(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システム及び時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ校正方法
(51)【国際特許分類】
H03M 1/10 20060101AFI20241225BHJP
H03M 1/66 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
H03M1/10 B
H03M1/66 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019231919
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カレン・ホウバキミヤン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・エイ・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジー・ニーリム
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0176190(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0161207(US,A1)
【文献】米国特許第09007250(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0234871(US,A1)
【文献】特開2018-182744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00-1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、
入力デジタル信号及びエラー信号を受けて、上記入力デジタル信号及び上記エラー信号に基づいて歪んだデジタル信号を出力するように構成されたデジタル・プリ・ディストーション部と、
第1サンプル・レートを有する時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータであって、該時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータの複数の時間インターリーブ・チャンネル間の不整合を補正する上記歪んだデジタル信号をアナログ信号に変換するように構成された上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータと、
上記アナログ信号を所定周波数だけダウン・コンバートすると共に、狭い帯域の狭帯域アナログ信号に変換するアナログ・ダウン・コンバータと、
上記第1サンプル・レート以下の第2サンプル・レートを有するアナログ・デジタル・コンバータであって、上記
狭帯域アナログ信号を受けて、該
狭帯域アナログ信号をダウン・サンプリングされた
狭帯域デジタル信号に変換するように構成された上記アナログ・デジタル・コンバータと、
上記入力デジタル信号を受けてモデル信号を出力するように構成された離散時間線形モデル・ユニットと、
上記モデル信号を上記所定周波数だけダウン・コンバートすると共に、狭い帯域の狭帯域モデル信号に変換するデジタル・ダウン・コンバータと、
上記アナログ信号の帯域幅に基づく所定周波数レンジに渡って上記所定周波数を掃引させるよう制御する周波数掃引制御部と、
上記ダウン・サンプリングされた
狭帯域デジタル信号を上記
狭帯域モデル信号から減算して、上記エラー信号を生成するように構成されたコンバイナと
を有する校正システムと
を具える時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システム。
【請求項2】
上記離散時間線形モデル・ユニットが、更に上記エラー信号を受けると共に、少なくとも1つの適応型タップと固定型タップとを有する有限インパルス応答フィルタを有する請求項1の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システム。
【請求項3】
上記校正システムが、既知の
入力デジタル信号を用いた動作前校正中にイネーブルされる請求項1の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システム。
【請求項4】
上記デジタル・プリ・ディストーション部が、上記
入力デジタル信号を夫々受け、異なる次数の積を有する複数の遅延ラインを有する請求項1の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システム。
【請求項5】
上記デジタル・プリ・ディストーション部が、
複数の第1デマルチプレクサであって、該第1デマルチプレクサの夫々は、異なる次数の積を有する複数の上記遅延ラインの出力信号夫々のためのものであって、上記第1デマルチプレクサの夫々が上記遅延ライン夫々の上記出力信号を受けて、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ
のチャンネル数と等しい個数の信号を有するデータのパラレル・ストリームを出力する複数の上記第1デマルチプレクサと、
複数の第2デマルチプレクサであって、該第2デマルチプレクサの夫々が、上記エラー信号を受けて、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータの上記チャンネル数と等しい個数の信号を有するエラー・データのパラレル・ストリームを出力する複数の上記第2デマルチプレクサと、
複数の係数適応処理部であって、該係数適応処理部の夫々が、上記データのパラレル・ストリームの夫々と、上記エラー・データのパラレル・ストリームとを相関させ、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータの上記チャンネル数と等しい個数の可変係数を出力する複数の上記係数適応処理部と、
複数の第1コンバイナであって、該第1コンバイナの夫々が、上記可変係数の夫々をデータのパラレル・ストリームと結合して結合データのパラレル・ストリームにする複数の上記第1コンバイナと、
複数のマルチプレクサであって、該マルチプレクサの夫々が、上記結合データのパラレル・ストリームの夫々を結合して1つの信号にするように構成される複数の上記マルチプレクサと、
複数の上記マルチプレクサからの信号の夫々を結合して上記歪んだデジタル信号にするように構成された第2コンバイナと
を更に有する請求項4の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システム。
【請求項6】
エラー信号に基づいて入力デジタル信号を歪めることによって歪んだデジタル信号を生成する処理と、
時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータによって上記歪んだデジタル信号をアナログ信号に変換する処理と、
上記アナログ信号を所定周波数だけダウン・コンバートすると共に、狭い帯域の狭帯域アナログ信号に変換する処理と、
上記
狭帯域アナログ信号をダウン・サンプリングされた
狭帯域デジタル信号に変換する処理と、
上記入力デジタル信号に基づいてモデル信号を生成する処理と、
上記モデル信号を上記所定周波数だけダウン・コンバートすると共に、狭い帯域の狭帯域モデル信号に変換する処理と、
上記アナログ信号の帯域幅に基づく所定周波数レンジに渡って上記所定周波数を掃引させる処理と、
上記
狭帯域モデル信号から上記ダウン・サンプリングされた
狭帯域デジタル信号を減算して上記エラー信号を生成する処理と
を具える時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータを校正する方法。
