(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】リキッドインキ用バインダー樹脂、該バインダー樹脂を含むリキッドインキ、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20241224BHJP
C09D 11/107 20140101ALI20241224BHJP
C08F 212/08 20060101ALI20241224BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
C09D11/102
C09D11/107
C08F212/08
C08G18/65 023
(21)【出願番号】P 2024511964
(86)(22)【出願日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2023027124
(87)【国際公開番号】W WO2024034382
(87)【国際公開日】2024-02-15
【審査請求日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2022126666
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆晃
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】若原 圭佑
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0308321(US,A1)
【文献】特開2022-019058(JP,A)
【文献】特表2013-503954(JP,A)
【文献】特表2021-534308(JP,A)
【文献】特開2023-070129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リキッドインキ用バインダー樹脂であって、
ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際のトルートン比が4.0以上9.0以下であり、
前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際の伸長粘度が3.0Pa・s以上8.0Pa・s以下であ
り、
前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際のせん断粘度が0.45Pa・s以上0.95Pa・s以下であり、
前記伸長粘度が、伸長速度が4000s
-1
における伸長粘度であり、
前記せん断粘度が、せん断速度4000s
-1
におけるせん断粘度であり
前記トルートン比が、前記伸長粘度と前記せん断粘度の比(伸長粘度/せん断粘度)であることを特徴とするリキッドインキ用バインダー樹脂。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂を、リキッドインキの固形分全量に対して8~60質量%含有する請求項1に記載のリキッドインキ用バインダー樹脂。
【請求項3】
前記アクリル樹脂を、リキッドインキの固形分全量に対して8~60質量%含有する請求項1又は請求項2に記載のリキッドインキ用バインダー樹脂。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のリキッドインキ用バインダー樹脂を有するリキッドインキ。
【請求項5】
基材上に、請求項
4に記載のリキッドインキを印刷して形成された印刷層を有する印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リキッドインキ用バインダー樹脂、該バインダー樹脂を含むリキッドインキ、及び印刷物に関する。
本願は、2022年8月8日に、日本に出願された特願2022-126666号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、軟包装用グラビアインキやフレキソインキとして使用可能なリキッド印刷インキ用バインダー樹脂に関する。グラビアインキ、フレキソインキは、被印刷体に美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられている。そのため、グラビア、フレキソ印刷する際には、美粧性を高めるためのハイライト転移性や版かぶり性、機能性を付与させる目的で接着性、脱墨性、耐薬品性が求められている。これまでに特許文献1、特許文献2のようなインキが開発されてきたが、要求性能を全て満たすには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-014487号公報
【文献】特許第6066677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、美粧性を高めるためのハイライト転移性や版かぶり性、機能性を付与させる目的で接着性、脱墨性、耐薬品性を向上させたリキッドインキに用いる、リキッドインキ用バインダー樹脂、該バインダー樹脂を含むリキッドインキ、及び印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の固形分範囲において、特定のトルートン比を持つバインダー樹脂をリキッドインキに含有させることが課題解決に有効であることを見出した。
【0006】
本開示の内容は、以下の実施態様を含む。
[1] リキッドインキ用バインダー樹脂であって、
ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際のトルートン比が3.0~10.0であることを特徴とするリキッドインキ用バインダー樹脂。
[2] 前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際の伸長粘度が3.0Pa・s以上8.0Pa・s以下である[1]に記載のリキッドインキ用バインダー樹脂。
[3] 前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際のせん断粘度が0.45Pa・s以上0.95Pa・s以下である[1]又は[2]に記載のリキッドインキ用バインダー樹脂。
