(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】回転検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/245 110M
G01D5/245 R
(21)【出願番号】P 2024003192
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2020019854の分割
【原出願日】2020-02-07
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和彦
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-340613(JP,A)
【文献】特開2015-114209(JP,A)
【文献】特開2015-121459(JP,A)
【文献】特表2018-505417(JP,A)
【文献】特開2019-138877(JP,A)
【文献】特開2007-85971(JP,A)
【文献】特開2017-161438(JP,A)
【文献】特開2011-69617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01P 3/00-3/80
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている円環状の被検出部材と、
前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、
前記センサ部は、
前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む板状の検出部を有する
2つの磁気センサと、
前記磁気センサを被覆するように設けられたハウジング部と、を有し、
前記磁気検出素子は、前記検出部の板厚方向に対して垂直な方向の磁界を検出する磁気抵抗効果素子からなり、
前記センサ部は、前記ハウジング部の前記検出部が配置されている側の端部が前記被検出部材の軸方向端面と対向して設けられており、
前記ハウジング部の前記軸方向端面と対向する端部の厚さは、前記被検出部材の径方向の幅よりも薄
く、
2つの前記磁気センサは、前記検出部が前記検出部の板厚方向に並ぶように配置されると共に、前記被検出部材の径方向に対して前記検出部の板厚方向が一致するように配置されており、かつ、前記被検出部材の径方向において磁束密度が最大になる位置に対して対称となる位置に2つの前記磁気センサの検出位置がくるように配置されている、
回転検出装置。
【請求項2】
前記ハウジング部の長手方向と前記被検出部材の径方向とが交差している、
請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記ハウジング部は、前記磁気センサを保持するホルダと、前記ホルダの周囲を覆う樹脂モールド部と、を有し、
前記検出部の先端部と対向する部分の前記ハウジング部が、前記ホルダのみで構成されており、前記検出部と前記被検出部材との間に前記樹脂モールド部が介在しない、
請求項1または2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記被検出部材の径方向において磁束密度が最大になる位置が、前記被検出部材の径方向中央位置である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記磁気センサと接続され、前記ハウジング部に長手方向の一部が覆われているケーブルを更に有し、
前記ケーブルは、前記ハウジング部の前記検出部が配置されている側の端部の反対側の端部から延出されている、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車輪の軸受ユニットに用いられ、車輪と共に回転する回転部材の回転速度を検出する回転検出装置が知られている。回転検出装置では、回転部材に取り付けた環状の磁石(被検出部材という)による磁界の変化を、センサ部に設けられた磁気センサで検出することにより、回転部材の回転速度を検出する。
【0003】
一般に、磁気センサは、被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む板状の検出部と、検出部から延出された接続端子と、を有している。従来の回転検出装置では、被検出部材の軸方向端面に対して、検出部の一方の面が対向するように(すなわち、検出部の板厚方向に検出部と被検出部材の軸方向端面とが対向するように)センサ部を配置している(例えば、特許文献1参照)。検出精度を向上するため、被検出部材と検出部間の距離はなるべく短く設定されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、磁気検出素子として磁気抵抗効果素子(MR素子)が広く用いられおり、またMR素子の感度は大きく向上してきている。このような感度の高いMR素子を磁気検出素子として用いた場合、従来通り、被検出部材の軸方向端面に対して、検出部の一方の面が対向するようにセンサ部を配置すると、磁気検出素子が被検出部材に近づき過ぎて、磁気検出位置での磁束密度変化が大きくなり過ぎ、磁気検出素子の抵抗値変化が飽和して検出精度が低下してしまうおそれが生じる。
