(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体
(51)【国際特許分類】
C08G 64/18 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
C08G64/18
(21)【出願番号】P 2021567686
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048801
(87)【国際公開番号】W WO2021132590
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019239447
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 創
(72)【発明者】
【氏名】山田 亜起
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157681(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/071128(WO,A1)
【文献】国際公開第2002/004545(WO,A1)
【文献】特開2019-044129(JP,A)
【文献】特開2010-248413(JP,A)
【文献】特開平08-073741(JP,A)
【文献】特表2005-520922(JP,A)
【文献】特開2000-026737(JP,A)
【文献】特開平10-017670(JP,A)
【文献】特開平11-130865(JP,A)
【文献】国際公開第2009/017089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 - 64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を、300℃又は340℃で3分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズA)と、20分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズB)との差Δヘイズが0.4未満であ
り、
下記一般式(f)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び下記一般式(g)で表される化合物とを含み、[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比が0.01未満である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化1】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO
2-、-O-又は-CO-を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。R
3~R
6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。nはポリオルガノシロキサンの平均鎖長を示し、n-1はポリオルガノシロキサン単位の繰り返し数を示す1以上の整数である。Zは二価の炭化水素基を表し、この二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基又は一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。kは2又は3の整数を示す。]
【化2】
[式中、Zは、上記した通りである。kは2又は3である。]
【化3】
[式中、R
3
~R
6
、n、kは上記した通りである。式中の(PC)とは、ポリカーボネートブロックへの結合を示す。]
【化4】
[式中、R
3
~R
6
、nは上記した通りである。]
【請求項2】
白金含有量が0.05質量ppb以上0.5質量ppm未満である、請求項1に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項3】
前記式(II)中のZが、下記一般式(II-a)で表される、請求項1又は2に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化5】
[式中、Qは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、一価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子で置換されていてもよい。一価の炭素水素基はその炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。wは0~4の整数であり、波線は結合箇所を示す。]
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長nが10以上300以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項5】
下記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、下記一般式(3)で表される化合物と、白金触媒とを、反応器に連続供給し、当該反応器内を通過させながらヒドロシリル化反応をさせて得られるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、二価フェノール及びカーボネート前駆体とを、又は下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するオリゴマーとを共重合することにより得られる、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化6】
[式中、R
3~R
6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示し、複数のR
3~R
6は、互いに同一であっても異なっていてもよい。fは0~500の整数である。]
【化7】
[式中、R
22は、ビニル基又はアリル基を表し、Zは、二価の炭化水素基を表し、この二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つはハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基及び一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。]
【化8】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO
2-、-O-又は-CO-を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【請求項6】
前記白金触媒を、前記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、前記一般式(3)で表される化合物と、前記白金触媒との合計に対して、白金金属換算で0.005質量ppm以上1.0質量ppm未満の量で用いる、請求項
5に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項7】
前記白金触媒を、前記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、前記一般式(3)で表される化合物と、前記白金触媒との合計に対して、白金金属換算で0.005質量ppm以上0.2質量ppm以下の量で用いる、請求項
5又は
6に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項8】
前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(33)で表される化合物である、請求項
5~
7のいずれか一項に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化9】
[式中、Qは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、一価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子で置換されていてもよい。一価の炭素水素基はその炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。wは0~4の整数である。]
【請求項9】
前記カルビノール変性ポリオルガノシロキサンとして、下記一般式(222)で表され、式(222)中R
aのうち、[式(vi)で表される基の数]/[式(v)で表される基と式(vi)で表される基との合計数]の比が0.01未満であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いる、請求項
5~
8のいずれか一項に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化10】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
aはそれぞれ独立して、下記一般式(v)又は(vi)で表される基である:
【化11】
[式中、Zは上記した通りである。kは2又は3である。]
【化12】
[式中、Zは上記した通りである。R
33はビニル基、アリル基、又は下記一般式(2)のSi-Hとビニル基若しくはアリル基との反応に由来する、-(CH
2)
k-SiR
5R
6O-を有する末端基を表し、kは2又は3である。]
【化13】
[式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。]}
【請求項10】
下記一般式(222-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体と、下記一般式(b)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び下記一般式(c)で表される化合物とを含み、[式(b)及び式(c)における{-O-Z-R
33}で表される基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(b)及び式(c)における{-O-Z-R
33}で表される基との合計数]の比が0.01未満である、請求項
9に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化14】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
a-iはそれぞれ独立して、下記一般式(v-i)で表される基である:
【化15】
[式中、Zは上記した通りである。式(v-i)の酸素原子が、ポリカーボネート単位に結合している。kは2又は3である。]}
【化16】
[式中、R
3~R
6、Z、R
33、f、kは上記した通りである。式中の(PC)とは、ポリカーボネートブロックへの結合を示す。]
【化17】
[式中、R
3~R
6、Z、R
33、fは上記した通りである。]
【請求項11】
前記カルビノール変性ポリオルガノシロキサンとして、下記一般式(223)で表され、式(223)中R
bのうち、[ヒドロキシ基の数]/[ヒドロキシ基と式(v)で表される基との合計数]の比が0.01未満であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いる、請求項
5~
8のいずれか一項に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化18】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
b
はそれぞれ独立して、ヒドロキシ基又は下記一般式(v)で表される基である:
【化19】
[式中、Zは、上記した通りである。kは2又は3である。]}
【請求項12】
下記一般式(223-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体と、下記一般式(d)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び下記一般式(e)で表される化合物とを含み、[式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基との合計数]の比が0.01未満である、請求項
11に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化20】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
b-iはそれぞれ独立して、下記一般式(v-i)で表される基である:
【化21】
[式中、Zは上記した通りである。式(v-i)の酸素原子が、ポリカーボネート単位に結合している。kは2又は3である。]}
【化22】
[式中、R
3~R
6、f、kは上記した通りである。式中の(PC)とは、ポリカーボネートブロックへの結合を示す。]
【化23】
[式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。]
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を含む、ポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項14】
請求項
13に記載のポリカーボネート系樹脂組成物からなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体に関する。詳しくは、高温下での成形においても熱安定性に優れ、透明性に優れた成形体を与えるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールA等から製造されるポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂と略記することがある)は、エンジニアリングプラスチックの中でも非常に高い耐衝撃性を有し、優れた耐熱性も有する樹脂として知られる。一方で、ビスフェノールA等の二価フェノールと共に、ポリオルガノシロキサンを共重合モノマーとして用いて、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体とすることにより、耐衝撃性や耐熱性をさらに高める試みがなされている。