[4] 前記ポリウレタン樹脂を、リキッドインキの固形分全量に対して8~60質量%含有する[1]~[3]の何れかに記載のリキッドインキ用バインダー樹脂。
[5] 前記アクリル樹脂を、リキッドインキの固形分全量に対して8~60質量%含有する[1]~[4]の何れかに記載のリキッドインキ用バインダー樹脂。
[6] [1]~[5]の何れかに記載リキッドインキ用バインダー樹脂を有するリキッドインキ。
[7] 基材上に、[6]に記載のリキッドインキを印刷して形成された印刷層を有する印刷物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、美粧性を高めるためのハイライト転移性や版かぶり性、機能性を付与させる目的で接着性、脱墨性、耐薬品性を向上させたリキッドインキに用いる、リキッドインキ用バインダー樹脂、該バインダー樹脂を含むリキッドインキ、及び印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(リキッドインキ用バインダー樹脂)
本発明の一実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂(本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂又は本実施形態のバインダー樹脂をいうことがある。)は、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際のトルートン比が3.0以上10.0以下である。
【0009】
前記リキッドインキ用バインダー樹脂が、後述の伸長粘度とせん断粘度の比である。その評価方法は、実施例で詳細に説明する。前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際のトルートン比が4.0以上9.0以下であることが好ましく、5.0以上8.0以下であることがより好ましい。前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際のトルートン比が3.0以上10.0以下であることによって、前記リキッドインキ用バインダー樹脂を用いたキッドインキは、版かぶり性、ハイライト転移性のため、好ましい。
【0010】
前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際の伸長粘度が3.0Pa・s以上8.0Pa・s以下であることが好ましく、4.0以上7.0以下であることがさらに好ましい。
【0011】
前記リキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際のせん断粘度が0.45Pa・s以上0.95Pa・s以下であることがこのましく、0.5以上0.9以下であることがさらに好ましい。
【0012】
<ポリウレタン樹脂>
本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂におけるポリウレタン樹脂の含有量は、例えば、リキッドインキの固形分全量に対して8~60質量%含有することができる。例えば、グラビア印刷に使用するグラビアインキ用途の場合、グラビアインキの被印刷体への接着性を十分にする観点からインキの総質量に対して固形分換算にて5質量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から25質量%以下が好ましい。また、フレキソ印刷に使用するフレキソインキ用途の場合、フレキソインキの総質量に対して固形分換算にて5質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂に用いるポリウレタン樹脂の数平均分子量は、10,000~100,000の範囲内とすることが好ましい。ポリウレタン樹脂の数平均分子量が10,000未満の場合には、得られるインキの耐ブロッキング性、ラミネート強度や耐薬品性などが低くなる傾向がある。また、ポリウレタン樹脂の数平均分子量が100,000を超える場合には、得られるインキの粘度が高くなり、所定の印刷濃度が得られない傾向がある。
【0014】
本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂で使用するポリウレタン樹脂は、その反応原料として、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールを用いる事が好ましい。
【0015】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が1000~7000ものであることが好ましい。前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が1000より小さいと、ポリウレタン樹脂の皮膜が硬くなる傾向にありポリエステルフィルムへの接着性が低下し易い。数平均分子量が7000より大きい場合、ポリウレタン樹脂の皮膜が脆弱になる傾向にあり皮膜の耐ブロッキング性が低下し易い。
一方で、ポリエーテルポリオールはポリウレタン樹脂100質量部に対して1~50質量部あることが好ましい。ポリエーテルポリオールが1質量部未満であると、該ポリポリウレタン樹脂のケトン、エステル、アルコール系溶剤への溶解性が低下するのに加え、特に高機能バリアーフィルム上での密着性が低下する傾向となる。また皮膜の該溶剤への再溶解性が低下し、印刷物の調子再現性が低下する傾向となる。また50質量部を超えると、皮膜が過剰に柔らかくなり、耐ブロッキングが劣る傾向と成り易い。
【0016】
なお、前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgelG5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgelG4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgelG3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgelG2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0017】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0018】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有する化合物と多塩基酸とを公知のエステル化反応により得られるものを用いることができる。
