(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】リサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品
(51)【国際特許分類】
C08G 64/42 20060101AFI20241220BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20241220BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
C08G64/42
C08G64/04
C08J11/24 CEZ
(21)【出願番号】P 2023518896
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 KR2022010308
(87)【国際公開番号】W WO2023038266
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122001
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122002
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122003
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122004
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0128892
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0136153
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ-チェ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウンチュ
(72)【発明者】
【氏名】ペ、チュンムン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チョンピン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チュン-チン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ムホ
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-277396(JP,A)
【文献】特表2016-533416(JP,A)
【文献】特開2005-179460(JP,A)
【文献】特開2006-022183(JP,A)
【文献】特開2017-095379(JP,A)
【文献】特表平02-504125(JP,A)
【文献】Eugenio QUARANTA et al.,Depolymerization of poly(bisphenol A carbonate) under mild conditions by solvent-free alcoholysis catalyzed by 1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene as a recyclable organocatalyst: a route to chemical recycling of waste polycarbonate,Green Chemistry,2017年,Vol. 19, No. 22,p.5422-5434,DOI: 10.1039/c7gc02063e
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08G
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールおよびエタノールを含む溶媒下で、ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階と、
前記解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階と、を含
み、
前記メタノールおよびエタノールの合計量は、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して10モル~15モルである、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項2】
前記メタノール1モルに対して、前記エタノールを1モル~15モルで使用する、請求項
1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応は、
ポリカーボネート系樹脂1モルに対して0.5モル以下の量で塩基を反応させて行うことを特徴とする、請求項
1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒は、メタノールおよびエタノール以外に、
テトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートからなる群より選択される1種以上の有機溶媒をさらに含む、請求項
1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒の量は、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して16モル~20モルである、請求項
4に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒の量は、メタノールおよびエタノールの合計1モルに対して1.5モル~2モルである、請求項
4に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項7】
前記メタノールおよびエタノールを含む溶媒下で、ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階は、
メタノールおよびエタノールとメタノールおよびエタノール以外の有機溶媒を混合した混合溶媒に塩基を添加して触媒液を準備する段階と、
前記触媒液にカーボネート系樹脂を添加して攪拌する段階と、を含む、請求項
1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項8】
前記解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階で、
前記解重合反応生成物の減圧蒸留段階を含む、請求項
1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項9】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階をさらに含む、請求項
1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項10】
前記解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階前に、
前記解重合反応生成物の酸による中和反応段階をさらに含む、請求項
1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年9月13日付の韓国特許出願第10-2021-0122001号、2021年9月13日付の韓国特許出願第10-2021-0122002号、2021年9月13日付の韓国特許出願第10-2021-0122003号、2021年9月13日付の韓国特許出願第10-2021-0122004号、2021年9月29日付の韓国特許出願第10-2021-0128892号、および2021年10月13日付の韓国特許出願第10-2021-0136153号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高純度の芳香族ジオール化合物を含有するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品に関する。
【0003】
また、本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高付加価値の副産物を含有するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリカーボネート(Polycarbonate)は熱可塑性高分子であって、優れた透明性、軟性および相対的に低い生産費など優れた特性を有するプラスチックである。
【0005】
多様な用途に幅広く使用されるポリカーボネートであるが、廃処理時の環境と健康に関する懸念は持続的に提起されてきた。
【0006】
現在、物理的なリサイクル方法が行われているが、この場合、品質低下を伴う問題があるので、ポリカーボネートのケミカルリサイクルに対する研究が進められている。
【0007】
ポリカーボネートの化学的分解とは、ポリカーボネートの分解によりモノマーである芳香族ジオール化合物(例えば、ビスフェノールA(Bisphenol A;BPA))を得た後、これを再び重合に活用して高純度のポリカーボネートを得ることをいう。
【0008】
このような化学的分解としては、代表的に熱分解、加水分解およびアルコール分解が知られている。この中で、最も普遍的な方法が塩基触媒を活用したアルコール分解であるが、メタノール分解の場合、人体に有害なメタノールを使用するという問題があり、エタノールの場合は高温高圧の条件を必要とし、収得率が高くない問題がある。
【0009】
