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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】溶接方法および溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20241223BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
B23K26/21 F
B23K26/21 W
B23K26/067
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020097775
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021186861
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 暢康
(72)【発明者】
【氏名】西野 史香
(72)【発明者】
【氏名】金子 昌充
(72)【発明者】
【氏名】梅野 和行
(72)【発明者】
【氏名】寺田 淳
(72)【発明者】
【氏名】尹 大烈
(72)【発明者】
【氏名】安岡 知道
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-334641(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159857(WO,A1)
【文献】特開平05-200576(JP,A)
【文献】特開2004-230423(JP,A)
【文献】特開2010-243077(JP,A)
【文献】特開2020-004643(JP,A)
【文献】特開2000-351086(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0005076(US,A1)
【文献】Markus Rutering,Hybrid Solution Moves Boundaries of Copper Welding,PhotonicsViews,Vol. 16 , Issue 5,米国,John Wiley & Sons, Inc.,2019年10月09日,P46-50,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/phvs .201900044
【文献】武田 晋,高出カダイレクト半導体レーザ発振器の動向と適用事例,レーザ 加工学会誌,Vol. 26 No. 3,日本,レーザ加工学会,2019年10月,P13-19,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jlps/26/3/26_13/_pdf/-char/ja
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01L 23/34 - 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に重なった複数の部材の当該第一方向と交差した第二方向に延びたそれぞれの端縁が前記第一方向に並んだ端部に、当該端部の外側から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に沿って、レーザ光を照射しながら前記第二方向に掃引して当該第二方向に延びた溶接部を形成することにより、前記第一方向に隣接した前記端縁同士を溶接する溶接方法であって、
前記レーザ光は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第一レーザ光と、500[nm]以下の波長の第二レーザ光と、を含み、
前記端部の前記第一方向および前記第二方向に延びた表面上において、前記第一レーザ光によって形成される第一スポットの全域は前記第二レーザ光によって形成される第二スポットと重なるとともに、前記第二スポットの第二外縁は、前記第一スポットの第一外縁を離隔して取り囲み、
前記溶接部は、
前記第一方向に隣接した前記端縁を含む端部の前記第一方向および前記第二方向に延びた表面から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた、溶接金属と、
前記溶接金属の周囲に位置される熱影響部と、
を有し、
前記溶接金属は、前記第二レーザ光の照射による熱伝導型の溶融の後冷却されることにより形成され前記表面と接する第二部位と、前記第一レーザ光の照射によるキーホール型の溶融の後冷却されることにより形成され前記第二部位に対して前記表面とは反対側に位置し当該第二部位と接する位置から前記第三方向に延びるとともに前記表面側には露出しない第一部位と、を有し、
前記溶接金属の、前記第三方向の深さの前記第一方向の幅に対するアスペクト比を、1.5以上5以下とする、溶接方法。
【請求項2】
前記第二レーザ光の波長は、400[nm]以上500[nm]以下である、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
前記第二レーザ光を、前記第一方向に隣接する前記端縁間の境界のギャップを前記第一方向に跨ぐように照射する、請求項1または2に記載の溶接方法。
【請求項4】
前記複数の部材のそれぞれは、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、ニッケル系金属材料、鉄系金属材料、およびチタン系金属材料のうちのいずれか一つで作られている、請求項1~3のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項5】
レーザ光を出力するレーザ装置と、
前記レーザ装置が出力した前記レーザ光を照射する光学ヘッドと、
を備え、
第一方向に重なった複数の部材の当該第一方向と交差した第二方向に延びたそれぞれの端縁が前記第一方向に並んだ端部に、当該端部の外側から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に沿って、レーザ光を照射しながら前記第二方向に掃引して当該第二方向に延びた溶接部を形成することにより、前記第一方向に隣接した前記端縁の同士を溶接する溶接装置であって、
前記レーザ光は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第一レーザ光と、500[nm]以下の波長の第二レーザ光と、を含み、
前記端部の前記第一方向および前記第二方向に延びた表面上において、前記第一レーザ光によって形成される第一スポットの全域は前記第二レーザ光によって形成される第二スポットと重なるとともに、前記第二スポットの第二外縁は、前記第一スポットの第一外縁を離隔して取り囲み、
前記溶接部は、
前記第一方向に隣接した前記端縁を含む端部の前記第一方向および前記第二方向に延びた表面から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた、溶接金属と、
前記溶接金属の周囲に位置される熱影響部と、
を有し、
前記溶接金属は、前記第二レーザ光の照射による熱伝導型の溶融の後冷却されることにより形成され前記表面と接する第二部位と、前記第一レーザ光の照射によるキーホール型の溶融の後冷却されることにより形成され前記第二部位に対して前記表面とは反対側に位置し当該第二部位と接する位置から前記第三方向に延びるとともに前記表面側には露出しない第一部位と、を有し、
前記溶接金属の、前記第三方向の深さの前記第一方向の幅に対するアスペクト比を、1.5以上5以下とする、溶接装置。
【請求項6】
前記レーザ光を複数のビームに分割するビームシェイパを備えた、請求項5に記載の溶接装置。
【請求項7】
