(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】自動停止研磨組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20241226BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20241226BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20241226BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
(21)【出願番号】P 2022523604
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 US2020056807
(87)【国際公開番号】W WO2021081171
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-10-23
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】チャン チュヨン
(72)【発明者】
【氏名】サラ ブロスナン
(72)【発明者】
【氏名】ブリタニー ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ワン チンフォン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ダブリュ.ヘインズ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/194792(WO,A1)
【文献】特開2017-186196(JP,A)
【文献】特開2018-109089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/02
H01L 21/304
H01L 21/463
B24B 3/00 - 3/60
B24B 21/00 - 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨組成物であって、
液体キャリアと、
前記液体キャリア中に分散された立方体状
セリア研磨剤粒子と、
前記立方体状セリア研磨剤粒子は、酸化セリウムと酸化ランタンとの混合物を含む、
自動停止剤と、
前記自動停止剤が、コウジ酸、マルトール、エチルマルトール、プロピルマルトール、ヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、コーヒー酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、及びこれらの組み合わせである、
カチオン性ポリマーと
を含む化学機械研磨組成物。
【請求項2】
前記立方体状セリア研磨剤粒子の、ランタン及びセリウムに対するランタンのモル比が約1~約15パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記立方体状セリア研磨剤粒子が、約3m
2/g~約14m
2/gの範囲のBET表面積を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記立方体状セリア研磨剤粒子が、約50~約500nmの範囲の平均粒径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
約0.01質量パーセント~約1質量パーセントの立方体状セリア研磨剤粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記自動停止剤が、前記立方体状セリア研磨剤粒子に結合されたリガンドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記自動停止剤が、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、コウジ酸、ソルビン酸カリウム、又はこれらの組み合わせである、請求項
1に記載の組成物。
【請求項8】
前記カチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(ビニルイミダゾール)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリクオタニウム-2、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-46、ポリクオタニウム-44、ポリリシン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記カチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(ビニルイミダゾール)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、ポリリシン、又はこれらの組み合わせである、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
前記立方体状セリア研磨剤粒子のユースポイント濃度が約0.01質量パーセント~約1質量パーセントであり、
前記自動停止剤のユースポイント濃度が約200質量ppm~約5000質量ppmであり、そして
前記カチオン性ポリマーのユースポイント濃度が約5質量ppm~約500質量ppmである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
さらにカルボン酸速度向上剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記カルボン酸速度向上剤が、ピコリン酸、酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸、又はこれらの混合物である、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
アクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、トランス-2-ヘキセン酸、トランス-3-ヘキセン酸、2-ヘキシン酸、2,4-ヘキサジエン酸、ソルビン酸カリウム、トランス-2-メチル-2-ブテン酸、3,3-ジメチルアクリル酸、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された不飽和モノカルボン酸速度抑制剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記不飽和モノカルボン酸速度抑制剤が、クロトン酸である、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド、リシン、3-メタクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウム、3-アクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートベンジル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された非ポリマー系カチオン性化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記非ポリマー系カチオン性化合物が、ジアリルジメチルアンモニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、リシン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、又はこれらの混合物を含む、請求項
15に記載の組成物。
【請求項17】
前記カチオン性ポリマーが、ポリリシンを含み、そして前記非ポリマー系化合物がジアリルジメチルアンモニウムを含む、請求項
15に記載の組成物。
【請求項18】
トリエタノールアミンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
ベンゾトリアゾール又はビストリスメタンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
pHが約5~約10の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記自動停止剤が、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、コウジ酸、ソルビン酸カリウム、又はこれらの組み合わせであり、
前記カチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)、ポリリシン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、又はこれらの組み合わせであり、そして
前記組成物が、ピコリン酸、酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸、又はこれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
トリエタノールアミン及びベンゾトリアゾールをさらに含む、請求項
21に記載の組成物。
【請求項23】
前記自動停止剤が、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、又はこれらの組み合わせであり、そしてpHが、ユースポイントで約7~約9の範囲である、請求項
21に記載の組成物。
【請求項24】
ユースポイントで少なくとも250質量ppmの自動停止剤と、ユースポイントで50質量ppmのカチオン性ポリマーと含む、請求項
23に記載の組成物。
【請求項25】
前記自動停止剤が、コウジ酸、ソルビン酸カリウム、又はこれらの組み合わせであり、そしてpHがユースポイントで約5~約6.5の範囲である、請求項
21に記載の組成物。
【請求項26】
前記自動停止剤が、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、又はこれらの組み合わせであり、そして
前記カチオン性ポリマーが、ε-ポリ-L-リシン、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、又はこれらの組み合わせである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
クロトン酸をさらに含む、請求項
26に記載の組成物。
【請求項28】
ジアリルジメチルアンモニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、リシン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、又はこれらの混合物から成る群から選択された非ポリマー系カチオン性化合物をさらに含む、請求項
26に記載の組成物。
【請求項29】
少なくとも250質量ppmの前記自動停止剤と、
少なくとも20質量ppmの前記カチオン性ポリマーと、
少なくとも20質量ppmの前記非ポリマー系カチオン性化合物と
を含む、請求項
28に記載の組成物。
【請求項30】
酸化ケイ素誘電材料を含む基板を化学機械研磨する方法であって、前記方法が、
(a) 液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された立方体状
セリア研磨剤粒子と、自動停止剤と、カチオン性ポリマーとを含む研磨組成物を用意し、
前記立方体状セリア研磨剤粒子は、酸化セリウムと酸化ランタンとの混合物を含み、そして前記自動停止剤が、コウジ酸、マルトール、エチルマルトール、プロピルマルトール、ヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、コーヒー酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、及びこれらの組み合わせである、
(b) 前記基板を前記用意された研磨組成物と接触させ、
(c) 前記基板に対して前記研磨組成物を動かし、そして
(d) 前記基板を研削して、前記酸化ケイ素誘電材料の一部を前記基板から除去し、これにより前記基板を研磨する
ことを含む、酸化ケイ素誘電材料を含む基板を化学機械研磨する方法。
【請求項31】
前記酸化ケイ素誘電材料のトレンチ損失除去に対する、前記基板のパターン化領域内の前記酸化ケイ素誘電材料のアクティブな除去の比が、工程(d)において約5超である、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
前記自動停止剤が、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、コウジ酸、ソルビン酸カリウム、又はこれらの組み合わせであり、
前記カチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)、ポリリシン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、又はこれらの組み合わせであり、そして
前記研磨組成物が、ピコリン酸、酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸、又はこれらの混合物をさらに含む、
請求項
30に記載の方法。
【請求項33】
前記自動停止剤が、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、又はこれらの組み合わせであり、
前記カチオン性ポリマーが、ε-ポリ-L-リシン、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、又はこれらの組み合わせである、
請求項
30に記載の方法。
【請求項34】
前記研磨組成物が、ジアリルジメチルアンモニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、リシン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、又はこれらの混合物から成る群から選択された非ポリマー系カチオン性化合物をさらに含む、請求項
