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特許7608478基板処理方法、プログラム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】基板処理方法、プログラム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/285 20060101AFI20241223BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20241223BHJP
   C23C 16/06 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
H01L21/285 C
C23C16/455
C23C16/06
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022569417
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047104
(87)【国際公開番号】W WO2022130559
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
(72)【発明者】
【氏名】清野 篤郎
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/213604(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0050807(US,A1)
【文献】特表2021-523292(JP,A)
【文献】特開2017-186595(JP,A)
【文献】特開2004-235456(JP,A)
【文献】特開2015-067869(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/285
C23C 16/455
C23C 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の金属元素としてのチタン、モリブデン、ルテニウム、又は銅を含有する膜と、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された第13族元素としてのホウ素、アルミニウム、ガリウム、又はインジウム、又は第14族元素としてのシリコン又はゲルマニウムを含有する膜と、を有する基板を準備する工程と、
(b)前記基板に対して、第2の金属元素としてのタングステンとフッ素を含有するガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して、第1の反応ガスを供給する工程と、
を有し、
(d)(b)と(c)を行うことにより、前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の少なくとも一部を除去少なくとも一部を除去した前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の上に前記第2の金属元素を含有する膜を形成する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
前記第1の反応ガスは、還元ガスである請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1の反応ガスは、水素含有ガスである請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記水素含有ガスは、水素ガスである請求項3記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1の反応ガスは、シリコンと水素を含むガスである請求項1記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1の反応ガスは、ホウ素と水素を含むガスである請求項1記載の基板処理方法。
【請求項7】
(e)前記基板に対して、前記第1の反応ガスとは異なる第2の反応ガスを供給する工程をさらに有し、
(f)(d)の後、(b)と(e)を行うことにより、前記第2の金属元素を含有する膜の上に前記第2の金属元素を含有する別の膜を形成する請求項1記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第1の反応ガスは、第1の水素含有ガスであり、前記第2の反応ガスは、第2の水素含有ガスである請求項7記載の基板処理方法。
【請求項9】
(a)第1の金属元素としてのチタン、モリブデン、ルテニウム、又は銅を含有する膜と、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された第13族元素としてのホウ素、アルミニウム、ガリウム、又はインジウム、又は第14族元素としてのシリコン又はゲルマニウムを含有する膜と、を有する基板を準備する工程と、
(b)前記基板に対して、第2の金属元素としてのタングステンを含有するガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して、第1の反応ガスを供給する工程と、
(d)(b)と(c)を行うことにより、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の少なくとも一部を除去しつつ、前記基板に対して、前記第2の金属元素を含有する膜を形成する工程と、を有し、
(c)では、前記第1の反応ガスの流量を前記第2の金属元素を含有するガスの流量よりも少なくして供給し、所定期間経過後、前記第1の反応ガスの流量を前記第2の金属元素を含有するガスの流量と略同じ流量に変更す
基板処理方法。
【請求項10】
(g)前記第1の金属元素を含有する膜が形成された前記基板に対して、前記第13族元素又は前記第14族元素を含有するガスを供給する工程と、
(h)前記基板に対して、第3の反応ガスを供給する工程と、
を更に有し、
(i)(g)と(h)を行うことにより、前記第1の金属元素を含有する膜の上に前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜を形成する請求項1記載の基板処理方法。
【請求項11】
(i)では、(g)と(h)をn回繰り返し行い、
(d)では、(b)と(c)をn回よりも多いm回繰り返し行う請求項10記載の基板処理方法。
【請求項12】
(a)における前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の厚さは、0.2nm以上3nm以下である請求項1記載の基板処理方法。
【請求項13】
(a)における前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の厚さは、0.2nm以上2nm以下である請求項1記載の基板処理方法。
【請求項14】
(a)における前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の厚さは、0.4nm以上1.8nm以下である請求項1記載の基板処理方法。
【請求項15】
(a)における前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の厚さは、一原子層以上数原子層以下である請求項1記載の基板処理方法。
【請求項16】
(a)第1の金属元素としてのチタン、モリブデン、ルテニウム、又は銅を含有する膜と、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された第13族元素としてのホウ素、アルミニウム、ガリウム、又はインジウム、又は第14族元素としてのシリコン又はゲルマニウムを含有する膜と、を有する基板を準備する手順と、
(b)前記基板に対して、第2の金属元素としてのタングステンとフッ素を含有するガスを供給する手順と、
(c)前記基板に対して、第1の反応ガスを供給する手順と、
(d)(b)と(c)を行うことにより、前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の少なくとも一部を除去少なくとも一部を除去した前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の上に前記第2の金属元素を含有する膜を形成する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項17】
第1の金属元素としてのチタン、モリブデン、ルテニウム、又は銅を含有する膜と、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された第13族元素としてのホウ素、アルミニウム、ガリウム、又はインジウム、又は第14族元素としてのシリコン又はゲルマニウムを含有する膜と、を有する基板に対して、第2の金属元素としてのタングステンとフッ素を含有するガスと第1の反応ガスを供給するガス供給系と、
(a)前記基板を準備する処理と、
(b)前記基板に対して前記第2の金属元素とフッ素を含有するガスを供給する処理と、
(c)前記基板に対して前記第1の反応ガスを供給する処理と、
を有し、
(d)(b)と(c)を行う処理を行うことにより、前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の少なくとも一部を除去少なくとも一部を除去した前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の上に前記第2の金属元素を含有する膜を形成する処理を行わせるように、前記ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項18】
