IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽ホールディングス株式会社の特許一覧

特許7610928硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
<>
  • 特許-硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20241226BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20241226BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20241226BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20241226BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20241226BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20241226BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20241226BHJP
   C09D 11/101 20140101ALN20241226BHJP
   G03F 7/004 20060101ALN20241226BHJP
   G03F 7/027 20060101ALN20241226BHJP
   G03F 7/038 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
C08G59/40
C08G59/17
C08F290/14
H05K3/28 F
H05K3/28 D
B32B27/20 A
B32B27/38
B32B27/42 101
C09D11/101
G03F7/004 512
G03F7/004 501
G03F7/027 511
G03F7/027 515
G03F7/038 501
G03F7/004 505
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020092509
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2020200449
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2019104872
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康昭
(72)【発明者】
【氏名】白川 賢一
(72)【発明者】
【氏名】柳田 伸行
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/143220(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/221012(WO,A1)
【文献】特開2018-172632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂および体質顔料を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂が、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂と、エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性モノマーと、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基を有する熱硬化性樹脂とを含み、
前記硬化性樹脂の合計配合量が、前記硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、25~75質量%であり、
前記光重合性モノマーの配合量が、前記硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、3~20質量%であり、
前記カルボキシル基含有樹脂の配合量が、前記硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、20~50質量%であり、
前記体質顔料が、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、
前記体質顔料の配合量が、前記硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、2575質量%であり、
前記硬化性樹脂組成物の硬化後膜厚12μmの硬化塗膜における60°の光沢度が0.5以上40.0以下の範囲内であり、
前記硬化性樹脂組成物0.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30gと混合し、マイクロトラックを用いて測定した際の平均粒子径D50が0.1μm以上1.0μm以下、且つ、比表面積CSが10.0m/ml以上であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物の乾燥後の塗膜厚の凹凸の平均間隔Smが0μm超12.0μm以下の範囲内である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物の乾燥後の塗膜厚の最大高さRyが0μm超8.0μm以下の範囲内である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記体質顔料の配合量が、前記硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、25~50質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記体質顔料がシリカおよび硫酸バリウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記体質顔料がさらに吸油量180~350ml/100gの非晶質シリカを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記非晶質シリカの配合量が、前記体質顔料100質量部に対して、5~90質量部である、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化性樹脂が2種類以上のカルボキシル基含有樹脂を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記2種類以上のカルボキシル基含有樹脂の少なくとも1種がカルボキシル基含有共重合樹脂である、請求項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記カルボキシル基含有共重合樹脂の配合量が、固形分換算で、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、5~90質量%である、請求項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
支持フィルムと、前記支持フィルム上に形成された請求項1~10のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備えることを特徴とする、ドライフィルム。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物、または、請求項11に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させて得られることを特徴とする、硬化物。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化物を備えることを特徴とする、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いたドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ほとんどのプリント配線板のソルダーレジストには、高精度、高密度化の観点から、液状アルカリ現像型ソルダーレジストインキが使用されており、具体的には前記インキを印刷、乾燥後の塗膜を露光、現像することにより画像形成し、加熱硬化して得られる。
【0003】
ところで、ソルダーレジスト層を粗面化することにより、はんだフロー時の耐半田付着性や配線隠蔽性が向上することが知られている。また、粗面化されたソルダーレジスト層は光沢度が適度に抑制されるため、良好な意匠性が得られる。例えば、特許文献1には、感光性樹脂組成物中に艶消し剤を添加することによりソルダーレジスト層を粗面化により低光沢化することが提案されている。
【0004】
また、近年では、部品実装時における歩留まり改善の観点から、乾燥後や硬化後の塗膜の膜厚は薄膜化している(例えば、特許文献2)。近年では、さらに薄膜において厳密な膜厚管理が求められるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-157574号公報
【文献】特開2004-264560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、部品実装時の反り低減や耐熱性向上を目的に、硬化性樹脂組成物中に体質顔料や樹脂が含まれる。しかしながら、硬化性樹脂組成物中には、様々な要求特性を満たすために体質顔料や樹脂以外にも複数の成分を混合しているため、各成分の混合状態が不十分な場合には、硬化性樹脂組成物中で濃度不均衡が起こることがあった。そのため、硬化性樹脂組成物を用いて基材等に塗布した乾燥前の塗膜(以下、乾燥前塗膜ともいう)の膜厚がばらつき、特に薄膜時には、例えば、その下の基板の金属(銅)配線がムラになって透けて見える「銅見え」による外観不良が問題であった。さらに硬化後の塗膜(以下、硬化塗膜ともいう)が低光沢である場合は、硬化後の塗膜では上記外観不良の問題がより顕著であった。これは、塗膜が低光沢である程、コントラストとなり、下地の金属(銅)配線の光沢がよりムラとなって透けて見えやすくなるものと推測される。
【0007】