【0006】
この課題を解決するために、例えば、センサ部内で被検出部材から遠い位置に検出部を設けることが考えられるが、この場合、センサ部が大型化してしまうおそれがある。また、センサ部自体を被検出部材から遠ざけることも考えられるが、センサ部の設置スペースが狭い場合には対応できないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、感度の高いMR素子を磁気検出素子として用いた場合であっても検出精度の低下を抑制でき、かつセンサ部の小型化が可能な回転検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材と、前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、前記センサ部は、前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む板状の検出部と、前記検出部から延出された接続端子と、を有する磁気センサと、前記磁気センサを被覆するように設けられたハウジング部と、を有し、前記磁気検出素子は、前記検出部の板厚方向に対して垂直な方向の磁界を検出する磁気抵抗効果素子からなり、前記センサ部は、前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部である先端部が、前記被検出部材の軸方向端面に臨むように設けられている、回転検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、感度の高いMR素子を磁気検出素子として用いた場合であっても検出精度の低下を抑制でき、かつセンサ部の小型化が可能な回転検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る回転検出装置の概略構成図である。
【
図3】センサ部の内部構造を模式的に示す図であり、(a)は被検出部材の周方向から見た側面図、(b)は被検出部材の径方向から見た正面図である。
【
図4】被検出部材に対する磁気センサの配置を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図6】本発明の一変形例に係るセンサ部の内部構造を示す側面図である。
【
図7】(a),(b)は、本発明の一変形例に係るセンサ部の内部構造を示す側面図である。
【
図8】(a)は、本発明の一変形例に係るセンサ部の内部構造を示す側面図であり、(b)は被検出部材に対する磁気センサの配置を説明する平面図、(c)は(b)において被検出部材の径方向から見た正面図である。
【
図9】
図8(b)のA-A線断面における磁束密度の分布の一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る回転検出装置の概略構成図である。
図1に示すように、転検出装置1は、被検出部材2と、センサ部3と、を備えている。回転検出装置1は、例えば、自動車における車輪の回転速度、すなわち車輪速を検出するために用いられるものである。
【0013】
(被検出部材2)
被検出部材2は、図示しない回転部材に取り付けられており、回転部材と共に回転する。回転検出装置1を車輪速の検出に用いる場合、回転部材は、例えば、車輪が取り付けられ車輪と共に回転する内輪である。被検出部材2は、円環状に形成されると共に、回転部材の回転軸に対して垂直な板状に形成されており、例えば回転部材の外周面に取り付けられている。
【0014】
本実施の形態では、被検出部材2は、回転部材の回転軸を中心した周方向に沿って複数の磁極が設けられている磁気エンコーダから構成されている。被検出部材2は、周方向に沿って交互に配列されたN磁極とS磁極とを有している。
【0015】
(センサ部3)
図2は、センサ部3の外観を示す斜視図である。
図3は、センサ部3の内部構造を模式的に示す図であり、(a)は被検出部材2の周方向から見た側面図、(b)は被検出部材2の径方向から見た正面図である。
【0016】
図1乃至3に示すように、センサ部3は、1つの磁気センサ4と、磁気センサ4を一括して被覆するように設けられたハウジング部5と、を有している。センサ部3は、ケーブル6の端部に設けられており、回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられている。回転検出装置1を車輪速の検出に用いる場合、固定部材は、例えば、自動車の車体に連結され外輪を支持するナックルである。
【0017】
センサ部3は、被検出部材2と対向して配置されている。また、センサ部3は、ケーブル6の延出側と反対側の端部である先端部が、被検出部材2の軸方向端面に臨むように設けられている。より詳細には、センサ部3は、その先端部が、被検出部材2の軸方向端面と、被検出部材2の軸方向に対向するように設けられている。センサ部3からのケーブル6の延出方向は、被検出部材2の軸方向と平行な方向となる。
【0018】