【請求項7】
上記モデル信号を生成する処理が、少なくとも1つの適応型タップと固定型タップとを有する有限インパルス応答フィルタによって、上記
入力デジタル信号及び上記エラー信号を処理する処理を有する請求項6の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータを校正する方法。
【請求項8】
異なる次数の積を有する複数の遅延ラインによって、上記
入力デジタル信号を遅延する処理を更に具える請求項6の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータを校正する方法。
【請求項9】
複数の上記遅延ライン夫々の出力信号を夫々対応する第1デマルチプレクサで受けて、夫々対応する上記第1デマルチプレクサから、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータのチャンネル数と等しい個数の信号を有するデータのパラレル・ストリームを出力する処理と、
複数の第2デマルチプレクサの夫々で、上記エラー信号を受けて、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータのチャンネル数と等しい個数の信号を有するエラー・データのパラレル・ストリームを出力する処理と、
上記データのパラレル・ストリームの夫々と上記エラー・データのパラレル・ストリームの夫々とを相関させて、複数の係数適応処理部の夫々で、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータのチャンネル数と等しい個数の可変係数を出力する処理と、
上記可変係数の夫々と上記データのパラレル・ストリームの夫々とを結合して結合データ夫々のパラレル・ストリームにする処理と、
複数のマルチプレクサの夫々で、上記結合データの夫々を、1つの信号に夫々多重化にする処理と、
夫々の上記信号を上記歪んだデジタル信号に結合する処理と
を更に具える請求項8の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータを校正する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間インターリーブ(Time Interleaved:TI)デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)についてのシステム及び方法に関し、特にTI DAC用の前処理デジタル信号処理(DSP)フィルタを校正するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DACは、デジタル信号をアナログ信号に変換するために使用される。しかし、DACの帯域幅は、アナログ帯域幅又はDACのサンプル・レートによって制限されることがある。もっと高い実効DACサンプル・レートを得るためには、単一のDACの代わりに、複数の時間インターリーブDACチャンネルを有するTI DACシステムを使用しても良い。DACチャンネルの夫々は、入力信号を受けて、アナログ信号を出力するが、このアナログ信号は、1つのDACサンプリング期間内で、時間的にオフセットされている。これらのアナログ信号を、加算又は多重化して1つにすることで、DACシステム全体のサンプリング・レートを実質的に何倍かに増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6258573号公報
【文献】米国特許第7474972号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、TI DACシステムでは、TI DACシステムの異なるチャンネル間に線形及び非線形歪みや不整合が生じることがあり、得られるアナログ出力信号が正確でないことがある。
【0005】
本発明の実施形態は、これら及び他の従来技術の欠陥に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態としては、時間インターリーブ(Time Interleaved:TI)デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)の線形及び非線形歪みの補正のためのバックグラウンドやフォアグラウンド校正がある。以下で詳しく説明するように、補正は、バックグラウンド又はフォアグラウンド校正を使用し、TI DACの入力データのデジタル・プリ・ディストーション(DPD:digital pre-distortion)を通じて行われる。即ち、校正は、既知の信号を使って、フォアグラウンドで行われても良いし、又は、TI DACの通常の動作時に、バックグラウンドで行われてもよい。TI DACの出力信号は、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)によって捕捉され、適切に処理されたDACの入力信号と比較されて、エラー信号を形成し、これは、DPD係数の最小二乗平均(least mean squares:LMS)適応処理(adaptation)に利用される。
【0007】
本発明の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照した以下の実施形態の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1のデジタル・プリ・ディストーション・ユニットの例のブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2の2次積を有する遅延ラインの例のブロック図である。
【
図4】
図4は、
図2の2次積を有する別の例の遅延ラインのブロック図である。
【
図5】
図5は、
図2の乗算適応処理ブロックの例のブロック図である。
【
図6】
図6は、
図5の係数適応処理ブロックの例のブロック図である。
【
図7】
図7は、
図5の乗算処理ブロックの例のブロック図である。
【
図8】
図8は、
図2の代替の乗算適応処理ブロックのブロック図である。
【
図9】
図9は、
図8のMIMO係数適応処理ブロックの例のブロック図である。
【
図11】
図11は、
図1のDAC及びADCの離散時間線形モデルの例のブロック図である。
【
図12】
図12は、本発明のいくつかの実施形態による別の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムのブロック図である。
【
図13】
図13は、本発明のいくつかの実施形態による別の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムのブロック図である。
【
図14】
図14は、本発明の他の実施形態による試験測定装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明のいくつかの実施形態によるTI DACシステム100の例を示す。デジタル入力信号102は、xとして示され、入力部が受けて、DPDユニット104と、DAC及びADCの離散時間(discrete time:DT)線形モデル・ユニット106(本願では、DT線形モデル・ユニット106と呼ぶ)とに送られる。DPDユニット104によって処理されたデジタル入力信号は、TI DAC108のM個の並列TI DACチャンネル109(インデックスm=1,…,Mを有する。ここで、Mは、2以上の整数)に送られる。DACチャンネル109の各々の出力信号は、加算器110によって1つに加算されるか、又は、加算器110の代わりにマルチプレクサによって順次選択され、1つのアナログ信号112として出力される。もしTI DACシステム100が試験測定装置の一部として使用される場合には、アナログ信号112は、試験測定装置のポートを介して被試験デバイスに出力されても良い。アナログ信号112は、ADC114にも送られ、これはDPDユニット104の校正に用いられる。