乾燥前塗膜の膜厚のばらつきが大きい場合、乾燥後の塗膜(以下、乾燥塗膜ともいう)や硬化後の塗膜の膜厚もばらつきが大きくなる恐れがあるため、特に高価な基板を用いる際には乾燥前塗膜の膜厚のばらつきの大きさを以ってNG判定してばらつき箇所をリペアすると製造工程が煩雑となり生産性が低下する恐れがあった。このように乾燥後の塗膜の膜厚のばらつきの小ささに加えて、乾燥前塗膜の膜厚のばらつきの小ささも重要視される場合があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、薄膜時にも乾燥前塗膜や乾燥塗膜の膜厚のばらつきが小さく、銅見え現象の生じない硬化性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、該樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層を有するドライフィルム、該樹脂組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意研究した結果、粉体、特に体質顔料を含有する硬化性樹脂組成物において、マイクロトラックを用いて測定された値を調節する、具体的には平均粒子径D50の値だけでなく比表面積CSをも調節することによって、粉体による乾燥前や乾燥後の塗膜表面への影響が少なくなり、その結果、薄膜時にも乾燥前や乾燥後の塗膜の膜厚のばらつきが小さく、銅見え現象の生じない硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明による硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂および体質顔料を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂組成物の硬化後膜厚12μmの硬化塗膜における60°の光沢度が0.5以上40.0以下の範囲内であり、
前記硬化性樹脂組成物0.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30gと混合し、マイクロトラックを用いて測定した際の平均粒子径D50の値が0.1μm以上1.0μm以下、且つ、比表面積CSが10.0m/ml以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明の態様においては、前記硬化性樹脂組成物の乾燥後の塗膜厚の凹凸の平均間隔Smが0μm超12.0μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、前記硬化性樹脂組成物の乾燥後の塗膜厚の最大高さRyが0μm超8.0μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記体質顔料がシリカおよび硫酸バリウムの少なくともいずれか1種であることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、前記シリカが吸油量180~350ml/100gの非晶質シリカを含むことが好ましい。
【0015】
本発明の態様においては、前記硬化性樹脂がカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の態様においては、前記硬化性樹脂が2種類以上のカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の態様においては、前記2種類以上のカルボキシル基含有樹脂の少なくとも1種がカルボキシル基含有共重合樹脂であることが好ましい。
【0018】
本発明の別の態様によるドライフィルムは、支持フィルムと、前記支持フィルム上に形成された前記硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の別の態様による硬化物は、前記硬化性樹脂組成物、または、前記ドライフィルムの樹脂層を硬化させて得られることを特徴とする。
【0020】
本発明の別の態様によるプリント配線板は、前記硬化物を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、薄膜時にも乾燥前塗膜や乾燥塗膜の膜厚のばらつきが小さく、銅見え現象の生じない硬化性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明によれば、該樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層を有するドライフィルム、該樹脂組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有するプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例において、乾燥塗膜のばらつきを表面粗さ測定機の段差解析により測定した際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[硬化性樹脂組成物]
本発明による硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂と、体質顔料を含有するものである。本発明による硬化性樹脂組成物は、下記の物性を満たすものであればよく、光重合開始剤、増感剤、熱硬化触媒、着色剤等をさらに含有してもよい。また前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、カルボキシル基含有樹脂および光重合性モノマーのいずれか1種を含有していてもよく、複数種の組合せであってもよい。本発明による硬化性樹脂組成物は、下記の物性を満たすことで、塗布時のばらつきやダレが少なく、薄膜時にも膜厚のばらつきが小さい乾燥前や乾燥後の塗膜を得ることができ、硬化後においては銅見え現象の生じない硬化後の塗膜を得ることができる。本発明において、薄膜とは、塗膜の厚さが、通常、乾燥前で20μm以下、乾燥後や硬化後において12μm以下の場合を指す。
【0024】
[物性]
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後膜厚12μmの硬化塗膜における60°の光沢度が0.5以上40.0以下の範囲内であり、好ましくは0.8以上35.0以下であり、より好ましくは1.0以上20.0以下であり、さらに好ましくは1.0以上10.0以下であり、特に好ましくは2.0以上6.0以下である。
なお、光沢度は、JIS Z 8741に準拠して測定することができる。光沢度の具体的な測定方法について説明する。前提として、屈折率が1.067である表面において、入射角度60°の場合における、反射率10%の光の強度を光沢度100とし、さらに、反射率0%の光の強度を0と仮定する。これにより、反射率10%の光の強度の100分の1の値が、光沢度1に相当する。入射角度60°の幾何条件の反射率計を用いて、基材上に設けられた硬化塗膜の表面の光の強度を測定する。そして、得られた光の強度を、上記した反射率10%の光の強度の100分の1の値で割ることで、光沢度を算出するものとする。簡易的には、デジタル変角光沢度計(Micro-Tri-Gloss、BYK Gardener社製)を用いて、基材上に設けられた硬化塗膜の表面を各角度の光沢度を測定することができる。なお、「60°光沢度(Gs(60°))」とは、測定条件を入射角=60°、受光角=60°としたときの光沢度の値である。
【0025】
本発明における硬化塗膜とは、光硬化および熱硬化の少なくともいずれか一方を行うことによって、硬化性樹脂組成物が硬化された塗膜をいう。一方、本発明における乾燥塗膜とは、熱乾燥を行うことによって、硬化性樹脂組成物が乾燥された塗膜をいう。熱乾燥方法としては、表面をバフロール研磨した35μm厚の300mm×150mm銅箔基板上に、乾燥後膜厚が12μmになるようにスクリーン印刷で印刷し、熱風循環式乾燥炉を用いて熱乾燥する。スクリーン印刷を行う際の印刷版としては、膜厚調整の観点より、100~200メッシュのポリエステル版(バイアス有)を用いることが好ましく、150~180メッシュのポリエステル版(バイアス有)を用いることがより好ましい。乾燥条件としては例えば、60~100℃の温度で15~90分間が挙げられる。また、装置としては、ヤマト科学株式会社製DF610等が挙げられる。
【0026】
一方、光硬化方法としては、前述のとおり形成した、乾燥塗膜を活性エネルギー線照射、具体的には高圧水銀ランプを用いたUVコンベアにより光硬化する。照射量としては例えば、1,000~2,000mJ/cmが挙げられる。また、装置としては、株式会社オーク製作所製QRM-2082等が挙げられる。
【0027】
また、熱硬化方法としては、表面をバフロール研磨した35μm厚の300mm×150mm銅箔基板上に、硬化後膜厚が12μmになるようにスクリーン印刷で印刷し、熱風循環式乾燥炉を用いて熱硬化する。スクリーン印刷を行う際の印刷版としては、膜厚調整の観点より、100~200メッシュのポリエステル版(バイアス有)を用いることが好ましく、150~180メッシュのポリエステル版(バイアス有)を用いることがより好ましい。熱硬化条件としては例えば、100~220℃の温度で30~90分間が挙げられる。
【0028】
乾燥や熱硬化の際に用いる乾燥装置としては、ヤマト科学株式会社製DF610等が挙げられる。なお、本発明において光沢度を測定する場合、現像工程を行わずに形成した硬化塗膜を用いて測定する。
【0029】
また、本発明における硬化塗膜が形成されたか否かの確認方法は、以下の方法で確認できる。すなわち、25℃50%RHの環境下で、硬化塗膜の表面に、イソプロピルアルコール(IPA)を含ませたウエスを載せ、さらに、その上に500gのおもりを載せて1分間静置した後に、ウエスをはがし、ウエスの硬化塗膜と接触していた面に樹脂層の全部または一部が付着していない状態を「硬化している状態」である、すなわち、硬化塗膜が形成されたものと判断する。一方、本発明における乾燥塗膜が形成されたか否かの確認方法は、硬化性樹脂組成物の塗布面を指で触ったときに硬化性樹脂組成物が指に付着しない状態を「乾燥している状態」である、すなわち、乾燥塗膜が形成されたものと判断する。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物は、平均粒子径D50の値が0.1μm以上1.0μm以下であり、銅見え現象をより抑制する点において、好ましくは0.1μm以上0.8μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、比表面積CSが10.0m/ml以上であり、より低光沢でありながら、薄膜時にも乾燥前や乾燥後の塗膜の膜厚のばらつきをより小さくし、銅見え現象を抑制する点において、好ましくは11.5m/ml以上30.0m/ml以下であり、より好ましくは13.0m/ml以上25.0m/ml以下である。
【0031】
