(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法
(51)【国際特許分類】
B01F 21/00 20220101AFI20241224BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20241224BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20241224BHJP
B01F 35/83 20220101ALI20241224BHJP
B01F 101/58 20220101ALN20241224BHJP
【FI】
B01F21/00
B01F23/23
B01F25/40
B01F35/83
B01F101:58
(21)【出願番号】P 2023531874
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2022025005
(87)【国際公開番号】W WO2023276837
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021109991
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】安西 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】羽田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】大井 和美
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223725(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042933(WO,A1)
【文献】特開2013-128869(JP,A)
【文献】実開昭60-018544(JP,U)
【文献】特開平07-077443(JP,A)
【文献】特開2019-144146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
B01F 35/00-35/95
C02F 1/00- 1/78
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜により、比抵抗値の調整対象となる液体が供給される液相側領域と前記液体の比抵抗値を調整するための調整ガスが供給される気相側領域とに分けられた中空糸膜モジュールと、
液体供給管と、
液体排出管と、
前記中空糸膜モジュールの前記液相側領域、前記液体供給管及び前記液体排出管に連通されて前記中空糸膜モジュールを経由するモジュール経由管と、
前記液体供給管及び前記液体排出管に連通されて前記中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管と、を備え、
前記バイパス管は、前記モジュール経由管よりも細い複数の細管で構成される層流化部を有する、
比抵抗値調整装置。
【請求項2】
前記層流化部は、前記バイパス管に前記液体として超純水が規定流量で供給された際に、前記層流化部において前記液体が層流となるように設定されている、
請求項1に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項3】
前記層流化部は、前記バイパス管に前記液体として超純水が規定流量で供給された際に、前記層流化部においてレイノルズ数が2300以下となるように設定されている、
請求項1又は2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項4】
前記複数の細管の本数は、5本以上である、
請求項
1又は2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項5】
前記複数の細管のそれぞれの内径は、0.01mm以上10mm以下である、
請求項
1又は2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項6】
前記複数の細管のそれぞれの長さは、1mm以上1000mm以下である、
請求項
1又は2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項7】
前記層流化部の長さは、前記バイパス管の長さの1%以上である、
請求項
1又は2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項8】
前記液体供給管、前記モジュール経由管、及び前記バイパス管に接続されて、前記液体供給管、前記モジュール経由管、及び前記バイパス管を連通させる分岐モジュールと、
前記液体排出管、前記モジュール経由管、及び前記バイパス管に接続されて、前記液体排出管、前記モジュール経由管、及び前記バイパス管を連通させる合流モジュールと、を更に備え、
前記層流化部は、前記分岐モジュールから前記合流モジュールまで延びている、
請求項
1又は2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項9】
前記気相側領域に前記調整ガスを供給するために前記気相側領域に連通されたガス供給管と、
前記気相側領域から前記調整ガスを排出するために前記気相側領域に連通されたガス排出管と、を更に備える、
請求項
1又は2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項10】
前記モジュール経由管に取り付けられて、前記モジュール経由管と前記バイパス管との間の前記液体の分配比率を調整するためのバルブを更に備える、
請求項
1又は2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載された比抵抗値調整装置において、前記液体供給管に前記液体を供給するとともに、前記中空糸膜モジュールの前記気相側領域に前記調整ガスを供給することにより、前記液体の比抵抗値を調整する、
比抵抗値調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、液体の比抵抗値を調整する比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体又は液晶の製造工程では、超純水を使用して基板を洗浄する。この場合、超純水の比抵抗値が高いと、静電気が発生する。これにより、絶縁破壊して、又は微粒子が再付着して、製品歩留まりに著しく悪影響を及ぼす。このような問題を解決するために、疎水性の中空糸膜モジュールを用いた方法が提案されている。この方法は、中空糸膜モジュールを用いて超純水中に炭酸ガス又はアンモニアガス等のガスを溶解させる。すると、解離平衡によりイオンが発生し、この発生したイオンにより超純水の比抵抗値が低下する。
【0003】
また、基板の洗浄、ダイシング等の工程では、超純水の流動変動が激しい。そこで、特許文献1では、流量が変動しても比抵抗値を安定させる技術が提案されている。特許文献1に記載された技術では、小流量のガス付加超純水を生成する中空糸膜モジュールと、大流量の超純水を通過させるバイパス管と、を設ける。そして、生成されたガス付加超純水とバイパス管を通過した超純水とを合流する。これにより、容易に超純水の比抵抗値を調整できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、超純水が低流量になると、中空糸膜モジュールをバイパスする超純水の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される超純水の流量が低下して、超純水の比抵抗値が上昇する場合がある。そこで、特許文献2技術では、複数のバイパス管を設け、1又は複数のバイパス管にシャット弁を設ける技術が提案されている。特許文献2に記載された技術では、超純水の流量が低下すると、一部又は全部のシャット弁を閉める。これにより、超純水が低流量になった際に、中空糸膜モジュールをバイパスする超純水の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される超純水の流量が低下するのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3951385号公報
