(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】せん断ピン
(51)【国際特許分類】
F16B 21/16 20060101AFI20241225BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20241225BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
F16B21/16 Z
B66C13/00 Z
B66C15/00 B
B66C15/00 F
(21)【出願番号】P 2022012726
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 正信
(72)【発明者】
【氏名】堀江 雅人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】山名 浩太
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216041(JP,A)
【文献】実開昭54-108843(JP,U)
【文献】特開2009-019700(JP,A)
【文献】特開2017-137190(JP,A)
【文献】特開2000-087996(JP,A)
【文献】特開2017-214054(JP,A)
【文献】米国特許第03960456(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/00-21/20
B66C 13/00
B66C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱形状のせん断ピンにおいて、
予め設定されるせん断強さを有する内側ピンと、この内側ピンが挿入される空洞を有する略円筒形状の外筒とを備え
ていて、
前記内側ピンと前記外筒との間であり且つ前記せん断ピンの軸方向の全体に形成される隙間を備えることを特徴とするせん断ピン。
【請求項2】
前記内側ピンは、
外周面の周方向に沿って形成されるスリットを有する請求項1に記載のせん断ピン。
【請求項3】
前記外筒のせん断強さが、前記内側ピンのせん断強さよりも小さく設定される請求項1または2に記載のせん断ピン。
【請求項4】
前記内側ピンが、内側に形成される内側空洞と、外周面の周方向に沿って形成されるスリットとを有する請求項1~3のいずれかに記載のせん断ピン。
【請求項5】
前記内側ピンが、内側に形成される内側空洞と、この内側空洞の周方向に沿って形成されるスリットとを有する
請求項1に記載のせん断ピン。
【請求項6】
前記外筒が、内側となる前記空洞から外側となる外周面に貫通する給油口を有する請求項1~5のいずれかに記載のせん断ピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等に設置されて破断することで機器を保護するせん断ピンに関するものであり、詳しくは劣化を抑制することで長寿命化を実現したせん断ピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
せん断ピンの構成が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には隣接する二つの部材に形成される貫通孔に挿入して使用されるせん断ピンの構成が開示されている。せん断ピンは、例えばクレーンの免震装置に配置される。また例えばクレーンの過荷重(スナッグロード)保護装置としてせん断ピンは配置される。
【0003】
隣接する二つの部材の貫通孔にせん断ピンが挿入されることで、隣接する二つの部材どうしは固定される状態となる。通常の荷役作業において発生する荷重(以下、通常荷重ということがある)に対して、せん断ピンは破断することなく二つの部材どうしの固定を維持する。例えば船舶に固定されたコンテナをクレーンが吊り上げようとしたとき、過荷重保護装置として配置されたせん断ピンに過大な荷重(以下、過荷重ということがある)が発生する。所定のせん断力を超える力である異常荷重がせん断ピンに発生したとき、せん断ピンが破断してコンテナを吊り上げるロープが緩む。クレーンが船舶を吊り上げることで、クレーンが倒壊したり転倒したりする事故をせん断ピンが防止していた。
