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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241227BHJP
   B23K 26/60 20140101ALI20241227BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20241227BHJP
   B23K 26/18 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/60
B23K26/364
B23K26/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021037797
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022138027
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐原 直俊
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓正
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212764(JP,A)
【文献】特開平11-320141(JP,A)
【文献】特開平04-203618(JP,A)
【文献】特開2020-185614(JP,A)
【文献】特開2010-120844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0065402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/60
B23K 26/364
B23K 26/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に有機膜を有したウェーハにレーザ加工を施すレーザ加工方法であって、
該有機膜に対して透過性を有した波長のパルスレーザビームを発振器で発生させ、該有機膜が加工される加工閾値以上のエネルギーの該パルスレーザビームを、連続して該有機膜に照射される該パルスレーザビームの重なり率が90%以上100%未満になるように該有機膜に照射して該有機膜を黒色化させる黒色化ステップと、
該黒色化ステップを実施した後、黒色化した該有機膜に該パルスレーザビームを照射して黒色化した該有機膜にパルスレーザビームを吸収させレーザ加工溝を形成する溝加工ステップと、を備えた、レーザ加工方法。
【請求項2】
該黒色化ステップにおいて、該有機膜に照射されるパルスレーザビームは、ガウシアン分布の裾野部分が垂直な分布に修正されることで該加工閾値より低いエネルギーの該パルスレーザビームが該有機膜を透過して該基材に照射されることを防止する、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に有機膜を有したウェーハにレーザ加工を施すレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの処理速度を高速化すべく、シリコンウェーハの上にポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物の低誘電率材料(いわゆる、Low-k材料)からなる層間絶縁膜を回路層と積層させて半導体デバイスを形成し、シリコンからなる基板の表面に有機膜を積層した半導体ウェーハが実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-126054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Low-k材料は、雲母のように脆く、切削ブレードで切削すると剥離してしまう。そこで上記特許文献1に開示されているように、レーザアブレーション技術を利用してLow-k材料を含むデバイス層にレーザ加工溝を形成することが行われている。
【0005】
半導体ウェーハのアブレーション加工には例えば355nmや532nmの波長のレーザビームが用いられているが、Low-k材料である層間絶縁膜はこれら紫外~可視光領域のレーザビームに対して透明であり照射されたレーザビームを吸収しないため、シリコンウェーハにレーザビームを集光することでシリコンウェーハとともにデバイス層を加工していた。
【0006】
しかし、シリコンウェーハにレーザビームが集光されてシリコンウェーハが昇華するのに伴って有機膜が局所的に剥離してしまう等の問題があり、改善が切望されていた。
【0007】