また、有機触媒を利用したアルコール分解方法が知られているが、経済的な部分において短所があるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高純度の芳香族ジオール化合物を確保できるリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法、並びにリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を用いたリサイクルプラスチック、および成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、芳香族ジオール化合物を含み、色座標L*が95超であり、色座標a*が-0.06~0.10であり、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物はポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物を含み、前記ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートはポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、メタノールおよびエタノールを含む溶媒下で、ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階と、前記解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階と、を含む、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含む、リサイクルプラスチックを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記リサイクルプラスチックを含む、成形品を提供する。
【0017】
以下、発明の具体的な実施形態によるリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品についてより詳細に説明する。
【0018】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0019】
本明細書で使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0020】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0021】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と名付けられてもよい。
【0022】
1.リサイクルプラスチック合成用単量体組成物
(1)第1組成物
発明の一実施形態によれば、芳香族ジオール化合物を含み、色座標L*が95超であり、色座標a*が-0.06~0.10であり、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物はポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とするリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供することができる。
【0023】
本発明者らは、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収されたにもかかわらず、新規に合成した芳香族ジオール化合物レベルのような高い純度および優れた色座標の特徴を満たすことによって、これを用いてポリカーボネート系樹脂の合成時に優れた物性の実現が可能であることを実験により確認して発明を完成した。
【0024】
特に、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)と、前記他の実施形態のジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物を含み、前記ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートはポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)は、後述するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法で同時にそれぞれ得られる。
【0025】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより芳香族ジオール化合物を含む高純度の第1組成物を得ると同時に、高付加価値の副産物であるジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物を含む第2組成物を得ることもできる技術的な特長点を有する。
【0026】
具体的には、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする。すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにポリカーボネート系樹脂から回収を行った結果、芳香族ジオール化合物が含有されたリサイクルプラスチック合成用単量体組成物が共に得られることを意味する。
【0027】
前記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート繰り返し単位を含有する単独重合体または共重合体をすべて含む意味であり、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む単量体の重合反応または共重合反応により得られる反応生成物を総称する。芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種のみを使用して得られた1種のカーボネート繰り返し単位を含有する場合、単独重合体が合成され得る。また、前記単量体として芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体2種以上を使用するか、芳香族ジオール化合物2種以上およびカーボネート前駆体1種を使用するか、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種以外にその他のジオール1種以上を使用して2種以上のカーボネートが含有される場合、共重合体が合成され得る。前記単独重合体または共重合体は分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0028】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)は、芳香族ジオール化合物を含むことができる。前記芳香族ジオール化合物の具体的な例として、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4―ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。好ましくは、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)の芳香族ジオール化合物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)であり得る。
【0029】
前記芳香族ジオール化合物は、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする。すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにポリカーボネート系樹脂から回収を行った結果、芳香族ジオール化合物も共に得られることを意味する。したがって、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を製造するためにポリカーボネート系樹脂からの回収とは別に外部で新規の芳香族ジオール化合物を添加させる場合、本発明の芳香族ジオール化合物の範疇に含まれない。
【0030】
具体的には、前記ポリカーボネート系樹脂から回収されたとは、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応により得られたことを意味する。前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。特に、前記解重合反応は、後述のようにエタノールとメタノールとの混合溶媒下で行うことが好ましい。
【0031】
一方、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標b*値が2未満、または0.1以上、または0.1~1.9、または1.49~1.80であり得る。また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標L*値が95超、または100以下、または95超100以下、または95.8~100、または95.9~96.3であり得る。また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標a*が-0.06~0.10、または-0.05~0.10、または-0.04~0.09であり得る。
【0032】
本発明において、「色座標」とは、CIE(国際照明委員会、Commossion International de l’Eclairage)で規定した色相値であるCIE Lab色空間での座標を意味し、CIE色空間での任意の位置はL*、a*、b*の三つの座標値で表現される。
【0033】
ここで、L*値は明るさを示すものであり、L*=0であると黒色(black)を示し、L*=100であると白色(white)を示す。また、a*値は、該当色座標を有する色が純赤色(pure red)と純緑色(pure green)のどちらに偏っているかを示し、b*値は、該当色座標を有する色が純黄色(pure yellow)と純青色(pure blue)のどちらに偏っているかを示す。
【0034】
具体的には、前記a*値は-a~+aの範囲を有する。a*の最大値(a*max)は純赤色(pure red)を示し、a*の最小値(a*min)は純緑色(pure green)を示す。また、前記b*値は-b~+bの範囲を有する。b*の最大値(b*max)は純黄色(pure yellow)を示し、b*の最小値(b*min)は純青色(pure blue)を示す。例えば、b*値が負数の場合は純青色に偏った色相であり、正数の場合は純黄色に偏った色相を意味する。b*=50とb*=80を比較したとき、b*=80がb*=50より純黄色に近く位置することを意味する。