(a)第1の金属元素としてのチタン、モリブデン、ルテニウム、又は銅を含有する膜と、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された第13族元素としてのホウ素、アルミニウム、ガリウム、又はインジウム、又は第14族元素としてのシリコン又はゲルマニウムを含有する膜と、を有する基板を準備する工程と、
(b)前記基板に対して、第2の金属元素としてのタングステンとフッ素を含有するガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して、第1の反応ガスを供給する工程と、
を有し、
(d)(b)と(c)を行うことにより、前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の少なくとも一部を除去少なくとも一部を除去した前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の上に前記第2の金属元素を含有する膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜は、前記第1の金属元素を含有する膜の表面の酸化を抑制する膜である請求項1記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、プログラム基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高集積化及び高性能化に伴い、様々な種類の金属膜が用いられ、3次元構造の半導体装置の製造が行なわれている。3次元構造の半導体装置の一例であるNAND型フラッシュメモリのコントロールゲートにはタングステン膜(W膜)等が用いられている。また、このW膜と絶縁膜との間にバリア膜として例えば、窒化チタン(TiN)膜が用いられることがある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-69407号公報
【文献】特開2018-49898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、TiN膜等の金属膜の表面に、例えばW膜等の他の金属膜を形成した場合に、他の金属膜を形成するために用いた成膜ガスにより金属膜の表面がエッチングされてしまうことがある。そして、金属膜の表面がエッチングされると、その膜特性が低下してしまうことがある。
【0005】
本開示は、膜特性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)第1の金属元素を含有する膜と、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された第13族元素又は第14族元素を含有する膜と、を有する基板を準備する工程と、
(b)前記基板に対して、第2の金属元素を含有するガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して、第1の反応ガスを供給する工程と、
を有し、
(d)(b)と(c)を行うことにより、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の少なくとも一部を除去しつつ、前記基板に対して、前記第2の金属元素を含有する膜を形成する工程と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、膜特定を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置10の処理炉202aの構成を説明するための縦断面図である。
図2図1に示す処理炉202aのA-A線断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理装置10の処理炉202bの構成を説明するための縦断面図である。
図4図3に示す処理炉202bのA-A線断面図である。
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理装置10の制御部の構成を説明するためのブロック図である。
図6】本開示の一実施形態に係る基板処理装置10の処理炉202aにおける基板処理シーケンスを示す図である。
図7】本開示の一実施形態に係る基板処理装置10の処理炉202bにおける基板処理シーケンスを示す図である。
図8図8(A)及び図8(B)は、処理炉202aにおける処理により基板上に形成される膜を説明するための図であり、図8(C)は、処理炉202bにおける処理により基板上に形成される膜を説明するための図である。
図9】本開示の一実施形態に係る基板処理装置10の処理炉202bにおける基板処理シーケンスの変形例を示す図である。
図10図10(A)は、本実施例で用いたサンプル1とサンプル2の構造を示した図であり、図10(B)及び図10(C)は、図10(A)で示したサンプル1とサンプル2のXPS分析結果を示した図である。
図11図11(A)は、本実施例で用いたサンプル1とサンプル2の構造を示した図であり、図11(B)及び図11(C)は、図11(A)で示したサンプル1とサンプル2のXPS分析結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一実施形態>
以下、本開示の一実施形態について、図1図7及び図8(A)~図8(C)を参照しながら説明する。基板処理装置10は半導体装置の製造工程において使用される装置の一例として構成されている。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1は半導体デバイスの製造方法を実施可能な基板処理装置(以下単に、基板処理装置10という)が備える第1プロセスユニットとしての処理炉202aの縦断面図であって、図2は処理炉202aのA-A線断面図である。
なお、本実施形態では、第1プロセスユニットとしての処理炉202aにおいてウエハ200上に第1の金属含有膜と、第1の金属含有膜の上にキャップ膜と、の形成を行った後に、後述する第2プロセスユニットとしての処理炉202bにおいて、第1の金属含有膜の上に形成されたキャップ膜の少なくとも一部を除去しつつ、第2の金属含有膜を形成する例について説明する。
【0011】
処理炉202aは、加熱手段(加熱機構、加熱系、加熱部)としてのヒータ207を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0012】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0013】
アウタチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201aが形成されている。なお、ここでは、処理容器(反応容器)、処理室201aの構成にインナチューブ204を含めたが、インナチューブ204が無い構成であっても良い。
【0014】
処理室201aは、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0015】
処理室201a内には、ノズル410,420,430がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給ラインとしてのガス供給管310,320,330が、それぞれ接続されている。このように、基板処理装置10には3本のノズル410,420,430と、3本のガス供給管310,320,330とが設けられており、処理室201a内へ複数種類のガスを供給することができるように構成されている。ただし、本実施形態の処理炉202aは上述の形態に限定されない。
【0016】
ガス供給管310,320,330には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322,332がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320,330には、開閉弁であるバルブ314,324,334がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320,330のバルブ314,324,334の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520,530がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520,530には、上流側から順に、MFC512,522,532及びバルブ514,524,534がそれぞれ設けられている。
【0017】
ガス供給管310,320,330の先端部にはノズル410,420,430がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420,430は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室205aの内部に設けられており、予備室205a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0018】
