(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】積層ウェーハの研削方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2021070461
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェヨン
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-038870(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208359(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0027773(US,A1)
【文献】特開2018-043340(JP,A)
【文献】特開2022-037426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層ウェーハの研削方法であって、
該積層ウェーハでは、第1面と該第1面の反対側に位置する第2面とを有し該第1面側及び該第2面側の外周部がそれぞれ面取りされた第1のウェーハの該第1面と、第3面と該第3面の反対側に位置する第4面とを有し該第3面側及び該第4面側の外周部がそれぞれ面取りされた第2のウェーハの該第3面とが、向い合った状態で貼り合わせられており、
該第1のウェーハを透過する波長を有するレーザービームを、該第1のウェーハの外周縁よりも内側に設定された環状の第1の加工予定ラインに沿って該第1のウェーハに照射して、該第1のウェーハの内部に環状の第1改質層を形成すると共に、該第1の加工予定ラインから該第1のウェーハの該外周縁までの環状領域に設定された1つ以上の第2の加工予定ラインに沿ってレーザービームを該第1のウェーハに照射して、該第1面を平面視した場合に該環状領域を2つ以上に区切る第2改質層を形成する改質層形成工程と、
該改質層形成工程の後に、該第2面から該第1のウェーハの厚さ方向の所定の深さまで該環状領域に切削ブレードを切り込ませると共に、該外周縁に沿って該積層ウェーハと該切削ブレードとを相対的に移動させることで該環状領域を切削するトリミング工程と、
該トリミング工程の後に、該第1のウェーハの該第2面側を研削して仕上げ厚さまで薄化すると共に、該環状領域を除去する研削工程と、
を備えることを特徴とする積層ウェーハの研削方法。
【請求項2】
該トリミング工程では、該切削ブレードが切り込まれる所定深さを、該第1改質層及び該第2改質層よりも下方に位置付けた状態で、該環状領域を切削することを特徴とする請求項1に記載の積層ウェーハの研削方法。
【請求項3】
積層ウェーハの研削方法であって、
該積層ウェーハでは、第1面と該第1面の反対側に位置する第2面とを有し該第1面側及び該第2面側の外周部がそれぞれ面取りされた第1のウェーハの該第1面と、第3面と該第3面の反対側に位置する第4面とを有し該第3面側及び該第4面側の外周部がそれぞれ面取りされた第2のウェーハの該第3面とが、向い合った状態で貼り合わせられており、
該第1のウェーハに吸収される波長を有するレーザービームを、該積層ウェーハの上方から該第1のウェーハの該第2面へ、該第1のウェーハの外周縁よりも内側に設定された環状の第1の加工予定ラインに沿って照射して、該第1のウェーハの厚さ方向において該第1のウェーハを貫通する環状の第1レーザー加工溝を形成すると共に、該第1の加工予定ラインから該第1のウェーハの該外周縁までの環状領域に設定された1つ以上の第3の加工予定ラインに沿って、該積層ウェーハの上方から該第2面へレーザービームを照射して、該第1面を平面視した場合に該環状領域を2つ以上に区切り、該第1のウェーハの厚さ方向において該第1のウェーハを貫通する1以上の第2レーザー加工溝を形成するレーザー加工溝形成工程と、
該レーザー加工溝形成工程の後に、該第2面から該第1のウェーハの厚さ方向の所定の深さまで該環状領域に切削ブレードを切り込ませると共に、該外周縁に沿って該積層ウェーハと該切削ブレードとを相対的に移動させることで該環状領域を切削するトリミング工程と、
該トリミング工程の後に、該第1のウェーハの該第2面側を研削して仕上げ厚さまで薄化すると共に、該環状領域を除去する研削工程と、
を備えることを特徴とする積層ウェーハの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面側の外周部が面取りされている第1のウェーハ及び第2のウェーハが積層された積層ウェーハにおいて、第1のウェーハを研削して薄化する積層ウェーハの研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面側及び裏面側の各外周部に面取り部が形成されている半導体ウェーハ(以下、単にウェーハ)の裏面側を研削して、例えば、半分以下の厚さまでウェーハを薄化すると、薄化後のウェーハの外周部には、所謂ナイフエッジ(シャープエッジとも呼ばれる)が形成される。
