IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクサイエンスの特許一覧

<>
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図1
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図2
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図3
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図4
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図5
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図6
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図7
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図8
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図9
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図10
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図11
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図12
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図13
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図14
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図15
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図16
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図17
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図18
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図19
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図20
  • 特許-加工方法及び荷電粒子ビーム装置 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】加工方法及び荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20241226BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20241226BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/28 B
H01J37/22 502F
H01J37/317 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023550775
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035604
(87)【国際公開番号】W WO2023053187
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 俊之
(72)【発明者】
【氏名】上本 敦
(72)【発明者】
【氏名】麻畑 達也
(72)【発明者】
【氏名】満 欣
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525959(JP,A)
【文献】特開2007-042513(JP,A)
【文献】特開2015-050126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0139735(US,A1)
【文献】特開2015-111108(JP,A)
【文献】特開2005-216645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層された試料に集束イオンビームを照射して前記試料の断面を規定量だけ加工する加工ステップと、
前記加工ステップが終了した後の、前記断面の加工と異なるタイミングにおいて、前記試料に電子ビームを照射して前記試料の断面の観察像である第1観察像を生成する画像生成ステップと、
前記第1観察像に基づいて、前記複数の層のうち特定の層が露出したか否かを判定する特定層判定ステップと、
繰り返し実行される複数の前記加工ステップのうち最初に実行される前記加工ステップの前に行われるステップであって、前記試料の表面に付着したデポ物のパターンの観察像であり、前記第1観察像の倍率とは異なる倍率にされた観察像であって、前記第1観察像の倍率よりも低倍率にされた観察像である第2観察像に基づいて前記電子ビームのフォーカスを合わせる前処理ステップと、
を含み、
前記加工ステップにおいて、前記集束イオンビームを照射して前記断面の加工を行いながら前記観察像のコントラストを取得し、前記コントラストが変化した場合には、前記断面の加工を停止させて前記電子ビームのフォーカスを合わせる加工方法。
【請求項2】
前記加工ステップと、前記画像生成ステップと、前記特定層判定ステップとを1セットとし、当該セットを前記特定層判定ステップで前記特定の層の露出が検知されるまで繰り返し実行する、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
複数の層が積層された試料の表面に付着したデポ物のパターンの観察像であって、前記試料の断面の観察像である第1観察像の倍率よりも低倍率にされた観察像である第2観察像に基づいて電子ビームのフォーカスを合わせる前処理ステップと、
前記試料に集束イオンビームを照射して前記試料の断面を規定量だけ加工する加工ステップと、
前記加工ステップが終了した後において、前記試料に前記電子ビームを照射して前記試料の断面の観察像を前記第1観察像として生成する画像生成ステップと、
前記観察像に基づいて、前記複数の層のうち特定の層が露出したか否かを判定する特定層判定ステップと、
前記加工ステップと、前記画像生成ステップと、前記特定層判定ステップとを1セットとし、当該セットを前記特定層判定ステップで前記特定の層の露出が検知されるまで繰り返し実行する、加工方法。
【請求項4】
最初に実行される前記加工ステップの前に実行され、前記電子ビームのフォーカスを合わせる前処理ステップを更に含み、
前記前処理ステップは、
前記集束イオンビームを照射することで前記断面を加工しながら前記観察像を取得する観察像取得ステップと、
前記複数の層のうち、パターンを有しない層の観察像と前記パターンを有する層の観察像とを教師データとして予め学習した学習モデルに対して、前記観察像取得ステップで取得された前記観察像を入力することで前記パターンを有する層が露出したか否かを判定する露出判定ステップと、
前記露出判定ステップで前記パターンを有する層が露出したと判定された場合には、前記断面の加工を停止させて前記電子ビームのフォーカスを合わせるフォーカス合わせステップと、
を含む、請求項に記載の加工方法。
【請求項5】
前記特定層判定ステップは、
入力される画像が前記特定の層の画像か否かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果と、当該判定結果の確からしさを表す確信度と、に基づいて、前記特定の層が露出したか否かを判定する、
請求項3または4に記載の加工方法。
【請求項6】
前記特定層判定ステップは、
入力される画像が前記複数の層のうちどの層の画像かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果に基づいて、前記加工ステップで加工している層である加工層を判別し、判別した前記加工層が予め設定された層と異なる場合には、前記加工層の誤判別と判定する、
請求項からのいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項7】
前記特定層判定ステップは、
