(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】ダスト処理装置、セメントクリンカの製造装置、及びセメントクリンカの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/36 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
C04B7/36
(21)【出願番号】P 2021055589
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 章
(72)【発明者】
【氏名】長廣 丈
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-142790(JP,A)
【文献】特開2010-116299(JP,A)
【文献】特開2013-095606(JP,A)
【文献】特開2004-167350(JP,A)
【文献】特開2005-313059(JP,A)
【文献】特開2016-032786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/36 - 7/60
B09B 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント製造設備で用いられるダストと水含有流体とを混合し、水蒸気を発生する混合部と、
前記混合部からの前記ダストと前記水蒸気とを含む流体が流入する流路と、
前記流路内に水を散水する散水部と、
前記流路で生成する、前記ダストと前記散水部からの前記水とを含むスラリーを回収する回収部と、を備えるダスト処理装置。
【請求項2】
前記散水部は、前記流路内に、前記水を吐出する吐出口を複数有する、請求項1に記載のダスト処理装置。
【請求項3】
前記散水部は、前記流路内に、前記水をスプレー状に吐出する、請求項1又は2に記載のダスト処理装置。
【請求項4】
前記流路は、水平面に対して傾斜する勾配部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のダスト処理装置。
【請求項5】
前記混合部に導入される前記ダストは150℃以上の温度を有し、
前記混合部の内部に前記水含有流体を散布する供給部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のダスト処理装置。
【請求項6】
前記混合部に導入される前記ダストは、前記ダストを含む排ガスを熱源として発電する排熱発電装置で回収されるダストを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のダスト処理装置。
【請求項7】
前記混合部に導入される前記ダストは、揮発成分含有ダストを加熱して揮発成分を低減することによって得られる揮発成分低減ダストを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のダスト処理装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のダスト処理装置を備えるセメントクリンカの製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載されたセメントクリンカの製造装置を用いてセメントクリンカを製造する、セメントクリンカの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダスト処理装置、セメントクリンカの製造装置、及びセメントクリンカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント製造設備では種々のダストを取り扱っている。例えば、特許文献1には、排熱ボイラの伝熱管にダストが付着するため、これをダスト除去装置で除去する技術が記載されている。特許文献2には、水銀含有ダストを加熱処理して水銀を除去する水銀含有物質の処理装置が提案されている。この特許文献2の処理装置は、ホッパから供給されたキルンダスト等を運搬するスクリューコンベアと、スクリューコンベアから供給された水銀含有ダストを間接加熱する外熱キルンと、外熱キルンから排出された水銀除去ダストと粉砕媒体を篩分ける篩分装置とを備えている。この篩分装置で得られる水銀除去ダストをセメント原料として利用し、残りの粉砕媒体を搬送装置でホッパに戻すことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-126329号公報
