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特許7608016コーティング剤、澱粉含有食品の呈味低減抑制方法及び澱粉含有食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】コーティング剤、澱粉含有食品の呈味低減抑制方法及び澱粉含有食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20241223BHJP
   A23D 7/01 20060101ALI20241223BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20241223BHJP
   A23D 9/013 20060101ALI20241223BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20241223BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241223BHJP
   C09D 191/00 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A23D7/01
A23D9/00 510
A23D9/013
A23L7/10 E
C09D7/63
C09D191/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019177001
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021052611
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 妙子
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-092403(JP,A)
【文献】特開2019-141006(JP,A)
【文献】特開2018-033335(JP,A)
【文献】特開2016-067253(JP,A)
【文献】特開2019-010020(JP,A)
【文献】特開2013-226120(JP,A)
【文献】特開2004-283031(JP,A)
【文献】特開2017-035024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00- 9/06
A23L 5/00- 5/30
A23L 7/00- 7/113
A23L 29/00-29/10
C09D 7/63
C09D 191/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂と、以下の乳化剤A及び乳化剤B、及びレシチンを含有し、
コーティング剤中の該油脂の含有量が90~95質量%であり、該乳化剤Aの含有量が1~8質量%であり、該乳化剤Bの含有量が2~8質量%であり、該レシチンの含有量が0.1~2質量%であり、
該レシチンが、植物由来の粗レシチン、植物由来の粗レシチンから中性油脂分を除去したレシチン、植物由来の脱糖レシチンから選ばれるレシチンである、
澱粉含有食品の呈味低減抑制に用いるコーティング剤(ただし、グリセリン酢酸脂肪酸エステルを含まない)。
乳化剤A:HLB値が2~2.9テトラグリセリンペンタオレート
乳化剤B:ジグリセリンモノ脂肪酸エステル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉含有食品に用いるコーティング剤、同コーティング剤を用いた澱粉含有食品の呈味低減抑制方法及び澱粉含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
炒飯、焼きそば、焼きうどん等の澱粉含有食品は、塩、醤油、ソース等の水溶性調味料により味付けされて製造される。これらの調理品は、調理後、約5~30℃で保管(流通も含む)、販売され、消費者が食すまで2日程度要することもある。こららの澱粉含有食品は、製造直後は、しっかりした呈味を有するものの、経時的に呈味が低下する問題があった。
【0003】
一方、焼きそば等に用いられる製麺された麺は、茹でる又は蒸す等の工程の後、麺と麺が付着するなどの問題を改善するために、油脂をコーティングし、麺相互の付着を防止し、ほぐれ性を改善することが行われてきた。例えば、特許文献1には、重合度が2以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた麺類のほぐれ改良用油脂組成物の例が提案されている。しかし、これらの麺用ほぐれ改良用油脂組成物では、前述の経時的に呈味が低下する問題が解決できるものではなかった。
【文献】特開平07-298847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、澱粉含有食品において、経時的な呈味の低減を抑制できるコーティング剤を提供することである。また、澱粉含有食品において、経時的な呈味の低減を抑制する方法を提供することである。また、経時的な呈味の低減が抑制された澱粉含有食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、油脂と特定の乳化剤を含油するコーティング剤を用いることで、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[9]を提供する。
