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特許7607874振動解析装置、振動解析方法及びプログラム
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  • 特許-振動解析装置、振動解析方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】振動解析装置、振動解析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20241223BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241223BHJP
【FI】
G01H9/00 Z
G06T7/00 300D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021040097
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139623
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】石井 抱
(72)【発明者】
【氏名】胡 少鵬
(72)【発明者】
【氏名】島崎 航平
(72)【発明者】
【氏名】王 飛躍
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/080535(WO,A1)
【文献】特開2015-203997(JP,A)
【文献】特開2019-190805(JP,A)
【文献】特開2013-047674(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198534(WO,A1)
【文献】特開2020-186957(JP,A)
【文献】特開2003-156389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0380658(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習の手法によって、複数の解析対象を含む第1の時系列画像から前記解析対象を認識する解析対象認識部と、
前記第1の時系列画像より高いサンプリングレートの第2の時系列画像と、前記解析対象認識部で認識された解析対象の座標とに基づいて、テンプレートマッチングにより解析対象の振動状態を算出する振動解析部と、を備え
前記第1の時系列画像のサンプリングレートは、複数の前記解析対象の振幅のうち最も大きい振幅に基づいて調整される、
ことを特徴とする振動解析装置。
【請求項2】
前記第1の時系列画像は、前記第2の時系列画像の間引き画像である、
ことを特徴とする請求項1に記載の振動解析装置。
【請求項3】
前記解析対象の座標は、異なる視点で撮影された複数の第2の時系列画像から算出される3次元座標である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の振動解析装置。
【請求項4】
機械学習の手法によって、複数の解析対象を含む第1の時系列画像から前記解析対象を認識する解析対象認識工程と、
前記第1の時系列画像より高いサンプリングレートの第2の時系列画像と、前記解析対象認識工程で認識された解析対象の座標とに基づいて、テンプレートマッチングにより解析対象の振動状態を算出する振動解析工程と、を含み、
前記第1の時系列画像のサンプリングレートは、複数の前記解析対象の振幅のうち最も大きい振幅に基づいて調整される、
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項5】
コンピュータを、
機械学習の手法によって、複数の解析対象を含む第1の時系列画像から前記解析対象を認識する解析対象認識部、
前記第1の時系列画像より高いサンプリングレートの第2の時系列画像と、前記解析対象認識部で認識された解析対象の座標とに基づいて、テンプレートマッチングにより解析対象の振動状態を算出する振動解析部、として機能させるとともに、
前記第1の時系列画像のサンプリングレートを、複数の前記解析対象の振幅のうち最も大きい振幅に基づいて調整する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動解析装置、振動解析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像認識技術の発達にともない、画像認識を用いた振動解析方法が開発されている。例えば、特許文献1では、テンプレートマッチングを用いてプロペラの軸の振動を計測する方法が開示されている。テンプレートマッチングによる振動解析は、解析対象の画像の類似度から、解析対象の変位量を算出して行われる。このようなテンプレートマッチングを用いる方法では、解析条件によってサブピクセルレベルでの変動検出を行うことが可能であり、精度の高い解析を行うことができる。しかしながら、計算量が大きく計算に要する時間が長くなるので、一般的に、広範囲の画像ではなく局所的な範囲(関心領域(ROI:Region Of Interest))の画像を用いて変動検出が行われる。
