(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】リテーナ、トップリング、および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/32 20120101AFI20241226BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B24B37/32 Z
H01L21/304 621D
H01L21/304 622T
(21)【出願番号】P 2020218340
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】石井 遊
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-052242(JP,A)
【文献】特開2008-137108(JP,A)
【文献】特開2020-163529(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123851(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/32;
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形基板を保持して研磨パッドに向けて押圧するトップリングにおいて前記多角形基板の保持領域を囲むように配置され前記研磨パッドに向けて押圧されるリテーナであって、
前記多角形基板の辺ごとに独立して前記辺に沿うように前記保持領域の周囲に配置される複数のリテーナ本体を含み、
前記複数のリテーナ本体の少なくとも1つは正多角柱の形状を有し、
前記正多角柱の側面はそれぞれ、前記側面を
前記トップリングのリテーナ保持部材に固定するために前記側面に埋め込まれた磁性部材を含み、
前記複数のリテーナ本体の少なくとも1つは、第1の状態において前記トップリングの
前記リテーナ保持部材に固定可能であるとともに、前記第1の状態から前記リテーナ本体を回転させた第2の状態において前記リテーナ保持部材に固定可能であり、
前記複数のリテーナ本体の少なくとも1つは、前記リテーナ保持部材に固定可能な第1の固定面と、前記第1の固定面を前記リテーナ保持部材に固定した前記第1の状態において前記保持領域と対向する第1の対向面と、前記リテーナ本体を前記第1の状態から回転させた前記第2の状態において前記リテーナ保持部材に固定可能な第2の固定面と、前記第2の固定面を前記リテーナ保持部材に固定した状態において前記保持領域と対向する第2の対向面と、を含む、
リテーナ。
【請求項2】
前記第2の状態は、前記第1の状態の前記リテーナ本体を、前記リテーナ本体の延伸方向に伸びる仮想回転軸の周りに回転させるか、前記リテーナ本体の延伸方向の向きを入れ替えるように回転させるか、またはそれらの組み合わせで回転させた、前記第1の状態とは異なる状態であり、
前記第2の対向面は、前記第1の対向面と異なる面であるか、または前記第1の対向面と同一の面であるが前記第1の状態における前記保持領域との対向部位とは異なる前記保持領域との対向部位を有する面である、
請求項1に記載のリテーナ。
【請求項3】
多角形基板を保持して研磨パッドに向けて押圧するトップリングであって、
回転シャフトと、
前記回転シャフトに固定されたフランジと、
前記フランジに取り付けられたリテーナ保持部材と、
前記リテーナ保持部材に取り付けられた請求項1または2に記載のリテーナと、
を含む、
トップリング。
【請求項4】
前記リテーナ保持部材は、前記リテーナ本体との対向面に配置された磁石または電磁石を含む、
請求項3に記載のトップリング。
【請求項5】
前記リテーナ保持部材は、前記リテーナ本体が前記保持領域から離れる方向へ変位するのを禁止するように前記リテーナ本体と当接する当接面を有する、
請求項3または4に記載のトップリング。
【請求項6】
前記リテーナ本体の前記第1の固定面および前記第2の固定面には、前記リテーナ本体の延伸方向に沿って複数のボス穴が形成され、
前記リテーナ保持部材の前記リテーナ本体との対向面には、前記リテーナ本体の前記第1の固定面および前記第2の固定面の前記ボス穴に対応する位置に複数のボスが設けられている、
請求項3から5のいずれか一項に記載のトップリング。
【請求項7】
前記複数のボス穴は、前記リテーナ本体の延伸方向の中心に対して回転対称な位置に形成される、
請求項6に記載のトップリング。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか一項に記載のトップリングと、
研磨パッドを保持するように構成された研磨テーブルと、を有する、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リテーナ、トップリング、および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体加工工程において用いられる基板処理装置の一種にCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学的機械的研磨)装置が存在する。CMP装置は、基板の被研磨面が向いている方向によって「フェースアップ式(基板の被研磨面が上向きの方式)」と「フェースダウン式(基板の被研磨面が下向きの方式)」に大別され得る。
【0003】
フェースダウン式の化学機械研磨装置は、基板を保持するトップリングと、研磨パッドが貼り付けられた研磨テーブルと、を含み、トップリングおよび研磨テーブルを回転させながら基板を研磨パッドに押圧することによって基板を研磨するように構成される。ここで、基板を研磨している際にトップリングから基板が外れてトップリングの外側に飛び出すことがある。