ケーブル6は、1対の電線61を有している。各電線61は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた撚線導体からなる中心導体61aと、中心導体61aの外周に被覆されており、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる絶縁体61bと、を有している。また、ケーブル6は、1対(2本)の電線61を一括して覆うシース62をさらに有している。
【0019】
ケーブル6の端部においては、シース62から1対の電線61が露出され、さらに各電線61の端部において、絶縁体61bから中心導体61aが露出されている。絶縁体61bから露出された中心導体61aの先端部は、対応する磁気センサ4の接続端子41に、溶接により電気的に接続されている。
【0020】
(磁気センサ4)
磁気センサ4は、被検出部材2からの磁界を検出する磁気検出素子(不図示)を含む板状の検出部40と、検出部40から延出された一対の接続端子41と、を有している。
【0021】
磁気検出素子は、検出部40の板厚方向に対して垂直な方向、すなわち検出部40の表面と平行な方向の磁界を検出するMR素子(磁気抵抗効果素子)から構成されている。本実施の形態では、磁気検出素子として、GMR(Giant Magneto Resistive effect)素子を用いた。なお、磁気検出素子としては、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子やTMR(Tunneling Magneto Resistive)素子を用いることもできる。
【0022】
検出部40は、磁気検出素子と、信号処理回路(不図示)と、磁気検出素子と信号処理回路とを一括して覆う覆い体としての樹脂モールド40aと、を有している。検出部40は、平面視で略長方形(長方形の4つの角部のうち1つが面取りされた形状)の板状に形成されている。
【0023】
一対の接続端子41は、検出部40の一方の長辺(面取りされた角部に接続されていない側の長辺)から当該長辺と垂直な方向に延出されており、両接続端子41は互いに平行に形成されている。両接続端子41は、屈曲部を有さず直線状に設けられている。両接続端子41は帯状(細長い板状)に形成されており、その先端部(検出部40と反対側の端部)には、対応する電線61の中心導体61aが電気的に接続されている。
【0024】
両接続端子41の間には、ノイズを抑制するための容量素子が接続されており、容量素子及びその周囲の接続端子41を覆うように、樹脂モールドにより形成された容量素子保護部42が設けられている。以下、接続端子41の延出方向を検出部40における長さ方向と呼称し、長さ方向及び板厚方向と垂直な方向を検出部40における幅方向と呼称する。また、検出部40における接続端子41の延出側と反対側の端部(面取りされた角部に接続されている長辺側の端部)を先端部と呼称する。
【0025】
磁気センサ4は、検出部40の先端部がセンサ部3の先端側へと臨むように設けられている。また、磁気センサ4の検出部40は、幅方向に並ぶように配置された複数(2個乃至5個)の磁気検出素子をそれぞれ有している。
図3では、磁気検出素子による磁界の検出位置を符号40bで表している。
【0026】
本実施の形態に係る回転検出装置1では、センサ部3は、磁気センサ4の検出部40の先端部(センサ部3の先端部)が、被検出部材2の軸方向端面に臨むように設けられている。より詳細には、センサ部3は、被検出部材2の軸方向に対して検出部40の長さ方向が一致するように(被検出部材2の軸方向端面に対して検出部40の長さ方向が垂直となるように)設けられている。
【0027】
このように構成することで、検出部40の一方の面を被検出部材2の軸方向端面に対向させる従来技術と比較して、センサ部3と被検出部材2間の距離(エアギャップ)を同程度としつつも、被検出部材2から磁界の検出位置40bを離間させることが可能になる。被検出部材2から磁界の検出位置40bを離間させることにより、磁界の検出位置40bにおける磁束密度の変化を比較的小さく抑えることが可能になる。その結果、感度の高いGMR素子等のMR素子を磁気検出素子として用いた場合であっても、抵抗値変化の飽和による検出精度の低下を抑制することが可能になる。また、例えば、回転方向を検知可能に構成された磁気センサ4では、磁気検出素子の抵抗値変化が飽和した状態だと回転方向検知の有効化に時間がかかってしまう場合があるが、本実施の形態によれば、磁界の検出位置40bにおける磁束密度の変化を比較的小さく抑えることができるため、回転方向検知の有効化を速やかに行うことが可能になる。
【0028】
さらに、本実施の形態によれば、センサ部3と被検出部材2間の距離(エアギャップ)を従来と同程度に維持できるため、配置スペースが狭い場合にもセンサ部3を配置しやすい。さらに、本実施の形態では、接続端子41に曲げ加工を行う必要がないため、製造が容易であり、曲げ加工による検出部40の破損等のリスクを回避することが可能である。また、接続端子41を曲げる必要がないため、センサ部3全体をより小型化できる。
【0029】
ところで、検出部40は、両検出位置40bで磁束密度を検出した検出値の差分を演算し、演算した差分に応じた信号を接続端子41を介して出力するように構成されている。そのため、例えば、被検出部材2の径方向と検出部40の幅方向とが一致するように磁気センサ4を配置すると、両検出位置40bの磁界の変化がほぼ同じとなり差分の出力がほぼゼロとなり、検出精度が低下してしまうおそれがある。
