(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】無理抜き成形品、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及び無理抜き成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20241224BHJP
B29C 33/44 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/44
(21)【出願番号】P 2024519360
(86)(22)【出願日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2023034209
(87)【国際公開番号】W WO2024084884
(87)【国際公開日】2024-04-25
【審査請求日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2022166836
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】黒川 隆平
(72)【発明者】
【氏名】國重 昌志
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/075124(WO,A1)
【文献】特開2003-128915(JP,A)
【文献】国際公開第2019/045032(WO,A1)
【文献】特開2018-141083(JP,A)
【文献】特開2002-021854(JP,A)
【文献】特開2015-013984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
B29C 33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と無機充填材(B)とを配合してなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を、円筒部を備えるように形成した無理抜き成形品であって、
前記円筒部は、先端部分において外径方向へ突出するアンダーカット形状の膨出部を有し、
前記円筒部の内面は、前記先端部分において外径方向への段差を有し、前記段差を除く部分が前記先端部分に向かうほど前記円筒部の内径が広がるように傾斜する勾配を有し、 前記無機充填材(B)が粉粒状無機充填材(B1)
と繊維状無機充填材(B3)とを含むものであり、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100体積部に対して、前記粉粒状無機充填材(B1)が15~180体積部であり、
前記粉粒状無機充填材(B1)100体積部に対して、前記繊維状無機充填材(B3)が130体積部以下の範囲であり、
150℃における引張弾性率のTD/MD比が0.7~1.0であることを特徴とする無理抜き成形品。
【請求項2】
さらに、前記無機充填材(B)が少なくとも板状無機充填材(B2)を含むものであり、
前記粉粒状無機充填材(B1)100体積部に対して、前記板状無機充填材(B2)が60体積部以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の無理抜き成形品。
【請求項3】
23℃における引張弾性率が15GPa以下であることを特徴とする、請求項1又は2記載の無理抜き成形品。
【請求項4】
前記円筒部の真円保持率が90%以上である、請求項1又は2記載の無理抜き成形品。(ただし、真円保持率は寸法測定機により、前記円筒部の内径側倒れが最も大きい箇所(a)と最も小さい箇所(b)における、円筒部の先端部分から膨出部の頂部までの外径方向の寸法を測定し、次式より算出した値であること。)
真円保持率〔%〕=(b)寸法〔mm〕/(a)寸法〔mm〕×100
【請求項5】
寸法測定機により測定した前記膨出部の内壁の算術平均高さSaが60〔μm〕以下、かつ、最大高さSzが350〔μm〕以下の範囲である、請求項1又は2記載の無理抜き成形品。
【請求項6】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と無機充填材(B)とを配合してなる無理抜き成形用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
前記無機充填材(B)が粉粒状無機充填材(B1)
と繊維状無機充填材(B3)とを含むものであり、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100体積部に対して、前記粉粒状無機充填材(B1)が15~180体積部であり、
前記粉粒状無機充填材(B1)100体積部に対して、前記繊維状無機充填材(B3)が130体積部以下の範囲であり、
150℃における引張弾性率のTD/MD比が0.7~1.0であること、を特徴とする無理抜き成形用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、前記無機充填材(B)が板状無機充填材(B2)を含むものであり、
前記粉粒状無機充填材(B1)100体積部に対して、前記板状無機充填材(B2)が60体積部以下の範囲であることを特徴とする請求項6記載の無理抜き成形用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項8】
23℃における引張弾性率が15GPa以下であることを特徴とする、請求項6又は7記載の無理抜き成形用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項9】
溶融混練物である請求項6又は7記載の無理抜き成形用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項10】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、無機充填材(B)とを配合し、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の融点以上の温度範囲で溶融混錬する工程を有する無理抜き成形用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
前記無機充填材(B)が粉粒状無機充填材(B1)
と繊維状無機充填材(B3)とを含むものであり、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100体積部に対して、前記粉粒状無機充填材(B1)が15~180体積部であること、
前記粉粒状無機充填材(B1)100体積部に対して、前記繊維状無機充填材(B3)が130体積部以下の範囲であり、
を特徴とする無理抜き成形用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
さらに、前記無機充填材(B)が板状無機充填材(B2)を含むものであり、
前記粉粒状無機充填材(B1)100体積部に対して、前記板状無機充填材(B2)が60体積部以下の範囲であることを特徴とする請求項10記載の無理抜き成形用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