硬化性樹脂組成物としての平均粒子径D50の値が0.1μm以上1.0μm以下であって、比表面積CSが10.0m/ml以上であれば、薄膜時にも乾燥前や乾燥後の塗膜の膜厚のばらつきをより小さくし、銅見え現象を抑制することができる。このことは必ずしも明らかではないが以下のように推測される。すなわち、比表面積CSが上記範囲内にあることにより、組成物中に含まれる粉体が高い分散状態を維持しており、その結果、当該組成物を用いた薄膜形成時においても、ダレが生じず、また、含まれる粉体による乾燥前や乾燥後の塗膜表面への影響が少なく、その結果、低光沢の薄膜においても銅見え現象を抑制するものと考えられる。しかしながら、あくまでも推測の域であり、必ずしもこの限りではない。
【0032】
本発明において、硬化性樹脂組成物としての平均粒子径D50は、組成物中に含まれる体質顔料等の粉体を1つの粉体の集団と仮定し、その粒度分布が求められているものとする。すなわち、かかる仮定した1つの粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、前記累積カーブが50%となる点の粒径を50%径(μm)とし、平均粒子径D50とするものとする。一方、比表面積CSは、組成物中の粒子形状を球形と仮定した場合の単位体積あたりの表面積である。前述した平均粒子径D50および比表面積CSは、それぞれ以下の測定により算出されるものをいう。なお、本発明の比表面積CS(Calculated Specific Surfaces Area)(m/ml)は、BET式またはその他の表面積測定装置により測定される比表面積(m/g)とは、意味合いが異なるものである。まず、以下の使用機器および備品類を用意する。
・粒度分布計:日機装株式会社製 マイクロトラック MT3300EX
・循環装置:日機装株式会社製 ASVR
次に、以下の手順で測定条件を入力する。マイクロトラックの付属のソフト(「粒度分布測定」)を立ち上げ、SET UPの画面から進み、測定条件設定のオプションから時間設定を行う。Setzero時間を30sec.、測定を30sec.、測定回数を2回とする。次に分析条件を入力する。分析情報において、粒子屈折率を1.81(固定値:全無機物の屈折率の平均値)、粒子の特徴において透過性を透過、形状を非球形とする。また溶媒情報において、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を選択し、溶媒屈折率を1.4とする。次にスケール設定を入力する。粒径範囲において、最小粒径を0.021μm、最大粒径を704μmとする。次にサンプリングシステムを入力する。ASVRの洗浄回数を4回、流速を50%、超音波出力を40W、超音波時間を300sec.とする。すべての測定条件を入力したら、測定条件の設定において、保存を押して閉じる。
続いて、以下の手順でサンプルの調整を行う。スクリュー瓶にサンプル(硬化性樹脂組成物)を0.3g秤取り、スポイトを用いて30gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少しずつ添加し、スクリュー瓶の振とうによりサンプルを溶解させて調整サンプルを作製する。調整サンプルは外部分散や予備分散を行わない。次に調整サンプルの測定を行う。マイクロトラックの付属のソフトの粒度分布測定をクリックしサンプルローディングの画面を開く。本体のサンプル投入口にスポイトを用いて調整サンプルを数滴滴下する。前記サンプルローディングの画面において、赤色の指示バーが表示されたら、赤色から緑色の範囲内に入るまで、前記サンプル投入口に調整サンプルを滴下する。前記緑色の範囲内に入ったら、測定ボタンを押して、測定を開始する。サンプルの調整から調整サンプルの測定までは5分以内に行う。測定結果として表示された、累積平均径50%の値、面積平均径MAの値をそれぞれ読み取る。累積平均径50%の値をマイクロトラックで測定した平均粒子径D50の値とする。また、CS=6/MAを算出する。算出されたCSの値をマイクロトラックで測定した比表面積の値とする。
なお、MAは以下の式により算出される。
MA=Σ(a・d)/Σ(a)=Σ(v)/Σ(v/d
(a:粒子1個あたりの表面積、d:粒子1個あたりの粒子径、v:粒子1個あたりの体積)
【0033】
硬化性樹脂組成物としての平均粒子径D50の値が0.1μm以上1.0μm以下であって、比表面積CSが10.0m/ml以上とするには、公知慣用の手法を適用することができるが、例えば、組成物中の成分の選定やその配合量、組成物中の粉体や樹脂等の分散方法を最適化すること等が挙げられる。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物は、乾燥後の塗膜厚の凹凸の平均間隔Smが好ましくは0μm超12.0μm以下の範囲内であり、より好ましくは1.0μm以上11.0μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは2.0μm以上8.0μm以下の範囲内である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、乾燥後の塗膜厚の最大高さRyが好ましくは0μm超8.0μm以下の範囲内であり、より好ましくは0.1μm以上6.5μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.2μm以上2.5μm以下の範囲内である。
硬化性樹脂組成物の乾燥後の塗膜厚の凹凸の平均間隔Smおよび最大高さRyが、上記数値範囲内であれば、膜厚のばらつきがより小さくなる。このことは必ずしも明らかではないが以下のように考えられる。すなわち、前記塗膜厚の凹凸の平均間隔および最大高さが一定であることより乾燥塗膜の表面状態も安定しており、その結果、硬化塗膜が低光沢でありながら、薄膜時においてもばらつきが小さくなり、且つ、銅見え現象を抑制するものと考えられる。なお、本発明における前記塗膜厚の凹凸の平均間隔Smおよび最大高さRyの測定は、乾燥してから室温で30分放置した後に行うものとする。
【0035】
本発明において、上記した「凹凸の平均間隔Sm」および「最大高さRy」は、それぞれJIS B0601-1994に準拠した測定装置にて測定された値を意味する。以下、具体的な測定方法について説明しておく。凹凸の平均間隔Smと最大高さRyは、形状測定レーザーマイクロスコープ(例えば、株式会社キーエンス製VK-X100)を使用して測定することができる。形状測定レーザーマイクロスコープ(同VK-X100)本体(制御部)および、VK観察アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1VX)を起動させた後、x-yステージ上に測定する試料(基板等に形成された乾燥塗膜)を載置する。顕微鏡部(株式会社キーエンス製VK-X110)のレンズレボルバーを回して倍率10倍の対物レンズを選択し、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードで、大まかにピント、明るさを調節する。x-yステージを操作して、試料表面の測定したい部分が、画面の中心に来るように調節する。倍率10倍の対物レンズを倍率50倍に替え、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードのオートフォーカス機能で、試料の表面にピントを合わせる。VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の形状測定タブの簡単モードを選択し、測定開始ボタンを押して、試料の表面形状の測定を行い、表面画像ファイルを得ることができる。VK解析アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1XA)を起動して、得られた表面画像ファイルを表示させた後、傾き補正を行う。
なお、試料の表面形状の測定における観察測定範囲(横)は270μmとする。線粗さウインドウを表示させ、パラメータ設定領域で、JIS B0601-1994を選択した後、測定ラインボタンから水平線を選択し、表面画像内の任意の場所に水平線を表示させ、OKボタンを押すことによって、凹凸表面の平均間隔Sm(μm)および最大高さRy(μm)の数値を得る。さらに表面画像内の異なる4か所で水平線を表示させ、それぞれの凹凸表面の平均間隔Sm(μm)および最大高さRy(μm)の数値を得た。得られた5つの数値の平均値を算出し、試料表面の凹凸表面の平均間隔Sm値と最大高さRy値とする。
なお、乾燥塗膜のSmやRyは、一般的には硬化被膜の表面に比べて基板表面は十分に平滑であるため、基板の種類によってSmおよびRyの値が影響されることはない。基板は公知慣用のものを用いることができるが、ガラス基板を用いることが好ましい。
【0036】
硬化性樹脂組成物の乾燥後の塗膜厚を上記した特定の凹凸の平均間隔Smおよび最大高さRyの範囲内とするには、公知慣用の手法を適用することができるが、例えば、組成物中の有機溶剤等の成分の選定やその配合量、分散方法を最適化することまたは前述した内容の組合せ等が挙げられる。また、前記硬化性樹脂組成物の塗膜厚12μmの硬化塗膜における60°の光沢度を特定の範囲内とするには、同じく公知慣用の手法を適用することができるが、例えば、平均粒子径の粗い体質顔料を添加したり、相溶性の良くない複数種の樹脂を混合したりすること等が挙げられる。
【0037】
以下、本発明による硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0038】
[硬化性樹脂]
硬化性樹脂としては、加熱により熱硬化反応に寄与する熱硬化性樹脂、光照射により光硬化反応に寄与する光硬化性樹脂、および、そのいずれの反応にも寄与する光硬化性熱硬化性樹脂が挙げられる。
ここで、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂を含有することが好ましく、いずれの硬化性樹脂も含有する場合、熱硬化性樹脂としては、カルボキシル基含有樹脂および分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基を有する化合物とを含有することがより好ましい。
【0039】
硬化性樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは25~75質量%であり、さらに好ましくは50~70質量%である。硬化性樹脂の配合量が上記範囲内であることで、より優れた硬化物を得ることができる。以下、各硬化性樹脂について説明する。
【0040】