入力される画像が前記複数の層のうちどの層の画像かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果に基づいて、前記加工ステップで加工している層である加工層を判別し、前記加工層が前記特定の層から一つ前の層であり、前記判定結果の確信度が低下した場合には前記特定の層への層の切り替わりを検出する、
請求項からのいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項8】
前記特定の層が、試料の表面から積層方向に沿ってk番目の層であり、
前記特定層判定ステップは、
入力される画像が前記複数の層のうちどの層の画像かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果に基づいて、前記加工ステップで加工している層である加工層を判別し、
前記加工ステップは、前記特定層判定ステップにて前記判別した前記加工層がk-n(nは整数)番目の層である場合には、前記規定量を小さくする、
請求項からのいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項9】
複数の層が積層された試料に集束イオンビームを照射して前記試料の断面を規定量だけ加工する加工ステップと、
前記試料に電子ビームを照射して前記試料の断面の観察像である第1観察像を生成する画像生成ステップと、
前記観察像に基づいて、前記複数の層のうち特定の層が露出したか否かを判定する特定層判定ステップと、
繰り返し実行される複数の前記加工ステップのうち最初に実行される前記加工ステップの前に行われるステップであって、前記試料の表面に付着したデポ物のパターンの観察像であり、前記第1観察像の倍率とは異なる倍率にされた観察像であって、前記第1観察像の倍率よりも低倍率にされた観察像である第2観察像に基づいて前記電子ビームのフォーカスを合わせる前処理ステップと、
を含み、
前記特定の層が、試料の表面から積層方向に沿ってk番目の層であり、
前記特定層判定ステップは、
入力される画像が前記複数の層のうちどの層の画像かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果に基づいて、前記加工ステップで加工している層である加工層を判別し、
前記試料への加工が開始される際には前記加工ステップと前記画像生成ステップとは同時に実行され、前記加工層がk-n(nは整数)番目の層である場合には、前記加工ステップと前記画像生成ステップとは異なるタイミングで実行される、
加工方法。
【請求項10】
複数の層が積層された試料に集束イオンビームを照射して前記試料の断面を規定量だけ加工する集束イオンビーム鏡筒と、
前記集束イオンビーム鏡筒による前記規定量の加工が終了した後の、前記断面の加工と異なるタイミングにおいて、前記試料に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、
前記試料から発生する電子に基づいて試料の断面の観察像である第1観察像を生成する観察像生成部と、
前記第1観察像に基づいて、前記複数の層のうち特定の層が露出したか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記電子ビーム鏡筒は、繰り返し実行される複数の前記加工のうち最初に実行される前記加工の前に、前記試料の表面に付着したデポ物のパターンの観察像であり、前記第1観察像の倍率とは異なる倍率にされた観察像であって、前記第1観察像の倍率よりも低倍率にされた観察像である第2観察像に基づいて前記電子ビームのフォーカスを合わせる荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工方法及び荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡(TEM: Transmission Electron Microscope)などによって試料の観察を行うために、試料をその観察に適した形状にエッチングする荷電粒子ビーム装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-120714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
層構造の試料において特定の層(以下、「特定層」という。)を観察する場合には、エッチングによって特定層を露出させる必要がある。そのためには、試料の特定層を正確に検知することが求められる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、試料の特定層を正確に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、複数の層が積層された試料に集束イオンビームを照射して前記試料の断面を規定量だけ加工する加工ステップと、前記加工ステップが終了した後の、前記断面の加工と異なるタイミングにおいて、前記試料に電子ビームを照射して前記試料の断面の観察像である第1観察像を生成する画像生成ステップと、前記第1観察像に基づいて、前記複数の層のうち特定の層が露出したか否かを判定する特定層判定ステップと、繰り返し実行される複数の前記加工ステップのうち最初に実行される前記加工ステップの前に行われるステップであって、前記試料の表面に付着したデポ物のパターンの観察像であり、前記第1観察像の倍率とは異なる倍率にされた観察像であって、前記第1観察像の倍率よりも低倍率にされた観察像である第2観察像に基づいて前記電子ビームのフォーカスを合わせる前処理ステップと、を含み、前記加工ステップにおいて、前記集束イオンビームを照射して前記断面の加工を行いながら前記観察像のコントラストを取得し、前記コントラストが変化した場合には、前記断面の加工を停止させて前記電子ビームのフォーカスを合わせる加工方法である。
【0007】
(2)上記(1)の加工方法であって、前記加工ステップと、前記画像生成ステップと、前記特定層判定ステップとを1セットとし、当該セットを前記特定層判定ステップで前記特定の層の露出が検知されるまで繰り返し実行してもよい。
【0008】
(3)本発明の一態様は、複数の層が積層された試料の表面に付着したデポ物のパターンの観察像であって、前記試料の断面の観察像である第1観察像の倍率よりも低倍率にされた観察像である第2観察像に基づいて電子ビームのフォーカスを合わせる前処理ステップと、前記試料に集束イオンビームを照射して前記試料の断面を規定量だけ加工する加工ステップと、前記加工ステップが終了した後において、前記試料に前記電子ビームを照射して前記試料の断面の観察像を前記第1観察像として生成する画像生成ステップと、前記観察像に基づいて、前記複数の層のうち特定の層が露出したか否かを判定する特定層判定ステップと、前記加工ステップと、前記画像生成ステップと、前記特定層判定ステップとを1セットとし、当該セットを前記特定層判定ステップで前記特定の層の露出が検知されるまで繰り返し実行する、加工方法である。
【0009】
(4)上記(3)の加工方法であって、最初に実行される前記加工ステップの前に実行され、前記電子ビームのフォーカスを合わせる前処理ステップを更に含み、前記前処理ステップは、前記集束イオンビームを照射することで前記断面を加工しながら前記観察像を取得する観察像取得ステップと、前記複数の層のうち、パターンを有しない層の観察像と前記パターンを有する層の観察像とを教師データとして予め学習した学習モデルに対して、前記観察像取得ステップで取得された前記観察像を入力することで前記パターンを有する層が露出したか否かを判定する露出判定ステップと、前記露出判定ステップで前記パターンを有する層が露出したと判定された場合には、前記断面の加工を停止させて前記電子ビームのフォーカスを合わせるフォーカス合わせステップと、を含んでもよい。
【0010】
(5)上記()又は上記()の加工方法であって、前記特定層判定ステップは、入力される画像が前記特定の層の画像か否かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果と、当該判定結果の確からしさを表す確信度と、に基づいて、前記特定の層が露出したか否かを判定してもよい。
【0011】
(6)上記()から上記(5)のいずれかの加工方法であって、前記特定層判定ステップは、入力される画像が前記複数の層のうちどの層の画像かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果に基づいて、前記加工ステップで加工している層である加工層を判別し、判別した前記加工層が予め設定された層と異なる場合には、前記加工層の誤判別と判定してもよい。
【0012】