【0004】
これに対して、例えば特許文献1には、トップリングが回転しているときに基板が外側に飛び出すことを防止するために基板の周囲にリテーナを配置した研磨装置が開示されている。この研磨装置は、リテーナを配置することによって基板の飛び出しを防止すると同時に、研磨パッドをリテーナで押圧することによって基板の研磨プロファイルを良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、リテーナの交換頻度を低減させることについては考慮されていない。
【0007】
すなわち、基板の周囲にリテーナを配置することによって基板がトップリングから飛び出すことを防止することができるが、トップリングの回転中に基板がトップリング内で移動してリテーナに衝突することがある。特に、多角形基板の周囲に配置されたリテーナでは、多角形基板の角がリテーナに衝突すると、衝突した部位が激しく摩耗する場合があり、その結果、頻繁にリテーナを交換する必要が生じるおそれがある。
【0008】
そこで、本願は、リテーナの交換頻度を低減させることを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、多角形基板を保持して研磨パッドに向けて押圧するトップリングにおいて前記多角形基板の保持領域を囲むように配置され前記研磨パッドに向けて押圧されるリテーナであって、前記多角形基板の辺ごとに独立して前記辺に沿うように前記保持領域の周囲に配置される複数のリテーナ本体を含み、前記複数のリテーナ本体の少なくとも1つは、前記トップリングのリテーナ保持部材に固定可能な第1の固定面と、前記第1の固定面を前記リテーナ保持部材に固定した第1の状態において前記保持領域と対向する第1の対向面と、前記リテーナ本体を前記第1の状態から回転させた第2の状態において前記リテーナ保持部材に固定可能な第2の固定面と、前記第2の固定面を前記リテーナ保
持部材に固定した状態において前記保持領域と対向する第2の対向面と、を含む、リテーナが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
【
図2】一実施形態による研磨ユニットの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図3】一実施形態によるトップリングの模式的な断面図である。
【
図4A】リテーナ本体をリテーナ保持部材に固定した第1の状態を示した断面図である。
【
図4B】リテーナ本体をリテーナ保持部材に固定した第2の状態を示した断面図である。
【
図4C】リテーナ本体をリテーナ保持部材に固定した第3の状態を示した断面図である。
【
図4D】リテーナ本体をリテーナ保持部材に固定した第4の状態を示した断面図である。
【
図5A】
図4Aのリテーナ本体およびリテーナ保持部材の底面図である。
【
図5B】
図5Aにおけるリテーナ本体およびリテーナ保持部材のB-B線における断面図である。
【
図6A】一実施形態におけるリテーナ本体およびリテーナ保持部材の底面図である。
【
図6B】
図6Aにおけるリテーナ本体およびリテーナ保持部材のB-B線における断面図である。
【
図7A】リテーナ本体およびリテーナ保持部材の変形例を示す断面図である。
【
図7B】リテーナ本体およびリテーナ保持部材の変形例を示す断面図である。
【
図7C】リテーナ本体およびリテーナ保持部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る基板処理装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0012】
図1は、一実施形態による基板処理装置1000の全体構成を示す平面図である。
図1に示される基板処理装置1000は、ロードユニット100、搬送ユニット200、研磨ユニット300、乾燥ユニット500、およびアンロードユニット600を有する。図示の実施形態において、搬送ユニット200は、2つの搬送ユニット200A、200Bを有し、研磨ユニット300は、2つの研磨ユニット300A、300Bを有する。一実施形態において、これらの各ユニットは、独立に形成することができる。これらのユニットを独立して形成することで、各ユニットの数を任意に組み合わせることで異なる構成の基板処理装置1000を簡易に形成することができる。また、基板処理装置1000は、制御装置900を備え、基板処理装置1000の各構成要素は制御装置900により制御される。一実施形態において、制御装置900は、入出力装置、演算装置、記憶装置などを備える一般的なコンピュータから構成することができる。
【0013】
<ロードユニット>
ロードユニット100は、研磨および洗浄などの処理が行われる前の基板WFを基板処理装置1000内へ導入するためのユニットである。一実施形態において、ロードユニット100は、SMEMA(Surface Mount Equipment Manufacturers Association)の機械装置インタフェース規格(IPC-SMEMA-9851)に準拠するように構成される。
【0014】
図示の実施形態において、ロードユニット100の搬送機構は、複数の搬送ローラ202と、搬送ローラ202が取り付けられる複数のローラシャフト204とを有する。
