液としては、例えば、硫酸の濃度が1体積%~10体積%であり、かつ、過酸化水素の濃度が1体積%~10体積%である硫酸-過酸化水素水溶液が挙げられる。硫酸-過酸化水素水溶液の温度は、例えば、20℃~35℃の範囲で設定することができる。硫酸-過酸化水素水溶液への浸漬時間は、例えば、1分間~10分間の範囲で設定することができる。遮光性層が銅を含む場合、硫酸-過酸化水素水溶液に溶解した銅の濃度が例えば50g/Lとなるまで、硫酸-過酸化水素水溶液を使用することができる。エッチング液としては、例えば、塩化第二銅溶液も挙げられる。塩化第二銅溶液の組成は、制限されない。塩化第二銅溶液として、例えば、20質量%~35質量%の塩化第二銅、及び1質量%~7質量%の塩素を含む溶液を好ましく用いることができる。ただし、エッチングの条件は、上記した条件に制限されるものではない。例えば、エッチング液の温度、及びエッチング液への浸漬時間は、遮光性層の組成、遮光性層の厚さ、及びエッチング液の種類に応じて決定すればよい。
【0199】
積層体は、透明基材と遮光性パターン1との間に密着層を有していてもよい。密着層の形成は、例えば、遮光性パターン1を形成する前に、透明基材の上に密着層を形成すればよい。密着層の形成方法としては、例えば、無電解めっき、スパッタリング、及び蒸着が挙げられる。密着層の形成方法としては、金属粒子を分散した金属粒子分散液の塗布、乾燥、及び焼結を含む方法も挙げられる。
【0200】
積層体の製造方法においては、密着層、及び遮光性パターンを形成する前に、必要に応じてデスミア処理により透明基材の表面を粗化してもよい。デスミア処理液(酸化性粗化液)としては、例えば、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液(例えば、過マンガン酸ナトリウム粗化液)、及びフッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液が挙げられる。
【0201】
-ネガ型感光性樹脂層Nの形成方法-
以下、ネガ型感光性樹脂層Nの形成方法について説明する。ネガ型感光性樹脂層Nの形成方法としては、例えば、感光性樹脂組成物を用いる方法、及び感光性転写材料を用いる方法が挙げられる。
【0202】
-感光性樹脂組成物-
感光性樹脂組成物を用いる方法としては、例えば、透明基材及び遮光性パターンの上に、感光性樹脂組成物を塗布し、次いで、感光性樹脂組成物を乾燥する方法が挙げられる。
【0203】
感光性樹脂組成物の成分は、目的とするネガ型感光性樹脂層Nの成分に応じて決定すればよい。感光性樹脂組成物の好ましい成分としては、例えば、上記「ネガ型感光性樹脂層N」の項において説明した成分が挙げられる。感光性樹脂組成物としては、例えば、重合体A、重合性化合物B、及び光重合開始剤を含む組成物が挙げられる。感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の粘度を調節し、感光性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。
【0204】
溶剤としては、感光性樹脂組成物の成分(例えば、重合体A、重合性化合物B、及び重合開始剤)を溶解又は分散可能な溶剤であれば制限されず、公知の溶剤を利用することができる。溶剤としては、例えば、アルキレングリコールエーテル溶剤、アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤、アルコール溶剤(例えば、メタノール、及びエタノール)、ケトン溶剤(例えば、アセトン、及びメチルエチルケトン)、芳香族炭化水素溶剤(例えば、トルエン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、環状エーテル溶剤(例えば、テトラヒドロフラン)、エステル溶剤、アミド溶剤、及びラクトン溶剤が挙げられる。
【0205】
感光性樹脂組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤、及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。感光性樹脂組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤、及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤、及び環状エーテル溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種と、を含むことがより好ましい。感光性樹脂組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤、及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤と、環状エーテル溶剤と、を含むことが特に好ましい。
【0206】
アルキレングリコールエーテル溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、及びジプロピレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
【0207】
アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
【0208】
溶剤としては、国際公開第2018/179640号の段落0092~段落0094に記載された溶剤、及び特開2018-177889号公報の段落0014に記載された溶剤を用いてもよい。これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0209】
感光性樹脂組成物は、1種単独、又は2種以上の溶剤を含んでもよい。
【0210】
感光性樹脂組成物における溶剤の含有割合は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
【0211】
感光性樹脂組成物の調製方法は、制限されない。感光性樹脂組成物の調製方法としては、例えば、各成分を溶剤に溶解した溶液を予め調製し、得られた各溶液を所定の割合で混合することにより、感光性樹脂組成物を調製する方法が挙げられる。感光性樹脂組成物は、ネガ型感光性樹脂層を形成する前に、孔径が0.2μm~30μmのフィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0212】
感光性樹脂組成物の塗布方法としては、制限されず、公知の方法を用いることができる。塗布方法としては、例えば、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布が挙げられる。
【0213】
-感光性転写材料-
感光性転写材料を用いる方法としては、例えば、ネガ型感光性樹脂層Nを有する感光性転写材料と、遮光性パターンを有する透明基材とを貼り合わせることで、透明基材及び遮光性パターンの上にネガ型感光性樹脂層Nを配置する方法が挙げられる。ネガ型感光性樹脂層Nを有する感光性転写材料と、遮光性パターンを有する透明基材とを貼り合わせる方法においては、上記感光性転写材料と上記透明基材とを重ね合わせて、ロール等の手段を用いて加圧及び加熱を行うことが好ましい。貼り合わせには、ラミネーター、真空ラミネーター、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーターを用いることができる。以下、感光性転写材料の構成要素について説明する。
【0214】
--感光性樹脂層--
感光性転写材料は、ネガ型感光性樹脂層Nを有する。ネガ型感光性樹脂層Nについては、上記「ネガ型感光性樹脂層N」の項において説明したとおりである。
【0215】
--仮支持体--
感光性転写材料は、仮支持体を有することが好ましい。仮支持体は、感光性転写材料から剥離可能な支持体である。仮支持体は、少なくともネガ型感光性樹脂層Nを支持することができる。仮支持体は、露光工程の前に剥離してもよい。露光工程において仮支持体を剥離せずに光を照射した後、仮支持体を剥離してもよい。露光工程において仮支持体を剥離せずに光を照射することで、露光環境中のごみ及び埃の影響を避けることができる。
【0216】
仮支持体としては、光透過性を有する仮支持体を用いることができる。本開示において、「光透過性を有する」とは、パターン露光に使用する波長の光の透過率が50%以上であることを意味する。仮支持体において、パターン露光に使用する波長(好ましくは波長365nm)の光の透過率は、ネガ型感光性樹脂層Nの露光感度の向上の観点から、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0217】
仮支持体としては、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム、及び紙が挙げられる。仮支持体は、強度、可撓性、及び光透過性の観点から、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0218】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(すなわち、PETフィルム)、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。樹脂フィルムは、PETフィルムであることが好ましく、2軸延伸PETフィルムであることがより好ましい。
【0219】
仮支持体の厚さは、制限されない。仮支持体の平均厚さは、例えば、仮支持体としての強度、光透過性、材質、及び感光性転写材料と透明基材との貼り合わせに求められる可撓性に応じて決定すればよい。仮支持体の平均厚さは、5μm~100μmであることが好ましい。更に、仮支持体の平均厚さは、取り扱い易さ、及び汎用性の観点から、5μm~50μmであることが好ましく、5μm~20μmであることがより好ましく、10μm~20μmであることが更に好ましく、10μm~16μmであることが特に好ましい。
【0220】
仮支持体のネガ型感光性樹脂層Nが配置された側の面の算術平均粗さRaは、0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましく、0.02μm以下であることが特に好ましい。算術平均粗さRaの下限は、制限されない。仮支持体のネガ型感光性樹脂層Nが配置された側の面の算術平均粗さRaは、例えば、0μm以上の範囲で決定すればよい。
【0221】
算術平均粗さRaは、以下の方法によって測定する。3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、以下の条件にて測定対象物の表面プロファイルを得る。測定及び解析ソフトウェアとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記ソフトウェアを用いてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、測定対象物の表面の算術平均粗さRaを得る。なお、測定対象物の表面が他の層の表面と接触している場合、測定対象物を他の層から剥離することで露出した測定対象物の表面の算術平均粗さRaを測定すればよい。
【0222】
仮支持体(特に樹脂フィルム)には、例えば、変形(例えば、シワ)、傷、及び欠陥がないことが好ましい。仮支持体の透明性の観点から、仮支持体に含まれる微粒子、異物、欠陥、及び析出物の数は少ないことが好ましい。仮支持体において、直径が1μm以上である、微粒子、異物、及び欠陥の数は、50個/10mm2以下であることが好ましく、10個/10mm2以下であることがより好ましく、3個/10mm2以下であることが更に好ましく、0個/10mm2であることが特に好ましい。