【0030】
そこで、本実施の形態では、
図4(a),(b)に示すように、被検出部材2の径方向に対して検出部40の板厚方向が一致するように、センサ部3を設けるようにした。これにより、両検出位置40bで検出される磁界に位相差が生じ、差分の出力を大きくして検出精度を向上することが可能になる。
【0031】
(ハウジング部5)
図5に示すように、ハウジング部5は、磁気センサ4を保持するホルダ51と、ホルダ51の周囲を覆う樹脂モールド部52と、を有している。ホルダ51は、樹脂モールド部52をモールドする際に、磁気センサ4や、磁気センサ4とケーブル6との接続部分を保護するための部材であり、予め射出成型等により形成される。2つの磁気センサ4とケーブル6とをホルダ51にセットした状態で樹脂をモールドして樹脂モールド部52を形成することで、ハウジング部5が形成される。
【0032】
本実施の形態では、検出部40の先端部と対向する部分のハウジング部5が、ホルダ51のみで構成されている。つまり、本実施の形態では、検出部40の先端部と対向する部分のハウジング部5は、樹脂モールド部52により覆われておらず、被検出部材2に対向する部分においてホルダ51が露出して直接対向している。これにより、センサ部3の先端部でのハウジング部5を1つの部材(ホルダ51)の厚みのみで構成でき、センサ部3の先端部のハウジング部5を非常に薄くできる。その結果、被検出部材2から磁界の検出位置40bが離れすぎることによる検出精度の低下を抑制できる。
【0033】
図2に示すように、樹脂モールド部52は、磁気センサ4、ケーブル6の端部、及びホルダ51を一括して覆う本体部520と、センサ部3を固定部材に固定するためのフランジ部521と、を一体に形成してなる。フランジ部521には、センサ部3を固定部材に固定するボルト(不図示)を通すためのボルト穴522が形成されており、ボルト穴522には、当該ボルト穴522の内周面に沿うように、ボルト固定の際にフランジ部521の変形を抑制するための金属からなるカラー523が設けられている。
【0034】
(変形例)
上記実施の形態では、被検出部材2の軸方向端面に対して検出部40が垂直となるように磁気センサ4を配置したが、検出部40が被検出部材2の軸方向端面に対して厳密に垂直である必要はなく、多少の傾きは許容される。
【0035】
具体的には、
図6に示すように、被検出部材2の軸方向に対する検出部40の長さ方向の傾きθは、30度以下であるとよい。傾きθが30度より大きくなると、センサ部3の大型化をまねくおそれがあるためである。
【0036】
また、上記実施の形態では、センサ部3におけるケーブル6の延出方向と、検出部40の長さ方向とが一致している場合を説明したが、ケーブル6の延出方向と、検出部40の長さ方向とは一致していなくてもよい。例えば、
図7(a)に示すように、ハウジング部5内でケーブル6を曲げてもよいし、
図7(b)に示すように、ハウジング部5内で接続端子41を曲げてもよい。
図7(a),(b)では、ケーブル6や接続端子41を90度曲げているが、曲げ角度は適宜変更可能である。
【0037】
これにより、ケーブル6の延出方向に対するセンサ部3の先端の角度(検出部40の先端が臨む方向)を適宜変更可能となり、センサ部3を搭載する固定部材の形状に応じて柔軟にセンサ部3の形状を調整可能になる。ただし、製造の容易さや小型化の観点からは、センサ部3におけるケーブル6の延出方向と、検出部40の長さ方向とが一致していることがより好ましいといえる。
【0038】
さらに、
図8(a)~(c)に示すように、冗長化のためにセンサ部3に2つの磁気センサ4を備えるようにしてもよい。センサ部3の小型化のため、2つの磁気センサ4は、検出部40同士が板厚方向に並ぶように整列して配置されることが望ましい。この場合、2つの磁気センサ4は、被検出部材2の径方向に並んで配置されることになる(
図8(b)参照)。
【0039】
2つの磁気センサ4を備える場合、センサ部3は、両磁気センサ4の検出部40の先端部(センサ部3の先端部)が、被検出部材2の軸方向端面に臨むように設けられる。これにより、2つの磁気センサ4の検出部40と被検出部材2との距離(磁界の検出位置40bと被検出部材2との距離)を略同じとすることができ、かつ、両検出部40を近接して配置することが可能となる。ISO26262にて規定される機能安全を考慮すると、両磁気センサ4の出力をなるべく同等(均質)とすること、すなわち2つの磁気センサ4の出力の均質化が望まれるが、両磁気センサ4の検出部40の先端部を被検出部材2の軸方向端面に臨むようにセンサ部3を配置することで、2つの磁気センサ4の出力を同程度とし均質化を図ることが可能になる。
【0040】
図9は、
図8(b)のA-A線断面における磁束密度の分布の一例を表している。
図9に示すように、この例では、被検出部材2の径方向断面において、被検出部材2の径方向中央位置で最も磁束密度が大きくなり、径方向中央位置から離れるほど磁束密度が低下していくように磁束密度の分布が対称となっている。よって、この場合、被検出部材2の径方向中央位置に対して対称となる位置に両磁気センサ4の検出位置40bがくるように、センサ部3の位置調整を行うことで、両磁気センサ4でほぼ同等の出力が得られるようになり、非常に高いレベルで均質化を図ることが可能になる。なお、
