(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法及び基板製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20241220BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20241220BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/304 601Z
H01L21/304 611Z
(21)【出願番号】P 2022575531
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 JP2022000014
(87)【国際公開番号】W WO2022153886
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2021005325
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田之上 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健人
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】白石 豪介
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525801(JP,A)
【文献】特開2012-015150(JP,A)
【文献】特開2012-182278(JP,A)
【文献】特表2015-516672(JP,A)
【文献】特開2019-126844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する基板処理装置であって、
前記重合基板を保持する基板保持部と、
前記第1の基板と前記第2の基板の間に形成されたレーザ吸収層に対してレーザ光をパルス状に照射するレーザ照射部と、
前記基板保持部と前記レーザ照射部を相対的に移動させる移動機構と、
前記レーザ照射部と前記移動機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記レーザ吸収層の厚みに基づいて、前記レーザ吸収層に照射される前記レーザ光の
ピッチを設定する、基板処理装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
前記基板保持部と前記レーザ照射部を相対的に回転させる回転機構と、
前記基板保持部と前記レーザ照射部を相対的に水平方向に移動させる水平移動機構と、を備え、
前記制御部は、前記レーザ光の
ピッチとして周方向
ピッチと径方向
ピッチを設定する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記レーザ吸収層の厚みに基づいて、前記重合基板のレーザ処理時間が最小になるように、前記レーザ光の
ピッチを設定する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記レーザ吸収層の厚みに基づいて、前記重合基板のレーザ処理時間が前記基板処理装置に要求されるレーザ処理時間となるように、前記レーザ光の
ピッチを設定する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記レーザ照射部から前記レーザ吸収層に前記レーザ光を照射して、当該レーザ吸収層を膨張させる制御を実行する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第1の基板と前記第2の基板の間に形成されたレーザ吸収層に対してレーザ光を照射する基板処理方法であって、
前記レーザ吸収層の厚みに基づいて、前記レーザ吸収層に照射される前記レーザ光の
ピッチを設定することと、
前記レーザ光の
ピッチになるように、前記レーザ吸収層に前記レーザ光を照射することと、を含む、基板処理方法。
【請求項7】
前記レーザ光の
ピッチは周方向
ピッチと径方向
ピッチを含み、
前記周方向
ピッチになるように、前記重合基板を保持する基板保持部と前記レーザ光を照射するレーザ照射部を相対的に回転させながら、前記レーザ照射部から前記レーザ吸収層に前記レーザ光を照射し、
前記径方向
