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特許7608695荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20241224BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20241224BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20241224BHJP
   G01N 23/2252 20180101ALI20241224BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20241224BHJP
   G06N 3/088 20230101ALI20241224BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20241224BHJP
   G06T 1/40 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/28 B
G01N23/04 330
G01N23/2252
G06N3/02
G06N3/088
G06T1/00 300
G06T1/40
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081284
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2020184538
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】19172805.4
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クルサーチク
(72)【発明者】
【氏名】トマーシュ トゥマ
(72)【発明者】
【氏名】イジー ぺトレック
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506996(JP,A)
【文献】特開2014-178328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0122992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法であって、
荷電粒子ビームをサンプルとともに提供するステップと、
前記サンプル上で前記荷電粒子ビームを走査するステップと、
前記サンプルにわたって走査された前記荷電粒子ビームに応答して、第1の検出器を使用して、前記サンプルからの第1のタイプの放射を検出するステップと、
検出された第1のタイプの放射のスペクトル情報を使用して、複数の互いに異なる相を前記サンプルに割り当てるステップと、
HSV色空間を参照して、対応する複数の異なる色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けるステップと、
制御ユニットによって、前記サンプルの画像表現を提供するステップであって、前記画像表現が前記の関連する異なる色相を含むステップと、を備え、
前記関連付けるステップは、
予め選択された連続した色相の範囲を提供するステップと、
前記予め選択された連続した色相の範囲から前記複数の異なる色相を選択し、択された色相が、前記予め選択された連続した色相の範囲内の等しい色相間隔角度を含む、ステップと、
前記選択された色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けるステップと、
前記複数の異なる色相を選択するステップを繰り返し、再選択された前記色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けるステップと、を備える、方法。
【請求項2】
前記複数の異なる色相を選択するステップが、入力変数として前記複数の互いに異なる相に関する情報を使用することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の異なる色相を選択して関連付けるためのアルゴリズムを使用するステップを備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルゴリズムが非決定性である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法であって、
荷電粒子ビームをサンプルとともに提供するステップと、
前記サンプル上で前記荷電粒子ビームを走査するステップと、
前記サンプルにわたって走査された前記荷電粒子ビームに応答して、第1の検出器を使用して、前記サンプルからの第1のタイプの放射を検出するステップと、
検出された第1のタイプの放射のスペクトル情報を使用して、複数の互いに異なる相を前記サンプルに割り当てるステップと、
HSV色空間を参照して、対応する複数の異なる色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けるステップと、
制御ユニットによって、前記サンプルの画像表現を提供するステップであって、前記画像表現が前記の関連する異なる色相を含むステップと、を備え、
前記関連付けるステップは、
予め選択された連続した色相の範囲を提供するステップと、
前記予め選択された連続した色相の範囲から前記複数の異なる色相を選択し、択された色相が、前記予め選択された連続した色相の範囲内の等しい色相間隔角度を含む、ステップと、
前記選択された色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けるステップと、
前記複数の異なる色相を選択して関連付けるための人工ニューラルネットワーク(ANN)を使用するステップと、を備える、方法。
【請求項6】
前記ANNとして自己組織化マップ(SOM)を使用するステップを備える、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ANNの異なるノードが異なる相を表す、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記ANNの外側エッジが、前記予め選択された連続した色相の範囲に対応する、請求項5~7いずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ANNが、HSV色空間を参照して、少なくとも色相および彩度に関する情報を含む、請求項5~8いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
対応する予め選択されたノードとして複数の予め選択された相を含むように、前記ANNを初期化するステップを備える、請求項6~9いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ANNをトレーニングするステップを備え、前記トレーニングするステップが、特に、前記ANNを割り当てられた前記複数の互いに異なる相とマッチングするステップを備える、請求項6~10いずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