【0003】
ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(以下、PC-POS共重合体と略記することがある)は、難燃性、耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂として知られる(例えば、特許文献1)。PC-POS共重合体は、その高い耐衝撃性、耐薬品性、及び難燃性等の優れた性質のため、電気及び電子機器分野、自動車分野等の様々な分野において幅広く利用が期待されている。
特許文献2には、透明性が改善されたポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が開示されていて、全光線透過率、ヘイズ値等の評価を行っている。
特許文献3~5には、PC-POS共重合体を用いることにより、滑性、耐磨耗性等が改善された成形品が開示されている。
特許文献6には、特定の工程を有する、PC-POS共重合体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2662310号公報
【文献】特開2011-046911号公報
【文献】特開平05-202181号公報
【文献】特開平05-202182号公報
【文献】特開平05-200761号公報
【文献】特許第5919294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、多くの用途でPC-POS共重合体の特性をもった材料が望まれるようになり、多様な成形品形状に成形する必要が生じた。そのため、樹脂の流動性を確保する必要があり、成形加工時の温度が高くなる傾向にある。しかしながら、PC-POS共重合体は、高温下での成形において一般のポリカーボネートよりも透明性が低下しやすいという問題を有する。
特許文献2では特定の平均ドメインサイズと規格化分散を有するPC-POS共重合体により全光線透過率(88%以上)が改善された旨の報告をするものの、従来からかかる全光線透過率は達成が可能である。特許文献3~5はPC-POS共重合体の機械強度の改善を示すが、高温下での成形における透明性等の熱安定性の改良については検討されていない。特許文献6は耐衝撃性及び透明性に優れたPC-POS共重合体の製造方法を開示するが、未だ高温下での成形における透明性等の熱安定性は十分でない。
【0006】
以上を鑑み、本発明は、耐衝撃性等の機械物性に優れるとともに、高温下における成形を経た後でも、透明性に優れるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ポリオルガノシロキサンブロックが特定構造を有し、かつ特定のヘイズ条件を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が、高い透明性を有することを見出した。すなわち本発明は、以下に関する。
【0008】
[1]下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を、300℃又は340℃で3分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズA)と、20分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズB)との差Δヘイズが0.4未満である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化1】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO
2-、-O-又は-CO-を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。R
3~R
6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。nはポリオルガノシロキサンの平均鎖長を示し、n-1はポリオルガノシロキサン単位の繰り返し数を示す1以上の整数である。Zは二価の炭化水素基を表し、この二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基又は一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。kは2又は3の整数を示す。]
[2]白金含有量が0.05質量ppb以上0.5質量ppm未満である、上記[1]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
[3]前記式(II)中のZが、下記一般式(II-a)で表される、上記[1]又は[2]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化2】
[式中、Qは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、一価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子で置換されていてもよい。一価の炭素水素基はその炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。wは0~4の整数であり、波線は結合箇所を示す。]
[4]前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長nが10以上300以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
[5]下記一般式(f)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び下記一般式(g)で表される化合物を含み、[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比が0.01未満である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化3】
[式中、Zは、上記した通りである。kは2又は3である。]
【化4】
[式中、R
3~R
6、n、kは上記した通りである。式中の(PC)とは、ポリカーボネートブロックへの結合を示す。]
【化5】
[式中、R
3~R
6、nは上記した通りである。]
[6]下記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、下記一般式(3)で表される化合物と、白金触媒とを、反応器に連続供給し、当該反応器内を通過させながらヒドロシリル化反応をさせて得られるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、二価フェノール及びカーボネート前駆体とを共重合するか、又は該カルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するオリゴマーとを共重合することにより得られる、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化6】
[式中、R
3~R
6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示し、複数のR
3~R
6は、互いに同一であっても異なっていてもよい。fは0~500の整数である。]
【化7】
[式中、R
22は、ビニル基又はアリル基を表し、Zは、二価の炭化水素基を表し、この二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つはハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基及び一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。]
【化8】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO
2-、-O-又は-CO-を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
[7]前記白金触媒を、前記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、前記一般式(3)で表される化合物と、前記白金触媒との合計に対して、白金金属換算で0.005質量ppm以上1.0質量ppm未満の量で用いる、上記[6]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
[8]前記白金触媒を、前記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、前記一般式(3)で表される化合物と、前記白金触媒との合計に対して、白金金属換算で0.005質量ppm以上0.2質量ppm以下の量で用いる、上記[6]又は[7]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
[9]前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(33)で表される化合物である、上記[6]~[8]のいずれか1つに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化9】
[式中、Qは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、一価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子で置換されていてもよい。一価の炭素水素基はその炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。wは0~4の整数である。]
[10]前記カルビノール変性ポリオルガノシロキサンとして、下記一般式(222)で表され、式(222)中R
aのうち、[式(vi)で表される基の数]/[式(v)で表される基と式(vi)で表される基との合計数]の比が0.01未満であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いる、上記[6]~[9]のいずれか1つに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化10】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
aはそれぞれ独立して、下記一般式(v)又は(vi)で表される基である:
【化11】
[式中、Zは上記した通りである。kは2又は3である。]
【化12】
[式中、Zは上記した通りである。R
33はビニル基、アリル基、又は下記一般式(2)のSi-Hとビニル基若しくはアリル基との反応に由来する、-(CH
2)
k-SiR
5R
6O-を有する末端基を表し、kは2又は3である。]
【化13】
[式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。]}
[11]下記一般式(222-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体と、下記一般式(b)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び下記一般式(c)で表される化合物とを含み、[式(b)及び式(c)における{-O-Z-R
33}で表される基の数]/[式(v-i)で表される基と、式(b)及び式(c)における{-O-Z-R
33}で表される基との合計数]の比が0.01未満である、上記[10]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化14】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
aはそれぞれ独立して、下記一般式(v-i)で表される基である:
【化15】
[式中、Zは上記した通りである。式(v-i)の酸素原子が、ポリカーボネート単位に結合している。kは2又は3である。]}
【化16】
[式中、R
3~R
6、Z、R
33、f、kは上記した通りである。式中の(PC)とは、ポリカーボネートブロックへの結合を示す。]
【化17】
[式中、R
3~R
6、Z、R
33、fは上記した通りである。]
[12]前記カルビノール変性ポリオルガノシロキサンとして、下記一般式(223)で表され、式(223)中R
bのうち、[ヒドロキシ基の数]/[ヒドロキシ基と式(v)で表される基との合計数]の比が0.01未満であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いる、上記[6]~[9]のいずれか一項に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化18】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
aはそれぞれ独立して、ヒドロキシ基又は下記一般式(v)で表される基である:
【化19】
[式中、Zは、上記した通りである。kは2又は3である。]}
[13]下記一般式(223-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体と、下記一般式(d)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び下記一般式(e)で表される化合物とを含み、[式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基との合計数]の比が0.01未満である、上記[12]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化20】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
b-iはそれぞれ独立して、下記一般式(v-i)で表される基である:
【化21】
[式中、Zは上記した通りである。式(v-i)の酸素原子が、ポリカーボネート単位に結合している。kは2又は3である。]}
【化22】
[式中、R
3~R
6、f、kは上記した通りである。式中の(PC)とは、ポリカーボネートブロックへの結合を示す。]
【化23】
[式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。]