ピッチになるように、前記基板保持部と前記レーザ照射部を相対的に水平方向に移動させながら、前記レーザ照射部から前記レーザ吸収層に前記レーザ光を照射する、請求項
6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記レーザ吸収層の厚みに基づいて、前記重合基板のレーザ処理時間が最小になるように、前記レーザ光の
ピッチを設定する、請求項
6又は
7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記レーザ吸収層の厚みに基づいて、前記重合基板のレーザ処理時間が基板処理装置に要求されるレーザ処理時間となるように、前記レーザ光の
ピッチを設定する、請求項
6又は
7に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記レーザ吸収層に前記レーザ光を照射して、当該レーザ吸収層を膨張させる、請求項6又は7に記載の基板処理方法。
【請求項11】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を製造する基板製造方法であって、
前記第1の基板と前記第2の基板の間にレーザ吸収層を形成し、当該第1の基板と第2の基板を接合して、前記重合基板を製造し、
前記レーザ吸収層には、前記第1の基板と前記第2の基板の接合後に、レーザ光がパルス状に照射され、
前記レーザ吸収層に照射される前記レーザ光の
ピッチに基づいて、前記レーザ吸収層の厚みを設定する、基板製造方法。
【請求項12】
前記レーザ光の
ピッチは周方向
ピッチと径方向
ピッチを含み、
前記周方向
ピッチと前記径方向
ピッチに基づいて、前記レーザ吸収層の厚みを設定する、請求項
11に記載の基板製造方法。
【請求項13】
前記レーザ光の
ピッチは、前記重合基板のレーザ処理時間が最小になるように設定される、請求項
11又は
12に記載の基板製造方法。
【請求項14】
前記レーザ光の
ピッチは、前記重合基板のレーザ処理時間が要求されるレーザ処理時間となるように設定される、請求項
11又は
12に記載の基板製造方法。
【請求項15】
前記レーザ吸収層は、前記レーザ光が照射されて膨張する、請求項11又は12に記載の基板製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法及び基板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体装置の製造方法が開示されている。かかる半導体装置の製造方法は、半導体基板の裏面よりCO2レーザを照射して剥離酸化膜を局所的に加熱する加熱工程と、剥離酸化膜中、及び/又は剥離酸化膜と半導体基板との界面において剥離を生じさせて、半導体素子を転写先基板に転写させる転写工程と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板に対し、レーザ光を用いた基板処理のスループットを向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する基板処理装置であって、前記重合基板を保持する基板保持部と、前記第1の基板と前記第2の基板の間に形成されたレーザ吸収層に対してレーザ光をパルス状に照射するレーザ照射部と、前記基板保持部と前記レーザ照射部を相対的に移動させる移動機構と、前記レーザ照射部と前記移動機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記レーザ吸収層の厚みに基づいて、前記レーザ吸収層に照射される前記レーザ光のピッチを設定する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板に対し、レーザ光を用いた基板処理のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ウェハ処理システムにおいて処理される重合ウェハの構成の概略を示す側面図である。
【
図2】ウェハ処理システムの構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図3】ウェハ処理装置の構成の概略を示す側面図である。
【
図4】ウェハ処理装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図5】レーザ吸収膜にレーザ光を照射する様子を示す説明図である。