本発明の目的は、有機膜の剥離を抑制することができるレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザ加工方法は、基材上に有機膜を有したウェーハにレーザ加工を施すレーザ加工方法であって、該有機膜に対して透過性を有した波長のパルスレーザビームを発振器で発生させ、該有機膜が加工される加工閾値以上のエネルギーの該パルスレーザビームを、連続して該有機膜に照射される該パルスレーザビームの重なり率が90%以上100%未満になるように該有機膜に照射して該有機膜を黒色化させる黒色化ステップと、該黒色化ステップを実施した後、黒色化した該有機膜に該パルスレーザビームを照射して黒色化した該有機膜にパルスレーザビームを吸収させレーザ加工溝を形成する溝加工ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記レーザ加工方法では、該黒色化ステップにおいて、該有機膜に照射されるパルスレーザビームは、ガウシアン分布の裾野部分が垂直な分布に修正されることで該加工閾値より低いエネルギーの該パルスレーザビームが該有機膜を透過して該基材に照射されることを防止しても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、有機膜の剥離を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係るレーザ加工方法の加工対象のウェーハの斜視図である。
図2図2は、図1に示されたウェーハの要部の断面図である。
図3図3は、実施形態1に係るレーザ加工方法の一部を実施するレーザ加工装置の構成例を示す斜視図である。
図4図4は、図3に示されたレーザ加工装置のレーザビーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。
図5図5は、図4に示されたレーザビーム照射ユニットのマスクにより整形される前のパルスレーザビームのエネルギー分布を模式的に示す図である。
図6図6は、図4に示されたレーザビーム照射ユニットのマスクにより整形されたパルスレーザビームのエネルギー分布を模式的に示す図である。
図7図7は、実施形態1に係るレーザ加工方法の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、図7に示されたレーザ加工方法の保護膜形成ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図9図9は、図7に示されたレーザ加工方法のパルスレーザビームの重なり率を模式的に説明する図である。
図10図10は、図7に示されたレーザ加工方法の黒色化ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図11図11は、図7に示されたレーザ加工方法の溝加工ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るレーザ加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るレーザ加工方法の加工対象のウェーハの斜視図である。図2は、図1に示されたウェーハの要部の断面図である。図3は、実施形態1に係るレーザ加工方法の一部を実施するレーザ加工装置の構成例を示す斜視図である。図4は、図3に示されたレーザ加工装置のレーザビーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。図5は、図4に示されたレーザビーム照射ユニットのマスクにより整形される前のパルスレーザビームのエネルギー分布を模式的に示す図である。図6は、図4に示されたレーザビーム照射ユニットのマスクにより整形されたパルスレーザビームのエネルギー分布を模式的に示す図である。図7は、実施形態1に係るレーザ加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0014】
(ウェーハ)
実施形態1に係るレーザ加工方法は、図1及び図2に示すウェーハ200にレーザ加工を施す方法である。実施形態1に係るレーザ加工方法の加工対象のウェーハ200は、シリコンを基材201とする円板状の半導体ウェーハである。ウェーハ200は、表面202に互いに交差する分割予定ライン203が複数設定され、分割予定ライン203によって区画された領域にデバイス204が形成されている。
【0015】
デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。
【0016】
実施形態1において、ウェーハ200は、図1及び図2に示すように、基材201上に有機膜である機能層205を有している。機能層205は、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜又は炭素含有酸化シリコン(SiOCH)からなる低誘電率絶縁体被膜(以下、Low-k膜と呼ぶ)と、導電性の金属により構成された回路層とを備える。
【0017】
Low-k膜は、回路層と積層されて、デバイス204を形成する。回路層は、デバイス204の回路を構成する。このために、デバイス204は、基材201上に積層された機能層205の互いに積層されたLow-k膜と、Low-k膜間に積層された回路層とによって形成される。なお、分割予定ライン203の機能層205は、Low-k膜により形成され、TEG(Test Element Group)を除いて導電体膜を備えていない。TEGは、デバイス204に発生する設計上や製造上の問題を見つけ出すための評価用の素子である。
【0018】