【0003】
また、他の画像認識方法として、機械学習の手法を用いて解析対象をトラッキングする技術が開発されている。この方法では、予め学習された学習済みモデルを用いて画像を処理して、解析対象を認識することにより、解析対象の変位を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-32496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像認識を用いて振動解析を行う場合、高い精度で解析対象の変位を検出すること、すなわち微小な変位を高いサンプリングレートで検出することが求められる。したがって、局所的なテンプレートマッチング、画像相関法等を用いて、時系列画像から解析対象周辺の関心領域を画像解析して振動状態を解析する方法が用いられる。
【0006】
しかしながら、局所的対象追跡手法で振動解析を行う場合、解析対象の振幅(変位量)が大きくなると、関心領域内での解析対象の移動量が大きくなり、場合によっては関心領域から外れて、振動状態を解析できなくなるおそれがある。
【0007】
また、機械学習の手法を用いた画像認識によって解析対象の変位を解析する場合、広い範囲で複数の解析対象を検出、認識することが可能となる反面、変位量の計測精度が低く(数ピクセルレベル)、画像認識に要する計算時間も長い。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、解析対象の振幅が不明な場合であっても、精度よく振動解析を行うことができる振動解析装置、振動解析方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係る振動解析装置は、
機械学習の手法によって、複数の解析対象を含む第1の時系列画像から前記解析対象を認識する解析対象認識部と、
前記第1の時系列画像より高いサンプリングレートの第2の時系列画像と、前記解析対象認識部で認識された解析対象の座標とに基づいて、テンプレートマッチングにより解析対象の振動状態を算出する振動解析部と、を備え
前記第1の時系列画像のサンプリングレートは、複数の前記解析対象の振幅のうち最も大きい振幅に基づいて調整される。
【0010】
また、前記第1の時系列画像は、前記第2の時系列画像の間引き画像である、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記解析対象の座標は、異なる視点で撮影された複数の第2の時系列画像から算出される3次元座標である、
こととしてもよい。
【0014】
また、本発明の第2の観点に係る振動解析方法は、
機械学習の手法によって、複数の解析対象を含む第1の時系列画像から前記解析対象を認識する解析対象認識工程と、
前記第1の時系列画像より高いサンプリングレートの第2の時系列画像と、前記解析対象認識工程で認識された解析対象の座標とに基づいて、テンプレートマッチングにより解析対象の振動状態を算出する振動解析工程と、を含み、
前記第1の時系列画像のサンプリングレートは、複数の前記解析対象の振幅のうち最も大きい振幅に基づいて調整される。
【0015】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
機械学習の手法によって、複数の解析対象を含む第1の時系列画像から前記解析対象を認識する解析対象認識部、
前記第1の時系列画像より高いサンプリングレートの第2の時系列画像と、前記解析対象認識部で認識された解析対象の座標とに基づいて、テンプレートマッチングにより解析対象の振動状態を算出する振動解析部、として機能させるとともに、
前記第1の時系列画像のサンプリングレートを、複数の前記解析対象の振幅のうち最も大きい振幅に基づいて調整する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の振動解析装置、振動解析方法及びプログラムによれば、低いサンプリングレートで、機械学習による方法を用いて解析対象を認識し、高いサンプリングレートで、テンプレートマッチングによる方法を用いて解析対象の振動を解析するので、解析対象の振幅が不明な場合であっても、精度よく振動解析を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る振動解析装置の機能ブロック図である。
図2】実施の形態に係る振動解析の流れを示すフローチャートである。
図3】(A)は解析対象及び振動解析装置を示す概要図であり、(B)は解析対象の平面図である。
図4】カメラユニットによる解析対象の撮影画像の例であり、(A)は左カメラで撮影された画像、(B)は右カメラで撮影された画像である。