【0035】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標L*値が95以下と過度に減少すると、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物のカラー特性が不良になる。
【0036】
一方、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標a*値が0.10超と過度に増加すると、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色相が赤色に偏り過ぎてカラー特性が不良になる。
【0037】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標a*値が-0.06未満と過度に減少すると、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色相が緑色に偏り過ぎてカラー特性が不良になる。
【0038】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標L*、a*、b*の値を測定する方法の例は特に限定されず、プラスチック分野の多様なカラー特性の測定方法を制限なく適用することができる。
【0039】
ただし、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標L*、a*、b*の値を測定する方法の一例を挙げると、HunterLab UltraScan PRO Spectrophotometer装置を用いて反射モードで測定することができる。
【0040】
一方、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、芳香族ジオール化合物の純度が99%超、または100%以下、または99%超100%以下、または99.1%~100%、または99.1%~99.5%、または99.1%~99.4%であり得る。
【0041】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の芳香族ジオール化合物の純度を測定する方法の例は特に限定されるものではなく、例えば、1H NMR、ICP-MS分析、HPLC分析、UPLC分析などを制限なく用いることができる。前記NMR、ICP-MS、HPLC、UPLCの具体的な方法、条件、装置などは従来より知られている多様な内容を制限なく適用することができる。
【0042】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の芳香族ジオール化合物の純度を測定する方法の一例を挙げると、常圧、20~30℃の条件で前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を1w%でアセトニトリル(Acetonitrile)(ACN)溶媒に溶解させた後、ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 1.7μm(2.1*50mm カラム(column))を使用してWaters HPLCシステムでUPLC(ultra performance liquid chromatography)を用いてビスフェノールA(BPA)の純度を分析した。
【0043】
このように、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物で、主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物の純度が99%超と極めて増加して、その他の不純物を最少化することによって、これを用いてポリカーボネート系樹脂を合成すると優れた物性の実現が可能である。
【0044】
一方、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上、または3種すべての化合物が副産物として得られる。すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの2種混合物、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの2種混合物、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの2種混合物、またはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの3種混合物が副産物として得られる。
【0045】
前記ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物は、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする。
【0046】
すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにポリカーボネート系樹脂から回収を行った結果、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物も共に得られることを意味する。したがって、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を製造するためにポリカーボネート系樹脂からの回収とは別に外部で新規のジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物を添加させる場合、前記一実施形態のジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物の範疇に含まれない。
【0047】
具体的には、前記ポリカーボネート系樹脂から回収されたとは、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応により得られたことを意味する。前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。特に、前記解重合反応は、後述のようにエタノールとメタノールとの混合溶媒下で行うことが好ましい。
【0048】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物において主な回収目標物質は芳香族ジオール化合物であるので、前記ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物は、副産物として別途分離される。
【0049】
上述した他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物が別途分離された副産物組成物に相当する。
【0050】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、後述する多様なリサイクルプラスチック(例えば、ポリカーボネート(PC))の製造原料として使用することができる。
【0051】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)は、一部の少量のその他の添加剤、溶媒をさらに含み得、具体的な添加剤や溶媒の種類は特に限定されず、ポリカーボネート系樹脂の解重合による芳香族ジオール化合物の回収工程で広く使用される多様な物質を制限なく適用することができる。
【0052】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)は、後述するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法によって得られたものであり得る。すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)は、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応後に、主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物のみを高純度で確保するために多様な濾過、精製、洗浄、乾燥工程を経て得られた結果物に該当する。
【0053】
(2)第2組成物
一方、発明の他の実施形態によれば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物を含み、前記ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートはポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供することができる。
【0054】
本発明者らは、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルによってジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物が回収されることによって、高付加価値を有する単量体を製造できることを実験により確認して発明を完成した。
【0055】
前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上、または3種すべての化合物をさらに含むことができる。
【0056】
すなわち、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの2種混合物、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの2種混合物、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの2種混合物、またはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの3種混合物をさらに含むことができる。
【0057】
前記ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物は、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする。
【0058】