特定の相に特定の色相を予め割り当てるステップを備える、請求項1~11いずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の互いに異なる相に関する情報に基づいて色特性を正規化するステップを備える、請求項1~12いずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法であって、
荷電粒子ビームをサンプルとともに提供するステップと、
前記サンプル上で前記荷電粒子ビームを走査するステップと、
前記サンプルにわたって走査された前記荷電粒子ビームに応答して、第1の検出器を使用して、前記サンプルからの第1のタイプの放射を検出するステップと、
検出された第1のタイプの放射のスペクトル情報を使用して、複数の互いに異なる相を前記サンプルに割り当てるステップと、
HSV色空間を参照して、対応する複数の異なる色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けるステップと、
制御ユニットによって、前記サンプルの画像表現を提供するステップであって、前記画像表現が前記の関連する異なる色相を含むステップと、を備え、
前記関連付けるステップは、
予め選択された連続した色相の範囲を提供することと、
検出された第1のタイプの放射の少なくともスペクトル情報を使用して、1つ以上の調整変数を提供することと、
前記調整変数に基づいて、前記予め選択された連続した色相の範囲から前記複数の異なる色相を選択することと、
選択された色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けることと、
前記複数の異なる色相を選択するステップを繰り返し、再選択された前記色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けることと、
を備える、方法。
【請求項15】
請求項1~14いずれか1項に記載の方法を使用してサンプルを検査するための荷電粒子顕微鏡であって、
荷電粒子源、最終プローブ形成レンズ、およびスキャナを含む、前記荷電粒子源から放射された荷電粒子のビームを試料上に集束させるための、光学カラムと、
前記最終プローブ形成レンズの下流に位置付けられ、かつ前記試料を保持するように構成された、試料ステージと、
前記荷電粒子源から放射された荷電粒子の入射に応答して、前記試料から生じる第1のタイプの放射を検出するための第1の検出器と、
前記第1の検出器に接続された制御ユニットおよび処理装置と、を備え、
前記荷電粒子顕微鏡が、請求項1~14いずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、荷電粒子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、そのような方法を使用してサンプルを検査するための荷電粒子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0003】
荷電粒子顕微鏡法は、特に電子顕微鏡の形態で顕微鏡物体を撮像するための周知の、かつますます重要な技術である。歴史的に、電子顕微鏡の基本的な種数は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、および走査透過型電子顕微鏡(STEM)などの多くの周知の装置種に、ならびに、例えば、イオンビームミリングまたはイオンビーム誘起蒸着(IBID)などの支援活動を可能にする、「機械加工」集束イオンビーム(FIB)をさらに使用するいわゆる「二重ビーム」装置(例えば、FIB-SEM)などの様々な副種に進化している。当業者は、異種の荷電粒子顕微鏡に精通しているであろう。
【0004】
走査電子ビームによる試料の照射は、二次電子、後方散乱電子、X線およびカソード発光(赤外線、可視、および/または紫外線光子)の形態で、試料からの「補助」放射線の放射を促進する。この放出放射線の1つ以上の成分は、サンプル分析のために検出および使用されることができる。
【0005】
通常、SEMでは、後方散乱電子が、固体検出器によって検出され、各後方散乱電子が、半導体検出器内に多くの電子-正孔対を作成するように増幅される。後方散乱電子検出器信号は、ビームが走査されるときに画像を形成するために使用され、各画像点の明るさは、一次ビームがサンプルを横切って移動するときにサンプル上の対応する点で検出された後方散乱電子の数によって判定される。画像は、検査されるサンプルのトポロジーに関する情報を提供するのみである。
【0006】
「エネルギー分散型X線分析」または「EDS」と称されるプロセスでは、電子ビームに応答してサンプルから入ってくるX線のエネルギーが測定され、ヒストグラムにプロットされて、材料固有スペクトルを形成する。測定されたスペクトルは、どの元素および鉱物が前記サンプル中に存在するかを判定するために、様々な元素の既知のスペクトルと比較され得る。
【0007】
EDS情報を含むカラー画像のセットを提供することが知られており、各カラー画像は、異なる色相を使用して異なる相を表す。このいわゆる要素マッピング技術では、ユーザーは、サンプルに関連する1つ以上の相を選択し、それらの相のそれぞれに所望の色相を割り当てる。これは、それぞれが異なる色相の関連する相に関する情報を含む一連の画像をもたらす。カラー画像のセットは、SEM画像と比較され、興味深い領域を特定することができる。しかしながら、ユーザーによってこれらの画像を意味のある一貫した方法で解釈することは比較的困難である。その目的のために、異なる相と対応する色を単一のカラー画像に組み合わせることが試みられている。しかしながら、相を選択し、意味のある一貫した方法で色相を割り当てることは困難であり、かなり時間がかかる。
【発明の概要】
【0008】
したがって、サンプルを検査する改善された方法を提供することを目的とし、特に、本方法は、改善された相情報を有するサンプルの画像を提供する。
【0009】
この目的のために、請求項1に記載の方法が提供される。本明細書で定義される方法は、荷電粒子ビームならびにサンプルを提供するステップと、前記荷電粒子ビームを前記サンプルにわたって走査するステップとを備える。サンプル上で走査された荷電粒子ビームに応答してサンプルから放射される第1のタイプの放射は、第1の検出器を使用して検出される。そして、複数の互いに異なる相が前記サンプルに割り当てられ、検出された第1のタイプの放射のスペクトル情報が使用される。例として、上述したEDSプロセスは、このステップにおいて使用され、材料固有のスペクトルを形成し、前記サンプルにどの元素およびミネラル(すなわち、相)が存在するかを判定することができる。スペクトル情報を取得して使用する他の方法も使用されることができる。
【0010】