【文献】特開2012-223725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された技術では、超純水の流量に応じて複数のバイパス管に取り付けられたシャット弁の開閉制御を行う必要があるため、装置が複雑になってコストが高くなるという問題がある。また、特許文献2に記載された技術では、供給される流量が変わると、シャット弁の開閉に伴いバイパス管の圧力損失が急激に変わるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明の一側面は、簡易な構成で、供給される液体の流量が変動しても比抵抗値調整液体の比抵抗値が変動するのを抑制することができる比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究したところ、従来の比抵抗値調整装置では、バイパス管において液体が乱流となっており、このバイパス管での乱流が、比抵抗値調整装置に供給される液体が変動した際の比抵抗値調整液体の比抵抗値の変動に大きく影響していることを見出した。これは、液体として超純水を供給する場合に限定されるものではなく、超純水以外の様々な液体を供給する場合においても同様である。なお、比抵抗値調整液体は、比抵抗値調整装置により比抵抗値が調整された液体をいう。
【0009】
詳しく説明すると、液体が乱流となるバイパス管における液体の圧力損失は、液体の流量に対して指数関数的な関係となる。一方、中空糸膜モジュールを経由するモジュール経由管に供給される液体の流量は、中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管に供給される液体の流量に比べて小さい。このため、バイパス管における液体の圧力損失と比べた場合、モジュール経由管及び中空糸膜モジュールを流れる液体が乱流であるか否かに関わらず、モジュール経由管及び中空糸膜モジュールにおける液体の圧力損失は、液体の流量に対して比例的な関係とみなすことができる。つまり、バイパス管における液体とモジュール経由管及び中空糸膜モジュールにおける液体とでは、その圧力損失の傾向が大きく異なる。
【0010】
このため、比抵抗値調整装置に供給する液体の流量変動に伴い、モジュール経由管とバイパス管との間の液体の分配比率が変動して(崩れて)しまい、比抵抗値調整液体の比抵抗値が変動する。特に、比抵抗値調整装置に供給する液体が小流量になると、モジュール経由管に対するバイパス管の液体の分配比率が大きくなって、比抵抗値調整液体の比抵抗値が高くなる。
【0011】
そこで、本発明者らは、バイパス管における液体の圧力損失の傾向をモジュール経由管及び中空糸膜モジュールにおける液体の圧力損失の傾向に近づけることで、上課題を解決するものとした。
【0012】
すなわち、本発明の一側面に係る比抵抗値調整装置は、中空糸膜により、比抵抗値の調整対象となる液体が供給される液相側領域と液体の比抵抗値を調整するための調整ガスが供給される気相側領域とに分けられた中空糸膜モジュールと、液体供給管と、液体排出管と、中空糸膜モジュールの液相側領域、液体供給管及び液体排出管に連通されて中空糸膜モジュールを経由するモジュール経由管と、液体供給管及び液体排出管に連通されて中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管と、を備え、バイパス管は、モジュール経由管よりも細い複数の細管で構成される層流化部を有する。
【0013】
この比抵抗値調整装置では、液体供給管に液体が供給され、中空糸膜モジュールの気相側領域に調整ガスが供給される。液体供給管に供給された液体は、モジュール経由管とバイパス管とに分配され、モジュール経由管に分配された液体は、中空糸膜モジュールの液相側領域に供給される。中空糸膜モジュールでは、中空糸膜を透過した調整ガスが液相側領域に供給された液体に溶解されて、液体に調整ガスが溶解した調整ガス付加液体が生成される。中空糸膜モジュールで生成された調整ガス付加液体と中空糸膜モジュールをバイパスした液体とは、液体排出管で合流して比抵抗値調整液体となり、比抵抗値調整装置から排出される。
【0014】
そして、バイパス管が、モジュール経由管よりも細い複数の細管で構成される層流化部を有するため、バイパス管での液体の流れを層流化することができる。層流では、液体の圧力損失は、液体の流量に対して比例の関係となる。層流でなくても、乱流から層流に近づくほど、液体の圧力損失は、液体の流量に対して比例に近い関係となる。一方、モジュール経由管に供給される液体の流量は、バイパス管に供給される液体の流量に比べて小さい。このため、バイパス管における液体の圧力損失と比べた場合、モジュール経由管及び中空糸膜モジュールを流れる液体が乱流であるか否かに関わらず、モジュール経由管及び中空糸膜モジュールにおける液体の圧力損失は、液体の流量に対して比例的な関係とみなすことができる。つまり、バイパス管における液体の圧力損失の傾向が、モジュール経由管及び中空糸膜モジュールにおける液体の圧力損失の傾向に近くなる。このため、比抵抗値調整装置に供給される液体の流量が変動しても、モジュール経由管とバイパス管との間の液体の分配比率が変動するのを抑制することができ、比抵抗値調整液体の比抵抗値の変動を抑制することができる。特に、比抵抗値調整装置に供給する液体が小流量になっても、モジュール経由管に対するバイパス管の液体の分配比率が上昇するのを抑制できるため、比抵抗値調整液体の比抵抗値が上昇するのを抑制することができる。これにより、簡易な構成で、供給される液体の流量が変動しても比抵抗値調整液体の比抵抗値が変動するのを抑制することができる。
【0015】
一実施形態として、層流化部は、バイパス管に液体として超純水が規定流量で供給された際に、層流化部において液体が層流となるように設定されていてもよい。この比抵抗値調整装置では、層流化部が、バイパス管に液体として超純水が規定流量で供給された際に、層流化部において液体が層流となるように設定されていることで、層流化部を容易に設計することができるとともに、供給される液体の流量が変動しても比抵抗値調整液体の比抵抗値が変動するのを更に抑制することができる。
【0016】
一実施形態として、層流化部は、バイパス管に液体として超純水が規定流量で供給された際に、層流化部においてレイノルズ数が2300以下となるように設定されていてもよい。この比抵抗値調整装置では、層流化部が、バイパス管に液体として超純水が規定流量で供給された際に、層流化部においてレイノルズ数が2300以下となるように設定されていることで、層流化部を容易に設計することができるとともに、供給される液体の流量が変動しても比抵抗値調整液体の比抵抗値が変動するのを更に抑制することができる。
【0017】
一実施形態として、複数の細管の本数は、5本以であってもよい。この比抵抗値調整装置では、複数の細管の本数が5本以上であることで、層流化部での液体の流量を確保しつつ、層流化部での液体の流れを層流化しやすくなる。
【0018】
一実施形態として、複数の細管のそれぞれの内径は、0.01mm以上10mm以下であってもよい。この比抵抗値調整装置では、複数の細管のそれぞれの内径が0.01mm以上10mm以下であることで、層流化部での液体の圧力損失が過大又は過小となるのを抑制しつつ、層流化部での液体の流れを層流化しやすくなる。
【0019】
一実施形態として、複数の細管のそれぞれの長さは、1mm以上1000mm以下であってもよい。この比抵抗値調整装置では、複数の細管のそれぞれの長さが1mm以上1000mm以下であることで、層流化部での液体の圧力損失が過大又は過小となるのを抑制することができる。
【0020】
一実施形態として、層流化部の長さは、バイパス管の長さの1%以上であってもよい。この比抵抗値調整装置では、層流化部の長さが、バイパス管の長さの1%以上であることで、バイパス管での液体の流れを層流化しやすくなる。