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、公知のものをいずれも用いることができる。硬化性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂を含むことにより、硬化塗膜の耐熱性を向上させることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂を使用できる。特に好ましいのは、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
上記の分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性樹脂は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0042】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0043】
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695、および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
【0044】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0045】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0046】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0047】
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0048】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0049】
熱硬化性樹脂の配合量は、組成物中に後述するカルボキシル基含有樹脂を含む場合、カルボキシル基含有樹脂に含有されるカルボキシル基1molあたりに対し、反応する熱硬化成分の官能基数が0.5~2.5molが好ましく、より好ましくは0.8~2.0molである。
【0050】
熱硬化性成分としては、組成物にアルカリ現像性を付与できる点において、アルカリ可溶性基を有するアルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物、カルボキシル基含有樹脂、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有する化合物、チオール基を2個以上有する化合物が挙げられる。中でも、下地との密着性が向上するため、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂であると好ましく、特に現像性に優れるため、カルボキシル基含有樹脂であることがより好ましい。以下、カルボキシル基含有樹脂について、説明する。
【0051】
[カルボキシル基含有樹脂]
カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種樹脂を使用できる。カルボキシル基含有樹脂は分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するものであっても有さないものであってもよいが、特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。かかる場合は光硬化性熱硬化性樹脂に該当する。なお、本発明の硬化性組成物がカルボキシル基含有樹脂を含む場合、アルカリ現像する用途だけでなく、アルカリ現像しない用途に使用してもよい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光重合性モノマーを併用する必要がある。カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0052】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂(低級アルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる)。
【0053】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0054】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0055】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0056】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0057】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0058】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0059】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0060】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0061】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0062】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0063】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0064】
この中でも、硬化性樹脂が2種類以上のカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。さらに前記2種類以上のカルボキシル基含有樹脂の少なくとも1種がカルボキシル基含有共重合樹脂であることが、より低光沢化しつつ均一に分散される点で好ましい。このことは以下のように推測される。すなわち、カルボキシル基含有共重合樹脂は相溶性が良くないため、該硬化性樹脂組成物から形成される塗膜中において、他のカルボキシル基含有樹脂中に分散した海島構造をとり、これらの屈折率の差により入射した光が乱反射するため優れた低光沢の効果を生じるものと考えられる。一方、カルボキシル基含有共重合樹脂の添加の場合は体質顔料が少ない配合であっても、低光沢化しつつ均一に分散できることより、銅見え現象もより抑制されるものと考えられる。
【0065】
カルボキシル基含有共重合樹脂としては、(1)の樹脂や(12)の中の共重合樹脂が挙げられる。(12)の樹脂としては、(メタ)アクリル酸とメチル(メタ)アクリレートとの共重合により得られたカルボキシル基含有樹脂にさらにグリシジルメタクリレートまたは3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレートを付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂であることが好ましい。
また、カルボキシル基含有共重合樹脂と組合せの樹脂としては、より低光沢化しつつ均一に分散される点において好ましい。カルボキシル基含有共重合樹脂以外の樹脂との組合せが好ましい。具体的には、(2)~(11)の樹脂、(12)の共重合樹脂以外の樹脂が挙げられ、中でも(6)、(10)、(11)の樹脂、(12)の共重合樹脂以外の樹脂がより好ましい。
【0066】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0067】
本発明に使用できるカルボキシル基含有樹脂は、上記列挙したものに限られない。また、上記列挙したカルボキシル基含有樹脂は1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0068】
本発明において、炭酸ナトリウム水溶液等の弱アルカリ現像液を用いる際の現像性とレジストパターンの描画性を考慮すると、カルボキシル基含有樹脂の酸価は30~150mgKOH/gの範囲であることが好ましく、50~120mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価は高いほど現像性は向上するものの、現像液による露光部の溶解が進むために、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離する場合がある。
【0069】
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000の範囲であり、5,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上のカルボキシル基含有樹脂を用いることにより、解像性やタックフリー性能を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下のカルボキシル基含有樹脂を用いることにより現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0070】
カルボキシル基含有樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは20~75質量%であり、さらに好ましくは20~50質量%である。20質量%以上とすることにより硬化塗膜の強度を向上させることができる。また80質量%以下とすることで硬化性樹脂組成物の粘性が適当となり加工性が向上する。
【0071】
またカルボキシル基含有樹脂の中にカルボキシル基含有共重合樹脂を含む場合、カルボキシル基含有共重合樹脂の配合量は、より低光沢化しつつ銅見え現象が抑制される点において、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、5~90質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、15~50質量%がより好ましい。
【0072】
[光硬化性樹脂]
光硬化性樹脂とは、エチレン性不飽和基を有する化合物であり、ポリマー、オリゴマー、モノマーなどが挙げられ、それらの混合物であってもよい。光硬化性樹脂を含むことにより、硬化膜の強度を向上させることができる。光硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマー、光重合性モノマー等を用いることができる。この中でも、硬化塗膜の架橋性や硬化性をより付与できる点において、光重合性モノマーを用いることが好ましい。
【0074】
光重合性オリゴマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマーである。光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0075】