【0003】
ナイフエッジが形成されると、ウェーハの研削中やウェーハの搬送中にナイフエッジを起点としてウェーハが割れやすくなる。これを防ぐために、ウェーハの外周部において表面から仕上げ厚さに対応する所定の深さまで切削ブレードを切り込ませ、切削により表面側の面取り部を除去し(即ち、エッジトリミングを行い)、その後、ウェーハの裏面側を研削する加工方法が提案されている。
【0004】
また、切削ブレードに代えて、ウェーハを透過する波長を有するレーザービームや、ウェーハに吸収される波長を有するレーザービームを用いて、外周部に面取り部が形成されている1枚のウェーハの外周部を除去する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、表面側及び裏面側の外周部に面取り部が形成され、且つ、表面側にIC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されている二枚のウェーハ(第1及び第2のウェーハ)の表面同士が接着剤で固定された積層ウェーハにおいて、第1のウェーハのみを薄化する場合がある。
【0006】
この場合、第2のウェーハの裏面側をチャックテーブルで吸引保持して、第1のウェーハの裏面側が上方に露出された状態とし、第1のウェーハの裏面側の外周部に切削ブレードを切り込んで、第1のウェーハの表面側及び裏面側における面取り部を除去することが考えられる。
【0007】
しかし、裏面側の面取り部に加えて、表面側の面取り部も除去するためには、切削中の切削ブレードの下端を、第1のウェーハの表面と、第2のウェーハの表面と、の境界位置に精密に位置付ける必要がある。境界位置よりも少しでも深く切削ブレードを切り込んでしまうと、第2のウェーハの表面側が切削される。
【0008】
例えば、第2のウェーハの表面側の外周余剰領域に銅で形成された配線層が設けられている場合、第2のウェーハの表面側の外周余剰領域に切削ブレードが切り込まれると、銅を含むバリが発生してしまうという問題がある。
【0009】
この問題を解決するために、例えば、ウェーハを透過する波長を有するレーザービームを用いて、第1のウェーハの外周部に改質層を形成した後、第1のウェーハの裏面側を研削することで第1のウェーハに外力を付与して、第1のウェーハの外周部を除去することが考えられる。
【0010】
具体的には、まず、第1のウェーハの厚さ方向の所定の深さ位置にレーザービームを集光させた状態で、ウェーハの外周縁よりも所定距離だけ内側に位置する円形の第1の加工予定ラインに沿ってレーザービームを照射することで、環状の第1改質層を形成する。
【0011】
次いで、同じ深さ位置にレーザービームを集光させた状態で、第1の加工予定ラインと、ウェーハの外周縁と、の間の環状領域に、放射状に設定された複数の第2の加工予定ラインの各々に沿って、レーザービームを照射することで、それぞれ直線状の複数の第2の改質層を形成する。
【0012】
そして、第1のウェーハの裏面側を研削することで第1のウェーハに外力を付与する。この外力により、第1及び第2の改質層を起点としてクラックを十分に延伸させることができれば、第1及び第2の改質層を境に第1のウェーハの外周部を除去できるようにも思われる。
【0013】
しかし、出願人が行った実験によると、裏面側の研削によって外力を付与しただけでは、クラックの延伸の程度が不十分となり、外周部の環状領域を完全には除去できない場合があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、第1及び第2のウェーハが積層された積層ウェーハにおいて第1のウェーハの外周部の環状領域をより確実に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、積層ウェーハの研削方法であって、該積層ウェーハでは、第1面と該第1面の反対側に位置する第2面とを有し該第1面側及び該第2面側の外周部がそれぞれ面取りされた第1のウェーハの該第1面と、第3面と該第3面の反対側に位置する第4面とを有し該第3面側及び該第4面側の外周部がそれぞれ面取りされた第2のウェーハの該第3面とが、向い合った状態で貼り合わせられており、該第1のウェーハを透過する波長を有するレーザービームを、該第1のウェーハの外周縁よりも内側に設定された環状の第1の加工予定ラインに沿って該第1のウェーハに照射して、該第1のウェーハの内部に環状の第1改質層を形