33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月22日付けで出願された「Self-Stopping Polishing Composition and Method」と題する米国仮出願第62/924,342号明細書の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨は、集積回路(IC)及び微小電気機械システム(MEMS)の製作における重要な実現化技術である。基板(例えばウエハー)の表面を研磨(又は平坦化)するためのCMP組成物及び方法が当業者によく知られている。(研磨スラリー、CMPスラリー、及びCMP組成物としても知られている)研磨組成物は一般に、材料除去速度を高め、平坦化効率を改善し、且つ/又はCMP作業中に欠陥率を低減するために、水溶液中に懸濁(分散)された研磨剤粒子を含んでいる。
【0003】
表面の「高ポイント(high point)」(すなわち隆起領域)の高いパーセンテージが除去されると除去速度が低くなるように、CMP組成物が「自動停止(self-stopping)」を呈することが、ある特定の研磨用途において望ましい。自動停止研磨用途において、基板表面に有意なステップ高さが存在しているときには、除去速度は事実上高く、次いで表面が本質的に平坦化してくるのにともなって低下される。(例えばSTIプロセスにおける)種々の誘電研磨工程において、パターン誘電材料(例えば誘電層)の除去速度は典型的にはプロセス全体の速度制限ファクタである。したがって、処理量を増大させるためには、パターン誘電材料の高い除去速度が望まれる。比較的低いトレンチ損失という形の良好な効率も望ましい。さらに、誘電材料の除去速度が、平坦化に達した後でも高いままであるならば、過剰研磨が発生し、結果としてトレンチ損失が増大する。
【0004】
自動停止スラリーの利点は、ブランケット除去速度の低下からもたらされる。このことは幅広い終点窓を生みだす。例えば、自動停止挙動は、誘電フィルム厚が低減された基板の研磨を可能にし、低減された量の材料を、構造化された下層上に堆積させるのを可能にする。また、最終トポグラフィのより効果的な監視のために、モータートルクの終点検出を用いることもできる。
平坦化後の誘電体の過剰研磨又は不要な除去を回避することにより、トレンチ損失をより低くした状態で基板を研磨することができる。
【0005】
酸化セリウム(セリア)研磨剤がこの業界において、具体的には例えば酸化ケイ素材料、例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS)、窒化ケイ素、及び/又はポリシリコンを含むシリコン含有基板を研磨する上でよく知られている。浅型トレンチ分離用途を含む高度な誘電体用途には、セリア研磨剤組成物が広く使用される。セリア研磨剤の使用は知られてはいるものの、改善されたセリア研磨剤を基剤とするCMP組成物が依然として必要である。具体的には、有用な除去速度を提供するとともに、平坦化効率をも改善する酸化シリコン含有基板を化学機械研磨する組成物及び方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ケイ素酸素材料(例えば酸化ケイ素)を有する基板を研磨するための化学機械研磨組成物が開示される。1実施態様では、研磨組成物は、液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された立方体状研磨剤粒子と、自動停止剤と、カチオン性ポリマーとを含み、これらから成り、又は本質的にこれらから成る。
【発明の効果】
【0007】
開示された主題及びその利点をより完全に理解するために、添付の図面とともに以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1及び2は、正方形の面を有するセリア研磨剤粒子を示す立方体状セリア研磨剤試料の透過電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真である。
【
図2】
図1及び2は、正方形の面を有するセリア研磨剤粒子を示す立方体状セリア研磨剤試料の透過電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、正方形の面を有するセリア研磨剤粒子を示す立方体状セリア研磨剤試料の走査電子顕微鏡法(SEM)顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、例6において研磨されたパターン化ウエハーのパターンタイプに対するアクティブ損失をÅ単位で示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ケイ素酸素材料(例えば酸化ケイ素)を有する基板を研磨するための化学機械研磨組成物が開示される。研磨組成物は、液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された立方体状研磨剤粒子と、自動停止剤と、カチオン性ポリマーとを含み、これらから成り、又は本質的にこれらから成る。1実施態様では、自動停止剤は、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、コウジ酸、又はソルビン酸カリウムを含む。別の実施態様では、カチオン性ポリマーは、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)、ポリリシン、ポリクオタニウム-7を含む。
【0010】
開示された研磨組成物及び対応する(CMP方法)は、有意な、そして予期せぬ利点をもたらすことができる。例えば、開示された組成物は、アクティブな酸化物除去速度を有意に改善することができ、ひいては処理量を改善し、時間及びコストを節約する(すなわち平坦化時間を改善することを介して)ことができる。開示された組成物はさらに、種々様々なパターン化酸化物構造の平坦化を改善することができる。開示された組成物はさらに、トレンチ損失を改善/低減し、そして自動停止挙動を改善(ブランケット速度を低減)することができる。
【0011】
研磨組成物は、液体キャリア中に懸濁された立方体状セリア研磨剤粒子を含む研磨剤粒子を含有する。「立方体状」とは、セリア研磨剤粒子が立方体の形態又は形状を成しており、すなわちほぼ立方体であることを意味する。換言すれば、立方体状セリア研磨剤粒子は形状及び性質において立方体である。しかしながら、言うまでもなくエッジ寸法、コーナー、及びコーナー角度は、正確又は精密に完全立方体のものである必要はない。例えば、立方体状研磨剤粒子はわずかに丸みを帯びた又は欠けたコーナー、わずかに丸みを帯びたエッジ、互いに正確には等しくないエッジ寸法、正確には90度でないコーナー角度、及び/又は軽微な不規則性を有していてよく、立方体の基本形状をなおも保つことができる。当業者には容易に判るように(例えば走査電子顕微鏡法又は透過電子顕微鏡法を介して)、立方体状セリア研磨剤粒子は、概ね粒子成長及びデアグロメレーションのために許された許容差を伴った状態で立方体の形状を成している。
【0012】
図1,2及び3は、立方体状セリア研磨剤粒子の例を示している。これらの透過電子顕微鏡法(TEM)及び透過電子顕微鏡法(TEM)の画像は、正方形の面を有するセリア研磨剤粒子を示している。例えば、これらの画像において、示された粒子面はそれぞれ、ほぼ同じ長さ(例えば互いに20%以内、又は互いに10パーセント以内、又はそれ未満)を有する4つのエッジを含んでいる。さらに、エッジはコーナーにおいてほぼ90度の角度(例えば約80~100度の範囲内、又は約85~約95度の範囲内)を成して合体している。当業者には明らかなように、TEM及びSEM画像には、示された研磨剤粒子の大部分が、上で定義した正方形の面を有しているという点で立方体状である。粒子のいくつかは、例えば1つ又は2つ以上のコーナー上に欠陥を含むことを観察し得る。再び述べておくが、立方体状という用語は、正確に立方体であるセリア研磨剤粒子を表すように意図されるのではなく、上で定義され且つ
図1,2及び3に示されているように本質的に概ね立方体である粒子を表すように意図される。
【0013】
本明細書中に使用される、立方体状セリア研磨剤を含む化学機械研磨組成物は、研磨剤粒子の少なくとも25数パーセントが本質的に立方体(上述のように形態又は形状において立方体)であるものである。好ましい実施態様では、研磨剤粒子の少なくとも40数パーセント(例えば少なくとも60パーセント、又は少なくとも80パーセント)が本質的に立方体である。上記のように、立方体状セリア研磨剤粒子は、TEM又はSEM画像を用いて、例えば約10,000倍~約500,000倍の倍率で容易に評価しカウントすることができる。SEM又はTEM画像に示された研磨剤粒子は、長さが同様である4つの辺を有する面を有している(例えば上述のように互いに20パーセント以内)。画像はまた、隣接する辺がほぼ垂直であり、例えば約90度の角度(例えばやはり上述のように約80度~100度の範囲内)を成していることを示している。セリア研磨組成物が立方体状セリア研磨剤粒子を含むか否かを割り出すために、統計学的分析を行い、これにより正方形の面を有する粒子のパーセンテージを割り出すように、SEM又はTEMによって、ランダムに選択された多数の粒子(すなわち200個以上)を観察するものとする。保持された粒子は、これらの画像が顕微鏡写真上で良好に見えるようになっていなければならない。粒子のいくつかは粒子の表面及び/又は粒子のコーナーの1つ又は2つ以上に何らかの欠陥を呈することがあるが、それでもなお立方体状としてカウントすることができる。
【0014】
立方体状セリア研磨剤粒子はほぼ純粋なセリア研磨剤粒子(不純物に対する通常の許容差以内)であってよく、あるいはドープ型セリア研磨剤粒子であってもよい。ドープ型セリア研磨剤粒子は間質ドーパント(通常は占有されない格子内の空間を占有するドーパント)、又は置換型ドーパント(セリウム又は酸素原子によって通常は占有される格子内の空間を占有するドーパント)を含んでよい。このようなドーパントは、例えばCa、Mg、Zn、Zr、Sc又はYを含む、実質的にはいかなる金属原子を含んでもよい。
【0015】
ある特定の有利な実施態様では、ドーパントは、例えばランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、及びこれに類するものを含む1種又は2種以上のランタニドを含んでよい。特に好適な1実施態様では、立方体状セリア研磨剤粒子はセリウムとランタンとの混合酸化物を含む。混合酸化物研磨剤粒子の、(La+Ce)に対するLaのモル比は、約0.01~約0.15、例えば約0.01~約0.12であってよい。言うまでもなく、このような研磨剤粒子は加えて他の元素及び/又は酸化物(例えば不純物として)を含んでよい。このような不純物は、研磨剤粒子の調製プロセス中に使用される原材料又は出発材料を起源とし得る。不純物の総比率は粒子の0.2質量%未満であることが好ましい。残留硝酸塩は不純物として考えられない。
【0016】
ある特定の実施態様では、(La+Ce)に対するLaのモル比は、約0.01~約0.04(例えば約0.02~約0.03)であってよい。1つのこのような実施態様では、立方体状セリア研磨剤粒子は約2.5モル%の酸化ランタンと約97.5モル%の酸化セリウムとを含む。他の実施態様では、モル比は約0.08~約0.12(例えば約0.09~約0.11)であってよい。1つのこのような他の実施態様では、立方体状セリア研磨剤粒子は約10モル%の酸化ランタンと約90モル%の酸化セリウムとを含む。研磨剤粒子は、ランタン原子が酸化セリウム結晶構造内のセリウム原子を置換する、単相固溶体であってよい。1実施態様では、固溶体は対称的なX線回折パターンを呈し、この場合ピークは、約27度~約29度の間に位置していて、純粋酸化セリウムよりも小さな角度にシフトされている。エイジング・サブ工程(後述)の温度が約60℃よりも高いときに固溶体を得ることができる。本明細書中で使用される「固溶体」という用語は、X線回折が、個々のピークのシフトの有無とは無関係に、しかし他の相の存在を示す付加的なピークなしに、酸化セリウム結晶構造のパターンだけを示すことを意味する。
【0017】
立方体状セリア研磨剤粒子は任意には、ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)法(BET法)を用いた窒素の吸着によって、粉末上で割り出されたこれらの比表面積によって特徴づけることもできる。この方法はASTM D3663-03(2015年に再承認)に開示されている。研磨剤粒子の比表面積は約3~約14m2/g(例えば約7~約13m2/g、又は約8~約12m2/g)であってよい。
【0018】
立方体状セリア研磨剤粒子は任意には、これらの平均粒径及び/又は粒径分布によって特徴づけることもできる。研磨剤粒子の平均粒径は、約50nm~約1000nm(例えば約80nm~約500nm、約80nm~約250nm、約100nm~約250nm、又は約150nm~約250nm)であってよい。さらに、平均粒径は、約50nm超(例えば約80nm超又は約100nm超)であってよい。平均粒径は、動的光散乱(DLS)を介して割り出すことができ、これは中央粒径(D50)に相当する。DLS測定は、例えばZetasizer(Malvern Instrumentsから入手可能)を使用して行うことができる。当業者には明らかなように、DLS測定は、比較的大きい粒子の存在において測定されると小さい粒子を有意に過少カウントすることがある。本明細書に開示された立方体状セリア研磨剤粒子に関しては、DLS技術は約40nm未満の粒子を過少カウントする傾向がある。言うまでもなく、開示された実施態様はDLSによってカウントされないこのような小さな粒子(40nm未満)を数多く含むことがあり、したがって、平均粒径には寄与しない。
【0019】
粒径分布を特徴づけるためにレーザー回折技術を任意に用いることもできる。当業者には明らかなように、レーザー回折技術も小さな粒子(例えば開示された実施態様では約40nm未満)を過少カウントする傾向がある。レーザー回折測定は例えば、相対屈折率1.7を用いてHoriba LA-960を使用して行うことができる。レーザー回折測定で得られた分布から、例えばD10、D50、D90、D99及び分散指数(下で定義される)を含む種々のパラメータを得ることができる。レーザー回折測定に基づいて、研磨剤粒子は約100nm~約700nm(例えば約100nm~約200nm)の中央直径(D50)を含んでよい。例えば、D50は約100nm~約150nm又は約150nm~約200nmであってよい。D50は、レーザー回折によって得られた分布から割り出された中央直径である。