本明細書で定義される場合、本方法は、さらに、HSV色空間を参照して、前記複数の互いに異なる相に対応する複数の異なる色相を関連付けるステップを備える。これは、異なる色相(例えば、緑、赤、橙、青)が異なる相(例えば、元素、化学物質、鉱物など)に割り当てられることを意味する。HSV色空間は、特定の色の属性を説明するために、色相(例えば、赤、緑、青などの「色」と呼ばれることが多い)、彩度(色の強度または純粋さと呼ばれることが多い)、値(色の明度または暗度と呼ばれることが多い)を使用する色空間である。HSV色空間は、色相と、0°で赤の原色から始まり、120°で緑原色および240°で青原色を通過した後、360°で赤に折り返されるその角度次元とを有する円筒形状で表すことができる。中央の縦軸は、下が値0の黒から上が値1の白までの範囲である中間色、無彩色、またはグレー色を備える。半径が大きくなると、色の彩度が高くなる。
【0011】
原則として、使用される実際の色空間に関係なく、任意の色がHSV色空間において記述されることができる。したがって、本明細書に記載の方法は、特定の色空間の使用に限定されず、同様にRGB色空間(全てのRGB色は、同様にHSV色空間を参照して記述されることができるため)、またはその状況によっては任意の他の色空間に適用されることができる。
【0012】
本方法によれば、制御ユニットは、前記サンプルの画像表現を提供するために使用され、前記画像表現は、前記関連する異なる色相を含む。したがって、制御ユニットは、位相の情報をユーザーに提供するために使用され、前記情報は、前記異なる色相で符号化される。前記画像表現は、単一の画像とすることができるが、複数の画像、または画像表現を含むデータテーブルなどの使用も考えられる。前記画像表現はまた、好ましくは、異なる値および/または異なる彩度も含む。
【0013】
本明細書で定義される場合、本方法は、予め選択された連続した色相の範囲を提供する追加のステップを備える。予め選択された連続した色相の範囲は、HSV色空間に関して、色相値を増加または減少させている、すなわち角度次元を増加または減少させているが、事前の選択中に順序付けされた方法で提供または記憶される必要はない。完全な角度範囲を提供する必要はない、すなわち、全ての色相(赤、紫、青、緑、黄、橙、[赤]、および/または中間)が予め選択された色の範囲において使用される必要はないことに留意されたい。例えば、制限された角度値を有する予め選択された色相の範囲には、例えば、赤、橙、黄(すなわち、0°から60°)などが提供されることが考えられる。他の実施形態では、単一の色相の異なるバリエーション、すなわち、青みがかった緑、緑、および黄みがかった緑(すなわち、90°から150°)が提供される。
【0014】
したがって、予め選択された連続した色の範囲は、HSV色空間を基準にした角度の色相範囲を含む。実施形態では、予め選択された連続する色の範囲は、HSV空間を基準とした完全な角度の色相範囲を含む。他の実施形態では、予め選択された範囲は、HSV空間を基準にして制限された角度の色相範囲を含む。
本方法によれば、HSV色空間を参照して、対応する複数の異なる色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けるステップは、以下のステップを備える:
-選択された色相が、前記予め選択された連続した色相の範囲内の互いに対応する間隔を含むように、前記予め選択された連続した色相の範囲から前記複数の異なる色相を選択する。および
-前記選択された色相を前記複数の互いに異なる相に関連付ける。
【0015】
このようにして、前記サンプルの画像表現は、HSV色空間を基準にした類似の色相間隔角度を有する前記選択された色相を含む。最終的に関連付けられて使用される色相間の色相間隔角度が開始色相から終了色相まで実質的に等しくなるように色相が選択され、異なる相間の差が直接視認可能であるため、最終画像の読みやすさが向上し、結果の解釈がユーザーによって迅速かつ確実に実行されることができることを確実にする。これは、多相情報を含む単一の画像が提供される場合、特に最終画像に示される相の数が比較的多い場合に特に当てはまる。
【0016】
ここで、全角度範囲(0°から360°)が使用される場合、色相間隔角度は、約360°/nに等しいことに留意されたい。ここで、nは使用される色相の数である。限られた角度の色相範囲のみが使用される場合、開始色から終了色まで実質的に等しい間隔角度が使用されるように、間隔角度は、それに応じて決定される。
【0017】
実施形態では、固定された色相間隔角度は、追加の相について使用され、固定された色相間隔角度は、黄金角に等しい。黄金角(約137.5°)を使用して追加の各相の追加の色相を選択することにより、関連付けが必要な相の数に関係なく、最大の未使用ギャップから次の色が選択されかつ色が、モデルが与えられる限り繰り返されないように、全ての色相が選択されることが確実にされる。
【0018】
したがって、上述した方法は、HSV色空間のトポロジーを、定義された方法で相の高次元データ空間にマッピングすることを利用することができる。本方法により、検査対象のサンプルに関する関連情報を含む、有益で一貫性があり、より読みやすいカラー画像を作成することができる。本方法を使用することにより、画像は、ユーザーにとっても視覚的に楽しいものになる。これにより、本発明の目的が達成される。
【0019】
有利な実施形態が以下に説明される。
【0020】
実施形態では、前記複数の異なる色相を選択するステップは、入力変数として複数の互いに異なる相に関する情報を使用することを備える。情報は、サンプルにおいて検出された相の数を含むことができ、これは、色相間隔角度を判定するのに役立つ。この情報はまた、異なる相の数も含むことができ、これは、類似するまたはある程度類似する相が一体にグループ化され、単一の色相または類似の色相が割り当てられることを意味する。類似の相は、例えば、これらのまたは互換性のある色相など、同じである1つ以上の化学元素を含むため、類似の組成を有する相とすることができる。
【0021】
実施形態では、予め選択された連続した色相の範囲を提供するステップは、対応する1つ以上の相に予め選択された色相のうちの1つ以上を割り当てるステップを備えることができる。このステップは、制御ユニットによって実行されることができる。ステップは、前記制御ユニットまたはユーザーによって開始されることができる。このようにして、例えば、青色相をシリコンに、紫色相を酸素に、および橙色相を白金に割り当てることが可能である。したがって、最終的に使用される色相の特定の境界条件を判定することが可能である。これは、異なるサンプルと異なる実験との間に一貫性を提供し、ユーザーは、サンプルの結果をより容易に解釈することができる。特定の色相を異なる相に予め割り当てる境界条件は、明らかに、この実施形態によって得ることができる色相間隔角度についていくつかの制限を設定し、これは、全ての色相間隔角度が等しいまたは同様である必要はないことを意味する。しかしながら、これらの境界条件が与えられると、本方法は、好ましくは、選択された色相が前記予め選択された連続した色相の範囲内の互いに対応する間隔を含むように、追加の相に対して追加の色相を選択する。
【0022】