成すると共に、該第1の加工予定ラインから該第1のウェーハの外周縁までの環状領域に設定された1つ以上の第2の加工予定ラインに沿ってレーザービームを該第1のウェーハに照射して、該第1面を平面視した場合に該環状領域を2つ以上に区切る第2改質層を形成する改質層形成工程と、該改質層形成工程の後に、該第2面から該第1のウェーハの厚さ方向の所定の深さまで該環状領域に切削ブレードを切り込ませると共に、該外周縁に沿って該積層ウェーハと該切削ブレードとを相対的に移動させることで該環状領域を切削するトリミング工程と、該トリミング工程の後に、該第1のウェーハの該第2面側を研削して仕上げ厚さまで薄化すると共に、該環状領域を除去する研削工程と、を備える積層ウェーハの研削方法が提供される。
【0017】
好ましくは、該トリミング工程では、該切削ブレードが切り込まれる所定深さを、該第1改質層及び第2改質層よりも下方に位置付けた状態で、該環状領域を切削する。
【0018】
本発明の他の態様によれば、積層ウェーハの研削方法であって、該積層ウェーハでは、第1面と該第1面の反対側に位置する第2面とを有し該第1面側及び該第2面側の外周部がそれぞれ面取りされた第1のウェーハの該第1面と、第3面と該第3面の反対側に位置する第4面とを有し該第3面側及び該第4面側の外周部がそれぞれ面取りされた第2のウェーハの該第3面とが、向い合った状態で貼り合わせられており、該第1のウェーハに吸収される波長を有するレーザービームを、該積層ウェーハの上方から該第1のウェーハの該第2面へ、該第1のウェーハの外周縁よりも内側に設定された環状の第1の加工予定ラインに沿って照射して、該第1のウェーハの厚さ方向において該第1のウェーハを貫通する環状の第1レーザー加工溝を形成すると共に、該第1の加工予定ラインから該第1のウェーハの外周縁までの環状領域に設定された1つ以上の第3の加工予定ラインに沿って、該積層ウェーハの上方から該第2面へレーザービームを照射して、該第1面を平面視した場合に該環状領域を2つ以上に区切り、該第1のウェーハの厚さ方向において該第1のウェーハを貫通する1以上の第2レーザー加工溝を形成するレーザー加工溝形成工程と、該加工溝形成工程の後に、該第2面から該第1のウェーハの厚さ方向の所定の深さまで該環状領域に切削ブレードを切り込ませると共に、該外周縁に沿って該積層ウェーハと該切削ブレードとを相対的に移動させることで該環状領域を切削するトリミング工程と、該トリミング工程の後に、該第1のウェーハの該第2面側を研削して仕上げ厚さまで薄化すると共に、該環状領域を除去する研削工程と、を備える積層ウェーハの研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係るウェーハの研削方法では、第1のウェーハの外周縁よりも内側に設定された環状の第1の加工予定ラインに沿って第1改質層を形成すると共に、第1の加工予定ラインから第1のウェーハの外周縁までの環状領域に設定された1つ以上の第2の加工予定ラインに沿って環状領域を2つ以上に区切る第2改質層を形成する(改質層形成工程)。
【0020】
改質層形成工程の後に、第1のウェーハの厚さ方向の所定の深さまで環状領域に切削ブレードを切り込ませて環状領域を切削する(トリミング工程)。更に、トリミング工程の後に、第1のウェーハの第2面側を研削して第1のウェーハを仕上げ厚さまで薄化すると共に、環状領域を除去する(研削工程)。
【0021】
環状領域に改質層が形成されている場合、トリミング工程において切削ブレードで環状領域に直接的に負荷を与えると、クラックが延伸して表面に達し、第1のウェーハの環状領域と、第2のウェーハと、の結合力が低下する。それゆえ、トリミング工程を経ない場合に比べて、研削工程で確実に環状領域を除去できる。
【0022】
また、本発明の他の態様に係るウェーハの研削方法では、環状の第1の加工予定ラインに沿って第1のウェーハの厚さ方向で第1のウェーハを貫通する第1レーザー加工溝を形成すると共に、第1の加工予定ラインから第1のウェーハの外周縁までの環状領域に設定された1つ以上の第3の加工予定ラインに沿って環状領域を2つ以上に区切り第1のウェーハの厚さ方向において第1のウェーハを貫通する第2レーザー加工溝を形成する(加工溝形成工程)。
【0023】
更に、加工溝形成工程の後に、トリミング工程及び研削工程を順次行う。環状領域にレーザー加工溝が形成されている場合、トリミング工程において切削ブレードで環状領域に直接的に負荷を与えると、第1のウェーハの環状領域と、第2のウェーハと、の結合力が低下する。それゆえ、トリミング工程を経ない場合に比べて、研削工程で確実に環状領域を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】第1の実施形態に係る積層ウェーハの研削方法のフロー図である。