【0020】
立方体状セリア研磨剤粒子のD10は任意には、約80nm~約400nm(例えば約80nm~約250nm、約80nm~約150nm、又は約100nm~約130nm)であってよい。言うまでもなく、D10はレーザー回折によって得られた粒径であって、粒子の10%の直径がD10未満である、その粒径である。
【0021】
立方体状セリア研磨剤粒子のD90は任意には、約150nm~約1200nm(例えば,約150nm~約1000nm、約150~約750nm、約150~約500nm、約150~約300nm、又は約200nm~約300nm)であってよい。D90はレーザー回折によって得られた粒径であって、粒子の90%の直径がD90未満である、その粒径を表す。機械的デアグロメレーションを施された研磨剤粒子のD90は約300nm未満であってよい。
【0022】
立方体状セリア研磨剤粒子は任意には低い分散指数を呈することができる。「分散指数(dispersion index)」は、下記式、
分散指数=(D90-D10)/2・D50
によって定義される。分散指数は約0.60未満、例えば約0.5未満、約0.4未満、又は約0.30未満であってよい。機械的デアグロメレーションを施された研磨剤粒子の分散指数は約0.30未満であってよい。さらに、D90/D50は、機械的デアグロメレーションを施された粒子の場合、約1.3~約2であってよい。
【0023】
立方体状セリア研磨剤粒子のD99は任意には、約150nm~約3000nm(例えば約200nm~約2000nm、約200nm~約1800nm、約200nm~約1200nm、約200nm~約900nm、約200nm~約600nm、約200~約500nm、又は約200~約400nm)であってよい。機械的デアグロメレーションを施された研磨剤粒子のD99は約600nm未満(例えば約500又は約400未満)であってよい。D99はレーザー回折によって得られた粒径であって、粒子の99%の直径がD99未満である、その粒径を表す。
【0024】
研磨剤粒子は、立方体状セリア研磨剤粒子を製造するのに適した実質的に任意の適宜の方法を用いて調製することができる。開示された実施態様は、このような研磨剤粒子を含む化学機械研磨組成物、及びこのような研磨剤粒子を使用して基板を研磨する方法に関し、いかなる特定の粒子製造方法にも限定されない。ある特定の実施態様では、立方体状セリア研磨剤粒子は、硝酸セリウム(及び任意には、ドープ型セリア研磨剤が調製される場合には他の硝酸塩)を沈降させることによって調製されてよい。沈降させた材料を次いで特定の温度・圧力レジームにおいて成長させることにより、立方体状セリア研磨剤粒子の成長を促進することができる。これらの粒子を次いで清浄化し、デアグロメレーション処理することができる。立方体状セリア研磨剤粒子の分散体を次いで調製して、本発明の化学機械組成物を製剤するために使用することができる。
【0025】
1つの有利な実施態様では、セリウム及びランタンの硝酸塩を沈降させることにより立方体状酸化セリウムランタン研磨剤粒子を調製することができる。このような1つの調整方法は下記工程、すなわち、
(i)不活性雰囲気下で硝酸セリウム水溶液と水性塩基とを混合する工程、
(ii)(i)で得られた混合物を不活性雰囲気下で加熱する工程、
(iii)任意には(ii)で得られた熱処理済みの混合物を酸性化する工程、
(iv)(ii)又は(iii)で得られた固形材料を水で洗浄する工程、
(v)(iv)で得られた固形材料を機械的に処理することにより、セリア粒子をデアグロメレーション処理する工程、
を含む。
【0026】
上記方法の工程(i)で使用される硝酸セリウム溶液は、硝酸セリウムと硝酸ランタンとの水溶液を混合することにより調製することができる。この水溶液は、CeIII、CeIV及びLaIIIを含み、そして総Ceに対するCeIVのモル比が約1/(500,000)~約1/(4,000)であることによって特徴づけることができる。1実施態様では、このモル比は約1/(100,000)~約1/(90,000)であってよい。高純度、例えば少なくとも99.5質量パーセント又は99.9質量パーセントの純度を有する塩及び成分を使用することが概ね有利である。
【0027】
工程(i)は硝酸セリウム水溶液と水性塩基とを混合し/反応させる工程を含む。例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物及び水性アンモニアを含む水酸化物タイプの塩基が有利であり得る。第2級、第3級又は第4級アミンを使用してもよい。不活性ガスで泡立てることにより、塩基の水溶液を予め脱気(脱酸素化)してもよい。硝酸セリウム水溶液を水性塩基中に導入することにより、混合を実施することができる。混合は不活性雰囲気下で例えば閉鎖反応器又は半閉鎖反応器内で不活性ガス(例えば窒素又はアルゴン)パージとともに行われる。混合は撹拌しながら行われてもよい。(Ce+La)に対する塩基のモル比は約8.0~約30.0(例えば約9.0超)であってよい。工程(i)はさらに、5℃~約50℃の温度、例えば約20℃~25℃の温度で実施されてよい。
【0028】
工程(ii)は先行の工程の終了時に得られた混合物を加熱することを含み、そして加熱サブ工程とエイジングサブ工程とを含んでよい。加熱サブ工程は、混合物を75℃~約95℃、例えば約85℃~約90℃の温度まで加熱することを含んでよい。エイジングサブ工程は、約2時間~約20時間にわたって混合物をその温度に維持(保持)することを含んでよい。概ねエイジング時間は、温度が高まるのに伴って短くなる。工程(ii)は工程(i)に関して上述したように、不活性雰囲気下で撹拌しながら実施することもできる。
【0029】
工程(iii)において、ステップ(ii)の終了時に得られた混合物を、例えば硝酸を使用して任意には酸性化することができる。熱処理済み反応混合物を例えば約3.0未満(例えば約1.5~約2.5)のpHまで酸性化することができる。
【0030】
工程(iv)では、工程(ii)又は(iii)で得られた固形材料を水(例えば脱イオン水)で洗浄してよい。洗浄することによって最終分散体中の残留硝酸塩を低減し、目標導電性を得ることができる。洗浄は、混合物からの固形物を濾過し、そして固形物を水中に再分散することを含んでよい。濾過及び再分散は必要であれば数回にわたって実施されてよい。
【0031】
工程(v)では、(iv)で得られた洗浄済み固形材料を任意には機械的に処理することにより、セリア研磨剤粒子をデアグロメレーション処理又は部分デアグロメレーション処理することができる。機械処理は、例えばダブルジェット処理又は超音波デアグロメレーション処理を含み、通常、狭い粒径分布をもたらし、また大きい凝集粒子の数を減らす。
【0032】
工程(iv)又は(v)の後、固形材料を乾燥させることにより、セリウム系粒子を粉末形態で得ることができる。水又は水と混和性液体有機化合物との混合物を添加することにより、粉末を再分散させ、これにより液状媒体中のセリウム系粒子の分散体を得ることができる。液状媒体は水又は水と水混和性有機液体との混合物であってよい。水混和性有機液体は例えばアルコール、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、1-プロパノール、メタノール、1-ヘキサノール、ケトン、例えばアセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン、エステル、例えばギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチルを含んでよい。水と有機液体との比率は80:20~99:1質量部であってよい。さらに、分散体は約1質量パーセント~約40質量パーセント、例えば約10質量パーセント~約35質量パーセントのセリウム系粒子を含んでよい。分散体はまた、約300μS/cm未満、例えば約150μS/cm未満、より具体的には150μS/cm未満、又は約100μS/cm未満の導電率を有していてもよい。
【0033】
研磨組成物は、実質的に任意の適量の立方体状セリア研磨剤粒子を含んでいてよい。例えば、研磨組成物はユースポイントで、約0.001質量パーセント(10ppm)以上(例えば約0.002質量パーセント以上、約0.005質量パーセント以上、約0.01質量パーセント以上、約0.02質量パーセント以上、約0.05質量パーセント以上、又は約0.1質量パーセント以上)の立方体状セリア研磨剤粒子を含んでよい。研磨組成物はユースポイントで、約5質量パーセント以下(例えば約2質量パーセント以下、約1.5質量パーセント以下、約1質量パーセント以下、又は約0.5質量パーセント以下)の立方体状セリア研磨剤粒子を含んでよい。言うまでもなく、立方体状セリア研磨剤粒子は、前述のエンドポイントのいずれか2つによって仕切られた濃度で、研磨組成物中に存在していてよい。例えば、研磨組成物中の立方体状セリア研磨剤粒子の濃度はユースポイントで、約0.001質量パーセント~約5質量パーセント(例えば約0.005質量パーセント~約1質量パーセント、約0.01質量パーセント~約1質量パーセント、又は約0.01質量パーセント~約0.5質量パーセント)であってよい。
【0034】
研磨(例えば平坦化)されるべき基板の表面に研磨剤及びあらゆる任意の化学添加剤を塗布するのを容易にするために、水性液体キャリアが使用される。水性とは、液体キャリアが少なくとも50wt%の水(例えば脱イオン水)から成ることを意味する。液体キャリアは、低級アルコール(例えばメタノール、エタノールなど)及びエーテル(例えばジオキサン、テトラヒドロフランなど)を含む、他の適宜の非水性キャリアを含んでよい。好ましくは、液体キャリアは水、より好ましくは脱イオン水から本質的に成っているか又はこれから成っている。
【0035】
研磨組成物は概ね弱酸性、中性、又はアルカリ性であり、約5~約10(例えば約5超且つ/又は約10未満)のpHを有している。ある特定の実施態様では、研磨組成物は、中性又は弱アルカリ性であって、約6~約10(例えば約6.5~約9.5、又は約7~約9)のpHを有していてよい。このような実施態様では、研磨組成物のpHは約8(例えば約7.5~約8.5)であってよい。別の実施態様では、研磨組成物は弱酸性又は中性であって、約5~約8(例えば約5~約7又は約5~約6.5)のpHを有している。1つのこのような実施態様では、研磨組成物のpHは約5(例えば約5.5~約6.5)である。1実施態様では、開示された実施態様は、弱酸性pH値で優れた自動停止性能を可能にする。
【0036】
研磨組成物は自動停止剤を含む。自動停止剤の例は、同一譲受人の米国特許出願公開第2019/0185716号明細書に開示されている。自動停止剤は、比較的高いパターン除去速度、及び比較的低いブランケット除去速度を容易にし、そしてさらに、基板の平坦化時に、高いパターン除去速度から比較的低いブランケット除去速度への移行を容易にする。例えば、自動停止剤は、立方体状セリア研磨剤粒子に結合されたリガンドであってよい。いくつかの研磨用途では、自動停止剤の濃度は観察結果に影響を与える。それというのは濃度が低いときには、自動停止剤は速度向上剤(例えば「高い」除去速度が観察される)として作用することができ、濃度がより高いときには自動停止挙動が観察される(例えば「停止」除去速度が観察される)からである。したがって、いくつかの自動停止剤は二重作用を有することができる。例えば研磨組成物がピコリン酸を低濃度で含む場合には、ピコリン酸は速度向上剤として機能することができる。しかしながら、研磨組成物がピコリン酸をより高濃度で含む場合には、ピコリン酸は自動停止剤として機能することができる。例えば、ピコリン酸は約1000質量ppm未満のユースポイント濃度において、速度向上剤として機能することができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施態様では、自動停止剤は式Q-Bを有する。式中、Qは置換型又は無置換型の疎水性基、又は立体障害付与基であり、そしてBは結合基、例えば-C(O)-C-OH、-C(O)-C-C-OH、又は-C(O)-OHである。結合基は-C(O)-X-OHであってもよい。式中XはC1-C2アルキル基である。自動停止剤が本明細書中に記載された式Q-Bの化合物である場合、Qは任意の適宜の疎水性基、又は任意の適宜の立体障害付与基であってよい。好適な疎水性基は飽和及び不飽和疎水性基を含む。疎水性基は線状又は分枝状であってよく、そして線状又は分枝状アルキル基、シクロアルキル基、並びに芳香族基、複素環式基、複素芳香族基、縮合環系を含む環構造、及びこれらの組み合わせを含んでよい。
【0038】
Qはアルキル基であってよい。好適なアルキル基は例えば線状又は分枝状、飽和又は不飽和、置換型又は無置換型の炭化水素基であって、炭素原子数1~30(例えばC1-C30アルキル基、C1-C24アルキル基、C1-C18アルキル基、C1-C12アルキル基、又はC1-C6アルキル基)、例えば炭素原子数が少なくとも1(すなわちメチル)、炭素原子数が少なくとも2(すなわちエチル、ビニル)、炭素原子数が少なくとも3(すなわちプロピル、イソプロピル、プロペニルなど)、炭素原子数が少なくとも4(ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ブタンなど)、炭素原子数が少なくとも5(ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、neo-ペンチルなど)、炭素原子数が少なくとも6(ヘキシルなど)、炭素原子数が少なくとも7、炭素原子数が少なくとも8、炭素原子数が少なくとも9、炭素原子数が少なくとも10、炭素原子数が少なくとも11、炭素原子数が少なくとも12、炭素原子数が少なくとも13、炭素原子数が少なくとも14、炭素原子数が少なくとも15、炭素原子数が少なくとも16、炭素原子数が少なくとも17、炭素原子数が少なくとも18、炭素原子数が少なくとも19、炭素原子数が少なくとも20、炭素原子数が少なくとも25、又は炭素原子数が少なくとも30、の炭化水素基を含む。
【0039】
置換基は、1つ又は2つ以上の炭素結合水素が非水素原子によって置き換えられている基を意味する。例示の置換基は例えばヒドロキシル基、ケト基、エステル、アミド、ハロゲン(例えばフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、アミノ基(第1級、第2級、第3級、及び/又は第4級)、及びこれらの組み合わせを含む。