すなわち、前記他の一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにポリカーボネート系樹脂から回収を行った結果、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物も共に得られることを意味する。したがって、前記他の一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を製造するためにポリカーボネート系樹脂からの回収とは別に外部で新規のジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物を添加させる場合、前記他の一実施形態のジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物の範疇に含まれない。
【0059】
具体的には、前記ポリカーボネート系樹脂から回収されたとは、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応により得られたことを意味する。前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。
【0060】
前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、前記ジメチルカーボネートが1%~30%、または3%~25%、ジエチルカーボネートが10%~65%、または16%~60%、エチルメチルカーボネートが30%~60%、または37%~57%の比率で含まれる。
【0061】
前記ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートの比率を測定する方法は特に限定されるものではないが、一例を挙げると、ガスクロマトグラフィー(GC)分析が挙げられる。より具体的には、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)それぞれの標準サンプルを同じ濃度にEtOH溶媒に溶かしてGCを測定したピーク面積値を基準値として、試料中のカーボネート副産物(ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC))それぞれのピーク面積値の比率(試料のピーク面積値/標準サンプルのピーク面積値)を求め、前記GC結果により得られたカーボネート副産物(ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC))それぞれのピーク面積値の比率の合計を100%とするとき、それぞれのカーボネート副産物の相対的な比率を計算することができる。
【0062】
このように、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物においては、高付加価値を有するエチルメチルカーボネートが過剰に含有され、これを活用して多様な工程にリサイクルすることができる。
【0063】
前記他の一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、後述する多様なリサイクルプラスチック(例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、エポキシ樹脂)の製造原料として使用することができる。
【0064】
前記他の一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)は、一部の少量のその他の添加剤、溶媒をさらに含み得、具体的な添加剤や溶媒の種類は特に限定されず、ポリカーボネート系樹脂の解重合による芳香族ジオール化合物の回収工程で広く使用される多様な物質を制限なく適用することができる。
【0065】
前記他の一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)は、後述するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法によって得られたものであり得る。すなわち、前記他の一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)は、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応後に、主な回収目標物質であるジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートのみを高純度で確保するために多様な濾過、精製、洗浄、乾燥工程を経て得られた結果物に該当する。
【0066】
2.リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法
発明の他の実施形態によれば、メタノールおよびエタノールを含む溶媒下で、ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階と、前記解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階と、を含むリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法を提供することができる。
【0067】
本発明者らは、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法のように、ポリカーボネート系樹脂を化学的分解によってリサイクルする解重合反応時、反応溶媒としてメタノールとエタノールを共に適用したアルコール分解を行うことによって、本発明において主な合成目標物質である芳香族ジオール化合物を高純度で確保できるだけでなく、高付加副産物であるジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物を確保できることを実験により確認して発明を完成した。
【0068】
特に、従来のようにメタノールのみを使用してアルコール分解を行う場合やエタノールのみを使用してアルコール分解を行う場合にはエチルメチルカーボネートを副産物として確保しにくく、ジメチルカーボネートとジエチルカーボネートを同時に副産物として確保しにくい。しかし、本発明の他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法によれば、主産物である芳香族ジオール化合物は、従来と同等水準以上の高純度と優れた光学物性を有し、かつ、高付加価値を有するジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物、特に、エチルメチルカーボネートを高い収率で確保できるという長所がある。
【0069】
具体的には、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、メタノールおよびエタノールを含む溶媒下で、ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階を含むことができる。
【0070】
前記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート繰り返し単位を含有する単独重合体または共重合体を両方含む意味であり、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む単量体の重合反応または共重合反応により得られる反応生成物を総称する。芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種のみを使用して得られた1種のカーボネート繰り返し単位を含有する場合単独重合体が合成され得る。また、前記単量体として芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体2種以上を使用するか、芳香族ジオール化合物2種以上およびカーボネート前駆体1種を使用するか、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種以外にその他のジオール1種以上を使用して2種以上のカーボネートを含有する場合共重合体が合成され得る。前記単独重合体または共重合体は、分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0071】
前記ポリカーボネート系樹脂は、合成により生産された新規のポリカーボネート系樹脂、再生工程により生産された再生ポリカーボネート系樹脂、またはポリカーボネート系樹脂廃棄物など多様な形態、種類に関係なく適用することができる。
【0072】
ただし、必要に応じて、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応を行う前に、ポリカーボネート系樹脂の前処理工程を行い、ポリカーボネート系樹脂から芳香族ジオール化合物、およびカーボネート前駆体を回収する工程の効率を高めることができる。前記前処理工程の例としては、洗浄、乾燥、粉砕、グリコール分解などが挙げられ、それぞれの前処理工程の具体的な方法は限定されず、ポリカーボネート系樹脂の解重合による芳香族ジオール化合物、およびカーボネート前駆体の回収工程で広く使用される多様な方法を制限なく適用することができる。
【0073】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応時、前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。前記塩基の種類は特に限定されず、一例として、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)が挙げられる。前記塩基は触媒として作用する塩基触媒であって、温和な条件下で主に利用される有機触媒に比べて経済性がある利点がある。