実施形態では、本方法は、前記複数の異なる色相を選択し、再選択された色相を前記複数の互いに異なる相に関連付ける前記ステップを繰り返すステップを備える。前記繰り返すステップは、制御ユニットによって、またはユーザーによって開始されることができる。再選択は、例えば、サンプルのデータ収集中に行うことができる。さらに多くのデータが入力されると、追加の相が検出されることができ、それに基づいて色相が再選択されることができる。追加的にまたは代替的に、例えば、ユーザーによる境界条件の設定または変更後に、再選択を行うことができる。例えば、最初の結果が与えられた場合、ユーザーは、特定の色相を特定の相(または組成)に割り当て、他の選択された色相の変更を要求したいことが考えられる。この繰り返すステップはまた、さらなる予め選択された連続した色相の範囲を提供するステップを備えることができ、予め選択された連続した色相の範囲は、最初に提供される予め選択された連続した色相の範囲とは異なる。例えば、選択および関連付けの繰り返されるステップ中に、より広いまたはより小さな角度の色相範囲が使用されることが考えられる。
【0023】
実施形態では、前記第1のタイプの放射は、前記画像表現内の異なる飽和度を符号化するために使用される。
【0024】
実施形態では、第2の検出器は、前記第1のタイプとは異なる第2のタイプの放射を検出するために使用される。前記第2のタイプの前記放射は、例えば、二次電子および/または後方散乱電子とすることができる。前記第2のタイプの前記放射は、前記画像表現内の異なる値を符号化するために使用される。換言すれば、SEMが使用され、検査対象のサンプルのグレースケール画像を取得し、色が使用され、好ましくはその画像の上に、前記画像表現内で、好ましくはEDSに関連する第1のタイプの放射を符号化する。
【0025】
実施形態では、本方法は、前記複数の異なる色相を選択して関連付けるためのアルゴリズムを使用するステップを備える。
【0026】
前記アルゴリズムは、実施形態では、以下のステップのうちの1つ以上を備えることができる:
-第1のカラースキームを提供する。
-1つ以上の調整変数を提供する。
-最終的なカラースキームを生成し、この最終的なカラースキームを使用して、前記サンプルの画像表現を提供する。
【0027】
前記調整変数は、グローバルプリファレンスおよび/またはユーザープリファレンスなどの1つ以上のプリファレンスを含むことができる。前記調整変数はまた、1つ以上のプリファレンスを変更するために使用される負の調整値および正の調整値を含むことができる。例えば、サンプルの組成は、グローバルプリファレンスを最終的なプリファレンスに変更する調整値を生成するために使用されることができ、それによって最終的なカラースキームが生成される。
【0028】
上述したアルゴリズムは、予め選択された連続した色相の範囲(すなわち、初期カラースキーム)を利用し、最終的なカラースキームを選択するための境界条件としての1つ以上の調整変数に基づいて関連色(すなわち、最終的なカラースキーム)を選択することに留意されたい。選択された色は、互いに対応する色相間隔角度を提供することができるが、色相間隔角度が実質的に対応していないことが考えられる。したがって、態様によれば、荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法であって、
-荷電粒子ビームをサンプルとともに提供するステップと、
-前記サンプル上で前記荷電粒子ビームを走査するステップと、
-サンプルにわたって走査されたビームに応答して、第1の検出器を使用して、サンプルからの第1のタイプの放射を検出するステップと、
-検出された第1のタイプの放射のスペクトル情報を使用して、複数の互いに異なる相を前記サンプルに割り当てるステップと、
-HSV色空間を参照して、対応する複数の異なる色相を前記複数の互いに異なる相に関連付けるステップと、
-制御ユニットによって、前記サンプルの画像表現を提供することであって、前記画像表現が前記関連する異なる色相を含むステップと、を備え、
以下のステップを特徴とする:
-予め選択された連続した色相の範囲を提供する。
-検出された第1のタイプの放射の少なくともスペクトル情報を使用して、1つ以上の調整変数を提供する。
-前記調整変数に基づいて、前記予め選択された連続した色相の範囲から前記複数の異なる色相を選択する。および
-前記選択された色相を前記複数の互いに異なる相に関連付ける。
【0029】
そのようなアルゴリズムを使用することにより、関連性があり、有益で、一貫性があり、より読みやすいカラー画像表現を作成するために、適切なカラースキームが使用されることが確実にされる。そのようなアルゴリズムの多くの変更が考えられ、いくつかの実施形態は、添付図面の実施形態によって説明される。しかしながら、最初に、本明細書に開示される方法のいくつかの他の実施形態が説明される。
【0030】
実施形態では、本方法は、前記複数の異なる色相を選択して関連付けるための人工ニューラルネットワーク(ANN)を使用するステップを備える。ANNは、利用可能なデータに基づいて関連する色相を選択および関連付けるために有利に使用されることができ、その点で比較的効果的である。
【0031】
実施形態では、本方法は、前記人工ニューラルネットワークとして自己組織化マップ(SOM)を使用するステップを備える。
【0032】
実施形態では、前記ANNの異なるノードは、異なる相を表す。前記ANNの外側エッジは、前記予め選択された連続した色相の範囲に対応することができる。HSV色空間に関して、前記ANNは、少なくとも色相および彩度に関する情報を含む。さらにまた、本方法は、対応する予め選択されたノードとして複数の予め選択された相を含むように前記ANNを初期化するステップを備えることが考えられる。
【0033】
実施形態では、本方法は、前記ANNをトレーニングするステップを備え、前記トレーニングするステップは、特に、前記ANNを前記割り当てられた複数の互いに異なる相とマッチングするステップを備える。
【0034】
実施形態では、本方法は、特定の相に特定の色相を予め割り当てるステップを備える。
【0035】
実施形態では、本方法は、複数の互いに異なる相に関する情報に基づいて色特性を正規化するステップを備える。
【0036】
態様によれば、サンプルを検査するための荷電粒子顕微鏡であって、
-荷電粒子源、最終プローブ形成レンズ、およびスキャナを含む、前記荷電粒子源から放射された荷電粒子のビームを試料上に集束させるための、光学カラムと、
-前記最終プローブ形成レンズの下流に位置付けられ、かつ前記試料を保持するように構成された、試料ステージと、
-前記荷電粒子源から放射された荷電粒子の入射に応答して、前記試料から生じる第1のタイプの放射を検出するための第1の検出器と、
-前記第1の検出器に接続された制御ユニットおよび処理装置と、を備える。
【0037】
本明細書で定義される場合、特に、前記制御ユニットおよび/または前記処理ユニットは、前記方法の少なくとも一部を実行するために構成されるため、前記荷電粒子顕微鏡は、上述したような方法を実行するために構成される。
【0038】
実施形態では、前記荷電粒子顕微鏡は、さらに、前記荷電粒子源から放射された荷電粒子の入射に応答して、前記試料から生じる第2のタイプの放射を検出するための第2の検出器を備える。
【0039】