【
図6】レーザ吸収膜にレーザ光を照射する様子を示す説明図である。
【
図7】第2のウェハから第1のウェハを剥離する様子を示す説明図である。
【
図8】レーザ吸収膜に照射されるレーザ光の照射間隔についての説明図である。
【
図9】レーザ吸収膜の厚みとレーザ光のパルスエネルギーの関係の傾向を示すグラフである。
【
図10】レーザ吸収膜の厚みとウェハ処理のスループットの関係の傾向を示すグラフである。
【
図11】レーザ吸収膜の厚みとレーザ光の照射間隔の相関を示す表である。
【
図12】ウェハ処理システムにおける他のウェハ処理の主な工程を示す説明図である。
【
図13】ウェハ処理システムにおける他のウェハ処理の主な工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程においては、表面に複数の電子回路等のデバイスが形成された第1の基板(半導体などのシリコン基板)と第2の基板が接合された重合基板に対し、第1の基板の表面のデバイス層を第2の基板に転写することが行われる。この際、例えばレーザ光を用いて第2の基板から第1の基板を剥離する、いわゆるレーザリフトオフが行われる場合がある。レーザリフトオフでは、第1の基板と第2の基板の間に形成されたレーザ吸収層(例えば酸化膜)にレーザ光を照射することで、第1の基板と第2の基板の界面において剥離を生じさせる。
【0009】
上述した特許文献1に記載された方法は、このレーザリフトオフを用いた半導体装置の製造方法である。特許文献1には、酸化膜の厚みを大きくすることで、デバイス層における半導体素子の特性変動や損傷等を防止し、安定したレーザ処理を行うことが記載されている。しかしながら、このレーザ処理のスループットを向上させることについては考慮されておらず、その示唆もない。したがって、従来のレーザ処理には改善の余地がある。
【0010】
本開示にかかる技術は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板に対し、レーザ光を用いた基板処理のスループットを向上させる。以下、本実施形態にかかる基板処理装置としてのウェハ処理装置、基板処理方法としてのウェハ処理方法、及び基板製造方法としてのウェハ製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
本実施形態にかかる後述のウェハ処理システム1では、
図1に示すように第1の基板としての第1のウェハWと、第2の基板としての第2のウェハSとが接合された重合基板としての重合ウェハTに対して処理を行う。以下、第1のウェハWにおいて、第2のウェハSに接合される側の面を表面Waといい、表面Waと反対側の面を裏面Wbという。同様に、第2のウェハSにおいて、第1のウェハWに接合される側の面を表面Saといい、表面Saと反対側の面を裏面Sbという。
【0012】
第1のウェハWは、例えばシリコン基板等の半導体ウェハである。第1のウェハWの表面Waには、剥離促進膜Fm、レーザ吸収層としてのレーザ吸収膜Fw、複数のデバイスを含むデバイス層(図示せず)、表面膜Feが積層して形成されている。剥離促進膜Fmには、後述のレーザ照射システム110からのレーザ光に対して透過性を有し、第1のウェハW(シリコン)との密着性が、少なくともレーザ吸収膜Fwとの密着性よりも小さい膜、例えばSiN膜が用いられる。レーザ吸収膜Fwには、後述のレーザ照射システム110からのレーザ光を吸収できる膜、例えば例えば酸化膜(SiO2膜、TEOS膜)等が用いられる。表面膜Feには、例えば酸化膜(THOX膜、SiO2膜、TEOS膜)、SiC膜、SiCN膜又は接着剤などが挙げられる。
【0013】
第2のウェハSも、例えばシリコン基板等の半導体ウェハである。第2のウェハSの表面Saには、複数のデバイスを含むデバイス層(図示せず)が形成され、さらに表面膜Fsが積層して形成されている。表面膜Fsとしては、例えば酸化膜(THOX膜、SiO2膜、TEOS膜)、SiC膜、SiCN膜又は接着剤などが挙げられる。そして、第1のウェハWの表面膜Feと第2のウェハSの表面膜Fsが接合される。
【0014】
図2に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ブロック10、搬送ブロック20、及び処理ブロック30を一体に接続した構成を有している。搬入出ブロック10と処理ブロック30は、搬送ブロック20の周囲に設けられている。具体的に搬入出ブロック10は、搬送ブロック20のY軸負方向側に配置されている。処理ブロック30の後述するウェハ処理装置31は搬送ブロック20のX軸負方向側に配置され、後述する洗浄装置32は搬送ブロック20のX軸正方向側に配置されている。