【0010】
ADC114のサンプリング・レートは、TI DAC108のレートと比較してL倍低く、これは、
図1では、ダウン・サンプラ116として示されている。ADC114の帯域幅は、TI DAC108の帯域幅とマッチングさせており、出力信号のスペクトル全体を捕捉できる。もっと狭い帯域幅のADCの前にプリ・サンプラ・コンポーネントを使用することで、同じ結果を得られるようすることもできる。ダウン・サンプリング・レートLは、Mと互いに素となるように選択されるため、TIサンプルの全位相が、エラー波形と、その結果としての適応処理にカバーされることなる。つまり、LとMは、1以外に公約数がない。
【0011】
DT線形モデル・ユニット106の出力信号は、ダウン・サンプラ118によって係数Lでダウン・サンプリングされる。そして、ADC114の出力信号が、ダウン・サンプラ118の出力信号からコンバイナ(Combiner:結合器又は合成器)120によって減算されると、エラー信号122が生成される。エラー信号122は、DTモデル・ユニット106及びDPD104の両方に送られるが、これは、以下で更に詳細に説明される。
【0012】
システム全般を説明したので、
図2~11では、システム100の個々の構成要素を説明する。
図2は、本発明のいくつかの実施形態によるDPD104の例を示す。DPD104は、デジタル信号102を受け、このデジタル信号を複数の遅延ラインに送る。P個の遅延ラインが設けられるが、ここで、Pは1より大きい。例えば、
図2では、1次遅延ライン200、2次遅延ライン202、P次遅延ライン204が示されている。
【0013】
遅延ライン200、202及び204の夫々は、異なる次数の積を有し、記憶装置(メモリ)を使って異なる次数の非線形性を生成する。遅延ライン200、202及び204は、乗算適応処理(MULTwA:
Multiplication
with
Adaptation:適応処理を伴う乗算処理)ブロック208と組み合わせて使用され、TI DACチャンネル109間の、対応する次数の非線形性と、時間インターリーブ線形及び非線形不整合(ミスマッチ)とを補償する。1次遅延ライン200が、
図2に示されている。遅延ブロック206の夫々は、TI DAC108の入力データの1クロック・サイクルの遅延を示す。2次積ブロックを有する遅延ライン202と、P次積ブロックを有する遅延ライン204の夫々は、複数の遅延ラインと、遅延ライン・コンポーネントの正確に夫々2項又はP項の積とから構成され、これら遅延ライン・コンポーネントの夫々は、定数の合算又は乗算の演算によって導出される。各遅延ライン200、202及び204の出力信号は、乗算適応処理ブロック208に送られる。また、エラー信号122は、乗算適応処理ブロック208にも印可される。乗算適応処理ブロック208夫々の出力信号は、コンバイナ210によって1つに合算され、TI DAC108に送られる信号yとして出力される。
【0014】
図3及び4は、2次遅延ライン20
2のあり得る例を示し、これはP次遅延ライン20
4用にも変更できる。もし複数の遅延ラインの可能な出力信号の全てが、全ての可能なP次積を形成するのに利用されると、P次ヴォルテラ(Volterra)モデルが導出される。しかし、完全なヴォルテラ・モデルは、実現するのには複雑過ぎることがあるので、
図3及び4に示すような、簡略化したものを用いても良い。記憶装置を使った適切な簡略化非線形モデルは、具体的なTI DAC108のモデルやそのシミュレーションの解析を通じて導出できる。これらのモデルは、TI DAC108の実際の非線形性を補償する適応型係数で補強されるため、正確である必要はない。
【0015】
図5は、乗算適応処理ブロック208の例のブロック図である。デマルチプレクサ500は、遅延ライン200、202及び204の1つから信号uを受け、そして、TI DAC108のレートに等しいレートでブロック208に入力される、そのM個の連続スカラー・データuを、ベクトルu
mに変換する。ここで、mは、1からMの整数値である。データ・ベクトルu
mは、TI DAC108とADC114の回路によって導入される遅延と、コンバイナ120において一致させるために、遅延ブロック502によって遅延される。この遅延されたデータ・ベクトルv
mは、更に、アンダー・サンプリングされるADC114と一致するようにダウン・サンプラ504によって係数Lでダウン・サンプリングされる。ダウン・サンプラ504の出力信号は、係数適応処理ブロック506に送られる。エラー信号122は、デマルチプレクサ508でも受けて、これは、エラー信号をベクトルe
mに変換(mは、1からMの整数値)し、その上で、これを係数適応処理ブロック506が受ける。係数適応処理ブロック506は、単一のTI DACチャンネル109に関するLMS適応処理を行って、ベクトルt
mを出力する。ベクトルt
mは、乗算器510でベクトルu
mと乗算されて、結合ベクトル(combined vector)w
mが求められる。マルチプレクサ512は、結合ベクトルw
mをmスカラ・データwに変換し、これは、コンバイナ210に出力される。
【0016】
上述したように、係数適応処理ブロック506は、LMS適応処理を行い、これは、TI DACチャンネル109の1つに関するものが、
図6に示される。LMS演算は、次の数式(1)でも説明できる。
【0017】
tm(Ln)=tm(Ln-L)+μvm(Ln)em(Ln) (1)
【0018】
ここで、t
m(Ln)は、単一のTI DACチャンネル109のサンプル期間に対するLn番目のクロック・サイクルでのアップデートされた係数値である一方、t
m(Ln-L)はLクロック・サイクル単位で間引きされる前の値である。変数v
m(Ln)及びe
m(Ln)は、一致してnL番目のクロック・サイクルにおける、それぞれ、データとエラーのm番目のコンポーネントである。定数μは、LMSアルゴリズムの適応定数(adaptation constant)である。
図6に標準的なLMS演算を示しているが、更に、正規化されたLMS、時間変動適応ステップを伴うLMS、リーキーLMS(leaky LMS)などの他のタイプのLMSアルゴリズムを使用しても良い。
【0019】
図7は、乗算器510におけるベクトルt
mと入力データ・ベクトルu
mの乗算処理を示す。
図7に示すようないくつかの実施形態では、乗算器510は、、ポイントごとの乗算によって入力データ・ベクトルu
mに、係数適応処理ブロック506からの係数t
mを適用する。
図7の例では、Mは4に等しい。このポイントごとの乗算は、次の数式(2)でも説明できる。
【0020】
wm(n)=tmum(n), m=1,2,…,M (2)
【0021】
図8は、代替の乗算適応処理ブロック800を示すブロック図であり、これはいくつかの実施形態で実施されても良い。この回路は、
図2の乗算適応処理ブロック208の代わりに使用できる。乗算適応処理ブロック208と同様に、デマルチプレクサ802は、遅延ライン200、202及び204の1つから信号uを受けて、TI DAC108のレートと等しいレートでブロック800に入力されるM個の連続スカラー・データuを、ベクトルu
mに変換する。ここで、mは1からMの整数値である。データ・ベクトルu
mは、コンバイナ120において、DACとADCの回路によってもたらされる遅延と整合するように、遅延ブロック804によって遅延される。この遅延されたデータ・ベクトルv
mは、MIMO(multiple input multiple output:多重入出力)係数適応処理ブロック806に送られるが、これの一例が
図9に示される。MIMO係数適応処理ブロック806は、更に、エラー・ベクトルe