【0223】
仮支持体の好ましい態様については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018、特開2016-27363号公報の段落0019~段落0026、国際公開第2012/081680号の段落0041~段落0057、国際公開第2018/179370号の段落0029~段落0040、及び特開2019-101405号公報の段落0012~段落0032に記載がある。これらの公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0224】
--カバーフィルム--
感光性転写材料は、カバーフィルム(保護フィルムともいう。)を有してもよい。カバーフィルムによれば、カバーフィルムに接触する層(例えば、ネガ型感光性樹脂層N)の表面を保護することができる。感光性転写材料は、仮支持体と、ネガ型感光性樹脂層Nと、カバーフィルムと、をこの順で含むことが好ましい。感光性転写材料は、ネガ型感光性樹脂層Nの仮支持体が配置された側とは反対側の面に接するカバーフィルムを有することが好ましい。
【0225】
カバーフィルムとしては、例えば、樹脂フィルム、及び紙が挙げられる。カバーフィルムは、強度、及び可撓性の観点から、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0226】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。樹脂フィルムは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又はポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0227】
カバーフィルムの厚さは、制限されない。カバーフィルムの平均厚さは、5μm~100μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましく、10μm~20μmであることが特に好ましい。
【0228】
カバーフィルムのネガ型感光性樹脂層Nが配置された側の面の算術平均粗さRaは、解像性により優れる点から、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることが特に好ましい。カバーフィルムのネガ型感光性樹脂層Nが配置された側の面の算術平均粗さが上記範囲であることで、ネガ型感光性樹脂層、及び形成される樹脂パターンの厚さの均一性が向上する。算術平均粗さRaの下限は、制限されない。カバーフィルムのネガ型感光性樹脂層Nが配置された側の面の算術平均粗さRaは、0.001μm以上であることが好ましい。カバーフィルムのネガ型感光性樹脂層Nが配置された側の面の算術平均粗さRaは、上記「仮支持体」の項において説明した算術平均粗さRaの測定方法に準ずる方法によって測定する。
【0229】
--熱可塑性樹脂層--
本開示に係る感光性転写材料は、熱可塑性樹脂層Nを有してもよい。感光性転写材料は、仮支持体とネガ型感光性樹脂層Nとの間に熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。感光性転写材料が仮支持体とネガ型感光性樹脂層Nとの間に熱可塑性樹脂層を有することで、被着物への追従性が向上して、被着物と感光性転写材料との間の気泡の混入が抑制される結果、層間の密着性が向上するためである。
【0230】
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂として、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
【0231】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0232】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、アクリル樹脂であることが好ましい。ここで、「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種を有する樹脂を意味する。
【0233】
アクリル樹脂において、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位の合計含有量の割合は、アクリル樹脂の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。アクリル樹脂において、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計含有量の割合は、アクリル樹脂の全質量に対して、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0234】
また、アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する重合体であることが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及びホスホン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
【0235】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性の観点から、酸価が60mgKOH/g以上であるアルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂であることがより好ましい。酸価の上限は、制限されない。アルカリ可溶性樹脂の酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0236】
酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、制限されず、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~段落0052に記載のポリマーのうち酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂、及び特開2016-224162号公報の段落0053~段落0068に記載のバインダーポリマーのうち酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂が挙げられる。
【0237】
カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位の含有割合は、カルボキシ基含有アクリル樹脂の全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、12質量%~30質量%であることが特に好ましい。
【0238】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するアクリル樹脂であることが特に好ましい。
【0239】
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有してもよい。反応性基は、例えば、付加重合可能な基であればよい。反応性基としては、例えば、エチレン性不飽和基、重縮合性基(例えば、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基)、及び重付加反応性基(例えば、エポキシ基、及び(ブロック)イソシアネート基)が挙げられる。
【0240】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1万~10万であることがより好ましく、2万~5万であることが特に好ましい。
【0241】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上のアルカリ可溶性樹脂を含んでもよい。
【0242】
アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、現像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、10質量%~99質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、40質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0243】
熱可塑性樹脂層は、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(以下、「色素B」という場合がある。)を含むことが好ましい。色素Bの好ましい態様は、後述する点以外は、上記した色素NCの好ましい態様と同様である。
【0244】
色素Bは、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、酸、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、酸により最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
【0245】
熱可塑性樹脂層は、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、色素Bとして酸により最大吸収波長が変化する色素と、後述する光により酸を発生する化合物と、を含むことが好ましい。
【0246】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の色素Bを含んでもよい。
【0247】
色素Bの含有割合は、露光部の視認性、非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.2質量%以上であることが好ましく、0.2質量%~6質量%であることがより好ましく、0.2質量%~5質量%であることが更に好ましく、0.25質量%~3.0質量%であることが特に好ましい。
【0248】
ここで、色素Bの含有割合は、熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bの全てを発色状態にした場合の色素の含有割合を意味する。以下、ラジカルにより発色する色素を例として、色素Bの含有割合の定量方法を説明する。メチルエチルケトン(100mL)に、色素(0.001g)、及び色素(0.01g)をそれぞれ溶かした2つの溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤としてIRGACURE OXE-01(BASF社)を加えた後、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。次に、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、色素に代えて熱可塑性樹脂層(0.1g)をメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた熱可塑性樹脂層を含有する溶液の吸光度から、検量線に基づいて熱可塑性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
【0249】