【0040】
Qはシクロアルキル基であってよい。好適なシクロアルキル基は例えば、炭素原子数3~20の飽和又は不飽和、置換型又は無置換型のシクロアルキル基(例えばC3-C20環式基)を含む。例えば、好適なシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びこれらの組み合わせを含む。加えて、好適な不飽和シクロアルキル基は例えばシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びこれらの組み合わせを含む。
【0041】
Qは芳香族基であってよい。好適な芳香族基は例えば、炭素原子数1~20の置換型又は無置換型の芳香族基を含む。例えば、好適な芳香族基はフェニル、ベンジル、ナフチル、アズレン、アントラセン、ピレン、及びこれらの組み合わせを含む。
【0042】
Qは複素芳香族基であってよい。「ヘテロ原子」は、ここでは炭素原子及び水素原子以外の任意の原子と定義される。好適なヘテロ原子含有官能基は例えば、ヒドロキシル基、カルボン酸基、エステル基、ケトン基、アミノ基(例えば第1級、第2級、及び第3級アミノ基)、アミド基、イミド基、チオールエステル基、チオエーテル基、ニトリル基、ニトロス基、ハロゲン基、及びこれらの組み合わせを含む。
【0043】
好適な複素環式基は例えば窒素、酸素、イオウ、リン、ホウ素、及びこれらの組み合わせを含有する、炭素原子数1~20の環式炭化水素化合物を含む。複素環式化合物は飽和及び不飽和、置換型又は無置換型であってよい。複素環式化合物は、当該環系の部分として1つ又は2つ以上のヘテロ原子(例えばN、O、S、P又はB)が含有される5、6又は7員環化合物を意味する。例示された複素環式化合物は例えば、トリアゾール、アミノトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール-5-カルボン酸、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-5-ヒドラジノ-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、チアゾール、2-アミノ-5-メチルチアゾール、2-アミノ-4-チアゾール酢酸、複素環式N-オキシド、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド、4-メチルモルホリン-N-オキシド、及びピコリン酸N-オキシド、及びこれに類するものを含む。他の例示の複素環式化合物は例えば、位置異性体及び立体異性体を含むピロン化合物、ピリジン化合物、ピロリジン、デルタ-2-ピロリン、イミダゾリジン、デルタ-2-イミダゾリン、デルタ-3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、インドリン、イソインドリン、クロマン、イソクロマン、及びこれらの組み合わせを含む。
【0044】
好適な複素芳香族基は例えば、ピリジン、チオフェン、フラン、ピロール、2H-ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソキサゾール、フラザン、イソチアゾール、ピラン(2H)、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、イソベンゾフラン、インドリジン、インドール、3H-インドール、1H-インダゾール、プリン、イソインドール、4aH-カルバゾール、カルバゾール、ベータ-カルボリン、2H-クロメン、4H-キノリジン、イソキノリン、キノリン、キノキサリン、1,8-ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、キサンテン、フェノキサチイン、フェノチアジン、フェナジン、ペリミジン、1,7-フェナントロリン、フェナントリジン、アクリジン、及びこれらの組み合わせを含む。
【0045】
いくつかの実施態様では、Qは1つ又は2つ以上の置換基で置換されている。好適な置換基は例えば、本明細書中に記載された任意の適宜の化合物/基を含んでよい。例えば、好適な置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環式基、複素芳香族基、及びこれらの組み合わせを含んでよい。
【0046】
いくつかの実施態様では、Qは無置換型である。他の実施態様では、Qは立体障害付与基である。例えば、Qは特に疎水性ではなく、さもなければより小さなQ基を有する関連分子内で発生するであろう化学反応又は相互作用を防止する嵩高な成分であってよい。このようなQ基を有する自動停止剤の一例としては、マルトール、エチルマルトール、及びコウジ酸が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施態様では、結合基Bは、カルボン酸基、ヒドロキサム酸基、ヒドロキシルアミン基、ヒドロキシル基、ケト基、硫酸基、リン酸基、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0048】
いくつかの実施態様では、自動停止剤Q-Bは、コウジ酸、マルトール、エチルマルトール、プロピルマルトール、ヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸(ベンゾヒドロキサム酸)、チグリン酸、アンゲリカ酸、サリチルヒドロキサム酸、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、コーヒー酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、及びこれらの組み合わせから選択される。言うまでもなく、式Q-Bの自動停止剤の塩も、本発明の研磨組成物中に使用するのに適している。
【0049】
研磨組成物は任意の適量の自動停止剤(例えば式Q-Bの化合物)を含んでよい。組成物の自動停止剤含有量があまりにも少ない場合には、組成物は好適な自動停止挙動を呈することができない。反対に組成物の自動停止剤含有量があまりにも多い場合には、組成物は望ましくない性能(例えば低い除去速度)を呈することがあり、コスト効率が良くないことがあり、且つ/又は安定性を欠くことがある。本発明の1つの有利な特性は、停止剤を立方体状セリア研磨剤粒子との組み合わせで使用すると、より高濃度の自動停止剤の使用が可能になることである。このような本発明の組成物は、優れたアクティブ除去速度、優れた自動停止挙動、及び優れた平坦化を可能にするので有利である。
【0050】
例えば、研磨組成物はユースポイントにおいて約10質量ppm(0.001質量パーセント)以上(例えば、約20質量ppm以上、約50質量ppm以上、約100質量ppm以上、約200質量ppm以上、約250質量ppm以上、又は約500質量ppm以上)の自動停止剤を含んでよい。したがって、研磨組成物はユースポイントにおいて、約10質量ppm~約2質量パーセントの自動停止剤を含んでよい。例えば、研磨組成物はユースポイントにおいて、約20質量ppm~約1質量パーセント(10,000ppm)(例えば、約50質量ppm~約10,000質量ppm、約100質量ppm~約10,000質量ppm、約200質量ppm~約5000質量ppm、又は約250質量ppm~約2500質量ppm)の自動停止剤を含んでよい。ある特定の有利な実施態様では、研磨組成物はユースポイントにおいて、約500質量ppm~約2000質量ppmの自動停止剤を含む。
【0051】
研磨組成物はさらにカチオン性ポリマー(例えば平坦化剤又はトポグラフィ制御剤とも呼ばれる)を含んでよい。カチオン性ポリマーは実質的に任意の適宜のカチオン性ポリマーを含んでよく、そして少なくとも1種のカチオン性モノマーと少なくとも1種の非イオン性モノマーを含むカチオン性ホモポリマー及び/又はカチオン性コポリマーから選択されてよい。
【0052】
カチオン性ホモポリマーは、第4級アミン基を繰り返し単位として含むカチオン性モノマー繰り返し単位を含む任意の適宜のカチオン性ホモポリマーであってよい。第4級化アミン基は非環式であってよく、あるいは環構造内へ組み込まれていてよい。第4級化アミン基は、アルキル、アルケニル、アリール、又はアリールアルキル基から独立して選択された4つの基で置換された四置換型窒素原子を含む。環構造内に組み込まれる場合、第4級化アミン基は、窒素原子を含みさらに上述の2つの基で置換された複素環式飽和環、又は窒素原子に結合された上記さらなる基を有する複素アリール基(例えばイミダゾール又はピリジン)を含む。第4級化アミン基は正電荷(すなわち、会合アニオン分を有するカチオン)を有している。これはまた、カチオン性ポリマーをアルキル化、アシル化、エトキシル化、又は他の化学反応によってさらに改質し、これによりカチオン性ポリマーの溶解度、粘度、又は他の物理的パラメータを変更することに適している。好適な第4級化アミンモノマーは、例えば第4級化ビニルイミダゾール(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(ビニルイミダゾール)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(MADQUAT)、ジアリルジメチルアンモニウム(DADMA)、メタクリルアミドプロピルメチルアンモニウム(MAPTA)、第4級化ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、及びこれらの組み合わせを含む。言うまでもなく、MADQUAT、DADMA、MAPTA、及びDMAEMAは共通して対アニオン、例えばカルボン酸塩(例えば酢酸塩)又はハロゲン化物アニオン(例えば塩化物)を含む。開示された実施態様はこれに関して限定されない。
【0053】
カチオン性ポリマーは、(例えば前段落に記載された)少なくとも1種のカチオン性モノマー及び少なくとも1種の非イオン性モノマーを含むコポリマーであってもよい。好適な非イオン性モノマーの非限定的な例としては、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、アクリルアミド、ビニルアルコール、ポリビニルホルマル、ポリビニルブチラール、ポリ(ビニルフェニルケトン)、ビニルピリジン、ポリアクロレイン、エチレン、プロピレン、スチレン、エピクロロヒドリン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
カチオン性ポリマーの例は、例えばポリ(ビニルイミダゾール)、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)(ポリMADQUAT)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)(例えばポリDADMAC)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム-コ-アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアミン-コ-エピクロロヒドリン)、ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-alt-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素](すなわちポリクオタニウム-2)、ビニルピロリドンと第4級化ジメチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマー(すなわちポリクオタニウム-11)、ビニルピロリドンと第4級化ビニルイミダゾールとのコポリマー(すなわちポリクオタニウム-16)、ビニルカプロラクタムとビニルピロリドンと第4級化ビニルイミダゾールとのターポリマー(すなわちポリクオタニウム-46)、及び3-メチル-1-ビニルイミダゾリウムメチルスルフェート-N-ビニルピロリドンコポリマー(すなわちポリクオタニウム-44)を含む。加えて、好適なカチオン性ポリマーは、パーソナルケア用カチオン性ポリマー、例えばLuviquat(登録商標)Supreme、Luviquat(登録商標)Hold、Luviquat(登録商標)UltraCare、Luviquat(登録商標)FC 370、Luviquat(登録商標)FC 550、Luviquat(登録商標)FC 552、Luviquat(登録商標)Excellence、及びこれらの組み合わせを含む。
【0055】
ある特定の有利な実施態様では、カチオン性ポリマーはポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)、例えばポリMADQUAT (例えばAlco 4773)、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、例えばポリ(ビニルイミダゾリウム)メチルスルフェート、及びイミダゾリウム化合物、例えばLuviquat(登録商標)Ultracareを含んでよい。
【0056】
ある特定の実施態様では、カチオン性ポリマーはこれに加えて、又はこの代わりに、アミノ酸モノマーを含んでよい(このような化合物はポリアミノ酸化合物と呼ばれることもある)。好適なポリアミノ酸化合物は、例えばポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリアラニン、ポリグリシン、ポリチロシン、ポリプロリン、及びポリリシンを含む実質的に任意の適宜のアミノ酸モノマー基を含んでよい。ある特定の実施態様では、ポリリシンが好ましいカチオン性ポリマーであり得る。言うまでもなく、ポリリシンは、D-リシン及び/又はL-リシンから成るε-ポリリシン及び/又はα-ポリリシンを含んでよい。ポリリシンはこのようにα-ポリ-L-リシン、α-ポリ-D-リシン、ε-ポリ-L-リシン、ε-ポリ-D-リシン、及びこれらの組み合わせを含んでよい。ある特定の実施態様では、ポリリシンはε-ポリ-L-リシンであってよい。また言うまでもなく、ポリアミノ酸化合物は、任意の利用可能な形態で使用することができる。例えば、ポリアミノ酸の代わりに、(又はこれに加えて)共役酸又は塩基及び塩の形態を用いることもできる。
【0057】