実施形態では、前記荷電粒子顕微鏡は、さらに、処理された第1の検出情報および処理された第2の検出情報の組み合わせを出力するための出力装置を備える。特に、前記出力装置は、カラー画像を出力するように構成され、前記カラー画像の色空間は、色相、値および彩度を含み、
-第1のタイプの放射(例えば、EDSデータ)が、カラー画像の色相および彩度のうちの少なくとも一方を定義するために使用され、
-前記第2のタイプの放射(例えば、SEMデータ)が、前記カラー画像の値を定義するために使用される。
【0040】
本発明は、ここで、例示的な実施形態および添付の概略図面に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明の第1の実施形態にかかる荷電粒子顕微鏡の縦断面図を示している。
図2図2は、本発明の第2の実施形態にかかる荷電粒子顕微鏡の縦断面図を示している。
図3図3は、HSV色空間の表現を示している。
図4図4は、色相を選択して相に割り当てる第1の実施形態を示している。
図5図5は、色相を選択して相に割り当てるための人工ニューラルネットワークの使用を示している。
図6図6は、色相を選択して相に割り当てる第2の実施形態を示している。
図7図7は、正規化色特性が使用される実施形態を示している。
図8図8は、色相を選択して相に割り当てるためのアルゴリズムの実施形態を示している。
図9図9は、本明細書に開示される方法を使用したサンプルの画像表現を示している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1(正確な縮尺ではない)は、本発明の実施形態にかかる、荷電粒子顕微鏡Mの実施形態の非常に概略的な描写である。より具体的には、透過型顕微鏡Mの実施形態を示しており、この場合、これはTEM/STEMである(ただし、本発明の文脈では、有効にSEM(図2参照)、又は例えばイオンベースの顕微鏡とすることができる)。図1において、真空筐体2内では、電子源4は、電子-光軸B’に沿って伝搬し、かつ(例えば(局所的に)薄くする/平坦化することができる)電子を試料Sの選択された部分に導く/集束させるように機能する電子光学照明器6を横断する電子ビームBを生成する。また、偏向器8が図示されており、これは(とりわけ)、ビームBの走査運動を行うために使用されることができる。
【0043】
試料Sは、ホルダHが(取り外し可能に)固定されているクレードルA’を移動させる、位置決め装置/ステージAによって複数の自由度で位置決めすることができる試料ホルダHに保持されており、例えば、試料ホルダHは、(とりわけ)X-Y平面内で移動することができるフィンガを備えることができる(示されたデカルト座標系を参照されたい。通常は、Zに平行およびX/Yを中心に傾く移動も可能である)。そのような移動により、試料Sの異なる部分が、軸B’に沿って(Z方向に)進む電子ビームBによって、照明/撮像/検査されることを可能にする(および/または走査運動が、ビーム走査の代替として、行われることを可能にする)。所望の場合、任意選択の冷却装置(描写せず)を、試料ホルダHと密に熱接触させて、試料ホルダH(および、その上の試料S)を、例えば極低温度に維持することができる。
【0044】
電子ビームBは、(例えば)二次電子、後方散乱電子、X線、および光放射線(カソード発光)を含む様々な種類の「励起(stimulated)」放射線を試料Sから放射させるような様式で、試料Sと相互作用するだろう。所望される場合、例えば、シンチレータ/光電子増倍管またはEDXまたはEDS(エネルギー分散型X線分光)モジュールを組み合わせた分析装置22の助けを借りて、これらの放射線の種類のうちの1つ以上を検出することができ、このような場合には、SEMと基本的に同じ原理を使用して画像を構築することができる。しかしながら、試料Sを横断(通過)し、試料から出射/放射され、軸B’に沿って(実質的には、とはいえ一般的に、ある程度偏向/散乱しながら)伝播し続ける電子を代替的に、または補足的に調査することができる。このような透過電子束は、撮像システム(投影レンズ)24に入射し、撮像システム24は一般的に、多種多様な静電レンズ/磁気レンズ、偏向器、補正器(例えばスティグメータのような)などを備えている。通常の(非走査)TEMモードでは、この撮像システム24は、透過電子束を蛍光スクリーン26に集束させることができ、蛍光スクリーン26は、所望に応じて、それを軸B’の邪魔にならないように後退/回収する(矢印26’で概略に示すように)ことができる。試料Sの(一部の)画像(または、ディフラクトグラム)は、撮像システム24によりスクリーン26上に形成され、この画像は、筐体2の壁の適切な部分に位置付けられた視認ポート28を介して視認され得る。スクリーン26の後退機構は、例えば、本質的に機械的および/または電気的であり得るが、図面には描写されていない。
【0045】
スクリーン26上の画像を視認することの代替として、撮像システム24から出ていく電子束の焦点深度が一般的に、極めて深い(例えば、約1メートル)という事実を代わりに利用することができる。その結果、以下のような様々な他のタイプの分析装置をスクリーン26の下流で使用することができる。
-TEMカメラ30。カメラ30の位置に、電子束は、静止画像(または、ディフラクトグラム)を形成することができ、静止画像は、コントローラ/プロセッサ20により処理することができ、例えばフラットパネルディスプレイのような表示装置(図示せず)に表示することができる。必要ではない場合、カメラ30は、後退/回収(矢印30’で概略に示すように)されて、カメラを軸B’から外れるようにすることができる。
-STEMカメラ32。カメラ32からの出力は、試料S上のビームBの(X、Y)走査位置の関数として記録することができ、X、Yの関数としてのカメラ32からの出力の「マップ(map)」である画像を構築することができる。カメラ32は、カメラ30に特徴的に存在する画素行列とは異なり、例えば直径が20mmの1個の画素を含むことができる。さらに、カメラ32は、一般的に、カメラ30(例えば、10画像/秒)よりも非常に高い取得速度(例えば、10ポイント/秒)を有することになる。この場合も同じく、必要でない場合、カメラ32は、(矢印32’で概略に示すように)後退/回収されて、カメラを軸B’から外れるようにすることができる(このような後退は、例えばドーナツ形の環状暗視野カメラ32の場合には必要とされないが、このようなカメラでは、中心孔により、カメラが使用されていなかった場合に電子束を通過させることができる)。
-カメラ30または32を使用して撮像を行うことの代替として、例えば、EELSモジュールとすることができる分光装置34を呼び出すこともできる。
【0046】
部品30、32、および34の順序/位置は厳密ではなく、多くの可能な変形が考えられることに留意されたい。例えば、分光装置34は、撮像システム24と一体化することもできる。
【0047】
示される実施形態では、顕微鏡Mは、符号40で概して示される、後退可能なX線コンピュータ断層撮影(CT)モジュールをさらに備える。コンピュータ断層撮影(断層撮像とも称される)では、源および(対極にある)検出器を使用して、様々な視点から試料の透過観察を取得するように、異なる視線に沿って試料を調べる。
【0048】