kを受けるが、これは、受けたエラー信号122に基づいてデマルチプレクサ808によって出力される。ここで、kは、1からMの整数値である。MIMO係数適応処理ブロック806の各係数は、標準的なLMSアルゴリズムを実行することによって決定しても良く、これは、数式(3)で説明できる。
【0022】
t(s)
km(Ln)=t(s)
km(Ln-L)+μvm(Ln-s+1)ek(Ln), k,m=1,…,M;s=1,…,S
(3)
【0023】
係数適応処理ブロック208と同様に、他のLMSアルゴリズムが使用されても良い。
【0024】
MIMO係数適応処理ブロック806の出力信号t
(s)
kmは、MIMOブロック810に送られるが、これは、Mが2に等しい場合の状態に関して、
図10に示されている。MIMOブロック810は、M個の入力と、M個の出力を有し、M
2個の有限インパルス応答(FIR)フィルタから構成される。MIMOブロック810の入出力関係は、数式(4)によって与えらる。
【0025】
【0026】
ここで、um(n)は、m番目の入力データであり、tkmは、入力umのFIRのS個の係数のベクトルであり、出力は、MIMOブロック810構造体のk番目の出力端子に接続される。マルチプレクサ512と同様に、マルチプレクサ812は、結合ベクトルwkをスカラー・データWに変換し、コンバイナ210に出力する。
【0027】
MIMOブロック810は、M個のFIRフィルタの遅延ラインによる記憶装置(メモリ)を含むため、乗算適応処理ブロック208が、代替の乗算適応処理ブロック800に置き換えられた場合、遅延ライン200、202及び204を乗算適応処理ブロック208に接続するラインの一部は、冗長となる。
【0028】
上述したように、TI DACシステム100は、TI DAC線形及び非線形不整合を補償して、TI DACシステム100の出力信号が、線形時間不変(linear time invariant:LTI)システムのように見えるようにできる。このようにするために、実際のTI DACの出力信号を、理想的なTI DACの動作をモデル化した望ましいLTIシステムの出力信号と比較しても良い。DT線形モデル・ユニット106の構造を、
図11に示す。DT線形モデル・ユニット106は、DPDユニット104において修正するつもりのないTI DAC108及びADC114の両方の線形な態様を扱う。
【0029】
図11に見られるように、DT線形モデル・ユニット106には、FIRフィルタの係数から構成されるLMS適応処理機能を有するFIRフィルタがある。DT線形モデル・ユニット106の適応(調整)処理により、TI DACチャンネル108及びADC114の線形部分の変化を追跡できる。しかし、FIRフィルタの少なくとも1つのタップは、DPDユニット104の全ての係数がゼロ値に集中する状況を回避するために、非適応に作られ、一定値に固定される。
図11には、DT線形モデル・ユニット106のための従来の直接形のFIRフィルタの実施形態が示されているが、転置形(transposed)、縦続形(cascade)、高速FIR、格子形(lattice)FIR、周波数領域形など、他の既知の構造を用いてもよい。同様に、上述の如く、LMS演算は、さまざまな方法で実施できる。
【0030】
いくつかの実施形態では、上述の校正は、TI DACシステム100が所望の出力信号を生成しているときに、バックグラウンドで行われてもよい。しかし、入力信号の形式によっては、適応処理ブロックで使用される入力信号から得られるエラー波形について、このエラー信号122の成分間に線形な依存性がある場合があり、これは、DPDユニット104の補正構造で様々な障害の形式を扱えることが原因なのであるが、これにより、こうした特定の入力信号102に対しては、同じLMS最適化を達成するのに、適応係数の複数の状態があり得てしまう。これらの適応処理の複数の状態は同等ではないため、入力信号102の特性が変化した場合、TI DACシステム100が、この新しい入力信号に応答し、新しい入力信号用の適切な係数に収束するまで、適応処理の複数の状態のために、大きなエラーが生じる可能性がある。これの簡単な例としては、一定の非ゼロの入力信号102があり、この場合、TI DACチャンネル109の出力間の不整合は、DACチャンネル109の夫々に関するDCオフセット項、利得項や非線形項で補正できる。
【0031】
静的な係数の要因、即ち、DPDユニット104の記憶装置(メモリ)のないコンポーネントに関して、並列のLMS適応関数を使って複数の係数を求めるバックグラウンド校正において良好に収束する鍵となるのは、アンダー・サンプリングされるADC114によるダウン・サンプリングを考慮した後に、入力波形の振幅値に十分な多様性(例えば、十分な個数の別々の振幅値など)があることである。
【0032】
ダイナミック(動的)な係数の要因、即ち、DPDユニット104構造の遅延ラインに含まれる周波数依存コンポーネントに関しては、アンダー・サンプリングされるADC114によるダウン・サンプリングを考慮した後に、入力波形の振幅値に十分な多様性があることに加えて、入力信号のスペクトル成分が十分な多様性(即ち、スペクトル内に十分な数の別々の周波数領域成分)を有することも、並列のLMS適応関数を使って複数の係数を求めるバックグラウンド校正において、良好な収束のために重要である。
【0033】
バックグラウンド校正における良好な収束の基準は、数学的には、入力波形及びDPDユニットの係数値に基づいて求められるような推定される総合波形と、アンダー・サンプリングされるADC114によって捕捉される波形中の実際の障害との間の残存エラーをLMSの解が最小化するように、複数のTI DACチャンネル109の入力サンプル及びADC114の出力サンプルの全体にかかるDPDユニット104においてモデル化された様々な障害に関する連立方程式を、全ての未知の係数値について解くことができることに関係する。
【0034】
次の数式(5)を検討する。
【0035】
【0036】
ここで、e^は、現在のDPDユニット104の補正係数の影響を考慮した後の、推定総合残存エラー波形に関するベクトルであり、アンダー・サンプリングされるADC114の各サイクルの出力信号における各障害形式に起因するエラーの合計である。変数Uは、並列な乗算適応処理ユニット204によってスケーリング(拡大縮小)する前の入力波形の障害行列であり、乗算適応処理ユニット204に入力される行の次元(row dimension:行の数)に基本障害値(base impairment values)を有すると共に、列の次元(column dimension:列の数)に連続するサンプル値(アンダー・サンプリングされるADC114と整合するようにダウン・サンプリングされる)を有する。変数cは、乗算適応処理ユニット204における障害値の大きさをスケーリングしてDACチャンネル108の障害を打ち消す、即ち、残存エラーを最小化する残存係数ベクトルであり、現在のDPD係数ベクトルに加えることができる
【0037】
この連立方程式は、概して過剰に定められるであろうから、以下の数式を最小限にする最小二乗解を見つけるのが良い。
【0038】
【0039】
ここでe=アンダー・サンプリングされたADCの出力信号に続いて測定された波形の残存エラー・ベクトルである。
【0040】
最小二乗解は、次の数式(6)で与えられる。
【0041】
c=-(UTU)-1UTe (6)
【0042】
この解は、UTU行列が、特異行列(singular matrix)でない場合、即ち、|UTU|≠0を条件として得られる。
【0043】
バックグラウンド校正についての各サイクルで生じる並列なLMS適応処理は、残存エラー項を最小限に抑えるために、連続する値についての上記の連立方程式の解に収束する必要がある。もし対応するUTU行列が、特異行列でないか又は特異行列に近くない場合、バックグラウンド校正は、うまく動作する。振幅及びスペクトラム成分の多様性が良い入力波形がTI DAC108に印可されると、対応するUTUは、特異行列でないか又は特異行列に近くないものになりやすくなるだろう。