実施形態1において、ウェーハ200は、図3に示すように、ウェーハ200の外径よりも大径な円板状でかつ外縁部に環状フレーム210が貼着された粘着テープ209が表面202の裏側の裏面206に貼着されて、環状フレーム210の開口内に支持される。ウェーハ200は、分割予定ライン203に沿って切断されて、個々のデバイス204に分割される。
【0019】
(レーザ加工装置)
実施形態1に係るレーザ加工方法は、図3に示されたレーザ加工装置1により一部が実施される。図3に示すレーザ加工装置1は、ウェーハ200に対してパルス状のパルスレーザビーム21を照射し、ウェーハ200にレーザ加工(加工に相当)を施す装置である。レーザ加工装置1は、図3に示すように、ウェーハ200を保持する保持面11を有するチャックテーブル10と、レーザビーム照射ユニット20と、移動ユニット30と、撮像ユニット40と、制御ユニット100とを備える。
【0020】
チャックテーブル10は、ウェーハ200を水平方向と平行な保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル10は、保持面11上に載置されたウェーハ200を吸引保持する。チャックテーブル10の周囲には、ウェーハ200を開口内に支持する環状フレーム210を挟持するクランプ部12が複数配置されている。
【0021】
また、チャックテーブル10は、移動ユニット30の回転移動ユニット34により保持面11に対して直交しかつ鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。チャックテーブル10は、回転移動ユニット34とともに、移動ユニット30のX軸移動ユニット31により水平方向と平行なX軸方向に移動されかつY軸移動ユニット32により水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に移動される。チャックテーブル10は、移動ユニット30によりレーザビーム照射ユニット20の下方の加工領域と、レーザビーム照射ユニット20の下方から離れてウェーハ200が搬入、搬出される搬入出領域とに亘って移動される。
【0022】
レーザビーム照射ユニット20は、チャックテーブル10に保持されたウェーハ200に対してパルス状のパルスレーザビーム21を照射するユニットである。実施形態1では、レーザビーム照射ユニット20は、ウェーハ200の基材201に対して吸収性を有し、かつ機能層205に対して透過性を有する波長(実施形態1では、514nmであり、本発明では、355nm又は266nmでも良い)のパルス状のパルスレーザビーム21を照射して、ウェーハ200にレーザ加工を施すレーザビーム照射手段である。
【0023】
実施形態1では、レーザビーム照射ユニット20の一部は、図1に示すように、装置本体2から立設した立設壁3に設けられた移動ユニット30のZ軸移動ユニット33によりZ軸方向に移動される昇降部材4に支持されている。
【0024】
次に、レーザビーム照射ユニット20の構成を説明する。レーザビーム照射ユニット20は、図4に示すように、ウェーハ200を加工するためのパルス状のパルスレーザビーム21を発振する発振器22と、チャックテーブル10の保持面11に保持されたウェーハ200に発振器22から発振されたパルスレーザビーム21を集光する集光レンズ23と、発振器22と集光レンズ23との間のパルスレーザビーム21の光路上に設けられかつ発振器22で発生されたパルスレーザビーム21を発振器22から集光レンズ23へと導く少なくとも一つの光学部品24と、マスクユニット25とを備える。
【0025】
実施形態1において、発振器22で発生されたパルスレーザビーム21のエネルギー分布212は、図5に示すように、パルスレーザビーム21の光路の光軸211上のエネルギーが最も強く、光軸211から離れるのにしたがってエネルギーが徐々に低下するガウシアン分布となっている。なお、図5の横軸は、Y軸方向の位置を示し、横軸の中央がパルスレーザビーム21の光路の光軸211を示している。また、図5の縦軸は、エネルギーを示している。また、図5は、Y軸方向と平行な位置でのパルスレーザビーム21のエネルギー分布212を示しているが、パルスレーザビーム21のエネルギー分布212は、X軸方向と平行な位置でもガウシアン分布となる。
【0026】
集光レンズ23は、チャックテーブル10の保持面11とZ軸方向に対向する位置に配置されている。集光レンズ23は、発振器22から発振されたパルスレーザビーム21を透過して、パルスレーザビーム21を集光点21-1に集光する。実施形態1では、レーザビーム照射ユニット20は、光学部品24として、パルスレーザビーム21を反射するミラーを備えているが、本発明では、光学部品24は、ミラーに限定されない。
【0027】
マスクユニット25は、発振器22で発生されたパルスレーザビーム21のエネルギー分布を修正(変更)するものである。マスクユニット25は、発振器22と光学部品24との間のパルスレーザビーム21の光路上に設けられている。実施形態1では、マスクユニット25は、図4に示すように、一対のY軸方向マスク部材251と、一対の移動ユニット252と、一対のX軸方向マスク部材253と、図示しない一対のX軸方向移動ユニットとを備える。
【0028】