熱可塑性樹脂層は、光により酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物(以下、「化合物C」という場合がある。)を含んでもよい。化合物Cは、活性光線(例えば、紫外線、及び可視光線)を受けて、酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物であることが好ましい。化合物Cとしては、公知の、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)が挙げられる。化合物Cは、光酸発生剤であることが好ましい。
【0250】
熱可塑性樹脂層は、解像性の観点から、光酸発生剤を含むことが好ましい。光酸発生剤としては、上述したネガ型感光性樹脂層に含まれてもよい光カチオン重合開始剤が挙げられ、後述する点以外は好ましい態様も同じである。
【0251】
光酸発生剤は、感度、及び解像性の観点から、オニウム塩化合物、及びオキシムスルホネート化合物よりなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましく、感度、解像性、及び密着性の観点から、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
【0252】
また、光酸発生剤は、以下の構造を有する光酸発生剤であることも好ましい。
【0253】
【0254】
熱可塑性樹脂層は、光塩基発生剤を含んでもよい。光塩基発生剤としては、例えば、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、及び2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2,4-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0255】
熱可塑性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤を含んでもよい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、上述したネガ型感光性樹脂層に含まれてもよい光ラジカル重合開始剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0256】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の化合物Cを含んでもよい。
【0257】
化合物Cの含有割合は、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0258】
熱可塑性樹脂層は、解像性、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、可塑剤を含むことが好ましい。
【0259】
可塑剤の分子量(オリゴマー又はポリマーの分子量については重量平均分子量(Mw)をいう。以下、本段落において同じ。)は、アルカリ可溶性樹脂の分子量よりも小さいことが好ましい。可塑剤の分子量は、200~2,000であることが好ましい。
【0260】
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物であれば制限されない。可塑剤は、可塑性付与の観点から、分子中にアルキレンオキシ基を有する化合物であることが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物であることがより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造、又はポリプロピレンオキシ構造を有することが好ましい。
【0261】
可塑剤は、解像性、及び保存安定性の観点から、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。相溶性、解像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂がアクリル樹脂であり、かつ、可塑剤が(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。
【0262】
可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、上記「重合性化合物B」の項に記載した(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。感光性転写材料において、熱可塑性樹脂層とネガ型感光性樹脂層とが直接接触して配置される場合、熱可塑性樹脂層、及びネガ型感光性樹脂層は、それぞれ、同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂層、及びネガ型感光性樹脂層Nが、それぞれ、同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことで、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上するためである。
【0263】
熱可塑性樹脂層が可塑剤として(メタ)アクリレート化合物を含む場合、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、露光後の露光部においても(メタ)アクリレート化合物は重合しないことが好ましい。
【0264】
ある実施形態において、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、解像性、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0265】
ある実施形態において、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、又はウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0266】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の可塑剤を含んでもよい。
【0267】
可塑剤の含有割合は、解像性、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが特に好ましい。
【0268】
熱可塑性樹脂層は、厚さの均一性の観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、例えば、上述したネガ型感光性樹脂層Nに含まれてもよい界面活性剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0269】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0270】
界面活性剤の含有割合は、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0271】
熱可塑性樹脂層は、増感剤を含んでもよい。増感剤としては、例えば、上述したネガ型感光性樹脂層に含まれてもよい増感剤が挙げられる。
【0272】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の増感剤を含んでもよい。
【0273】
増感剤の含有割合は、光源に対する感度の向上、露光部の視認性、及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。
【0274】
熱可塑性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。
【0275】
また、熱可塑性樹脂層については、特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0276】
熱可塑性樹脂層の厚さは、制限されない。熱可塑性樹脂層の平均厚さは、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。熱可塑性樹脂層の平均厚さの上限は、制限されない。熱可塑性樹脂層の平均厚さは、現像性、及び解像性の観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。
【0277】
熱可塑性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば制限されない。熱可塑性樹脂層の形成方法としては、例えば、仮支持体の表面に、熱可塑性樹脂組成物を塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥する方法が挙げられる。
【0278】
熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、上記の成分を含む組成物が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の粘度を調節し、熱可塑性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。
【0279】
熱可塑性樹脂組成物に含まれる溶剤としては、熱可塑性樹脂層に含まれる成分を溶解、又は分散可能な溶剤であれば制限されない。溶剤としては、上述した感光性樹脂組成物が含んでもよい溶剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0280】
熱可塑性樹脂組成物は、1種単独、又は2種以上の溶剤を含んでもよい。
【0281】
熱可塑性樹脂組成物における溶剤の含有割合は、熱可塑性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
【0282】
熱可塑性樹脂組成物の調製、及び熱可塑性樹脂層の形成は、上述した感光性樹脂組成物の調製方法、及びネガ型感光性樹脂層Nの形成方法に準じて行えばよい。例えば、熱可塑性樹脂層に含まれる各成分を溶剤に溶解した溶液を予め調製し、得られた各溶液を所定の割合で混合することにより、熱可塑性樹脂組成物を調製した後、得られた熱可塑性樹脂組成物を仮支持体の表面に塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層を形成することができる。また、カバーフィルム上に、ネガ型感光性樹脂層Nを形成した後、ネガ型感光性樹脂層Nの表面に熱可塑性樹脂層を形成してもよい。
【0283】
--中間層--
感光性転写材料は、熱可塑性樹脂層とネガ型感光性樹脂層Nとの間に、中間層を有することが好ましい。中間層によれば、複数の層を形成する際、及び保存の際における成分の混合を抑制できる。
【0284】
中間層は、現像性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、水溶性の層であることが好ましい。本開示において、「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0285】
中間層としては、例えば、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断層が挙げられる。中間層が酸素遮断層であることで、露光時の感度が向上し、露光機の時間負荷が低減する結果、生産性が向上する。中間層として用いられる酸素遮断層は、公知の層から適宜選択すればよい。中間層として用いられる酸素遮断層は、低い酸素透過性を示し、水、若しくはアルカリ水溶液(22℃の炭酸ナトリウムの1質量%水溶液)に分散、又は溶解する酸素遮断層であることが好ましい。