【0019】
前記水酸基を2個以上有する化合物は鎖伸長剤として用いるものであり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のグリコール;2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3,5-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐構造を有するグリコール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオールなどの数平均分子量が50~400の範囲の化合物を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記多塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、これらの酸の無水物等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
また、前記ポリエーテルポリオールは、その数平均分子量が100~4000のものであることが好ましい。詳細は後述するが、ポリエーテルポリオールとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど公知汎用のものでよく、中ではポリエチレングリコールが好ましい。ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールを上記の範囲で含有することにより、特に基材フィルム上での密着性が大幅に向上し、結果として耐ブロッキング性、ラミネート強度が優れるようになる。
【0022】
同様に、前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が100より小さいと、ポリウレタン樹脂の皮膜が硬くなる傾向にありポリエステルフィルムへの接着性が低下し易い。数平均分子量が4000より大きい場合、ポリウレタン樹脂の皮膜が脆弱になる傾向にあり皮膜の耐ブロッキング性が低下し易い。尚、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、前記ポリエステルポリオールと同様にゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、同条件で測定した。
【0023】
本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂におけるポリウレタン樹脂に使用されるジイソシアネート化合物としては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の化合物が挙げられる。これらの公知の化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。これらの具体例としては、例えば、1,5―ナフチレンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’―ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3―フェニレンジイソシアネート、1,4―フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン―1,4―ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン―1,4―ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート;5-イソシアナト-1-(イソシアノメチル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン;)、ジシクロヘキシルメタン―4,4’―ジイソシアネート、1,3―ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス-クロロメチル-ジフェニルメタン-ジイソシアネート、2,6-ジイソシアネート-ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等があげられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂におけるポリウレタン樹脂に使用される鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン―4,4’―ジアミンなどの他、2―ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2―ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2―ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2―ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
更に、本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂に使用されるポリウレタン樹脂のアミン価は、10.0mgKOH/g以下であることが好ましい。アミン価が10.0mgKOH/gを上回ると耐ブロッキング性が劣る傾向と成り易いのに加え、硬化剤添加後の2液安定性が低下する。耐ブロッキング性、2液安定性を良好に保ちつつ、版かぶり性、接着性及び押出しラミネート強度を保持できる観点から1.0~5.0mgKOH/gの範囲がより好ましく、更に好ましくは1.0~3.5mgKOH/gの範囲である。