(7)上記()から上記(5)のいずれかの加工方法であって、前記特定層判定ステップは、入力される画像が前記複数の層のうちどの層の画像かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果に基づいて、前記加工ステップで加工している層である加工層を判別し、前記加工層が前記特定の層から一つ前の層であり、前記判定結果の確信度が低下した場合には前記特定の層への層の切り替わりを検出してもよい。
【0013】
(8)上記()から上記(5)のいずれかの加工方法であって、前記特定の層が、試料の表面から積層方向に沿ってk番目の層であり、前記特定層判定ステップは、入力される画像が前記複数の層のうちどの層の画像かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果に基づいて、前記加工ステップで加工している層である加工層を判別し、前記加工ステップは、前記特定層判定ステップにて前記判別した前記加工層がk-n(nは整数)番目の層である場合には、前記規定量を小さくしてもよい。
【0014】
(9)本発明の一態様は、複数の層が積層された試料に集束イオンビームを照射して前記試料の断面を規定量だけ加工する加工ステップと、前記試料に電子ビームを照射して前記試料の断面の観察像である第1観察像を生成する画像生成ステップと、前記観察像に基づいて、前記複数の層のうち特定の層が露出したか否かを判定する特定層判定ステップと、繰り返し実行される複数の前記加工ステップのうち最初に実行される前記加工ステップの前に行われるステップであって、前記試料の表面に付着したデポ物のパターンの観察像であり、前記第1観察像の倍率とは異なる倍率にされた観察像であって、前記第1観察像の倍率よりも低倍率にされた観察像である第2観察像に基づいて前記電子ビームのフォーカスを合わせる前処理ステップと、を含み、前記特定の層が、試料の表面から積層方向に沿ってk番目の層であり、前記特定層判定ステップは、入力される画像が前記複数の層のうちどの層の画像かを判定する学習モデルに対して、前記画像生成ステップで生成された前記観察像を入力することで前記学習モデルから出力される判定結果に基づいて、前記加工ステップで加工している層である加工層を判別し、前記試料への加工が開始される際には前記加工ステップと前記画像生成ステップとは同時に実行され、前記加工層がk-n(nは整数)番目の層である場合には、前記加工ステップと前記画像生成ステップとは異なるタイミングで実行される、加工方法である。
【0015】
(10)本発明の一態様は、複数の層が積層された試料に集束イオンビームを照射して前記試料の断面を規定量だけ加工する集束イオンビーム鏡筒と、前記集束イオンビーム鏡筒による前記規定量の加工が終了した後の、前記断面の加工と異なるタイミングにおいて、前記試料に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、前記試料から発生する電子に基づいて試料の断面の観察像である第1観察像を生成する観察像生成部と、前記第1観察像に基づいて、前記複数の層のうち特定の層が露出したか否かを判定する判定部と、を備え、前記電子ビーム鏡筒は、繰り返し実行される複数の前記加工のうち最初に実行される前記加工の前に、前記試料の表面に付着したデポ物のパターンの観察像であり、前記第1観察像の倍率とは異なる倍率にされた観察像であって、前記第1観察像の倍率よりも低倍率にされた観察像である第2観察像に基づいて前記電子ビームのフォーカスを合わせる荷電粒子ビーム装置である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、試料の特定層を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る制御部の構成の一例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る露出加工方法のフロー図である。
図4】第2の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示す図である。
図5】第2の実施形態に係る制御部の構成の一例を示す図である。
図6】第2の実施形態に係る第1前処理のフロー図である。
図7】第2の実施形態に係る第2前処理のフロー図である。
図8】第2の実施形態に係る第3前処理のフロー図である。
図9】第3の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示す図である。
図10】第3の実施形態に係る制御部の構成の一例を示す図である。
図11】第3の実施形態に係る露出加工方法のフロー図である。
図12】第4の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示す図である。
図13】第4の実施形態に係る制御部の構成の一例を示す図である。
図14】第4の実施形態に係る露出加工方法のフロー図である。
図15】第4の実施形態に係る露出加工方法の変形例のフロー図である。
図16】第5の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示す図である。
図17】第5の実施形態に係る制御部の構成の一例を示す図である。
図18】第5の実施形態に係る露出加工方法のフロー図である。
図19】第6の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示す図である。
図20】第6の実施形態に係る制御部の構成の一例を示す図である。
図21】第6の実施形態に係る露出加工方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置を、図面を用いて説明する。荷電粒子ビーム装置は、複数の層が積層された試料Sに集束イオンビームを照射することで試料の断面を加工する。例えば、複数の層が積層された試料Sのうち、ある特定の層(特定層)が透過電子顕微鏡などによって観察される場合に、試料の断面を加工して特定層を露出させる必要がある。その際、荷電粒子ビーム装置は、その特定層を露出させるために加工を行い、試料の断面のSEM画像を確認しながら特定層が露出したか否かを判定する。本実施形態の特徴の一つは、試料の断面の加工とSEM画像の生成とを異なるタイミングで実行することで高微細のSEM画像の取得を実現し、特定層を正確に検知することを可能にすることである。
【0020】
なお、特定層が露出したことは、特定層が完全に露出したことであってもよいし、特定層の一部が露出したことであってもよい。すなわち、特定層の検知とは、特定層の一部の露出を検出することであってもよいし、特定層が完全に露出したことを検知することであってもよい。特定層の一部の露出を検出することは、ある層から特定層への切り替わりを検知することであってもよい。
【0021】
ここで、試料Sは、特定層を有する複数の層が所定の積層方向に向かって積層された試料のことである。特定層は、観察する対象となる物質(例えば、半導体等)により構成される層である。また、試料Sは、複数の特定層とともに、1以上の非観察対象層が積層方向に向かって積層されてもよい。非観察対象層は、観察する対象ではない物質(例えば、電力又は信号の伝送路として使われる金属導体等)により構成される層である。例えば、試料Sは、3D-NAND型のフラッシュメモリ等である。なお、積層方向は、如何なる方向であってもよい。例えば、試料室10内に収容された試料Sにおける積層方向は、上下方向であってもよいし、左右方向であってもよい。
【0022】
(第1の実施形態)
以下において、第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1の構成について、具体的に説明する。
【0023】
図1は、第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、荷電粒子ビーム装置1は、試料室10、試料台11、駆動機構12、電子ビーム鏡筒13、集束イオンビーム鏡筒14、二次荷電粒子検出器15、透過電子検出器16、入力部17、表示部18、及び制御装置19を備える。
【0024】
試料室10は、所望の減圧状態を維持可能な気密構造の耐圧筐体によって形成されている。試料室10の内部が所望の減圧状態になるまで排気装置(図示略)によって排気可能である。
【0025】
試料台11は、試料Sを保持するものであり、試料室10の内部に配置されている。試料台11は、駆動機構12によって駆動される。
【0026】
駆動機構12は、試料台11を3次元的に並進及び回転させる。駆動機構12は、例えば、三次空間におけるX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向に沿って試料台11を並進させる。Z軸は、上下方向であり、X軸及びY軸がなす平面(XY平面)に直交する。また、駆動機構12は、例えば、X軸又はY軸周りに回転させるチルト機構と、Z軸周りに回転させる回転機構と、を備える。以下に、チルト機構に試料台11を回転させた角度を、チルト角と称する。