【0015】
搬入出ブロック10は、例えば外部との間で複数の重合ウェハT、複数の第1のウェハW、複数の第2のウェハSをそれぞれ収容可能なカセットCt、Cw、Csがそれぞれ搬入出される。搬入出ブロック10には、カセット載置台11が設けられている。図示の例では、カセット載置台11には、複数、例えば3つのカセットCt、Cw、CsをX軸方向に一列に載置自在になっている。なお、カセット載置台11に載置されるカセットCt、Cw、Csの個数は、本実施形態に限定されず、任意に決定することができる。
【0016】
搬送ブロック20には、X軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されたウェハ搬送装置22が設けられている。ウェハ搬送装置22は、重合ウェハT、第1のウェハW、第2のウェハSを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム23、23を有している。各搬送アーム23は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム23の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置22は、カセット載置台11のカセットCt、Cw、Cs、後述するウェハ処理装置31及び洗浄装置32に対して、重合ウェハT、第1のウェハW、第2のウェハSを搬送可能に構成されている。
【0017】
処理ブロック30は、ウェハ処理装置31と洗浄装置32を有している。ウェハ処理装置31は、第1のウェハWのレーザ吸収膜Fwにレーザ光を照射して、第2のウェハSから第1のウェハWを剥離する。なお、ウェハ処理装置31の構成は後述する。
【0018】
洗浄装置32は、ウェハ処理装置31で分離された第2のウェハSの表面Sa側の最表面(剥離促進膜Fmの表面)を洗浄する。例えば剥離促進膜Fmの表面にブラシを当接させて、当該表面をスクラブ洗浄する。なお、表面の洗浄には、加圧された洗浄液を用いてもよい。また、洗浄装置32は、第2のウェハSの表面Sa側とともに、裏面Sbを洗浄する構成を有していてもよい。
【0019】
以上のウェハ処理システム1には、制御部としての制御装置40が設けられている。制御装置40は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1における重合ウェハTの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、ウェハ処理システム1における後述のウェハ処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置40にインストールされたものであってもよい。
【0020】
次に、上述したウェハ処理装置31について説明する。
【0021】
図3及び
図4に示すようにウェハ処理装置31は、重合ウェハTを上面で保持する、基板保持部としてのチャック100を有している。チャック100は、第2のウェハSの裏面Sbを吸着保持する。
【0022】
チャック100は、エアベアリング101を介して、スライダテーブル102に支持されている。スライダテーブル102の下面側には、回転機構103が設けられている。回転機構103は、駆動源として例えばモータを内蔵している。チャック100は、回転機構103によってエアベアリング101を介して、θ軸(鉛直軸)回りに回転自在に構成されている。スライダテーブル102は、その下面側に設けられた水平移動機構104によって、Y軸方向に延伸するレール105に沿って移動可能に構成されている。レール105は、基台106に設けられている。なお、水平移動機構104の駆動源は特に限定されるものではないが、例えばリニアモータが用いられる。なお、本実施形態においては、上述の回転機構103及び水平移動機構104が、本開示の技術にかかる「移動機構」に相当する。
【0023】
チャック100の上方には、レーザ照射部としてのレーザ照射システム110が設けられている。レーザ照射システム110は、レーザヘッド111、及びレーザ照射部としてのレンズ112を有している。レンズ112は、昇降機構(図示せず)によって昇降自在に構成されていてもよい。