【0026】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂としては各種の(メタ)アクリレートモノマーと、必要に応じて、その他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させて得られる。
【0027】
前記アクリル樹脂を構成するモノマーは特に限定されず、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2-アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルモノマーを使用することができる。
尚、前記「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートのいずれか一方または両方を指し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルのいずれか一方または両方を指す。
【0028】
前記重合性不飽和基含有化合物としては、前記(メタ)アクリルモノマーの他に、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルスチレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン等のビニルモノマーを使用することもできる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0029】
また、酸価を有するアクリル樹脂(A1)及び(A2)は、カルボキシル基及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を導入することを目的として、カルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで得ることができる。前記カルボキシレート基は、カルボキシル基が塩基性化合物によって中和された基である。前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート等が挙げられる。前記アクリル樹脂(A1)、及び(A2)は、例えば、重合開始剤の存在下、60℃~150℃の温度領域で各種モノマーを重合させることにより製造することができる。重合の方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、重合様式は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。
【0030】
[溶剤(1)]
本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂に用いる溶剤(1)としては、水や水を含む水系溶剤、有機溶剤などが挙げられる。水系溶剤としては、例えば、エチルアルコール水溶液、イソプロピルアルコール水溶液等のアルコール水溶液、アンモニアの水溶液などが挙げられる。本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂に用いる溶剤は、有機溶剤であることが好ましい。本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂に用いる溶剤(1)は、後述のリキッドインキに用いる溶剤(2)と同じでもことなっても良い。
【0031】
<有機溶剤>
前記有機溶剤としては特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エチルアルコール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
【0032】
本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂の固形分が、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂の、固形分30%、30℃で測定した際のトルートン比を測定するために用いるリキッドインキ用バインダー樹脂は、固形分30%である。
【0033】
(リキッドインキ)
本発明の一実施形態のリキッドインキ(本実施形態のリキッドインキをいうことがある)は、前述の本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂を含む。
<その他成分>
本実施形態のリキッドインキはさらに着色剤または助剤等を含んでいてもよい。
【0034】
本実施形態のリキッドインキに使用される着色剤としては、一般のインキ、塗料、及び記録剤などに使用されている無機顔料、有機顔料または染料を挙げることができる。有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
【0035】
前記顔料の合計含有率は、本実施形態のリキッドインキの濃度、着色力を確保する観点から、本実施形態のリキッドインキの総量中、好ましくは1質量%以上であり、好ましくは60質量%以下である。
【0036】
前記助剤としては、耐摩擦性、滑り性等を付与するためのパラフィン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、カルナバワックス等のワックス;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド化合物;印刷時の発泡を抑制するためのシリコン系、非シリコン系消泡剤;分散剤等を適宜使用することもできる。前記分散剤としては、ノニオン系分散剤が好ましい。
【0037】
前記分散剤の酸価は、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましく、20mgKOH/g以下がさらに好ましい。また例えば1mgKOH/g以上、さらには3mgKOH/g以上であってもよい。
【0038】
前記分散剤の酸価は、前記酸性添加物の酸価よりも小さいことが好ましい。前記酸性添加物の酸価と前記分散剤の酸価との差は、例えば1mgKOH/g以上が好ましく、3mgKOH/g以上がより好ましい。また30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。
【0039】