[1] 油脂と、以下の乳化剤A及び乳化剤Bを含有する、澱粉含有食品の呈味低減抑制に用いるコーティング剤。
乳化剤A:ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを除くHLB値が2~8のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び/又は、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル
乳化剤B:ジグリセリンモノ脂肪酸エステル
[2] 前記コーティング剤が、以下の乳化剤Cを含有する、[1]のコーティング剤。
乳化剤C:レシチン
[3] 前記コーティング剤が、油脂を99~80質量%含有し、乳化剤Aを0.5~10質量%含有し、乳化剤Bを0.5~10質量%含有し、乳化剤Cを0~5質量%含有する、[1]又は[2]のコーティング剤。
[4] 前記コーティング剤が、油脂を99~80質量部含有し、乳化剤Aを0.5~10質量部含有し、乳化剤Bを0.5~10質量部含有し、乳化剤Cを0~5質量部含有し、水及び/又はアルコールを0.1~400質量部含有する、[1]又は[2]のコーティング剤。
[5] 呈味が塩味である、[1]~[4]のいずれかのコーティング剤。
[6] [1]~[5]のいずれかのコーティング剤を澱粉含有食品に塗布することを特徴とする、澱粉含有食品の呈味低減抑制方法。
[7] [1]~[5]のいずれかのコーティング剤を澱粉含有食品に塗布した後に、水溶性調味料で味付けする、[6]の澱粉含有食品の呈味低減抑制方法。
[8] [1]~[5]のいずれかのコーティング剤を塗布された、澱粉含有食品。
[9] [1]~[5]のいずれかのコーティング剤の外側に、呈味成分が存在する、[8]の澱粉含有食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、澱粉含有食品の経時的な呈味の低減を抑制することができる。そのため、調理直後から、食すまでの間の呈味のぶれを防止することができ、呈味の低減をふまえた澱粉加工食品の過剰な味付けを防ぐことができる。また、塩味の要因である食塩の量を適正に抑えることができ、澱粉含有食品の食塩量を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。
【0009】
[呈味低減抑制効果]
本発明において、澱粉含有食品の呈味低減抑制効果は、澱粉含有食品の調理直後から経時的に呈味が低下していく現象を防ぐ効果である。澱粉含有食品の呈味低減は、調理直後に澱粉含有食品の表面に存在した呈味成分が、経時的に澱粉含有食品の中に取り込まれることによると考えられる。従って、呈味低減抑制効果は、官能検査でも確認できるが、澱粉含有食品の表面の呈味成分を味覚センサー等で分析することでも確認することができる。なお、本発明では呈味成分として、甘味、酸味、塩味、苦味、辛味、うま味等の成分が挙げられる。呈味成分は、水分あるいは水溶性調味料と共に澱粉含有食品に取り込まれると考えれるので、水溶性の呈味成分であること澱粉含有食品により取り込まれやすいと予想できる、水溶性の呈味成分として、食塩等の塩味成分が挙げられる。
【0010】
[コーティング剤]
<油脂>
本発明のコーティング剤は、油脂を含有する。油脂として、動植物油を用いることができる。例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、えごま油、亜麻仁油、落花生油、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームミッドフラクション、パームステアリン等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、乳脂、ココアバター等やこれらの混合油、加工油脂等を使用することができる。本発明で用いる油脂として、5~20℃で液状の油脂を用いることが、コーティング剤を使用する際に溶解する必要がないため、好ましい。
【0011】
本発明のコーティング剤は、油脂を80~99質量%含有することが好ましく、油脂を85~98質量%含有することがより好ましく、油脂を90~95質量%含有することがさらに好ましい。
【0012】
<乳化剤A>
本発明のコーティング剤は、乳化剤Aとして、以下で説明するHLB値が2~8のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び/又は、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含有する。乳化剤Aは、後述する乳化剤Bとともに用いることで、澱粉含有食品の呈味低減抑制効果を有する。
【0013】
乳化剤Aとして用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、後述する乳化剤Bであるジグリセリンモノ脂肪酸エステルを除く。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、2~8である。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、2~7であることが好ましい。