光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキサイド誘導体のモノまたはジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類;およびメラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。光重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
光硬化性樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは3~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。光重合性モノマーの配合量は、3質量%以上の場合、光硬化性が良好であり、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像において、パターン形成がし易い。一方、20質量%以下の場合、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られ易い。
【0077】
[体質顔料]
本発明の体質顔料とは、屈折率が1.40以上の顔料をいい、例えば、非晶質シリカ、結晶質シリカ、溶融シリカ、球状シリカなどのシリカ、タルク、ベーマイト、ハイドロタルサイト、消石灰、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、クレー、雲母粉、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫化銅、アルミナ、酸化亜鉛、鉄、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化カドミウム、硫化カドミウム、酸化チタン、酸化銅等が挙げられる。この中でも、分散性の観点より、シリカ、硫酸バリウムが好ましい。体質顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。体質顔料を含有させることで、耐熱性を向上したり、塗布時のばらつきを少なくしたりすることができる。また、より低光沢化する観点では、SiO2 とAl2 3 を主成分とするケイ酸アルミニウム等を用いてもよい。
【0078】
体質顔料の表面処理の有無は特に限定されないが、分散性を高めるための表面処理がされていてもよい。表面処理がされている体質顔料を使用することで、凝集を抑制することができる。体質顔料の表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機の体質顔料の表面を処理することが好ましい。
【0079】
体質顔料の平均粒子径は、10μm以下のものを好ましく用いることができるが、分散性の観点より、後述する非晶質シリカを除き、より好ましくは0.1~2.0μmであり、さらに好ましくは0.15~1.0μmであり、特に好ましくは0.2~0.9μmである。体質顔料の平均粒子径とは、一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径(D50)であり、レーザー回折法により測定されたD50の値である。レーザー回折法による測定装置としては、日機装株式会社製のMicrotrac MT3300EXIIが挙げられる。なお、最大粒子径(D100)および粒子径(D10)についても、上記の装置にて同様に測定することができる。また、前述した体質顔料の各粒子径の値は、硬化性樹脂組成物を調整(予備撹拌、混練)する前の体質顔料を上記のようにして測定した値をいうものとする。
【0080】
体質顔料の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは25~75質量%であり、さらに好ましくは30~50質量%である。体質顔料の配合量が上記範囲内であることで、硬化物を高強度にすることができる。
【0081】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜がより低光沢となる点において、シリカは吸油量180~350ml/100gの非晶質シリカを含むことが好ましい。前記非晶質シリカを用いることにより、硬化塗膜が低光沢となる理由は以下のように推測される。すなわち、吸油量が所定の範囲内にある非晶質シリカは多孔質であり、硬化や乾燥の際における有機溶剤等の吸油により、非晶質シリカや他の体質顔料がより密な状態になる結果、形成された硬化塗膜の光沢度がより低くなるものと推測される。前記吸油量は200~300ml/100gであることがより好ましい。なお、本発明において吸油量は、「JIS K5101-13-1:2004 顔料試験方法-第13部:吸油量-第1節:精製あまに油法」に準拠して測定したものをいう。
【0082】
前記非晶質シリカは公知慣用のものを用いることができ、合成であっても天然であってもよい。また、表面処理を行っていても行っていなくてもよい。表面処理の種類は、前記体質顔料と同様である。製品としては、ACEMATT 82、ACEMATT 790、ACEMATT OK 412、ACEMATT OK 500(いずれもEVONIK DEGUSSA社製)等が挙げられる。
【0083】
前記非晶質シリカの平均粒子径は、硬化塗膜がより低光沢となることより、3~10μmのものを好ましく用いることができ、4~8μmのものをより好ましく用いることができる。なお、この段落の平均粒子径は硬化性樹脂組成物として混練する前の状態で測定したものである。また、平均粒子径の測定方法は、前記体質顔料と同様である。
【0084】
体質顔料中に前記非晶質シリカを含む場合、非晶質シリカの配合量は、硬化塗膜をより低光沢にしつつ均一に分散される点において、固形分換算で、体質顔料100質量部に対して、好ましくは5~90質量部であり、より好ましくは10~70質量部であり、さらに好ましくは12~50質量部である。また、体質顔料中に前記非晶質シリカと他の体質顔料を含む場合、硬化塗膜をより低光沢にしつつ均一に分散される点において、硫酸バリウムが好ましい。
【0085】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以下の任意成分を含んでもよい。
【0086】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、カルボキシル基含有樹脂や光重合性モノマーを露光により反応させるためのものである。光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0088】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad TPO、819等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン株式会社製のIrgacure OXE01、OXE02、株式会社ADEKA製N-1919、アデカアークルズ NCI-831、NCI-831E、常州強力電子新材料社製TR-PBG-304などが挙げられる。
【0089】
その他、特開2004-359639号公報、特開2005-097141号公報、特開2005-220097号公報、特開2006-160634号公報、特開2008-094770号公報、特表2008-509967号公報、特表2009-040762号公報、特開2011-80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0090】
光重合開始剤の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。光重合開始剤の配合量は、0.1質量%以上の場合、硬化性樹脂組成物の光硬化性が良好となり、耐薬品性等の塗膜特性も良好となる。一方、10質量%以下の場合、レジスト膜(硬化塗膜)表面での光吸収が良好となり、深部硬化性が低下しにくい。
【0091】
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。特に、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストパターンのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
【0093】
[熱硬化触媒]
本発明の硬化性樹脂組成物には、熱硬化触媒を配合することができる。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくともいずれか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0094】
さらに、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。熱硬化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
熱硬化触媒の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは1~3質量部である。
【0096】
[着色剤]
本発明の硬化性樹脂組成物には、着色剤を配合することができる。着色剤としては、特に限定されず、赤、青、緑、黄等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよいが、環境負荷の低減や人体への影響が少ない観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0097】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等があり、具体的には以下のようなカラ-インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
【0098】
モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 149,150,52,207等が挙げられる。また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
【0099】
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60。染料系としては、Solvent Blue 35,63,68,70,83,87,94,97,122,136,67,70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0100】