前記分散剤の含有量は、前記着色剤100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がよりに好ましい。また、前記分散剤の含有量は、前記着色剤100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、75質量部以下がより好ましく、70質量部以下がより好ましく、65質量部以下がより好ましく、60質量部以下がより好ましい。
【0040】
また上記以外にも必要に応じて水、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、帯電防止剤、粘度調整剤、金属キレート、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤も使用できる。前記リキッドインキの粘度は、離合社製ザーンカップ#3を使用して25℃において測定した数値として、6秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、13秒以上がさらに好ましい。また25秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましく、18秒以下がさらに好ましい。
【0041】
[溶剤(2)]
本実施形態のリキッドインキに用いる溶剤(2)としては、水や水を含む水系溶剤、有機溶剤などが挙げられる。水系溶剤としては、例えば、エチルアルコール水溶液、イソプロピルアルコール水溶液等のアルコール水溶液、アンモニアの水溶液などが挙げられる。本実施形態のリキッドインキに用いる溶剤(2)は、有機溶剤であることが好ましい。 本実施形態のリキッドインキに用いる溶剤(2)は、前述の本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂に用いる溶剤(1)と同じでも、異なっても良い。
本実施形態のリキッドインキに用いる溶剤(2)は、使用するリキッドインキ用バインダー樹脂に含まれている溶剤(1)及び添加した溶剤(3)を含んでも良い。溶剤(3)が前述の本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂に用いる溶剤(1)と同じでも、異なっても良い。
【0042】
<有機溶剤>
前記有機溶剤としては特に制限はないが、本実施形態のリキッドインキ用バインダー樹脂に用いる溶剤(1)に説明したものと同じである。
本実施形態のリキッドインキに用いる溶剤(2)としては、エステル系有機溶剤が挙げあげられる。エステル系有機溶剤としては易蒸発性に起因する本実施形態のリキッドインキの版乾きを防ぐ観点から炭素原子数5以上のエステル系有機溶剤を含有することがより好ましい。炭素原子数5以上のエステル系有機溶剤としては限定されないが、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチルがさらに好ましく、酢酸ノルマルプロピルが特に好ましい。
【0043】
本実施形態のリキッドインキに対するエステル系有機溶剤の含有量としては1%以上が好ましく、3%以上が好ましく、5%以上が好ましく7%以上が好ましく、10%以上が好ましく、12%以上が好ましく、15%以上が好ましく、18%以上が好ましく、20%以上が好ましい。また35%以下が好ましく、32%以下が好ましく、30%以下が好ましく、28%以下が好ましく、25%以下が好ましく23%以下が好ましい。
【0044】
本実施形態のリキッドインキに対するエステル系有機溶剤の含有量としては1~35%が好ましく、3~35%が好ましく、5~32%が好ましく、7~32%が好ましく、10~30%が好ましく、12~30%が好ましく、15~28%が好ましく、18~28%が好ましく、20~25%が好ましく、20~23%が好ましい。
【0045】
本実施形態のリキッドインキをグラビアインキ用途として使用する場合、芳香族炭化水素系有機溶剤を含有せず、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした際の比蒸発速度が100以下であるアルコールを含有することができる。比蒸発速度が100以下であるアルコールを含有する事で、網点面積10%以下のハイライト転移性の維持、及びハイライト向上が保持できる。そのメカニズムは以下の2点が挙げられる。
(1)本実施形態のリキッドインキが基材に転移後、半分の本実施形態のリキッドインキがグラビア版のセル内に残る。
(2)その残った本実施形態のリキッドインキは再びインキパン内の本実施形態のリキッドインキに接するまで含有する溶剤が揮発し、半乾き状態になる。更に蒸発速度が速い溶剤から揮発する為、揮発速度が遅い溶剤がインキパン内に残る。
(3)この際に、樹脂溶解性が高い溶剤が残っていると、その半乾き組成物が再び本実施形態のリキッドインキに接した際に再溶解し、セル内で本実施形態のリキッドインキが固まることを防止する。
酢酸ブチルの蒸発速度を100とした際の比蒸発速度が100を超える汎用的なアルコールでは揮発速度が速いため、上記の様なメカニズムは機能する事が難しい傾向にある。第二に、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした際の比蒸発速度が100以下であるアルコールは、アルコール1分子内に占める水酸基(アルコール基)の比率が低い事から、ポリウレタン樹脂の溶解性を高める傾向にある。
尚、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロピルアルコール、ノルマルプロパノールなどを使用し、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しない事がより好ましい。
中でもポリウレタン樹脂、硝化綿への溶解性の観点から、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/酢酸ノルマルプロピル/メチルシクロヘキサンの混合液がより好ましい。また、乾燥調整のために組成物全量の10質量%未満であればグリコールエーテル類を添加する事も出来る。
【0046】
本実施形態のリキッドインキは、例えば、グラビア印刷又はフレキソ印刷用途として用いることができる。