なお、HLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、
HLB=20×(1-S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
からHLB値を算出する方法を言う。
【0014】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、コーティング剤が液状になりやすいことから、構成脂肪酸の50質量%以上が炭素数16~22の不飽和脂肪酸であることが好ましく、不飽和脂肪酸がオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸であることがより好ましい。酸化安定性の点から、オレイン酸、エルカ酸がより好ましい。例えば、ポリグリセリンのオレイン酸エステル等を用いることができる。
【0015】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリン部分の重合度は、特に限定するものではなく、通常市販されているものを用いることができる。ポリグリセリンは、グリセリンが重合してできたものであり、様々な重合度を有する混合物として得られる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは分子蒸留等で高純度にしたものを用いることもできるが、一般的に、重合度4以上のものは、単離することが困難なため、様々な重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物であることを許容する。ポリグリセリン脂肪酸エステルの平均重合度は、入手が容易なことから、3以上が好ましく、3~30がより好ましく、4~12がさらに好ましい。
【0016】
乳化剤Aとして用いるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルは、通常市販されているものを用いることができる。また、ポリグリセリン部分の重合度も入手が容易なことから、平均重合度は、2以上が好ましく、3~30がより好ましく、4~12がさらに好ましい。
【0017】
本発明のコーティング剤は、乳化剤Aを0.5~10質量%含有することが好ましく、乳化剤Aを1~10質量%含有することがより好ましく、乳化剤Aを1~8質量%含有することがさらに好ましい。
【0018】
<乳化剤B>
本発明のコーティング剤は、乳化剤Bとして、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有する。ジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、蒸留等により高純度にしたものが好ましい。例えば、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルとして、70質量%以上の純度にしたものが好ましく、80質量%以上の純度にしたものがより好ましく、90質量%以上の純度にしたものがさらに好ましい。
【0019】
ジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、コーティング剤が液状になりやすいことから、構成脂肪酸の50質量%以上が炭素数16~22の不飽和脂肪酸であることが好ましく、不飽和脂肪酸がオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸であることがより好ましい。酸化安定性の点から、オレイン酸、エルカ酸がより好ましい。例えば、ジグリセリンモノオレイン酸エステル等を用いることができる。
【0020】
本発明のコーティング剤は、乳化剤Bを0.5~10質量%含有することが好ましく、乳化剤Bを1~10質量%含有することがより好ましく、乳化剤Bを2~8質量%含有することがさらに好ましい。
【0021】
<乳化剤C>
本発明のコーティング剤は、上記乳化剤A、Bの他に、乳化剤Cとして、レシチンを含有してもよい。レシチンを添加することで、離型性を高めることができる。レシチンとしては、植物レシチン、卵黄レシチンを用いることができ、植物由来のレシチンを用いることが好ましい。植物由来のレシチンの原料としては、大豆、菜種、コーン、ヒマワリ、サフラワー、ゴマ、アマニなどの油糧種子を圧搾および/または抽出して得られる原油、該原油に水または水蒸気を吹き込んで沈澱物としで得られる油滓、分離した該油滓を乾燥して得られる粗レシチン、該粗レシチンから溶剤分別等の公知の方法で中性油脂分を除去したレシチン、さらにはこれらのレシチンから特定のリン脂質を濃縮・分画した濃縮又は高純度レシチン、あるいは脱糖処理した脱糖レシチン等が利用できる。
【0022】