図5】振動解析結果の例を示す図であり、(A)は変位量の時間変化のグラフ、(B)は振動周波数の時間変化のグラフ、(C)は(A)及び(B)について1つの解析対象のグラフを拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る振動解析装置1について説明する。図1のブロック図に示すように、本実施の形態に係る振動解析装置1は、カメラユニット10と、制御ユニット20とを備える。
【0019】
カメラユニット10は、振動の解析対象を含む動画を撮影するものであり、所定の基本フレームレートFで時系列画像を撮影するカメラを備える。カメラユニット10のカメラの種類、台数等は特に限定されず、1台であっても複数台であってもよい。本実施の形態に係るカメラユニット10は、右カメラ11Rと左カメラ11Lとを備える。これにより、振動解析装置1は、異なる視点で撮影された画像から、ステレオ法を用いて解析対象の3次元位置を検出できるので、解析対象の3次元の振動状態を解析することができる。
【0020】
カメラユニット10で撮影される撮影範囲の解析対象は、1つのみであっても、複数であってもよい。例えば、解析対象は、自動車、工作機械等において、振動状態を解析すべき各部に貼られたマーカであってもよい。この場合、マーカは画像認識によるトラッキングを精度よく行うことができるものであることが好ましく、例えば、ArUcoマーカ等のARマーカを用いることができる。
【0021】
右カメラ11R、左カメラ11Lは、予め定められた基本フレームレートFで解析対象を含む画像を撮影し、各時刻の画像データを出力する。
【0022】
制御ユニット20は、例えばコンピュータ装置であり、図1に示すように、制御部21、記憶部22、表示部23、入力部24を備える。
【0023】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成されており、振動解析装置1の動作を制御する。また、制御部21は、カメラユニット10で撮影された解析対象の画像データに基づいて、解析対象の振動状態を解析する。制御部21は、制御部21のROM、記憶部22等に記憶されている各種動作プログラム及びデータをRAMに読み込んでCPU及びGPUを動作させることにより、図1に示される制御部21の各機能を実現させる。これにより、制御部21は、画像データ取得部211、解析対象認識部212、振動解析部213として動作する。
【0024】
画像データ取得部211は、カメラユニット10の右カメラ11R、左カメラ11Lを制御して、解析対象を含む画像を撮影する。また、画像データ取得部211は、撮影された時系列の画像データをカメラユニット10から取得する。
【0025】
解析対象認識部212は、画像データ取得部211で取得された画像データに基づいて、撮影された画像に含まれる解析対象を検出するとともに、解析対象の座標を算出する。撮影された画像中に複数の解析対象が検出された場合、解析対象認識部212は、各解析対象の座標を算出する。
【0026】
振動解析部213は、画像データ取得部211で取得された画像、及び解析対象認識部212で算出された解析対象の座標に基づいて、解析対象の振動状態を解析する。より具体的には、振動解析部213は、解析対象認識部212で算出された解析対象の座標を基準とする関心領域を設定し、関心領域内での解析対象の変位量をテンプレートマッチングによって算出する。また、振動解析部213は、算出された解析対象の変位の時間変化から、解析対象の振幅、振動周波数等を算出して、解析対象の振動状態を解析する。
【0027】
記憶部22は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、解析対象のテンプレート画像、時系列の画像データから解析対象の振動状態を解析する演算プログラム、振動解析部213で算出された解析対象の振動状態を示すデータ等を記憶する。
【0028】
表示部23は、コンピュータ装置である制御ユニット20に備えられた表示用デバイスであり、例えば液晶ディスプレイである。表示部23は、カメラユニット10の右カメラ11R、左カメラ11Lで撮影された解析対象を含む画像、振動解析部213による振動解析結果等を表示する。
【0029】
入力部24は、解析対象となるマーカの設定(テンプレート画像の選択)、解析の開始、終了指示等を入力するための入力デバイスである。入力部24は、制御ユニット20に備えられたキーボード、タッチパネル、マウス等である。
【0030】
続いて、図2のフローチャートを参照しつつ、振動解析装置1を用いた振動解析方法について説明する。本実施の形態では、図3(A)、(B)に示すように、複数のArUcoマーカを貼付した鉄板を振動試験機で振動させた状態を撮影して、撮影された時系列の画像から、解析対象であるArUcoマーカが貼付された各部の振動を解析する場合を例として説明する。
【0031】