【0024】
レーザヘッド111は、レーザ光をパルス状に発振するレーザ発振器(図示せず)を有している。すなわち、レーザ照射システム110からチャック100に保持された重合ウェハTに照射されるレーザ光はいわゆるパルスレーザであり、そのパワーが0(ゼロ)と最大値を繰り返すものである。また、本実施形態ではレーザ光はCO2レーザ光であり、CO2レーザ光の波長は例えば8.9μm~11μmである。なお、レーザヘッド111は、レーザ発振器の他の機器、例えば増幅器などを有していてもよい。
【0025】
レンズ112は、筒状の部材であり、チャック100に保持された重合ウェハTにレーザ光を照射する。レーザ照射システム110から発せられたレーザ光は第1のウェハWを透過し、レーザ吸収膜Fwに照射され、吸収される。
【0026】
図4に示すようにチャック100の上方には、剥離処理部としての搬送パッド120が設けられている。搬送パッド120は、昇降機構(図示せず)によって昇降自在に構成されている。また、搬送パッド120は、第1のウェハWの吸着面を有している。そして、搬送パッド120は、チャック100と搬送アーム23との間で第1のウェハWを搬送する。具体的には、チャック100を搬送パッド120の下方(搬送アーム23との受渡位置)まで移動させた後、搬送パッド120は第1のウェハWの裏面Wbを吸着保持し、第2のウェハSから剥離する。続いて、剥離された第1のウェハWを搬送パッド120から搬送アーム23に受け渡して、ウェハ処理装置31から搬出する。
【0027】
なお、本実施形態では、レーザ照射部(レーザ照射システム110)と剥離処理部(搬送パッド120)を同じウェハ処理装置31の内部に設けたが、別の処理装置としてレーザ照射装置と剥離処理装置を設けてもよい。
【0028】
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。なお、本実施形態では、ウェハ処理システム1の外部の接合装置(図示せず)において、第1のウェハWと第2のウェハSが接合され、予め重合ウェハTが形成されている。
【0029】
先ず、重合ウェハTを複数収納したカセットCtが、搬入出ブロック10のカセット載置台11に載置される。
【0030】
次に、ウェハ搬送装置22によりカセットCt内の重合ウェハTが取り出され、ウェハ処理装置31に搬送される。ウェハ処理装置31において重合ウェハTは、搬送アーム23からチャック100に受け渡され、チャック100に吸着保持される。続いて、水平移動機構104によってチャック100を処理位置に移動させる。この処理位置は、レーザ照射システム110から重合ウェハT(レーザ吸収膜Fw)にレーザ光を照射できる位置である。
【0031】
次に、
図5及び
図6に示すようにレーザ照射システム110からレーザ吸収膜Fwにレーザ光Lをパルス状に照射する。レーザ光Lは、第1のウェハWの裏面Wb側から当該第1のウェハW及び剥離促進膜Fmを透過し、レーザ吸収膜Fwにおいて吸収される。この際、レーザ吸収膜Fwはレーザ光Lの吸収によりエネルギーを蓄積することで温度が上昇して膨張する。このレーザ吸収膜Fwの膨張により生じるせん断応力は、剥離促進膜Fmにも伝達される。そして、第1のウェハWに対する剥離促進膜Fmの密着力がレーザ吸収膜Fwに対する剥離促進膜Fmの密着力より小さいため、第1のウェハWと剥離促進膜Fmとの界面において剥離が生じる。
【0032】
レーザ吸収膜Fwにレーザ光Lを照射する際、回転機構103によってチャック100(重合ウェハT)を回転させるとともに、水平移動機構104によってチャック100をY軸方向に移動させる。そうすると、レーザ光Lは、レーザ吸収膜Fwに対して径方向外側から内側に向けて照射され、その結果、外側から内側に螺旋状に照射される。なお、
図6に示す黒塗り矢印はチャック100の回転方向を示している。
【0033】
レーザ光Lは同心円状に環状に照射してもよい。また、レーザ吸収膜Fwにおいて、レーザ光Lは径方向内側から外側に向けて照射されてもよい。また、レーザ吸収膜Fwの中心を頂点とした扇状にレーザ光Lを照射した後、チャック100を移動させ、レーザ光Lの未照射部に対してさらに扇状にレーザ光Lを照射することを繰り返し行って、レーザ吸収膜Fw全体に照射してもよい。さらに、チャック100を移動させ、レーザ光Lを直線状に照射して、レーザ吸収膜Fw全体に照射してもよい。