一対のY軸方向マスク部材251は、パルスレーザビーム21を遮る(即ち、透過しない)材料で構成されている。一対のY軸方向マスク部材251は、互いにY軸方向に間隔をあけて配置され、互いの間に発振器22と光学部品24との間のパルスレーザビーム21の光路の光軸211を位置付けている。一対のY軸方向マスク部材251は、Y軸方向に互いに近づいたり離れる方向に移動自在に設けられている。
【0029】
移動ユニット252は、一対のY軸方向マスク部材251をY軸方向に互いに近づいたり離れる方向に移動するものである。実施形態1では、移動ユニット252は、Y軸方向マスク部材251と1対1で対応して設けられ、対応するY軸方向マスク部材251をY軸方向に移動する。
【0030】
一対のX軸方向マスク部材253は、パルスレーザビーム21を遮る(即ち、透過しない)材料で構成されている。一対のX軸方向マスク部材253は、互いにX軸方向に間隔をあけて配置され、互いの間に発振器22と光学部品24との間のパルスレーザビーム21の光路の光軸211を位置付けている。一対のX軸方向マスク部材253は、X軸方向に互いに近づいたり離れる方向に移動自在に設けられている。
【0031】
X軸方向移動ユニットは、一対のX軸方向マスク部材253をX軸方向に互いに近づいたり離れる方向に移動するものである。実施形態1では、X軸方向移動ユニットは、X軸方向マスク部材253と1対1で対応して設けられ、対応するX軸方向マスク部材253をX軸方向に移動する。なお、マスクユニット25の説明で記載したX軸方向,Y軸方向は、チャックテーブル10に保持されたウェーハ200に照射された際のパルスレーザビーム21のX軸方向、Y軸方向を示している。
【0032】
マスクユニット25は、一対のY軸方向マスク部材251及び一対のX軸方向マスク部材253が発振器22で発生されたパルスレーザビーム21の光軸211から離れた部分(ガウシアン分布の裾野部分)を遮光して、発振器22で発生されたパルスレーザビーム21の図5に示すエネルギー分布212を、マスク部材251,253の光軸211からの距離254分、光軸211から離れた位置でエネルギーが図5に示すエネルギー分布212上の値213から零まで急激に減少する図6に示すエネルギー分布214に修正する。
【0033】
また、マスクユニット25は、移動ユニット252により一対のY軸方向マスク部材251の光軸211からの距離254を変更し、X軸方向移動ユニットにより一対のX軸方向マスク部材253の光軸211からの距離を変更することで、図5に示すエネルギー分布212上の値213から零まで急激に減少する図6に示すエネルギー分布214の位置215を変更する。なお、以下、零まで急激に減少する位置215のエネルギー分布214上の値213を境界値と記す。このように、マスクユニット25は、パルスレーザビーム21のガウシアン分布の図5に示すエネルギー分布212を、裾野部分が垂直な分布の図6に示すエネルギー分布214に修正する。
【0034】
こうして、実施形態1において、マスクユニット25は、一対のX軸方向マスク部材253のX軸方向の間隔を一対のY軸方向マスク部材251のY軸方向の間隔よりも狭く設定することで、集光レンズ23により集光されたパルスレーザビーム21のスポット216を、長手方向がY軸方向と平行でかつ短手方向がX軸方向と平行な矩形状に形成する。なお、図6の横軸は、Y軸方向の位置を示し、横軸の中央がパルスレーザビーム21の光路の光軸211を示している。また、図6の縦軸は、エネルギーを示している。また、図6は、Y軸方向と平行な位置でのパルスレーザビーム21のエネルギー分布214を示しているが、レーザビームのエネルギー分布214は、X軸方向と平行な位置でも図6と同様な分布となっている。
【0035】
なお、実施形態1では、レーザビーム照射ユニット20は、パルスレーザビーム21のエネルギー分布を修正する手段としてマスクユニット25を備えているが、本発明では、パルスレーザビーム21のエネルギー分布を修正する手段として、マスクユニット25の代わりにDMD(Digital Micro-mirror Device)を備えても良い。
【0036】
移動ユニット30は、レーザビーム照射ユニット20とチャックテーブル10とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びZ軸方向と平行な軸心回りに相対的に移動させるものである。X軸方向及びY軸方向は、保持面11と平行な方向である。X軸方向は、チャックテーブル10に保持されたウェーハ200の一方の分割予定ライン203と平行な方向であり、レーザ加工装置1がウェーハ200にレーザ加工を施す際にチャックテーブル10を加工送りする所謂加工送り方向である。Y軸方向は、X軸方向と直交し、レーザ加工装置1がウェーハ200にレーザ加工を施す際にチャックテーブル10を割り出し送りする所謂割り出し送り方向である。
【0037】
移動ユニット30は、チャックテーブル10をX軸方向に移動させる加工送りユニットであるX軸移動ユニット31と、チャックテーブル10をY軸方向に移動させる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット32と、レーザビーム照射ユニット20に含まれる集光レンズ23をZ軸方向に移動させるZ軸移動ユニット33と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット34とを備える。