前記レーザ光が前記端部の前記第一方向および前記第二方向に延びた表面上で前記第二方向に沿った掃引方向に移動するよう前記レーザ光の出射方向を変化させるガルバノスキャナを備えた、請求項5または6に記載の溶接装置。
【請求項8】
前記第一方向に沿った回転軸回りに前記端部を回転する回転機構を備えた、請求項5~7のうちいずれか一つに記載の溶接装置。
【請求項9】
前記レーザ光によって前記表面上に形成されるスポットの所定位置に対するずれを検出する検出機構と、
前記ずれを補正する補正機構と、
を備えた、請求項5~8のうちいずれか一つに記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接方法および溶接装に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重ねられた二つの板状の金属部材の間に冷媒を収容する収容室が設けられ、当該二つの金属部材の周縁部を溶接することにより冷媒を封止したベーパチャンバが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-35348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のベーパチャンバでは、二つの板状部材は、それらの積層方向に沿って照射したレーザ光によって接合されている。このような構成にあっては、例えば、溶接部位の幅方向となる板状部材の延び方向に張り出すフランジが設けられるなどにより、金属部材ひいてはベーパチャンバが板状部材の延び方向に大きくなりやすい、という課題があった。
【0005】
他方、二つの板状部材の境界に向けて当該板状部材の延びる方向に沿って照射されたレーザ光により当該二つの板状部材が溶接されたベーパチャンバにあっては、溶接部位の幅が板状部材の積層方向に広がる。この場合には、例えば、板厚が薄い場合への適用が難しかったり、板厚に合わせた溶接幅では溶接深さも短くなって所要の溶接強度が確保し難かったり、といった課題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、重なりあった複数の部材を溶接することが可能な、より改善された新規な溶接方法および溶接装置、ならびに当該溶接方法あるいは当該溶接装置によって溶接された製品を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溶接方法にあっては、例えば、第一方向に重なった複数の部材の当該第一方向と交差した第二方向に延びたそれぞれの端縁が前記第一方向に並んだ端部に、当該端部の外側から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に沿って、ファイバレーザを含むレーザ発振器から出射されたレーザ光を照射することにより、前記第一方向に隣接した前記端縁同士を溶接する溶接方法であって、前記レーザ光の波長は、380[nm]以上かつ1200[nm]以下である。
【0008】
前記溶接方法では、例えば、前記レーザ光は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第一レーザ光と、500[nm]以下の波長の第二レーザ光と、を含む。
【0009】
前記溶接方法では、例えば、前記第二レーザ光の波長は、400[nm]以上500[nm]以下である。
【0010】
前記溶接方法では、例えば、前記第二レーザ光を、前記第一方向に隣接する前記端縁間の境界のギャップを前記第一方向に跨ぐように照射する。
【0011】
前記溶接方法では、例えば、前記レーザ光は、前記端部の前記第一方向および前記第二方向に延びた表面上で、前記第二方向に沿う掃引方向に掃引され、前記表面上において、前記第二レーザ光によって前記表面上に形成される第二スポットの少なくとも一部は、前記第一レーザ光によって前記表面上に形成される第一スポットよりも前記掃引方向の前方に位置している。
【0012】
前記溶接方法では、例えば、前記表面上において、前記第一スポットと前記第二スポットとは少なくとも部分的に重なっている。
【0013】
前記溶接方法では、例えば、前記表面上において、前記第二スポットの第二外縁は、前記第一スポットの第一外縁を取り囲んでいる。
【0014】
前記溶接方法では、例えば、前記複数の部材のそれぞれは、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、ニッケル系金属材料、鉄系金属材料、およびチタン系金属材料のうちのいずれか一つで作られている。
【0015】
本発明の溶接装置にあっては、例えば、ファイバレーザを含むレーザ発振器と、第一方向に重なった複数の部材の当該第一方向と交差した第二方向に延びたそれぞれの端縁が前記第一方向に並んだ端部に、当該端部の外側から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に沿って、前記レーザ発振器から出射されたレーザ光を照射する光学ヘッドと、を備え、前記第一方向に隣接した前記端縁同士を溶接する溶接装置であって、前記レーザ光の波長は、380[nm]以上かつ1200[nm]以下である。
【0016】
前記溶接装置は、例えば、前記レーザ光を複数のビームに分割するビームシェイパを備える。
【0017】
前記溶接装置は、例えば、前記レーザ光が前記端部の前記第一方向および前記第二方向に延びた表面上で前記第二方向に沿った掃引方向に移動するよう前記レーザ光の出射方向を変化させるガルバノスキャナを備える。
【0018】
前記溶接装置は、例えば、前記第一方向に沿った回転軸回りに前記端部を回転する回転機構を備える。
【0019】
前記溶接装置は、例えば、前記レーザ光によって前記表面上に形成されるスポットの所定位置に対するずれを検出する検出機構と、前記ずれを補正する補正機構と、を備える。
【0020】
本発明の製品にあっては、例えば、それぞれ第二方向に延びた端縁を有し、それぞれの前記端縁が前記第二方向と交差した第一方向に並んだ状態で当該第一方向に重なった複数の部材と、前記複数の部材のうち前記第一方向に隣接した部材の前記端縁同士を溶接した溶接部と、を備え、前記溶接部は、前記第一方向に隣接した前記端縁を含む端部の前記第一方向および前記第二方向に延びた表面から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた、溶接金属と、前記溶接金属の周囲に位置される熱影響部と、を有し、前記溶接金属は、第一部位と、当該第一部位よりも前記第二方向と交差した断面における結晶粒の断面積の平均値が大きい第二部位と、を有する。
【0021】
前記製品では、例えば、前記第二部位に含まれる結晶粒の断面積の平均値は、前記第一部位に含まれる結晶粒の断面積の平均値の1.8倍以上である。
【0022】
前記製品では、例えば、前記溶接金属は、前記第二方向に延びる。
【0023】
前記製品では、例えば、前記溶接金属の、前記第三方向の深さの前記第一方向の幅に対するアスペクト比は、1以上5以下である。
【0024】
前記製品では、例えば、前記アスペクト比は、1.5以上5以下である。
【0025】
前記製品は、例えば、第一部材と、前記第一部材との間に空間を形成した状態で前記第一部材と接合された第二部材と、を備え、前記第一部材および前記第二部材が、前記複数の部材として、前記溶接部によって接合される。
【0026】
前記製品では、例えば、第一部材と、前記第一部材との間に空間を形成した状態で前記第一部材と第三部材を介して間接的に接合された第二部材と、を備え、前記第一部材および前記第三部材、ならびに前記第二部材および前記第三部材、のうち少なくとも一方が、前記複数の部材として、前記溶接部によって接合される。
【0027】
前記製品は、例えば、前記空間内に収容された流体媒質を備え、前記溶接部が、当該溶接部からの前記流体媒質の前記空間外への漏れを防ぐ状態で前記複数の部材を溶接する。
【0028】