【0044】
もし対応するUTUが特異行列であるか又は特異行列に近い状態で、入力信号がTI DACシステム100に印可される場合、係数の状態がハードウェア・エラーの適切なモデルから離れるのを防ぐために、DPD係数のバックグラウンド校正を停止しても良い。また、DPD係数を特に高速かつ正確に収束できるように、TI DACシステム100の入力信号を選択する場合では、フォアグラウンド校正が推奨されるだろう。
【0045】
いくつかの実施形態では、入力波形102のある所与の時間スパン(範囲)に関する|UTU|を推定するために、DPDユニット104によって何らかの補正が行われる前の、TI DACシステム100内の波形データを分析するためのリアルタイム・デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を加えても良い。DSPは、その時間スパンの間に、バックグラウンド適応処理を許可すべきかどうかを決定できる。DSPは、TI DACシステム100に対し、バックグラウンド校正を、対応する|UTU|がゼロに近い時間スパンについてはディセーブルにし、対応する|UTU|がゼロに近すぎない時間スパンについてはイネーブルにするよう指示できる。即ち、ある任意のしきい値をシステムに対して決めることができ、もし対応する|UTU|が、このしきい値よりも大きい場合には、バックグラウンド校正がイネーブルにされ、もし対応する|UTU|が、このしきい値よりも小さい場合は、バックグラウンド校正がディセーブルされる。
【0046】
代替の実施形態では、例えば、入力波形102、x[n]が、パターン・メモリに既知の波形をロードすることによって予め決定された場合、時間に対する|UTU|の値を予め計算するのに加えて、フラグを生成でき、このフラグは、予め計算された波形と共にメモリに保存できる。このフラグは、DPD係数が良好に収束するであろう入力波形の期間についてのバックグラウンド校正はイネーブルにし、DPD係数が良好には収束しない可能性のある入力波形の期間についてのバックグラウンド校正はディセーブルにする。
【0047】
上述したLMSによるリアルタイム校正の代替としては、いくつかの実施形態において、データのパケットを捕捉及び処理することによって、バックグラウンドやフォアグラウンド校正を、後ほどオフラインで行っても良い。
【0048】
そうするために、DACとADCのDT等価線形モデルを推定する。チャンネル108の非線形部分からの干渉を最小限に抑えるために、この推定は低振幅の入力波形を使用して行われても良い。ADC114の出力で捕捉されたデータは、行ベクトルdに集められても良い。DPD入力データxからN/L×Pの行列X(Nは、TI DAC108入力データ・パターンの長さであり、Pは、線形モデルのタップ数)を形成でき、このとき、行列Xのp番列は、最初のN-p+1個のデータと連結されたp-1個のゼロを含み、続いて係数Lで間引きされる。よって、線形モデルFIRの係数は、次の数式(7)を使用して得られる。
【0049】
c=(dX)(X'X)-1 (7)
【0050】
ここで名称X'は、行列Xの転置行列に使用される。
【0051】
線形モデルFIRの係数cが数式(7)から推定されたら、フルスケールの振幅を有する新しいTI DAC108データをADC114で取り込んで処理しても良い。ADC114の出力で捕捉されたデータ・パケットについて同じ名称d(行ベクトル)を使用し、DPDユニット104及びMIMOブロック810の入力におけるデータ・パケットに名称x、u(行ベクトル)を使用すると、MIMOの係数t(M×Tの行列)は、以下のように得られる。
【0052】
エラー・ベクトルは、数式(8)に示すように、最初に、入力データを線形モデル・フィルタ係数と畳み込みすることで、算出できる。
【0053】
q=conv(x,c) (8)
【0054】
第2に、畳み込みの出力を係数Lでダウン・サンプリングし、ADC114の出力で捕捉されたデータを減算する。
【0055】
e=downs(q,L)-d (9)
【0056】
次いで、T(SのM倍)列とN/L行(Nは、データ・パケット長)を有する行列Bを形成でき、t番目の列は、MIMOブロック800の入力のベクトルu中の最初のN-t+1個のデータと連結されたt+1個のゼロ含み、続いて係数Lで間引きされる。係数Mで間引きされたベクトルeのm番目の位相は、数式(10)で示されるように、e(m)で指定される。
【0057】
e(m)(k)=e(m+(k-1)M), k=1,2,…,N/M;m=1,…,M (10)
【0058】
同様に、B(m)は、数式(11)に従って間引きされた行列であっても良い。
【0059】
B(m)(k,:)=B(m+(k-1)M,:), k=1,2,…,N/M;m=1,…,M (11)
【0060】
よって、数式(12)が得られる。
【0061】
t(m)=(e(m)B(m))(B(m)'B(m))-1 (12)
【0062】
ここでt(m)は、T(SのM倍)個の係数を持つ行ベクトルである。最後に、MIMOブロック810の係数は、数式(13)に示すように導出できる。
【0063】
t(s)
km=tm(k+(s-1)M), m,k=1,…,M;s=1,2,…,S (13)
【0064】
図12は、本発明のいくつかの実施形態による代替のTI DACシステム1200を示す。TI DACシステム100と同様の構成要素には、同じ参照番号を付与し、
図12に関して追加の詳細な説明は行わない。
図12のTI DACシステム1200では、可変(tunable)無線周波数(RF)バンドパス・フィルタ1202、局部発振器(local oscillator:LO)1204、ミキサ1206及びRFローパス・フィルタ(LPF)1208を組み合わせて使用し、TI DAC108の出力信号の信号成分を、TI DAC108に関連するもっと狭い帯域幅及びサンプル・レートで、ADC114でサポートされる狭帯域にダウン・コンバートしても良い。可変RFバンドパス・フィルタ12022及び局部発振器1204は、周波数掃引制御部1216によって設定される。可変RFバンドパス・フィルタ1202を示しているが、これの代わりに、いくつかの実施形態では、複数のフィルタからなるバンクを使用してもよい。エラー波形データ122の所与のセグメントの狭帯域の捕捉の夫々で扱われる周波数レンジは、[f
c:f
c+BW
ABC]として与えられる。ここで、f
cはLO周波数、BW
ABCはADC114によって捕捉された実効帯域幅である。
【0065】
次いで、DT線形モデル・ユニット106を考慮した後の、[fc:fc+BWABC]でカバーされる所与の周波数スパン内に期待される理想の出力信号成分のモデルを作り出すために、RFダウン・コンバート回路が、DSPを使用してミラーリングされる。即ち、DT線形モデル・ユニット106の出力信号が、可変(tunable)DSPバンドパス・フィルタ1210に送られ、その出力信号は、ミキサ1218によって局部発振器1214からの信号と混合される。また、可変DSPバンドパス・フィルタ1210及び局部発振器1214は、周波数掃引制御部1216によって設定される。局部発振器1214からの信号は、更に、位相アライナ(phase aligner:位相整合器)1212にも送られ、基準として使用して、局部発振器1214と局部発振器1204の位相を既知の位相関係にできるようにすることで、可変DSPバンドパス・フィルタ1210、ミキサ1218、局部発振器1214及びローパス・フィルタ1220による変更があっても、DT線形モデル・ユニット106に対して、ADC114によって捕捉されるセグメントの位相をコヒーレントに維持し、これら波形を減算してエラー信号122を生成できるようにする。
【0066】