図1に示される実施形態においては、各ローラシャフト204には3つの搬送ローラ202が取り付けられている。基板WFは、搬送ローラ202上に配置され、搬送ローラ202が回転することで基板WFが搬送される。ローラシャフト204上の搬送ローラ202の取り付け位置は、基板WFを安定的に搬送することができる位置であれば任意とすることができる。ただし、搬送ローラ202は基板WFに接触するので、処理対象である基板WFに接触しても問題の無い領域に搬送ローラ202が接触するように配置すべきである。一実施形態において、ロードユニット100の搬送ローラ202は、導電性ポリマーから構成することができる。一実施形態において、搬送ローラ202は、ローラシャフト204などを介して電気的に接地される。これは、基板WFが帯電して基板WF上の電子デバイス等を損傷することを防止するためである。また、一実施形態において、ロードユニット100に、基板WFの帯電を防止するためにイオナイザー(図示せず)を設けてもよい。
【0015】
<搬送ユニット>
図1に示される基板処理装置1000は、2つの搬送ユニット200A、200Bを備えている。2つの搬送ユニット200A、200Bは同一の構成とすることができるので、以下において、一括して搬送ユニット200として説明する。
【0016】
図示の搬送ユニット200は、基板WFを搬送するための複数の搬送ローラ202を備えている。搬送ローラ202を回転させることで、搬送ローラ202上の基板WFを所定の方向に搬送することができる。搬送ユニット200の搬送ローラ202は、導電性ポリマーから形成されても、導電性のないポリマーから形成されてもよい。搬送ローラ202は、図示していないモータにより駆動される。基板WFは、搬送ローラ202によって基板受け渡し位置まで搬送される。
【0017】
一実施形態において、搬送ユニット200は、洗浄ノズル284を有する。洗浄ノズル284は、図示しない洗浄液の供給源に接続される。洗浄ノズル284は、搬送ローラ202によって搬送される基板WFに洗浄液を供給するように構成される。
【0018】
<乾燥ユニット>
乾燥ユニット500は、基板WFを乾燥させるための装置である。
図1に示される基板処理装置1000においては、乾燥ユニット500は、研磨ユニット300で研磨された後に、搬送ユニット200の洗浄部で洗浄された基板WFを乾燥させる。
図1に示されるように、乾燥ユニット500は、搬送ユニット200の下流に配置される。
【0019】
乾燥ユニット500は、搬送ローラ202上を搬送される基板WFに向けて気体を噴射するためのノズル530を有する。気体は、たとえば圧縮された空気または窒素とすることができる。搬送される基板WF上の水滴を乾燥ユニット500によって吹き飛ばすことで、基板WFを乾燥させることができる。
【0020】
<アンロードユニット>
アンロードユニット600は、研磨および洗浄などの処理が行われた後の基板WFを基板処理装置1000の外へ搬出するためのユニットである。
図1に示される基板処理装置1000においては、アンロードユニット600は、乾燥ユニット500で乾燥された後の基板を受け入れる。
図1に示されるように、アンロードユニット600は、乾燥ユニット500の下流に配置される。一実施形態において、アンロードユニット600は、SMEMA(Surface Mount Equipment Manufacturers Association)の機械装置インタフェース規格(IPC-SMEMA-9851)に準拠するように構成される。
【0021】
<研磨ユニット>
図2は、一実施形態による研磨ユニット300の構成を概略的に示す斜視図である。
図1に示される基板処理装置1000は、2つの研磨ユニット300A、300Bを備えている。2つの研磨ユニット300A、300Bは同一の構成とすることができるので、以下において、一括して研磨ユニット300として説明する。
【0022】
図2に示すように、研磨ユニット300は、研磨テーブル350と、研磨対象物である基板を保持して研磨テーブル350上の研磨面に押圧するトップリング302とを備えている。研磨テーブル350は、テーブルシャフト351を介してその下方に配置される研磨テーブル回転モータ(図示せず)に連結されており、テーブルシャフト351周りに回転可能になっている。研磨テーブル350の上面には研磨パッド352が貼付されており、研磨パッド352の表面352aが基板を研磨する研磨面を構成している。一実施形態において、研磨パッド352は、研磨テーブル350からの剥離を容易にするための層を介して貼り付けられてもよい。そのような層は、たとえばシリコーン層やフッ素系樹脂層などがあり、例えば特開2014-176950号公報などに記載されているものを使用してもよい。
【0023】
研磨テーブル350の上方には研磨液供給ノズル354が設置されており、この研磨液供給ノズル354によって研磨テーブル350上の研磨パッド352上に研磨液が供給されるようになっている。また、
図2に示されるように、研磨テーブル350およびテーブルシャフト351には、研磨液を供給するための通路353が設けられている。通路353は、研磨テーブル350の表面の開口部355に連通している。研磨テーブル350の開口部355に対応する位置において研磨パッド352は貫通孔357が形成されており、通路353を通る研磨液は、研磨テーブル350の開口部355および研磨パッド352の貫通孔357から研磨パッド352の表面に供給される。なお、研磨テーブル350の開口部355および研磨パッド352の貫通孔357は、1つであっても複数でもよい。また、研磨テーブル350の開口部355および研磨パッド352の貫通孔357の位置は任意であるが、一実施形態においては研磨テーブル350の中心付近に配置される。
【0024】
図2には示されていないが、一実施形態において、研磨ユニット300は、液体、または、液体と気体との混合流体、を研磨パッド352に向けて噴射するためのアトマイザ358を備える(