本発明の製品にあっては、例えば、それぞれ第二方向に延びた端縁を有し、それぞれの前記端縁が前記第二方向と交差した第一方向に並んだ状態で当該第一方向に重なった端部を構成する複数の部材と、前記複数の部材のうち前記第一方向に隣接した部材の前記端縁同士を溶接した溶接部と、を備え、前記溶接部は、前記第二方向に延びるとともに、前記端部を、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に沿って前記端部の外側から見た場合に、当該端部の前記第一方向の両端と間隔をあけて露出している。
【0029】
前記製品では、例えば、前記溶接部は、前記第一方向に隣接した前記端縁を含む端部の前記第一方向および前記第二方向に延びた表面から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた、溶接金属と、前記溶接金属の周囲に位置される熱影響部と、を有し、前記溶接金属の、前記第三方向の深さの前記第一方向の幅に対するアスペクト比は、1以上5以下である。
【0030】
前記製品では、例えば、前記アスペクト比は、1.5以上5以下である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、例えば、重なりあった複数の部材を溶接することが可能な、より改善された新規な溶接方法および溶接装置、ならびに当該溶接方法あるいは当該溶接装置によって溶接された製品を、得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、第1実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態のレーザ溶接装置に含まれる加工対象の保持機構の一例を示す模式的な側面図である。
図3図3は、第1実施形態のレーザ溶接装置に含まれる加工対象の保持機構の一例を示す模式的な平面図である。
図4図4は、第1実施形態のレーザ溶接装置によって加工対象の表面上に形成されるレーザ光のビーム(スポット)を示す例示的な模式図である。
図5図5は、照射するレーザ光の波長に対する各金属材料の光の吸収率を示すグラフである。
図6図6は、実施形態の溶接部の例示的かつ模式的な断面図である。
図7図7は、実施形態の溶接部の一部を示す例示的かつ模式的な断面図である。
図8図8は、第1実施形態のレーザ溶接装置に含まれる加工対象の保持機構の一例を示す模式的な側面図である。
図9図9は、第2実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
図10図10は、第2実施形態のレーザ溶接装置に含まれる回折光学素子の原理の概念を示す説明図である。
図11図11は、第3実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
図12図12は、第4実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
図13図13は、第5実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
図14図14は、第5実施形態のレーザ溶接装置によって加工対象の表面上に形成されるレーザ光のビーム(スポット)の一例を示す模式図である。
図15図15は、第5実施形態のレーザ溶接装置によって加工対象の表面上に形成されるレーザ光のビーム(スポット)の一例を示す模式図である。
図16図16は、第6実施形態の製品の例示的かつ模式的な斜視図である。
図17図17は、図16のXVII-XVII断面図である。
図18図18は、第6実施形態の第1変形例の製品の例示的かつ模式的な断面図である。
図19図19は、第6実施形態の第2変形例の製品の例示的かつ模式的な断面図である。
図20図20は、第6実施形態の第3変形例の製品の例示的かつ模式的な断面図である。
図21図21は、第6実施形態の第4変形例の製品の例示的かつ模式的な分解斜視図である。
図22図22は、第6実施形態の第4変形例の製品の例示的かつ模式的な断面図である。
図23図23は、第7実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0034】
以下に示される実施形態および変形例は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態および変形例の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0035】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表している。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに直交している。X方向は、掃引方向SDであり、溶接部14の延び方向(長手方向)でもある。Y方向は、積層方向であり、溶接部14の幅方向(短手方向)でもある。また、Z方向は、加工対象(溶接対象)の表面Wa(加工面、溶接面)の法線方向である。
【0036】
また、本明細書において、序数は、部品や、部材、部位、レーザ光、方向等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではない。
【0037】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のレーザ溶接装置100の概略構成図である。図1に示されるように、レーザ溶接装置100は、レーザ装置111と、レーザ装置112と、光学ヘッド120と、光ファイバ130と、を備えている。レーザ溶接装置100は、溶接装置の一例である。
【0038】
レーザ装置111,112は、それぞれ、レーザ発振器を有しており、例えば、数kWのパワーのレーザ光を出力できるよう構成されている。レーザ装置111,112は、380[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長のレーザ光を出射する。レーザ装置111,112は、内部に、例えば、ファイバレーザや、半導体レーザ(素子)、YAGレーザ、ディスクレーザのような、レーザ光源を有している。レーザ装置111,112は、複数の光源の出力の合計として、数kWのパワーのマルチモードのレーザ光を出力できるよう構成されてもよい。
【0039】
レーザ装置111は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第一レーザ光を出力する。レーザ装置111は、第一レーザ装置の一例である。一例として、レーザ装置111は、レーザ光源として、ファイバレーザかあるいは半導体レーザ(素子)を有する。レーザ装置111が有するレーザ発振器は、第一レーザ発振器の一例である。
【0040】
他方、レーザ装置112は、500[nm]以下の波長の第二レーザ光を出力する。レーザ装置112は、第二レーザ装置の一例である。一例として、レーザ装置112は、レーザ光源として、半導体レーザ(素子)を有する。レーザ装置112は、400[nm]以上500[nm]以下の波長の第二レーザ光を出力するのが好適である。レーザ装置112が有するレーザ発振器は、第二レーザ発振器の一例である。
【0041】
光ファイバ130は、それぞれ、レーザ装置111,112から出力されたレーザ光を光学ヘッド120に導く。
【0042】
光学ヘッド120は、レーザ装置111,112から入力されたレーザ光を、加工対象に向かって照射するための光学装置である。光学ヘッド120は、コリメートレンズ121と、集光レンズ122と、ミラー123と、フィルタ124と、を備えている。コリメートレンズ121、集光レンズ122、ミラー123、およびフィルタ124は、光学部品とも称されうる。
【0043】