【0004】
過荷重が発生していないにも関わらずせん断ピンが破断する不具合があった。隣接する二つの部材に発生する振動等の影響で、せん断ピンは繰り返し発生する曲げ応力を受けて劣化していたことがわかった。またフレッチング摩耗によりせん断ピンが配置される貫通孔とせん断ピンとの隙間が大きくなり、せん断ピンに曲げ応力が発生しやすくなっていたことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は劣化を抑制することで長寿命化を実現したせん断ピンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するためのせん断ピンは、略円柱形状のせん断ピンにおいて、予め設定されるせん断強さを有する内側ピンと、この内側ピンが挿入される空洞を有する略円筒形状の外筒とを備えていて、前記内側ピンと前記外筒との間であり且つ前記せん断ピンの軸方向の全体に形成される隙間を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、せん断ピンが内側ピンと外筒との二重管状に形成される。せん断ピンが挿入される貫通孔とは外筒のみが接触するため、内側ピンの劣化を抑制できる。せん断ピンの長寿命化を実現するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】せん断ピンの概略を斜視で例示する説明図である。
【
図2】外筒および内側ピンの軸方向に平行な断面を例示する説明図である。
【
図3】部材の貫通孔にせん断ピンを配置した状態を断面で例示する説明図である。
【
図4】
図3の外筒が撓んだ状態を例示する説明図である。
【
図5】せん断ピンの軸方向に直交する断面を例示する説明図である。
【
図6】
図4の外筒が破断した状態を例示する説明図である。
【
図7】
図6の内側ピンが破断した状態を例示する説明図である。
【
図8】
図2の内側ピンの変形例を例示する説明図である。
【
図9】
図8の内側ピンの変形例を例示する説明図である。
【
図10】
図2の外筒の変形例を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、せん断ピンを図に示した実施形態に基づいて説明する。図中ではせん断ピンの軸方向を矢印y、この軸方向yを直角に横断する横方向を矢印x、軸方向yおよび横方向に直交する上下方向を矢印zで示している。
【0011】
図1に例示するようにせん断ピン1は、全体として略円柱形状に形成されている。せん断ピン1は、内側ピン2と外筒3とを備える二重管構造を有している。内側ピン2は予め設定されるせん断強さを有している。
図1および
図2に例示する実施形態では内側ピン2は略円柱形状に形成されている。また内側ピン2は外周面の周方向に沿って形成されるスリット2aを有している。このスリット2aの深さにより、内側ピン2のせん断強さは調整される。スリット2aの深さとは、内側ピン2の軸方向yに直交する半径方向におけるスリット2aの長さをいう。内側ピン2は予め設定されるせん断強さを超えるせん断力を受けたとき破断する。せん断強さとは、内側ピン2が半径方向にせん断力を受けたとき破断する力をいう。せん断強さは単位面積あたりの荷重で示され、単位はN/mm
2である。スリット2aは必須ではなく、内側ピン2がスリット2aを有さない構成であってもよい。この場合は、内側ピン2の直径の大きさや材料の種類によりせん断強さが設定される。
【0012】
図1および
図2に例示する実施形態では外筒3は、略円筒形状に形成されている。また外筒3は外周面の周方向に沿って形成されるスリット3aを有している。このスリット3aの深さにより、外筒3のせん断強さは調整される。内側ピン2と同様に、外筒3もスリット3aを有さない構成であってもよい。外筒3は内側ピン2が挿入される空洞3bを有している。空洞3bは外筒3と軸方向yが一致する略円柱形状に形成されている。
図1および2では説明のため内側ピン2と外筒3とを分離させた状態を示している。また
図1では説明のため空洞3bに配置されたときの内側ピン2を破線で示している。
【0013】