【
図3】第1及び第2の加工予定ラインを示す積層ウェーハの平面図である。
【
図8】第2の実施形態に係る積層ウェーハの研削方法のフロー図である。
【
図9】第1及び第3の加工予定ラインを示す積層ウェーハの平面図である。
【
図10】レーザー加工溝形成工程後の
図9のC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、
図1を参照し、各実施形態において研削等の加工対象となる積層ウェーハ11について説明する。
図1は、積層ウェーハ11の断面図である。
【0026】
積層ウェーハ11は、主としてシリコン(Si)で形成され、それぞれ略同じ直径を有する第1のウェーハ13及び第2のウェーハ15を有する。第1のウェーハ13の表面(第1面)13a側の外周部には面取り部13a1が形成されており、表面13aとは反対側に位置する裏面(第2面)13b側の外周部にも面取り部13b1が形成されている。
【0027】
同様に、第2のウェーハ15の表面(第3面)15a側の外周部には面取り部15a1が形成されており、表面15aとは反対側に位置する裏面(第4面)15b側の外周部にも面取り部15b1が形成されている。
【0028】
第1のウェーハ13及び第2のウェーハ15は、表面13aの中心と表面15aの中心とが略一致する様に、表面13a及び15aが向かい合った状態で、樹脂製の接着剤で貼り合わせられている。それゆえ、第1のウェーハ13の外周縁13cと、第2のウェーハ15の外周縁15cとは、積層ウェーハ11の厚さ方向で略一致している。
【0029】
第1のウェーハ13の表面13aには、複数の分割予定ライン(ストリート)が格子状に設定されている。複数のストリートで囲まれる各矩形領域には、IC、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス(不図示)が形成されている。
【0030】
複数のデバイスを含む円形領域は、デバイス領域13d
1(
図1、
図3参照)と称される。デバイス領域13d
1の周りには、デバイスが形成されていない環状の外周余剰領域(環状領域)13d
2(
図1、
図3参照)が存在する。
【0031】
同様に、第2のウェーハ15の表面15aにも複数のストリートが格子状に設定されており、複数のストリートで囲まれる各矩形領域には、デバイス(不図示)が形成されている。第2のウェーハ15においても、複数のデバイスが形成されている円形のデバイス領域15d1の周りには、デバイスが形成されていない環状の外周余剰領域15d2が存在する。
【0032】
次に、第1のウェーハ13の裏面13b側を研削して薄化する積層ウェーハ11の研削方法について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る積層ウェーハ11の研削方法のフロー図である。
【0033】
第1の実施形態では、まず、レーザー加工装置2を用いて、第1のウェーハ13の外周余剰領域13d
2に複数の改質層を形成する(改質層形成工程S10)。そこで、
図4を参照しつつ、レーザー加工装置2の構成について説明する。
【0034】
図4に示すZ軸方向は、例えば、鉛直方向であり、X軸方向及びY軸方向は、水平方向と略平行である。レーザー加工装置2は、円板状のチャックテーブル4を有する。チャックテーブル4は、金属で形成された円板状の枠体を有する。
【0035】
枠体の中央部には、円板状の凹部(不図示)が形成されており、この凹部には円板状の多孔質板が固定されている。枠体の上面と、多孔質板の上面とは、略面一となっており、略平坦な保持面4aが形成されている。
【0036】
枠体には流路が形成されており、この流路の一端は多孔質板に接続されている。また、流路の他端には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源からの負圧が保持面4aに伝達されると、保持面4aに載置された積層ウェーハ11は保持面4aで吸引保持される。
【0037】
チャックテーブル4の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が配置されている。回転駆動源の回転軸6は、チャックテーブル4の下部に連結されているので、回転駆動源を動作させると、チャックテーブル4は、回転軸6の周りに回転する。回転駆動源は、X軸移動板(不図示)で支持されている。
【0038】
X軸移動板は、X軸方向に略平行な一対のガイドレール(不図示)でスライド可能に支持されている。X軸移動板の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、ナット部には、X軸方向に略平行に配置されたボールねじ(不図示)が回転可能に連結されている。