光学ヘッド120は、加工対象としての端部10aの表面Wa上でレーザ光Lの照射を行いながらレーザ光Lを掃引するために、加工対象との相対位置を変更可能に構成されている。光学ヘッド120と加工対象との相対移動は、光学ヘッド120の移動、加工対象の移動、または光学ヘッド120および加工対象の双方の移動により、実現されうる。
【0044】
なお、光学ヘッド120は、図示しないガルバノスキャナ等を有することにより、表面Wa上でレーザ光Lを掃引可能に構成されてもよい。
【0045】
コリメートレンズ121(121-1,121-2)は、それぞれ、光ファイバ130を介して入力されたレーザ光をコリメートする。コリメートされたレーザ光は、平行光になる。
【0046】
ミラー123は、コリメートレンズ121-1で平行光となった第一レーザ光を反射する。ミラー123で反射した第一レーザ光は、Z方向の反対方向に進み、フィルタ124へ向かう。なお、第一レーザ光が光学ヘッド120においてZ方向の反対方向へ進むように入力される構成にあっては、ミラー123は不要である。
【0047】
フィルタ124は、第一レーザ光を透過し、かつ第二レーザ光を透過せずに反射するハイパスフィルタである。第一レーザ光は、フィルタ124を透過してZ方向の反対方向へ進み、集光レンズ122へ向かう。他方、フィルタ124は、コリメートレンズ121-2で平行光となった第二レーザ光を反射する。フィルタ124で反射した第二レーザ光は、Z方向の反対方向に進み、集光レンズ122へ向かう。
【0048】
集光レンズ122は、平行光としての第一レーザ光および第二レーザ光を集光し、レーザ光L(出力光)として、加工対象へ照射する。
【0049】
加工対象は、第一部材11と第二部材12とがY方向に重ねられた積層体10である。積層体10は、第一部材11と、第二部材12と、当該第一部材11および第二部材12を溶接した溶接部14と、を有している。積層体10は、溶接部14によって第一部材11と第二部材12とが溶接されることにより、製品となる。第一部材11および第二部材12は、それぞれ、Y方向と交差して広がった板状の形状を有している。第一部材11および第二部材12の溶接部14によって溶接される部位は、それぞれ、X方向およびZ方向に延びている。第一部材11はおよび第二部材12は、それぞれ、板状部材とも称されうる。Y方向は、第一方向の一例である。第一部材11および第二部材12は、複数の部材の一例である。
【0050】
積層体10の端部10aは、端縁11a,12aを有している。端縁11aは、第一部材11の端縁11aと、第二部材12の端縁12aと、を含んでいる。端縁11a,12aは、それぞれ、X方向に延びている。端縁11a,12aは、端面とも称されうる。端縁11a,12aは、Y方向に並んでいる。端縁11a,12aは、略面一であるが、多少の段差を有してもよい。端縁11a,12aにより、光学ヘッド120と面した端部10aの表面Waが形作られている。X方向は、第二方向の一例である。
【0051】
レーザ光Lは、端縁11aと端縁12aとの境界に向けて、端部10aの外側から、Z方向の反対方向に、照射される。これにより、端部10aには、表面Waから境界に沿ってZ方向の反対方向に延びる溶接部14が形成される。すなわち、溶接部14は、端縁11aと端縁12aとを接合している。また、溶接部14は、レーザ光Lの表面Waに対する掃引方向SDへの掃引により、表面Waに沿って掃引方向SD(X方向)に線状にも延びている。Z方向は、第三方向の一例である。
【0052】
図2は、積層体10の保持機構150の側面図であり、図3は、保持機構150の平面図である。図2,3に示されるように、保持機構150は、押圧部材151と、支持部材152,153と、を有している。
【0053】
押圧部材151は、例えば、Z方向と交差して広がる板状の部材であり、例えば、熱伝導性が比較的高い金属材料で作られる。二つの押圧部材151は、積層体10をY方向に挟むように配置される。また、支持部材152,153は、押圧部材151を、Z方向に挟むように配置され、押圧部材151を保持している。支持部材152,153は、二つの押圧部材151から積層体10に、Y方向の両側から第一部材11および第二部材12がY方向に互いに近づく力が印加されるよう、当該二つの押圧部材151を保持する。すなわち、保持機構150における押圧部材151および支持部材152,153の位置の調整により、積層体10をレーザ光Lに対して適切な位置および姿勢にセットすることができる。
【0054】
また、図2に示されるように、本実施形態では、溶接部14は、積層体10をZ方向の反対方向に見た場合、すなわち端部10aの外側からZ方向に沿って見た場合に、端部10aのY方向の両側の端10a1と間隔をあけて露出しており、積層体10のY方向の両端面には到達していない。
【0055】
図4は、表面Wa上に照射されたレーザ光Lのビーム(スポット)を示す模式図である。ビームB1およびビームB2のそれぞれは、そのビームの光軸方向と直交する断面の径方向において、たとえばガウシアン形状のパワー分布を有する。ただし、ビームB1およびビームB2のパワー分布はガウシアン形状に限定されない。また、図4のように各ビームB1,B2を円で表している各図において、当該ビームB1,B2を表す円の直径が、各ビームB1,B2のビーム径である。各ビームB1,B2のビーム径は、そのビームのピークを含み、ピーク強度の1/e以上の強度の領域の径として定義する。なお、図示されないが、円形でないビームの場合は、掃引方向SDと垂直方向における、ピーク強度の1/e以上の強度となる領域の長さをビーム径と定義できる。また、表面Waにおけるビーム径は、スポット径と称する。
【0056】
図4に示されるように、本実施形態では、一例として、レーザ光Lのビームは、表面Wa上において、第一レーザ光のビームB1と第二レーザ光のビームB2とが重なり、ビームB2がビームB1よりも大きく(広く)、かつ、ビームB2の外縁B2aがビームB1の外縁B1aを取り囲むよう、形成されている。この場合、ビームB2のスポット径D2は、ビームB1のスポット径D1よりも大きい。表面Wa上において、ビームB1は、第一スポットの一例であり、ビームB2は、第二スポットの一例である。
【0057】
また、本実施形態では、図4に示されるように、表面Wa上において、レーザ光Lのビーム(スポット)は、中心点Cに対する点対称形状を有しているため、任意の掃引方向SDについて、スポットの形状は同じになる。よって、レーザ光Lの表面Wa上での掃引のために光学ヘッド120と加工対象とを相対的に動かす移動機構を備える場合、当該移動機構は、少なくとも相対的に並進可能な機構を有すればよく、相対的に回転可能な機構は省略できる場合がある。
【0058】
第一部材11と第二部材12との境界Brに、端縁11a,12a同士がY方向に僅かに離間するギャップ(不図示)が存在する場合、レーザ光Lは、当該ギャップを跨ぐように照射される。一例として、レーザ溶接装置100および積層体10は、表面Waにおいて、第二レーザ光のビームB2が、Y方向に当該ギャップを跨ぐよう、セットされる。この場合には、第二レーザ光のスポットの幅(例えば、図4のスポット径D2)は、ギャップの幅よりも大きくなる。
【0059】
加工対象としての第一部材11および第二部材12は、それぞれ、熱伝導率の比較的高い金属材料で作られ得る。金属材料は、例えば、銅系金属材料や、アルミニウム系金属材料、ニッケル系金属材料、鉄系金属材料、チタン系金属材料などであり、具体的には、銅や、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、ニッケル、ニッケル合金、鉄、ステンレス、チタン、チタン合金等である。第一部材11および第二部材12は、同じ材料で作られてもよいし、異なる材料で作られてもよい。
【0060】
[波長と光の吸収率]
ここで、金属材料の光の吸収率について説明する。図5は、照射するレーザ光Lの波長に対する各金属材料の光の吸収率を示すグラフである。図5のグラフの横軸は波長であり、縦軸は吸収率である。図5には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、およびチタン(Ti)について、波長と吸収率との関係が示されている。