【0286】
中間層は、樹脂を含むことが好ましい。中間層に含まれる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体が挙げられる。中間層に含まれる樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましい。
【0287】
中間層に含まれる樹脂は、複数の層間の成分の混合を抑制する観点から、ネガ型感光性樹脂層Nに含まれる重合体A、及び熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂(アルカリ可溶性樹脂)のいずれとも異なる樹脂であることが好ましい。
【0288】
中間層は、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドンを含むことがより好ましい。
【0289】
中間層は、1種単独、又は2種以上の樹脂を含んでもよい。
【0290】
中間層における樹脂の含有割合は、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、中間層の全質量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0291】
また、中間層は、必要に応じて添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。
【0292】
中間層の厚さは、制限されない。中間層の平均厚さは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~3μmであることがより好ましい。中間層の厚さが上記範囲であることで、酸素遮断性を低下させることがなく、複数の層を形成する際、及び保存の際における成分の混合を抑制でき、また、現像時の中間層の除去時間の増大を抑制できる。
【0293】
中間層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば制限されない。中間層の形成方法としては、例えば、熱可塑性樹脂層、又はネガ型感光性樹脂層Nの表面に、中間層用組成物を塗布した後、中間層用組成物の塗膜を乾燥する方法が挙げられる。
【0294】
中間層用組成物としては、例えば、樹脂、及び任意の添加剤を含む組成物が挙げられる。中間層用組成物は、中間層用組成物の粘度を調節し、中間層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。溶剤としては、樹脂を溶解、又は分散可能な溶剤であれば制限されない。溶剤は、水、及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水、又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤であることがより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数が1~3であるアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられる。水混和性の有機溶剤は、炭素数が1~3であるアルコールであることが好ましく、メタノール、又はエタノールであることがより好ましい。
【0295】
また、感光性転写材料は、屈折率調整層等のその他の層を更に有していてもよい。
屈折率調整層としては、特に制限はなく、公知の屈折率調整層を用いることができる。
屈折率調整層の屈折率は、配線視認抑制性の観点から、感光性層の屈折率よりも高いことが好ましい。
屈折率調整層の屈折率は、1.50以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましく、1.60以上であることが更に好ましく、1.70以上であることが特に好ましい。
屈折率調整層の屈折率の上限は、特に制限されないが、2.10以下であることが好ましく、1.85以下であることがより好ましく、1.78以下であることが更に好ましく、1.74以下であることが特に好ましい。
屈折率調整層の厚さとしては、特に制限はない。
屈折率調整層の厚さは、50nm以上500nm以下であることが好ましく、55nm以上110nm以下であることがより好ましく、60nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
屈折率調整層の屈折率を制御する方法は、特に制限されず、例えば、所定の屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と金属酸化物粒子又は金属粒子とを用いる方法、金属塩と樹脂との複合体を用いる方法等が挙げられる。
金属酸化物粒子の種類としては、特に制限はなく、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。
金属酸化物粒子としては、具体的には、酸化ジルコニウム粒子(ZrO2粒子)、Nb2O5粒子、酸化チタン粒子(TiO2粒子)、及び二酸化珪素粒子(SiO2粒子)よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらの中でも、金属酸化物粒子としては、例えば、第二の樹脂層の屈折率を1.6以上に調整しやすいという観点から、酸化ジルコニウム粒子及び酸化チタン粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0296】
--平均厚さ--
感光性転写材料の平均厚さは、5μm~55μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましく、20μm~40μmであることが特に好ましい。感光性転写材料の平均厚さは、上記透明基材の平均厚さの測定方法に準ずる方法によって測定する。
【0297】
--形状--
感光性転写材料の形状は、制限されない。感光性転写材料の形状は、汎用性、及び運搬性の観点から、ロール状であることが好ましい。感光性転写材料を巻き取ることで、感光性転写材料の形状をロール状にすることができる。
【0298】
-感光性転写材料の製造方法--
感光性転写材料の製造方法は、制限されない。感光性転写材料の製造方法としては、例えば、仮支持体の上に、感光性樹脂組成物を塗布することによってネガ型感光性樹脂層Nを形成する工程と、上記ネガ型感光性樹脂層Nの上にカバーフィルムを配置する工程と、を含む方法が挙げられる。上記方法においては、必要に応じて、仮支持体の上に塗布された感光性樹脂組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、制限されず、公知の乾燥方法を利用することができる。ネガ型感光性樹脂層Nの上に、カバーフィルムを配置する方法としては、例えば、ネガ型感光性樹脂層Nにカバーフィルムを圧着させる方法が挙げられる。
【0299】
<露光工程>
本開示に係る構造体の製造方法は、上記透明基材の上記遮光性パターン1が設けられている面とは反対側の面から上記ネガ型感光性樹脂層Nの一部に光を照射する工程(露光工程)を含む。
露光工程では、透明基材の遮光性パターン1が設けられている面とは反対側の面から光を照射する。本開示において、「透明基材の遮光性パターン1が設けられている面」とは、透明基材の表面のうち遮光性パターン1を有する側の面を意味する。例えば、
図1(b)において、「透明基材の遮光性パターン1が設けられている面」とは、遮光性パターン20に接している透明基材10の表面、すなわち、被露光面10aとは反対側を向く面をいう。例えば、
図1(b)に示されるように、透明基材の遮光性パターンに対向する面とは反対側の面に対して光を照射すると、遮光性パターンによってネガ型感光性樹脂層Nに到達する光の一部が遮られることで、ネガ型感光性樹脂層Nの一部を選択的に露光することができる。ネガ型感光性樹脂層Nの露光部は、現像液に対する溶解性が低下する。また、ネガ型感光性樹脂層Nから透明基材へ向かう方向に光を照射する場合に比べて、透明基材の遮光性パターンに対向する面とは反対側の面に対して光を照射することで、透明基材の近傍にあるネガ型感光性樹脂層Nの硬化を促進することができる。この結果、後述する現像工程において、樹脂パターンの解像性を向上させることができる。また、直線性の高い側壁を有する樹脂パターンを形成することができる。
【0300】
露光工程において使用される光源は、ネガ型感光性樹脂層Nを露光可能な波長の光(例えば、365nm、又は405nm)を照射する光源であればよい。具体的な光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、及びLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
【0301】
露光工程において照射される光は、200nm~1,500nmの波長域に含まれる波長を含むことが好ましく、250nm~450nmの波長域に含まれる波長を含むことがより好ましく、300nm~410nmの波長域に含まれる波長を含むことが好ましく、365nmの波長を含むことがより好ましい。
【0302】
露光量は、5mJ/cm2~200mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2~100mJ/cm2であることがより好ましい。
【0303】
露光工程においては、遮光性パターンによってネガ型感光性樹脂層Nの一部を選択的に露光することができるため、透明基材の遮光性パターン1が設けられている面とは反対側の面の全域に対して光を照射してもよい。
【0304】
<現像工程>
本開示に係る構造体の製造方法は、光を照射された上記ネガ型感光性樹脂層Nを現像することで、上記透明基材上に樹脂パターン2を形成する工程(現像工程)を含む。
現像工程では、ネガ型感光性樹脂層Nを現像することで、透明基材と遮光性パターンとによって画定される領域に樹脂パターン2を形成する。例えば、
図1(c)に示されるように、現像工程では、ネガ型感光性樹脂層Nの非露光部が除去されることで、ネガ型感光性樹脂層Nの露光部の形状に対応する形状を有する樹脂パターンが形成される。
【0305】
現像方法としては、公知の方法を利用することができる。ネガ型感光性樹脂層Nの現像は、例えば、現像液を用いて行うことができる。現像液の種類は、ネガ型感光性樹脂層Nの非露光部を除去することができれば制限されない。現像液としては、公知の現像液(例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液)を利用することができる。
【0306】
現像液は、pKaが7~13である化合物を0.05mol/L~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液であることが好ましい。現像液は、水溶性の有機溶剤及び/又は界面活性剤を含んでもよい。現像液としては、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液も好ましい。
【0307】
現像方式としては、特に制限されず、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、並びに、ディップ現像のいずれであってもよい。シャワー現像とは、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、露光部、又は非露光部を除去する現像処理である。