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
【0101】
その他、紫、オレンジ、茶色、黒等の着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25,カーボンブラック等が挙げられる。
【0102】
着色剤の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.3~1.5質量%である。
【0103】
[有機溶剤]
本発明の硬化性樹脂組成物には、組成物の調製や、基板やフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。この中でも、本発明における硬化性樹脂組成物が非晶質シリカのような多孔質のものを使用した場合、硬化や乾燥の際にシリカ表面に吸油しやすい結果、形成された硬化塗膜の光沢度がより低くなる点で、エステル類が好ましく、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートがより好ましい。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
有機溶剤の配合量は、特に限定されず、硬化性樹脂組成物を調製し易いように目的の粘度に応じて適宜設定することができる。
【0105】
[その他の添加成分]
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてさらに、光開始助剤、シアネート化合物、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0106】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いてもよい。
【0107】
[調製方法]
本発明の硬化性樹脂組成物の調製には、各成分を秤量、配合した後、攪拌機にて予備撹拌する。続いて、混練機にて各成分を分散させ、混練を行うことで調製することができる。
【0108】
上記の混練機としては、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、3本ロールミル、2本ロールミル等を挙げることができる。これらの中でも、より低光沢でありながら、乾燥前や乾燥後の塗膜の膜厚のばらつきをより小さくし、銅見え現象を抑制する点において、ビーズミルを用いることが好ましい。ビーズミルのビーズの種類や粒径等の分散条件は、目的とする粘度に応じて適宜設定することができるが、ビーズの種類としては、例えば、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等が挙げられる。ビーズの粒径としては、例えば、φ0.015~2.0mmの範囲が挙げられる。この中でもφ0.3~1.5mmの範囲がより好ましい。ビーズの充填率は50~95%であり、ローターの回転数は800~1300rpmであることが好ましい。また、目的とする粘度としては、分散性向上や硬化塗膜がより低光沢となる点でビーズミル投入時の組成物粘度が200dPa・s以下であることが好ましい。一方、下限としては、50dPa・s以上が好ましい。本発明における粘度は、JIS Z 8803:2011の10 円すい-平板形回転粘度計による粘度測定方法に準じ、50℃、100rpm、30秒とし、コーン・ロータとして3°×R9.7を用いたコーンプレート型粘度計(TVE-33H、東機産業社製)にて測定した値である。
【0109】
一方、3本ロールミルの各ロールの回転比等の分散条件も、目的とする粘度に応じて適宜設定することができる。
【0110】
また、分散性をより向上させるため、先ずは原料をビーズミルや3本ロールミル等の混練機を用いてスラリー化したものを秤量、配合した後、攪拌機にて予備撹拌してもよい。原料をスラリー化する際は、シランカップリング剤等の湿潤分散剤も秤量、配合してからビーズミル等により混練することが好ましい。続いて、上記例示にあるような混練機にてスラリー化したものを含む各成分を分散させ、ビーズミル等により混練を行うことで調製してもよい。
【0111】
[用途]
本発明による硬化性樹脂組成物は、ソルダーレジストやカバーレイ、層間絶縁層等のプリント配線板の永久被膜としてのパターン層を形成するために有用であり、特にソルダーレジストの形成に有用である。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、薄膜でも膜強度に優れた硬化物を形成できることから、薄膜化が要求されるプリント配線板、例えばパッケージ基板(半導体パッケージに用いられるプリント配線板)におけるパターン層の形成にも好適に用いることができる。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、屈曲性に優れることから、フレキシブルプリント配線板に好適に使用できる。
【0112】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜のパターン層を形成する用途だけでなく、パターン層を形成しない用途、例えばモールド用途(封止用途)に用いることができる。
【0113】
[ドライフィルム]
本発明の硬化性樹脂組成物は、支持(キャリア)フィルムと、この支持フィルム上に形成された上記硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。ドライフィルム化に際しては、本発明の硬化性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後膜厚で、1~150μm、好ましくは5~60μmの範囲で適宜選択される。本発明の硬化性樹脂組成物を用いることで、乾燥前塗膜のばらつきを小さくすることができるため、乾燥塗膜からなる樹脂層が薄膜であってもばらつきを小さくすることができる。例えば、12μm以下の薄膜の樹脂層を備えるドライフィルムの形態とすることもできる。
【0114】
支持フィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を支持フィルムとして使用することもできる。
【0115】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0116】
支持フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0117】
支持フィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な保護(カバー)フィルムを積層することが好ましい。剥離可能な保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、保護フィルムを剥離するときに樹脂層と支持フィルムとの接着力よりも樹脂層と保護フィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0118】
保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0119】
ドライフィルムを用いてプリント配線板上に硬化塗膜を作製するには、ドライフィルムから保護フィルムを剥離し、ドライフィルムの露出した樹脂層を回路形成された基材に重ね、ラミネーター等を用いて貼り合わせ、回路形成された基材上に樹脂層を形成する。次いで、形成された樹脂層に対し、露光、現像、加熱硬化すれば、硬化塗膜を形成することができる。保護フィルムは、露光前または露光後のいずれかで剥離すればよい。
【0120】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上記本発明の硬化性樹脂組成物、または、上記本発明のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られるものである。本発明の硬化物は、プリント配線板や電子部品等に好適に用いることができる。本発明の硬化物は、屈曲性に優れるものであるため、特にフレキシブルプリント配線板に好適に用いることができる。また、本発明の硬化物は、赤外線遮蔽性および経時安定性にも優れる。
【0121】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の硬化性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で15~90分間、組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0122】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0123】
ドライフィルムの基材上への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0124】
本発明の硬化性樹脂組成物を基材上に塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。装置としては、熱風循環乾燥炉として、ヤマト科学株式会社製DF610等が挙げられる。
【0125】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3.0質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから支持フィルムを剥離して現像を行うことにより、基材上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから支持フィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像してもよい。
【0126】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1,000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。装置としては、メタルハライドランプ搭載の露光装置として、株式会社オーク製作所製HMW-680-GW20等が挙げられる。
【0127】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0128】
さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃の温度で30~90分間)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射(例えば、1,000~2,000mJ/cm)、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化) させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化塗膜を形成する。装置としては、高圧水銀ランプを用いたUVコンベアとして、株式会社オーク製作所製QRM-2082等が挙げられる。