【0061】
材料によって特性が異なるものの、図5に示されている各金属に関しては、一般的な赤外線(IR)のレーザ光(第一レーザ光)を用いるよりも、青や緑のレーザ光(第二レーザ光)を用いた方が、エネルギの吸収率がより高いことが理解できよう。この特徴は、銅(Cu)や、金(Au)等においては顕著となる。
【0062】
使用波長に対して吸収率が比較的低い加工対象にレーザ光が照射された場合、大部分の光エネルギは反射され、加工対象に熱としての影響を及ぼさない。そのため、十分な深さの溶融領域を得るには比較的高いパワーを与える必要がある。その場合、ビーム中心部は急激にエネルギが投入されることで、昇華が生じ、キーホールが形成される。
【0063】
他方、使用波長に対して吸収率が比較的高い加工対象にレーザ光が照射された場合、投入されるエネルギの多くが加工対象に吸収され、熱エネルギへと変換される。すなわち、過度なパワーを与える必要はないため、キーホールの形成を伴わず、熱伝導型の溶融となる。
【0064】
本実施形態では、加工対象の第二レーザ光に対する吸収率が、第一レーザ光に対する吸収率よりも高くなるよう、第一レーザ光の波長、第二レーザ光の波長、および加工対象の材質が、選択される。この場合、掃引方向が図5に示される掃引方向SDである場合、レーザ光Lのスポットの掃引により、加工対象の溶接される部位(以下、被溶接部位と称する)には、まずは、第二レーザ光のビームB2の、図5におけるSDの前方に位置する領域B2fによって、第二レーザ光が照射される。その後、被溶接部位には、第一レーザ光のビームB1が照射され、その後、第二レーザ光のビームB2の、掃引方向SDの後方に位置する領域B2bによって、再度第二レーザ光が照射される。
【0065】
したがって、被溶接部位には、まずは、領域B2fにおける吸収率が高い第二レーザ光の照射により、熱伝導型の溶融領域が生じる。その後、被溶接部位には、第一レーザ光の照射によって、より深いキーホール型の溶融領域が生じる。この場合、被溶接部位には、予め熱伝導型の溶融領域が形成されているため、当該熱伝導型の溶融領域が形成されない場合に比べて、より低いパワーの第一レーザ光によって所要の深さの溶融領域を形成することができる。さらにその後、被溶接部位には、領域B2bにおける吸収率が高い第二レーザ光の照射により、溶融状態が変化する。
【0066】
また、発明者らの実験的な研究により、図4のようなビームのレーザ光Lの照射による溶接にあっては、例えばスパッタやブローホールのような溶接欠陥を低減できることが確認されている。これは、ビームB1が到来する前にビームB2の領域B2fによって加工対象を予め加熱しておくことにより、ビームB2およびビームB1によって形成される加工対象の溶融池がより安定化するためであると推定できる。
【0067】
[溶接方法]
レーザ溶接装置100を用いた溶接にあっては、まず、積層体10が、レーザ光Lが表面Waに照射されるよう、保持機構150にセットされる。そして、ビームB1およびビームB2を含むレーザ光Lが表面Waに照射されている状態で、レーザ光Lと積層体10(保持機構150)とが相対的に動かされる。これにより、レーザ光Lが表面Wa上に照射されながら当該表面Wa上を掃引方向SDに移動する(掃引する)。レーザ光Lが照射された部分は、溶融し、その後、温度の低下に伴って凝固することにより、第一部材11と第二部材12とが溶接され、積層体10が一体化される。
【0068】
[溶接部の断面]
図6は、加工対象Wに形成された溶接部14の断面図である。図6は、掃引方向SD(X方向)と垂直であるとともに厚さ方向(Z方向)に沿う断面図である。溶接部14は、掃引方向SD、すなわち図6の紙面と垂直な方向に、延びている。なお、図6は、厚さ2[mm]の1枚の銅板である加工対象Wに形成された溶接部14の断面を示している。Y方向に重ねられた複数枚の板状の金属材料に形成される溶接部14の形態は、図6に示される1枚の金属材料である加工対象Wに形成された溶接部14の形態と略同等であると推定できる。
【0069】
図6に示されるように、溶接部14は、表面WaからZ方向の反対方向に延びた溶接金属14aと、当該溶接金属14aの周囲に位置される熱影響部14bと、を有している。溶接金属14aは、レーザ光Lの照射によって溶融し、その後凝固した部位である。溶接金属14aは、溶融凝固部とも称されうる。また、熱影響部14bは、加工対象の母材が熱影響を受けた部位であって、溶融はしていない部位である。
【0070】
溶接金属14aのY方向に沿う幅は、表面Waから離れるほど狭くなっている。すなわち、溶接金属14aの断面は、Z方向の反対方向に向けて細くなるテーパ形状を有している。
【0071】
また、発明者らによる当該断面の詳細な分析により、溶接金属14aは、表面Waから離れた第一部位14a1と、第一部位14a1と表面Waとの間の第二部位14a2と、を含むことが判明した。
【0072】
第一部位14a1は、第一レーザ光の照射によるキーホール型の溶融によって得られた部位であり、第二部位14a2は、第二レーザ光のビームB2中の掃引方向SDの後方に位置する領域B2bの照射による溶融によって得られた部位である。EBSD法(electron back scattered diffraction pattern、電子線後方散乱回折)による解析により、第一部位14a1と第二部位14a2とでは、結晶粒のサイズが異なっており、具体的には、X方向(掃引方向SD)と直交する断面において、第二部位14a2の結晶粒の断面積の平均値は、第一部位14a1の結晶粒の断面積の平均値よりも大きいことが判明した。
【0073】
発明者らは、加工対象Wに、第一レーザ光のビームB1のみが照射された場合、すなわちビームB2中の掃引方向SDの後方に位置する領域B2bの照射が無かった場合には、第二部位14a2が形成されず、第一部位14a1が表面WaからZ方向の反対方向に深く延びていることを確認した。すなわち、本実施形態にあっては、ビームB2中の掃引方向SDの後方に位置する領域B2bの照射によって、表面Waの近くに第二部位14a2が形成されるため、第一部位14a1は、当該第二部位14a2に対して表面Waとは反対側、言い換えると、表面WaからZ方向の反対方向に離れた位置に、形成されていると推定できる。
【0074】
図7は、溶接部14の一部を示す断面図である。図7は、EBSD法によって得られた結晶粒の境界を示している。また、図7中、一例として結晶粒径が13[μm]以下の結晶粒Aは、黒色に塗られている。なお、13[μm]は、物理的特性の閾値ではなく、当該実験結果の分析のために設定した閾値である。また、図7から、結晶粒Aは、第一部位14a1には比較的多く存在し、第二部位14a2には比較的少なく存在していることが明らかである。すなわち、第二部位14a2内の結晶粒の断面積の平均値は、第一部位14a1内の結晶粒の断面積の平均値よりも大きい。発明者らは、実験的な分析により、第二部位14a2内の結晶粒の断面積の平均値は、第一部位14a1内の結晶粒の断面積の平均値の1.8倍以上であることを確認した。
【0075】
図7中の領域I内に示されているように、このような比較的サイズが小さい結晶粒Aは、表面WaからZ方向に離れた位置で、Z方向に細長く延びた状態で密集している。また、X方向(掃引方向SD)の位置が異なる複数箇所での分析から、結晶粒Aが密集した領域は、掃引方向SDにも延びていることが確認されている。掃引しながらの溶接であるため、掃引方向SDには結晶が同様の形態に形成されることが推定できる。
【0076】