【0308】
現像工程の後に、洗浄剤をシャワーにより吹き付け、ブラシで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。
【0309】
現像液の液温は、制限されない。現像液の液温は、20℃~40℃であることが好ましい。
【0310】
樹脂パターン2の平均厚さは、遮光性パターン1の平均厚さより大きいことが好ましい。樹脂パターン2の平均厚さが遮光性パターンの平均厚さより大きいことで、厚みのある遮光性パターン1を形成することができる。遮光性パターン1の平均厚さに対する樹脂パターン2の平均厚さの比([樹脂パターン2の平均厚さ]/[遮光性パターン1の平均厚さ])は、1.1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、3以上であることが特に好ましい。遮光性パターン1の平均厚さに対する樹脂パターン2の平均厚さの比は、4、5、又は10であってもよい。樹脂パターン2の平均厚さは、上記透明基材の平均厚さの測定方法に準ずる方法によって想定する。
【0311】
樹脂パターン2の平均厚さは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、2μmを超えることが特に好ましい。更に、樹脂パターンの平均厚さは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。樹脂パターン2の厚さの上限は、制限されない。樹脂パターンの平均厚さは、例えば、100μm以下の範囲で決定すればよい。
【0312】
樹脂パターン2の平均幅は、50μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。樹脂パターン2の平均幅は、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。樹脂パターン2の平均幅は、遮光性パターン1の平均幅の測定方法に準ずる方法によって測定する。
【0313】
<パターン3形成工程>
本開示に係る構造体の製造方法は、上記遮光性パターン1と上記樹脂パターン2とによって画定される領域にパターン3を形成する工程(パターン3形成工程)を含む。
パターン3形成工程では、遮光性パターン1の上にパターン3を形成する。例えば、
図1(d)に示されるように、パターン3形成工程では、遮光性パターン1と樹脂パターン2とによって画定される領域にパターン3が形成される。
パターン3は、本開示における効果をより発揮する観点から、導電性を有することが好ましい。
また、パターン形成性及び得られるパターン3の寸法安定性の観点から、上記遮光性パターン1の平均厚さよりも上記パターン3の平均厚さのほうが厚いことが好ましい。
【0314】
パターン3を形成する方法としては、公知の方法を利用することができる。導電性を有するパターン3の材料としては、用途に適した導電性を有する材料を利用することができる。導電性を有するパターン3の材料は、Cu、又はCuの合金を含むことが好ましい。Cuの合金は、Cuと、Ni、Mo、Ta、Ti、V、Cr、Fe、Mn、Co、及びWよりなる群から選択される少なくとも1種との合金であることが好ましい。上記した材料を用いて形成されるパターン3は、上記した金属元素を含む。パターン3形成工程において得られるパターン3は、Cuからなる導電性パターンであってもよい。
また、パターン形成性及び得られるパターン3の寸法安定性の観点から、上記遮光性パターン1及び上記パターン3が、同種の材料を含むことが好ましい。例えば、同じ金属元素を含むことがより好ましく、同じ金属、又は、同じ金属元素を含む合金であることが特に好ましい。
【0315】
遮光性パターン1の上にパターン3を形成する方法としては、公知の方法を利用することができる。パターン3は、めっき法によって形成されてなるパターンであることが好ましい。めっきとしては、公知のめっきを利用することができる。めっきとしては、例えば、電気めっき、及び無電解めっきが挙げられる。めっきは、電気めっきであることが好ましく、電気銅めっきであることがより好ましい。
【0316】
電気めっきでは、例えば、シード層として機能することができる遮光性パターン1をカソードとして用い、遮光性パターンの上に金属を積み重ねることで、遮光性パターン1の上に導電性を有するパターン3を形成することができる。
【0317】
電気めっきにおいて使用されるめっき液の成分としては、例えば、水溶性銅塩が挙げられる。水溶性銅塩としては、めっき液の成分として通常使用される水溶性銅塩を用いることができる。水溶性銅塩としては、例えば、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、及び有機酸銅塩よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。無機銅塩としては、例えば、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、及び炭酸銅が挙げられる。アルカンスルホン酸銅塩としては、例えば、メタンスルホン酸銅、及びプロパンスルホン酸銅が挙げられる。アルカノールスルホン酸銅塩としては、例えば、イセチオン酸銅、及びプロパノールスルホン酸銅が挙げられる。有機酸銅塩としては、例えば、酢酸銅、クエン酸銅、及び酒石酸銅が挙げられる。
【0318】
めっき液は、硫酸を含んでもよい。めっき液が硫酸を含むことで、めっき液のpH、及び硫酸イオン濃度を調整することができる。
【0319】
電気めっきの方法、及び条件は、制限されない。例えば、めっき液を加えためっき槽に現像工程後の透明基材を供給することで、遮光性パターン1の上に導電性を有するパターン3を形成することができる。電気めっきにおいては、例えば、電流密度、及び透明基材の搬送速度を制御することで、導電性を有するパターン3を形成することができる。
【0320】
電気めっきに使用されるめっき液の温度は、一般的に70℃以下であり、10℃~40℃であることが好ましい。電気めっきにおける電流密度は、一般的に0.1A/dm2~100A/dm2であり、0.5A/dm2~20A/dm2であることが好ましい。電流密度を高くすることで導電性パターンの生産性を向上させることができる。電流密度を低くすることで導電性パターンの厚さの均一性を向上させることができる。
【0321】
めっきによる導電性を有するパターン3の形成方法においては、複数の金属を連続してめっきしてもよい。例えば、銅のような金属によって形成されたパターン3においては、反射によって視認性又は美観性の低下が課題となることがある。パターン3の表面の反射率を低減する方法としては、例えば、酸化処理、硫化処理、窒化処理、塩素化処理、黒化層被膜形成、及び黒色めっきが挙げられる。例えば、銅めっき後にクロムめっきを行うことで、パターン3の表面に黒色の材料を含む層を形成することができる。パターン3の表面の反射率を低減する方法は、酸化処理、又は硫化処理であることが好ましい。酸化処理は、より優れた防眩効果を得ることができ、更に、廃液処理の簡易性及び環境安全性の点からも好ましい。
【0322】
パターン3を形成した後、ポストベーク工程を行ってもよい。ポストベーク工程は、未反応の熱硬化成分を完全に熱硬化することで、絶縁信頼性、硬化特性、又はめっき密着性を向上させることができる。加熱温度は、80℃~240℃であることが好ましい。加熱時間は、5分間~120分間であることが好ましい。
【0323】
パターン3を形成した後、パターン3の表面を樹脂層によって保護してもよい。例えば、パターン3を形成した後、導電性パターンの上に樹脂層を形成することによって、パターン3の表面を保護することができる。樹脂層の成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂層、ポリイミド樹脂、及びエポキシ樹脂が挙げられる。樹脂層の形成方法としては、例えば、塗布、及び熱圧着が挙げられる。
【0324】
パターン3の構造は、単層構造、又は多層構造であってもよい。多層構造を有するパターン3の各層の成分は、同一であっても異なってもよい。
【0325】
パターン3の厚さは、制限されない。パターン3の厚さは、例えば、用途に応じて決定すればよい。パターン3を配線として用いる場合、パターン3の平均厚さは、例えば、配線に供給する電流の大きさ、及び配線幅に応じて決定すればよい。パターン3の平均厚さは、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。更に、パターン3の平均厚さは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。パターン3の平均厚さは、上記透明基材の平均厚さの測定方法に準ずる方法によって測定する。
【0326】
パターン3の幅は、細いことが好ましい。具体的に、パターン3の平均幅は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが更に好ましく、2μm以下であることが特に好ましい。パターン3の平均幅が5μm以下であることで、例えば、タッチパネルのように視認性に敏感な装置におけるパターン3の視認性を低減することができる。パターン3の平均幅は、導電性の観点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、0.8μm以上であることが特に好ましい。パターン3の平均幅は、上記遮光性パターン1の平均幅の測定方法に準ずる方法によって測定する。
【0327】
導電性を有するパターン3の表面抵抗値は、0.2Ω/□未満であることが好ましく、0.15Ω/□未満であることがより好ましい。導電性を有するパターン3の表面抵抗値は、4探針法によって測定する。パターンサイズが微細で測定が困難な場合には、同一の組成及び厚さの導電層の表面抵抗値を測定してもよい。
【0328】
パターン3形成工程において、パターン3と遮光性パターン1との界面は、明確に観察されないことがある。例えば、遮光性パターン1をシード層として用い、パターン3をめっきによって形成する場合、遮光性パターン1とパターン3との界面が明確に観察されないことがある。ただし、パターン3と遮光性パターン1との界面が明確に観察されないことは、本開示の目的を妨げるものではない。
【0329】
<後露光工程、及び、後加熱工程>
本開示に係る構造体の製造方法は、永久膜である樹脂パターン2の強度及び耐久性を向上させる観点から、上記樹脂パターン2に対し後露光及び後加熱の少なくともいずれかを行う工程を更に含むことが好ましい。
本開示に係る構造体の製造方法は、上記現像工程の後、上記樹脂パターン2を後露光する工程(「後露光工程」ともいう。)を含むことが好ましく、上記パターン3形成工程の後、上記樹脂パターン2を後露光する工程を含むことがより好ましい。
また、本開示に係る構造体の製造方法は、更に必要に応じて、上記樹脂パターン2を加熱(後加熱)する工程(「後加熱工程」ともいう。)を含んでもよい。
上記樹脂パターン2は、ネガ型感光性樹脂層Nの露光部であるため、上記後露光又は上記後加熱を行うことにより、残存している重合開始剤及び重合性化合物等により、更に重合反応等が進行し、樹脂パターン2の強度、及び、耐熱性、耐光性、耐湿性等の耐久性が向上する。
【0330】
後露光工程における露光に使用する光源としては、特に制限はなく、公知の露光光源を用いることができる。除去性の観点から、上記樹脂パターン形成工程と同じ波長の光を含む光源を用いることが好ましい。
【0331】