23℃における引張弾性率が15GPa以下であることを特徴とする、請求項10又11記載の無理抜き成形用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項10又11記載の方法でポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する工程、及び、無理抜き構造を有する金型を用いて射出成形する工程を有することを特徴とする、無理抜き成形品の製造方法。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の無理抜き成形品を、液体又は蒸気に接する部材として使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無理抜き成形品、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及び無理抜き成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産性、成形性に優れ、かつ高耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックが開発され、軽量でもあることから金属材料に代わる材料として電気、電子機器や自動車用等の部材として幅広く使用されている。特にポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと略すことがある)樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略すことがある)樹脂は、耐熱性に優れつつ、かつ、機械的強度、耐薬品性、成形加工性、寸法安定性にも優れるため、自動車部品や電気電子などの分野で、広範に利用されている。
【0003】
PAS樹脂は、複雑な形状を有する部品の材料として利用される場合も多い。複雑な形状の部品を複数の部材を組み合わせて構成すると、部材の点数が増加することや製造工程が増えること、脆弱な接合部が増えること等が課題となるため、一体成形することが好ましい。一体成形を行う場合、例えば先端部分に膨出部を設けている配管部品などでは、無理抜き成形が実施されることがある。無理抜き成形では、金型が成形品の膨出部を乗り越えて軸方向に引抜かれるため、成形品の膨出部は内側に適度に変形(理想的には弾性変形)する必要がある。
【0004】
上記に関連して、樹脂組成物の曲げ弾性率を規定することによって、無理抜き成形を実施した成形品に変形が残ることを防ぐ無理抜き成形品用樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの方法で得られる樹脂成形品の無理抜き成形における変形の抑制は十分ではなく、更なる改善が求められていた。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、無理抜き成形後の円筒部の変形が抑制されたPAS成形品、当該成形品を提供可能なPAS樹脂組成物およびそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、PAS樹脂に、特定量の充填材を組み合わせることで、PAS樹脂成形品の、無理抜き成形後の円筒部の変形が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本開示の一実施形態に係る無理抜き成形品は、
PAS樹脂(A)と無機充填材(B)とを配合してなるPAS樹脂組成物を、円筒部を備えるように形成した無理抜き成形品であって、
前記円筒部は、先端部分において外径方向へ突出するアンダーカット形状の膨出部を有し、
前記円筒部の内面は、前記先端部分において外径方向への段差を有し、前記段差を除く部分が前記先端部分に向かうほど前記円筒部の内径が広がるように傾斜する勾配を有し、 前記無機充填材(B)が粉粒状無機充填材(B1)を含むものであり、
前記PAS樹脂(A)100体積部に対して、前記粉粒状無機充填材(B1)が15~180体積部であり、
150℃における引張弾性率のTD/MD比が0.7~1.0であることを特徴とする。
【0010】
本開示の一実施形態に係るPAS樹脂組成物は、
PAS樹脂(A)と無機充填材(B)とを配合してなる無理抜き成形用PAS樹脂組成物であって、
前記無機充填材(B)が粉粒状無機充填材(B1)を含むものであり、
前記PAS樹脂(A)100体積部に対して、前記粉粒状無機充填材(B1)が15~180体積部であり、
150℃における引張弾性率のTD/MD比が0.7~1.0であること、を特徴とする。
【0011】
本開示の一実施形態に係るPAS樹脂組成物の製造方法は、
PAS樹脂(A)と、無機充填材(B)とを配合し、PAS樹脂(A)の融点以上の温度範囲で溶融混錬する工程を有する無理抜き成形用PAS樹脂組成物の製造方法であって、
前記無機充填材(B)が粉粒状無機充填材(B1)を含むものであり、
前記PAS樹脂(A)100体積部に対して、前記粉粒状無機充填材(B1)が15~180体積部であることを特徴とする。
【0012】
本開示の一実施形態に係る無理抜き成形品の製造方法は、上記の無理抜き成形品を溶融成形により製造する。
【0013】
本開示は、前記記載の無理抜き成形品を液体又は上記に接する配管部材として使用する方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、無理抜き成形後の円筒部の変形が抑制されたPAS無理抜き成形品、当該成形品を提供可能なPAS樹脂組成物およびそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る無理抜き成形品の主要部斜視図であり、実施例で用いた無理抜き成形品の概要図である。
【
図2】
図2は、
図1の無理抜き成形品の主要部の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の無理抜き成形品の無理抜きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<無理抜き成形品>
以下、図面を参照しながら、本開示の一実施形態に係る無理抜き成形品1が説明される。以下の説明で使用される図において、示されている要素の形状及び寸法関係は、実際の無理抜き成形品1における形状及び寸法関係と異なる場合がある。
【0017】
図1は、本実施形態に係る無理抜き成形品1の主要部斜視図である。本実施形態において、無理抜き成形品1の主要部は膨出部11を有する円筒部10を含む。
図2は、
図1に示されるA-Aにおける無理抜き成形品1の断面図である。無理抜き成形品1は、PAS樹脂組成物を射出成形し、離型時に無理抜きによって成形される。
図3は、
図1の無理抜き成形品1の無理抜きを説明するための図である。ここで、無理抜きとは、金型30が成形品の膨出部11を乗り越えて軸方向に引き抜かれる成形方法である。また、PAS樹脂組成物は、PAS樹脂と繊維状充填材とを配合してなる組成物である。PAS樹脂組成物の詳細については後述する。
【0018】
本実施形態において、無理抜き成形品1が備える円筒部10は、先端15から軸方向に一定範囲の部分(先端部分16)において、外径方向へ突出するアンダーカット形状の膨出部11を有する。ここで、円筒部10は、軸CAを中心とする円形の2つの底面を有し、2つの底面がどちらも開口であるような円筒形状を有する。換言すると、円筒部10は、先端15と末端17とが開口である、中空の配管形状を有する。また、外径方向は、軸CAに沿った方向である軸方向に垂直な方向であって、軸CAから側面に向かう方向である。