図9の磁束密度の分布は一例であり、例えば、被検出部材2の径方向中央位置からずれた位置で磁束密度が最大になる場合には、当該磁束密度が最大になる位置に対して対称となる位置に両磁気センサ4の検出位置40bがくるように、センサ部3の位置調整を行うとよい。
【0041】
なお、2つの磁気センサ4を用いる場合、2つの磁気センサ4の表裏は一致させることが望ましい。例えば、2つの磁気センサ4の表裏を反転させた場合、2つの磁気センサ4で検出する回転方向が逆方向となり、後段の演算装置でそれを考慮した演算を行う必要が生じるために、汎用性が低下してしまうためである。2つの磁気センサ4の表裏を一致させることで、2つの磁気センサ4で検出する回転方向を同じ方向に揃えることができ、汎用性を高めることができる。
【0042】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る回転検出装置1では、磁気検出素子は、検出部40の板厚方向に対して垂直な方向の磁界を検出するMR素子から構成されており、センサ部3は、磁気センサ4の検出部40の先端部が、被検出部材2の軸方向端面に臨むように設けられている。
【0043】
これにより、センサ部3と被検出部材2間の距離を従来と同程度としつつも、被検出部材2から磁界の検出位置40bを離間させ、磁界の検出位置40bにおける磁束密度の変化を比較的小さく抑えることが可能になる。その結果、感度の高いMR素子を磁気検出素子として用い、また配置スペースが狭くセンサ部3と被検出部材2とを近接して配置する必要がある場合であっても、抵抗値変化の飽和による検出精度の低下を抑制することが可能となる。さらに、接続端子41に曲げ加工を行う必要がないため、製造を容易とし、曲げ加工による検出部40の破損等のリスクを回避できると共に、接続端子41の曲げによるセンサ部3の大型化を抑制して、小型なセンサ部3を有する回転検出装置1を実現できる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、従来のセンサ部において、ホール素子を用いた磁気センサをMR素子を用いた磁気センサ4に単純に入れ替えるだけでセンサ部3を実現可能であり、汎用性が非常に高い。
【0045】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0046】
[1]回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材(2)と、前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部(3)と、を備え、前記センサ部(3)は、前記被検出部材(2)からの磁界を検出する磁気検出素子を含む板状の検出部(40)と、前記検出部(40)から延出された接続端子(41)と、を有する磁気センサ(4)と、前記磁気センサ(4)を被覆するように設けられたハウジング部(5)と、を有し、前記磁気検出素子は、前記検出部(40)の板厚方向に対して垂直な方向の磁界を検出する磁気抵抗効果素子からなり、前記センサ部(3)は、前記磁気センサ(4)の前記検出部(40)における前記接続端子(41)の延出側と反対側の端部である先端部が、前記被検出部材(2)の軸方向端面に臨むように設けられている、回転検出装置(1)。
【0047】
[2]前記接続端子(41)は、屈曲部を有さず直線状に設けられている、[1]に記載の回転検出装置(1)。
【0048】
[3]前記検出部(40)は、前記接続端子(41)の延出方向である長さ方向及び板厚方向に垂直な幅方向に並ぶように配置された複数の前記磁気検出素子を有し、前記センサ部(3)は、前記被検出部材(2)の径方向に対して前記検出部(40)の板厚方向が一致するように設けられている、[1]または[2]に記載の回転検出装置(1)。
【0049】
[4]前記ハウジング部(5)は、前記磁気センサ(4)を保持するホルダ(51)と、前記ホルダ(51)の周囲を覆う樹脂モールド部(52)と、を有し、前記検出部(40)の先端部と対向する部分の前記ハウジング部(5)が、前記ホルダ(51)のみで構成されている、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の回転検出装置(1)。
【0050】
[5]前記センサ部(3)は、前記磁気センサ(4)を2つ有しており、2つの前記磁気センサ(4)は、前記検出部(40)が前記検出部(40)の板厚方向に並ぶように配置されている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の回転検出装置(1)。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…回転検出装置
2…被検出部材
3…センサ部
4…磁気センサ
40…検出部
40a…樹脂モールド
40b…磁界の検出位置
41…接続端子
42…容量素子保護部
5…ハウジング部
51…ホルダ
52…樹脂モールド部
6…ケーブル