脱糖レシチンを得るには、例えば、油滓の場合は、水分を含む油滓を必要に応じて濾過し夾雑物を除き、乾燥して粗レシチンとする。この粗レシチンは、通常トリグリセリドを主成分とする中性油脂や、前記した各種リン脂質、各種糖質成分などを含んでいる。次に上記の粗レシチンを例えばアセトンで処理し、アセトン不溶分として油脂(中性油)等を含まないレシチンを得る。該レシチンを含水(約30%以上が好ましい)エタノールで分別し、含水エタノール可溶区分(リン脂質成分をほとんど含まない糖質成分)を除去することで脱糖レシチンを得る。なお糖質成分はガラクトース、シュクロース、スタキオース、ラフィノース、マンノース、アラビノースなどの各種糖質が遊離および/またはホスファチドやその他の脂質成分と結合した状態あるいはグリコシドやステロールグリコシドとして存在する成分の混合物である。なお、前記のようにして含水アルコールで分別した際の含水アルコール不溶分、即ち大部分の糖質成分を除いたレシチンから、さらに無水アルコールにより分別して糖質成分を除去することもできる。また原油から脱糖レシチンを得るには、シリカゲルなどの吸着剤を用いてカラム処理などによって糖質成分を吸着除去することもできるが、無水アルコールを用いた脱糖レシチンがより好ましい。
【0023】
本発明のコーティング剤は、乳化剤Cを0~5質量%含有することが好ましく、乳化剤Cを0~3質量%含有することがより好ましく、乳化剤Cを0.1~2質量%含有することがさらに好ましい。
【0024】
<水溶性成分>
本発明のコーティング剤は、澱粉含有食品に塗布するために、水あるいはエタノール等のアルコールで希釈することができる。水あるいはエタノール等のアルコールを含むコーティング剤の場合の各成分の含有量は、油脂を80~99質量部含有し、乳化剤Aを0.5~10質量部含有し、乳化剤Bを0.5~10質量部含有し、乳化剤Cを0~5質量部含有し、水及び/又はアルコールを0.1~400質量部含有することが好ましい。また、油脂を80~99質量部含有することが好ましく、油脂を85~98質量部含有することがより好ましく、油脂を90~95質量部含有することがさらに好ましい。また、乳化剤Aを0.5~10質量部含有することが好ましく、乳化剤Aを1~10質量%含有することがより好ましく、乳化剤Aを1~8質量部含有することがさらに好ましい。また、乳化剤Bを0.5~10質量部含有することが好ましく、乳化剤Bを1~10質量部含有することがより好ましく、乳化剤Bを2~8質量部含有することがさらに好ましい。また、乳化剤Cを0~5質量部含有することが好ましく、乳化剤Cを0~3質量部含有することがより好ましく、乳化剤Cを0.1~2質量部含有することがさらに好ましい。
【0025】
水は油溶性成分に対して、過剰に配合すると油溶性成分と分離しやすくなり、また、澱粉含有食品への塗布後に蒸発させる必要が生じるので、水及び/又はアルコールのコーティング剤中の含有量は1~50質量%であることがより好ましく、1~40質量%であることがさらに好ましく、5~30質量%であることが最も好ましい。なお、水溶性成分は、コーティング剤中に混合してもよいが、コーティング剤と混合せずに別々に澱粉含有食品に添加あるいは塗布してもよく、別々に澱粉含有食品に添加あるいは塗布する場合は、コーティング剤中の成分としないものとする。
【0026】
<その他成分>
本発明のコーティング剤は、上記記載の油脂、乳化剤A、乳化剤B、乳化剤C、水及び/又はアルコールで、コーティング剤の組成分として90質量%以上を占めることが好ましく、97質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0027】
本発明のコーティング剤は、こららの成分以外にも、油脂に一般的に配合される原材料を使用することができる。具体的には、例えば、pH調整剤、調味剤、着色料、香料、酸化防止剤、糖類、糖アルコール類、安定剤、乳化剤等を使用することができる。これらの成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、コーティング剤中に10質量%以下含有させることができ、好ましくは0~3質量%、より好ましくは0~1質量%含有させることができる。
【0028】
[澱粉含有食品の呈味低減抑制方法]
本発明の澱粉含有食品の呈味低減抑制方法は、上記記載のコーティング剤を、澱粉含有食品に塗布し、呈味成分を含有する水溶性調味料で味付けすることである。コーティング剤の塗布は、澱粉含有食品にコーティング剤を添加して澱粉含有食品をかき混ぜる、あるいは澱粉含有食品にコーティング剤をスプレーする、あるいは澱粉含有食品をコーティング剤に浸して行う。また、呈味成分を有する水溶性調味料の味付けは、コーティング剤の塗布時に同時に行ってもよい。しかし、呈味低減抑制効果を高めるために、コーティング剤の後に、水溶性調味料で味付けすることが好ましい。味付けは、味付けとして通常用いられる方法で行えばよく、例えば、前述のコーティング剤の塗布方法と同様な方法も用いることができる。
【0029】
コーティング剤の澱粉含有食品100質量部に対する塗布量は、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましく、1~3質量部であることがさらに好ましい。
【0030】
[澱粉含有食品]
本発明の澱粉含有食品は、上記記載のコーティング剤を塗布された澱粉含有食品である。本発明では、コーティング剤で呈味成分が澱粉含有食品の内部へ移行することを防ぐため、コーティング剤で塗布された外側に、呈味成分が存在するものであることが好ましい。本発明の澱粉含有食品は、例えば、炒飯、焼きそば、焼きうどん、スパゲッティ等が挙げらえる。