【0047】
本実施形態のリキッドインキは、グラビア印刷又はフレキソ印刷用途として用いる場合、グラビア又はフレキソインキの製造に一般的に使用されているアイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造することができる。
【0048】
[調製方法]
本実施形態のリキッドインキを調製する際、均一性の観点から、予め前記バインダー樹脂の少なくとも一部と、前記着色剤と、前記酸性添加物の少なくとも一部と、前記有機溶剤の少なくとも一部を混合して、予備組成物(練肉ベースインキ)を調製してもよい。
【0049】
(基材への印刷)
本実施形態のリキッドインキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、布、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものである。本実施形態のリキッドインキは、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。一方で、本実施形態のリキッドインキは、版を使用せずインクジェットノズルからインキを吐出するインクジェット方式向けに使用することもできるが、あまり好ましくない。即ち、インクジェットインキの場合、ノズルから吐出したインク滴が、直接基材に密着し印刷物を形成するものである。インクジェットインキに対し、本実施形態のリキッドインキは、リキッドインキを一旦印刷版又は印刷パターンに密着・転写した後、インキのみを再度基材に密着させ、必要に応じて乾燥させ印刷物とするものである。
【0050】
本実施形態のリキッドインキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成されるリキッドインキの膜厚は、例えば10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0051】
また本実施形態のリキッドインキは酸性添加物を含有しており、使用した機材は使用後すぐによく洗浄することが好ましい。洗浄剤としてはリキッドインキの洗浄用に一般的に使用される洗浄剤を使用することができる。
【0052】
(印刷物)
本実施形態のリキッドインキを基材Aの表面又は表面上に印刷することで皮膜(印刷層)を有する印刷物を得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
以下に実施例により具体的に説明する。
【0054】
「リキッドインキ用バインダー樹脂の合成」
(実施例1)
「アクリル樹脂1の合成」
温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた反応器に、スチレン70質量部を仕込み、窒素雰囲気中で90℃に昇温した後、シクロヘキシルメタクリレート30質量部、メチルメタクリレート20質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート20.0質量部、2,2’-アゾビス(2- メチルブチロニトリル)(以下、「ABN-E」と略記する。)1.0質量部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃に2時間保持した後、酢酸エチル30質量部、およびイソプロピルアルコール30質量部を1時間で滴下した。次いで、90℃に12時間保持した後、酢酸エチル、イソプロピルアルコールを添加することで、アクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂溶液の樹脂固形分濃度30.0質量%、樹脂固形分のMwは27,000であった。得られたアクリル樹脂溶液を、本実施例のアクリル樹脂1(固形分30.0質量%)として、下記の方法で、伸長粘度、せん断粘度、トルートン比を評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例2)
「ウレタン樹脂1の合成」
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,12―ドデカン二酸、アジピン酸からなるポリエステルポリオール100.0部(水酸基価:80.0mgKOH/g)とイソホロンジイソシアネート24.0部を仕込、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.50質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル61.1部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン7.0部、ジ-n-ブチルアミン0.30部、酢酸エチル108.0部およびイソプロピルアルコール112.8部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間撹拌反応させて、ウレタン樹脂溶液を得た。得られたウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度30.0質量%、樹脂固形分のMwは30,000であった。得られたウレタン樹脂溶液を、本実施例のウレタン樹脂1(固形分30.0質量%)として、下記の方法で、伸長粘度、せん断粘度、トルートン比を評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
(実施例3)
「ウレタン樹脂2の合成」