【0021】
一実施形態として、液体供給管、モジュール経由管、及びバイパス管に接続されて、液体供給管、モジュール経由管、及びバイパス管を連通させる分岐モジュールと、液体排出管、モジュール経由管、及びバイパス管に接続されて、液体排出管、モジュール経由管、及びバイパス管を連通させる合流モジュールと、を更に備え、層流化部は、分岐モジュールから合流モジュールまで延びていてもよい。この比抵抗値調整装置では、分岐モジュール及び合流モジュールを備えることで、液体供給管からモジュール経由管及びバイパス管への分岐構造、及び、モジュール経由管及びバイパス管から液体排出管への合流構造を、容易に実現することができる。特に、バイパス管は、複数の細管で構成される層流化部を有するため、分岐モジュール及び合流モジュールを介することで、バイパス管と液体供給管及び液体排出管との接続を容易に行うことができる。しかも、層流化部が分岐モジュールから合流モジュールまで延びていることで、層流化部を容易に形成することができるとともに、層流化部での液体の流れを層流化しやすくなる。
【0022】
一実施形態として、気相側領域に調整ガスを供給するために気相側領域に連通されたガス供給管と、気相側領域から調整ガスを排出するために気相側領域に連通されたガス排出管と、を更に備えてもよい。この比抵抗値調整装置では、ガス供給管及びガス排出管を備えることで、中空糸膜モジュールの気相側領域に対する調整ガスの供給及び排出を容易に行うことができる。
【0023】
一実施形態として、モジュール経由管に取り付けられて、モジュール経由管とバイパス管との間の液体の分配比率を調整するためのバルブを更に備えてもよい。この比抵抗値調整装置では、バルブを備えることで、モジュール経由管とバイパス管との間の液体の流分配比率を容易に調整することができる。しかも、バルブがモジュール経由管に取り付けられているため、バルブによりバイパス管の層流化が阻害されるのを抑制することができる。
【0024】
本発明の一側面に係る比抵抗値調整装置は、上記の何れかの比抵抗値調整装置の液体供給管に液体を供給するとともに、中空糸膜モジュールの気相側領域に調整ガスを供給することにより、液体の比抵抗値を調整する。
【0025】
この比抵抗値調整方法では、上記の比抵抗値調整装置において、液体供給管に液体を供給するとともに、中空糸膜モジュールの気相側領域に調整ガスを供給することにより、液体の比抵抗値を調整する。これにより、簡易な構成で、供給される液体の流量が変動しても比抵抗値調整液体の比抵抗値が変動するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一側面によれば、簡易な構成で、供給される液体の流量が変動しても比抵抗値調整液体の比抵抗値が変動するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
【
図3】
図1に示す比抵抗値調整装置の一部を示す断面図である。
【
図5】実施例1における比抵抗値調整液体の比抵抗値の計測結果を示すグラフである。
【
図6】比較例1における比抵抗値調整液体の比抵抗値の計測結果を示すグラフである。
【
図7】比較例1におけるモジュール経由管及びバイパス管とバイパス管とにおける液体の圧力損失の計測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、実施形態の比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
図1は、実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図1に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1は、液体Lに調整ガスGを溶解させた調整ガス付加液体L1を生成する。また、比抵抗値調整装置1は、液体Lと調整ガス付加液体L1とを合流することにより液体Lの比抵抗値を調整した比抵抗値調整液体L2を生成する装置である。なお、調整ガス付加液体L1は、調整ガスGが溶解された液体Lであり、比抵抗値調整液体L2は、比抵抗値が調整された液体Lである。このため、調整ガス付加液体L1及び比抵抗値調整液体L2を、単に液体Lと示すこともある。比抵抗値調整装置1は、中空糸膜モジュール2と、液体供給管3と、液体排出管4と、ガス供給管5と、ガス排出管6と、モジュール経由管7と、バイパス管8と、バルブ9と、分岐モジュール11と、合流モジュール12と、を備える。
【0030】
中空糸膜モジュール2は、比抵抗値を調整する液体Lに比抵抗値を調整する調整ガスGを溶解させるためのモジュールである。中空糸膜モジュール2は、複数本の中空糸膜21と、これらの中空糸膜21を内部に収容するハウジング22と、を備える。
【0031】
液体Lは、比抵抗値の調整対象となる液体である。液体Lとして用いる液体は、特に限定されないが、例えば、半導体、液晶等を洗浄するための純水又は超純水とすることができる。通常、純水及び超純水の比抵抗値は、0.1MΩ・cm以上である。このため、液体Lの比抵抗値は、例えば、0.1MΩ・cm以上、好ましくは15.0MΩ・cm以上、より好ましくは17.5MΩ・cm以上の範囲であってよく。また、液体Lの比抵抗値の上限値は特に限定されないが、例えば、18.248MΩ・cm以下の範囲であってよい。
【0032】
液体Lの温度は特に限定されないが、例えば、5℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上の範囲であってよく、また、60℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下の範囲であってよい。液体Lの供給圧力は特に限定されないが、例えば、0.01MPa以上、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2PMa以上の範囲であってよく、また、1.0MPa以下、好ましくは0.4MPa以下、より好ましくは0.3MPa以下の範囲であってよい。
【0033】
調整ガスGは、液体Lの比抵抗値を調整するためのガスである。調整ガスGとして用いるガスは、特に限定されないが、例えば、炭酸ガス又はアンモニアガスとすることができる。調整ガスGの温度は特に限定されないが、例えば、0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上の範囲であってよく、また、60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下の範囲であってよい。調整ガスGの供給圧力は特に限定されないが、例えば、0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上の範囲であってよく、また、0.5MPa以下、好ましくは0.2MPa以下、より好ましくは0.15MPa以下の範囲であってよい。
【0034】
中空糸膜21は、気体は透過するが液体は透過しない中空糸状の膜である。中空糸膜21の素材、膜形状、膜形態等は、特に制限されない。ハウジング22は、中空糸膜21を内部に収容する密閉容器である。中空糸膜モジュール2の膜面積は、処理流量(液体Lの流量)によって適宜調整することができ、特に限定されるものではないが、例えば、0.1m2以上120m2以下の範囲であってよい。中空糸膜モジュール2の膜面積の最適値を処理流量によって調整する場合、例えば、一般的な流量処理(例えば、1~120L/min)の場合は0.1m2以上4.0m2以下の範囲であってよく、より大流量処理(例えば、120~4000L/min)の場合は4.0m2以上120m2以下の範囲であってよい。
【0035】
中空糸膜モジュール2は、複数本の中空糸膜21と、これらの中空糸膜21を内部に収容するハウジング22と、を備える。中空糸膜モジュール2は、複数本の中空糸膜21と、これらの中空糸膜21を内部に収容するハウジング22と、を備える。
【0036】
図2は、中空糸膜の一部を拡大した断面図である。