[14]上記[1]~[13]のいずれか1つに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を含む、ポリカーボネート系樹脂組成物。
[15]上記[14]に記載のポリカーボネート系樹脂組成物からなる成形品。
【0009】
本発明は、以下にも関する。
[101](X1)下記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、下記一般式(3)で表される化合物と、白金触媒とを、反応器に連続供給し、当該反応器内を通過させながらヒドロシリル化反応をさせてカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを得る工程、及び
(X2)前記工程(X1)で得られたカルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、二価フェノール及びカーボネート前駆体とを、又は下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するオリゴマーとを共重合する工程を含む、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
【化24】
[式中、R
3~R
6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示し、複数のR
3~R
6は、互いに同一であっても異なっていてもよい。fは0~500の整数である。]
【化25】
[式中、R
22は、ビニル基又はアリル基を表し、Zは、二価の炭化水素基を表し、この二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つはハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基及び一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。]
【化26】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO
2-、-O-又は-CO-を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
[102]前記工程(X1)において、白金触媒を、前記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、前記一般式(3)で表される化合物と、前記白金触媒との合計に対して、白金金属換算で0.005質量ppm以上1.0質量ppm未満の量で用いる、上記[101]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
[103]前記工程(X1)において、白金触媒を、前記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、前記一般式(3)で表される化合物と、前記白金触媒との合計に対して、白金金属換算で0.005質量ppm以上0.2質量ppm以下の量で用いる、上記[101]又は[102]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
[104]前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(33)で表される化合物である、上記[101]~[103]のいずれか一項に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
【化27】
[式中、Qは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、一価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子で置換されていてもよい。一価の炭素水素基はその炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。wは0~4の整数である。]
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリオルガノシロキサンブロックに由来する優れた機械物性を有するとともに、高温下における成形後にも優れた透明性を維持する、すなわち、高い熱安定性を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体について詳細に説明する。本明細書において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいといえる。本明細書において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
【0012】
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体又はその樹脂組成物を、300℃又は340℃で3分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズA)と、20分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズB)との差Δヘイズが0.4未満であることを特徴とする。
【化28】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO
2-、-O-又は-CO-を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。R
3~R
6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。nはポリオルガノシロキサンの平均鎖長を示し、n-1はポリオルガノシロキサン単位の繰り返し数を示す1以上の整数である。Zは二価の炭化水素基を表し、当該二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基又は一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。kは2又は3の整数を示す。]
【0013】
<ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体>
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、上記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び上記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含む。
【0014】
一般式(I)で示されるポリカーボネートブロック(A-1)について詳述する。上記一般式(I)中、R1及びR2がそれぞれ独立して示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
R1及びR2がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基(「各種」とは、直鎖状及びあらゆる分岐鎖状のものを含むことを示し、以下同様である。)、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R1及びR2がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。
【0015】
Xが表すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、炭素数1~5のアルキレン基が好ましい。Xが表すアルキリデン基としては、エチリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。Xが表すシクロアルキレン基としては、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基等が挙げられ、炭素数5~10のシクロアルキレン基が好ましい。Xが表すアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられる。Xが表すシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン基、2-アダマンチリデン基等が挙げられ、炭素数5~10のシクロアルキリデン基が好ましく、炭素数5~8のシクロアルキリデン基がより好ましい。Xが表すアリールアルキレン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6~14のアリール基が挙げられる。Xが表すアリールアルキリデン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6~14のアリール基が挙げられる。
【0016】
a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示し、好ましくは0~2、より好ましくは0又は1である。中でも、a及びbが0であり、Xが単結合又は炭素数1~8のアルキレン基であるもの、又はa及びbが0であり、Xがアルキリデン基、特にイソプロピリデン基であるものが好適である。
【0017】
一般式(II)中、R3~R6がそれぞれ独立して示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R3~R6がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R3~R6がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。R3~R6がそれぞれ独立して示すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0018】
R3~R6としては、好ましくは、いずれも水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基であり、いずれもメチル基であることがより好ましい。
【0019】
Zは二価の炭化水素基を表す。該二価の炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、1~20が好ましく、1~10がより好ましい。
二価の炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、具体的には、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、オクタメチレン基等の直鎖、分岐又は環状のアルキレン基;o-フェニレン、m-フェニレン、p-フェニレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、メトキシフェニレン、ナフチレン基等のアリーレン基や、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子や炭素数1~20の1価炭化水素基等で置換された基などを挙げることができる。これら二価の炭化水素基及び一価の炭化水素基の炭素原子の一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。炭素数1~20の1価炭化水素基好ましくは炭素数1~10の1価炭化水素基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子等で置換された基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
二価の炭化水素基及び一価の炭化水素基の炭素原子の一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されている場合、例えば、-CH2-が、-O-、-NH-又は-S-で置換されている。
【0020】
kは2又は3の整数を示し、3が好ましい。
【0021】
これらの中でも、Zは、下記一般式(II-a)で表されるQで置換されていてもよいフェニレン基が好ましい。
【化29】
[式中、wは0~4の整数であり、波線は結合箇所を示す。]
【0022】
Qは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を表し、炭素原子の一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。一価の炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子で置換された基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基などが挙げられる。
Qとしては、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、メチル基、メトキシ基がより好ましい。
wは、0~4の整数であり、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0023】
上記式(II)中のZとしては、さらに具体的には下記式で示されるものが好ましい。
【化30】
[式中、波線は結合箇所を示す。d、eおよびgは、それぞれ独立して0~50、好ましくは0~10の整数を表す。]
中でも、式(Z-1)で表される基、式(Z-2)で表される基、式(Z-8)で表される基(ただし、d=6)、又は式(Z-9)で表される基(ただし、e=1,g=0)がより好ましい。
【0024】
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を別の側面からより詳細に説明する。
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、下記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、下記一般式(3)で表される化合物と、白金触媒とを、反応器に連続供給し、当該反応器内を通過させながらヒドロシリル化反応をさせて得られるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、二価フェノール及びカーボネート前駆体とを共重合するか、又は上記カルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するオリゴマーとを共重合することにより得られる。なお、本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、必要に応じて上記カルビノール変性ポリオルガノシロキサンを公知の方法で精製した後に、精製されたカルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、二価フェノール及びカーボネート前駆体とを共重合するか、又は精製されたカルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するオリゴマーとを共重合することにより得られたものであってもよい。精製に関しては後述する。