カチオン性ポリマーはまた(又はこの代わりに)誘導体化ポリアミノ酸(すなわち誘導体化アミノ酸モノマー単位を含有するカチオン性ポリマー)を含んでもよい。例えば、誘導体化ポリアミノ酸は誘導体化ポリアルギニン、誘導体化ポリオルニチン、誘導体化ポリヒスチジン、及び/又は誘導体化ポリリシンを含んでよい。CMP組成物は米国仮特許出願第62/958,033号明細書に開示されている。これは全体的に本明細書中に参照により援用される。
【0058】
このような実施態様では、誘導体化アミノ酸モノマーは、誘導体化アミノ酸モノマーのアルファアミノ基に結合された誘導基を含む。誘導基は、例えばアルキルカルボニル基、二価カルボアシル基、アルキル尿素基、アルキルスルホネート基、アルキルスルホン基、及びアルキルエステル基を含む、実質的に任意の適宜の基を含んでよい。
【0059】
アルキルカルボニル基の例は、アセチル基、ピバロイル基、エチルカルボニル基、及びこれに類するものを含む。二価カルボアシル基の例はスクシニル基、オクテニルスクシニル基、グルタル基、メチルスクシニル基、及びこれに類するものを含む。二価カルボアシル基の中では、スクシニル基及びグルタル基が溶解度により好ましいことがある。アクリル尿素基の例はエチル尿素、ブチル尿素、シクロヘキシル尿素、及びこれに類するものを含む。アルキルスルホネート基の例は、メチルスルホネート、ジメチルスルホネート、エチルスルホネート、プロピルスルホネート、ブチルスルホネート、ペンタスルホネート、及びこれに類するものを含む。アルキルスルホン基の例は、メチルスルホン、エチルスルホン、プロピルスルホン、ブチルスルホン、ペンタスルホン、及びこれに類するものを含む。アルキルエステル基の例はメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンタエステル、及びこれに類するものを含む。
【0060】
カチオン性ポリマーは存在するならば、任意の適宜の濃度で研磨組成物中に存在してよい。本発明の1つの有利な特性は、カチオン性ポリマーを立方体状セリア研磨剤粒子との組み合わせで使用すると、より高濃度のカチオン性ポリマーの使用が可能になることである。このような本発明の組成物は、優れたアクティブ除去速度、優れた自動停止挙動、及び優れた平坦化を可能にするので有利である。
【0061】
カチオン性ポリマー濃度が、選択された特定のカチオン性ポリマーに強く依存し、そしてまた立方体状セリア研磨剤粒子濃度及び自動停止剤濃度にも依存し得ることが判っている。大まかに言えば、ユースポイントにおけるカチオン性ポリマーの濃度は、約1質量ppm~約1000質量ppm(例えば約5質量ppm~約500質量ppm)である。例えば、カチオン性ポリマーがポリ(ビニルイミダゾリウム)化合物、例えばポリ(ビニルイミダゾリウム)メチルスルフェートである場合、組成物はユースポイントにおいて約1質量ppm~約75質量ppmを含んでよい。例えば、カチオン性ポリマーの濃度は、約5質量ppm~約75質量ppm(例えば約5質量ppm~約50質量ppm、約5質量ppm~約40質量ppm、又は約10質量ppm~約40質量ppm)であってよい。
【0062】
別の例では、カチオンポリマーがポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)ハリド、例えばポリMADQUAT、又はイミダゾリウム化合物、例えばLuviquat(登録商標)Ultracareを含む場合には、組成物はユースポイントにおいて約25質量ppm~約1000質量ppmを含んでよい。例えば、カチオン性ポリマーの濃度は約75質量ppm~約500質量ppm(例えば約100質量ppm~約500質量ppm、約150質量ppm~約500質量ppm、又は約200質量ppm~約400質量ppm)であってよい。
【0063】
さらに別の例において、カチオン性ポリマーがポリアミノ酸化合物、例えばε-ポリ-D-リシンを含む場合、組成物は、ユースポイントにおいて約5質量ppm~約500質量ppmを含んでよい。例えばカチオン性ポリマーの濃度は、約5質量ppm~約400質量ppm(例えば約10質量ppm~約300質量ppm、約15質量ppm~約200質量ppm、又は約20質量ppm~約200質量ppm)であってよい。
【0064】
研磨組成物はさらに(カチオン性ポリマーに加えて)非ポリマー系カチオン性化合物を含んでもよい。好適なカチオン性化合物は、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド、リシン、3-メタクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウム、3-アクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートベンジル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジル、及びこれらの組み合わせを含む。
【0065】
言うまでもなく、3-メタクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウム、3-アクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートベンジル、及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジルは、一般には対イオン、例えばカルボキシレート又はハロゲン化物アニオンと一緒に提供される。例えば、ジアリルジメチルアンモニウムはジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)として一般に提供されている。開示された実施態様は、当該対イオンが明示されていない限り、任意の特定の対イオンの使用に関しては限定されない。
【0066】
ある特定の実施態様では、非ポリマー系化合物は好ましくは、リシン、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウム、及びこれらの混合物を含む。下に開示される1実施態様では、研磨組成物は有利にはジアリルジメチルアンモニウムを含み、そして最も好ましくはDADMACを含む。
【0067】
使用時には、研磨組成物は、(例えば使用される特定の化合物及び他の成分、及び組成物中のこれらの成分の量に応じて)実質的に任意の適量の非ポリマー系カチオン製化合物を含んでよい。ある特定の実施態様では、非ポリマー系カチオン性化合物の量は、ユースポイントにおいて約1質量ppm~約1000質量ppm(例えば約2質量ppm~約500質量ppm、約5質量ppm~約200質量ppm、又は約10質量ppm~約100質量ppm)であってよい。
【0068】
研磨組成物はさらに、研磨速度制御剤を含んでよい。研磨速度制御剤は研磨速度向上剤(例えば酸化物パターン上の研磨速度を向上させる)又は研磨速度抑制剤(例えばトレンチ酸化物上の研磨速度を抑制する)であってよい。研磨速度向上剤は例えば、研磨粒子又は基体を活性化するカルボン酸化合物を含んでよい。好適な速度向上剤は、例えばピコリン酸、ニコチン酸、キナルジン酸、イソ-ニコチン酸、酢酸、及び4-ヒドロキシ安息香酸を含む。上記のように、ピコリン酸は、濃度に応じて速度向上剤又は抑制剤として機能することができ、そして(例えば下記例において開示されるような)ある特定の実施態様において有利であり得る。
【0069】
研磨組成物は実質的に任意の適量の速度制御剤を含んでよい。1実施態様では、研磨組成物はユースポイントにおいて、約10質量ppm(0.001質量パーセント)~約1質量パーセント(例えば約50質量ppm~約0.5質量パーセント、約100質量ppm~約0.25質量パーセント、又は約200質量ppm~約1000質量ppm)の速度制御剤を含む。
【0070】
研磨組成物はさらに、例えば不飽和カルボン酸、例えば不飽和モノ酸を含む除去速度抑制剤(例えば窒化ケイ素抑制剤)を含んでもよい。好適な不飽和モノ酸は例えばアクリル酸、2-ブテン酸(クロトン酸)、2-ペンテン酸、トランス-2-ヘキセン酸、トランス-3-ヘキセン酸、2-ヘキシン酸、2,4-ヘキサジエン酸、ソルビン酸カリウム、トランス-2-メチル-2-ブテン酸、3,3-ジメチルアクリル酸、及びこれらの組み合わせをこれらの立体異性体を含めて含んでよい。下に開示された1実施態様では、除去速度抑制剤はクロトン酸である。
【0071】
使用時には、研磨組成物は、(例えば使用される特定の化合物及び他の成分、及び組成物中のこれらの成分の量に応じて)実質的に任意の適量の除去速度抑制剤を含んでよい。ある特定の実施態様では、除去速度抑制剤の量は、ユースポイントにおいて約10質量ppm~約1質量ppm(10000質量ppm)(例えば約20質量ppm~約5000質量ppm、約50質量ppm~約2000質量ppm、又は約100質量ppm~約1000質量ppm)であってよい。
【0072】
研磨組成物はさらにpH調節剤及び/又はpH緩衝剤の一方又は両方を含んでよい。pH調節剤は実質的に任意の定義のpH調節剤、例えばアルキルアミン、アルコールアミン、第4級アミン水酸化物、アンモニア、又はこれらの組み合わせであってよい。ある特定の実施態様では、好適なpH調節剤はトリエタノールアミン(TEA)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH又はTMA-OH)、又はテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH又はTEA-OH)を含んでよい。1つの有利な実施態様では、pH調節剤はトリエタノールアミンである。研磨組成物は、上記pH範囲内に研磨組成物のpHを到達させ且つ/又は維持するのに十分な濃度のpH調節剤を含んでよい。1実施態様では、研磨組成物は、ユースポイントにおいて約100質量ppm~約1質量パーセントのpH調節剤(例えばトリエタノールアミン)を含む。
【0073】
研磨組成物は実質的に任意の適宜の緩衝剤、例えばリン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩、アゾール、及びこれに類するものを含んでよい。ある特定の有利な実施態様では、pH緩衝剤はベンゾトリアゾール又はビストリスメタンを含んでよい。研磨組成物は、上記pH範囲内のpHにおいて所望の緩衝能力を提供するのに十分な濃度のpH緩衝剤を含んでよい。ある特定の実施態様では、研磨組成物は、ユースポイントにおいて約100質量ppm~約1質量パーセントのpH調節剤(例えばトリエタノールアミン)を含む。
【0074】
研磨組成物はさらに他の任意の添加剤、例えば二次的な研磨速度加速剤又は抑制剤、分散剤、コンディショナ、スケール阻害剤、キレート剤、安定剤、及び殺生物剤を含む添加剤を含んでよい。このような添加剤は純粋に任意である。開示された実施態様はそのようには限定されず、このような添加剤のいずれか1種又は2種以上の使用を必要とはしない。
【0075】
研磨組成物は任意にはさらに殺生物剤を含んでよい。殺生物剤は実質的に任意の適宜の殺生物剤、例えばイソチアゾリノン殺生物剤、例えばメチルイソチアゾリノン又はベンズイソチアゾロンを含んでよい。研磨組成物内の殺生物剤の量は典型的には、ユースポイントにおいて約1質量ppm~約100質量ppm、例えば約5質量ppm~約75質量ppmである。
【0076】
研磨組成物は、任意の適宜の技術を用いて調製することができる。これらの技術の多くは当業者に知られている。研磨組成物はバッチ法又は連続法で調製することができる。大まかに言えば、研磨組成物はその成分を任意の順番で合体することにより調製することができる。本明細書中に使用される「成分(component)」は個々の成分(ingredients)(例えば研磨剤粒子、自動停止剤、カチオン性ポリマー、及び任意の添加剤)を含む。例えば、自動停止剤及びカチオン性ポリマーを、水性キャリア(例えば水)に所望の濃度で添加することができる。次いでpHを(所望の通りに)調節し、そして立方体状セリア研磨剤を所望の濃度で添加することにより、研磨組成物を形成することができる。研磨組成物は使用前に調製することができ、この場合使用直前(例えば使用前の約1分以内、又は使用前の約1時間以内、又は使用前の約1日又は約7日前)に1種又は2種以上の成分を研磨組成物に添加する。研磨組成物は(例えば研磨パッド上の)研磨作業中に、基板表面において成分を混合することにより、調製することもできる。
【0077】
ある特定の実施態様では、研磨組成物は「2パック」システムとして提供することができる。例えば、第1パックは立方体状セリア研磨剤と、速度制御添加剤と、他の任意の成分とを含んでよく、そして第2パックは自動停止剤と、カチオン性ポリマーと、他の任意の成分とを含んでよい。第1及び第2パックは別個に出荷し、研磨の前(研磨の1時間以内又は1日以内)に、又はCMP作業中に研磨パッド上で合体させることができる。
【0078】
本発明の研磨組成物は濃縮物として提供されてよい。濃縮物は使用前に適量の水で希釈されるように意図されている。このような実施態様では、研磨組成物濃縮物は、濃縮物を適量の水で希釈すると、研磨組成物の各成分が、各成分に関して上述した適切な範囲内の量で研磨組成物中に存在することになるような量で、立方体状セリア研磨剤粒子と上記他の成分とを含むことができる。例えば、立方体状セリア研磨剤粒子、自動停止剤、カチオン性ポリマー、及び他の任意の添加剤はそれぞれ、各成分に関して上述したユースポイント濃度の約3倍(例えば約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約10倍、約15倍、約20倍、又は約25倍)である量で研磨組成物中に存在することができるので、濃縮物が等体積の水(例えば2等体積の水、3等体積の水、4等体積の水、5等体積の水、6等体積の水、7等体積の水、9等体積の水、14等体積の水、19等体積の水、又は24等体積の水)で希釈されると、各成分は各成分に関して上述した範囲内の量で研磨組成物中に存在することになる。
【0079】
研磨組成物が2パックシステムとして提供される実施態様では、パックの一方又は両方は濃縮物として提供され、他方のパックとの混合前に希釈を必要とする。例えば、1実施態様では、第1パックは濃縮物として提供されて、濃縮物は上記のユースポイント濃度の約3倍(例えば約5倍、約8倍、約10倍、約15倍、又は約20倍)高い濃度で立方体状セリア研磨剤粒子を含むようになっている。濃縮された第1パックは、第2パックとの合体前に適量の水と混合させることができる。同様に、第2パックも濃縮物として提供されて、濃縮物は上記のユースポイント濃度の約3倍(例えば約5倍、約8倍、約10倍、約15倍、又は約20倍)高い、自動停止剤及びカチオン性ポリマー濃度を含むようになっている。このような実施態様では、濃縮された第2パックは、第1パックとの合体前に適量の水と混合させることができる。ある特定の実施態様では、第1パック及び第2パックの両方は、合体前に水で希釈することができる。開示された実施態様はこれらに関して限定されない。