図2に示すように、中空糸膜モジュール2は、中空糸膜21により、液相側領域LAと、気相側領域GAと、に分けられる。液相側領域LAは、中空糸膜モジュール2内の領域のうち、比抵抗値を調整する液体Lが供給される領域である。気相側領域GAは、中空糸膜モジュール2内の領域のうち、比抵抗値を調整する調整ガスGが供給される領域である。中空糸膜モジュール2の種類としては、内部灌流型及び外部灌流型がある。本実施形態では、内部灌流型及び外部灌流型の何れであってもよい。外部灌流型の中空糸膜モジュール2では、中空糸膜21の内側(内表面側)が気相側領域GAとなり、中空糸膜21の外側(外表面側)が液相側領域LAとなる。内部灌流型の中空糸膜モジュール2では、中空糸膜21の内側(内表面側)が液相側領域LAとなり、中空糸膜21の外側(外表面側)が気相側領域GAとなる。そして、中空糸膜モジュール2では、気相側領域GAに供給されて中空糸膜21を透過した調整ガスGが、液相側領域LAに供給された液体Lに溶解することで、調整ガス付加液体L1が生成される。
【0037】
図1に示すように、ハウジング22には、液体供給口22Aと、液体排出口22Bと、ガス供給口22Cと、ガス排出口22Dと、が形成される。液体供給口22Aは、液相側領域LAに液体Lを供給するためにハウジング22に形成された開口である。液体排出口22Bは、液相側領域LAから調整ガス付加液体L1を排出するためにハウジング22に形成された開口である。ガス供給口22Cは、気相側領域GAに調整ガスGを供給するためにハウジング22に形成された開口である。ガス排出口22Dは、気相側領域GAから調整ガスGを排出するためにハウジング22に形成された開口である。このため、液体供給口22A及び液体排出口22Bは、液相側領域LAと連通される。また、ガス供給口22C及びガス排出口22Dは、気相側領域GAと連通される。液体供給口22A、液体排出口22B、ガス供給口22C、及びガス排出口22Dのハウジング22における位置は、特に限定されない。
【0038】
図3は、
図1に示す比抵抗値調整装置の一部を示す断面図である。
図1及び
図3に示すように、液体供給管3は、内部に液体Lの流路3Aが形成された管状の部材である。液体供給管3には、液体Lが供給される。液体供給管3の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0039】
液体排出管4は、内部に比抵抗値調整液体L2の流路4Aが形成された管状の部材である。液体排出管4からは、比抵抗値調整液体L2が排出される。液体排出管4の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0040】
ガス供給管5は、内部に調整ガスGの流路(不図示)が形成された管状の部材である。ガス供給管5は、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAに調整ガスGを供給するために、ガス供給口22Cに接続されて、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAに連通されている。ガス供給管5の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0041】
ガス排出管6は、内部に調整ガスGの流路(不図示)が形成された管状の部材である。ガス排出管6は、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAから調整ガスGを排出するために、ガス排出口22Dに接続されて、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAに連通されている。ガス排出管6には、ガス排出管6の流路を開閉するバルブ6Aが取り付けられている。ガス排出管6では、バルブ6Aを開くことで、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAから調整ガスG等を排出することが可能となっている。また、ガス排出管6では、バルブ6Aを閉じることで、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAから調整ガスG等が排出されないようにすることが可能となっている。なお、バルブ6Aは、ガス排出管6の流路の開度を調整できるものであってもよい。ガス排出管6の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。なお、ガス排出管6には、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAの調整ガスGを漏れ出させる漏出部(不図示)が設けられていてもよい。漏出部からは、常時、調整ガスGが漏れ出る。
【0042】
モジュール経由管7は、中空糸膜モジュール2の液相側領域LA、液体供給管3及び液体排出管4に連通されて、中空糸膜モジュール2を経由する。つまり、中空糸膜モジュール2は、モジュール経由管7の途中に配置されている。モジュール経由管7は、上流側モジュール経由管71と、下流側モジュール経由管72と、を有する。上流側モジュール経由管71は、液体Lの流れ方向における中空糸膜モジュール2の上流側に配置されている。下流側モジュール経由管72は、液体Lの流れ方向における中空糸膜モジュール2の下流側に配置されている。
【0043】
上流側モジュール経由管71は、内部に流路71Aが形成された管状の部材である。上流側モジュール経由管71は、液体供給管3に供給された液体Lを中空糸膜モジュール2の液相側領域LAに供給するために、液体供給管3及び中空糸膜モジュール2の液相側領域LAに連通されている。上流側モジュール経由管71の上流側の端部は、液体供給管3の流路3Aに連通されるために、分岐モジュール11に接続されている。上流側モジュール経由管71の下流側の端部は、中空糸膜モジュール2の液相側領域LAに連通されるために、液体供給口22Aに接続されている。上流側モジュール経由管71の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。但し、上流側モジュール経由管71の流路71Aの断面積は、液体供給管3の流路3Aの断面積よりも小さい方が好ましい。
【0044】
下流側モジュール経由管72は、内部に流路72Aが形成された管状の部材である。下流側モジュール経由管72は、中空糸膜モジュール2で生成された調整ガス付加液体L1を液体排出管4に排出するために、液体排出管4及び中空糸膜モジュール2の液相側領域LAに連通されている。下流側モジュール経由管72の上流側の端部は、中空糸膜モジュール2の液相側領域LAに連通されるために、液体排出口22Bに接続されている。下流側モジュール経由管72の下流側の端部は、液体排出管4の流路4Aに連通されるために、合流モジュール12に接続されている。下流側モジュール経由管72の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。但し、下流側モジュール経由管72の流路72Aの断面積は、液体排出管4の流路4Aの断面積よりも小さい方が好ましい。
【0045】
図4は、バイパス管の一部を拡大した断面図である。
図1、
図3及び
図4に示すように、バイパス管8は、液体供給管3及び液体排出管4に連通されて、中空糸膜モジュール2をバイパスする。つまり、バイパス管8は、中空糸膜モジュール2に接続されておらず、液体供給管3に供給された液体Lを、中空糸膜モジュール2を経ることなく液体排出管4に排出する。バイパス管8の、液体供給管3から液体排出管4に向かう方向を、液体供給管3から液体排出管4に向かう流れ方向FDという。液体供給管3から液体排出管4に向かう流れ方向FDは、単に流れ方向FDともいう。バイパス管8の上流側(流れ方向FDにおける上流側)の端部は、液体供給管3と連通するために、分岐モジュール11に接続されている。バイパス管8の下流側(流れ方向FDにおける下流側)の端部は、液体排出管4と連通するために、合流モジュール12に接続されている。バイパス管8には、バイパス管8を開閉するシャット弁等のバルブが取り付けられていない。
【0046】
バイパス管8は、層流化部8Aと、層流化部8Aを収容するバイパスハウジング8Bと、を有する。