図1参照)。アトマイザ358から噴射される液体は、例えば、純水であり、気体は、例えば、窒素ガスである。
【0025】
トップリング302は、トップリングシャフト18に接続されており、このトップリングシャフト18は、上下動機構319により揺動アーム360に対して上下動するようになっている。このトップリングシャフト18の上下動により、揺動アーム360に対してトップリング302の全体を上下動させ位置決めするようになっている。トップリングシャフト18は、図示しないトップリング回転モータの駆動により回転するようになっている。トップリングシャフト18の回転により、トップリング302がトップリングシャフト18を中心にして回転するようになっている。なお、トップリングシャフト18の上端にはロータリージョイント323が取り付けられている。
【0026】
トップリング302は、その下面に被研磨面を下方に向けた状態で四角形の基板を保持できるようになっている。本実施形態では、被研磨面を下方に向けた状態で基板を保持するトップリングについて説明するが、これに限定されない。揺動アーム360は支軸362を中心として旋回可能に構成されている。トップリング302は、揺動アーム360の旋回により、上述の搬送ユニット200の基板受け渡し位置と研磨テーブル350の上方との間で移動可能である。トップリングシャフト18を下降させることで、トップリング302を下降させて基板を研磨パッド352の表面(研磨面)352aに押圧することが
できる。このとき、トップリング302および研磨テーブル350をそれぞれ回転させ、研磨テーブル350の上方に設けられた研磨液供給ノズル354から、および/または、研磨テーブル350に設けられた開口部355から研磨パッド352上に研磨液を供給する。このように、基板WFを研磨パッド352の研磨面352aに押圧して基板の表面を研磨することができる。基板WFの研磨中に、トップリング302が研磨パッド352の中心を通過するように(研磨パッド352の貫通孔357を覆うように)、アーム360を固定あるいは揺動させてもよい。
【0027】
トップリングシャフト18およびトップリング302を上下動させる上下動機構319は、軸受321を介してトップリングシャフト18を回転可能に支持するブリッジ28と、ブリッジ28に取り付けられたボールねじ32と、支柱130により支持された支持台29と、支持台29上に設けられたサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱130を介して揺動アーム360に固定されている。
【0028】
ボールねじ32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。トップリングシャフト18は、ブリッジ28と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ38を駆動すると、ボールねじ32を介してブリッジ28が上下動し、これによりトップリングシャフト18およびトップリング302が上下動する。研磨ユニット300は、ブリッジ28の下面までの距離、すなわちブリッジ28の位置を検出する位置検出部としての測距センサ70を備えている。この測距センサ70によりブリッジ28の位置を検出することで、トップリング302の位置を検出することができるようになっている。測距センサ70は、ボールねじ32,サーボモータ38とともに上下動機構319を構成している。なお、測距センサ70は、レーザ式センサ、超音波センサ、過電流式センサ、もしくはリニアスケール式センサであってもよい。また、測距センサ70、サーボモータ38をはじめとする研磨ユニット内の各機器は、制御装置900により制御されるように構成される。
【0029】
一実施形態による研磨ユニット300は、研磨パッド352の研磨面352aをドレッシングするドレッシングユニット356を備えている。
図2に示すように、ドレッシングユニット356は、研磨面352aに摺接されるドレッサ50と、ドレッサ50が連結されるドレッサシャフト51と、ドレッサシャフト51を昇降駆動するためのエアシリンダ53と、ドレッサシャフト51を回転自在に支持する揺動アーム55とを備えている。ドレッサ50の下部にはドレッシング部材50aが保持されており、このドレッシング部材50aの下面には針状のダイヤモンド粒子が電着している。エアシリンダ53は、支柱56により支持された支持台57上に配置されており、これらの支柱56は揺動アーム55に固定されている。
【0030】
揺動アーム55は図示しないモータに駆動されて、支軸58を中心として旋回するように構成されている。ドレッサシャフト51は、研磨パッド352に対向して配置され、
図2では図示しないモータの駆動により回転し、このドレッサシャフト51の回転により、ドレッサ50がドレッサシャフト51周りに回転するようになっている。エアシリンダ53は、ドレッサシャフト51を介してドレッサ50を上下動させ、ドレッサ50を所定の押圧力で研磨パッド352の研磨面352aに押圧する。
【0031】
研磨パッド352の研磨面352aのドレッシングは次のようにして行われる。ドレッサ50はエアシリンダ53により研磨面352aに押圧され、これと同時に図示しない純水供給ノズルから純水が研磨面352aに供給される。この状態で、ドレッサ50がドレッサシャフト51周りに回転し、ドレッシング部材50aの下面(ダイヤモンド粒子)を研磨面352aに摺接させる。このようにして、ドレッサ50により研磨パッド352が削り取られ、研磨面352aがドレッシングされる。
【0032】
次に、一実施形態による研磨ユニット300におけるトップリング302について説明する。
図3は、一実施形態によるトップリング302の模式的な断面図である。