エラー信号122のセグメントは、狭帯域の周波数スパンごとに捕捉できる。エラー信号122の捕捉に用いるセグメント・サイズによって、有効な周波数分解能が定まり、これは、取り込まれる狭帯域セグメント[fc:fc+BWABC]の夫々でカバーされる周波数スパン内で実現される。得られたセグメントは、以下で説明するように、DPDユニット104で離散フーリエ変換(DFT)を受けて、各狭帯域周波数スパンでカバーされる周波数について、周波数に対する推定エラー、大きさ及び位相成分の複素ベクトルを生成できる。
【0067】
局部発振器1204の周波数は、TI DAC108の校正に重要な全周波数レンジをカバーするように掃引される。狭帯域周波数スパン夫々について捕捉されるエラー信号122のDFTの後に得られる推定周波数領域エラー・ベクトルは、次いで、数式(14)~(17)に示されるように、総合複素周波数領域エラー・ベクトルeを生成するために、結合される。
【0068】
fC=n・BWABC, n∈[0,…,N-1] (14)
【0069】
【0070】
【0071】
e=E(f) (17)
【0072】
ここで、En(f)は、狭帯域エラー波形セグメントf∈[0:BWABC)(狭帯域のADC114によって捕捉された帯域幅内)夫々に関するDFTの出力サンプルであり、E(f)は、総合周波数領域エラー波形であり、fは、アダプティブ(適応型)DPD係数について解くのに使用される複数の周波数値からなるベクトルであり、eは、アダプティブ(適応型)DPD係数について解くのに使用される総合周波数領域エラー波形ベクトルである。
【0073】
DPDユニット104によって決定される次の反復処理でのDPD係数は、周波数領域で解くことができる。DPDユニット104中の並列な乗算適応処理ブロック208への入力波形に連続したDFTを行うことで、DPDユニット104においてモデル化された障害の形式の夫々に関して、周波数領域ベクトルeでカバーされる周波数と整合する周波数対入力波形障害のベクトルを生成できる。並列な乗算適応処理ブロック208への入力波形は、複数のセグメントの形で捕捉でき、これらセグメントは、狭帯域のADC114で捕捉される複数のセグメントと時間的に整合(アライメント:整列)している。これらセグメントの夫々にDFTを行うと、周波数領域のサンプルの複素ベクトル(大きさと位相の成分を含む)を抽出できるが、これら周波数領域のサンプルは、周波数掃引レンジのシーケンス中に、狭帯域ADC114によってセグメント内に捕捉される対応するエラー信号122をカバーする周波数スパンと整合(アライメント)している。次いで、周波数掃引シーケンスにおいて各セグメントについて捕捉された周波数領域ベクトルを、連続する全セグメントに渡って結合することによって、周波数領域エラー波形を推定する総合ベクトルeが、校正で使用される全周波数レンジをカバーして構築される。
【0074】
次いで、数式(18)を使用して、推定残存エラーを周波数領域で計算できる。
【0075】
【0076】
ここでe^は、現在のDPD補正係数の影響を考慮した後の推定総合周波数領域残存エラー波形のベクトルであり、これは、LO1204の周波数掃引でカバーされる周波数レンジの全体を総合した、狭帯域ADC114の出力信号における各障害形式が原因のエラーの合計である。Wは、DPDユニット104における並列な乗算適応処理ブロック208によるスケーリングを行う前の入力波形障害行列(周波数領域の形式)であり、行の次元に基本障害値(乗算適応処理ブロック208に入力される)と、列の次元に周波数の連続する値とを有している。変数cは、乗算適応処理ブロック208における障害値の大きさをスケーリングして、DAC108の障害を打ち消す、即ち、残存エラーを最小化する残存係数ベクトルであり、現在のDPD係数ベクトルに加えることができる
【0077】
数式(14)~(18)は、概して過剰に決められるであろうから、以下の式を最小限にする最小二乗解を見つけるのが良い。
【0078】
【0079】
ここでeは、周波数レンジ全体に掃引しながら連続的にセグメントを捕捉し、続いてDFTを行って測定された総合周波数領域残存エラー波形に関するベクトルである。
【0080】
よって、最小二乗解は、数式(19)によって与えられる。
【0081】
c=-(WTW)-1WTe (19)
【0082】
数式(19)は、WTW行列が特異行列でない(即ち、|WTW|≠0)ことを条件にして得られる。
【0083】
バックグラウンド校正(DAC出力信号用の任意波形の生成処理と並行して行われる)のためのDPD係数の適応処理は、数式(20)を使用して行うことができる。
【0084】
dn=dn-1+μc (20)
【0085】
ここでdnは、DPD係数の次のベクトルであり、dn-1は、DPD係数の現在のベクトルであり、μは適応率(adaptation rate)であって、正規化LMS形式のアプローチなどによってダイナミックに調整される可能性があり、cは、現在の周波数掃引における残存エラーの周波数領域の最適化処理から解が得られる係数である。
【0086】
このアプローチは、フォアグラウンド校正にも適用できる。このような実施形態では、DACの校正のニーズに合わせて最適化された既知の複数の入力波形から構成されるセット(グループ)を使っても良い。そして、DPDユニット104の係数は、数式(19)に従って、周波数領域で解が得られる。
【0087】
図13は、本発明の実施形態による別の代替実施形態を示す。
図13の実施形態は、
図1及び12で上述した実施形態と類似し、このため、類似の構成要素には同じ参照番号を付与し、
図13に関して追加の説明は行わない。TI DACシステム1300では、可変RFバンドパス・フィルタ1202と可変DSPバンドパス・フィルタ1210が取り除かれる。これは、可変RFバンドパス・フィルタ1202の複雑さを考えると、システムのコストを簡素化し、削減できる。バンドパス・フィルタ1202及び1210を取り外すと、ADC114によって捕捉されて得られる狭帯域スペクトルに、両方のミキサの入力信号のイメージ成分(f-f
cに加えてf+f
c)が生じる。
【0088】
狭帯域スペクトルに、両方のミキサの入力信号のイメージ成分(f-fcに加えてf+fc)がある状態は、推定残存複素周波数領域エラー周波数の追加処理によって軽減できる。
【0089】
狭帯域ADCが捕捉するセグメントの夫々と、結果として生じる残存エラー波形は、次の数式(21)及び(22)の信号成分を含むことになろう。
【0090】
fC=n・BWABC, n∈[0,…,N-1] (21)
【0091】
【0092】
よって、望ましい残存エラー波形は、数式(23)に示すようにして、セグメントのGn(f)から繰り返し抽出できる。
【0093】
【0094】
次いで、複数のセグメントをまとめると、数式(24)に示すように、残存エラー波形を生成できる。
【0095】
【0096】
周波数領域で残存エラー波形が得られた後、適応型(アダプティブ)DPD係数の解を得るのに、可変バンドパス・フィルタを含んでいた狭帯域周波数掃引オプションに関して上述したものと類似する処理を利用しても良い。
【0097】
DPD係数を適応処理するためのダウン・コンバート処理を用いた狭帯域ADCのアプローチは、他のバリエーションも可能である。そのような例の1つは、複素I/Qスーパー・ヘテロダイン受信回路など、その他のRFダウン・コンバート・アーキテクチャに、このアプローチを適応させることである。
【0098】
図14は、TI DACシステム1402を有する試験測定装置1400の例を示す。TI DACシステム1402は、上述したTI DACシステム100、1200又は1300のいずれかであっても良い。試験測定装置1400は、例えば、任意波形発生装置、任意関数発生装置又は信号源を供給する任意の試験測定装置であってもよい。
【0099】