【0047】
バイパスハウジング8Bは、層流化部8Aを収容可能なように、筒状に形成されている。バイパスハウジング8Bの上流側(流れ方向FDにおける上流側)の端部は、分岐モジュール11に気密に接続されている。バイパスハウジング8Bの下流側(流れ方向FDにおける下流側)の端部は、合流モジュール12に気密に接続されている。つまり、層流化部8Aは、分岐モジュール11から合流モジュール12まで延びている。分岐モジュール11及び合流モジュール12に対するバイパスハウジング8Bの気密な接続は、例えば、接着、融着、嵌合、これらの組み合わせ等により行うことができる。バイパスハウジング8Bの素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。但し、バイパスハウジング8Bは、直線状に延びる筒状であることが好ましい。
【0048】
層流化部8Aは、バイパス管8での液体Lの流れを層流化するために、複数の細管8Cで構成されている。層流化するとは、層流にすることだけではなく、乱流を層流に近づけるようにすることも意味する。層流は、例えば、レイノルズ数が2300以下となる流れをいう。乱流を層流に近づけるようにするとは、例えば、レイノルズ数を下げて2300に近づけることをいう。層流化部8Aは、例えば、バイパス管8に液体Lとして超純水が規定流量で供給された際に、層流化部8Aにおいて液体Lが層流となるように設定されていてもよい。また、層流化部8Aは、例えば、バイパス管8に液体Lとして超純水が規定流量で供給された際に、層流化部8Aにおいてレイノルズ数が2300以下、好ましくは2000以下、より好ましくは500以下となるように設定されていてもよい。これらの規定流量としては、例えば、0.1L/min以上120L/min以下の任意の値とすることができる。
【0049】
複数の細管8Cのそれぞれは、内部に流路8Dが形成された管状の部材である。複数の細管8Cのそれぞれは、モジュール経由管7(上流側モジュール経由管71及び下流側モジュール経由管72)よりも細い。つまり、複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dの断面積は、上流側モジュール経由管71の流路71Aの断面積及び下流側モジュール経由管72の流路72Aの断面積よりも小さい。複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dの断面積の合計は、例えば、上流側モジュール経由管71の流路71A及び下流側モジュール経由管72の流路72Aのそれぞれの断面積よりも大きい。複数の細管8Cのそれぞれは、例えば、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PFA)、ナイロン等により形成される。
【0050】
複数の細管8Cの上流側の端部は、第一封止部8Eによりバイパスハウジング8B又は分岐モジュール11に固定されている。複数の細管8Cの下流側の端部は、第二封止部8Gによりバイパスハウジング8B又は合流モジュール12に固定されている。そして、複数の細管8Cは、分岐モジュール11から合流モジュール12まで延びている。なお、層流化部8A及び複数の細管8Cのそれぞれの長さは、流れ方向FDにおける長さである。
【0051】
第一封止部8Eは、複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dを塞がないように、複数の細管8Cと、バイパスハウジング8B又は分岐モジュール11の複数の細管8Cが固定される部分との間を封止する。つまり、第一封止部8Eは、複数の細管8Cの間と、複数の細管8Cとバイパスハウジング8B又は分岐モジュール11の複数の細管8Cが固定される部分との間に、充填されている(
図4参照)。複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dは、上流側端面8Fから露出して、分岐モジュール11と連通されている。このため、バイパス管8に供給された液体Lは、複数の細管8Cのそれぞれの上流側端面8Fから、複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dに供給される。第一封止部8Eは、例えば、樹脂により形成される。第一封止部8Eに用いる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、紫外線硬化型樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0052】
第二封止部8Gは、複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dを塞がないように、複数の細管8Cと、バイパスハウジング8B又は合流モジュール12の複数の細管8Cが固定される部分との間を封止する。つまり、第二封止部8Gは、複数の細管8Cの間と、複数の細管8Cとバイパスハウジング8B又は合流モジュール12の複数の細管8Cが固定される部分との間に、充填されている(
図4参照)。複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dは、下流側端面8Hから露出して、合流モジュール12と連通されている。このため、複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dに供給された液体Lは、複数の細管8Cのそれぞれの下流側端面8Hから排出される。第二封止部8Gは、例えば、樹脂により形成される。第二封止部8Gに用いる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、紫外線硬化型樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0053】
ここで、複数の細管8Cのそれぞれを流れる液体Lのレイノルズ数Reは、次の式(1)により求めることができる。式(1)において、Vは、複数の細管8Cのそれぞれを流れる液体Lの流速(m/s)であり、Dは、複数の細管8Cのそれぞれの内径(m)であり、νは、液体Lの動粘度(m
2/s)であり、ρは、液体Lの密度(kg/m
3)であり、μは、液体Lの粘度(Pa・s)である。
【数1】
【0054】
式(1)に示すように、複数の細管8Cのそれぞれを流れる液体Lのレイノルズ数Reは、複数の細管8Cのそれぞれを流れる液体Lの流速V、複数の細管8Cのそれぞれの内径D、液体Lの動粘度ν、液体Lの密度ρ、及び液体Lの粘度μにより変わる。そこで、複数の細管8Cは、例えば、層流化部8Aでの液体Lのレイノルズ数が2300以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下となるように、これらのパラメータを設定してもよい。
【0055】
例えば、層流化部8Aでの液体Lの流れを層流化しやすくする観点から、複数の細管8Cのそれぞれの内径(直径)は、10mm以下、好ましくは5mm以下、更に好ましくは1mm以下であってもよい。一方、層流化部8Aの製造容易性の観点から、複数の細管8Cのそれぞれの内径(直径)は、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.1mm以上であってもよい。これらの観点から複数の細管8Cのそれぞれの内径(直径)は、0.01mm以上10mm以下、好ましくは0.05mm以上5mm以下、更に好ましくは0.1mm以上1mm以下であってもよい。
【0056】
ここで、複数の細管8Cのそれぞれの内径を小さくすると、層流化部8Aを流れる液体の流量が小さくなる。このため、層流化部8Aでの液体の流量を確保する観点から、層流化部8Aにおける細管8Cの本数は、5本以上、好ましくは50本以上、更に好ましくは100本以上、更に好ましくは500本以上であってもよい。一方、層流化部8Aの製造容易性の観点から、層流化部8Aにおける細管8Cの本数は、10万本以下、好ましくは27000本以下、更に好ましくは18000本以下、更に好ましくは9000本以下であってもよい。これらの観点から、層流化部8Aにおける細管8Cの本数は、5本以上10万本以下、好ましくは50本以上27000本以下、更に好ましくは100本以上18000本以下、更に好ましくは500本以上9000本以下であってもよい。