【0034】
また、本実施形態ではレーザ吸収膜Fwにレーザ光Lを照射するにあたり、チャック100を回転させたが、レンズ112を移動させて、チャック100に対してレンズ112を相対的に回転させてもよい。また、チャック100をY軸方向に移動させたが、レンズ112をY軸方向に移動させてもよい。
【0035】
こうしてウェハ処理装置31では、レーザ吸収膜Fwにレーザ光Lがパルス状に照射される。そして、レーザ光Lをパルス状に発振させた場合、ピークパワー(レーザ光の最大強度)を高くして、第1のウェハWと剥離促進膜Fmとの界面において剥離を発生させることができる。その結果、第2のウェハSから第1のウェハWを適切に剥離させることができる。
【0036】
なお、本実施形態において、レーザ吸収膜Fwに照射されるレーザ光Lの周方向間隔(パルスピッチ)と径方向間隔(インデックスピッチ)は、レーザ吸収膜Fwの厚みに基づいて設定される。このパルスピッチとインデックスピッチの設定方法については後述する。
【0037】
以上のようにレーザ吸収膜Fwにレーザ光Lを照射した後、次に、水平移動機構104によってチャック100を受渡位置に移動させる。そして、
図7(a)に示すように搬送パッド120で第1のウェハWの裏面Wbを吸着保持する。その後、
図7(b)に示すように搬送パッド120が第1のウェハWを吸着保持した状態で、当該搬送パッド120を上昇させて、剥離促進膜Fmから第1のウェハWを剥離する。この際、上述したようにレーザ光Lの照射によって第1のウェハWと剥離促進膜Fmとの界面には剥離が生じているので、大きな荷重をかけることなく、剥離促進膜Fmから第1のウェハWを剥離することができる。そして、第1のウェハWのデバイス層が第2のウェハSに転写される。なお、搬送パッド120を上昇させる際、搬送パッド120を鉛直軸周りに回転させて、第1のウェハWを剥離してもよい。
【0038】
剥離された第1のウェハWは、搬送パッド120からウェハ搬送装置22の搬送アーム23に受け渡され、カセット載置台11のカセットCwに搬送される。なお、ウェハ処理装置31から搬出された第1のウェハWは、カセットCwに搬送される前に洗浄装置32に搬送され、その剥離面である表面Waが洗浄されてもよい。この場合、搬送パッド120によって第1のウェハWの表裏面を反転させて、搬送アーム23に受け渡してもよい。
【0039】
一方、チャック100に保持されている第2のウェハSについては、搬送アーム23に受け渡され、洗浄装置32に搬送される。洗浄装置32では、剥離面である表面Sa側の最表面(剥離促進膜Fmの表面)がスクラブ洗浄される。なお、洗浄装置32では、剥離促進膜Fmの表面とともに、第2のウェハSの裏面Sbが洗浄されてもよい。また、剥離促進膜Fm表面と第2のウェハSの裏面Sbをそれぞれ洗浄する洗浄部を別々に設けてもよい。
【0040】
その後、すべての処理が施された第2のウェハSは、ウェハ搬送装置22によりカセット載置台11のカセットCsに搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0041】
次に、ウェハ処理装置31においてレーザ吸収膜Fwにレーザ光Lを照射する際、
図8に示す周方向に対するレーザ光Lの照射間隔であるパルスピッチPと、径方向に対するレーザ光Lの照射間隔であるインデックスピッチQの設定方法について説明する。
【0042】
先ず、発明者らは、
図9に示すようにレーザ吸収膜Fw(SiO
2膜)の厚み(
図9の横軸)を変化させた場合に、第2のウェハSから第1のウェハWを剥離するために必要なレーザ光Lのパルスエネルギー(
図9の縦軸)を調べた。レーザ吸収膜Fwの厚みが小さい場合、パルスエネルギーを吸収する体積が小さくて吸収効率が小さいため、剥離に必要なパルスエネルギーは大きくなる。一方、レーザ吸収膜Fwが大きい場合、剥離に必要なパルスエネルギーは小さくなる。
【0043】
次に、発明者らは、
図10に示すようにレーザ吸収膜Fw(SiO
2膜)の厚み(
図10の横軸)を変化させた場合に、ウェハ処理のスループット(
図10の縦軸)を調べた。上述のようにレーザ吸収膜Fwの厚みが小さい場合、剥離に必要なパルスエネルギーが大きくなる。かかる場合、パルスエネルギーを大きくしようとするとレーザ光Lのパルス周波数を小さくする必要があるため、ウェハ処理のスループットが低下する。一方、レーザ吸収膜Fwが大きい場合、剥離に必要なパルスエネルギーは小さく、レーザ光Lのパルス周波数を大きくできるため、ウェハ処理のスループットは向上する。