【0027】
電子ビーム鏡筒13は、試料室10の内部に配置されている試料Sに荷電粒子ビームの一例である電子ビーム(EB)を照射する。例えば、電子ビームの照射方向は、Z軸方向と平行である。なお、以下では、説明の便宜上、Z軸方向と平行な方向を上下方向と称し、上下方向のうち、鉛直方向を下方向と称し、鉛直方向と逆の方向を上方向と称する。
【0028】
集束イオンビーム鏡筒14は、試料室10の内部に配置されている試料Sに集束イオンビーム(FIB)を照射する。これにより、試料Sの断面が加工される。以下において、集束イオンビームによって試料Sを加工することを「FIB加工」と称する場合がある。集束イオンビームの照射方向は、例えばXY平面に平行な方向である。図1に示した例では、電子ビーム鏡筒13と集束イオンビーム鏡筒14とは、それぞれの照射方向が試料S上で互いに直交するように配置されている。ただし、これに限定されず、集束イオンビーム鏡筒14は、上下方向に配置されてもよいし、上下方向に対して傾斜する傾斜方向に配置されてもよい。ここで、本実施形態では、一例として試料の層に対して平行にFIB加工が実施される。
【0029】
二次荷電粒子検出器15は、電子ビーム又は集束イオンビームの照射により試料Sから発生した二次電子を検出する。二次荷電粒子検出器15は、二次電子の検出結果に制御装置19に送信する。
【0030】
透過電子検出器16は、電子ビーム8を試料Sに照射した結果、試料Sを透過した透過電子と試料Sに入射されなかった電子ビームとを検出する。透過電子検出器16は、検出結果に制御装置19に送信する。
【0031】
入力部17は、例えば、操作者の入力操作に応じた信号を出力するマウス及びキーボード等である。
【0032】
表示部18は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスを備える。表示部18は、荷電粒子ビーム装置1の各種情報と、二次荷電粒子検出器15から出力される信号によって生成された画像データと、画像データの拡大、縮小、移動及び回転等の操作を実行するための画面等を表示する。
【0033】
制御装置19は、荷電粒子ビーム装置1の動作を統合的に制御する。制御装置19は、電子ビーム制御部20、集束イオンビーム制御部(FIB制御部)21、駆動制御部22、記憶部23、及び制御部24を備える。
【0034】
電子ビーム制御部20は、制御部24からの信号に基づいて電子ビーム鏡筒13に照射信号を出力し、電子ビーム鏡筒13から電子ビームを照射させる。
【0035】
集束イオンビーム制御部21は、制御部24からの信号に基づいて集束イオンビーム鏡筒14に照射信号を出力し、集束イオンビーム鏡筒14から集束イオンビームを照射させる。集束イオンビーム制御部21は、制御部24からの信号に基づいて集束イオンビーム鏡筒14から照射される集束イオンビームの照射方向を調整することができる。
【0036】
駆動制御部22は、制御部24からの信号に基づいて駆動機構12の駆動を制御しており、駆動機構12に駆動信号を出力して試料台11を駆動させることで試料台11を並進させたり、チルト角を変化させたりすることができる。
【0037】
記憶部23は、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等を備えており、各種の情報を記憶する。記憶部23には、FIB加工を行うための加工条件の情報が記憶されている。荷電粒子ビーム装置1は、記憶部23に記憶されている加工条件に応じて走査領域内に対して集束イオンビームによる走査を行う。これにより、荷電粒子ビーム装置1は、走査領域のエッチング、集束イオンビームによる走査領域の観察像の形成等を行うことができる。加工条件は、走査領域を示す走査領域情報、電子ビームの加速電圧を示す情報、ビーム電流を示す情報、倍率を示す情報、コントラストを示す情報、ブライトネスを示す情報、エッチングにより削る層の厚さを示す情報、エッチングにより削る深さを示す情報、集束イオンビーム鏡筒14から試料Sの表面までの距離を示す情報等が含まれた情報である。
【0038】
図2は、第1の実施形態に係る制御部24の概略構成の一例を示す図である。制御部24は、表示制御部30、観察像生成部31、及び判定部32を備える。
【0039】
表示制御部30は、上述した透過像やSEM像を表示部18に表示させる。
【0040】
観察像生成部31は、電子ビーム制御部20の電子ビームを走査させる信号と、透過電子検出器16で検出した透過電子の信号とに基づいて透過像を生成する。観察像生成部31は、電子ビーム制御部20の電子ビームを走査させる信号と、二次荷電粒子検出器15で検出した二次電子の信号とに基づいてSEM像のデータを形成する。本実施形態の観察像とは、SEM像であるが、透過像であってもよい。
【0041】
判定部32は、観察像生成部31が生成した観察像に基づいて、試料Sの複数の層のうち特定層が露出したか否かを判定する。例えば、判定部32は、観察像生成部31が生成した観察像に対して公知の画像処理を適用し、観察像に写っている断面のパターンを把握する。そして、判定部32は、把握したパターンが予め記憶部23などに登録された特定層のパターンである場合には、特定層が露出したと判定する。ただし、これに限定されず、判定部32は、公知の技術を用いて観察像から特定層が露出したか否を判定してもよい。
【0042】
以下において、荷電粒子ビーム装置1が特定層の露出させる加工方法(以下、「露出加工方法」という。)について、説明する。図3は、第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1の露出加工方法のフロー図である。
【0043】
[露出加工方法]
荷電粒子ビーム装置1は、記憶部23に記憶されている加工条件を読み取り、その加工条件に応じてFIB加工を開始する。まず、荷電粒子ビーム装置1は、集束イオンビームを照射して試料Sの断面を規定量だけスライス加工することで新たな断面を形成する(ステップS101:加工ステップ)。荷電粒子ビーム装置1は、新たな断面を形成するとFIB加工を停止し、形成した新たな断面に対して電子ビームを照射してその断面の観察像(SEM画像)を生成する(ステップS102:画像生成ステップ)。すなわち、観察像生成部31は、加工ステップの後において画像生成ステップを実行する。
【0044】
荷電粒子ビーム装置1は、画像生成ステップにより生成されたSEM画像に基づいて、特定層が露出したか否かを判定する(ステップS103:特定層判定ステップ)。例えば、判定部32は、画像生成ステップで得られたSEM画像と、予め記憶部23に記憶された特定層の断面画像(以下、「目標断面画像」という。)とを比較して、一致しているか否かを判定する。判定部32は、画像生成ステップで得られたSEM画像と、予め記憶部23に記憶された目標断面画像とが一致していなければ特定層が露出していないと判定して再度スライス加工が実行されるようにステップS101の処理に戻る。一方、判定部32は、画像生成ステップで得られたSEM画像と、予め記憶部23に記憶された目標断面画像とが一致していれば特定層が露出したと判定する。判定部32によって特定層が露出したと判定された場合には、荷電粒子ビーム装置1は、図3に示す一連の処理を終了する。すなわち、荷電粒子ビーム装置1は、加工ステップと、画像生成ステップと、特定層判定ステップとを1セットとし、当該セットを特定層判定ステップで特定層の露出が検知されるまで繰り返し実行する。
【0045】
なお、特定層の露出が検知された後、荷電粒子ビーム装置1は、FIB加工を終了してもよいし、特定層の加工条件に切替えて特定層の加工を再開してもよい。
【0046】
このように、本実施形態の荷電粒子ビーム装置1は、加工ステップと画像生成ステップとを同時に実行せずに、異なるタイミングで実行する。すなわち、荷電粒子ビーム装置1は、加工ステップが終了した後に画像生成ステップを実行する。これにより、荷電粒子ビーム装置1は、FBI加工による影響を受けずにSEM画像を生成することができるため、高微細のSEM画像の取得することができる。その結果、荷電粒子ビーム装置1は、特定層を正確に検知することができる。なお、本実施形態では、加工ステップと画像生成ステップとが同時に実行される期間がないが、一部のみ同時に実行される期間を設けてもよい。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Aについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。第2の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Aは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と比較すると、最初のFIB加工の前に前処理を実行する点が異なり、その他の機能や構成は同じである。