後露光工程における露光量としては、除去性の観点から、5mJ/cm2~5,000mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2~3,000mJ/cm2であることがより好ましく、100mJ/cm2~1,500mJ/cm2であることが特に好ましい。
【0332】
後露光工程における露光量としては、除去性の観点から、上記樹脂パターン形成工程における露光量以上であることが好ましく、上記樹脂パターン形成工程における露光量よりも多いことがより好ましい。
【0333】
本開示に係る構造体の製造方法は、後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
後加熱工程における加熱温度及び加熱時間は、特に制限はなく、適宜選択することができる。
後加熱する方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行ってもよいし、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0334】
<その他の工程>
本開示に係る構造体の製造方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。その他の工程としては、特に制限はなく、公知の工程が挙げられる。
また、本開示における樹脂パターン形成工程及びその他の工程の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~段落0051に記載の方法を本開示においても好適に用いることができる。
また、本開示に係る構造体の製造方法は、得られたパターンを研磨する工程、及び、得られたパターンを洗浄する工程等を含んでいてもよい。
更に、本開示に係る構造体の製造方法は、後述する各用途に応じた部材を設ける工程等を含んでいてもよい。
【0335】
<<用途>>
本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体は、種々の用途に適用することができる。本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体の用途としては、例えば、タッチセンサー、電磁波シールド、アンテナ、配線基板、及び導電性加熱素子が挙げられる。上記した用途において、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体は、例えば、電気伝導体として機能することができる。また、上記した用途において、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体は、形成されたパターン(樹脂パターン2及びパターン3等)の特性に応じて種々の機能を発現することができる。
【0336】
<タッチセンサー>
本開示に係るタッチセンサーは、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有する。本開示に係るタッチセンサーにおいて、上記構造体が有する導電性パターン(例えば、遮光性パターン1及び導電性を有するパターン3等、以下同様)は、例えば、透明電極、又は額縁配線として利用することができる。本開示に係るタッチセンサーの構成要素は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を含むことを除き、制限されない。上記構造体以外の構成要素としては、公知のタッチセンサーに含まれる構成要素を利用することができる。タッチセンサーについては、例えば、特許第6486341号公報、及び特開2016-155978号公報に記載されている。上記した公報は、参照により本明細書に取り込まれる。本開示に係るタッチセンサーの製造方法は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有するタッチセンサーを製造する方法であれば制限されない。
【0337】
<電磁波シールド>
本開示に係る電磁波シールドは、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有する。本開示に係る電磁波シールドにおいて、上記構造体が有する導電性パターンは、例えば、電磁波シールド体として利用することができる。本開示に係る電磁波シールドの構成要素は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を含むことを除き、制限されない。上記構造体以外の構成要素としては、公知の電磁波シールドに含まれる構成要素を利用することができる。電磁波シールドについては、例えば、特許第6486382号公報、及び特開2012-163951号公報に記載されている。上記した公報は、参照により本明細書に取り込まれる。本開示に係る電磁波シールドの製造方法は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有する電磁波シールドを製造する方法であれば制限されない。
【0338】
<アンテナ>
本開示に係るアンテナは、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有するアンテナである。本開示に係るアンテナにおいて、上記構造体が有する導電性パターンは、例えば、送受信部、又は伝送線路部として利用することができる。本開示に係るアンテナの構成要素は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を含むことを除き、制限されない。上記構造体以外の構成要素としては、公知のアンテナに含まれる構成要素を利用することができる。アンテナについては、例えば、特開2016-219999号公報に記載されている。上記した公報は、参照により本明細書に取り込まれる。本開示に係るアンテナの製造方法は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有するアンテナを製造する方法であれば制限されない。
【0339】
<配線基板>
本開示に係る配線基板は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有する。本開示に係る配線基板において、上記構造体が有する導電性パターンは、例えば、プリント配線板の配線として利用することができる。本開示に係る配線基板の構成要素は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を含むことを除き、制限されない。上記構造体以外の構成要素としては、公知の配線基板に含まれる構成要素を利用することができる。配線基板については、例えば、特許第5774686号公報、及び特開2017-204538号公報に記載されている。上記した公報は、参照により本明細書に取り込まれる。本開示に係る配線基板の製造方法は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有する配線基板を製造する方法であれば制限されない。
【0340】
<導電性加熱素子>
本開示に係る導電性加熱素子は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有する。本開示に係る導電性加熱素子において、上記構造体が有する導電性パターンは、例えば、発熱体として利用することができる。本開示に係る導電性加熱素子の構成要素は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を含むことを除き、制限されない。上記構造体以外の構成要素としては、公知の導電性加熱素子に含まれる構成要素を利用することができる。導電性加熱素子については、例えば、特開特許第6486382号公報に記載されている。上記した公報は、参照により本明細書に取り込まれる。本開示に係る導電性加熱素子の製造方法は、本開示に係る構造体の製造方法によって得られる構造体を有する導電性加熱素子を製造する方法であれば制限されない。
【0341】
(構造体)
本開示に係る構造体は、透明基材と、上記透明基材の上に配置された遮光性パターン1と、上記透明基材の上で上記遮光性パターン1に隣接して配置され、かつ、上記透明基材に接する樹脂パターン2と、上記遮光性パターン1と上記樹脂パターン2とによって画定される領域にパターン3とを有し、上記遮光性パターン1の平均厚さが、2μm以下であり、上記樹脂パターン2の平均厚さが、2μmを超え、上記遮光性パターン1の平均厚さよりも上記パターン3の平均厚さのほうが厚く、上記樹脂パターン2を永久膜として有する。上記態様によれば、形態異常の発生が低減された導電性パターンを有する構造体が提供される。
また、本開示に係る構造体は、本開示に係る構造体の製造方法により製造された構造体であることが好ましい。
【0342】
本開示に係る構造体における透明基材、遮光性パターン1、樹脂パターン2、及び、パターン3における好ましい態様は、上記以外は、上述した本開示に係る構造体の製造方法における透明基材、遮光性パターン1、樹脂パターン2、及び、パターン3における好ましい態様と同様である。
【0343】
本開示に係る構造体Aについて
図2を参照して説明する。
図2は、本開示に係る構造体の一例を示す概略断面図である。
図2に示される構造体200は、透明基材11と、パターン21(遮光性パターン1)と、樹脂パターン41(樹脂パターン2)と、パターン51(パターン3)とを有する。遮光性パターン21は、透明基材11の上に配置されている。遮光性パターン21は、透明基材11に接している。ただし、遮光性パターン21は、他の層(不図示)を介して透明基材11に接してもよい。樹脂パターン41は、透明基材11の上で遮光性パターン21の隣に配置され、かつ、透明基材11に接している。また、パターン51は、遮光性パターン21上、かつ樹脂パターン41の間に配置されている。
【実施例】
【0344】
以下、実施例により本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0345】
<アクリル酸テトラヒドロフラン-2-イル(ATHF)の合成>
3つ口フラスコにアクリル酸(72.1g、1.0mol)、ヘキサン(72.1g)を加え20℃に冷却した。カンファースルホン酸(7.0mg、0.03mmol)、2-ジヒドロフラン(77.9g、1.0mol)を滴下した後に、20℃±2℃で1.5時間撹拌した後、35℃まで昇温して2時間撹拌した。ヌッチェにキョーワード200(ろ過材、水酸化アルミニウム粉末、協和化学工業(株)製)、キョーワード1000(ろ過材、ハイドロタルサイト系粉末、協和化学工業(株)製)の順に敷き詰めた後、反応液をろ過することでろ過液を得た。得られたろ過液にヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ、1.2mg)を加えた後、40℃で減圧濃縮することで、アクリル酸テトラヒドロフラン-2-イル(ATHF)140.8gを無色油状物として得た(収率99.0%)。
【0346】
<重合体A-1の合成>
3つ口フラスコにPGMEA(75.0g)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。ATHF(40.0g)、AA(2.0g)、EA(20.0g)、MMA(22.0g)、CHA(16.0g)、V-601(4.0g)、及びPGMEA(75.0g)を含む溶液を、90℃±2℃に維持した3つ口フラスコ溶液中に2時間かけて滴下した。滴下終了後,90℃±2℃にて2時間撹拌することで、重合体A-1(固形分濃度40.0質量%)を得た。重合体A-1における各構成単位の含有量を表1に示す。重合体A-1の酸価は、15.6mgKOH/gである。