まず、解析条件設定として、カメラユニット10の右カメラ11R、左カメラ11Lの基本フレームレートF、機械学習の手法による解析対象認識(以下、AI認識ともいう。)を行う第1のフレームレートF、テンプレートマッチングによる振動解析を行う第2のフレームレートFを設定する(ステップS1)。本実施の形態では、基本フレームレートF及び第2のフレームレートFを1000fps、第1のフレームレートFを20fpsとする。すなわち、テンプレートマッチングによる振動解析は、右カメラ11R、左カメラ11Lの全ての撮影画像からなる第2の時系列画像を用いて行い、AI認識は、間引かれた撮影画像からなる第1の時系列画像を用いて行う。
【0032】
また、振動解析装置1の制御ユニット20は、カメラユニット10を用いて解析対象を含む画像を撮影し、カメラのキャリブレーションを行う。具体的には、解析対象である各マーカの位置、識別番号を検出し、各マーカの2次元位置、3次元位置に対するキャリブレーションパラメータを算出する。本実施の形態では、右カメラ11R、左カメラ11Lの2つのカメラを用いてマーカの2次元位置、3次元位置を算出するので、4つ以上のマーカがあれば、それぞれの算出座標に基づいて、自動的にカメラキャリブレーションを行うことができる。
【0033】
また、カメラキャリブレーションが完了した後、制御ユニット20は、テンプレートマッチングに用いるテンプレート画像を取得する(ステップS2)。具体的には、カメラユニット10で撮影された初期画像が、画像データ取得部211から解析対象認識部212へ送信される。そして、解析対象認識部212は、初期画像から解析対象となるマーカを検出し、各マーカ近傍の関心領域の画像をテンプレート画像として、マーカの識別番号とともに記憶部22に記憶させる。
【0034】
振動試験機による鉄板への加振が開始され、入力部24への解析開始指示が入力されると、画像データ取得部211は、カメラユニット10を制御して、基本フレームレートFで、右カメラ11Rで撮影される右画像I、左カメラ11Lで撮影される左画像Iの画像データを取得する。また、画像データ取得部211は、取得した右画像I、左画像Iの画像データを、解析対象認識部212へ送信する(ステップS3)。
【0035】
続いて、解析対象認識工程として、解析対象認識部212は、受信した画像データから予め設定された第1のフレームレートF(=20fps)で解析対象を検出する。具体的には、受信した画像データの時刻Tが、第1のフレームレートFに対応する時間間隔t(50ms)の時刻となる場合(ステップS4のYES)、解析対象認識部212はAI認識による解析対象の検出を行う。また、受信した画像データの時刻Tが、第1のフレームレートFに対応する時間間隔t(50ms)の時刻でない場合(ステップS4のNO)、解析対象認識部212はAI認識による解析対象の認識処理を行なわず、既にAI認識されている解析対象の振動解析処理へ進む。
【0036】
解析対象認識部212は、第1のフレームレートFとなるように間引かれた撮影画像からなる第1の時系列画像から、解析対象の位置(3次元座標)を認識する(ステップS5)。本実施の形態では、右カメラ11R、左カメラ11Lの2つのカメラで撮影された右画像I、左画像Iを用いて、ステレオ法により解析対象の3次元位置を算出することとしている。
【0037】
また、本実施の形態に係るAI認識としての解析対象の検出は、入力された画像から解析対象を認識するように、ニューラルネットワーク等の機械学習の手法によって、予め学習された学習済みモデルを用いて行われる。このようなAI認識は、撮影された領域全体から解析対象を検出するのに適した方法であるが、画像全体の認識処理を行うには演算時間が長くなる場合がある。そこで本実施の形態では、AI認識を行う第1の時系列画像のサンプリングレート(第1のフレームレートF)より、テンプレートマッチングを行う第2の時系列画像のサンプリングレート(第2のフレームレートF)を高く(時間間隔を短く)している。これにより、第1の時系列画像の時間間隔を長くして、AI認識に必要な演算時間を確保することとしている。
【0038】
また、一般的に、AI認識による解析対象の位置検出の精度は、振動解析に求められる精度よりも低いものとなる。そこで、本実施の形態では、振動解析装置1は解析対象認識部212で認識された解析対象の位置と識別情報とを振動解析部213へ送信し(ステップS6)、振動解析部213で詳細な振動解析を行うこととしている。
【0039】
続いて振動解析工程として、振動解析部213は、解析対象認識部212から受信した解析対象の情報に基づいて、各解析対象の関心領域を設定する(ステップS7)。すなわち、振動解析部213は、解析対象認識部212から解析対象情報を受信した場合、関心領域を更新し、解析対象認識部212から解析対象情報を受信しなかった場合、既に設定されている関心領域を用いる。解析開始時には、初期設定においてテンプレート作成のために用いられた各解析対象の関心領域が、振動解析部213における各解析対象の関心領域として設定されている。
【0040】