【0038】
Y軸移動ユニット32は、チャックテーブル10と、レーザビーム照射ユニット20とを相対的に割り出し送りするユニットである。実施形態1では、Y軸移動ユニット32は、レーザ加工装置1の装置本体2上に設置されている。Y軸移動ユニット32は、X軸移動ユニット31を支持した移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持している。
【0039】
X軸移動ユニット31は、チャックテーブル10と、レーザビーム照射ユニット20とを相対的に加工送りするユニットである。X軸移動ユニット31は、移動プレート15上に設置されている。X軸移動ユニット31は、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット34を支持した第2移動プレート16をX軸方向に移動自在に支持している。Z軸移動ユニット33は、立設壁3に設置され、昇降部材4をZ軸方向に移動自在に支持している。
【0040】
X軸移動ユニット31、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、移動プレート15,16をX軸方向又はY軸方向に移動自在に支持するとともに、昇降部材4をZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0041】
また、レーザ加工装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するための図示しないX軸方向位置検出ユニットと、チャックテーブル10のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、レーザビーム照射ユニット20に含まれる集光レンズ23のZ軸方向の位置を検出するZ軸方向位置検出ユニットとを備える。各位置検出ユニットは、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0042】
撮像ユニット40は、チャックテーブル10に保持されたウェーハ200を撮像するものである。撮像ユニット40は、チャックテーブル10に保持されたウェーハ200を撮像するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を備える。実施形態1では、撮像ユニット40は、昇降部材 の先端の先端に取り付けられて、レーザビーム照射ユニット20の集光レンズ23とX軸方向に並ぶ位置に配置されている。撮像ユニット40は、ウェーハ200を撮像して、ウェーハ200とレーザビーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0043】
また、実施形態1において、レーザ加工装置1は、パワーメータ50を備える。パワーメータ50は、レーザビーム照射ユニット20からパルスレーザビーム21が照射されて、レーザビーム照射ユニット20が照射するパルスレーザビーム21のエネルギー分布を測定するものである。パワーメータ50は、測定したエネルギー分布を制御ユニット100に向かって出力する。実施形態1では、パワーメータ50は、第2移動プレート16上に設置されて、移動ユニット252によりレーザビーム照射ユニット20の集光レンズ23とZ軸方向に対向することができる。
【0044】
制御ユニット100は、レーザ加工装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、ウェーハ200に対するレーザ加工動作をレーザ加工装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザ加工装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介してレーザ加工装置1の上述した構成要素に出力して、制御ユニット100の機能を実現する。
【0045】
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット110と、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットとが接続されている。入力ユニットは、表示ユニット110に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0046】
また、制御ユニット100は、レーザ加工装置1の加工条件を設定するためにも用いられる。加工条件は、例えば、パルスレーザビーム21のエネルギー、パルス状のパルスレーザビーム21の繰り返し周波数、後述する重なり率、機能層205の加工閾値、レーザ加工時のチャックテーブル10のX軸方向の移動速度(以下、加工送り速度と記す)等を含む。なお、パルスレーザビーム21のエネルギーとは、エネルギー分布212,214の光軸211上のエネルギーを示している。また、制御ユニット100は、パルスレーザビーム21のエネルギーに応じて、マスク部材251,253のパルスレーザビーム21の光軸211からの距離254とエネルギー分布214の境界値213との関係を算出する機能、加工閾値等に基づいてスポット216のX軸方向の幅WX(図9に示す)を算出する機能、重なり率、幅WX及び繰り返し周波数等に基づいて加工送り速度を算出し、加工条件として入力する機能を有している。これらの機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。また、本発明では、前述した機能は、プログラムを実行することにより実現されることにくわえ、作業員が算出しても良い。