図2に例示する実施形態では空洞3bの軸方向yの両端が開放状態であり、両端のいずれからでも内側ピン2を空洞3bに出し入れすることができる。空洞3bは軸方向yの一方側または両側が閉止される構造であってもよい。両側が閉止される構造の場合は、内側ピン2の出し入れのために少なくとも一方側が開閉可能に構成される。
【0014】
この実施形態では内側ピン2および外筒3はそれぞれ二つずつスリット2a、3aを有しているが、この構成に限定されない。スリット2a、3aはそれぞれ一つであってもよい。
【0015】
図3に例示するようにせん断ピン1は、隣接する二つの部材4a、4bに形成される貫通孔5に挿入される。この実施形態では一対の部材4aの間に一つの部材4bが配置されている。一つの部材4aと一つの部材4bとが隣接する状態で配置されるとともに、部材4a、4bに形成される貫通孔5にせん断ピン1が挿入される構成であってもよい。
【0016】
せん断ピン1により一方の部材4aと他方の部材4bとが固定される。部材4a、4bはせん断ピン1の軸方向yに直交する方向への相対移動を拘束される。二つの部材4a、4bの境界に対応する位置に、スリット2a、3aが位置する状態にせん断ピン1は構成される。せん断ピン1が破断したとき、つまり外筒3および内側ピン2の両方が破断したとき、一方の部材4aと他方の部材4bとの固定が解除される。せん断ピン1は、隣接する二つの部材4a、4bに形成された貫通孔5に挿入されて部材4a、4bを固定する機能と、所定のせん断力を受けたときに破断して二つの部材4a、4bの固定を解除する機能とを有している。
【0017】
せん断ピン1が二重管構造を備えるため、せん断ピン1が挿入される貫通孔5とは外筒3のみが接触する。そのため貫通孔5との接触による摩耗は外筒3のみに発生して内側ピン2には発生しない。内側ピン2の劣化を抑制するには有利である。せん断ピン1の全体としての長寿命化を実現するには有利である。
【0018】
内側ピン2が疲労により予め設定されるせん断強度より小さいせん断力で破断する不具合を回避できる。せん断ピン1は全体として通常荷重で破断するおそれがない。せん断ピン1を長期間使用した場合であっても、通常の荷役作業の際に意図せずせん断ピン1が破断して、ロープが緩みコンテナが落下する等の不具合を回避できる。
【0019】
外筒3から内側ピン2を引き抜くことで、内側ピン2の点検を容易に行うことができる。内側ピン2に亀裂等が発生していなければ、せん断ピン1は全体として所定以下のせん断力で破断する不具合を回避できる。また外筒3が貫通孔5に配置されている状態であっても、内側ピン2を引き抜いて点検することが可能となる。内側ピン2の点検の作業性を向上するには有利である。貫通孔5に配置されている状態の外筒3であっても、空洞3b側から外筒3の亀裂の有無等を点検できる。点検の作業性を向上するには有利である。せん断ピン1の点検の作業性が向上するため、点検の頻度を上げることができる。せん断ピン1の長寿命化を実現するには有利である。
【0020】
図3に例示するように内側ピン2と外筒3との間に形成される隙間6をせん断ピン1が備える構成であってもよい。せん断ピン1が隙間6を有さない構成であってもよい。つまり外筒3の内径d1と内側ピン2の外径d2とがほぼ一致する状態であってもよい。たとえば焼き嵌め等により外筒3の空洞3bに内側ピン2が隙間なく配置される構成としてもよい。
【0021】
せん断ピン1が隙間6を備える方が、外筒3から内側ピン2を引き抜きやすくなるため、点検の作業性を向上するには有利である。このとき隙間6は外筒3から内側ピン2を引き抜ける程度の大きさを有していればよい。
【0022】
図4に例示するように部材4a、4bの相対的な変位により外筒3に曲げ応力が発生した場合であっても、内側ピン2にこの力が伝達されない程度の隙間6をせん断ピン1が備えていてもよい。隙間6の大きさは、外筒3が破断する直前まで撓んだ状態のとき、内側ピン2が外筒3から曲げ応力を受けずに一切撓みのない状態を維持できる大きさとも言える。