【0019】
図1に示すように、円筒部10の末端17は、無理抜き成形品1の他の部分に接続されてよい。すなわち、円筒部10の末端17は、断面が軸CAを中心とする円形になるような、先端15から軸方向に最も離れた位置にある。ここで、円筒部10の形状は、軸CAを中心に対称である。例えば
図2に示される円筒部10の2つの断面は、軸CAを中心に上下対称である。
【0020】
図2に示すように、円筒部10の外面21は、先端部分16に至るまで、末端17から先端15に向かって軸方向に延びる。そして、外面21は、先端部分16において、頂部12が外径方向に最も突出する膨出部11に接続される。
【0021】
円筒部10の内面22は、先端部分16において外径方向への段差13を有する。また、円筒部10の内面22は、段差13を除く部分が末端17から先端部分16に向かうほど円筒部10の内径が広がるように傾斜する勾配を有する。本実施形態において勾配は一定である。円筒部10の内面22の段差13を除く部分と、段差13とは、接続部分14において接続する。ここで、
図2に示す傾斜部18は、末端17から先端部分16に向かって一定の勾配を有する部分、すなわち、円筒部10の内面22の段差13を除く部分である。接続部分14は、傾斜部18の先端15側の端部に位置する。
【0022】
図3に示すように、膨出部11を有する円筒部10は無理抜きによって形成される。離型時に、金型30は末端17から先端部分16に向かう軸方向に引き抜かれる。このとき、金型30からの力が膨出部11に加わり、先端部分16は段差13における隅部14aを支点にして軸CA側に曲がる。
【0023】
本実施形態において、アンダーカット率の値は限定されない。ただし、無理抜き成形時の膨出部11の弾性変形による破損等の成形不良防止の観点から、アンダーカット率は、好ましくは20%以下、より好ましくは14%以下であってよい。また、膨出部11を可撓性のチューブ又はパイプ等に差し込んだ際の抜け防止の観点から、アンダーカット率は、好ましくは5%以上、より好ましくは3.5%以上であってよい。
【0024】
ここで、アンダーカット率は以下の式(c)で定められる。
【0025】
【0026】
式(c)の外径Cは、
図2に示すように、膨出部11の頂部12における円筒部10の外径である。
【0027】
式(c)の外径Bは、
図2に示すように、膨出部11を除く円筒部10の外径である。
【0028】
本実施形態に係る無理抜き成形品1は、前記円筒部10の真円保持率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。これにより、外観に優れた成形品を得ることできる。なお、真円保持率は実施例に記載の方法で寸法測定機により測定した値から算出した値である。
【0029】
本実施形態に係る無理抜き成形品1は、前記膨出部11の内壁表面の算術平均高さSaが60〔μm〕以下であることが好ましく、50〔μm〕以下であることがより好ましい。また、前記膨出部11の内壁表面の最大高さSzが350〔μm〕以下であることが好ましく、300〔μm〕以下であることがより好ましい。なお、算術平均高さSa及び最大高さSzは、ISO 25178に準拠して実施例に記載の方法で測定した値である。
【0030】
<PAS樹脂組成物>
上記の無理抜き成形品1は、PAS樹脂(A)と無機充填材(B)とを配合してなるPAS樹脂組成物から形成される。以下に説明されるPAS樹脂組成物(本開示のPAS樹脂組成物)は、無理抜き成形品1に専ら用いられるものであってよい。
【0031】
本開示のPAS樹脂組成物は、必須成分としてPAS樹脂(A)を配合してなる。PAS樹脂(A)は、芳香族環と硫黄原子とが結合した構造を繰り返し単位とする樹脂構造を有するものであり、具体的には、下記一般式(1)
【0032】
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4の範囲のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基を表す。)で表される構造部位と、必要に応じてさらに下記一般式(2)
【0033】
【化2】
で表される3官能性の構造部位と、を繰り返し単位とする樹脂である。式(2)で表される3官能性の構造部位は、他の構造部位との合計モル数に対して0.001~3モル%の範囲が好ましく、特に0.01~1モル%の範囲であることが好ましい。
【0034】
ここで、前記一般式(1)で表される構造部位は、特に該式中のR1及びR2は、前記PAS樹脂の機械的強度の点から水素原子であることが好ましく、その場合、下記式(3)で表されるパラ位で結合するもの、及び下記式(4)で表されるメタ位で結合するものが挙げられる。
【0035】
【化3】
これらの中でも、特に繰り返し単位中の芳香族環に対する硫黄原子の結合は前記一般式(3)で表されるパラ位で結合した構造であることが前記PAS樹脂の耐熱性や結晶性の面で好ましい。
【0036】
また、前記PAS樹脂は、前記一般式(1)や(2)で表される構造部位のみならず、下記の構造式(5)~(8)
【0037】
【化4】
で表される構造部位を、前記一般式(1)と一般式(2)で表される構造部位との合計の30モル%以下で含んでいてもよい。特に本開示では上記一般式(5)~(8)で表される構造部位は10モル%以下であることが、PAS樹脂の耐熱性、機械的強度の点から好ましい。前記PAS樹脂中に、上記一般式(5)~(8)で表される構造部位を含む場合、それらの結合様式としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体の何れであってもよい。
【0038】
前記PAS樹脂は、その分子構造中に、ナフチルスルフィド結合などを有していてもよいが、他の構造部位との合計モル数に対して、3モル%以下が好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。
【0039】
PAS樹脂の架橋方法については、上記一般式(1)で表される2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素又は酸化剤の存在下、高温で加熱して架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させる方法も使用できるし、縮重合させるときに上記一般式(2)で表されるような3個以上のハロゲン官能基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造又は架橋構造を形成させる方法も使用できる。
【0040】
PAS樹脂(A)の物性は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、以下の通りである。
【0041】
(溶融粘度)
PAS樹脂(A)の溶融粘度は特に限定されないが、流動性及び機械的強度のバランスが良好となることから、300℃で測定した溶融粘度(V6)が、好ましくは2Pa・s以上の範囲であり、そして、好ましくは1000Pa・s以下の範囲、より好ましくは500Pa・s以下の範囲であり、さらに好ましくは200Pa・s以下の範囲である。ただし、溶融粘度(V6)の測定は、PAS樹脂を島津製作所製フローテスター、CFT-500Dを用いて行い、300℃、荷重:1.96×106Pa、L/D=10(mm)/1(mm)にて、6分間保持した後に測定した溶融粘度の測定値とする。