【0047】
実施形態1に係るレーザ加工方法は、基材201上の有機膜である機能層205を有したウェーハ200にレーザ加工を施す方法であって、レーザ加工装置1の加工動作を含む。実施形態1に係るレーザ加工方法は、図7に示すように、エネルギー分布設定ステップ1001と、保護膜形成ステップ1002と、黒色化ステップ1003と、溝加工ステップ1004とを備える。
【0048】
(エネルギー分布設定ステップ)
エネルギー分布設定ステップ1001は、マスク部材251,253の光軸211からの距離を調整して、エネルギー分布214の境界値213を設定するステップである。前述した構成のレーザ加工装置1は、オペレータが入力ユニット等を操作して入力した加工条件を制御ユニット100が受け付ける。なお、加工条件は、ウェーハ200の機能層205の加工閾値、黒色化ステップ1003のパルスレーザビーム21のエネルギー、繰り返し周波数、重なり率、溝加工ステップ1004のパルスレーザビーム21のエネルギー、繰り返し周波数、重なり率等を含む。
【0049】
実施形態1において、レーザ加工装置1は、制御ユニット100がウェーハ200の機能層205の加工閾値、黒色化ステップ1003のパルスレーザビーム21のエネルギー等に基づいて、境界値213が加工閾値となるマスク部材251,253の光軸211からの距離254を算出し、移動ユニット252を制御して、各マスク部材251,253の光軸211からの距離254を境界値213が加工閾値となる距離に設定する。
【0050】
なお、実施形態1では、加工条件がウェーハ200の機能層205の加工閾値を含んでいるが、機能層205の加工閾値が不明である場合、チャックテーブル10にウェーハ200を吸引保持して、ウェーハ200の種々のエネルギーのパルスレーザビーム21を、集光点21-1を機能層205に設定して、照射し、機能層205が炭化して黒色化したパルスレーザビーム21のエネルギーを加工閾値として設定しても良い。なお、黒色化したか否かの確認は、レーザ加工装置1のオペレータが目視により確認しても良く、撮像ユニット40で撮像し、周知の画像処理を実施することで確認しても良い。なお、黒色化すると、機能層205は、パルスレーザビーム21の吸収性が黒色化前よりも向上する。このように、本発明でいう加工閾値とは、加工閾値以上のエネルギーのパルスレーザビーム21を、集光点21-1を機能層205に設定して照射することで、機能層205を炭化させてパルスレーザビーム21を吸収することができる程度に黒色化できるパルスレーザビーム21のエネルギーの値をいう。
【0051】
(保護膜形成ステップ)
図8は、図7に示されたレーザ加工方法の保護膜形成ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。保護膜形成ステップ1002は、ウェーハ200の表面202側に水溶性保護膜を被覆するステップである。
【0052】
保護膜形成ステップ1002では、保護膜被覆装置60が、粘着テープ209を介してウェーハ200の裏面206側をスピンナーテーブル61の保持面62に吸引保持し、環状フレーム210をスピンナーテーブル61の周囲に設けられたクランプ部63でクランプする。保護膜形成ステップ1002では、保護膜被覆装置60が、図8に示すように、スピンナーテーブル61を軸心回りに回転するとともに、水溶性樹脂供給ノズル64から水溶性樹脂65をウェーハ200の表面202に滴下する。
【0053】
滴下された水溶性樹脂45は、スピンナーテーブル61の回転により発生する遠心力によって、ウェーハ200の表面202上を中心側から外周側に向けて流れていき、ウェーハ200の表面202の全面に塗布される。
【0054】
なお、水溶性樹脂65は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)またはポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)等の水溶性樹脂である。保護膜形成ステップ1002では、ウェーハ200の表面202の全面に塗布された水溶性樹脂65を硬化することによって、ウェーハ200の表面202の全面を被覆する水溶性保護膜を形成する。
【0055】
(黒色化ステップ)
図9は、図7に示されたレーザ加工方法のパルスレーザビームの重なり率を模式的に説明する図である。図10は、図7に示されたレーザ加工方法の黒色化ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。なお、図10は、水溶性保護膜を省略している。
【0056】