図4では説明のため、部材4bの変位方向を白抜き矢印で示し、変位前の部材4bの初期位置を破線で示している。この実施形態のせん断ピン1は、外筒3が撓んだ場合であっても、内側ピン2に応力が発生しない程度の大きさの隙間6を備えている。そのため外筒3が破断しない限り、内側ピン2に応力が発生しない。外筒3が部材4a、4bの振動等により曲げ応力を繰り返し受けたり、貫通孔5との間で摩擦等が発生したりする場合であっても、内側ピン2にはその影響が発生しない。内側ピン2が曲げ応力により劣化する不具合を回避するには更に有利である。
【0023】
せん断ピン1が比較的大きな隙間6を有する場合は、内側ピン2の脱落を防止するために、外筒3の両端にストッパ7を配置してもよい。ストッパ7は内側ピン2が空洞3bから飛び出すことを防止できる程度の大きさを有していればよい。少なくとも一方のストッパ7は、空洞3bに対する内側ピン2の出し入れを可能とするため、取り外し可能または開閉可能に構成される。
【0024】
図5に例示するように半径方向における隙間6の幅Δdは、外筒3の内径d1に対して0.5~30.0%となる大きさを有していることが望ましい。ここで隙間6の幅Δdは、外筒3の内径d1と内側ピン2の外径d2との差で表すことができる。つまりΔd=d1-d2となる。また隙間6の幅Δdは0.005×d1≦Δd≦0.300×d1となる。
【0025】
隙間6の幅Δdが小さすぎると外筒3が撓んだときに内側ピン2に曲げ応力が発生してしまう。内側ピン2が劣化する可能性が出てくる。幅Δdが大きすぎると外筒3が破断して内側ピン2にせん断力が発生する際に、内側ピン2に曲げ応力が発生する可能性が出てくる。この曲げ応力により所定以下のせん断力であっても内側ピン2が破断する可能性が上がる。幅Δdが小さいほど内側ピン2の軸方向yに対して直交する方向のせん断力が内側ピン2に発生して、幅Δdが大きいほど内側ピン2の例えば横方向xを中心とする曲げ応力が内側ピン2に発生する。隙間6の幅Δdは、せん断ピン1の軸方向yの長さや、外筒3の撓みやすさを考慮して適宜変更できる。
【0026】
内側ピン2と外筒3とにおいて、せん断強さは等しい又はほぼ等しい状態に設定される。外筒3は部材4a、4bから受ける振動や摩擦等の影響により劣化する。そのため内側ピン2よりも外筒3が先に破断することが多くなる。またせん断強さを超えるせん断力をせん断ピン1が受けたときは、内側ピン2と外筒3とがほぼ同時に破断する。少なくとも内側ピン2が外筒3よりも先に破断することがないように、内側ピン2および外筒3のせん断強さは設定される。
【0027】
外筒3のせん断強さが、内側ピン2のせん断強さよりも小さくなる状態に設定してもよい。外筒3の劣化がない状態であっても内側ピン2より先に外筒3が破断する。外筒3が破断した後に、所定のせん断強さを超えるせん断力を受けたとき内側ピン2は破断する。せん断ピン1の全体としてのせん断強さを、内側ピン2で設定されるせん断強さにより精度良く設定することができる。劣化していない内側ピン2が、せん断ピン1の全体としての破断するタイミングを制御できる。
【0028】
断面二次モーメントは、内側ピン2よりも外筒3の方が大きくなる状態に設定されてもよい。内側ピン2と外筒3とを同一の材料で構成してもよい。具体的には例えばクロムモリブデン鋼鋼材やフェライト系ステンレス鋼鋼材で内側ピン2および外筒3を構成してもよい。望ましくは内側ピン2が外筒3よりも粘り強い材料で構成される。内側ピン2が外筒3とともに撓む場合であっても、内側ピン2の方が劣化し難くなる。
【0029】
上記のせん断強さや断面二次モーメントや材料の粘り強さの条件は、少なくともスリット2a、3aなどせん断する部分で設定されていればよい。内側ピン2および外筒3において、せん断しない部分は上記条件を満たさなくてもよい。また上記のせん断強さや断面二次モーメントや材料の粘り強さの条件を調整するために、材料の変更やスリット2a、3aの深さの変更の他、セラミック溶射により内側ピン2や外筒3の表面硬度を変更させてもよい。
【0030】
図6に例示するように外筒3が劣化して通常の荷役作業において発生する通常荷重で破断することがある。この実施形態ではスリット3aの部分で外筒3が破断している。この場合であっても、内側ピン2は予め設定されるせん断強さより小さい荷重は支持できる。つまり通常の荷役作業において発生する通常荷重は内側ピン2により支持される。せん断ピン1が破断してロープが緩み、コンテナが落下する等の不具合を回避できる。内側ピン2に予め設定されるせん断強さを超える過荷重が発生しない限り、クレーンは荷役作業を継続できる。点検時に外筒3の破断が確認された場合は、せん断ピン1(内側ピン2および外筒3)を交換すればよい。内側ピン2を引き抜くことで、空洞3b側から外筒3の破断や亀裂の有無は容易に確認できる。せん断ピン1が隙間6を備える場合は、隙間6を利用して外筒3の破断の有無を確認してもよい。せん断ピン1の交換作業の際には、外筒3のみを交換してもよい。