ノズル410,420,430は、処理室201aの下部領域から処理室201aの上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420a,430aが設けられている。これにより、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420a,430aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420a,430aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420a,430aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0019】
ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201a内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200、すなわちボート217に収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420,430は、処理室201aの下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0020】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、第1の金属元素を含むガス(以下、「第1の金属含有ガス」とも呼ぶ)が、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201a内に供給される。
【0021】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、第1の金属含有ガスと反応する第3の反応ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201a内に供給される。なお、本開示では、第3の反応ガスを、後述する第13族元素又は第14族元素含有ガスと反応する反応ガスとしても用いる例について説明する。
【0022】
ガス供給管330からは、処理ガスとして、第13族元素又は第14族元素を含有する第13族元素又は第14族元素含有ガスが、MFC332、バルブ334、ノズル430を介して処理室201a内に供給される。
【0023】
ガス供給管510,520,530からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれMFC512,522,532、バルブ514,524,534、ノズル410,420,430を介して処理室201a内に供給される。以下、不活性ガスとしてN2ガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、N2ガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0024】
主に、ガス供給管310,320,330、MFC312,322,332、バルブ314,324,334、ノズル410,420,430により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420,430のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系は単にガス供給系と称してもよい。ガス供給管310から第1の金属含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により第1の金属含有ガス供給系が構成されるが、ノズル410を第1の金属含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管320から第3の反応ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により第3の反応ガス供給系が構成されるが、ノズル420を第3の反応ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管320から第3の反応ガスとして窒素含有ガスを供給する場合、第3の反応ガス供給系を窒素含有ガス供給系と称することもできる。また、ガス供給管330から第13族元素又は第14族元素含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管330、MFC332、バルブ334により第13族元素又は第14族元素含有ガス供給系が構成されるが、ノズル430を第13族元素又は第14族元素含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、ガス供給管510,520,530、MFC512,522,532、バルブ514,524,534により不活性ガス供給系が構成される。
【0025】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内の予備室205a内に配置したノズル410,420,430を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420,430のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420a,430aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420a及びノズル430のガス供給孔430aにより、ウエハ200の表面と平行方向、すなわち水平方向に向かって処理ガス等を噴出させている。
【0026】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420,430に対向した位置、すなわち予備室205aとは180度反対側の位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。そのため、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201a内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、残留するガス(残ガス)は、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間で構成される排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202a外へと排出される。
【0027】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置(好ましくはボート217の上部から下部と対向する位置)に設けられており、ガス供給孔410a、420a、430aから処理室201a内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。すなわち、処理室201aに残留するガスは、排気孔204aを介してウエハ200の主面に対して平行に排気される。なお、排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0028】
マニホールド209には、処理室201a内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201a内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245、APC(Auto Pressure Controller)バルブ243、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201a内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201a内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系すなわち排気ラインが構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0029】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201aの反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201a内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201a内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0030】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料で構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0031】
図2に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201a内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420及び430と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0032】
図3は基板処理装置10が備える第2プロセスユニットとしての処理炉202bの縦断面図であって、図4は処理炉202bのA-A線断面図である。
本実施形態における処理炉202bは、上述した処理炉202aと処理室201a内の構成が異なっている。処理炉202bにおいて、上述した処理炉202aと異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。処理炉202bは、第2の処理室としての処理室201bを備えている。
【0033】