【化31】
[式中、R
3~R
6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示し、複数のR
3~R
6は、互いに同一であっても異なっていてもよい。fは0~500の整数である。]
【化32】
[式中、R
22は、ビニル基又はアリル基を表し、Zは、二価の炭化水素基を表し、この二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つはハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基および一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。]
【化33】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO
2-、-O-又は-CO-を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【0025】
R3~R6の好ましい例は上述した通りであり、好ましいものの組み合わせは同じく好ましい。fは0以上500以下の整数であり、より好ましくは0以上300以下、さらに好ましくは30以上200以下である。
fの別の好ましい態様として、8以上298以下の整数であり、より好ましくは28以上、さらに好ましくは33以上、よりさらに好ましくは38以上であり、より好ましくは198以下、さらに好ましくは148以下、よりさらに好ましくは98以下、特に好ましくは93以下である。fが500以下である場合、得られるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンの分子量が、共重合体の透明性や機械的特性の観点から好ましい範囲となる。
【0026】
式(3)におけるR22は、ビニル基又はアリル基を表し、アリル基がより好ましい。
Zの例示は上記した通りであり、好ましい例も好ましい組み合わせも同様である。
【0027】
式(3)で表される化合物としては、下記一般式(33)で表される化合物がより好ましい。
【化34】
[式中、Qは、ハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、一価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子で置換されていてもよい。一価の炭素水素基はその炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。wは0~4の整数である。]
【0028】
白金触媒はヒドロシリル化を促進するための触媒であり、その具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等、公知のものが使用できる。上記白金触媒は、上記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、上記一般式(3)で表される化合物と、上記白金触媒との合計に対して、白金金属換算で0.005質量ppm以上1.0質量ppm未満の量で用いることができる。白金触媒量が0.005質量ppm以上であるとヒドロシリル化反応が十分に進行する。白金触媒量が1.0質量ppm未満であればオルガノシロキサン末端の反応部位において副反応を抑制することができる。
上記白金触媒量は、より好ましくは0.005質量ppm以上0.5質量ppm以下、さらに好ましくは0.005質量ppm以上0.2質量ppm以下、よりさらに好ましくは0.01質量ppm以上0.10質量ppm以下である。
【0029】
上記カルビノール変性ポリオルガノシロキサンは、以下の工程
(i):上記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、上記一般式(3)で表される化合物と、白金触媒とを、反応器に連続供給する工程、
(ii):上記(2)、(3)及び白金触媒を、前記反応器内を通過させながらヒドロシリル化反応させる工程、並びに
(iii):反応生成物を取り出す工程
により調製することができる。
【0030】
工程(i)
上記工程(i)において、上記(2)、(3)及び白金触媒は、それぞれ独立に供給管を通じて反応器へ連続供給してもよく、上記(2)、(3)及び白金触媒の一部又は全部を、撹拌機を備えたタンクなどで予め混合した後に反応器へ連続供給してもよい。
反応器は管状反応器が好ましい。管状反応器には特に制限はなく、内部に(2)、(3)及び白金触媒を通過させながら反応可能な公知のフローリアクターから適宜選択して用いることができる。
【0031】
上記工程(i)において、供給される(2)、(3)及び白金触媒の温度に特に制約はないが、工程(ii)での反応を円滑に進めるために、0℃以上150℃以下が好ましく、10℃以上100℃以下がより好ましく、20℃以上80℃以下がさらに好ましい。
工程(i)では、(2)、(3)及び白金触媒の他に溶媒を添加してもよい。
溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、イソドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル類;エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール類などが挙げられる。
【0032】
工程(ii)
工程(ii)は、(2)、(3)及び白金触媒を、反応器内を通過させながら、(2)成分及び(3)成分をヒドロシリル化反応させる工程である。
本工程における反応器内の温度は、特に限定されるものではないが、反応効率向上及び副反応抑制の点から、20℃以上180以下℃が好ましく、40℃以上150℃以下がより好ましく、50℃以上120℃以下がより一層好ましい。
【0033】
なお、工程(i)及び工程(ii)の合計時間は、特に限定されるものではないが、製造効率の点から1分間以上60分間以下が好ましく、3分間以上45分間以下がより好ましく、5分間以上30分間以下がより一層好ましい。
【0034】
工程(iii)
工程(iii)は、上記工程(ii)で得られた反応生成物を取り出す工程である。
取り出し量については工程(i)における供給量に依存し、特に限定されないが、効率的に製造を行う観点から100kg/h以上が好ましく、200kg/h以上がより好ましく、300kg/h以上がより一層好ましい。
取り出した反応生成物は、そのまま用いることができるが、必要に応じ、公知の方法で精製して用いてもよい。例えば、上記一般式(3)で表される化合物を除去する工程(iv)を含む。工程(iv)の具体的な例としては、例えば薄膜蒸発器等を用いて加温下、例えば160℃下にて、余分な上記一般式(3)で表される化合物を除去する。
上述したカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いることにより、PC-POS共重合体に最終的に含まれる白金含有量を上記した値とすることができる。
【0035】
上記カルビノール変性ポリオルガノシロキサンの一つの好適な実施形態として、下記一般式(222)で表され、式(222)中R
aのうち、[式(vi)で表される基の数]/[式(v)で表される基と式(vi)で表される基との合計数]の比が0.01未満であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【化35】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
aはそれぞれ独立して、下記一般式(v)又は(vi)で表される基である:
【化36】
[式中、Zは、二価の炭化水素基を表し、この二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つはハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基及び一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。kは2又は3である。]
【化37】
[式中、Zは上記式(v)と同じ意味を示す。R
33はビニル基、アリル基、又は下記一般式(2)のSi-Hとビニル基若しくはアリル基との反応に由来する、-(CH
2)
k-SiR
5R
6O-を有する末端基を表し、kは2又は3である。]
【化38】
[式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。]}
【0036】
上記[式(vi)で表される基の数]/[式(v)で表される基と式(vi)で表される基との合計数]の比が0.01未満であれば、副反応物を抑えることができ、カルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いて得られる共重合体の高温下での成形による透明性や色調の低下を抑制し、共重合体を用いた成形品の外観を好適に保つことができる。
上記[式(vi)で表される基の数]/[式(v)で表される基と式(vi)で表される基との合計数]の比は、より好ましくは0.008以下、更に好ましくは0.006以下である。また、0.005以下であることもより好ましい。
上記[式(vi)で表される基の数]/[式(v)で表される基と式(vi)で表される基との合計数]の比であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンは、例えば、上記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、上記一般式(3)で表される化合物と、白金触媒とを、反応器に連続供給し、当該反応器内を通過させながらヒドロシリル化反応をさせることにより得られる。
本明細書における上記比は、29Si-NMRスペクトルにおいて上記式(v)に基づく-O-Si(R5)(R6)-CH2-構造のSiに由来する積分値と、上記式(vi)に基づく-O-Si(R5)(R6)-O-Z-構造のSiに由来する積分値とから算出される値である。
【0037】
上記カルビノール変性ポリオルガノシロキサンの別の好適な実施形態として、下記一般式(223)で表され、式(223)中R
bのうち、[ヒドロキシ基の数]/[ヒドロキシ基と式(v)で表される基との合計数]の比が0.01未満であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いて得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が挙げられる。
【化39】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
bはそれぞれ独立して、ヒドロキシ基又は下記一般式(v)で表される基である:
【化40】
[式中、Zは、上記した通りである。kは2又は3である。]}
【0038】
上記[ヒドロキシ基の数]/[ヒドロキシ基と式(v)で表される基との合計数]の比が0.01未満であれば、副反応物を抑えることができ、カルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いて得られる共重合体の高温下での成形による透明性や色調の低下を抑制し、共重合体を用いた成形品の外観を好適に保つことができる。
上記[ヒドロキシ基の数]/[ヒドロキシ基と式(v)で表される基との合計数]の比は、より好ましくは0.008以下、更に好ましくは0.006以下である。また、0.005以下であることもより好ましい。
上記[ヒドロキシ基の数]/[ヒドロキシ基と式(v)で表される基との合計数]の比であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンは、例えば、上記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンと、上記一般式(3)で表される化合物と、白金触媒とを、反応器に連続供給し、当該反応器内を通過させながらヒドロシリル化反応をさせることにより得られる。
本明細書における上記比は、29Si-NMRスペクトルにおいて上記式(v)に基づく-O-Si(R5)(R6)-CH2-構造のSiに由来する積分値と、-O-Si(R5)(R6)-OH構造のSiに由来する積分値とから算出される値である。
【0039】
上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、二価フェノール及びカーボネート前駆体を重合させる反応系にポリオルガノシロキサンを加えて、界面重合方法(ホスゲン法)、エステル交換法(溶融法)等により製造することができる。界面重合法の場合には、カーボネート前駆体としてホスゲンやトリホスゲン等を用いることができ、エステル交換法の場合には、カーボネート前駆体としてジフェニルカーボネートを用いることができる。あるいは、後述するように、予め二価フェノールとホスゲンとを反応させて、両末端がクロロホーメート構造であるビスフェノールモノマー若しくはビスフェノールポリカーボネートオリゴマーを調製した後、該ビスフェノールモノマー若しくはビスフェノールポリカーボネートオリゴマーとポリオルガノシロキサンとを反応させる手法を採用することも好適である。特に界面重合法を採用した場合には、PC-POS共重合体を含む有機相と未反応物や触媒残渣等を含む水相との分離工程が容易であり、アルカリ洗浄、酸洗浄、純水洗浄等の各洗浄工程におけるPC-POS共重合体を含む有機相と水相との分離が容易である。そのため、効率よくPC-POS共重合体が得られる。PC-POS共重合体を製造する方法として、例えば、特開2014-80462号公報等に記載の方法を参照することができる。
【0040】