【0031】
図7に例示するように予め設定されるせん断強さより大きい荷重(過荷重)が内側ピン2に発生すると、内側ピン2が破断する。内側ピン2は曲げ応力や摩擦等の影響を受けず劣化していないため、予め設定されるせん断強さで精度良く破断する。船舶に固定されたコンテナを吊り上げるなど、過荷重が発生した際にせん断ピン1が破断するので、クレーン等の機器を保護することができる。
【0032】
図8に例示するように内側ピン2が、略円筒形状に形成されてもよい。
図8の上方に略円筒形状に形成される内側ピン2の断面を示し、
図8の下方に比較のため円柱形状に形成される中実な内側ピン2(
図2参照)の断面を示している。この実施形態では内側ピン2は内側空洞2bを有している。内側空洞2bは内側ピン2と軸方向yが一致する略円柱形状に形成されている。
図2に例示する内側ピン2と同様に外周面の周方向に沿って形成されるスリット2aを内側ピン2は有している。
【0033】
内側ピン2において予め設定されるせん断強さが同じ場合、中実に形成される内側ピン2に比べて、略円筒形状の内側ピン2はスリット2aの深さtを小さくできる。略円筒形状の内側ピン2は、中実に形成される内側ピン2よりもスリット2aの部分の断面二次モーメントが大きくなり、曲げ応力による劣化に強くなる。内側ピン2の劣化を抑制するには有利である。またスリット2aの深さtが小さくなるため、スリット2aに発生する亀裂等を点検時に発見しやすくなる。
【0034】
図9に例示するように内側空洞2bの内周面の周方向に沿ってスリット2aが形成されてもよい。中実に形成される内側ピン2よりもスリット2aの部分の断面二次モーメントが大きくなり、曲げ応力による劣化に強くなる。内側ピン2の劣化を抑制するには有利である。また内側ピン2の外周面は、スリット2aがなく滑らかな状態に形成される。外筒3に内側ピン2を挿入する際に抵抗が発生し難くなり、内側ピン2の抜き差しが容易となる。点検の作業性を向上するには有利である。
【0035】
せん断ピン1が外筒3を有さない略円筒形状の内側ピン2のみで構成されてもよい。内側ピン2のみで構成されるせん断ピン1は、上記と同様の効果を得ることができる。つまり内側ピン2は略円筒形状に形成されるため、中実に形成される従来のせん断ピンよりもスリット2aの部分の断面二次モーメントが大きくなり、曲げ応力による劣化に強くなる。また略円筒形状に形成されて内側空洞2bにスリット2aが形成される内側ピン2のみでせん断ピン1が構成されてもよい。内側ピン2のみで構成されるこのせん断ピン1も上記と同様の効果を得ることができる。
【0036】
図10に例示するように外筒3が、内側となる空洞3bから外側となる外周面に貫通する給油口8を有していてもよい。外筒3が、外周面の周方向に沿って形成されるとともに給油口8に連結される給油路8aを有していてもよい。内側ピン2と外筒3との間の隙間6に潤滑油を供給すると、潤滑油が給油口8を経由して外筒3の外周面に供給される。部材4a、4bに形成される貫通孔5および外筒3の摩耗を潤滑油により抑制できる。外筒3の劣化を抑制するには有利である。
図10では説明のため潤滑油の移動経路を矢印で示している。
【0037】
内側ピン2の外周面にグリス等の潤滑油が塗布される場合も、給油口8や給油路8aを経由して潤滑油が外筒3の外周面に移動する。外筒3の劣化を抑制できる。せん断ピン1の長寿命化を実現するには有利である。
【符号の説明】
【0038】
1 せん断ピン
2 内側ピン
2a スリット
2b 内側空洞
3 外筒
3a スリット
3b 空洞
4 隣接する二つの部材
4a 部材
4b 部材
5 貫通孔
6 隙間
7 ストッパ
8 給油口
8a 給油路
x 横方向
y 軸方向
z 上下方向
Δd (隙間の)幅
d1 (外筒の)内径
d2 (内側ピンの)外径
t 深さ