【0042】
(非ニュートン指数)
PAS樹脂(A)の非ニュートン指数は特に限定されないが、0.90以上から、2.00以下の範囲であることが好ましい。リニア型PAS樹脂を用いる場合には、非ニュートン指数が、好ましくは0.90以上の範囲、より好ましくは0.95以上の範囲から、好ましくは1.50以下の範囲、より好ましくは1.20以下の範囲である。このようなPAS樹脂は機械的物性、流動性、耐磨耗性に優れる。ただし、非ニュートン指数(N値)は、キャピラリーレオメーターを用いて融点+20℃、オリフィス長(L)とオリフィス径(D)の比、L/D=40の条件下で、剪断速度(SR)及び剪断応力(SS)を測定し、下記式を用いて算出した値である。非ニュートン指数(N値)が1に近いほど線状に近い構造であり、非ニュートン指数(N値)が高いほど分岐が進んだ構造であることを示す。
【0043】
【数2】
[ただし、SRは剪断速度(秒
-1)、SSは剪断応力(ダイン/cm
2)、そしてKは定数を示す。]
【0044】
(PAS樹脂の製造方法)
PAS樹脂(A)の製造方法としては特に限定されないが、例えば(製造法1)硫黄と炭酸ソーダの存在下でジハロゲノ芳香族化合物を、必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加えて、重合させる方法、(製造法2)極性溶媒中でスルフィド化剤等の存在下にジハロゲノ芳香族化合物を、必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加えて、重合させる方法、(製造法3)p-クロルチオフェノールを、必要ならばその他の共重合成分を加えて、自己縮合させる方法、(製造法4)ジヨード芳香族化合物と単体硫黄を、カルボキシ基やアミノ基等の官能基を有していてもよい重合禁止剤の存在下、減圧させながら溶融重合させる方法、等が挙げられる。これらの方法のなかでも、(製造法2)の方法が汎用的であり好ましい。反応の際に、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩や、水酸化アルカリを添加しても良い。上記(製造法2)方法のなかでも、加熱した有機極性溶媒とジハロゲノ芳香族化合物とを含む混合物に含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入し、有機極性溶媒中でジハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤とを、必要に応じてポリハロゲノ芳香族化合物と加え、反応させること、及び反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02~0.5モルの範囲にコントロールすることによりPAS樹脂を製造する方法(特開平07-228699号公報参照。)や、固形のアルカリ金属硫化物及び非プロトン性極性有機溶媒の存在下でジハロゲノ芳香族化合物と必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加え、アルカリ金属水硫化物及び有機酸アルカリ金属塩を、硫黄源1モルに対して0.01~0.9モルの範囲の有機酸アルカリ金属塩および反応系内の水分量を非プロトン性極性有機溶媒1モルに対して0.02モル以下の範囲にコントロールしながら反応させる方法(WO2010/058713号パンフレット参照。)で得られるものが特に好ましい。ジハロゲノ芳香族化合物の具体的な例としては、p-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、o-ジハロベンゼン、2,5-ジハロトルエン、1,4-ジハロナフタレン、1-メトキシ-2,5-ジハロベンゼン、4,4’-ジハロビフェニル、3,5-ジハロ安息香酸、2,4-ジハロ安息香酸、2,5-ジハロニトロベンゼン、2,4-ジハロニトロベンゼン、2,4-ジハロアニソール、p,p’-ジハロジフェニルエーテル、4,4’-ジハロベンゾフェノン、4,4’-ジハロジフェニルスルホン、4,4’-ジハロジフェニルスルホキシド、4,4’-ジハロジフェニルスルフィド、及び、上記各化合物の芳香環に炭素原子数1~18の範囲のアルキル基を有する化合物が挙げられ、ポリハロゲノ芳香族化合物としては1,2,3-トリハロベンゼン、1,2,4-トリハロベンゼン、1,3,5-トリハロベンゼン、1,2,3,5-テトラハロベンゼン、1,2,4,5-テトラハロベンゼン、1,4,6-トリハロナフタレンなどが挙げられる。また、上記各化合物中に含まれるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子であることが望ましい。
【0045】
重合工程により得られたPAS樹脂を含む反応混合物の後処理方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、(後処理1)重合反応終了後、先ず反応混合物をそのまま、あるいは酸または塩基を加えた後、減圧下または常圧下で溶媒を留去し、次いで溶媒留去後の固形物を水、反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に中和、水洗、濾過および乾燥する方法、或いは、(後処理2)重合反応終了後、反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、かつ少なくともPASに対しては貧溶媒である溶媒)を沈降剤として添加して、PASや無機塩等の固体状生成物を沈降させ、これらを濾別、水洗、乾燥する方法、或いは、(後処理3)重合反応終了後、反応混合物に反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)を加えて撹拌した後、濾過して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後中和、水洗、濾過および乾燥をする方法、(後処理4)重合反応終了後、反応混合物に水を加えて水洗浄、濾過、必要に応じて水洗浄の時に酸または塩基を加えて処理し、乾燥をする方法、(後処理5)重合反応終了後、反応混合物を濾過し、必要に応じ、反応溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に水洗浄、濾過および乾燥する方法、等が挙げられる。いずれの後処理方法においても、水洗工程の際に酸や塩基を添加してpH調整をすることによって、PAS樹脂の反応性や結晶化速度、ナトリウム含有量等を制御することができ、熱水洗工程後のpHが6.5~11.5の範囲、より好ましくは6.5~8.5の範囲となるように制御することができる。
【0046】
上記(後処理1)~(後処理5)に例示したような後処理方法において、PAS樹脂の乾燥は真空中で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。
【0047】