【0057】
層流化部8Aでの液体Lの圧力損失ΔPa(Pa)は、ハーゲン・ポアズイユの計算式である式(2)により求められる。式(2)において、Qは、層流化部8A(複数の細管8Cの全体)を流れる液体Lの流量(m
2/s)であり、μは、液体Lの粘度(Pa・s)であり、nは、複数の細管8Cの本数であり、Dは、複数の細管8Cのそれぞれの内径(m)であり、Lは、複数の細管8Cのそれぞれの長さ(m)である。
【数2】
【0058】
式(2)に示すように、層流化部8Aでの液体Lの圧力損失ΔPaは、層流化部8Aを流れる液体Lの流量Q、液体Lの粘度μ、複数の細管8Cの本数n、複数の細管8Cのそれぞれの内径D、複数の細管8Cのそれぞれの長さLにより変わる。そこで、複数の細管8Cは、例えば、層流化部8Aでの液体Lの圧力損失が10kPa以上1000kPa以下となるように、これらのパラメータを設定してもよい。
【0059】
例えば、層流化部での液体の圧力損失が過大とならない観点から、層流化部8Aにおける細管8Cの本数は、5本以上、好ましくは50本以上、更に好ましくは100本以上、更に好ましくは500本以上であってもよい。一方、層流化部8Aの製造容易性の観点から、層流化部8Aにおける細管8Cの本数は、10万本以下、好ましくは27000本以下、更に好ましくは18000本以下、更に好ましくは9000本以下であってもよい。これらの観点から、層流化部8Aにおける細管8Cの本数は、5本以上10万本以下、好ましくは50本以上27000本以下、更に好ましくは100本以上18000本以下、更に好ましくは500本以上9000本以下であってもよい。
【0060】
また、層流化部での液体の圧力損失が過大とならない観点から、複数の細管8Cのそれぞれの内径(直径)は、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.1mm以上であってもよい。一方、層流化部8Aの製造容易性の観点から、複数の細管8Cのそれぞれの内径(直径)は、10mm以下、好ましくは5mm以下、更に好ましくは1mm以下であってもよい。これらの観点から、複数の細管8Cのそれぞれの内径(直径)は、0.01mm以上10mm以下、好ましくは0.05mm以上5mm以下、更に好ましくは0.1mm以上1mm以下であってもよい。
【0061】
また、層流化部での液体Lの圧力損失が過大とならない観点から、複数の細管8Cのそれぞれの長さは、1000mm以下、好ましくは500mm以下、更に好ましくは100mm以下であってもよい。一方、層流化部8Aの製造容易性の観点から、複数の細管8Cのそれぞれの長さは、1mm以上、好ましくは5mm以上、更に好ましくは10mm以上であってもよい。これらの観点から、複数の細管8Cのそれぞれの長さは、1mm以上1000mm以下、好ましくは5mm以上500mm以下、更に好ましくは10mm以上100mm以下であってもよい。
【0062】
また、バイパス管8における液体Lの層流化は、層流化部8Aにより奏されるため、バイパス管8における層流化部8Aの占める割合が大きい方が、バイパス管8における液体Lの層流化が促進される。このような観点から、層流化部8Aの長さは、バイパス管8の長さの1%以上、好ましくは10%以上、更に好ましくは50%以上であってもよい。一方、層流化部8Aの製造容易性の観点から、層流化部8Aの長さは、バイパス管8の長さの100%以下、好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下であってもよい。これらの観点から、層流化部8Aの長さは、バイパス管8の長さの1%以上100%以下、好ましくは10%以上90%以下、更に好ましくは50%以上80%以下であってもよい。
【0063】
バルブ9は、モジュール経由管7に取り付けられて、モジュール経由管7とバイパス管8との間の液体Lの分配比率を調整する。バルブ9は、例えば、モジュール経由管7に供給される液体Lの流量が、バイパス管8に供給される液体Lの流量に比べて(遥かに)小さくなるように、モジュール経由管7とバイパス管8との間の液体Lの分配比率を調整する。例えば、1.0MΩ・cmの比抵抗値調整液体L2を生成する場合、モジュール経由管7とバイパス管8との間の液体Lの分配比率は、1:3920(モジュール経由管7側:バイパス管8側)程度となる。
【0064】
バルブ9は、例えば、上流側モジュール経由管71に取り付けられて、上流側モジュール経由管71の流路71Aの開度を調整することで、上流側モジュール経由管71を流れる液体Lの流量を調整する。なお、バルブ9は、下流側モジュール経由管72に取り付けられて、下流側モジュール経由管72の流路72Aの開度を調整することで、下流側モジュール経由管72を流れる調整ガス付加液体L1の流量を調整するものであってもよい。バルブ9としては、公知の様々なバルブを用いることができ、例えば、ニードルバルブを用いてもよい。
【0065】
分岐モジュール11は、液体供給管3、上流側モジュール経由管71、及びバイパス管8に接続されて、液体供給管3、上流側モジュール経由管71、及びバイパス管8を連通させる。分岐モジュール11は、液体供給管3に供給された液体Lを、上流側モジュール経由管71とバイパス管8とに分配する。分岐モジュール11は、液体供給管3の流路3A、上流側モジュール経由管71の流路71A、及び複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dに連通される流路11Aを有する。流路11Aは、例えば、三又に分かれており、それぞれの分岐先が、液体供給管3の流路3A、上流側モジュール経由管71の流路71A、及び複数の細管8Cのそれぞれの流路8D、のそれぞれに連通されている。
【0066】
合流モジュール12は、液体排出管4、下流側モジュール経由管72、及びバイパス管8に接続されて、液体排出管4、下流側モジュール経由管72、及びバイパス管8を連通させる。合流モジュール12は、下流側モジュール経由管72に供給された調整ガス付加液体L1とバイパス管8に供給された液体Lとを合流させて、調整ガス付加液体L1と液体Lとが混合された比抵抗値調整液体L2を液体排出管4に排出する。合流モジュール12は、液体排出管4の流路4A、下流側モジュール経由管72の流路72A、及び複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dに連通される流路12Aを有する。流路12Aは、例えば、三又に分かれており、それぞれの分岐先が、液体排出管4の流路4A、下流側モジュール経由管72の流路72A、及び複数の細管8Cのそれぞれの流路8Dに連通されている。
【0067】
次に、比抵抗値調整装置1により液体Lの比抵抗値を調整する方法について説明する。
【0068】
この方法では、液体供給管3に液体Lを供給するとともに、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAに調整ガスGを供給することで、液体Lの比抵抗値を調整する。
【0069】
具体的に説明すると、液体供給管3に液体Lを供給するとともに、ガス供給管5に調整ガスGを供給する。すると、液体供給管3に供給された液体Lは、分岐モジュール11において、上流側モジュール経由管71とバイパス管8とに分配される。上流側モジュール経由管71に分配された液体は、中空糸膜モジュール2の液相側領域LAに供給される。一方、ガス供給管5に供給された調整ガスGは、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAに供給される。気相側領域GAに供給された調整ガスGは、中空糸膜21を透過することにより、液相側領域LAに供給された液体Lに溶解される。これにより、液体Lに調整ガスGが溶解された調整ガス付加液体L1が生成される。このとき、調整ガス付加液体L1として、液体Lに調整ガスGが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体を生成することが好ましい。つまり、液体Lに調整ガスGが飽和状態で溶解されるように、調整ガスGの供給圧力、上流側モジュール経由管71に分配される液体Lの流量等を調整することが好ましい。飽和状態とは、完全な飽和状態だけでなく、飽和状態に近い状態も含む。飽和状態に近い状態とは、上流側モジュール経由管71とバイパス管8との間の液体Lの分配比率のみによって液体Lの比抵抗値を調整できる程度に、液体Lに調整ガスGが溶解されている状態をいう。