【0129】
上記内容は光硬化型熱硬化型の樹脂組成物による硬化塗膜の形成方法であるが、光硬化のみや熱硬化のみの場合は以下のとおり、製造することができる。
光硬化のみの場合、本発明の硬化性樹脂組成物を基材上にパターン印刷等で塗布した後に活性エネルギー線(例えば、1,000~2,000mJ/cm)を照射して硬化させることにより、硬化塗膜を形成する。
一方、熱硬化のみの場合、本発明の硬化性樹脂組成物を基材上にパターン印刷等で塗布した後に加熱硬化(例えば、100~220℃の温度で30~90分間)させることにより、硬化塗膜を形成する。
【実施例
【0130】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0131】
(カルボキシル基含有樹脂の樹脂ワニス1の合成)
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキサイド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(アイカ工業株式会社製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、固形分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキサイドが平均1.08モル付加しているものであった。次いで、得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキサイド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルフォスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させた。このようにして、固形分酸価88mgKOH/g、固形分71%、重量平均分子量2,000のカルボキシル基含有樹脂の樹脂ワニス1を得た。
【0132】
(カルボキシル基含有樹脂の樹脂ワニス2の合成)
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-695、エポキシ当量:214、平均官能基数7.6)220gを撹拌機および還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート214gを加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1gと、反応触媒としてジメチルベンジルアミン2.0gを加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72gを徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物106gを加え、8時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂の樹脂ワニス2は、固形分65%、固形物の酸価100mgKOH/g、重量平均分子量Mw約3,500であった。
【0133】
(カルボキシル基含有樹脂の樹脂ワニス3の合成)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート650質量部にオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g、アクリル酸360g、及びハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルフォスフィン4.3質量部を仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、更にトリフェニルフォスフィン1.6質量部を追加し、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(株式会社スタンダード石油大阪発売所製、ティーソル150)525g、テトラヒドロ無水フタル酸608g(4.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行った。さらに、得られた反応液にグリシジルメタクリレート142.0gを仕込み、115℃で4時間反応を行った。このようにして、固形分酸価77mgKOH/g、固形分65%であるカルボキシル基含有樹脂の樹脂ワニス3を得た。
【0134】
(カルボキシル基含有樹脂の樹脂ワニス4の合成)
温度計、撹拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてのジプロピレングリコールモノメチルエーテル325.0質量部を110℃まで加熱し、メタクリル酸174.0質量部、ε-カプロラクトン変性メタクリル酸(平均分子量314)174.0質量部、メタクリル酸メチル77.0質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル222.0質量部、および、重合触媒としてのt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日油(株)製、パーブチルO)12.0質量部の混合物を、3時間かけて滴下し、さらに110℃で3時間攪拌し、重合触媒を失活させて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却後、(株)ダイセル製サイクロマーM100(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート)を289.0質量部、トリフェニルフォスフィン3.0質量部およびハイドロキノンモノメチルエーテル1.3質量部を加え、100℃に昇温し、攪拌することによってエポキシ基の開環付加反応を行い、カルボキシル基含有樹脂ワニス4を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂ワニス4は、不揮発分45.5質量%、固形物の酸価が79.8mgKOH/gであった。
【0135】
(実施例1~4、比較例1~3)
(硬化性樹脂組成物の調製)
各組成物について、下記表1中に示す配合に従って各成分を配合し、さらに必要に応じて有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)を配合し、攪拌機にて予備混合した。続いて、処方例1~4の組成物はいずれもビーズミルにより70℃以下で分散させ、混練して、調整した。一方、処方例5~7の組成物はいずれもロールミルにより70℃以下で分散させ、混練して、調整した。なお、処方例1および5の組成物の各成分は同一であるが、分散方法が異なり、処方例2および6の組成物の各成分は同一であるが、分散方法が異なり、処方例3、4および7の組成物の各成分は同一であるが、分散方法が異なる。
上記のビーズミルによる分散は、次の条件で行った。有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)により粘度を100dPa・sに調整した処方例1~3および5~7の各組成物を粒径φ1.0mmのジルコニアビーズ、処方例4の組成物を粒径φ0.65mmのジルコニアビーズによる横型湿式粉砕機(ビューラー社製)をそれぞれ用いて、表2に記載する平均粒子径D50になるように分散処理を行った。ジルコニアビーズの充填率は85%であり、ローターの回転数は1000rpmであった。なお、粘度は、JIS Z 8803:2011の10 円すい-平板形回転粘度計による粘度測定方法に準じ、50℃、100rpm、30秒とし、コーン・ロータとして3°×R9.7を用いたコーンプレート型粘度計(TVEE-33H、東機産業社製)にて測定した。
また、上記のロールミルによる分散については、各組成物を、株式会社井上製作所製3本ロールミルを使用し、表2に記載する平均粒子径D50になるように分散処理を行った。
【0136】
【表1】
【0137】
表1中の配合量は、質量部を示す。
表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
※1:上記で合成したカルボキシル基含有樹脂ワニス1、配合量は固形分換算の値
※2:上記で合成したカルボキシル基含有樹脂ワニス2、配合量は固形分換算の値
※3:上記で合成したカルボキシル基含有樹脂ワニス3、配合量は固形分換算の値
※4:上記で合成したカルボキシル基含有樹脂ワニス4、配合量は固形分換算の値
※5:光重合性モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、日本化薬株式会社製))
※6:2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(IGM Resins株式会社製、Omnirad 907)
※7:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(BASFジャパン株式会社製、Irgacure OXE02)
※8:ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins株式会社製、Omnirad 819)
※9:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、KAYACURE DETX-S)
※10:青色着色剤(C.I.Pigment Blue 15:3)
※11:黄色着色剤(C.I.Pigment Yellow 147)
※12:赤色着色剤(Paliogen Red K3580、BASFジャパン株式会社製)
※13:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON 840-S)
※14:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-770)
※15:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、YX-4000)
※16:1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(高融点タイプ、日産化学株式会社製、TEPIC-HP)
※17:メラミン
※18:硫酸バリウム(平均粒子径0.3μm(硬化性樹脂組成物として混練する前の状態で測定したもの))(堺化学工業株式会社製、B-34)