コントローラ(コンピュータプロセッサ)20は、図示される様々な構成要素に、制御線(バス)20’を介して接続されることに留意されたい。このコントローラ20は、操作を同期させる、設定ポイントを提供する、信号を処理する、計算を実行する、およびメッセージ/情報を表示デバイス(描写せず)に表示するといった様々な機能を提供することができる。言うまでもなく、(概略的に描写される)コントローラ20は、筐体2の(部分的に)内側または外側に位置させることができ、所望に応じて、単体構造または複合構造を有することができる。
【0049】
当業者であれば、筐体2の内部が気密な真空状態に保持される必要はないことを理解できるであろう。例えば、いわゆる「環境制御型TEM/STEM」では、所与のガスの背景雰囲気が、筐体2内に意図的に導入/維持される。当業者はまた、実際には、筐体2の容積を閉じ込めて、可能であれば、筐体2が、軸B’を本質的に包み込むようになって、採用する電子ビームが小径管内を通過し、しかも広がって源4、試料ホルダH、スクリーン26、カメラ30、カメラ32、分光装置34などのような構造を収容する小径管(例えば、直径約1cm)の形態を採ると有利となり得ることを理解するであろう。
【0050】
本発明にかかる、実施形態が図1に示される、荷電粒子顕微鏡Mは、したがって、荷電粒子源4、最終プローブ形成レンズ6、およびスキャナ8を含み、前記荷電粒子源4から放射された荷電粒子のビームBを試料上に集束させるための、光学カラムOを備える。装置は、前記最終プローブ形成レンズ6の下流に位置付けられ、かつ前記試料Sを保持するように構成された、試料ステージA、Hをさらに備える。装置は、前記荷電粒子源4から放射された荷電粒子Bの入射に応答して前記試料から生じる第1のタイプの放射を検出するための第1の検出器22をさらに備える。示される実施形態では、第1の検出器22は、上述のように、シンチレータ/光電子増倍管またはEDS(エネルギー分散型X線分光法)モジュールを組み合わせた分析装置22である。好ましい実施形態では、前記第1の検出器は、EDSである。さらに、本発明にかかる装置は、前記第1の検出器22(概略的に示されている)に接続されている(線20’によって)制御装置20を備える。本発明によれば、前記荷電粒子顕微鏡Mは、本発明にかかる方法を実行するように構成されており、本方法は、図3から図8によって後述されることになる。
【0051】
ここでまず、図2を参照すると、本発明にかかる装置の他の実施形態が示されている。図2(正確な縮尺ではない)は、本発明にかかる荷電粒子顕微鏡Mの非常に概略的な描写であり、より具体的には、この場合では、SEMである、非透過型顕微鏡Mの実施形態を示す(ただし、本発明の文脈では、例えば、イオンベース顕微鏡も同様に有効であり得る)。図では、図1の部品に対応する部分は、同一の参照符号を使用して示され、ここでは別個に説明されない。(とりわけ)以下の部分が図1に加えられる。
-2a:真空チャンバ2の内部に/内部から、部品(構成要素、試料)を導入/除去するように開放され得るか、またはその上に、例えば、補助装置/モジュールが装着され得る、真空ポート。顕微鏡Mは、必要に応じて、複数のそのようなポート2aを備え得る。
-10a、10b:概略的に図示された照明器6内のレンズ/光学素子。
-12:必要に応じて、試料ホルダHまたは少なくとも試料Sが、接地に対してある電位にバイアス(浮遊)されることを可能にする電圧源。
-14:FPDまたはCRTなどのディスプレイ。
-22a、22b:中央開口22b(ビームBの通過を可能にする)の周囲に配設された複数の独立検出セグメント(例えば、四分円)を含む、セグメント化された電子検出器22a。そのような検出器は、例えば、試料Sから発せられる出力(二次または後方散乱)電子束(の角度依存性)を調査するために使用され得る。
【0052】
したがって、図2に示される荷電粒子顕微鏡Mは、荷電粒子源4、最終プローブ形成レンズ6、10a、10b、およびスキャナ8を含み、前記荷電粒子源4から放射された荷電粒子のビームBを試料S上に集束させる、光学カラムOを備える。装置は、前記最終プローブ形成レンズ6の下流に位置付けられ、かつ前記試料Sを保持するように構成された試料ステージA、Hをさらに備える。装置は、前記荷電粒子源4から放射された荷電粒子のビームBの入射に応答して、前記試料から生じる第1のタイプの放射を検出するための第1の検出器22をさらに備える。示される実施形態では、第1の検出器22は、上述のように、シンチレータ/光電子増倍管またはEDS(エネルギー分散型X線分光法)モジュールを組み合わせた前記分析装置22である。代替実施形態では、第1の検出器22は、セグメント化された検出器22a、22bとすることができる。好ましい実施形態では、前記第1の検出器は、EDSである。さらにまた、本発明にかかる装置は、前記第1の検出器22に接続されている(線20’によって)前記制御装置20を備える。
【0053】
図1および図2に示される装置は、本発明にかかる方法を使用してサンプルを検査することに使用されることができる。一般に、本方法の実施形態は、全て、以下の一般的なステップを備える:
-前記サンプルS上で前記荷電粒子ビームBを走査する。
-サンプルSにわたって走査されたビームBに応答して、第1の検出器22を使用して、サンプルSからの第1のタイプの放射を検出する。
-検出された第1のタイプの放射のスペクトル情報を使用して、複数の互いに異なる相を前記サンプルに割り当てる。
-HSV色空間を参照して、対応する複数の異なる色相を前記複数の互いに異なる相に関連付ける。
-制御ユニット20によって、前記サンプルの画像表現を提供し、前記画像表現は、前記関連する異なる色相を含む。
【0054】
本明細書に開示される方法は、さらに、以下のステップを備える:
-予め選択された連続した色相の範囲を提供する。
-選択された色相が、前記予め選択された連続した色相の範囲内の互いに対応する間隔を含むように、前記予め選択された連続した色相の範囲から前記複数の異なる色相を選択する。および
-前記選択された色相を前記複数の互いに異なる相に関連付ける。
【0055】
上述した方法ステップについて、以下にさらに詳細に説明する。
【0056】
図3は、本明細書で定義される方法で使用されるHSV色空間101の例を示している。HSV色空間101は、特定の色の属性を記述するために、色相(「色」と呼ばれることが多い、例えば赤、緑、青)、彩度(色の強度または純粋さと呼ばれることが多い)および値(色の明度または暗度と呼ばれることが多い)を使用する色空間である。HSV色空間は、図3に示すように、色相と、0°で赤の原色から始まり、120°で緑原色および240°で青原色を通過した後、360°で赤に折り返されるその角度次元とを有する円筒形状で表すことができる。中央の縦軸は、値0の黒(図3の下部)から値1の白(図3の上部)までの範囲である中間色、無彩色、またはグレー色を備える。半径が大きくなると、すなわち、中心から外側に向かって、色の彩度が高くなる。HSV色空間の詳細は、それ自体、色空間の当業者にとって公知である。
【0057】