図3おいては、トップリング302を構成する主要構成要素だけを模式的に図示している。なお、本実施形態では、トップリング302はその下面に四角形の基板を保持する例を示すが、これに限らず多角形の基板を保持することができる。
【0033】
図3に示されるように、トップリング302は、トップリングシャフト18に取り付けられたフランジ17と、フランジ17の外周部の下面に取り付けられたリテーナ保持部材37と、を備える。また、トップリング302は、基板WFを研磨面352aに対して押圧する本体2と、トップリング302に保持された基板WF(基板WFの保持領域)の周囲に配置されたリテーナ30とを有する。本体2は概略四角形の平板状の部材からなり、リテーナ30は本体2の外側に配置されている。一実施形態において、リテーナ30は、研磨パッド352(研磨面352a)に向けて押圧されるように構成される。また、リテーナ30は、基板WFの4つの辺ごとに独立して辺に沿うように基板WFの保持領域の周囲に配置される複数(本実施形態では4個)のリテーナ本体3を備える。リテーナ本体3はそれぞれ、細長い棒状の部材である。リテーナ本体3はそれぞれ、リテーナ保持部材37に固定される。
【0034】
本体2は、ステンレス鋼(SUS)などの金属や、エンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成されている。本体2の下面には、基板の裏面に接触する弾性膜(メンブレン)4が取り付けられている。一実施形態において、弾性膜(メンブレン)4は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材によって形成される。一実施形態において、弾性膜(メンブレン)4は、金型を使用してゴム材から形成することができる。なお、本体2は、複数の部材を結合させて構成されてもよい。
【0035】
図3に示されるように、弾性膜(メンブレン)4は同心状の複数の隔壁4aを有し、これら隔壁4aによって、弾性膜4の上面と本体2の下面との間に円形状のセンター室5、センター室5を囲う四角の環状のリプル室6、リプル室6を囲う四角の環状の中間室7、中間室7を囲う四角の環状のアウター室8、アウター室8を囲う四角の環状のエッジ室9が形成されている。すなわち、本体2の中心部にセンター室5が形成され、中心から外周方向に向かって、順次、同心状に、リプル室6、中間室7、アウター室8、エッジ室9が形成されている。
図3に示されるように、本体2内には、センター室5に連通する流路11、リプル室6に連通する流路12、中間室7に連通する流路13、アウター室8に連通する流路14、エッジ室9に連通する流路15がそれぞれ形成されている。そして、センター室5に連通する流路11、リプル室6に連通する流路12、中間室7に連通する流路13、アウター室8に連通する流路14、エッジ室9に連通する流路15は、図示していないロータリージョイントを介して流体供給源および真空源に接続されている。
【0036】
図3に示されるように構成されたトップリング302においては、センター室5、リプル室6、中間室7、アウター室8、およびエッジ室9に供給する流体の圧力をそれぞれ独立に調整することができる。このような構造により、基板WFを研磨パッド352に押圧する押圧力を基板WFの領域毎に調整できる。また、弾性膜4には、複数の真空吸着孔が設けられており、真空源によって基板WFをトップリング302に真空吸着することができる。
【0037】
次に、リテーナ本体3とリテーナ保持部材37の詳細を説明する。なお、本実施形態のリテーナ30は4個のリテーナ本体3を含むが、いずれも同一の構成であるので、1つのリテーナ本体3のみを説明する。ただし、4個のリテーナ本体3は同一の構成でなくてもよく、4個のリテーナ本体3のうちの少なくとも1つが以下で説明する構成を有していて
もよい。
【0038】
図4Aは、リテーナ本体をリテーナ保持部材に固定した第1の状態を示した断面図である。
図5Aは、
図4Aのリテーナ本体およびリテーナ保持部材の底面図である。
図5Bは、
図5Aにおけるリテーナ本体およびリテーナ保持部材のB-B線における断面図である。本実施形態のリテーナ本体3は正四角柱の形状を有し、
図4Aに示すように、リテーナ本体3は、延伸方向に直交する断面形状が正四角形となる。
【0039】
図4Aに示すように、リテーナ本体3は、リテーナ保持部材37に固定可能な第1の面(第1の固定面)3aを有する。また、リテーナ本体3は、第1の面3aをリテーナ保持部材37に固定した第1の状態において基板WFの保持領域39と対向する第2の面(第1の対向面)3bを有する。第2の面3bは、保持領域39と対向する対向部位3b-1を有する。リテーナ本体3は、第1の面3aをリテーナ保持部材37に固定するために第1の面3aに埋め込まれた第1の磁性部材34-1を有する。一方、リテーナ保持部材37は、リテーナ本体3との対向面に配置された磁石36を含む。第1の磁性部材34-1と磁石36が引きつけ合うことによって、第1の面3aはリテーナ保持部材37に固定される。
【0040】
リテーナ保持部材37の底面には、リテーナ本体3を嵌め込むための矩形の窪みが形成され、この窪みの周囲に側壁37a、37b、37c、37dが形成される。リテーナ保持部材37の側壁37aは、リテーナ本体3の第4の面3dと当接する第1の当接面37a-1を備える。これにより、リテーナ本体3が保持領域39から離れる方向へ変位するのが禁止される。また、リテーナ保持部材37の側壁37bは、リテーナ本体3の第2の面3bと当接する第2の当接面37b-1を備える。これにより、リテーナ本体3が保持領域39に近づく方向へ変位するのが禁止される。さらに、リテーナ保持部材37の側壁37c、37dは、リテーナ本体3の各底面と当接する第3の当接面37c-1、第4の当接面37d-1を備える。これにより、リテーナ本体3が延伸方向に変位するのが禁止される。