なお、上記略号はそれぞれ、以下の化合物を表す。
「AA」:アクリル酸(東京化成工業(株)製)
「CHA」:アクリル酸シクロヘキシル(東京化成工業(株)製)
「EA」:アクリル酸エチル(東京化成工業(株)製)
「MMA」:メタクリル酸メチル(東京化成工業(株)製)
「PGMEA」:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工(株)製)
「V-601」:2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(富士フイルム和光純薬工業(株)製)
【0347】
<重合体A-2の合成>
下記に従ってモノマーの使用量を変更したこと以外は、重合体A-1と同様の方法で重合体A-2を含む溶液(固形分濃度:40.0質量%)を得た。重合体A-2の重量平均分子量は、60,000であった。
(1)スチレン:52.0g
(2)メタクリル酸:29.0g
(3)メタクリル酸メチル:19.0g
【0348】
<重合体A-3の合成>
重合体A-1の合成で使用したモノマー(スチレン、メタクリル酸、及びメタクリル酸メチル)を下記のモノマーに変更したこと以外は、重合体A-1と同様の方法で重合体A-3を含む溶液(固形分濃度:40.0質量%)を得た。重合体A-3の重量平均分子量は、40,000であった。
(1)メタクリル酸ベンジル:81.0g
(2)メタクリル酸:19.0g
【0349】
<ネガ型感光性樹脂組成物の調製>
表1の記載に従って選択した成分を混合した後、メチルエチルケトンを加えることによって、ネガ型感光性樹脂組成物NR1~NR6(固形分濃度:25質量%)を調製した。
【0350】
【0351】
なお、表1における各成分欄の数値の単位は、質量部である。
また、以下に、表1に記載の略号の詳細を示す。
BPE-500:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(エチレンオキサイド10モル付加)、新中村化学工業(株)製
BPE-200:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(エチレンオキサイド4モル付加)、新中村化学工業(株)製
M-270:ポリプロピレングリコールジアクリレート、東亞合成(株)製
A-TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学工業(株)製
SR-454:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(エチレンオキサイド3モル付加)、アルケマ社製
SR-502:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(エチレンオキサイド9モル付加)、アルケマ社製
A-9300-CL1:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、新中村化学工業(株)製
B-CIM:光ラジカル発生剤(光重合開始剤)、Hampford社製、2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体
SB-PI 701:増感剤、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、三洋貿易(株)製
CBT-1:防錆剤、カルボキシベンゾトリアゾール、城北化学工業(株)製
TDP-G:重合禁止剤、フェノチアジン、川口化学工業(株)製
Irganox245:重合禁止剤、ヒンダードフェノール系化合物、BASF社製
F-552:フッ素系界面活性剤、メガファック F552、DIC(株)製
【0352】
<ポジ型感光性樹脂組成物PR1の調製>
下記表2に示す組成に従って秤量した重合体A-1、光酸発生剤B-1、界面活性剤C-1及び塩基性化合物D-1と、PGMEAと、を混合することによって、固形分濃度10質量%の混合物を得た。孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いて、上記混合物をろ過することによって、ポジ型感光性樹脂組成物PR1を得た。
【0353】
【0354】
なお、表2における各成分欄の数値の単位は、質量部である。
また、以下に、表2に記載の上述した以外の各成分の詳細を示す。
【0355】
光酸発生剤B-1は、下記構造を有する化合物(特開2013-47765号公報の段落0227に記載の化合物、段落0227に記載の方法に従って合成した。)である。
【0356】
【0357】
界面活性剤C-1は、下記構造を有する化合物である。
【0358】
【0359】
塩基性化合物D-1は、下記構造を有する化合物である。
【0360】
【0361】
<ネガ型感光性樹脂組成物N1~N8の調製>
表3又は表4の記載に従って選択した成分を混合した後、1-メトキシ-2-プロピルアセテートとメチルエチルケトンの1:1(質量比)混合溶剤を加えることによって、ネガ型感光性樹脂組成物N1~N8(固形分濃度:29質量%)を調製した。
【0362】
【0363】
【0364】
なお、表3及び表4における各成分の含有量の数値の単位は、質量部である。
また、以下に、表3に記載の各成分の詳細を示す。
-エチレン性不飽和化合物-
M-1:A-NOD-N(1,9-ノナンジオールジアクリレート、新中村化学工業(株)製)
M-2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(A-DPH、新中村化学工業(株)製)
M-3:A-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業(株)製)
M-4:アロニックス TO-2349(カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物、東亞合成(株)製)
M-5:ウレタンアクリレート8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)
【0365】
-アルカリ可溶性高分子-
P-1:下記に示す樹脂、スチレン由来の構成単位(St)/ジシクロペンタニルメタクリレート由来の構成単位(DCPMA)/メタクリル酸由来の構成単位(MAA)/メタクリル酸由来の構成単位にグリシジルメタクリレートを付加してなる構成単位(GMA-MAA)=41.0/15.2/23.9/19.9(mol%)、Mw=17,000)
【0366】
-光重合開始剤-
D-1:1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(Irgacure OXE-02、BASF社製)
D-2:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(Irgacure 907、BASF社製)
D-3:B-CIM(光ラジカル発生剤(光重合開始剤)、Hampford社製、2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体):0.89質量部
【0367】
-熱架橋性化合物-
E-1:デュラネートWT32-B75P(ブロックイソシアネート化合物、旭化成ケミカルズ(株)製):12.50部
【0368】
-その他の成分-
AD-1:水素供与性化合物(N-フェニルグリシン、純正化学(株)製)
AD-2:スチレン/無水マレイン酸=4:1(モル比)の共重合体(AD-2、SMA EF-40、酸無水物価1.94mmol/g、重量平均分子量10,500、Cray Valley社製)
AD-3:フッ素系界面活性剤(メガファック F551A、DIC(株)製)
AD-4:増感剤(4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、SB-PI 701、三洋貿易(株)製)
AD-5:色素(ロイコクリスタルバイオレット、山田化学工業(株)製)
AD-6:重合禁止剤(フェノチアジン、川口化学工業(株)製TDP-G)
AD-7:防錆剤(カルボキシベンゾトリアゾール、城北化学工業(株)製CBT-1)
AD-8:フッ素系界面活性剤(メガファック F552、DIC(株)製)
【0369】
(実施例1)
<感光性転写材料(ドライフィルム)1の作製>
仮支持体としてPETフィルム(東レ(株)製ルミラー16KS40、厚さ:16μm:算術平均粗さRa:0.02μm)を用意した。仮支持体の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0mであり、かつ、乾燥後の厚さが表5に記載された値となるようにネガ型感光性樹脂組成物NR1を塗布した。形成されたネガ型感光性樹脂組成物NR1の塗膜を90℃で100秒間かけて乾燥することで、レジスト層を形成した。形成されたレジスト層の表面に、カバーフィルムとしてポリエチレンフィルム(タマポリ(株)、GF-818、厚さ:19μm)を圧着することで、感光性転写材料1を作製した。得られた感光性転写材料1を巻き取ることで、ロール形態の感光性転写材料1を作製した。
【0370】
<遮光性パターン1(銅パターン)の形成>
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に、厚さが0.05μmの銅層をスパッタリングによって形成することで、銅層付きPETフィルムを作製した。感光性転写材料1からカバーフィルムを剥離した後、銅層付きPETフィルムに感光性転写材料1を貼り合わせた。貼り合わせ工程は、ロール温度を100℃、線圧を1.0MPa、線速度を1.0m/分とする条件で行った。次いで、フォトマスクを介して高圧水銀灯露光機((株)大日本科研製MAP-1200L、主波長:365nm)を用いて光を照射して、レジスト層を露光した。仮支持体を剥離した後、レジスト層を、液温が25℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いて30秒間のシャワー現像をすることによって樹脂パターン(ライン/スペース=5.5μm/4.5μm)を形成した。エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて、樹脂パターンで覆われていない銅層をエッチングした。剥離液(10質量%水酸化ナトリウム水溶液)を用いて、残存する樹脂パターンを除去した。以上の手順によって、銅パターン(ライン/スペース=5μm/5μm)付きPETフィルムを作製した。銅パターンは、遮光性パターン1として機能する。遮光性パターン1の平均厚さを表5に示す。
【0371】
<感光性転写材料2の作製>
仮支持体としてPETフィルム(東レ(株)製ルミラー16KS40、厚さ:16μm:算術平均粗さRa:0.02μm)を用意した。仮支持体の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0mであり、かつ、乾燥後の厚さが表5に記載された値となるようにネガ型感光性樹脂組成物N1を塗布した。形成されたネガ型感光性樹脂組成物N1の塗膜を90℃で100秒間かけて乾燥した。
【0372】
その後、カバーフィルムとしてポリエチレンフィルム(タマポリ(株)、GF-818、厚さ:19μm)を圧着することで、感光性転写材料2を作製した。得られた感光性転写材料2を巻き取ることで、ロール形態の感光性転写材料2を作製した。
【0373】