【文献】特開2019-51494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セメント製造設備では、設備コスト及びレイアウト等の事情から、固形分を設備内で搬送せざるを得ない場合がある。設備コストが安価な固形分の搬送手段としては、ベルトコンベアが挙げられる。しかしながら、特許文献1のように伝熱管から付着していたダスト、及び、特許文献2のように加熱処理されたダストは非常に高温且つ乾燥しているため、そのままベルトコンベアで搬送すると、ベルトコンベアの耐熱性及び発塵が問題となり得る。一方で、高温のダストに水を混合して冷却すると、熱によって水蒸気が発生し、大量のダストが水蒸気とともに噴き出して飛散してしまうことが懸念される。
【0005】
そこで、本開示では、ダストを円滑に冷却して安定的に搬送できるようにすることが可能なダスト処理装置を提供する。また、そのようなダスト処理装置を備えることによって、セメントクリンカを安定的に製造することが可能なセメントクリンカの製造装置を提供する。また、セメントクリンカを安定的に製造することが可能なセメントクリンカの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、セメント製造設備で用いられるダストと水含有流体とを混合し、水蒸気を発生する混合部と、混合部からのダストと水蒸気とを含む流体が流入する流路と、流路内に水を散水する散水部と、流路で生成する、ダストと散水部からの水とを含むスラリーを回収する回収部と、を備えるダスト処理装置を提供する。
【0007】
上記ダスト処理装置では、ダストと水含有流体とを混合する混合部を備えることから、高温のダストを円滑に冷却し発塵を抑えた搬送をすることができる。また、混合部で発生する水蒸気と、ダストを含む流体が流入する流路内に散水部が水を散水することから、流路が閉塞することを抑制でき、混合部を安定的に運転することができる。流路内では、水蒸気に同伴するダストが円滑にスラリーとなり、回収部でスラリーとして回収できる。このように、上記ダスト処理装置ではダストが高温であっても、当該ダストを円滑に冷却してダストとして、又はスラリーとして安定的に搬送することができる。
【0008】
上記散水部は、上記流路内に、水を吐出する吐出口を複数有することが好ましい。これによって、水蒸気に同伴するダストを十分にスラリー化して回収することができる。
【0009】
上記散水部は、上記流路内に、水をスプレー状に吐出するように構成されることが好ましい。これによって、流路内で広範囲に散水することができるため、水蒸気に同伴するダストを十分にスラリー化して回収することができる。
【0010】
上記流路は、水平面に対して傾斜する勾配部を有することが好ましい。これによって、流路内で生成するスラリーが滞留することを抑制し、スラリーを円滑に流路から導出することができる。
【0011】
上記混合部に導入されるダストは150℃以上の温度を有していてもよい。ダスト処理装置は、混合部の内部に水含有流体を散布する供給部を備えることが好ましい。このような供給部を備えることによって、混合部においてもダストを円滑に冷却することができる。
【0012】
上記混合部に導入されるダストは、ダストを含む排ガスを熱源として発電する排熱発電装置で回収されるダストを含むことが好ましい。排熱発電装置では高温のダストが回収されるが、このような高温のダストであっても、十分円滑に冷却することができる。したがって、排熱発電装置から回収されるダストを冷却して安定的に搬送することができる。
【0013】
上記混合部に導入されるダストは、揮発成分含有ダストを加熱して揮発成分を低減することによって得られる揮発成分低減ダストを含むことが好ましい。加熱後の揮発成分低減ダストが高温であっても、上記ダスト処理装置は、そのようなダストを十分円滑に冷却することができる。したがって、揮発成分低減ダストを安定的に搬送することができる。
【0014】
本開示は、上述のいずれかのダスト処理装置を備えるセメントクリンカの製造装置を提供する。このようなセメントクリンカの製造装置は、上述のいずれかのダスト処理装置を備えるため、セメントクリンカを安定的に製造することができる。
【0015】
本開示は、上述のセメントクリンカの製造装置を用いてセメントクリンカを製造するセメントクリンカの製造方法を提供する。この製造方法は、上述のセメントクリンカの製造装置を用いることから、セメントクリンカを安定的に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、ダストが高温であっても、当該ダストを円滑に冷却して安定的に搬送できるようにすることが可能なダスト処理装置を提供することができる。また、そのようなダスト処理装置を備えることによって、セメントクリンカを安定的に製造することが可能なセメントクリンカの製造装置を提供することができる。また、そのようなセメントクリンカの製造装置を用いることによって、セメントクリンカを安定的に製造することが可能なセメントクリンカの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ダスト処理装置の一例を模式的に示す図である。