【0039】
ボールねじの一端部には、パルスモーター等の駆動源(不図示)が連結されており、駆動源を動作させると、X軸移動板は、チャックテーブル4と共にX軸方向に沿って移動する(
図5参照)。X軸移動板、ガイドレール、ボールねじ等は、X軸方向移動ユニットを構成する。
【0040】
保持面4aの上方には、レーザービーム照射ユニット8が配置されている。レーザービーム照射ユニット8は、レーザー発振器(不図示)と、レーザービームLを集光させる集光レンズ(不図示)を含む集光器10と、を有する。
【0041】
集光器10からは、第1のウェーハ13を透過する波長(例えば、1064nm)を有するパルス状のレーザービームLが、積層ウェーハ11の上方から裏面13bへ照射される。レーザービームLは、第1のウェーハ13の所定の深さ位置に集光される。
【0042】
改質層形成工程S10では、外周縁13cから第1のウェーハ13の径方向において所定距離だけ内側に位置し、デバイス領域13d
1と外周余剰領域13d
2との境界に設定された環状の第1の加工予定ライン17(
図3参照)に沿ってレーザービームLを照射する。
【0043】
改質層形成工程S10では、更に、第1の加工予定ライン17から外周縁13cまでの外周余剰領域13d
2において、外周縁13cに沿って略等間隔に放射状に設定された1つ以上(本例では18本)の第2の加工予定ライン19(
図3参照)に沿ってレーザービームLを照射する。
【0044】
図3は、改質層形成工程S10でレーザービームLが照射される第1の加工予定ライン17及び第2の加工予定ライン19を示す積層ウェーハ11の平面図である。改質層形成工程S10では、まず、第2のウェーハ15の裏面15b側を保持面4aで吸引保持する。
【0045】
次いで、集光器10を、第1の加工予定ライン17の直上に配置し、レーザービームLの集光点を表面13aから距離B
1に対応する所定深さに位置付ける(
図4参照)。この状態で、チャックテーブル4を回転させる。
【0046】
加工条件は、例えば、下記の様に設定される。
波長 :1064nm
平均出力 :1W
繰り返し周波数:100kHz
回転速度 :180°/s
【0047】
第1のウェーハ13の内部において、集光点及びその近傍では多光子吸収が生じるので、第1の加工予定ライン17に沿って環状の第1改質層13e
1が形成される。
図4は、
図3のA-A断面図であり、第1改質層13e
1を形成する様子を示す図である。
【0048】
図4では、第1改質層13e
1を便宜的に丸で示す。第1改質層13e
1を形成すると、第1改質層13e
1を起点として表面13a及び裏面13bへ延伸するクラック13fが形成される。但し、改質層形成工程S10の時点では、クラック13fは必ずしも表面13a及び裏面13bに達しない。
【0049】
距離B1は、後述する距離B2や、仕上げ厚さB3よりは大きい。例えば、距離B1は、第1のウェーハ13の厚さ(即ち、表面13a及び裏面13b間の距離)の半分以上であり、第1のウェーハ13の厚さが775μmの場合、距離B1は、700μmである。
【0050】
なお、本実施形態では、1つの環状の第1改質層13e1を形成するが、集光点を距離B1とは異なる深さに位置付けた状態でチャックテーブル4を回転させることにより、2以上の環状の第1改質層13e1を形成してもよい。
【0051】
第1改質層13e1の形成後、チャックテーブル4の回転を停止し、集光点を表面13aから距離B1に位置付けた状態で、X軸移動ユニットでX軸方向にチャックテーブル4を移動させることで、1つの第2の加工予定ライン19に沿って第2改質層13e2を形成する。
【0052】
加工条件は、例えば、下記の様に設定される。
波長 :1064nm
平均出力 :1W
繰り返し周波数:100kHz
加工送り速度 :800mm/s
【0053】
これにより、表面13aから距離B
1の深さ位置に、第1改質層13e
1及び第2改質層13e
2が形成される。
図5は、第2改質層13e
2を形成する様子を示す図である。
図5では、1つの第2の加工予定ライン19に沿って表面13aから距離B
1に形成される1つの第2改質層13e
2を、便宜的に複数の丸で示す。
【0054】
表面13aを平面視した場合に、この1つの第2改質層13e
2により第1のウェーハ13の周方向において2つに区切られる。本実施形態の外周余剰領域13d
2は、
図3に示す様に、18本の第2の加工予定ライン19により18個に区切られる。
【0055】
第2改質層13e
2を形成すると、第2改質層13e
2を起点として表面13a及び裏面13bへ延伸するクラック13fも形成される。