【0041】
リテーナ本体3をリテーナ保持部材37に固定した第1の状態で基板WFの研磨を行うと、トップリング302の回転に伴い基板WFがトップリング302内で移動する。すると、四角形の基板WFの側面および角がリテーナ本体3の第2の面3bの下部の対向部位3b-1と衝突し、第2の面3bの下部の対向部位3b-1が摩耗する(
図4Aでは摩耗して保持領域39と略平行に窪んだ状態を示している。)。しかしながら、本実施形態のリテーナ30では、対向部位3b-1が摩耗限界を超えたらリテーナ本体3を回転させる(向きを変える)ことにより継続使用することができるため、リテーナ30の交換頻度を低減させることができる。以下、この点を説明する。
【0042】
図4Bは、リテーナ本体をリテーナ保持部材に固定した第2の状態を示した断面図である。第2の状態は、リテーナ本体3の延伸方向に沿った仮想回転軸の周りにリテーナ本体3を180度回転させた状態である。
図4Bに示すように、リテーナ本体3は、第2の状態において、リテーナ保持部材37に固定可能な、第1の面(第1の固定面)3aと異なる第3の面(第2の固定面)3cと、第3の面3cをリテーナ保持部材37に固定した状態において保持領域39と対向する、第2の面3bと異なる第4の面(第2の対向面)3dと、を含む。第4の面3dは、保持領域39と対向する対向部位3d-1を有する。また、リテーナ本体3は、第3の面3cをリテーナ保持部材37に固定するために第3の面3cに埋め込まれた第3の磁性部材34-3を有する。第3の磁性部材34-3と磁石36がひきつけ合うことによって、第3の面3cはリテーナ保持部材37に固定される。
【0043】
リテーナ本体3をリテーナ保持部材37に固定した第2の状態で基板WFの研磨を行うと、トップリング302の回転に伴い基板WFがトップリング302内で移動するが、基
板WFが衝突するのは既に摩耗した第2の面3bではなく摩耗していない第4の面3dである。したがって、リテーナ本体3は、第2の面3bが摩耗した後でも継続して使用することができる。
【0044】
なお、上記の実施形態では、リテーナ本体3の延伸方向に沿った仮想回転軸の周りにリテーナ本体3を180度回転させた例を示したが、これに限らず、仮想回転軸の周りにリテーナ本体3を90度回転させてもよいし、270度回転させてもよい。すなわち、リテーナ本体3は、第2の面3bに第2の磁性部材34-2が埋め込まれ、第4の面3dに第4の磁性部材34-4が埋め込まれている。したがって、リテーナ本体3を第1の状態から90度、270度回転させたそれぞれの状態において、リテーナ本体3はリテーナ保持部材37に固定可能である。また、それぞれの状態において、保持領域39と対向する面(基板WFが衝突して摩耗する面)は異なるので、リテーナ本体3を交換することなく継続使用することができる。
【0045】
また、上述のようにリテーナ本体3の延伸方向に沿った仮想回転軸の周りにリテーナ本体3を回転させるのではなく、リテーナ本体3の延伸方向の向きを入れ替えるようにリテーナ本体3を回転させてもよい。また、これら2通りの回転を組み合わせてリテーナ本体3の向きを変えてもよい。
【0046】
図4Cは、リテーナ本体をリテーナ保持部材に固定した第3の状態を示した断面図である。第3の状態は、上記の第1の状態から水平面内でリテーナ本体3の延伸方向の向きを入れ替えるようにリテーナ本体3を回転させてリテーナ保持部材37に固定した状態である。
図4Cに示すように、リテーナ本体3は、リテーナ保持部材37に固定可能な第1の面3aと、第1の面3aをリテーナ保持部材37に固定した状態において保持領域39と対向する、第2の面3bと異なる第4の面(対向面)3dと、を含む。このように水平面内でリテーナ本体3の延伸方向の向きを入れ替えた場合、リテーナ保持部材37に固定される面は第1の状態と変わらず同一であるが、保持領域39と対向する面は第1の状態と異なる。したがって、リテーナ本体3を継続使用することができる。
【0047】
第3の状態からリテーナ本体3の延伸方向に沿った仮想回転軸の周りにリテーナ本体3を90度、180度、270度回転させたそれぞれの状態においても、リテーナ本体3はリテーナ保持部材37に固定可能であり、さらに保持領域39との対向部位が異なるので、継続使用することができる。すなわち、
図4Bの例では、第2の状態におけるリテーナ本体3の第2の対向面(第4の面3d)は、第1の状態にけるリテーナ本体3の第1の対向面(第2の面3b)と異なっていた。一方、第2の状態におけるリテーナ本体3の第2の対向面は、第1の対向面と同一の面になる場合もある。この場合、第2の対向面は、第1の状態における保持領域39との対向部位とは異なる、保持領域39との対向部位を有する面となる。第2の対向面が第1の対向面と同一になる例を第4の状態として以下に説明する。
【0048】
図4Dは、リテーナ本体をリテーナ保持部材に固定した第4の状態を示した断面図である。第4の状態は、上記の第1の状態から垂直面内でリテーナ本体3の延伸方向の向きを入れ替えるようにリテーナ本体3を回転させてリテーナ保持部材37に固定した状態である。
図4Dに示すように、リテーナ本体3は、リテーナ保持部材37に固定可能な第3の面3cと、第3の面3cをリテーナ保持部材37に固定した状態において保持領域39と対向する第2の面3bと、を含む。第1の状態と第4の状態ではいずれも第2の面3bが保持領域39と対向している。しかしながら、第1の状態において摩耗した対向部位3b-1は、第4の状態では保持領域39と対向しない。また、第2の面3bは、第1の状態における保持領域39との対向部位3b-1とは異なる、保持領域39との対向部位3b-2を有する。対向部位3b-2は摩耗していないので、リテーナ本体3を継続使用する