本実施形態に用いるPAS樹脂(A)は、上記の方法で新たに重合したPAS樹脂を用いることもできるし、リサイクルされたPAS樹脂を用いることもできる。例えば、PAS樹脂組成物やPAS樹脂成形品から回収したPAS樹脂を用いることもでき、具体的には、有機極性溶媒中でPAS樹脂組成物やPAS樹脂成形品を加熱して含有されるPASを溶解させた溶解液に、上述の後処理を行って得たPAS樹脂等が挙げられる。その他、PAS樹脂組成物やPAS樹脂成形品を機械的に粉砕したものを、PAS樹脂として用いることもでき、具体的には、成形品を製造する際に発生するスプルー又はランナーや、規格外の成形品として回収したものや、一度製品として使用した成形品等を粉砕したもの等が挙げられる。その場合、PAS樹脂以外の成分が含まれているPAS樹脂組成物やPAS樹脂成形品の粉砕品でもよい。
【0048】
<無機充填材(B)>
本開示のPAS樹脂組成物は、無機充填材(B)を配合してなる。前記無機充填材(B)は、粉粒状無機充填材(B1)を必須成分として用いる。さらに、板状無機充填材(B2)と、繊維状無機充填材(B3)とを任意成分として用いることができる。
【0049】
本開示に適用できる無機充填材(B)の原料としては当業者に公知のものが使用可能であり、その繊維径および繊維長、さらにアスペクト比などは成形品の用途などに応じて適宜調整可能である。
【0050】
本開示に適用できる無機充填材(B)は、表面処理剤や集束剤で加工されたものを用いることもできる。これによりPAS樹脂(A)との接着力を向上させることができることから好ましい。前記表面処理剤又は集束剤としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基等の官能基を有するシラン化合物、チタネート化合物、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂及びエポキシ樹脂等からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー等が挙げられ、特にウレタン樹脂を含むものであることが加工時の過剰な解繊を抑制する観点から好ましい。前記表面処理剤又は集束剤がウレタン樹脂を含む場合、その含有量について特に限定はされないが、耐燃料膨潤性の観点から、35質量%以下の範囲であることが好ましく、20質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0051】
無機充填材(B)の配合量は、より優れた機械的強度を得る観点から、PAS樹脂(A)100体積部に対して、40体積部以上が好ましく、50体積部以上がより好ましく、60体積部以上の範囲がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の流動性や加工性の観点から、180体積部以下が好ましく、140体積部以下がより好ましく、90体積部以下の範囲がさらに好ましい。
【0052】
本開示に適用できる粉粒状無機充填材(B1)としては、公知慣用の材料を用いることができ、例えば、板状のものや粉粒状のものなど、さまざまな形状の充填材等が挙げられる。具体的には、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土等のケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩、その他炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、各種金属粉末等が挙げられ、要求される性能に応じて1種又は2種以上を適宜選択することができる。中でも、炭酸カルシウム及びガラスビーズを好ましく用いることができる。
【0053】
本開示に適用できる粉粒状無機充填材(B1)の平均粒子径(D50)の範囲については、特に限定されないが、機械的強度、流動性に優れる観点から、100μm以下の範囲であることが好ましく、50μm以下の範囲であることがより好ましく、20μm以下の範囲であることがさらに好ましく、2μm以下の範囲であることが特に好ましい。なお、当該平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定機(Microtrac MT3300EXII)を用いて常法に従って測定した粒度分布に基づき求められる平均粒子径(D50)である。
【0054】
本開示のPAS樹脂組成物において粉粒状無機充填材(B1)の配合量は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、PAS樹脂(A)100体積部に対して、好ましくは15体積部以上、より好ましくは30体積部以上、さらに好ましくは40体積部以上の範囲から、好ましくは180体積部以下、より好ましくは140体積部以下、さらに好ましくは90体積部以下の範囲である。かかる範囲において、樹脂組成物が良好な耐燃料膨潤性および成形性、特に離形性を有しつつ、かつ、成形品が高寸法精度を呈するため好ましい。
【0055】
本開示に適用できる板状無機充填材(B2)としては、公知慣用の材料を用いることができ、例えば、ガラスフレーク、タルク、マイカ、カオリン、クレイ、アルミナ、各種の金属箔等が挙げられ、要求される性能に応じて1種又は2種以上を適宜選択することができる。これらの中でも、機械的強度や、取扱いの容易性の観点からガラスフレークを用いることが好ましい。
【0056】
本開示のPAS樹脂組成物において板状無機充填材(B2)の配合量は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、前記粉粒状無機充填材(B1)100体積部に対して、好ましくは80体積部以下、より好ましくは50体積部以下、さらに好ましくは10体積部以下の範囲である。かかる範囲において、樹脂組成物が良好な耐燃料膨潤性および成形性、特に離形性を有しつつ、かつ、成形品が高寸法精度を呈するため好ましい。
【0057】
本開示に適用できる繊維状無機充填材(B3)としては、公知慣用の材料を用いることができ、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ-アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、ウォラストナイト、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維状物質等が挙げられ、要求される性能に応じて1種又は2種以上を適宜選択することができる。これらの中でも、機械的強度や、取扱いの容易性の観点からガラス繊維を用いることが好ましい。
【0058】
本開示のPAS樹脂組成物において繊維状無機充填材(B3)の配合量は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが前記粉粒状無機充填材(B1)100体積部に対して、好ましくは230体積部以下、より好ましくは130体積部以下、さらに好ましくは100体積部以下、特に好ましくは20体積部以下の範囲である。かかる範囲において、樹脂組成物が良好な耐燃料膨潤性および成形性、特に離形性を有しつつ、かつ、成形品が高寸法精度を呈するため好ましい。
【0059】