【
図2】散水部と流路との接続部の一例を拡大して示す断面図である。
【
図4】ダスト処理装置を備えるセメントクリンカの製造装置の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0019】
一実施形態に係るダスト処理装置は、セメント製造設備で用いられるダストを処理する。セメント製造設備で用いられるダストとしては、セメント製造設備における各種装置で生成するダスト、及び、セメント製造設備に粉末状の原料及び副資材として受け入れられるダストが挙げられる。具体的には、セメント製造設備に備えられる排熱発電装置(排熱ボイラ)で回収されるダスト、セメントキルン等で発生し塩素バイパス装置で回収されるクリンカダスト、塩素バイパス設備の分級器等で粗粉として得られるダスト、電気集塵機で回収されるダスト、バグフィルタで捕捉して回収されるダスト、並びに、セメント原料の一種として受け入れられる石炭灰及び焼却灰等が挙げられる。
【0020】
図1の例では、ダスト処理装置100は、セメント製造設備で発生する排ガスを熱源とする排熱発電装置61で回収されるダストを処理する。排ガスとしては、例えば、セメントクリンカの製造装置におけるサスペンションプレヒータから排出される排ガスが挙げられる。
【0021】
ダスト処理装置100は、排熱発電装置61で回収されるダストと水含有流体とを混合し、水蒸気を発生する混合部10と、混合部10から導出されるダストと水蒸気とを含む流体が流入する流路20と、流路20内に水を散水する散水部30と、流路20で生成する、ダストと散水部30からの水とを含むスラリーを回収する回収部40と、を備える。
【0022】
ダストは導入口11から混合部10に導入される。混合部10に導入される際のダストの温度は、例えば、120℃以上であってよく、150℃以上であってもよい。このような高温のダストは、通常乾燥しているため、そのままベルトコンベアで搬送すると発塵が生じる。混合部10には、供給部35が接続されており、供給部35は、混合部10の内部に水含有流体を散布する。混合部10では、この供給部35からの水含有流体とダストとが混合され、ダストが冷却される。このように高温のダストを冷却することによって、ダストの搬送を高い安全性で行うことができるようになる。
【0023】
混合部10は、例えば内部に撹拌機構を備える混錬機であってよい。混合部10でダストは水含有流体との混合によって冷却される。混合部10で、例えば100℃以下に冷却されたダストは、混合部10の導出口13から導出され、ベルトコンベア12によって搬送される。混合部10から導出されるダストの水分濃度は、混合部10に導入される前よりも高くなっていてもよい。これによって、ダストの発塵を抑制することができる。
【0024】
混合部10で冷却されたダストをセメント原料として用いる場合、ダストはベルトコンベア12によって、例えば原料サイロに搬送されてもよいし、セメント原料を調合する調合部に搬送されてもよい。ベルトコンベア12で搬送されるダストは、排熱発電装置61で回収されたときよりも、十分に冷却されている。このため、高い安全性でダストを搬送することができる。したがって、ダスト処理装置100を用いることによって、設備コストを抑えたダストの搬送が可能となる。
【0025】
混合部10では、100℃を超えるダストと水とが接触するため、水蒸気が発生する。混合部10に接続される流路20を通じて水蒸気を逃がすことで、混合部10の内圧が上昇して導出口13等から水蒸気及びダストが吹き出すことを抑制する。この時、水蒸気はダストを同伴しながら、混合部10に接続される流路20に流入する。水蒸気とダストを含む流体は、流路20内を流通する。流路20は、水蒸気とダストを含む流体が流通する配管21を備える。流路20に流入する流体は水蒸気を含んでいるため、ダストが湿気を含んで流路20を構成する配管21の内壁に付着し易くなっている。このようなダストが一旦内壁に付着すると、後から流入する高温の流体によって内壁に付着したダストが乾燥し、強固な付着物を形成する場合がある。また、ダストが乾燥しない場合も、ダストが継続的に付着して成長し、閉塞の要因となる場合がある。流路20が閉塞すると、混合部10の内圧が上昇して導出口13等から水蒸気及びダストが吹き出してしまう。この場合、混合部10の運転を停止することとなり、それに伴って排熱発電装置61の運転を調整することが必要となって発電量に大きなロスが生じる。
【0026】