試験測定装置1400には、1以上のポート1404があり、これは、任意の電気又は光ファイバの信号伝達媒体であってもよい。ポート1404は、受信機、送信機やトランシーバを含んでも良い。ポート1404は、TI DACシステム1402に結合され、これは、1つ以上のプロセッサ1406に接続されている。
図14では、図を簡単にするため、1つのプロセッサ1406だけを示しているが、当業者であれば理解できるように、単一プロセッサ1406ではなく、多様な形式の複数のプロセッサ1406を組み合わせて使用できる。
【0100】
1つ以上のプロセッサ1406は、メモリ1408から命令を実行するように構成されても良く、そのような命令に示される任意の方法や関連するステップを実行しても良い。メモリ1408は、プロセッサ・キャッシュ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・メモリ、ハード・ディスク・ドライブ、その他のメモリ形式として実現されても良い。メモリ1408は、データ、コンピュータ・プログラム・プロダクトびその他の命令を記憶するための媒体として機能する。例えば、1つ以上のプロセッサ1406は、TI DACシステム1402にデジタル信号を出力し、これは、上述したようにして、ポート1404を通して被試験デバイスにアナログ信号として出力される。
【0101】
ユーザ入力部1410は、1つ以上のプロセッサ1406に結合される。ユーザ入力部1410には、キーボード、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、その他、表示部1412上のGUIを使ってユーザが利用できる任意の操作手段が含まれても良い。表示部1412は、波形、測定値その他のデータをユーザに表示する、デジタル画面、陰極線管ベースのディスプレイ、その他のモニタであっても良い。試験測定装置1400の構成要素(コンポーネント)は、試験測定装置1400内に統合されて描かれているが、当業者であれば、これらの構成要素のいずれかが試験測定装置1400の外部にあっても良く、任意の従来の方法(例えば、有線や無線の通信媒体やメカニズム)で試験測定装置1400に結合できることが理解できよう。例えば、いくつかの実施形態では、表示部1412が、試験測定装置1400から遠隔にあってもよい。
【0102】
本発明の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本発明の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本発明の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0103】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。
【0104】
コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は排除される。
【0105】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含むことができる。
【0106】
実施例
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0107】
実施例1は、時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、入力デジタル信号及びエラー信号を受けて、上記入力デジタル信号及び上記エラー信号に基づいて歪んだデジタル信号を出力するように構成されたデジタル・プリ・ディストーション部と、第1サンプル・レートを有する時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータであって、該時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータの複数の時間インターリーブ・チャンネル間の不整合を補正する上記歪んだデジタル信号をアナログ信号に変換するように構成された上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータと、校正システムとを具え、該校正システムが、上記第1サンプル・レート以下の第2サンプル・レートを有するアナログ・デジタル・コンバータであって、上記アナログ信号を受けて、該アナログ信号をダウン・サンプリングされたデジタル信号に変換するように構成された上記アナログ・デジタル・コンバータと、上記入力デジタル信号を受けてモデル信号を出力するように構成された離散時間線形モデル・ユニットと、上記ダウン・サンプリングされたデジタル信号を上記モデル信号から引き算して、上記エラー信号を生成するように構成されたコンバイナ(結合器)とを有している。
【0108】
実施例2は、実施例1の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、このとき、上記離散時間線形モデル・ユニットが、更に上記エラー信号を受けると共に、少なくとも1つの適応型タップと固定型タップとを有する有限インパルス応答フィルタを有している。
【0109】
実施例3は、実施例1及び2のいずれかのいずれかの時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、このとき、上記校正システムは、既知のデジタル入力信号を用いた動作前(pre-operation)校正中にイネーブルされる。
【0110】
実施例4は、実施例3の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、未知のデジタル入力信号を使った動作中に、上記デジタル入力信号に基づいて、上記校正システムをディセーブルにするかどうかを決定するように構成されたデジタル・シグナル・プロセッサを更に具える。
【0111】
実施例5は、実施例1~4のいずれかの時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、上記デジタル・プリ・ディストーション部が、異なる次数の積を有する複数の遅延ラインを有し、該遅延ラインの夫々が上記デジタル入力信号を夫々受ける。
【0112】
実施例6は、実施例5の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、上記デジタル・プリ・ディストーション部が、複数の第1デマルチプレクサであって、該第1デマルチプレクサの夫々は、異なる次数の積を有する複数の上記遅延ラインの出力信号夫々のためのものであって、上記第1デマルチプレクサの夫々が上記遅延ライン夫々の上記出力信号を受けて、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータの上記チャンネル数と等しい個数の信号を有するデータのパラレル・ストリームを出力する複数の上記第1デマルチプレクサと、複数の第2デマルチプレクサであって、該第2デマルチプレクサの夫々が、上記エラー信号を受けて、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータの上記チャンネル数と等しい個数の信号を有するエラー・データのパラレル・ストリームを出力する複数の上記第2デマルチプレクサと、複数の係数適応処理部であって、該係数適応処理部の夫々が、上記データのパラレル・ストリームの夫々と、上記エラー・データのパラレル・ストリームとを相関させ、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータの上記チャンネル数と等しい個数の可変係数を出力する複数の上記係数適応処理部と、複数の第1コンバイナであって、該第1コンバイナの夫々が、上記可変係数の夫々をデータのパラレル・ストリームと結合して結合データのパラレル・ストリームにする複数の上記第1コンバイナと、複数のマルチプレクサであって、該マルチプレクサの夫々が、上記結合データのパラレル・ストリームの夫々を結合して1つの信号にするように構成される複数の上記マルチプレクサと、複数の上記マルチプレクサからの信号の夫々を結合して上記歪んだデジタル信号にするように構成された第2コンバイナとを更に有している。