処理室201b内には、ノズル440,450がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル440,450には、ガス供給管340,350が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202bは上述の形態に限定されない。
【0034】
ガス供給管340,350には上流側から順にMFC342,352がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管340,350には、バルブ344,354がそれぞれ設けられている。ガス供給管340,350のバルブ344,354の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管540,550がそれぞれ接続されている。ガス供給管540,550には、上流側から順に、MFC542,552及びバルブ544,554がそれぞれ設けられている。
【0035】
ガス供給管340,350の先端部にはノズル440,450がそれぞれ連結接続されている。ノズル440,450は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル440,450の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室205bの内部に設けられており、予備室205b内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0036】
ノズル440,450は、処理室201bの下部領域から処理室201bの上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔440a,450aが設けられている。
【0037】
ノズル440,450のガス供給孔440a,450aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル440,450のガス供給孔440a,450aから処理室201b内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。
【0038】
ガス供給管340からは、処理ガスとして、第2の金属元素を含むガス(以下、「第2の金属含有ガス」とも呼ぶ)が、MFC342、バルブ344、ノズル440を介して処理室201b内に供給される。
【0039】
ガス供給管350からは、処理ガスとして、第2の金属含有ガスと反応する第1の反応ガスが、MFC352、バルブ354、ノズル450を介して処理室201b内に供給される。
【0040】
ガス供給管540,550からは、不活性ガスとして、例えばN2ガスが、それぞれMFC542,552、バルブ544,554、ノズル440,450を介して処理室201b内に供給される。なお、以下、不活性ガスとしてN2ガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、N2ガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0041】
主に、ガス供給管340,350、MFC342,352、バルブ344,354、ノズル440,450により処理ガス供給系(処理ガス供給部)が構成されるが、ノズル440,450のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系を、単に、ガス供給系と称することもできる。ガス供給管340から第2の金属含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管340、MFC342、バルブ344により第2の金属含有ガス供給系が構成されるが、ノズル440を第2の金属含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管350から第1の反応ガスを流す場合、主に、ガス供給管350、MFC352、バルブ354により第1の反応ガス供給系が構成されるが、ノズル450を第1の反応ガス供給系に含めて考えてもよい。また、第1の反応ガス供給系を還元ガス供給系と称することもできる。また、ガス供給管350から第1の反応ガスとして水素含有ガスを供給する場合、第1の反応ガス供給系を水素含有ガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管540,550、MFC542,552、バルブ544,554により不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系を、パージガス供給系、希釈ガス供給系、或いは、キャリアガス供給系と称することもできる。
【0042】
(制御部の構成)
図5に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0043】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0044】
I/Oポート121dは、上述の処理炉202a,202bがそれぞれ備えるMFC312,322,332,342,352,512,522,532,542,552、バルブ314,324,334,344,354,514,524,534,544,554、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、ゲートバルブ70a~70d、第1基板移載機112等に接続されている。
【0045】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,332,342,352,512,522,532,542,552による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,334,344,354,514,524,534,544,554の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0046】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0047】
(2)基板処理工程(成膜工程)
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、処理炉202aにおいて、ウエハ200上に、第1の金属元素を含有する第1の金属含有膜と第1の金属含有膜の上にキャップ膜を形成し、処理炉202bにおいて、第1の金属含有膜の上に形成されたキャップ膜の少なくとも一部を除去しつつ、ウエハ200に対して第2の金属元素を含有する第2の金属含有膜を形成する工程の一例について、図6図7及び図8(A)~図8(C)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0048】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、
(a)第1の金属元素を含有する膜と、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された第13族元素又は第14族元素を含有する膜と、を有する基板を準備する工程と、
(b)前記基板に対して、第2の金属元素を含有するガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して、第1の反応ガスを供給する工程と、
を有し、
(d)(b)と(c)を行うことにより、前記第1の金属元素を含有する膜の上に形成された前記第13族元素又は前記第14族元素を含有する膜の少なくとも一部を除去しつつ、前記基板に対して、前記第2の金属元素を含有する膜を形成する工程と、
を有する。
【0049】
なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0050】
A.第1の金属含有膜形成
先ず、第1プロセスユニットとしての処理炉202a内に、ウエハ200を搬入し、ウエハ200上に第1の金属元素を含有する第1の金属含有膜と、第13族元素又は第14族元素を含有するキャップ膜を形成する。
【0051】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201a内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してアウタチューブ203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0052】
(圧力調整および温度調整)
処理室201a内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201a内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201a内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201a内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201a内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0053】
[第1の金属含有膜形成工程]
続いて、ウエハ200上に、第1の金属含有膜を形成するステップを実行する。
【0054】
(第1の金属含有ガス供給 ステップS10)