そこで、本例の流路20を構成する配管21には、散水部30が接続されており、配管21(流路20)の内部に散水部30が水を散水するようになっている。これによって、混合部10から流路20に流入したダストが水に捕捉されスラリーとなる。このため、配管21(流路20)の内部にダストが付着することを抑制できる。配管21内で生成したスラリーは、配管21(流路20)に接続されたスラリー導出流路42を経由して、回収部40に回収される。回収部40は、例えばタンク等の容器であってよい。回収部40に回収されたスラリーは、供給部35から混合部10に散布される水含有流体に混合してもよいし、原料ミルの投入シュートに散布してもよい。これによって、スラリーに含まれるダストを、セメント原料にすることができる。また、回収されたスラリーを混合部10、又は原料ミルの投入シュートで用いることによって、それらの設備で用いる工業用水を削減することができる。
【0027】
図2は、散水部30と流路20との接続部の一例を拡大して示す断面図である。ダストと水蒸気を含む流体50は、流路20を構成する配管21内を左から右に向かって流通する。散水部30は、水54を吐出する散水管32を備えている。この散水管32は、流路20を構成する配管21の上部に形成された貫通孔に挿入されている。散水管32の先端には吐出口34が形成されており、吐出口34から水54が流路20(配管21)の内部に吐出される。なお、水54としては工業用水を用いることができる。水54は、少量の水以外の液体成分を含んでいてよい。
【0028】
吐出口34から吐出された水54と、流路20内を流通する流体50に含まれる水蒸気及びダスト粒子51とが衝突する。これによって、水蒸気は冷却されて凝縮して配管21の下部に流下する。ダスト粒子51も、吐出された水が接触することによって配管21の下部に落下する。このようにして、配管21の下部に、ダスト粒子51及び水を含むスラリー53が生成する。なお、スラリー53生成のメカニズムは特に限定されず、例えば、ダスト粒子51に水蒸気が凝縮して生じた水が付着して流下し、スラリー53となってもよい。ダスト粒子51が100℃よりも高い温度を有する場合は、水54も一旦は気化してよい。その後、配管21内を流通するに伴って温度が低下し、スラリー53の一部となってよい。
【0029】
散水部30は、吐出口34から流路20を構成する配管21内に、水54をスプレー状に吐出する。これによって、配管21内で広範囲且つ細かい粒子となって散水されるため、ダストと接触しやすくすることができる。したがって、水蒸気に同伴するダストを十分にスラリー化することができる。吐出口34には、噴霧ノズルを使用してもよい。吐出口34からの水54の噴射形状は、円錐形状、又は扇形状であってよい。
【0030】
図2に示すような、吐出口34を通り且つ配管21の長手方向に沿って切断する鉛直断面でみたときのスプレーの噴霧角度θ
1は、30°以上であってよく、40°以上であってよく、50°以上であってもよい。これによって、流体50に含まれるダスト粒子51と水54とを十分に接触させることができる。スプレーの噴霧角度θ
1は、スラリー53の流動を促進する観点から、90°未満であってよい。
【0031】
散水管32は、配管21に対して傾斜している。配管21における流体50の流通方向(x方向)を基準として、鉛直下方側(
図2では時計回り)に回転する方向に測定される、流体50の流通方向(x方向)と散水管32の長手方向(y方向)とのなす角度θ
2は、例えば5~90°であってよい。この角度θ
2は、好ましくは5~70°であり、より好ましくは10~60°であり、さらに好ましくは15~45°である。これによって、散水管32の吐出口34からの散水によってスラリー53の流動性が向上し、スラリー53を十分円滑に導出口24から導出することができる。また、流体50の流れを阻害することを抑制できる。
【0032】
配管21は、水平面に対して傾斜する勾配部22をなしている。このように、流路20が勾配部22を有することによって、スラリー53が滞留することを抑制できる。勾配部22(配管21)の水平面に対する傾斜角度θ3は、好ましくは5°以上であり、より好ましくは10°以上であり、さらに好ましくは15°以上である。これによって、スラリー53を重力の作用で円滑に流動させて、導出口24から導出することができる。傾斜角度θ3は、好ましくは45°以下であり、より好ましくは30°以下である。これによって、スラリー53が配管21内で広範囲に広がった状態で流れるため、スラリーとダストが接触しやすくなる。これによりダストが回収しやすくなる。
【0033】
水平面に対する散水管32の傾斜角度(θ2+θ3)は、スラリー53の流動を促進する観点から、90°未満であってよく、好ましくは10~80°であってよく、20~70°であってもよい。
【0034】
配管21の下端には、スラリー53を配管21から導出する導出口24が形成されている。スラリー53は導出口24から、