断面における外観あるいは硬度分布等からは第一部位14a1と第二部位14a2とを判別し難い場合にあっては、図6,7のような、溶接金属14aの表面Waにおける位置および幅wbから幾何学的に定めた第一領域Z1および第二領域Z2を、それぞれ、第一部位14a1および第二部位14a2としてもよい。一例として、第一領域Z1および第二領域Z2は、掃引方向SDと直交する断面において、幅wm(Y方向における等幅)で、Z方向に延びた四角形状の領域であり、第二領域Z2は、表面WaからZ方向に深さdまでの領域とし、第一領域Z1は、深さdよりもさらに深い領域、言い換えると深さdの位置に対して表面Waとは反対側の領域とすることができる。幅wmは、例えば、溶接金属14aの表面Waでの幅wb(ビード幅の平均値)の1/3とし、第二領域Z2の深さd(高さ、厚さ)は、例えば、幅wbの1/2とすることができる。また、第一領域Z1の深さは、例えば、第二領域Z2の深さdの3倍とすることができる。発明者らは、複数サンプルに対する実験的な分析により、このような第一領域Z1および第二領域Z2の設定において、第二領域Z2における結晶粒の断面積の平均値は、第一領域Z1における結晶粒の断面積の平均値よりも大きく、かつ、1.8倍以上となっていたことを確認した。このような判別も、溶接により、溶接金属14aにおいて第一部位14a1と第二部位14a2とが形成されていることの証拠となりうる。
【0077】
また、発明者らの実験的な研究により、溶接金属14aのアスペクト比、すなわち、溶接金属14aの表面Waにおける幅wbに対する深さdmの比(dm/wb)は、溶接強度の確保および溶接幅の抑制の観点から、1以上5以下であるのが好適であり、1.5以上5以下であるのがさらに好適であることが判明した。
【0078】
以上、説明したように、本実施形態では、例えば、ファイバレーザを含むレーザ装置111,112(レーザ発振器)から出射されたレーザ光Lを端部10aの外側からZ方向に沿って(Z方向の反対方向に)照射することによりY方向(第一方向)に隣接した端縁11a,12aが溶接される。レーザ光Lの波長は、380[nm]以上かつ1200[nm]以下である。
【0079】
このような構成および方法によれば、例えば、溶接幅に対する溶接深さが比較的大きく所要の溶接強度を有した溶接部14が得られやすい。また、溶接時の溶融金属内部への空気の巻き込みが抑えられ、溶接欠陥を低減できる。
【0080】
また、本実施形態では、レーザ光Lは、例えば、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第一レーザ光と、500[nm]以下の波長の第二レーザ光と、を含んでいる。
【0081】
また、本実施形態では、例えば、第二レーザ光の波長は、400[nm]以上500[nm]以下である。
【0082】
このような構成および方法によれば、例えば、よりスパッタやブローホールのような溶接欠陥の少ないより高品質な溶接部14が得られやすい。
【0083】
また、本実施形態では、例えば、端縁11a,12a間の境界Brにギャップが設けられていた場合、第二レーザ光は、表面Waにおいて、当該ギャップを跨ぐように照射される。
【0084】
このような構成および方法によれば、例えば、金属材料における吸収率が比較的高い第二レーザ光の照射によりギャップの両側の端縁11a,12aにおいて熱伝導型の溶融領域が生じるため、溶接部14によってギャップをより確実に埋めることができ、ひいては、より接合強度の高い溶接部14が得られやすい。
【0085】
また、本実施形態では、例えば、表面Wa上において、第二レーザ光のビームB2(第二スポット)の少なくとも一部は、第一レーザ光のビームB1(第一スポット)よりも掃引方向SDの前方に位置している。
【0086】
また、本実施形態では、例えば、表面Wa上において、ビームB1とビームB2とは少なくとも部分的に重なっている。
【0087】
また、本実施形態では、例えば、表面Wa上において、ビームB2は、ビームB1よりも広い。
【0088】
また、本実施形態では、例えば、表面Wa上において、ビームB2の外縁B2a(第二外縁)は、ビームB1の外縁B1a(第一外縁)を取り囲んでいる。
【0089】
上述したように、発明者らは、表面Wa上にこのようなビームB1,B2を形成するレーザ光Lのビームの照射による溶接にあっては、溶接欠陥を低減できることを確認した。これは、上述したように、ビームB1が到来する前にビームB2の領域B2fによって加工対象Wを予め加熱しておくことにより、ビームB2およびビームB1によって形成される加工対象Wの溶融池がより安定化するためであると推定できる。よって、このようなビームB1,B2を有したレーザ光Lによれば、例えば、より溶接欠陥の少ないより溶接品質の高い溶接を実行することができる。また、このようなビームB1,B2の設定によれば、例えば、第一レーザ光のパワーをより低くすることができるという利点も得られる。また、ビームB1とビームB2とが同軸で照射される場合にあっては、光学ヘッド120と加工対象Wとの相対的な回転が不要となるという利点も得られる。
【0090】
また、本実施形態では、例えば、溶接金属14aのアスペクト比は、好適には、1以上5以下であり、さらに好適には1.5以上5以下である。
【0091】
このような構成によれば、例えば、所要の溶接強度が得られやすい上、溶接幅が大きくなり過ぎるのを抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態では、例えば、加工対象は、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、ニッケル系金属材料、鉄系金属材料、およびチタン系金属材料のうちのいずれかで作られる。
【0093】
本実施形態の溶接方法による効果は、加工対象が上記材料のうちのいずれかで作られている場合に、得られる。なお、金属材料は、導電性を有してもよいし、導電性を有しなくてもよい。
【0094】
[保持機構の変形例]
図8は、保持機構150Aの別の一例を示す側面図である。保持機構150Aは、上記第1実施形態の保持機構150に替えて装備されうる。保持機構150Aは、押圧部材151Aと、ベース154と、支持部材155と、を有している。二つの押圧部材151Aは、積層体10をY方向に挟むように配置されている。二つの支持部材155は、それぞれ、Y方向に沿った回転軸Ax回りに回転可能に、押圧部材151Aを支持している。また、二つの支持部材155は、積層体10に対してY方向の両側に配置され、それぞれ、ベース154上にY方向の位置を変更可能に取り付けられている。そして、二つの支持部材155は、二つの押圧部材151から積層体10に、Y方向の両側から第一部材11および第二部材12がY方向に互いに近づく力が印加されるよう、ベース154に固定される。すなわち、保持機構150Aにおける支持部材155の位置の調整により、積層体10をレーザ光Lに対して適切な位置および姿勢にセットすることができる。また、支持部材155に対して押圧部材151Aおよび積層体10を回転軸Ax回りに回転させることにより、端部10aの表面Waに対してレーザ光Lを掃引することができる。
【0095】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態のレーザ溶接装置100Aの概略構成図である。本実施形態では、光学ヘッド120は、コリメートレンズ121-1とミラー123との間に、DOE125を有している。この点を除き、レーザ溶接装置100Aは、第1実施形態のレーザ溶接装置100と同様の構成を備えている。
【0096】
DOE125は、第一レーザ光のビームB1の形状(以下、ビーム形状と称する)を成形する。図10に概念的に例示されるよう、DOE125は、例えば、周期の異なる複数の回折格子125aが重ね合わせられた構成を備えている。DOE125は、平行光を、各回折格子125aの影響を受けた方向に曲げたり、重ね合わせたりすることにより、ビーム形状を成形することができる。DOE125は、ビームシェイパとも称されうる。
【0097】