バルブ314を開き、ガス供給管310内に第1の金属含有ガスを流す。第1の金属含有ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201a内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管510内を流れた不活性ガスは、MFC512により流量調整され、第1の金属含有ガスと一緒に処理室201a内に供給され、排気管231から排気される。なお、このとき、ノズル420,430内への第1の金属含有ガスの侵入を防止するために、バルブ524,534を開き、ガス供給管520,530内に不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管320,330、ノズル420,430を介して処理室201a内に供給され、排気管231から排気される。
【0055】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC312で制御する第1の金属含有ガスの供給流量は、例えば0.1~2.0slmの範囲内の流量とする。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば300~650℃の範囲内の温度となるような温度に設定して行う。第1の金属含有ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。なお、本開示における「1~3990Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~3990Pa」とは「1Pa以上3990Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0056】
このとき、ウエハ200に対して第1の金属含有ガスが供給されることとなる。ここで、第1の金属含有ガスとしては、例えば第1の金属元素としてのチタン(Ti)を含むガス等が用いられ、その一例として、ハロゲン元素を含む四塩化チタン(TiCl4)ガスを用いることができる。
【0057】
(パージ ステップS11)
第1の金属含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ314を閉じ、第1の金属含有ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201a内を真空排気し、処理室201a内に残留する未反応もしくは第1の金属含有膜形成に寄与した後の第1の金属含有ガスを処理室201a内から排除する。このときバルブ514,524,534は開いたままとして、不活性ガスの処理室201a内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用し、処理室201a内に残留する未反応もしくは第1の金属含有膜形成に寄与した後の第1の金属含有ガスを処理室201a内から排除する効果を高めることができる。
【0058】
(第3の反応ガス供給 ステップS12)
パージを開始してから所定時間経過後にバルブ324を開き、ガス供給管320内に第3の反応ガスを流す。第3の反応ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201a内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内に不活性ガスを流す。また、ノズル410,430内への第3の反応ガスの侵入を防止するために、バルブ514,534を開き、ガス供給管510,530内に不活性ガスを流す。
【0059】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201a内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御する第3の反応ガスの供給流量は、例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。第3の反応ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。
【0060】
このとき、ウエハ200に対して第3の反応ガスが供給されることとなる。ここで、第3の反応ガスとしては、例えば窒素(N)を含むN含有ガスが用いられる。N含有ガスとしては、例えばアンモニア(NH3)ガスを用いることができる。
【0061】
(パージ ステップS13)
第3の反応ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ324を閉じ、第3の反応ガスの供給を停止する。そして、ステップS11と同様の処理手順により、処理室201a内に残留する未反応もしくは第1の金属含有膜形成に寄与した後の第3の反応ガスを処理室201a内から排除する。
【0062】
(所定回数実施)
上記したステップS10~ステップS13を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(p回))行うことにより、図8(A)に示すように、ウエハ200上に、所定の厚さの第1の金属元素を含有する第1の金属含有膜を形成する。上述のサイクルは、繰り返し複数回実行するのが好ましい。ここでは、ウエハ200上に、第1の金属含有膜として、例えばTiN膜が形成される。
【0063】
[キャップ膜形成工程]
続いて、表面に第1の金属含有膜が形成されたウエハ200に対して、キャップ膜を形成するステップを実行する。キャップ膜は、第13族元素又は第14族元素を含有する、第13族元素又は第14族元素含有膜であり、上述した第1の金属含有膜の最表面の酸化を防止する酸化防止膜として機能する。
【0064】
(第13族元素又は第14族元素含有ガス供給 ステップS20)
バルブ334を開き、ガス供給管330内に第13族元素又は第14族元素含有ガスを流す。第13族元素又は第14族元素含有ガスは、MFC332により流量調整され、ノズル430のガス供給孔430aから処理室201a内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ534を開き、ガス供給管530内に不活性ガスを流す。また、ノズル410,420内への第13族元素又は第14族元素含有ガスの侵入を防止するために、バルブ514,524を開き、ガス供給管510,520内に不活性ガスを流す。
【0065】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC332で制御する第13族元素又は第14族元素含有ガスの供給流量は、例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。第13族元素又は第14族元素含有ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。
【0066】
このとき、表面に第1の金属含有膜が形成されたウエハ200に対して、第13族元素又は第14族元素含有ガスが供給されることとなる。ここで、第13族元素又は第14族元素含有ガスとしては、例えばシリコン(Si)を含むSi含有ガスが用いられ、その一例としてジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガスを用いることができる。第13族元素又は第14族元素含有ガスを用いることにより、後述する第2の金属含有膜を形成する際に、キャップ膜を昇華させ易く、除去することが可能となる。
【0067】
なお、第14族元素は、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等の少なくとも1つ以上の元素である。第14族元素含有ガスとしては、例えば、これらの元素と、水素(H)、ハロゲン元素(フッ素(F)、塩素(Cl))、アルキル基(例えば、メチル基CH3)を少なくとも1つ以上含むガスである。Siを含むガスとして、例えば、シラン系ガス、ハロシラン系ガスがある。シラン系ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si26)ガス、トリシラン(Si38)ガスがある。ハロシラン系ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(SiHCl3)、テトラクロロシラン(SiCl4)、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)ガスがある。
【0068】
(パージ ステップS21)
第13族元素又は第14族元素含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ334を閉じ、第13族元素又は第14族元素含有ガスの供給を停止する。そして、ステップS11と同様の処理手順により、処理室201a内に残留する未反応もしくはキャップ膜形成に寄与した後の第13族元素又は第14族元素含有ガスを処理室201a内から排除する。
【0069】
(第3の反応ガス供給 ステップS22)
パージを開始してから所定時間経過後にバルブ324を開き、ガス供給管320内に第3の反応ガスを流す。第3の反応ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201a内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内に不活性ガスを流す。また、ノズル410,430内への第3の反応ガスの侵入を防止するために、バルブ514,534を開き、ガス供給管510,530内に不活性ガスを流す。