【0070】
そして、中空糸膜モジュール2の液相側領域LAから下流側モジュール経由管72に調整ガス付加液体L1が排出される。中空糸膜モジュール2の液相側領域LAから下流側モジュール経由管72に排出された調整ガス付加液体L1は、合流モジュール12において、バイパス管8に分配された液体Lと合流する。これにより、比抵抗値が調整された比抵抗値調整液体L2が生成される。そして、液体排出管4から、生成された比抵抗値調整液体L2が排出される。なお、バルブ6Aを開くことで、ガス排出管6から中空糸膜モジュール2の気相側領域GAの調整ガスG等を排出してもよい。
【0071】
このように、本実施形態の比抵抗値調整装置1では、バイパス管8が、モジュール経由管7よりも細い複数の細管8Cにより構成された層流化部8Aを有するため、バイパス管8での液体Lの流れを、層流化することができる。層流では、液体の圧力損失は、液体の流量に対して比例の関係となる。層流でなくても、乱流から層流に近づくほど、液体の圧力損失は、液体の流量に対して比例に近い関係となる。一方、モジュール経由管7に供給される液体Lの流量は、バイパス管8に供給される液体Lの流量に比べて小さい。このため、バイパス管8における液体Lの圧力損失と比べた場合、モジュール経由管7及び中空糸膜モジュール2を流れる液体Lが乱流であるか否かに関わらず、モジュール経由管7及び中空糸膜モジュール2における液体Lの圧力損失は、液体Lの流量に対して比例的な関係とみなすことができる。つまり、バイパス管8における液体Lの圧力損失の傾向が、モジュール経由管7及び中空糸膜モジュール2における液体Lの圧力損失の傾向に近くなる。このため、比抵抗値調整装置1に供給される液体Lの流量が変動しても、モジュール経由管7とバイパス管8との間の液体Lの分配比率が変動するのを抑制することができ、比抵抗値調整液体の比抵抗値の変動を抑制することができる。特に、比抵抗値調整装置1に供給する液体Lが小流量になっても、モジュール経由管7に対するバイパス管8の液体Lの分配比率が上昇するのを抑制できるため、比抵抗値調整液体L2の比抵抗値が上昇するのを抑制することができる。これにより、簡易な構成で、供給される液体Lの流量が変動しても比抵抗値調整液体L2の比抵抗値が変動するのを抑制することができる。
【0072】
また、比抵抗値調整装置1では、層流化部8Aが、バイパス管8に液体Lとして超純水が規定流量で供給された際に、層流化部8Aにおいて液体Lが層流となるように設定されていることで、層流化部8Aを容易に設計することができるとともに、供給される液体Lの流量が変動しても比抵抗値調整液体L2の比抵抗値が変動するのを更に抑制することができる。
【0073】
また、比抵抗値調整装置1では、層流化部8Aが、バイパス管8に液体Lとして超純水が規定流量で供給された際に、層流化部8Aにおいてレイノルズ数が2300以下となるように設定されていることで、層流化部8Aを容易に設計することができるとともに、供給される液体Lの流量が変動しても比抵抗値調整液体L2の比抵抗値が変動するのを更に抑制することができる。
【0074】
また、比抵抗値調整装置1では、層流化部8Aにおける細管8Cの本数が5本以上、好ましくは50本以上、更に好ましくは100本以上、更に好ましくは500本以上であることで、層流化部での液体の流量を確保しつつ、層流化部での液体の流れを層流化しやすくなる。
【0075】
また、比抵抗値調整装置1では、複数の細管8Cのそれぞれの内径が0.01mm以上10mm以下、好ましくは0.05mm以上5mm以下、更に好ましくは0.1mm以上1mm以下であることで、層流化部8Aでの液体Lの圧力損失が過大又は過小となるのを抑制しつつ、層流化部8Aでの液体の流れを層流化しやすくなる。
【0076】
また、比抵抗値調整装置1では、複数の細管8Cのそれぞれの長さが1mm以上1000mm以下、好ましくは5mm以上500mm以下、更に好ましくは10mm以上100mm以下であることで、層流化部8Aでの液体Lの圧力損失が過大又は過小となるのを抑制することができる。
【0077】
また、比抵抗値調整装置1では、層流化部8Aの長さが、バイパス管8の長さの1%以上、好ましくは10%以上、更に好ましくは50%以上であることで、バイパス管8での液体の流れを層流化しやすくなる。
【0078】
また、比抵抗値調整装置1では、分岐モジュール11及び合流モジュール12を備えることで、液体供給管3から上流側モジュール経由管71及びバイパス管8への分岐構造、及び、下流側モジュール経由管72及びバイパス管8から液体排出管4への合流構造を、容易に実現することができる。特に、バイパス管8は、複数の細管8Cで構成される層流化部8Aを有するため、分岐モジュール11及び合流モジュール12を介することで、バイパス管8と液体供給管3及び液体排出管4との接続を容易に行うことができる。しかも、層流化部8Aが分岐モジュール11から合流モジュール12まで延びていることで、層流化部8Aを容易に形成することができるとともに、層流化部8Aでの液体Lの流れを層流化しやすくなる。
【0079】
また、比抵抗値調整装置1では、ガス供給管5及びガス排出管6を備えることで、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAに対する調整ガスGの供給及び排出を容易に行うことができる。
【0080】
また、比抵抗値調整装置1では、バルブ9を備えることで、モジュール経由管7とバイパス管8との間の液体Lの流分配比率を容易に調整することができる。しかも、バルブ9がモジュール経由管7に取り付けられているため、バルブ9によりバイパス管8の層流化が阻害されるのを抑制することができる。
【0081】
本実施形態の比抵抗値調整方法では、上記の比抵抗値調整装置1において、液体供給管3に液体Lを供給するとともに、中空糸膜モジュール2の気相側領域GAに調整ガスGを供給することにより、液体Lの比抵抗値を調整する。これにより、簡易な構成で、供給される液体Lの流量が変動しても比抵抗値調整液体L2の比抵抗値が変動するのを抑制することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0083】
例えば、上記実施形態では、比抵抗値調整装置1は、ガス供給管5及びガス排出管6を備えるものとして説明した。しかしながら、調整ガスGを中空糸膜モジュール2の気相側領域GAに供給することができれば、比抵抗値調整装置1は、ガス供給管5及びガス排出管6の少なくとも一方を備えないものとしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、比抵抗値調整装置1は、バルブ9を備えるものとして説明した。しかしながら、バルブ9以外の手段で、モジュール経由管7とバイパス管8との間の液体Lの分配比率を調整することができれば、比抵抗値調整装置1は、バルブ9を備えないものとしてもよい。また、モジュール経由管7とバイパス管8との間の液体Lの分配比率を調整しない場合も、比抵抗値調整装置1は、バルブ9を備えないものとしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、比抵抗値調整装置1は、分岐モジュール11及び合流モジュール12を備えるものとして説明した。しかしながら、分岐モジュール11及び合流モジュール12とは別の手段で、液体供給管3に供給された液体Lを上流側モジュール経由管71とバイパス管8とに分配することができるとともに、下流側モジュール経由管72に供給された調整ガス付加液体L1とバイパス管8に供給された液体Lとを合流させることが