黒色化ステップ1003は、機能層205に対して透過性を有した波長のパルスレーザビーム21を発振器22で発生させ、機能層205が加工される加工閾値以上のエネルギーのパルスレーザビーム21を、連続して機能層205に照射されるパルスレーザビーム21の重なり率が90%以上でかつ100%未満になるように機能層205に照射して機能層205を黒色化させるステップである。
【0057】
なお、重なり率とは、図9に示す連続しかつ前後して照射されるパルスレーザビーム21のウェーハ200の機能層205上のスポット216のうち先のパルスレーザビーム21のスポット216(以下、206-1と記す)と、後のパルスレーザビーム21のスポット216(以下、206-2と記す)とが重なる領域216-3(図9中に平行斜線で示す)の各スポット216-1,216-2の面積に対する割合(%)をいう。
【0058】
ここで、加工送り速度(mm/秒)をSとし、スポット216-1,216-2のX軸方向の幅(mm)をWX(図9に示す)とし、パルスレーザビーム21の繰り返し周波数(Hz)をFとすると、重なり率O(%)は、以下の式1により定義される。
【0059】
O=〔1-{S/(WX×F)}〕×100・・・式1
【0060】
なお、重なり率Oが、90%未満であると、機能層205を黒色化できずに、溝加工ステップ1004を実施した際に、機能層205の基材201からの膜剥がれを抑制できないからである。また、重なり率Oが、100%であると、常に同じ位置にパルスレーザビーム21を照射し続けることになる。また、重なり率Oは、機能層205を黒色化でき、溝加工ステップ1004を実施した際に、機能層205の基材201からの膜剥がれを良好に抑制するためには、95%以上であるのが望ましい。
【0061】
黒色化ステップ1003では、レーザ加工装置1は、粘着テープ208を介して搬入出領域に位置付けられたチャックテーブル10の保持面11に水溶性保護膜により表面202が被覆されたウェーハ200が載置される。実施形態1において、黒色化ステップ1003では、レーザ加工装置1は、制御ユニット100が入力ユニットからオペレータの加工動作開始指示を受け付けると、加工動作を開始し、ウェーハ200を粘着テープ208を介して、チャックテーブル10の保持面11に吸引保持し、クランプ部12で環状フレーム210をクランプする。
【0062】
また、黒色化ステップ1003では、レーザ加工装置1は、制御ユニット100が加工閾値及び算出した距離254等に基づいて、スポット216-1,216-2の幅WXを算出し、加工条件で定められた重なり率O、繰り返し周波数Fに基づいて、式1を満たす加工送り速度Sを算出する。黒色化ステップ1003では、レーザ加工装置1は、移動ユニット30がチャックテーブル10を加工領域に向かって移動して、撮像ユニット40がウェーハ200を撮影する。レーザ加工装置1が、撮像ユニット40が撮像して得た画像に基づいて、アライメントを遂行する。
【0063】
実施形態1において、レーザ加工装置1は、加工条件及び算出した加工送り速度S等に基づいて、パルスレーザビーム21の集光点21-1を機能層205に設定し、図10に示すように、加工条件で設定された重なり率Oとなるように、移動ユニット30がチャックテーブル10に保持されたウェーハ200と、レーザビーム照射ユニット20が照射するパルスレーザビーム21の集光点21-1とを分割予定ライン203に沿って算出した加工送り速度Sで相対的に移動させながら、レーザビーム照射ユニット20がパルス状のパルスレーザビーム21を分割予定ライン203に照射することで、ウェーハ200にレーザ加工を施して、全ての分割予定ライン203上の機能層205を黒色化する。
【0064】
なお、実施形態1では、黒色化ステップ1003では、パルスレーザビーム21の波長を514nmとし、パルスレーザビーム21のエネルギーを0.2μJ以上でかつ2μJ以下(望ましくは、0.2μJ以上でかつ0.5μJ以下)とする。
【0065】
また、実施形態1では、黒色化ステップ1003では、例えば、各スポット216-1,216-2のX軸方向の幅WX(図9に示す)が5μm、パルスレーザビーム21の繰り返し周波数Fを1MHz、加工送り速度Sを50mm/秒とすると、重なり率Oは、99%となる。重なり率Oが、99%の場合、領域216-3のX軸方向の幅216-4(図9に示す)は、4.95μmとなる。実施形態1において、黒色化ステップ1003では、例えば、重なり率Oが99%でレーザ加工を施す。
【0066】
また、黒色化ステップ1003において、機能層205に照射されるパルスレーザビーム21は、図5に示されたエネルギー分布212から図6に示されたエネルギー分布214に修正されている。このように、黒色化ステップ1003において、機能層205に照射されるパルスレーザビーム21は、図4に示されたエネルギー分布212から裾野部分が垂直な図5に示されたエネルギー分布214に修正されることで、加工閾値よりも低いエネルギーのパルスレーザビーム21が機能層205を透過して基材201に照射されることを防止する。
【0067】
(溝加工ステップ)