【0048】
図4は、第2の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Aの概略構成の一例を示す図である。図4に示すように、荷電粒子ビーム装置1Aは、試料室10、試料台11、駆動機構12、電子ビーム鏡筒13、集束イオンビーム鏡筒14、二次荷電粒子検出器15、透過電子検出器16、入力部17、表示部18、及び制御装置19Aを備える。
【0049】
制御装置19Aは、荷電粒子ビーム装置1Aの動作を統合的に制御する。制御装置19Aは、電子ビーム制御部20、集束イオンビーム制御部21、駆動制御部22、記憶部23、及び制御部24Aを備える。また、図5に示すように、制御部24Aは、表示制御部30、観察像生成部31、判定部32及び前処理部33を備える。
【0050】
前処理部33は、電子ビームのフォーカスを合わせる処理である前処理のステップ(前処理ステップ)を最初のFIB加工の前に実行する。この前処理は、試料Sの断面の加工が行われていない場合などの試料Sの加工面にパターンが現れていない場合に実行される。換言すれば、試料Sにおいてパターンがない層(以下、「未パターン層」という。)が露出している場合である。なお、この未パターン層は、観察対象ではなく特定層ではない。試料Sの加工面にパターンが現れていない場合には、電子ビームのフォーカスをその加工面に合わせることが困難である。そこで、前処理部33は、試料Sの加工面にパターンが現れていない場合において前処理を実行することで電子ビームのフォーカスを合わせることができる。
【0051】
本実施形態の前処理の方法は、大別して第1前処理、第2前処理、及び第3前処理の3つの方法がある。前処理部33は、3つの前処理の方法のうち、いずれかの方法で前処理を実行してもよい。
【0052】
[第1前処理]
まず、第1前処理について説明する。図6は、第1前処理のフロー図である。荷電粒子ビーム装置1Aは、最初に電子ビームを照射して加工面のSEM画像を取得する(ステップS201)。荷電粒子ビーム装置1Aは、ステップS201で取得したSEM画像を基準画像として記憶部23に格納する。次に、荷電粒子ビーム装置1は、試料Sに対して集束イオンビームを照射して断面のスライス加工を行いながらSEM画像を取得する(ステップS202)。そして、荷電粒子ビーム装置1Aは、ステップS202でSEM画像を取得するごとに、そのSEM画像のコントラスト値と、基準画像のコントラスト値とを比較する(ステップS203)。荷電粒子ビーム装置1Aは、SEM画像のコントラスト値と基準画像のコントラスト値とを比較した結果、ステップS202で得られるSEM画像のコントラスト値が基準画像のコントラスト値と比較して変化していれば、パターンが露出したと判定する(ステップS204)。一方、荷電粒子ビーム装置1Aは、ステップS202で得られるSEM画像のコントラスト値が基準画像のコントラスト値と比較して変化していなければ、パターンが露出していないと判定してステップS202を再度行う。
【0053】
パターンが露出すれば電子ビームのフォーカスが可能になる。したがって、荷電粒子ビーム装置1Aは、パターンが露出したと判定した場合には、断面に対して電子ビームのフォーカスを合わせる(ステップS205)。
【0054】
[第2前処理]
第2前処理について説明する。図7は、第2前処理のフロー図である。荷電粒子ビーム装置1Aは、最初に、集束イオンビームを照射することで試料Sをスライス加工しながらSEM画像を取得する(ステップS301:観察像取得ステップ)。次に、荷電粒子ビーム装置1Aは、例えば試料Sの複数の層のそれぞれの画像(例えば、SEM画像)を教師データとして予め学習した学習モデル(第1学習済みモデル)に対して、観察像取得ステップで取得されたSEM画像を入力することでパターンを有する層が露出したか否かを判定する(ステップS302:露出判定ステップ)。この第1学習済みモデルは、SEM画像が入力されると、その入力画像(SEM画像)がパターンを有する層の画像か未パターン層の画像かを出力する。例えば、教師データは、未パターン層(例えば、FIB加工が実施されていない試料Sの加工面)の画像と、その未パターン層の次に積層されている層(パターンを有する層)の画像とを有していればよい。荷電粒子ビーム装置1Aは、例えば、記憶部23に予め第1学習済みモデルを有している。第1学習済みモデルは、荷電粒子ビーム装置1Aで作成されてもよいし、荷電粒子ビーム装置1Aとは別の装置で作成されてもよい。
【0055】
荷電粒子ビーム装置1Aは、第1学習済みモデルによって入力画像がパターンを有する画像であると判定された場合には、パターンを有する層が露出したと判定する。荷電粒子ビーム装置1Aは、露出判定ステップでパターンを有する層が露出したと判定された場合には、断面のスライス加工を停止し、断面に対して電子ビームのフォーカスを合わせるフォーカス合わせる(ステップS303:フォーカス合わせステップ)。一方、荷電粒子ビーム装置1Aは、第1学習済みモデルによって入力画像が未パターンの画像であると判定された場合には、パターンを有する層が露出していないと判定する。荷電粒子ビーム装置1Aは、判定ステップでパターンを有する層が露出していないと判定された場合には、ステップS301の処理を継続して、再度ステップS302、ステップS303を実行する。
【0056】
[第3前処理]
第3前処理について説明する。図8は、第3前処理のフロー図である。荷電粒子ビーム装置1Aは、最初に、試料の表面に付着したデポ物のパターン(以下、「デポパターン」という。)をSEM画像で得ることができる程度に、SEM画像の倍率を低倍率に変更する(ステップS401)。そして、荷電粒子ビーム装置1Aは、SEM画像の倍率を低倍率に変更した後に、試料Sの表面のSEM画像を取得する(ステップS402)。荷電粒子ビーム装置1Aは、ステップS402で取得したSEM画像に映っているデポパターンを用いて電子ビームのフォーカスを合わせる(ステップS403)。電子ビームのフォースを合わせた後、荷電粒子ビーム装置1Aは、SEM画像の倍率を低倍率から元に戻す(ステップS404)
【0057】
荷電粒子ビーム装置1Aは、第1前処理、第2前処理及び第3前処理のうち、いずれかの前処理を実行した後、露出加工を実行する。なお、第2の実施形態の露出加工は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
このように、第2の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Aは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と同様の効果を奏する他、露出加工前に前処理を事前に実行することで加工面が未パターン層であっても露出加工が可能となる。
【0059】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Bについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。第3の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Bは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と比較すると、特定層が露出したか否かを判定する処理が異なり、その他の機能や構成は同じである。
【0060】
図9は、第3の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Bの概略構成の一例を示す図である。図9に示すように、荷電粒子ビーム装置1Bは、試料室10、試料台11、駆動機構12、電子ビーム鏡筒13、集束イオンビーム鏡筒14、二次荷電粒子検出器15、透過電子検出器16、入力部17、表示部18、及び制御装置19Bを備える。
【0061】
制御装置19Bは、荷電粒子ビーム装置1Bの動作を統合的に制御する。制御装置19Bは、電子ビーム制御部20、集束イオンビーム制御部21、駆動制御部22、記憶部23B、及び制御部24Bを備える。また、図10に示すように、制御部24Bは、表示制御部30、観察像生成部31、及び判定部32Bを備える。
【0062】