図4は、複数の異なる色相が複数の互いに異なる相に割り当てられることができる方法の実施形態を示している。この実施形態では、荷電粒子ビームおよびサンプルが提供され、荷電粒子ビームは、前記サンプル上で走査された。X線などのサンプルの第1のタイプの放射が検出された。それらの検出された放射に基づいて、互いに異なる相の酸素(O)、アルミニウム(Al)およびケイ素(Si)が前記サンプルに割り当てられた。
【0058】
図4は、検査されたサンプルの画像表現を提供するために使用されることができる色空間201の一部の概略的な画像表現を示している。ここで、合計で8つの連続する色相211~218の予め選択された範囲201が提供されることがわかり、以下の色相が使用された:
211-赤;
212-橙;
213-黄;
214-緑;
215-青緑;
216-青;
217-スミレ;および
218-紫。
【0059】
予め選択された連続した色の範囲と利用可能な異なる位相とに基づいて、複数の異なる色相が選択されることができる。選択は、選択された色相が、前記予め選択された連続した色相の範囲内で互いに対応する間隔を含むように行われる。示されている実施形態では、赤211、黄213および青216の色が選択されている。これらの色は、HSV色空間を参照して、前記予め選択された連続した色相の範囲内で、略等しい色相間隔角度を有する。図示の実施形態では、次いで、赤色211が酸素に割り当てられ、黄色213がシリコンに割り当てられ、青色216がアルミニウムに割り当てられる。代替として、赤211がアルミニウムに、黄213が酸素に、青216がシリコンに割り当てられることが考えられる。
【0060】
選択された色相の異なる相への割り当ては、例えばアルゴリズム(図8の説明も参照)を使用して、ランダムに、またはより構造化された方法で行うことができる。例えば、境界条件は、制御ユニットまたはユーザーのいずれかによって提供されることが考えられる。これらの境界条件は、色相赤211が酸素(O)に割り当てられる必要があるなど、特定の相に必要な色相を含むことができる。このようにして、特定の色相は、特定の相に予め割り当てられることができる。これらの境界条件に基づいて、追加の色は、予め選択された色相のリストから選択されることができる。
【0061】
代替として、第1の色のように、任意の色相は、前記予め選択された連続した色相の範囲から選択されると考えられる。予め選択された連続した色相の範囲内で第1の色相を選択する必要はない。例えば、O、SiおよびAlについて、これらの色相は、同様に略等しい色相間隔角度を示すため、橙212、緑214および紫217の色相が選択されることが考えられる。
【0062】
代替として、前記予め選択された色の範囲内の後続の色相が使用されることが考えられる。例えば、Si、OおよびAlについて、これらの色相は、同様に略等しい色相間隔角度を示すため、橙212、黄213および緑214の色相が使用されることが考えられる。
【0063】
図5は、人工ニューラルネットワーク(ANN)が複数の異なる色相を選択して関連付けるために有用であり得る方法を示している。図5は、実施形態では自己組織化マップ(SOM)とすることができる、そのようなANNによって生成された色空間301を示している。このようにして、化学組成は、カラーモデルによって与えられる相互依存性を尊重するノード(311~316、321、322)のネットワーク上にマッピングされることができる。ネットワークは、到来するデータにしたがって、すなわち、追加のデータが検出器によって検出されたときに適合させることができる。そのようなANN、特にSOMは、一般に、サンプルの画像表現において使用される色相を生成および選択するために有用であり得る。主な利点は、相組成の(非)類似性を反映するようにANNを使用およびプログラムされることができるということである。
-類似した組成を有する相は、類似した色を有する必要がある。
-重なり合う相は、混合を可能にするために、カラーホイール上で隣接する色を有する必要がある。
-2つの異なる相は、類似した色を取得しないはずである。および
-明確な相(他の全ての相とは異なる)は、明確な色を有する必要がある。
【0064】
さらに、ANNが実験全体で一貫した結果を生成することを保証するために、境界条件を追加することが可能である。例えば、銅などの特定の相は、周囲に関係なく同じ色を取得することが望ましい。したがって、対応する予め選択されたノードとして、予め選択された複数の相を含むようにANNが初期化されることができる。
【0065】
さらに、ANNは、利用可能なデータに特に適応するようにプログラムされることができる。このようにして、例えば、特定の相がシーンに存在しない場合に色が割り当てられるのを防止したり、または代わりにそれらを異なる相に割り当てたりすることができる。最終的には、これは、技術情報を最も読みやすく情報が密集した方法でユーザーに伝える方法を提供するため、サンプルの最終的な画像表現における色空間全体にわたって色相を利用することが望ましい。したがって、ANNは、選択された色相が前記予め選択された連続した色相の範囲内で互いに対応する間隔を実質的に含むように、前記予め選択された連続した色相の範囲から前記複数の異なる色相を選択するようにプログラムされることができる。もちろん、特定の境界条件が存在するため、全ての色相が対応する色相間隔角度を有するわけではないことも考えられる。
【0066】
さらに、類似の相には、類似の互換性のある色が与えられることができる。したがって、実施形態では、一般的に2つの別個の相、すなわち相Aおよび相Bが存在することが考えられる。これらの2つの別個の相について、橙および青などの2つの反対の色相が選択されることができる。したがって、相Aは、青の色相によって表され、相Bは、橙の色相によって表される。しかしながら、サンプルには相Bのいくつかのバリエーションが存在し、これらの別個の相Bのバリエーションに対して異なる橙の色相を選択することにより、これらを視覚的に表すことができる。したがって、例えば、これらの相Bのバリエーションには橙-赤から黄(いわゆる互換色)の色相を使用し、相Aには単一の青の色相(いわゆる反対色)を使用することができる。このようにして、色相は、選択された色相が前記予め選択された連続した色相の範囲内で互いに対応する間隔を含むように、前記予め選択された連続した色相の範囲から依然として選択される。
【0067】
ここで図5を参照すると、前記ANNは、HSV色空間を参照して、少なくとも色相および彩度に関する情報を含むことがわかる。ほとんどの飽和色(例えば、最も純粋な相)は、ネットワークの境界にあり、飽和度の低い色(例えば、純粋な相が少ない)は、ネットワークの中心にある。
【0068】