【0070】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201a内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御する第3の反応ガスの供給流量は、例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。第3の反応ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。
【0071】
このとき、ウエハ200に対して第3の反応ガスが供給されることとなる。ここで、第3の反応ガスとしては、例えばNを含むN含有ガスであるNH3ガスを用いることができる。
【0072】
(パージ ステップS23)
第3の反応ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ324を閉じ、第3の反応ガスの供給を停止する。そして、ステップS11と同様の処理手順により、処理室201a内に残留する未反応もしくはキャップ膜形成に寄与した後の第3の反応ガスを処理室201a内から排除する。
【0073】
(所定回数実施)
上記したステップS20~ステップS23を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))繰り返し行うことにより、図8(B)に示すように、表面に第1の金属含有膜が形成されたウエハ200上に、所定の厚さのキャップ膜を形成する。上述のサイクルは、複数回実行するのが好ましく、サイクリック供給するのが好ましい。ここで形成されるキャップ膜の厚さは、0.2~3nmが好ましい。キャップ膜の厚さを3nmよりも厚くすると、後述する第2の金属含有膜形成工程を行っても、キャップ膜が除去されずに残ってしまう場合がある。また、0.2nmよりも薄くすると、下地の第1の金属含有膜が酸化される場合がある。即ち、第2の金属含有膜形成工程の際に、酸化した第1の金属含有膜がエッチングされ、第1の金属含有膜の特性低下が発生する。ここで、第1の金属含有膜の特性低下とは、第1の金属含有膜が、バリア膜の場合、バリア性能が低下する。それ故、キャップ膜は、第1の金属含有膜の酸化抑制可能な0.2nm以上形成することが好ましい。キャップ膜の膜厚は、厚くすることにより、第1の金属含有膜の酸化抑制効果は増大するが、第2の金属含有膜の形成時に、キャップ膜が除去されない場合がある。したがって、本工程において、表面に第1の金属含有膜が形成されたウエハ200上に、0.2~3nm、好ましくは0.2~2nmの厚さのキャップ膜を形成する。2nm以下とすることにより、第2の金属含有膜形成工程の間に、キャップ膜を除去することが可能となる。ここでは、キャップ膜として、例えば第14族元素であるSi含有膜であるシリコン窒化(SiN)膜が形成される。ここで、0.2nmは、キャップ膜がSiNで構成されている場合の1原子層分の厚さである。キャップ膜の種類により1原子層の厚さが変わるため、キャップ膜の種類により、膜厚(層数)を変更しても良い。1原子層の厚さの膜を形成することにより、第1の金属含有膜の酸化抑制の効果が得られる。1原子層未満の場合、ホールが形成されてしまい、第1の金属含有膜の酸化抑制の効果が不十分となる。また、キャップ膜を数原子層程度の厚さとすることで、酸化抑制の効果を更に得ることができる。なお、1原子層の厚さの層では、ピンホール等が形成され、ピンホールを通して、第1の金属含有膜が酸化してしまうことが有る。それ故、キャップ膜は、2原子層以上、数原子層以下とすることが好ましい。2原子層以上形成することにより、ピンホールの形成を抑制することができる。なお、ピンホールは、キャップ膜の形成の際に用いる原料ガスの分子サイズに起因する立体障害や、原料ガスの反応特性、反応ガスの反応特性により生じ得る。また、キャップ膜の厚さを、数原子層とすることで、第2の金属含有膜の形成工程の間に、第1の金属含有膜の上に形成されたキャップ膜の少なくとも一部を除去しつつ第2の金属含有膜を形成することができる。ここで、キャップ膜が、SiNの場合には、2原子層~数原子層の厚さは、0.4~1.8nmの厚さとなる。1.8nm以下とすることで、第2の金属含有膜形成工程の初期段階で、キャップ膜を除去することが可能となり、第2の金属含有膜とキャップ膜とが混在する層を低減することができる。第2の金属含有膜とキャップ膜とが混在する層では、第2の金属含有膜の電気的特性が低下する場合がある。
【0074】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管510,520,530から不活性ガスを処理室201a内へ供給し、排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201a内が不活性ガスでパージされ、処理室201a内に残留するガスや副生成物が処理室201a内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201a内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201a内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0075】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、アウタチューブ203の下端が開口される。そして、ウエハ200上に第1の金属含有膜と第1の金属含有膜の上にキャップ膜が形成された処理済のウエハ200がボート217に支持された状態でアウタチューブ203の下端からアウタチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0076】
B.第2の金属含有膜形成
次に、第2プロセスユニットとしての処理炉202b内に、処理炉202a内で処理済みのウエハ200を搬入する。すなわち、第1の金属含有膜と、第1の金属含有膜上に形成されたキャップ膜と、を有するウエハ200を処理炉202b内に準備する。そして、処理室201b内が所望の圧力、所望の温度分布に圧力調整および温度調整がなされる。なお、本工程は、上述した処理炉202aにおける工程とガス供給工程のみ異なる。したがって、上述した処理炉202aにおける工程と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0077】
[第2の金属含有膜形成工程]
続いて、表面にキャップ膜が形成されたウエハ200に対して、第1の金属含有膜の上に形成されたキャップ膜の少なくとも一部を除去しつつ第2の金属元素を含有する第2の金属含有膜を形成するステップを実行する。
【0078】
(第2の金属含有ガス供給 ステップS30)
バルブ344を開き、ガス供給管340内に第2の金属含有ガスを流す。第2の金属含有ガスは、MFC342により流量調整され、ノズル440のガス供給孔440aから処理室201b内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ544を開き、ガス供給管540内にN2ガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管540内を流れた不活性ガスは、MFC542により流量調整され、第2の金属含有ガスと一緒に処理室201b内に供給され、排気管231から排気される。なお、このとき、ノズル450内への第2の金属含有ガスの侵入を防止するために、バルブ554を開き、ガス供給管550内に不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管350、ノズル450を介して処理室201b内に供給され、排気管231から排気される。
【0079】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば0.1~6650Paの範囲内の圧力とする。MFC342で制御する第2の金属含有ガスの供給流量は、例えば0.01~10slmの範囲内の流量とする。MFC542,552で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。第2の金属含有ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば250~550℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。処理室201b内に流しているガスは第2の金属含有ガスと不活性ガスのみであり、第2の金属含有ガスの供給により、ウエハ200上のキャップ膜が除去されつつ、ウエハ200(表面の下地膜)上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さの第2の金属含有膜が形成される。
【0080】
このとき、表面にキャップ膜が形成されたウエハ200に対して第2の金属含有ガスが供給されることとなる。ここで、第2の金属含有ガスとしては、例えば第2の金属元素としてのタングステン(W)を含み、ハロゲン元素としてのフッ素(F)を含むハロゲン含有ガスとしての六フッ化タングステン(WF6)ガスを用いることができる。
【0081】
このときキャップ膜は、第2の金属含有ガスの供給により昇華される。すなわち、キャップ膜と、第2の金属含有ガスに含まれるハロゲン元素が反応し、キャップ膜が除去(エッチング)される。具体的には、キャップ膜の一例であるSiN膜に対して、第2の金属含有ガスの一例であるWF6ガスを供給することにより、SiNとWF6が反応し、Wがウエハ200表面に吸着されて、四フッ化ケイ素(SiF4)とN2が生成される。SiF4は昇華されやすい性質のため、SiF4は昇華され、N2は、次のステップS31のパージにより除去される。すなわち、キャップ膜が除去される。
【0082】