図1に示すスラリー導出流路42に流入し、回収部40で回収される。本例の流路20は、勾配部22として、流体50の流通方向を基準として、上流から下流に向かって低くなるように傾斜する配管21を有しているが、これに限定されない。例えば、流体50の流通方向を基準として、上流から下流に向かって高くなるように傾斜する勾配部を有していてもよい。これによって、流路20内で生成したスラリー53を、混合部10に戻してもよいし、混合部10と配管21との間の流路に導出口を設けてスラリーを回収部40に回収できるようにしてもよい。
【0035】
図2に示すように、流路20は、貫通穴26と、この貫通穴26を覆う蓋体27とを有していてよい。例えば、導出口24からのスラリー53の導出量が減少した場合等に、蓋体27を配管21から取り外して貫通穴26を開放し、流路20の内部における閉塞の有無を点検することができる。導出口24は、配管21の上側に形成されることが好ましい。これによって、ダスト処理装置100の運転を継続した状態で、蓋体27を貫通穴26から取り外して、流路20の内部を点検することができる。貫通穴26から、高圧水を噴射するノズルを挿入して、高圧水で配管21の内壁に付着しているダスト粒子51及び滞留しているスラリー53を洗い流してもよい。
【0036】
流路20を構成し、散水部30が接続される配管21は、直管形状に限定されず、L字状又はU字状等の屈曲部を有していてもよい。ダスト粒子51を含む流体50を搬送する流路が屈曲部を有するとダスト粒子51が屈曲部に付着し易くなり、これが閉塞の原因となる場合がある。しかしながら、本例の配管21は、散水部30が接続されていることから、ダスト粒子51の付着が抑制される。また、ダスト粒子51が付着しても、散水によって流動させて導出口24から導出することができる。なお、屈曲部又はその近傍に貫通穴26を設けておけば、屈曲部にダスト粒子51が付着したり、スラリー53が滞留したりしても、簡便にこれらを除去することができる。
【0037】
流路20は、配管21の下流側に立ち上がり配管23を有する。流体50(第1流体)からダスト粒子51の少なくとも一部が除去されて得られる流体55(第2流体)は、配管21の下流にある配管23を流通して下流側の装置(例えば、電気集塵機等)に導入される。流体55は流体50よりもダストの濃度が低く且つ温度も低い。
図1に示されるように、流体55は、排熱発電装置61からの排ガスと合流して電気集塵機(EP)に導入されてもよい。立ち上がり配管23では、流体55に残存する水蒸気が配管内を通過することによって冷えて凝縮し、ダスト粒子51を含んだスラリー53となって導出口24から導出されてもよい。
【0038】
立ち上がり配管23の下流側には、吸引ファンが接続されていてもよい。この吸引ファンでガスを吸引することによって、流路20における流体50及び流体55の流動を促進することができる。導出口24には、スラリー53の流量測定部を設けて、流量の測定値に応じて、流路20におけるダスト粒子51の付着の有無又は付着の程度、スラリー53の滞留の有無又は滞留の程度、或いは、ダスト粒子51若しくはスラリー53による閉塞の有無又は閉塞の程度を検知してもよい。また、混合部10に圧力測定部を設け、混合部10で測定される圧力によって、流路20におけるダスト若しくはスラリー53の付着、滞留、閉塞の程度を検知してもよい。
【0039】
散水管32の先端は、流路20(配管21)の内壁から流路20の内部に突出しないことが好ましい。これによって、散水管32が流路20内における流体50の流通を妨げることを抑制できる。また、散水管32にダスト粒子51が付着することを抑制できる。散水管32の基端側は、水を供給するポンプに接続されてもよいし、工業用水を供給する配管に接続されてもよい。また、高所にあるタンクからヘッド圧を利用して水を供給してもよい。これによって、散水管32は流路20の内部に連続的に水を散水することができる。
【0040】
図2では、散水管32が一つしか示されていないが、
図1に示すように、散水管32は複数設けられてもよい。これによって、配管21に水の吐出口34が複数設けられることとなり、配管21の長さが長くなっても、スラリー53の十分円滑に導出口24から導出することができる。なお、配管21には、導出口24も複数設けられてもよい。例えば、水平面に対し、下流側が低くなるように傾斜する傾斜配管と立ち上がり配管とを交互に並べ、傾斜配管と立ち上がり配管の接続部に導出口24を設ければ、流体50(流体55)の移送距離を、十分に長くすることができる。すなわち、流路20による流体50(流体55)の移送距離を十分に長くすることができる。
【0041】