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリエチレングリコール(水酸基価:56.1mgKOH/g)、セバシン酸、およびアジピン酸からなるポリエステルポリオール100.0部(水酸基価:50.0mgKOH/g)とイソホロンジイソシアネート4.0部、ヘキサメチレンジイソシアネート5.0部、及びトリレンジイソシアネート3.0部を仕込、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率1.50質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル61.1部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン2.9部、ジ-n-ブチルアミン0.10部、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール0.30部、酢酸エチル108.0部およびイソプロピルアルコール112.8部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間撹拌反応させて、ウレタン樹脂溶液を得た。得られたウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度30.0質量%、樹脂固形分のMwは54,000であった。得られたウレタン樹脂溶液を、本実施例のウレタン樹脂2(固形分30.0質量%)として、下記の方法で、伸長粘度、せん断粘度、トルートン比を評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
(実施例4)
「ウレタン樹脂3の合成」
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、1,9-ノナンジオール、アジピン酸からなるポリエステルポリオール100.0部(水酸基価:70.0mgKOH/g)とイソホロンジイソシアネート18.5部を仕込、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率1.50質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル61.1部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン2.1部、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール1.0部、ジ-n-ブチルアミン0.30部、酢酸エチル108.0部およびイソプロピルアルコール112.8部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間撹拌反応させて、ウレタン樹脂溶液を得た。得られたウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度30.0質量%、樹脂固形分のMwは73,000であった。得られたウレタン樹脂溶液を、本実施例のウレタン樹脂3(固形分30.0質量%)として下記の方法で、伸長粘度、せん断粘度、トルートン比を評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例5)
「ウレタン樹脂4の合成」
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、2,4-ジエチル1,5-ペンタンジオール、セバシン酸からなるポリエステルポリオール100.0部(水酸基価:50.0mgKOH/g)とイソホロンジイソシアネート13.4部、及びトリレンジイソシアネート10.0部を仕込、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率5.00質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル61.1部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン10.4部、エチレンジアミン1.0部、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール0.30部、酢酸エチル108.0部およびイソプロピルアルコール112.8部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間撹拌反応させて、ウレタン樹脂溶液を得た。得られたウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度30.0質量%、樹脂固形分のMwは37,000であった。得られたウレタン樹脂溶液を、本実施例のウレタン樹脂4(固形分30.0質量%)として、下記の方法で、伸長粘度、せん断粘度、トルートン比を評価した。その結果を表1に示す。
【0059】
(実施例6)
「ウレタン樹脂5の合成」
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、アジピン酸、及びセバシン酸からなるポリエステルポリオール100.0部(水酸基価:50.0mgKOH/g)とイソホロンジイソシアネート11.3部、ヘキサメチレンジイソシアネート5.0部を仕込、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.60質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル61.1部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン6.7部、ジ-n-ブチルアミン0.50部、酢酸エチル108.0部およびイソプロピルアルコール112.8部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間撹拌反応させて、ウレタン樹脂溶液を得た。得られたウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度30.0質量%、樹脂固形分のMwは29,500であった。得られたウレタン樹脂溶液を、本実施例のウレタン樹脂5(固形分30.0質量%)として、下記の方法で、伸長粘度、せん断粘度、トルートン比を評価した。その結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
アクリル樹脂2:X-321L(星光PMC社製、水性アクリル樹脂、固形分32.8%)を水希釈にて固形分30.0質量%として、下記の方法で、伸長粘度、せん断粘度、トルートン比を評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
「インキ配合」
(実施例7)