ここで、キャップ膜の除去とは、キャップ膜が一部残った状態も含み得る。つまり、キャップ膜の一部が第2の金属含有膜中に残っていてもよい。デバイス構造では、例えば酸化アルミニウム(AlO)膜上にTiN膜が形成され、その上にW膜が形成されることがある。この場合は、W膜が電極として機能し、TiN膜は電極として機能しない。このためW膜とTiN膜との間に、絶縁膜が存在してもそれぞれの電気的特性への影響が少ないためである。
【0083】
(パージ ステップS31)
第2の金属含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ344を閉じ、第2の金属含有ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201b内を真空排気し、処理室201b内に残留する未反応もしくはキャップ膜の除去と第2の金属含有膜形成に寄与した後の第2の金属含有ガスを処理室201b内から排除する。このときバルブ544,554は開いたままとして、不活性ガスの処理室201b内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用し、処理室201b内に残留する未反応もしくはキャップ膜の除去と第2の金属含有膜形成に寄与した後の第2の金属含有ガスを処理室201b内から排除する効果を高めることができる。
【0084】
(第1の反応ガス供給 ステップS32)
パージを開始してから所定時間経過後にバルブ354を開き、ガス供給管350内に第1の反応ガスを流す。第1の反応ガスは、MFC352により流量調整され、ノズル450のガス供給孔450aから処理室201b内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ554を開き、ガス供給管550内に不活性ガスを流す。ガス供給管550内を流れた不活性ガスは、MFC552により流量調整され、第1の反応ガスと一緒に処理室201b内に供給され、排気管231から排気される。なお、このとき、ノズル440内への第1の反応ガスの侵入を防止するために、バルブ544を開き、ガス供給管540内に不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管340、ノズル440を介して処理室201b内に供給され、排気管231から排気される。
【0085】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201b内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC352で制御する第1の反応ガスの供給流量は、例えば0.1~50slmの範囲内の流量とする。MFC542,552で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。第1の反応ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.1~20秒の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば200~600℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。処理室201b内に流しているガスは第1の反応ガスと不活性ガスのみであり、第1の反応ガスの供給により、ウエハ200上のキャップ膜が除去されつつ、ウエハ200(表面の下地膜)上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さの第2の金属含有膜が形成される。
【0086】
このとき、ウエハ200の表面に形成されたキャップ膜に対して第1の反応ガスが供給されることとなる。第1の反応ガスとしては、例えば還元ガスであり、水素(H)を含むガス(以下、「水素含有ガス」とも呼ぶ)である水素(H2)ガスを用いることができる。
【0087】
第1の反応ガスの供給により、膜中のハロゲン元素が除去されて、キャップ膜がさらに除去される。具体的には、第2の金属含有ガスの一例であるWF6ガスと第1の反応ガスの一例であるH2ガスが、表面にキャップ膜が形成されたウエハ200に供給されることにより、WF6とH2が反応してフッ化水素(HF)が生成され、膜中のFが除去されたW膜を形成する。さらに、この反応して生成されたHFにより、キャップ膜としてのSiN膜が除去される。すなわち、第2の金属含有ガスに含まれるハロゲン元素によりキャップ膜が除去され、さらに第2の金属含有ガスと第1の反応ガスの供給により生成されたHFによりキャップ膜が除去される。
【0088】
つまり、第1の金属含有膜上にキャップ膜を形成することにより、第1の金属含有膜の酸化が抑制され、かつ、キャップ膜上に第2の金属含有膜を形成する際に、キャップ膜を昇華させて消滅させることができる。すなわち、キャップ膜に含まれる第13族元素又は第14族元素の含有量が少ない第2の金属含有膜を形成することができる。
【0089】
ここで、第1の反応ガスの供給流量は、上述した第2の金属含有ガスの供給流量よりも少なくし、所定期間経過後(所定回数後)、第2の金属含有ガスの供給流量と略同じ流量に変更する。ここで、略同じ流量とは、10%程度の誤差を含む。このように、最初に第2の金属含有ガスの供給流量を第1の反応ガスの供給流量と比較して多く供給することにより、第2の金属含有ガスに含まれるハロゲン元素とキャップ膜の反応が促進されてキャップ膜が除去される。そして、所定期間経過後の、キャップ膜が除去された後に、第1の反応ガスの供給流量を、第2の金属含有ガスの供給流量と略同じにすることにより、第1の反応ガスと第2の金属含有ガスの反応が促進されてハロゲン元素の少ない第2の金属含有膜が形成される。つまり、第1の金属含有膜が第2の金属含有膜形成によってエッチングされてしまうことを抑制しつつ、第1の金属含有膜の上にハロゲン元素の少ない第2の金属含有膜を形成することができる。
【0090】
また、第1の反応ガスの供給流量は、最初は、キャリアガスとしての不活性ガスの供給流量よりも多い流量とし、所定期間経過後(所定回数後)、不活性ガスの供給流量よりも少ない流量に変更するようにしてもよい。このように、最初に第1の反応ガスの供給流量をキャリアガスの供給流量と比較して多く供給することにより、第2の金属含有ガスと第1の反応ガスの反応が促進されてHFの生成量が多くなり、キャップ膜が除去される。そして、所定期間経過後の、キャップ膜が除去された後に、第1の反応ガスの供給流量を、不活性ガスの供給流量と比較して少なくすることにより、反応副生成物の生成を抑制することができる。
【0091】
(パージ ステップS33)
第1の反応ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ354を閉じ、第1の反応ガスの供給を停止する。そして、ステップS11と同様の処理手順により、処理室201b内に残留する未反応もしくはキャップ膜の除去と第2の金属含有膜形成に寄与した後の第1の反応ガスを処理室201内から排除する。
【0092】
(所定回数実施)
上記したステップS30~ステップS33を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(m回))繰り返し行うことにより、ウエハ200上に形成されたキャップ膜を昇華させつつ、ウエハ200上に、所定の厚さの第2の金属元素を含有する第2の金属含有膜を形成することが可能である。すなわち、図8(C)に示すように、第1の金属含有膜の上に形成されたキャップ膜の少なくとも一部を除去しつつ、ウエハ200上に、所定の厚さの第2の金属含有膜を形成することが可能である。上述のサイクルは、複数回実行するのが好ましく、第2の金属含有膜形成工程におけるサイクル数(m回)を、上述したキャップ膜形成工程におけるサイクル数(n回)よりも多くする。すなわち、m>n(m、nは正の整数)である。これにより、ウエハ200上に形成されたキャップ膜を昇華させつつ、ウエハ200上に、所定の厚さの第2の金属含有膜を形成することが可能である。
【0093】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管540,550のそれぞれから不活性ガスを処理室201b内へ供給し、排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201b内が不活性ガスでパージされ、処理室201b内に残留するガスや副生成物が処理室201b内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201b内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201b内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0094】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、アウタチューブ203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態でアウタチューブ203の下端からアウタチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0095】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を得ることができる。
(a)膜特性を向上させることができる。
(b)特にバリア膜(第1の金属含有膜)の表面の酸化を抑制することができる。
(c)そして、バリア膜がエッチングされるのを抑制し、バリア膜のバリア特性を向上させることができる。