本開示のPAS樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤を任意成分として配合することができる。シランカップリング剤としては、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、カルボキシ基と反応する官能基、例えば、エポキシ基、イソシアナト基、アミノ基または水酸基を有するシランカップリング剤が好ましいものとして挙げられる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリクロロシラン等のイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。本開示においてシランカップリング剤は必須成分ではないが、配合する場合、その配合量は、本発明の効果を損ねなければその添加量は特に限定されないが、PAS樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下までの範囲である。かかる範囲において、樹脂組成物が良好な成形性、特に離型性を有し、かつ成形品の機械的強度が向上するため好ましい。
【0060】
本開示のPAS樹脂組成物は、必要に応じて、熱可塑性エラストマーを任意成分として配合することができる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系エラストマー、弗素系エラストマーまたはシリコーン系エラストマーが挙げられ、このうちポリオレフィン系エラストマーが好ましいものとして挙げられる。これらのエラストマーを添加する場合、その配合量は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、PAS樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下までの範囲である。かかる範囲において、得られるPAS樹脂組成物の耐衝撃性が向上するため好ましい。
【0061】
例えば、前記ポリオレフィン系エラストマーは、α-オレフィンの単独重合体、または2以上のα-オレフィンの共重合体、1または2以上のα-オレフィンと、官能基を有するビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。この際、前記α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素原子数が2以上から8以下までの範囲のα-オレフィンが挙げられる。また、前記官能基としては、カルボキシ基、酸無水物基(-C(=O)OC(=O)-)、エポキシ基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、オキサゾリン基等が挙げられる。そして、前記官能基を有するビニル重合性化合物としては、酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のα,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステル;アイオノマー等のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩(金属としてはナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛等);グリシジルメタクリレート等のα,β-不飽和カルボン酸のグリシジルエステル等;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸;前記α,β-不飽和ジカルボン酸の誘導体(モノエステル、ジエステル、酸無水物)等の1種または2種以上が挙げられる。上述の熱可塑性エラストマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
更に、本開示のPAS樹脂組成物は、上記成分に加えて、さらに用途に応じて、適宜、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ四フッ化エチレン樹脂、ポリ二フッ化エチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等の合成樹脂(以下、単に合成樹脂という)を任意成分として配合することができる。本開示において前記合成樹脂は必須成分ではないが、配合する場合、その配合の割合は本発明の効果を損ねなければ特に限定されるものではなく、また、それぞれの目的に応じて異なり、一概に規定することはできないが、本開示の樹脂組成物中に配合する合成樹脂の割合として、例えばPAS樹脂(A)100質量部に対し5質量部以上の範囲であり、15質量部以下の範囲の程度が挙げられる。換言すれば、PAS樹脂(A)と合成樹脂との合計に対してPAS樹脂の割合は質量基準で、好ましくは(100/115)以上の範囲であり、より好ましくは(100/105)以上の範囲である。
【0063】
また、本開示のPAS樹脂組成物は、その他にも着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤、防錆剤、および離型剤(ステアリン酸やモンタン酸を含む炭素原子数18~30の脂肪酸の金属塩やエステル、ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなど)等の公知慣用の添加剤を必要に応じ、任意成分として配合してもよい。これらの添加剤は必須成分ではなく、例えば、PAS樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上の範囲であり、そして、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下の範囲で、本発明の効果を損なわないよう目的や用途に応じて適宜調整して用いればよい。
【0064】
本開示のPAS樹脂組成物は、150℃における引張弾性率の異方性が小さい。具体的には、TD/MD比が0.7~1.0の範囲である。かかる範囲において、成形工程における無理抜き過程前後の成形品の変形を抑制することができ、寸法精度に優れる。PAS樹脂組成物が上記性質を備えるためには、無機充填材(B)の配合量を調整することが効果的であり、例えば、必須成分である粉粒状無機充填材(B1)や、任意成分である板状無機充填材(B2)や繊維状無機充填材(B3)の量を調整することで達成し得る。なお、本開示における150℃における引張弾性率のTD/MD比は、実施例の方法に準拠して測定した値である。なお、本開示において、MDは、成形における樹脂の流動方向を指し、繊維配向パラメータ0.9以上の方向をいう。一方、TDは、成形における樹脂の流動方向に直交する方向を指し、繊維配向パラメータ0.1以下の方向をいう。TD/MD比が1に近いほど、弾性率の異方性が小さいことを示す。
【0065】
本開示のPAS樹脂組成物の室温(23℃)における引張弾性率は、特に限定されるものではないが、好ましくは15〔GPa〕以下、より好ましくは8〔GPa〕以下である。かかる範囲において、成形工程における無理抜き過程前後の成形品の変形を抑制することができ、寸法精度に優れるため好ましい。なお、本開示における引張弾性率は、PAS樹脂組成物を射出成形して得られるISO Type-Aダンベル片を用いて、ISO 527-1および2に準拠した方法で測定した値である。
【0066】
本開示のPAS樹脂組成物の製造方法は、PAS樹脂(A)と、無機充填材(B)とを必須成分として配合し、PAS樹脂(A)の融点以上の温度範囲で溶融混錬する工程を有する無理抜き成形用PAS樹脂組成物の製造方法であって、前記無機充填材(B)が粉粒状無機充填材(B1)を含むものであり、前記PAS樹脂(A)100体積部に対して、前記粉粒状無機充填材(B1)が15~180体積部であることを特徴とする。以下、詳述する。