記憶部23Bには、加工条件の他に、第2学習済みモデルが格納されている。この第2学習済みモデルは、入力されるSEM画像が特定層の画像か否かを判定する学習モデルである。第2学習済みモデルは、特定層を含む複数の層のそれぞれの画像(例えば、SEM画像)を教師データとして用いて機械学習されたものである。ただし、これに限定されず、第2学習済みモデルは、ラベルが付与されている特定層の画像と特定層以外の層の画像とを教師データとして用いて機械学習されたものであってもよい。
【0063】
判定部32Bは、露出加工時において取得したSEM画像を第2学習済みモデルに入力することで第2学習済みモデルから出力される判定結果と、当該判定結果の確からしさを表す確信度とに基づいて、特定層が露出したか否かを判定する。
【0064】
以下において、第3の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Bの露出加工方法について、説明する。図11は、第3の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Bの露出加工方法のフロー図である。
【0065】
[露出加工方法]
荷電粒子ビーム装置1Bは、記憶部23Bに記憶されている加工条件を読み取り、その加工条件に応じてFIB加工を開始する。まず、荷電粒子ビーム装置1Bは、集束イオンビームを照射して試料Sの断面を規定量だけスライス加工することで新たな断面を形成する(ステップS501:加工ステップ)。荷電粒子ビーム装置1Bは、新たな断面を形成するとFIB加工を停止し、形成した新たな断面に対して電子ビームを照射してその断面の観察像(SEM画像)を生成する(ステップS502:画像生成ステップ)。すなわち、観察像生成部31は、加工ステップの後において画像生成ステップを実行する。
【0066】
荷電粒子ビーム装置1Bは、画像生成ステップにより生成されたSEM画像を第2学習済みモデルに入力し、第2学習済みモデルから出力される判定結果を取得する(ステップS503)。そして、荷電粒子ビーム装置1Bは、第2学習済みモデルから出力される判定結果が特定層を示す情報であるか否かを判定する(ステップS504:第1判定ステップ)。荷電粒子ビーム装置1Bは、第2学習済みモデルから出力される判定結果が特定層を示す情報である場合には、その判定結果の確信度が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップS505:第2判定ステップ)。荷電粒子ビーム装置1Bは、判定結果の確信度が所定の閾値以上である場合には特定層が露出したと判定する(ステップS506)。ステップS504において荷電粒子ビーム装置1Bは、第2学習済みモデルから出力される判定結果が特定層を示す情報ではない場合には、特定層が露出していないとしてステップS501に移行する。また、ステップS505において荷電粒子ビーム装置1Bは、判定結果の確信度が所定の閾値未満である場合には特定層が露出していないとしてステップS501に移行する。なお、ステップS503からステップS506の処理は、特定層判定ステップの一例である。
【0067】
なお、特定層の露出が検知された後、荷電粒子ビーム装置1Bは、FIB加工を終了してもよいし、特定層の加工条件に切替えて特定層の加工を再開してもよい。
【0068】
このように、第3の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Bは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と同様の効果を奏する他、特定層の検知に確信度の閾値を含めることにより特定層の検知の安定性を向上させることができる。
【0069】
なお、第3の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Bは、第2の実施形態で説明した前処理を実行してもよい。
【0070】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Cについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。第4の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Cは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と比較すると、特定層が露出したか否かを判定する処理が異なり、その他の機能や構成は同じである。
【0071】
図12は、第4の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Cの概略構成の一例を示す図である。図12に示すように、荷電粒子ビーム装置1Cは、試料室10、試料台11、駆動機構12、電子ビーム鏡筒13、集束イオンビーム鏡筒14、二次荷電粒子検出器15、透過電子検出器16、入力部17、表示部18、及び制御装置19Cを備える。
【0072】
制御装置19Cは、荷電粒子ビーム装置1Cの動作を統合的に制御する。制御装置19Cは、電子ビーム制御部20、集束イオンビーム制御部21、駆動制御部22、記憶部23C、及び制御部24Cを備える。また、図13に示すように、制御部24Cは、表示制御部30、観察像生成部31、及び判定部32Cを備える。
【0073】
記憶部23Cには、加工条件の他に、第3学習済みモデルが格納されている。この第3学習済みモデルは、入力されるSEM画像が複数の層のうちどの層の画像かを判定するモデルである。例えば、第3学習済みモデルは、特定の層を含む複数の層のそれぞれのラベル付きのSEM画像を教師データとして用いて機械学習されたモデルである。
【0074】
また、記憶部23Cには、試料Sにおける各層の積層の順番の情報(以下、「層情報」という。)が記憶されている。積層の順番とは、試料Sの表面から積層方向に沿って積層された各層の順番である。試料Sの表面から積層方向に沿って積層された各層の順番である。FIB加工は、この積層の順番に沿って層と平行又は垂直にスライス加工することになる。すなわち、積層の順番とは、どの層が何番目に加工されるかを示す加工順番の情報である。
【0075】
判定部32Cは、露出加工時において取得したSEM画像を第3学習済みモデルに入力し、その第3学習済みモデルから出力される判定結果に基づいて加工ステップで加工している層(以下、「加工層」という。)を判別する。したがって、判定部32Cは、判別した加工層が特定層である場合には、特定層が露出したと判定することができる。判定部32Cは、FIB加工中において、現在の加工層と記憶部23Cの層情報とを用いて、積層順番の通りにFIB加工されているかを常に確認する。例えば、判定部32Cは、加工層を判別しているため、現在の加工層が、加工を開始してから何番目の層であるかを識別可能である。したがって、判定部32Cは、現在の加工しているn番目の加工層と、記憶部23Cに層情報として記憶されているn番目の層とが一致していなければ、加工層の誤判別が発生していると判定してもよい。
【0076】
例えば、判定部32Cは、現在の加工層が2番目であるとする。判定部32Cは、FIB加工が進むことでSEM画像により加工層が切り替わり、新たな層を加工層と判別したとする。この際、判定部32Cは、3番目の層として記憶部23に記憶されている層の情報を読み出し、その層と加工層とを比較する。そして、判定部32Cは、比較の結果、一致しない場合には加工層の判別が誤っていると判定する。
【0077】
以下において、第4の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Cの露出加工方法について、説明する。図14は、荷電粒子ビーム装置1Cの露出加工方法のフロー図である。
【0078】
[露出加工方法]
荷電粒子ビーム装置1Cは、記憶部23Cに記憶されている加工条件を読み取り、その加工条件に応じてFIB加工を開始する。まず、荷電粒子ビーム装置1Cは、集束イオンビームを照射して試料Sの断面を規定量だけスライス加工することで新たな断面を形成する(ステップS601:加工ステップ)。荷電粒子ビーム装置1Cは、新たな断面を形成するとFIB加工を停止し、形成した新たな断面に対して電子ビームを照射してその断面の観察像(SEM画像)を生成する(ステップS602:画像生成ステップ)。すなわち、観察像生成部31は、加工ステップの後において画像生成ステップを実行する。
【0079】
荷電粒子ビーム装置1Cは、画像生成ステップにより生成されたSEM画像を第3学習済みモデルに入力し、第3学習済みモデルから出力される判定結果に基づいて、加工層を判別する(ステップS603)。また、荷電粒子ビーム装置1Cは、判別した加工層が正しいか否かを判定する(ステップS604)。例えば、荷電粒子ビーム装置1Cは、判別した加工層が記憶部23に記憶されている加工順番通りの層であるか否かを判別する。荷電粒子ビーム装置1Cは、判別した加工層が加工順番通りの層である場合には、加工層が正しいと判定する。一方、荷電粒子ビーム装置1Cは、判別した加工層が加工順番通りの層である場合には、加工層が正しくないと判定して加工層の誤判別が発生したと判定する。加工層の誤判別が発生した場合には、FIB加工を停止させてもよい。