【0074】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応時、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して0.5モル以下、または0.4モル以下、または0.3モル以下、または0.1モル以上、または0.2モル以上、または0.1モル~0.5モル、または0.1モル~0.4モル、または0.1モル~0.3モル、または0.2モル~0.5モル、または0.2モル~0.4モル、または0.2モル~0.3モルの含有量で塩基を反応させて行うことができる。前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応時、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して0.5モル超で塩基を反応させると、アルカリ塩の発生量の増加の影響により不純物が増加して目標回収物質の純度が減少し、触媒反応の経済性が減少する限界がある。
【0075】
また、前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応は、メタノールおよびエタノールを含む溶媒下で行うことができる。本発明は、ポリカーボネート系樹脂をメタノールおよびエタノールを含む溶媒に分解させて高純度モノマーであるビスフェノールAを安定的に得ることができ、また、反応副産物として高付加価値のあるジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物をさらに得られる利点がある。
【0076】
具体的には、前記メタノール1モルに対して、エタノールを1モル~15モル、または1.1モル~15モル、1.2モル~15モル、または1.1モル~10モル、または1.2モル~10モルで含むことができる。前記メタノール1モルに対して、エタノールを1モル未満、または1.1モル未満、または1.2モル未満と過度に少なく使用すると、人体に有害なメタノール含有量が過度に増加する問題がある。また、前記メタノール1モルに対して、エタノールを15モル超過と過度に多く使用すると、メタノール含有量の減少によってジメチルカーボネートやエチルメチルカーボネートを副産物として十分に確保しにくいという限界がある。
【0077】
前記メタノールおよびエタノールの含有量は、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して5モル~15モル、または8モル~13モル、または10モル~12モルであり得る。前記メタノールおよびエタノールの含有量は、メタノールの含有量とエタノールの含有量の合計を意味する。また、メタノールおよびエタノールはビスフェノールAに対する溶解性が良いので、上記の範囲内のメタノールおよびエタノールを必ず含まなければならない。前記メタノールおよびエタノールの含有量がポリカーボネート系樹脂1モルに対して5モル未満と過度に減少すると、ポリカーボネート系樹脂のアルコール分解が十分に進行し難い。これに対して、前記メタノールおよびエタノールの含有量がポリカーボネート系樹脂1モルに対して15モル超と過度に増加すると、アルコールの過剰使用により工程の経済性が低下する。
【0078】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応が行われる溶媒は、メタノールおよびエタノールの他に、テトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートからなる群より選択される1種以上の有機溶媒をさらに含むことができる。
【0079】
前記有機溶媒はテトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0080】
より好ましくは、前記有機溶媒としてメチレンクロライドを使用することができる。前記メタノールおよびエタノールと混合する有機溶媒としてメチレンクロライドを用いる場合、ポリカーボネートに対する溶解特性が改善され、反応性を向上させる利点がある。
【0081】
前記有機溶媒の含有量は、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して16モル~20モル、または16モル~18モルであり得る。また、前記有機溶媒の含有量は、メタノールおよびエタノールの合計1モルに対して1.5モル~2モルであり得る。上記の範囲内でポリカーボネート系樹脂、メタノールおよびエタノールと有機溶媒を混合することによって必要な水準の重合体の単位体化(Depolymerization)反応を行うことができる利点がある。
【0082】
また、前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応を行う温度は特に限定されるものではないが、例えば20℃~100℃、または50℃~70℃で行うことができる。また、前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応を行う時間は1時間~30時間、または4時間~6時間の間行うことができる。
【0083】
具体的には、前記条件は、従来の加圧/高温工程に比べて穏和な(Mild)工程条件であり、前記条件下で攪拌を行うことによって加圧/高温工程に比べて穏和な(Mild)条件で工程を行うことができ、特に、50℃~70℃で4時間~6時間の間攪拌するとき、再現性および安定性の側面から最も効率的な結果を得ることができる利点がある。
【0084】
すなわち、本発明は、有機触媒を使用せずとも、混合溶媒の種類および混合量、並びに塩基触媒の種類および含有量を調節することによって加圧/高温工程を使用せずとも穏和な条件下で高純度の芳香族ジオール化合物(例えば、ビスフェノールA)が得られ、メタノールおよびエタノール溶媒を使用するため、副産物としてジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが得られる利点がある。
【0085】
より具体的には、前記メタノールおよびエタノールを含む溶媒下で、ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階は、メタノールおよびエタノールと有機溶媒を混合した混合溶媒に塩基を添加して触媒液を準備する第1段階と、前記触媒液にカーボネート系樹脂を添加して攪拌する第2段階と、を含むことができる。前記第1段階で、メタノール、エタノール、有機溶媒、塩基、およびポリカーボネート系樹脂に関する内容は上述した通りである。
【0086】
また、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階前に、前記解重合反応生成物の酸による中和反応段階をさらに含むことができる。
【0087】
例えば、ポリカーボネート系樹脂のアルカリ分解産物は、芳香族ジオール化合物、またはその塩を含むが、本発明の主な回収目標物質は芳香族ジオール化合物であるので、前記アルカリ分解により得られた芳香族ジオール化合物の塩の場合、追加的な酸による中和工程により芳香族ジオール化合物に転換させることができる。すなわち、前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応がアルカリ分解である場合、酸による中和反応段階を経ることができる。
【0088】
前記中和反応時に使用される酸は強酸を使用することができ、例えば、塩酸(HCl)が挙げられる。前記強酸による中和反応により、中和反応終了時のpHが6未満、または4以下、または2以下を満たすことができる。前記中和反応時の温度は25℃以上100℃以下に調節することができる。
【0089】
また、必要に応じて、前記解重合反応生成物の酸による中和反応段階を行った後には濾過、または吸着により残留する不純物を除去する工程をさらに経ることができる。具体的には、水層と有機層を分離して有機層を真空濾過により濾過して芳香族ジオール化合物が含有された液体を回収することができる。
【0090】
また、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階を含むことができる。このように分離されたカーボネート前駆体は、前記一実施形態で第2組成物に該当する。したがって、前記分離されたカーボネート前駆体は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物を含むことができる。
【0091】
例えば、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応生成物は、芳香族ジオール化合物、またはその塩とカーボネート前駆体を含む。前記芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体に関する内容は前記一実施形態で上述した内容を全て含む。
【0092】
前記解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階で、前記解重合反応生成物の減圧蒸留段階を含むことができる。前記減圧蒸留の条件の例は特に限定されるものではないが、具体的な一例を挙げると、前記ポリカーボネート系樹脂を、解重合反応生成物を200mbar~300mbarの圧力、20℃~30℃の温度条件で加圧した後、10mbar~50mbarの圧力、20℃~30℃の温度条件で減圧して低温蒸留させることができる。
【0093】
前記分離されたカーボネート前駆体は別途の分離精製過程なしにリサイクルするか、必要に応じて通常の抽出、吸着、乾燥などの分離精製を経てリサイクルすることができる。具体的な精製条件は特に限定されず、具体的な精製装置、方法については公知の多様な精製技術を制限なく適用することができる。
【0094】
また、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階をさらに含むことができる。これにより、主な回収物質である芳香族ジオール化合物が得られ、これは前記一実施形態で第1組成物に該当する。
【0095】
具体的には、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の洗浄段階を含むことができる。また、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の吸着精製段階を含むことができる。また、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の再結晶段階を含むことができる。
【0096】