<パターン3(銅パターン)の形成>
感光性転写材料2からカバーフィルムを剥離した後、銅パターン付きPETフィルムと感光性転写材料2とを貼り合わせた。貼り合わせ工程は、ロール温度を100℃、線圧を1.0MPa、線速度を1.0m/分とする条件で行った。得られた積層体は、PETフィルム、銅パターン(遮光性パターン1)、ネガ型感光性樹脂層N、及び仮支持体をこの順で有する。PETフィルムの銅パターン(遮光性パターン1)に対向する面とは反対側の面に対して高圧水銀灯露光機((株)大日本科研製MAP-1200L、主波長:365nm)を用いて光を照射した。露光量は70mJ/cm2とした。仮支持体を剥離した後、ネガ型感光性樹脂層Nを液温が25℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いて30秒間のシャワー現像をすることによって、樹脂パターン2を形成した。銅パターン(遮光性パターン1)のスペース部(すなわち、溝)は、樹脂パターン2によって埋められた。樹脂パターン2の平均厚さを表2に示す。樹脂パターン2によって覆われていない銅パターン(遮光性パターン1)の上に、電気銅めっきにより銅を析出させ、導電性を有するパターン3を形成した。電気銅めっきにおける電流密度は、1.8ASDであった。電気銅めっきにおける処理時間は、6分間であった。電気銅めっき後のPETフィルムを130℃で30分間加熱した。以上の手順によって、銅パターン(ライン(L)/スペース(S)=5μm/5μm)を有する構造体を作製した。電気銅めっきにより析出した銅パターン(導電性を有するパターン3)の平均厚さを表5に示す。
【0374】
(実施例2~13)
基材の種類及び厚み、遮光性パターン1の厚み(平均厚さ)、遮光性パターン1を形成する感光性樹脂組成物の種類、感光性樹脂組成物の乾燥塗布厚(レジスト層の厚み)、遮光性パターン1の形状、感光性パターン1を形成時の露光方法(仮支持体の剥離の有無を含む)、ネガ型感光性樹脂層Nの形成方法及び使用したネガ型感光性組成物、その他の層の種類、パターン3の厚み(平均厚さ)、並びに、硬化処理の有無を表5の記載に従って適宜変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、銅パターンを有する構造体を作製した。電気銅めっきによって析出させる銅の平均厚さは、処理時間を延ばすことで大きくすることができる。
【0375】
なお、実施例2においては、使用する基材として、厚さ100μmのポリイミド(PI)フィルムを使用し、更に、パターン3を形成後、高圧水銀灯露光機((株)大日本科研製MAP-1200L、主波長:365nm)を用いて1,000mJ/cm2の露光量の光を照射して後露光を行った。
【0376】
実施例3においては、使用する基材として、厚さ100μmのポリシクロオレフィン(COP)フィルム上に、厚さ0.1μmの酸化インジウムスズ(ITO)膜がスパッタ法で形成された基材(COP/ITO)上に、厚さ0.03μmの銅層をスパッタ法で形成することにより、銅層付きの基材を準備した。
また、実施例3では、ネガ型感光性樹脂組成物N1の代わりに、以下のネガ型感光性樹脂組成物N1上に、高屈折率層を積層したN10を形成した。
仮支持体としてPETフィルム(東レ(株)製ルミラー16KS40、厚さ:16μm:算術平均粗さRa:0.02μm)を用意した。仮支持体の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0mであり、かつ、乾燥後の厚さが3μmとなるようにネガ型感光性樹脂組成物N1を塗布した。形成されたネガ型感光性樹脂組成物N1の塗膜を90℃で100秒間かけて乾燥することで、ネガ型感光性樹脂層Nを形成した。
次に、上記のネガ型感光性樹脂層N上に、スリット状ノズルを用いて、下記の処方201からなるオーバーコート層用塗布液(組成物N9)を、乾燥後の厚みが0.2μmの厚みになるように調整して塗布し、40℃から95℃の温度勾配をもつ熱風対流式乾燥機で乾燥して溶剤を除去し、感光性層に直接接して配置されたオーバーコート層(OC層)を形成した。オーバーコート層の屈折率は、25℃において波長550nmで1.68であった。
ここで、処方201は、酸基を有する樹脂と、アンモニア水溶液を用いて調製しており、酸基を有する樹脂はアンモニア水溶液で中和され、酸基を有する樹脂のアンモニウム塩を含む水系樹脂組成物であるオーバーコート層用塗布液を調製した。
【0377】
-オーバーコート用塗布液:処方201(水系樹脂組成物)-
・アクリル樹脂(ZB-015M、富士フイルムファインケミカル(株)製、メタクリル酸/メタクリル酸アリルの共重合樹脂、重量平均分子量2.5万、組成比(モル比)=20/80、固形分5.00%、アンモニア水溶液):4.92部
・カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物(アロニックス TO-2349、東亞合成(株)製):0.04部
・ZrO2粒子(ナノユースOZ-S30M、固形分30.5%、メタノール69.5%、屈折率が2.2、平均粒径:約12nm、日産化学工業(株)製):4.34部
・防錆剤(ベンゾトリアゾール誘導体、BT-LX、城北化学工業(株)製):0.03部
・界面活性剤(フッ素系界面活性剤、メガファックF444、DIC(株)製):0.01部
・蒸留水:24.83部
・メタノール:65.83部
【0378】
形成されたオーバーコート層の表面に、カバーフィルムとしてポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF-818、厚さ:19μm)を圧着することで、感光性転写材料2を作製した。得られた感光性転写材料2を巻き取ることで、ロール形態の感光性転写材料2を作製した。
【0379】
また、実施例4においては、直接描画式露光装置(ビアメカニクス(株)製、DE-1DH、主波長405nm)を用いて直接描画式露光(DI露光)方法により露光した。
更に、実施例7においては、感光転写材料をラミネートした基材を、4インチシリコンウエハー上にテープで固定した後、(株)ニコン製i線ステッパー(NSR-2009i9C)を用いて、縮小投影露光を行い、更に、パターン3を形成後、145℃で20分間加熱を行った。
また、実施例9及び10においては、感光性転写材料1を用いず、表5に記載のポジ型感光性樹脂組成物PR1を塗布し、90℃で100秒間かけて乾燥し、表5に記載の厚さのレジスト層を形成した。
更に、実施例8及び11においては、感光性転写材料2を用いず、表5に記載のネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、90℃で100秒間かけて乾燥し、表5に記載の厚さのネガ型感光性樹脂層Nを形成した。
【0380】
実施例12においては、遮光性パターン1を、下記のように形成した。
PETフィルム(東洋紡(株)製コスモシャインA4300、厚さ:75μm)を用意した。モノクロインクジェットプリンターPX-K100(セイコーエプソン(株)製)のインクカートリッジ中のインクを銀ナノインク((株)C-INK製DryCure Ag-J)に移し替えたプリンターを用意した。このプリンターに対し、プリンタドライバーを介した印刷操作を行うことにより、配線パターンを形成した後、60℃2分間加熱した。銀配線パターン(ライン/スペース=50μm/50μm)付きPETフィルムを作製した。
また、樹脂パターン2を形成後、下記のように銅パターン3を形成した。
無電解銅めっき液(奥野製薬工業(株)製ARGカッパー)を取扱説明書に記載の手順に従い、Cuめっき浴を作製した後、45℃の恒温槽に入れて温調した。めっき浴に、基板を含浸させることにより、無電解めっきにより、銅パターンを形成した。
【0381】
実施例13においては、遮光性パターン1を、下記のように形成した。
厚さが100μmのポリイミド(PI)フィルムに、感光性転写材料1からカバーフィルムを剥離した後、銅層付きPETフィルムに感光性転写材料1を貼り合わせた。上記貼り合わせは、ロール温度を100℃、線圧を1.0MPa、線速度を1.0m/分とする条件で行った。次いで、マスクレス描画装置(ハイデルベルグ社製DWL66+、主波長:405nm)を用いて光を照射して、レジスト層を露光した。仮支持体を剥離した後、レジスト層を、液温が25℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いて30秒間のシャワー現像をすることによって樹脂パターン(ライン/スペース=15μm/15μm)を形成した。次いで、スパッタリングによってレジストパターン間と、レジストパターン上に銅層を形成した後、剥離液(10質量%トリエチルアミン水溶液)を用いて、樹脂パターン及び樹脂パターン上の銅層を除去した。以上の手順によって、銅パターン(ライン/スペース=15μm/15μm)付きPIフィルムを作製した。銅パターンは、遮光性パターン1として機能する。
また、その他の操作については、樹脂パターン2の現像において、現像液として、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして行った。
【0382】
(比較例1)
「パターン3(銅パターン)の形成」の項で説明した工程において、光の照射方法を変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、銅パターンを有する構造体の作製を試みた。具体的に、PETフィルム、銅パターン(遮光性パターン)、ネガ型感光性樹脂層N、及び仮支持体をこの順で有する積層体において、仮支持体のネガ型感光性樹脂層Nが配置された面とは反対側の面にフォトマスクを接触させた後、フォトマスクを介してネガ型感光性樹脂層Nに光を照射した。しかしながら、光を照射する工程において、PETフィルムの収縮に起因して生じたと考えられる銅パターン(遮光性パターン)の位置ずれが観察されたため、フォトマスクの開口部の位置と銅パターン(遮光性パターン)のスペース部との位置合わせが困難であった。この結果、銅パターン(遮光性パターン)のスペース部に樹脂パターンを形成することができなかった。
【0383】
<評価>
[パターンの形成性]
光学顕微鏡を用いて、得られたパターン3を有する構造体の任意の100視野を観察した。各視野の範囲は、200μm×200μmとした。パターン3において異常部が観察された視野の数に基づき、以下の基準に従って、導電性パターンの形成性を評価した。異常部とは、パターン3において割れ、剥がれ、欠け等の形態異常が観察された部分をいう。評価結果を表5に示す。
A:異常部が観察された視野の数は20未満である。
B:異常部が観察された視野の数は20以上である。
【0384】
【0385】
なお、表5の実施例3の使用したネガ型感光性組成物欄におけるN9は、オーバーコート塗布液(組成物N9)を示す。
表5に記載の結果から、実施例1~実施例13の構造体の製造方法は、比較例1の構造体の製造方法に比べて、形態異常の発生が低減されたパターンを形成できることがわかる。
【0386】
2020年4月30日に出願された日本国特許出願2020-080716号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0387】
10,11:透明基材
10a:被露光面
20,21:遮光性パターン(遮光性パターン1)
30:ネガ型感光性樹脂層(ネガ型感光性樹脂層N)
30a:露光部
40,41:樹脂パターン(樹脂パターン2)
50,51:パターン(パターン3)
100:積層体
200:構造体