図5では、クラック13fを破線で示すが、改質層形成工程S10の時点では、クラック13fは、必ずしも表面13a及び裏面13bに達しない。
【0056】
改質層形成工程S10の後、切削装置12を用いて、外周余剰領域13d2の裏面13b側を切削する(トリミング工程S20)。切削装置12は、円板状のチャックテーブル14を有する。チャックテーブル14の構成は、上述のチャックテーブル4と略同じであるが、チャックテーブル14の枠体は、金属ではなく樹脂で形成されている。
【0057】
チャックテーブル14の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)の回転軸16が連結されている。チャックテーブル14の上方には、切削ユニットが設けられている。切削ユニットは、円柱状のスピンドル(不図示)を有する。
【0058】
スピンドルの高さ方向は、水平方向と略平行に配置されている。スピンドルの一端部には、モーター等の回転駆動源が設けられており、スピンドルの他端部には、切削ブレード18が装着されている。切削ブレード18は、比較的大きい刃厚18aを有する。
【0059】
刃厚18aは、第1の加工予定ライン17から外周縁13cまでの距離(即ち、外周余剰領域13d2の幅)よりも大きい。本実施形態の刃厚18aは3mmであり、外周余剰領域13d2の幅は2mmである。
【0060】
トリミング工程S20では、まず、第2のウェーハ15の裏面15b側を保持面14aで吸引保持する。このとき、第1のウェーハ13の裏面13bが上方に露出する。次いで、スピンドルを高速(例えば、20000rpm)で回転させると共に、切削ブレード18を外周余剰領域13d2に切り込ませる。
【0061】
具体的には、切削ブレード18の下端18bが第1のウェーハ13の厚さ方向において表面13aから距離B2に対応する所定深さとなる様に、切削ブレード18を外周余剰領域13d2に切り込ませる。
【0062】
距離B2(本明細書において、切削残し厚さとも称する)は、上述の距離B1よりも小さい。つまり、トリミング工程S20では、切削ブレード18の下端18bを、第1改質層13e1及び第2改質層13e2よりも下方に位置付ける。
【0063】
下端18bを所定深さまで切り込んだ状態で、チャックテーブル14を所定の回転速度で回転させることで、切削ブレード18に対して第1のウェーハ13を、外周縁13cに沿って相対的に移動させる。
【0064】
本実施形態では、2°/s(つまり、120°/min)でチャックテーブル14を回転させることで、3分間かけてチャックテーブル14を一回転させ、裏面13b側の外周余剰領域13d2を除去する。
【0065】
トリミング工程S20では、外周余剰領域13d2に直接的に負荷を与えることができる。それゆえ、第1改質層13e1及び第2改質層13e2を起点とするクラック13fを、表面13aに達する様に確実に延伸させることができる。
【0066】
加えて、当該トリミング工程S20により、第2改質層13e2が除去される。それゆえ、第2改質層13e2が残留してる場合に比べて、積層ウェーハ11から製造されるデバイスチップの抗折強度を高くできる。
【0067】
トリミング工程S20の後、研削装置22を用いて第1のウェーハ13の裏面13b側を研削する(研削工程S30)。
図7に示す様に、研削装置22は、円板状のチャックテーブル24を有する。チャックテーブル24は、非多孔質のセラミックスで形成された円板状の枠体を有する。
【0068】
枠体の中央部には、円板状の凹部(不図示)が形成されており、この凹部には円板状の多孔質板が固定されている。枠体の上面と、多孔質板の上面とは、略面一の保持面24aとなっているが、保持面24aは、中央部が外周部に比べて僅かに突出した円錐形状を有する。
【0069】
枠体には流路が形成されており、この流路の一端は多孔質板に接続されている。また、流路の他端には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されており、吸引源からの負圧は保持面24aに伝達される。
【0070】
チャックテーブル24の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)の回転軸26が連結されている。回転軸26は、円錐形状の保持面24aの一部が水平面と略平行になる様に、傾き調整機構(不図示)により傾けられている。
【0071】
保持面24aの上方には研削ユニット28が配置されている。研削ユニット28は、Z軸方向に略平行に配置された円柱状のスピンドル30を有する。スピンドル30の上端部には、モーターが設けられており、スピンドル30の下端部には、円板状のマウント32が固定されている。
【0072】