【0080】
判定部32Cは、判別した加工層が正しい場合には、判別した加工層が特定層であるか否かを判別する(ステップS605)。判定部32Cは、判別した加工層が特定層ではない場合には、特定層が露出していないと判定して再度スライス加工が実行されるようにステップS601の処理に戻る。一方、判定部32Cは、判別した加工層が特定層である場合には特定層が露出したと判定する。判定部32によって特定層が露出したと判定された場合には、荷電粒子ビーム装置1Cは、図14に示す一連の処理を終了する。すなわち、荷電粒子ビーム装置1Cは、加工ステップと、画像生成ステップと、特定層判定ステップとを1セットとし、当該セットを特定層判定ステップで特定層の露出が検知されるまで繰り返し実行する。なお、ステップS603からステップS606の処理は、特定層判定ステップの一例である。
【0081】
なお、特定層の露出が検知された後、荷電粒子ビーム装置1Bは、FIB加工を終了してもよいし、特定層の加工条件に切替えて特定層の加工を再開してもよい。
【0082】
このように、第4の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Cは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と同様の効果を奏する他、特定層の検知にステップS604の誤判別の処理を設けることで特定層の検知の安定性を向上させることができる。
【0083】
なお、第4の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Cは、第2の実施形態で説明した前処理を実行してもよい。
【0084】
ここで、荷電粒子ビーム装置1Cは、図15に示すように、第3学習済みモデルから出力される判定結果の確信度を用いて特定層への層の切り替わり箇所を検出してもよい。図15のステップS611~ステップ613は、ステップS601~603と同様であるため説明を省略する。荷電粒子ビーム装置1Cは、判別した加工層が特定層(k番目の層)の一つ前の層(k-1番目の層)であるか否かを判定する(ステップS614)。荷電粒子ビーム装置1Cは、判別した加工層が特定層(k番目の層)の一つ前の層(k-1番目の層)であると判定した場合には、第3学習済みモデルから出力される判定結果の確信度が所定値以上低下したか否を判定する(ステップS615)。荷電粒子ビーム装置1Cは、判定結果の確信度が所定値以上低下した場合には、特定層への切り替わりを検出する(ステップS616)。
【0085】
特定層が露出し始めた時には確信度が低く、完全に特定層が露出した場合には確信度がピークになる。すなわち、FIB加工によって露出する層が特定層に切り替わり始めると確信度が低くなる。そこで、第4の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Cは、特定層の一つ前の加工層を判別した後に確信度が下降した場合には、特定層への切り替わり箇所であると判定してもよい。また、荷電粒子ビーム装置1Cは、判定した特定層への切り替わり箇所から余分に加工し続けることにより、FIB加工の終点位置を調整することができる。なお、特定層への切り替わり箇所を検出することは、特定層の露出を検出することに含まれる。
【0086】
例えば、荷電粒子ビーム装置1Cは、特定層への切り替わり位置で加工を一時停止し、さらに一定量のFIB加工を続ける追加制御を実行してもよい。例えば、荷電粒子ビーム装置1Cは、追加制御として以下の(a)、(b)、(c)、(d)のいずれかの制御を行ってもよい。
【0087】
(a)層の切り替わり位置を検出するまでのFIB加工のフレーム数を基準とし、指定したフレーム数をFIB加工した後に当該FIB加工を停止する。
(b)層の切り替わり位置を検出するまでのFIB加工のスライス数を基準とし、指定したスライス数をFIB加工した後に当該FIB加工を停止する。
(c)層の切り替わり位置を検出した時のSEM画像のコントラスト値を基準とし、指定したコントラスト値の変化後に加工を停止する。
(d)層の切り替わり位置を検出した後、SEM画像のコントラスト値が指定した値になった後に加工を停止する。
【0088】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Dについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。第5の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Dは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と比較すると、加工ステップの規定量を調整可能にする点が異なり、その他の機能や構成は同じである。
【0089】
図16は、第5の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Dの概略構成の一例を示す図である。図16に示すように、荷電粒子ビーム装置1Dは、試料室10、試料台11、駆動機構12、電子ビーム鏡筒13、集束イオンビーム鏡筒14、二次荷電粒子検出器15、透過電子検出器16、入力部17、表示部18、及び制御装置19Dを備える。
【0090】
制御装置19Dは、荷電粒子ビーム装置1Dの動作を統合的に制御する。制御装置19Dは、電子ビーム制御部20、集束イオンビーム制御部21、駆動制御部22、記憶部23D、及び制御部24Dを備える。また、図17に示すように、制御部24Dは、表示制御部30、観察像生成部31、判定部32D及び規定量調整部34を備える。
【0091】
記憶部23Dには、加工条件の他に、第3学習済みモデルが格納されている。また、記憶部23Dには、層情報が記憶されている。
【0092】
判定部32Dは、第4の実施形態と同様に、露出加工時において取得したSEM画像を第3学習済みモデルに入力し、その第3学習済みモデルから出力される判定結果に基づいて加工ステップで加工している加工層を判別する。したがって、判定部32Dは、判別した加工層が特定層である場合には、特定層が露出したと判定することができる。
【0093】
規定量調整部34は、加工層が特定層に近い層になると、規定量を小さくする。例えば、規定量調整部34は、規定量を第1規定量に設定し、加工層が特定層よりも一つ前に加工する層である場合には規定量を第1規定量よりも小さい第2規定量に設定する。
【0094】
以下において、第5の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Dの露出加工方法について、説明する。図18は、第5の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Dの露出加工方法のフロー図である。
【0095】
[露出加工方法]
荷電粒子ビーム装置1Dは、記憶部23Dに記憶されている加工条件を読み取り、その加工条件に応じてFIB加工を開始する。まず、荷電粒子ビーム装置1Dは、規定量を第1規定量に設定する(ステップS701)。そして、荷電粒子ビーム装置1Dは、集束イオンビームを照射して試料Sの断面を規定量だけスライス加工することで新たな断面を形成する(ステップS702:加工ステップ)。荷電粒子ビーム装置1Dは、新たな断面を形成するとFIB加工を停止し、形成した新たな断面に対して電子ビームを照射してその断面の観察像(SEM画像)を生成する(ステップS703:画像生成ステップ)。すなわち、観察像生成部31は、加工ステップの後において画像生成ステップを実行する。
【0096】
荷電粒子ビーム装置1Dは、画像生成ステップにより生成されたSEM画像を第3学習済みモデルに入力し、第3学習済みモデルから出力される判定結果に基づいて、加工層を判別する(ステップS704)。そして、荷電粒子ビーム装置1Dは、判別した加工層が特定層であるか否かを判別する(ステップS705)。ここで、特定層が、試料Sの表面から積層方向に沿ってk番目の層であるとする。荷電粒子ビーム装置1Dは、判別した加工層が特定層ではない場合において、判別した加工層がk-n(nは整数)番目の層であるか否かを判別する(ステップS706)。例えば、nは、n<kを満たす整数であれば特に限定されないが、露出加工の高速化を考慮すると「1」であることが好ましい。荷電粒子ビーム装置1Dは、判別した加工層がk-n番目の層である場合には加工ステップの規定量を第1規定量から第2規定量に変更する(ステップS707)。そして、規定量が変更されると、ステップS702に移行する。荷電粒子ビーム装置1Dは、判別した加工層がk-n番目の層ではない場合には、規定量が変更されずに、ステップS702に移行する。