【0067】
本開示のPAS樹脂組成物の製造方法は、上記必須成分を配合し、PAS樹脂(A)の融点以上の温度範囲で溶融混錬する工程を有する。より詳しくは、本開示のPAS樹脂組成物は、各必須成分、および、必要に応じてその他の任意成分を配合してなる。本開示に適用できる樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、必須成分と必要に応じて任意成分を配合して、溶融混錬する方法、より詳しくは、必要に応じてタンブラーまたはヘンシェルミキサー等で均一に乾式混合し、次いで、二軸押出機に投入して溶融混練する方法が挙げられる
【0068】
溶融混錬は、樹脂温度がPAS樹脂(A)の融点以上となる温度範囲、好ましくは該融点+10℃以上となる温度範囲、より好ましくは該融点+10℃以上、さらに好ましくは該融点+20℃以上から、好ましくは該融点+100℃以下、より好ましくは該融点+50℃以下までの範囲の温度に加熱して行うことができる。
【0069】
前記溶融混練機としては分散性や生産性の観点から二軸混練押出機が好ましく、例えば、樹脂成分の吐出量5~500(kg/hr)の範囲と、スクリュー回転数50~500(rpm)の範囲とを適宜調整しながら溶融混練することが好ましく、それらの比率(吐出量/スクリュー回転数)が0.02~5(kg/hr/rpm)の範囲となる条件下に溶融混練することがさらに好ましい。また、溶融混練機への各成分の添加、混合は同時に行ってもよいし、分割して行っても良い。例えば、前記成分のうち、必須成分の無機充填材(B)を添加する場合に、前記二軸混練押出機のサイドフィーダーから該押出機内に投入することもできる。かかるサイドフィーダーの位置は、前記二軸混練押出機のスクリュー全長に対する、該押出機樹脂投入部(トップフィーダー)から該サイドフィーダーまでの距離の比率が、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。また、かかる比率は0.9以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。
【0070】
このように溶融混練して得られる本開示のPAS樹脂組成物は、前記必須成分と、必要に応じて加える任意成分およびそれらの由来成分を含む溶融混合物である。このため、本開示のPAS樹脂組成物は、PAS樹脂(A)が連続相を形成し、他の必須成分や任意成分が分散されたモルフォロジーを有する。本開示のPAS樹脂組成物は、該溶融混練後に、公知の方法、例えば、溶融状態の樹脂組成物をストランド状に押出成形した後、ペレット、チップ、顆粒、粉末などの形態に加工してから、必要に応じて100~150℃の温度範囲で予備乾燥を施すことが好ましい。
【0071】
本開示の成形品はPAS樹脂組成物を溶融成形してなる。また、本開示の成形品の製造方法は、前記PAS樹脂組成物を溶融成形する工程を有する。このため、本開示の成形品は、PAS樹脂(A)が連続相を形成し、他の必須成分や任意成分が分散されたモルフォロジーを有する。PAS樹脂組成物が、かかるモルフォロジーを有することにより、耐燃料膨潤性および機械的強度に優れた成形品が得られる。
【0072】
本開示のPAS樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、コンポジット、シート、パイプなどの押出成形、引抜成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に離形性にも優れるため射出成形用途に適している。射出成形にて成形する場合、各種成形条件は特に限定されず、通常一般的な方法にて成形することができる。例えば、射出成形機内で、樹脂温度がPAS樹脂(A)の融点以上の温度範囲、好ましくは該融点+10℃以上の温度範囲、より好ましくは融点+10℃~融点+100℃の温度範囲、さらに好ましくは融点+20~融点+50℃の温度範囲で前記PAS樹脂組成物を溶融する工程を経た後、樹脂吐出口よりを金型内に注入して成形すればよい。その際、金型温度も公知の温度範囲、例えば、室温(23℃)~300℃、好ましくは130~190℃に設定すればよい。
【0073】
本開示のPAS樹脂成形品の製造方法は、前記成形品にアニール処理する工程を有する。アニール処理は、成形品の用途あるいは形状等により最適な条件が選ばれるが、アニール温度は100℃以上の範囲であることが好ましく、120℃以上の範囲であることがより好ましい。一方、260℃以下の範囲であることが好ましく、240℃以下の範囲であることがより好ましい。アニール時間は特に限定されないが、0.5時間以上の範囲であることが好ましく、1時間以上の範囲であることがより好ましい。一方、10時間以下の範囲であることが好ましく、8時間以下の範囲であることがより好ましい。かかる範囲において、得られる成形品のひずみが低減し、かつ、樹脂の結晶性が向上するため好ましい。アニール処理は空気中で行ってもよいが、窒素ガス等の不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0074】
本実施形態に係る成形品は、前記PAS樹脂組成物を溶融成形してなる成形品を再利用して得られた再成形品を含む。具体的には、例えば、成形品を製造する際に発生するスプルー又はランナーや、規格外の成形品として回収したものや、一度製品として使用した成形品を、必要に応じて洗浄してから、粉砕して再度PAS樹脂の融点以上の温度で溶融成形して得られた成形品を含む。再利用する際には、粉砕した成形品を前記PAS樹脂組成物と混合して用いることが、機械的性質の観点から好ましい。成形品を粉砕する際の大きさは特に限定されないが、混合性や加工性の観点から、混合する前記PAS樹脂組成物と同程度の大きさであることが好ましい。また、その混合割合は、PAS樹脂組成物100質量部に対して成形品の粉砕品が50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。かかる範囲において、本開示のPAS樹脂組成物が呈する効果を損ねずに、リサイクル性を向上させることができる。
【0075】
本開示のPAS樹脂成形品は、無理抜き成形性に優れることを特徴としたものであるから、特に無理抜き成形用金型を用いて作製される部品に好適である。例えば、配管、容器、継手、弁体等が挙げられ、さらに具体的には、パイプ、ライニング管、袋ナット類、管継ぎ手類(エルボー、ヘッダー、チーズ、レデューサ、ジョイント、カプラー、等)、各種バルブ、流量計、ガスケット(シール、パッキン類)等といった液体又は蒸気に接する各種の部品に好適に用いることができる。また、本開示の成形品は、この他にも、以下のような通常の樹脂成形品とすることもできる。