マウント32の下面側には、円環状の研削ホイール34が装着されている。研削ホイール34は、金属で形成された円環状のホイール基台34aを有する。ホイール基台34aの下面側には、各々ブロック状の複数の研削砥石34bが、ホイール基台34aの周方向に沿って所定の間隔で配置されている。
【0073】
図7は、研削工程S30を示す図である。研削工程S30では、まず、第2のウェーハ15の裏面15b側を保持面24aで吸引保持する。このとき、第1のウェーハ13の裏面13bが上方に露出する。
【0074】
次いで、チャックテーブル24及び研削ホイール34を回転させると共に、研削ホイール34を所定の研削送り速度で降下させる。複数の研削砥石34bの下面で規定される研削面が裏面13bに接触することにより、第1のウェーハ13の裏面13b側が研削され、第1のウェーハ13は仕上げ厚さB3まで薄化される。
【0075】
このとき、第1改質層13e1が、第1のウェーハ13から除去される。なお、仕上げ厚さB3に対応する、表面13aと、研削工程S30後の裏面13bと、の間の距離は、第1改質層13e1等が形成される距離B1と、切削残し厚さに対応する距離B2と、のいずれよりも小さい。
【0076】
外周余剰領域13d2には、トリミング工程S20を経ることでクラック13fは表面13aに達しているので、第1のウェーハ13の表面13a側の外周余剰領域13d2と、第2のウェーハ15の表面15a側の外周余剰領域15d2と、の結合力が低下されている。それゆえ、研削工程S30では、遠心力、振動等の外力により、外周余剰領域13d2が分割されて積層ウェーハ11から除去される。
【0077】
この様に、本実施形態では、外周余剰領域13d2に第1改質層13e1及び第2改質層13e2が形成されているので、トリミング工程S20で外周余剰領域13d2に直接的に負荷を与えると、クラック13fが延伸して確実に表面13aに達する。
【0078】
これにより、第1のウェーハ13の外周余剰領域13d2と、第2のウェーハ15と、の結合力が低下する。それゆえ、トリミング工程S20を経ない場合に比べて、研削工程S30で確実に外周余剰領域13d2を除去できる。
【0079】
次に、第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る積層ウェーハ11の研削方法のフロー図である。第2の実施形態では、改質層形成工程S10に代えて、レーザー加工溝形成工程S12を行う。
【0080】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同じ環状の第1の加工予定ライン17が設定されているが、第1の実施形態とは異なる複数の第3の加工予定ライン21が外周余剰領域13d
2に格子状に設定されている(
図9参照)。
【0081】
図9は、第1の加工予定ライン17及び第3の加工予定ライン21を示す積層ウェーハ11の平面図である。また、
図10は、レーザー加工溝形成工程S12後の
図9のC-C断面図である。
【0082】
レーザー加工溝形成工程S12では、
図4に示すレーザー加工装置2と略同様であるが、第1のウェーハ13に吸収される波長(例えば、355nm)を有するパルス状のレーザービームを照射するレーザー加工装置36(
図10参照)を用いて、第1のウェーハ13を加工する。
【0083】
レーザー加工装置36は、チャックテーブル4、回転駆動源及びX軸方向移動ユニットに加えて、X軸移動板上に設けられ、回転駆動源を支持するY軸移動板(不図示)を有する。Y軸移動板は、Y軸方向に略平行に配置され且つX軸移動板上に固定された一対のガイドレール(不図示)上に、スライド可能に取り付けられている。
【0084】
Y軸移動板の下面側にはナット部(不図示)が設けられており。ナット部にはY軸方向に略平行に配置されたボールねじ(不図示)が回転可能に連結されている。ボールねじの一端部には、パルスモーター等の駆動源(不図示)が連結されている。
【0085】
駆動源を動作させると、Y軸移動板は、チャックテーブル4と共にY軸方向に沿って移動する。Y軸移動板、ガイドレール、ボールねじ等は、Y軸方向移動ユニットを構成する。なお、
図10では、レーザービーム照射ユニット8を省略している。
【0086】
レーザー加工溝形成工程S12では、具体的には、まず、第1の加工予定ライン17に沿って、積層ウェーハ11の上方から裏面13bへ、レーザービームを照射した状態で、チャックテーブル4を回転させる。
【0087】
加工条件は、例えば、下記の様に設定される。これにより、第1のウェーハ13の厚さ方向において、第1のウェーハ13を貫通する環状の第1レーザー加工溝13g
1を形成する(
図10参照)。
【0088】
波長 :355nm
平均出力 :1W
繰り返し周波数:100kHz