図11は、図7に示されたレーザ加工方法の溝加工ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。なお、図11は、水溶性保護膜を省略している。溝加工ステップ1004は、黒色化ステップ1003を実施した後、黒色化した機能層205にパルスレーザビーム21を照射して黒色化した機能層205にパルスレーザビーム21を吸収させレーザ加工溝207を形成するステップである。
【0068】
実施形態1において、溝加工ステップ1004では、レーザ加工装置1は、パルスレーザビーム21を、重なり率Oが0%を超えかつ80%未満になるように黒色化した機能層205に照射して、機能層205及び基材201の表層を除去して、レーザ加工溝207を形成する。溝加工ステップ1004では、レーザ加工装置1は、制御ユニット100が加工条件で定められた重なり率O、繰り返し周波数Fに基づいて、式1を満たす加工送り速度Sを算出する。
【0069】
溝加工ステップ1004では、レーザ加工装置1は、加工条件及び算出した加工送り速度Sに基づいて、パルスレーザビーム21の集光点21-1を黒色化した機能層205に設定し、図11に示すように、加工条件で設定された重なり率Oとなるように、移動ユニット30がチャックテーブル10に保持されたウェーハ200と、レーザビーム照射ユニット20が照射するパルスレーザビーム21の集光点21-1とを分割予定ライン203に沿って算出した加工送り速度Sで相対的に移動させながら、レーザビーム照射ユニット20がパルス状のパルスレーザビーム21を分割予定ライン203に照射する。溝加工ステップ1004では、レーザ加工装置1は、黒色化した機能層205及び基材201に対して吸収性を有する波長のパルスレーザビーム21を照射することで、ウェーハ200に分割予定ライン203に沿ってレーザ加工即ちアブレーション加工を施して、全ての分割予定ライン203にレーザ加工溝207を形成する。
【0070】
なお、実施形態1では、溝加工ステップ1004では、パルスレーザビーム21の波長を514nmとし、パルスレーザビーム21のエネルギーを5μJ以上でかつ10μJ以下(望ましくは、8μJ以上でかつ10μJ以下)とする。また、実施形態1では、溝加工ステップ1004では、例えば、重なり率Oが75%でレーザ加工を施す。
【0071】
また、実施形態1では、溝加工ステップ1004では、レーザ加工装置1は、黒色化ステップ1003と同様に、図6に示すエネルギー分布214でかつスポット216-1,216-2の形状が矩形状のパルスレーザビーム21を照射するが、本発明では、スポットの形状が丸形(円形)のパルスレーザビーム21を照射しても良い。
【0072】
こうして、実施形態1に係るレーザ加工方法は、黒色化ステップ1003において、溝加工ステップ1004よりも高い重なり率Oでかつ低いエネルギーのパルスレーザビーム21を照射して機能層205を黒色化し、溝加工ステップ1004において、黒色化ステップ1003よりも低い重なり率Oでかつ高いエネルギーのパルスレーザビーム21を照射して、レーザ加工溝207を形成する。
【0073】
実施形態1において、レーザ加工装置1は、ウェーハ200の全ての分割予定ライン203にレーザ加工溝207を形成すると、パルスレーザビーム21の照射を停止する。実施形態1においてレーザ加工装置1は、移動ユニット30がチャックテーブル10を搬入出領域に向かって移動し、チャックテーブル10を搬入出領域に停止し、チャックテーブル10がウェーハ200の吸引保持を停止するとともに、クランプ部12が環状フレーム210のクランプを解除し、チャックテーブル10の保持面11からウェーハ200が搬出されて、加工動作及びレーザ加工方法を終了する。
【0074】
実施形態1に係るレーザ加工方法が施されたウェーハ200は、水溶性保護膜が除去され、分割予定ライン203に沿って切削加工が施されて、個々のデバイス204に分割される。
【0075】
以上説明したように、実施形態1に係るレーザ加工方法は、黒色化ステップ1003と溝加工ステップ1004とを備える。レーザ加工方法は、黒色化ステップ1003では、溝加工ステップ1004もよりも低いエネルギーのパルスレーザビーム21を、溝加工ステップ1004よりも大きな重なり率Oでパルスレーザビーム21を重ねて照射する。また、レーザ加工方法は、溝加工ステップ1004では、黒色化した機能層205に集光点21-1を設定して、パルスレーザビーム21を照射する。
【0076】
このために、レーザ加工方法は、黒色化されてパルスレーザビーム21の吸収性が向上された状態の機能層205に溝加工ステップ1004においてパルスレーザビーム21を照射するため、基材201に集光点21-1を設定することなく、即ち、機能層205の剥離を抑制した状態でパルスレーザビーム21を照射することでレーザ加工溝207を形成することができる。その結果、レーザ加工方法は、機能層205の剥離を抑制しながらもウェーハ200にレーザ加工溝207を形成することができるという効果を奏する。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0078】
21 パルスレーザビーム
22 発振器
200 ウェーハ
201 基材
205 機能層(有機膜)
207 レーザ加工溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11