【0097】
荷電粒子ビーム装置1Dは、ステップS705において判別した加工層が特定層であると判別した場合には特定層が露出したと判定する(ステップS708)。なお、特定層の露出が検知された後、荷電粒子ビーム装置1Dは、FIB加工を終了してもよいし、特定層の加工条件に切替えて特定層の加工を再開してもよい。なお、ステップS704からステップS708の処理は、特定層判定ステップの一例である。
【0098】
このように、第5の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Dは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と同様の効果を奏する他、特定層に近づいた場合にはFIB加工の規定量を小さくすることで層検知位置の精度を向上させることができる。
【0099】
なお、第5の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Dは、第2の実施形態で説明した前処理を実行してもよい。
【0100】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Eについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。第6の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Eは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と比較すると、加工ステップの規定量を調整可能にする点が異なり、その他の機能や構成は同じである。
【0101】
図19は、第6の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置1Eの概略構成の一例を示す図である。図19に示すように、荷電粒子ビーム装置1Eは、試料室10、試料台11、駆動機構12、電子ビーム鏡筒13、集束イオンビーム鏡筒14、二次荷電粒子検出器15、透過電子検出器16、入力部17、表示部18、及び制御装置19Eを備える。
【0102】
制御装置19Eは、荷電粒子ビーム装置1Eの動作を統合的に制御する。制御装置19Eは、電子ビーム制御部20、集束イオンビーム制御部21、駆動制御部22、記憶部23E、及び制御部24Eを備える。また、図20に示すように、制御部24Eは、表示制御部30、観察像生成部31、判定部32E及び切替部40を備える。
【0103】
記憶部23Eには、加工条件の他に、第3学習済みモデルが格納されている。また、記憶部23Eには、層情報が記憶されている。
【0104】
判定部32Eは、第4の実施形態と同様に、露出加工時において取得したSEM画像を第3学習済みモデルに入力し、その第3学習済みモデルから出力される判定結果に基づいて加工ステップで加工している加工層を判別する。したがって、判定部32Eは、判別した加工層が特定層である場合には、特定層が露出したと判定することができる。
【0105】
切替部40は、第1のモードと第2のモードとを切り替える。第1のモードとは、FIB加工とSEM画像の生成とを同時に実施するモードである。第2のモードとは、FBI加工とSEM画像の生成とを異なるタイミングで実行するモードである。例えば、切替部40は、第1のモードを実行し、加工層が特定層よりも一つ前に加工する層である場合には、第1のモードから第2のモードに切り替える。
【0106】
以下において、第6の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Eの露出加工方法について、説明する。図21は、第6の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Eの露出加工方法のフロー図である。
【0107】
[露出加工方法]
荷電粒子ビーム装置1Eは、記憶部23Eに記憶されている加工条件を読み取り、その加工条件に応じてFIB加工を開始する。まず、荷電粒子ビーム装置1Eは、動作モードを第1のモードに設定する(ステップS801)。これにより、荷電粒子ビーム装置1Eは、第1のモードで動作するため、集束イオンビームを照射して試料Sの断面を規定量だけスライス加工しながら、SEM画像を生成する(ステップS802)。
【0108】
荷電粒子ビーム装置1Eは、画像生成ステップにより生成されたSEM画像を第3学習済みモデルに入力し、第3学習済みモデルから出力される判定結果に基づいて、加工層を判別する(ステップS803)。そして、荷電粒子ビーム装置1Eは、判別した加工層がk-n番目の層であるか否かを判別する(ステップS804)。荷電粒子ビーム装置1Eは、判別した加工層がk-n番目の層である場合には、動作モードを第1のモードから第2のモードに変更する(ステップS805)。荷電粒子ビーム装置1Eは、判別した加工層がk-n番目の層ではない場合には、ステップS802に移行する。
【0109】
第2のモードに変更されると、荷電粒子ビーム装置1Eは、集束イオンビームを照射して試料Sの断面を規定量だけスライス加工することで新たな断面を形成する(ステップS806)。荷電粒子ビーム装置1Eは、新たな断面を形成するとFIB加工を停止し、形成した新たな断面に対して電子ビームを照射してその断面のSEM画像を生成する(ステップS807)。荷電粒子ビーム装置1Eは、ステップS808により生成されたSEM画像を第3学習済みモデルに入力し、第3学習済みモデルから出力される判定結果に基づいて、加工層を判別する(ステップS808)。そして、荷電粒子ビーム装置1Eは、判別した加工層が特定層であるか否かを判別する(ステップS809)。荷電粒子ビーム装置1Eは、判別した加工層が特定層である場合には、特定層が露出したと判定する(ステップS810)。一方、荷電粒子ビーム装置1Eは、判別した加工層が特定層ではない場合には、ステップS806に移行する。なお、ステップS803からステップS810の処理は、特定層判定ステップの一例である。
【0110】
このように、第6の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Eは、第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置1と同様の効果を奏する他、特定層に近づいた場合にはFIB加工とSEM画像とを別のタイミングで実行することにより、高速な加工と特定層の検知精度の向上とを両立させることができる。
【0111】
なお、第6の実施形態の荷電粒子ビーム装置1Eは、第2の実施形態で説明した前処理を実行してもよい。
【0112】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる
【0113】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」、「有する」や「備える」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0114】
また、明細書に記載の「…部」の用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアまたはソフトウェアとして具現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで具現されてもよい。
【0115】
なお、上述した制御装置19,19A,19B,19C,19D,19Eの全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、上記制御装置の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0116】
1,1A,1B,1C,1D,1E 荷電粒子ビーム装置
13 電子ビーム鏡筒
14 集束イオンビーム鏡筒
15 二次荷電粒子検出器
16 透過電子検出器
19,19A,19B,19C,19D,19E 制御装置
20 電子ビーム制御部
21 集束イオンビーム制御部
22 駆動制御部
23,23B,23C,23D,23E 記憶部
24,24A,24B,24C,24D,24E 制御部
31 観察像生成部
32,32B,32C,32D,32E 判定部
33 前処理部
34 規定量調整部
40 切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21