流体50(流体55)の流通方向に沿ってみたときに、隣り合って設けられる散水管32(導出口24)の当該流通方向に沿う間隔は、例えば、0.5~10mであってよく、2~7mであってよい。散水管32(導出口24)を3つ以上設ける場合、隣り合って設けられる散水管32(導出口24)の当該流通方向に沿う間隔は、均一でなくてもよい。屈曲部の有無、及び、ダストの付着状況等の観点から適宜調整してもよい。
【0042】
ダスト処理装置100では、混合部10で高温のダストと水とが接触して生じる水蒸気と、この水蒸気に同伴するダストとを含む流体を、散水部30からの散水によって十分に冷却することができる。そして、流体に含まれるダストをスラリーとして回収している。これによって、ダスト及びこれを含むスラリーによる流路の閉塞を十分に抑制することができる。したがって、ダスト処理装置100を備えることによって、高温のダストを円滑に冷却して発塵を抑制し、ダスト及びスラリー53として高い安全性で安定的に搬送することができる。
【0043】
図3は、ダスト処理装置の別の例を示す図である。揮発成分含有ダストを加熱すると、揮発成分が低減したダストが得られる。ここでは、揮発成分含有ダストとして、水銀含有ダストを例に挙げて説明する。ダスト処理装置101では、水銀含有ダストを加熱する加熱装置63において水銀含有ダストから水銀を低減して得られるダスト(水銀低減ダスト)が、混合部10に導入される。一方、加熱装置63でダストから分離された水銀を含むガスは、バグフィルタ82、冷却塔84及び活性炭が充填された吸着塔86を流通する。これによって水銀が回収される。
【0044】
ダスト処理装置101では、例えば300℃以上の温度を有するダスト(水銀低減ダスト)が混合部10に導入される。このような高温のダストも、混合部10で十分に冷却される。したがって、ダスト処理装置101で高温のダストを処理することによって、ダストの搬送を高い安全性で行うことができるようになる。ダスト処理装置101の混合部10以降の装置構成は、ダスト処理装置100と同じであってよい。ここでは、ダスト処理装置100の記載が適用できるため、重複する記載を省略する。なお、この例では、混合部10で冷却され、ベルトコンベア12で搬送されるダストは、上述の例と同様にセメント原料としてもよいし、セメントクリンカに石膏とともに配合され、セメント組成物を得てもよい。また、揮発成分として水銀含有ダストを例に挙げたが、他の揮発成分でもよい。例えば塩素含有ダストでもよい。塩素含有ダストを用いる場合は、加熱装置63でダストから塩素が分離される。分離された塩素を含むガスの塩素は冷却されることによって凝縮固化しダストとなる。このようにして得られる塩素が濃縮されたダストはバッグフィルタで回収することができる。
【0045】
図4は、ダスト処理装置100を備えるセメントクリンカの製造装置の一例を模式的に示す図である。
図4のセメントクリンカの製造装置150は、セメント原料が導入され、セメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼部70と、予熱及び仮焼されたセメント原料を焼成してセメントクリンカを得る焼成部90と、焼成部90で得られたセメントクリンカを冷却する冷却部91(クリンカクーラー)とを備える。予熱仮焼部70は、4つのサイクロンC1,C2,C3,C4(プレヒータ)と仮焼炉72とを有する。
【0046】
セメントキルン96の窯尻92と予熱仮焼部70の仮焼炉72は、ライジングダクト74で接続されている。窯尻92とライジングダクト74の間(境界部)には、これらの内部を流通するキルン排ガスを抽気する抽気口81が設けられている。抽気口81には、塩素バイパス部80の流路89が接続されている。セメントクリンカの製造装置150は、塩素バイパス部80を備えることによって、焼成部90内の揮発成分を低減することができる。
【0047】
塩素バイパス部80では、抽気口81から抽気された抽気ガスを冷却部83で冷却する。冷却によって、セメントクリンカの製造装置150内のKCl及びNaCl等の揮発した塩素分が析出する。集塵部85の下流側には吸引ファン87が設けられており、冷却部83で析出した塩素分は、クリンカダストとして集塵部85で回収される。集塵部85は、例えばバグフィルタであってもよい。このようにして、セメントクリンカの製造装置150内の塩素分が低減される。抽気口81の設定位置は特に限定されず、ライジングダクト74であってもよいし、窯尻92であってもよい。
【0048】