N-プロピルアセテート(酢酸ノルマルプロピル)40質量部、酢酸エチル10質量部、藍顔料11質量部、塩酢ビ樹脂(塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂)3質量部、イソプロピルアルコール6質量部、分散剤1質量部、及び実施例1で調製したアクリル樹脂1 29部の混合物(計100部)を練肉し、青色リキッド印刷インキを作製した。得られた混合物100質量部に対して、ザーンカップ#3(離合社製)で15秒程度(25℃)となるように、42%のIPA/EtAc混合溶剤(イソプロピルアルコール/酢酸エチル=50/50(質量部/質量部))を加え、リキッドインキを調製した。
【0062】
(実施例8~24、比較例2)
【0063】
上記のバインダー樹脂、溶剤液、を下記表2に記載の配合比により使用し、実施例7~24、比較例2のリキッドインキを調製した。
【0064】
調製した実施例7~24、比較例2のリキッドインキを版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、基材Aのいずれかに印刷して45℃で乾燥し、下記構成1の印刷物を得た。
得られた実施例及び比較例の印刷物について、後述する手法で以下の項目を評価した。その結果を表2に示す。なお、以下の各評価において、基材Aの種類の違いによる評価結果の差異は認められなかった。
【0065】
<印刷物の構成>
構成:基材A-皮膜層1
【0066】
<基材A>
コロナ処理ポリプロピレン二軸延伸フィルム(東洋紡績(株)製パイレンP216
1厚さ20μm)(OPP)
コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製エステルE5102厚さ12μm)(PET)
【0067】
[評価方法]
<リキッドインキ用バインダー樹脂の評価>
<伸長粘度、せん断粘度、トルートン比>
実施例1~6、比較例1のリキッドインキ用バインダー樹脂について、それぞれ以下に示す方法により、伸長速度が4000s-1における伸長粘度と、せん断速度4000s-1におけるせん断粘度とを測定した。そして、その比(伸長粘度/せん断粘度)であるトルートン比を求めた。
伸長粘度は、JIS-7199(ISO11443、ASTMD3835)に記載されたキャピラリレオメータ評価方法に準拠して測定した。
【0068】
具体的には、ツインキャピラリ型の装置(Gottfert社製;RHEOGRAPH20)を用いた。長さ10mm、直径0.5mmのキャピラリダイと、長さ0.25mm、直径0.5mmのキャピラリダイとを組み合わせて用いた。
【0069】
そして、温度30℃、せん断速度100~300000s-1で測定した見かけのせん断粘度(圧力)から、バーグレー補正を使用して圧力損失を除去し、真のせん断粘度を得た。得られた真のせん断粘度と圧力損失から、コグスウェル式を用いて伸長速度と対応した伸長粘度を求めた。
伸長速度4000s-1における伸長粘度、せん断速度4000s-1におけるせん断粘度およびトルートン比の値を表1に示す。
【0070】
<印刷物の評価方法>
<接着性>
実施例、比較例の各印刷物を1日放置後、印刷面にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷皮膜の外観の状態を目視判定した。
【0071】
「評価基準」
〇:印刷皮膜が全く剥がれなかった。
△:印刷皮膜の60%以上80%未満がフィルムに残った。
×:印刷皮膜の40%未満がフィルムに残った。
【0072】
<耐アルコール性>
実施例、比較例の各印刷物の印刷面を学振型耐摩擦試験機を用いて、エチルアルコールをしみ込ませたあて布で200gの荷重下100回摩擦し、印刷面の変化からアルコール適性を評価した。
【0073】
「評価基準」
〇:印刷面、あて布ともに変化なし。
△:印刷面に筋状の傷が認められる。
×:印刷面に面状の傷が認められる。
【0074】
<ハイライト転移性>
実施例、比較例で得られたリキッドインキの粘度を酢酸エチルでザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整した。そして、版深度25μmを有するレーザーグラビア版を取り付けたMD型グラビア印刷機(富士機械株式会社製)を用いて、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製 FOR 厚さ20μm)の処理面に印刷を行った。
カスレ試験は、グラビア版の円周600mmφで200m/minの印刷速度した際のハイライト印刷部分(網点面積10%未満)におけるカスレと、非印刷部の汚れ具合を目視評価した。
【0075】
「評価基準」
〇:カスレが全くなく、非印刷部の汚れもない。
△:カスレが少し見られ 、且つ非印刷部に汚れが少し見られる。
×:カスレが多く見られ、且つ非印刷部にも汚れが多く見られる。
【0076】
<版かぶり性>
上記ハイライト転移性試験の条件で印刷した時の印刷物の中で、非印刷部の汚れ具合(版かぶり性)を評価した。
【0077】
「評価基準」
〇:印刷汚れが全く見られない。
△:印刷汚れ僅かに確認できるが実用範囲である。
×:印刷汚れが甚だしく見られる。
【0078】
<脱墨性>
[アルカリ溶液]
水酸化ナトリウム水溶液「SH溶液」:和光純薬製水酸化ナトリウム(試薬1級)をイオン交換水に溶解し、1.5質量%の水溶液を調整した。
[剥離試験条件]
剥離試験は、以下の条件での処理時間を30分として評価を行った。なお処理5分未満に剥離すればかなり高い性能(脱墨性)であることを示す。
実施例、比較例を10mm×10mmのサイズにカットし試験片を得た。これら試験片を下記条件にて剥離試験を実施した。
条件:水酸化ナトリウム水溶液80℃にて攪拌処理
上記の条件における皮膜の剥離性を評価した。
【0079】
「評価基準」
〇:5分未満で90%以上のインキ塗膜が基材から脱離した。
△:15分以上30分未満で90%以上のインキ塗膜が基材から脱離した。
×:30分の試験で50%未満のインキ塗膜が基材から脱離した。
【0080】
【0081】
【0082】
(考察)
表1と2の結果から分かるように、本発明のリキッドインキ用バインダー樹脂を含有するリキッドインキを使用した印刷物は、優れた美粧性に加えて脱墨性や耐薬品性という機能性をも兼備する結果となった。