なお、光学ヘッド120は、コリメートレンズ121-2の後段に設けられ第二レーザ光のビーム形状を調整するビームシェイパや、フィルタ124の後段に設けられ第一レーザ光および第二レーザ光のビーム形状を調整するビームシェイパ等を有してもよい。ビームシェイパによってレーザ光Lのビーム形状を適宜に整えることにより、溶接欠陥の発生をより一層抑制することができる。
【0098】
また、図9の構成にあっては、DOE125によって第二レーザ光のビーム形状と同等のビームを生成することができ、これにより、レーザ装置112を省略することができる。この場合も、溶接においてスパッタの発生を抑制することができる。
【0099】
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態のレーザ溶接装置100Bの概略構成図である。本実施形態では、光学ヘッド120は、フィルタ124と集光レンズ122との間に、ガルバノスキャナ126を有している。この点を除き、レーザ溶接装置100Bは、第1実施形態のレーザ溶接装置100と同様の構成を備えている。
【0100】
ガルバノスキャナ126は、2枚のミラー126a,126bを有しており、当該2枚のミラー126a,126bの角度を制御することで、光学ヘッド120を移動させることなく、レーザ光Lの照射位置を移動させ、レーザ光Lを掃引することができる装置である。ミラー126a,126bの角度は、それぞれ、例えば不図示のモータによって変更される。このような構成によれば、光学ヘッド120と加工対象とを相対的に移動する機構が不要になり、例えば、装置構成を小型化できるという利点が得られる。
【0101】
[第4実施形態]
図12は、第4実施形態のレーザ溶接装置100Cの概略構成図である。本実施形態では、光学ヘッド120は、コリメートレンズ121-2とフィルタ124との間に、DOE125(ビームシェイパ)を有している。この点を除き、レーザ溶接装置100Cは、第3実施形態のレーザ溶接装置100Bと同様の構成を備えている。このような構成によれば、ガルバノスキャナ126を有することによる第3実施形態と同様の効果、およびDOE125(ビームシェイパ)を有することによる第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
なお、本実施形態においても、光学ヘッド120は、コリメートレンズ121-1の後段に設けられ第一レーザ光のビーム形状を調整するビームシェイパや、フィルタ124の後段に設けられ第一レーザ光および第二レーザ光のビーム形状を調整するビームシェイパ等を有してもよい。
【0103】
[第5実施形態]
図13は、第5実施形態のレーザ溶接装置100Dの概略構成図である。本実施形態では、光学ヘッド120は、それぞれ別のボディ(ハウジング)によって構成された、第一レーザ光L1を照射する第一部位120-1と、第二レーザ光L2を照射する第二部位120-2と、を備えている。このような構成によっても、上記実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0104】
図14,15は、レーザ溶接装置100Dによって表面Wa上に形成されたレーザ光のビームB1,B2の例を示している。図14,15に示されるように、レーザ溶接装置100Dによれば、第一部位120-1と第二部位120-2との相対位置や姿勢の設定により、ビームB1,B2の相対位置を、任意に設定することができる。発明者らの研究により、表面Wa上において、図14,15のように、ビームB2(第二スポット)の少なくとも一部がビームB1(第一スポット)よりも掃引方向SDの前方に位置している場合、およびビームB1とビームB2とが互いに接するかあるいは少なくとも部分的に重なっている場合においては、ビームB2の予熱効果による第1実施形態と同様の効果が得られることが判明している。また、ビームB2の少なくとも一部がビームB1よりも掃引方向SDの前方に位置している場合にあっては、ビームB1とビームB2とは微少距離離間していてもよいことも判明している。なお、図14,15は、それぞれ一例に過ぎず、レーザ溶接装置100Dによって得られるビームB1,B2の配置や各ビームB1,B2のサイズは、図14,15の例には限定されない。
【0105】
[第6実施形態]
図16は、第6実施形態のベーパチャンバ10Eの斜視図であり、図17は、図16のXVII-XVII断面図である。図16に示されるように、ベーパチャンバ10Eは、扁平な四角形状かつ板状の第一部材11および第二部材12を備えている。第一部材11および第二部材12は、熱伝導性の比較的高い金属材料で作られる。また、第一部材11および第二部材12は、Y方向に重なっている。そして、ベーパチャンバ10Eでは、Y方向に重なった第一部材11および第二部材12の周縁部としての端部10aにおいて、端縁11a,12aが溶接部14によって全周溶接されている。ベーパチャンバ10Eは、製品の一例である。
【0106】
図17に示されるように、第一部材11と第二部材12との間には、流体媒質Fの収容室10bが設けられている。収容室10bは、例えば、第二部材12に第一部材11に向けて開口した有底の凹部が設けられることにより、形成されている。凹部は、開口部とも称されうる。収容室10bは、空間の一例である。
【0107】
ベーパチャンバ10Eは、高温部と低温部とに渡って設けられる。高温部は、例えば、CPU(central processing unit)のような発熱体であり、低温部は、例えば、ヒートシンクのような放熱体である。流体媒質Fは、高温部から受熱することにより液相から気相に変化するとともに、低温部へ放熱することにより気相から液相に変化する。収容室10b内の高温部と隣接する領域で気体となった流体媒質Fは、当該気体の状態で、収容室10b内を、当該収容室10b内の低温部と隣接した領域へ移動する。また、収容室10b内の低温部と隣接した領域で液体となった流体媒質Fは、収容室10b内を、毛細管現象により、収容室10b内の高温部と隣接した領域へ移動する。このような、流体媒質Fによる熱の輸送により、ベーパチャンバ10Eは、高温部の冷却機構として機能することができる。
【0108】
図17に示されるように、端縁11aと端縁12aとが、溶接部14によって接合されている。溶接部14は、上述した実施形態や変形例に示された溶接方法およびレーザ溶接装置100,100A~100Dによって形成されうる。溶接部14は、上記第1実施形態の溶接部14と同様の構成を有している。第一部材11および第二部材12の周縁部としての端部10aが溶接部14によって全周溶接されることにより、収容室10b内に流体媒質Fが封止される。
【0109】
以上の本実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、本実施形態のベーパチャンバ10Eによれば、例えば、溶接幅に対する溶接深さが比較的大きくより高い溶接強度を有した溶接部14や、より溶接欠陥の少ないより高品質な溶接部14が得られやすい。
【0110】
[第6実施形態の変形例]
図18~22は、第6実施形態の変形例のベーパチャンバ10F~10Iを示している。図18に示される第1変形例のベーパチャンバ10Fでは、第一部材11のフランジ11bの端縁11aと第二部材12の端縁12aとが溶接部14によって溶接されている。このベーパチャンバ10Fでも、第一部材11および第二部材12の周縁部としての端部10aが溶接部14によって全周溶接されることにより、収容室10b内に流体媒質Fが封止される。本変形例では、収容室10bを形成する凹部は、第一部材11のみに設けられている。
【0111】
図19に示される第2変形例のベーパチャンバ10Gでは、第一部材11の外周面としての端縁11aと第二部材12の端縁12aとが溶接部14によって溶接されている。このベーパチャンバ10Gでも、第一部材11および第二部材12の周縁部としての端部10aが溶接部14によって全周溶接されることにより、収容室10b内に流体媒質Fが封止される。本変形例でも、収容室10bを形成する凹部は、第一部材11のみに設けられている。