(d)バリア膜上に形成される金属含有膜(第2の金属含有膜)の抵抗率を低くすることができる。
(e)バリア膜上に形成される金属含有膜の特性を向上させることができる。
【0096】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0097】
(変形例)
図9は、本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す。本変形例は、上述した実施形態と第2の金属含有膜形成工程が異なる。すなわち、第2の金属含有膜形成工程において、第2の金属含有ガス供給と、第1の反応ガス供給と、を行って、キャップ膜の少なくとも一部を除去しつつ、ウエハ200上に、所定の厚さの第2の金属含有膜を形成した後に、第2の金属含有ガス供給と、第1の反応ガスとは異なる第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給と、を行うことにより、第2の金属含有膜上に第2の金属元素を含有する別の膜を形成する。ここで、第2の金属含有膜上に形成される第2の金属元素を含有する別の膜は、第2の金属含有膜に含まれる第2の金属元素を含み、第2の金属含有膜と比較して抵抗率の低い膜である。本変形例により、キャップ膜の少なくとも一部を除去しつつ、抵抗率の低い第2の金属含有膜を形成することができる。
【0098】
ここで、第2の金属含有ガスとしてWF6ガス、第1の反応ガスとして第1の水素含有ガスであるH2ガス、第2の反応ガスとして第2の水素含有ガスであるB26ガスを用いた場合、WF6ガス供給と、H2ガス供給と、を所定回数(m回)行うことにより、第1の金属含有膜の上に形成されたキャップ膜の一例であるSiN膜の少なくとも一部を除去しつつ、ウエハ200上にSiNとFの残留の少ないW膜を形成する。そしてその後、WF6ガス供給と、B26ガス供給と、を所定回数(q回)行うことにより抵抗率の低いW膜を形成する。すなわち、第1の金属含有膜が第2の金属含有膜形成によってエッチングされてしまうのを抑制しつつ、第1の金属含有膜の上に抵抗率の低い第2の金属含有膜を形成することができる。
【0099】
なお、上記実施形態では、キャップ膜形成工程における第13族元素又は第14族元素含有ガスとしてDCSガスを用いる例について説明したが、これに限らず、異なるガスを用いる場合にも適用できる。例えば、第13族元素又は第14族元素含有ガスとして、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス等を用いる場合にも適用できる。第13族元素又は第14族元素含有ガスとして、HCDSガスを供給し、第3の反応ガスとしてNH3ガスを供給した場合、Si2Cl6とNH3が反応し、Sixyと塩素(Cl2)と塩酸(HCl)が生成され、表面に第1の金属含有膜が形成されたウエハ200上に、キャップ膜としてのSiN膜を形成することができる。
【0100】
また上記実施形態では、第2の金属含有膜形成工程における第1の反応ガスとしてH2ガスを用いる例について説明したが、これに限らず、異なるガスを用いる場合にも適用できる。例えば、第1の反応ガスとして、シリコン(Si)と水素(H)を含むガスであるモノシラン(SiH4)ガスやジシラン(Si26)ガス等を用いる場合にも適用できる。第1の反応ガスとしてSiH4ガス等のSiとHを含むガスを用いることにより、上述したH2ガスを用いた場合と比較して、反応が促進されてHFの生成量が増加し、HFによるSiN膜のエッチング(除去)を促進させることが可能となる。
【0101】
また上記実施形態では、第2の金属含有膜形成工程における第1の反応ガスとして、ホウ素(B、ボロン)と水素(H)を含むガスであるジボラン(B26)ガスやモノボラン(BH3)ガス等を用いる場合にも適用できる。第1の反応ガスとしてB26ガス等のBとHを含むガスを用いることにより、上述したH2ガスを用いた場合と比較して、反応が促進されてHFの生成量が増加し、HFによるSiN膜のエッチング(除去)を促進させることが可能となる。また、TiN膜等の第1の金属含有膜上に形成されるW膜等の第2の金属含有膜の抵抗率を低減することが可能となる。
【0102】
ここで、SiH4やB26は、H2と比較して、WF6と反応し易い性質がある。よって、第1の反応ガスとしてSiH4ガスやB26ガスを用いることで、WF6との反応が促進されて、HFの生成量を増やすことが可能となり、HFによるSiN膜の除去を促進することができる。なお、WF6とSiH4(又はB26)の反応により、SiN膜が除去される前にW膜が形成されてしまい、W膜の下にSiN膜が残留してしまう場合がある。また、第1の反応ガスとしてH2ガスを用いた場合には、SiH4ガスやB26ガスを用いた場合と比較して、WF6との反応は遅く、SiN膜の残留量も少なくなる。
【0103】
また上記実施形態では、同一処理炉202aにおいて(in-situで)、第1の金属含有膜形成工程とキャップ膜形成工程を行った後に、処理炉202bにおいて(ex-situで)、第2の金属含有膜形成工程を行うことで、第1の金属含有膜の表面の酸化を抑制して、第1の金属含有膜の上に第2の金属含有膜を形成する構成を用いて説明したが、これに限らず、第2の金属含有膜形成工程を、第1の金属含有膜形成工程とキャップ膜形成工程と同一の処理炉において連続して行ってもよい。すなわち、表面にキャップ膜が形成されたウエハ200を処理室201a内から処理室201a外に取り出すことなく処理室201a内に収容した状態で、連続的に行うようにしてもよい。すなわち、同一処理室内で(in-situにて)連続的に行うようにしてもよい。
【0104】
また上記実施形態では、第1の金属含有膜として、例えばTiN膜を用いる例について説明したが、これに限らず、モリブデン(Mo)含有膜、ルテニウム(Ru)含有膜、銅(Cu)含有膜等の金属含有膜を用いる場合にも適用できる。
【0105】
また上記実施形態では、キャップ膜である第13族元素又は第14族元素含有膜として、例えばSiN膜を用いる例について説明したが、これに限らず、第13族元素であるホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等を含む膜や、第14族元素であるSi、ゲルマニウム(Ge)等を含む膜を用いる場合にも適用できる。例えば、キャップ膜としてSiN膜の他に、窒化アルミニウム(AlN)膜等の窒化膜を用いることができる。これらの膜は、下地の金属含有膜の酸化を抑制し、かつ、キャップ膜上に下地の金属含有膜とは異なる金属含有膜を形成する際に、昇華して消滅させることができる。なお、SiN膜は、AlN膜と比較して昇華し易く消滅され易い。
【0106】
なお、第13族元素含有ガスとしては、例えば、これら元素と、水素(H)、ハロゲン元素(フッ素(F)、塩素(Cl))、アルキル基(例えば、メチル基CH3)を少なくとも1つ以上含むガスがある。Alを含むガスとして、例えば、トリメチルアルミニウム(Al(CH33)ガス、三塩化アルミニウム(AlCl3)ガスがある。このようなガスを用いることにより、AlN膜を形成することができる。
【0107】
また上記実施形態では、第2の金属含有膜形成工程における各ステップ間においてパージを行う例について説明したが、これに限らず、第2の金属含有膜形成工程における各ステップ間においてパージを行わなくてもよく、第2の金属含有ガスと第1の反応ガスや、第2の金属含有ガスと第2の反応ガスを同時供給してもよい。
【0108】
以下に実施例を説明するが、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0109】
先ず、図10(A)に示すように、上述した基板処理装置10の処理炉202aを用いて、上述の図6の基板処理シーケンスにおける第1の金属含有膜形成工程とキャップ膜形成工程を行ってウエハ200上にTiN膜とキャップ膜としてのSiN膜を形成したサンプル1と、上述の図6の基板処理シーケンスにおける第1の金属含有膜形成工程のみを行ってウエハ上にTiN膜を形成したサンプル2を用意し、サンプル1とサンプル2の表面に対してX線光電子分光法(略称:XPS)分析を行った。
【0110】
図10(B)及び図10(C)に示すように、サンプル1とサンプル2におけるピーク値は異なっており、TiN膜上にキャップ膜が形成されることにより、TiO成分が抑制され、TiN膜の酸化が抑制されることが確認された。
【0111】
次に、図11(A)に示すように、上述した基板処理装置10の処理炉202bを用いて、上述の図7の基板処理シーケンスを行って、上述したサンプル1とサンプル2の表面にW膜をそれぞれ形成し、サンプル1とサンプル2の表面に対してXPS分析を行った。
【0112】
図11(B)に示すように、サンプル1のTi2p強度は、サンプル2のTi2p強度と比較して高くなり、残留するTiN膜が多いことが確認された。すなわち、キャップ膜を形成することにより、W膜成膜時にTiN膜のエッチングが抑制されることが確認された。また、図10(C)及び図11(C)に示すように、キャップ膜のピーク値が消滅し、キャップ膜上にW膜を形成することにより、キャップ膜が除去されていることが確認された。
【0113】
以上、本開示の種々の典型的な実施形態及び実施例を説明してきたが、本開示はそれらの実施形態及び実施例に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0114】
10 基板処理装置
121 コントローラ
200 ウエハ(基板)
201a、201b 処理室
202a、202b 処理炉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11