例えば箱型の電気・電子部品集積モジュール用保護・支持部材・複数の個別半導体またはモジュール、センサ、LEDランプ、コネクタ、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサ、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナ、スピーカ、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モータ、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、端子台、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダ、パラボラアンテナ、コンピュータ関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤ、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザディスク・コンパクトディスク・DVDディスク・ブルーレイディスク等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライタ部品、ワードプロセッサ部品、あるいは給湯機や風呂の湯量、温度センサなどの水回り機器部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピュータ関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モータ部品、ライタ、タイプライタなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクタ、ブラシホルダー、スリップリング、ICレギュレータ、ライトディマ用ポテンシオメーターベース、リレーブロック、インヒビタースイッチ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディ、キャブレタースペーサ、排気ガスセンサ、冷却水センサ、油温センサ、ブレーキパットウェアーセンサ、スロットルポジションセンサ、クランクシャフトポジションセンサ、温度センサ、エアーフローメータ、ブレーキパッド摩耗センサ、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダ、ウォーターポンプインペラ、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュータ、スタータースイッチ、イグニッションコイル及びそのボビン、モーターインシュレータ、モーターロータ、モーターコア、スターターリレ、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターロータ、ランプソケット、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルタ、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品が挙げられ、その他各種用途にも適用可能である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例、比較例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下、特に断りが無い場合「%」や「部」は体積基準とする。
【0077】
<実施例1~7及び比較例1~4>
表1及び2に記載する組成成分および配合量にしたがい、各材料を配合した。その後、株式会社日本製鋼所製ベント付2軸押出機「TEX-30α(製品名)」にこれら配合材料を投入し、樹脂成分吐出量30kg/hr、スクリュー回転数200rpm、設定樹脂温度320℃で溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。ガラス繊維はサイドフィーダー(S/T比0.5)から投入し、それ以外の材料はタンブラーで予め均一に混合しトップフィーダーから投入した。得られた樹脂組成物のペレットを140℃ギヤオーブンで2時間乾燥した後、射出成形することで各種試験片を作製し、下記の試験を行った。
【0078】
<評価>
【0079】
(1)引張特性の評価
得られたペレットをシリンダー温度310℃に設定した住友重機製射出成形機(SE-75D-HP)に供給し、金型温度140℃に温調したISO Type-Aダンベル片成形用金型を用いて射出成形を行い、ISO Type-Aダンベル片を得た。なお、ウェルド部を含まない試験片となるよう1点ゲートから樹脂を射出して作製したものとした。得られたダンベル片をISO 527-1および2に準拠した測定方法により、室温における引張弾性率及び引張破断伸びを測定した。結果を表1及び2に示す。
【0080】
(2)150℃における引張弾性率のTD/MD比の測定
(1)と同様の条件で100×100×2mmtの成形用金型を用いて射出成形を行い、シート形状の成形品を得た。得られた成形品を用いて、樹脂の流動方向(MD方向)及びMD方向と直交する方向(TD方向)の引張試験用ダンベル(ISO Type1BA)をそれぞれ切削した。得られたダンベル片をISO 527-1および2に準拠した測定方法により、150℃における引張弾性率を測定し、TD/MD比を算出した。結果を表1及び2に示す。
【0081】
(3)無理抜き成形品の表面粗さ(Sa及びSz)の測定
得られたペレットをシリンダー温度310℃に設定した住友重機製射出成形機(SE-75D-HP)に供給し、金型温度140℃に温調した無理抜き構造を有する金型を用いて射出成形し、パイプ形状(内径φ11.5、アンダーカット比15)の成形品を得た。パイプ先端の内径側表面のクラック有無を目視で確認し、クラックがある場合にはその箇所について3D寸法測定機(株式会社キーエンス社製「VR-5200」)で表面粗さ(算術平均高さSa及び最大高さSz)をISO 25178に準拠して測定した。大きく深いクラックが発生した場合はSa及びSzがより大きい値を示す。結果を表1及び2に示す。
【0082】
(4)無理抜き成形品の真円保持率の評価
(3)と同様のパイプ形状の成形品を用いて評価した。パイプ先端の内径側倒れが最も大きい箇所(a)と最も小さい箇所(b)における円筒部の先端部分から膨出部の頂部までの外径方向の寸法(
図2における円筒部10の先端15から膨出部11の頂部12までの寸法)を3D寸法測定機株式会社キーエンス社製「VR-5200」)で測定した。測定した値から、次式より真円度を算出した。真円度が100%に近いほど、変形が抑制されていることを示す。結果を表1及び2に示す。
真円保持率〔%〕=(b)寸法〔mm〕/(a)寸法〔mm〕×100
【0083】
【0084】
【0085】
・PAS樹脂(A)
PPS樹脂
A-1:リニア型、溶融粘度(V6)40Pa・s、非ニュートン指数1.16
【0086】
・無機充填材(B)
B-1:粉粒状無機充填材、ガラスビーズ、株式会社ユニオン社製UB-02EG、粒子径(D50)19.5μm
B-2:粉粒状無機充填材、炭酸カルシウム、三共精粉社製炭酸カルシウム1級、粒子径(D50)1.7μm
B-3:板状無機充填材、ガラスフレーク、日本板硝子社製REFG-301、ベースフレーク平均粒径160μm、厚み5μm
B-4:繊維状無機充填材、ガラス繊維、日本電気硝子社製ECS03T-725H、繊維径:10μm、繊維長:3mmのチョップドストランド
【0087】
・その他の成分
C-1:エラストマー 住友化学株式会社製 ボンドファースト7L
【0088】
表1及び2から、実施例の成形品は比較例の成形品と対比して、成形品の表面粗さが小さく、真円保持率が大きいことから、無理抜き成形時の変形が抑制されていることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0089】
1 無理抜き成形品
10 円筒部
11 膨出部
12 頂部
13 段差
14 接続部分
14a 隅部
15 先端
16 先端部分
17 末端
18 傾斜部
21 外面
22 内面
30 金型