回転速度 :180°/s
【0089】
次いで、複数の第3の加工予定ライン21のうち、第1の方向に平行な第3の加工予定ライン21aがX軸方向と略平行になる様に、チャックテーブル4を回転させて、積層ウェーハ11の向きを調整する。そして、X軸方向移動ユニットで、1つの第3の加工予定ライン21aに沿ってレーザービームを照射して第2レーザー加工溝13g2を形成する。
【0090】
加工条件は、例えば、下記の様に設定される。
波長 :355nm
平均出力 :1W
繰り返し周波数:100kHz
加工送り速度 :800mm/s
【0091】
1つの第3の加工予定ライン21aに沿って第2レーザー加工溝13g2を形成した後、Y軸方向移動ユニットでレーザービームの照射位置を変更して、1つの第3の加工予定ライン21aに隣接する他の第3の加工予定ライン21aに沿ってレーザービームを照射する。
【0092】
なお、外周余剰領域13d2にのみ第2レーザー加工溝13g2を形成し、デバイス領域13d1には第2レーザー加工溝13g2が形成されない様に、レーザービームの照射タイミングが適宜調整される。
【0093】
第1の方向に平行な全ての第3の加工予定ライン21aに沿って第2レーザー加工溝13g2を形成した後、Y軸方向移動ユニットを用いて第1の方向に直交する第2の方向に平行な全ての第3の加工予定ライン21bに沿って、同様に、第2レーザー加工溝13g2を形成する。
【0094】
本実施形態では、互いに直交する13本×13本の第3の加工予定ライン21aに沿って第2レーザー加工溝13g2を形成するが、第3の加工予定ライン21の数はこの例に限定されるものではない。
【0095】
第3の加工予定ライン21aは、互いに直交する10本×10本であってもよく、互いに直交する20本×20本であってもよい。なお、本実施形態において、デバイス領域13d1を越えて延長した場合に互いに一致する第3の加工予定ライン21は、1本とカウントする。
【0096】
表面13aを平面視した場合に、1つ以上の第3の加工予定ライン21により外周余剰領域13d2を2つ以上に区切ることができればよい。但し、外周余剰領域13d2を区切る数を多くする方が、第1のウェーハ13の外周余剰領域13d2と、第2のウェーハ15と、の結合力が低下しやすくなるので、好ましい。
【0097】
第2の実施形態でも、レーザー加工溝形成工程S12後のトリミング工程S20において、切削ブレード18で外周余剰領域13d2に直接的に負荷を与えると、第1のウェーハ13の外周余剰領域13d2と、第2のウェーハ15と、の結合力が低下する。
【0098】
それゆえ、トリミング工程S20を経ない場合に比べて、研削工程S30で確実に環状領域を除去できる。その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【0099】
第1の実施形態では、放射状に複数の第2の加工予定ライン19を設定したが、第2の実施形態と同様に、1つ以上の第2の加工予定ライン19を格子状に設定してもよい。また、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、放射状に1つ以上の第3の加工予定ライン21を設定してもよい。
【0100】
ところで、改質層形成工程S10では、第2改質層13e2を形成した後に、第1改質層13e1を形成してもよい。また、レーザー加工溝形成工程S12でも、第2レーザー加工溝13g2を形成した後に、第1レーザー加工溝13g1を形成してもよい。
【符号の説明】
【0101】
2,36:レーザー加工装置、4:チャックテーブル、4a:保持面
6:回転軸、8:レーザービーム照射ユニット、10:集光器
11:積層ウェーハ
12:切削装置、14:チャックテーブル、14a:保持面、16:回転軸
13:第1のウェーハ、13a:表面(第1面)、13b:裏面(第2面)
13a1,13b1:面取り部、13c:外周縁
13d1:デバイス領域、13d2:外周余剰領域(環状領域)
13e1:第1改質層、13e2:第2改質層、13f:クラック
13g1:第1レーザー加工溝、13g2:第2レーザー加工溝
15:第2のウェーハ、15a:表面(第3面)、15b:裏面(第4面)
15a1,15b1:面取り部、15c:外周縁
15d1:デバイス領域、15d2:外周余剰領域
17:第1の加工予定ライン、19:第2の加工予定ライン
18:切削ブレード、18a:刃厚、18b:下端
21,21a,21b:第3の加工予定ライン
22:研削装置、24:チャックテーブル、24a:保持面、26:回転軸
28:研削ユニット、30:スピンドル、32:マウント
34:研削ホイール、34a:ホイール基台、34b:研削砥石
B1,B2:距離、B3:仕上げ厚さ、L:レーザービーム