具体的には、後述する予め製造されたポリカーボネートオリゴマーと、カルビノール変性ポリオルガノシロキサンとを、非水溶性有機溶媒(塩化メチレン等)に溶解させ、二価フェノール系化合物(ビスフェノールA等)のアルカリ性化合物水溶液(水酸化ナトリウム水溶液等)を加え、重合触媒として第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、末端停止剤(p-tert-ブチルフェノール等の1価フェノール)の存在下、界面重縮合反応させることにより製造できる。また、PC-POS共重合体は、カルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、二価フェノールと、ホスゲン、炭酸エステル又はクロロホーメートとを共重合させることによっても製造できる。
【0041】
ポリカーボネートオリゴマーは、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の有機溶剤中で、二価フェノールとホスゲンやトリホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応によって製造することができる。なお、エステル交換法を用いてポリカーボネートオリゴマーを製造する際には、二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体との反応によって製造することもできる。
【0042】
二価フェノールとしては、下記一般式(viii)で表される二価フェノールを用いることが好ましい。
【化41】
式中、R
1、R
2、a、b及びXは上述した通りである。
【0043】
上記一般式(viii)で表される二価フェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド及びビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。これらの二価フェノールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系二価フェノールが好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。二価フェノールとしてビスフェノールAを用いた場合、上記一般式(i)において、Xがイソプロピリデン基であり、且つa=b=0のPC-POS共重合体となる。
【0044】
ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ジヒドロキシアリールエーテル類、ジヒドロキシジアリールスルフィド類、ジヒドロキシジアリールスルホキシド類、ジヒドロキシジアリールスルホン類、ジヒドロキシジフェニル類、ジヒドロキシジアリールフルオレン類及びジヒドロキシジアリールアダマンタン類等が挙げられる。これらの二価フェノールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類としては、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0046】
ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類としては、例えば1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノルボルナン及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン等が挙げられる。ジヒドロキシアリールエーテル類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル及び4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0047】
ジヒドロキシジアリールスルフィド類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド及び4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホキシド類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド及び4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホン類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン及び4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0048】
ジヒドロキシジフェニル類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールフルオレン類としては、例えば9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールアダマンタン類としては、例えば1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン及び1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0049】
上記以外の二価フェノールとしては、例えば4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-9-アントロン及び1,5-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-2,3-ジオキサペンタン等が挙げられる。
【0050】
得られるPC-POS共重合体の分子量を調整するために、末端停止剤(分子量調節剤)を使用することができる。末端停止剤としては、例えば、フェノール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-クミルフェノール、p-ノニルフェノール、m-ペンタデシルフェノール及びp-tert-アミルフェノール等の一価フェノールを挙げることができる。これら一価フェノールは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明の一実施形態におけるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、一般式(222)で表されるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、二価フェノール及びカーボネート前駆体とを、又はポリカーボネートオリゴマーとを反応させて得ることができる。従って、下記一般式(222-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位を有し得る。
【化42】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
a-iはそれぞれ独立して、下記一般式(v-i)で表される基である:
【化43】
[式中、Zは、二価の炭化水素基を表し、この二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つはハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基及び一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。式(v-i)の酸素原子が、ポリカーボネート単位に結合している。kは2又は3である。]}
【0052】
なお、一般式(222-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位において、一般式(v-i)で表されるRa-i基の(CH2)kがケイ素原子(Si)と直接結合している。
【0053】
ところで、一般式(222)で表されるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンには、式(222)中R
aのうち、式(vi)で表される基が含まれ得るものであって、[式(vi)で表される基の合計数]/[式(v)で表される基と式(vi)で表される基との合計数]の比が0.01未満であることが好ましいことは上述した通りである。すなわち、本発明の一実施形態におけるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、上記一般式(222-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の他に、式(vi)で表される化合物が末端に取り込まれた下記一般式(b)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体と、カーボネート前駆体及び二価フェノールや、ポリカーボネートオリゴマー等と反応せずに残存する下記一般式(c)で表される化合物とを含み得る。
【化44】
[式中、R
3~R
6、Z、R
33、f、kは上記した通りである。式中の(PC)とは、ポリカーボネートブロックへの結合を示す。]
【化45】
[式中、R
3~R
6、Z、R
33、fは上記した通りである。]
【0054】
上記式(b)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン重合体及び上記式(c)で表される化合物は、本実施形態におけるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体に、いわゆる「不純物」として含まれるものである。これらの割合は、[式(b)及び式(c)における{-O-Z-R33}で表される基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(b)及び式(c)における{-O-Z-R33}で表される基との合計数]の比が0.01未満であることが好ましい。0.01未満であると、PC-POS共重合体の高温下での成形による透明性や色調の低下が抑制され、PC-POS共重合体のΔヘイズ値を上述した値とすることができ、共重合体を用いた成形品の外観を好適に保つことができる。
上記[式(b)及び式(c)における{-O-Z-R33}で表される基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(b)及び式(c)における{-O-Z-R33}で表される基との合計数]の比は、より好ましくは0.008以下、更に好ましくは0.006以下である。また、0.005以下であることもより好ましい。
上記[式(b)及び式(c)における{-O-Z-R33}で表される基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(b)及び式(c)における{-O-Z-R33}で表される基との合計数]の比であるPC-POS共重合体は、例えば、[式(vi)で表される基の合計数]/[式(v)で表される基と式(vi)で表される基との合計数]の比が0.01未満であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いることにより得られる。
本明細書における上記比は、29Si-NMRスペクトルにおいて上記式(v-i)に基づく-O-Si(R5)(R6)-CH2-構造のSiに由来する積分値と、上記式(b)及び式(c)における-O-Si(R5)(R6)-O-Z-構造のSiに由来する積分値とから算出される値である。
【0055】
本発明の別の実施形態におけるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、一般式(223)で表されるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンと、二価フェノール及びカーボネート前駆体とを、又はポリカーボネートオリゴマーとを反応させて得ることができる。従って、下記一般式(223-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位を有し得る。
【化46】
{式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。R
b-iはそれぞれ独立して、下記一般式(v-i)で表される基である:
【化47】
[式中、Zは、二価の炭化水素基を表し、この二価の炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つはハロゲン原子又は炭素数1~20の一価の炭化水素基で置換されていてもよい。これら二価の炭化水素基及び一価の炭化水素基は、炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。式(v-i)の酸素原子が、ポリカーボネート単位に結合している。kは2又は3である。]}
【0056】
なお、一般式(223-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位において、一般式(v-i)で表されるRb-i基の(CH2)kがケイ素原子(Si)と直接結合している。
【0057】
一般式(223)で表されるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンには、式(223)中R
bとして、ヒドロキシ基も含まれ得ることは上述した通りである。すなわち、本発明の一実施形態におけるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、上記一般式(223-i)で表されるポリオルガノシロキサン単位を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体、上記一般式(b)及び(c)で表される不純物の他に、ヒドロキシ基が末端に取り込まれた下記一般式(d)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体と、カーボネート前駆体及び二価フェノールや、ポリカーボネートオリゴマー等と反応せずに残存する下記一般式(e)で表される化合物とを含み得る。
【化48】
[式中、R
3~R
6、f、kは上記した通りである。式中の(PC)とは、ポリカーボネートブロックへの結合を示す。]
【化49】
[式中、R
3~R
6、fは上記した通りである。]
【0058】