ことができる。
【0049】
以上より、本実施形態のリテーナ本体3は、リテーナ本体3を回転させることによって合計8回分使用することができる。したがって、本実施形態によれば、リテーナ30の交換頻度を低減させることができる。
【0050】
また、本実施形態のリテーナ本体3は、研磨液の種類に関わらず安定的にリテーナ保持部材37に固定することができる。すなわち、リテーナ本体3をリテーナ保持部材37に固定するためには、例えばリテーナ本体3にねじ穴をあけ、ボルトによってリテーナ保持部材37に固定することも考えられる。しかしながら、本実施形態のリテーナ本体3は回転させて何度も使用するので、第1の面3a~第4の面3dのそれぞれにねじ穴をあけることになる。すると、例えば第1の面3aをリテーナ保持部材37に固定しているときには第3の面3cが研磨パッド352に対向し、研磨中に研磨液と接する。その結果、第3の面3cのねじ穴に研磨液が固着し、第3の面3cをリテーナ保持部材37に固定できなくなるおそれがある。
【0051】
これに対して本実施形態のリテーナ本体3は、リテーナ本体3に埋め込まれた磁性部材とリテーナ保持部材37に設けられた磁石36との間の磁力を用いてリテーナ保持部材37に固定される。したがって、研磨液の種類に関わらずリテーナ本体3を安定的にリテーナ保持部材37に固定することができる。なお、磁石36に代えて電磁石を設けることもできる。この場合、リテーナ本体3をリテーナ保持部材37に取り付けるときには電磁石に通電してリテーナ本体3をリテーナ保持部材37に固定する一方、リテーナ本体3の向きを変えるときに電磁石に対する通電を切ることによってリテーナ本体3をリテーナ保持部材37から取り外し易くすることができる。また、リテーナ本体3をリテーナ保持部材37に固定するための手段は、磁力を用いたものに限られない。例えば、研磨液の固着などのおそれがない場合には、ボルトなどによってリテーナ本体3をリテーナ保持部材37に固定してもよいし、その他の手段を用いてもよい。
【0052】
次に、リテーナ本体3およびリテーナ保持部材37の別実施形態を説明する。
図6Aは、一実施形態におけるリテーナ本体およびリテーナ保持部材の底面図である。
図6Bは、
図6Aにおけるリテーナ本体およびリテーナ保持部材のB-B線における断面図である。
【0053】
本実施形態のリテーナ本体3およびリテーナ保持部材37は、リテーナ本体3にボス穴を形成し、リテーナ保持部材37にボスを設けること以外は、
図4および
図5において説明した実施形態と同様の構成を有するので、重複する説明を省略する。
【0054】
図6A、
図6Bに示すように、リテーナ本体3の第3の面3cには、延伸方向に沿って複数のボス穴3eが形成されている。また、
図6Bに示すように、リテーナ本体3の第1の面3aには、延伸方向に沿って複数のボス穴3fが形成されている。リテーナ本体3の第2の面3b、第4の面3dにも同様にボス穴が形成されている。一方、
図6Bに示すように、リテーナ保持部材37には、リテーナ本体3との対向面に複数のボス37eが設けられている。複数のボス37eは、リテーナ本体3のボス穴に対応する位置に設けられている。
【0055】
本実施形態によれば、リテーナ本体3のボス穴3fにボス37eを挿入するようにリテーナ本体3をリテーナ保持部材37に取り付けることができるので、リテーナ本体3を容易に位置決めすることができる。また、ボス穴3fにボス37eを挿入することによって、研磨中にリテーナ本体3が変位するのを抑制することができる。また、
図6Bに示すように、複数のボス穴3fは、リテーナ本体3の延伸方向の中心に対して回転対称な位置に形成される。これにより、リテーナ本体3の延伸方向の向きを入れ替えるようにリテーナ
本体3を180°回転させた場合にも、ボス穴3fにボス37eを挿入することができ、リテーナ本体3を回転前と同じ位置に固定することができる。複数のボス穴3e、およびリテーナ本体3の第2の面3b、第4の面3dに形成される複数のボス穴についても同様に、リテーナ本体3の延伸方向の中心に対して回転対称な位置に形成される。
【0056】
上記の実施形態では、正四角柱の形状のリテーナ本体3を例に挙げて説明したが、リテーナ本体3の形状はこれに限定されない。
図7A、
図7B、
図7Cは、リテーナ本体およびリテーナ保持部材の変形例を示す断面図である。
【0057】
図7Aに示すように、リテーナ本体3は正三角柱の形状を有していてもよい。この場合、リテーナ本体3の3個の側面にはそれぞれ磁性部材34が埋め込まれる。一方、リテーナ保持部材37の底面には、リテーナ本体3の形状に対応する窪みが形成される。リテーナ保持部材37のリテーナ本体3との対向面には磁石36-1、36-2が設けられる。リテーナ保持部材37は、リテーナ本体3が基板の保持領域39から離れる方向へ変位するのを禁止するようにリテーナ本体3と当接する当接面37a-1と、リテーナ本体3が基板の保持領域39に近づく方向へ変位するのを禁止するようにリテーナ本体3と当接する当接面37b-1と、を有する。
【0058】
図7Bに示すように、リテーナ本体3は正五角柱の形状を有していてもよい。この場合、リテーナ本体3の5個の側面にはそれぞれ磁性部材34が埋め込まれる。一方、リテーナ保持部材37の底面には、リテーナ本体3の形状に対応する窪みが形成される。リテーナ保持部材37のリテーナ本体3との対向面には磁石36-1、36-2が設けられる。リテーナ保持部材37は、リテーナ本体3が基板の保持領域39から離れる方向へ変位するのを禁止するようにリテーナ本体3と当接する当接面37a-1と、リテーナ本体3が基板の保持領域39に近づく方向へ変位するのを禁止するようにリテーナ本体3と当接する当接面37b-1と、を有する。