【0044】
以上のように、レーザ吸収膜Fwの厚みとウェハ処理のスループットには相関がある。そして発明者らはさらに鋭意検討した結果、
図11に示すように、剥離を可能にするための、レーザ吸収膜Fw(SiO
2膜)の厚みと、レーザ光LのパルスピッチP及びインデックスピッチQとの間に相関があることを知見した。すなわち、レーザ吸収膜Fwの厚みに応じて、第2のウェハSから第1のウェハWを剥離できる。例えば、
図11中の網掛け部分のパルスピッチP及びインデックスピッチQの範囲では、第2のウェハSから第1のウェハWを剥離できる。なお、
図11に示す例では、パルスピッチPとインデックスピッチQが同じ場合であるが、これらパルスピッチPとインデックスピッチQは異なっていてもよい。
【0045】
本実施形態のパルスピッチPとインデックスピッチQの設定方法は上記知見に基づくものであり、レーザ吸収膜Fwの厚みに基づいて、パルスピッチPとインデックスピッチQを設定する。
【0046】
先ず、レーザ吸収膜Fwの厚みを取得する。レーザ吸収膜Fwの厚みは、ウェハ処理装置31で取得してもよいし、ウェハ処理装置31の外部で予め取得されたものであってもよい。また、レーザ吸収膜Fwの厚みの取得方法は特に限定されるものではなく、例えばセンサ等により直接的、又は間接的に測定されてもよいし、カメラ等により重合ウェハTを撮像することにより取得されてもよい。そして、このように取得されたレーザ吸収膜Fwの厚みは制御装置40に出力される。
【0047】
制御装置40では、取得されたレーザ吸収膜Fwの厚みに基づいて、パルスピッチPとインデックスピッチQを設定する。例えばレーザ光を用いてウェハ処理を行う処理時間(すなわち、本開示におけるレーザ処理時間)が最小になり、スループットが最大になるように、パルスピッチPとインデックスピッチQを設定してもよい。例えば
図11に示す例において、レーザ吸収膜Fwの厚みに応じて、パルスピッチPとインデックスピッチQを剥離可能な最大ピッチに設定する。かかる場合、ウェハ処理のスループットを最大にして、生産性を向上させることができる。なお、パルスピッチPとインデックスピッチQは、上述したように同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
また、例えばウェハ処理の処理時間(スループット)が、ウェハ処理装置31に要求される処理時間(スループット)となるように、パルスピッチPとインデックスピッチQを設定してもよい。かかる場合、ウェハ処理のスループットを確保しつつ、ウェハ処理装置31の装置能力を最大限に活かすことができる。
【0049】
以上のように本実施形態によれば、レーザ吸収膜Fwの厚みに基づいて、レーザ光LのパルスピッチPとインデックスピッチQを設定するため、ウェハ処理のスループットを適切に制御することができる。
【0050】
次に、上述した、レーザ吸収膜Fwの厚みと、レーザ光LのパルスピッチP及びインデックスピッチQとの間に相関があるとの知見に基づいた、重合ウェハTの製造方法について説明する。
【0051】
ウェハ処理システム1の外部の接合装置(図示せず)において、第1のウェハWと第2のウェハSを接合して、重合ウェハTを製造する。この際、第1のウェハWの表面Waには、剥離促進膜Fm、レーザ吸収膜Fw、デバイス層(図示せず)、表面膜Feが積層して形成されている。また、第2のウェハSの表面Saには、デバイス層(図示せず)、表面膜Fsが積層して形成されている。そして、第1のウェハWの表面膜Feと第2のウェハSの表面膜Fsが接合される。
【0052】
レーザ吸収膜Fwの厚みは、重合ウェハTを製造した後、ウェハ処理装置31においてレーザ吸収膜Fwに照射されるレーザ光LのパルスピッチPとインデックスピッチQに基づいて設定される。すなわち、上述したようにウェハ処理装置31におけるウェハ処理の処理時間(スループット)から設定されるパルスピッチPとインデックスピッチQに基づいて、例えば
図11に示す相関を用いて、レーザ吸収膜Fwの厚みを設定する。
【0053】
以上のように本実施形態によれば、レーザ光LのパルスピッチPとインデックスピッチQに基づいて、レーザ吸収膜Fwの厚みを最適に設定することができるため、ウェハ処理装置31におけるウェハ処理のスループットを適切に制御させることができる。