上記式(d)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び上記式(e)で表される化合物も、本実施形態におけるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体に、いわゆる「不純物」として含まれるものである。これらの割合は、[式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基との合計数]の比が0.01未満であることが好ましい。0.01未満であると、PC-POS共重合体の高温下での成形による透明性や色調の低下が抑制され、PC-POS共重合体のΔヘイズ値を上述した値とすることができ、共重合体を用いた成形品の外観を好適に保つことができる。
上記[式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基との合計数]の比は、より好ましくは0.008以下、更に好ましくは0.006以下である。また、0.005以下であることもより好ましい。
上記[式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基との合計数]の比であるPC-POS共重合体は、例えば、上記一般式(223)で表され、式(223)中Rbのうち、[ヒドロキシ基の数]/[ヒドロキシ基と式(v)で表される基との合計数]の比が0.01未満であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いることにより得られる。
本明細書における上記比は、29Si-NMRスペクトルにおいて上記式(v-i)に基づく-O-Si(R5)(R6)-CH2-構造のSiに由来する積分値と、上記式(d)及び式(e)における-O-Si(R5)(R6)-OH構造のSiに由来する積分値とから算出される値である。従って、上記[式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基との合計数]の比は、[式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基の合計数]/[-O-Si(R5)(R6)-CH2-で表される基の数と、式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基の数の合計数]の比と換言することができる。
【0059】
本発明の別の実施形態におけるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を、300℃又は340℃で3分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズA)と、20分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズB)との差Δヘイズが0.4未満であり、
下記一般式(f)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び下記一般式(g)で表される化合物を含み、[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比が0.01未満である。
【化50】
[式中、R
1~R
6、X、Z、a、b、n、kは上記した通りである。]
【化51】
[式中、Zは、上記した通りである。kは2又は3である。]
【化52】
[式中、R
3~R
6、n、kは上記した通りである。式中の(PC)とは、ポリカーボネートブロックへの結合を示す。]
【化53】
[式中、R
3~R
6、nは上記した通りである。]
【0060】
上記式(f)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び上記式(g)で表される化合物は、本実施形態におけるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体に、いわゆる「不純物」として含まれるものである。これらの割合は、[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比が0.01未満であることが好ましい。0.01未満であると、PC-POS共重合体の高温下での成形による透明性や色調の低下が抑制され、PC-POS共重合体のΔヘイズ値を上述した値とすることができ、共重合体を用いた成形品の外観を好適に保つことができる。
なお、式(v-ii)で表される基は、ポリカーボネートブロック(A-1)及びポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び上記式(f)で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が含む。
上記[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比は、より好ましくは0.008以下、更に好ましくは0.006以下である。また、0.005以下であることもより好ましい。
上記[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比であるPC-POS共重合体は、例えば、上記一般式(223)で表され、式(223)中Rbのうち、[ヒドロキシ基の数]/[ヒドロキシ基と式(v)で表される基との合計数]の比が0.01未満であるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを用いることにより得られる。
本明細書における上記比は、29Si-NMRスペクトルにおいて上記式(v-ii)に基づく-O-Si(R5)(R6)-CH2-構造のSiに由来する積分値と、上記式(f)及び式(g)における-O-Si(R5)(R6)-OH構造のSiに由来する積分値とから算出される値である。従って、上記[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比は、[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基の合計数]/[-O-Si(R5)(R6)-CH2-で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基の合計数]の比と換言することができる。
【0061】
上記界面重縮合反応後、適宜静置して水相と有機溶媒相とに分離し[分離工程]、有機溶媒相を洗浄(好ましくは塩基性水溶液、酸性水溶液、水の順に洗浄)し[洗浄工程]、得られた有機相を濃縮[濃縮工程]、及び乾燥[乾燥工程]することによって、PC-POS共重合体を得ることができる。
【0062】
本発明のPC-POS共重合体は、当該共重合体又はその組成物を300℃又は340℃で3分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズA)と、20分滞留させた後のヘイズ値(ヘイズB)との差Δヘイズが0.4未満であるという特徴を有する。滞留温度300℃でヘイズ差がみられない際には、340℃の滞留温度を用いる。一般的に、ポリオルガノシロキサンの平均鎖長が長い場合には、ヘイズ差が300℃では明らかにならない場合があるため、その場合には340℃の滞留温度で該ヘイズ差を測定するが、この記載に限定されない。本特徴は、本発明のPC-POS共重合体が透明性及び熱安定性に優れることを示す。
【0063】
理論に拘束されないが、上記のように滞留試験を経ると、一般的にはシロキサン部分が分解して、ポリカーボネートブロック部分との相溶性に劣るため、白濁しヘイズ値が大きくなる傾向がある。本発明者等は驚くべきことに、特定構造を有するポリカーボネートブロックと、特定構造を有するポリオルガノシロキサンブロックとを有するPC-POS共重合体が上記の通り、透明性及び熱安定性に優れることを見出した。
上記Δヘイズ値は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。
【0064】
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の白金含有量は、具体的には、0.05質量ppb以上0.5質量ppm未満である。本発明のPC-POS共重合体の白金含有量が上記範囲内にあると、白金に起因するPC-POS共重合体の着色を抑制することができるため好ましい。
本発明のPC-POS共重合体の白金含有量の上限値は、より好ましくは0.4質量ppm以下、さらに好ましくは0.3質量ppm以下、よりさらに好ましくは0.1質量ppm以下、よりさらに好ましくは50質量ppb以下、よりさらに好ましくは10質量ppb以下、特に好ましくは1.0質量ppb以下である。
【0065】
本発明におけるPC-POS共重合体中のポリオルガノシロキサン中の白金含有量は、ICP発光分析装置を用いて測定される。
具体的には、PC-POS共重合体中の有機物を硫酸灰化処理後、残分をフッ化水素酸及び王水で溶解し、その溶液をICP発光分析装置(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製、商品名:「SPS5100」)を用いて、検量線法の測定条件で共重合体中の白金含有量を測定することができる。
【0066】
PC-POS共重合体におけるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長nは10以上300以下であることが好ましい。
該平均鎖長は核磁気共鳴(NMR)測定により算出される。ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の平均鎖長が10以上300以下であれば、最終的に得られるポリカーボネート系樹脂組成物は耐衝撃性等により優れる。理由は明らかではないが、本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は極めて優れた耐衝撃性を有することを見出した。
【0067】
ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長nは、より好ましくは30以上、さらに好ましくは35以上、よりさらに好ましくは40以上であり、より好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下、よりさらに好ましくは100以下、特に好ましくは95以下である。
【0068】
PC-POS共重合体中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、好ましくは1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。PC-POS共重合体中のポリオルガノシロキサンの含有率が上記範囲内であれば、より優れた耐衝撃性を得ることができる。加えて、ポリオルガノシロキサンの含有率が高いことによるハンドリング性の低下を回避することができる。ポリオルガノシロキサンの含有率が上記上限値以下であれば、得られる共重合体の粉砕を十分に行うことができ、パウダー凝集等を回避できるため好ましい。
【0069】
PC-POS共重合体中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは7質量%以下である。
【0070】
PC-POS共重合体の粘度平均分子量(Mv)は、使用される用途や製品により、目的の分子量となるように分子量調節剤(末端停止剤)等を用いることにより適宜調整ことができる。PC-POS共重合体の粘度平均分子量は、好ましくは9,000以上50,000以下である。粘度平均分子量が9,000以上であれば、より強度の高い成形品を得ることができる。粘度平均分子量が50,000以下であれば、熱劣化を起こさない温度で射出成形や押出成形をより容易に行うことができる。
【0071】
PC-POS共重合体の粘度平均分子量は、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは16,000以上であり、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは23,000以下、特に好ましくは22,000以下、最も好ましくは20,000以下である。
粘度平均分子量(Mv)は、20℃における塩化メチレン溶液の極限粘度〔η〕を測定し、下記Schnellの式から算出した値である。
【0072】
【0073】
<ポリカーボネート樹脂組成物>
本発明の一実施形態によれば、上記PC-POS共重合体を含むポリカーボネート系樹脂組成物を提供することができる。
上記ポリカーボネート系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のPC-POS共重合体、及びその他の添加剤を含ませることができる。
【0074】
その他のPC-POS共重合体として、例えば以下に示す構造を有するものを挙げることができる。
【化54】
【0075】
上記PC-POS共重合体は、PC-POS共重合体以外の構造を有するものであり、特に限定されない。式(i-I)中のR111、R112、X’、a1及びb1は、それぞれ式(I)で詳述したR1、R2、X、a及びbと同様であり、好ましいもの並びに好ましいものの組み合わせも同様である。式(i-II)中のR333、R444はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。
【0076】
上記一般式(i-II)中、R333又はR444がそれぞれ独立して示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R333又はR444がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R333又はR444がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。R333又はR444がそれぞれ独立して示すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
R333及びR444としては、好ましくは、いずれも水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基であり、いずれもメチル基であることがより好ましい。
【0077】
一般式(i-II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)は、下記一般式(II-i)~(II-iii)で表される単位を有することが好ましい。
【化55】
[式中、R
333~R
666は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示し、複数のR