【0080】
本発明の研磨方法は具体的には、例えばプラテン及びプラテンに固定されたパッドを含む化学機械研磨(CMP)装置と併せて用いるのに特に適している。当業者に知られているように、基板を研磨パッド及び本発明の研磨組成物と接触させた時に、基板の研磨を行い、次いで研磨パッドと基板とを相対運動させることにより、基板の少なくとも一部を研削処理する。本発明の方法は、上記本発明の組成物を用意し、基板(例えばウエハー)を本発明の研磨組成物と接触させ、基板に対して研磨組成物を動かし、そして基板を研削処理することによって、基板から酸化ケイ素材料の一部を除去し、これにより基板を研磨する。
【0081】
基板は大まかに言えば、多くがよく知られているパターン化誘電層を含む。パターン化誘電層は、酸化ケイ素及び酸化ケイ素系誘電材料の種々の形態を含む。例えば、酸化ケイ素及び酸化ケイ素系誘電層を含む誘電材料は、テトラエトキシシラン(TEOS)、高密度プラズマ(HDP)酸化物、リンケイ酸ガラス(PSG)、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)、高アスペクト比プロセス(HARP)酸化物、スピンオン誘電(SOD)酸化物、化学蒸着(CVD)酸化物、プラズマ支援テトラエチルオルトケイ酸塩(PETEOS)、熱酸化物、又は非ドープ型ケイ酸塩ガラスを含み、これから成り、又は本質的にこれから成る。
【0082】
本発明の方法は、例えば(初期高さを有する)隆起領域と(初期トレンチ厚さを有する)トレンチとの間の初期ステップ高さを低減することを介して、パターン化誘電材料を望ましく平坦化する。この平坦化を効果的且つ効率的に達成するために、本発明の方法は、(アクティブパターン誘電材料の)隆起領域の高い除去速度と、トレンチの誘電材料の著しく低い除去速度とを望ましく有している。本発明の方法が自動停止挙動をも呈することが最も好ましい。
【0083】
本発明の方法の実施中、誘電材料が隆起領域から除去される(そして誘電材料はより少ない量でトレンチから除去され得る)。平坦化は隆起領域の高さを低減するので、隆起領域はトレンチの高さと本質的に同じ「レベル」になる。このように例えば、ステップ高さは1,000オングストローム(Å)未満に(例えば800Å未満、500Å未満、300Å未満、250Å未満に)低減することができる。(研磨により)低減されたステップ高さ(すなわち「残留」ステップ高さ)が約1,000Å未満に達すると、この表面は効果的に平坦化されると考えられる。
【0084】
研磨される基板に応じて、初期ステップ高さは少なくとも1,000Å、例えば少なくとも2,000Å、又は少なくとも5,000Åであってよく、そして著しく大きくてもよく、CMPプロセスのステップ開始前に測定して例えば少なくとも10,000Å、少なくとも20,000Å、少なくとも30,000Å、少なくとも40,000Åであってもよい。
【0085】
CMP作業中、パターン誘電材料の除去速度は当業者には「パターン除去速度」又は「アクティフ除去速度」と呼ばれる。本明細書に記載された方法及び研磨組成物を用いて達成されるアクティブ除去速度は、任意の適宜の速度であってよく、そして任意の所与のプロセス及び基板に対応して、選択された研磨工具パラメータ及びパターン化誘電材料の寸法(例えばピッチ及び幅)に大きな部分において依存する。ある特定の有利な実施態様では、アクティブ除去速度は約4,000Å/min超(例えば約5,000Å/min超、約6,000Å/min超、約10,000Å/min超)である。
【0086】
本発明のCMP作業はまた、トレンチ損失を望ましく低減する。例えば、本発明の方法は約2,000Å未満(例えば約1,500Å未満、約1,000Å未満、約500Å未満、又は約250Å未満)のトレンチ損失を提供することができる。
【0087】
より低いトレンチ損失は、平坦化の改善に効率的に反映され得る。本明細書中に使用される平坦化効率とは、ステップ高さ低減をトレンチ損失で割り算することによって割り算したものを意味する。本発明の方法が提供する平坦化効率は、少なくとも4、好ましくは5又は10超(又は20超、又は50超)であってよい。
【0088】
本発明の方法は自動停止挙動を呈することもできる。自動停止とは、ブランケット誘導材料の除去速度がパターン誘電材料の除去速度よりも著しく低いことを意味する。自動停止挙動は、ブランケット誘導材料の除去速度が約1,000Å/min未満である場合に発生すると考えられる。本発明の方法はしたがって、ブランケット誘電材料除去速度1,000Å/min未満(例えば約500Å/min未満)を呈することができる。
【0089】
別の測定では、ブランケット誘電材料の磁気速度に対するパターン誘電材料のアクティブ除去速度の比を計算することによって、自動停止挙動を測定することができる。高い比は良好な自動停止挙動を示す。本発明の方法はしたがって、約5超(例えば約10超、約20超、又は約50超)の比をもたらすことができる。
【0090】
言うまでもなく、開示は数多くの実施態様を含む。これらの実施態様は下記実施態様を含むが、しかしこれらに限定されはしない。
【0091】
第1実施態様では、化学機械研磨組成物が、液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された立方体状研磨剤粒子と、自動停止剤と、カチオン性ポリマーとを含む。
【0092】
第2実施態様は第1実施態様を含んでよく、前記立方体状セリア研磨剤粒子が、酸化セリウムと酸化ランタンとの混合物を含む。
【0093】
第3実施態様は第1~第2実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記立方体状セリア研磨剤粒子の、ランタン及びセリウムに対するランタンのモル比が約1~約15パーセントである。
【0094】
第4実施態様は第1~第3実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記立方体状セリア研磨剤粒子のBET表面積が約3m2/g~約14m2/gである。
【0095】
第5実施態様は第1~第4実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記立方体状セリア研磨剤粒子の平均粒径が約50~約500nmである。
【0096】
第6実施態様は第1~第5実施態様のいずれか1つを含んでよく、約0.01質量パーセント~約1質量パーセントの立方体状セリア研磨剤粒子を含む。
【0097】
第7実施態様は第1~第6実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記自動停止剤が、前記立方体状セリア研磨剤粒子に結合されたリガンドである。
【0098】
第8実施態様は第1~第7実施態様のいずれか1つを含んでよく、自動停止剤が式Q-Bを有し、式中、Qは置換型又は無置換型の疎水性基、又は立体障害付与基であり、そしてBは立方体状セリア研磨剤粒子に結合された結合基である。このような実施態様では、前記自動停止剤はコウジ酸、マルトール、エチルマルトール、プロピルマルトール、ヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、コーヒー酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、及びこれらの組み合わせを含んでよい。
【0099】
第9実施態様は第1~第8実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記自動停止剤が、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、コウジ酸、ソルビン酸カリウム、又はこれらの組み合わせである。
【0100】
第10実施態様は第1~第9実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記カチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(ビニルイミダゾール)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリクオタニウム-2、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-46、ポリクオタニウム-44、ポリリシン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0101】
第11実施態様は第1~第10実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記カチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(ビニルイミダゾール)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、ポリリシン、又はこれらの組み合わせである。
【0102】
第12実施態様は第1~第11実施態様のいずれか1つを含んでよく、(i)前記立方体状セリア研磨剤粒子のユースポイント濃度が約0.01質量パーセント~約1質量パーセントであり、(ii)前記自動停止剤のユースポイント濃度が約200質量ppm~約5000質量ppmであり、そして(iii)前記カチオン性ポリマーのユースポイント濃度が約5質量ppm~約500質量ppmである。
【0103】
第13実施態様は第1~第12実施態様のいずれか1つを含んでよく、さらにカルボン酸速度向上剤を含む。
【0104】
第14実施態様は第1~第13実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記カルボン酸速度向上剤がピコリン酸、酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸、又はこれらの混合物である。
【0105】
第15実施態様は第1~第14実施態様のいずれか1つを含んでよく、アクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、トランス-2-ヘキセン酸、トランス-3-ヘキセン酸、2-ヘキシン酸、2,4-ヘキサジエン酸、ソルビン酸カリウム、トランス-2-メチル-2-ブテン酸、3,3-ジメチルアクリル酸、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された不飽和カルボンモノ酸速度抑制剤をさらに含む。
【0106】
第16実施態様は第1~第17実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記不飽和カルボンモノ酸速度抑制剤がクロトン酸である。
【0107】
第17実施態様は第1~第16実施態様のいずれか1つを含んでよく、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド、リシン、3-メタクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウム、3-アクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートベンジル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された非ポリマー系カチオン性化合物を含む。
【0108】
第18実施態様は第1~第17実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記非ポリマー系カチオン性化合物が、ジアリルジメチルアンモニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、リシン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、又はこれらの混合物を含む。
【0109】
第19実施態様は第1~第18実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記カチオン性ポリマーがポリリシンを含み、そして前記非ポリマー系化合物がジアリルジメチルアンモニウムを含む。
【0110】
第20実施態様は第1~第19実施態様のいずれか1つを含んでよく、アルキルアミン、アルコールアミン、第4級アミン水酸化物、アンモニア、又はこれらの組み合わせを含むpH調節剤をさらに含む。pH調節剤は例えばトリエタノールアミンを含んでよい。
【0111】
第21実施態様は第1~第20実施態様のいずれか1つを含んでよく、ベンゾトリアゾール又はビストリスメタンをさらに含む。
【0112】
第22実施態様は第1~第21実施態様のいずれか1つを含んでよく、pHが約5~約10である。
【0113】
第23実施態様は第1~第22実施態様のいずれか1つを含んでよく、(i)前記自動停止剤がベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、コウジ酸、ソルビン酸カリウム、又はこれらの組み合わせであり、(ii)前記カチオン性ポリマーがポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)、ポリリシン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、又はこれらの組み合わせであり、そして(iii)前記組成物が、ピコリン酸、酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸、又はこれらの混合物をさらに含む。
【0114】
第24実施態様は第23実施態様を含んでよく、トリエタノールアミン及びベンゾトリアゾールをさらに含む。
【0115】
第25実施態様は第23又は第24実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記自動停止剤がベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、又はこれらの組み合わせであり、そしてpHがユースポイントで約7~約9である。