【0054】
なお、以上の実施形態では、重合ウェハTにおいてレーザ吸収膜Fwにレーザ光Lを照射して第2のウェハSから第1のウェハWを剥離する、すなわちレーザリフトオフを行う際に、本開示のパルスピッチPとインデックスピッチQの設定方法を適用したが、適用対象のレーザ処理はこれに限定されない。
【0055】
例えば
図12に示すように、重合ウェハTにおいて第1のウェハWの周縁部Weを除去する、いわゆるエッジトリムを行う際にも、本開示のパルスピッチPとインデックスピッチQの設定方法を適用してもよい。なお、第1のウェハWの周縁部Weは、例えば第1のウェハWの外端部から径方向に0.5mm~3mmの範囲である。
【0056】
具体的には、
図12(a)に示すように、第1のウェハWの内部にレーザ光(例えばYAGレーザ光)を照射し、周縁改質層M1及び分割改質層M2を形成する。周縁改質層M1は、第1のウェハWと同心円上に環状に形成される。分割改質層M2は、周縁改質層M1から径方向に延伸して形成される。
その後、
図12(b)に示すように、周縁部Weと対応する位置におけるレーザ吸収膜Fwにレーザ光(例えばCO
2レーザ光)をパルス状に照射し、第1のウェハWと第2のウェハSの接合強度が低下された未接合領域Aeを形成する。
その後、
図12(c)に示すように、第1のウェハWの周縁部Weの除去、すなわちエッジトリムが行われる。この際、周縁部Weは、周縁改質層M1を基点として第1のウェハWの中央部から剥離されるとともに、未接合領域Aeを基点として第2のウェハSから完全に剥離される。またこの際、除去される周縁部Weは分割改質層M2を基点として小片化される。
【0057】
本実施形態において、
図12(b)に示したようにレーザ吸収膜Fwにレーザ光を照射する際、当該レーザ光のパルスピッチPとインデックスピッチQは、上記実施形態と同様にレーザ吸収膜Fwに基づいて設定される。その結果、上記実施形態と同様の効果を享受することができ、すなわちウェハ処理のスループットを向上させることができる。
【0058】
例えば
図13に示すように、第1のウェハWの内部に、当該第1のウェハWの薄化の基点となる内部面改質層M3を形成し、かかる際に周縁部Weを第1のウェハWの裏面Wb側と一体に除去する場合においても、本開示のパルスピッチPとインデックスピッチQの設定方法を適用してもよい。
【0059】
具体的には、
図13(a)に示すように、第1のウェハWの内部にレーザ光を照射し、周縁改質層M1及び内部面改質層M3を順次形成する。内部面改質層M3は、第1のウェハWの内部において面方向に延伸して形成される。
その後、
図13(b)に示すように、周縁部Weと対応する位置におけるレーザ吸収膜Fwにレーザ光(例えばCO
2レーザ光)をパルス状に照射し、未接合領域Aeを形成する。
その後、
図13(c)に示すように、第1のウェハWは内部面改質層M3を基点として薄化されるとともに、周縁改質層M1及び未接合領域Aeを基点として周縁部Weが一体に剥離して除去される。
【0060】
本実施形態において、
図13(b)に示したようにレーザ吸収膜Fwにレーザ光を照射する際、当該レーザ光のパルスピッチPとインデックスピッチQは、上記実施形態と同様にレーザ吸収膜Fwに基づいて設定される。その結果、上記実施形態と同様の効果を享受することができ、すなわちウェハ処理のスループットを向上させることができる。なお、本実施形態では、第1のウェハWの表面Waにはデバイス層が形成されていたが、例えばデバイス層が形成されていないSOIウェハに同様の処理を行う場合にも、本開示の技術は適用できる。
【0061】
なお、上記
図12に示した例において、
図12(a)の周縁改質層M1及び分割改質層M2の形成と、
図12(b)の未接合領域Aeの形成の順は逆であってもよい。同様に上記
図13に示した例においても、
図13(a)の周縁改質層M1及び内部面改質層M3の形成と、
図13(b)の未接合領域Aeの形成の順は逆であってもよい。
【0062】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 ウェハ処理システム
31 ウェハ処理装置
40 制御装置
100 チャック
103 回転機構
104 水平移動機構
110 レーザ照射システム
112 レンズ
Fw レーザ吸収膜
P パルスピッチ
Q インデックスピッチ
S 第2のウェハ
T 重合ウェハ
W 第1のウェハ