333~R
666は、互いに同一であっても異なっていてもよい。Yは-R
7O-、-R
7COO-、-R
7NH-、-R
7NR
8-、-COO-、-S-、-R
7COO-R
9-O-又は-R
7O-R
10-O-を示し、複数のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。前記R
7は、単結合、直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、置換又は無置換のアリーレン基、又はジアリーレン基を示す。R
8は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。R
9は、ジアリーレン基を示す。R
10は、直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、又はジアリーレン基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基、又はジカルボン酸もしくはジカルボン酸のハロゲン化物由来の2価の基を示す。mはポリオルガノシロキサンの平均鎖長を示し、m-1、及びpとqはそれぞれポリオルガノシロキサン単位の繰り返し数を示す1以上の整数であり、pとqの和はm-2である。]
【0078】
R333~R666がそれぞれ独立して示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R333~R666がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R333~R666がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。R333~R666がそれぞれ独立して示すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
R333~R666としては、好ましくは、いずれも水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基である。
一般式(II-i)、(II-ii)及び/又は(II-iii)中のR3~R6がいずれもメチル基であることが好ましい。
【0079】
Yが示す-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-R7NR8-、-R7COO-R9-O-又は-R7O-R10-O-におけるR7が表す直鎖又は分岐鎖アルキレン基としては、炭素数1~8、好ましくは炭素数1~5のアルキレン基が挙げられ、環状アルキレン基としては、炭素数5~15、好ましくは炭素数5~10のシクロアルキレン基が挙げられる。
【0080】
R
7が表すアリール置換アルキレン基としては、芳香環にアルコキシ基、アルキル基のような置換基を有していてもよく、その具体的構造としては、例えば、下記の一般式(i)又は(ii)の構造を示すことができる。アリール置換アルキレン基を有する場合、アルキレン基がSiに結合している。
【化56】
(式中cは正の整数を示し、通常1~6の整数である)
【0081】
R7、R9及びR10が示すジアリーレン基とは、二つのアリーレン基が直接、又は二価の有機基を介して連結された基のことであり、具体的には-Ar1-W-Ar2-で表わされる構造を有する基である。Ar1及びAr2は、アリーレン基を示し、Wは単結合、又は2価の有機基を示す。Wの示す2価の有機基は、例えばイソプロピリデン基、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基である。
R7、Ar1及びAr2が表すアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントリレン基などの環形成炭素数6~14のアリーレン基が挙げられる。これらアリーレン基は、アルコキシ基、アルキル基等の任意の置換基を有していてもよい。
R8が示すアルキル基としては炭素数1~8、好ましくは1~5の直鎖又は分岐鎖のものである。アルケニル基としては、炭素数2~8、好ましくは2~5の直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
R10が示す直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基は、R7と同様である。
【0082】
Yとしては、好ましくは-R
7O-であって、R
7が、アリール置換アルキレン基であって、特にアルキル基を有するフェノール系化合物の残基であり、アリルフェノール由来の有機残基やオイゲノール由来の有機残基がより好ましい。
式(II-ii)中のp及びqについては、p=qであることが好ましい。
βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸又はジカルボン酸のハロゲン化物由来の2価の基を示し、例えば、以下の一般式(iii)~(vii)で表される2価の基が挙げられる。
【化57】
その他のPC-POS共重合体におけるポリオルガノシロキサンブロック(A’-2)の繰り返し数は好ましくは10以上500以下、より好ましくは20以上300以下、さらに好ましくは30~150以下である。
該繰り返し数は核磁気共鳴(NMR)測定により算出される。ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の繰り返し数を上記範囲とすることにより、優れた透明性と柔軟性とを両立することができ、成形体作製後の剥離を抑制することができる。
【0083】
その他のPC-POS共重合体中のポリオルガノシロキサンブロック(A’-2)の含有量は好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは2質量%以上45質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上30質量%以下、よりさらに好ましくは3質量%以上20質量%未満である。
【0084】
その他のPC-POS共重合体の粘度平均分子量(Mv)は、使用される用途や製品により、目的の分子量となるように分子量調節剤(末端停止剤)等を用いることにより適宜調整ことができる。その他のPC-POS共重合体の粘度平均分子量は、好ましくは9,000以上50,000以下である。粘度平均分子量が9,000以上であれば、より強度の高い成形品を得ることができる。粘度平均分子量が50,000以下であれば、熱劣化を起こさない温度で射出成形や押出成形をより容易に行うことができる。
【0085】
その他のPC-POS共重合体の粘度平均分子量は、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは16,000以上であり、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは23,000以下、特に好ましくは22,000以下、最も好ましくは20,000以下である。
粘度平均分子量(Mv)は、20℃における塩化メチレン溶液の極限粘度〔η〕を測定し、下記Schnellの式から算出した値である。
【0086】
【0087】
上記のその他のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、界面重合法(ホスゲン法)、ピリジン法及びエステル交換法等の公知の製造方法により製造することができる。特に界面重合法を採用した場合には、PC-POS共重合体を含む有機相と未反応物や触媒残渣等を含む水相との分離工程が容易であり、アルカリ洗浄、酸洗浄、純水洗浄等の各洗浄工程におけるPC-POS共重合体を含む有機相と水相との分離が容易である。そのため、効率よくPC-POS共重合体が得られる。PC-POS共重合体を製造する方法として、例えば、特開2014-80462号公報等に記載の方法を参照することができる。
【0088】
その他の添加剤としては、酸化防止剤、脂環式エポキシ化合物、紫外線吸収剤、離型剤、補強材、充填剤、耐衝撃性改良用のエラストマー、染料、顔料、帯電防止剤、ポリカーボネート以外の他樹脂等を挙げることができる。
【0089】
配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常、240℃以上320℃以下の範囲で適宜選択される。この溶融混練としては、押出機、特に、ベント式の押出機の使用が好ましい。
【0090】
[成形品]
上記の溶融混練した本発明のポリカーボネート系樹脂組成物、又は得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法、3Dプリンター等により各種成形体を製造することができる。特に、溶融混練により得られたペレットを用いて、射出成形及び射出圧縮成形による射出成形体の製造に好適に用いることができる。
【0091】
本発明のPC-POS共重合体、該共重合体を含むポリカーボネート系樹脂組成物からなる成形品は、例えば、テレビ、ラジオ、カメラ、ビデオカメラ、オーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、エアコンディショナ、携帯電話、スマートフォン、トランシーバー、ディスプレイ、コンピュータ、タブレット端末、携帯ゲーム機器、据置ゲーム機器、装着型電子機器、レジスター、電卓、複写機、プリンター、ファクシミリ、通信基地局、バッテリー、ロボット等の電気及び電子機器用部品の外装及び内部部品;自動車、鉄道、船舶、航空機、宇宙産業用機器、医療機器の外装及び内部部品;並びに建材の部品等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0092】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。各例における特性値、評価結果は、以下の要領に従って求めた。
【0093】
(1)ポリジメチルシロキサン鎖長及び含有率
NMR測定によって、ポリジメチルシロキサンのメチル基の積分値比により算出した。なお、本明細書においては、ポリジメチルシロキサンをPDMSと略記することがある。
<ポリジメチルシロキサンの鎖長の定量方法>
1H-NMR測定条件
NMR装置:株式会社JEOL RESONANCE製 ECA-500
プローブ:50TH5AT/FG2
観測範囲:-5~15ppm
観測中心:5ppm
パルス繰り返し時間:9秒
パルス幅:45°
NMR試料管:5φ
サンプル量:30~40mg
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
積算回数:256回
アリルフェノール末端ポリジメチルシロキサンの場合
A:δ-0.02~0.5付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
B:δ2.50~2.75付近に観測されるアリルフェノールのメチレン基の積分値
ポリジメチルシロキサンの鎖長=(A/6)/(B/4)
オイゲノール末端ポリジメチルシロキサンの場合
A:δ-0.02~0.5付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
B:δ2.40~2.70付近に観測されるオイゲノールのメチレン基の積分値
ポリジメチルシロキサンの鎖長=(A/6)/(B/4)
【0094】
<ポリジメチルシロキサン含有率の定量方法>
アリルフェノール末端ポリジメチルシロキサンを共重合したPTBP末端ポリカーボネート中のポリジメチルシロキサン共重合量の定量方法
NMR装置:株式会社JEOL RESONANCE製 ECA-500
プローブ:50TH5AT/FG2
観測範囲:-5~15ppm
観測中心:5ppm
パルス繰り返し時間:9秒
パルス幅:45°
積算回数:256回
NMR試料管:5φ
サンプル量:30~40mg
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
A:δ1.5~1.9付近に観測されるBPA部のメチル基の積分値
B:δ-0.02~0.3付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
C:δ1.2~1.4付近に観測されるp-tert-ブチルフェニル部のブチル基の積分値
a=A/6
b=B/6
c=C/9
T=a+b+c
f=a/T×100
g=b/T×100
h=c/T×100
TW=f×254+g×74.1+h×149
PDMS(wt%)=g×74.1/TW×100
【0095】
(2)粘度平均分子量
粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式(Schnell式)にて算出した。
【数3】
【0096】
(3)[式(vi)で表される基の数]/[式(v)で表される基と式(vi)で表される基との合計数]の比
29Si-NMRスペクトルにおいて上記式(v)に基づく-O-Si(R5)(R6)-CH2-構造のSiに由来する積分値と、上記式(vi)に基づく-O-Si(R5)(R6)-O-Z-構造のSiに由来する積分値とから算出される値である。以下、「末端不純物比」ともいう。
【0097】
(4)[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比
100mL三角フラスコ内で下記製造例に記載したPC-POS共重合体3gをジクロロメタン20mLに溶解して得られた溶液に、1wt%水酸化ナトリウム/メタノール溶液30mLを加え、室温にて2時間撹拌した。撹拌後、三角フラスコ内の混合物をひだ折りろ紙(150mm、No.5C、東洋濾紙株式会社製)を用いて自然ろ過した。ろ紙上に残る固体及び前記三角フラスコにジクロロメタン10mLを加えて洗浄し、得られた洗浄液を前記ひだ折りろ紙を用いてろ過する工程を2回繰り返した。
分液漏斗に、ろ紙を通過させた液体の全量、ジクロロメタン40mL及び純水50mLを加えて、激しく振とうした後、1分間静置して水相及び有機相を分離し、有機相を単離した。その後、分液ロートに残った水相にジクロロメタン20mLを加えて、激しく振とうした後、1分間静置して水相及び有機相を分離し、有機相を単離した。分液ロートに、単離した全ての有機相及び1N水酸化ナトリウム水溶液35mlを入れて激しく振とうし、1分間静置して水相及び有機相を分離し、有機相を単離する工程を2回繰り返した後、1N水酸化ナトリウム水溶液を1N塩酸水溶液に変えて、同様の工程を2回繰り返した。