【0112】
図20に示される第3変形例のベーパチャンバ10Hでは、第一部材11の外周面としての端縁11aと第二部材12の外周面としての端縁12aとが溶接部14によって溶接されている。このベーパチャンバ10Hでも、第一部材11および第二部材12の周縁部としての端部10aが溶接部14によって全周溶接されることにより、収容室10b内に流体媒質Fが封止される。本変形例では、収容室10bを形成する凹部は、第一部材11および第二部材12の双方に設けられている。
【0113】
図21は、第4変形例のベーパチャンバ10Iの分解斜視図であり、図22は、ベーパチャンバ10Iの略中心を通るY方向に沿った断面図である。本変形例では、第一部材11と第二部材12との間に、第三部材13が介在している。第三部材13は、扁平な四角形状かつ板状の部材であり、熱伝導性の比較的高い金属材料で作られる。また、第三部材13は、第一部材11および第二部材12と、Y方向に重なっている。第三部材13には、Y方向(積層方向)に貫通した貫通穴としての複数のスリット13bが設けられている。各スリット13bのY方向の両側が第一部材11および第二部材12によって塞がれることにより、ベーパチャンバ10I内に、流体媒質Fの収容室10bが形成されている。貫通穴は、開口部の一例である。なお、スリット13bに替えて第三部材13を開口しない凹部が設けられてもよいし、スリット13b(貫通穴)は一つであってもよい。
【0114】
そして、ベーパチャンバ10Iでは、Y方向に重なった第一部材11および第三部材13の周縁部としての端部10aにおいて、端縁11a,13aが溶接部14によって全周溶接されている。また、Y方向に重なった第二部材12および第三部材13の周縁部としての端部10aにおいて、端縁12a,13aが溶接部14によって全周溶接されている。第三部材13は、複数の部材のうちの一つである。本変形例のベーパチャンバ10Iでも、溶接部14による全周溶接により、収容室10b内に流体媒質Fが封止される。以上の第1~第4変形例によっても、第6実施形態と同様の効果が得られる。
【0115】
[第7実施形態]
図23は、第5実施形態のレーザ溶接装置100Jの概略構成図である。本実施形態のレーザ溶接装置100Jは、第2実施形態のレーザ溶接装置100Aをベースとして改変されている。レーザ溶接装置100Jは、レーザ溶接装置100Aの構成要素に加えて、制御部161、カメラ162、駆動機構163、ミラー164、およびフィルタ165を備えている。
【0116】
フィルタ165は、ミラー123とフィルタ124との間に設けられている。フィルタ165は、ミラー123からの第一レーザ光をフィルタ124へ向けて透過するとともに、表面Waからの光(例えば、可視光)をミラー164に向けて反射する。ミラー164で反射した光は、カメラ162に入力される。このような構成により、カメラ162は、表面Wa上の画像を撮影することができる。カメラ162による撮影画像には、例えば、端縁11a,12aの境界の画像と、レーザ光Lによるビーム(スポット)の画像とが、含まれている。すなわち、画像には、表面Wa上に形成されるレーザ光Lのスポットの、レーザ光Lが本来照射されるべき境界の位置(所定位置)に対するずれが、現れていることになる。よって、カメラ162による撮影画像は、表面Wa上に形成されるスポットの所定位置に対するずれの検出結果と言うことができ、カメラ162は、当該ずれを検出する検出機構の一例であると言うことができる。なお、撮影画像の画角におけるスポットの位置が固定している場合にあっては、撮影画像にスポットの画像は含まれている必要は無く、制御部161は、撮影画像中の端縁11a,12aの境界の画像の位置から、表面Wa上に形成されるスポットの所定位置に対するずれを検出することができる。
【0117】
制御部161は、カメラ162による撮影画像から、スポットの所定位置に対するずれを検出し、当該ずれを補正するよう、駆動機構163を制御する。駆動機構163は、制御部161からの指令(電気信号)に応じて作動するアクチュエータであり、光学ヘッド120を、Z方向と交差する方向、例えばY方向に、動かすことができる。駆動機構163は、例えば、モータのような回転機構や、当該回転機構の回転出力を減速する減速機構、減速機構によって減速された回転を直動に変換する運動変換機構等を、有することができる。この際、制御部161は、ずれが所定の閾値以内となるまで制御を実行するフィードバック制御を実行してもよい。制御部161および駆動機構163は、補正機構の一例である。このような構成により、溶接部14の所定位置に対する位置ずれを減らすことがき、ひいては、溶接部14の溶接強度をより高めることができるという、利点が得られる。
【0118】
なお、第3実施形態や第4実施形態のように、ガルバノスキャナ126を有するレーザ溶接装置100B,100Cに適用する場合、制御部161は、駆動機構163により光学ヘッド120の位置を変更するのに変えて、レーザ光Lの照射方向を変更し、ひいては表面Waにおけるスポットの位置を変更してもよい。このような構成によっても、同様の作用および効果を得ることができる。この場合、制御部161およびガルバノスキャナ126が、補正機構の一例となる。
【0119】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0120】
例えば、ベーパチャンバは製品の一例であって、製品は、ベーパチャンバには限定されない。
【0121】
また、加工対象に対してレーザ光を掃引する際に、公知のウォブリングやウィービングや出力変調等により掃引を行い、溶融池の表面積を調節するようにしてもよい。
【0122】
また、加工対象は、めっき付き金属板のように、金属の表面に薄い他の金属の層が存在するものでもよい。
【符号の説明】
【0123】
10…積層体(製品)
10E~10I…ベーパチャンバ(製品)
10a…端部
10a1…端
10b…収容室(空間)
11…第一部材
11a…端縁
11b…フランジ
12…第二部材
12a…端縁
13…第三部材
13a…端縁
13b…スリット
14…溶接部
14a…溶接金属
14a1…第一部位
14a2…第二部位
14b…熱影響部
100,100A~100D,100J…レーザ溶接装置(溶接装置)
111…レーザ装置(第一レーザ発振器)
112…レーザ装置(第二レーザ発振器)
120…光学ヘッド
120-1…第一部位
120-2…第二部位
121,121-1,121-2…コリメートレンズ
122…集光レンズ
123…ミラー
124…フィルタ
125…DOE(回折光学素子)
125a…回折格子
126…ガルバノスキャナ(補正機構)
126a,126b…ミラー
130…光ファイバ
150,150A…保持機構
151,151A…押圧部材
152,153…支持部材
154…ベース
155…支持部材
161…制御部(補正機構)
162…カメラ(検出機構)
163…駆動機構(補正機構)
164…ミラー
165…フィルタ
A…結晶粒
Ax…回転軸
B1…ビーム(第一スポット)
B1a…外縁
B2…ビーム(第二スポット)
B2a…外縁
B2b…領域
B2f…領域
Br…境界
C…中心点
D1…スポット径(外径)
D2…スポット径(外径)
d…深さ
dm…(溶接金属の)深さ
F…流体媒質
I…領域
L…レーザ光
L1…第一レーザ光
L2…第二レーザ光
SD…掃引方向
W…加工対象
Wa…表面
wb…(溶接金属の表面での)幅
wm…(第一領域および第二領域の)幅
X…方向(第二方向)
Y…方向(第一方向、積層方向)
Z…方向(第三方向)
Z1…第一領域(第一部位)
Z2…第二領域(第二部位)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23