振動解析部213は、第2のフレームレートFで、設定された各解析対象の関心領域に対してテンプレートマッチングを用いて、解析対象の変位量を算出する(ステップS8)。より具体的には、振動解析部213は、第2の時系列画像の1つ前の時刻ステップの画像と、新たに撮影された現在時刻ステップの画像との間でテンプレートマッチングを行い、解析対象の変位量を算出する。撮影開始時のフレームでは、ステップS2の初期テンプレートと現在時刻ステップの画像との間でテンプレートマッチングを行う。ステップS8に係る画像マッチングの方法は特に限定されず、例えば位相限定相関法(POC:Phase Only Correlation)を用いることができる。これにより、サブピクセルレベルの高い精度で解析対象の変位を検出することができる。
【0041】
振動解析部213は、ステップS8で算出された解析対象ごとの位置の時間変化を、解析対象の振動情報として、記憶部22に記憶させる(ステップS9)。また、振動解析部213は、振動情報を表示部23に表示させることとしてもよい。この場合、振動解析部213は、各解析対象の変位量とともに、取得された振動情報にFFT(Fast Fourier Transform)を適用して振動周波数に関する情報を表示させることとしてもよい。
【0042】
以下、振動解析が終了するまで(ステップS10のNO)、振動解析装置1は、ステップS3~S9の振動解析を行う。振動解析開始時に設定された所定の解析時間の終了、ユーザによる振動解析の終了指示の入力等の終了条件を充足すると(ステップS10のYES)、振動解析装置1は、振動解析を終了する。
【0043】
図5(A)~(C)は、本実施の形態に係る振動解析結果の例を示す図である。図5(A)の変位量の時間変化のグラフ及び図5(B)の振動周波数の時間変化のグラフに示すように、振動する鉄板に貼付した20カ所の解析対象であるマーカについて、それぞれの振動状態が取得できていることがわかる。より詳細には、マーカ位置、鉄板の振動特性等により振幅の大きさが異なり、振幅の予測が難しい場合であっても、各解析対象について振動状態を取得することができている。また、図5(A)、(B)のうち1つのマーカのグラフを拡大した図5(C)に示すように、各解析対象について、3次元的な変位量の時間変化、振動周波数の時間変化等の振動状態が適切に解析できていることがわかる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係る振動解析装置1は、低いサンプリングレートで、機械学習の手法によって撮影画像全体を画像認識して解析対象を検出するので、解析対象の振幅が不明な場合であっても、適切に解析対象をトラッキングして振動解析を行うことができる。また、本実施の形態に係る振動解析装置1は、高いサンプリングレートで、テンプレートマッチングによって解析対象の振動を解析するので、撮影画像に含まれる解析対象ごとに、精度よく振動解析を行うことが可能である。
【0045】
本実施の形態では、解析対象の認識に用いる第1の時系列画像と、振動解析に用いる第2の時系列画像とが同じ画像、すなわち第1の時系列画像は第2の時系列画像の間引き画像であることとしたが、これに限られない。例えば、第1の時系列画像と第2の時系列画像とが、異なるタイミングで撮影される画像であってもよい。また、認識される解析対象の位置(座標)の相関関係が明らかであれば、第1の時系列画像と第2の時系列画像とが、異なるカメラで撮影された画像であってもよい。
【0046】
本実施の形態では、振動解析部213は、1つ前の時刻ステップの画像と、新たに撮影された現在時刻ステップの画像との間でテンプレートマッチングを行い、解析対象の変位量を算出することとしたが、これに限られない。例えば、第1フレームの画像、すなわち解析開始時の画像と、現在時刻ステップの画像との間でテンプレートマッチングを行い、解析対象の変位量を算出することとしてもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、第1の時系列画像のサンプリングレートが一定であることとしたが、これに限られず、各解析対象の振幅(変位量)に基づいて、サンプリングレートを調整することとしてもよい。この場合、例えば、各解析対象の振幅のうち、最も大きい振幅が、予め設定された関心領域の大きさの50%以上である場合、第1の時系列画像のサンプリングレートを高くし、10%以下である場合、第1の時系列画像のサンプリングレートを低くするようにすればよい。これにより、解析対象が関心領域から外れるおそれを低減することができるので、振動解析の精度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、振動をピックアップ等により直接計測することが難しい物体の振動解析に好適である。特に、解析対象の振動の大きさ(振幅)が不明である場合の振動解析に好適である。
【符号の説明】
【0049】
1 振動解析装置、10 カメラユニット、11R 右カメラ、11L 左カメラ、20 制御ユニット、21 制御部、211 画像データ取得部、212 解析対象認識部、213 振動解析部、22 記憶部、23 表示部、24 入力部
図1
図2
図3
図4
図5