単離した有機相に硫酸ナトリウム5.0gを加えて攪拌した後、吸引ろ過により溶液中の硫酸ナトリウムを取り除いた。吸引ろ過後、ろ液をエバポレーターにより濃縮乾固し(水浴温度:40℃)、得られたオイル状物の29Si-NMR測定を行い、[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比を算出した。
なお、[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比は、[式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基の合計数]/[式(v-i)で表される基と、式(d)及び式(e)におけるヒドロキシ基との合計数]の比にも相当する。
<29Si-NMRの測定条件>
NMR装置:株式会社JEOL RESONANCE製 ECA-500
プローブ:FGプローブ 10φNMR試料管対応
観測核:29Si
観測範囲:-65~35ppm
観測中心:-15ppm
パルス繰り返し時間:18.3秒
パルス幅:90°
積算回数:5000回
NMR試料管:10φ
サンプル量:750mg
緩和試薬:トリス(アセチルアセトナート)クロム(III) 20mM
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
A:δ7.5~9.0ppmに観測されるアリルフェノールが結合したSiの積分値
B:δ-9.6~-9.9ppmに観測されるシラノールの積分値
[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]=B/(A+B)
【0098】
調製例1
<カルビノール変性ポリオルガノシロキサン:PDMS-Aの製造>
150Lの管状反応器に、50℃に加温された下記平均式(2-1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン132kg/h、2-アリルフェノール14.5kg/h、白金触媒(塩化白金酸中和物の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液)を系中の混合液全体に対する白金金属換算で0.08質量ppmとなるようにそれぞれ供給し、80℃で20分間管状反応器内を通過させて反応させた後、連続的に貯蔵タンクに取り出した。
その後、薄膜蒸発器を用いて、160℃にて余分な2-アリルフェノールを除去し、下記平均式(II-I)で示されるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを合成した。得られたカルビノール変性ポリオルガノシロキサンの末端不純物比は0.0015であった。
なお、式(2-1)及び式(II-I)は平均式であり、「36」はジメチルシロキサン単位の平均繰り返し数を意味する。
【化58】
【化59】
【0099】
調製例2
<カルビノール変性ポリオルガノシロキサン:PDMS-Bの製造>
150Lの管状反応器に、50℃に加温された下記平均式(2-11)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン380kg/h、2-アリルフェノール19kg/h、白金触媒(塩化白金酸中和物の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液)を系中の混合液全体に対する白金金属換算で0.10質量ppmとなるようにそれぞれ供給し、80℃で20分間管状反応器内を通過させて反応させた後、連続的に貯蔵タンクに取り出した。
その後、薄膜蒸発器を用いて、160℃にて余分な2-アリルフェノールを除去し、下記平均式(II-I’)で示されるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンを合成した。得られたカルビノール変性ポリオルガノシロキサンの末端不純物比は0.0025であった。
なお、式(2-11)及び式(II-I’)は平均式であり、「89」はジメチルシロキサン単位の平均繰り返し数を意味する。
【化60】
【化61】
【0100】
調製例3
<カルビノール変性ポリオルガノシロキサン:PDMS-Cの製造>
白金触媒の濃度を白金金属換算で0.02質量ppmとした以外は、PDMS-Bの製造と同様の操作を行った。得られたカルビノール変性ポリオルガノシロキサンの末端不純物比は0.0010であった。
【0101】
<KF-2201>
KF-2201(商品名,信越化学工業株式会社製,lot.801015)は、調製例1におけるオルガノシロキサンのカルビノール変性を、バッチ式反応を行うことにより製造したもの。
【0102】
<KF-1922>
KF-1922(商品名,信越化学工業株式会社製,lot.704020)は、調製例2におけるオルガノシロキサンのカルビノール変性を、バッチ式反応を行うことにより製造したもの。
【0103】
<ポリカーボネートオリゴマーの製造>
5.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液に、亜二チオン酸ナトリウムを後から溶解するビスフェノールA(BPA)に対して2000ppmとなるように加えた。これにBPA濃度が13.5質量%となるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
このBPAの水酸化ナトリウム水溶液を40L/hr、塩化メチレンを15L/hr、及びホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。管型反応器を出た反応液を、後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入し、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液を2.8L/hr、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を0.07L/hr、水を17L/hr、1質量%のトリエチルアミン水溶液を0.64L/hrの流量で添加して反応を行なった。槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度341g/L、クロロホーメート基濃度0.71mol/Lであった。
【0104】
<ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造例1~8>
以下に記載する(i)~(xiv)の値は各成分の用いた量を示し、表1に示すとおりである。
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記の通り製造したポリカーボネートオリゴマー溶液(PCO)(i)kg、塩化メチレン(MC)(ii)kg及び、ポリジメチルシロキサンの平均鎖長n=(iii)のアリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(以下、ポリジメチルシロキサンをPDMSと呼ぶことがある)(iv)gを塩化メチレン(MC)(v)Lに溶解したもの、ならびに、トリエチルアミン(TEA)(vi)mLを仕込み、攪拌下でここに8.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液(NaOHaq)(vii)gを加え、20分間ポリカーボネートオリゴマーとアリルフェノール末端変性PDMSの反応を行った(予備重合工程)。
この重合液に、p-tert-ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP(viii)gを塩化メチレン(MC)(ix)Lに溶解したもの)、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH(x)gと亜二チオン酸ナトリウム(Na2S2O4)(xi)gとを水(xii)Lに溶解した水溶液にBPA(xiii)gを溶解させたもの)を添加し60分間重合反応を実施した(本重合工程)。
希釈のため塩化メチレン(MC)(xiv)kgを加え10分間攪拌した後、PC-POS共重合体を含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
こうして得られたPC-POS共重合体の塩化メチレン溶液を、その溶液に対して、15容積%の0.03mol/LNaOH水溶液、0.2mol/L塩酸で順次洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮後、アセトン(和光純薬製、特級)3Lを加え、更に濃縮後に得られた固形物を粉砕し、得られた粉体を減圧下100℃で乾燥した。得られたフレークのPDMS濃度、粘度平均分子量、[式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基]/[式(v-ii)で表される基と、式(f)及び式(g)におけるヒドロキシ基との合計数]の比の測定を行った結果を表1及び表2に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
<その他成分>
酸化防止剤:IRGAFOS 168[トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、BASFジャパン株式会社製]
【0108】
実施例1~6、比較例1~2、参考例1~8
上記製造例で得られたPC-POS共重合体A1~A5を用いて後述する滞留熱安定性評価(1)を実施した。結果を表3に示す。
上記製造例で得られたPC-POS共重合体A6~A8のそれぞれ100質量部に対しIrgafos168を0.10質量部配合し、ベント式二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM35B)に供給し、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/hr、樹脂温度295~310℃にて溶融混練し、ペレットサンプルを作成し、後述する滞留熱安定性評価(2)を実施した。結果を表4に示す。
該PC-POS共重合体、及びその他の各成分を表5に示す配合割合で混合し、ベント式二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM35B)に供給し、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/hr、樹脂温度295~310℃にて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを作成し、後述する物性試験を行なった。結果を表5に示す。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
[評価試験]
<流動性評価>(MVR)
上記ペレットを用いて、JIS K 7210-1:2014に準拠し、300℃、1.2kgの荷重下にて、直径2.095±0.005mm、長さ8.000±0.025mmのダイから流出する溶融樹脂量(ml/10分)を測定した。
<Q値(流れ値)〔単位;10-2mL/秒〕>
上記ペレットを用いて、JIS K 7210-1:2014:付属書JAに準拠し、高架式フローテスターを用いて、280℃、160kgfの圧力下にて、直径1.00mm、長さ10.00mmのノズルより流出する溶融樹脂量(10-2mL/秒)を測定した。Q値は単位時間当たりの流出量を表しており、数値が高いほど、流動性が良いことを示す。
【0113】
<耐衝撃性>
上記得られたペレットを100℃で8時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、NEX110、スクリュー径36mmφ)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形してIZOD試験片(長さ63.5mm、幅12.7mm,厚さ3.2mm)を作成した。この試験片に後加工でノッチ(r=0.25mm±0.05mm)を付与した試験片を用いて、ASTM規格D-256に準拠して、-30℃、-20℃、-10℃、0℃及び23℃におけるノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
【0114】
<荷重たわみ温度:HDT(単位;℃)>
上記得られたペレットを100℃で8時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、NEX110、スクリュー径36mmφ)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形して試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚み3.2mm)を得た。この試験片を用い、ASTM規格D-648に準拠して、昇温速度120℃/h、支点間距離100mm、1.83MPaの荷重を掛けて、エッジワイズによる試験片のたわみが0.26mmに達した時の温度を記録した。
【0115】
<滞留熱安定性評価(1)>
得られたパウダーについて、射出成形により以下のように滞留熱安定性試験を行い、得られた成形品の各ヘイズ値を測定し、滞留時間が3分の時のヘイズ値(ヘイズA)と滞留時間が20分の時のヘイズ値(ヘイズB)との差をΔヘイズとして求めた。ヘイズ値についてはISO 14782:1999に基づいて3回測定し、それぞれその平均を求めた。結果を表3に示す。
また、実施例1のパウダーを用いて射出成形した際のヘイズ値は0.4であった。
〈射出成形〉
射出成形機:ニイガタマシンテクノ株式会社製 MD50(商品名)
成形品形状:90mm×50mmの3段プレート(3mm厚み部45mm、2mm厚み部22.5mm、1mm厚み部22.5mm)
成形機シリンダ温度:300℃
シリンダ内滞留時間:3分又は20分
金型温度:80℃
【0116】
<滞留熱安定性評価(2)>
得られたペレットについて、射出成形により以下のように滞留熱安定性試験を行い、得られた成形品の各ヘイズ値を測定し、滞留時間が3分の時のヘイズ値(ヘイズA)と滞留時間が20分の時のヘイズ値(ヘイズB)との差をΔヘイズとして求めた。ヘイズ値についてはISO 14782:1999に基づいて3回測定し、それぞれその平均を求めた。結果を表4に示す。
〈射出成形〉
射出成形機:東芝機械工業株式会社製 EC40(商品名)
成形品形状:80mm×40mm×3.2mm
成形機シリンダ温度:340℃
シリンダ内滞留時間:3分又は20分
金型温度:80℃