【0116】
第26実施態様は第23~第25実施態様のいずれか1つを含んでよく、ユースポイントで少なくとも250質量ppmの自動停止剤と、ユースポイントで50質量ppmのカチオン性ポリマーと含む。
【0117】
第27実施態様は第23実施態様を含んでよく、前記自動停止剤がコウジ酸、ソルビン酸カリウム、又はこれらの組み合わせであり、そしてpHがユースポイントで約5~約6.5である。
【0118】
第28実施態様は第1~第22実施態様のいずれか1つを含んでよく、(i)前記自動停止剤がベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、又はこれらの組み合わせであり、そして(ii)前記カチオン性ポリマーがε-ポリ-L-リシン、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、又はこれらの組み合わせである、
【0119】
第29実施態様は第28実施態様を含んでよく、クロトン酸をさらに含む。
【0120】
第30実施態様は第28又は第29実施態様のいずれか1つを含んでよく、ジアリルジメチルアンモニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、リシン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、又はこれらの混合物から成る群から選択された非ポリマー系カチオン性化合物をさらに含む。
【0121】
第31実施態様は第30実施態様を含んでよく、少なくとも250質量ppmの自動停止剤と、少なくとも20質量ppmのカチオン性ポリマーと、少なくとも20質量ppmの非ポリマー系カチオン性化合物とを含む。
【0122】
第32実施態様は、酸化ケイ素誘電材料を含む基板を化学機械研磨する方法を含む。前記方法は、(a)第1実施態様から第31実施態様までのいずれか1つを含む研磨組成物を用意し、(b)前記基板を前記用意された研磨組成物と接触させ、(c)前記基板に対して前記研磨組成物を動かし、そして(d)前記酸化ケイ素誘電材料の一部を前記基板から除去するために前記基板をアブレーション処理し、これにより前記基板を研磨することを含む。
【0123】
第33実施態様は第32実施態様を含んでよく、前記酸化ケイ素誘電材料のトレンチ損失除去に対する、前記基板のパターン化領域内の前記酸化ケイ素誘電材料のアクティブな除去の比が、(d)において約5超である。
【0124】
第34実施態様は第32~33実施態様のうちのいずれか1つを含んでよく、前記自動停止剤がベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、コウジ酸、ソルビン酸カリウム、又はこれらの組み合わせであり、前記カチオン性ポリマーがポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)、ポリリシン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、又はこれらの組み合わせであり、そして前記研磨組成物が、ピコリン酸、酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸、又はこれらの混合物をさらに含む。
【0125】
第35実施態様は第32~33実施態様のうちのいずれか1つを含んでよく、前記自動停止剤がベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、又はこれらの組み合わせであり、前記カチオン性ポリマーがε-ポリ-L-リシン、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、又はこれらの組み合わせである。
【0126】
第36実施態様は第32、第33、又は第34実施態様を含んでよく、ジアリルジメチルアンモニウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、リシン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、又はこれらの混合物から成る群から選択された非ポリマー系カチオン性化合物をさらに含む。
【0127】
第37実施態様は第35又は第36実施態様を含んでよく、前記酸化ケイ素誘電材料のトレンチ損失除去に対する、前記基板のパターン化領域内の前記酸化ケイ素誘電材料のアクティブな除去の比が、(d)において約50超である。
【0128】
第38実施態様は第32~第37実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記研磨組成物を容易することが、(i)研磨濃縮物を用意し、そして(ii)1部の研磨濃縮物に対して少なくとも1部の水で研磨濃縮物を希釈することにより、研磨組成物を得ることを含む。
【0129】
第39実施態様は第32~第37実施態様のいずれか1つを含むことができ、前記研磨組成物を用意することが、(i)第1パックと第2パックとを用意し、第1パックが立方体状セリア研磨剤粒子を含み、第2パックが自動停止剤及びカチオン性ポリマーを含み、そして(ii)第1パックと第2パックとを合体させることにより、前記研磨組成物を得ることを含む。
【0130】
第40実施態様は第39実施態様を含むことができ、第1パック及び第2パックのうちの少なくとも一方が(ii)における合体の前に水で希釈される。
【実施例】
【0131】
下記例は本発明をさらに例示するが、しかしその範囲を限定するものと決して解釈するべきではない。Applied Materials Mirra(登録商標)研磨工具(Applied Materials, Inc.から入手可能)を使用して種々の基板を研磨した。プラテン速度100rpm、ヘッド速度85rpm、ダウンフォース3psi、及びスラリー流量150ml/minで、Mirra(登録商標)上で60秒間にわたってブランケットウエハーを研磨した。同じ条件で80秒間にわたって、パターン化ウエハー研磨した。6ポンドのダウンフォースのSaesol DS8051コンディショナーを使用した現場コンディショニングによって、ウエハーをNexPlanar(登録商標)E6088パッド(Cabot Microelectronics Corporatioから入手可能)上で研磨した。
【0132】
ブランケットテトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ブランケットSiN、及びパターン化TEOSを下記例において研磨した。ブランケットTEOSウエハーはWRS Materialsから入手し、20kÅのTEOS層を含んだ。ブランケットSiNウエハーはAdvantecから入手し、5kÅのPE SiN層を含んだ。パターン化TEOSウエハーはSilyb及びSTI1の10kÅのTEOSパターンウエハーであった。
【0133】
例1
原料酸化セリウム分散体を下記のように調製した。13.1kgの3M硝酸三価セリウム(III)溶液と、0.3kgの3M硝酸ランタン溶液と、2.0kgの68%硝酸(HNO3)溶液と、0.5kgの脱イオン水と、硝酸セリウム(IV)とを、セリウム(総量)に対するセリウム(IV)のモル比0.000055で合体させることにより、硝酸セリウム溶液を調製した。硝酸セリウム溶液を次いで20L容器内で、撹拌及び窒素バブリングによって脱気した。
【0134】
75kgの脱イオン水と、13.1kgの25%水性アンモニアの溶液とを合体させる(これにより硝酸セリウム溶液中のセリウム及びランタンの総量に対するアンモニア水溶液中のNH4OHのモル比は9.0となった)ことにより、水性アンモニア溶液を調製した。水性アンモニア溶液を次いで100L容器のジャケット付き反応器内で、撹拌及び窒素バブリングによって脱気した。
【0135】
次いで窒素パージ下で同じ撹拌を加えながら、硝酸セリウム溶液を周囲温度で水性アンモニア溶液に添加した。反応混合物の温度を次いで80℃に高め、そして18時間にわたってその温度で保持した。次いで反応混合物を冷ましておき、冷却したら、68%硝酸を添加することによりpH2に酸性化した。
【0136】
次いで反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄溶液の導電率が0.04mS/cm未満になったら洗浄を繰り返した。脱イオン水を添加することにより、最終酸化セリウム濃度を10質量パーセントに調節した。立方体状セリア研磨剤粒子は2.5モルパーセントの酸化ランタンと97.5モルパーセントの酸化セリウムとを含んだ。
【0137】
窒素吸着によりBET比表面積が11.8m2/グラムであることを割り出した。平均粒径はHoriba 960によって測定して102nmであり、Malvern Zetasizerによって測定して140nmであった。
【0138】
例2
2種の研磨組成物を試験することにより、ブランケット及びパターン化ウエハー上のTEOS研磨速度と自動停止挙動とを評価した。脱イオン水を有する第1パック(Aパック)と、相応の第2パック(Bパック)とを合体させることにより、各組成物を調製した。Aパックは3500質量ppmのピコリン酸と、75質量ppmのKordex MLXと、2質量パーセントのセリア研磨剤とをpH4.0で含んだ。組成物2Aに関しては、セリア研磨剤は2質量パーセントの対照セリア(同一譲受人の米国特許第9,505,952号明細書の研磨組成物1C中に使用された焼結セリア研磨剤)を含んだ。組成物2Bに関しては、セリア研磨剤は、例1において上述された1質量部の原料セリア分散体と、4質量部の脱イオン水とを含むことにより、2質量%の立方体状セリアを得た。Bパックは同一であり、4000質量ppmのトリエタノールアミンと、1600質量ppmのベンゾトリアゾールと、250質量ppmのポリMADQUATと、1670質量ppmのベンズヒドロキサム酸と、113質量ppmのKordex MLXとをpH8.2で含んだ。
【0139】
1部のAパックを先ず6部の脱イオン水と合体させ、次いでさらに3部のBパックと合体させることにより、0.2質量パーセントのセリア研磨剤と、350質量ppmのピコリン酸と、1200質量ppmのトリエタノールアミンと、480質量ppmのベンゾトリアゾールと、75質量ppmのポリMADQUATとを含むユースポイント組成物を得た。合体したA及びBパックのpHは約7.8であった。
【0140】
上記条件において60秒間にわたってMirra(登録商標)工具上でブランケットTEOSウエハーを研磨した。ブランケットTEOS除去速度が表1に1分当たりのオングストローム(Å/min)で示されている。同じ条件で80秒間にわたってMirra(登録商標)工具上でパターン化ウエハーを研磨した。パターン化ウエハーの結果(トレンチ損失、アクティブ除去、及びステップ高さ)がやはり表1に示されている。ステップ高さは2つのパターンフィーチャに関してオングストローム(Å)で挙げられている(第1の数字は線幅(ミクロン)を意味し、第2の数字はパターン密度を意味する)。
【表1】
【0141】
表1に示された結果から容易に明らかなように、立方体状セリア研磨剤粒子を含む組成物(2B)はアクティブ除去において65%の改善を達成し、そしてステップ高さを改善した(具体的には緻密なフィーチャにおいて)。しかしながら、これらの改善はトレンチ損失の10倍に近い増大によって相殺された。高いブランケット除去速度及び高いトレンチ損失により、組成物2B(立方体状セリア研磨剤粒子を含む)は自動停止組成物ではない。この例に基づいて、当業者には容易に明らかなように、セリア研磨剤と組成物化学特性との複雑な相互作用に起因して、(2Aにおけるような)コンベンショナルな湿潤セリア研磨剤粒子は、自動停止CMP組成物中で(2Bにおけるような)立方体状セリア研磨剤粒子と交換することはできない。
【0142】
例3
10種の研磨組成物を試験することにより、パターン化ウエハー上のTEOS研磨速度と自動停止挙動とを評価した。10種の研磨組成物(3A-3J)は、カチオン性ポリマーレベルを変化させるように選択し、これらを対照組成物1Aと比較した。脱イオン水を有するAパックと、相応のBパックとを合体させることにより、各組成物を調製した。各Aパックは3500質量ppmのピコリン酸と、75質量ppmのKordex MLXと、(Aパック内の2質量パーセントの総セリア濃度に対して)例1において上述した20質量パーセントのセリア分散体とを含んだ。
【0143】
Bパックは4000質量ppmのトリエタノールアミンと、1600質量ppmのベンゾトリアゾールと、カチオン性ポリマーと、1670質量ppmのベンズヒドロキサム酸と、113質量ppmのKordex MLXとをpH8.2で含んだ。カチオン性ポリマーのタイプ及び量は下記表2Aに挙げられている。
【表2A】
【0144】
1部のAパックを先ず6部の脱イオン水と合体させ、次いでさらに3部のBパックと合体させることにより、0.2質量パーセントのセリア研磨剤と、350質量ppmのピコリン酸と、1200質量ppmのトリエタノールアミンと、500質量ppmのベンズヒドロキサム酸と、480質量ppmのベンゾトリアゾールとを含むユースポイント組成物を得た。カチオン性ポリマーのユースポイント量は表2Aに挙げられた量の30パーセントであった。合体したA及びBパックのpHは約7.8であった。
【0145】
上記条件において60秒間にわたってMirra(登録商標)工具上でブランケットTEOSウエハーを研磨した。ブランケットTEOS除去速度が表2Bに1分当たりのオングストローム(Å/min)で示されている。同じ条件で80秒間にわたってMirra(登録商標)工具上でパターン化ウエハーを研磨した。パターン化ウエハーの結果(トレンチ損失、アクティブ除去、及びステップ高さ)がやはり表2Bに示されている。ステップ高さは2つのパターンに関してオングストローム(Å)で挙げられている(第1の数字は線幅(ミクロン)を意味し、第2の数字はパターン密度を意味する)。
【表2B】
【0146】
表2Bに示された結果から容易に明らかなように、ポリMADQUAT及びポリクオタニウム-44カチオン性ポリマーを含む組成物3B及び3Eは優れた自動停止性能をもたらす。さらに、組成物3C,3F及び3Jは、ブランケット除去速度及びトレンチ損失の両方に対するアクティブ除去速度の優れた比をもたらす。僅かな変更を加えることにより、これらの組成物も同様に優れた自動停止性能をもたらす。