図6は、図4に比べて、代替のアプローチが使用される、本明細書に開示される方法の実施形態を示している。図6では、合計8つの色相(赤411、橙412、黄413、緑414、青緑415、青416、紫417および紫418)が提供され、これらの色相は、特定の要素に関連している。例えば、シリコン(Si)は、赤色の色相411に予め関連付けることができ、アルミニウム(Al)は、紫色の色相418に予め関連付けることができ、酸素(O)は、緑色の色相414に予め関連付けることができる。データが入力され、Si、AlおよびOがサンプルの要素として存在することが判明すると、対応する赤、紫、および緑の色相が、予め選択された連続した色相の範囲として提供されることができる。換言すれば、この場合、赤、紫および緑の3つの可能な色相のみが提供される。ここで、三角形401にxマークを有する図6に示すように、異なる相が存在し、選択された色相が、前記予め選択された連続した色相の範囲内の互いに対応する間隔を含むように、異なる色相が予め選択された連続した色相(赤、紫、緑)の範囲から選択されることができる。この点に関して、互いに対応する色相間隔角度を確立するために、色相の混合またはシフトが考えられる。例えば、図6では、それらの間に実質的に対応する色相間隔角度が存在するように、xマークのクラスタ(各クラスタは類似の相を示す)が三角形内に配置されることがわかる。したがって、最終的な画像は、サンプルに存在する相の各クラスタに対して対応する色相間隔角度を有する。
【0069】
さらにまた、複数の互いに異なる相に関する情報に基づいて、本方法は、色特性を正規化するステップを備えることが考えられる。図6は、色空間が完全な色空間(三角形)に対して少し凝縮されていることを示している。図7(左側)は、色空間のBエッジとCエッジとの間に異なる相が非常に凝縮されている例を示している。色相、値および/または彩度の正規化を含むことができる色特性を正規化することにより、最終的な画像表現における色の使用を拡張することができる。これに関して、正規化後に図7(右側)において使用される色(ドット)は、色空間の拡張を提供することに留意されたい。したがって、サンプルの画像表現は、ユーザーにとってより情報密度が高く、読みやすくなる。
【0070】
図8は、本明細書に開示される方法の態様の実施形態の図を示している。図8は、検出された相に色相を割り当てるために使用されることができるアルゴリズムの実施形態を概略的に示している。ブロックU、V、Wは、一般に、ユーザーインターフェースブロックU、検出器ブロックV、およびプロセッサブロックWを表す。これらのブロックU、V、Wは、アルゴリズムブロックi-viによって一般に表されるアルゴリズムの入力を提供する。ここで、アルゴリズムは、アルゴリズムブロックiにおける中間カラースキームを一般化するステップと、アルゴリズムブロックiiiにおいてプリファレンス調整を生成するための負の調整iiおよび正の調整ivのレンダリングと、プリファレンス調整およびプロセッサブロックWから到来するグローバルプリファレンスの双方を使用した最終プリファレンスvの生成とを備える。最終プリファレンスvにより、特定の相viに色を割り当てることができ、これにより、中間カラースキームiは、再度更新されることができる。この方法で生成された中間カラースキームは、ユーザーインターフェースブロックUに出力され、最終的なカラースキームを提供する。
【0071】
ユーザーインターフェースブロックUは、中間カラースキームiにユーザープリファレンスを提供することができる。検出器ブロックVは、サンプルの検出特性に関連する積分組成、相オーバーラップ統計、および/またはその他の変数に関する情報を提供して、負および/または正の調整ii、ivを提供することができる。プロセッサブロックWは、アルゴリズムにグローバルプリファレンスを提供することができる。
【0072】
一般に、アルゴリズムは、以下のステップを使用することができる:
1.「ロックされた」要素を中間カラースキームiに配置する。ロックされた要素は、ユーザーインターフェースブロックUを介してユーザーによって提供される。
2.サンプル内で最大の比率を有する次の配置されていない要素を抽出する。
3.既に占有されている色のプリファレンスを減らす。
4.例えば、最大または対応する色相間隔角度を有する、既に配置された共起要素と互換性のある色のプリファレンスを増やす。
5.これらのプリファレンス調整iiiを、プロセッサユニットブロックWからのグローバルプリファレンスと組み合わせて、最終プリファレンスvを生成する。
6.最終プリファレンスviに応じて色を抽出する(「要素を配置」)。
7.検出された全ての要素または相が配置されるまでステップ2~6を繰り返す。例えば、積分組成にしたがって重みを均等化するなどによって負の調整および/または正の調整が行われると考えられる。
【0073】
したがって、図8に示す実施形態では、予め選択された連続した色相の範囲が提供され、少なくとも検出された第1のタイプの放射のスペクトル情報を使用して、1つ以上の調整変数が提供される。これらの調整値に基づいて、前記複数の異なる色相は、前記予め選択された連続した色相の範囲から選択される。最後に、前記選択された色相は、前記複数の互いに異なる相に関連付けられる。
【0074】
ステップ3および4における増加および減少は、それぞれ、図8に関して前述した正の調整ivおよび負の調整iiに類似していることに留意されたい。
【0075】
図9は、サンプルの画像表現の白黒バージョンを示しており、この場合、セラミック上の白金ロジウム粒子である(Si、Al、O)。画像表現は、本明細書に開示される方法によって選択される異なる色相を含む。色相は、アルミニウムについて青緑、シリコンについて青、白金について橙、酸素について紫、ロジウムについて黄を含む。白金およびロジウムは、類似の相であり、互換性のある黄および橙の色相が割り当てられる。Si、Al、およびOは、異なる位相であり、青みがかった色相が割り当てられ、画像表現において使用される色相間隔角度を最大化する。その結果、Pt-Rh粒子がはっきりと見やすくなり、サンプルに関する情報が増える。
【0076】
本方法のいくつかの実施形態が本明細書で開示された。所望の保護は、添付の特許請求の範囲によって決定される。
【0077】
参考文献:
図7-以下から適応:Pawlowsky-Glahn、Egozcue、Tolosana-Delgado:組成データ解析に関する講義ノート(http://www.sediment.uni-goettingen.de/staff/tolosana/extra/CoDa.pdf、36ページ、MARTIN-FERNANDEZを参照、Josep A.ら、ダイバージェンスの測定に基づく組成データの差異の測定、:Proceedings of IAMG.1999年、211~216ページ)。
【符号の説明】
【0078】
2 真空筐体
2a 真空ポート
4 電子源
4 荷電粒子源
6 電子光学照明器
6 最終プローブ形成レンズ
8 偏向器
8 スキャナ
10a、10b レンズ/光学素子
12 電圧源
14 ディスプレイ
20 コントローラ/またはプロセッサ
20’ 制御線
22 分析装置
22a 電子検出器
22b 中央開口
24 撮像システム
26 蛍光スクリーン
26’、30’、32’ 矢印
28 視認ポート
30 TEMカメラ
32 STEMカメラ
34 分光装置
40 顕微鏡
101 HSV色空間
201 範囲
211~218、411~418 色相
301 色空間
311~316、321、322 ノード
401 三角形
A 位置決め装置/ステージ
A’ クレードル
B 電子ビーム
B’ 軸
H ホルダ
O 光学カラム
S 試料
M 顕微鏡
U、V、W ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9