できれば、比抵抗値調整装置1は、分岐モジュール11及び合流モジュール12の少なくとも一方を備えないものとしてもよい。この場合、液体供給管3と上流側モジュール経由管71及びバイパス管8とを直接接続するとともに、液体排出管4と下流側モジュール経由管72及びバイパス管8とを直接接続してもよい。
【実施例】
【0086】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
実施例1の比抵抗値調整装置を作製した。実施例1の比抵抗値調整装置は、以下を除き、
図1、
図3及び
図4に示す比抵抗値調整装置1と同様とした。実施例1の比抵抗値調整装置では、DIC株式会社製のSEPAREL PF-001L-NAを中空糸膜モジュールとし、外径が0.225mm、内径が0.175mm、長さが110mmの細管を9000本束ねたものを、複数の細管で構成される層流化層とした。また、実施例1の比抵抗値調整装置では、液体供給管の内径(直径)を10mmとし、液体排出管の内径(直径)を10mmとし、モジュール経由管(上流側モジュール経由管及び下流側モジュール経由管)の内径(直径)を4mmとした。
【0088】
(比較例1)
比較例1の比抵抗値調整装置を作製した。比較例1の比抵抗値調整装置は、外径が8mm、内径が6mm、長さが110mmの一本のチューブをバイパス管とした他は、実施例1の比抵抗値調整装置と同様とした。
【0089】
(評価)
実施例1の比抵抗値調整装置及び比較例1の比抵抗値調整装置のそれぞれを用いて、以下の計測を行った。室温(25℃)の環境において、液体供給管に25℃の液体を8Lの流量で供給するとともに、ガス供給管に25℃、0.1MPaの調整ガスを供給した。このとき、比抵抗値調整液体が所定の比抵抗値となるように、バルブの開閉調整によりモジュール経由管とバイパス管との液体の分配比率を調整した。液体としては、超純水を用いた。調整ガスとしては、二酸化炭素を用いた。所定の比抵抗値としては、0.1MΩ・cm、0.4MΩ・cm、0.6MΩ・cm、0.8MΩ・cm、及び1.0MΩ・cmの五条件とした。そして、各比抵抗値のバルブ状態において、液体供給管に供給する液体の流量を、5分毎に、16L/mm、12L/mm、8L/mm、4L/mm、及び1L/mmに順次変化させ、比抵抗値調整液体の比抵抗値を計測した。また、比抵抗値調整液体が1.0MΩ・cmとなる条件において、バイパス管での液体の圧力損失を計測した。実施例1の計測結果を
図5に示し、比較例1の計測結果を
図6に示す。
【0090】
図6に示すように、比較例1の比抵抗値調整装置では、8Lの流量での比抵抗値調整液体の比抵抗値が0.1MΩ・cmとなる条件では、液体の流量変動に伴う比抵抗値の変動は少なかった。しかしながら、それ以外の流量条件では、液体の流量変動に伴う比抵抗値の変動は大きくなった。特に、液体が低流量になるほど、比抵抗値の変動は大きくなった。
【0091】
これに対し、
図5に示すように、実施例1の比抵抗値調整装置では、何れの流量条件でも、液体の流量変動に伴う比抵抗値の変動は少なく、液体が低流量になっても、比抵抗値の変動は大きくならなかった。
【0092】
比較例1の比抵抗値調整装置を用いて、以下の計測を行った。室温(25℃)の環境において、液体供給管に25℃の液体を16Lの流量で供給するとともに、ガス供給管に25℃、0.1MPaの調整ガスを供給した。このとき、バイパス管における液体の圧力損失が0.09Paとなるように、バイパス管の内径及び長さを調整した。また、室温(25℃)の環境において、液体供給管に25℃の液体を8Lの流量で供給するとともに、ガス供給管に25℃、0.1MPaの調整ガスを供給した。このとき、比抵抗値調整液体の比抵抗値が1.0MΩ・cmとなるように、バルブの開閉調整によりモジュール経由管とバイパス管との液体の分配比率を調整した。液体としては、超純水を用いた。調整ガスとしては、二酸化炭素を用いた。そして、液体供給管に供給する液体の流量を、16L/mmから0.7L/mmまで変化させ、モジュール経由管及びバイパス管での液体の圧力損失を計測した。モジュール経由管及びバイパス管での液体の圧力損失は、上流側モジュール経由管から、中空糸膜モジュールを経由して、下流側モジュール経由管に至る、液体の圧力損失とした。計測結果を
図7に示す。
図7では、バイパス管において液体が層流となる場合のバイパス管での液体の圧力損失を、参考として図示した。
【0093】
図7に示すように、比較例1の比抵抗値調整装置では、バイパス管において液体が乱流となっているため、バイパス管における液体の圧力損失は、液体の流量に対して指数関数的な関係となっている。一方、モジュール経由管に供給される液体の流量は、バイパス管に供給される液体の流量に比べて小さい。このため、バイパス管における液体の圧力損失と比べた場合、モジュール経由管及び中空糸膜モジュールを流れる液体が乱流であるか否かに関わらず、モジュール経由管及び中空糸膜モジュールにおける液体の圧力損失は、液体の流量に対して比例的な関係とみなすことができる。つまり、バイパス管における液体とモジュール経由管及び中空糸膜モジュールにおける液体とでは、その圧力損失の傾向が大きく異なる。
【0094】
例えば、バイパス管に16L/minの流量の液体が供給された場合は、バイパス管での液体の流れが乱流及び層流の何れであっても、バイパス管での液体の圧力損失は、0.09Pa程度となる。しかしながら、バイパス管に16L/minよりも小さい7L/minの流量の液体が供給された場合は、液体の流れが層流となるバイパス管での液体の圧力損失が0.04Pa程度となるのに対して、液体の流れが乱流となるバイパス管での液体の圧力損失が0.015Pa程度となる。つまり、液体の流れが層流となるバイパス管に比べて、液体の流れが乱流となるバイパス管の方が、バイパス管での液体の圧力損失が小さくなる。その結果、モジュール経由管に対するバイパス管の液体の分配比率が大きくなる。なお、バイパス管に16L/minよりも大きい流量の液体が供給された場合は、逆の傾向となる。
【0095】
このため、
図6に示すように、比較例1の比抵抗値調整装置では、供給される液体の流量変動に伴い、モジュール経由管とバイパス管との間の液体の分配比率が変動して(崩れて)しまい、比抵抗値調整液体の比抵抗値が変動したものと考えられる。特に、比抵抗値調整装置に供給する液体が小流量になると、モジュール経由管に対するバイパス管の液体の分配比率が上昇して、比抵抗値調整液体の比抵抗値が上昇したものと考えられる。
【0096】
これに対して、実施例1の比抵抗値調整装置では、比較例1の比抵抗値調整装置に比べてバイパス管での液体の流れが層流化されているため、バイパス管における液体の圧力損失は、液体の流量に対して比例的な関係となる。つまり、バイパス管における液体の圧力損失の傾向が、モジュール経由管及び中空糸膜モジュールにおける液体の圧力損失の傾向に近くなる。
【0097】
このため、
図5に示すように、実施例1の比抵抗値調整装置では、供給される液体の流量が変動しても、モジュール経由管とバイパス管との間の液体の分配比率が変動するのが抑制され、比抵抗値調整液体の比抵抗値の変動が抑制されたものと考えられる。特に、比抵抗値調整装置に供給する液体が小流量になっても、モジュール経由管に対するバイパス管の液体の分配比率の上昇が抑制されたため、比抵抗値調整液体の比抵抗値の上昇が抑制されたと考えられる。
【符号の説明】
【0098】
1…比抵抗値調整装置、2…中空糸膜モジュール、3…液体供給管、3A…流路、4…液体排出管、4A…流路、5…ガス供給管、6…ガス排出管、6A…バルブ、7…モジュール経由管、8…バイパス管、8A…層流化部、8B…バイパスハウジング、8C…細管、8D…流路、8E…第一封止部、8F…上流側端面、8G…第二封止部、8H…下流側端面、9…バルブ、11…分岐モジュール、11A…流路、12…合流モジュール、12A…流路、21…中空糸膜、22…ハウジング、22A…液体供給口、22B…液体排出口、22C…ガス供給口、22D…ガス排出口、71…上流側モジュール経由管、71A…流路、72…下流側モジュール経由管、72A…流路、FD…流れ方向、G…調整ガス、GA…気相側領域、L…液体、L1…調整ガス付加液体、L2…比抵抗値調整液体、LA…液相側領域。