予熱仮焼部70のサイクロンC1とサイクロンC2との接続部から導入されるセメント原料は、ダスト処理装置100の混合部10から導出されるダスト、及び、回収部40で回収されるスラリー53を乾燥して得られる固形分(ダスト)を含んでいてもよい。このようなセメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、ライジングダクト74、仮焼炉72、サイクロンC4を流通してセメントキルン96の窯尻92に到達する。セメントキルン96では、予熱及び仮焼されたセメント原料が、セメントキルン96の後端側に設けられたバーナ94の燃焼によって加熱されセメントクリンカとなる。得られたセメントクリンカは、冷却部91のクリンカクーラーにおいて冷却ガスによって冷却される。クリンカクーラーで冷却された後、セメントクリンカの製造装置150からセメントクリンカが導出される。
【0049】
一方、予熱仮焼部70からは、排ガスが排出される。この排ガスは流路71を流通して、排熱発電装置61に導入される。排熱発電装置61では、排ガスの熱を利用して発電する。排ガスにはダストが含まれるため、排熱発電装置61の例えば伝熱管にはダストが付着する。付着したダストは、例えばハンマリングによって伝熱管から脱離し、ダスト処理装置100に導入される。ダスト処理装置100から導出されるダスト及びスラリーは、例えば、セメント原料を調合する調合装置で他の原料と混合された後、原料ミルで粉砕し、粉砕されたセメント原料を予熱仮焼部70に導入されてもよい。排熱発電装置61からの排ガスは、ダスト処理装置100からの排ガス(流体55)とともに、電気集塵機65に導入される。
【0050】
セメントクリンカの製造装置150は、ダスト処理装置100を備えることから、ダストを含む水蒸気を流通させる配管が閉塞したり、ダスト搬送時の発塵が生じたりすることを抑制できる。また、ダストを十分に冷却できるため、高い安全性でダストを搬送することができる。したがって、設備トラブル等が抑制されるとともに作業環境が改善される。よって、セメントクリンカの製造装置150は、セメントクリンカを継続して安定的に製造することができる。
【0051】
セメントクリンカの製造装置150は、排熱発電装置61の代わりに、又は排熱発電装置61に加えて、
図3に示すような加熱装置63とダスト処理装置101とを備えていてもよい。これによって、揮発成分を含む揮発成分含有ダストの揮発成分を低減して得られるダスト(揮発成分低減ダスト)をセメント原料として用いることができる。
【0052】
一実施形態に係るセメントクリンカの製造方法は、セメントクリンカの製造装置150を用いて行うことができる。セメントクリンカの製造方法は、ダスト処理装置100(101)の混合部10でダストを冷却する工程と、ダストを含むセメント原料を予熱仮焼部70で予熱及び仮焼する予熱仮焼工程と、焼成部90において焼成する焼成工程と、焼成物を冷却部91で冷却する冷却工程とを有する。このセメントクリンカの製造方法で用いるセメント原料は、ダスト処理装置100(101)で得られるスラリー53を乾燥して得られるダストを含有してもよい。この場合、混合部10で生成するダストと水蒸気とを含む流体50に散水する工程と、散水する工程によって得られるダストと水とを含むスラリーを回収する工程と、回収したスラリーからダストを回収する工程を有していてもよい。スラリーからダストを回収する工程は、供給部35からスラリーを含む冷却流体を混合部10に導入することによって行ってもよいし、セメント原料の粉砕に用いられる原料ミルの投入シュートに水とともに散布することによって行ってもよい。
【0053】
この製造方法は、ダスト処理装置100を備えるセメントクリンカの製造装置150、或いはその変形例を用いて行うことができる。したがって、上述のセメントクリンカの製造装置及びダスト処理装置の説明内容は、本実施形態のセメントクリンカの製造方法にも適用される。
【0054】
上述のセメントクリンカの製造方法では、ダスト処理装置100(101)を備えるセメントクリンカの製造装置でセメントクリンカを製造する。したがって、安定的にセメントクリンカを製造することができる。また、ダストを効率よくセメント原料にすることができるため、セメントクリンカを低コストで製造することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
10…混合部、11…導入口、12…ベルトコンベア、13…導出口、20,71,89…流路、21…配管、22…勾配部、23…立ち上がり配管、24…導出口、26…貫通穴、27…蓋体、30…散水部、32…散水管、34…吐出口、35…供給部、40…回収部、42…スラリー導出流路、50,55…流体、51…ダスト粒子、53…スラリー、54…水、61…排熱発電装置、63…加熱装置、70…予熱仮焼部、72…仮焼炉、74…ライジングダクト、80…塩素バイパス部、81…抽気口、82…バグフィルタ、83,91…冷却部、84…冷却塔、85…集塵部、86…吸着塔、87…吸引ファン、90…焼成部、92…窯尻、94…バーナ、96…セメントキルン、100,101…ダスト処理装置、150…セメントクリンカの製造装置、C1,C2,C3,C4…サイクロン。