※19:非晶質シリカ(平均粒径6.3μm(硬化性樹脂組成物として混練する前の状態で測定したもの)、吸油量:260ml/100g)(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製、ACE MATT OK 500)
【0138】
(平均粒子径D50および比表面積CSの測定)
各実施例および各比較例の各硬化性樹脂組成物について、以下の通り、平均粒子径D50(μm)および比表面積CS(m/ml)を測定した。
まず、以下の使用機器および備品類を用意する。
・粒度分布計:日機装株式会社製 マイクロトラック MT3300EX
・循環装置:日機装株式会社製 ASVR
次に、以下の手順で測定条件を入力する。マイクロトラックの付属のソフト(「粒度分布測定」)を立ち上げ、SET UPの画面から進み、測定条件設定のオプションから時間設定を行う。Setzero時間を30sec.、測定を30sec.、測定回数を2回とする。次に分析条件を入力する。分析情報において、粒子屈折率を1.81(固定値:全無機物の屈折率の平均値)、粒子の特徴において透過性を透過、形状を非球形とする。また溶媒情報において、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を選択し、溶媒屈折率を1.4とする。次にスケール設定を入力する。粒径範囲において、最小粒径を0.021μm、最大粒径を704μmとする。次にサンプリングシステムを入力する。ASVRの洗浄回数を4回、流速を50%、超音波出力を40W、超音波時間を300sec.とする。すべての測定条件を入力したら、測定条件の設定において、保存を押して閉じる。
続いて、以下の手順でサンプルの調整を行う。スクリュー瓶にサンプル(硬化性樹脂組成物)を0.3g秤取り、スポイトを用いて30gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少しずつ添加し、スクリュー瓶の振とうによりサンプルを溶解させて調整サンプルを作製する。調整サンプルは外部分散や予備分散を行わない。次に調整サンプルの測定を行う。マイクロトラックの付属のソフトの粒度分布測定をクリックしサンプルローディングの画面を開く。本体のサンプル投入口にスポイトを用いて調整サンプルを数滴滴下する。前記サンプルローディングの画面において、赤色の指示バーが表示されたら、赤色から緑色の範囲内に入るまで、前記サンプル投入口に調整サンプルを滴下する。前記緑色の範囲内に入ったら、測定ボタンを押して、測定を開始する。サンプルの調整から調整サンプルの測定までは5分以内に行う。測定結果として表示された、累積平均径50%の値、面積平均径MAの値をそれぞれ読み取る。累積平均径50%の値をマイクロトラックで測定した平均粒子径D50の値とする。また、CS=6/MAを算出する。算出されたCSの値をマイクロトラックで測定した比表面積の値とする。
【0139】
(凹凸の平均間隔Sm(μm)および最大高さRy(μm)の測定)
各実施例および各比較例の各硬化性樹脂組成物を清浄なガラス基板(76mm×26mm×1.1mmt)表面上に乾燥後12μmとなるように180メッシュのポリエステル版(バイアス有)を用いてスクリーン印刷でベタ印刷し、90℃15分乾燥し、乾燥塗膜を形成した。得られた「乾燥後の塗膜」(以下、試料)について、形状測定レーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製VK-X100)を用いて、以下の通り、凹凸の平均間隔Sm(μm)および最大高さRy(μm)をそれぞれJIS B0601-1994に準拠して測定した。なお、測定は90℃15分乾燥してから室温で30分放置した後に行った。
形状測定レーザーマイクロスコープ(同VK-X100)本体(制御部)および、VK観察アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1VX)を起動させた後、x-yステージ上に測定する上記試料を乗せた。顕微鏡部(株式会社キーエンス製VK-X110)のレンズレボルバーを回して倍率10倍の対物レンズを選択し、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードで、大まかにピント、明るさを調節した。x-yステージを操作して、試料表面の測定したい部分が、画面の中心に来るように調節した。倍率10倍の対物レンズを倍率50倍に替え、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードのオートフォーカス機能で、試料の表面にピントを合わせた。VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の形状測定タブの簡単モードを選択し、測定開始ボタンを押して、試料の表面形状の測定を行い、表面画像ファイルを得た。VK解析アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1XA)を起動して、得られた表面画像ファイルを表示させた後、傾き補正を行った。
なお、試料の表面形状の測定における観察測定範囲(横)は270μmとした。線粗さウインドウを表示させ、パラメータ設定領域で、JIS B0601-1994を選択した後、測定ラインボタンから水平線を選択し、表面画像内の任意の場所に水平線を表示させ、OKボタンを押すことによって、凹凸表面の平均間隔Sm(μm)および最大高さRy(μm)の数値を得た。さらに表面画像内の異なる4か所で水平線を表示させ、それぞれの凹凸表面の平均間隔Sm(μm)および最大高さRy(μm)の数値を得た。得られた5つの数値の平均値を算出し、試料表面の凹凸表面の平均間隔Sm値と最大高さRy値とした。測定結果を表2に示した。
【0140】
(光沢度の測定)
表面をバフロール研磨した35μm厚の300mm×150mm銅箔基板上に、硬化後膜厚が12μmになるようにスクリーン印刷でベタ印刷し、熱風循環式乾燥炉(ヤマト科学株式会社製DF610)を用いて150℃で60分間硬化し、銅箔基板上に硬化塗膜を形成し、イエローランプの下、室温で30分放冷、放置し評価基板を作製した。
銅箔基板上に形成した硬化塗膜はいずれも、25℃50%RHの環境下で、硬化塗膜の表面に、イソプロピルアルコール(IPA)を含ませたウエスを載せ、さらに、その上に500gのおもりを載せて1分間静置した後に、ウエスをはがし、ウエスの硬化塗膜と接触していた面に樹脂層の全部または一部が付着していない状態であることを確認した。なお、光沢度の測定は、露光後現像工程を行わずに、熱硬化して形成した硬化塗膜を用いて測定するものとする。
その後、デジタル変角光沢度計(Micro-Tri-Gloss、BYK Gardener社製)を用いて、各硬化塗膜表面のGs(60°)を測定した。測定結果は下記の表2に示した。
【0141】
(薄膜時の乾燥前塗膜のばらつき)
薄膜時の乾燥前塗膜のばらつきを簡易的に確認する方法として、硬化性樹脂組成物中の粉体のばらつきを確認する方法を採用し、硬化性樹脂組成物について分散度を測定した。
具体的には、各実施例および比較例の硬化性樹脂組成物について、JIS K5101-5-2:2004およびJIS K5600-2-5:1999に準拠して幅90mm、長さ240mm、最大深さ25μmの粒度ゲージ(株式会社第一測範製作所製)を用いることにより、分散度を測定し、以下の評価基準に基づき、評価した。なお、分散度は、前記ゲージにおいて顕著な斑点が現れ始める点を観察する。特に前記ゲージの溝に沿って3mmの幅に5~10個の粒子を含む点を観察し、かかる点を分散度とする。前記顕著な斑点が現れ始める点の前に、まばらに現れる斑点は無視する。3回の測定の平均値を算出する。評価結果を表2に示した。
○:分散度(3回の測定の平均値)が、20μm以下であった。
×:分散度(3回の測定の平均値)が、20μm超であった。
【0142】
(薄膜時の乾燥塗膜のばらつき)
薄膜時の乾燥塗膜のばらつきを簡易的に確認する方法として、印刷性試験を行った。具体的には、ベタのガラス基板上に、乾燥後膜厚が12μmになるように180メッシュのポリエステル版(バイアス有)を用いてスクリーン印刷でベタ印刷し、熱風循環式乾燥炉(ヤマト科学株式会社製DF610)を用いて90℃で15分間乾燥し、イエローランプの下、室温で30分放冷、放置した後に行った。なお、放置した後は塗布面を指で触ったときにいずれも硬化性樹脂組成物が指に付着しない状態であることを確認した。放置した後、表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所:サーフコーダ SE600)を用いて、乾燥塗膜と未塗布部との段差(P)をランダムに4箇所測定し、3点指定型による段差解析をした。詳細は、図1に示した乾燥塗膜の断面を参照しながら説明する。3点指定型による段差解析では、基板1上の乾燥塗膜2の表面の基準点3を2点入力し、基板1の未塗布部4の評価点5を1点入力して、基準線6を求める。続いて、基準線6と評価点5の段差(P)を測定する。測定した各段差(P)により膜厚、該膜厚の標準偏差をそれぞれ算出し、以下の評価基準に基づき、評価した。なお、測定条件として、測定倍率は2,000倍、送り速さは0.5mm/s、トレース長さは6.0mmとした。評価結果を表2に示した。
○:標準偏差が、1.0μm以内であった。
×:標準偏差が、1.0μm超であった。
【0143】
(銅見え現象の確認)
表面をバフロール研磨した35μm厚の300mm×150mm銅箔基板上に、硬化後膜厚が12μmになるように180メッシュのポリエステル版(バイアス有)を用いてスクリーン印刷でベタ印刷し、熱風循環式乾燥炉(ヤマト科学株式会社製DF610)を用いて150℃で60分間硬化し、イエローランプの下、室温で30分放冷、放置し評価基板を作製した。作製した評価基板はいずれも、25℃50%RHの環境下で、硬化塗膜の表面に、イソプロピルアルコール(IPA)を含ませたウエスを載せ、さらに、その上に500gのおもりを載せて1分間静置した後に、ウエスをはがし、ウエスの硬化塗膜と接触していた面に樹脂層の全部または一部が付着していない状態であることを確認した。
その後、70mm×70mmの範囲内で下地の銅が見えている箇所を光学顕微鏡(50倍)により確認した。評価結果を表2に示した。
◎:銅が見えている箇所が全く確認されなかった。
○:銅が見えている箇所がわずかに確認されたが、問題無いレベルであった。
×:銅が見えている箇所が多く確認された。
【0144】
【表2】
【0145】
表2から明らかなように、実施例の硬化性樹脂組成物は、薄膜時の乾燥前塗膜や乾燥塗膜のばらつきが小さく、銅見え現象が生じないことがわかる。
【符号の説明】
【0146】
1:基板
2:乾燥塗膜
3:基準点
4:未塗布部
5:評価点
6:基準線
P:段差
X:表面粗さ測定機での測定方向
図1