前記洗浄段階、前記吸着精製段階、または前記再結晶段階それぞれの順序は特に限定されず、任意の順に行ってもよいが、一例を挙げると、前記洗浄段階、前記吸着精製段階、および前記再結晶段階の順に行うことができる。前記洗浄段階、前記吸着精製段階、および前記再結晶段階は、それぞれ少なくとも1回以上繰り返し行うことができる。具体的な洗浄、吸着、再結晶の装置、方法については公知の多様な精製技術を制限なく適用することができる。
【0097】
具体的には、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の洗浄段階で、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物には芳香族ジオール化合物を含有することができる。ただし、芳香族ジオール化合物を得る回収工程中に多様な不純物が残留しているので、これを十分に除去して高純度の芳香族ジオール化合物を確保するために洗浄を行うことができる。
【0098】
具体的には、前記洗浄段階は、10℃以上30℃以下、または20℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階と、40℃以上80℃以下、または40℃以上60℃以下、または45℃以上55℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階と、を含むことができる。前記温度条件は、溶媒による洗浄が行われる洗浄容器の内部の温度を意味し、常温を外れる高温を維持するために多様な加熱機構を制限なく適用することができる。
【0099】
前記洗浄段階は、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を先に行い、40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を後に行うことができる。また、前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を先に行い、10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を後に行うことができる。
【0100】
より好ましくは、前記洗浄段階は、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を先に行い、40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を後に行うことができる。そのため、中和段階後の強酸による反応器の腐食を最小化することができる。
【0101】
前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階、および40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階は、それぞれ少なくとも1回以上繰り返し行うことができる。
【0102】
また、必要に応じて、10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階、および40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を行った後に、濾過により残留する溶媒を除去する工程をさらに経ることができる。
【0103】
より具体的には、前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度と、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度との差異値が20℃以上50℃以下であり得る。
【0104】
前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度と、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度との差異値とは、前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度から、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度を引いた値を意味する。
【0105】
前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度と、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度との差異値が20℃未満と過度に減少すると、不純物を十分に除去し難い。
【0106】
前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度と、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度との差異値が50℃超と過度に増加すると、極限の温度条件を維持するために過酷な条件が形成され、工程の効率性が低下する。
【0107】
前記洗浄段階で使用される溶媒は水、アルコール、有機溶媒のうち一つの溶媒を含むことができる。前記有機溶媒としてはテトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
【0108】
前記洗浄段階で使用される溶媒は、解重合反応に使用されたポリカーボネート系樹脂1モルを基準として1モル~30モル、または2モル~25モルの比率で使用することができる。
【0109】
より具体的には、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の溶媒は有機溶媒であり得る。前記有機溶媒としては、好ましくはメチレンクロライドを使用することができる。そして、この時、前記有機溶媒は、ポリカーボネート系樹脂1モルを基準として1モル~10モル、または1モル~5モルで使用することができる。
【0110】
また、前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の溶媒は水であり得る。前記水を使用する場合、残留する塩形態の不純物を効果的に除去することができる。そして、この時、前記溶媒は、ポリカーボネート系樹脂1モルを基準として20モル~30モル、または20モル~25モルで使用することができる。
【0111】
一方、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の吸着精製段階で、前記解重合反応生成物に吸着剤を接触させることができる。前記吸着剤の例としては、活性炭、木炭(charcoal)、セライト(celite)、またはこれらの混合物を使用することができる。すなわち、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の吸着精製段階は、カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に吸着剤を投入して吸着精製させた後、吸着剤を除去する段階を含むことができる。
【0112】
前記活性炭は、原料を約500℃の炭化過程(carbonization)と約900℃の活性化(activated carbon)過程を経て製造された微細細孔を有する黒色炭素素材であって、その例は特に限定されるものではないが、例えば、原料種類によって植物系、石炭系、石油系、廃棄物質活性炭など多様な活性炭を制限なく適用可能である。より具体的な一例を挙げると、植物系活性炭としてヤシガラ活性炭、木材活性炭、ノコギリくず活性炭が挙げられる。また、石炭系活性炭としては褐炭活性炭、有煙炭活性炭、無煙炭活性炭が挙げられる。また、石油系活性炭としては石油コークス活性炭、オイルカーボン活性炭が挙げられる。また、廃棄物質活性炭としては合成樹脂活性炭、パルプ活性炭が挙げられる。
【0113】
前記第1吸着剤による吸着精製条件は特に限定されるものではなく、従来より知られている多様な吸着精製条件を制限なく使用することができる。ただし、一例を挙げると、吸着剤の投入量はポリカーボネート系樹脂に対して40重量%~60重量%であり、吸着時間は1時間~5時間であり、吸着方法は攪拌吸着、またはLab用吸着塔を用いることができる。
【0114】
必要に応じて、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の吸着精製段階前にカーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に溶媒を添加する段階をさらに含むことができる。前記溶媒の例としてはエタノールが挙げられ、前記エタノールはポリカーボネート系樹脂1モルに対して1モル~20モル、または10モル~20モル、または15モル~20モルの比率で添加することができる。前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に溶媒を添加する段階により前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に含まれた芳香族ジオール化合物の結晶が溶媒に再溶解される。
【0115】
一方、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の再結晶段階で、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に含有された多様な不純物を十分に除去して高純度の芳香族ジオール化合物を確保することができる。
【0116】
具体的には、前記再結晶段階において前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に水を添加して再結晶させる段階を含むことができる。前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に水を添加して再結晶させる工程により、解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物、またはその塩の溶解度の増加により結晶、または結晶間に付いている不純物を最大限溶媒に溶解させることができ、溶解した芳香族ジオール化合物が不純物に比べて溶解度が悪いので、その後、温度を下げたとき、溶解度の差異によって芳香族ジオール化合物の結晶として容易に析出される。