【0059】
図7Cに示すように、リテーナ本体3は正六角柱の形状を有していてもよい。この場合、リテーナ本体3の6個の側面にはそれぞれ磁性部材34が埋め込まれる。一方、リテーナ保持部材37の底面には、リテーナ本体3の形状に対応する窪みが形成される。リテーナ保持部材37のリテーナ本体3との対向面には磁石36-1、36-2、36-3が設けられる。リテーナ保持部材37は、リテーナ本体3が基板の保持領域39から離れる方向へ変位するのを禁止するようにリテーナ本体3と当接する当接面37a-1と、リテーナ本体3が基板の保持領域39に近づく方向へ変位するのを禁止するようにリテーナ本体3と当接する当接面37b-1と、を有する。なお、
図7A、
図7B、
図7Cに示した変形例のリテーナ本体3に、
図6A、
図6Bに示したようなボス穴を形成し、
図7A、
図7B、
図7Cに示した変形例のリテーナ保持部材37に、
図6A、
図6Bに示したようなボスを設けてもよい。また、上記の変形例に限らず、リテーナ本体3は、正多角柱の形状を有することができる。また、リテーナ本体3は、正多角柱の形状にも限定されない。リテーナ本体3は、例えば断面がL字の柱状など様々な形状であってもよい。
【0060】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0061】
本願は、一実施形態として、多角形基板を保持して研磨パッドに向けて押圧するトップリングにおいて前記多角形基板の保持領域を囲むように配置され前記研磨パッドに向けて押圧されるリテーナであって、前記多角形基板の辺ごとに独立して前記辺に沿うように前
記保持領域の周囲に配置される複数のリテーナ本体を含み、前記複数のリテーナ本体の少なくとも1つは、前記トップリングのリテーナ保持部材に固定可能な第1の固定面と、前記第1の固定面を前記リテーナ保持部材に固定した第1の状態において前記保持領域と対向する第1の対向面と、前記リテーナ本体を前記第1の状態から回転させた第2の状態において前記リテーナ保持部材に固定可能な第2の固定面と、前記第2の固定面を前記リテーナ保持部材に固定した状態において前記保持領域と対向する第2の対向面と、を含む、リテーナを開示する。
【0062】
さらに、本願は、一実施形態として、前記第2の状態は、前記第1の状態の前記リテーナ本体を、前記リテーナ本体の延伸方向に伸びる仮想回転軸の周りに回転させるか、前記リテーナ本体の延伸方向の向きを入れ替えるように回転させるか、またはそれらの組み合わせで回転させた、前記第1の状態とは異なる状態であり、前記第2の対向面は、前記第1の対向面と異なる面であるか、または前記第1の対向面と同一の面であるが前記第1の状態における前記保持領域との対向部位とは異なる前記保持領域との対向部位を有する面である、リテーナを開示する。
【0063】
さらに、本願は、一実施形態として、前記複数のリテーナ本体の少なくとも1つは、前記第1の固定面を前記リテーナ保持部材に固定するために前記第1の固定面に埋め込まれた磁性部材と、前記第2の固定面を前記リテーナ保持部材に固定するために前記第2の固定面に埋め込まれた磁性部材と、を含む、リテーナを開示する。
【0064】
さらに、本願は、一実施形態として、前記複数のリテーナ本体の少なくとも1つは正多角柱の形状を有し、前記正多角柱の側面はそれぞれ、前記側面を前記リテーナ保持部材に固定するために前記側面に埋め込まれた磁性部材を含む、リテーナを開示する。
【0065】
さらに、本願は、一実施形態として、多角形基板を保持して研磨パッドに向けて押圧するトップリングであって、回転シャフトと、前記回転シャフトに固定されたフランジと、前記フランジに取り付けられたリテーナ保持部材と、前記リテーナ保持部材に取り付けられた上記のいずれかに記載のリテーナと、を含む、トップリングを開示する。
【0066】
さらに、本願は、一実施形態として、前記リテーナ保持部材は、前記リテーナ本体との対向面に配置された磁石または電磁石を含む、トップリングを開示する。
【0067】
さらに、本願は、一実施形態として、前記リテーナ保持部材は、前記リテーナ本体が前記保持領域から離れる方向へ変位するのを禁止するように前記リテーナ本体と当接する当接面を有する、トップリングを開示する。
【0068】
さらに、本願は、一実施形態として、前記リテーナ本体の前記第1の固定面および前記第2の固定面には、前記リテーナ本体の延伸方向に沿って複数のボス穴が形成され、前記リテーナ保持部材の前記リテーナ本体との対向面には、前記リテーナ本体の前記第1の固定面および前記第2の固定面の前記ボス穴に対応する位置に複数のボスが設けられている、トップリングを開示する。
【0069】
さらに、本願は、一実施形態として、前記複数のボス穴は、前記リテーナ本体の延伸方向の中心に対して回転対称な位置に形成される、基板処理装置を開示する。
【0070】
さらに、本願は、一実施形態として、上記のいずれかに記載のトップリングと、研磨パッドを保持するように構成された研磨テーブルと、を有する、基板処理装置を開示する。
【符号の説明】
【0071】
3 リテーナ本体
3a 第1の面
3b 第2の面
3c 第3の面
3d 第4の面
3e ボス穴
3f ボス穴
17 フランジ
18 トップリングシャフト
30 リテーナ
34 磁性部材
36 磁石
37 リテーナ保持部材
37a 側壁
37a-1 当接面
37b 側壁
37b-1 当接面
37e ボス
39 保持領域
300 研磨ユニット
302 トップリング
350 研磨テーブル
352 研磨パッド
1000 基板処理装置
WF 基板