【実施例
【0031】
次に、実施例、比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0032】
[呈味低減抑制評価試験1(参考例1)]
<澱粉含有食品(炒飯)>
米飯を炊き、米飯を室温・開放下で30分かけて放熱した。その後、米飯100質量部、コーティング剤として油脂(精製キャノーラ油)1.75質量部、水0.7質量部をポリエチレン袋に入れ、袋の中で混ぜ、コーティング済み米飯を得た。フライパンに油脂(精製キャノーラ油)1質量部を入れ、150℃に加熱した。加熱したフライパンで、コーティング済み米飯を1分間炒め、醤油1質量部、鶏ガラスープの素0.5質量部、塩0.5質量部、胡椒0.05質量部を添加して味付けを行い、さらに30秒間炒めて炒飯(サンプルA)を得た。
【0033】
<味覚センサー分析条件>
調理直後の炒飯(サンプルA)の塩味を味覚センサーにて評価した。さらに、炒飯を10℃で48時間保存した。保存終了後、味覚センサーにて塩味の評価を行った。味覚センサーでの測定は、炒飯80gをイオン交換水120gに入れ、20秒撹拌した後に懸濁液をろ過し、得られたろ液(80ml)を電子味覚システムASTREE(アルファ・モス・ジャパン株式会社製:バージョン V14.5、データ取得間隔1秒、分析時間120秒)で測定した。結果を表1に示した。なお、数値が大きいほど、塩味成分が多く、塩味が強いことを意味する。
【0034】
<風味の強さ(1)>
さらに、上記サンプルAと同配合、同操作で炒飯(サンプルB)を製造し、10℃で48時間保存後のサンプルAの風味の強さを、製造直後のサンプルBと比較して評価した。なお、評価は専門パネラー10名の平均値である(表1)。
【0035】
3:全体的な風味の強さが、製造直後のサンプルBと同等以上である。
2:全体的な風味の強さが、製造直後のサンプルBよりやや弱い。
1:全体的な風味の強さが、製造直後のサンプルBよりかなり弱い。
【0036】
【表1】
【0037】
[呈味低減抑制評価試験2(実施例1~9、比較例1~2)]
<コーティング剤>
下記油脂及び乳化剤を表2~4の配合にてブレンドし、コーティング剤を得た。
油脂(精製キャノーラ油):商品名「日清キャノーラ油」日清オイリオグループ株式会社製
乳化剤A-PG1(ペンタグリセリントリオレート、HLB7.0):商品名「サンソフトA-173E」太陽化学株式会社製
乳化剤A-PG2(デカグリセリンペンタオレート、HLB4.5):商品名「サンソフトQ-175S」太陽化学株式会社製
乳化剤A-PG3(テトラグリセリンペンタオレート、HLB2.9):商品名「SYグリスター PO-3S」阪本薬品工業株式会社製
乳化剤A-PGPR(トリグリセリン縮合リシノール酸エステル):商品名「サンソフトNo.818JC」太陽化学株式会社製
乳化剤B-DM(ジグリセリンモノオレート、HLB7.0):商品名「ポエムDO-100V」理研ビタミン株式会社製
乳化剤C-レシチン(脱糖レシチン):日清オイリオグループ株式会社製
<澱粉含有食品(炒飯)>
米飯を炊き、米飯を室温・開放下で30分かけて放熱した。その後、米飯100質量部、コーティング剤1.75質量部、水0.7質量部をポリエチレン袋に入れ、袋の中で混ぜ、コーティング済み米飯を得た。フライパンに油脂(精製キャノーラ油)1質量部を入れ、150℃に加熱した。加熱したフライパンで、コーティング済み米飯を1分間炒め、醤油1質量部、鶏ガラスープの素0.5質量部、塩0.5質量部、胡椒0.05質量部を添加して味付けを行い、さらに30秒間炒めて炒飯(サンプル1~11)を得た。
【0038】
<味覚センサー分析条件>
調理直後の炒飯(サンプル1~11)の塩味を味覚センサーにて評価した。さらに、炒飯を10℃で48時間保存した。保存終了後、味覚センサーにて塩味の評価を行った。味覚センサーでの測定は、炒飯80gをイオン交換水120gに入れ、20秒撹拌した後に懸濁液をろ過し、得られたろ液(80ml)を電子味覚システムASTREE(アルファ・モス・ジャパン株式会社製:バージョン V14.5、データ取得間隔1秒、分析時間120秒)で測定した。結果を表2~4に示した。なお、数値が大きいほど、塩味成分が多く、塩味が強いことを意味する。
【0039】
<風味の強さ(2)>
さらに、参考例1のサンプルAと同配合、同操作で炒飯(サンプルC)を製造し、10℃で48時間保存後の炒飯(サンプル1~11)の風味の強さを、製造直後のサンプルC、10℃で48時間保存後のサンプル1と比較して評価した。なお、評価は専門パネラー10名の平均値である(表2~4)。
【0040】
3:全体的な風味の強さが、製造直後のサンプルCと同等以上である。
2:全体的な風味の強さが、製造直後のサンプルCより弱く、保存後のサンプル1より強い(風味の強さがサンプルCに近い)。
1:全体的な風味の強さが、製造直後のサンプルCより弱く、保存後のサンプル1より強い(風味の強さがサンプル1に近い)。
0:全体的な風味の強さが、保存後のサンプル1と同等以下である。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
実施例1~9(サンプル2~6、8~11)は、保存後の風味が強く、また、味覚センサーの結果から、塩味成分が表面に残存していると考えられる。