【0117】
より具体的には、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に水を添加して再結晶させる段階で、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して200モル~400モル、または250モル~350モルの水を使用することができる。前記水が過度に少なく使用されると、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物を溶解するための温度が過度に高くなって工程効率が悪くなり、再結晶による不純物の除去が容易ではない。反面、水が過度に過量使用されると、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物の溶解度が過度に高くなり、再結晶後に回収される芳香族ジオール化合物の収率が減少し、多量の溶媒使用による工程効率性が低下する。
【0118】
必要に応じて、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の再結晶段階を行った後に濾過、または吸着により残留する不純物を除去する工程をさらに経ることができる。
【0119】
また、必要に応じて、前記再結晶段階後に、乾燥段階をさらに含むことができる。前記乾燥により残留する溶媒を除去することができ、具体的な乾燥条件は特に限定されるものではないが、例えば10℃~100℃、または10℃~50℃の温度で乾燥を行うことができる。前記乾燥時に使用される具体的な乾燥装置、方法については公知の多様な乾燥技術を制限なく適用可能である。
【0120】
3.リサイクルプラスチック
発明のさらに他の実施形態によれば、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックを提供することができる。また、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックを提供することができる。
【0121】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)および他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)に関する内容は前記実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0122】
前記リサイクルプラスチックに該当する例は特に限定されず、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックは、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール化合物を単量体として合成される多様なプラスチックを制限なく適用することができ、より具体的な例としてはポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0123】
また、具体的には、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、またはエチルメチルカーボネートなどのカーボネート前駆体を単量体として合成される多様なプラスチックを制限なく適用することができ、より具体的な例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0124】
特に、前記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート繰り返し単位を含有する単独重合体または共重合体をすべて含む意味であり、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む単量体の重合反応または共重合反応により得られる反応生成物を総称する。芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種のみを使用して得られた1種のカーボネート繰り返し単位を含有する場合単独重合体が合成される。また、前記単量体として芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体2種以上を使用するか、芳香族ジオール化合物2種以上およびカーボネート前駆体1種を使用するか、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種以外にその他のジオール1種以上を使用して2種以上のカーボネートが含有される場合共重合体が合成される。前記単独重合体または共重合体は、分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0125】
より具体的には、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックで、共単量体としてはカーボネート前駆体を使用することができる。前記カーボネート前駆体の具体的な例としては、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネートまたはビスハロホルメートが挙げられる。前記カーボネート前駆体として前記他の実施形態のジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される2種以上の化合物を含むリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)を使用することもできる。
【0126】
また、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックで、共単量体としては芳香族ジオール化合物が挙げられる。
【0127】
前記芳香族ジオール化合物の具体的な例としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4―ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。前記芳香族ジオール化合物として前記一実施形態の芳香族ジオール化合物を含むリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)を使用することもできる。
【0128】
前記ポリカーボネート系樹脂を合成するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応工程の例は特に限定されるものではなく、従来より知られている多様なポリカーボネートの製造方法を制限なく適用可能である。
【0129】
ただし、前記ポリカーボネートの製造方法の一例を挙げると、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体を含む組成物を重合する段階を含むポリカーボネートの製造方法を使用することができる。この時、前記重合は界面重合で行うことができ、界面重合時に常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量調節が容易である。
【0130】
前記重合温度は0℃~40℃、反応時間は10分~5時間であり得る。また、反応中のpHは9以上または11以上を維持することができる。
【0131】
前記重合に使用できる溶媒としては、当業界でポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に限定されず、一例としてメチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0132】
また、前記重合は酸結合剤の存在下で行うことができ、前記酸結合剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0133】
また、前記重合時のポリカーボネートの分子量調節のために、分子量調節剤の存在下で重合を行うことができる。前記分子量調節剤としては炭素数1~20のアルキルフェノールを使用することができ、その具体的な例としては、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールまたはトリアコンチルフェノールが挙げられる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開示中または重合開示後に投入することができる。前記分子量調節剤は、前記芳香族ジオール化合物100重量部に対して0.01~10重量部、または0.1~6重量部を使用することができ、上記の範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0134】
また、前記重合反応の促進のために、トリエチルアミン、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などの反応促進剤をさらに使用することができる。
【0135】
4.成形品
発明のさらに他の実施形態によれば、前記他の実施形態のリサイクルプラスチックを含む成形品を提供することができる。前記リサイクルプラスチックに関する内容は前記他の実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0136】
前記成形品は、前記リサイクルプラスチックを公知の多様なプラスチック成形方法を制限なく適用して得られたものであり得、前記成形方法の一例を挙げると、射出成形、発泡射出成形、ブロー成形、または押出成形が挙げられる。
【0137】
前記成形品の例は特に限定されるものではなく、プラスチックを使用する多様な成形品に制限なく適用可能である。前記成形品の一例を挙げると、自動車部品、電機電子製品、通信製品、生活用品、建築素材、光学部品、外装材などが挙げられる。
【0138】
前記成形品は、前記他の実施形態のリサイクルプラスチックの他に、必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、顔料および染料からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0139】