【0113】
実施例7は、実施例6の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、このとき、上記第1コンバイナが、上記可変係数と上記データのパラレル・ストリームを乗算するポイント毎の乗算器である。
【0114】
実施例8は、実施例6及び7のいずれかの時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、このとき、上記第1コンバイナは、複数の有限インパルス応答フィルタを有するMIMOである。
【0115】
実施例9は、実施例8の時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、上記係数適応処理部は、MIMO型係数適応処理部である。
【0116】
実施例10は、実施例1~9のいずれかの時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムであって、このとき、上記校正システムがリアルタイムで動作する。
【0117】
実施例11は、試験測定装置であって、実施例1~10のいずれかの上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータ・システムと、上記アナログ信号を受けて、電気的又はファイバで光学的に結合された被試験デバイスに上記アナログ信号を出力するように構成されたポートとを具えている。
【0118】
実施例12は、時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータを校正する方法であって、エラー信号に基づいて入力デジタル信号を歪めることによって歪んだデジタル信号を生成する処理と、時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータによって上記歪んだデジタル信号をアナログ信号に変換する処理と、上記アナログ信号をダウン・サンプリングされたデジタル信号に変換する処理と、上記入力デジタル信号に基づいてモデル信号を生成する処理と、上記モデル信号から上記ダウン・サンプリングされたデジタル信号を減算して上記エラー信号を生成する処理とを具えている。
【0119】
実施例13は、実施例12の方法であって、このとき、上記モデル信号を生成する処理が、少なくとも1つの適応型タップと固定型タップとを有する有限インパルス応答フィルタによって、上記デジタル入力信号及び上記エラー信号を処理する処理を含む。
【0120】
実施例14は、実施例12又は13のいずれかの方法であって、既知のデジタル入力信号を用いた動作前の校正の間、上記方法をイネーブルする処理を更に具えている。
【0121】
実施例15は、実施例12~14のいずれかの方法であって、上記デジタル入力信号に基づいて、未知のデジタル入力信号を用いた動作中に、上記方法をイネーブルする処理を更に具えている。
【0122】
実施例16は、実施例12~15のいずれかの方法であって、異なる次数の積を有する複数の遅延ラインによって、上記デジタル入力信号を遅延する処理を更に具えている。
【0123】
実施例17は、実施例16の方法であって、複数の上記遅延ライン夫々の出力信号を夫々対応する第1デマルチプレクサで受けて、夫々対応する上記第1デマルチプレクサから、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータのチャンネル数と等しい個数の信号を有するデータのパラレル・ストリームを出力する処理と、複数の第2デマルチプレクサの夫々で、上記エラー信号を受けて、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータのチャンネル数と等しい個数の信号を有するエラー・データのパラレル・ストリームを出力する処理と、上記データのパラレル・ストリームの夫々と上記エラー・データのパラレル・ストリームの夫々とを相関させて、複数の係数適応処理部の夫々で、上記時間インターリーブ・デジタル・アナログ・コンバータのチャンネル数と等しい個数の可変係数を出力する処理と、上記可変係数の夫々と上記データのパラレル・ストリームの夫々とを結合して結合データ夫々のパラレル・ストリームにする処理と、複数のマルチプレクサの夫々で、上記結合データの夫々を、1つの信号に夫々多重化にする処理と、夫々の上記信号を上記歪んだデジタル信号に結合する処理とを更に具えている。
【0124】
実施例18は、実施例12~17のいずれかの方法であって、上記アナログ信号を局部発振器からの信号と混合して混合信号を生成する処理と、上記アナログ信号をダウン・サンプリングされたデジタル信号に変換する処理の前に、上記混合信号をローパス・フィルタによってフィルタする処理とを更に具えている。
【0125】
実施例19は、実施例12~18のいずれかの方法であって、上記モデル信号を局部発振器からの信号と混合して混合信号を生成する処理と、ローパス・フィルタによって上記混合信号をフィルタする処理と、上記エラー信号を生成する処理の前に、フィルタ処理混合信号をダウン・サンプリングする処理とを更に具えている。
【0126】
実施例20は、実施例19の方法であって、上記モデル信号を第1局所発振器からの信号と混合する処理の前に、可変バンドパス・フィルタによって上記モデル信号にフィルタをかける処理を更に具えている。
【0127】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0128】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例の状況において開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例の状況においても利用できる。
【0129】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0130】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0131】
100 TI DACシステム
102 デジタル入力信号
104 デジタル・プリ・ディストーション(DPD)ユニット
106 DT線形モデル・ユニット
108 TI DAC
109 TI DACチャンネル
110 加算器
112 アナログ信号
114 ADC
116 ダウン・サンプラ
118 ダウン・サンプラ
120 コンバイナ
122 エラー信号
200 1次遅延ライン
202 2次遅延ライン
204 P次延ライン
206 遅延ブロック
208 適応処理ブロック
210 コンバイナ
500 デマルチプレクサ
502 遅延ブロック
504 ダウン・サンプラ
506 係数適応処理ブロック
508 デマルチプレクサ
510 乗算器
512 マルチプレクサ
800 適応処理ブロック
802 デマルチプレクサ
804 遅延ブロック
806 MIMO係数適応処理ブロック
808 デマルチプレクサ
810 MIMOブロック
812 マルチプレクサ
1200 TI DACシステム
1202 可変RFバンドパス・フィルタ
1204 局部発振器
1206 ミキサ
1208 RFローパス・フィルタ
1210 可変DSPバンドパス・フィルタ
1212 位相アライナ
1214 局部発振器
1216 周波数掃引制御部
1218 ミキサ
1220 ローパス・フィルタ
1300 TI DACシステム
1400 試験測定装置
1402 TI DACシステム
1404 ポート
1406 プロセッサ
1408 メモリ
1410 ユーザー入力部
1412 表示部