【0147】
例4
8種の研磨組成物を試験することにより、パターン化ウエハー上のTEOS研磨速度と自動停止挙動とを評価した。8種の研磨組成物(3A-3J)は、自動停止剤レベルを変化させるように選択し、これらを対照組成物2Aと比較した。脱イオン水を有するAパックと、相応のBパックとを合体させることにより、各組成物を調製した。各Aパックは3500質量ppmのピコリン酸と、75質量ppmのKordex MLXと、(Aパック内の2質量パーセントの総セリア濃度に対して)例1において上述した20質量パーセントのセリア分散体とを含んだ。
【0148】
Bパックは4000質量ppmのトリエタノールアミンと、1600質量ppmのベンゾトリアゾールと、250質量ppmのポリMADQUATと、自動停止剤と、113質量ppmのKordex MLXとを含んだ。自動停止剤のタイプ及び量は下記表3Aに挙げられている。
【表3A】
【0149】
1部のAパックを先ず6部の脱イオン水と合体させ、次いでさらに3部のBパックと合体させることにより、0.2質量パーセントのセリア研磨剤と、350質量ppmのピコリン酸と、1200質量ppmのトリエタノールアミンと、75質量ppmのポリMADQUATと、480質量ppmのベンゾトリアゾールとを含むユースポイント組成物を得た。自動停止剤のユースポイント量は、表3Aに挙げられた量の30パーセントであった。合体したA及びBパックのpHは、組成物4A~4Dでは約7.8であり、組成物4E~4Hでは約5.5であった。
【0150】
上記条件において60秒間にわたってMirra(登録商標)工具上でブランケットTEOSウエハーを研磨した。ブランケットTEOS除去速度が表3Bに1分当たりのオングストローム(Å/min)で示されている。同じ条件で80秒間にわたってMirra(登録商標)工具上でパターン化ウエハーを研磨した。パターン化ウエハーの結果(トレンチ損失、アクティブ除去、及びステップ高さ)がやはり表3Bに示されている。ステップ高さは2つのパターンフィーチャに関してオングストローム(Å)で挙げられている(第1の数字は線幅(ミクロン)を意味し、第2の数字はパターン密度を意味する)。
【表3B】
【0151】
表3Bに示された結果から容易に明らかなように、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、及びソルビン酸カリウム自動停止剤を含む組成物4B,4D及び4Hは優れた自動停止性能をもたらす。さらに、組成物4Fは、ブランケット除去速度及びトレンチ損失の両方に対するアクティブ除去速度の優れた比をもたらす。僅かな変更を加えることにより、この組成物も同様に優れた自動停止性能をもたらす。
【0152】
例5
2種の研磨組成物を試験することにより、ブランケット及びパターン化ウエハー上のTEOS研磨速度と自動停止挙動とを評価した。脱イオン水を有する第1パック(Aパック)と、相応の第2パック(Bパック)とを合体させることにより、各組成物を調製した。Aパックは3500質量ppmのピコリン酸と、75質量ppmのKordex MLXと、2質量パーセントのセリア研磨剤とをpH4.0で含んだ。組成物5Aに関しては、セリア研磨剤は2質量パーセントの対照セリア(同一譲受人の米国特許第9,505,952号明細書の研磨組成物1C中に使用された焼結セリア研磨剤)を含んだ。組成物5Bに関しては、セリア研磨剤は、例1において上述された1質量部の原料セリア分散体と、4質量部の脱イオン水とを含んだ。Bパックは同一であり、4000質量ppmのトリエタノールアミンと、1600質量ppmのベンゾトリアゾールと、250質量ppmのポリMADQUATと、3340質量ppmのソルビン酸カリウムと、113質量ppmのKordex MLXとをpH6で含んだ。
【0153】
1部のAパックを先ず6部の脱イオン水と合体させ、次いでさらに3部のBパックと合体させることにより、0.2質量パーセントのセリア研磨剤と、350質量ppmのピコリン酸と、1200質量ppmのトリエタノールアミンと、480質量ppmのベンゾトリアゾールと、1000質量ppmのソルビン酸カリウムと、75質量ppmのポリMADQUATとを含むユースポイント組成物を得た。合体したA及びBパックのpHは約5.5であった。
【0154】
上記条件において60秒間にわたってMirra(登録商標)工具上でブランケットTEOSウエハーを研磨した。ブランケットTEOS除去速度が表4に1分当たりのオングストローム(Å/min)で示されている。同じ条件で80秒間にわたってMirra(登録商標)工具上でパターン化ウエハーを研磨した。パターン化ウエハーの結果(トレンチ損失、アクティブ除去、及びステップ高さ)がやはり表4に示されている。
【表4】
【0155】
表4に示された結果から容易に明らかなように、立方体状セリア研磨剤粒子(2B)を含む組成物は、優れた自動停止性能を達成した。ブランケットに対するアクティブ除去比は12超であり、ステップ高さは緻密フィーチャ上で400Å未満であった。反対に、対照セリア研磨剤を使用した組成物は極めて低い除去速度を呈し、パターン化ウエハーの平坦化をもたらさなかった。
【0156】
例6
6種の研磨組成物を試験することにより、種々のパターンにわたるパターン化ウエハー上のアクティブ損失を評価した。当業者に知られているように、アクティブ損失は、研磨前のアクティブ厚から研磨後のアクティブ厚を差し引いたものと定義される。研磨組成物は組成物2A,3B,3E,4B,4D,及び4Hと同一である。上記のように、組成物2Bは対照セリア研磨剤を含むのに対して、組成物3B,3E,4B,4D,及び4Hは、立方体状セリア研磨剤粒子を含んだ。アクティブ損失は
図4において、パターンのタイプに対してÅの単位でプロットされた。
【0157】
図4に示された結果から容易に明らかなように、立方体状セリア研磨剤粒子を含む組成物は、種々のパターン密度にわたってアクテイブ損失がより大きいことにより定義されるように、優れた平坦化を達成する。さらに、立方体状セリア研磨剤粒子を含む組成物はまた、種々のパターン密度にわたる最大プロットアクティブ損失と最小プロットアクティブ損失との間の差によって定義されるように、優れた平坦化を達成する。理論に縛られたくはないが、立方体状セリア研磨剤粒子は、より高い濃度の自動停止剤及び/又はカチオン性ポリマーによって良好に機能し、ひいては優れた平坦化を達成すると考えられる。
【0158】
例7
2種の研磨組成物を試験することにより、ブランケット及びパターン化ウエハー上のTEOS及びSiN研磨速度と自動停止挙動とを評価した。研磨製剤(Aパック)と相応の添加製剤(Bパック)とを7:3体積比で合体させることにより、組成物7A、7B及び7Cのそれぞれを調製した。各組成物のユースポイントpHは6.2であった。研磨製剤(Aパック)の組成物が表5Aに示され、これに対して添加製剤(Bパック)の組成物が表5Bに示されている。全ての組成物は質量に基づいている(例えば質量パーセント又は質量ppm)。
【表5A】
【表5B】
【0159】
プラテン速度73rpm、ヘッド速度67rpm、ダウンフォース3.5psi、及びスラリー流量250ml/minで、DuPont IC1010(登録商標)パッドを使用してApplied Materials Reflexion(登録商標)工具上で60秒間にわたってブランケットTEOS及びSiNウエハーを研磨した。ブランケットTEOS及びSiNの除去速度が表5Cに、1分当たりのオングストローム(Å/min)で示されている。同じ条件で20秒間にわたってReflexion(登録商標)工具上でパターン化ウエハーを研磨した。パターン化ウエハーの結果(トレンチ損失、及びアクティブ除去)がやはり表5Cに示されている。
【表5C】
【0160】
表5Cに示された結果から容易に明らかなように、組成物7Bは優れた自動停止性能を呈する。この場合、アクティブ除去量が高く(4000Å近く)、そしてブランケット除去速度が極めて低く、これによりブランケットに対するアクティブ除去比は100近くになり、そしてトレンチ損失に対するアクティブ除去比は14になる。組成物7Cも、アクティブ除去量が低いにもかかわらず、優れた自動停止性能を呈する。組成物7Cによって達成された、ブランケットに対するアクティブ除去の比、及びトレンチ損失に対するアクティブ除去の比は100超であった。
【0161】
例8
3種の組成物を試験することにより、立方体状セリア研磨剤粒子中のランタンドーピングのレベルがTEOS除去速度に与える影響を評価した。組成物8Aは0.28質量パーセントの対照セリア(Rhodiaから商業的に入手可能な湿式プロセスセリアHC60(登録商標))を含んだ。組成物8Bは、2.5モルパーセントの酸化ランタンを含む0.28質量パーセントの立方体状セリア研磨剤粒子を含み、例1において上述した原料セリア分散体を、34部の水対1部の原料セリア分散体で希釈することにより調製した。組成物8Cは、10モルパーセントの酸化ランタンを含む0.28質量パーセントの立方体状セリア研磨剤粒子を含み、下記段落において説明するセリア分散体を、34部の水対1部のセリア分散体で希釈することにより調製した。組成物8A~8CのそれぞれのpHは4であった。
【0162】
酸化セリウム分散体を下記の通りに調製した。11.5kgの3M硝酸三価セリウム(III)溶液と、1.3kgの3M硝酸ランタン溶液と、1.86kgの68%硝酸(HNO3)溶液と、0.5kgの脱イオン水と、硝酸セリウム(IV)とを、セリウム(総量)に対するセリウム(IV)のモル比0.0000125 (1/80,235)で合体させることにより、硝酸セリウム溶液を調製した。硝酸セリウム溶液を次いで20L容器内で、撹拌及び窒素バブリングによって脱気した。
【0163】
70kgの脱イオン水と、14kgの25%水性アンモニアの溶液とを合体させる(これにより硝酸セリウム溶液中のセリウム及びランタンの総量に対するアンモニア水溶液中のNH4OHのモル比は10となった)ことにより、水性アンモニア溶液を調製した。水性アンモニア溶液を次いで100L容器のジャケット付き反応器内で、撹拌及び窒素バブリングによって脱気した。
【0164】
次いで窒素パージ下で同じ撹拌を加えながら、硝酸セリウム溶液を周囲温度で水性アンモニア溶液に添加した。反応混合物の温度を次いで88℃に高め、そして13.5時間にわたってその温度で保持した。次いで反応混合物を冷ましておき、冷却したら、68%硝酸を添加することによりpH2に酸性化した。
【0165】
次いで反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄溶液の導電率が0.04mS/cm未満になったら洗浄を繰り返した。脱イオン水を添加することにより、最終酸化セリウム濃度を10質量パーセントに調節した。立方体状セリア研磨剤粒子は10モルパーセントの酸化ランタンと90モルパーセントの酸化セリウムとを含んだ。
【0166】
窒素吸着によりBET比表面積が8.6m2/グラムであることを割り出した。平均粒径はMalvern Zetasizerによって測定して142nmであった。
【0167】
上記条件において60秒間にわたってMirra(登録商標)工具上でブランケットTEOSウエハーを研磨した。ポリシング結果は表6に示されている。全ての除去速度(RR)は1分当たりのオングストローム(Å/min)で挙げられている。
【表6】
【0168】
表5に示されたデータから容易に明らかなように、組成物8B及び8Cは、組成物8Aの除去速度の1.6倍を上回る同等のTEOS除去速度を呈した。
【0169】
“a”及び“an”及び“the”及び同様の指示対象を、本発明を説明するという文脈において使用する際には、これは特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに矛盾するのでない限り、単数形及び複数形の両方をカバーするものと解釈されるべきである。「含む“comprising”」、「有する“having”」、「含む“including”」及び「含有する“containing”」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンド用語(すなわち「含むが、しかしこれに限定されない」)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の記述は特に断りのない限り、単にその範囲内に含まれるそれぞれ別個の値に個別に言及する省略法として役立つように意図されているのにすぎず、そしてそれぞれの別個の値は、それがあたかも本明細書中に個別に記述されているかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載された全ての方法は、本明細書中に特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに否定されるのでない限り、任意の適宜の順番で実施することができる。本明細書中に提供された任意のそして全ての例、又は例を意味する言語(例えば「~のような“such as”」)は、単に本発明をより良く例示するように意図されているにすぎない。明細書中のいかなる用語も、いずれかの特許請求されていない要素を本発明の実施に必須のものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0170】
本発明の好ましい実施態様が、本発明を実施するために発明者に知られた最善の態様を含めて本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施態様の変更は、前記説明を読めば当業者には明らかになり得る。発明者は、当業者がこのような変更形を必要に応じて採用することを想定し、発明者は、本発明が本明細書中に具体的に記載したものとは異なる形で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用可能な法によって許される、ここに添付された特許請求の範囲に挙げられた主題のあらゆる改変形及び等価形を含む。さらに、あらゆる可能な変更形における上記要素のいかなる組み合わせも、本明細書中に特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに否定されない限り、本発明によって包含される。
【0171】
言うまでもなく、開示内容は、上記例に含まれたものを超えた数多くの実施態様を含む。これらの実施態様は、添付の特許請求の範囲に挙げられた態様を含むが、しかしこれに限定されるものではない。