前記成形品の製造方法の一例として、前記他の実施形態のリサイクルプラスチックと添加剤をミキサーを用いてうまく混合した後、押出機で押出成形してペレットに製造し、前記ペレットを乾燥させた後に射出成形機で射出する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0140】
本発明によれば、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高純度の芳香族ジオール化合物を含有するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品を提供することができる。また、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高付加副産物を含有するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0141】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0142】
<実施例:リサイクルビスフェノールA単量体組成物の製造>
実施例1
(1.分解段階)250ml3口フラスコ(3-neck flask)にエタノール/メタノール/メチレンクロライドの混合溶媒28mol(エタノール:メタノール:メチレンクロライド=10:1:17のモル比)および水酸化ナトリウム0.25molを投入して攪拌した。その後、廃ポリカーボネート(PC)1molを投入し、60℃で6時間攪拌してPC解重合反応を行った。前記解重合反応の生成物を常温に冷却してビスフェノールA混合液を得た。
【0143】
(2.中和段階)前記ビスフェノールAが含有された混合物を1N塩酸(HCl)0.25molを用いて20~30℃で中和させた後、水層と有機層を分離して有機層を真空濾過によって濾過してビスフェノールAが含有された液体を回収した。
【0144】
(3-1.精製-蒸留段階)その後、pH6未満に低くなった有機層に23molの水を追加した後、250mbar、20~30℃から30mbar、30℃に減圧する低温蒸留により副産物であるジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)および上記で使用したメチレンクロライド、メタノール、エタノール、水を回収した。
【0145】
(3-2.精製-洗浄段階)前記過程によって一定時間の間蒸留が行われるとビスフェノール-Aが析出されてスラリー状態が形成され、該固体を真空濾過して回収した後、3molメチレンクロライド(MC)を使用して20~30℃で1次洗浄し、23molの水を用いて50℃の温度で2次洗浄した。
【0146】
(4-1.追加精製段階-再溶解段階)洗浄物に対してエタノール16.6molを入れて再溶解させた。
【0147】
(4-2.追加精製段階-吸着段階)その後、褐炭活性炭を廃ポリカーボネートに対して50重量%の比率で投入して3時間吸着により精製した後、濾過して褐炭活性炭を除去した。
【0148】
(4-3.追加精製段階-再結晶段階)その後、水260molをゆっくり投入してビスフェノールAを結晶化した後、得られたスラリーを20~30℃で真空濾過してビスフェノールA(BPA)結晶を回収した。
【0149】
(5.乾燥段階)その後、40℃の真空コンベクションオーブンで乾燥してリサイクルされたビスフェノールA(BPA)が回収されたリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0150】
実施例2
下記表1に示すように、前記実施例1でエタノール:メタノール:メチレンクロライドのモル比を9:2:17に変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0151】
実施例3
下記表1に示すように、前記実施例1でエタノール:メタノール:メチレンクロライドのモル比を8:3:17に変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0152】
実施例4
下記表1に示すように、前記実施例1でエタノール:メタノール:メチレンクロライドのモル比を7:4:17に変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0153】
実施例5
下記表1に示すように、前記実施例1でエタノール:メタノール:メチレンクロライドのモル比を6:5:17に変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0154】
<比較例:リサイクルビスフェノールA単量体組成物の製造>
比較例1
下記表1に示すように、前記実施例1でエタノール:メタノール:メチレンクロライドのモル比を0:11:17に変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0155】
比較例2
下記表1に示すように、前記実施例1でエタノール:メタノール:メチレンクロライドのモル比を11:0:17に変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0156】
<実験例>
前記実施例および比較例で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物、または副産物について、以下の方法で物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0157】
1.純度
常圧、20~30℃の条件でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を1w%でアセトニトリル(Acetonitrile)(ACN)溶媒に溶解させた後、ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 1.7μm(2.1*50mm カラム(column))を使用してWaters HPLCシステムでUPLC(ultra performance liquid chromatography)を用いてビスフェノールA(BPA)の純度を分析した。
【0158】
2.色座標(L*、a*、b*)
前記リサイクルビスフェノールA単量体組成物に対してHunterLab UltraScan PRO Spectrophotometer装置を用いて反射モードで分析した。
【0159】
3.副産物(DMC、DEC、EMC)含有量
前記蒸留段階で分離されたMC、MeOH、EtOH、水が含まれているジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)副産物混合液1mlを試料として採取して、以下の条件でガスクロマトグラフィー(GC)分析を行った。
【0160】
<ガスクロマトグラフィー(GC)の条件>
a)Column:HP-1(L:30m、ID:0.32mm、film:1.05m)
b)Injection volume:1μl
c)Inlet
Temp.:260℃、Pressure:6.92psi、Total flow:64.2ml/min、Split flow:60ml/min、
spilt ratio:50:1
d)Column flow:1.2ml/min
e)Oven temp.:70℃/3min-10℃/min-280℃/41min(Total 65min)
f)Detector
Temp.:280℃、H2:35ml/min、Air:300ml/min、He:20ml/min
g)GC Model:Agilent 7890
そして、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)それぞれの標準サンプルを同じ濃度にEtOH溶媒に溶かしてGCにより測定したピーク面積値を基準値として、試料中のカーボネート副産物(ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC))それぞれのピーク面積値の比率(試料のピーク面積値/標準サンプルのピーク面積値)を求めた。
【0161】
前記GC結果により得られたカーボネート副産物(ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC))それぞれのピーク面積値の比率の合計を100%とするとき、それぞれのカーボネート副産物の相対的な比率を計算して表1に記載した。
【0162】
【0163】
上記表1に示すように、実施例1~実施例5で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は99.1%~99.4%の高純度を示した。また、実施例1~5で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は、色座標L*が95.9~96.3、a*が-0.04~0.09、b*が1.49~1.80を示し、優れた光学物性を示した。さらに、実施例1~実施例5で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は、副産物としてジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)の3種のカーボネートが全て得られた。反面、比較例2で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は99.0%と実施例に比べて純度が減少した。また、比較例1で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は、色座標L*が95.77、a*が-0.08、b*が1.51を示し、比較例2で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は、色座標a*が0.11を示し、実施例に比べて不良な光学物性を示した。さらに、比較例1で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物の副産物としてはジメチルカーボネート(DMC)のみが、比較例2で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物の副産物としてはジエチルカーボネート(DEC)のみが得られた。